説明

前立腺癌免疫療法のための方法および組成物

本発明は、癌(例えば前立腺癌)の治療における免疫応答をもたらすための方法および組成物(例えば、免疫応答刺激ペプチド(例えばERGまたはSIM2ペプチド)、活性化免疫細胞、抗原提示細胞、および抗体またはその抗原結合断片)を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
一般に、本発明は、癌(例えば前立腺癌)を治療するための方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
治験における前立腺癌を治療するための免疫療法の失敗は、部分的には、かかる治療における原因腫瘍遺伝子の抗原標的の欠如に基づく。しかし、標的化癌細胞内で特異的に発現される癌特異的抗原の同定は、癌免疫療法にとって合理的な標的を提供する。例えば、前立腺癌のための既存のワクチンは、個別の抗原もまたは同定された抗原も有しない細胞系を用いる。いくつかの例では、これらのワクチンは、標的化癌細胞に対して特異的でない抗原タンパク質、免疫原性を示さない抗原タンパク質、または腫瘍細胞の表面上で十分な量で発現されない抗原タンパク質を含み、それ故、これらのワクチンの有効性が低下し、潜在的に望ましくない副作用がもたらされる。したがって、当該技術分野において、癌、例えば前立腺癌を治療するための有効でより特異的な免疫療法に対する需要が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、癌(例えば前立腺癌)を治療するための免疫応答をもたらすための方法および組成物(例えば、免疫応答刺激ペプチド(例えばERGまたはSIM2ペプチド)、活性化免疫細胞、抗原提示細胞、および抗体またはその抗原結合断片)を特徴とする。
【0004】
第1の態様では、本発明は、SEQ ID NO:1(ERG2)、SEQ ID NO:5(SIM2)、SEQ ID NO:11(AMACR)、SEQ ID NO:12(BICD1)、SEQ ID NO:13(C10orf137)、SEQ ID NO:14(CDCL6)、SEQ ID NO:15(ICA1)、SEQ ID NO:16(KIAA1661)、SEQ ID NO:17(MAP7)、SEQ ID NO:18(MYO6)、SEQ ID NO:19(OR51E2)、SEQ ID NO:20(PAICS)、SEQ ID NO:21(PCSK6)、SEQ ID NO:22(PVT1)、SEQ ID NO:23(RGS10)、SEQ ID NO:24(SGEF)、SEQ ID NO:25(SMARCA4///MRPL43)、またはSEQ ID NO:26(SS18)で示される隣接アミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、95、96、97、98、もしくは99%の配列同一性)を有する免疫応答刺激ペプチドを特徴とし、ここでペプチドは、少なくとも7個であるが50個未満のアミノ酸残基(例えば、7個〜30、25、20、15、14、13、12、11、もしくは10個の間のアミノ酸残基、好ましくは8、9、もしくは10個のアミノ酸残基、最も好ましくは9個のアミノ酸残基)を有し、抗原提示分子に結合された場合、哺乳類宿主内で免疫細胞を活性化することができる。別の実施形態では、免疫応答刺激ペプチドは、SEQ ID NO:2、3、4、6、7、8、9、または10で示されるアミノ酸配列セットを有する。
【0005】
第2の態様では、本発明は、本発明の第1の態様の免疫応答刺激ペプチドが抗原提示分子に結合された場合における、ペプチドに対して特異的に結合可能な活性化免疫細胞(例えば細胞傷害性Tリンパ球)を特徴とする。
【0006】
第3の態様では、本発明は、抗原提示細胞の抗原提示分子に対して結合される本発明の第1の態様のペプチドを表面上に有する抗原提示細胞を特徴とする。
【0007】
第4の態様では、本発明は、本発明の第1の態様のペプチドが抗原提示分子に結合された場合における、ペプチドに対して特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を特徴とする。
【0008】
第5の態様では、本発明は、対象(例えば哺乳動物、例えばヒト)における癌(例えば前立腺癌)を、癌を治療するのに十分な量で本発明の第1、第2、第3、および第4の態様のそれぞれの、ペプチド、活性化免疫細胞、抗原提示細胞、または抗体もしくはその抗原結合断片を含有する組成物を投与することによって治療する方法を特徴とする。本方法は、アジュバント、サイトカイン、またはホルモン療法(例えばアンドロゲンの除去)を施すことを含んでもよい。対象(例えばヒト)に投与される組成物は、薬学的に許容できる希釈剤、賦形剤、または担体を含んでもよく、かつ当該技術分野で既知の任意の手段(例えば注射)によって投与してもよい。
【0009】
第6の態様では、本発明は、対象(例えば哺乳動物、例えばヒト)を癌(例えば、前立腺癌)を有するものとして、対象由来の試料中のERG(例えば、SEQ ID NO:1、2、3、もしくは4)またはSIM2ポリペプチド(例えば、SEQ ID NO:5、6、7、8、9、もしくは10)、またはその断片のレベルを測定し、それを参照と比較することによって診断する方法を特徴とし、ここでERGまたはSIM2ポリペプチドの、参照と比較したレベルの変化(例えば上昇)は、癌(例えば前立腺癌)の診断指標である。試料は、ERGまたはSIM2ポリペプチドが通常的に検出可能な、対象由来の体液(例えば、尿、血液、血清、血漿、および脳脊髄液)、細胞、または組織試料であってもよい。
【0010】
本発明のすべての態様の他の実施形態では、本発明の免疫細胞は、例えばT細胞(例えば細胞傷害性Tリンパ球)を含み、抗原提示分子は、例えば、細胞、例えば前立腺癌細胞の表面上に提示されうる組織適合性分子(例えばHLA分子(例えばHLAクラスI分子))である。本発明によって検討される抗原提示細胞は、例えば、樹状細胞、マクロファージ、B細胞、単球、線維芽細胞、胸腺上皮細胞、甲状腺上皮細胞、グリア細胞、膵臓β細胞、および血管内皮細胞を含む。本発明で記載される作用剤のいずれか(例えば、免疫応答刺激ペプチド、活性化免疫細胞、抗原提示細胞、および抗体またはその抗原結合断片)は、異種化合物、例えば治療剤または細胞毒性剤に結合してもよい。さらに他の実施形態では、本発明の組成物は、ワクチンとして投与されてもよく、例えば追加的な治療剤(例えば化学療法剤)またはアジュバントを含んでもよい。
【0011】
「免疫細胞の活性化」は、本明細書で使用される場合、免疫細胞(例えば、T細胞(例えば細胞傷害性Tリンパ球)、B細胞、マクロファージ、およびNK細胞)機能における増強、例えば、1つ以上の刺激分子による刺激後のサイトカイン、抗体の放出、および/またはアポトーシスの誘導を意味する。
【0012】
「アジュバント」は、抗原特異的な免疫応答を、例えば抗原提示細胞の活性化を通じて特異的または非特異的に増強するために使用される任意の物質を意味する。典型的なアジュバントは、オイルエマルジョン(例えば完全または不完全フロインドアジュバント)、ケモカイン、サイトカイン、またはADPリボシル化外毒素(bΛRE))を含む。アジュバントは、抗原とともに投与してもよく、または単独で投与してもよい。単一の分子は、アジュバントおよび抗原特性の双方を有してもよい。
【0013】
「投与する」は、本明細書で使用される場合、本発明の組成物の用量を、それを必要とする対象に与える方法を意味する。本明細書中に記載の組成物は、例えば、非経口、皮膚、経皮、経眼、吸入、口腔、舌下、舌周囲、経鼻、直腸、局所、および経口投与を含む、当該技術分野で既知の任意の許容可能な経路によって投与してもよい。非経口投与は、動脈内、静脈内、腹腔内、皮下、および筋肉内投与を含む。投与の好ましい方法は、さまざまな要素(例えば、投与されている組成物の成分、治療されている条件およびその重症度、ならびに患者の年齢、体重、および健康)に応じて変化してもよい。
【0014】
「治療するのに十分な量」は、対象の症状またはその徴候を臨床的に意義のある方法で改善、阻害、または緩和する(例えば、前立腺癌またはその徴候を改善、阻害、予防、または緩和する)ために投与される本発明の組成物の量を意味する。対象におけるなんらかの改善は、治療を行うのに十分であると考えられる。好ましくは、治療するのに十分な量は、例えば癌(例えば前立腺癌)の1つ以上の徴候の発生を低減、阻害、または予防する量であるか、あるいは対象が癌の1つ以上の徴候を罹っているその重症度を低下させるかまたはその期間を短縮する量(例えば、本発明の組成物で治療されない対照対象に対して、少なくとも10%、20%、もしくは30%、より好ましくは少なくとも50%、60%、もしくは70%、および最も好ましくは少なくとも80%、90%、95%、99%以上)である。本明細書中に記載の方法を実施するのに使用される組成物の十分な量は、投与の方法と、治療されている対象の年齢、体重、および全体的健康に応じて変化する。医師または研究者は、適切な量および投与計画を決定することができる。
【0015】
用語「抗体」は、本明細書で使用される場合、全抗体または免疫グロブリンおよび任意の抗原結合断片またはその一本鎖を含む。抗体は、本明細書で使用される場合、哺乳類(例えばヒトまたはマウス)、ヒト化、キメラ、組換えであり、合成により産生され、または天然に単離されうる。本発明の抗体は、抗体のあらゆる既知の形態および抗体様の特性を有する他のタンパク質骨格を含む。例えば、抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、二重特異性抗体、キメラ抗体、または抗体様の特性を有するタンパク質骨格、例えばフィブロネクチンまたはアンキリンリピートであってもよい。抗体はまた、Fab、Fab’2、scFv、SMIP、ダイアボディ、ナノボディ、アプタマー、またはドメイン抗体であってもよい。抗体は、次のアイソタイプ、すなわちIgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4)、IgM、IgA(例えば、IgA1、IgA2、およびIgAsec)、IgD、またはIgEのいずれかを有してもよい。
【0016】
用語「抗原結合断片」は、本明細書で使用される場合、癌特異的抗原(例えば前立腺癌特異的抗原(例えばERGまたはSIM2))に特異的に結合する能力を保持する抗体の1つ以上の断片を示す。抗体の抗原結合機能は、完全長抗体の断片によって行われうる。抗体の用語「抗原結合断片」内に包含される結合断片の例として、限定はされないが、(i)V、V、C、およびC1ドメインからなる一価断片であるFab断片;(ii)ヒンジ部位でジスルフィド橋によって連結される2つのFab断片を含む二価断片であるF(ab’)断片;(iii)VおよびC1ドメインからなるFd断片;(iv)抗体の単一のアームのVおよびVドメインからなるFv断片、(v)VおよびVドメインを含むdAb;(vi)VドメインからなるdAb断片(Wardら、Nature 341:544−546頁(1989年));(vii)VまたはVドメインからなるdAb;(viii)単離相補性決定領域(CDR);ならびに(ix)場合によって合成リンカーによって連結可能な2つ以上の単離CDRの組み合わせが挙げられる。さらに、Fv断片の2つのドメインのVおよびVは、別々の遺伝子によってコードされるが、組換え方法を用いて、VおよびV領域が対合して一価分子を形成する単一のタンパク質鎖としての作成を可能にする合成リンカーによって連結されうる(一本鎖Fv(scFv)として既知;例えば、Birdら、Science 242:423−426頁(1988年)およびHustonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883頁(1988年))。これらの抗体断片は、当業者に既知の従来の技術を用いて得られ、断片は、無傷抗体と同じ方法で、有用性についてスクリーニングされる。抗原結合断片は、組換えDNA技術あるいは無傷免疫グロブリンの酵素的または化学的切断によって生成することが可能である。
【0017】
「抗原提示細胞」は、表面上で主要組織適合性複合体(MHC)分子と複合された抗原(例えば癌特異的抗原、例えば前立腺癌特異的抗原)を提示する細胞を意味する。一部の実施形態では、抗原提示細胞は、抗原(例えばナイーブT細胞)に暴露されていない免疫細胞(例えばT細胞)を活性化することが可能である。これらの抗原提示細胞は、抗原を(例えば、貪食または受容体媒介エンドサイトーシスにより)内在化し、細胞表面上のMHC分子に結合された抗原の断片を提示する。免疫細胞(例えばT細胞)は、抗原提示細胞の表面上のMHC分子複合体を認識し、それと相互作用する。次いで、追加的な共刺激シグナルが抗原提示細胞によって生成され、T細胞の活性化がもたらされる。抗原提示細胞は、例えば、樹状細胞、マクロファージ、B細胞、単球、線維芽細胞、胸腺上皮細胞、甲状腺上皮細胞、グリア細胞、膵臓β細胞、および血管内皮細胞を含む。抗原提示細胞は、種々の生物学的な体液、組織、および器官(例えば、末梢血、骨髄、腫瘍浸潤細胞、腫瘍周辺組織、浸潤細胞、リンパ節、脾臓、皮膚、および臍帯血)のいずれかから単離されうる。
【0018】
「抗原提示分子」は、本明細書で使用される場合、クラスIまたはクラスII主要組織適合性(MHC)分子(例えばヒト白血球抗原(HLA)分子)、あるいは、抗原に結合し、抗原と抗原提示分子の複合体として免疫細胞(例えばナイーブT細胞)によって認識されうるように、抗原を細胞の表面上に提示し、それによって例えば免疫細胞の活性化をもたらすことが可能な任意の他の分子を示す。
【0019】
用語「細胞毒性剤」は、本明細書で使用される場合、細胞の1つ以上の機能(例えば、細胞の複製、分裂、またはタンパク質の分泌)を阻害または阻止するか、あるいは細胞のアポトーシスまたは壊死を引き起こす物質を示す。同用語は、放射性同位体(例えば、I131、I125、Y90、およびRe186)、化学療法剤、および毒素、例えば細菌、真菌、植物または動物に由来する酵素的活性毒素、あるいはこれらの断片を含むように意図される。さらなる細胞毒性剤は、限定はされないが、アルキル化剤、抗生物質、代謝拮抗薬、チューブリン阻害剤、トポイソメラーゼIおよびII阻害剤、ホルモンアゴニストまたはアンタゴニスト、あるいは免疫調節剤を含む。細胞毒性剤は、光または赤外線によって活性化された場合に細胞毒性を示しうるか(Photofrin,IR dyes;Nat.Biotechnol.19(4):327−331頁(2001年))、他の機械学的経路(mechanistic pathways)を通じて作用しうるか、または補助増強剤(supplementary potentiating agent)でありうる。
【0020】
用語「免疫細胞」は、本明細書で使用される場合、後天性または先天性免疫系の生成、調節、または効果に関与する任意の細胞を示す。免疫細胞は、例えばT細胞(例えば、CD4細胞またはCD8細胞)、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、単球および樹状細胞、ならびに好中球を含む。
【0021】
「免疫応答刺激ペプチド」は、例えば、樹状細胞、マクロファージ、単球、およびB細胞において発現される抗原提示細胞組織適合性分子(例えば主要組織適合性複合体分子(MHC)、例えばHLAクラスI分子)によって提示される腫瘍特異的抗原、例えば前立腺癌特異的抗原であるペプチド(例えばERGまたはSIM2のペプチド)を意味し、ナイーブ免疫細胞(例えばT細胞)のペプチド/組織適合性分子複合体に対する結合は、腫瘍特異的抗原に対して免疫細胞を活性化する。かかる免疫応答刺激ペプチドは、一般に、少なくとも7個のアミノ酸残基を含むが、最大で50個のアミノ酸残基を含みうる。免疫応答刺激ペプチドは、一般に、例えばペプチドの抗原特異的な抗体、抗血清、またはT細胞系またはクローンと反応する能力についてのスクリーニングを含む周知の技術を用いて同定されうる。免疫応答刺激ペプチドに対するT細胞応答は、当該技術分野で既知のように、例えば、サイトカインの放出、T細胞増殖の増大、または細胞内カルシウム濃度の変化を含みうる。
【0022】
「薬学的に許容できる担体」は、共に投与される組成物の治療的特性を保持しながら対象に対して生理学的に許容できる希釈剤、賦形剤、またはアジュバントを意味する。1つの典型的な薬学的に許容できる担体は、生理食塩水である。他の生理学的に許容できる希釈剤、賦形剤、担体、またはアジュバントおよびそれらの調合物は、当業者にとって既知である。
【0023】
「増殖性疾患」または「癌」は、異常または制御不能な細胞成長によって特徴づけられた任意の症状を意味する。増殖性疾患の例は、例えば前立腺癌である。他の典型的な癌は、肉腫(例えば明細胞肉腫)、癌(例えば腎細胞癌)、およびリンパ腫;乳腺、結腸、直腸、肺、中咽頭、下咽頭、食道、胃、膵臓、肝臓、胆汁性嚢胞(bilecyst)、胆管、小腸、泌尿器系(腎臓、膀胱、および尿路の上皮を含む)、女性器系(子宮頸、子宮、卵巣、絨毛腫、および妊娠栄養膜(gestational trophoblast)を含む)、男性器系(精嚢および睾丸を含む)、内分泌腺(甲状腺腺、副腎、および下垂体を含む)、皮膚(血管腫、黒色腫、骨または軟組織に由来する肉腫、およびカポジ肉腫を含む)、脳および髄膜(星状細胞腫、神経星状膠腫、海綿芽細胞腫、網膜芽細胞腫、神経腫、神経芽細胞腫、神経鞘腫および神経芽細胞腫を含む)、神経、目、造血系(緑色白血病、形質細胞腫および皮膚Tリンパ腫/白血病を含む)、ならびに免疫系(リンパ腫、例えばホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫を含む)の腫瘍などの固形腫瘍を含む。非固形腫瘍増殖性疾患の例は、白血病(例えば、急性リンパ性白血病)である。
【0024】
「タンパク質」、「ポリペプチド」または「ペプチド」は、翻訳後修飾(例えばグリコシル化またはリン酸化)とは無関係に、天然ポリペプチドまたはペプチドの全部もしくは一部を構成するかまたは非天然ポリペプチドまたはペプチドを構成する2個より多いアミノ酸の任意の鎖を意味する。ポリペプチドまたはペプチドは、物理的、機械的、または化学的方法を用いて、ポリペプチドが細胞成分から除去されている場合、「単離された」または「実質的に純粋な」といわれることがある。「単離ポリペプチドまたはペプチド」、「実質的に純粋なポリペプチドまたはペプチド」、または「実質的に純粋な単離ポリペプチドまたはペプチド」は、典型的には、細胞成分から除去されたものと考えられ、天然に会合する相手のタンパク質および天然有機分子を少なくとも60重量%含まない場合、実質的に純粋である。好ましくは、ポリペプチドまたはペプチドは、少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、および最も好ましくは少なくとも99重量%純粋である。実質的に純粋なポリペプチドまたはペプチドは、標準的技術、例えば天然供給源(例えば細胞系)からの抽出、ポリペプチドをコードする組換え核酸の発現、あるいはポリペプチドまたはペプチドの化学的合成によって得ることが可能である。純度は、任意の適切な方法、例えば、カラムクロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、またはHPLC分析によって測定することが可能である。あるいは、ポリペプチドまたはペプチドは、それがヒトの介入によって改変され、その天然部位でない位置に配置されている場合、またはそれが1つ以上の細胞に導入されている場合、単離されているものと考えられる。
【0025】
