説明

前立腺癌およびアンドロゲン受容体関連病態の治療のためのアンドロゲン受容体の調節剤

【課題】核ホルモン受容体、特にアンドロゲン受容体の機能を調節する一連の化合物を提供すること。
【解決手段】本発明は、ヒダントインの化合物、および加齢関連疾患、例えば、前立腺癌などのアンドロゲン受容体関連病態の治療にこのような化合物を用いる方法、ならびにこのような化合物を含有する製薬組成物に関する。一実施形態において、製薬組成物は、式IIに記載の化合物、または薬学的に許容できるその塩の治療的有効量、および薬学的に許容できる担体、希釈剤、またはアジュバントを含む。本発明により、核ホルモン受容体、特にアンドロゲン受容体の機能を調節する一連の化合物が提供される。これらの化合物は、前立腺癌細胞および腫瘍の消失を引き起こすことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ヒダントイン類、チオヒダントイン類、ジチオヒダントイン類、ヒダントインイミン類およびチオヒダントインイミン類の化合物、加齢関連疾患、例えば、前立腺癌などのアンドロゲン受容体関連病態の治療にこのような化合物を用いる方法およびこのような化合物を含有する製薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
前立腺癌は、欧米男性において最も一般的に発生する癌であり、癌の二番目に多い死因である。癌が局所的に限定される場合、該疾患は、手術または放射線により治癒することができる。しかしながら、このような癌の30%は、遠隔転移疾患により再発し、その他は診断時に疾患が進行している。進行型疾患は、性腺摘除および/または抗アンドロゲンの投与、いわゆるアンドロゲン遮断療法により治療される。性腺摘除により、アンドロゲンの循環レベルが低下し、アンドロゲン受容体(AR)の活性が減少する。抗アンドロゲンの投与により、アンドロゲン結合を競合排除してAR機能がブロックされ、したがってAR活性が減少する。これらの治療は初期には有効ではあるが、急速に支障をきたし、癌はホルモン治療抵抗性となる。
【0003】
最近、ARの過剰発現がホルモン治療抵抗性前立腺癌の原因として確認され、検証されている(非特許文献1)。ARの過剰発現は、ホルモン感受性前立腺癌を、ホルモン治療抵抗性前立腺癌へと進行させるのに十分な原因となることから、現行の薬物よりも良好なAR阻害剤は、前立腺癌の進行を緩徐化できることが示唆されている。ARおよびそのリガンド結合は、ホルモン治療抵抗性前立腺癌の増殖に必要であることが立証されており、依然としてARは、この疾患のターゲットであることを示している。また、ARの過剰発現により、ホルモン治療抵抗性前立腺癌において、抗アンドロゲンがアンタゴニストからアゴニストへと変換される(ARアンタゴニストはAR活性を阻害し、ARアゴニストはAR活性を刺激する)ことも立証されている。この研究からのデータは、性腺摘除および抗アンドロゲンが前立腺癌の進行を防ぐことができない理由を説明しており、ホルモン治療抵抗性前立腺癌の性質が認識されていないことを表している。
【0004】
ビカルタミド(Bicalutamide)(商品名:Casodex)は、最も一般的に用いられている抗アンドロゲンである。それは、ホルモン感受性前立腺癌前立腺癌におけるARに対して阻害効果を有するが、癌がホルモン治療抵抗性になると、ARを抑制することができない。現行の抗アンドロゲンの2つの弱点は、ホルモン感受性段階からホルモン治療抵抗性疾患への前立腺癌の進行を防ぐことができないこと、およびホルモン治療抵抗性前立腺癌を有効に治療することができないことに帰する。ホルモン治療抵抗性前立腺癌においてARが過剰発現される場合、1つは、それらの弱いアンタゴニスト活性であり、他は、強いアゴニスト活性である。したがって、より強力なアンタゴニスト活性を有し、最小のアゴニスト活性を有する疾患進行を遅延させ、致死的ホルモン治療抵抗性前立腺癌を治療するために、より良好なAR阻害剤が求められている。
【0005】
非ステロイド系抗アンドロゲンは、より選択的であり、副作用がより少ないことから、前立腺癌に対してステロイド系化合物よりも好ましい。多種多様のこのような化合物が、特許文献1、特許文献2、および特許文献3、特許文献4および特許文献5、および特許文献6、特許文献7および特許文献8として公開されたPCT国際出願に記載されている。
したがって、アンドロゲン活性をアンタゴナイズするための高い効力を有し、最小のアゴニスト活性を有する化合物を同定することによって、ホルモン治療抵抗性前立腺癌(HRPC)が克服され、ホルモン感受性前立腺癌(HSPC)の進行を回避または減速されると考えられる。当業界において、非ステロイド系、非毒性、および組織選択性である調節剤など、アンドロゲン受容体の選択的調節剤の同定が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4,097,578号明細書
【特許文献2】米国特許第5,411,981号明細書
【特許文献3】米国特許第5,705,654号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2004/0009969号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2007/0004753号明細書
【特許文献6】国際公開第97/00071号
【特許文献7】国際公開第00/17163号
【特許文献8】国際公開第06/124118号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Nat.Med、2004年、10、33〜39頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の概要
核ホルモン受容体、特にアンドロゲン受容体の機能を調節する一連の化合物が提供される。これらの化合物は、前立腺癌細胞および腫瘍の消失を引き起こすことができる。
一実施形態において、化合物は式IIによるものである。
【0009】
【化6】

Hetは、5個または6個の原子の複素環式単位を表す。AおよびBは、酸素、硫黄、およびN−Rから独立して選択され、Rは、水素、アリール、置換アリール、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アルケニル、ハロゲン化アルキニル、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、複素環式芳香族もしくは非芳香族、置換複素環式芳香族もしくは非芳香族、シクロアルキル、置換シクロアルキル、SO11、NR1112、NR12(CO)OR11、NH(CO)NR1112、NR12(CO)R11、O(CO)R11、O(CO)OR11、O(CS)R11、NR12(CS)R11、NH(CS)NR1112、またはNR12(CS)OR11から選択される。R11およびR12は、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニルまたは置換アルケニル、アルキニルまたは置換アルキニル、アリール、置換アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、複素環式芳香族もしくは非芳香族、または置換複素環式芳香族もしくは非芳香族から独立して選択される。Rは、水素、アリール、置換アリール、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アルケニル、ハロゲン化アルキニル、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、複素環式芳香族もしくは非芳香族、置換複素環式芳香族もしくは非芳香族、シクロアルキル、置換シクロアルキル、SO11、NR1112、NR12(CO)OR11、NH(CO)NR1112、NR12(CO)R11、O(CO)R11、O(CO)OR11、O(CS)R11、NR12(CS)R11、NH(CS)NR1112、NR12(CS)OR11から選択される。RおよびRは、水素、アリール、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アルケニル、ハロゲン化アルキニル、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、複素環式芳香族もしくは非芳香族、置換複素環式芳香族もしくは非芳香族、シクロアルキル、または置換シクロアルキルから独立して選択されるか、あるいはそれらが結合している炭素と一緒になって、シクロアルキル、置換シクロアルキル、複素環式芳香族もしくは非芳香族、置換複素環式芳香族もしくは非芳香族であり得る環状物を形成する。
【0010】
およびRは結合して、複素環式芳香族または非芳香族、置換複素環式芳香族または非芳香族であり得る環状物を形成し得る。R11およびR12は結合して、複素環式芳香族もしくは非芳香族、置換複素環式芳香族もしくは非芳香族、シクロアルキル、または置換シクロアルキルであり得る環状物を形成し得る。
【0011】
例えば、化合物はA51またはA52であり得る。
【0012】
【化7】

一実施形態において、製薬組成物は、式IIに記載の化合物、または薬学的に許容できるその塩の治療的有効量、および薬学的に許容できる担体、希釈剤、またはアジュバントを含む。
【0013】
該製薬組成物は、ジメチルスルホキシド、リン酸緩衝生理食塩液、および水の溶液を含むことができる。該製薬組成物は、ジメチルスルホキシド、カルボキシメチルセルロース、ポリソルベート、および水を含むことができる。
【0014】
方法の一実施形態は、核受容体活性に関連する疾患または障害を予防することまたは治療することを含む。
【0015】
ホルモン感受性前立腺癌またはホルモン治療抵抗性前立腺癌などの過剰増殖障害を予防または治療する方法は、式IIに記載の化合物、または薬学的に許容できるその塩を、このような予防または治療を必要とする被験体に投与し、それによって過剰増殖障害を予防または治療することを含むことができる。該化合物を、体重1kg当り1日、約1mgから体重1kg当り1日、約50mgまでの範囲の投薬量で投与することができる。該化合物を、例えば、静脈内注射、組織内注射、腹腔内注射、経口、または経鼻により投与することができる。
【0016】
一実施形態において、式IIに記載の化合物は、核受容体のアンタゴニストまたはアンドロゲン受容体のアンタゴニストである。
例えば、本発明は、以下を提供する。
(項目1)
式II
【化1】


