説明

剛直系複素環重合体、およびその製造方法

【課題】 新規な交互共重合体である重合体、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 下記式(1)および(2)
【化1】


(XはO、S、NHいずれかを表す。)
で表わされる繰り返し単位よりなる群から選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位からなり、0.5g/100mlの濃度のメタンスルホン酸溶液で25℃にて測定した還元粘度が0.05〜100dl/gである重合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な交互共重合体である剛直系複素環重合体、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2,6−(4,4‘−ジアミノ−ジフェニル)ベンゾ[1,2−d:4,5−d’]ビスチアゾールとピロメリット酸からなる交互共重合体についての報告(特許文献1)が、ベンゾビスチアゾールとポリイミド骨格からなる交互共重合体についての報告例としては、2,6−(4,4‘−ジアミノ−ジフェニル)ベンゾ[1,2−d:4,5−d’]ビスチアゾールとピロメリット酸からなる交互共重合体または2,6−(4,4‘−ジアミノ−ジフェニル)ベンゾ[1,2−d:4,5−d’]ビスオキサゾールとピロメリット酸からなる交互共重合体の繊維についての報告例(特許文献2)が、2,6−(4,4‘−ジアミノ−ジフェニル)ベンゾ[1,2−d:4,5−d’]ビスチアゾールとピロメリット酸からなる交互共重合体または2,6−(4,4‘−ジアミノ−ジフェニル)ベンゾ[1,2−d:4,5−d’]ビスオキサゾールとピロメリット酸からなる交互共重合体の一軸延伸フィルムについての報告例(特許文献3)がある。
しかしながらこれらの共重合体、およびこれらの成型体は分子間水素結合を有さないため圧縮強度等の改善に課題を残す。
【0003】
【特許文献1】特開昭63−256624号公報
【特許文献2】特開平3−260113号公報
【特許文献3】特開平4−64428号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、ともに剛直なユニット構造を有するピロメリットイミドとベンズビスアゾールとからなり分子間水素結合を有することが期待される交互共重合体、及びその製造を提供するものであり、本発明の交互共重合体より高い機械強度を有する成形体を提供するというものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち本発明は、下記式(1)および(2)
【化1】

(XはO、S、NHいずれかを表す。)
で表わされる繰り返し単位よりなる群から選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位からなり、0.5g/100mlの濃度のメタンスルホン酸溶液で25℃にて測定した還元粘度が0.05〜100dl/gである剛直系複素環高分子、およびその製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の剛直系複素環高分子から得られる成型体は、剛直な構造を有しながら水素結合による相互作用を有するため高い機械強度を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
<剛直系複素環重合体>
本発明の剛直系複素環重合体は、下記式(1)および(2)
【化2】

で表わされる繰り返し単位よりなる群から選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位からなる交互共重合ポリマーである。
【0008】
上記式(1)、(2)中、XはO、S、NHいずれかを表し、SあるいはOのいずれかひとつであることが好ましい。
【0009】
上記式(1)で表される繰り返し単位が下記式(1−1)
【化3】

で表わされることが好ましい。また上記式(2)で表される繰り返し単位が下記式(2−1)
【化4】

で表わされることが好ましい。とくに式(1−1)の繰り返し単位からなることが好ましい。
【0010】
本発明の重合体の還元粘度は0.5g/100mlの濃度のメタンスルホン酸溶液で25℃にて測定した値が0.05〜100dl/gの範囲のものである。還元粘度の好ましい範囲は1.0以上70以下、さらに好ましくは10以上50以下である。
【0011】
さらに本発明の重合体には、必要に応じて、各種の副次的添加物を加えていろいろな改質を行うことが出来る。副次的添加物の例としては、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、着色剤、各種フィラー、静電剤、離型剤、可塑剤、香料、抗菌・抗カビ剤、核形成剤、滑剤、難燃剤、発泡剤、充填剤等その他類似のものが挙げられる。
【0012】
このように本発明の重合体はともに剛直なユニット構造を有するピロメリットイミドとベンズビスアゾールとからなり、分子間水素結合を有し圧縮強度に優れていることが期待される。
【0013】
<重合体の製造方法>
以下に本発明の重合体の製造方法について詳述する。
【0014】
本発明の重合体は、下記式(A)
【化5】