「特異的に結合する」は、結合部分(例えば、抗体、組織適合性分子、抗原結合断片、受容体、リガンド、小分子、または細胞(例えば免疫細胞))が、標的分子が欠如している非標的細胞または組織ではなく、標的分子(例えば抗原(またはその断片)、サイトカイン、ケモカイン、ホルモン、受容体、抗原/MHC複合体、またはリガンド)あるいは標的分子(例えば、細胞表面抗原、受容体、およびリガンド)を担持する細胞または組織と優先的に会合することを意味する。抗原/MHC複合体との関連での用語「特異的に結合する」は、例えば、抗原/MHC複合体とナイーブ免疫細胞、例えばT細胞上の受容体(例えばT細胞受容体)との優先的会合に適用される。ある程度の非特異的相互作用が、結合部分と非標的分子(単独でまたは細胞もしくは組織と併せて存在する)の間で生じうることは理解されている。それに対し、特異的結合は、標的分子または複合体の特異的認識を通じて媒介されるものとして識別されうる。特異的結合の結果、結合部分(例えば抗体または抗原結合断片)と例えば標的分子(例えば抗原または抗原/MHC複合体)を担持する細胞との間の会合が、結合部分(例えば抗体または免疫細胞)と例えば標的分子が欠如した細胞との間の場合よりもはるかに強力になる。典型的には、特異的結合の結果、例えば標的分子を担持する細胞または組織に結合される結合部分の量(単位時間当たり)が、その標的分子が欠如した細胞または組織の場合よりも2倍、好ましくは5倍超、より好ましくは10倍超および最も好ましくは100倍超増加する。結合部分は、例えば、10−6M未満、より好ましくは10−7M、10−8M、10−9M、10−10M、10−11M、もしくは10−12M未満、および最も好ましくは10−13M、10−14M、もしくは10−15M未満の解離定数で標的分子に結合する。かかる条件下での標的分子、例えばタンパク質またはペプチド(例えば抗原)に対する特異的結合は、その特定の標的分子に対するその特異性について選択される結合部分を必要とする。種々のアッセイ形式は、特定の標的分子(例えば抗原または抗原/MHC複合体)に特異的に結合可能な結合部分(例えば抗体または免疫細胞)の選択に適し、かつその逆もいえる。例えば、固相ELISAイムノアッセイは、通常、タンパク質と特異的免疫応答性があるモノクローナル抗体を選択するのに使用される。特異的免疫応答性の判定に使用可能なイムノアッセイの形式および条件の記述については、HarlowおよびLane,「Antibodies,A Laboratory Manual」,Cold Spring Harbor Publications,New York(1988年)を参照のこと。
【0026】
「対象」は、任意の動物、例えば哺乳動物(例えばヒト)を意味する。本明細書中に記載の方法に従って治療されるべき対象(例えば、癌(例えば前立腺癌)であると診断された対象)は、医療施術者により、かかる症状を有すると診断されている者または症状(例えば癌(例えば前立腺癌))を発症するリスクがある者でありうる。診断は任意の好適な手段によって行われうる。当業者は、本発明によって治療されるべき対象が、標準の試験を受けているか、または、検査なしに、1つ以上のリスク因子(例えば、前立腺特異的抗原(PSA)の上昇または癌の病歴)の存在による高リスクの者として同定されている場合があることを理解するであろう。
【0027】
用語「実質的同一性」または「実質的に同一の」は、ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列を参照配列と比較する状況で使用される場合、ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列は、参照配列と同じであるか、あるいは2つの配列が最適に整列される場合、ヌクレオチドまたはアミノ酸残基の、参照配列内の対応する位置で同じである特定の百分率を有することを意味する。例えば、参照配列に対して「実質的に同一の」アミノ酸配列は、デフォルトパラメータを伴うBLASTまたはBLAST2.0配列比較アルゴリズムを使用する測定により、またはマニュアルアラインメントおよび目視検査(例えばNCBIウェブサイトを参照)により、参照配列の完全長全体にわたる最大の一致についての比較および整列がなされる場合、参照配列(例えば、SEQ ID NO:11または12でそれぞれ示されるERGまたはSIM2の完全長アミノ酸配列またはその断片)に対して、少なくとも約60%の同一性、好ましくは65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれより高い百分率の同一性(最大100%)を有する。
【0028】
用語「ワクチン」は、本明細書で使用される場合、組成物の対象への投与後、少なくとも短時間、免疫応答を提供し、免疫を付与するのに使用される組成物として定義される。
【0029】
本発明の他の特徴および利点は、詳細な説明および特許請求の範囲から自明であろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明者らのデータセットおよびStanfordデータセットにおける前立腺癌において過剰発現される遺伝子およびNovartis Gene Expression Atlasから推定されるヒト成人男性の前立腺外の組織において過少発現される遺伝子を再現するベン図である。
【図2】個別の遺伝子(AMACR、BICD1、C10orf137、CDC2L6、ICA1、KIAA1661、MAP7、MYO6、OR51E2、PAICS、PCSK6、PVT1、RGS10、SGEF、およびSIM2)のmRNA発現レベルのqRT−PCRの検証を示す一連のグラフである。qRT−PCRの検証は、TaqMan(登録商標)遺伝子発現アッセイを使用して行われた。8つの正常前立腺標本に対して、7つの前立腺癌標本において有意に過剰発現された15の遺伝子のみ(P<.05)がここで示される。
【図3】ERGエピトープがヒトHLA−A2.1に結合し、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を誘発することを示すグラフである。HLA−A2.1に対する予測ペプチドの結合が、T2細胞に対するアセンブリアッセイを用いて評価された(図3A)。試験された12のうち8つのペプチドが、非結合ペプチド(Ctrl)に対して高い結合能を示した。HLA−A2.1からのペプチドの解離の速度が、バインダーペプチドとのインキュベーション後、経時的にHLA−A2.1の発現の低下を監視することによって判定された。8つのペプチドでのHHDマウスの免疫化によって3つの免疫原性ERGペプチドが示され、そのうち2つが図3Bに示される。
【図4】核酸プログラム型タンパク質アレイ(NAPPA)を使用するマイクロアレイ実験の方法および結果を示す。図4Aは、NAPPAの略図である。図4Bは、800の腫瘍関連抗原(TAA)に対する1つの前立腺癌血清のスクリーニングによる、ACPP、AMACR、BRD2、ERG、およびETV1に対する自己抗体のマイクロアレイデータを示す。
【図5】SIM2が前立腺癌患者において自発的な液性応答を引き起こすことを示す棒グラフである。前立腺癌患者9名および健常ドナー5名に由来する血清に、インビトロでの無細胞タンパク質発現に基づくELISAが施され、SIM2に対する自己抗体が検出された。SIM2はGSTタグ付きタンパク質として発現され、かつ抗GSTでコーティングされたプレートがアッセイに使用された。固定化SIM2に結合する血清抗体が、標識抗ヒト抗体を使用して検出された。各アッセイにおいては、GST発現ベクターを有するウェルが陰性対照として使用された。GSTウェルから得られるシグナルは、GST−SIM2を有するウェルから得られるものから差し引かれた。3回の実験が、3つ組のウェル(各血清試料/実験に対する)を使用して行われた。3つ組の平均および標準偏差に対して統計を行い、抗体量が、GST−SIM2およびGST単独によって生成される光学密度(OD)シグナルの差異としてプロットされた。
【図6A】SIM2がHLA−A2.1拘束性免疫原性エピトープを有することを示すグラフを示す。HLA−A2.1に対する結合およびHLA−A2.1からのペプチドの解離の速度が、バインダーペプチドとのインキュベーション後、経時的にHLA−A2.1の発現の低下を監視することによって判定された。
【図6B】SIM2がHLA−A2.1拘束性免疫原性エピトープを有することを示すグラフを示す。9つの結合ペプチドでのA2.1トランスジェニックHHDマウスの免疫化は、IFN−γELISPOTアッセイによって示されるように、5つの免疫原性SIM2ペプチドを示した。
【図7】アンドロゲン抑制が前立腺に特異的な寛容を弱めることを示す棒グラフである。ハイブリッドA2.1/PSA(雄、去勢した雄、または雌)トランスジェニックおよびA2.1マウスに、vac−前立腺特異的抗原(PSA)が免疫され、脾細胞が、PSAタンパク質が負荷された樹状細胞で再刺激され、ELISPOT(図7A)またはPSA−四量体(図7B)によって試験された。
【図8】アンドロゲンの用量の増加を伴う、それぞれVcap細胞系(図8A)およびLNCap細胞系(図8B)におけるERGおよびSIM2のqRT−PCR定量を示す棒グラフである。
【図9】前立腺癌を有するマウスにおける調節性Tリンパ球(Treg)の生成の増加および抗Tim−1アゴニスト抗体の効果を示す棒グラフである。図9Aおよび図9Bは、TGF−βの存在下で抗CD3および抗CD28抗体とともに培養されたTRAMPおよび対照マウスの脾細胞に由来する分類されたナイーブCD4およびCD8 T細胞について記載する。新規に分化したTregの百分率は、培養の3日後におけるフローサイトメトリーによって判定された。図9Cおよび図9Dは、免疫化の際の抗Tim−1アゴニスト抗体による治療が、Tagに特異的なCTLの数の増加からも明らかなように、B6マウスにおけるTag抗原に対するCTL応答を促進することを示す。
【図10】抗Tim−1抗体による治療が、TRAMPマウスにおけるTagに対するCTL応答の促進を引き起こすことを示す棒グラフである(P<.01対アイソタイプ対照)。
【図11】AMACRアミノ酸配列(SEQ ID NO:11)である。
【図12】BICD1アミノ酸配列(SEQ ID NO:12)である。
【図13】C10orfl37アミノ酸配列(SEQ ID NO:13)である。
【図14】CDC2L6アミノ酸配列(SEQ ID NO:14)である。
【図15】ICA1アミノ酸配列(SEQ ID NO:15)である。
【図16】KIAA1661アミノ酸配列(SEQ ID NO:16)である。
【図17】MAP7アミノ酸配列(SEQ ID NO:17)である。
【図18】MYO6アミノ酸配列(SEQ ID NO:18)である。
【図19】OR51E2アミノ酸配列(SEQ ID NO:19)である。
【図20】PAICSアミノ酸配列(SEQ ID NO:20)である。
【図21】PCSK6アミノ酸配列(SEQ ID NO:21)である。
【図22】PVT1核酸配列(SEQ ID NO:22)である。
【図23】RGS10アミノ酸配列(SEQ ID NO:23)である。
【図24】SGEFアミノ酸配列(SEQ ID NO:24)である。
【図25】SMARCA4///MRPL43核酸配列(SEQ ID NO:25)である。
【図26】SS18アミノ酸配列(SEQ ID NO:26)である。
【図27】ERGアミノ酸配列(SEQ ID NO:1)である。
【図28】SIM2アミノ酸配列(SEQ ID NO:5)である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
詳細な説明
最近、ERG転写因子が前立腺癌細胞内で過剰発現され、かつ非癌性前立腺細胞内で発現されないことが発見された。本発明者らは、正常組織がERGを発現しないことから、ERGに対する免疫寛容が克服可能であり、かつ免疫応答がERGに対してもたらされうることを仮定した。本発明者らは、ヒト免疫細胞(例えばナイーブT細胞)に対して、例えば大部分のヒトにおけるすべての細胞の表面上に見出されるヒトHLA−A2.1抗原提示分子を介して提示されうるERG由来の免疫応答刺激ペプチドを同定した。さらに、本発明者らは、前立腺癌に対する免疫療法としての役割を果たしうる、前立腺癌細胞内で過剰発現され、かつ非癌性前立腺細胞内で発現されない別のタンパク質であるタンパク質SIM2に由来する免疫応答刺激ペプチドを同定した。また、本発明者らの試験では、前立腺癌細胞内で過剰発現される16のさらなるタンパク質(そのペプチドもまた免疫療法において使用可能である)が同定されている。
【0032】
したがって、本発明は、癌(例えば前立腺癌)の治療における免疫応答をもたらすための方法および組成物(例えば、免疫応答刺激ペプチド(例えばERGまたはSIM2ペプチド)、活性化免疫細胞、抗原提示細胞、および抗体またはその抗原結合断片)を特徴とする。
【0033】
ERG、SIM2、および他の前立腺腫瘍関連抗原
例えば、樹状細胞、マクロファージ、単球、およびB細胞において発現される抗原提示細胞の組織適合性分子(例えば主要組織適合性複合体分子(MHC)、例えばHLAクラスI)によって提示される腫瘍特異的抗原、例えば前立腺癌特異的抗原(例えば、ERGまたはSIM2のペプチド)である免疫応答刺激ペプチド。ペプチド/組織適合性分子複合体に対するナイーブ免疫細胞(例えばT細胞)の結合は、腫瘍特異的抗原に対して免疫細胞を活性化する。かかる免疫応答刺激ペプチドは、一般に、少なくとも7個のアミノ酸残基であるが50個未満のアミノ酸残基を有する。例えば、免疫応答刺激ペプチドは、例えば、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、もしくは49個のアミノ酸残基を含みうる。前立腺癌の治療において使用される免疫応答刺激ペプチドの非限定例が、表1に記載される。
【0034】
【表1】



【0035】
免疫応答刺激ペプチドは、周知の技術、例えばPaul W.E.(編)、Fundamental Immunology、第3版、243−247頁(Raven Press、1993年)(参照により本明細書中に援用される)に記載のものを用いて同定してもよい。かかる技術は、例えば、ポリペプチドを、抗原特異的抗体、抗血清、MHC分子(例えばHLAクラスI分子)、および/またはT細胞系またはクローンと反応する能力についてスクリーニングすることを含む。免疫応答刺激ペプチドに対するT細胞応答は、例えば、当該技術分野で既知の、サイトカインの放出、T細胞増殖の増大、または細胞内カルシウム濃度の変化を含みうる。ここで活性化T細胞は、ペプチドを発現する細胞を標的化し、例えばサイトカインの発現における変化により、アポトーシスまたは壊死を引き起こしうる。
【0036】
本明細書中に記載の免疫応答刺激ペプチドは、例えば、Merrifield固相合成、溶液相合成、または双方の組み合わせを用いる化学合成によって生成してもよい(例えば、Solid Phase Peptide Synthesis、第2版、1984年、The Pierce Chemical Co.、Rockford,IL(参照により本明細書中に援用される)に記載の方法を参照)。次いで、免疫応答刺激ペプチドは、標準のペプチドアセンブリー化学によって濃縮してもよい。本発明のペプチドはまた、生物学的または遺伝子工学プロセス(例えば、細菌、哺乳類細胞、例えばCHO細胞、またはトランスジェニック動物における組換え生成)によって得てもよい。例えば、目的のペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む当業者に既知の発現ベクターを使用してもよく、発現ベクターは細胞に取り込まれ、それによってコードされるペプチドは細胞内で発現しうる。
【0037】
所望される活性を有するペプチドは、必要に応じて修飾して、特定の所望される属性、例えば改善された薬理学的特性を提供することができる一方、未修飾ペプチドの実質的にすべての生物学的活性を増大させるかまたは少なくとも保持して、所望される抗原提示分子に結合させ、かつ適切な免疫細胞を活性化させることができる。例えば、免疫応答刺激ペプチドは、例えば、(保存的または非保存的のいずれかの)置換、欠失、または挿入などのさまざまな変化を受けてもよく、かかる変化であれば、その使用における特定の利点(例えば抗原提示分子に対する改善された結合性)を提供しうる。保存的置換は、例えば、あるアミノ酸残基を生物学的および/または化学的に類似する別の残基に(例えば、1つの疎水性残基を別の残基に、または1つの極性残基を別の残基に)置換することを含みうる。置換は、Gly、Ala;Val、Ile;Leu、Met;Asp、Glu;Asn、Gln;Ser、Thr;Lys、Arg;およびPhe、Tyrなどの組み合わせを含む。単一のアミノ酸置換の効果はまた、D−アミノ酸を用いてプローブしてもよい。かかる修飾は、例えば、Merrifield,Science 232:341−347頁(1986年)、Barany and Merrifield,「The Peptide」,Gross and Meienhofer編、1979年、1−284頁、Academic Press,New Yorkに記載のような周知のペプチド合成方法を用いて行ってもよい。
【0038】
免疫応答刺激ペプチドはまた、例えばアミノ酸の付加または欠失によるペプチドのアミノ酸配列の延長または短縮によって修飾してもよい。ペプチドはまた、特定の残基の順序または組成を改変することによって修飾してもよいが、生物学的活性にとって必須である特定のアミノ酸残基、例えば重要な接触部位の残基または保存された残基は、一般に、生物学的活性に対して悪影響を及ぼすことなく改変することはできない。必須でないアミノ酸は、タンパク質において天然のもの、例えばL−α−アミノ酸(またはそのD−異性体)に限定される必要はなく、同様に非天然アミノ酸、例えばβ−γ−δ−アミノ酸、ならびにL−α−アミノ酸の多数の誘導体を含みうる。
【0039】
さまざまなアミノ酸残基の模倣体または非天然アミノ酸での免疫応答刺激ペプチドの修飾は、インビボでのペプチドの安定性を高めるのに特に有用である。
【0040】
本発明の免疫応答刺激ペプチドは、修飾され、インビボでの半減期の改善以外の所望される属性を提供しうる。例えば、ペプチドの免疫細胞(例えば細胞傷害性Tリンパ球)の活性に対する誘導能は、例えばTヘルパー細胞応答を誘発可能な少なくとも1つのエピトープを有する配列に対する連結によって促進されうる。典型的なエピトープは、インフルエンザウイルス、NS1(ヘマグルチニン)および破傷風トキソイドに由来する非構造タンパク質を含む。あるいは、エピトープは、ペプチドの溶解度を高めるかまたはペプチドの所望される細胞内区画への標的化を可能にするように選択してもよい。ペプチドはまた、疾患(例えば前立腺癌)を治療、阻害、低減、または緩和することで知られる任意の既知の細胞毒性部分または治療部分に複合してもよい。
【0041】
一実施形態では、本発明の免疫応答刺激ペプチドは、抗原提示分子に結合された場合、対象における免疫細胞を活性化する。抗原提示分子は、クラスIもしくはクラスII主要組織適合性(MHC)分子(例えばヒト白血球抗原(HLA)分子)、または細胞の表面上の抗原を提示し、かつ抗原と抗原提示分子の複合体として免疫系の細胞によって認識される、抗原に結合可能な任意の他の分子である。典型的なHLA分子は、限定はされないが、

を含む。ヒトクラスII HLA対立遺伝子は、限定はされないが、HLA−DAα1−4(pDAα1−4);HLA−DAα1−5(pDAα1−5);HLA−DAβ5(pDAβ5);HLA−DCα107(pDCα107);HLA−DOα20(pDOα20);HLA−DQβl55(pDQβl55);HLA−DRα11(pDRα11);HLA−DRβ134(pDRβ134);HLA−DRβ5(TOK H5 DRβ);HLA−DRβ4(YT158);HLA−DQA1(pgDQ4A);HLA−DQB1(pgDQlB);HLA−DQB1(pgDQ1BS);HLA−DRA(DRA2EH);HLA−DPA1(DPA02022);HLA−DPB1(DPB0202);HLA−DRB1(KbDRB10803);HLA−DRB1(KbDRB11201);HLA−DRB1(KbDRB11302);HLA−DRB3(DRB30301EMJ−4);HLA−DQA1(DQA10501AMALA−4);HLA−DQB1(DQB10301AMALA−4);HLA−DQAl(DQA10101KAS1163−6);およびHLA−DQB1(DQB10503EK2−4)を含む。
【0042】
活性化免疫細胞
本発明は、免疫応答刺激ペプチドが抗原提示分子(例えばMHC分子(例えばHLAクラスI分子))に結合された場合における、ペプチドに特異的に結合可能な活性化免疫細胞を特徴とする。一実施形態では、活性化免疫細胞(例えば細胞傷害性T細胞)は、例えば米国特許第6,130,087号明細書(参照により本明細書中に援用される)に記載の方法に従い、インビトロで生成してもよい。免疫細胞(例えばT細胞)は、例えば、組織適合性分子と複合された免疫応答刺激ペプチドを提示する抗原提示細胞(例えば、樹状細胞、マクロファージ、単球、およびB細胞)とともに培養してもよく、それにより免疫細胞が活性化され、ここで活性化された免疫細胞は、組織適合性分子(例えばHLAクラスI分子)との複合体において表面上に免疫応答刺激ペプチドを提示する細胞を標的化する。免疫細胞を活性化するための他の方法は、米国特許第5,928,643号明細書、米国特許第6,074,635号明細書、および米国特許第6,210,873号明細書(参照により本明細書中に援用される)において記載されている。