に記載の化合物であって、
式中、Hetは、5個または6個の原子の複素環式単位を含み、
AおよびBは、酸素、硫黄、およびN−Rから独立して選択され、
は、水素、アリール、置換アリール、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アルケニル、ハロゲン化アルキニル、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、複素環式芳香族もしくは非芳香族、置換複素環式芳香族もしくは非芳香族、シクロアルキル、置換シクロアルキル、SO11、NR1112、NR12(CO)OR11、NH(CO)NR1112、NR12(CO)R11、O(CO)R11、O(CO)OR11、O(CS)R11、NR12(CS)R11、NH(CS)NR1112、またはNR12(CS)OR11から選択され、
11およびR12は、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニルまたは置換アルケニル、アルキニルまたは置換アルキニル、アリール、置換アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、複素環式芳香族もしくは非芳香族、または置換複素環式芳香族もしくは非芳香族から独立して選択され、
11およびR12は結合して、複素環式芳香族もしくは非芳香族、置換複素環式芳香族もしくは非芳香族、シクロアルキル、または置換シクロアルキルであり得る環状物を形成し得、
は、水素、アリール、置換アリール、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アルケニル、ハロゲン化アルキニル、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、複素環式芳香族もしくは非芳香族、置換複素環式芳香族もしくは非芳香族、シクロアルキル、置換シクロアルキル、SO11、NR1112、NR12(CO)OR11、NH(CO)NR1112、NR12(CO)R11、O(CO)R11、O(CO)OR11、O(CS)R11、NR12(CS)R11、NH(CS)NR1112、NR12(CS)OR11から選択され、
およびRは、水素、アリール、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アルケニル、ハロゲン化アルキニル、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、複素環式芳香族もしくは非芳香族、置換複素環式芳香族もしくは非芳香族、シクロアルキル、または置換シクロアルキルから独立して選択されるか、あるいはそれらが結合している炭素と一緒になって、シクロアルキル、置換シクロアルキル、複素環式芳香族もしくは非芳香族、置換複素環式芳香族もしくは非芳香族であり得る環状物を形成し、
およびRは結合して、複素環式芳香族または非芳香族、置換複素環式芳香族または非芳香族であり得る環状物を形成し得る、化合物。
(項目2)
が、アルキル、置換アルキル、アルケニル、および置換アルケニルよりなる群から選択される項目1に記載の化合物。
(項目3)
が、アリールおよび置換アリールよりなる群から選択される項目1に記載の化合物。
(項目4)
が、少なくとも1個のフッ素原子により置換されたアリールである項目3に記載の化合物。
(項目5)
が、5員から8員の複素環式芳香族環または非芳香族環である項目1に記載の化合物。
(項目6)
およびRが、メチル、エチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、フルオロメチル、クロロメチル、およびブロモメチルよりなる群から独立して選択される項目1に記載の化合物。
(項目7)
AおよびBが、酸素および硫黄よりなる群から独立して選択される項目1に記載の化合物。
(項目8)
Hetが、6個の原子の複素環式単位を含み、
該複素環式単位が、窒素、酸素、または硫黄よりなる群から独立して選択される1個または2個のヘテロ原子を含み、
Hetが、酸素および硫黄よりなる群から選択される複素環式単位上に0または1つの二重結合置換基を含み、
Hetが、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、置換アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アルケニル、ハロゲン化アルキニル、ハロゲン、CN、NO、OR11、SR11、NR1112、NH(CO)OR11、NH(CO)NR1112、NR12(CO)R11、O(CO)R11、O(CO)OR11、O(CS)R11、NR12(CS)R11、NH(CS)NR1112、NR12(CS)OR11よりなる群から選択される複素環式単位上に3つから4つの単結合置換基を含み、
単結合置換基が、別の単結合置換基に結合して、芳香族、置換芳香族、複素環式芳香族もしくは非芳香族、置換複素環式芳香族もしくは非芳香族、シクロアルキル、または置換シクロアルキルである環状物を形成し得る、項目1に記載の化合物。
(項目9)
Hetが、6員環の化合物
【化2】


よりなる群から選択され、
式中、R、R、R、およびRが、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、置換アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アルケニル、ハロゲン化アルキニル、ハロゲン、CN、NO、OR11、SR11、NR1112、NH(CO)OR11、NH(CO)NR1112、NR12(CO)R11、O(CO)R11、O(CO)OR11、O(CS)R11、NR12(CS)R11、NH(CS)NR1112、NR12(CS)OR11よりなる群から独立して選択され、
、R、R、およびRのいずれかは、R、R、R、およびRのいずれかに結合して、芳香族、置換芳香族、複素環式芳香族もしくは非芳香族、置換複素環式芳香族もしくは非芳香族、シクロアルキル、置換シクロアルキルであり得る環状物を形成し得る、項目8に記載の化合物。
(項目10)
が、CNおよびNOよりなる群から選択され、
が、トリフルオロメチル、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アルケニル、ハロゲン化アルキニル、およびハロゲンよりなる群から選択され、
およびRが、水素、アルキル、およびまたはハロゲンよりなる群から独立して選択される、項目9に記載の化合物。
(項目11)
が、トリフルオロメチルおよびヨウ化物よりなる群から選択され、そして
およびRが、水素およびハロゲンよりなる群から独立して選択される、項目10に記載の化合物。
(項目12)
Hetが、
【化3】


よりなる群から選択される、項目9に記載の化合物。
(項目13)

【化4】


を有する、項目12に記載の化合物。
(項目14)
Hetが、5個の原子の複素環式単位を含み、
該複素環式単位が、硫黄、酸素、窒素、およびNRよりなる群から独立して選択される1個または2個のヘテロ原子を含み、
が、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、置換アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アルケニル、ハロゲン化アルキニル、ハロゲン、(CO)R11、(CO)OR11、(CS)R11、(CS)OR11よりなる群から選択され、
Hetが、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、置換アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アルケニル、ハロゲン化アルキニル、ハロゲン、CN、NO、OR11、SR11、NR1112、NH(CO)OR11、NH(CO)NR1112、NR12(CO)R11、O(CO)R11、O(CO)OR11、O(CS)R11、NR12(CS)R11、NH(CS)NR1112、NR12(CS)OR11よりなる群から選択される複素環式単位上の2つから3つの単結合置換基を含み、
単結合置換基が、別の単結合置換基に結合して、芳香族、置換芳香族、複素環式芳香族もしくは非芳香族、置換複素環式芳香族もしくは非芳香族、シクロアルキル、または置換シクロアルキルである環状物を形成し得る、項目1に記載の化合物。
(項目15)
Hetが、5員環の化合物
【化5】


よりなる群から選択され、
式中、R、R、およびRが、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、置換アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アルケニル、ハロゲン化アルキニル、ハロゲン、CN、NO、OR11、SR11、NR1112、NH(CO)OR11、NH(CO)NR1112、NR12(CO)R11、O(CO)R11、O(CO)OR11、O(CS)R11、NR12(CS)R11、NH(CS)NR1112、NR12(CS)OR11よりなる群から独立して選択され、
、R、およびRのいずれかは、R、R、およびRのいずれかに結合して、芳香族、置換芳香族、複素環式芳香族もしくは非芳香族、置換複素環式芳香族もしくは非芳香族、シクロアルキル、置換シクロアルキルである環状物を形成し得、
Xが、硫黄、酸素、およびNRよりなる群から選択され、
が、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、置換アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アルケニル、ハロゲン化アルキニル、ハロゲン、(CO)R11、(CO)OR11、(CS)R11、および(CS)OR11よりなる群から選択される、項目14に記載の化合物。
(項目16)
が、CNおよびNOよりなる群から選択され、
が、トリフルオロメチル、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アルケニル、ハロゲン化アルキニル、およびハロゲンよりなる群から選択され、
が、水素、アルキル、およびハロゲンよりなる群から選択される、項目15に記載の化合物。
(項目17)
項目1に記載の化合物、または薬学的に許容できるその塩の治療的有効量、および薬学的に許容できる担体、希釈剤、またはアジュバントを含む製薬組成物。
(項目18)
項目17に記載の製薬組成物を投与することを含む核受容体活性に関連する疾患または障害を治療する方法。
(項目19)
過剰増殖障害の治療を必要とする被験体に項目1に記載の化合物、または薬学的に許容できるその塩を投与し、それによって過剰増殖障害を治療することを含む、過剰増殖障害を治療する方法。
(項目20)
項目1に記載の化合物、または薬学的に許容できるその塩が、体重1kg当り1日、約0.01mgから体重1kg当り1日、約500mgまでの範囲の用量で投与される、項目19に記載の方法。
(項目21)
項目1に記載の化合物、または薬学的に許容できるその塩が、体重1kg当り1日、約0.1mgから体重1kg当り1日、約200mgまでの範囲の用量で投与される、項目19に記載の方法。
(項目22)
項目1に記載の化合物、または薬学的に許容できるその塩が、体重1kg当り1日、約1mgから体重1kg当り1日、約50mgまでの範囲の用量で投与される、項目19に記載の方法。
(項目23)
項目1に記載の化合物、または薬学的に許容できるその塩が、体重1kg当り1日、約10mgの用量で投与される、項目19に記載の方法。
(項目24)
前記過剰増殖障害が、ホルモン感受性前立腺癌またはホルモン治療抵抗性前立腺癌である、項目19に記載の方法。
(項目25)
項目1に記載の化合物が、静脈内注射、組織内注射、腹腔内注射、経口、または経鼻により投与される、項目19に記載の方法。
(項目26)
項目1に記載の化合物が、液剤、分散剤、懸濁剤、散剤、カプセル剤、錠剤、丸剤、限時放出カプセル剤、限時放出錠剤、および限時放出丸剤よりなる群から選択される形態を有する、項目19に記載の方法。
(項目27)
前記化合物が、核受容体のアンタゴニストである、項目1から26までのいずれか一項に記載の化合物または方法。
(項目28)
前記化合物が、アンドロゲン受容体のアンタゴニストである、項目1から27までのいずれか一項に記載の化合物または方法。
(項目29)
前記化合物が、A51である、項目17に記載の製薬組成物。
(項目30)
前記化合物が、A52である、項目17に記載の製薬組成物。
(項目31)
ジメチルスルホキシドおよびリン酸緩衝生理食塩液の溶液を含む、項目17に記載の製薬組成物。
(項目32)
ポリエチレングリコールを含む、項目17に記載の製薬組成物。
(項目33)
前記化合物が、約0.15mg/mLから約15mg/mLの濃度であり、前記ジメチルスルホキシドが、前記溶液の約10%から約25%である、項目17に記載の製薬組成物。
(項目34)
前記化合物が、約1.5mg/mLの濃度である、項目17に記載の製薬組成物。
(項目35)
ジメチルスルホキシド、カルボキシメチルセルロース、ポリソルベート、および水の溶液を含む、項目17に記載の製薬組成物。
(項目36)
前記ジメチルスルホキシドが、前記溶液の約10%から20%であり、前記カルボキシメチルセルロースが、前記溶液の約1%から約2%であり、前記ポリソルベートが、前記溶液の約0.05%から約0.2%である、項目35に記載の製薬組成物。
(項目37)
過剰増殖障害の治療を必要とする被験体に化合物A51もしくはA52、または薬学的に許容できるその塩を投与し、それによって過剰増殖障害を治療することを含む、過剰増殖障害を治療する方法。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、HS癌細胞に対する化合物A51およびA52のアンタゴニストの効果を示す棒グラフである。
【図2】図2は、HS癌細胞に対する化合物A51およびA52のアンタゴニストの効果を示す棒グラフである。
【図3】図3は、HR癌細胞に対する化合物A51およびA52のアンタゴニストの効果を示す棒グラフである。
【図4】図4は、化合物A52の薬物動態学的挙動を示すグラフである。
【図5】図5は、10mg/kgでLNCaP−AR過剰発現腫瘍サイズに対する化合物A52の効果を示すグラフである。
【図6】図6は、化合物A52による治療17日後のルシフェラーゼ活性の消失を示す画像を提供している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
詳細な説明
本発明の実施形態を、以下詳細に検討する。記載する実施形態において、特定の用語が、明瞭性を目的として使用される。しかしながら、本発明を、そのように選択された特定の用語に限定する意図はない。本発明の趣旨と範囲から逸脱することなく他の等価の部分を使用でき、他の方法を開発できることを、関連業者は認識するであろう。本明細書に援用された全ての引用文献は、その各々が個々に援用されているように、参照として援用される。
本発明は、式IIの化合物、アンドロゲン受容体の調節剤としてこのような化合物を用いる方法、このような化合物およびそれらの塩類を含有する製薬組成物に関する。式IIの化合物は、核受容体の機能をアゴナイズするか、またはアンタゴナイズするために使用することができる。該化合物は、アンドロゲン受容体をアンタゴナイズするために使用することができる。該化合物の使用は、アンドロゲン受容体に影響を及ぼすことに限定されず、例えば、核受容体機能に関連した他の疾患の治療にも有用であり得る。式IIは、構造
【0019】
【化8】

