説明

制振装置の取付け構造

【課題】柱がない部位でも、上下に離間して配置された横架材と土台との間に制振装置を容易に取り付けることができる制振装置の取付け構造を提供する。
【解決手段】上下に離間して配置された横架材2と土台3との間に制振装置1が配置され、制振装置1の矩形フレーム7の上の横フレーム12が、矩形板状の上構造材25を介して、前記横架材2に取り付けられており、制振装置1の矩形フレーム7の下の横フレーム26が、矩形板状の下構造材26を介して、前記土台3に取り付けられているので、柱がない部位でも、上下に離間して配置された横架材2と土台3との間に制振装置1を容易に取り付けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、躯体に制振装置を取り付けてなる制振装置の取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
制振装置の取付け構造の一例として特許文献1に記載のものが知られている。
この特許文献1に記載されている制振装置は、矩形枠状の矩形フレームと、この矩形フレームの左右の縦フレームに左右に対向して設けられた一対の支持部と、この一対の支持部に支持され、該一対の支持部材の略中央部を中心として揺動可能な上下に長尺な振り子部材と、前記振り子部材の端部と、前記矩形フレームとの間に設けられた制振部材とを備えている。そして、前記振り子部材は、前記支持部に、該振り子部材に形成された2つの穴に、前記支持部材に設けられた2つの軸をそれぞれ摺動可能に挿入するとによって揺動可能に支持されており、前記2つの穴のうち少なくともいずれか一方が横方向に長い長穴となっている。
上記のような構成の制振装置は、上下の構造材(梁と土台)と左右の構造材(柱)とで囲まれた部位に配置されたうえで、帯板状の構造用合板で形成された接合材によって、制振装置の左右の縦フレームと、左右の構造材(柱)が接合されている。
【特許文献1】特開2007−9595号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記のような制振装置の取付け構造では、制振装置を左右の構造材である柱に接合材によって接合しているので、柱がない部位や、柱があっても隣り合う柱間の距離が制振装置の横方向の長さに比べて非常に長い場合は、新たに柱を取り付けなければ、制振装置を取り付けることができず、制振装置の取付けに手間がかかっていた。特に、建物のリフォームの場合、制振装置を取り付けたい部位に、柱がない場合や、柱があっても隣り合う柱間の距離が制振装置の横方向の長さに比べて長い場合が多く、制振装置の取付けに手間がかかっていた。
【0004】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、柱がない部位でも、上下に離間して配置された横架材と土台との間に制振装置を容易に取り付けることができる制振装置の取付け構造を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、例えば図1に示すように、矩形枠状の矩形フレーム7と、
この矩形フレーム7の左右の縦フレーム11,11に左右に対向して設けられた一対の支持部8,8と、
この一対の支持部8,8に支持され、該一対の支持部8,8の略中央部を中心として揺動可能な上下に長尺な振り子部材15と、
前記振り子部材15の端部と、前記矩形フレーム7との間に設けられた制振部材21とを備え、
前記振り子部材15が前記支持部8に、これらのうちのいずれか一方に形成された2つの穴に他方に設けられた2つの軸17,17をそれぞれ摺動可能に挿入するとによって揺動可能に支持されており、前記2つの穴のうち少なくともいずれか一方が横方向に長い長穴となっている制振装置1を躯体に取り付けてなる制振装置の取付け構造において、
前記躯体を構成し、かつ、上下に離間して配置された横架材2と土台3との間に、前記制振装置1が配置され、
前記制振装置1の矩形フレーム7の上の横フレーム12は、矩形板状の上構造材25を介して、前記横架材2に取り付けられており、
前記制振装置1の矩形フレーム7の下の横フレーム12は、矩形板状の下構造材26を介して、前記土台3に取り付けられていることを特徴とする。
【0006】
ここで、「他方に設けられた2つの軸」とは、振り子部材または支持部材に直接2本の軸を形成することによって設けてもよいし、振り子部材または支持部材に、2つの穴を形成し、該穴にそれぞれ軸を挿入または挿通することによって設けてもよいことを意味する。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、上下に離間して配置された横架材2と土台3との間に制振装置1が配置され、制振装置1の矩形フレーム7の上の横フレーム12が、矩形板状の上構造材25を介して、前記横架材2に取り付けられており、制振装置1の矩形フレーム7の下の横フレーム26が、矩形板状の下構造材26を介して、前記土台3に取り付けられているので、柱がない部位でも、上下に離間して配置された横架材2と土台3との間に制振装置1を容易に取り付けることができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の制振装置の取付け構造において、