【0043】
抗原提示細胞
本発明は、表面上に、抗原提示分子と本明細書中に記載の免疫応答刺激ペプチドのいずれか1つとの複合体を含む抗原提示細胞を特徴とする。抗原提示細胞は、例えば、抗原提示能を有する細胞(例えば、樹状細胞、マクロファージ、B細胞、単球、線維芽細胞、胸腺上皮細胞、甲状腺上皮細胞、グリア細胞、膵臓β細胞、または血管内皮細胞)を本明細書中に記載の免疫応答刺激ペプチドのいずれか1つと接触させることによって調製してもよい。かかる細胞は、種々の体液、組織、および器官(例えば、末梢血、骨髄、腫瘍浸潤細胞、腫瘍周辺組織、浸潤細胞、リンパ節、脾臓、皮膚、または臍帯血)のいずれかから単離してもよい。
【0044】
抗原提示細胞を調製するための方法は、例えば米国特許第6,787,164号明細書(参照により本明細書中に援用される)中に記載されている。つまり、抗原提示細胞は、ペプチドがレシピエント宿主細胞内で有効量で発現されるような(例えば免疫応答刺激ペプチドをコードする1つ以上の組換えまたは合成核酸配列の挿入による)遺伝子導入法技術を用いて改変してもよい。「有効量」は、レシピエント細胞がインビボで所望される免疫応答を惹起できるのに十分な発現であることを意味する。選択された分子を発現するための細胞への遺伝子導入については、核酸は、例えば、マイクロインジェクション、エレクトロポレーションにより、カルシウム−リン酸−DNAゲルとして、DEAEデキストランを伴い、「裸」核酸の形態で、またはカプセル化形態で(例えばリポソームなどの小胞中で)、または適切なウイルスベクターで、生体外で直接導入してもよい。目的の組換え遺伝子の抗原提示細胞への導入後における発現は、例えばタンパク質産物の機能活性についてのイムノアッセイまたは生物学的アッセイによって確認される。例えば、細胞に導入された分子の発現は、(免疫応答刺激ペプチドに特異的な)標識抗体の抗原提示細胞への結合を、例えばFACSまたはELISAなどのアッセイを用いて検出することによって確認してもよい。改変細胞の生物学的活性は、例えばインビトロアッセイおよびヒトで試験する前の動物モデル(例えば、マウスまたは非ヒト霊長類)において検証してもよい。本発明の改変細胞の、所望されるように機能する、例えば、免疫応答を活性化するために抗原を処理し、提示する能力は、インビトロまたはインビボアッセイを用いて試験してもよい。免疫細胞活性化(例えばT細胞活性化)は、免疫細胞の増殖における変化の測定、標的細胞の殺滅、および特定の調節因子(例えばリンホカイン)の分泌、特定の免疫調節分子のmRNAの発現、またはこれらの事象の組み合わせを含むさまざまな既知の方法によって検出してもよい。
【0045】
遺伝子導入の代わりとして、本明細書中に記載の免疫応答刺激ペプチドは、培養物中の抗原提示細胞に付加し、分子を例えばT細胞に提示するため、抗原提示細胞上に「負荷する」ことが可能である(例えば、Tykocinskiら、Amer.J.Pathol.148:1−16頁、1996年(参照により本明細書中に援用される)を参照)。ペプチドまたはタンパク質のパルシング(例えば共培養)を使用することも可能である(Inabaら、J.Exp.Med.172:631−640頁、1990年)。あるいは、ペプチドは、選択される免疫応答刺激ペプチドを担持するリポソームとの融合を介して細胞表面に導入してもよい(Coeshottら、J.Immunol.134:1343−1348頁、1985年)。
【0046】
抗原提示細胞は、細胞用培地、生理食塩水、またはリン酸塩緩衝化生理食塩水などの任意の既知の生理学的に適合可能な薬学的担体中に懸濁し、生理学的に許容できる水性薬学的組成物を形成してもよい。非経口媒体は、例えば、塩化ナトリウム溶液、リンガーデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、または乳酸加リンガーを含む。抗原提示細胞は、複数の投与方法の1つを用いることにより、試験されるべき対象に導入してもよい。例えば、抗原提示細胞は、(アジュバントの存在下または不在下で)摂取により非経口的に(例えば、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、皮内、および皮下を含む)接種するかまたは粘膜表面に適用してもよい。あるいは、本発明の抗原提示細胞は、例えば癌病変または感染組織への直接注射により、局所的に投与してもよい。
【0047】
本発明の抗原提示細胞は、少なくとも1回の投与で、免疫系の免疫細胞を活性化し、例えば癌抗原に対する免疫応答を誘発するのに十分な数の抗原提示細胞で、それを必要とする対象(例えば前立腺癌患者)に導入される。細胞は、例えば少なくとも10〜1012個の細胞を有する、単回注入、または同数の細胞を有する複数回連続注入で投与してもよい。
【0048】
抗体または抗原結合断片
本発明の抗体または抗原結合断片は、例えばIgG、IgA、IgM、IgD、およびIgEアイソタイプを含む。本発明の抗体または抗体断片は、本明細書で使用される場合、1つ以上の相補性決定領域(CDR)または結合ペプチドを有し、それは標的タンパク質(例えば腫瘍特異的タンパク質、例えば前立腺腫瘍特異的タンパク質(例えばERGおよびSIM2)または免疫応答刺激ペプチド)に結合する。一部の実施形態では、抗体または抗原結合断片は、免疫応答刺激ペプチド抗原提示分子(例えばHLAクラスI分子)に結合された場合、ペプチドに特異的に結合する。
【0049】
本明細書中に記載の抗体またはその断片の多くは、結合特異性またはエフェクター機能の低下、または結合親和性の許容されない低下(例えば約10−7M未満)を伴うことなく、可変および定常領域の双方における非必須アミノ酸の置換、付加または欠失を受けうる。通常、かかる改変を取り込む抗体または抗体断片は、その元となる参照抗体または抗体断片に対して実質的な配列同一性を示す。場合により、その元となる参照抗体または抗体断片に対して同じ特異性および増大した親和性を有する突然変異抗体または抗体断片が選択されうる。ファージディスプレイ技術は、かかる抗体を選択するための強力な技術を提供する。例えば、Dowerら、国際公開第91/17271号パンフレット;McCaffertyら、国際公開第92/01047号パンフレット;およびHuse、国際公開第92/06204号パンフレット(参照により本明細書中に援用される)を参照のこと。
【0050】
抗体断片は、別々の可変重鎖、可変軽鎖、Fab、Fab’、F(ab’)、Fabc、およびscFvを含む。断片は、無傷免疫グロブリンの酵素的または化学的分離によって生成してもよい。例えば、F(ab’)断片は、例えばHarlowおよびLane、「Antibodies:A Laboratory Manual」,Cold Spring Harbor Pubs.、New York、1988年に記載の標準的方法を用いて、pH3.0〜3.5、ペプシンでのタンパク質分解消化により、IgG分子から得てもよい。Fab断片は、制限された還元(limited reduction)によってF(ab’)断片から、または、還元剤の存在下でのパパインによる消化によって全抗体から得てもよい。断片はまた、組換えDNA技術によって生成してもよい。選択される断片をコードする核酸のセグメントは、制限酵素による完全長コード配列の消化またはデノボ合成によって生成される。断片は、ファージコート融合タンパク質の形態で発現される場合が多い。この発現方法は、抗体の親和性強化(sharpening)において有利である。
【0051】
キメラ抗体およびヒト化抗体ならびに抗体断片を調製する方法は、例えば、米国特許第4,816,567号明細書;米国特許第5,530,101号明細書;米国特許第5,622,701号明細書;米国特許第5,800,815号明細書;米国特許第5,874,540号明細書;米国特許第5,914,110号明細書;米国特許第5,928,904号明細書;米国特許第6,210,670号明細書;米国特許第6,677,436号明細書;および米国特許第7,067,313号明細書ならびに米国特許出願第2002/0031508号明細書;米国特許出願第2004/0265311号明細書;および米国特許出願第2005/0226876号明細書において記載されている。抗体またはその抗原結合断片の調製については、例えば、米国特許第6,331,415号明細書;米国特許第6,818,216号明細書;および米国特許第7,067,313号明細書においてさらに記載されている。
【0052】
アジュバント
本発明の組成物に適したアジュバントは、本発明のペプチド(例えば免疫応答刺激ペプチド(例えばERGまたはSIM2ペプチド))、抗体またはその抗原結合断片、活性化免疫細胞、および抗原提示細胞に対する免疫応答を促進可能なアジュバントを含む。アジュバントは、当該技術分野で周知である(例えば、Vaccine Design−The Subunit and Adjuvant Approach、1995年、Pharmaceutical Biotechnology、第6巻、PowellおよびNewman編、Plenum Press,New YorkおよびLondon(参照により本明細書中に援用される)に記載)。
【0053】
本発明の組成物にとって好ましいアジュバントは、アルミニウムまたはカルシウム塩(例えば水酸化物またはリン酸塩)を含む。望ましいアジュバントは、Alhydrogel(商標)などの水酸化アルミニウムゲルである。水酸化アルミニウムゲル(alum)においては、ペプチド(例えば免疫応答刺激ペプチド(例えばERGまたはSIM2ペプチド))、抗体またはその抗原結合断片、活性化免疫細胞、および抗原提示細胞は、アルミニウムが1用量あたり50〜800μg存在する、好ましくは400〜600μg存在するようにアジュバントと混和される。
【0054】
本発明の組成物において使用される別のアジュバントは、エマルジョンである。エマルジョンは、水中油エマルジョンまたは油中水エマルジョンであってもよい。ペプチド、抗体またはその抗原結合断片、活性化免疫細胞、および抗原提示細胞に加え、かかるエマルジョンは、例えばスクアレンまたはスクアランの油相、および分散剤を含む。非イオン性分散剤(例えば、ソルビタンおよびマンニド(mannide)のモノ−およびジ−C12−C24−脂肪酸エステル、例えばソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、およびマンニドモノオレエート)もまた使用してもよい。
【0055】
油中水エマルジョンは、本発明の組成物中で乳化される、スクアレンおよびマンニドモノオレエート(Arlacel(商標)A)、場合によってスクアランを含みうる。かかるエマルジョンの周知の例として、Montanide(商標)ISA−720およびMontanide(商標)ISA−703(Seppic(Castres,France))が挙げられ、その各々はスクアレンとスクアランの双方を含有し、各々においてスクアレンが主成分であるが、Montanide(商標)ISA−703における程度はより少ないことが理解されている。Montanide(商標)ISA−720はまた、油対水比が7:3(w/w)で使用してもよい。他の水中油エマルジョンアジュバントは、国際公開第95/17210号パンフレットおよび欧州特許第0399842号明細書(参照により本明細書中に援用される)に開示されるものを含む。
【0056】
小分子アジュバントの使用もまた、本明細書中で検討される。小分子アジュバントは、米国特許第4,539,205号明細書;米国特許第4,643,992号明細書;米国特許第5,011,828号明細書;および米国特許第5,093,318号明細書(参照により本明細書中に援用される)中に記載の7−置換−8−オキソ−または8−スルホ−グアノシン誘導体(例えば7−アリル−8−オキソグアノシン(ロキソリビン))を含む。
【0057】
追加的なアジュバントは、モノホスホリル脂質A(MPL)(Corixa Corp.から入手可能(米国特許第4,987,237号明細書を参照))、Coley Pharmaceutical Groupから入手可能のCPG、QS21(Aquila Biopharmaceuticals,Inc.から入手可能)、SBAS2(SmithKline Beechamから入手可能)、米国特許第4,767,842号明細書中に記載のムラミルジペプチド類似体、およびMF59(Chiron Corp.から入手可能(米国特許第5,709,879号明細書および米国特許第6,086,901号明細書を参照))を含む。他のアジュバントは、南アメリカの樹木キラジャ・サポナリア・モリナ(Quillaja Saponaria Molina)の樹皮由来の活性サポニン画分(例えばQuil(商標)A)を含む。Quil(商標)Aの誘導体、例えばQS21(Quil(商標)AのHPLC精製画分誘導体)、およびその生成方法は、米国特許第5,057,540号明細書に開示されている。QS21(QA21として公知)に加え、QA17などの他の画分もまた開示されている。
【0058】
3−De−O−アシル化モノホスホリル脂質Aは、Ribi Immunochemによって製造される周知のアジュバントである。アジュバントは、細菌から抽出される3つの成分、すなわち、2%スクアレン/Tween(商標)80エマルジョン中での、モノホスホリル脂質(MPL)A、トレハロースジミコレート(TDM)、および細胞壁骨格(CWS)を含有する。このアジュバントは、英国特許第2122204B号明細書中に教示される方法によって調製してもよい。3−de−O−アシル化モノホスホリル脂質Aの好ましい形態は、直径が0.2μm未満の小さい粒子サイズを有するエマルジョンの形態である(欧州特許第0689454Bl号明細書)。
【0059】
ムラミルジペプチドアジュバントは、N−アセチル−ムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP;米国特許第4,606,918号明細書)、N−アセチル−nor−ムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(CGP11637,nor−MDPと称される)、およびN−アセチル−ムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’,2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ(hydroxyphosphoryloxy))−エチルアミン(CGP)1983A(MTP−PEと称される)を含む。
【0060】
アジュバント混合物は、例えば、3D−MPLとQS21の混合物(例えば欧州特許第0671948Bl号明細書を参照)、3D−MPLおよびQS21を含む水中油エマルジョン(例えば、国際公開第95/17210号パンフレットおよび国際出願PCT/EP98/05714号明細書を参照)、他の担体と調合された3D−MPL(例えば欧州特許第0689454Bl号明細書を参照)、コレステロール含有リポソーム中で調合されたQS21(例えば国際公開第96/33739号パンフレットを参照)、または免疫刺激オリゴヌクレオチド(例えば国際公開第96/02555号パンフレットを参照)を含む。他のアジュバントは、例えば国際公開第99/52549号パンフレットに記載のものと、ポリオキシエチレンエーテルの非微粒子懸濁液(non−particulate suspension)(例えば英国特許出願第9807805.8号明細書を参照)を含む。
【0061】
アジュバントは、さまざまな量で使用され、それは、アジュバント、対象、投与されている組成物(例えば、ペプチド(例えば免疫応答刺激ペプチド(例えばERGまたはSIM2ペプチド))、抗体またはその抗原結合断片、活性化免疫細胞、および抗原提示細胞を含む組成物)の成分によって変化しうる。典型的な量は、約1μg〜約50mg/用量で変化しうる。当業者は、適切な濃度または量が容易に決定できることを理解している。
【0062】
細胞毒性剤および他の治療剤に対する複合
本発明の作用剤(例えば、免疫応答刺激ペプチドおよびこれらのペプチドに対する抗体またはその抗原結合断片)は、それぞれ、任意の既知の細胞毒性部分または治療的部分と結合させるかまたはそれとともに投与して、本発明の作用剤または組成物を形成してもよく、それを投与し、疾患(例えば前立腺癌)または疾患の1つ以上の徴候を治療、阻害、低減、または緩和することが可能である。例として、限定はされないが、アシビシン;アクラルビシン;塩酸アコダゾール;アクロニン;アドゼレシン;アドリアマイシン;アルデスロイキン;アルトレタミン;アンボマイシン(Ambomycin);酢酸アメタントロン;アミノグルテチミド;アムサクリン;アナストロゾール;アントラマイシン;アスパラギナーゼ;アスペルリン;アザシチジン;アゼテパ;アゾトマイシン;バチマスタット;ベンゾデパ;ビカルタミド;塩酸ビサントレン;ビスナフィドジメシレート;ビセレシン;硫酸ブレオマイシン;ブレキナールナトリウム;ブロピリミン;ブスルファン;カクチノマイシン;カルステロン;カンプトセシン;カラセミド;カルベチマー;カルボプラチン;カルムスチン;塩酸カルビシン;カルゼルシン;セデフィンゴール;クロラムブシル;シロレマイシン;シスプラチン;クラドリビン;コンブレタスタチンA−4;メシル酸クリスナトール;シクロホスファミド;シタラビン;ダカルバジン;DACA(N−[2−(ジメチル−アミノ)エチル]アクリジン−4−カルボキサミド);ダクチノマイシン;塩酸ダウノルビシン;ダウノマイシン;デシタビン;デキソルマプラチン;デザグアニン;デザグアニンメシレート;ジアジクオン;ドセタキセル;ドラスタチン;ドキソルビシン;塩酸ドキソルビシン;ドロロキシフェン;クエン酸ドロロキシフェン;プロピオン酸ドロモスタノロン(Dromostanolone