として表すことができ、
式中Hetは、5個または6個の原子の複素環式単位である。好ましい複素環式単位は、構造
【0020】
【化9】

などにより表される化合物から選択される。しかしながら、本発明を、これらの構造を有する化合物に限定する意図はない。
【0021】
本明細書において、R、R、RおよびRは、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、置換アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アルケニル、ハロゲン化アルキニル、ハロゲン、CN、NO、OR11、SR11、NR1112、NH(CO)OR11、NH(CO)NR1112、NR12(CO)R11、O(CO)R11、O(CO)OR11、O(CS)R11、NR12(CS)R11、NH(CS)NR1112、NR12(CS)OR11よりなる群から独立して選択される。Rは、CNまたはNOであることが好ましい。Rは、トリフルオロメチル、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アルケニル、ハロゲン化アルキニルおよびハロゲンであることが好ましい。RおよびRは、水素、アルキルまたはハロゲンであることが好ましい。R、R、R、およびRは、独立して結合して、芳香族、置換芳香族、複素環式芳香族もしくは非芳香族、置換複素環式芳香族もしくは非芳香族、シクロアルキル、置換シクロアルキルである環状物を形成し得る。Xは、硫黄(S)、酸素(O)、およびNRから選択され、Nは窒素であり、Rは、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、置換アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アルケニル、ハロゲン化アルキニル、ハロゲン、(CO)R11、(CO)OR11、(CS)R11、(CS)OR11よりなる群から選択される。
【0022】
は、水素、アリール、置換アリール、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アルケニル、ハロゲン化アルキニル、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、複素環式芳香族もしくは非芳香族、置換複素環式芳香族もしくは非芳香族、シクロアルキル、置換シクロアルキル、SO11、NR1112、NR12(CO)OR11、NH(CO)NR1112、NR12(CO)R11、O(CO)R11、O(CO)OR11、O(CS)R11、NR12(CS)R11、NH(CS)NR1112、NR12(CS)OR11から選択される。Rは、好ましくは、アリール、置換アリール、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニルである。
【0023】
およびRは、水素、アリール、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アルケニル、ハロゲン化アルキニル、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、複素環式芳香族もしくは非芳香族、置換複素環式芳香族もしくは非芳香族、シクロアルキル、置換シクロアルキルから独立して選択される。RおよびRは、結合して複素環式芳香族もしくは非芳香族、置換複素環式芳香族もしくは非芳香族、シクロアルキル、置換シクロアルキルであり得る環状物を形成し得る。RおよびRは結合して、複素環式芳香族または非芳香族、置換複素環式芳香族または非芳香族であり得る環状物を形成し得る。
【0024】
AおよびBは、酸素(O)、硫黄(S)およびN−Rから独立して選択される。Rは、水素、アリール、置換アリール、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アルケニル、ハロゲン化アルキニル、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、複素環式芳香族もしくは非芳香族、置換複素環式芳香族もしくは非芳香族、シクロアルキル、置換シクロアルキル、SO11、NR1112、NR12(CO)OR11、NH(CO)NR1112、NR12(CO)R11、O(CO)R11、O(CO)OR11、O(CS)R11、NR12(CS)R11、NH(CS)NR1112、またはNR12(CS)OR11から選択される。
【0025】
11およびR12は、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニルまたは置換アルケニル、アルキニルまたは置換アルキニル、アリール、置換アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、複素環式芳香族もしくは非芳香族、または置換複素環式芳香族もしくは非芳香族から独立して選択される。R11およびR12は結合して、複素環式芳香族もしくは非芳香族、置換複素環式芳香族もしくは非芳香族、シクロアルキル、または置換シクロアルキルであり得る環状物を形成し得る。
【0026】
以下の定義は、特別な場合に別に限定されない限り、本明細書を通して用いられる用語に適用される。
【0027】
本明細書に用いられる用語「アルキル」とは、分枝状または非分枝状炭化水素鎖、好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、イソブチル、t−ブチル、2−メチルフェニル、ペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、4,4−ジメチルペンチル、オクチル、2,2,4−トリメチルペンチルなど、約1個から約8個の炭素を有するものを意味する。「置換アルキル」には、トリフルオロメチル、3−ヒドロキシヘキシル、2−カルボキシプロピル、2−フルオロエチル、カルボキシメチル、シアノブチルなどのアルキル基を形成するための、ヒドロキシル、ブロモ、フルオロ、クロロ、ヨード、メルカプトまたはチオ、シアノ、アルキルチオ、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、カルボキシル、カルバルコイル、アルキル、アルケニル、ニトロ、アミノ、アルコキシル、アミドなど、このような鎖に一般的に結合している1つまたは複数の官能基により任意に置換されたアルキル基が含まれる。
【0028】
他に指示されない限り、単独に、または別の基の一部として本明細書に用いられる用語「シクロアルキル」には、モノシクロアルキル、ビシクロアルキルおよびトリシクロアルキルなど、1つから3つの環を含有し、環を形成する全部で3個から20個の炭素、好ましくは3個から10個の炭素を含有する飽和または部分的不飽和(1つまたは複数の二重結合を含有)環式炭化水素基が含まれ、それらは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロデシルおよびシクロヘキセニルなどのアリールに関して記載された1つまたは2つの芳香族環に融合することができる。「置換シクロアルキル」には、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、ヒドロキシ、アリール、アリールオキシ、アリールアルキル、シクロアルキル、アルキルアミド、アルカノイルアミノ、オキソ、アシル、アリールカルボニルアミノ、アミノ、ニトロ、シアノ、チオールおよび/またはアルキルチオおよび/または「置換アルキル」の定義に含まれる任意の置換基など、1つまたは複数の置換基で任意に置換されたシクロアルキル基が含まれる。例えば、
【0029】
【化10】

など。
【0030】
他に指示されない限り、それ自体または別の基の一部として本明細書に用いられる用語「アルケニル」とは、ビニル、2−プロペニル、3−ブテニル、2−ブテニル、4−ペンテニル、3−ペンテニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、2−ヘプテニル、3−ヘプテニル、4−ヘプテニル、3−オクテニル、3−ノネニル、4−デセニル、3−ウンデセニル、4−ドデセニル、4,8,12−テトラデカトリエニルなど、直鎖に1つまたは複数の二重結合を含む、直鎖に2個から20個の炭素、好ましくは2個から12個の炭素、より好ましくは2個から8個の炭素の直鎖状基または分枝状鎖基のことである。「置換アルケニル」には、上記の「置換アルキル」および「置換シクロアルキル」の定義に含まれる置換基など、1つまたは複数の置換基で任意に置換されたアルケニル基が含まれる。
【0031】
他に指示されない限り、それ自体または別の基の一部として本明細書に用いられる用語「アルキニル」とは、2−プロピニル、3−ブチニル、2−ブチニル、4−ペンチニル、3−ペンチニル、2−ヘキシニル、3−ヘキシニル、2−ヘプチニル、3−ヘプチニル、4−ヘプチニル、3−オクチニル、3−ノニニル、4−デシニル、3−ウンデシニル、4−ドデシニル、など、直鎖に1つまたは複数の三重結合を含む、直鎖に2個から20個の炭素、好ましくは2個から12個の炭素、より好ましくは2個から8個の炭素の直鎖状基または分枝状鎖基のことである。「置換アルキニル」には、上記の「置換アルキル」および「置換シクロアルキル」の定義に含まれる置換基など、1つまたは複数の置換基で任意に置換されたアルキニル基が含まれる。
【0032】
単独に、または別の基の一部として用いられる用語「アリールアルキル」、「アリールアルケニル」および「アリールアルキニル」とは、アリール置換基を有する上記のアルキル、アルケニルおよびアルキニルのことである。アリールアルキルの代表的な例としては、限定はしないが、ベンジル、1−フェニルエチルおよび2−フェニルエチル、2−フェニルプロピルおよび3−フェニルプロピル、ベンズヒドリルおよびナフチルメチルなどが挙げられる。「置換アリールアルキル」には、アリール部分が上記の「置換アルキル」および「置換シクロアルキル」の定義に含まれる置換基など、1つまたは複数の置換基で任意に置換されているアリールアルキル基が含まれる。
【0033】
単独に、または別の基の一部として本明細書に用いられる用語「ハロゲン」または「ハロ」とは、塩素、臭素、フッ素、およびヨウ素のことである。
【0034】
単独に、または別の基の一部として本明細書に用いられる用語「ハロゲン化アルキル」、「ハロゲン化アルケニル」および「ハロゲン化アルキニル」とは、塩素、臭素、フッ素、およびヨウ素から選択される1個または複数個の原子により置換されている「アルキル」、「アルケニル」および「アルキニル」のことである。
【0035】
他に指示されない限り、単独に、または別の基の一部として本明細書に用いられる用語「アリール」または「Ar」とは、環部分(例えば、フェニルまたは1−ナフチルおよび2−ナフチルなどのナフチル)に6個から10個の炭素を含有する単環式および多環式芳香族基のことであり、炭素環式環または複素環式環(アリール環、シクロアルキル環、ヘテロアリール環またはシクロヘテロアルキル環など)に縮合された1つから3つのさらなる環を任意に含むことができる。
【0036】
「置換アリール」には、ハロ、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、アルケニル、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロヘテロアルキル、シクロヘテロアルキルアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、アリールオキシ、アリールオキシアルキル、アリールアルコキシ、アルコキシカルボニル、アリールカルボニル、アリールアルケニル、アミノカルボニルアリール、アリールチオ、アリールスルフィニル、アリールアゾ、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、アミノ、アミノが1つまたは2つの置換基(定義において述べられたアルキル、アリールまたは任意の他のアリール化合物である)を含む置換アミノ、カルバモイル、アルキルカルバモイル、アミド化カルボキシ、アミド化カルボキシアルキル、アルキルアミド化カルボキシアルキル、チオール、アルキルチオ、アリールチオ、ヘテロアリールチオ、アリールチオアルキル、アルコキシアリールチオ、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アリールアミノカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、アリールスルフィニル、アリールスルフィニルアルキル、アリールスルホニルアミノまたはアリールスルホンアミノカルボニルおよび/または本明細書に記載されたアルキル置換基のいずれかなどの、1つまたは複数の官能基により任意に置換されたアリール基が含まれる。
【0037】
他に指示されない限り、本明細書に用いられる用語「複素環式」または「複素環」とは、飽和でも不飽和でもよく、炭素原子およびN、O、またはSから選択される1個から4個のヘテロ原子からなり、該窒素および該硫黄へテロ原子が任意に酸化されていてもよく、該窒素ヘテロ原子が、任意に四級化されていてもよい非置換または置換された安定な5員から10員の単環式環系を表す。複素環式環は、安定な構造の生成をもたらす任意のヘテロ原子または炭素原子に結合させることができる。このような複素環式基の例としては、限定はしないが、ピペリジニル、ピペラジニル、オキソピペラジニル、オキソピペリジニル、オキソピロリジニル、アゼピニル、オキソアゼピニル、ピロリル、ピロリジニル、フラニル、チエニル、ピラゾリル、ピラゾリジニル、イミダゾリル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、オキサゾリル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリル、イソオキサゾリジニル、モルホリニル、チアゾリル、チアゾリジニル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、テトラヒドロピラニル、チアモルホリニル、チアモルホリニルスルホキシド、チアモルホリニルスルホン、およびオキサジアゾリルが挙げられる。単独に、または別の基の一部として本明細書に用いられる用語「複素環式芳香族」とは、窒素、酸素または硫黄などの1個、2個、3個または4個のヘテロ原子を含む5員または7員の芳香族環であり、このような環は、アリール、シクロアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロシクロアルキル環(例えば、ベンゾチオフェニル、インドリル)に縮合された環のことであり、可能なN−オキシド類を含む。「置換ヘテロアリール」には、上記の「置換アルキル」および「置換シクロアルキル」の定義に含まれる置換基など、1つから4つの置換基で任意に置換されているヘテロアリール基が含まれる。ヘテロアリール基の例としては、以下の基:
【0038】
【化11】

