説明

前立腺癌における再発性遺伝子融合

本発明は、癌マーカーを含むがこれに限定されない、癌の診断、研究、および療法のための組成物および方法に関する。特に本発明は、前立腺癌のための診断マーカーおよび臨床標的としての再発性遺伝子融合に関する。本発明により、例えば、(a)患者由来の試料を提供すること、および(b)SLC45A3遺伝子の転写調節領域由来の5’部分とRAFファミリー遺伝子由来の3’部分とを有する遺伝子融合の試料における存在または不在を検出することを含み、前記試料における遺伝子融合の存在を検出することは、患者における前立腺癌を同定する、患者における前立腺癌を同定するための方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(政府の支援)
本発明は、米国国立衛生研究所によって授与されたCA069568、CA111275、およびCA132874の下で政府の支援によりなされた。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0002】
(本発明の分野)
本発明は、癌マーカーを含むがこれに限定されない癌の診断、研究、および療法のための組成物および方法に関する。特に、本発明は、前立腺癌のための診断マーカーおよび臨床標的としての再発性遺伝子融合に関する。
【背景技術】
【0003】
癌研究における中心的な目的は、発癌において原因として関与する改変遺伝子を同定することである。塩基の置換、挿入、欠失、転位、ならびに染色体の増加および損失を含むいくつかの種類の体細胞性突然変異が同定されており、それらはすべて、癌遺伝子または腫瘍抑制遺伝子の活性の変化を結果として生じる。最初に1900年代初期に仮説を立てられ、現在、癌における染色体再配列についての原因的な役割についての説得力のある証拠がある(非特許文献1(Rowley, Nat Rev Cancer 1: 245 (2001)))。再発性染色体異常は、白血病、リンパ腫、および肉腫の主たる特徴であると考えられていた。さらにより一般的でありかつヒトの癌と関連した罹患率および死亡率において比較的多くを占める一因となる上皮腫瘍(癌腫)は、公知の疾患特異的染色体再配列の1%未満を含む(非特許文献2(Mitelman, Mutat Res 462: 247 (2000)))。血液学的悪性腫瘍はしばしば、平衡化した疾患特異的染色体再配列を特徴とするが、ほとんどの固形腫瘍は、非特異的染色体異常の多血症(plethora)を有する。固形腫瘍の核型の複雑性は、癌の進化または進行を通じて獲得される二次的変化によると考えられる。
【0004】
染色体再配列の2つの主要な機序が説明されている。1つの機序において、1つの遺伝子のプロモーター/エンハンサーエレメントは、癌原遺伝子近くに再配列され、したがって癌遺伝子タンパク質の発現の変化を生じる。この種類の転位は、それぞれB細胞悪性腫瘍およびT細胞悪性腫瘍におけるこの癌遺伝子の活性化をもたらすMYCへの免疫グロブリン(IG)遺伝子およびT細胞受容体(TCR)遺伝子の並置によって具現化される(非特許文献3(RABBITTS, NATURE 372: 143 (1994)))。第二の機序において、再配列は結果的に2つの遺伝子の融合を生じ、それが、新たな機能または活性の変化を有し得る融合タンパク質を生じる。この転位の原型の例は、慢性骨髄性白血病(CML)におけるBCR−ABL遺伝子融合である(非特許文献4(Rowley, Nature 243: 290 (1973));非特許文献5(de Klein et al., Nature 300: 765 (1982)))。重要なことに、この発見は、BCR−ABLキナーゼをうまく標的にするイマチニブメシラート(Gleevec)の合理的な開発をもたらした(非特許文献6(Deininger et al., Blood 105: 2640 (2005)))。したがって、一般的な上皮腫瘍における再発性遺伝子再配列を同定することは、癌薬物発見の尽力および患者の治療についての強い関わりを有し得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Rowley, Nat Rev Cancer 1: 245(2001)
【非特許文献2】Mitelman, Mutat Res 462: 247(2000)
【非特許文献3】RABBITTS, NATURE 372: 143 (1994)
【非特許文献4】Rowley, Nature 243: 290 (1973)
【非特許文献5】de Klein et al., Nature 300: 765 (1982)
【非特許文献6】Deininger et al., Blood 105: 2640 (2005)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、癌のマーカーを含むがこれに限定されない、癌の診断、研究、および療法のための組成物および方法に関する。特に、本発明は、前立腺癌のための診断マーカーおよび臨床標的としての再発性遺伝子融合に関する。
【0007】
例えば、いくつかの実施態様において、本発明は、患者由来の試料を提供すること、およびSLC45A3遺伝子の転写調節領域由来の5’部分とRAFファミリー遺伝子(例えば、RAF1またはBRAF)由来の3’部分とを有する遺伝子融合の試料の存在または不在を検出することとを含む、患者における前立腺癌を同定するための方法を提供し、この中で、試料における遺伝子融合の存在は、患者における前立腺癌を同定する。いくつかの実施態様において、SLC45A3遺伝子の転写調節領域は、SLC45A3遺伝子のプロモーター領域を含む。いくつかの実施態様において、検出工程は、SLC45A3遺伝子の転写調節領域由来の5’DNA部分とRAFファミリー遺伝子由来の3’DNA部分とを有するゲノムDNAの染色体再配列を検出することを含む。いくつかの実施態様において、検出工程は、SLC45A3遺伝子の転写調節領域から転写された5’RNA部分とRAFファミリー遺伝子から転写された3’RNA部分とを有するキメラmRNA転写産物を検出することを含む。いくつかの実施態様において、試料は、組織、血液、血漿、血清、尿、尿上清、尿細胞ペレット、精液、前立腺分泌物、または前立腺細胞である。
【0008】
本発明のさらなる実施態様は、患者由来の試料を提供すること、およびUBE2L3遺伝子の転写調節領域由来の5’部分とRASファミリー遺伝子(例えば、KRAS)由来の3’部分とを有する遺伝子融合の、試料における存在または不在を検出することを含む、患者における前立腺癌を同定するための方法を提供し、この中で、試料における遺伝子融合の存在を検出することは、患者における前立腺癌を同定する。いくつかの実施態様において、UBE2L3遺伝子の転写調節領域は、UBE2L3遺伝子のプロモーター領域を含む。いくつかの実施態様において、検出工程は、UBE2L3遺伝子の転写調節領域由来の5’DNA部分と、RASファミリー遺伝子由来の3’DNA部分とを有するゲノムDNAの染色体再配列を検出することを含む。いくつかの実施態様において、検出工程は、UBE2L3遺伝子の転写調節領域から転写された5’RNA部分と、RASファミリー遺伝子から転写された3’RNA部分とを有するキメラmRNA転写産物を検出することを含む。いくつかの実施態様において、試料は、組織、血液、血漿、血清、尿、尿上清、尿細胞ペレット、精液、前立腺分泌物、または前立腺細胞である。
【0009】
さらなる実施態様において、本発明は、以下の少なくとも1つを含む組成物を提供する:(a)キメラゲノムDNAもしくはキメラmRNAの5’部分は、SLC45A3遺伝子の転写調節領域由来でありかつキメラゲノムDNAもしくはキメラmRNAの3’部分は、RAFファミリーメンバー遺伝子由来である、キメラゲノムDNAもしくはキメラmRNAの接合部とハイブリダイズする配列を含むオリゴヌクレオチドプローブ;(b)SLC45A3遺伝子の転写調節領域由来のキメラゲノムDNAもしくはキメラmRNAの5’部分とハイブリダイズする配列を含む第一のオリゴヌクレオチドプローブ、およびRAFファミリーメンバー遺伝子由来のキメラゲノムDNAもしくはキメラmRNAの3’部分とハイブリダイズする配列を含む第二のオリゴヌクレオチドプローブ;(c)SLC45A3遺伝子の転写調節領域由来のキメラゲノムDNAもしくはキメラmRNAの5’部分とハイブリダイズする配列を含む第一の増幅オリゴヌクレオチド、およびRAFファミリーメンバー遺伝子由来のキメラゲノムDNAもしくはキメラmRNAの3’部分とハイブリダイズする配列を含む第二の増幅オリゴヌクレオチド;(d)キメラゲノムDNAもしくはキメラmRNAの5’部分は、UBE2L3遺伝子の転写調節領域由来でありかつキメラゲノムDNAもしくはキメラmRNAの3’部分は、RASファミリーメンバー遺伝子由来である、キメラゲノムDNAもしくはキメラmRNAの接合部とハイブリダイズする配列を含むオリゴヌクレオチドプローブ;(e)UBE2L3遺伝子の転写調節領域由来のキメラゲノムDNAもしくはキメラmRNAの5’部分とハイブリダイズする配列を含む第一のオリゴヌクレオチドプローブ、およびRASファミリーメンバー遺伝子由来のキメラゲノムDNAもしくはキメラmRNAの3’部分とハイブリダイズする配列を含む第二のオリゴヌクレオチドプローブ;(f)UBE2L3遺伝子の転写調節領域由来のキメラゲノムDNAもしくはキメラmRNAの5’部分とハイブリダイズする配列を含む第一の増幅オリゴヌクレオチド、およびRASファミリーメンバー遺伝子由来のキメラゲノムDNAもしくはキメラmRNAの3’部分とハイブリダイズする配列を含む第二の増幅オリゴヌクレオチド;ならびに(g)UBE2L3遺伝子によってコードされるアミノ末端部分とRASファミリーメンバー遺伝子によってコードされるカルボキシ末端部分とを有するキメラタンパク質に対する抗体。いくつかの実施態様において、RAFファミリーメンバー遺伝子は、BRAFまたはRAF1である。いくつかの実施態様において、RASファミリーメンバー遺伝子はKRASである。
【0010】
本発明の追加的な実施態様は、下記の説明および実施例において提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1−1】図1は、ETS陰性前立腺癌におけるSLC45A3−BRAFおよびESRP1−RAF1およびRAF1−ESRP1遺伝子融合の発見を示す。(a)FLJ35294−ETV1(上)、TMPRSS2−ERG(中)、SLC45A3−BRAF(左下)、およびESRP1−RAF1およびRAF1−ESRP1(右下)をそれぞれ有する臨床的に局在化した前立腺腫瘍試料PCA1、PCA2、PCA3、およびPCA17における遺伝子融合指名スコアのヒストグラム。(b)SLC45A3−BRAF間の染色体関遺伝子融合を支持する対形成末端読み取りの模式図。(cおよびd)相反融合遺伝子ESRP1−RAF1およびRAF1−ESRP1を結果として生じる、ESRP1とRAF1の間の染色体関遺伝子融合を支持する対形成末端読み取りの模式図。
【図1−2】図1は、ETS陰性前立腺癌におけるSLC45A3−BRAFおよびESRP1−RAF1およびRAF1−ESRP1遺伝子融合の発見を示す。(a)FLJ35294−ETV1(上)、TMPRSS2−ERG(中)、SLC45A3−BRAF(左下)、およびESRP1−RAF1およびRAF1−ESRP1(右下)をそれぞれ有する臨床的に局在化した前立腺腫瘍試料PCA1、PCA2、PCA3、およびPCA17における遺伝子融合指名スコアのヒストグラム。(b)SLC45A3−BRAF間の染色体関遺伝子融合を支持する対形成末端読み取りの模式図。(cおよびd)相反融合遺伝子ESRP1−RAF1およびRAF1−ESRP1を結果として生じる、ESRP1とRAF1の間の染色体関遺伝子融合を支持する対形成末端読み取りの模式図。
【図2】図2は、SLC45A3−BRAF、ESRP1−RAF1、およびRAF1−ESRP1遺伝子融合の発現の検証を示す。(a)PCA3におけるSLC45A3−BRAF遺伝子融合の定量的RT−PCR検証、および(b)エクソン1〜7に対するBRAFエクソン8〜18の高レベルの発現を示すエクソンに及ぶプライマーを用いたエクソン特異的PCR。(c)PCA17におけるESRP1−RAF1およびRAF1−ESRP1相反遺伝子融合の定量的RT−PCR検証。(d)PCA3およびPCA17それぞれにおけるSLC45A3−BRAF(左)およびESRP1−RAF1(右)遺伝子融合のFISH検証である。(e)PCA17からクローン化されたESRP1−RAF1全長融合コンストラクトで形質移入したPCA17細胞におけるおよびHEK293細胞における120kDaのESRP1−RAF1融合タンパク質の発現を示すウェスタンブロット分析。
【図3】図3は、SLC45A3−BRAF融合転写産物によるNIH3T3細胞の形質転換を示す。a)NIH3T3細胞における融合コンストラクトSLC45A3−BRAF、BRAF EX8−stop、BRAF EX10−stop、RAF突然変異体V600E、およびベクター対照(融合転写産物のためのpDEST40および突然変異体V600EのためのpBABE)による遺伝子座誘導。各試料について示される代表的なプレートおよび遺伝子座形成の定量を、2つの独立した実験由来の棒グラフ(b)に示す。(c)SLC45A3−BRAF融合は、細胞の増殖および浸潤を促進する。(d)RWPE安定細胞を、0.25μMソラフェニブまたはDMSO対照で処理し、示される時点でWST−1アッセイを実施した。
【図4】図4は、BRAF(A)およびRAF1(B)の正常転写産物および融合転写産物のエクソン構造を示す。
【図5】図5は、BRAFおよびRAF1遺伝子再配列のゲノム組織化およびFISH検証を示す。(a)および(b)の上パネルにおける模式的ダイアグラムは、SLC45A3およびBRAFおよびESRP1およびRAF1遺伝子のゲノム位置をそれぞれ示す。
【図6】図6は、正常試料(NOR9)および発端者(PCA3)におけるBRAFのRNA−seqエクソン被度を示す。
【図7】図7は、ETV1およびBRAF RNA−Seq外れ値発現特性を示す。
【図8】図8は、融合転写産物SLC45A3−Braf、BRAF Ex8−stop、およびBRAF Ex10−stopおよびpDEST40ベクターを発現するNIH3T3細胞の遺伝子座度数の比較を示す。
【図9】図9は、BRAF V600E突然変異状態を示す代表的なピログラムを示す。
【図10】図10は、短縮型BRAFおよびBRAF融合転写産物を示す。
【図11】図11は、SLC45A3−BRAF融合の模式図を示す。
【図12】図12は、癌によるBRAF融合転写産物を示す。
【図13】図13は、SLC45A3、AKAP9、FCHSD1、およびKIAA1549の発現プロットを示す。
【図14】図14は、SLC45A3の雄性ホルモン調節を示す。
【図15】図15は、DU145前立腺癌細胞における候補遺伝子融合としてのKRASを示したDNAコピー数データの積分解析を示す。(A)患者のサブセットにおける特徴的な遺伝子座増幅によって伴われる公知の再発性遺伝子融合を示す表。(B)左パネル、36の白血病細胞株由来の3’増幅した遺伝子の増幅不連続点階級分けおよび集合(ABRA)分析ならびにConSigスコア化は、3’増幅と関連した融合遺伝子としてのABL1を同定する。(C)左パネル、(B)と同様だが、例外として、前立腺癌細胞株のパネル由来のデータを用いる。
【図16】図16は、DU145細胞および前立腺癌組織におけるUBE2L3−KRASキメラの特徴付けを示す。(A)DU145および融合陽性PCAに関するUBE2L3とKRASとの融合を明らかにする5’RACEからの配列決定結果の模式図。(B)前立腺癌細胞株、良性前立腺組織、局在性(PCA)および転移性(MET)前立腺癌組織の構成的パネルを、融合プライマーを用いるSYBRアッセイによるUBE2L3−KRASmRNA発現について分析した。(C)UBE2L3の第一のエクソンおよびKRASの最後のエクソン由来の融合プライマーを用いた従来のRT−PCR検証。UBE2L3、KRAS、およびGAPDHmRNAについてのRT−PCRも示す。(D)対形成した読み取りのヒストグラムは、再発性遺伝子融合TMPRSS2−ERG、BCR−ABL1、UBE2L3−KRAS、ならびにK562、VCaP、およびDU145の個々の細胞株内の二次的遺伝子融合の間の区別を強調するそれらの細胞株由来のキメラ指名を支持した。(E)DU145におけるUBE2L3−KRAS間の融合の対形成末端配列決定被度の模式図。(F)左、UBE2L3およびKRAS遺伝子座のゲノム組織化を模式図に示し、棒は、BACクローンの位置を示す。右のDU145における間期FISH分析は、矢印によって示されるように、融合シグナルの3つのコピーを示す。
【図17】図17は、UBE2L3−KRAS融合タンパク質の特徴付けを示す。(A)UBE2L3、KRAS、および推定UBE2L3−KRAS融合タンパク質の模式図。(B)DU145細胞におけるUBE2L3−KRAS融合タンパク質の発現。(C)前立腺癌細胞株のパネルにおけるUBE2L3−KRAS融合タンパク質の調査および生体沈殿阻害薬ボルテゾミブを用いたタンパク質発現の安定化。(D)DU145細胞におけるUBE2L3−KRASタンパク質の検出のための質量分析アッセイ。
【図18】図18は、UBE2L3−KRAS融合の癌遺伝子能力を示す。(A)NIH3T3細胞におけるUBE2L3−KRASの過剰発現は、細胞増殖を亢進する。(B)UBE2L3−KRASの過剰発現は、NIH3T3細胞における遺伝子座形成を誘導する。(C)UBE2L3−KRAS融合に関与する下流シグナル伝達経路の研究。(D)UBE2L3−KRASを形質移入したNIH3T3細胞は、ヌードマウスにおける腫瘍を形成する。(E)RWPE良性前立腺上皮細胞におけるUBE2L3−KRAS融合の発現は、増加した細胞増殖をもたらす。(F)UBE2L3−KRAS融合を発現するRWPE安定細胞は、増大した細胞浸潤能力を示した。(G)UBE2L3−KRASを形質移入したRWPE細胞は、マウスにおける一過性腫瘍を形成する。
【図19】図19は、増幅不連続点階級分けおよび集合(ABRA)分析の生体情報の作業の流れを示す。
【図20−1】図20は、マニュアルキュレーションの基準を示す代表的な5’および3’融合パートナー候補(5’または3’増幅を伴う遺伝子)についてのSNPアレイおよびアレイCGHデータを示す。(A)許容し得ない不連続点を有する白血病および前立腺癌細胞株における代表的な候補3’パートナーについての相対的なDNAコピー数データ。(B)他の白血病細胞株とともにK−562における増幅不連続点集合分析によって同定されたABL1の候補5’融合パートナーについてのアレイCGHデータ。(C)DU145(2つの複製ハイブリダイゼーション)および他の前立腺癌細胞株におけるKRASの候補5’融合パートナーについてのアレイCGHデータ。
【図20−2】図20は、マニュアルキュレーションの基準を示す代表的な5’および3’融合パートナー候補(5’または3’増幅を伴う遺伝子)についてのSNPアレイおよびアレイCGHデータを示す。(A)許容し得ない不連続点を有する白血病および前立腺癌細胞株における代表的な候補3’パートナーについての相対的なDNAコピー数データ。(B)他の白血病細胞株とともにK−562における増幅不連続点集合分析によって同定されたABL1の候補5’融合パートナーについてのアレイCGHデータ。(C)DU145(2つの複製ハイブリダイゼーション)および他の前立腺癌細胞株におけるKRASの候補5’融合パートナーについてのアレイCGHデータ。
【図20−3】図20は、マニュアルキュレーションの基準を示す代表的な5’および3’融合パートナー候補(5’または3’増幅を伴う遺伝子)についてのSNPアレイおよびアレイCGHデータを示す。(A)許容し得ない不連続点を有する白血病および前立腺癌細胞株における代表的な候補3’パートナーについての相対的なDNAコピー数データ。(B)他の白血病細胞株とともにK−562における増幅不連続点集合分析によって同定されたABL1の候補5’融合パートナーについてのアレイCGHデータ。(C)DU145(2つの複製ハイブリダイゼーション)および他の前立腺癌細胞株におけるKRASの候補5’融合パートナーについてのアレイCGHデータ。
【図20−4】図20は、マニュアルキュレーションの基準を示す代表的な5’および3’融合パートナー候補(5’または3’増幅を伴う遺伝子)についてのSNPアレイおよびアレイCGHデータを示す。(A)許容し得ない不連続点を有する白血病および前立腺癌細胞株における代表的な候補3’パートナーについての相対的なDNAコピー数データ。(B)他の白血病細胞株とともにK−562における増幅不連続点集合分析によって同定されたABL1の候補5’融合パートナーについてのアレイCGHデータ。(C)DU145(2つの複製ハイブリダイゼーション)および他の前立腺癌細胞株におけるKRASの候補5’融合パートナーについてのアレイCGHデータ。
【図20−5】図20は、マニュアルキュレーションの基準を示す代表的な5’および3’融合パートナー候補(5’または3’増幅を伴う遺伝子)についてのSNPアレイおよびアレイCGHデータを示す。(A)許容し得ない不連続点を有する白血病および前立腺癌細胞株における代表的な候補3’パートナーについての相対的なDNAコピー数データ。(B)他の白血病細胞株とともにK−562における増幅不連続点集合分析によって同定されたABL1の候補5’融合パートナーについてのアレイCGHデータ。(C)DU145(2つの複製ハイブリダイゼーション)および他の前立腺癌細胞株におけるKRASの候補5’融合パートナーについてのアレイCGHデータ。
【図21】図21は、SYBRおよびTaqman融合定量的PCRアッセイの比較を示す。
【図22】図22は、DU145および融合陽性PCA組織における5’cDNA末端のRNAリガーゼ仲介性急速増幅(RLM−5’RACE)を示す。(A)RLM−5’RACEのために用いられる融合のKRAS部分に関する遺伝子特異的プライマーの位置(黒の矢印)を示す模式図。(B)DU145および3つの融合陽性の場合についてのRLM−5’RACE結果の代表的なゲル図。
【図23】図23は、DU145および3つの融合陽性ケース由来の融合配列の分析が、KRAS融合対立遺伝子における標準的な突然変異がないことを明らかにすることを示す。
【図24】図24は、DU145およびUBE2L3−KRAS陽性前立腺癌組織における代表的なFISH結果を示す。(A)間期FISHのためのプローブとして用いられるBACの模式図。(B)DU145に関するFISH分析は、KRAS遺伝子座における再配列、およびUBE2L3のKRASに対する融合を確認する。(C)陰性知見を強調するUBE2L3−KRAS陽性組織に関する代表的なFISH結果。
【図25】図25は、siRNAノックダウンの定量的PCR確認、およびUBE2L3−KRAS融合の異所性発現を示す。(A)DU145における融合接合部、野生型UBE2L3、および野生型KRASに対するsiRNAによるUBE2L3−KRASノックダウンの定量的PCR確認。(B〜C)UBE2L3−KRAS融合を発現するNIH3T3およびRWPE細胞の定量的PCR確認。NIH3T3細胞(B)に、空のpDEST40ベクターまたはUBE2L3−KRAS融合を形質移入した。RWPE細胞(C)に、空のpLenti−6ベクターまたはUBE2L3−KRAS融合を有するレンチウイルス粒子を形質移入した。
【図26】図26は、pDEST40ベクター対照とは対照的に、UBE2L3−KRAS融合を失った正常線維芽細胞形態を発現するNIH3T3線維芽細胞を示す。
【図27】図27は、UBE2L3−KRAS融合またはpDEST40ベクターを発現するNIH3T3細胞の遺伝子座密度の比較を示す。
【図28】図28は、UBE2L3−KRAS融合を発現するNIH3T3細胞が、S期の延長を示すことを示す。
【図29】図29は、Rasシグナル伝達経路の模式図を示す。
【図30】図30は、NIH3T3異種移植細胞の写真および病態を示す。(A)UBE2L3−KRAS融合(上)およびpDEST40ベクター(下)を発現するNIH3T3異種移植腫瘍を有するマウスの写真。(B)NIH3T3異種移植組織の病態。左パネル、NIH3T3融合を発現する腫瘍を有するマウスから摘出した異種移植組織を、ヘマトキシリンおよびエオシン(HE)を用いて染色した。右パネル、対照組織核(下)に対して腫瘍核(上)の98%を示す異種移植組織のKi−67免疫組織化学的(IHC)染色は、Ki−67に対して17%陽性である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(定義)
本発明の理解を容易にするために、いくつかの語句を下記に定義する。
【0013】
本明細書で使用する場合、用語「遺伝子融合」は、第一の遺伝子の少なくとも一部分の第二の遺伝子の少なくとも一部分への融合から結果的に生じるキメラゲノムDNA、キメラメッセンジャーRNA、短縮タンパク質、またはキメラタンパク質を指す。遺伝子融合には、完全な遺伝子または遺伝子のエクソンを含む必要はない。
【0014】
本明細書で使用する場合、用語「癌において上方調節された遺伝子」は、他の組織におけるレベルと比較して癌(例えば、前立腺癌)におけるより高いレベルで発現する(例えば、mRNAまたはタンパク質の発現)遺伝子を指す。いくつかの実施態様において、癌において上方調節された遺伝子は、他の組織における発現レベルよりも少なくとも10%、好ましくは少なくとも25%、さらにより好ましくは少なくとも50%、まだより好ましくは少なくとも100%、なおもより好ましくは少なくとも200%、および最も好ましくは少なくとも300%高いレベルで発現する。いくつかの実施態様において、前立腺癌において上方調節された遺伝子は、「雄性ホルモンで調節された遺伝子」である。
【0015】
本明細書で使用する場合、用語「前立腺組織において上方調節された遺伝子」は、他の組織におけるレベルと比較して、前立腺組織におけるより高いレベルで発現する(例えば、mRNAまたはタンパク質の発現)遺伝子を指す。いくつかの実施態様において、前立腺組織において上方調節された遺伝子は、他の組織の発現レベルよりも少なくとも10%、好ましくは少なくとも25%、さらにより好ましくは少なくとも50%、まだより好ましくは少なくとも100%、なおもより好ましくは少なくとも200%、および最も好ましくは少なくとも300%高いレベルで発現する。いくつかの実施態様において、前立腺組織において上方調節された遺伝子は、前立腺組織において専ら発現する。
【0016】
本明細書で使用する場合、用語「転写調節領域」は、遺伝子の発現を調節する(例えば、上方調節するまたは下方調節する)配列を含む遺伝子の領域を指す。いくつかの実施態様において、遺伝子の転写調節領域は、5’非翻訳領域(5’UTR)とも呼ばれる遺伝子の非コード上流配列を含む。他の実施態様において、転写調節領域は、遺伝子のコード領域内またはイントロン(例えばエンハンサー)内に配置された配列を含む。
【0017】
本明細書で使用する場合、用語「雄性ホルモン調節遺伝子」は、発現が雄性ホルモン(例えば、テストステロン)によって誘導または抑制される遺伝子または遺伝子の部分を指す。雄性ホルモンで調節された遺伝子のプロモーター領域は、雄性ホルモンまたは雄性ホルモンシグナル伝達分子(例えば、下流シグナル伝達分子)と相互作用する「雄性ホルモン応答エレメント」を含んでもよい。