で表わされる酸無水物と、下記式(B)および(C)
【化6】

(XはO、S、NHのいずれかを表す。)
で表わされるジアミンよりなる群から選ばれる少なくとも1種とを、下記数式(I)
0.8≦ a/(b+c) ≦1.2 (I)
(aは酸無水物(A)、bはジアミン(B)の、cはジアミン(C)の各モル数である。)
を同時に満足する割合で加熱反応させることにより好ましく製造することができる。
【0015】
また、上記式(B)および(C)中のXはO、S、NHのいずれからか選ばれ、好ましくはOまたはSである。
【0016】
すなわち、本発明の重合体を製造する際、好ましい化合物(B)として下記式(B−1)の2,6−(2,2‘−ジヒドロキシ、4,4‘−ジアミノ−ジフェニル)ベンゾ[1,2−d:4,5−d’]ビスチアゾールが好ましく挙げられる。
【化7】

【0017】
また好ましい(C)として、下記式(C−1)
【化8】

を挙げることが出来る。
【0018】
本発明の製造方法では、酸無水物(A)ジアミン(B)、(C)は、下記式(I)
0.8≦ a/(b+c) ≦1.2 (I)
(aは酸無水物(A)、bはジアミン(B)、cはジアミン(C)の各モル数である。)
を満足する含有モル当量比で反応させる必要がある。
【0019】
a/(b+c)が0.8より小さい場合、あるいは1.2より大きい場合は得られるポリマーの分子量の増加が期待されず好ましくない。
【0020】
ジアミン(B)が上記式(B−1)である場合、下記数式(II)
0.8≦ a/b ≦1.2 (II)
(aは酸無水物(A−1)、bはジアミン(B−1)の各モル数である。)
を同時に満足する割合で加熱反応させることが好ましい。
【0021】
本発明の方法では、上記式(A)で表わされる酸無水物、及び上記式(B)および(C)よりなる群から選ばれる少なくとも1種のジアミンとを、加熱反応させることで本発明の重合体を得ることができる。
【0022】
反応温度は、特に制限はないが、50℃以上500℃以下が好ましい。50℃より低いと反応性が低く好ましくない。500℃より高いと(A)の分解が起こるため好ましくない。より好適な反応温度は100℃以上400℃以下であり、さらに好ましくは150℃以上300℃以下である。
【0023】
反応に際しては、必要に応じて溶媒を用いることが出来る。好ましい溶媒としては1―メチル―2−ピロリドン、1―シクロヘキシル−2―ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジフェニルエーテル、ジフェニルスルホン、ジクロロメタン、クロロロホルム、テトラヒドロフラン、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、りん酸、ポリりん酸等を挙げることが出来るがこれに限定されるものではない。
また、この重合反応において使用する触媒は特に限定されるものではないが、一般に、カルボン酸の重合触媒、エステル交換触媒として用いられているものが使用可能であり、通常、その方が好ましい。適用な触媒としては、錫、亜鉛、鉛、チタン、ビスマス、ジルコニウム、ゲルマニウム、アンチモン、アルミニウム等の金属及びその誘導体が挙げられる。誘導体としては、金属アルコキシド、カルボン酸塩、炭酸塩、酸化物、ハロゲン化物が望ましい。具体的には、塩化錫、オクチル酸錫、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、塩化鉛、塩化チタン、アルコキシチタン、酸化ゲルマニウム、酸化ジルコニウム等が挙げられる。触媒の添加量は、酸無水物(A)とジアミン(B)、(C)と合計重量100重量部に対して、0.0001〜0.5重量部、好ましくは0.0005〜0.3重量部、更には0.001〜0.1重量部が好ましい。
【0024】
重合体の分解及び着色を防ぐため、反応は乾燥した不活性ガス雰囲気下で行うことが望ましい。
【実施例】
【0025】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらによっていささかも限定されるものではない。なお、以下の実施例における各測定値は次の方法により求めた値である。
(1)還元粘度:0.5g/100mlの濃度のメタンスルホン酸溶液で25℃にて測定した値である。
(2)ガラス転移温度(Tg):走査型示差熱量計(DSC)で10℃/minの昇温速度にて測定した値である。
(3)モノマー、重合体の構造:ジメチルスルホキシド−d6溶液の1H−NMR(核磁気共鳴)スペクトル、KBr錠剤法によるIR(赤外線)スペクトルにより決定した。なお、測定装置は1H−NMRスペクトル分析では、JNR−EX270を使用し、溶媒に重クロロホルムを用いて測定した。IR−スペクトル分析には、SHIMADZU IR−470を使用し、KBr錠剤法を採用した。
【0026】
[参考例1:2,6−(2,2’−ジヒドロキシ、4,4’−ジアミノ−ジフェニル)ベンゾ[1,2−d:4,5−d’]ビスチアゾールの合成]
2,5−ジアミノ−1,4−ベンゼンジチオール2塩酸塩6g(Mw=245.19、0.0245mol )をメタンスルホン酸32g及びP2O53.2gからなる均一溶媒に加えた。(加え終わった後約30分で塩酸の発生は終了。)70℃に昇温し4−アミノサリチル酸8.254g(Mw=153.14、0.0539mol)を加え30分保持10℃/時間で150℃まで昇温、150℃で10時間反応。反応後アンモニア水で生成物を抽出させ、水洗を繰り返した。粗生成物100gをジメチルイミダゾール500mlに80℃で溶解させ不溶分をろ過した。
【0027】
ろ液を室温で一昼夜放置し析出してきた針状結晶をろ過しメタノール洗浄し、80℃で真空乾燥することで上記式(B−1)で表される2,6−(2,2‘−ジヒドロキシ、4,4‘−ジアミノ−ジフェニル)ベンゾ[1,2−d:4,5−d’]ビスチアゾールを得た。
【0028】
[実施例1]
温度計・攪拌装置及び原料投入口を備えた反応容器に、窒素雰囲気下モレキュラーシーブスで脱水したN−メチル−2−ピロリドン(以下NMPと略す)800重量部をいれ、さらに参考例1で得られた2,6−(2,2‘−ジヒドロキシ、4,4‘−ジアミノ−ジフェニル)ベンゾ[1,2−d:4,5−d’]ビスチアゾール23.039重量部を加えた後に完全に溶解した後、氷浴下0℃まで冷却した。この冷却したジアミン溶液に無水ピロメリット酸12.363重量部を添加し反応せしめた。反応温度は25℃まで上昇し冷却した状態でさらに一時間反応させた。さらに室温下2時間反応させた後50℃に昇温し2時間反応させた。反応終了後窒素雰囲気下で濾過したのち脱泡し、ポリアミド酸溶液を得た。この溶液の対数粘度は1.5であり、最終的なポリマー濃度は4wt%となった。
【0029】
得られたポリアミック酸溶液をガラス板上にキャストしNMP/ピリジン/無水酢酸=50/15/35の溶液中に一昼夜浸漬した。得られたフィルムをトルエンで洗浄後、160℃で6分。400℃で6分加熱処理を行うことで金属光沢を有する結晶化したフィルムを得た。得られたフィルムの弾性率は8GPaであった。
図1にフィルムのX線回折パターンを示す。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施例1で得られたフィルムのX線回折パターン測定結果。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)および(2)
【化1】