などが挙げられる。
【0039】
式IIの化合物はまた、本発明の範囲内にある塩類として存在することができる。薬学的に許容できる(すなわち、非毒性、生理学的に許容できる)塩類が好ましい。式IIの化合物は、例えば、少なくとも1つの塩基性中心を有する場合、酸付加塩類を形成することができる。これらは、例えば、鉱酸類などの無機強酸類、例えば、硫酸、リン酸、塩酸と、あるいは、非置換であるか、または例えば、ハロゲンにより置換されている1個から4個の炭素原子のアルカンカルボン酸類などの有機強カルボン酸類、例えば酢酸と、飽和または不飽和ジカルボン酸類など、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸またはテレフタル酸と、ヒドロキシカルボン酸類など、例えば、アスコルビン酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸またはクエン酸と、アミノ酸類(例えば、アスパラギン酸またはグルタミン酸またはリシンまたはアルギニン)などと、もしくは安息香酸と、または非置換であるか、または例えば、ハロゲンにより置換されている(C1−C4)アルキルまたはアリールスルホン酸などの有機スルホン酸類、例えばメチルスルホン酸またはp−トルエン−スルホン酸とで形成される。所望ならば、さらに存在する塩基性中心を有する対応する酸付加塩類もまた形成することができる。少なくとも1つの酸性基(例えばCOOH)を有する式IIの化合物もまた、塩基類により塩類を形成することができる。塩基類との好適な塩類は、例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属塩類などの金属塩類、例えば、ナトリウム、カリウムもしくはマグネシウム塩類であるか、またはアンモニアもしくは、モルホリン、チオモルホリン、ピペリジン、ピロリジン、モノ、ジまたはトリ低級アルキルアミン、例えばエチルアミン、t−ブチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミンまたはジメチル−プロピルアミン、またはモノ、ジもしくはトリヒドロキシ低級アルキルアミン、例えばモノ、ジまたはトリエタノールアミンなどの有機アミンとの塩類である。対応する内部塩類をさらに形成することができる。製薬使用には不適切であるが、例えば、式IIの遊離化合物またはそれらの薬学的に許容できる塩類の単離または精製のために使用することができる塩類もまた含まれる。塩基性基を含有する式IIの化合物の好ましい塩類としては、モノ塩酸塩、硫酸水素塩、メタンスルホン酸塩、リン酸塩または硝酸塩が挙げられる。酸性基を含有する式IIの化合物の好ましい塩類としては、ナトリウム、カリウムおよびマグネシウム塩類ならびに薬学的に許容できる有機アミン類が挙げられる。
【0040】
本発明に用いられる用語「調節剤」とは、生物活性または生物過程(例えば、酵素活性または受容体結合)の機能性を増強させるか(例えば、「アゴニスト」活性)または阻害する(例えば、「アンタゴニスト」活性)能力を有する化学化合物のことであり;このような増強または阻害は、シグナル伝達経路の活性化など、特定の事象の発生に依存する可能性があり、そして/または特定の細胞型にのみ発現する可能性がある。
【0041】
本発明に用いられる用語「プロドラッグエステル類」には、アセテート類、ピバレート類、メチルカーボネート類、ベンゾエート類などを生成させるために、当業者に公知の手法を用いて式IIの化合物の1つまたは複数のヒドロキシルと、アルキル、アルコキシ、またはアリール置換アシル化剤とを反応させることによって形成されたイミン類、エステル類およびカーボネート類が含まれる。インビボで変換されて生物活性剤(すなわち、式IIの化合物)を提供できるいずれの化合物も、本発明の趣旨と範囲内にあるプロドラッグである。種々の形態のプロドラッグは当業界に周知である。プロドラッグおよびプロドラッグ誘導体の包括的な解説は:(1)The Practice of Medicinal Chemistry、Camille G.Wermuthら、31章、(Academic Press、1996年);(2)Design of Prodrugs、H.Bundgaardにより編集、(Elsevier、1985年);(3) A Textbook of Drug Design and Development、P.Krogsgaad−Larson and H.Bundgaard編集者、5章、113〜191頁(Harwood Academic Publishers、1991年)に記載されている。
【0042】
合成
本発明の式IIの化合物は、以下の反応スキームおよびそれらの説明、ならびに当業者により使用することができる関連出版文献の手法に示されたとおりに調製することができる。これらの反応のための代表的な試薬および手法は、下記の作業実施例に示される。
【0043】
【化12】

スキーム1に説明されるように、式A4の化合物は、適切な求電子試薬を用いて中間体A3から調製することができる。式A3の中間体は、N,N−ジメチルホルムアミドなどの適切な溶媒中、中間体A1およびA2を反応させることにより得ることができる。中間体A1およびA2は、市販品を得ることができるか、文献上で知られた方法により調製できるか、または当業者により容易に調製することができる。式A3の化合物を酸で処理して式A5の化合物を得ることができる。式A5の化合物をLawesson試薬で処理すると、式A6の化合物を得ることができる。
【0044】
【化13】

3−(トリフルオロメチル)ピリジン−N−オキシド、A8の合成
ジクロロメタン(2ml)中、3−(トリフルオロメチル)ピリジンA7(1.47g、10mmol)およびメチルトリオキソレニウム(0.0025g、0.01mmol)の混合物に、30%過酸化水素(4ml)を加えた。この混合物を室温で5時間攪拌した。少量のMnO(3mg)を加え、媒体をさらに1時間攪拌してから、ジクロロメタン(50ml)を加えた。媒体をブラインで洗浄し、MgSOで乾燥し、濃縮し、化合物A8(1.56g、9.6mmol、96%)を灰白色粉末として得た。
【0045】
【化14】

2−シアノ−3−(トリフルオロメチル)ピリジン、A9の合成
3−(トリフルオロメチル)ピリジン−N−オキシド、A8(1.3g、8mmol)のアセトニトリル溶液に、トリメチルシリルシアニド(0.99g、10mmol)およびトリエチルアミン(2.02g、20mmol)を加えた。この混合物を室温で24時間攪拌してから、飽和NaCOで洗浄し、ジクロロメタンで抽出した。有機層をMgSOで乾燥し、濃縮すると褐色残渣が得られ、これをクロマトグラフィー(EtOAc:ペンタン、1:2)に供した。化合物A9(0.715g、4.16mmol、52%)を淡黄色固体として得た。
【0046】
【化15】

2−シアノ−3−(トリフルオロメチル)−5−ニトロピリジン、A10の合成
1,2−ジクロロエタン中、A9(0.688g、4mmol)およびテトラメチルアンモニウム硝酸塩(1.09g、8mmol)の混合物に、無水トリフルオロ酢酸(1.68g、8mmol)を加えた。この混合物を密封し、60℃に48時間加熱した。この混合物を、飽和重炭酸ナトリウムで洗浄し、酢酸エチルで抽出した。有機層をMgSOで乾燥し、濃縮すると黄色残渣が得られ、これをクロマトグラフィー(EtOAc:ペンタン、1:4)に供して、化合物A10(0.095g、0.44mmol、11%)および残存する出発物質を得た。
【0047】
【化16】

2−シアノ−3−(トリフルオロメチル)−5−アミノピリジン、A11の合成
酢酸エチル(1ml)および酢酸(1ml)中、2−シアノ−3−(トリフルオロメチル)−5−ニトロピリジンA10(0.095g、0.44mmol)および鉄粉(0.112g、2mmol)の混合物を、15時間加熱した。固体粒子を、セライトを通してろ過し、ろ液を濃縮し、クロマトグラフィー(EtOAc:ペンタン、1:1)に供して、化合物A11(0.075g、0.4mmol、91%)を得た。
【0048】
【化17】

あるいは、2−シアノ−3−(トリフルオロメチル)−5−ニトロピリジンA10を、ラネー−Ni上で水素と反応させると、2−シアノ−3−(トリフルオロメチル)−5−アミノピリジン、A11を得ることができる。
【0049】
5−イソチオシアナト−3−トリフルオロメチルピリジン−2−カルボニトリル、A12の合成
水(2ml)中、2−シアノ−3−(トリフルオロメチル)−5−ニトロピリジン、A11(0.075g、0.4mmol)の不均一混合物に、チオホスゲン(50μl)を加えた。この混合物を2時間攪拌してから、水洗し、クロロホルムで抽出した。有機層をMgSOで乾燥し、濃縮すると化合物A12(0.087g、0.38mmol、95%)を得た。
【0050】
【化18】