【0018】
本明細書で使用する場合、用語「検出する」、「検出すること」、または「検出」は、検出可能に標識された組成物を発見するかまたは識別するかまたは組成物の特異的な観察のいずれかの一般的な作用を説明し得る。
【0019】
本明細書で使用する場合、用語「癌の病期」は、癌の進行のレベルの定性的または定量的評価を指す。癌の病期を判定するために用いられる基準には、腫瘍の大きさおよび転移の程度(例えば、限局性または遠隔性)を含むが、これらに限定されない。
【0020】
本明細書で使用する場合、用語「核酸分子」は、DNAまたはRNAを含むがこれらに限定されない任意の核酸を指す。用語は、4−アセチルシトシン、8−ヒドロキシ−N6−メチルアデノシン、アジリジニルシトシン、プソイドイソシトシン、5−(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルアデニン、1−メチルプソイドウラシル、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−メチルアデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、ベータ−D−マンノシルケウオシン(mannosylqueosine)、5’−メトキシカルボニルメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸、オキシブトキソシン、プソイドウラシル、ケウオシン(queosine)、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、N−ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸、プソイドウラシル、クエオシン、2−チオシトシン、および2,6−ジアミノプリンを含むがこれらに限定されないDNAおよびRNAの任意の公知の塩基アナログを含む配列を包含する。
【0021】
用語「遺伝子」は、ポリペプチド、前駆体、またはRNA(例えば、rRNA、tRNA)の産生に必要なコード配列を含む核酸(例えば、DNA)配列を指す。ポリペプチドは、全長または断片の所望の活性または機能的特性(例えば、酵素活性、リガンド結合、シグナル伝達、免疫原性など)が保有される限り、全長コード配列によってまたはコード配列の任意の部分によってコードされることができる。用語は、構造遺伝子のコード領域、および遺伝子が全長のmRNAの長さに相応するよう、いずれかの末端の約1kb以上の距離だけ5’および3’の両末端のコード領域近くに配置される配列も包含する。コード領域の5’に配置され、mRNAに存在する配列は、5’非翻訳配列と呼ばれる。3’またはコード領域の下流に配置され、およびmRNAに存在する配列は、3’非翻訳配列と呼ばれる。用語「遺伝子」は、遺伝子のcDNAおよびゲノム形態の両方を包含する。遺伝子のゲノム形態またはクローンは、「イントロン」または「介在領域」または「介在配列」と呼ばれる非コード配列で中断されたコード領域を含む。イントロンは、核RNA(hnRNA)へ転写された遺伝子のセグメントであり、イントロンは、エンハンサーなどの調節エレメントを含んでもよい。イントロンは、核転写産物または一次転写産物から除去されまたは「スプライスされ」、イントロンはそれゆえ、メッセンジャーRNA(mRNA)転写産物には存在しない。mRNAは、翻訳の間に、新生ポリペプチドにおけるアミノ酸の配列または順序を指定するよう機能する。
【0022】
本明細書で使用する場合、用語「オリゴヌクレオチド」は、短い長さの一本鎖ポリヌクレオチド鎖を指す。オリゴヌクレオチドは典型的には200残基未満の長さである(例えば、15〜100)が、本明細書で使用する場合、この用語は、より長いポリヌクレオチド鎖も包含するよう意図される。オリゴヌクレオチドはしばしば、それらの長さによって言及される。例えば、24残基のオリゴヌクレオチドは、「24マー」と呼ばれる。オリゴヌクレオチドは、自己ハイブリダイズすることによって、または他のポリヌクレオチドとハイブリダイズすることによって、二次構造および三次構造を形成することができる。このような構造には、二本鎖、ヘアピン、十字形、屈曲構造、および三本鎖を含むことができるが、これらに限定されない。
【0023】
本明細書で使用する場合、用語「プローブ」は、精製された制限消化として自然に生じるか、合成、組換え、またはPCR増幅によって生じるかに関わらず、目的の別のオリゴヌクレオチドの少なくとも一部とハイブリダイズすることのできるオリゴヌクレオチド(すなわち、ヌクレオチドの配列)を指す。プローブは、一本鎖または二本鎖であってよい。プローブは、特定の遺伝子配列の検出、同定、および単離において有用である。本発明において使用される任意のプローブは、任意の「リポーター分子」を用いて標識されることが熟慮され、それにより酵素(例えば、ELISA、および酵素ベースの組織化学的アッセイ)、蛍光、放射能、および発光の系を含むがこれらに限定されない任意の検出形において検出可能である。本発明が、任意の特定の検出の系または標識に限定されるべきであることは意図されない。
【0024】
用語「単離された」は、「単離されたオリゴヌクレオチド」または「単離されたポリヌクレオチド」のように、核酸に関して使用する場合、その天然源において通常関連する少なくとも1つの成分または混入物から同定および分離された核酸配列を指す。単離された核酸は、それが天然において見出されるのとは異なるような形態または設定で存在する。対照的に、単離されていない核酸は、天然の状態で存在する状態で見出されるDNAおよびRNAなどの核酸としてである。例えば、所与のDNA配列(例えば、遺伝子)は、隣接する遺伝子近くの宿主細胞染色体において見出され、具体的なタンパク質をコードする特異的なmRNA配列などのRNA配列は、複数のタンパク質をコードする数多くの他のmRNAとの混合物として細胞において見出される。しかしながら、所与のタンパク質をコードする単離された核酸には、例として、核酸が天然の細胞のものとは異なるようなまたは、天然に見出されるものとは異なる核酸配列によって隣接される染色体位置にあるような、所与のタンパク質を通常発現する細胞における核酸が挙げられる。単離された核酸、オリゴヌクレオチド、またはポリヌクレオチドは、一本鎖または二本鎖の形態で存在し得る。単離された核酸、オリゴヌクレオチド、またはポリヌクレオチドが、タンパク質を発現するよう利用されることになっている場合、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは、最少でセンス鎖またはコード鎖を含む(すなわち、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは、一本鎖であってよい)が、センス鎖およびアンチセンス鎖の両方を含んでよい(すなわち、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは、二本鎖であってよい)。
【0025】
本明細書で使用する場合、用語「精製された」または「精製するための」は、試料からの成分(例えば、混入物)の除去を指す。例えば、抗体は、混入している非免疫グロブリンタンパク質の除去によって精製され、抗体は、標的分子に結合していない免疫グロブリンの除去によっても精製される。標的分子に結合していない非免疫グロブリンタンパク質の除去および/または免疫グロブリンの除去で結果的に、試料における標的反応性免疫グロブリンのパーセントが増大する。別の例において、組換えポリペプチドは、細菌宿主細胞において発現し、ポリペプチドは、宿主細胞タンパク質の除去によって精製され、組換えポリペプチドのパーセントはそれゆえ、試料において増大する。
【0026】
(本発明の詳細な説明)
本発明は、前立腺癌における再発性遺伝子融合の発見に基づいている。本発明は、遺伝子融合を直接的にまたは間接的にのいずれかで検出しまたは標的とする診断方法、研究方法、治療方法を提供する。本発明は、診断、研究、および治療の目的のための組成物も提供する。
【0027】
(I.遺伝子融合)
本発明は、前立腺癌を示す再発性遺伝子融合を同定する。いくつかの実施態様において、遺伝子融合は、第一の遺伝子(例えば、雄性ホルモンで調節された遺伝子または他の遺伝子)およびRASまたはRAFファミリーメンバー遺伝子の転写調節領域の染色体再配列の結果である。遺伝子融合は典型的には、第一の遺伝子(例えば、UBE2L3、またはSLC45A3など雄性ホルモンで調節された遺伝子)の転写調節領域由来の5’部分と、ETSファミリーメンバー遺伝子由来の3’部分とを含む。再発性遺伝子融合は、前立腺癌のための診断マーカーおよび臨床標的としての使用を有する。
【0028】
(A.雄性ホルモンで調節された遺伝子)
雄性ホルモンによって調節された遺伝子は、ヒト前立腺の正常な生理学的機能にとって決定的に重要である。この遺伝子は、前立腺癌腫の発達および進行にも寄与する。認識されたARGには、TMPRSS2、SLC45A3、HERV−K_22q11.23、C15ORF21、FLJ35294、CANT1、PSA、PSMA、KLK2、SNRK、セラジン(Seladin)−1、およびFKBP51(Paoloni−Giacobino et al., Genomics 44: 309 (1997);Velasco et al., Endocrinology 145(8): 3913 (2004))が挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
TMPRSS2(NM_005656)は、他の正常ヒト組織と比較して前立腺上皮において多量に発現することが示されている(Lin et al., Cancer Research 59: 4180 (1999))。TMPRSS2遺伝子は、染色体21に配置されている。この遺伝子は、pterから41,750,797〜41,801,948bpに位置する(51,151全bp;マイナス鎖方向)。ヒトTMPRSS2タンパク質配列は、GenBank登録番号AAC51784(Swiss Protein登録番号O15393)において、相応するcDNAは、GenBank登録番号U75329において見出され得る(Paoloni−Giacobino, et al., Genomics 44: 309 (1997)も参照)。
【0030】
プロステイン(prostein)またはP501Sとしても公知のSLC45A3は、転写産物およびタンパク質の両レベルで正常前立腺および前立腺癌において専ら発現することが示されている(Kalos et al., Prostate 60, 246−56 (2004);Xu et al., Cancer Res 61, 1563−8 (2001))。
【0031】
EST分析および大量並行配列決定によって、HERV−K_22q11.23は、ヒト内在性レトロウイルスエレメントのHERV−Kファミリーの第二の最も強く発現するメンバーであることが発見され、他の正常組織と比較して前立腺において最も多量に発現した(Stauffer et al., Cancer Immun 4, 2 (2004))。HERV−Kエレメントの雄性ホルモン調節は説明されていないが、内在性レトロウイルスエレメントは、マウス性連関タンパク質遺伝子C4Aに対して雄性ホルモン応答性を与えることが示されている(Stavenhagen et al., Cell 55, 247−54 (1988))。他のHERV−Kファミリーメンバーは、乳癌および乳癌細胞株において多量に発現しかつエストロゲンで調節されることの両方が示されており(Ono et al., J Virol 61, 2059−62 (1987);Patience et al., J Virol 70, 2654−7 (1996);Wang−Johanning et al., Oncogene 22, 1528−35 (2003))、第19染色体におけるHERV−K3エレメント由来の配列は、t(8;19)(p12;q13.3)を有する幹細胞骨髄増殖性障害の症例において、FGFR1と融合した(Guasch et al., Blood 101, 286−8 (2003))。
【0032】
D−PCA−2としても公知のC15ORF21は元来、正常前立腺および前立腺癌におけるその独占的な過剰発現に基づいて単離された(Weigle et al., Int J Cancer 109, 882−92 (2004))。
【0033】
FLJ35294は、配列決定したヒトcDNAの「日本の完全長(full−length long Japan)」(FLJ)収集物のメンバーとして同定された(Nat Genet. 2004 Jan;36(1):40−5. Epub 2003 Dec 21)。
【0034】
sSCAN1としても公知のCANT1は、可溶性カルシウム活性化型ヌクレオチダーゼである(Arch Biochem Biophys. 2002 Oct 1;406(1):105−15)。CANT1は、371アミノ酸タンパク質である。切断可能なシグナルペプチドは、37,193Daの推定中心分子量を有する333の残基からなる分泌型タンパク質を生じる。ノザン分析は、精巣、胎盤、前立腺、および肺を含むある範囲のヒト組織における転写産物を同定した。伝統的なアピラーゼ保存型領域もヌクレオチド結合ドメインもこのヒト酵素において同定されず、細胞外ヌクレオチダーゼの新たなファミリーに属することを示した。
【0035】
いくつかの実施態様において、本発明の遺伝子融合は、ARGの転写調節領域を含む。ARGの転写調節領域は、プロモーター領域を含む、ARGのコード領域または非コード領域を含んでよい。ARGのプロモーター領域はさらに、ARGの雄性ホルモン応答エレメント(ARE)を含んでよい。
【0036】
(B.ユビキチン抱合酵素)
E2酵素としても公知のユビキチン抱合酵素は、プロテアソームを介する分解のためのタンパク質を標的とするユビキチン化反応における第二の工程を実施する。ユビキチン化加工は、76のアミノ酸からなる短いタンパク質であるユビキチンを、標的タンパク質におけるリシン残基に共有結合させる。一旦、タンパク質が1つのユビキチン分子でタグ付けされると、追加的なラウンドのユビキチン化は、プロテアソームの19S調節粒子によって認識されるポリユビキチン鎖を形成し、プロテアソームの20S中心粒子への通過を許容する標的タンパク質のATP依存性変性を惹起し、20S中心粒子において、プロテアーゼは、細胞による再利用のために、標的を短いペプチド断片へと分解する。
【0037】
UBE2L3は、ヒトE2酵素の一例である。UBE2L3のmRNA配列は、Genbank登録番号NR_028437によって説明される。
【0038】
(C.RAS/RAFファミリー)
Rasは、細胞のシグナル伝達に関与する低分子GTPaseをコードする遺伝子のファミリーである。Rasシグナル伝達の活性化は、細胞の増殖、分化、および生存の原因となる。Rasは、構造においてすべてが関連しかつ多様な細胞挙動を調節するタンパク質のRasスーパーファミリーの原型メンバーである。Rasタンパク質は、細胞内シグナル伝達ネットワークを制御する二成分分子スイッチとして機能する。Rasで調節されたシグナル経路は、アクチン細胞骨格統合性、増殖、分化、細胞接着、アポトーシス、および細胞遊走のようなプロセスを制御する。Rasおよびras関連タンパク質はしばしば、癌において脱調節され、増大した浸潤および転移、ならびに低下したアポトーシスをもたらす。
【0039】
Rasは、細胞の外側から核へとシグナルを連絡するので、ras遺伝子における突然変異は、それを永久的に活性化し、細胞外シグナルがない場合においても、細胞の内側への不適切な伝達を生じさせる可能性がある。これらのシグナルは結果的に細胞の増殖および分裂を生じるので、調節不全となったRasのシグナル伝達は、究極的には発癌および癌をもたらし得る(Goodsell DS (1999). Oncologist 4 (3): 263−4)。Rasにおける突然変異の活性化は、すべてのヒト腫瘍の20〜25%において見出され、特異的な腫瘍の種類において最大90%見出される(Downward J (January 2003). Nat. Rev. Cancer 3 (1): 11−22)。
【0040】
Rasスーパーファミリーには100を超えるタンパク質がある(Wennerberg et al., (March 2005). J. Cell. Sci. 118 (Pt 5): 843−6)。構造、配列、および機能に基づいて、Rasスーパーファミリーは、8個の主要なファミリーへと分類され、それらの各々はさらにサブファミリーRas、Rho、Rab、Rap、Arf、Ran、Rheb、Rad、およびRitへと分類される。
【0041】
各サブファミリーは、共通の中心Gドメインを共有し、ドメインは、必須のGTPaseおよびヌクレオチド交換活性を提供する。取り囲んでいる配列は、低分子GTPaseの機能的特異性を決定するのを助け、例えば、Rhoサブファミリーに共通の「挿入ループ」は、IQGAPおよびWASPなどのエフェクタータンパク質に対する結合に特異的に寄与する。
【0042】
Rasファミリーは一般的に細胞増殖に、Rhoは細胞の形態について応答性があり、核輸送にはRan、小胞輸送にはRabおよびArfである(Munemitsu et al., (1990). Mol Cell Biol 10 (11): 5977−82)。BRAFとしても公知のV−rafマウス肉腫ウイルス癌遺伝子ホモログB1は、ヒトにおいてBRAF遺伝子によってコードされるタンパク質である(Sithanandam et al., (December 1990) Oncogene 5 (12): 1775−80;Sithanandam et al., (April 1992). Oncogene 7 (4): 795−9)。
【0043】
ヒトKRAS DNAは、Genbank登録番号NG_007524によって説明されるヌクレオチド配列を有する。ヒトKRAS mRNAは、Genbank登録番号NM_004985によって説明されるヌクレオチド配列を有する。
【0044】
BRAF遺伝子は、B−RAFと呼ばれるタンパク質をつくり、タンパク質は、細胞におけるおよび細胞増殖におけるシグナルを送ることに関与する。この遺伝子は、多くの種類の癌において突然変異し得(Davies et al., (2002). Nature 417 (6892): 949−54)、それが、B−RAFタンパク質の変化の原因となる。このことは、癌細胞の増殖および伝播を増大させることができる。
【0045】
この遺伝子は、セリン/トレオニンプロテインキナーゼのraf/milファミリーに属するタンパク質をコードする。このタンパク質は、細胞の分裂、分化、および分泌に影響するMAPキナーゼ/ERKシグナル伝達経路を調節する上である役割を担っている。
【0046】
この遺伝子の突然変異は、心臓の欠陥、精神遅滞、および特有の顔の様相を特徴とする疾患である心臓顔皮膚(cardiofaciocutaneous)症候群と関係している。この遺伝子の突然変異は、非ホジキンリンパ腫、大腸癌、悪性黒色腫、甲状腺癌、非小細胞肺癌、および肺の腺癌を含む種々の癌とも関係している。
【0047】
c−rafは、本明細書で「Raf−1」と呼ばれるプロテインキナーゼをコードする遺伝子である。Raf−1タンパク質は、プロテインキナーゼカスケードの一部としてのMAPK/ERKシグナル伝達経路において機能する。Raf−1は、セリン/トレオニン特異的キナーゼである。Raf−1は、それが直接結合する膜結合型GTPaseのRasファミリーの下流で機能するMAPキナーゼキナーゼキナーゼ(MAP3K)である。一旦、活性化型Raf−1が、二重特異性プロテインキナーゼMEK1およびMEK2を活性化させるようリン酸化することができると、プロテインキナーゼは順に、セリン/トレオニン特異的プロテインキナーゼERK1およびERK2を活性化させるようリン酸化する。活性化型ERKは、細胞の生理の多面的エフェクターであり、細胞分裂周期、アポトーシス、細胞分化、および細胞遊走に関与する遺伝子発現の制御において重要な役割を担っている。
【0048】
発見された第一のraf遺伝子は、癌遺伝子v−rafであった(Mark et al., (April 1984). Science 224 (4646): 285−9)。v−rafの正常な(非発癌性の)細胞ホモログは、真核生物ゲノムの保存された成分であることがすぐに見出され、このホモログは突然変異して、癌遺伝子となる危険性があることが示された(Shimizu et al., (1986). Int. Symp. Princess Takamatsu Cancer Res. Fund 17: 85−91)。A−RafおよびB−Rafは、Raf−1と類似の配列を有する2つのプロテインキナーゼである。B−Raf遺伝子の突然変異は、いくつかの種類の癌において見出される。Rafキナーゼは、抗癌薬開発のための標的である(Sridhar et al., (April 2005). Mol. Cancer Ther. 4 (4): 677−85)。Rafキナーゼ阻害薬を検出するのに利用可能ないくつかの定量的免疫化学的方法がある(Olive (October 2004). Expert Rev Proteomics 1 (3): 327−41)。
【0049】
ヒトBRAF DNAは、Genbank登録番号NG_007873によって説明されるヌクレオチド配列を有する。ヒトBRAF mRNAは、Genbank登録番号NM_004333によって説明されるヌクレオチド配列を有する。
【0050】
ヒトRAF1 DNAは、Genbank登録番号NG_007467によって説明されるヌクレオチド配列を有する。ヒトRAF1 mRNAは、Genbank登録番号NM_002880によって説明されるヌクレオチド配列を有する。
【0051】
(II.抗体)
本発明の遺伝子融合タンパク質は、その断片、誘導体、および類似体を含め、免疫原として用いられ、下記に説明される診断方法、研究方法、および治療方法における使用を有する抗体を産生し得る。抗体は、ポリクローナル、またはモノクローナル、キメラ、ヒト化、一本鎖、またはFab断片であり得る。当業者に公知の種々の手順は、このような抗体および断片の産生および標識に用いられ得る。例えば、Burns, ed., Immunochemical Protocols, 3rd ed., Humana Press (2005);Harlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory (1988);Kozbor et al., Immunology Today 4: 72 (1983);Kohler and Milstein, Nature 256: 495 (1975)を参照されたい。短縮ETSファミリーメンバータンパク質またはキメラタンパク質とその個々の天然タンパク質との差を活用する抗体または断片は、特に好ましい。
【0052】
(III.診断への応用)
本明細書で説明される遺伝子融合は、DNA、RNA、またはタンパク質として検出可能である。まず、遺伝子融合は、第一の遺伝子由来の5’部分とRASまたはRAFファミリーメンバー遺伝子由来の3’部分とを有するゲノムDNAの染色体再配列として検出可能である。一旦転写されると、遺伝子融合は、第一の遺伝子由来の5’部分とRASまたはRAFファミリーメンバー遺伝子由来の3’部分とを有するキメラmRNAとして検出可能である。一旦翻訳されると、遺伝子融合は、第一のタンパク質由来の5’部分およびRASもしくはRAFファミリーメンバータンパク質由来の3’部分の融合、または第一のタンパク質またはRASもしくはRAFファミリーメンバーの短縮バージョンとして検出可能である。短縮タンパク質または融合タンパク質は、アミノ酸配列、翻訳後加工、および/または二次構造、三次構造、もしくは四次構造におけるそれらの個々の天然タンパク質とは異なり得る。このような差は、存在する場合、遺伝子融合の存在を同定するために使用することができる。具体的な検出方法は、下記により詳細に説明される。
【0053】
本発明は、遺伝子融合を直接的にまたは間接的にのいずれかで検出するDNA、RNA、およびタンパク質ベースの診断方法を提供する。本発明は、診断目的のための組成物およびキットも提供する。
【0054】
本発明の診断方法は、定性的または定量的であり得る。定性的診断方法は、例えば、カットオフレベルまたは閾値レベルを介して無痛癌と侵襲性癌とを識別するために用いられ得る。応用可能な場合、定性的または定量的診断方法には、標的、シグナル、または介在体(例えば、一般的プライマー)の増幅も含み得る。
【0055】
最初のアッセイは、遺伝子融合の存在を確認し得るが、具体的な融合を同定し得ない。所望であれば、二次的なアッセイを次に実施して、特定の融合の同定を判定する。第二のアッセイは、最初のアッセイとは異なる検出技法を用い得る。
【0056】
本発明の遺伝子融合は、マルチプレックスまたはパネルフォーマットにおける他のマーカーとともに検出され得る。マーカーは、それらの推定値単独についてまたは遺伝子融合との組み合わせにおいて選択される。例示的な前立腺癌マーカーには、AMACR/P504S(米国特許第6,262,245号);PCA3(米国特許第7,008,765号);PCGEM1(米国特許第6,828,429号);プロステイン/P501S、P503S、P504S、P509S、P510S、プロスターゼ/P703P、P710P(米国特許出願公開第20030185830号);ならびに各々、それらのすべての内容が全体として引用により本明細書に組み込まれる米国特許第5,854,206号および同第6,034,218号、および米国特許出願公開第20030175736号に開示されているものが挙げられるが、それらに限定されない。他の癌、疾患、感染、および代謝容態についてのマーカーも、マルチプレックスまたはパネルフォーマットにおける包含において企図される。
【0057】
本発明の診断方法は、特定の遺伝子融合を疾患の病期、侵襲性、もしくは進行、または転移の存在もしくは危険性と相関させるデータに関しても改変され得る。究極的に、本発明の方法によって提供される情報は、特定の患者のための治療の最良のコースを選択する上で医師を助ける。
【0058】
(A.試料)
遺伝子融合を含むことが疑われる任意の患者の試料は、本発明の方法に従って試験され得る。非限定例として、試料は、組織(例えば、前立腺生検試料または前立腺摘除術によって得られた組織試料)、血液、尿、精液、前立腺分泌物、またはそれらの画分(例えば、血漿、血清、尿上清、尿細胞ペレット、または前立腺細胞)であり得る。尿試料は好ましくは、前立腺由来の前立腺細胞を尿路へと流させる入念な直腸指診(DRE)の直後に回収される。
【0059】
患者の試料は典型的には、遺伝子融合のための試料または遺伝子融合を含む細胞を単離または濃縮するよう設計された予備的加工を必要とする。当業者に公知の種々の技術がこの目的のために用いられ得、それには、遠心分離、免疫捕捉、細胞溶解、および核酸標的捕捉が挙げられるが、これらに限定されない(例えば、そのすべての内容が全体として引用により本明細書に組み込まれる欧州特許第1409727号を参照されたい)。