前記制振装置1の上の横フレーム12は、前記上構造材25にボルト27によって固定されており、前記上構造材25は前記横架材2にガセットプレート30によって連結されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、制振装置1の上の横フレーム12をボルト27によって上構造材25に強固に固定でき、この上構造材25をガセットプレート30によって横架材2に強固に固定できるので、制振装置1を上構造材25を介して横架材2に強固に取り付けることができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の制振装置の取付け構造において、
前記制振装置1の下の横フレーム12は、前記土台3を支持する基礎31に連結手段32を介して連結されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、制振装置1の下の横フレーム12が、基礎31に連結手段32を介して連結されているので、地震の際に、地盤の振動が基礎31から連結手段32を介して制振装置1に確実に伝達されるので、制振装置1の制振機能を確実に働かせることができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の制振装置の取付け構造において、
前記連結手段32は、前記基礎31に連結されるとともに上面部33aが前記土台3の上面に当接する基礎連結金具33と、この基礎連結金具33の上面部33aに固定されたナット34と、前記下の横フレーム12から前記下構造材26を上下に貫通して、前記ナット34に螺合される締結ボルト35とを備えていることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、基礎31に基礎連結金具33を連結したうえで、土台3に下構造材26を設置し、この下構造材26に締結ボルト35を貫通して、基礎連結金具33の上面部33aに固定されたナット34に前記締結ボルト35を螺合することによって、制振装置1の下の横フレーム12を基礎31に容易かつ確実に連結できる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の制振装置の取付け構造において、
前記基礎連結金具33は、上面部33aと、この上面部33aの両端部からそれぞれ垂下された側面部33b,33bとを備え、
前記上面部33aが前記土台3の上面に当接され、前記側面部33b,33bが前記土台3の側面および前記基礎31の側面に当接され、
前記基礎31にその厚さ方向に貫通された貫通部材36に前記側面部33b,33bが固定されていることを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、基礎連結金具33の両側面部33b,33bをそれぞれ土台3の両側面および基礎31の側面にそれぞれ当接し、上面部33aを土台3の上面に当接することによって、基礎連結金具33を基礎31および土台3にその厚さ方向および下方向にずれることなく設置でき、そのうえで、基礎31にその厚さ方向に貫通された貫通部材36に側面部33b,33bを固定することによって、基礎連結金具33を基礎に上方向にずれることなく設置できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、上下に離間して配置された横架材と土台との間に制振装置が配置され、制振装置の矩形フレームの上の横フレームが、矩形板状の上構造材を介して、前記横架材に取り付けられており、制振装置の下の横フレームが、矩形板状の下構造材を介して、前記土台に取り付けられているので、柱がない部位でも、上下に離間して配置された横架材と土台との間に制振装置を容易に取り付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
まず、本発明に係る制振装置の取付け構造における制振装置1について説明する。この制振装置1は、図1〜図4に示すように、建物の躯体を構成し、かつ、上下に離間して配置された横架材2と土台3との間に配置されている。ここで、横架材2は建物の躯体を構成する梁2である。
【0018】
前記制振装置1は、矩形枠状の矩形フレーム7と、この矩形フレーム7に対向して設けられた一対の支持部8,8と、この一対の支持部8,8間に配置され、かつ該一対の支持部8,8によって支持された上下に長尺な振り子部材15と、矩形フレーム7の上下部に設けられた制振ボックス16,16とを備えている。