1−(4−メチルフェニル)アミノシクロブタンニトリル、B1の合成
p−トルイジン(0.535g、5mmol)およびシクロブタノン(0.42g、6mmol)の混合物に、トリメチルシリルシアニド(0.93ml、7mmol)を滴下により加えた。反応混合物を室温で6時間攪拌してから、減圧濃縮すると褐色液体が得られ、これをクロマトグラフィー(ジクロロメタン)に供してB1(0.912g、4.9mmol、98%)を黄色固体として得た。
【0051】
5−(8−オキソ−6−チオキソ−5−(4−メチルフェニル)−5,7−ジアザスピロ[3.4]オクタ−7イル)−3−トリフルオロメチルピリジン−2−カルボニトリル、A51の合成
DMF(0.5ml)中、A12(0.057g、0.265mmol)およびB1(0.05g、0.265mmol)の混合物を、室温で24時間攪拌した。この混合物に、メタノール(2ml)および2N HCl水(1ml)を加えた。この第二の混合物を2時間還流した。室温に冷却後、反応混合物を冷水(10ml)に注ぎ、酢酸エチル(20ml)で抽出した。有機層をMgSOで乾燥し、濃縮し、クロマトグラフィー(ジクロロメタン)に供してA51(0.066g、0.159mmol、60%)を白色粉末として得た。
【0052】
【化19】

N−メチル−4−(1−シアノシクロブチルアミノ)−2−フルオロベンズアミド、B2
90%酢酸(20ml)中、N−メチル−4−アミノ−2−フルオロベンズアミド(1.68g、10mmol)およびシクロブタノン(1.4g、20mmol)の混合物に、シアン化ナトリウム(1.47g、30mmol)を加えた。反応混合物を、80℃で24時間攪拌した。混合物を水洗し、酢酸エチルで抽出した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下濃縮乾固した。この固体を、エチルエーテルおよびヘキサンの50:50混液(10ml)で洗浄すると、シクロブタノンシアノヒドリンが除去され、ろ過後B2(2.19g、8.87mmol、89%)を得た。
【0053】
【化20】

4−[7−(6−シアノ−5−トリフルオロメチルピリジン−3−イル)−8−オキソ−6−チオキソ−5,7−ジアザスピロ[3.4]オクタ−5−イル]−2−フルオロ−N−メチルベンズアミド、A52の合成
DMF(0.5ml)中、A12(0.03g、0.13mmol)およびB2(0.032g、0.13mmol)の混合物を、マイクロ波照射下、80℃で20時間加熱した。この混合物に、メタノール(2ml)および2N HCl水(1ml)を加えた。この第二の混合物を2時間還流した。室温に冷却後、反応混合物を冷水(10ml)に注ぎ、酢酸エチル(15ml)で抽出した。有機層をMgSOで乾燥し、濃縮し、クロマトグラフィー(ジクロロメタン:アセトン、95:5)に供してA52(0.022g、0.046mmol、35%)を白色粉末として得た。
【0054】
【化21】

スキーム3:A52の合成
他の実施形態において、本発明は、下記のA52を合成する方法に関する。幾つかの実施形態において、A52を合成するために実施例1〜8を連続して実施することができる。しかしながら、当業者なら認識されるであろうが、本発明は実施例1〜8の段階に限定されず、下記のステップと等価のステップもまた、本発明に包含される。当業者は、同様の方法論を利用して調製することのできるさらなる化合物を認識するであろう。
【0055】
3−(トリフルオロメチル)ピリジン−2(1H)−オン、2の合成
【0056】
【化22】

氷酢酸(50ml)および水(5ml)の混液中、2−クロロ−3−(トリフルオロメチル)ピリジン1(5.00g、27.54mmol)の溶液を7日間還流した。この混合物を水(100ml)で希釈し、約5から約6のpHに達するまで、6N NaOH水を加えた。この混合物を酢酸エチル(3×40ml)で抽出し、有機相を合わせて、NaSOで乾燥してから、全ての溶媒を減圧留去した。生じた残渣を酢酸エチルに溶解させ、ヘキサンを加えると生成物が沈殿した。ろ過後、3−(トリフルオロメチル)ピリジン−2(1H)−オン、2を、灰白色(4.16g、25.51mmol、93%)として得た。
【0057】
【化23】

5−ニトロ−3−(トリフルオロメチル)ピリジン−2(1H)−オン、3の合成
【0058】
【化24】

3−(トリフルオロメチル)ピリジン−2(1H)−オン2(2.00g、12.26mmol)および硫酸(HSO、3.5ml、30%)の混合物を90℃に加熱し、硝酸(HNO、2.5ml、65%)を加えた。この混合物を90℃で8時間撹拌し、追加の硝酸(1ml、65%)を加えた。この混合物を90℃でさらに6時間撹拌してから、氷(30ml)を入れてあるビーカーに注いだ。混合物を水(30ml)で希釈し、約4から約5のpHまで、6N NaOH水を加えた。この混合物を酢酸エチル(3×40ml)で抽出し、有機相を合わせて、NaSOで乾燥し、全ての溶媒を減圧留去した。残渣を酢酸エチルに溶解し、ヘキサンを加えることにより生成物を沈殿させた。ろ過後、5−ニトロ−3−(トリフルオロメチル)ピリジン−2(1H)−オン、3を、黄色粉末(1.58g、7.59mmol、62%)として得た。
【0059】
【化25】

2−クロロ−5−ニトロ−3−(トリフルオロメチル)ピリジン、4の合成
【0060】
【化26】

5−ニトロ−3−(トリフルオロメチル)ピリジン−2(1H)−オン、3(1.50g、7.21mmol)、POCl(2.76g、18.02mmol)およびPCl(1.4g、10.09mmol)の混合物を、約110〜120℃に8時間加熱してから氷水に注ぐ。この混合物を、固体NaHCOで中和し、酢酸エチル(3×40ml)で抽出する。有機相を合わせて、NaSOで乾燥し、全ての溶媒を減圧留去すると2−クロロ−5−ニトロ−3−(トリフルオロメチル)ピリジン4を得る。
【0061】
6−クロロ−5−(トリフルオロメチル)ピリジン−3−アミン、5の合成
【0062】
【化27】

2−クロロ−5−ニトロ−3−(トリフルオロメチル)ピリジン4(1.57g、6.93mmol)を、テトラヒドロフラン(THF)(10ml)に溶解させ、ラネー−Ni(200mg)のTHF(20ml)懸濁液に加える。水素ガスを、バルーンを用いて24時間攪拌溶液を通過させて緩やかに発泡させる。混合物をCelite(登録商標)(World Minerals社、ロンポック、カリフォルニア州)を通してろ過し、溶媒を減圧留去すると6−クロロ−5−(トリフルオロメチル)ピリジン−3−アミン5を得る。
【0063】
1,1−ジメチルエチルカルバメートN−6−クロロ−5−(トリフルオロメチル)ピリジン−3−イル、6の合成
【0064】
【化28】

粗製6−クロロ−5−(トリフルオロメチル)ピリジン−3−アミン5(1.3gの粗製物、6.61mmol)をピリジン(10ml)に溶解し、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)(50mg)を加える。ジ−t−ブチルジカーボネート(2.17g)を滴下により加え、混合物を22℃で4時間攪拌する。トルエン(20ml)を加え、全ての溶媒を減圧留去する。残渣をシリカゲルのプラグを通してろ過すると(ヘキサン/酢酸エチル2:1)、t−ブチルN−6−クロロ−5−(トリフルオロメチル)ピリジン−3−イルカルバメート6を得る。
【0065】
5−アミノ−3−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−カルボニトリル、8の合成
【0066】
【化29】

粗製t−ブチルN−6−クロロ−5−(トリフルオロメチル)ピリジン−3−イルカルバメート6(2.4g、6.61mmol)を、ジメチルアセトアミド(DMA)(25ml)に溶解し、フェナントロリン(120mg、0.66mmol)を加える。この混合物を80℃に加熱し、KCN(0.47g、7.27mmol)を加える。混合物を10分間攪拌後、CuCN(118mg、0.13mmol)を加え、混合物を110℃で2時間攪拌した。冷却混合物を、リン酸緩衝液(150ml、pH7)に注ぎ、酢酸エチル(50ml)を加え、混合物をCelite(登録商標)を通してろ過する。層を分離し、水相を酢酸エチル(3×40ml)で抽出する。有機相を合わせて飽和NaCl水(4×30ml)で洗浄し、NaSOで乾燥し、全ての溶媒を減圧留去すると粗製N−t−ブトキシカルボニルニトリル7を得た。
【0067】
粗製N−t−ブトキシカルボニルニトリル7をジクロロメタン(20ml)に溶解し、トリフルオロ酢酸(TFA)(4ml)を加える。混合物を3時間攪拌し、留去する。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル2:1)により精製して5−アミノ−3−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−カルボニトリル8を得る。
【0068】
5−イソチオシアナト−3−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−カルボニトリル、9の合成
【0069】
【化30】

5−アミノ−3−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−カルボニトリル8(1.141g、6.1mmol)をクロロホルム(5ml)と水(40ml)とに混合すると白色懸濁液を得る。チオホスゲン(0.701ml、9.15mmol)を加え、反応液を22℃で2時間攪拌すると澄明な2相系を得る。クロロホルム(20ml)を加え、相を分離する。水層をクロロホルム(30ml)で抽出し、有機層を合わせて飽和NaHCO水と水とで洗浄し、MgSOで乾燥し、溶媒を減圧留去する。粗製5−イソチオシアナト−3−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−カルボニトリル9を減圧乾燥し、これを次の段階、例えば、下記の実施例8に記載された段階に用いる。
【0070】
4−(7−(6−シアノ−5−(トリフルオロメチル)ピリジン−3−イル)−8−オキソ−6−チオキソ−5,7−ジアザスピロ[3.4]オクタン−5−イル)−2−フルオロ−N−メチルベンズアミド11、A52の合成
【0071】
【化31】

粗製5−イソチオシアナト−3−(トリフルオロメチル)ピコリノニトリル9(1.390g、6.07mmol)を、50mL丸底フラスコに入れ、4−(1−シアノシクロブチルアミノ)−2−フルオロ−N−メチルベンズアミド10(0.5g、2.022mmol)をフラスコに加える。この混合物を減圧下(油ポンプを用いる)に1時間置く。N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(6ml)を加え、アルゴン下、フラスコをストッパーにより密封し、CEMマイクロ波反応器中で80℃に20時間加熱する。メタノール(10ml)および2N HCl(6ml)を加え、混合物を2時間還流する。混合物を水(30ml)で希釈し、飽和NaHCO(30ml)水を加える。混合物を酢酸エチル(3×20ml)で抽出する。
【0072】
有機相を合わせて飽和NaCl水(20ml)で洗浄し、NaSOで乾燥し、ろ過し、減圧濃縮する。粗製物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/アセトン95:5)により精製して4−(7−(6−シアノ−5−(トリフルオロメチル)ピリジン−3−イル)−8−オキソ−6−チオキソ−5,7−ジアザスピロ[3.4]オクタン−5−イル)−2−フルオロ−N−メチルベンズアミド11を得る。
【0073】
スキーム4:A52の合成
実施例1:2−ブロモ−5−ニトロ−3−(トリフルオロメチル)ピリジン、21の合成
【0074】
【化32】