【0060】
(B.DNAおよびRNA検出)
本発明の遺伝子融合は、核酸配列決定、核酸ハイブリダイゼーション、および核酸増幅を含むがこれらに限定されない、当業者に公知の種々の核酸技術を用いてゲノムDNAまたはキメラmRNAの染色体再配列として検出され得る。
【0061】
(1.配列決定)
核酸配列決定技術の実例となる非限定例には、連鎖終止(サンガー)配列決定および色素終止配列決定が含まれるが、これらに限定されない。当業者は、RNAが細胞においてあまり安定ではなく、ヌクレアーゼ攻撃の傾向がより高いので、実験的にRNAは通常、配列決定の前にDNAへと逆転写されることを認識する。
【0062】
連鎖終止配列決定は、修飾されたヌクレオチド基質を用いるDNA合成反応の配列特異的終結を用いる。伸長は、その領域におけるテンプレートと相補的な短い放射性のまたは他の標識したオリゴヌクレオチドプライマーを用いることによって、テンプレートDNAにおける特異的な部位で開始される。オリゴヌクレオチドプライマーは、DNAポリメラーゼ、標準的な4つのデオキシヌクレオチド塩基、および低濃度の1つの連鎖終止ヌクレオチド、最も一般的にはジデオキシヌクレオチドを用いて伸長する。この反応は、4つの個別のチューブにおいて反復され、各塩基は、ジデオキシヌクレオチドとして仕事する。DNAポリメラーゼによる連鎖終止ヌクレオチドの制限された組み込みは結果的に、特定のジデオキシヌクレオチドが用いられる位置でのみ終結する一連の関連したDNA断片を生じる。各反応チューブについて、断片は、スラブポリアクリルアミドゲルまたは粘性のあるポリマーを充填した毛細管における電気泳動によって大きさで分離される。配列は、ゲルの上から下へと走査する場合に、標識されたプライマーから可視化された指標をどのレーンが生じるのかを読み取ることによって決定される。
【0063】
色素終止配列決定は、それに代わるものとして、ターミネーターを標識する。完全な配列決定は、各ジデオキシヌクレオチド連鎖終止を、異なる波長で蛍光を発する個別の蛍光色素で標識することによって単一の反応において実施することができる。
【0064】
(2.ハイブリダイゼーション)
核酸ハイブリダイゼーション技術の実例となる非限定例には、in situハイブリダイゼーション(ISH)、マイクロアレイ、およびサザンブロットまたはノザンブロットが挙げられるが、これらに限定されない。
【0065】
In situハイブリダイゼーション(ISH)は、標識された相補的なDNA鎖またはRNA鎖をプローブとして用いて、組織の一部もしくは切片(in situ)、または組織が十分小さな場合、全組織において(ホールマウントISH)、特異的なDNA配列またはRNA配列を限局するハイブリダイゼーションの一種である。DNA ISHは、染色体の構造を決定するために使用することができる。RNA ISHは、組織切片またはホールマウント内のmRNAおよび他の転写産物を測定および限局するために用いられる。試料の細胞および組織は通常、しかるべきところで標的転写産物を固定して、プローブのアクセスを増大させるために処理される。プローブは、上昇した温度で標的配列とハイブリダイズした後、過剰のプローブが洗い流される。放射性標識、蛍光標識、または抗原標識したいずれかの塩基で標識したプローブは、オートラジオグラフィー、蛍光顕微鏡、または免疫組織化学のいずれかをそれぞれ用いて、組織において限局化および定量化される。ISHは、放射能または他の非放射性標識で標識した2つ以上のプローブを使用して、2つ以上の転写産物を同時に検出することができる。
【0066】
(a.FISH)
いくつかの実施態様において、融合配列は、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)を用いて検出される。本発明に好ましいFISHアッセイは、細菌人工染色体(BAC)を利用する。これらは、ヒトゲノム配列決定プロジェクトにおいて広範に用いられており(Nature 409: 953−958 (2001)参照)、具体的なBACを含むクローンは、多くの源を通じて位置づけられる流通業者、例えばNCBIを通じて入手可能である。ヒトゲノム由来の各BACクローンは、明瞭に同定する引用名称が与えられている。これらの名称を用いて、相応のGenBank配列を見出し、流通業者からのクローンのコピーを注文することができる。
【0067】
本発明はさらに、ヒト前立腺細胞、ヒト前立腺組織における、またはヒト前立腺細胞もしくはヒト前立腺組織を取り囲む流体におけるFISHアッセイを実施する方法を提供する。
【0068】
(b.マイクロアレイ)
異なる種類の生物アッセイは、マイクロアレイと呼ばれ、これには、DNAマイクロアレイ(例えば、cDNAマイクロアレイおよびオリゴヌクレオチドマイクロアレイ)、タンパク質マイクロアレイ、組織マイクロアレイ、形質移入または細胞マイクロアレイ、化合物マイクロアレイ、および抗体マイクロアレイを含むがこれらに限定されない。遺伝子チップ、DNAチップ、またはバイオチップとして一般的に公知のDNAマイクロアレイは、何千もの遺伝子についての発現プロファイリングの目的のために、または遺伝子についての発現レベルを同時にモニターするためにアレイを形成する固相表面(例えば、ガラス、プラスチック、またはシリコンのチップ)に付着した顕微鏡レベルのDNAスポットの集積物である。マイクロアレイを用いて、疾患細胞および正常細胞における遺伝子発現を比較することによって、疾患遺伝子を同定することができる。マイクロアレイは、ガラススライドへの細く尖ったピンによる刻印、事前作製したマスクを用いたフォトリソグラフィー、動的マイクロミラー装置を用いたフォトリソグラフィー、インクジェット刻印、または微小電極アレイにおける電気化学を含むがこれらに限定されない種々の技法を用いて作製することができる。
【0069】
サザンブロット法およびノザンブロット法はそれぞれ、特異的なDNAまたはRNAの配列を検出するために用いられる。試料から抽出したDNAまたはRNAは、断片化され、マトリックスゲル上で電気泳動により分離され、メンブレンフィルターへと転写される。フィルターに結合したDNAまたはRNAは、目的の配列と相補的な標識済みプローブとのハイブリダイゼーションに供される。フィルターに結合したハイブリダイズしたプローブを検出する。手順の変法は、逆ノザンブロットであり、この中で、メンブレンに固定した基質核酸は、単離されたDNA断片の集積物であり、プローブは、組織から抽出し標識したRNAである。
【0070】
(3.増幅)
ゲノムDNAおよびキメラmRNAの染色体再配列は、検出の前にまたは検出と同時に増幅され得る。核酸増幅技術の実例となる非限定例には、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)、転写仲介性増幅(TMA)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、鎖置換増幅(SDA)、および核酸配列ベースの増幅(NASBA)が挙げられるが、これらに限定されない。当業者は、ある増幅技術(例えば、PCR)が、RNAが増幅前にDNAに逆転写されることを必要とするのに対し、他の増幅技術が、RNAを直接増幅する(例えば、TMAおよびNASBA)ことを認識する。
【0071】
PCRと一般的に呼ばれるポリメラーゼ連鎖反応(そのすべての内容が全体として引用により本明細書に各々組み込まれる米国特許第4,683,195号、同第4,683,202号、同第4,800,159号、および同第4,965,188号)は、変性、反対鎖へのプライマー対のアニーリング、および標的核酸配列のコピー数を指数関数的に増加させるためのプライマー伸長の複数周期を用いる。RT−PCRと呼ばれる変法において、逆転写酵素(RT)は、mRNAから相補的DNA(cDNA)を作製するのに用いられ、次にcDNAはPCRによって増幅され、DNAの複数のコピーを生じる。PCRに関する他の種々の順列については、例えば、そのすべての内容が全体として引用により本明細書に各々組み込まれる米国特許第4,683,195号、同第4,683,202号、および同第4,800,159号、Mullis et al., Meth. Enzymol. 155: 335 (1987)、ならびにMurakawa et al., DNA 7: 287 (1988)を参照されたい。
【0072】
TMAと一般的に呼ばれる転写仲介性増幅(それらのすべての内容が全体として引用により本明細書に各々組み込まれる米国特許第5,480,784号および第5,399,491号)は、標的配列の複数のRNAコピーが追加的なコピーを自己触媒的に生じる実質的に定常の温度、イオン強度、およびpHの条件下で、自己触媒的に標的核酸配列の複数のコピーを合成する。例えば、そのすべての内容が全体として引用により本明細書に各々組み込まれる米国特許第5,399,491号および同第5,824,518号を参照されたい。米国特許出願公開第20060046265(そのすべての内容が全体として引用により本明細書に組み込まれる)において説明される変法において、TMAは任意に、遮断部分、終結部分、他の修飾部分の使用を組み込んで、TMAプロセスの感度および正確性を改良する。
【0073】
LCRと一般的に呼ばれるリガーゼ連鎖反応(そのすべての内容が引用により本明細書に組み込まれるWeiss, R., Science 254: 1292 (1991))は、標的核酸の隣接領域とハイブリダイズする2セットの相補的DNAオリゴヌクレオチドを用いる。DNAオリゴヌクレオチドは、熱変性、ハイブリダイゼーション、および連結の反復した周期におけるDNAリガーゼによって共有結合して、検出可能な二本鎖連結型オリゴヌクレオチド産物を生じる。
【0074】
SDAと一般的に呼ばれる鎖置換増幅(そのすべての内容が全体として引用により本明細書に組み込まれるWalker, G. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 392−396 (1992);米国特許第5,270,184号および第5,455,166号)は、標的配列の反対鎖へのプライマー配列の対をアニーリングすること、二本鎖ヘミホスホロチオアート化プライマー伸長産物を生じるためのdNTPαSの存在下でのプライマー伸長、半修飾した制限エンドヌクレアーゼ認識部位のエンドヌクレアーゼ仲介性ニッキング、および既存の鎖を置換してプライマーアニーリング、ニッキング、および鎖置換の次のラウンドのための鎖を生じ、結果的に産物の幾何増幅を生じるためのニックの3’末端からのポリメラーゼ仲介性プライマー伸長の周期を用いる。好熱性SDA(tSDA)は、本質的に同じ方法でより高温で好熱性エンドヌクレアーゼおよびポリメラーゼを用いる(欧州特許第0684315号)。
【0075】
他の増幅方法には、例えば、NASBAと一般的に呼ばれる核酸配列ベースの増幅(そのすべての内容が全体として引用により本明細書に組み込まれる米国特許第5,130,238号)、Qβレプリカーゼと一般的に呼ばれる、プローブ分子自体を増幅するためのRNAレプリカーゼを用いる増幅(そのすべての内容が全体として引用により本明細書に組み込まれるLizardi et al., BioTechnol. 6: 1197 (1988))、転写ベースの増幅方法(Kwoh et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:1173 (1989))、および自己持続配列複製(そのすべての内容が全体として引用により本明細書に組み込まれるGuatelli et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87: 1874 (1990))、が挙げられる。公知の増幅方法に関する更なる論議については、Persing, David H., “In Vitro Nucleic Acid Amplification Techniques” in Diagnostic Medical Microbiology: Principles and Applications (Persing et al., Eds.), pp. 51−87 (American Society for Microbiology, Washington, DC (1993))を参照されたい。
【0076】
(4.検出方法)
増幅していないまたは増幅した遺伝子融合核酸は、任意の従来手段によって検出されることができる。例えば、遺伝子融合は、検出可能に標識されたプローブを用いたハイブリダイゼーションおよび結果として生じるハイブリッドの測定によって検出されることができる。検出方法の実例となる非限定例を下記に説明する。
1つの実例となる検出方法であるハイブリダイゼーション保護アッセイ(HPA)は、化学発光オリゴヌクレオチドプローブ(例えば、アクリジニウムエステル標識した(AE)プローブ)を標的配列とハイブリダイズさせること、ハイブリダイズしていないプローブに存在する化学発光標識を選択的に加水分解すること、およびルミノメーターにおける残存プローブから生じる化学発光を測定することを包含する。例えば、米国特許第5,283,174号およびNorman C. Nelson et al., Nonisotopic Probing, Blotting, and Sequencing, 第17章(それらのすべての内容が引用により本明細書に各々組み込まれるLarry J. Kricka ed., 2d ed. 1995)を参照されたい。
【0077】
別の実例となる検出方法は、リアルタイムでの増幅プロセスの定量的評価を提供する。「リアルタイム」での増幅プロセスの評価は、増幅反応の間に連続的にまたは周期的にのいずれかで反応混合物におけるアンプリコンの量を決定すること、および決定された値を用いて試料に初期的に存在する標的配列の量を算出することを包含する。リアルタイム増幅に基づいて試料に存在する初期標的配列の量を決定するための種々の方法は、当該技術分野で周知である。これらには、米国特許第6,303,305号および第6,541,205号に開示された方法が含まれ、これらの各々はそのすべての内容が引用により本明細書に組み込まれる。試料中に初期的に存在するが、リアルタイム増幅に基づいていない、標的配列の量を決定するための別の方法は、米国特許第5,710,029号に開示されており、そのすべての内容は引用により本明細書に組み込まれる。
【0078】
増幅産物は、種々の自己ハイブリダイゼーションプローブの使用を通じてリアルタイムで検出され得、そのほとんどはステムループ構造を有する。このような自己ハイブリダイゼーションプローブは、プローブが自己ハイブリダイズされた状態であるかまたは標的配列へのハイブリダイゼーションを通じて変化した状態であるかに応じて、異なって検出可能なシグナルを放射するよう標識される。非限定例として、「分子トーチ」は、接合領域(例えば、非ヌクレオチドリンカー)によって接続されかつあらかじめ決めておいたハイブリダイゼーションアッセイ条件下で互いにハイブリダイズする自己相補性の異なる領域(「標的結合ドメイン」および「標的閉鎖ドメイン」と呼ばれる)を含む一種の自己ハイブリダイゼーションプローブである。好ましい実施態様において、分子トーチは、長さ1〜約20塩基でありかつ鎖置換条件下で増幅反応に存在する標的配列とのハイブリダイゼーションのためにアクセス可能な標的結合ドメインにおける一本鎖塩基領域を含む。鎖置換条件下で、完全にまたは部分的に相補的であり得る、分子トーチの2つの相補性領域のハイブリダイゼーションが好ましいが、例外は、標的結合ドメインに存在する一本鎖領域に結合しかつ標的閉鎖ドメインのすべてまたは一部を置換する標的配列の存在下である。分子トーチの標的結合ドメインおよび標的閉鎖ドメインには、分子トーチが標的配列にハイブリダイズする場合よりも分子トーチが自己ハイブリダイズする場合に異なるシグナルを生じるよう配置された、検出可能な標識または一対の相互作用標識(例えば、発光剤/クエンチャー)が含まれ、それにより、ハイブリダイズしていない分子トーチの存在下で試験試料においてプローブ:標的二本鎖の検出を可能にする。分子トーチおよび種々の種類の相互作用標識対は、そのすべての内容が全体として引用により本明細書に組み込まれる米国特許第6,534,274号に開示される。
【0079】
自己相補性を有する検出プローブの別の例は、「分子ビーコン」である。分子ビーコンには、標的相補性配列、増幅反応に存在する標的配列の不在下で閉鎖した立体配座におけるプローブを保持する親和性対(または核酸アーム)、およびプローブが閉鎖した立体配座にある場合に相互作用する標識対を有する核酸分子が含まれる。標的配列および標的相補性配列のハイブリダイゼーションは、親和性対のメンバーを分離し、それにより開いた立体配座にプローブを移行させる。開いた立体配座への移行は、例えばフルオロフォアおよびクエンチャー(例えば、DABCYLおよびEDANS)であり得る標識対の低下した相互作用により、検出可能である。分子ビーコンは、そのすべての内容が全体として引用により本明細書に組み込まれる米国特許第5,925,517号および第6,150,097号に開示される。
【0080】
他の自己ハイブリダイゼーションプローブは、当業者に周知である。非限定例として、米国特許第5,928,862号(そのすべての内容が全体として引用により本明細書に組み込まれる)に開示されるものなど、相互作用する標識を有するプローブ結合対は、本発明における使用に適応し得る。単一のヌクレオチド多型(SNP)を検出するのに用いられるプローブの系も、本発明において利用され得る。追加的な検出系には、そのすべての内容が全体として引用により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20050042638号に開示されるような「分子スイッチ」が挙げられる。挿入色素および/または蛍光色素を含むものなど、他のプローブも、本発明における増幅産物の検出に有用である。例えば、米国特許第5,814,447号を参照されたい(そのすべての内容が全体として引用により本明細書に組み込まれる)。
【0081】
(C.タンパク質検出)
本発明の遺伝子融合は、タンパク質配列決定およびイムノアッセイを含むがこれらに限定されない当業者に公知の種々のタンパク質技術を用いて、短縮タンパク質またはキメラタンパク質として検出され得る。
【0082】
(1.配列決定)
タンパク質配列決定技術に関する実例となる非限定例には、質量分析およびエドマン分解が挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
質量分析は、原理的に、任意の大きさのタンパク質を配列決定することができるが、大きさが増大すると計算上より困難となる。タンパク質は、エンドプロテアーゼによって消化され、結果として生じる溶液は、高圧液体クロマトグラフィーカラムを通過する。このカラムの終点において、溶液は、高い正の電圧に帯電した狭いノズルを出て質量分析計へと噴霧される。滴の電荷は、単一のみイオンが残るまで細分化される。次に、ペプチドが断片化され、断片の質量−電荷比が測定される。質量スペクトルをコンピュータによって分析し、しばしば、断片の配列を決定するために、すでに配列決定されたタンパク質のデータベースに対して比較される。次に、プロセスは、異なる消化酵素を用いて反復され、配列における重複を用いて、タンパク質についての配列を構築する。
【0084】
エドマン分解反応において、配列決定されるべきペプチドを固相表面(例えば、ポリブレンで被覆したガラスファイバー)へと吸着させる。エドマン試薬であるフェニルイソチオシアナート(PTC)を、吸着したペプチドに、12%トリメチルアミンの弱塩基性緩衝溶液とともに添加し、N末端アミノ酸のアミン基と反応させる。次に、末端アミノ酸誘導体は、無水酸の添加によって選択的にはずせる。誘導体は、異性化して置換フェニルチオヒダントインを与え、それを洗い流してクロマトグラフィーによって同定することができ、周期は反復することができる。各工程の有効性は約98%であり、そのことは、約50のアミノ酸を信頼できるよう決定することができる。
【0085】
(2.イムノアッセイ)
イムノアッセイの実例となる非限定例には、免疫沈降、ウェスタンブロット、ELISA、免疫組織化学、免疫細胞化学、フローサイトメトリー、およびイムノPCRが挙げられるが、これらに限定されない。当業者に公知の種々の技術を用いて検出可能に標識された(例えば、比色、蛍光、化学発光、または放射能)ポリクローナルまたはモノクローナル抗体は、イムノアッセイにおける使用に好適である。
【0086】
免疫沈降は、抗原に特異的な抗体を用いて、抗原を溶液から沈殿させる技術である。このプロセスを用いて、複合体に存在すると考えられるタンパク質を標的とすることによって細胞抽出物中に存在するタンパク質複合体を同定することができる。複合体は、プロテインAおよびプロテインGなど、細菌から初期的に単離される不溶性抗体結合タンパク質によって溶液からもたらされる。抗体はまた、溶液から容易に単離することのできるセファロースビーズに共役することもできる。洗浄後、沈殿物を、質量分析、ウェスタンブロッティング、または複合体における構成成分を同定するための任意の数の他の方法を用いて分析することができる。
【0087】
ウェスタンブロットまたはイムノブロットは、所与の試料における組織均質液または抽出物のタンパク質を検出する方法である。ゲル電気泳動を用いて、変性タンパク質を質量によって分離する。次に、タンパク質をゲルからメンブレン、典型的にはポリビニルジフルオリドまたはニトロセルロースに転写し、そこで目的のタンパク質に特異的な抗体を用いてプローブ処理する。結果として、研究者は、所与の試料中のタンパク質の量を検討し、いくつかの群間で比較することができる。
【0088】
固相酵素免疫検定法の略であるELISAは、試料中の抗体または抗原の存在を検出する生化学的技術である。最少量の2つの抗体を利用し、そのうちの1つは、抗原に特異的であり、もう1つは酵素と共役する。二次抗体は、シグナルを生じるための色素生成基質または蛍光生成基質を生じる。ELISAの変法には、サンドイッチELISA、競合的ELISA、およびELISPOTが挙げられる。ELISAは、試料中の抗原の存在または抗体の存在のいずれかを評価するために実施されることができるので、血清抗体濃度を決定するためであり、および抗体の存在を検出するためでもある有用なツールである。
【0089】
免疫組織化学および免疫細胞化学は、個々の抗体に結合する組織または細胞中の抗原の原理を介してそれぞれ、組織切片または細胞におけるタンパク質を限局するプロセスを指す。可視化は、色素生成タグまたは蛍光タグを用いて抗体をタグ付けすることによって可能となる。色素タグの典型的な例には、西洋ワサビペルオキシダーゼおよびアルカリホスファターゼが挙げられるが、これらに限定されない。蛍光タグの典型的な例には、フルオレセインイソチオシアナート(FITC)またはフィコエリトリン(PE)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0090】
フローサイトメトリーは、流体流において懸濁された顕微鏡レベルの粒子を計数、検討、および選別するための技術である。光学/電子検出装置を流れる単一の細胞の物理的および/または化学的特徴の同時のマルチパラメトリック分析を可能にする。単一の周波数または色相の光(例えば、レーザー)のビームを流体の水力学的に焦点合わせした流れへと方向付ける。いくつかの検出器は、流れが光ビームを通過する地点に向けられ、1つは光ビームと一致し(順方向散乱装置またはFSC)、いくつかは光ビームに垂直である(側部散乱装置(SSC)および1つ以上の蛍光検出器)。ビームを通過する懸濁された各粒子は、いくつかの方法で光を散乱させ、粒子中の蛍光化学物質は、光源よりも低い周波数で発光を励起し得る。散乱光と蛍光との組み合わせは、検出器によって、および1つが各蛍光発光ピークのためである各検出器における輝度の変動を分析することによって拾い上げられ、各個々の粒子の物理的および化学的構造についての種々の事実から演繹することが可能である。FSCは、細胞の体積と相関し、SSCは、粒子の密度または内部複雑性と相関する(例えば、核の形状、細胞質粒子の量および種類、または膜の粗度)。
【0091】
免疫ポリメラーゼ連鎖反応(IPCR)は、核酸増幅技術を利用して、抗体ベースのイムノアッセイにおけるシグナル発生を増大させる。PCRのタンパク質当量がないので、すなわち、核酸がPCR中に複製されるのと同じ様式でタンパク質が複製できないので、検出感度を増大させる唯一の方法は、シグナル増幅による。標的タンパク質を抗体に結合させ、この抗体をオリゴヌクレオチドに直接的にまたは間接的に抱合させる。結合していない抗体を洗い流し、残存する結合した抗体は、そのオリゴヌクレオチドを増幅させる。タンパク質検出は、リアルタイム法を含む標準的な核酸検出方法を用いて、増幅したオリゴヌクレオチドの検出を介して生じる。
【0092】
(D.データ分析)
いくつかの実施態様において、コンピュータベースの分析プログラムを用いて、検出アッセイによって生じた生データ(例えば、所与の遺伝子融合または他のマーカーの存在、不在、または量)を臨床医用の推定値のデータへと翻訳する。臨床医は、任意の好適な手段を用いて推定データにアクセスできる。したがって、いくつかの好ましい実施態様において、本発明は、遺伝学または分子生物学で訓練されていないような臨床医が、生データを理解する必要がない更なる利点を提供する。データは、最も有用な形態で臨床医に直接呈される。臨床医は次に、対象のケアを最適化するために、情報を即時利用することができる。
【0093】
本発明は、アッセイを実施する実験室へのおよび実験室からの情報を受信、処理、および転送することのできる任意の方法を熟慮し、情報は、医療実務者および対象に提供する。例えば、本発明のいくつかの実施態様において、試料(例えば、生検または血清もしくは尿の試料)は、対象から得られ、プロファイリングサービスに供され(例えば、医用施設における臨床研究室、ゲノムプロファイリングビジネス、など)世界の任意の部分に(例えば、対象が居住しまたは情報が究極的に用いられる国以外の国において)配置され、生データを生じる。試料が、組織または他の生物試料を含む場合、対象は、医用センターを訪問して、試料を得てプロファイリングセンターに送り得、または対象は試料自体(例えば、尿試料)を回収して、それをプロファイリングセンターに直接送り得る。試料が、すでに決定された生物情報を含む場合、情報は、対象によってプロファイリングセンターに直接送られ得る(例えば、情報を含む情報カードがコンピュータによって走査され、データが電子通信システムを用いてプロファイリングセンターのコンピュータに転送され得る)。プロファイリングサービスによって一旦受信されると、試料は処理され、対象に所望の診断情報または予後情報に特異的なプロファイルが生じる(すなわち、発現データ)。
【0094】
次に、プロファイルデータは、治療する臨床医による解釈に好適なフォーマットで準備される。例えば、生の発現データを提供するよりもむしろ、準備されたフォーマットは、対象についての診断または危険の評価(例えば、癌が存在する見込み)を、特定の治療選択肢についての推奨とともに表し得る。データは、任意の好適な方法によって臨床医に表示され得る。例えば、いくつかの実施態様において、プロファイリングサービスは、(例えば、ケアの点で)臨床医向けに印刷されることのできる、またはコンピュータモニター上で臨床医に表示できる報告書を作成する。