矩形フレーム7は、左右一対の縦フレーム11,11と、上下一対の横フレーム12,12とを矩形枠状に組み立てて形成されたものであり、縦フレーム11の端部と横フレーム12の端部はピン結合されている。したがって、矩形フレーム7は左右方向に力が作用すると平行四辺形を形成するようにして変形可能となっている。なお、縦フレーム11、横フレーム12は鉄やアルミニウム等の金属で形成されている。
また、縦フレーム11は、矩形フレーム7の外周面を構成する帯板状の外周板部11aと、この外周板部11aの内面に直角に形成されて、前記支持部8が取り付けられる帯板状の内側板部11bとから構成され、断面T字状に形成されている。
横フレーム12は、矩形フレーム7の外周面を構成する帯板状の外周板部12aと、この外周板部12aの両端部の内面にそれぞれ直角に形成されて、前記縦フレーム11の内側板部11bの端部にピン結合される内側板部12b,12bとを備えており、内側板部12b,12bには後述する制振ボックス16が取り付けられるようになっている。
また、横フレーム12の外周板部12aの両端部は、縦フレーム11,11よりも外側に延出している。
【0019】
前記縦フレーム11,11の内側板部11b,11bには、前記支持部8,8が対向して固定されている。
支持部8は長方形板状の2枚の支持板によって構成されており、支持板の一方の側部は、前記内側板部11bを挟むようにして該内側板部11bに固定されている。支持板間には所定の間隔が設けられており、該2枚の支持板間には上下に長尺な振り子部材15の中央部が挿入されて支持されるようになっている。
【0020】
前記振り子部材15は板状でかつ、縦長の八角形状に形成されており、長手方向を上下に向けて配置されている。振り子部材15の中央部の左半分は、一方の支持部8の支持板間に挟まれており、右半分は他方の支持部8の支持板間に挟まれている。なお、振り子部材15は鉄やアルミニウム等の金属によって形成されている。
前記一対の支持部8,8の先端部によって振り子部材15の長手方向中央部が支持されており、この振り子部材15は、地震等の振動によって矩形フレーム7が変形して一対の支持部8,8が変位した場合に、該一対の支持部8,8間の略中央部を中心として振れるように構成されている。
【0021】
すなわち、一方の支持部8の支持板の先端中央部には穴が対向して形成されており、他方の支持部8の支持板の先端中央部にも穴が対向して形成されている。一方、振り子部材15の中央部には、左右に離間して穴が形成されており、これら穴のうち左側の穴は左右に長い長穴となっている。
そして、一方の支持部8の支持板に形成された穴と、振り子部材の中央部に形成された一方の長穴とには、軸17が振り子部材15を回転可能とするように、かつ、長穴の長さ方向に摺動可能となるように挿通されている。この軸17は例えば先端部にねじ部を有するボルト17で形成されており、このボルト17は前記穴に挿通され、これら穴に挿通されたボルト17にはナットが螺合されている。
また、他方の支持部8の支持板に形成された穴と、振り子部材15の中央部に形成された他方の穴とには、軸17が振り子部材15を回転可能とするように挿通されている。この軸17も先端部にねじ部を有するボルト17で形成されており、このボルト17は前記穴に挿通され、これら穴に挿通されたボルト17にはナットが螺合されている。
これによって、振り子部材15は、一対の支持部8,8によって軸17,17を介して支持されており、この振り子部材17は、地震等の振動によって一対の支持部8,8が変位した場合に、該一対の支持部8,8間の略中央部、言い換えれば、軸17,17間の中央部を中心として振れるように構成されている。
【0022】
前記制振ボックス16は、図4に示すように、上下面が開口した箱状のボックス20と、このボックス20内に取り付けられた一対の制振部材21,21と、これら制振部材21,21間に挿入されかつ該一対の制振部材21,21に固着されたプレート22とを備えている。制振部材21としては、例えば高減衰ゴムによって形成された粘弾性体21を使用している。
ボックス20の対向する内面にはそれぞれ粘弾性体21,21が接着剤等によって固着されている。これら粘弾性体21,21間には、プレート22が挿入されており、該プレート22の表面は前記粘弾性体21,21に固着されている。プレート22の一端部は、ボックス20より突出しており、この突出している一端部は、振り子部材15の端部に連結されている。
また、前記ボックス20の端面には、取付プレート20a,20aが突出形成されている。そして、制振ボックス16は、ボックス20を横フレーム12の外周板部12aに設置したうえで、ボックス20の取付プレート20a,20aを内側板部12b,12bにボルトによって連結することによって横フレーム12の略中央部に取り付けられている。