5−ニトロ−3−(トリフルオロメチル)ピリジン−2(1H)−オン3は、上記スキーム3の実施例1および2に提供されたルートにより得られる。
【0075】
5−ニトロ−3−(トリフルオロメチル)ピリジン−2(1H)−オン3、POBr(1.5当量)、PBr(4当量)、およびBr(2当量)の混合物を、約90〜110℃に加熱してから氷水に注ぐ。混合物を中和し、抽出する。有機相を合わせてNaSOで乾燥し、全ての溶媒を減圧留去すると2−ブロモ−5−ニトロ−3−(トリフルオロメチル)ピリジン21を88%の収率で得る。
【0076】
あるいは、POBrの代わりにPOClを用いて6:1以上の臭素対塩素比率の置換基を有する混合生成物を得る。
【0077】
5−ニトロ−3−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−カルボニトリル、22の合成
【0078】
【化33】

粗製2−ブロモ−5−ニトロ−3−(トリフルオロメチル)ピリジン21をジメチルアセトアミド(DMA)に溶解し、フェナントロリン(0.2当量)を加える。混合物を160℃に加熱し、CuCN(2当量)を加える。この混合物を40分間攪拌する。クロマトグラフィーを実施すると5−ニトロ−3−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−カルボニトリル22を67%の収率で得る。
【0079】
5−アミノ−3−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−カルボニトリル、8の合成
【0080】
【化34】

酢酸中、5−ニトロ−3−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−カルボニトリル22および鉄粉の混合物を加熱する。5−アミノ−3−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−カルボニトリル、8が91%の収率で得られる。
【0081】
4−(7−(6−シアノ−5−(トリフルオロメチル)ピリジン−3−イル)−8−オキソ−6−チオキソ−5,7−ジアザスピロ[3.4]オクタン−5−イル)−2−フルオロ−N−メチルベンズアミド11、A52の合成
5−アミノ−3−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−カルボニトリル8を、上記スキーム3の実施例7に検討されたとおりに処理し、5−イソチオシアナト−3−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−カルボニトリル9を得る。
【0082】
5−イソチオシアナト−3−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−カルボニトリル、9は、上記スキーム3の実施例8に検討されたとおり、4−(1−シアノシクロブチルアミノ)−2−フルオロ−N−メチルベンズアミド10と反応させ、4−(7−(6−シアノ−5−(トリフルオロメチル)ピリジン−3−イル)−8−オキソ−6−チオキソ−5,7−ジアザスピロ[3.4]オクタン−5−イル)−2−フルオロ−N−メチルベンズアミド11(A52)を得る。
【0083】
スキーム5:A52の代わりの合成
3−(トリフルオロメチル)−5−イソチオシアナトピリジン−2−カルボニトリル(A)
【0084】
【化35】

N−ヨードスクシンイミド(NIS)、アセトニトリル、およびジメチルホルムアミド(DMF)の混合物中の2−ヒドロキシ−3−(トリフルオロメチル)ピリジンCの溶液を、80℃で2時間加熱し、2−ヒドロキシ−3−トリフルオロメチル−5−(ヨード)ピリジンI(80%超の収率)を生成する。次にDMF中、2−ヒドロキシ−3−トリフルオロメチル−5−(ヨード)ピリジンIをPOClと混合し、マイクロ波中130℃に20分間加熱し、2−クロロ−3−トリフルオロメチル−5−(ヨード)ピリジンJ(50%から55%の収率)を生成する。2−クロロ−3−トリフルオロメチル−5−(ヨード)ピリジンKを、トルエン中の、pMBnNH、パラジウム(II)アセテート、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(BINAP)、トリエチルアミン、および炭酸セシウムの溶液中で反応させて、5−((4−メトキシフェニル))メチルアミノ)−2−クロロ−3−(トリフルオロメチル)ピリジンK(40%の収率)を生成する。5−((4−メトキシフェニル))メチルアミノ)−2−クロロ−3−(トリフルオロメチル)ピリジンKを、DMF中の、シアン化亜鉛、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(Pd(dba))、および1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(dppf)の溶液中で反応させて、5−(4−メトキシベンジルアミノ)−2−シアノ−3−(トリフルオロメチル)ピリジンK(92%の収率)を得る。5−(4−メトキシベンジルアミノ)−2−シアノ−3−(トリフルオロメチル)ピリジンKを、ジクロロメタンおよびトリフルオロ酢酸の溶液中で反応させて2−シアノ−3−トリフルオロメチル−5−(アミノ)ピリジンH(95%超の収率)を得る。2−シアノ−3−トリフルオロメチル−5−(アミノ)ピリジンHを、水中のチオホスゲンと25℃で2時間反応させて5−イソチオシアナト−3−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−カルボニトリルA(74%から95%の収率)を得る。
【0085】
4−(1−シアノシクロブチルアミノ)−2−フルオロ−N−メチルベンズアミド中間体Bの合成
【0086】
【化36】

メチルアミンおよびテトラヒドロフラン(THF)の溶液中、2,4−ジフルオロ−ベンゾイルクロリドDの溶液を反応させて、2,4−ジフルオロ−N−メチルベンズアミドM(定量的収率)を生成する。2,4−ジフルオロ−N−メチルベンズアミドMを、アセトニトリルおよび4−メトキシ−ベンゼンメタナミンの溶液と混合し、マイクロ波中190℃で20分間加熱すると2−フルオロ−4−(4−メトキシベンジルアミノ)−N−メチルベンズアミドS (40%の収率)が生成する。2−フルオロ−4−(4−メトキシベンジルアミノ)−N−メチルベンズアミドSを、ジクロロメタンおよびトリフルオロ酢酸の溶液中で反応させて2−フルオロ−4−アミノ−N−メチルベンズアミドT (95%超の収率)を生成させた。2−フルオロ−4−アミノ−N−メチルベンズアミドTを、シアン化ナトリウムおよびシクロブタノンの溶液と反応させて4−(1−シアノシクロブチルアミノ)−2−フルオロ−N−メチルベンズアミドBを生成させる。
【0087】
AとBとのカップリングによる4−(7−(6−シアノ−5−(トリフルオロメチル)ピリジン−3−イル)−8−オキソ−6−チオキソ−5,7−ジアザスピロ[3.4]オクタン−5−イル)−2−フルオロ−N−メチルベンズアミド、A52の生成
【0088】
【化37】