【0095】
いくつかの実施態様において、情報はまず、ケアの点でまたは地域の施設において分析される。次に、生データを更なる分析のために、および/または臨床医もしくは患者に有用な情報に生データを変換するために、中央処理施設に送る。中央処理施設は、プライバシーの利点(すべてのデータは、均一なセキュリティプロトコールを用いて中央施設に保存される)、速度、およびデータ分析の均一性を提供する。次に、中央処理施設は、対象の治療後のデータの成り行きを制御することができる。例えば、電子通信システムを用いて、中央施設はデータを臨床医、対象、または研究者に提供することができる・
【0096】
いくつかの実施態様において、対象は、電子通信システムを用いてデータに直接アクセスすることができる。対象は、結果に基づいて更なる介入またはカウンセリングを選択し得る。いくつかの実施態様において、データは研究用途に用いられる。例えば、データは、特定の容態または疾患の病期の有用な表示剤としてのマーカーの包含または排除をさらに最適化するために用いられ得る。
【0097】
(E.インビボでの画像化)
本発明の遺伝子融合はまた、放射性核種画像、陽電子放射形断層撮影法(PET)、コンピュータ化した軸断層撮影法、X線または磁気共鳴画像法、蛍光検出、および化学発光検出を含むがこれらに限定されないインビボ撮像技術を用いて検出され得る。いくつかの実施態様において、インビボ撮像技術を用いて、動物(例えば、ヒト、または非ヒト哺乳類)における癌マーカーの存在または発現を可視化する。例えば、いくつかの実施態様において、癌マーカーmRNAまたはタンパク質は、癌マーカーに特異的な標識済み抗体を用いて標識される。特異的に結合しかつ標識された抗体は、放射線核種画像法、陽電子放射形断層撮影法、コンピュータ化軸断層撮影法、X線または磁気共鳴画像法、蛍光検出、および化学発光検出を含むがこれらに限定されないインビボ画像法を用いて個体において検出されることができる。本発明の癌マーカーに対する抗体を生じるための方法は、下記に説明される。
【0098】
本発明のインビボでの画像法は、本発明の癌マーカーを発現する癌(例えば、前立腺癌)の診断において有用である。インビボでの画像化を用いて、癌を示すマーカーの存在を可視化する。このような技術によって、喜ばしくない生検を使用せずに診断が可能となる。本発明のインビボでの画像法は、癌患者に予後を提供するためにも有用である。例えば、転移しそうな癌を示すマーカーの存在が検出できる。本発明のインビボでの画像法をさらに用いて、身体の他の部分における転移性の癌を検出することができる。
【0099】
いくつかの実施態様において、本発明の癌マーカーに特異的な試薬(例えば、抗体)は、蛍光標識される。標識済み抗体は、対象へと(例えば、経口的にまたは非経口的に)導入される。蛍光標識した抗体は、任意の好適な方法を用いて(例えば、引用により本明細書に組み込まれる米国特許第6,198,107号に説明される装置を用いて)検出される。
【0100】
他の実施態様において、抗体は、放射性標識される。インビボでの診断のための抗体の使用は、当該技術分野で周知である。Sumerdonら(Nucl. Med. Biol 17:247−254 [1990])は、標識としてインジウム−111を用いて腫瘍の放射性免疫シンチグラフィー画像化のための最適化された抗体−キレーターを説明した。Griffinら(J Clin Onc 9:631−640 [1991])は、再発性大腸癌を有することが疑われる患者における腫瘍を検出する上でのこの試薬の使用を説明した。磁気共鳴画像法のための標識としての常磁性イオンを有する類似の試薬の使用は、当該技術分野で公知である(Lauffer, Magnetic Resonance in Medicine 22:339−342 [1991])。使用される標識は、選択される画像化様相による。インジウム−111、テクネチウム−99m、またはヨーダイン−131などの放射性標識は、平面スキャン、または単一光子放射形コンピュータ断層撮影法(SPECT)に用いられることができる。フッ素−19などの陽電子放射標識も、陽電子放射形断層撮影法(PET)に用いられることができる。MRIについては、ガドリニウム(III)またはマンガン(II)などの常磁性イオンを用いることができる。
【0101】
スカンジウム−47(3.5日間)、ガリウム−67(2.8日間)、ガリウム−68(68分間)、テクネチウム−99m(6時間)、およびインジウム−111(3.2日間)など、1時間〜3.5日間に及ぶ半減期を有する放射性金属は、抗体への抱合に利用可能であり、それらのうち、ガリウム−67、テクネチウム−99m、およびインジウム−111は、ガンマカメラ画像法に好ましく、ガリウム−68は、陽電子放射形断層撮影法に好ましい。
【0102】
このような放射性金属で抗体を標識する有用な方法は、例えばIn−111およびTc−99mについてはKhawら(Science 209:295 [1980])によって、ならびにScheinbergら(Science 215:1511 [1982])によって説明されるように、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)などの二機能性キレート薬による。他のキレート薬も使用され得るが、1−(p−カルボキシメトキシベンジル)EDTAおよびDTPAの無水カルボキシカルボン酸は有利であり、その理由は、それらの使用が、抗体の免疫反応性に実質的に影響を及ぼさずに抱合を可能にするからである。
【0103】
DPTAをタンパク質に共役するための別の方法は、In−111によるアルブミンの標識のためのHnatowichら(Int. J. Appl. Radiat. Isot. 33:327 [1982])によって説明されるような、DTPAの環状無水物の使用によるが、これは抗体の標的に適応させることができる。DPTAによるキレート化を使用しないTc−99mによる抗体を標識する好適な方法は、Crockfordらの予備はんだ方法である(米国特許第4,323,546号、引用により本明細書に組み込まれる)。
【0104】
Tc−99mにより免疫グロブリンを標識する好ましい方法は、血漿タンパク質についてWongら(Int. J. Appl. Radiat. Isot., 29:251 [1978])によって説明されるものであり、近年、抗体を標識するために、Wongら(J. Nucl. Med., 23:229 [1981])によってうまく適用されている。
【0105】
特異的抗体に抱合した放射性金属の場合、抗体分子の免疫特異性を破壊せずに抗体分子へと可能な限り高い割合の放射性標識を導入することが同様に望ましい。更なる改良は、本発明の特異的癌マーカーの存在における放射性標識をもたらして、抗体における抗原結合部位が保護されるのを確認することによって達成され得る。抗原は、標識後に分離される。
【0106】
まだ更なる実施態様において、インビボでの生体光子画像法(Xenogen, Almeda, CA)をインビボでの画像法に利用する。このリアルタイムインビボ画像法は、ルシフェラーゼを利用する。ルシフェラーゼ遺伝子は、細胞、微生物、および動物へと組み込まれる(例えば、本発明の癌マーカーとの融合タンパク質として)。活性がある場合、光を放射する反応をもたらす。CCDカメラおよびソフトウェアを用いて、画像を捕捉し、この画像を分析する。
【0107】
(F.組成物およびキット)
これらの任意の組成物は単独で、または本発明の他の組成物との組み合わせで、キットの形態で提供され得る。例えば、単一の標識済みプローブおよび対の増幅オリゴヌクレオチドは、本発明の遺伝子融合の増幅および検出のためのキットにおいて提供され得る。キットはさらに、適切な対照および/または検出試薬を含み得る。本発明のプローブおよび抗体組成物はアレイの形態でも提供され得る。
【0108】
本発明の診断方法における使用のための組成物には、プローブ、増幅オリゴヌクレオチド、および抗体を含むが、これらに限定されない。特に好ましい組成物は、RASまたはRAFファミリーメンバー遺伝子に第一の遺伝子が融合する場合にのみ産物を検出する。これらの組成物には、第一の遺伝子由来の5’部分がRASまたはRAFファミリーメンバー遺伝子由来の3’部分に融合する(すなわち、遺伝子融合接合部に及ぶ)接合部にハイブリダイズする配列を含む単一の標識済みプローブ、第一の遺伝子由来の5’部分の転写調節領域とハイブリダイズする第一の増幅オリゴヌクレオチドが、RASまたはRAFファミリーメンバー遺伝子由来の3’部分に融合する一対の増幅オリゴヌクレオチド、第一のタンパク質の融合からRASまたはRAFファミリーメンバー遺伝子へと結果的に生じるアミノ末端で短縮タンパク質に対する抗体、あるいは第一の遺伝子由来のアミノ末端部分とRASまたはRAFファミリーメンバー遺伝子由来のカルボキシ末端部分とを有するキメラタンパク質に対する抗体が挙げられる。しかしながら、他の有用な組成物には、第一の標識済みプローブが、第一の遺伝子の転写調節領域とハイブリダイズする配列を含み、かつ第二の標識済みプローブが、RASまたはRAFファミリーメンバー遺伝子とハイブリダイズする配列を含む、一対の標識済みプローブが挙げられる。
【0109】
(IV.薬物スクリーニングへの応用)
いくつかの実施態様において、本発明は、(例えば抗癌薬をスクリーニングするための)薬物スクリーニングアッセイを提供する。本発明のスクリーニング方法は、本発明の方法を用いて同定された癌マーカーを利用する(例えば、本発明の遺伝子融合を含むがこれに限定されない)。例えば、いくつかの実施態様において、本発明は、遺伝子融合の発現を変化させる(例えば、低下させる)化合物をスクリーニングする方法を提供する。化合物または薬剤は、例えば、プロモーター領域と相互作用することによって、転写に干渉し得る。化合物または薬剤は融合によって(例えば、RNA干渉またはアンチセンス技術などによって)生産されたmRNAに干渉し得る。化合物または薬剤は、融合の生物活性の上流または下流である経路に干渉し得る。いくつかの実施態様において、候補化合物は、癌マーカーに対して向けられるアンチセンスまたは干渉RNA薬(例えば、オリゴヌクレオチド)である。他の実施態様において、候補化合物は、本発明の癌マーカー調節因子または発現産物に特異的に結合しかつその生物機能を阻害する抗体または低分子である。
【0110】
1つのスクリーニング方法において、候補化合物は、癌マーカーを発現する細胞と化合物を接触させること、および次に、発現に及ぼす候補化合物の効果をアッセイすることによって癌マーカーの発現を変化させる候補化合物の能力を評価される。いくつかの実施態様において、癌マーカー遺伝子の発現に及ぼす候補化合物の効果は、細胞によって発現した癌マーカーmRNAのレベルを検出することによってアッセイされる。mRNA発現は、任意の好適な方法によって検出されることができる。
【0111】
他の実施態様において、癌マーカー遺伝子の発現に及ぼす候補化合物の効果は、癌マーカーによってコードされるポリペプチドのレベルを測定することによってアッセイされる。発現したポリペプチドのレベルは、本明細書に開示されるものを含むがこれに限定されない任意の好適な方法を用いて測定されることができる。
【0112】
具体的には、本発明は、調節因子を同定するためのスクリーニング方法を提供し、すなわち、本発明の癌マーカーに結合する候補化合物もしくは試験化合物または候補薬もしくは試験薬(例えば、タンパク質、ペプチド、ペプチド模倣薬、ペプトイド、低分子、または他の薬物)は、例えば、癌マーカー発現または癌マーカー活性に及ぼす阻害効果(または刺激効果)を有し、あるいは、例えば、癌マーカー基質の発現または活性に及ぼす刺激効果または阻害効果を有する。したがって、同定された化合物を用いて、治療プロトコールにおいて直接的にまたは間接的にのいずれかで標的遺伝子産物(例えば、癌マーカー遺伝子)の活性を調節し、標的遺伝子産物の生物機能を作り出し、または正常な標的遺伝子相互作用を破壊する化合物を同定することができる。癌マーカーの活性または発現を阻害する化合物は、増殖性障害、例えば、癌、特に前立腺癌の治療において有用である。
【0113】
一実施態様において、本発明は、癌マーカータンパク質もしくはポリペプチドまたはその生物活性部分の基質である候補化合物または試験化合物をスクリーニングするためのアッセイを提供する。別の実施態様において、本発明は、癌マーカータンパク質もしくはポリペプチドまたはその生物活性部分に結合しまたはそれらの活性を調節する候補化合物または試験化合物をスクリーニングするためのアッセイを提供する。
【0114】
本発明の試験化合物は、生物ライブラリー、ペプトイドライブラリー(酵素分解に対して耐性があるが、それにもかかわらず生物活性を残している、ペプチドの機能性を有するが、新規の非ペプチド骨格を有する分子のライブラリー;例えば、Zuckennann et al., J. Med. Chem. 37: 2678−85 [1994]参照)、空間的にアドレス可能な並行固相または液相ライブラリー、逆重畳積分を必要とする合成ライブラリー法、「1ビーズ1化合物」ライブラリー法、およびアフィニティクロマトグラフィー選択を用いる合成ライブラリー法を含む当該技術分野で公知の組み合わせライブラリー法における数多くの任意のアプローチを用いて得られることができる。生物ライブラリーおよびペプトイドライブラリーアプローチは、ペプチドライブラリーによる方法に好ましいのに対し、その他の4つのアプローチは、ペプチド、非ペプチドオリゴマー、または化合物の低分子ライブラリーである(Lam (1997) Anticancer Drug Des. 12:145)。
【0115】
分子ライブラリーの合成のための方法の例は、当該技術分野で見出されることができ、例えば、DeWitt et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90:6909 [1993];Erb et al., Proc. Nad. Acad. Sci. USA 91:11422 [1994];Zuckermann et al., J. Med. Chem. 37:2678 [1994];Cho et al., Science 261:1303 [1993];Carrell et al., Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33.2059 [1994];Carell et al., Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33:2061 [1994];およびGallop et al., J. Med. Chem. 37:1233 [1994]において見出されることができる。
【0116】
化合物のライブラリーは、溶液中で(例えば、Houghten, Biotechniques 13:412−421 [1992])、ビーズ(Lam, Nature 354:82−84 [1991])、チップ(Fodor, Nature 364:555−556 [1993])、細菌もしくは胞子(引用により本明細書に組み込まれる米国特許第第5,223,409号)、プラスミド(Cull et al., Proc. Nad. Acad. Sci. USA 89:18651869 [1992])、またはファージ(Scott and Smith, Science 249:386−390 [1990];Devlin Science 249:404−406 [1990];Cwirla et al., Proc. NatI. Acad. Sci. 87:6378−6382 [1990];Felici, J. Mol. Biol. 222:301 [1991])において呈され得る。
【0117】
一実施態様において、アッセイは、癌マーカーmRNAもしくはタンパク質またはその生物活性部分を発現する細胞が試験化合物と接触し、かつ癌マーカーの活性を調節する試験化合物の能力が決定される細胞ベースのアッセイである。癌マーカーの活性を調節する試験化合物の能力を決定することは、例えば、酵素活性の変化、mRNAの破壊、またはそれに類することをモニターすることによって達成されることができる。
【0118】
化合物、例えば、癌マーカー基質または調節因子に結合する癌マーカーを調節する試験化合物の能力も評価されることができる。このことは、例えば、化合物、例えば、基質を放射性同位体または酵素標識と共役させ、それにより化合物、例えば基質の癌マーカーに対する結合が、複合体における標識済み化合物、例えば基質を検出することによって決定されることができることによって達成されることができる。
【0119】
あるいは、癌マーカーは、放射性同位体または酵素標識と共役して、複合体における癌マーカー基質に結合する癌マーカーを調節する試験化合物の能力をモニターする。例えば、化合物(例えば、基質)は、125I、35S、14C、またはHと直接的にまたは間接的にのいずれかで標識されることができ、放射性同位体は、電波放出の直接計数によって、またはシンチレーション計数によって検出されることができる。あるいは、化合物は、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、またはルシフェラーゼで酵素的に標識されることができ、酵素標識は、適切な基質の産物への変換の決定によって検出されることができる。
【0120】
任意の相互反応体の標識を有するまたは有さない癌マーカーと相互作用する化合物(例えば、癌マーカー基質)の能力は評価されることができる。例えば、マイクロフィジオメーターを用いて、化合物または癌マーカーのいずれかの標識なしで、化合物と癌マーカーとの相互作用を検出することができる(McConnell et al. Science 257:1906−1912 [1992])。本明細書で使用する場合、「マイクロフィジオメーター」(例えば、Cytosensor)は、光アドレス可能な電位差測定センサー(LAPS)を用いて、細胞がその環境を酸性化する速度を測定する。この酸性化速度の変化は、化合物と癌マーカーの間の相互作用の指標として用いられることができる。
【0121】
なおも別の実施態様において、癌マーカータンパク質またはその生物活性部分が試験化合物と接触して、癌マーカータンパク質、mRNA、またはその生物活性部分に結合する試験化合物の能力が評価される無細胞アッセイが提供される。本発明のアッセイにおいて使用されるべき癌マーカータンパク質またはmRNAの好ましい生物活性部分には、基質または他のタンパク質との相互作用に関与する断片、例えば、表面への露出のしやすさの高いスコアを有する断片が含まれる。
【0122】
無細胞アッセイは、2つの成分が相互作用して結合することができるのに十分な条件下および時間で、標的遺伝子タンパク質および試験化合物の反応混合物を調製し、したがって、除去および/または検出されることのできる複合体を形成することを包含する。
【0123】
2つの分子間の相互作用は、例えば、蛍光エネルギー転移(FRET)を用いて検出されることもできる(例えば、それらの各々が引用により本明細書に組み込まれるLakowicz et al., 米国特許第5,631,169号;Stavrianopoulos et al., 米国特許第4,968,103号参照)。フルオロフォア標識は、第一のドナー分子の放射する蛍光エネルギーが、第二の「受容体」分子における蛍光標識によって吸収され、「受容体」分子が順に、吸収したエネルギーに応じて蛍光を出すことができるよう選択される。
【0124】
あるいは、「ドナー」タンパク質分子は、トリプトファン残基の天然蛍光エネルギーを単純に利用し得る。異なる波長の光を放射する標識が選択され、それにより「受容体」分子標識は、「ドナー」のものとは分化され得る。標識間のエネルギー転移の効率は、分子を分離する距離と関連しているので、分子間の空間的な関係を評価することができる。結合が分子間で生じる状況において、「受容体」分子指標の蛍光放射は、最大であるべきである。FRET結合事象は、当該技術分野で周知の標準的なフルオロメトリー検出手段を通じて(例えば、フルオロメーターを用いて)、従来どおり測定されることができる。
【0125】
別の実施態様において、標的分子に結合する癌マーカータンパク質またはmRNAの能力を決定することは、リアルタイム生体分子相互作用分析(BIA)を用いて達成されることができる(例えば、Sjolander and Urbaniczky, Anal. Chem. 63:2338−2345 [1991]およびSzabo et al. Curr. Opin. Struct. Biol. 5:699−705 [1995]参照)。「表面プラズモン共鳴」または「BIA」は、任意の相互作用体を標識せずに、リアルタイムで生体特異的相互作用を検出する(例えば、ビアコア)。(結合事象を示す)結合表面における質量の変化は結果的に、表面近くの光の屈折率の変化を生じ(表面プラズモン共鳴(SPR)の任意の現象)、結果的に生体分子間のリアルタイム相互作用の表示として用いられることのできる検出可能なシグナルを生じる。
【0126】
一実施態様において、標的遺伝子産物または試験基質は、固相に固定される。固相二固定された標的遺伝子産物/試験化合物複合体は、反応の終了時に検出されることができる。好ましくは、標的遺伝子産物は、固相表面に固定されることができ、(固定されていない)試験化合物は、本明細書で論議される検出可能な標識を用いて直接的にまたは間接的に野いずれかで標識されることができる。
【0127】
抗癌マーカー抗体またはその標的分子である癌マーカーを固定して、タンパク質の1つまたは両方の非複合体形成形態から複合体形成形態を分離するのを容易にし、およびアッセイの自動化を収容することは、望ましくあり得る。候補化合物の存在下および不在下での試験化合物の癌マーカータンパク質に対する結合または癌マーカータンパク質と標的分子との相互作用は、反応体を含むのに好適な任意の容器において達成されることができる。このような容器の例には、マイクロタイタープレート、試験管、および微量遠心チューブが挙げられる。一実施態様において、1つまたは両方のタンパク質がマトリックスに結合することのできるドメインを付加する融合タンパク質を提供することができる。例えば、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ−癌マーカー融合タンパク質またはグルタチオン−S−トランスフェラーゼ/標的融合タンパク質は、グルタチオンセファロースビーズ(Sigma Chemical, St. Louis, MO)またはグルタチオンにより誘導体化されたマイクロタイタープレートへと吸着されることができ、次に、試験化合物または試験化合物および吸着していない標的タンパク質もしくは癌マーカータンパク質と組み合わされ、複合体形成するための伝導性の条件下で(例えば、塩およびpHについての生理学的条件において)混合物をインキュベートする。インキュベーション後、例えば、先に説明したとおり、ビーズまたはマイクロタイタープレートウェルを洗浄して、任意の結合していない成分、ビーズの場合固定したマトリックスを除去し、複合体を直接的にまたは間接的にのいずれかで決定する。
【0128】
あるいは、複合体は、マトリックスから解離されることができ、癌マーカーの結合または活性のレベルは、標準的な技術を用いて決定されることができる。マトリックスにおいて癌マーカータンパク質または標的分子のいずれかを固定するための他の技術には、ビオチンおよびストレプトアビジンの抱合を用いることが挙げられる。ビオチン化した癌マーカータンパク質または標的分子は、当該技術分野で公知の技術(例えば、ビオチン化キット、Pierce Chemicals, Rockford, EL)を用いてビオチン−NHS(N−ヒドロキシ−スクシンイミド)から調製され、ストレプトアビジンで被覆した96ウェルプレート(Pierce Chemical)のウェルにおいて固定されることができる。
【0129】
アッセイを実施するために、固定されていない成分を、固定した成分を含む被覆した表面に添加する。反応が完了した後、反応していない成分を、形成された任意の複合体が固相表面に固定されたままであるような条件下で(例えば、洗浄によって)除去される。固相表面に固定された複合体の検出は、いくつかの方法において達成されることができる。すでに固定されていない成分があらかじめ標識されている場合、表面に固定された標識の検出は、複合体が形成されたことを示す。すでに固定されていない成分があらかじめ標識されていない場合、間接的な標識を用いて、例えば、固定された成分に特異的な標識された抗体を用いて表面に固定された複合体を検出することができる(抗体は順に、例えば、標識済み抗IgG抗体で直接標識されるかまたは間接的に標識されることができる)。
【0130】
このアッセイは、癌マーカータンパク質とその標的分子との結合に干渉しない癌マーカータンパク質または標的分子と反応する抗体を利用して実施される。このような抗体は、プレートのウェルに誘導退化されることができ、結合していない標的または癌マーカータンパク質は、抗体抱合によってウェルに捕捉される。GSTにより固定された複合体について先に説明したものに加えて、このような複合体を検出するための方法には、癌マーカータンパク質または標的分子と反応する抗体を用いた複合体の免疫検出、および癌マーカータンパク質または標的分子と関連する酵素活性を検出することによる酵素結合アッセイが挙げられる。
【0131】
あるいは、無細胞アッセイは、液相において実施されることができる。このようなアッセイにおいて、反応産物は、差次的遠心分離(例えば、Rivas and Minton, Trends Biochem Sci 18:284−7 [1993]参照)、クロマトグラフィー(ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー)、電気泳動(例えば、Ausubel et al., eds. Current Protocols in Molecular Biology 1999, J. Wiley: New York.参照)、および免疫沈降(例えば、Ausubel et al., eds. Current Protocols in Molecular Biology 1999, J. Wiley: New York参照)を含むがこれらに限定されない任意のいくつかの標準的な技術によって、未反応成分から分離される。このような樹脂およびクロマトグラフィー技術は、当業者に公知である(例えば、Heegaard J. Mol. Recognit 11:141−8 [1998]、Hageand Tweed J. Chromatogr. Biomed. Sci. App1 699:499−525 [1997]参照)。さらに、蛍光エネルギー転移は、本明細書に説明されるように簡便に利用され、溶液から複合体の更なる精製をせずに結合を検出し得る。
【0132】
前記アッセイには、癌マーカーを結合してアッセイ混合物を形成する公知の化合物と癌マーカータンパク質、mRNAまたはそれらの生物活性部分を接触させて、アッセイ混合物を形成すること、アッセイ混合物を試験化合物と接触させること、癌マーカータンパク質またはmRNAと相互作用する試験化合物の能力を決定することが含まれることができ、この中で、癌マーカータンパク質またはmRNAと相互作用する試験化合物の能力を決定することには、公知の化合物と比較して、癌マーカーもしくはその生物活性部分に優先的に結合する、または標的分子の活性を調節する試験化合物の能力を決定することが含まれる。