propionate);デュアゾマイシン;エダトレキセート;塩酸エフロールニチン;エリプチシン;エルサミトルシン;エンロプラチン;エンプロマート;エピプロピジン;塩酸エピルビシン;エルブロゾール;塩酸エソルビシン;エストラムスチン;リン酸エストラムスチンナトリウム;エタニダゾール;ヨード化ケシ油I−131;エトポシド;リン酸エトポシド;エトプリン;塩酸ファドロゾール;ファザラビン;フェンレチニド;フロクスウリジン;リン酸フルダラビン;フルオロウラシル;5−FdUMP;フルロシタビン;ホスキドン;ホストリエシンナトリウム;ゲムシタビン;塩酸ゲムシタビン;金Au198;ホモカンプトセシン;ヒドロキシウレア;塩酸イダルビシン;イホスファミド;イルモフォシン;インターフェロンα−2a;インターフェロンα−2b;インターフェロンα−n1;インターフェロンα−n3;インターフェロンβ−Ia;インターフェロンγ−Ib;イプロプラチン;塩酸イリノテカン;酢酸ランレオチド;レトロゾール;酢酸ロイプロリド;塩酸リアロゾール;ロメテレキソールナトリウム;ロムスチン;塩酸ロソキサントロン;マソプロコール;メイタンシン;塩酸メクロレタミン;酢酸メゲストロール;酢酸メレンゲストロール;メルファラン;メノガリル;メルカプトプリン;メトトレキサート;メトトレキサートナトリウム;メトプリン;Meturedepa(メトウレデパ);ミチンドミド;マイトカルシン;マイトクロミン;ミトギリン;マイトマルシン;マイトマイシン;マイトスパー;ミトタン;塩酸ミトキサントロン;ミコフェノール酸;ノコダゾール;ノガラマイシン;オルマプラチン;オキシスラン;パクリタキセル;ペガスパルガーゼ;ペリオマイシン(Peliomycin);ペンタムスチン(Pentamustine);硫酸ペプロマイシン;ペルホスファミド(Perfosfamide);ピポブロマン;ピポスルファン;塩酸ピロキサントロン;プリカマイシン;プロメスタン;ポルフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プレドニムスチン;塩酸プロカルバジン;ピューロマイシン;塩酸ピューロマイシン;ピラゾフリン;リゾキシン;リゾキシンD;リボプリン;ログレチミド;サフィンゴール;塩酸サフィンゴール;セムスチン;シムトラゼン;スパルホサートナトリウム;スパルソマイシン;塩酸スピロゲルマニウム;スピロムスチン;スピロプラスチン(Spiroplatin);ストレプトニグリン;ストレプトゾシン;塩化ストロンチウムSr89;スロフェヌル;タリソマイシン;タキサン;タキソイド;テコガランナトリウム;テガフール;塩酸テロキサントロン;テモポルフィン;テニポシド;テロキシロン;テストラクトン;チアミプリン;チオグアニン;チオテパ;チミタック(Thymitaq);チアゾフリン;チラパザミン;トムデックス(Tomudex);TOP53;塩酸トポテカン;クエン酸トレミフェン;酢酸トレストロン;リン酸トリシリビン;トリメトレキサート;グルクロン酸トリメトレキサート;トリプトレリン;塩酸ツブロゾール;ウラシルマスタード;ウレデパ(Uredepa);バプレオチド;ベルテポルフィン;ビンブラスチン;硫酸ビンブラスチン;ビンクリスチン;硫酸ビンクリスチン;ビンデシン;硫酸ビンデシン;硫酸ビネピジン;硫酸ビングリシネート;硫酸ビンレウロシン;酒石酸ビノレルビン;硫酸ビンロシジン;硫酸ビンゾリジン;ボロゾール;ゼニプラチン;ジノスタチン;塩酸ゾルビシン;2−クロロデオキシアデノシン;2’デオキシホルマイシン;9−アミノカンプトセシン;ラルチトレキセド;N−プロパギル−5,8−ジデアザ葉酸;2−クロロ−2’−アラビノ−フルオロ−2’−デオキシアデノシン;2−クロロ−2’−デオキシアデノシン;アニソマイシン;トリコスタチンA;hPRL−G129R;CEP−751;リノマイド;硫黄マスタード;窒素マスタード(メクロレタミン);シクロホスファミド;メルファラン;クロラムブシル;イホスファミド;ブスルファン;N−メチル−ニトロソウレア(MNU);N,N’−ビス(2−クロロエチル)−N−ニトロソウレア(BCNU);N−(2−クロロエチル)−N’シクロヘキシル−N−ニトロソウレア(CCNU);N−(2−クロロエチル)−N’−(トランス−4−メチルシクロヘキシル−N−ニトロソウレア(MeCCNU);N−(2−クロロエチル)−N’−エチルホスホン酸(ジエチル)−N−ニトロソウレア(ホテムスチン);ストレプトゾトシン;ジアカルバジン(diacarbazine)(DTIC);ミトゾロミド(mitozolomide);テモゾロマイド;チオテパ;マイトマイシンC;AZQ;アドゼレシン;シスプラチン;カルボプラチン;オルマプラチン;オキサリプラチン;C1−973;DWA2114R;JM216;JM335;ビス(白金);トムデックス(tomudex);アザシチジン;シタラビン;ゲムシタビン;6−メルカプトプリン;6−チオグアニン;ヒポキサンチン;テニポシド9−アミノカンプトセシン;トポテカン;CPT−11;ドキソルビシン;ダウノマイシン;エピルビシン;ダルビシン(darubicin);ミトキサントロン;ロソキサントロン;ダクチノマイシン(アクチノマイシンD);アムサクリン;ピラゾロアクリジン;オールトランスレチノール;14−ヒドロキシ−レトロ−レチノール;オールトランスレチノイン酸;N−(4−ヒドロキシフェニル)レチナミド;13−シスレチノイン酸;3−メチルTTNEB;9−シスレチノイン酸;フルダラビン(2−F−ara−AMP);または2−クロロデオキシアデノシン(2−Cda)などの抗新生物剤が挙げられる。
【0063】
他の治療化合物として、限定はされないが、20−pi−l、25ジヒドロキシビタミンD3;5−エチニルウラシル;アビラテロン;アクラルビシン;アシルフルベン;アデシペノール;アドゼレシン;アルデスロイキン;オールTKアンタゴニスト;アルトレタミン;アンバムスチン;アミドックス;アミホスチン;アミノレブリン酸;アムルビシン;アムサクリン;アナグレリド;アナストロゾール;アンドログラホリド;血管新生阻害剤;アンタゴニストD;アンタゴニストG;アンタレリックス(antarelix);抗背側化形態形成タンパク質1(anti−dorsalizing morphogenetic protein−1);抗アンドロゲン、前立腺癌;抗エストロゲン;アンチネオプラストン;アンチセンスオリゴヌクレオチド;アフィジコリングリシネート;アポトーシス遺伝子調節剤;アポトーシス調節因子;アブリン酸;ara−CDP−DL−PTBA;アルギニンデアミナーゼ(argininedeaminase);アスラクリン;アタメスタン;アトリムスチン;アキシナスタチン1;アキシナスタチン2;アキシナスタチン3;アザセトロン;アザトキシン;アザチロシン;バッカチンIII誘導体;バラノール;バチマスタット;BCR/ABLアンタゴニスト;ベンゾクロリン;ベンゾイルスタウロスポリン;βラクタム誘導体;β−アレチン;βクラマイシンB;ベツリン酸;bFGF阻害剤;ビカルタミド;ビサントレン;ビスアジリジニルスペルミン;ビスナフィド;ビストラテンA;ビセレシン;ブレフレート;ブレオマイシンA2;ブレオマイシンB2;ブロピリミン;ブドチタン;ブチオニンスルホキシミン;カルシポトリオール;カルホスチンC;カンプトセシン誘導体(例えば10−ヒドロキシ−カンプトセシン);カナリアポックスIL−2;カペシタビン;カルボキサミド−アミノ−トリアゾール;カルボキシアミドトリアゾール;CaRest M3;CARN700;軟骨由来阻害剤;カルゼルシン;カゼインキナーゼ阻害剤(ICOS);カスタノスペルミン;セクロピンB;セトロレリクス;クロリン;クロロキノキサリンスルホンアミド;シカプロスト;シス−ポルフィリン;クラドリビン;クロミフェン類似体;クロトリマゾール;コリスマイシンA;コリスマイシンB;コンブレタスタチンA4;コンブレタスタチン類似体;コナゲニン;クラムベシジン816;クリスナトール;クリプトフィシン8;クリプトフィシンA誘導体;クラシンA;シクロペンタンスレキノン(cyclopentanthraquinone);シクロプラタム;サイペマイシン;シタラビンオクホスファート;細胞溶解因子;シトスタチン;ダクリキシマブ(dacliximab);デシタビン;デヒドロジデムニンB;2’デオキシコホルマイシン(DCF);デスロレリン;デキシフォスファミド;デクスラゾキサン;デクスベラパミル;ジアジクオン;ジデムニンB;ジドックス;ジエチルノルスペルミン;ジヒドロ−5−アザシチジン;ジヒドロタキソール,9−;ジオキサマイシン;ジフェニルスピロムスチン;ディスコデルモライド;ドコサノール;ダンセトロン;ドキシフルリジン;ドロロキシフェン;ドロナビノール;デュオカルマイシンSA;エブセレン;エコムスチン;エデルホシン;エドレコロマブ;エフロールニチン;エレメン;エミテフル;エピルビシン;エポチロン(A、R=H;B,R=Me);エピチロン;エピリステリド;エストラムスチン類似体;エストロゲンアゴニスト;エストロゲンアンタゴニスト;エタニダゾール;エトポシド;エトポシド4’−リン酸(エトポフォス(etopofos));エキセメスタン;ファドロゾール;ファザラビン;フェンレチニド;フィルグラスチム;フィナステリド;フラボピリドール;フレゼラスチン;フルアステロン;フルダラビン;塩酸フルオロダウノルビシン;ホルフェニメックス;フォルメスタン;ホストリエシン;ホテムスチン;ガドリニウムテキサフィリン;硝酸ガリウム;ガロシタビン;ガニレリクス;ゲラチナーゼ阻害剤;ゲムシタビン;グルタチオン阻害剤;ヘプスルファム;ヘレグリン;ヘキサメチレンビスアセトアミド;ホモハリントニン(HHT);ヒペリシン;イバンドロン酸;イダルビシン;イドキシフェン;イドラマントン;イルモフォシン;イロマスタット;イミダゾアクリドン;イミキモド;免疫賦活剤ペプチド;インスリン様成長因子−1受容体阻害剤;インターフェロンアゴニスト;インターフェロン;インターロイキン;ヨーベングアン(iobenguane);ヨードドキソルビシン;イポメアノール,4−;イリノテカン;イロプラクト;イルソグラジン;イソベンガゾール;イソホモハリコンドリンB;イタセトロン;ジャスプラキノリド;カハラリドF;三酢酸ラメラリン−N;ランレオチド;レイナマイシン;レノグラスチム;硫酸レンチナン;レプトルスタチン;レトロゾール;白血病阻害因子;白血球αインターフェロン;ロイプロリド+エストロゲン+プロゲステロン;リュープロレリン;レバミゾール;リアロゾール;線状ポリアミン類似体;親油性二糖ペプチド;親油性白金化合物;リッソクリナミド7;ロバプラチン;ロンブリシン;ロメテレキソール;ロニダミン;ロソキサントロン;ロバスタチン;ロキソリビン;ルートテカン(lurtotecan);ルテチウムテキサフィリン;リソフィリン;溶解ペプチド;メイタンシン;マンノスタチンA;マリマスタット;マソプロコール;マスピン;マトリライシン阻害剤;マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤;メノガリル;メルバロン;メテレリン;メチオニナーゼ;メトクロプラミド;MIF阻害剤;イフェプリストン(ifepristone);ミルテホシン;ミリモスチム;ミスマッチ二本鎖RNA;ミトラシン;ミトグアゾン;ミトラクトール;マイトマイシン類似体;ミトナフィド、ミトトキシン線維芽細胞成長因子−サポリン;ミトキサントロン;モファロテン;モルグラモスチム;モノクローナル抗体、ヒト絨毛性ゴナドトロピン;モノホスホリル脂質A+ミオバクテリウム細胞壁sk;モピダモール;多剤耐性遺伝子阻害剤;多発性腫瘍抑制因子1ベースの治療薬;マスタード抗癌剤;マイカペルオキシドB;マイコバクテリウム細胞壁抽出物;ミリアポロン;N−アセチルジナリン;N−置換ベンズアミド;ナファレリン;ナグレスチップ;ナロキソン+ペンタゾシン;ナパビン;ナフテルピン;ナルトグラスチム;ネダプラチン;ネモルビシン;ネリドロン酸;中性エンドペプチダーゼ;ニルタミド;ニサマイシン;一酸化窒素調節物質;ニトロキシド抗酸化剤;ニトルリン;06−ベンジルグアニン;オクトレオチド;オキセノン;オリゴヌクレオチド;オナプリストン;オンダンセトロン;オンダンセトロン;オラシン;経口サイトカイン誘導物質;オルマプラチン;オサテロン;オキサリプラチン;オキザウノマイシン;パクリタキセル類似体;パクリタキセル誘導体;パラウアミン;パルミトイルリゾキシン;パミドロン酸;パナキシトリオール;パノミフェン;パラバクチン;パゼリプチン;ペガスパルガーゼ;ペルデシン;ペントサンポリサルフェートナトリウム;ペントスタチン;ペントロゾール;ペルフルブロン;ペルホスファミド;ペリリルアルコール;フェナジノマイシン;フェニル酢酸;ホスファターゼ阻害剤;ピシバニール;塩酸ピロカルピン;ピラルビシン;ピリトレキシム;プラセチンA;プラセチンB;プラスミノーゲンアクチベーター阻害剤;白金錯体;白金化合物;白金−トリアミン錯体;ポドフィロトキシン;ポルフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プロピルビス−アクリドン;プロスタグランジンJ2;プロテアソーム阻害剤;プロテインAベースの免疫調節因子;プロテインキナーゼC阻害剤;プロテインキナーゼC阻害剤、微細藻類;プロテインチロシンホスファターゼ阻害剤;プリンヌクレオシドホスホリラーゼ阻害剤;プルプリン;ピラゾロアクリジン;ピリドキシル化ヘモグロビンポリオキシエチレン複合体;rafアンタゴニスト;ラルチトレキセド;ラモセトロン;rasファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤;ras阻害剤;ras−GAP阻害剤;脱メチル化レテリプチン;エチドロン酸レニウムRe186;リゾキシン;リボザイム;RIIレチナミド;ログレチミド;ロヒツキン;ロムルチド;ロキニメクス;ルビギノンB1;ルボキシル;サフィンゴール;サイントピン;SarCNU;サルコフィトールA;サルグラモスチム;Sdi1模倣体;セムスチン;老化由来阻害剤1;センスオリゴヌクレオチド;シグナル伝達阻害剤;シグナル伝達調節因子;一本鎖抗原結合タンパク質;シゾフィラン;ソブゾキサン;ボロカプタートナトリウム;フェニル酢酸ナトリウム;ソルベロール;ソマトメジン結合タンパク質;ソネルミン;スパルホス酸;スピカマイシンD;スピロムスチン;スプレノペンチン;スポンジスタチン1;スクアラミン;幹細胞阻害剤、幹細胞分裂阻害剤、スチピアミド、ストロメライシン阻害剤、スルフィノシン、超活性血管作用性腸管ペプチドアンタゴニスト、スラディスタ(suradista)、スラミン、スワインソニン、合成グリコサミノグリカン、タリムスチン、タモキシフェンメチオダイド、タウロムスチン、タザロテン、テコガランナトリウム、テガフール、テルラピリリウム、テロメラーゼ阻害剤、テモポルフィン、テモゾロマイド、テニポシド、テトラクロロデカオキシド、テトラゾミン、サリブラスチン、サリドマイド、チオコラリン、トロンボポエチン;トロンボポエチン模倣体;サイマルファシン;サイモポエチン受容体アゴニスト;チモトリナン;甲状腺刺激ホルモン;スズエチルエチオプルプリン;チラパザミン;チタノセンジクロリド;トポテカン;トプセンチン;トレミフェン;全能性幹細胞因子;翻訳阻害剤;トレチノイン;トリアセチルウリジン;トリシリビン;トリメトレキサート;トリプトレリン;トロピセトロン;ツロステリド;チロシンキナーゼ阻害剤;トリホスチン(tyrphostin);UBC阻害剤;ウベニメクス;尿生殖洞由来増殖阻害因子;ウロキナーゼ受容体アンタゴニスト;バプレオチド;バリオリン(variolin)B;ベクター系;赤血球遺伝子治療薬;ベラレソール;ベラミン;ベルディンス(verdins);ベルテポルフィン;ビノレルビン;ビンキサルチン;バイタクシン;ボロゾール;ザノテロン;ゼニプラチン;ジラスコルブ;およびジノスタチンスチマラマーが挙げられる。
【0064】
本発明の作用剤(例えば免疫応答刺激ペプチドまたは抗体もしくはその抗原結合断片)はまた、部位特異的に複合された分子および部分を含んでもよい。部位特異的複合は、本発明の作用剤の特定の残基に対する細胞毒性剤または治療剤の制御された化学量論的結合(stoichiometric attachment)を可能にする。
【0065】
本発明の作用剤(例えば免疫応答刺激ペプチドおよび抗体またはその抗原結合断片)、あるいはそれに複合される任意の分子または部分はまた、溶解ペプチドと結合していてもよい。かかる溶解ペプチドは、細胞死を誘発し、限定はされないが、ストレプトリシンO;ハタゴイソギンチャク(stoichactis)毒;ファロリシン;ブドウ球菌α毒素;ホロスリンA;ジギトニン;メリチン;リゾレシチン;心臓毒;およびセレブラトゥルス(cerebratulus)A毒素を含む(Kemら、J.Biol.Chem.253(16):5752−5757頁、1978年)。本発明の作用剤はまた、天然ペプチドリシンのいずれかといくらかの配列相同性または化学特性を共有する合成ペプチドに複合可能であり、かかる特性は、限定はされないが、線状、正電荷、両親媒性、および疎水性環境下でのα−ヘリカル構造の形成を含む(Leuschnerら、Biology of Reproduction 73:860−865頁、2005年)。本発明の作用剤(例えば免疫応答刺激ペプチドおよび抗体またはその抗原結合断片)はまた、例えば免疫グロブリンFサブユニットなど、補体媒介性細胞溶解を含む作用剤と結合していてもよい。本発明の作用剤(例えば免疫応答刺激ペプチドおよび抗体またはその抗原結合断片)はまた、(ホスホリパーゼA、ホスホリパーゼB、ホスホリパーゼC、またはホスホリパーゼDを含む)酵素のホスホリパーゼファミリーの任意のメンバーまたはその触媒活性サブユニットと結合していてもよい。
【0066】
本発明の作用剤はまた、放射活性物質と結合させ、検出または治療用途において使用可能な作用剤を形成してもよい。使用可能な放射活性物質は、限定はされないが、フィブリノーゲン125I;フルデオキシグルコース18F;フルオロドーパ18F;インスリン125I;インスリン131I;ヨーベングアン123I;ヨージパミドナトリウム131I;ヨードアンチピリン131I;ヨードコレステロール131I;ヨード馬尿酸ナトリウム123I;ヨード馬尿酸ナトリウム125I;ヨード馬尿酸ナトリウム131I;ヨードピラセト125I;ヨードピラセト131I;塩酸イオフェタミン123I;ヨーメチン125I;ヨーメチン131I;イオタラム酸ナトリウム125I;イオタラム酸ナトリウム131I;チロシン131I;リオチロニン125I;リオチロニン131I;酢酸メリソプロール197Hg;酢酸メリソプロール203Hg;メリソプロール197Hg;セレノメチオニン75Se;テクネチウム99mTc三硫化二アンチモンコロイド;テクネチウム99mTcビシセート;テクネチウム99mTcジソフェニン;テクネチウム99mTcエチドロネート;テクネチウム99mTcエキサメタジム;テクネチウム99mTcフリホスミン;テクネチウム99mTcグルセプテート;テクネチウム99mTcリドフェニン;テクネチウム99mTcメブロフェニン;テクネチウム99mTcメドロネート;テクネチウム99mTcメドロネート二ナトリウム;テクネチウム99mTcメルチアチド;テクネチウム99mTcオキシドロネート;テクネチウム99mTcペンテテート;テクネチウム99mTcペンテテートカルシウム三ナトリウム;テクネチウム99mTcセスタミビ;テクネチウム99mTcシボロキシム;テクネチウム99mTc;スクシメル;テクネチウム99mTc硫黄コロイド;テクネチウム99mTcテボロキシム;テクネチウム99mTcテトロホスミン;テクネチウム99mTcチアタイド(Tiatide);チロキシン125I;チロキシン131I;トルポビドン131I;トリオレイン125I;またはトリオレイン131Iを含む。
【0067】
さらに、放射性同位体であれば、HSAリンカーまたはHSAリンカー複合体に部位特異的に結合しうる。使用可能な反応基を使用すると、123I、124I、125I、131I、99mTc、111In、64Cu、67Cu、186Re、188Re、177Lu、90Y、77As、72As、86Y、89Zr、211At、212Bi、213Bi、または225Acを含む放射性同位体を標識するための部位特異的な二官能性キレート剤に複合可能である。
【0068】
本発明の作用剤はまた、他の、必ずしも治療的である必要はないが、例えば安定性または局在化を促進することを目的とした部分に複合してもよい。
【0069】
治療剤をタンパク質、特に抗体に複合させるための技術は周知である(例えば、Arnonら、「Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy」、Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy(Reisfeldら編、Alan R.Liss,Inc.、1985年);Hellstromら、「Antibodies For Drug Delivery」、Controlled Drug Delivery(Robinsonら、Marcel Dekker,Inc.、第2版、1987年);Thorpe,「Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy:A Review」、Monoclonal Antibodies ’84:Biological And Clinical Applications(Pincheraら編、1985年);「Analysis,Results,and Future Prospective of the Therapeutic Use of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy」、Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy(Baldwinら編、Academic Press、1985年);Thorpeら、Immunol.Rev.62:119−58頁(1982年);およびDoroninaら、「Development of potent monoclonal antibody auristatin conjugates for cancer therapy」、Nature Biotech.21:(7)778−784頁(2003年))。また、例えば、PCT公開の国際公開第89/12624号パンフレットを参照のこと。
【0070】
さらなる治療法