DMF溶液中、5−イソチオシアナト−3−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−カルボニトリル、9、Aを、4−(1−シアノシクロブチルアミノ)−2−フルオロ−N−メチルベンズアミドBとマイクロ波中80℃で20時間加熱することにより反応させる。次にメタノールおよび塩酸を加え、反応を2時間進行させると、4−(7−(6−シアノ−5−(トリフルオロメチル)ピリジン−3−イル)−8−オキソ−6−チオキソ−5,7−ジアザスピロ[3.4]オクタン−5−イル)−2−フルオロ−N−メチルベンズアミド、A52(35%から87%の収率)が生成する。
【0089】
活性
有用性
本発明の化合物は、核ホルモン受容体、特にアンドロゲン受容体の機能を調節し、例えば、アンドロゲン受容体(AR)の選択的アゴニストまたは選択的アンタゴニストである化合物を含む。したがって本発明は、AR関連病態の治療に有用である。本明細書に用いられる「AR関連病態」とは、被験体におけるARの機能または活性を調節することによって治療することができる病態または障害を意味し、治療は病態または疾患の予防、部分的緩和または治癒を含む。調節は、例えば、被験体のある一定の組織内で局所的に、またはこのような病態または障害に関して治療を受けている被験体の全身に亘ってより広範に生じ得る。強力なアンタゴニスト活性を有する化合物を、アンドロゲン関連前立腺癌の治療に使用することが好ましい。
【0090】
併用
本発明はその範囲内に、活性成分として、単独でのまたは製薬用担体または希釈剤と組合わせた式IIの少なくとも1種の化合物の治療的有効量を含む製薬組成物を含む。場合によっては、本発明の化合物を、単独で、本発明の他の化合物と併用して、または1種または複数種の他の治療薬、例えば、抗生物質または他の薬学的に活性な物質と併用して使用することができる。
【0091】
薬理学的アッセイ
本発明の化合物は、アンタゴニストおよびアゴニスト活性に関してホルモン感受性およびホルモン治療抵抗性前立腺癌細胞をスクリーニングすることにより同定された。アンタゴニスト活性を有する化合物は、ホルモン感受性およびホルモン治療抵抗性双方の前立腺癌の治療に関して可能性のある薬物である。
【0092】
式IIの化合物の生物活性は、前立腺特異的抗原(PSA)の分泌レベルにより測定された。PSAレベルが、前立腺癌におけるAR活性の指標であることは十分に確立されている。該化合物が、生理的環境下でAR機能に影響を及ぼすかどうかを調べるために、我々は、ホルモン感受性(HS)およびホルモン治療抵抗性(HR)癌細胞においてR1881により誘導された内因性PSAの分泌レベルを測定した。HR細胞は、ARが高度に発現される場合にアゴニスト性を獲得するビカルタミドなど、現在の抗アンドロゲン類を服用している間に再発するHR癌患者に見られるレベルと類似した、高レベルのアンドロゲン受容体タンパク質(LNCaP/AR細胞)を発現させるため操作されたLNCaP細胞である。LNCaP細胞(またはLNCaP/AR細胞)は、10%FBSを含有するイスコーブ(Iscove)培地中に維持された。薬物処置5日前に、アンドロゲンを取り除くために、該細胞を10%CS−FBSを含有するイスコーブ培地中で増殖させた。適切な濃度のR1881および試験化合物と共に10%CS−FBSを含有するイスコーブ培地中で細胞は分裂し、増殖した。インキュベーション5日後、PSA ELISAキット(American Qualex、サンクレメンテ、カリフォルニア州)を用いて分泌PSAレベルをアッセイした(図1および図3を参照)。式IIの化合物の増殖阻害を調べるために、MTSアッセイもまた用いた(図2を参照)。
【0093】
薬物動態学的データ
Charles River Laboratoriesから購入した8週齢のFVBマウスを用いてA52の薬物動態をインビボで評価した。各時点でマウスを3匹の群に分けた(図4を参照)。2匹のマウスは薬物で処置せず、他の2匹のマウスはビヒクル溶液で処置した。各群は、体重1キログラム当り10mgで処置された。薬物を、DMSO:カルボキシメチルセルロース:Tツイーン80:HO(ビヒクル溶液)の50:10:1:989の混合物中に溶解し、経口投与した。薬物投与後、動物を、1分、5分、15分、30分、2時間、4時間、8時間、16時間の異なる時点で、COの吸入により安楽死させた。COへの暴露直後に、動物を心臓穿刺(1ml BDシリンジ+27G 5/8針)を介して放血させた。
薬物濃度を決定するために血清サンプルをAlltima C18カラム(3μ、150mm×4.6mm)を具備したHPLC(Waters 600ポンプ、Waters 600コントローラーおよびWaters 2487検出器を備える)により分析した。全てのRD化合物は254nm波長で検出し、ビカルタミドは270nm波長で検出した。
【0094】
HPLC分析用サンプルは、以下の手法に従って調製された:
−血液細胞を遠心分離により血清から分離した。
【0095】
−400μlの血清に、内部基準としてアセトニトリル中10μM溶液のRD75の80μlおよび520μlのアセトニトリルを加えた。
【0096】
−この混合物を3分間攪拌してから、30分間超音波下に置いた。
【0097】
−固体粒子をろ過するか、または遠心分離により分離した。
【0098】
−ろ液をアルゴン流下で蒸発乾固した。サンプルをアセトニトリルで80μlに再構成してから、HPLCにより分析して薬物濃度を決定した。
【0099】
−薬物の標準曲線を用いて精度を改善した。
【0100】
インビボアッセイ
全ての動物実験は、ロスアンジェルスのカリフォルニア大学動物リサーチ委員会のガイドラインに従って実行された。動物は、Taconicから購入し、規定されたフローラコロニー中の層流タワーに維持された。LNCaP−ARおよびLNCaP−ベクター細胞を、10% FBSで補足されたRPMI培地に維持した。1:1のRPMI対マトリゲル(Matrigel)100μl中の10細胞を、無処置または去勢オスSCIDマウスの側腹部に皮下注射した。腫瘍サイズが凡そ100mmに達したら、マウスを処置群に無作為化した。毎日10mg/kgの用量で薬物を経口投与した(図5および図6を参照)。化合物A51およびA52は、毎日10mg/kgの用量で腫瘍成長を完全に抑制することが判明した。
【0101】
他の用量もまた試みられた。化合物A51およびA52は、毎日の用量が1 mg/kgで緩和な効果を有することが判明した。化合物A51およびA52は、毎日の用量が25〜50mg/kgで何らかの腫瘍細胞毒性を誘導することが判明した。
【0102】
前立腺癌細胞系を異種移植片に対して用いた。例えば、LNCaP異種移植片、LAPC4異種移植片、LAPC9異種移植片、およびこれら細胞系のホルモン治療抵抗性対応物の異種移植片が作られた。他の細胞系は、V−cap、CWR22およびLAPC4細胞系を含んだ。アンドロゲン受容体を過剰発現する2つの細胞系、LNCaP ARおよびLAPC4 ARが産出された。これら操作細胞系における前立腺癌の進行は、それらの親の対応物とは異なることが判明した。アンドロゲン消失下、LNCaP ARおよびLAPC4 AR系の増殖は継続し、したがってホルモン治療抵抗性細胞と同様な挙動を示した。
【0103】
幾つかの細胞系は、異種移植された場合の腫瘍形成においてマウスでの取込みが十分でないことが判明した。しかしながら、LNCaPでは、2百万の細胞で95%の取込みが成された。百万と少ない細胞数を使用することができる。これらの細胞は、少なくとも25%で50%以下のマトリゲルを必要とした。良好な腫瘍取込み率のためには高濃度の細胞を必要とするので、27G針が、最も小さく適切な針であることが判明した。
【0104】
LAPC4細胞系は、動物で増殖することが極めて困難であることが判明した。これらの細胞は大型の凝集体をしばしば形成することから、細胞を再懸濁し、ミクロンメッシュフィルター、例えば、40〜100ミクロンメッシュフィルターを通してろ過する必要がある。再懸濁およびフィルターを通す操作は、各動物間で細胞数を正規化するのに役立ち、したがってより一貫性のある結果が得られる。LAPC4は、約25%〜50%のマトリゲル、例えば、50%のマトリゲルを必要とするが、10細胞のより低い濃度でも首尾よく移植することができる。
【0105】
SCIDマウスへの腫瘍取込みは、ヌードマウスよりも良好であることが判明した。例えば、ヌードマウスにおける腫瘍取込みは、個々の動物の間で全く一貫性のないことが判明した。CB17 SCIDマウスをこの試験に用いた。
【0106】
マウスの右側腹部に皮下注射した。緩徐な注射によって、測定がより容易であり、より正確に測定され得る球形腫瘍を生み出すのに役立つことが判明した。さらにマトリゲルの使用のため、200μl以下の注射が適切であることが判明した。100〜200μlの注射が適切であることが判明した。容量の大き過ぎる注射は、針の引抜きの際に漏れの原因となった。
【0107】
針の引抜きからの漏れを防止するのに役立つ代わりの方法として、マトリゲル:媒体:細胞で満たされたシリンジを2、3秒間温めてゲル様形態を生成することが考えられる。このゲル様液体を注入すれば、漏れが生じないはずである。しかしながら、マトリゲルを長時間加熱し過ぎると、この懸濁液が固化を引き起こし、注射不能となり得る。
【0108】
製薬組成物および投与
本発明の化合物は、本明細書に定義された本発明の化合物の治療的有効量および薬学的に許容できる担体または希釈剤により調製された製薬組成物として有用である。
【0109】
本発明の化合物は、製薬組成物として製剤化することができ、選択された投与経路、例えば、経口、経鼻、腹腔内、または静脈内、筋肉内、局所もしくは皮下経路、または組織内への注射による非経口的に適合された種々の形態で、治療を必要とする被験体、例えば、ヒト患者などの哺乳動物に投与することができる。このような組成物および製剤には、少なくとも0.01%の本発明の1つまたは複数の化合物を含有する必要がある。該組成物および製剤のパーセンテージは、もちろん変わる可能性があり、例えば、所与の単位剤形重量の約0.05%から約2%の間にあり得る。このような治療的に有用な組成物中の化合物量は、有効な投薬レベルが得られるようなものとする。
【0110】
したがって、本発明の化合物は、例えば、不活性希釈剤または同化できる食用担体などの薬学的に許容できるビヒクルと組合わせて経口的に、または吸入もしくはガス注入により全身に投与することができる。該化合物は、ハードまたはソフトシェルゼラチンカプセルに封入されてもよく、あるいは錠剤に圧縮されてもよく、あるいは患者の食事の食物に直接組み込まれてもよい。経口治療投与に関して、該化合物を、1種または複数種の賦形剤と組合わせることができ、摂取可能な錠剤、バッカル錠剤、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、カシェ剤などの形態で使用することができる。該化合物を不活性微粉末担体と組合わせて、被験体により吸入させるか、またはガス注入させることができる。このような組成物および製剤は、少なくとも0.1%の本発明の1つまたは複数の化合物を含有する必要がある。該組成物および製剤のパーセンテージは、もちろん変わる可能性があり、好適には、所与の単位剤形重量の約2%から約60%の間にあり得る。このような治療的に有用な組成物中の化合物量は、有効な投薬レベルが得られるようなものとする。
【0111】
錠剤、トローチ剤、丸剤、カプセル剤などはまた、以下のものを含有することができる。すなわち、トラガカントゴム、アラビアゴム、トウモロコシ澱粉、またはゼラチンなどの結合剤;リン酸二カルシウムなどの賦形剤;トウモロコシ澱粉、ジャガイモ澱粉、アルギン酸などの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤;およびショ糖、フルクトース、乳糖、またはアスパルテームなどの甘味剤、またはペパーミント、ウインターグリーン油、もしくはサクラフレーバリングなどの風味剤を添加することができる。単位剤形がカプセル剤である場合、上記のタイプの物質に加えて植物油またはポリエチレングリコールなどの液体担体を含有することができる。種々の他の物質は、コーティング剤として存在することができるか、または他に、固形単位剤形の物理的形態を改変することができる。例えば、錠剤、丸剤、またはカプセル剤は、ゼラチン、ワックス、セラック、糖などでコーティングすることができる。シロップ剤またはエリキシル剤は、活性化合物、甘味剤としてショ糖またはフルクトース、防腐薬としてメチルパラベンおよびプロピルパラベン、色素、ならびにサクラまたはオレンジ香料などの香料を含有することができる。もちろん、任意の単位剤形を調製するのに用いられるいずれの物質も薬学的に許容でき、使用される量で実質的に非毒性である必要がある。さらに、本発明の化合物を、徐放性製剤およびデバイスに組み込むことができる。例えば、該化合物を、限時放出カプセル剤、限時放出錠剤、および限時放出丸剤に組み込むことができる。
【0112】
本発明の化合物はまた、注入または注射により静脈内または腹腔内に投与することができる。該化合物の液剤を、非毒性界面活性剤と任意に混合された水中で調製することができる。分散剤もまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール類、トリアセチン、およびそれらの混液中、ならびに油中で調製することができる。通常の貯蔵および使用条件下で、これらの製剤は、微生物の増殖を防止するために防腐剤を含有することができる。
【0113】