【0133】
癌マーカーが、タンパク質などの1つ以上の細胞のまたは細胞外のマクロ分子とインビボで相互作用することができる程度まで、このような相互作用の阻害薬は有用である。均質なアッセイを用いて、阻害薬を同定することができる。
【0134】
例えば、標的遺伝子産物と相互作用する細胞のまたは細胞外の結合パートナー産物とのあらかじめ形成された複合体は、標的遺伝子産物またはその結合パートナーのいずれかが標識されるが標識によって生じたシグナルが、複合体形成によりクエンチされるよう調製される(例えば、イムノアッセイのためのこのアプローチを利用する、引用により本明細書に組み込まれる米国特許第4,109,496号参照)。あらかじめ形成された複合体由来の種の1つと競合してそれをはずす試験基質の添加は結果的に、背景を上回るシグナルの発生を生じる。この方法で、遺伝子産物結合パートナー相互作用を中断する試験物質を同定することができる。あるいは、癌マーカータンパク質を2ハイブリッドアッセイまたは3ハイブリッドアッセイにおける「餌タンパク質」として用いて(例えば、それらの各々が引用により本明細書に組み込まれる米国特許第5,283,317号;Zervos et al., Cell 72:223−232 [1993];Madura et al., J. Biol. Chem. 268.12046−12054 [1993];Bartel et al., Biotechniques 14:920−924 [1993];Iwabuchi et al., Oncogene 8:1693−1696 [1993];およびBrent W0 94/10300)癌マーカーに結合しまたはそれと相互作用して癌マーカー活性に関与する他のタンパク質(「癌マーカー結合タンパク質」または「癌マーカーbp」)を同定することができる。このような癌マーカーbpは、癌マーカータンパク質または標的を、例えば、癌マーカー仲介性シグナル伝達経路の下流エレメントとしての癌マーカータンパク質または標的によるシグナルの活性化因子または阻害因子であることができる。
【0135】
癌マーカー発現の調節因子も同定することができる。例えば、細胞または無細胞混合物を候補化合物と接触させ、癌マーカーmRNAまたはタンパク質の発現を、候補化合物の不在下で癌マーカーmRNAまたはタンパク質の発現のレベルに対して評価する。癌マーカーmRNAまたはタンパク質の発現が、候補化合物の不在下よりもその存在下で大きな場合、候補化合物は、癌マーカーmRNAまたはタンパク質の発現の刺激因子として同定される。あるいは、癌マーカーmRNAまたはタンパク質の発現が候補化合物の不在下よりもその存在下で小さな場合、候補化合物は、癌マーカーmRNAまたはタンパク質発現の阻害薬として同定される。癌マーカーmRNAまたはタンパク質発現のレベルは、癌マーカーmRNAまたはタンパク質を検出するための本明細書に説明される方法によって決定されることができる。
【0136】
調節薬は、細胞ベースのアッセイまたは無細胞アッセイを用いて同定されることができ、癌マーカータンパク質の活性を調節する薬剤の能力は、例えば、疾患のための動物モデルなどの動物(例えば、前立腺癌もしくは転移性前立腺癌を有する動物)、または動物(例えば、ヒト)由来の前立腺癌の異種移植片を有する動物、または前立腺癌の(例えば、リンパ節、骨、または肝臓への)転移から結果として生じる癌由来の細胞、または前立腺癌細胞株由来の細胞においてインビボで確認されることができる。
【0137】
本発明はさらに、上記のスクリーニングアッセイによって同定される新規の薬剤に関する(例えば、癌療法に関する下記の説明)。したがって、適切な動物モデル(本明細書に説明されるものなど)における本明細書に説明されるように同定された薬剤(例えば、癌マーカー調節薬、アンチセンス癌マーカー核酸分子、siRNA分子、癌マーカー特異的抗体、または癌マーカー結合パートナー)をさらに使用して、このような薬剤を用いた治療の有効性、毒性、副作用、または作用機序を決定することは、本発明の範囲内である。さらに、上記のスクリーニングアッセイによって同定された新規の薬剤は、例えば、本明細書で説明されるような治療に用いられることができる。
【0138】
(V.トランスジェニック動物)
本発明は、本発明の外生の癌マーカー遺伝子(例えば、遺伝子融合)またはその突然変異体およびバリアント(例えば、トランケーションまたは単一ヌクレオチド多型)を含むトランスジェニック動物の作出を熟慮する。好ましい実施態様において、トランスジェニック動物は、野生型動物と比較して変化した表現型(例えば、マーカーの増大したまたは低下した存在)を示す。このような表現型の存在または不在を分析するための方法には、本明細書に開示されたものが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの好ましい実施態様において、トランスジェニック動物はさらに、腫瘍の亢進したもしくは低下した発達、または癌の証拠を示す。
【0139】
本発明のトランスジェニック動物は、薬物(例えば癌療法)のスクリーニングにおける使用を見出す。いくつかの実施態様において、試験化合物(例えば、癌を治療するのに有用であると思われる薬物)および対照化合物(例えば、偽薬)をトランスジェニック動物および対照動物に投与して、その効果を評価する。
【0140】
トランスジェニック動物は、種々の方法を介して作出されることができる。いくつかの実施態様において、種々の発達段階における胚細胞を用いて、トランスジェニック動物の作出のための導入遺伝子を導入する。胚細胞の発達段階に応じて、異なる方法が用いられる。接合子は、微量注入のための最良の標的である。マウスにおいて、雄性前核は、1〜2ピコリットル(pL)のDNA溶液の再現可能な注射を可能にする直径およそ20マイクロメーターの大きさに達する。遺伝子転移のための標的としての接合子の使用は、最初の分割の前に宿主ゲノムへと組み込まれる(Brinster et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:4438−4442 [1985])。結果として、トランスジェニック非ヒト動物のすべての細胞は、組み込まれた導入遺伝子を保有する。このことは、一般に、生殖細胞の50%が導入遺伝子を有するので、創始者の子孫への導入遺伝子の効率的な伝達にも反映される。米国特許第4,873,191号は、接合子の微量注入のための方法を説明し、この特許の開示は、そのすべての内容が全体として本明細書に組み込まれる。
【0141】
他の実施態様において、レトロウイルス感染を用いて、非ヒト動物へ導入遺伝子を導入する。いくつかの実施態様において、レトロウイルスベクターを利用して、レトロウイルスベクターを卵母細胞の囲卵空間へと注入することによって、卵母細胞を形質移入する(引用により本明細書に組み込まれる米国特許第6,080,912号)。他の実施態様において、発達中の非ヒト胚は、インビトロで胚盤胞期へと培養されることができる。このときの間、割球は、レトロウイルス感染のための標的であることができる(Janenich, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 73:1260 [1976])。割球の効率的な感染は、透明帯を除去する酵素処理によって得られる(Hogan et al., in Manipulating the Mouse Embryo, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. [1986])。導入遺伝子を導入するために用いられるウイルスベクターの系は典型的には、導入遺伝子を保有する複製欠損型レトロウイルスである(Jahner et al., Proc. Natl. Acad Sci. USA 82:6927 [1985])。形質移入は、ウイルス産生細胞の単層上で割球を培養することによって容易にかつ効率的に得られる(Stewart, et al., EMBO J., 6:383 [1987])。あるいは、感染は、より後期に実施されることができる。ウイルスまたはウイルス産生細胞は、卵割腔へと注射されることができる(Jahner et al., Nature 298:623 [1982])。創始者のほとんどは、トランスジェニック動物を形成する細胞のサブセットにおいてのみ、組み込みが生じるので、導入遺伝子についてモザイク状である。さらに、創始者は、子孫において一般的に分離するゲノムにおける異なる位置で導入遺伝子の種々のレトロウイルス挿入を含み得る。加えて、低い効率性にもかかわらず、妊娠中期胚の子宮内レトロウイルス感染によって、生殖細胞系へと導入遺伝子を導入することもできる(Jahner et al., 上述[1982])。レトロウイルスまたはレトロウイルスベクターを用いて、当業者に公知のトランスジェニック動物を作出する追加的な手段は、レトロウイルス粒子またはレトロウイルスを産生するマイトマイシンCで処理した細胞の、受精卵または初期胚の囲卵空間への微量注入を包含する(国際公開第90/08832 [1990]、およびHaskell and Bowen, Mol. Reprod. Dev., 40:386 [1995])。
【0142】
他の実施態様において、導入遺伝子は、胚性幹細胞へと導入され、形質移入された幹細胞を利用して、胚を形成する。ES細胞は、適切な条件下で未着床胚をインビトロで培養することによって得られる(Evans et al., Nature 292:154 [1981]、Bradley et al., Nature 309:255 [1984]、Gossler et al., Proc. Acad. Sci. USA 83:9065 [1986]、およびRobertson et al., Nature 322:445 [1986])。導入遺伝子は、リン酸カルシウム共沈殿、原形質体またはスフェロプラストの融合、リポフェクション、およびDEAE−デキストラン仲介性形質移入を含む、当該技術分野で公知の種々の方法によるDNA形質移入によってES細胞へと効率的に導入されることができる。導入遺伝子はまた、レトロウイルス仲介性形質導入によって、または微量注入によって、ES細胞へと導入され得る。このような形質移入されたES細胞はその後、胚盤胞期胚の胞胚腔への導入後に胚をコロニー形成することができ、結果として生じるキメラ動物の生殖系列に寄与することができる(総説については、Jaenisch, Science 240:1468 [1988]参照)。形質移入したES細胞の胞胚腔への導入の前に、形質移入したES細胞は、種々の選択プロトコールに供され、導入遺伝子がこのような選択のための手段を提供すると想定する導入遺伝子を統合したES細胞を濃縮する。あるいは、ポリメラーゼ連鎖反応を用いて、導入遺伝子を統合したES細胞についてスクリーニングしてよい。この技術は、胞胚腔への転移前の適切な選択条件下で、形質移入されたES細胞の増殖についての必要性を除去する。
【0143】
まだ他の実施態様において、均質な組換えを利用して、遺伝子機能をノックアウトしまたは欠失突然変異体(例えば、トランケーション突然変異体)を作出する。均質な組換えのための方法は、引用により本明細書に組み込まれる米国特許第5,614,396号において説明される。
【実施例】
【0144】
(実験)
以下の実施例は、本発明のある好ましい実施形態および態様を示しかつさらに説明するために提供されるものであり、その範囲を制限するものとして解釈されるべきではない。
【0145】
(実験1:RAF遺伝子融合)
(材料および方法)
(全長融合転写産物のクローニング)
全長の融合転写産物SLC45A3−BRAFおよびRAF−ESRP1をpCR8/GW/TOPOエントリーベクター(Invitrogen, USA)へと、製造元の説明書にしたがってTAクローニング法によってクローン化した。融合転写産物を後に、Gateway pcDNADEST40哺乳類発現ベクター(Invitrogen, USA)およびpAd/CMV/V5−DEESTアデノウイルス発現系(Invitrogen, USA)へと、製造元の説明書にしたがってLRクロナーゼII酵素反応によって組換えた。
【0146】
(ウェスタンブロッティング)
ESRP1−RAF1融合陽性前立腺癌組織および融合陰性組織をNP溶解緩衝液(50 mM Tris−HCl, 1%NP40, pH 7.4, Sigma, St. Louis, MO)、および完全プロテアーゼ阻害薬混合物(Roche, Indianapolis, IN)、およびホスファターゼ阻害剤(EMD bioscience, San Diego. CA)において均質化した。融合陽性組織における融合タンパク質の発現を試験し、分子量を評価するために、HEK293細胞にESRP1−RAF1融合コンストラクト(pDEST40発現ベクターにおいてクローン化−Invitrogen, Carlsbad CA)およびベクター対照を形質移入し、プロテアーゼ阻害剤を有するNP40溶解緩衝液において溶解した。15マイクログラムの各タンパク質抽出物を試料緩衝液中で煮沸し、SDS−PAGEによって分離し、ポリビニリデンジフルオリドメンブレンへと転写した(GE Healthcare, Piscatawa, NJ)。メンブレンをブロッキング緩衝液(トリス緩衝塩類溶液、0.1%トゥイーン(TBS−T)、5%無脂肪乾燥乳)において1時間インキュベートし、抗RAF1マウスモノクローナル抗体(ブロッキング緩衝液中で1:1000、BD bioscience, San Jose, CA, カタログ番号610151)とともに4℃で一晩インキュベートした。TBS−Tによる3回の洗浄後、ブロットを西洋ワサビペルオキシダーゼ抱合二次抗体とともにインキュベートし、シグナルを製造元(GE Healthcare)によって説明されるように高感度化学発光系によって可視化した。ブロットを抗ベータアクチンマウスモノクローナル(1:5000、Sigmaカタログ番号A5441)抗体で再度プローブした。
【0147】
(遺伝子座形成アッセイ)
製造元のプロトコール(Roche Applied Sciences)にしたがって、Fugene 6を用いて形質移入を実施した。35mmプラスチック皿におけるNIH3T3細胞(1.5×10)に目的の2μgのプラスミドDNAを形質移入した。融合転写産物SLC45A3−Braf、エクソン8−Braf、エクソン10−Braf、および突然変異体V600Eについてのプラスミドを、対照プラスミド(それぞれpDEST40およびpBABE)とともに用いた。形質移入の3日後、細胞を5%CS入りのDMEM(Life Technologies)を含む140mmの皿へと分けた。培養物に3〜4日間ごとに養分を与えた。3週間後、5%CS入りのDMEMにおいて培養した細胞を遺伝子座の可視化のために70%エタノールにおける0.2%クリスタルバイオレットで染色し、コロニー計数装置で計数した(Oxford Optronix Ltd., Oxford UK, ソフトウェアv4.1, 2003)。遺伝子座の計数を手動でさらに確認した。
【0148】
(WST−1アッセイ)
各処理について、等量の細胞を96ウェルプレートへとWST−1アッセイのために、Boyden浸潤チャンバーへと浸潤アッセイのために蒔種した。WST−1増殖アッセイを製造元のプロトコール(Roche, Indianapolis, IN, USA)を用いて実施した。浸潤アッセイを、すでに説明されたとおりに実施した(Kleer et al. PNAS 2003、Cao et al. Oncogene 2008)。
【0149】
(ピロシーケンスによるBRAFコドンV600E突然変異検出)
新鮮凍結限局性前立腺癌(n=42)、転移性前立腺癌(n=21)、および良性前立腺(n=5)の組織試料から単離された1〜2μgの全RNA、ならびに黒色腫(11)、膵癌(8)、および乳癌(8)の細胞株のパネルを、製造元の説明書にしたがって、Superscript II逆転写酵素(Invitrogen)を用いてcDNAへと変換した。ビオチン化した配列決定テンプレートを、製造元の説明書にしたがって、PyroMark Q24 BRAFキット(Biotage−Qiagen)からプライマーを用いてBRAF遺伝子のコドン600における突然変異(V600E、エクソン15)に及ぶ375bp断片のPCR増幅によって生じた。10マイクロリットルのビオチン化PCR産物をストレプトアビジン被覆したセファロースビーズ(高性能ストレプトアビジンセファロース、GE Healthcare)において、Pyromark Q24真空プレップワークステーションを用いて固定した後、水酸化ナトリウム変性によってビオチン化していない鎖を除去した後、中和緩衝液および70%エタノールにおいて洗浄した。次に、一本鎖ビオチン化テンプレートを0.3mM配列決定プライマーと混合し、「合成による配列決定」を、先に説明したように、PyroMark Q24プラットフォームを用いて問題のヌクレオチド配列の配剤を通じて実施した(Edlundh−Rose, Egyhazi et al. Melanoma Res. 16:471 2006;Spittle, Ward et al. J. Mol. Diagn. 9:464 2007)。コドン600についてのヌクレオチド配列ACAGA/TGAAA(配列番号4)を分析し、Pyromark Q24 1.0.10ソフトウェアによって可視化した。公知の突然変異状態を有する9個の黒色腫細胞株のパネル(sk−mel−2、sk−mel−5、sk−mel−19、sk−mel−28、sk−mel−29、sk−mel−103、G−361、Malme−3M、mel−1)を用いて、アッセイ標準物質として供した。
【0150】
(リアルタイムPCR検証)
定量的PCR(QPCR)を、Applied Biosystems Step One Plus Real Time PCR SystemにおけるPower SYBR Green Mastermix(Applied Biosystems, Foster City, CA)を用いて実施した。すべてのオリゴヌクレオチドプライマーをIntegrated DNA Technologies (Coralville, IA)から得ており、表3に列挙する。GAPDHプライマーを対照として用いた。すべてのアッセイを2回反復して実施し、結果をGAPDHに対する平均倍数変化としてプロットした。
【0151】
(蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH))
FISHハイブリダイゼーションを、前立腺癌組織マイクロアレイ(TMA)および個々の切片を用いて、腫瘍細胞に関して実施した。BACクローンをUCSCゲノムブラウザから選択し、BACPAC源(Children’s Hospital, Oakland, CA)を通じて購入した。コロニー精製の後、中間量の調製DNAをQiagenTips−100(Qiagen, USA)を用いて調製した。DNAをビオチン−16−dUTPおよびジゴキシゲニン−11−dUTPを用いるニック翻訳法(Roche, USA)によって標識した。プローブDNAを沈殿させ、50%ホルムアミド、2×SSC、10%硫酸デキストラン、および1%デンハルト溶液を含むハイブリダイゼーション混合物において溶解した。約200ngの標識済みプローブを正常ヒト染色体とハイブリダイズさせ、各BACクローンのマップ位置を確認した。FISHシグナルを、抗ジゴキシゲニン−フルオレセインおよびアレクサフルオル594抱合体を用いて得、緑色および赤色をそれぞれ得た。蛍光画像を、ISIS画像処理ソフトウェア(Metasystems, Germany)によって制御された高解像度CCDカメラを用いて捕捉した。
【0152】
(結果)
SLC45A3−BRAF融合転写産物は、エクソン8を先へ転写すると推定され(図10に強調)、それゆえ、BRAFのキナーゼドメインも含む。図11は、染色体間遺伝子融合転写産物SLC45A1−BRAFの対形成した末端トランスクリプトーム発見を示す。図12は、癌によるBRAF融合転写産物を示す。図13は、いくつかの遺伝子の発現レベルの箱プロットを示す。図14は、SLC45A3の雄性ホルモン調節を示す。左上のパネルは、SLC45A3が雄性ホルモン処理に応答することを示すRNA−Seq遺伝子発現を示す。右上のパネルは、SLC45A3のAR調節の定量的RT−PCR確認を示す。右下のパネルは、SLC45A3のERGおよびAR調節を表すChIP−Seqピークを強調するUCSCスクリーンショットを示す。
【0153】
図1は、ETS陰性前立腺癌におけるSLC45A3−BRAFおよびESRP1−RAF1およびRAF1−ESRP1遺伝子融合の発見を示す。図1の(a)は、FLJ35294−ETV1(上)、TMPRSS2−ERG(中)、SLC45A3−BRAF(左下)、ならびにESRP1−RAF1およびRAF1− ESRP1(右下)をそれぞれ有する臨床的に限局性の前立腺腫瘍試料PCA1、PCA2、PCA3、およびPCA17における遺伝子融合指名スコアのヒストグラムを示す。図1(b)は、SLC45A3とBRAFの間の染色体間遺伝子融合を支持する対形成した末端読み取りの模式図を示す。BRAF遺伝子におけるプロテインキナーゼ様ドメインは、融合事象後に無処置のままである。(cおよびd)対形成した末端読み取りの模式図は、相反性融合遺伝子ESRP1−RAF1およびRAF1−ESRP1を結果として生じるESRP1とRAF1の間の染色体間遺伝子融合を支持する。
【0154】
図2は、SLC45A3−BRAF、ESRP1−RAF1およびRAF1−ESRP1遺伝子融合の発現の検証を示す。図2の(a)PCA3におけるSLC45A3−BRAF遺伝子融合の定量的RT−PCR検証および(b)エクソン1〜7に対するBRAFエクソン8〜18の高レベルの発現を示すエクソンに及ぶプライマーを用いるエクソン特異的PCR。図2の(c)は、PCA17におけるESRP1−RAF1およびRAF1−ESRP1相反性遺伝子融合の定量的RT−PCR検証を示す。図2の(d)は、PCA3およびPCA17それぞれにおけるSLC45A3−BRAF(左)およびESRP1−RAF1(右)のFISH検証を示す。個々のシグナルは、PCA3における正常第1および第7染色体(SLC45A3およびBRAF)ならびにPCA17における第8および第3染色体(ESRP1およびRAF1)を示す。共局在シグナル(矢印)は、5’および3’パートナー遺伝子の5’および3’末端からそれぞれBACクローンを用いて検出される融合事象を示す。腫瘍PCA3は、2コピーの再配列した染色体を示す。図2の(e)は、PCA17からクローン化されたESRP1−RAF1全長融合コンストラクトを形質移入されたPCA17におけるおよびHEK293細胞における120kDaのESRP1−RAF1融合タンパク質の発現を示すウェスタンブロット分析を示す。
【0155】
図3は、SLC45A3−BRAF融合転写産物によるNIH3T3細胞の形質転換を示す。図3のa)は、NIH3T3細胞における融合コンストラクトSLC45A3−BRAF、BRAF EX8−stop、BRAF EX10−stop、BRAF突然変異体V600Eおよびベクター対照(融合転写産物のためのpDEST40および突然変異体V600EのためのpBABE)による遺伝子座誘導を示す。示されるコンストラクトを形質移入したNIH3T3細胞を、遺伝子座形成能について評価した。各試料について示される代表的なプレートおよび遺伝子座形成の定量を2つの独立した実験からの棒グラフ(b)において示す。図3のcは、SLC45A3−BRAF融合が、細胞の増殖および浸潤を促進することを示す。WST−1アッセイを、示される時点で実施し、吸光度を450nmで測定した。誤差棒は平均値の標準誤差を表す。P値をDMSO処理した細胞と比較したt検定によって算出した。
【0156】
図4は、BRAF(A)およびRAF1(B)正常および融合転写産物のエクソン構造を示す。キナーゼドメインは、BRAFおよびRAF1の両融合遺伝子において保有される。SLC45A3−BRAF融合は、全キナーゼドメインを保有する短縮BRAF遺伝子の発現を結果的に生じる。120kDa融合の形成を結果として生じる、1060アミノ酸のオープンリーディングフレームを有する4.2kbの融合転写産物であるESRP1−RAF1融合を発現させた。
【0157】
図5は、BRAFおよびRAF1遺伝子再配列のゲノム組織化およびFISH検証を示す。(a)および(b)の上パネルにおける模式図は、SLC45A3およびBRAFおよびESRP1およびRAF1遺伝子のそれぞれのゲノム位置を示す。BACクローン同定番号を有する四角形は、FISH分析に用いられる5’および3’BACクローンを示す。(a)および(b)における下のパネルは、正常細胞および腫瘍細胞におけるFISH分析を示す。BRAF分岐プローブは、2コピーの再配列した染色体(矢印)を示し、SLC45A3 5’−BRAF 3’融合プローブは、2コピーの融合シグナルを示す。RAF1分岐プローブは、正常細胞における2つの共局在シグナルおよび腫瘍細胞における再配列したシグナルパターンを示す。ESRP1分岐プローブは、腫瘍細胞における再配列を示す。5’ESRP1プローブおよび3’RAF1プローブは、正常細胞における個別のシグナルおよび腫瘍細胞における1つの融合シグナルを示す。
【0158】
図6は、正常試料(NOR9)および発端者(PCA3)におけるBRAFのRNA−seqエクソン被度を示す。エクソンを、灰色の交互の影において下に示す。棒は、エクソンにわたるヌクレオチドの被度を強調する。
【0159】
図7は、ETV1およびBRAF RNA−Seq外れ値発現特性を示す。試料を良性または腫瘍前立腺試料として分類する。腫瘍試料をさらに、ETS−試料およびETV1+試料に分類する。
【0160】
図8は、融合転写産物SLC45A3−Braf、BRAF Ex8−stop、およびBRAF Ex10−stop、ならびにpDEST40ベクターを発現するNIH3T3細胞の遺伝子座頻度の比較を示す。融合転写産物SLC45A3−BRAF、BRAF Ex8−stop、BRAF Ex10−stop、およびベクター対照(pDEST40)を発現するNIH3T3細胞の遺伝子座密度を、コロニー計数装置を用いて評価した(Oxford Optronix Ltd., Oxford UK, ソフトウェアv4.1, 2003)。最小コロニー半径および最大コロニー半径についての値をそれぞれ0.10mmおよび2.75mmに設定したのに対し、最小コロニー密度を0.15光学密度(OD)で固定した。棒ダイアグラムは、x軸における光学密度の範囲(0.01〜0.65OD)に収まるy軸における遺伝子座の頻度を示す。
【0161】
図9は、BRAF V600E突然変異状態を示す代表的なピログラムを示す(陰影のついた灰色)。ヌクレオチド配剤順序ACAGA/TGAAA(配列番号5)は、BRAF遺伝子のコドン600における可変位置A/Tについてアッセイする。上のピログラムは野生型(T/T)を、真ん中は突然変異体/野生型(A/T)を、下は(A/A)遺伝子型を表す。
【0162】
表1は、前立腺癌におけるBRAFおよびRAF1遺伝子再配列の発生率についてのFISH評価を示す。
【表1】