本発明の作用剤(例えば、免疫応答刺激ペプチド、活性化免疫細胞、抗原提示細胞、および抗体またはその抗原結合断片)は、単独でまたは癌(例えば前立腺癌)を治療するための他の既知の治療薬と併用して投与してもよい。例えば前立腺癌のためのかかる治療法は、例えば、ホルモン療法(例えばアンドロゲン除去(例えば、黄体化ホルモン放出ホルモンアゴニスト(例えば、ロイプロリド、ゴセレリン、またはブセレリン)、抗アンドロゲン(例えば、フルタミドまたはニルタミド)、副腎阻害剤(例えば、ケトコナゾールまたはアミノグルテチミド)の投与、またはエストロゲンの投与))、化学療法、放射線療法、超音波療法、または手術(例えば、骨盤内リンパ節郭清術、経尿道的前立腺摘除術、前立腺全摘除術、恥骨後式前立腺摘除術、または会陰式前立腺摘除術)を含む。かかる治療は、例えば、米国特許第6,184,249号明細書;米国特許第6,245,807号明細書;米国特許第6,472,415号明細書;および米国特許第6,537,988号明細書(参照により本明細書中に援用される)に記載されている。
【0071】
投与および用量
治療有効量の本発明の作用剤(例えば、免疫応答刺激ペプチド、活性化免疫細胞、抗原提示細胞、および抗体またはその抗原結合断片)、またはそれらの薬学的に許容できる塩の医薬調合物は、投与経路に適合した薬学的に許容できる担体と混合した状態で、経口的、非経口的(例えば、筋肉内、腹腔内、静脈内、または皮下注射、吸入、皮内、オプティカルドロップ(optical drop)、またはインプラント)、経鼻的、経膣的、経直腸的、舌下的、または局所的に投与してもよい。
【0072】
調合物を作製する当該技術分野で周知の方法は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(第18版)、A.Gennaro編、1990年、Mack Publishing Company,Easton,PAにおいて見出される。経口使用を意図した組成物は、薬学的組成物の作製における技術分野で公知の任意の方法に従い、固体または液体形態で調製してもよい。組成物は、より口に合う調製物を提供するため、場合によって甘味料、香味料、着色剤、香料、および/または保存料を含有してもよい。経口投与における固体剤形は、カプセル、錠剤、ピル、粉末、および顆粒を含む。かかる固体形態では、活性化合物は、少なくとも1つの薬学的に許容できる不活性担体または賦形剤と混合される。これらは、例えば、不活性希釈剤、例えば炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、スクロース、デンプン、リン酸カルシウム、リン酸ナトリウム、またはカオリンを含んでもよい。また、結合剤、緩衝剤、および/または潤滑剤(例えばステアリン酸マグネシウム)を使用してもよい。錠剤およびピルは、さらに腸溶コーティングを用いて調製してもよい。
【0073】
経口投与における液体剤形は、薬学的に許容できるエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ、および軟質ゼラチンカプセルを含む。これらの形態は、当該技術分野で一般に使用される不活性希釈剤、例えば水性または油性培地を含有する。かかる不活性希釈剤以外に、組成物はまた、アジュバント、例えば浸潤剤、乳化剤、および懸濁剤を含んでもよい。
【0074】
非経口投与における調合物は、無菌の水性または非水性溶液、懸濁液、またはエマルジョンを含む。適切な媒体の例として、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、ゼラチン、水素化ナフタレン、および注射可能有機エステル、例えばオレイン酸エチルが挙げられる。かかる調合物はまた、アジュバント、例えば保存料、湿潤剤、乳化剤、および分散剤を含有してもよい。生体適合性の生分解性ラクチドポリマー、ラクチド/グリコリド共重合体、またはポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体を使用し、化合物の放出を制御してもよい。本発明の作用剤の他の潜在的に有用な非経口送達系は、エチレン−酢酸ビニル共重合体粒子、浸透圧ポンプ、移植可能な注入系、およびリポソームを含む。
【0075】
液体調合物は、例えば細菌保持フィルタを通す濾過により、滅菌剤を組成物に取り込ませることにより、または組成物に放射線を照射しするかまたはそれを加熱することによって殺菌してもよい。あるいはまた、それを無菌の固体組成物の形態で作製し、使用直前に滅菌水またはいくつかの他の無菌の注射可能培地に溶解してもよい。
【0076】
直腸または膣内投与における組成物は、好ましくは坐剤であり、それは、活性物質に加え、ココアバターまたは坐剤ワックスなどの賦形剤を含有してもよい。経鼻または舌下投与における組成物はまた、当該技術分野で既知の標準の賦形剤を用いて調製される。吸入における調合物は、賦形剤、例えばラクトースを含有してもよく、または例えば、ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル、グリココール酸塩およびデオキシコール酸塩を含有する水溶液であってもよく、あるいは点鼻剤またはスプレーの形態でのまたはゲルとしての投与における油性溶液であってもよい。
【0077】
本発明の組成物中の活性成分(例えば、免疫応答刺激ペプチド、活性化免疫細胞、抗原提示細胞、または抗体もしくはその抗原結合断片)の量は、変更してもよい。当業者は、正確な個別の用量が、投与されている成分、投与の時間、投与の経路、調合物の性質、排泄の速度、対象の症状の性質、ならびに患者の年齢、体重、健康、および性別を含む種々の要素にやや依存して調節可能であることを理解するであろう。さらに、本発明の作用剤によって標的化される症状の重症度はまた、用量レベルに対して効果を有することになる。一般に、体重の0.1μg/kg〜100mg/kgの間の本発明の作用剤の用量レベルが、単回投与として毎日投与されるか、または複数回用量に分割される。好ましくは、一般的用量範囲は、1日あたり体重の250μg/kg〜5.0mg/kgの間である。必要とされる用量の大幅な変動は、さまざまな投与経路の異なる効率性を考慮して想定されるべきである。例えば、経口投与であれば、一般に、静脈内注射による投与より高い用量レベルが必要であることが想定されることになる。これらの用量レベルの変動は、当該技術分野で周知の、最適化のための標準の経験的ルーチンを用いて調節してもよい。一般に、正確な治療有効用量は、上で特定された要素を考慮して、担当医によって決定されることになる。
【0078】
本発明の作用剤(例えば、免疫応答刺激ペプチド、活性化免疫細胞、抗原提示細胞、または抗体もしくはその抗原結合断片)は、例えば、米国特許第5,672,659号明細書および米国特許第5,595,760号明細書(参照により本明細書中に援用される)中に記載される場合などの持続型放出組成物で投与してもよい。即時または持続型放出組成物の使用は、治療されている症状のタイプに依存する。症状が急性または超急性(over−acute)障害からなる場合、即時放出形態による治療が持続型放出組成物の場合より好ましいことになる。あるいは、予防または長期治療においては、持続型放出組成物が一般に好ましいことになる。
【0079】
本発明の作用剤(例えば、免疫応答刺激ペプチド、活性化免疫細胞、抗原提示細胞、または抗体もしくはその抗原結合断片)は、任意の好適な方法で調製してもよい。作用剤は、天然供給源から単離し、組換えにより生成し、または合成により生成し、ライブラリーから同定し、またはこれらの方法の組み合わせによって生成してもよい。短いペプチドの合成は、当該技術分野で周知である。先に記載のように、本発明の作用剤のいずれかのペプチド部分は、当該技術分野で既知の標準のペプチド合成方法に従って合成してもよい。
【0080】
ペプチドを対象に投与するための方法は、例えば、米国特許第5,830,851号明細書;米国特許第5,558,085号明細書;米国特許第5,916,582号明細書;米国特許第5,960,792号明細書;および米国特許第6,720,407号明細書(参照により本明細書中に援用される)において記載されている。
【0081】
治療法の評価
本明細書中に記載の本発明の組成物を用いる治療的治療後、治療の有効性は、複数の方法、例えばT細胞の増殖、T細胞の細胞傷害性、抗体産生、抗原−陽性細胞もしくは組織の数の減少、または臨床的応答を測定するアッセイにより、評価してもよい。選択される抗原(例えばERGまたはSIM2抗原)を認識する抗体または免疫細胞の産生の増大は、免疫応答の促進を示すことになる。同様に、対象の免疫細胞による特定の溶解活性または特定のサイトカイン産生の増大あるいは腫瘍退行は、有効性を示すことになる。有効性はまた、望ましくない免疫応答の低下または消失に関連した疾患(例えば前立腺癌)における改善またはその寛解あるいは望ましくない免疫応答に関連した疾患(例えば前立腺癌)における改善またはその寛解によって示されうる。
【0082】
診断
本発明者らは、前立腺癌細胞内で過剰発現され、かつ非癌性前立腺細胞内で発現されないERGおよびS1M2について示している。したがって、ERGおよびSIM2レベルの測定は、対象における前立腺癌を診断するための手段として用いてもよい。
【0083】
本発明は、癌(例えば前立腺癌)の治療における免疫応答をもたらすための方法および組成物(例えば、免疫応答刺激ペプチド(例えばERGまたはSIM2ペプチド)、活性化免疫細胞、抗原提示細胞、および抗体またはその抗原結合断片)を特徴とする。方法および組成物は、例えば、別の分子、または任意の断片もしくはその誘導体を含まないかまたはそれに結合されたERGまたはSIM2ポリペプチドの測定を含んでもよい。本方法は、ERGまたはSIM2の絶対レベルまたは正常参照に対する相対レベルの測定を含んでもよい。例えば、5ng/ml、4ng/ml、3ng/ml、2ng/ml未満もしくは1ng/ml未満の、体液中のERGまたはSIM2のレベルは、前立腺癌の低リスクまたは前立腺癌であると診断された患者における良好な転帰を予測するものと考えられる。5ng/ml、10ng/ml、20ng/ml、30ng/ml、40ng/ml、もしくは50ng/mlを超える、体液中のERGまたはSIM2のレベルは、前立腺癌の診断または既に前立腺癌であると診断された対象における不良の転帰と考えられる。ERGまたはSIM2の相対レベルに基づく診断においては、前立腺癌を有する対象は、正常参照試料またはレベルに対する、ERGまたはSIM2ポリペプチド(またはその断片)の発現における変化(例えば、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、もしくはそれを超える)を示すことになる。正常参照試料は、例えば、前立腺癌または前立腺癌を示唆する徴候の発症前に同じ対象から採取された試料、前立腺癌を有しない対象由来の試料、または既知の正常濃度での精製された参照ポリペプチドの試料(すなわち前立腺癌を示唆しない)であってもよい。「参照標準またはレベル」は、参照試料に由来する値または数字を意味する。正常参照標準またはレベルは、正常な対象に由来する値または数字であってもよい。
【0084】
ERGまたはSIM2ポリペプチドの量の測定を含む診断アッセイにおいては、ERGまたはSIM2ポリペプチドは、完全長ERGまたはSIM2ポリペプチド、ERGまたはSIM2ポリペプチドの分解産物、またはスプライシングを受けたアイソフォーム、ERGまたはSIM2ポリペプチドの酵素切断産物などを含んでもよい。一例では、ERGまたはSIM2ポリペプチドに特異的に結合する抗体は、前立腺癌の診断において使用される。
【0085】
標準的方法を用い、任意の細胞、組織、または限定はされないが、尿、血液、血清、血漿、唾液、もしくは脳脊髄液を含む体液におけるERGまたはSIM2ポリペプチドのレベルを測定してもよい。かかる方法は、イムノアッセイ、ELISA、ウエスタンブロッティング(ERGまたはSIM2ポリペプチドに特異的に結合する抗体を使用するを使用)、および定量酵素イムノアッセイ技術を含む。正常対照に対するERGまたはSIM2ポリペプチドのレベルの上昇は、前立腺癌の陽性指標と考えられる。
【0086】
ERGまたはSIM2核酸分子、またはその実質的に同一の断片、またはERGもしくはSIM2に高ストリンジェンシーでハイブリダイズするERGもしくはSIM2の断片もしくはオリゴヌクレオチドは、本発明の診断方法でのERGまたはS1M2核酸分子の発現を監視するためのプローブとして使用してもよい。正常対照に対するERGまたはSIM2核酸分子のレベルの上昇は、前立腺癌の陽性指標と考えられる。
【0087】
本明細書中に記載の診断方法は、個別に使用するか、または前立腺癌の存在のより正確な診断を意図した任意の他の診断方法と併用してもよい。前立腺癌を診断するための追加的な方法の例として、例えば、前立腺細胞内の前立腺特異抗原(PSA)の検出、デジタル直腸検査、経直腸超音波、または生検(例えば針生検)が挙げられる。
【0088】
本発明はまた、診断試験キットを提供する。例えば、診断試験キットは、ERGまたはSIM2ポリペプチドに特異的に結合する抗体と、抗体とERGまたはSIM2ポリペプチドの間の結合を検出し、評価するための構成要素とを含んでもよい。検出においては、抗体またはERGもしくはSIM2ポリペプチドのいずれかが標識され、また抗体またはERGもしくはS1M2ポリペプチドのいずれかが基質に結合され、それにより、ERGまたはSIM2ポリペプチド−抗体の相互作用が、抗体とERGまたはSIM2ポリペプチドの間の結合後に基質に結合される標識の量を測定することによって確定できる。ELISAは、抗体−基質相互作用を検出するための一般的な当該技術分野で既知の方法であり、本発明のキットで提供してもよい。ERGまたはSIM2ポリペプチドは、事実上、任意の体液、例えば、尿、血漿、血液、血液血清、精液、または脳脊髄液などの中で検出されうる。参照に対する、例えば正常対照中に存在するレベルに対するERGまたはSIM2ポリペプチドのレベルにおける変化を測定するキットは、本発明の方法における診断キットとして有用である。キットはまた、標準曲線または参照レベルまたは正常な範囲内に該当するERGもしくはSIM2のレベルおよび場合によって前立腺癌と診断されると考えられることになるレベルを示す試料を含んでもよい。望ましくは、キットは、キットを使用する上での使用説明書を含むことになる。一例では、キットは、前立腺癌の診断を意図するキットを使用する上での使用説明書を含む。さらに別の例では、キットは、治療的処置または投与計画を監視するためのキットを使用する上での使用説明書を含む。キットはまた、前立腺癌の診断に有用な他の診断法を含んでもよく、または既知の前立腺癌の診断手段と併用してもよい。
【実施例】
【0089】
実施例1 前立腺癌免疫療法のための推定腫瘍関連抗原(TAA)の同定
正常前立腺または正常非前立腺組織よりも前立腺癌に対して発現特異性を有する新規な推定前立腺癌腫瘍関連抗原を同定するため、本発明者らの研究室において作成した前立腺癌および正常前立腺のマイクロアレイのゲノムワイドな遺伝子発現分析を行い、外部の公開された前立腺癌組織アレイデータセットにおける候補TAAを検証し、非前立腺の成人組織における検出可能な発現を有するものを除外した。
【0090】
まず、Affymetrix U133アレイを使用し、本発明者らの組織保存所(Tissue Repository)からの癌および新鮮凍結正常前立腺組織標本における遺伝子発現を評価した。組織標本由来の250ngの全RNAを、Ambion’s MessageAmp II mRNA Amplificationキットを使用して増幅した。ビオチン−UTPを、製造業者のプロトコルに従い、一晩のインビトロ転写ステップの間に取り込ませた。遺伝子発現を、Affymetrix(Santa Clara,CA)のGeneChip U133アレイ(Plus2.0チップ)(全ヒトゲノム転写産物を示すアレイ)を使用して評価した。15μgのcRNAを、断片化し、製造業者のプロトコルに従い、アレイにハイブリダイズした。走査したアレイの画質は、BioConductor Rパッケージを使用し、バックグラウンド値、存在コール(present calls)のパーセント、倍率、ならびにβ−アクチンおよびGAPDHの3’−5’比に基づいて決定した。各転写産物におけるシグナル値を、dchipに記述される完全一致(perfect matched)(PM)のみに基づくシグナルモデリングアルゴリズムを使用してまとめた。PMのみに基づくシグナル伝達モデリングアルゴリズムは、PM−MM(不一致)モデルより少ない偽陽性を生成する。したがって、シグナル値は転写産物の発現の絶対レベルに対応する。各転写産物におけるこれらのモデル化された正規化シグナル値を、さらに高レベルのバイオインフォマティクス分析のために使用した。モデルベースの発現シグナル値の計算の間、アレイおよびプローブ異常値の問い合わせを行い、画像のスパイクをシグナル異常値として処理した。異常値検出を、dchip異常値検出アルゴリズムを使用して行った。プローブ(単一)またはアレイ異常値の百分率が5%のデフォルト閾値を超える場合、チップは異常値であると考えられた。所与の表現型に富む遺伝子を同定するために2群の試料を比較する場合、2群間の倍率変化(FC)の90%の信頼下限(LCB)が1.2を超える場合、対応する遺伝子は差次的に発現されたものと考えられた。LCBはFCのストリンジェントな推定値(stringent estimate)であり、より優れたランキング統計値(ranking statistic)であることが示されている。1.2を超えるLCBを有する遺伝子を選択する基準が、遺伝子発現において少なくとも2の「実」倍率変化を有する遺伝子に対応する可能性が最も高いことが示唆されている。
【0091】
Lapointeら(Proc Natl Acad Sci USA 101:811−816頁(2004年))で公表された62の前立腺癌および41の正常前立腺標本に由来する生の遺伝子発現データを、BRBアレイのアーカイブされたデータセットから得た。前処理データを、Z変換を用いて正規化した。差次的に発現された遺伝子を、倍率変化(>0.5)およびQ値<0.05に基づいて同定した。分析により、510個の差次的に発現された遺伝子が同定された。
【0092】
バイオマーカーおよび免疫療法標的の優先度を判定する(prioritize)ため、すべての正常組織内で偏在的に発現されるわけではない遺伝子を同定する必要があった。さまざまなヒト正常組織における遺伝子発現データを、Genomics Institute of the Novartis Research FoundationのGene Expression Atlas(http://symatlas.gnf.org)から得た。このデータベースを使用し、MAS5正規化発現データを(各転写産物における存在コール、不在コール、およびマージナル(marginal)コールとともに)得た。各転写産物における存在コールおよび不在コールに基づき、優先値を計算した。すべての組織内に不在の遺伝子は最高の優先度を示し、すべての組織内に存在する遺伝子は最低の優先度を示した。遺伝子のリストをさらに拡張するため、Novartisの遺伝子発現データ(Dhanasekaranら、Nature 412:822−826頁(2001年))を分析することによって前立腺特異的遺伝子のリストも得た。前立腺以外のすべての正常組織において、MAS5コールに基づいて不在であると注釈を付けられた遺伝子は、前立腺特異的遺伝子であると考えられた。
【0093】
上記のゲノムワイドな遺伝子発現分析により、正常前立腺に対して前立腺癌において過剰発現される1063個の遺伝子が同定された。発現分析において同定された上位100の遺伝子の例として、AMACR、ERG、MMP26、THBS4、およびFOXD1が挙げられる。次いで、41の正常前立腺組織および62の腫瘍性前立腺組織を含む先行的に公開されたデータセット(Lapointeら、上記)からのマイクロアレイデータの包括的分析を行うことにより、1063個の推定TAAを検証した。前立腺癌試料中で有意に過剰発現される遺伝子を、免疫療法におけるバイオマーカーまたは標的として使用されるその可能性について検討した。426個の上方制御された前立腺癌遺伝子のリストを、前処理後の倍率変化(>0.5)およびFDR値<0.05および正規化データ(Z変換)に基づいて得た。本発明者らのデータセットにおける、Stanford前立腺癌アレイデータセットに対して前立腺癌において過剰発現された遺伝子の検証は、アレイデータセット間で一致した過剰発現を伴う145の転写産物に関与した。
【0094】