注射または注入に好適な製薬剤形としては、場合によってはリポソーム中に封入された、滅菌注射液または滅菌注入液剤または滅菌注射分散剤または滅菌注入分散剤の即時調製用に適合されている、本発明の化合物を含む滅菌水性液剤または分散剤または滅菌粉剤を挙げることができる。全ての場合で、最終剤形は、製造および貯蔵条件下、滅菌され、流動性でかつ安定である必要がある。液体担体またはビヒクルは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール類など)、植物油類、非毒性グリセリルエステル類、およびそれらの好適な混液を含む溶剤または液体分散媒体であり得る。適切な流動性は、例えば、リポソームの形成により、分散剤の場合には必要な粒径の維持により、または界面活性剤の使用により維持することができる。種々の抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン類、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによって、微生物作用の防止をもたらすことができる。多くの場合、等張化剤、例えば、糖類、緩衝剤、または塩化ナトリウムを含むことが好ましいと言える。注射用組成物の持続性吸収は、組成物中に吸収を遅延させる試剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを使用することによってもたらすことができる。
【0114】
滅菌注射用液剤は、適宜、上記に示された種々の他の成分を有する適切な溶媒中に必要とされる量の本発明の化合物を組み込み、次いでフィルター滅菌により調製される。滅菌注射用液剤調製のための滅菌散剤の場合、好ましい調製法は、真空乾燥および凍結乾燥技法であり、これらの方法により、予め滅菌ろ過されたろ液中に存在する活性成分プラス任意のさらなる所望の成分の散剤を得る。
【0115】
局所投与に関しては、本発明の化合物を純粋形態で適用することができる。しかしながら一般的には、固体または液体であり得る皮膚科的に許容できる担体と組合わせた組成物または製剤として皮膚に投与することが望ましいと言える。
【0116】
有用な固体担体としては、タルク、クレー、微結晶性セルロース、シリカ、アルミナなどの微粉固体が挙げられる。他の固体担体としては、非毒性ポリマーナノ粒子またはミクロ粒子が挙げられる。有用な液体担体としては、水、アルコール類、またはグリコール類または水/アルコール/グリコール混液が挙げられ、これらの中には本発明の化合物を、場合によっては、非毒性界面活性剤の補助により、有効な濃度で溶解または分散させることができる。所与の使用に対する性質を最適化するために、芳香剤および追加の抗菌剤などのアジュバントを添加することができる。得られた液体組成物を吸収性パッドから適用するか、絆創膏および他の包帯を含浸させるために用いるか、またはポンプタイプまたはエアゾール噴霧器を用いて患部にスプレーすることができる。
【0117】
合成ポリマー類、脂肪酸類、脂肪酸塩類およびエステル類、脂肪族アルコール類、修飾セルロース類、または修飾無機物などの増粘剤もまた、使用者の皮膚に直接適用するために、液体担体と共に使用して塗布可能なペースト、ゲル、軟膏、石鹸などを形成することができる。
【0118】
本発明の化合物を皮膚に送達させるために使用することができる有用な皮膚科用組成物の例は、当業界に知られており;例えば、Jacquetら(米国特許第4,608,392号)、Geria(米国特許第4,992,478号)、Smithら(米国特許第4,559,157号)、およびWortzman(米国特許第4,820,508号)を参照されたい。これらの全ては、参照として本明細書に援用されている。
【0119】
式IIの化合物の有用な投薬量は、それらのインビトロ活性を比較することにより、および動物モデルにおいてそれらのインビボ活性を比較することにより判定することができる。マウスおよび他の動物における有効な投薬量のヒトへの外挿法は、当業界に知られており;例えば、参照として本明細書に援用されている米国特許第4,938,949号を参照されたい。
【0120】
例えば、ローションなどの液体組成物中の化合物濃度は、約0.1重量%から約25重量%、または約0.5重量%から約10重量%であり得る。ゲルまたは粉末などの半固体または固体組成物中の濃度は、約0.1重量%から約5重量%、または約0.5重量%から約2.5重量%であり得る。
【0121】
治療使用に必要な本発明の化合物の量は、選択された個々の塩によるのみならず、投与経路、治療を受ける病態の性質、ならびに患者の年令および病態により変わり、最終的には担当医または臨床医の裁量に任せられる。
【0122】
本発明の薬剤の有効な投薬量および投与経路は従来どおりである。薬剤の正確な量(有効用量)は、例えば、被験体の種、年令、体重、および全身状態または臨床状態、治療を受ける障害の重症度または機序、使用される個々の薬剤またはビヒクル、投与方法および投与スケジュールなどに依って被験体ごとに変わり得る。治療的有効用量は、当業者に公知の従来法によって経験的に判定することができる。例えば、The Pharmacological Basis of Therapeutics、編集者Goodman and
Gilman、Macmillian出版社、ニューヨークを参照されたい。例えば、有効用量は、先ず細胞培養アッセイまたは好適な動物モデルにおいて、最初に算出することができる。動物モデルは、適切な濃度範囲および投与経路を判定するために使用することもできる。次いでこのような情報を、ヒトにおける有用な用量および投与経路を判定するために使用することができる。治療用量は、比較的可能な治療薬に関する用量との類比により選択することもできる。
【0123】
個々の投与様式および投与計画は、症例の詳細(例えば、被験体、疾患、関与している疾患状態、および処置が予防的であるかどうか)を考慮に入れて、担当医によって選択される。処置は、2、3日から数ヶ月、またはさらに複数年の期間に亘って化合物の毎日1回または複数回の用量を含むことができる。
【0124】
しかしながら一般に、好適な用量は、1日当り約0.01mg/kgから約500mg/kgの範囲、例えば、1日当りレシピエントの体重1キログラムにつき約0.1mgから約100mgなど、1日当り約0.1mg/体重1kgから約500mg/体重1kgの範囲である。例えば、好適な用量は、1日当り約1mg/体重1kg、10mg/体重1kg、または50mg/体重1kgであり得る。
【0125】
本発明の化合物を、例えば、1単位剤形当り約0.0005mgから約500mg、約0.01mgから約50mg、約0.05mgから約10mg、または約5mgの活性成分を含有する単位剤形で投与するのが好適である。
【0126】
本発明の化合物を投与して、例えば、0.5μMから約75μM、約1μMから50μM、約2μMから約30μM、または約5μMから約25μMの最高血漿中濃度を達成することができる。代表的な所望の血漿中濃度としては、少なくとも0.25、0.5、1、5、10、25、50、75、100もしくは200μM、または0.25、0.5、1、5、10、25、50、75、100もしくは200μM以下が挙げられる。これは、例えば、場合によっては生理食塩水中で、本発明の化合物の0.05%から5%溶液の静脈内注射により達成することができるか、または約1〜1000mgの化合物を含有するボーラスとして経口投与することができる。所望の血中濃度を連続注入により維持して、約0.0005mg/体重1kg/時間から25mg/体重1kg/時間、例えば、少なくとも0.0005、0.005、0.05、0.5、5、もしくは25mg/体重1kg/時間、または0.0005、0.005、0.05、0.5、5、もしくは25mg/体重1kg/時間以下を提供することができる。あるいは、このような濃度は、体重1kg当り約0.002mgから約100mg、例えば、少なくとも体重1kg当り0.002、0.02、0.2、2、20、50、もしくは100mg、または体重1kg当り0.002、0.02、0.2、2、20、50、もしくは100mg以下の化合物を含有する間欠的注入により得ることができる。
【0127】
本発明の化合物は、好適には単一用量で、または適切な間隔、例えば、1日当り2回、3回、4回またはそれ以上の副用量で投与される分割用量として提供され得る。この副用量自体を、例えば、注入器からの複数回吸入など、多くの離散的で大雑把な間隔での投与にさらに分けることができる。
【実施例】
【0128】
実施例:静脈内用製剤
本明細書に開示された化合物、例えば、化合物A51またはA52は、静脈内投与に好適な製剤中に存在することができる。一実施形態において、化合物を約10%から約25%のジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解する。次に1×リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を、バランスとして溶液に混合し、この溶液を、均質になるまで水浴ソニケーターで音波処理する。
【0129】
1.5mg/mLの化合物濃度で、5分の音波処理は、化合物を溶解するのに十分であると考えられる。2mg/mlの化合物濃度では、化合物を溶解するのに5分超の音波処理が必要であると考えられ、ポリエチレングリコールを加えて懸濁液中に化合物を維持することができる。例えば、5〜10% PEG−400などの5%から40% PEG−400(ポリエチレングリコール)を添加することができる。
【0130】
A51またはA52のいずれかを含む上記溶液は、室温で少なくとも1週間安定であることが判明した。
【0131】
投与前に、上記溶液は、2、3分間音波処理する必要がある。マウスに対して適切な最大投与容量は、0.2mLであることが判明した。
【0132】
マウスに投与された場合、注射部位周囲の皮膚の硬化および皮膚刺激が見られ、これはDMSOの使用に起因すると考えられた。化合物A51およびA52はエタノールに溶解するが、エタノールは、インビボで化合物の安定性を低下させることが判明した。
【0133】
上記溶液の投与2週後の期間に亘って、マウスに15%の体重減少が見られた。
【0134】
実施例:経口用製剤
本明細書に開示された化合物、例えば、化合物A51またはA52は、経口投与に好適な製剤中に存在することができる。一実施形態において、化合物を100%DMSOに溶解させる。
【0135】
カルボキシメチルセルロース、ポリソルベート、または水など、さらなる化学物質を添加することができる。例えば、A51またはA52以外の溶液成分は、約10%から約20%のDMSO、約1%から約2%のカルボキシメチルセルロース(CMC)、0.1%のツイーン80(ポリソルベート)の濃度で存在し得、水をバランスとする。経口基材中の化合物A51またはA52の濃度は、約1.5mg/mLであり得る。この溶液は、少なくとも30秒間機械的に均質化される。化合物A51またはA52は、2、3時間しか懸濁液に停留しないことが判明し、したがって、経口用製剤は、調製の2、3時間以内に投与しなければならない。
【0136】
2%超のカルボキシメチルセルロース(CMC)が、溶液に含まれた場合、該製剤は極めて粘稠性になることが判明し、その結果、胃管栄養シリンジにより試験動物に投与された場合、製剤の多くが、シリンジ壁の後部に残り、正確な薬物投与が妨げられた。機械的均質化を適用すると、CMCおよびツイーン80を含んだ10%DMSOの溶液は、懸濁液中に化合物が維持されることが判明した。すなわち、10%超のDMSOは必要としなかった。DMSOはマウスを刺激し、投与2週後の期間に亘ってマウス体重の10%までの減少に関連することが判っているため、最少のDMSOを使用するべきである。
【0137】
マウスに対して適切な最高投与容量は、0.2mLであることが判明している。
【0138】
化合物の半減期は、化合物が経口投与された場合よりも静脈内投与された場合の方がより長いことが判明している。しかしながら、毎日の経口投与により、ビカルタミドで見られた定常状態の濃度に匹敵する、該化合物の許容できる定常状態の血清中濃度がもたらされた。経口投与は、静脈内投与よりも簡便であり得る。
【0139】
化合物A51およびA52は、記載されたとおりに投与されたインビボアッセイにおいて、腫瘍に対し有益な効果を有する。
【0140】
本明細書に説明され、検討された実施形態は、本発明を成し、使用するために発明者が周知している最良の方法を当業者に教示することのみを意図している。本明細書おいて、何物も本発明の範囲を限定するものとして考慮すべきものはない。提供された実施例の全ては、代表的なものであって限定するものではない。上記の教示に鑑みて当業者により認識されるように、本発明の上記実施形態を、本発明から逸脱することなく改変または変更することができる。したがって、当然のことながら、請求項およびそれらの等価体の範囲内で、本発明は、具体的に記載された以外の他の方法で実施することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−92149(P2012−92149A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−27792(P2012−27792)
【出願日】平成24年2月10日(2012.2.10)
【分割の表示】特願2009−502925(P2009−502925)の分割
【原出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】