(XはO、S、NHいずれかを表す。)
で表わされる繰り返し単位よりなる群から選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位からなり、0.5g/100mlの濃度のメタンスルホン酸溶液で25℃にて測定した還元粘度が0.05〜100dl/gである重合体。
【請求項2】
上記式(1)で表される繰り返し単位が下記式(1−1)
【化2】

で表わされる請求項1記載の重合体。
【請求項3】
下記式(A)
【化3】

で表わされる酸無水物と、下記式(B)および(C)
【化4】

(XはO、S、NHいずれかを表す。)
で表わされるジアミンよりなる群から選ばれる少なくとも1種とを、下記数式(I)
0.8≦ a/(b+c) ≦1.2 (I)
(aは酸無水物(A)、bはジアミン(B)、cはジアミン(C)の各モル数である。)
を同時に満足する割合で加熱反応させることによる請求項1に記載の重合体の製造方法。
【請求項4】
下記式(A)
【化5】

で表わされる酸無水物と、下記式(B−1)
【化6】

で表わされるジアミンとを、下記数式(II)
0.8≦ a/b ≦1.2 (II)
(aは酸無水物(A)、bはジアミン(B−1)の各モル数である。)
を同時に満足する割合で加熱反応させることによる請求項2に記載の重合体の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−249186(P2006−249186A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−65755(P2005−65755)
【出願日】平成17年3月9日(2005.3.9)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【Fターム(参考)】