次いで、前立腺癌に対する最高の特異性を有する前立腺癌TAAを同定するため、インシリコ分析により、ヒト成人男性の非前立腺正常組織において検出可能な遺伝子を除外することを探索した。この目的のため、さまざまなヒト組織における遺伝子発現データを、Suら(Proc Natl Acad Sci USA 101:6062−6067頁(2004年))およびGeら(Genomics 86:127−141頁(2005年))によって行われた2つの研究から得た。前立腺以外のすべての正常組織内のMAS5コールに基づいて不在であると注釈を付けられた遺伝子は、前立腺特異的遺伝子であると考えられた。包括的分析により、前立腺癌試料中で過剰発現され、かつ組織による大きな制限を受ける26の転写産物が同定された(図1)。これらの転写産物は、ERGおよびSIM2を含む23の遺伝子に対応する。また、分析により、前立腺癌試料中に存在し、かつ正常組織内に不在の17のさらなる遺伝子が同定された。
【0095】
次いで、23の候補抗原の各々を標的化する定量qRT−PCRを行った。(Agilent>6.0による)50ngの高品質RNA試料を逆転写し、cDNAを得て、1μlのcDNAをRT−PCR反応物の各ウェルに対して使用した。試料は3つ組で実施した。SYBR Green PCR Master Mix(Applied Biosystems(Foster City,CA))を、Applied Biosystems 7900HT Prism機器上での2ステップリアルタイムRT−PCR分析のために使用した。SIM2およびGAPDHにおけるPCRプライマーを、SIM2−F(5’−CTTCCCTCTGGACTCTCACG−3’)、SIM2−R(5’−AGGCTGTGCCTAGCAGTGTT−3’)、GAPDH−F(5’−TGCACCACCAACTGCTTAGC−3’)、およびGAPDH−R(5’−GGCATGGACTGTGGTCATGAG−3’)として設計した。所与の試料中のSIM2の発現値を、GAPDHの対応する発現に正規化した。2−ΔΔCt法を用い、SIM2の相対発現を計算した(Haramら、Prostate 68:1517−1530頁(2008年)およびLivakら、Methods 25:402−408頁(2001年))。
【0096】
15の候補抗原(AMACR、BICD1、C10orfl37、CDC2L6、ICA1、KIAA1661、MAP7、MYO6、OR51E2、PAICS、PCSK6、PVT1、RGS10、SGEF、およびSIM2)が前立腺癌において過剰発現されることを確認した(図2)。これらの抗原に対する前立腺癌における過剰発現の頻度は、57%〜86%の範囲であった。qRT−PCRによって検証したこれらの15の前立腺癌特異的抗原の中から、正常前立腺において最も一貫して不在でありかつ前立腺癌において最高の発現頻度を有する遺伝子(図2)は、単一目的の(single−minded)相同遺伝子(SIM2)であった。SIM2は、試験した7つのうち6つの癌において過剰発現されたが、良性前立腺組織においてはされなかった。
【0097】
実施例2 前立腺癌の免疫療法のための標的としてのERG
標的治療用抗原の選択は、腫瘍ワクチン(例えば前立腺癌ワクチン)の設計にとって極めて重要である。最近の試験は、3’ERGとインフレームで融合する5’TMPRSS2遺伝子内の前立腺に特異的なプロモーター領域の染色体内再編成(intrachromosomal rearrangement)(ERGの過剰発現をもたらす)が、ヒト前立腺切除標本の40〜60%中に存在することを示している。ERGは、通常、ヒト前立腺において発現されず、ERGの発現については、成人の正常組織内で豊富なレベルで検出されないが、培養された内皮または発達細胞に限って報告されている。さらに、発現が成人期を通してさまざまな組織内で維持される他のETS因子と異なり、ERGの発現は組織による大きな制限を受ける。
【0098】
MHCクラスI拘束性エピトープを予測する異なるアルゴリズムを使用するERGアミノ酸配列のインシリコ分析によって、50を超える有望なバインダーが同定され、そこでヒトHLA−A2.1に対する高親和性結合を有することが予測される12の推定9−merペプチドを選択した。これらの9−merERGペプチドのうち3つは、SEQ ID NO:2、3、および4によって記載される。すべてのエピトープが、大部分のTMPRSS2:ERG融合産物において検出されない転座のN末端に由来し、かつエピトープ配列は、その対応するマウスオーソログに対して100%相同であった。次いで、これらのペプチドをHLA−A2.1に対する結合についてスクリーニングし、有意な結合親和性を有する8つを見出した(図3A)。次いで、本発明者らのインシリコ分析により、ヒト成人正常組織内のインサイチューでのERG発現が少ないことが同定されたことから、T細胞のERGに対する寛容が他の自己抗原の場合より容易に克服可能であると仮定した(データは示さず)。したがって、本発明者らは、免疫化試験を用いて、これらのペプチドが、ヒト化HHDマウス(すなわちヒトHLA−A2.1クラスI MHCのみを有するマウス)におけるERGエピトープに特異的なHLA−A2.1拘束性細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の誘導により測定した場合にERGに対する寛容を破壊できるか否かを評価し、ELISPOTにより測定した場合に、ERGに特異的なCTLの誘導を観察した(図3B)。
【0099】
インビトロ試験では、前立腺癌患者において抗ERG自己抗体が検出されている。これは、推定の標的前立腺TAAの同定、主に前立腺癌患者の血清中でのTAAに対する自己抗体の検出を目的として、遺伝子発現のプロファイリングに対する代替アプローチを用いて行った。血清、血漿、および軟膜を提供する対象の承諾を得た1000の症例対照コホートを集めた。このコホートは、35%の前立腺癌症例(原発性および転移性)、55%の対照症例、および10%の不確定または前癌所見を伴う症例(例えば、異型、HGPIN、またはASAP)を含む。このコホート由来の血清に、高密度核酸プログラム型タンパク質アレイ(NAPPA)を使用する初期スクリーニングを施し、発生率が高い自己抗体を用いて抗原を同定した(図4A)。いくつかの候補を、ERGを含む、この最初のスクリーニングから得られる上位100の抗原から選択し、NAPPAデータを、ELISAプラットフォームを使用して検証した。この方法を用いて、試験した12%の前立腺癌患者に由来する血清中の抗ERG自己抗体の存在(ERGおよび他のTAAにおけるデータを図4Bに図示する)を確認し、それは前立腺癌患者におけるERGの免疫原性についての証拠を提供した。
【0100】
実施例3 前立腺癌の免疫療法における標的としてのSIM2
健常個体および前立腺癌患者に由来する血清がSIM2に対する抗体を有するか否かを試験するため、捕捉用のインビトロで発現されるGSTタグ付きSIM2を伴うELISAシステムを使用した。血清試料は、Harvard UniversityおよびUniversity of Michiganの患者の発生部位(accrual sites)で収集した。書面によるインフォームドコンセントは、各患者から得られ、両施設の治験審査委員会(Institutional Review Board)によって承認された。すべての患者は、40歳超であり、2.5ng/mlを超えるPSA値、異常なデジタル直腸検査(DRE)、PSAの上昇、またはPSAの低下(家族歴などのリスク因子を伴う)が原因で往診していた。試験はまた、過去に生検を受けたことがあり、試験で癌で陽性を示していない男性を含んだ。登録と採血の後、すべての患者が前立腺生検を受け、癌の有無について判定された。
【0101】
ヒト完全長SIM2 cDNAを有するpCR−BLUNT2−topoプラスミドを、Open Biosystems(Huntsville,AL)から購入した。SIM2 cDNAを有するプラスミド(10pg〜200ng)は、2つの異なるPCRステップを経た。第1のPCRステップは、22.5μlのAccuPrime Pfx Super Mix(Invitrogen)および200nMの各プライマーを含んだ。すべての遺伝子におけるフォワードプライマーが、5’末端に共有配列(AAAGCAGGCTCCACC)を有したが、3’末端に各cDNAに特異的な22〜25ヌクレオチドを有した。リバースプライマーもまた、5’末端に配列を共有したが(AAAGCAGGCTCCACC)、各プライマーの3’末端(21〜27ヌクレオチド)は各cDNAに特異的であった。第2のPCRステップは、22.5μlのAccuPrime Pfx Super Mix(Invitrogen)、第1のステップからの6.6mlのPCR産物、ならびに200nMのattFおよびattRプライマーを含んだ。2つのPCRステップにおけるサイクル条件は、第1のPCRステップが35サイクルで実行される一方、第2のPCRステップが5サイクルで実行される以外では同じであった。延長ステップは、1分/kb cDNAで設定した。PCR産物を、1%アガロースゲル中を走らせ、ゲル精製し、pDONRプラスミド(Invitrogen)にクローン化し、各cDNAのエントリークローンを生成した。エントリークローン(130ng)を使用し、10μlの全容量に対して、pCITE−GST発現ベクター(130ng)、LRクロナーゼII酵素ミックス(2μl)、およびTE緩衝液を使用して発現クローンを生成した。反応産物(1μl)を、製造業者の使用説明書に従い、50μlのOne Shot OmniMax(商標)2T1 Phage−Resistant Cellsに形質転換した。TAAのすべては、C末端にGSTを有するGST組換えタンパク質として生成された。血清抗体結合における陰性対照として、GST対照ベクターはまた、GSTのみが発現されることになるpDEST15(Invitrogen)を使用して生成された。Kozak配列は、哺乳類無細胞系において使用できるように、GSTの元のpDEST15 5’に導入された。
【0102】
このELISA法は、捕捉抗体と結合されたcDNAベクターを利用し、タンパク質が精製される必要がないことから従来のタンパク質アレイより有利でありうる核酸プログラム型タンパク質アレイ(NAPPA)への単一抗原の適応である(図4A)。GSTで予備コーティングされたGST−ELISAプレートを、GE Biosciencesから購入した。プレートを、PBS、5%ミルク、および0.2%Tween−20で、4℃で一晩ブロッキングした。異なるTAA−GST組換えタンパク質を、製造業者の使用説明書に従い、微量遠心管内、30℃で1.5時間、ウサギ網状赤血球溶解液無細胞発現系(Promega)を使用して発現させた。発現されたタンパク質を、ELISAプレートに移し、4℃で一晩結合させた。プレートを洗浄し、ブロッキング緩衝液中で1:300に希釈した血清とともに1時間インキュベートし、次いで西洋わさびペルオキシダーゼに連結された抗ヒト抗体とともに1時間インキュベートした。洗浄後、100μlの基質(SuperSignal ELISA Femto Maximum Sensitivity Substrate;Pierce)を各ウェルに添加し、発光シグナルを、Victor3 ELISAリーダー(フィルタなし)を使用して読み取った。各血清を2つ組でスクリーニングした。プレートはまた、二次抗体陰性対照およびGST対照を含んだ。
【0103】
SIM2に対する特異的結合を有する患者血清由来の自己抗体の有意なレベル(P<0.01)を、5つのうち2つの評価した前立腺癌試料中で検出した(図5)。それに対し、SIM2に対する自己抗体は、9つのうちいくつかの対照患者の血清中で検出できなかった(図5)。
【0104】
実施例4 ERG標的化およびSIM2標的化前立腺癌免疫療法におけるツールとしてのヒト化マウスモデル
ERG標的免疫療法プロトコルを試験するため、HHDマウス(HLA−A0201トランスジェニックマウス)、Pb−ERGマウス(プロバシン−ERGトランスジェニックマウス)、およびPb−ERG/Pten+/−マウスを使用した。HHDマウスは、ヒトHLA−A2.1を発現するが、マウスMHC Iが欠如している。Pb−ERGトランスジェニックマウスは、前立腺限定的ERG発現を示し、12〜14週齢になるまで、前立腺癌の前駆病変であるマウス前立腺上皮内新形成(mPIN)を発生させた。Pb−ERG/Pten+/−マウスは、過剰発現されたERGと低下したPtenレベルの組み合わせが、6カ月齢までに完全浸透度を伴う多発性前立腺腺癌の原因であることを示した。
【0105】
また、ERGに基づく免疫療法のCTL養子移植段階において、異種移植片モデルが抗腫瘍効果の滴定および評価のための高速なシステムを提供することから、それを用いる。このモデルは、HLA−A2.1(+)ヒトLNCap細胞系を使用して開発されており、ヒトERGを安定的に発現する。トランスジェニックマウスが使用できない場合、同様の方法をERG以外のTAAにおいて採用する。
【0106】
SIM2標的化免疫療法においては、TRAMP−HHDハイブリッドマウスを使用する。TRAMPマウスは、前立腺癌の十分に特徴づけられたモデルであり、それは前立腺癌のゲノミクスおよび免疫に関するいくつかの試験におけるモデルとして過去に使用している。さらに、マイクロアレイデータは、TRAMP前立腺腫瘍におけるSIM2のレベルの上昇を示した。
【0107】
実施例5 A2.1拘束性CTLによって媒介される免疫療法にとって好適な標的であるERGのヒトHLA−A2.1拘束性エピトープの特徴づけ
ERGに特異的なCTLの寛容に対する前立腺癌発症の影響を、前立腺新生物の形質転換が生じる前後に、(同齢の)HHDマウスにおけるERGに特異的なCTLの応答性をF1 Pb−ERG−HHDまたはPb−ERG/PTEN+/−−HHDハイブリッドマウスの場合と比較することによって判定する。マウスおよびヒトERG遺伝子の間での著しい相同性のため、同定した3つのエピトープのアミノ酸配列は、マウスERGエピトープに対して100%相同である。
【0108】
予備データにおいては、ヒト化マウスにおけるERGに特異的なA2.1拘束性細胞傷害性Tリンパ球の誘導からも明らかなように、免疫化後にERGに特異的なT細胞寛容を破壊できる、ヒトHLA−A2.1によって提示されるヒトERGの3つの免疫優性エピトープが同定された。これら3つの免疫優性ヒトERGエピトープの各々に対して誘導される免疫応答の抗腫瘍有効性を比較し、ERGに対するT細胞寛容が、アンドロゲン抑制を介してまたはTim−1の標的化による抑制性CD4/CD25調節性T細胞の阻害により、さらに弱まるか否かを判定する。これらの前臨床試験は、Pb−ERGマウスおよびPB−ERG/Pten+/−マウスとともに飼育したヒト化HHDマウスのF1ハイブリッド子孫を使用して実施する。これらのモデルは、次のように相互に相補的である。すなわち、Pb−ERGトランスジェニックマウスは、前立腺限定的ERG発現を示し、かつこれらのマウスは、進行癌を発症しないにもかかわらず、ERGに特異的なT細胞応答を促進するため、アンドロゲン調節をいかに最適に利用するかについての試験を可能にする。それに対し、PB−ERG/Pten+/−マウスは、6カ月齢までに完全浸透度を伴う多発性前立腺腺癌を呈し、それから3つの免疫優性ERGエピトープのうちいずれがインビボで前立腺癌を根絶させる最高の能力を有するかが判定可能になる。
【0109】
3つの優性エピトープのERG誘発性前立腺癌に対する除去能の直接比較を、受動免疫化および能動免疫化によって行う。発明者らは、過去に、前立腺腫瘍遺伝子モデルに特異的なCTL(例えばTRAMPマウスにおけるSV40Tag)の養子移植が、確立された前立腺癌を有効に治療可能であることを示している。この実験は、本発明者らのPB−ERG/Pten+/−xHHDマウスにおけるヒトA2.1拘束性ERG特異的CTLの養子移植によって行う。ERGの3つの免疫優性ヒトA2.1拘束性ペプチドに対するCTLの有効性を比較する。最も有効なエピトープを、第1相治験INDにおいて選択する。能動免疫化試験を実施し、前臨床のハイブリッドなヒト化ERG/A2.1トランスジェニックモデルにおいて、養子移植の不在下で、インサイチューでの抗腫瘍応答性を最適化するための手段を模索した。本発明者らの能動免疫化試験は、アンドロゲン抑制を用いるかまたは調節性Tリンパ球(Treg)を標的化し、ERG寛容を弱め、インビボでの抗腫瘍有効性を改善することに注目する。すべての免疫化法において、所与のペプチド抗原に対するCTL応答は、ペプチド免疫化マウス由来の脾細胞の、IFN−γを分泌し(ELISPOTにより測定)、グランザイムBおよびパーフォリンを生成し、細胞毒性アッセイにおいてペプチドが負荷されたHLA−A2.1発現細胞を溶解し、さらにペプチド−四量体複合体に特異的に結合する能力によって規定される。抗腫瘍効果は、(Pb−ERGマウスにおける)組織構造および(PB−ERG/Pten+/−マウスにおける)前立腺腫瘍サイズによって監視する。
【0110】
実施例6 A2.1拘束性CTLによって媒介される免疫療法に適した標的であるヒトHLA−A2.1拘束性SIM2エピトープの同定および特徴づけ
正常(41の試料)および新生物(62の試料)の前立腺組織由来のマイクロアレイデータの本発明者らの包括的分析においては、前立腺癌において有意に過剰発現される遺伝子を、それが免疫療法におけるバイオマーカーまたは標的として使用される可能性について検討した。343の特有の、前立腺癌で下方制御される遺伝子のリストを、前処理後の倍率変化(>0.5)およびFDR値<0.05および正規化データ(Z変換)に基づいて得た。本試験の目的のため、発現が非前立腺正常ヒト組織内で全く認められない場合の遺伝子のみを、さらなる検討のために保持した。さまざまなヒト組織における遺伝子発現データを、NovartisおよびStanfordによって実施された2つの試験から得た。各転写産物における存在コール、不在コール、およびマージナルコールとともに、正規化された発現データMAS5を得た。各転写産物における存在コールおよび不在コールに基づき、優先値を計算した。すべての組織内に不在の遺伝子を、最高の優先度で得た。遺伝子のリストをさらに拡張するため、前立腺特異的遺伝子を、Stanford遺伝子発現データを分析することによって同定した。前立腺を除くすべての正常組織内でのMAS5コールに基づき、不在であると注釈を付けられた遺伝子は、前立腺特異的遺伝子であると考えられた。この包括的多段階分析によって57の遺伝子リストが得られ、それらはERGを含んだ。転写因子SIM2を、分析した大部分の前立腺癌生検物におけるその過剰発現(図6)と正常組織内での発現の不在について、本発明者らの第2の標的として選択した。ERGおよびSIM2の同時過剰発現が、分析した前立腺癌生検物の画分中にのみ認められた。
【0111】
考えられるHLA−A0201結合エピトープを予測するために、候補標的TAAタンパク質配列を、さまざまなマトリックスパターンに対してスクリーニングし、そこでHLA−A0201モチーフに適合する八量体、九量体または十量体ペプチド内部のすべてのアミノ酸を評価する。本発明者らの予測を行うため、汎用アルゴリズムSYFPEITHI、BIMAS、MHCPred、およびRankPepに加え、NetCTL、PREDEP、ProPred−I、MAPPP、JenPep、NetMHC、およびnHLApredも利用した。
【0112】
エピトープ候補のHLA−A2.1に対する結合について、MHC安定化アッセイを用いて評価した。アッセイは、好適なペプチドの、T2細胞系由来のMHCクラスI分子に対する安定化能に基づく。T2細胞は、抗原提示関連機能トランスポーター(functional transporter associated with antigen presentation)(TAP)が欠如し、その結果、空の不安定なクラスI分子が細胞表面上に蓄積する。細胞表面上のこれらの分子は、適切な結合ペプチドの付加によって安定化されない限り、迅速に解離する。このアッセイでは、インフルエンザM1 HLA−A0201結合ペプチドを参照として使用した。
【0113】
つまり、T2細胞を、50μg/250×10個の細胞/mlの濃度での候補ペプチドの添加前、無血清IMDM(ATCC)中で6時間培養し、37℃で一晩インキュベートした。細胞を洗浄し、表面HLA−A2.1分子を、FITCマウス抗ヒトHLA−A2 mAb(クローンBB7.2、マウスIgG2bκ、BD Pharmingen)で、4℃で1時間かけて染色した。次いで、細胞をPBSで3回洗浄し、フローサイトメトリーによって分析した。陰性対照ペプチド(NEG、図6Aを参照)およびインフルエンザマトリックスペプチドM1バインダーペプチド(M1、図6Aを参照)は、対照としての役割を果たした。所与のペプチドの相対結合親和性を、MFI(ペプチド)/MFI(陰性ペプチド)として計算した。さらなる試験のため、1.5以上の相対結合親和性のみを考慮した。