【0163】
表2は、ピロシーケンスによって決定されたBRAF突然変異V600E遺伝子型を示す。
【表2】

【0164】
表3は、クローン化および検証に用いられるプライマー配列を示す。
【表3】

【0165】
(実施例2:RAS遺伝子融合)
(A.材料および方法)
(急性リンパ芽球性白血病および前立腺癌についてのアレイCGH/SNPデータセットの分析)
Affymetrix SNPアレイについて、モデルベースの発現を実施して、各プローブセットについてのシグナル強度を、完全マッチ/ミスマッチ(PM/MM)モデルを用いて要約した。コピー数の干渉について、各SNPプローブセットの要約されたシグナル強度を、複相体基準セットの試料と比較することによって、試料の生コピー数を各腫瘍試料について算出した。Agilent2チャネルアレイCGHデータセットにおいて、処理された試験チャネルシグナルと処理された基準チャネルシグナルとの差次的な比を算出した。結果として生じる相対的なDNAコピー数データすべてをlog2変換し、それは、試験試料と基準試料の間のDNAコピー数を反映する。コピー数の概算の正確性を改良するために、基準セットの標準化方法を採用した。各試料について、非性染色体を30Mb領域単位に分けた。各領域由来のプローブについての相対的なDNAコピー数データの絶対平均を算出し、他の領域と比較した。各試料において最小の絶対平均を有する2つの領域由来のプローブを、最小のDNAコピー数異常を有する染色体領域を表す内部基準セットとして拾い上げた。各試料について、ログ比を基準プローブセットについて0モデル仮定の下で0の平均で正常分布に変換した。標準化方法をパールプログラミングによって実施した。
【0166】
(増幅不連続点階級分けおよび集合(ABRA))
ABRA分析は3工程を有する。第一に、アレイCGHまたはアレイSNPデータセット由来のコピー数データを環状二進法セグメント化(CBS)アルゴリズムによってセグメント化した(Karnoub et al., Nat Rev Mol Cell Biol 9, 517 (Jul, 2008))。増幅レベルを、増幅の相対的コピー数データを隣接するセグメントと比較することによって決定し、2コピー数以上の増加を有する不連続点を選択した(≧0.75)。500kb超にわたる増幅は、分析に含まれる。各増幅不連続点のゲノム位置を、すべてのヒト遺伝子のゲノム領域でマッピングした。各ヒト遺伝子のゲノム領域を、遺伝子の5’に最も接近する転写産物バリアントの開始、および遺伝子の3’に最も接近するバリアントの終了として指定した。部分的に増幅された遺伝子を増幅の不連続点と遺伝子配置との関係に基づいて、候補5’および3’パートナーへと分類した。5’増幅した遺伝子は、5’パートナーとして考えられ、3’増幅した遺伝子は、3’パートナーとして考えられる。第二に、部分的に増幅した「癌遺伝子」を駆動融合遺伝子候補物として同定した。このことは、癌遺伝子人口調査によって規定された公知の癌遺伝子に3’増幅した遺伝子をマッピングすることによって達成された。癌の根底にある部分的に増幅された遺伝子の関連性を評価するために、公知の癌遺伝子において頻繁に見出される「分子概念」との関係に基づいて生物学的に意味のある遺伝子を優先的に同定することのできる「概念署名技術」(ConSig)法(Moul et al., Prostate 20, 327 (1992))を用いた。このスコアは、3’融合遺伝子とは特に区別される(Moul et al., 上述)。許容し得る不連続点(下記の基準、図20A参照)を有する3’増幅した遺伝子を、(簡潔なConSigスコアにおける)それらの放射状概念署名スコアによって階級分けした。上位にスコア化された3’増幅した癌遺伝子は、駆動融合遺伝子候補物として考えられた。第三に、選択された3’増幅された遺伝子についての増幅レベルを、推定5’パートナーを指名するための同じ細胞株から5’増幅した遺伝子とマッチさせた。不連続点の実際の位置および質を、DNAコピー数データのセグメント化されていない相対的な定量で手動で管理した。増幅不連続点が許容し得ない場合の状況は、(図20)である:
(1)複数の遺伝子内不連続点;
(2)候補は、増幅不連続点に最も近い遺伝子ではなく;
(3)増幅は、既存のコピー数の増加から開始し、不連続点は鋭くはなく;
(4)不連続点は、染色体の動原体または末端に位置し;
(5)不連続点は、増幅内の小さな欠失の結果であり;
(6)不連続点は、大部分の試料において見出される。
【0167】
セグメント化プロセスが、実際の位置からの不連続点のわずかに異なる概算を有し得ることは起こり得る。このことは、不連続点の集合と関連している。この問題を克服するために、遺伝子の10kb上流および1kb下流領域内のDNA不連続点を、不連続点の階級分けの間にこの遺伝子に割り当て、20kb上流および下流は、不連続点の集合の間であった。実際、このウィンドウを調整して、ABRA分析の性能を改良することができる。
【0168】
合計で、6つの5’増幅した遺伝子がK−562において見出され、4つがABL1の3’増幅レベルとマッチした。キュレーション後、2つの遺伝子BCRおよびNUP214のみが、許容し得る不連続点を有していた。DU145において、8個および6個の5’増幅した遺伝子が、それぞれ2つの複製ハイブリダイゼーションから見出された(表4)。キュレーション後、UBE2L3−KRAS、SOX5−KRAS、およびC14orf166−KRASを実験的検証のために選択した。次に、プライマーを、候補5’パートナーの第一のエクソンおよび候補3’パートナーの最後のエクソン、ならびに不連続点の隣のエクソンから設計し、推定融合を試験した。
【0169】
(細胞株および組織)
良性不死化前立腺細胞株RWPE、前立腺癌細胞株DU145、PC3、Ca−HPV−10、WPE1−NB26、およびNCI−H660、線維芽細胞株NIH3T3、ならびにヒト胚性腎臓細胞株HEKをアメリカ合衆国培養細胞系統保存機関,(Manassas, VA)から得た。初代良性前立腺上皮細胞(PrEC)をCambrex Bio Science(Walkersville, MD)から得た。VCaPは、ホルモン難治性転移性前立腺癌を有する患者からの脊椎転移に由来した(Seeburg et al., Nature 312, 71 (Nov 1−7, 1984))。組織は、両方ともミシガン大学前立腺癌専門優良研究(University of Michigan Prostate Cancer Specialized Program of Research Excellence)(S.P.O.R.E.)組織コアの一部であるミシガン大学(University of Michigan)における前立腺全摘除術および迅速剖検材料からであった。組織は、ウルム大学病院(University Hospital Ulm)(Ulm, Germany)において前立腺全摘除術からも得た。患者にインフォームドコンセントとともに、各施設において事前に施設内治験審査委員会の認可をうけ、すべての試料を回収した。良性前立腺組織全RNAのプールをClontech実験室(Mountain View, CA)から得た。すべての試料由来の全RNAを製造元のプロトコールに従ってトリゾール(Invitrogen, Carlsbad, CA)を用いて単離した。RNAの完全性をAgilent Bioanalyzer 2100(Agilent Technologies, Palo Alto, CA)によって確認した。
【0170】
(マイクロアレイ比較ゲノムハイブリダイゼーション(アレイCGH))
前立腺癌細胞株における潜在的な駆動遺伝子融合を指名するために、22RV1、C4−2B、CA−hpv−10、DU145、LAPC4、MDAPCa−2b、NCI660、PC3、VCaP、およびWPE1−NB26を含む10の前立腺癌細胞株をAgilent−014698 Human Genome CGH Microarray 105A(Agilent Technologies, Palo Alto, CA)に関して表した。すべての細胞株を、流通業者の説明書に従って、全血清において増殖させた。細胞株から抽出されたゲノムDNAを、製造元のプロトコールに従って、アレイフォーマットにおいて印字されたオリゴヌクレオチドに対する基準ヒト雄性ゲノムDNA(6個の正常個体、Promega, #G1471)に対してハイブリダイズした。各プローブについての蛍光強度分析は、正常基準ゲノムに対する癌細胞株のコピー数変化を検出した(2004年に構築されたゲノム)。DU145の複製アレイCGHハイブリダイゼーションを実施して、KRASの5’パートナーを指名した。
【0171】
(対形成した末端トランスクリプトーム配列決定および分析)
DU145 mRNA試料を、製造元のプロトコールに従ってmRNA−seq試料調製キット(Illumina)を用いて配列決定するために調製した。生の配列決定画像データを、非マスクヒト基準ゲノム(NCBI v36, hg18)に対して整列したIllumina分析パイプラインによって、ELANDソフトウェア(Illumina)を用いて分析した。次に、対形成した読み取りを、すでに説明したように分析して、符合対キメラを指名した(Schubbert, K. Shannon, G. Bollag, Nat Rev Cancer 7, 295 (Apr, 2007))。
【0172】
(逆転写PCR(RT−PCR)および配列決定)
相補的DNAを1マイクログラムの全RNAから、SuperScript III(Invitrogen, Carlsbad, CA)を用いて、ランダムプライマーの存在下で合成した。反応は、50℃で60分間実施し、製造元の説明書に従ってミクロコンYM−30(Millipore Corp, Bedford, MA, USA)を用いてcDNAを精製し、PCRにおいてテンプレートとして用いた。本研究において用いられるすべてのオリゴヌクレオチドプライマーを、集積DNA技術(Coralville, IA)によって合成し、表10に列挙する。ポリメラーゼ連鎖反応を、白金Taq高忠実度および融合特異的プライマーを用いて35周期の間実施した。生成物を1.5%アガロースゲルにおける電気泳動によって分離し、バンドを切り出し、精製し、pCR 4−TOPO TAベクター(Invitrogen, Carlsbad, CA)へとTOPO TAクローン化した。少なくとも4つのコロニー由来の精製済みプラスミドDNAを、ミシガン大学(University of Michigan)DNA Sequenccing CoreにおいてABI Model 3730自動配列決定装置においてM13逆方向プライマーおよびM13順方向プライマーを用いて二方向的に配列決定した。
【0173】
(定量的PCR(qPCR))
定量的PCR(qPCR)を、StepOne Real Time PCRシステム(Applied Biosystems, Foster City, CA)を用いて実施した。簡潔には、反応を、SYBR Green Master Mix(Applied Biosystems)cDNAテンプレートならびに25ngの順方向および逆方向の両融合プライマーとともに、製造元の推奨した温熱周期条件を用いて実施した。各実験において、閾値レベルを、StepOneソフトウェアを用いたQPCR反応の指数関数的位相の間に設定した。各試料についてのハウスキーピング遺伝子であるグリセロアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素(GAPDH)に対する各標的遺伝子の量を、比較閾値周期(Ct)法を用いて決定した(Applied Biosystems User Bulletin #2)。図16のbに呈される実験については、標的遺伝子の相対量を、良性前立腺由来の相対量に対して較正した。細胞株および組織試料のサブセットについては、TaqmanプローブCAGCAACCAAAACC(配列番号40)を用いてqPCRを実施した。融合qPCRによる≧10のRQ値を有する試料を融合陽性と考えた。
【0174】
(cDNA末端のRNAリガーゼ仲介性急速増幅(RLM−RACE))
cDNA末端のRNAリガーゼ仲介性急速増幅を、製造元の説明書に従ってGeneRacer RLM−RACEキット(Invitrogen)を用いて実施した。qPCRによって高いUBE2L3−KRAS発現レベルを有する前立腺細胞株DU145ならびに組織試料PCA1−3およびMET10を5’RACEのために選択した。簡潔には、2マイクログラムの全RNAをウシ小腸ホスファターゼで処理し、短縮mRNAおよび非mRNAから5’リン酸を除去し、タバコ酸性ピロホスファターゼでキャップを外した。GeneRacer RNA Oligoを全長の転写産物に連結し、SuperScript IIIを用いて逆転写した。5’末端を得るために、第一の鎖のcDNAを、GeneRacer5’およびKRAS R2プライマー対を用いて白金Taq高忠実度(Invitrogen)で増幅した。次に、ネステッドPCRをGeneRacer5’でネステッドプライマーおよびKRAS R3またはR4プライマーを用いて実施した。先に説明した通り、産物を1.5%アガロースゲルにおける電気泳動によって分解し、バンドを切り出し、精製し、および配列決定した。
【0175】
(蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH))
UBE2L3とKRASとの融合を評価するために、2色2シグナルのFISH戦略を採用し、プローブは個々の遺伝子座に及んだ。ジゴキシン−dUTP標識したBACクローンRP11−317J15をUBE2L3遺伝子座に用い、ビオチン−14−dCTP BACクローンRP11−608F13をKRAS遺伝子座に用いた。KRAS遺伝子座における起こり得る転位を検出するために、不連続分離したFISH戦略を用い、2つのプローブはKRAS遺伝子座に及んだ(ジゴキシン−dUTP標識済みBACクローンRP11−68I23、(5’ KRAS)およびビオチン−14−dCTP標識済みBACクローンRP11−157L6(3’ KRAS))。すべてのBACクローンをChildren’s Hospital of Oakland Research Institute(CHORI)から得た。FISH分析の前に、すべてのプローブの完全性および純度を、正常末梢リンパ球の中期拡延に対するハイブリダイゼーションによって検証した。
【0176】
DU145細胞における間期FISHについては、間期拡延を、標準的な細胞遺伝学的技術を用いて調製した。前立腺癌組織マイクロアレイのシリーズにおける間期FISHについては、組織ハイブリダイゼーション、洗浄、および色相検出を説明した通り実施した(Tomlins et al., Science 310, 644 (Oct 28, 2005);Kumar−Sinha et al., Nat Rev Cancer 8, 497 (Jul, 2008))。評価可能な全症例には、KRAS分岐プローブについて78PCAおよび29MET、UBE2L3/KRAS融合プローブについては67PCAおよび18METが含まれる。TMAに関する間期FISHの評価については、症例あたり平均50〜100個の細胞を評価して、KRAS再配列およびUBE2L3/KRAS融合を評価した。加えて、5つの融合陽性症例由来のホルマリン固定したパラフィン包埋(FFPE)組織切片を用いて、陰性FISHの結果を確認した。
【0177】
(ウェスタンブロッティング)
前立腺癌細胞株DU145にUBE2L3(5’−CCACCGAAGATCACATTTA−3’;配列番号1)、KRAS(5’−GAAGTTATGGAATTCCTTT−3’;配列番号2)、または融合接合部(5’−CCGACCAAGGCCTGCTGAA−3’;配列番号3)に対するsiRNA二本鎖(Dharmacon, Lafayette, CO, USA)を、オリゴフェクタミン(Invitrogen)によって形質移入した。DU145に非標的siRNAを形質移入し、RWPE細胞を陰性対照として用いた。形質移入の48時間後、細胞をNP40溶解緩衝液(50 mMトリス−HCl, 1%NP40, pH 7.4, Sigma, St. Louis, MO)および完全プロテイナーゼ阻害薬混合物(Roche, Indianapolis, IN)において均質化した。拡タンパク質抽出物10マイクログラムを試料緩衝液中で煮沸しSDS−PAGEによって分離し、ポリビニリデンジフルオリドメンブレン(GE Healthcare, Piscataway, NJ)に転写した。メンブレンをブロッキング緩衝液[トリス緩衝塩類溶液, 0.1%トゥイーン(TBS−T), 5%無脂肪乾燥乳]中で1時間インキュベートし、以下の抗体とともに4℃で一晩インキュベートした:抗RASマウスモノクローナル抗体(ブロッキング緩衝液における1:1000、Milliporeカタログ番号05−516)、抗KRASウサギポリクローナル(1:1000、Proteintech Group Inc., カタログ番号12063−1−AP)、および抗ベータアクチンマウスモノクローナル(1:5000、Sigmaカタログ番号A5441)抗体。TBS−Tによる3回の洗浄の後、ブロットを西洋ワサビペルオキシダーゼ抱合型二次抗体とともにインキュベートし、製造元(GE Healthcare)によって説明されるように、高感度化学発光系によってシグナルを可視化した。複数の前立腺由来細胞株における融合タンパク質発現を試験するために、未処理のまたは500nMのボルテゾミブで処理したかのいずれかであるDU145、PrEC、RWPE、22RV1、VCaP、PC3由来の可溶化液を用いた。UBE2L3−KRAS融合タンパク質を過剰発現するボルテゾミブ処理したHEK細胞を陽性対照として用いた。MAPKシグナル伝達経路の活性化を探索するために、UBE2L3−KRAS、V600E突然変異体BRAF、G12V突然変異体KRAS、およびベクター対照を発現するNIH3T3安定細胞株由来のタンパク質可溶化液をホスホMEK1/2、ホスホp38MAPK、ホスホAktを用いてプローブし、等量の負荷量を、個々の全タンパク質およびベータアクチンについてプローブすることによって示した。ERK活性化分析のために、NIH3T3細胞を、ホスホerk1/2抗体を用いたイムノブロット分析の12時間前に飢餓状態にした。MAPKシグナル伝達タンパク質についてのすべての抗体を、Cell Signaling Technologies から購入した。
【0178】
(複数反応モニタリング質量分析)
Du145およびLnCaP細胞を70%培養密度まで増殖させ、ボルテゾミブで処理した。24時間後、細胞を収穫し、全細胞タンパク質可溶化液を、プロテアーゼ阻害薬完全ミニカクテル(Roche, Indianapolis, IN, USA)の添加を伴うRIPA緩衝液(Pierce Biotechnology, Rockford, IL, USA)において調製した。可溶化液を遠心分離によって清澄化し、SDS PAGE(Novex, 18%トリス−グリシン, Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)によって分離した。15〜40kDa領域由来の12の等しい大きさのバンドをゲル中トリプシン消化のために切り出した。各ゲルの切片由来の凍結乾燥したペプチドを、各々安定して放射性標識した25fmolのペプチド内部標準物質(Sigma−Aldrich Corp., St. Louis, MO, USA)を含む3%アセトニトリル、0.1%ギ酸において再懸濁した。次に、ペプチドを分離し、CHIP HPLC多重反応モニタリング質量分析(MRM−MS)によって分離および測定した。安定して放射性標識した各内部標準物質についての3回の移行および内在性ペプチドについての3回の移行を測定した。保持時間における各ペプチドについての6回の移行すべての重複は、陽性の測定結果を示した。
【0179】
(UBE2L3−KRASキメラのインビトロでの過剰発現)
UBE2L3−KRASについての発現プラスミドをpDEST40(5’FLAGありまたはなし)およびpLenti−6ベクター(5’FLAGなし)を用いて作製した。NIH3T3細胞を10%FBSを有するDMEMにおいて維持し、pDEST40ベクタープラスミドまたはUBE2L3−KRASオープンリーディングフレームを含むpDEST40のいずれかを、Fugene 6形質移入試薬(Invitrogen)を用いて形質移入した。3日後、形質移入した細胞を500μg/mLゲネティシンを用いて選択した。選択の3週間後、安定した細胞株をベクターおよびUBE2L3−KRAS融合の両方について確立し、さらなる分析のために用いた。G12V突然変異体KRAS(Addgeneプラスミド9052)、V600E突然変異体BRAF(Addgeneプラスミド15269)、およびそれらの個々のpBABE−puroベクター(Addgeneプラスミド1764)についてのコンストラクトをAddgene(Cambridge, MA, USA)から得た。これらのプラスミドコンストラクトを10%仔ウシ血清において維持したNIH3T3細胞において形質移入し、安定した株をピューロマイシン1μg/mLを選択のために用いて作製した。これらの安定した細胞株を、RAS−MAPKシグナル伝達経路のイムノブロット分析のための対照として用いた。
【0180】
前立腺由来の正常細胞株におけるUBE2L3−KRAS融合融合を過剰発現させるために、RWPE細胞に、UBE2L3−KRASオープンリーディングフレームまたはpLenti−6ベクターを発現するレンチウイルス粒子を形質移入した。形質移入の3日後、細胞を3μg/mLのブラスチシジン選択に供した。選択の3週間後、個々のクローンを拾い上げ、さらなる分析のために増殖させた。NIH3T3およびRWPEの両過剰発現モデルを、qPCR(図25のB、C)およびウェスタンブロッティングによってUBE2L3−KRAS融合について試験した。
【0181】
(細胞増殖アッセイ)
細胞増殖分析について、UBE2L3−KRAS融合またはベクターを発現する10,000個のNIH3T3を24ウェルプレートに2つ組のウェルで蒔種し、細胞計数をCoulter Counter(Beckman Coulter, Fullerton, CA)を用いて、示された時間に実施した。類似のアッセイを、UBE2L3−KRAS融合またはベクターを発現するRWPE安定クローンを用いて実施した。両細胞増殖アッセイを2回実施し、代表的なアッセイからのデータを呈する。
【0182】
(基底膜マトリックス浸潤アッセイ)
UBE2L3−KRAS融合またはpLenti−6ベクターを発現する100,000個のRWPEクローンをマトリゲルであらかじめ被覆したプレート(BD Biosciences)へと蒔種し、製造元の推奨として処理した。48時間後、インサートをクリスタルバイオレットで染色した。脱染色を10%酢酸を用いて実施し、浸潤を560nmにおける吸光度を比較することによって定量した。DU145を浸潤アッセイのための陽性対照として用いた。
【0183】
(遺伝子座形成アッセイ)
製造元のプロトコール(Roche Applied Sciences)に従って、Fugene 6を用いて形質移入を実施した。35mmのプラスチック皿におけるNIH3T3細胞(1.5×10)に2μgの目的のプラスミドDNAを形質移入した。融合転写産物UBE2L3−KRASおよび癌遺伝子KRAS G12Vについてのプラスミドを、対照プラスミド(それぞれpDEST40およびpBABE)とともに用いた。形質移入の3日間後、細胞を、5%仔ウシ血清(Colorado Serum Company)を有するDMEMを含む1枚の140mmの皿へと分けた。培養物に3〜4日間ごとに養分を与えた。3週間後、細胞を70%エタノールにおける0.2%クリスタルバイオレットで遺伝子座の可視化のために染色し、コロニー計数装置で計数した(Oxford Optronix Ltd., Oxford UK, software v4.1, 2003)。計数を手動でさらに確認した。
【0184】
(FACS細胞周期分析)