なお、制振ボックス16のボックス20、プレート22等は鉄やアルミニウム等の金属で形成されている。
【0023】
上記のような構成の制振装置1は以下のようにして建物の躯体に取り付けられている。
すなわちまず、建物の躯体を構成し、かつ、上下に離間して配置された横架材2と土台3との間に、制振装置1が配置されている。
また、制振装置1と横架材2との間には上構造材25が設けられており、制振装置1と土台3との間には下構造材26が設けられている。これら上下の構造材25,26は、LVL(単板積層材)や合板で形成されてなる矩形板状のものである。
【0024】
制振装置1の上の横フレーム12は、上構造材25の下面に取付け固定されている。すなわち、上構造材25の左右の長さは、横フレーム12の外周板部12aの左右の長さと等しくなっており、上構造材25の下端面に前記外周板部12aが当接されたうえで、長尺なボルト27,27によって固定されている。ボルト27,27は外周板部12aの両端部から上構造材25の下端面に形成された穴にねじ込まれている。なお、この穴には接着剤が充填されている。また、ボルト27の長さは上構造材25の上下の長さの半分より長くなっており、これによって、前記外周板部12aが上構造材25の下端面に強固に固定されている。また、外周板部12aには、左右両端部のボルト27,27に間において、該ボルト27より短い木ねじ28が複数挿通されたうえで、上構造材25の下端面にねじ込まれている。
また、上構造材25はその上端面が横架材21の下面に当接されたうえで、左右一対のガセットプレート30,30によって横架材21に連結されている。ガセットプレート30は鋼製のものであり、上構造材25と横架材3の表裏両面に当接され、それぞれ接着剤によって固定されるとともに、釘をガセットプレート30の表面から打ち込むことによって上構造材25と横架材3に固定されている。
このようにして、制振装置1の矩形フレーム7の上の横フレーム12が、上構造材25を介して横架材3に取り付けられている。
【0025】
一方、制振装置1の下の横フレーム12は前記下構造材26を介して、前記土台3に取り付けられている。
すなわちまず、制振装置1の下の横フレーム12は、土台3を支持する基礎31に連結手段32を介して連結されている。連結手段32は、基礎連結金具33と、この基礎連結金具33の上面部33aに固定されたナット34と、前記下の横フレーム12から前記下構造材26を上下に貫通して、前記ナット34に螺合される締結ボルト35とを備えている。
【0026】
基礎連結金具33は、図3に示すように、上面部33aと、この上面部33aの両端部からそれぞれ垂下された側面部33b,33bとを備えた断面略コ字型の金具である。
そして、上面部33aが土台3の上面に当接され、側面部33b,33bが土台3の側面および基礎31の側面に当接されている。
基礎31には、ボルト(貫通部材)36,36が貫通されており、このボルト36,36に、前記基礎連結金具33の側面部33b,33bが固定されている。つまり、一方の側面部33bに形成された穴にボルト36を挿通したうえで、このボルト36を基礎31に形成された穴に挿通し、さらに、このボルト36の先端部を他方の側面部33bに形成された穴に挿通したうえで、ボルト36の先端部にナット37を螺合して締め付けることによって、ボルト36,36に側面部33b,33bが固定されている。
【0027】
一方、前記下構造材26の左右の長さは、図1に示すように、下の横フレーム12の外周板部12aの左右の長さと等しくなっており、下構造材26の上端面に外周板部12aが当接されている。
この外周板部12aの両端部にそれぞれ前記締結ボルト35,35が挿通され、さらに、この締結ボルト35,35は下構造材26に形成された穴26a,26aを上下に貫通している。下構造材26の下端面には、凹所26b,26bが形成されており、この凹所26b,26bに、下構造材26に形成された穴26a,26aの下端が開口している。また、この凹所26bには、前記ナット34が収められており、このナット34に締結ボルト35の下端部が螺合されたうえで、締め込まれている。
このようにして、制振装置1の下の横フレーム12は、土台3を支持する基礎31に連結されている。また、図1に示すように、下の横フレーム12の外周板部12aには、左右両端部の締結ボルト35,35に間において、該締結ボルト35より短い木ねじ37が挿通されたうえで、下構造材26の上端面にねじ込まれている。
【0028】
次に、上記のような制振装置の取付け構造を施工する方法について説明する。
まず、図5に示すように、基礎31とその上に設置された土台3とに、基礎連結金具33,33を土台3上から被せるようにして取り付け、ボルト36によって固定する。左右の基礎連結金具33,33の距離は、それらのナット34,34間の距離が、下構造材26の下端面に形成された凹所26b,26b間の距離(左右の穴26a,26a間の距離)と等しくなるようにして設定する。