【0114】
T2細胞を、無血清イスコフ修飾ダルベッコ培地(IMDM)中で、50μg/mlの各候補ペプチドとともに、37℃で一晩インキュベートした。次いで、細胞を、10μg/mlでのBrefeldin A(Sigma(St.Louis,MO))とともに1時間インキュベートし、洗浄し、Brefeldin A(50ng/ml)の存在下、37℃で0、2、4または6時間インキュベートした。次いで、細胞をBB7.2 mAbで染色した。各時点においては、ペプチド誘発性のHLA−A2.1の発現は、ペプチドが負荷されたT2細胞の平均蛍光と陰性ペプチドが負荷されたT2細胞の平均蛍光との差異として計算した。解離の速度は、経時的にA2.1発現の低下による影響を受ける。
【0115】
このMHC安定化アッセイは、HLA−A2.1分子を安定化可能な9つのSIM2ペプチドを示し、結果的に特異的なモノクローナル抗体による表面A2.1分子の検出の増大がもたらされた(図6A)。ペプチド−HLA解離速度は時間と相関し、それにより弱い安定化エピトープ(エピトープ84、199、237および430)および強い安定化エピトープ(エピトープ87、205、241および244)が同定された。しかし、高い解離速度(弱い安定化因子)を伴うエピトープは、インキュベーションの8時間後であっても非結合対照エピトープを超える弱い結合をさらに示した。
【0116】
次いで、これらの9つのSIM2ペプチドを、トランスジェニックHHDマウスにおけるインビボCTL応答に対するその誘発能について試験した。10〜12週齢の雄HHDマウスに対し、150μgのI−A拘束性HBVcore128−140Tヘルパーエピトープ(TPPAYRPPNAPIL)の存在下で、50μlの不完全フロインドアジュバント(IFA)および50μlのPBSの中に乳化された100μgの各候補ペプチドを、尾の基部に皮下注射した。免疫化の10〜12日後、脾臓を回収し、脾細胞を、ELISPOTにより、ペプチド誘発性のIFN−γの特異的放出について試験した。ELISPOTアッセイを実施するため、96ウェルのMillipore IPプレートを、PBS中、10μg/mlの濃度の100μl/ウェルのマウスIFN−γに特異的な捕捉mAb(ANl8、Mabtech Inc.(Mariemont,OH))で、4℃で一晩かけてコーティングした。ウェルをPBSで洗浄し、RPMI/10%FCSで、37℃で1時間かけて飽和させた。2.5×10個の脾細胞全体を、4つの各複製ウェル内に播種し、50μg/mlのマイトマイシンCで1時間前処理した、5×10個のペプチドが負荷された(ペプチド10μg/ml、37℃で2時間)脾細胞を各ウェルに加えた。プレートを、5%CO下、37℃で1〜2日間インキュベートし、PBSで5回洗浄し、次いで1μg/mlのビオチン化ラット抗マウスIFN−γ mAb(R4−6A2,Mabtech Inc.)とともに、4℃で24時間または室温で2時間インキュベートした。ウェルを洗浄し、100μlの希釈アルカリホスファターゼ−複合ストレプトアビジンとともに、室温で1時間インキュベートした。スポットを、ペルオキシダーゼ基質(5−ブロモ−4,3−インドリルリン酸およびニトロブルーテトラゾリウム)を付加することによって展開し、ELR04 AID ELISPOT Reader System(Autoimmun Diagnostika GmbH(Straβberg,Germany))を使用してカウントした。
【0117】
インビトロでのSIM2(87)(TLDGFVFVV)、SIM2(205)(YQIVGLVAV)、SIM2(237)(SLDLKLIFL)、SIM2(241)(KLIFLDSRV)、およびSIM2(244)(FLDSRVTEV)による再刺激が、ELISPOTアッセイにおけるペプチドに特異的な方法で、有意により多数の脾細胞における(SIM2(87)につきP<.01および他のエピトープにつきP<.001)IFN−γの放出を誘発することを見出した(図6B)。これは、SIM2(およびSIM1)がマウスにおける他の非前立腺組織内でも発現されることから、SIM2に対する寛容がこれらのエピトープに対するマウスの免疫化を通して回避されるという証拠を提供する。SIM2(25)およびSIM2(199)は、A2.1に強く結合するその能力に反して、免疫原性を示さなかった。
【0118】
ヒトHLA−A2.1拘束性SIM2特異的な免疫が、インビボでの前立腺癌発症に影響を与える可能性は、TRAMP−HHDハイブリッドマウスにおいて評価されることになる。TRAMPマウスは、前立腺癌の十分に特徴づけられたモデルであり、本発明者らは過去に、それを前立腺癌のゲノミクスおよび免疫についてのいくつかの試験におけるモデルとして利用している。ゲノムワイドな分析では、最近、SIM2遺伝子がTRAMP前立腺腫瘍において過剰発現されることを示している。さらに、LNCap細胞内でのSIM2の発現がアンドロゲンによって抑制され、これはアンドロゲンの操作とこのモデルにおけるSIM2標的化免疫療法とを組み合わせる可能性を提供することを示している。
【0119】
実施例7 前立腺TAAに特異的な免疫寛容を克服するためのアンドロゲン除去の利用
アンドロゲンのシグナル伝達経路は、前立腺癌の発症および進行にとって重要である。アンドロゲン除去は、前立腺癌における従来の治療であり、免疫療法と組み合わされた場合に腫瘍抗原に対する免疫を促進するものと多くには考えられている。マウスにおけるアンドロゲン除去が寛容を弱め、前立腺腫瘍抗原モデルとして、インフルエンザペプチドに対するCD4 T細胞の応答を高めることが示されている。本発明者らの試験では、プロバシン−PSAトランスジェニックマウスにおけるPSAに対するA2.1拘束性CTL応答に対するこの観察を示している。例えば、ハイブリッドA2.1/PSA(雄、去勢した雄、または雌)トランスジェニックおよびA2.1マウスをvac−前立腺特異的抗原(PSA)で免疫し、脾細胞をPSAタンパク質が負荷された樹状細胞で再刺激し、ELISPOT(図7A)またはPSA−四量体(図7B)によって試験し、アンドロゲン抑制が前立腺に特異的な寛容を弱めることが示された。さらに、雄におけるアンドロゲン除去療法は、良性および悪性前立腺組織へのT細胞浸潤の促進をもたらすことが示されている。ここでは、ERG−およびSIM2に特異的な免疫寛容を弱める、TMPRSS2−ERG融合体およびSIM2遺伝子のアンドロゲン応答性(図8)を利用する。
【0120】
本発明者らの予備データ(図8A)は、ERG発現とアンドロゲンの十分に確立された正の相関に合致する。3つの免疫優性ERGペプチドを、Pb−ERG−HHDにおけるERGに特異的なCTLを誘発し、PB−ERG/Pten+/−−HHDマウスにおける腫瘍成長を低下させる能力について比較する、能動免疫化の結果に対する去勢の効果を評価する。
【0121】
ERGのように、SIM2発現は、アンドロゲンに依存し(図8B)、これは染色体21に対するアンドロゲン調節因子に富む領域内のSIM2遺伝子の位置に基づく可能性が高い。本発明者らのマイクロアレイデータは、TRAMPマウス由来の前立腺腫瘍におけるSIM2発現の発現増大を示した。雄TRAMP−HHDハイブリッドマウスの去勢によるSIM2への免疫寛容および前立腺腫瘍成長に対するアンドロゲン除去の効果、次いで免疫原性A2.1拘束性SIM2ペプチドでの能動免疫化について試験する。
【0122】
実施例8 前立腺TAAに特異的な免疫寛容を克服するためのT細胞免疫グロブリン−ムチン−1(Tim−1)経路の操作
調節性Tリンパ球(Treg)は、さまざまな癌における抗腫瘍免疫応答を著しく妨げる。Tim−1受容体を介してT細胞を刺激し、Treg細胞の生成およびTAAに対する免疫寛容の発現に干渉する能力を検討するため、TRAMPマウスをGFP−Foxp3−KIマウスと交配させた。TRAMP−GFP−Foxp3ハイブリッドマウスの前立腺−流入リンパ節に由来するナイーブCD4 TおよびCD8 T細胞が、抗CD3/CD28+TGF−βでの治療後にTreg細胞への変換速度の増加を示すことを見出した(図9Aおよび9B)。TGF−β誘発性分化に対するこの感受性の増大は、高齢マウスにおいて促進される。この新規な観察によると、前立腺癌の発症が腫瘍および末梢血の双方におけるTregの増加と並行する理由が説明できる。癌ワクチンの投与前のTregの減少は、非前立腺モデルにおける腫瘍免疫を強化する。Tim4−Ig融合タンパク質である作動性抗Tim1抗体(Ab)によるT細胞免疫グロブリン−ムチン−1(Tim−1)の刺激またはTim−4DCによる活性化は、T細胞をTH1およびTH17優性表現型に二分させ(polarize)、かつ寛容およびTregを破壊することが可能である。まず、B6マウスを組換え体のTag発現ワクチニアで免疫し、免疫化の際に異なる用量の抗体を提供することによる抗Tim−1 Abの能力について試験した。Tag−四量体の特異性およびCD8細胞によるIFN−γの生成によって判断すると、アゴニスト抗Tim−1 AbがTagに特異的なCTLにおける有意な増大を誘発したことを見出している(図9Cおよび9D)。この成果は、アゴニスト抗Tim−1抗体が、不活性化インフルエンザウイルスで免疫されたマウスにおいて、抗原特異的な細胞増殖およびIFN−γの生成を促進したという前報に合致している。次いで、同じ方法を用いて、成体TRAMP−GFP−Foxp3マウスにおける抗体のCTL促進能を評価しようとした。同様に、抗体治療の結果、脾臓および前立腺−流入リンパ節の双方においてTag特異的CTLが増大した(図10)。併せて、本発明者らの成果は、抗体または融合タンパク質によるTim−1/Tim−4相互作用との干渉がERGまたはSIM2での能動免疫化に対する応答性を高めることになるという本発明者らの仮説を支持している。さまざまな前立腺癌のマウスモデルにおけるTim−1操作の効果は、能動および受動免疫療法レジメン下で、またアンドロゲン除去と組み合わせて、アゴニスト抗Tim−1モノクローナル抗体を抗原と並行投与することによって試験する。
【0123】
他の実施形態
上記の内容から、本明細書中に記載の本発明に対する変形および改良を行い、それをさまざまな用途および条件に導入できることは自明であろう。かかる実施形態はまた、次の特許請求の範囲の範囲内に含まれる。
【0124】
本願中に記載されるすべての出版物、特許出願、および特許は、各々の独立した出版物、特許出願、または特許が、参照により援用されるように、あくまで具体的かつ個別に示される場合と同程度に、参照により本明細書中に援用される。
【0125】
上記の内容から、当業者は、本発明の本質的特性を容易に確認でき、本発明のさまざまな変更および改良を行い、それをさまざまな用途および条件に導入できる。したがって、他の実施形態もまた特許請求の範囲の範囲内に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SEQ ID NO:1で示される隣接アミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有する単離された免疫応答刺激ペプチドであって、少なくとも7個であるが50個未満のアミノ酸残基を有し、かつ、抗原提示分子に結合された場合、哺乳類宿主内で免疫細胞を活性化することができる、単離された免疫応答刺激ペプチド。
【請求項2】
前記配列同一性が、95、96、97、98、または99%である、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
前記免疫応答刺激ペプチドが、7〜30個のアミノ酸残基を有する、請求項1に記載のペプチド。
【請求項4】
前記免疫応答刺激ペプチドが、7〜25個のアミノ酸残基を有する、請求項3に記載のペプチド。
【請求項5】
前記免疫応答刺激ペプチドが、7〜20個のアミノ酸残基を有する、請求項4に記載のペプチド。
【請求項6】
前記免疫応答刺激ペプチドが、7〜15個のアミノ酸残基を有する、請求項5に記載のペプチド。
【請求項7】
前記免疫応答刺激ペプチドが、7〜14個のアミノ酸残基を有する、請求項6に記載のペプチド。
【請求項8】
前記免疫応答刺激ペプチドが、7〜13個のアミノ酸残基を有する、請求項7に記載のペプチド。
【請求項9】
前記免疫応答刺激ペプチドが、7〜12個のアミノ酸残基を有する、請求項8に記載のペプチド。
【請求項10】
前記免疫応答刺激ペプチドが、7〜11個のアミノ酸残基を有する、請求項9に記載のペプチド。
【請求項11】
前記免疫応答刺激ペプチドが、7〜10個のアミノ酸残基を有する、請求項10に記載のペプチド。
【請求項12】
前記免疫応答刺激ペプチドが、8、9、または10個のアミノ酸残基を有する、請求項11に記載のペプチド。
【請求項13】
前記免疫応答刺激ペプチドが、9個のアミノ酸残基を有する、請求項12に記載のペプチド。
【請求項14】
前記免疫応答刺激ペプチドが、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、またはSEQ ID NO:4のアミノ酸配列を有する、請求項1に記載のペプチド。
【請求項15】
前記免疫細胞が、細胞傷害性Tリンパ球である、請求項1に記載のペプチド。
【請求項16】
前記抗原提示分子が、HLA分子である、請求項1に記載のペプチド。
【請求項17】
前記HLA分子が、HLAクラスI分子である、請求項16に記載のペプチド。
【請求項18】
異種化合物に結合した請求項1に記載のペプチドを含む組成物。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか一項に記載のペプチドを含む組成物。
【請求項20】
ワクチンである、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
アジュバントをさらに含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項22】
追加的な治療剤をさらに含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項23】
請求項1〜18のいずれか一項に記載の免疫応答刺激ペプチドが抗原提示分子に結合された場合に前記ペプチドに特異的に結合可能な、活性化免疫細胞。
【請求項24】
前記免疫細胞が、細胞傷害性Tリンパ球である、請求項23に記載の活性化免疫細胞。
【請求項25】
前記抗原提示分子が、HLA分子である、請求項23に記載の活性化免疫細胞。
【請求項26】
前記HLA分子が、HLAクラスI分子である、請求項25に記載の活性化免疫細胞。
【請求項27】
前記ペプチドが、細胞の表面上の抗原提示分子に結合される、請求項23に記載の活性化免疫細胞。
【請求項28】
前記ペプチドが、前立腺癌細胞の表面上の抗原提示分子に結合される、請求項27に記載の活性化免疫細胞。
【請求項29】
請求項23〜28のいずれか一項に記載の活性化免疫細胞を含む組成物。
【請求項30】
ワクチンである、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
アジュバントをさらに含む、請求項29に記載の組成物。
【請求項32】
追加的な治療剤をさらに含む、請求項29に記載の組成物。
【請求項33】
請求項1〜18のいずれか一項に記載の免疫応答刺激ペプチドを表面上に含む抗原提示細胞であって、前記ペプチドが前記抗原提示細胞の表面上の抗原提示分子に結合される、抗原提示細胞。
【請求項34】
樹状細胞またはマクロファージである、請求項33に記載の抗原提示細胞。
【請求項35】
前記抗原提示分子が、HLA分子である、請求項33に記載の抗原提示細胞。
【請求項36】
前記HLA分子が、HLAクラスI分子である、請求項33に記載の抗原提示細胞。
【請求項37】
請求項33〜36のいずれか一項に記載の抗原提示細胞を含む組成物。
【請求項38】
ワクチンである、請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
アジュバントをさらに含む、請求項37に記載の組成物。
【請求項40】
追加的な治療剤をさらに含む、請求項37に記載の組成物。
【請求項41】
請求項1〜18のいずれか一項に記載の免疫応答刺激ペプチドが抗原提示分子に結合された場合に前記ペプチドに特異的に結合する、抗体またはその抗原結合断片。
【請求項42】
前記抗原提示分子が、HLA分子である、請求項41に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項43】
前記HLA分子が、HLAクラスI分子である、請求項41に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項44】
細胞毒性剤に結合される、請求項41に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項45】
前記細胞毒性剤が、次の化合物およびそれらの誘導体からなる群から選択される、請求項44に記載の抗体またはその抗原結合断片:
リシン、ドキソルビシン、メトトレキサート、カンプトセシン、ホモカンプトセシン、チオコルヒチン、コルヒチン、コンブレタスタチン、コンブレタスタチンA−4、ポドフィロトキシン、リゾキシン、リゾキシン−d、ドラスタチン、パクリタキセル、CC1065、アンサマイトシン(ansamitocin)p3、マイタンシノイド、ストレプトリシンO、ハタゴイソギンチャク(stoichactis)毒、ファロリシン、ブドウ球菌α毒素、ホロスリンA、ジギトニン、メリチン、リゾレシチン、心臓毒、およびセレブラトゥルス(cerebratulus)A毒素。
【請求項46】
前記ペプチドが、細胞の表面上の抗原提示分子に結合される、請求項41に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項47】
前記ペプチドが、前立腺癌細胞の表面上の抗原提示分子に結合される、請求項42に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項48】
請求項42〜47のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片を含む組成物。
【請求項49】
ワクチンである、請求項48に記載の組成物。
【請求項50】
アジュバントをさらに含む、請求項48に記載の組成物。
【請求項51】
追加的な治療剤をさらに含む、請求項48に記載の組成物。
【請求項52】
SEQ ID NO:5で示される隣接アミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有する単離された免疫応答刺激ペプチドであって、少なくとも7個であるが50個未満のアミノ酸残基を有し、かつ、抗原提示分子に結合された場合に哺乳類宿主における免疫細胞を活性化することができる、単離された免疫応答刺激ペプチド。
【請求項53】
前記配列同一性が、95、96、97、98、または99%である、請求項52に記載のペプチド。
【請求項54】
前記免疫応答刺激ペプチドが、7〜30個のアミノ酸残基を有する、請求項52に記載のペプチド。
【請求項55】
前記免疫応答刺激ペプチドが、7〜25個のアミノ酸残基を有する、請求項54に記載のペプチド。
【請求項56】
前記免疫応答刺激ペプチドが、7〜20個のアミノ酸残基を有する、請求項55に記載のペプチド。
【請求項57】
前記免疫応答刺激ペプチドが、7〜15個のアミノ酸残基を有する、請求項56に記載のペプチド。
【請求項58】
前記免疫応答刺激ペプチドが、7〜14個のアミノ酸残基を有する、請求項57に記載のペプチド。
【請求項59】
前記免疫応答刺激ペプチドが、7〜13個のアミノ酸残基を有する、請求項58に記載のペプチド。
【請求項60】
前記免疫応答刺激ペプチドが、7〜12個のアミノ酸残基を有する、請求項59に記載のペプチド。
【請求項61】
前記免疫応答刺激ペプチドが、7〜11個のアミノ酸残基を有する、請求項60に記載のペプチド。
【請求項62】
前記免疫応答刺激ペプチドが、7〜10個のアミノ酸残基を有する、請求項61に記載のペプチド。
【請求項63】
前記免疫応答刺激ペプチドが、8、9、または10個のアミノ酸残基を有する、請求項62に記載のペプチド。
【請求項64】
前記免疫応答刺激ペプチドが、9個のアミノ酸残基を有する、請求項63に記載のペプチド。