UBE2L3−KRAS融合またはベクターを発現するヨウ化プロピジウム染色した安定したNIH3T3細胞を、FACSDiviaを実行するLSR IIフローサイトメーター(BD Biosciences, San Jose, CA)において分析し、細胞周期相をModFit LT(Verity Software House, Topsham, ME)を用いて算出した。
【0185】
(NIH3T3およびRWPE−UBE2L3−KRAS異種移植モデル)
4週齢の雄性Balb C nu/nuマウスをCharles River, Inc.(Charles River Laboratory, Wilmington, MA)から購入した。融合転写産物UBE2L3−KRASまたはNIH3T3−ベクター(2×10個)を過剰発現する安定したNIH3T3およびRWPE細胞を、20%マトリゲル(BD Biosciences, Becton Drive, NJ)を有する100μLの塩類溶液中で再懸濁し、マウスの左または左右両方の側腹領域へと皮下的に植え込んだ。キシラジン(80〜120mg/kg腹腔内)およびケタミン(10mg/kg腹腔内)のカクテルを用いて、植え込みの前の化学的拘束のためにマウスを麻酔した。8個体のマウスが各群に含まれた。腫瘍体積の発達を毎日、デジタルキャリパーを用いることによって記録し、腫瘍の体積を式(π/6)(L×W2)を用いて算出し、式中、L=腫瘍の長さ、およびW=幅であった。マウスに関するすべての手順は、ミシガン大学(University of Michigan)における動物の使用および取り扱いに関する大学委員会(UCUCA)によって認可され、それらの関連する調節標準に従う。
【0186】
(結果)
増幅不連続点階級分けおよび集合(ABRA)と呼ばれる集積ゲノムアプローチを用いて、KRASをDU145前立腺癌細胞におけるユビキチン抱合酵素UBE2L3との遺伝子融合として指名した。UBE2L3−KRASキメラ転写産物の発現をDU145細胞および112の前立腺癌組織のうちの42(38%)において検証した。UBE2L3−KRAS融合タンパク質は、比較的不安定であり、プロテオソーム阻害が容易に観察されることを必要とする。UBE2L3−KRAS融合の過剰発現は、NIH3T3線維芽細胞およびRWPE前立腺上皮細胞におけるインビトロおよびインビボでの癌遺伝子表現型を誘導する。正準のKRAS G12V突然変異とは対照的に、UBE2L3−KRAS融合は、NIH3T3細胞におけるMEKおよびERKシグナル伝達を減弱させ、代わりに、AKTおよびp38MAPキナーゼの活性化をもたらし、これらの療法は、前立腺癌の進行に関与する。
【0187】
RASタンパク質は、細胞生理、発達、および腫瘍形成において決定的な役割を担っている(Karnoub et al., Nat Rev Mol Cell Biol 9, 517 (Jul, 2008);Rodriguez−Viciana et al., Cold Spring Harb Symp Quant Biol 70, 461 (2005))。RASにおける突然変異は、広範な範囲の癌において同定されている(Karnoub et al., 上述)が、まれに前立腺癌において同定される(Moul et al., Prostate 20, 327 (1992))。今日まで、RAS経路における癌遺伝子の変化は、HRASのGlyからValへの置換(Seeburg et al., Nature 312, 71 (Nov 1−7, 1984))ならびにKRASのコドン12、13、または61における置換(Karnoub et al., 上述;Schubbert, K. Shannon, G. Bollag, Nat Rev Cancer 7, 295 (Apr, 2007))が最も一般的に研究されていることを含む点突然変異を活性化させるよう専ら拘束されている。RAS遺伝子のキメラ転写産物は、あるクラスの癌関連突然変異として説明されていない。先行研究において、雄性ホルモンによって最も一般的に制御され、転写因子のETSファミリーのメンバーと融合した5’ゲノム調節エレメントを特徴とする再発性遺伝子融合が同定され、前立腺癌の60〜70%超で存在することが見出された(Tomlins et al., Science 310, 644 (Oct 28, 2005); Kumar−Sinha et al., Nat Rev Cancer 8, 497 (Jul, 2008))。本研究において、集積生体情報アプローチを採用して、癌における遺伝子融合を特徴とするゲノムパターンを研究した。このことは、ヒト前立腺癌のサブセットにおけるKRASに融合したUBE2L3の再発性キメラ転写産物の特徴付けをもたらした。
【0188】
癌における再発性遺伝子融合の特徴的な特長を理解するために、ヒトの癌と関連した多次元ゲノムデータの大規模集積分析を実施した。この分析は、多くの場合、再発性遺伝子融合を有する小さなサブセットの腫瘍または癌細胞株がしばしば、ゲオ無再配列の部位で特徴的な増幅を示すことを明らかにした(Mullighan et al., Nature 453, 110 (May 1, 2008);Graux et al., Nat Genet 36, 1084 (Oct, 2004);Barr et al., Hum Mol Genet 5, 15 (Jan, 1996);Ferreira et al., Oncogene 27, 2084 (Mar 27, 2008);Koivunen et al., Clin Cancer Res 14, 4275 (Jul 1, 2008))(図15のA)。増幅は、遺伝子融合の一部に通常影響し、疾患の進行、薬剤耐性、および乏しい予後と関連した二次的な遺伝子病変と一般的に考えられている(Mullighan et al., 上述;Barr et al., 上述;Ferreira et al.,上述;Koivunen et al., 上述;Stergianou et al., Leukemia 19, 1680 (Sep, 2005);Attard et al., Oncogene 27, 253 (Jan 10, 2008))。対照的に、癌遺伝子の著しい過剰発現を結果的に生じる高レベルのコピー数の変化は通常、腫瘍試料のパネルにわたる重複する増幅の中心において標的遺伝子を包含する。したがって、「部分的に」増幅した癌遺伝子は、この遺伝子が癌の進行において重要なゲノム融合事象に関与することを示し得る。その上、実施された集積分析に基づいて、遺伝子融合と関連した増幅は通常、5’パートナーの5’領域および3’パートナーの3’領域を包含する。
【0189】
この観察は、候補5’および3’パートナーの増幅レベルを符合させることによって、増幅不連続点から推定遺伝子融合を集合させるための理論的解釈を提供する。ゲノムデータから部分的に増幅した遺伝子融合を系統的に指名するために、ABRAは、癌細胞株からのデータの概論にわたって採用された(作業の流れを図19に説明する)。多くが悪性ではない複数の細胞種からなる腫瘍とは反対の均一の細胞集団において不連続点分析がより信頼可能であるので、実験を癌細胞株に関してまず実施した。ABRAアプローチをまず、増幅したBCR−ABL1融合を有することが公知のK−562慢性骨髄性白血病細胞株を含む36の白血病細胞株から生じた、公表された単一多型マイクロアレイ(aSNP)データセット(Mullighan et al. 上述)に関して試験した(Wu et al., Leukemia 9, 858 (May, 1995))。相対的なDNAコピー数データを決定し、36の細胞株由来の5’および3’増幅した遺伝子すべて(≧2コピー)を同定した。このデータセットにおいて、ABL1は、3’コピー数の増大を有する上位階級に位置する遺伝子であった(図15のB、左パネル、表4)。K−562における5’増幅した遺伝子の増幅レベルを次に、ABL1と符合させ、潜在的な5’パートナーを指名した。合計6個の5’増幅した遺伝子をK−562において見出し、5つは、ABLI 3’増幅のレベルと符合した。増幅不連続点のキュレーション後、BCRおよびNUP214をABLI融合パートナー候補として指名した(図15のB、右パネル)。候補選択の基準については、方法および図20のA、Bを参照されたい。この分析は、ゲノムデータセットからの駆動遺伝子融合を指名する上でこの方法の実行可能性を示した。
【0190】
前立腺癌における新規の遺伝子融合を指名するために、この方法は、10の前立腺癌細胞株の比較ゲノムハイブリダイゼーション(aCGH)のアレイに適用された(表5)。DU145前立腺癌細胞株において指名された上位候補は、KRASの3’増幅の伴う明確な不連続点を呈するKRASであった(図15のC、左)。RAS−MAPK経路の下流シグナル伝達中間体の活性化は、いくつかの研究によって前立腺癌において観察された(Graff et al., J Biol Chem 275, 24500 (Aug 11, 2000);Xu et al., Oncogene 25, 2987 (May 18, 2006))。
【0191】
KRAS遺伝子における増幅不連続点を集合させるために、DU145についての複製アレイCGHハイブリダイゼーションを実施した。KRASの増幅レベルをDU145細胞由来の5’増幅した遺伝子と符合させると、2つのアレイCGHハイブリダイゼーションのいずれかによって示される10の潜在的な5’パートナー候補を同定した。キュレーション後、C14orf166、SOX5、およびUBE2L3は、図20のCに詳述される基準に基づいてKRASについての上位の5’パートナー候補(図15のC、右)として残った。
【0192】
C14orf166−KRAS、SOX5−KRAS、およびUBE2L3−KRASの推定融合を実験的に検証するために、プライマー対を候補5’パートナーの第一のエクソンおよびKRASの最後のエクソン、および不連続点の隣のエクソンから設計した。DU145細胞の逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)分析は、UBE2L3−KRASについての具体的な融合バンドを同定したが、その他については同定しなかった。RT−PCR産物のその後の配列決定は、図16のAにおいて模式的に示されるUBE2L3エクソン3のKRASエクソン2への融合を確認した。
【0193】
UBE2L3−KRASキメラの発現パターンを評価するために、前立腺細胞株および組織のパネルを、SYBRグリーン定量的PCR(QPCR)およびTaqman QPCRによって分析した。細胞株のコンテクストにおいて、UBE2L3−KRAS発現は、DU145細胞に制限されたが、その他の試験した5つの前立腺細胞株においては発現しなかった(図16のB、図21)。ミシガン大学前立腺癌専門優良研究(University of Michigan Prostate SPORE)プログラムおよびウルム大学(University of Ulm)からの前立腺組織のパネルにおいて、36の前立腺癌のうちの14(PCA)、および16の転移性前立腺癌のうちの10(MET)は、UBE2L3−KRASの上昇した発現を、SYBRグリーンアッセイを用いて呈した(図16のB)。隣接する良性前立腺のうちのいずれもが、このキメラの発現を示さなかった。これらの結果は、試料のサブセットにおける独立して設計されたTaqmanアッセイ(図21)を用いてさらに確証した。
【0194】
先に説明したETS遺伝子融合を有する相互排他性(表7)は観察されず、UBE2L3−KRASキメラがETS遺伝子融合を有する腫瘍において同時に存在することができることを示した。UBE2L3の第一のエクソンおよびKRASの最後のエクソンからのプライマーを用いた従来のRT−PCRは、QRT−PCRによってUBE2L3−KRAS陽性であることが決定された前立腺癌試料において期待されたサイズの産物を生じた(図16のC)。野生型UBE2L3およびKRASは、コホートにわたって等しく発現した(図16のC)。3つの融合陽性組織由来のクローン化したRT−PCR産物のその後の配列決定は、DU145細胞から単離されたのと同じ融合転写産物を明らかにした(図23)。その上、これらの配列の突然変異分析は、KRASの融合対立遺伝子の変化を明らかにしなかった(図23)。UBE2L3−KRASキメラの有病率を、ワイルコーネル医科大学(Weill Cornell Medical College)からの前立腺癌の第二の独立したコホートに関して試験し、融合転写産物を60の試料のうちの18において検出した(表8)。産物を確認のために配列決定した。検討した他のコホートと同様に、UBE2L3−KRASキメラを発現する前立腺癌は、ETS遺伝子融合の存在とともに相互に排他的ではなかった。UBE2L3−KRAS融合の組織特異性を扱うために、前立腺起源ではない癌のコホートを検討した。qPCRによる36の乳癌組織および9の黒色腫細胞株の分析は、キメラ転写産物を検出せず、UBE2L3−KRASの前立腺癌特異性を強調した(表7)。
【0195】
融合転写産物の5’末端を特徴づけるために、cDNA末端の5’RNAリガーゼ仲介性急速増幅(RLM−RACE)を、DU145細胞および4つのUBE2L3−KRAS陽性前立腺癌組織を用いて、KRASのエクソン2から刺激して実施した(図22)。このことは、DU145および3つの前立腺癌試料における融合転写産物の5’末端におけるUBE2L3の存在を確認した。配列分析は、UBE2L3からKRASへと伸長する296アミノ酸からなるオープンリーディングフレーム(ORF)を明らかにした(図16のA)。
【0196】
UBE2L3−KRAS転写産物の相対的な発現レベルを他の推定キメラと比較するために、対形成した末端のトランスクリプトーム配列決定をDU145細胞において実施した。K−562細胞におけるBCR−ABLおよびVCaP細胞におけるTMPRSS2−ERGと同様に(図16のD)(Maher et al., Proc Natl Acad Sci U S A (Jul 10, 2009))、UBE2L3−KRASキメラは、生物学的関連性を示すDU145細胞における上位のキメラ配列のうちの1つであった(図16のD〜E)。また、トランスクリプトーム配列決定は、DU145細胞において見出された最上位のキメラとしてC14orf166−SLC25A1を同定し、その両方は、それぞれABRAによって推定5’および3’融合遺伝子として指名された(表5〜6)。その上、K−562細胞由来のトランスクリプトーム配列決定データは、BCR−ABLキメラを検出しただけでなく、この細胞株において2番目に最も多量のキメラはNUP214−XKR3であった(図16のD、左パネル)。NUP214はまた、ABRAアプローチによってK562細胞における5’融合パートナーとしても指名された(図15のB、右のパネル)。
【0197】
UBE2L3−KRASキメラがDNAベースの再配列に起因し得るかどうかを決定するために、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)分析を実施した。KRAS分岐プローブおよびUBE2L3−KRAS融合プローブFISH分析の両方によって、DU145は、KRASゲノム遺伝子座における再配列およびUBE2L3との融合を明確に示した(図16のF、図24のB)。加えて、UBE2L3−KRAS融合の低レベルの増幅(3コピー)を観察し、ABRAアプローチによるその指名と一致した。これらの知見を前立腺組織へと発展させるために、67PCAおよび18METを含む一連の前立腺癌組織マイクロアレイのFISH分析を実施した。遺伝子再配列はKRAS遺伝子座において観察されず、UBE2L3とKRASとの融合も観察されなかった(表11、図24のC)。Weill Cornell Medical College由来の3つの発端者を、KRAS分岐プローブを用いたFISHによってアッセイし、再配列を見出さなかった(表8)。DU145細胞において観察されるものとは一致しないこの結果は、前立腺腫瘍が、UBE2L3−KRAS転写産物を発現することを示し、UBE2L3−KRAS転写産物は、前立腺癌において見出されるSLC45A3−ELK4キメラ転写産物に類似のDNAベースの融合に起因し得ない(Rickman et al., Cancer Res 69, 2734 (Apr 1, 2009);Maher et al., Nature 458, 97 (Mar 5, 2009))。同様に、Sklarおよび共同研究者は、子宮内膜間質腫瘍におけるDNAベースの遺伝子融合として「ロックイン」を得るように見える子宮内膜間質細胞におけるmRNAレベルで発現する再発性JJAZ1−SUZ12キメラを同定した(Wang et al., Science 321, 1357 (Sep 5, 2008))。したがって、DU145前立腺癌細胞は、キメラの発現が細胞培養において拾い上げられるゲノム再配列によってしかるべきところにロックされるUBE2L3−KRAS転写産物を発現する前立腺癌に由来し得る。
【0198】
次に、UBE2L3−KRASタンパク質の発現を検討した。推定296アミノ酸融合タンパク質は、UBE2L3のC末端から17アミノ酸を切り落とす(図17のA)。全長のKRASタンパク質は保存的であり、4アミノ酸挿入がUBE2L3とKRASの間にある。RASに対して生じるモノクローナル抗体とKRASに対して生じるポリクローナル抗体の両方を用いて、33kDa融合タンパク質を、野生型KRASに相応する21kDaバンドに加えて検出した(図17のB、C)。UBE2L3−KRASタンパク質に起因するバンドの特異性は、KRAS、UBE2L3、およびUBE2L3−KRASのキメラ接合部に対するRNA干渉を用いて発現をノックダウンさせることによって示された(図17のB、図25のA)。UBE2L3−KRASタンパク質は、DU145細胞において特異的に見出されており、他の前立腺細胞株のパネルにおいては見出されなかった(図17のC)。タンパク質の特異的な発現はまた、多重反応モニタリング(MRM)アッセイを用いたDU145細胞の質量分析評価によっても独立して確認された(図17のD)。野生型KRASおよびUBE2L3をDU145、VCaP、およびLNCaP細胞において検出したのに対し、UBE2L3−KRASは、DU145細胞においてしか検出されなかった。HEK293細胞におけるUBE2L3−KRASをコードする発現コンストラクトの過剰発現は、タンパク質発現を示さなかった(図17のC)。プロテオソーム阻害薬ボルテゾミブの存在下で、融合タンパク質の発現は、融合タンパク質の低下した安定性を示すことを明確にした。DU145細胞とボルテゾミブとのインキュベーションは、UBE2L3−KRASタンパク質発現のレベルも亢進した(図17のC)。
【0199】
UBE2L3−KRASタンパク質の機能を決定するために、RAS生物学を研究するのに古典的に用いられる系であるNIH3T3細胞において過剰発現させた(図25のB)(Seeburg et al., 上述;Der et al., Proc Natl Acad Sci U S A 79, 3637 (Jun, 1982))。UBE2L3−KRASの増強した発現は、線維芽細胞形態の損失(図26)および亢進した細胞増殖(図18のA)および遺伝子座形成(図18のB、図27)を誘導した。細胞周期分析は、細胞のS期画分の延長を明らかにした(図28)。NIH3T3細胞においてUBE2L3−KRASによって関与される潜在的なRAS関連シグナル伝達経路を調べるために、一連のイムノブロット分析を鍵となるシグナル伝達中間体に関して実施した(図29)。NIH3T3細胞についての文献において報告されるように、KRASは、MEK/ERKカスケードのより強い誘導剤であるのに対し、HRASは、PI3K/AKT経路のより強い活性化因子である(Zhu et al., J Biol Chem 279, 37398 (Sep 3, 2004))。UBE2L3−KRAS過剰発現は、RASシグナル伝達に及ぼすキメラ産物の潜在的なドミナントネガティブ効果を示す内在的なMEKおよびERKリン酸化を減弱させた(図18のC)。さらに、UBE2L3−KRAS融合によるMEK−ERKシグナル伝達の減弱があるだけでなく、いくつかの研究によって前立腺癌に関係した経路であるAKTおよびp38MAPキナーゼの活性化への移行も観察された(Graff et al., 上述;Xu et al., 上述)。
【0200】
インビボでの腫瘍の発達に及ぼすUBE2L3−KRAS発現の効果を決定するために、ヌードマウスに、安定したNIH3T3ベクター対照細胞またはNIH3T3 UBE2L3−KRASキメラ発現細胞を植え込んだ。腫瘍の形成は、UBE2L3−KRAS発現細胞において観察されたが、ベクターを形質移入した細胞においては観察されなかった(図18のD、図30)。
【0201】
前立腺背景におけるUBE2L3−KRASキメラの役割を研究するために、融合は、RWPE前立腺上皮細胞において過剰発現した(図25のC)。融合タンパク質の発現を観察するために、ボルテゾミブによるプロテオソーム阻害が必要であり(図18のE、挿入部)、融合タンパク質が非常に不安定であることを示した。RWPE細胞におけるUBE2L3−KRASキメラの過剰発現は、ヌードマウスにおける増大した細胞増殖、細胞浸潤、および腫瘍発達の一過性増大をもたらした(図18のE〜G)。NIH3T3異種移植片とな異なり、UBE2L3−KRASを過剰発現するRWPE異種移植片は、RWPE系において追加的な変化が腫瘍の発達をより長期に維持するのに必要とされることを示す数週間にわたる腫瘍の退行を呈した。
【0202】
要約して、本実施例は、遺伝子再配列データと符合した公表されたゲノムデータセットの集録を用いて、癌における再発性遺伝子融合の曲痛の特徴を理解するための統合した生物情報アプローチを説明する。このことは、DU145前立腺癌細胞株におけるUBE2L3−KRASキメラの指名をもたらした。このゲノム融合は、DU145細胞におけるRNAおよびDNAレベルで存在することが実験的に確認された。前立腺腫瘍において、UBE2L3−KRASキメラ転写産物が、前立腺癌の30〜40%で高度に発現する(3つの独立したコホートから、表9)が、隣接する良性組織においてまたは他の癌種類において検出できないかまたは低レベルであることが見出された。DNAベースの変化は、このキメラ転写産物の作製を説明する前立腺癌組織において検出されず、変化したスプライシング機構が、ゲノム融合の作製のための必要条件であり得ることを示した。このことは、子宮内膜間質組織におけるJJAZ1−SUZ12キメラについて記載された変化したスプライシング機構と類似している(Wang et al., 上述)。UBE2L3−KRASキメラは、前立腺癌におけるETS遺伝子融合と同時に存在することができることが決定された。
【0203】
UBE2L3−KRASキメラは、N末端が全長のKRASとフレーム内で小さなトランケーションを有するUBE2L3タンパク質のほとんどを包含するタンパク質をコードする。この融合タンパク質は不安定であり、プロテオソーム阻害が容易に観察さえることを必要とする。UBE2L3は、ユビキチン抱合酵素(E2)である(Moynihan et al., Genomics 51, 124 (Jul 1, 1998))。さらに、腫瘍形成においてユビキチン化経路が重要であるという考慮すべき証拠がすでにある(Hoeller et al., Nature 458, 438 (Mar 26, 2009))。
【0204】
いくつかのKRASの癌遺伝子活性化点突然変異が同定されているが、これは、癌遺伝子でありしたがって新たなクラスの癌関連変化を表すKRASの突然変異体キメラバージョンに関する最初の説明である。KRASにおける点突然変異を活性化させることが、前立腺癌においてまれであるので、UBE2L3−KRASキメラは、前立腺癌の進行におけるKRASおよびMAPK経路の役割を支持するいくつかの研究がある場合、前立腺癌に特異的なKRASの変化も表す(Graff et al., 上述;Chen et al., 上述)。KRAS G12VおよびUBE2L3−KRASの両方が、インビトロおよびインビボでの癌遺伝子表現型を呈し、UBE2L3−KRAS過剰発現がMEK−ERK経路の活性化よりもむしろ減弱をもたらす。代わりに、KRAS融合は、AKTおよびp38MAPK経路へとシグナル伝達を取り扱う。
【表4】