【0029】
次に、図6に示すように、土台3の上面に基礎連結金具33,33を介して下構造材26を設置するとともに、この下構造材26の下端面の凹所26b,26bに基礎連結金具33,33のナット34,34を挿入する。なお、下構造材26の下端面と土台3の上面との間には、基礎連結金具33の上面部33aの厚さ分の隙間が生じるが、この隙間には必要に応じて、スペーサを挿入して該隙間を塞ぐようにする。また、下構造材26から土台3に向けて斜めに釘打ちを行って、下構造材26を土台3に固定してもよい。
【0030】
次に、図7に示すように、下構造材26の上端面に、制振装置1をその下の横フレーム12が下構造材26の上端面に当接するようにして設置したうえで、その外周板部12aの両端部に、締結ボルト35,35を挿通し、さらに、この締結ボルト35,35を下構造材26の穴26a,26aを上下に貫通させたうえで、凹所26b,26bに収められているナット34,34に締結ボルト35,35の下端部を螺合したうえで、締め込む。 また、左右両端部の締結ボルト35,35に間において、複数の木ねじ37を外周板部12aに挿通したうえで、下構造材26の上端面にねじ込む。
【0031】
次に、図8に示すように、制振装置1の上の横フレーム12と横架材2と間に、上構造材25をはめ込んで、上構造材25の下端面に横フレーム12の外周板部12aを当接するとともに、横架材2の下面に上構造材25の上端面を当接する。
次に、ボルト27,27を外周板部12aの両端部から上構造材25の下端面に形成された穴にねじ込み、さらに、左右両端部のボルト27,27に間において、複数の木ねじ28を外周板部12aに挿通したうえで、上構造材25の下端面にねじ込む。
【0032】
最後に、図1に示すように、ガセットプレート30,30を、上構造材25と横架材3の表裏両面に当接し、それぞれ接着剤によって固定するとともに、釘をガセットプレート30,30の表面から打ち込むことによって上構造材25と横架材3に固定する。なお、上構造材25から横架材2に向けて斜めに釘打ちを行ってもよい。
【0033】
制振装置1が取り付けられた建物の躯体では、図2に示すように、建物に地震等の横揺れ振動によって変形が生じると、上下に離間して配置された横架材2と土台3とが互いに水平方向(左右方向)逆方向に変位し、これに伴って、上下の構造材25,26が互いに水平方向逆方向に変位する。これによって、制振装置1の矩形フレーム7の上下の横フレーム12,12が左右にずれるようにして変位するとともに、縦フレーム11,11が横方向に傾斜することによって矩形状フレーム7が略平行四辺形状に変形する。
矩形フレーム7が略平行四辺形状に変形すると、一対の支持部8,8が斜め上下に互いに離間するようにして変位する。
一対の支持部8,8が変位することによって、振り子部材15が一対の支持部8,8間の略中央部を中心として振り子のように振れ、この振り子部材15の端部は振れが増幅され、これによって、前記一対の支持部8,8の変位が増幅される。
そして、振り子部材15の端部と制振ボックス16のプレート22とが連結されており、この連結プレート22は粘弾性体21,21間に挿入されかつ該一対の粘弾性体21,21に固着されているので、この粘弾性体21,21の変形を増幅できる。したがって、建物の小さな変形から制振機能を有効に働かせることができる。
また、粘弾性体21,21の変形速度も建物の変形速度より増幅することができるため、エネルギー吸収性能が変形速度に比例する粘弾性材料から形成された粘弾性体を用いる場合には、より効率的にエネルギーを吸収でき、大きな減衰力を発揮できる。
【0034】
本実施の形態によれば、以下のような効果を奏する。
上下に離間して配置された横架材2と土台3との間に制振装置1が配置され、制振装置1の上の横フレーム12が、矩形板状の上構造材25を介して、横架材2に取り付けられており、制振装置1の下の横フレーム12が、矩形板状の下構造材26を介して、前記土台3に取り付けられているので、柱がない部位でも、上下に離間して配置された横架材2と土台3との間に制振装置1を容易に取り付けることができる。
また、制振装置1の上の横フレーム12をボルト27によって上構造材25に強固に固定でき、この上構造材25をガセットプレート30によって横架材2に強固に固定できるので、制振装置1を上構造材25を介して横架材2に強固に取り付けることができる。
【0035】
さらに、制振装置1の下の横フレーム12が、基礎31に連結手段32を介して連結されているので、地震の際に、地盤の振動が基礎31から連結手段32を介して制振装置1に確実に伝達されるので、制振装置1の制振機能を確実に働かせることができる。
加えて、基礎31に基礎連結金具33を連結したうえで、土台3に下構造材26を設置し、この構造材26に締結ボルト35を貫通して、基礎連結金具33の上面部に固定されたナット34に締結ボルト35を螺合することによって、制振装置1の下の横フレーム12を基礎31に容易かつ確実に連結できる。