【請求項65】
前記免疫応答刺激ペプチドが、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、またはSEQ ID NO:10のアミノ酸配列を有する、請求項52に記載のペプチド。
【請求項66】
前記免疫細胞が、細胞傷害性Tリンパ球である、請求項52に記載のペプチド。
【請求項67】
前記抗原提示分子が、HLA分子である、請求項52に記載のペプチド。
【請求項68】
前記HLA分子が、HLAクラスI分子である、請求項67に記載のペプチド。
【請求項69】
異種化合物に結合した請求項52に記載のペプチドを含む組成物。
【請求項70】
請求項52〜69のいずれか一項に記載のペプチドを含む組成物。
【請求項71】
ワクチンである、請求項70に記載の組成物。
【請求項72】
アジュバントをさらに含む、請求項70に記載の組成物。
【請求項73】
追加的な治療剤をさらに含む、請求項70に記載の組成物。
【請求項74】
請求項52〜69のいずれか一項に記載の免疫応答刺激ペプチドが抗原提示分子に結合された場合に前記ペプチドに特異的に結合可能な、活性化免疫細胞。
【請求項75】
前記免疫細胞が、細胞傷害性Tリンパ球である、請求項74に記載の活性化免疫細胞。
【請求項76】
前記抗原提示分子が、HLA分子である、請求項74に記載の活性化免疫細胞。
【請求項77】
前記HLA分子が、HLAクラスI分子である、請求項76に記載の活性化免疫細胞。
【請求項78】
前記ペプチドが、細胞の表面上の抗原提示分子に結合される、請求項74に記載の活性化免疫細胞。
【請求項79】
前記ペプチドが、前立腺癌細胞の表面上の抗原提示分子に結合される、請求項78に記載の活性化免疫細胞。
【請求項80】
請求項74〜79のいずれか一項に記載の活性化免疫細胞を含む組成物。
【請求項81】
ワクチンである、請求項80に記載の組成物。
【請求項82】
アジュバントをさらに含む、請求項80に記載の組成物。
【請求項83】
追加的な治療剤をさらに含む、請求項80に記載の組成物。
【請求項84】
請求項52〜69のいずれか一項に記載の免疫応答刺激ペプチドを表面上に含む抗原提示細胞であって、前記ペプチドが前記抗原提示細胞の表面上の抗原提示分子に結合される、抗原提示細胞。
【請求項85】
樹状細胞またはマクロファージである、請求項84に記載の抗原提示細胞。
【請求項86】
前記抗原提示分子が、HLA分子である、請求項84に記載の抗原提示細胞。
【請求項87】
前記HLA分子が、HLAクラスI分子である、請求項84に記載の抗原提示細胞。
【請求項88】
請求項84〜87のいずれか一項に記載の抗原提示細胞を含む組成物。
【請求項89】
ワクチンである、請求項88に記載の組成物。
【請求項90】
アジュバントをさらに含む、請求項88に記載の組成物。
【請求項91】
追加的な治療剤をさらに含む、請求項88に記載の組成物。
【請求項92】
請求項52〜69のいずれか一項に記載の免疫応答刺激ペプチドが抗原提示分子に結合された場合に前記ペプチドに特異的に結合する、抗体またはその抗原結合断片。
【請求項93】
前記抗原提示分子が、HLA分子である、請求項92に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項94】
前記HLA分子が、HLAクラスI分子である、請求項92に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項95】
細胞毒性剤に結合される、請求項92に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項96】
前記細胞毒性剤が、次の化合物およびそれらの誘導体からなる群から選択される、請求項95に記載の抗体またはその抗原結合断片:
リシン、ドキソルビシン、メトトレキサート、カンプトセシン、ホモカンプトセシン、チオコルヒチン、コルヒチン、コンブレタスタチン、コンブレタスタチンA−4、ポドフィロトキシン、リゾキシン、リゾキシン−d、ドリスタチン、パクリタキセル、CC1065、アンサマイトシンp3、マイタンシノイド、ストレプトリシンO、ハタゴイソギンチャク(stoichactis)毒、ファロリシン、ブドウ球菌α毒素、ホロスリンA、ジギトニン、メリチン、リゾレシチン、心臓毒、およびセレブラトゥルス(cerebratulus)A毒素。
【請求項97】
前記ペプチドが、細胞の表面上の抗原提示分子に結合される、請求項92に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項98】
前記ペプチドが、前立腺癌細胞の表面上の抗原提示分子に結合される、請求項92に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項99】
請求項92〜98のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片を含む組成物。
【請求項100】
ワクチンである、請求項99に記載の組成物。
【請求項101】
アジュバントをさらに含む、請求項99に記載の組成物。
【請求項102】
追加的な治療剤をさらに含む、請求項99に記載の組成物。
【請求項103】
次の配列、すなわち、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:13、SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:15、SEQ ID NO:16、SEQ ID NO:17、SEQ ID NO:18、SEQ ID NO:19、SEQ ID NO:20、SEQ ID NO:21、SEQ ID NO:22、SEQ ID NO:23、SEQ ID NO:24、SEQ ID NO:25、またはSEQ ID NO:26のいずれか1つで示される隣接アミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有する単離された免疫応答刺激ペプチドであって、少なくとも7個であるが50個未満のアミノ酸残基を有し、かつ、抗原提示分子に結合された場合に哺乳類宿主内で免疫細胞を活性化することができる、単離された免疫応答刺激ペプチド。
【請求項104】
前記配列同一性が、95、96、97、98、または99%である、請求項103に記載のペプチド。
【請求項105】
前記免疫応答刺激ペプチドが、7〜30個のアミノ酸残基を有する、請求項103に記載のペプチド。
【請求項106】
前記免疫応答刺激ペプチドが、7〜25個のアミノ酸残基を有する、請求項105に記載のペプチド。
【請求項107】
前記免疫応答刺激ペプチドが、7〜20個のアミノ酸残基を有する、請求項106に記載のペプチド。
【請求項108】
前記免疫応答刺激ペプチドが、7〜15個のアミノ酸残基を有する、請求項107に記載のペプチド。
【請求項109】
前記免疫応答刺激ペプチドが、7〜14個のアミノ酸残基を有する、請求項108に記載のペプチド。
【請求項110】
前記免疫応答刺激ペプチドが、7〜13個のアミノ酸残基を有する、請求項109に記載のペプチド。
【請求項111】
前記免疫応答刺激ペプチドが、7〜12個のアミノ酸残基を有する、請求項110に記載のペプチド。
【請求項112】
前記免疫応答刺激ペプチドが、7〜11個のアミノ酸残基を有する、請求項111に記載のペプチド。
【請求項113】
前記免疫応答刺激ペプチドが、7〜10個のアミノ酸残基を有する、請求項112に記載のペプチド。
【請求項114】
前記免疫応答刺激ペプチドが、8、9、または10個のアミノ酸残基を有する、請求項113に記載のペプチド。
【請求項115】
前記免疫応答刺激ペプチドが、9個のアミノ酸残基を有する、請求項114に記載のペプチド。
【請求項116】
前記免疫細胞が、細胞傷害性Tリンパ球である、請求項103に記載のペプチド。
【請求項117】
前記抗原提示分子が、HLA分子である、請求項103に記載のペプチド。
【請求項118】
前記HLA分子が、HLAクラスI分子である、請求項117に記載のペプチド。
【請求項119】
異種化合物に結合された請求項103に記載のペプチドを含む組成物。
【請求項120】
請求項103〜119のいずれか一項に記載のペプチドを含む組成物。
【請求項121】
ワクチンである、請求項120に記載の組成物。
【請求項122】
アジュバントをさらに含む、請求項120に記載の組成物。
【請求項123】
追加的な治療剤をさらに含む、請求項120に記載の組成物。
【請求項124】
請求項103〜119のいずれか一項に記載の免疫応答刺激ペプチドが抗原提示分子に結合された場合に前記ペプチドに特異的に結合可能な、活性化免疫細胞。
【請求項125】
前記免疫細胞が、細胞傷害性Tリンパ球である、請求項124に記載の活性化免疫細胞。
【請求項126】
前記抗原提示分子が、HLA分子である、請求項124に記載の活性化免疫細胞。
【請求項127】
前記HLA分子が、HLAクラスI分子である、請求項126に記載の活性化免疫細胞。
【請求項128】
前記ペプチドが、細胞の表面上の抗原提示分子に結合される、請求項124に記載の活性化免疫細胞。
【請求項129】
前記ペプチドが、前立腺癌細胞の表面上の抗原提示分子に結合される、請求項128に記載の活性化免疫細胞。
【請求項130】
請求項124〜129のいずれか一項に記載の活性化免疫細胞を含む組成物。
【請求項131】
ワクチンである、請求項130に記載の組成物。
【請求項132】
アジュバントをさらに含む、請求項130に記載の組成物。
【請求項133】
追加的な治療剤をさらに含む、請求項130に記載の組成物。
【請求項134】
請求項103〜119のいずれか一項に記載の免疫応答刺激ペプチドを表面上に含む抗原提示細胞であって、前記ペプチドが前記抗原提示細胞の表面上の抗原提示分子に結合される、抗原提示細胞。
【請求項135】
樹状細胞またはマクロファージである、請求項134に記載の抗原提示細胞。
【請求項136】
前記抗原提示分子が、HLA分子である、請求項134に記載の抗原提示細胞。
【請求項137】
前記HLA分子が、HLAクラスI分子である、請求項136に記載の抗原提示細胞。
【請求項138】
請求項134〜137のいずれか一項に記載の抗原提示細胞を含む組成物。
【請求項139】
ワクチンである、請求項138に記載の組成物。
【請求項140】
アジュバントをさらに含む、請求項138に記載の組成物。
【請求項141】
追加的な治療剤をさらに含む、請求項138に記載の組成物。
【請求項142】
請求項103〜119のいずれか一項に記載の免疫応答刺激ペプチドが抗原提示分子に結合された場合に前記ペプチドに特異的に結合する、抗体またはその抗原結合断片。
【請求項143】
前記抗原提示分子が、HLA分子である、請求項142に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項144】
前記HLA分子が、HLAクラスI分子である、請求項143に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項145】
細胞毒性剤に結合される、請求項142に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項146】
前記細胞毒性剤が、次の化合物およびそれらの誘導体からなる群から選択される請求項145に記載の抗体またはその抗原結合断片:
リシン、ドキソルビシン、メトトレキサート、カンプトテシン、ホモカンプトテシン、チオコルヒチン、コルヒチン、コンブレタスタチン、コンブレタスタチンA−4、ポドフィロトキシン、リゾキシン、リゾキシン−d、ドリスタチン、パクリタキセル、CC1065、アンサマイトシンp3、マイタンシノイド、ストレプトリシンO、ハタゴイソギンチャク(stoichactis)毒、ファロリシン、ブドウ球菌α毒素、ホロスリンA、ジギトニン、メリチン、リゾレシチン、心臓毒、およびセレブラトゥルス(cerebratulus)A毒素。
【請求項147】
前記ペプチドが、細胞の表面上の抗原提示分子に結合される、請求項142に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項148】
前記ペプチドが、前立腺癌細胞の表面上の抗原提示分子に結合される、請求項147に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項149】
請求項142〜148のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片を含む組成物。
【請求項150】
ワクチンである、請求項149に記載の組成物。
【請求項151】
アジュバントをさらに含む、請求項149に記載の組成物。
【請求項152】
追加的な治療剤をさらに含む、請求項149に記載の組成物。
【請求項153】
対象における前立腺癌を治療する方法であって、前記対象に、請求項1〜18、52〜69、または103〜119のいずれか一項に記載のペプチドを含む組成物を、前記前立腺癌を治療するのに十分な量で投与するステップを含む、方法。
【請求項154】
アジュバントを投与するステップをさらに含む、請求項153に記載の方法。
【請求項155】
サイトカインを投与するステップをさらに含む、請求項153に記載の方法。
【請求項156】
ホルモン療法を施すステップをさらに含む、請求項153に記載の方法。
【請求項157】
前記ホルモン療法が、アンドロゲン除去である、請求項156に記載の方法。
【請求項158】
前記組成物が、薬学的に許容できる希釈剤、賦形剤、担体、またはアジュバントを含む、請求項153に記載の方法。
【請求項159】
前記組成物が、ヒトへの投与に適する、請求項153に記載の方法。
【請求項160】
前記組成物が、注射によって投与される、請求項153に記載の方法。
【請求項161】
対象における前立腺癌を治療する方法であって、前記対象に、請求項1〜18、52〜69、または103〜119のいずれか一項に記載の免疫細胞を含む組成物を、前記前立腺癌を治療するのに十分な量で投与するステップを含む、方法。
【請求項162】
アジュバントを投与するステップをさらに含む、請求項161に記載の方法。
【請求項163】
サイトカインを投与するステップをさらに含む、請求項161に記載の方法。
【請求項164】
ホルモン療法を施すステップをさらに含む、請求項161に記載の方法。
【請求項165】
前記ホルモン療法が、アンドロゲン除去である、請求項164に記載の方法。
【請求項166】
前記組成物が、薬学的に許容できる希釈剤、賦形剤、担体、またはアジュバントを含む、請求項161に記載の方法。
【請求項167】
前記組成物が、ヒトへの投与に適する、請求項161に記載の方法。
【請求項168】
前記組成物が、注射によって投与される、請求項161に記載の方法。
【請求項169】
対象における前立腺癌を治療する方法であって、前記対象に、請求項1〜18、52〜69、または103〜119のいずれか一項に記載の抗原提示細胞を含む組成物を、前記前立腺癌を治療するのに十分な量で投与するステップを含む、方法。
【請求項170】
アジュバントを投与するステップをさらに含む、請求項169に記載の方法。
【請求項171】
サイトカインを投与するステップをさらに含む、請求項169に記載の方法。
【請求項172】
ホルモン療法を施すステップをさらに含む、請求項169に記載の方法。
【請求項173】
前記ホルモン療法が、アンドロゲン除去である、請求項172に記載の方法。
【請求項174】
前記組成物が、薬学的に許容できる希釈剤、賦形剤、担体、またはアジュバントを含む、請求項169に記載の方法。
【請求項175】
前記組成物が、ヒトへの投与に適する、請求項169に記載の方法。
【請求項176】
前記組成物が、注射によって投与される、請求項169に記載の方法。
【請求項177】
対象における前立腺癌を治療する方法であって、前記対象に、請求項1〜18、52〜69、または103〜119のいずれか一項に記載の抗原提示細胞を含む組成物を、前記前立腺癌を治療するのに十分な量で投与するステップを含む、方法。
【請求項178】
アジュバントを投与するステップをさらに含む、請求項177に記載の方法。
【請求項179】
サイトカインを投与するステップをさらに含む、請求項177に記載の方法。
【請求項180】
ホルモン療法を施すステップをさらに含む、請求項177に記載の方法。
【請求項181】
前記ホルモン療法が、アンドロゲン除去である、請求項180に記載の方法。
【請求項182】
前記組成物が、薬学的に許容できる希釈剤、賦形剤、担体、またはアジュバントを含む、請求項177に記載の方法。
【請求項183】
前記組成物が、ヒトへの投与に適する、請求項177に記載の方法。
【請求項184】
前記組成物が、注射によって投与される、請求項177に記載の方法。
【請求項185】
対象における前立腺癌を治療する方法であって、前記対象に、請求項1〜18、52〜69、または103〜119のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片を含む組成物を、前記前立腺癌を治療するのに十分な量で投与するステップを含む、方法。
【請求項186】
アジュバントを投与するステップをさらに含む、請求項185に記載の方法。
【請求項187】
サイトカインを投与するステップをさらに含む、請求項185に記載の方法。
【請求項188】
ホルモン療法を施すステップをさらに含む、請求項185に記載の方法。
【請求項189】
前記ホルモン療法が、アンドロゲン除去である、請求項188に記載の方法。
【請求項190】
前記組成物が、薬学的に許容できる希釈剤、賦形剤、担体、またはアジュバントを含む、請求項185に記載の方法。
【請求項191】
前記組成物が、ヒトへの投与に適する、請求項185に記載の方法。
【請求項192】
前記組成物が、注射によって投与される、請求項185に記載の方法。
【請求項193】
前記異種化合物が、治療剤または細胞毒性剤である、請求項18に記載のペプチド。
【請求項194】
前記異種化合物が、治療剤または細胞毒性剤である、請求項69に記載のペプチド。
【請求項195】
前記異種化合物が、治療剤または細胞毒性剤である、請求項119に記載のペプチド。
【請求項196】
対象を前立腺癌を有するものと診断する方法であって、前記対象由来の試料中のERGまたはSIM2ポリペプチドまたはその断片のレベルを測定するステップと、それを参照と比較するステップとを含み、ここで参照と比較した前記レベルにおける変化が前立腺癌の診断指標である、方法。
【請求項197】
前記ERGポリペプチドが、SEQ ID NO:1、2、3、または4のいずれか1つのアミノ酸配列を含む、請求項196に記載の方法。
【請求項198】
前記SIM2ポリペプチドが、SEQ ID NO:5、6、7、8、9、または10のいずれか1つのアミノ酸配列を含む、請求項196に記載の方法。
【請求項199】
前記レベルにおける前記変化が増加である、請求項196に記載の方法。
【請求項200】
前記測定するステップが、2回以上にわたり行われ、かつ、測定値間の前記レベルの増加が、前記前立腺癌の診断指標である、請求項196に記載の方法。
【請求項201】
前記試料が、前記対象に由来する体液、細胞、または組織試料であり、ここで前記ERGまたはSIM2ポリペプチドが、正常に検出可能である、請求項196に記載の方法。
【請求項202】
前記体液が、尿、血液、血清、血漿、および脳脊髄液からなる群から選択される、請求項201に記載の方法。
【請求項203】
前記対象が、ヒトである、請求項196に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公表番号】特表2011−519866(P2011−519866A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−507652(P2011−507652)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際出願番号】PCT/US2009/042338
【国際公開番号】WO2009/135019
【国際公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(507316413)ベス イスラエル デアコネス メディカル センター (4)
【Fターム(参考)】