【表5】


【表6】

【表7−1】

【表7−2】

【表8−1】

【表8−2】

【表9】

【表10】


【表11】

【0205】
先の明細書に示されるすべての刊行物、特許、特許出願、および登録番号は、それらのすべての内容が全体として引用により本明細書に組み込まれる。本発明は、具体的な実施態様と関連して説明されているが、本発明が、請求されるようにこのような具体的な実施態様に過度に制限されるべきではないことは理解されるべきである。実際、本発明の説明された組成物および方法に関する種々の修飾物および変法は、当業者に明らかであり、以下の特許請求の範囲の範囲内であるよう意図される。
【0206】
(項目1)
(a)患者由来の試料を提供すること、および
(b)SLC45A3遺伝子の転写調節領域由来の5’部分とRAFファミリー遺伝子由来の3’部分とを有する遺伝子融合の試料における存在または不在を検出すること
を含み、前記試料における遺伝子融合の存在を検出することは、患者における前立腺癌を同定する、患者における前立腺癌を同定するための方法。
(項目2)
前記SLC45A3遺伝子の転写調節領域は、SLC45A3遺伝子のプロモーター領域を含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
工程(b)は、前記SLC45A3遺伝子の転写調節領域由来の5’DNA部分と、前記RAFファミリー遺伝子由来の3’DNA部分とを有するゲノムDNAの染色体再配列を検出することを含む、項目1に記載の方法。
(項目4)
工程(b)は、前記SLC45A3遺伝子の転写調節領域から転写された5’RNA部分と、RAFファミリー遺伝子から転写された3’RNA部分とを有するキメラmRNA転写産物を検出することを含む、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記試料は、組織、血液、血漿、血清、尿、尿上清、尿細胞ペレット、精液、前立腺分泌物、および前立腺細胞からなる群から選択される、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記RAFファミリーメンバー遺伝子は、BRAFおよびRAF1からなる群から選択される、項目1に記載の方法。
(項目7)
(a)患者由来の試料を提供すること、および
(b)UBE2L3遺伝子の転写調節領域由来の5’部分とRASファミリー遺伝子由来の3’部分とを有する遺伝子融合の試料における存在または不在を検出すること
を含み、この中で、試料における遺伝子融合の存在を検出することは、患者における前立腺癌を同定する、患者における前立腺癌を同定するための方法。
(項目8)
前記UBE2L3遺伝子の転写調節領域は、前記UBE2L3遺伝子のプロモーター領域を含む、項目7に記載の方法。
(項目9)
工程(b)は、前記UBE2L3遺伝子の転写調節領域由来の5’DNA部分と前記RASファミリー遺伝子由来の3’DNA部分とを有するゲノムDNAの染色体再配列を検出することを含む、項目7に記載の方法。
(項目10)
工程(b)は、前記UBE2L3遺伝子の転写調節領域から転写された5’RNA部分とRASファミリー遺伝子から転写された3’RNA部分とを有するキメラmRNA転写産物を検出することを含む、項目7に記載の方法。
(項目11)
前記試料は、組織、血液、血漿、血清、尿、尿上清、尿細胞ペレット、精液、前立腺分泌物、および前立腺細胞からなる群から選択される、項目7に記載の方法。
(項目12)
前記RASファミリーメンバー遺伝子は、KRASである、項目7に記載の方法。
(項目13)
以下の少なくとも1つを含む組成物:
(a)キメラゲノムDNAもしくはキメラmRNAの5’部分は、SLC45A3遺伝子の転写調節領域由来でありかつキメラゲノムDNAもしくはキメラmRNAの3’部分は、RAFファミリーメンバー遺伝子由来である、キメラゲノムDNAもしくはキメラmRNAの接合部とハイブリダイズする配列を含むオリゴヌクレオチドプローブ;
(b)SLC45A3遺伝子の転写調節領域由来のキメラゲノムDNAもしくはキメラmRNAの5’部分とハイブリダイズする配列を含む第一のオリゴヌクレオチドプローブ、およびRAFファミリーメンバー遺伝子由来のキメラゲノムDNAもしくはキメラmRNAの3’部分とハイブリダイズする配列を含む第二のオリゴヌクレオチドプローブ;
(c)SLC45A3遺伝子の転写調節領域由来のキメラゲノムDNAもしくはキメラmRNAの5’部分とハイブリダイズする配列を含む第一の増幅オリゴヌクレオチド、およびRAFファミリーメンバー遺伝子由来のキメラゲノムDNAもしくはキメラmRNAの3’部分とハイブリダイズする配列を含む第二の増幅オリゴヌクレオチド;
(d)キメラゲノムDNAもしくはキメラmRNAの5’部分は、UBE2L3遺伝子の転写調節領域由来でありかつキメラゲノムDNAもしくはキメラmRNAの3’部分は、RASファミリーメンバー遺伝子由来である、キメラゲノムDNAもしくはキメラmRNAの接合部とハイブリダイズする配列を含むオリゴヌクレオチドプローブ;
(e)UBE2L3遺伝子の転写調節領域由来のキメラゲノムDNAもしくはキメラmRNAの5’部分とハイブリダイズする配列を含む第一のオリゴヌクレオチドプローブ、およびRASファミリーメンバー遺伝子由来のキメラゲノムDNAもしくはキメラmRNAの3’部分とハイブリダイズする配列を含む第二のオリゴヌクレオチドプローブ;
(f)UBE2L3遺伝子の転写調節領域由来のキメラゲノムDNAもしくはキメラmRNAの5’部分とハイブリダイズする配列を含む第一の増幅オリゴヌクレオチド、およびRASファミリーメンバー遺伝子由来のキメラゲノムDNAもしくはキメラmRNAの3’部分とハイブリダイズする配列を含む第二の増幅オリゴヌクレオチド;ならびに
(g)UBE2L3遺伝子によってコードされるアミノ末端部分とRASファミリーメンバー遺伝子によってコードされるカルボキシ末端部分とを有するキメラタンパク質に対する抗体。
(項目14)
前記RAFファミリーメンバー遺伝子は、BRAFおよびRAF1からなる群から選択される、項目13に記載の組成物。
(項目15)
前記RASファミリーメンバー遺伝子は、KRASである、項目13に記載の組成物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
存在する場合、患者から得られた試料において、SLC45A3遺伝子の転写調節領域由来の5’部分およびRAFファミリー遺伝子由来の3’部分の融合、再配列、またはそれらの間のゲノム欠失の融合を有するかまたはそれから結果として生じる遺伝子融合を検出することを含み、前記遺伝子融合の試料における存在を検出することが、患者における前立腺癌を同定しまたは特徴づける、患者における前立腺癌を同定しまたは特徴づける方法。
【請求項2】
前記SLC45A3遺伝子の転写調節領域は、SLC45A3遺伝子のプロモーター領域を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記SLC45A3遺伝子の転写調節領域由来の5’DNA部分と前記RAFファミリー遺伝子由来の3’DNA部分とを含むゲノムDNAの染色体再配列を検出することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記SLC45A3遺伝子の転写調節領域から転写された5’RNA部分と、RAFファミリー遺伝子から転写された3’RNA部分とを含むキメラmRNA転写産物を検出することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記試料は、組織、血液、血漿、血清、尿、尿上清、尿細胞ペレット、精液、前立腺分泌物、および前立腺細胞からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記RAFファミリー遺伝子は、BRAFおよびRAF1からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
存在する場合、患者から得られた試料において、UBE2L3遺伝子の転写調節領域由来の5’部分およびRASファミリー遺伝子由来の3’部分の融合、再配列、またはそれらの間のゲノム欠失の融合を有するかまたはそれから結果として生じる遺伝子融合を検出することを含み、前記遺伝子融合の試料における存在を検出することが、患者における前立腺癌を同定しまたは特徴づける、患者における前立腺癌を同定しまたは特徴づける方法。
【請求項8】
前記UBE2L3遺伝子の転写調節領域は、前記UBE2L3遺伝子のプロモーター領域を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記UBE2L3遺伝子の転写調節領域由来の5’DNA部分と前記RASファミリー遺伝子由来の3’DNA部分とを含む、ゲノムDNAの染色体再配列を検出することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記UBE2L3遺伝子の転写調節領域から転写された5’RNA部分とRASファミリー遺伝子から転写された3’RNA部分とを含むキメラmRNA転写産物を検出することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記試料は、組織、血液、血漿、血清、尿、尿上清、尿細胞ペレット、精液、前立腺分泌物、および前立腺細胞からなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記RASファミリー遺伝子は、KRASである、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
以下の少なくとも1つを含む組成物:
(a)キメラゲノムDNAもしくはキメラmRNAの5’部分は、SLC45A3遺伝子の転写調節領域由来でありかつキメラゲノムDNAもしくはキメラmRNAの3’部分は、RAFファミリー遺伝子由来である、キメラゲノムDNAもしくはキメラmRNAの接合部とハイブリダイズする配列を含むオリゴヌクレオチドプローブ;
(b)SLC45A3遺伝子の転写調節領域由来のキメラゲノムDNAもしくはキメラmRNAの5’部分とハイブリダイズする配列を含む第一のオリゴヌクレオチドプローブ、およびRAFファミリー遺伝子由来のキメラゲノムDNAもしくはキメラmRNAの3’部分とハイブリダイズする配列を含む第二のオリゴヌクレオチドプローブ;
(c)SLC45A3遺伝子の転写調節領域由来のキメラゲノムDNAもしくはキメラmRNAの5’部分とハイブリダイズする配列を含む第一の増幅オリゴヌクレオチド、およびRAFファミリー遺伝子由来のキメラゲノムDNAもしくはキメラmRNAの3’部分とハイブリダイズする配列を含む第二の増幅オリゴヌクレオチド;
(d)キメラゲノムDNAもしくはキメラmRNAの5’部分は、UBE2L3遺伝子の転写調節領域由来でありかつキメラゲノムDNAもしくはキメラmRNAの3’部分は、RASファミリー遺伝子由来である、キメラゲノムDNAもしくはキメラmRNAの接合部とハイブリダイズする配列を含むオリゴヌクレオチドプローブ;
(e)UBE2L3遺伝子の転写調節領域由来のキメラゲノムDNAもしくはキメラmRNAの5’部分とハイブリダイズする配列を含む第一のオリゴヌクレオチドプローブ、およびRASファミリー遺伝子由来のキメラゲノムDNAもしくはキメラmRNAの3’部分とハイブリダイズする配列を含む第二のオリゴヌクレオチドプローブ;
(f)UBE2L3遺伝子の転写調節領域由来のキメラゲノムDNAもしくはキメラmRNAの5’部分とハイブリダイズする配列を含む第一の増幅オリゴヌクレオチド、およびRASファミリー遺伝子由来のキメラゲノムDNAもしくはキメラmRNAの3’部分とハイブリダイズする配列を含む第二の増幅オリゴヌクレオチド;ならびに
(g)UBE2L3遺伝子によってコードされるアミノ末端部分とRASファミリー遺伝子によってコードされるカルボキシ末端部分とを有するキメラタンパク質に対する抗体。
【請求項14】
前記RAFファミリー遺伝子は、BRAFおよびRAF1からなる群から選択される、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記RASファミリー遺伝子は、KRASである、請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
患者における前立腺癌を同定しまたは特徴づけるための、SLC45A3‐RAFファミリー遺伝子融合検出薬の使用。
【請求項17】
生物試料におけるSLC45A3‐RAFファミリー遺伝子融合の存在を同定するためであって、前記SLC45A3‐RAFファミリー遺伝子融合は、SLC45A3遺伝子の転写調節領域由来の5’部分およびRAFファミリー遺伝子由来の3’部分の融合、再配列、またはそれらの間のゲノム欠失を有するかまたはそれから結果として生じる遺伝子融合を含む、SLC45A3‐RAFファミリー遺伝子融合検出薬の使用。
【請求項18】
患者における前立腺癌を同定しまたは特徴づけるための、UBE2L3‐RASファミリー遺伝子融合検出薬の使用。
【請求項19】
生物試料におけるUBE2L3‐RASファミリー遺伝子融合の存在を同定するためであって、前記UBE2L3‐RASファミリー遺伝子融合は、UBE2L3遺伝子の転写調節領域由来の5’部分およびRASファミリー遺伝子由来の3’部分の融合、再配列、またはそれらの間のゲノム欠失を有するかまたはそれから結果として生じる遺伝子融合を含む、UBE2L3‐RASファミリー遺伝子融合検出薬の使用。
【請求項20】
存在する場合、前立腺癌患者から得られた試料における、SLC45A3遺伝子の転写調節領域由来の5’部分およびRAFファミリー遺伝子由来の3’部分の融合、再配列、またはそれらの間のゲノム欠失を有するかまたはそれから結果として生じる遺伝子融合を検出することを含む、前立腺癌患者におけるRAF阻害薬またはMAPK/ER経路阻害薬による治療に対する応答の見込みを決定する方法であって、融合の存在を検出することは、前立腺癌患者がRAF阻害薬またはMAPK/ER経路阻害薬による治療に応答する見込みがあることを示す方法。
【請求項21】
存在する場合、前立腺癌患者から得られた試料における、UBE2L3遺伝子の転写調節領域由来の5’部分およびRASファミリー遺伝子由来の3’部分の融合、再配列、またはそれらの間のゲノム欠失を有するかまたはそれから結果として生じる遺伝子融合を検出することを含む、前立腺患者におけるAKT阻害薬またはp38MAPキナーゼ経路阻害薬による治療に対する応答の見込みを決定する方法であって、融合の存在を検出することは、前立腺患者が、AKT阻害薬またはp38MAPキナーゼ経路阻害薬による治療に応答する見込みがあることを示す方法。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20−1】
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【図20−2】
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【図20−3】
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【図20−4】
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【図20−5】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公表番号】特表2013−505021(P2013−505021A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529870(P2012−529870)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【国際出願番号】PCT/US2010/048915
【国際公開番号】WO2011/034906
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(512068765)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミシガン (1)
【Fターム(参考)】