また、基礎連結金具33の両側面部33b,33bをそれぞれ土台3の両側面および基礎31の側面にそれぞれ当接し、上面部33aを土台3の上面に当接することによって、基礎連結金具33を基礎31および土台3にその厚さ方向および下方向にずれることなく設置でき、そのうえで、基礎31にその厚さ方向に貫通されたボルト36に側面部33b,33bを固定することによって、基礎連結金具33を基礎に上方向にずれることなく設置できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る制振装置の取付け構造の一例を示すもので、その正面図である。
【図2】同、振り子部材が振れた状態を示す正面図である。
【図3】同、基礎と下構造材との連結状態を示す断面図である。
【図4】同、制振ボックスを示す斜視図である。
【図5】本発明に係る制振装置の取付け構造の施工方法を説明するためのもので、基礎と土台に基礎連結金物を取り付けた状態を示す正面図である。
【図6】同、土台に下構造材を設置した状態を示す正面図である。
【図7】同、下構造材に制振装置を設置した状態を示す正面図である。
【図8】同、制振装置に上構造材を設置した状態を示す正面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 制振装置
2 横架材
3 土台
7 矩形フレーム
8 支持部
11 縦フレーム
12 横フレーム
15 振り子部材
21 制振部材
17 軸
25 上構造材
26 下構造材
27 ボルト
30 ガセットプレート
31 基礎
32 連結手段
33 基礎連結金具
33a 上面部
33b 側面部
34 ナット
35 締結ボルト
36 ボルト(貫通部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形枠状の矩形フレームと、
この矩形フレームの左右の縦フレームに左右に対向して設けられた一対の支持部と、
この一対の支持部に支持され、該一対の支持部の略中央部を中心として揺動可能な上下に長尺な振り子部材と、
前記振り子部材の端部と、前記矩形フレームとの間に設けられた制振部材とを備え、
前記振り子部材が前記支持部に、これらのうちのいずれか一方に形成された2つの穴に他方に設けられた2つの軸をそれぞれ摺動可能に挿入するとによって揺動可能に支持されており、前記2つの穴のうち少なくともいずれか一方が横方向に長い長穴となっている制振装置を躯体に取り付けてなる制振装置の取付け構造において、
前記躯体を構成し、かつ、上下に離間して配置された横架材と土台との間に、前記制振装置が配置され、
前記制振装置の矩形フレームの上の横フレームは、矩形板状の上構造材を介して、前記横架材に取り付けられており、
前記制振装置の矩形フレームの下の横フレームは、矩形板状の下構造材を介して、前記土台に取り付けられていることを特徴とする制振装置の取付け構造。
【請求項2】
請求項1に記載の制振装置の取付け構造において、
前記制振装置の上の横フレームは、前記上構造材にボルトによって固定されており、前記上構造材は前記横架材にガセットプレートによって連結されていることを特徴とする制振装置の取付け構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載の制振装置の取付け構造において、
前記制振装置の下の横フレームは、前記土台を支持する基礎に連結手段を介して連結されていることを特徴とする制振装置の取付け構造。
【請求項4】
請求項3に記載の制振装置の取付け構造において、
前記連結手段は、前記基礎に連結されるとともに上面部が前記土台の上面に当接する基礎連結金具と、この基礎連結金具の上面部に固定されたナットと、前記下の横フレームから前記下構造材を上下に貫通して、前記ナットに螺合される締結ボルトとを備えていることを特徴とする制振装置の取付け構造。
【請求項5】
請求項4に記載の制振装置の取付け構造において、
前記基礎連結金具は、上面部と、この上面部の両端部からそれぞれ垂下された側面部とを備え、
前記上面部が前記土台の上面に当接され、前記側面部が前記土台の側面および前記基礎の側面に当接され、
前記基礎にその厚さ方向に貫通された貫通部材に前記側面部が固定されていることを特徴とする制振装置の取付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−249850(P2009−249850A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−96101(P2008−96101)
【出願日】平成20年4月2日(2008.4.2)
【出願人】(307042385)ミサワホーム株式会社 (569)
【Fターム(参考)】