説明

剥離基材用目止め剤、剥離基材および剥離基材の製造方法

【目的】粘度調整が容易にでき、かつシリコーン剥離剤の硬化性や密着性に悪影響を与えることがなく、しかも、剥離負荷が小さく且つ剥離負荷の経時的な変化も小さい剥離基材を製造しうる、新規な剥離基材用目止め剤を提供すること。
【解決手段】ビニル基含有活性エネルギー線硬化型樹脂(a)100重量部に対し、水を1〜60重量部含有する剥離基材用目止め剤を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離基材用目止め剤、剥離基材および剥離基材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
剥離基材と、プラスチックフィルムや紙等の基材上に、粘着物質に対して剥離性を有する剥離層を設けたものであり、シール、ラベル等の各種用途に広く用いられている。
【0003】
基材上に剥離層を形成させるための方法としては、従来、溶剤型のシリコーン剥離剤を塗工、乾燥させる方法が広く採用されていた。しかし、環境面・衛生面より、近年は、例えば、溶剤を使用しないカチオン重合型の活性エネルギー線硬化型シリコーン(以下、「カチオン重合性活性エネルギー線硬化型シリコーン」という。)を含有するシリコーン剥離剤が利用されてきている。
【0004】
当該シリコーン剥離剤は、大気中の酸素による硬化阻害を受けず、また、硬化後の剥離層の体積収縮が小さいため基材との密着性に優れる等の特徴を有する。しかし、基材中から基材表面に移行したシリコーン硬化阻害物質(例えばアミン系化合物)により硬化が不十分となり、基材との所望の密着性が得られない等の問題が生じる場合があった。
【0005】
このような問題を解決すべく、基材に目止め剤を塗工し、その上からカチオン重合性活性エネルギー線硬化型シリコーンを塗工する方法が考案されており、本願人も、特定の活性エネルギー線硬化型の目止め剤を用いて目止め層を形成させることにより、前記問題を解決する方法を提案している(特許文献1を参照)。しかし、近年、剥離基材の製造方法は多様化しており、塗工方式も多岐にわたる中で、目止め剤の粘性が塗工方式に対応できず、均一な塗工面を形成できないという問題が生じている。目止め剤の粘度を調整する方法としては、従来、低粘度の反応性モノマーを希釈剤として用いる方法が知られているが、目止め層の上に塗工するシリコーン剥離剤の硬化性や密着性の点で問題があった。
【0006】
【特許文献1】特開2002−240203号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、粘度調整が容易であって、しかもシリコーン剥離剤の硬化性や、剥離層との密着性に悪影響を与えることのない、新規な剥離基材用目止め剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意検討した結果、ビニル基含有活性エネルギー線硬化型樹脂に、カチオン重合性活性エネルギー線硬化型シリコーンの重合を阻害するとして従来使用が忌避されていた水を、特定量、希釈剤として配合してなる剥離基材用目止め剤によれば、前記課題を解決できることを見出した。
【0009】
すなわち本発明は、ビニル基含有活性エネルギー線硬化型樹脂(a)100重量部に対し、水を1〜60重量部含有する剥離基材用目止め剤;基材の少なくとも片面に、当該剥離基材用目止め剤を硬化させてなる目止め層(A)、およびカチオン重合性活性エネルギー線硬化型シリコーン組成物(b)を含有するシリコーン剥離剤を硬化させてなるシリコーン剥離層(B)が設けられた剥離基材;基材の少なくとも片面に、当該剥離基材用目止め剤を塗工し、ラジカル重合により硬化させて目止め層(A)を形成させた後、該目止め層(A)の上面にカチオン重合性活性エネルギー線硬化型シリコーン組成物(b)を塗工し、カチオン重合により硬化させてシリコーン剥離層(B)を形成させることを特徴とする、剥離基材の製造方法、に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の剥離基材用目止め剤は、粘度調整が容易であり、また、水を含むにも関わらず、シリコーン剥離剤の硬化性や、目止め層とシリコーン剥離層との密着性に悪影響をおよぼさない。また、当該剥離基材用目止め剤を用いて製造された剥離基材は、剥離負荷が小さく、しかも剥離負荷の経時的な変化も小さいという特徴を有する。そのため、当該剥離基材は、各種テープ(両面粘着テープ等)やシールの台紙等として好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の剥離基材用目止め剤(以下、単に目止め剤という)は、ビニル基含有活性エネルギー線硬化型樹脂(a)(以下、(a)成分という。)100重量部に対し、水を1〜60重量部程度、好ましくは3〜25重量部含有するものである。水が1重量部未満であると塗工性が劣り、また、60重量部を超えると目止め層の硬化性や、目止め層とシリコーン剥離層との密着性が不十分となる。
【0012】
水としては、特に限定されず、市水、軟水、硬水、イオン交換水、蒸留水等が使用できる。これらのなかでも、重合阻害作用が小さいことから、イオン交換水や蒸留水が好ましい。
【0013】
ビニル基含有活性エネルギー線硬化型樹脂(a)(以下、(a)成分という)としては特に限定されないが、具体的には、例えば、分子内にビニル基を少なくとも1個、および水酸基を少なくとも1個有する単量体(a−1)(以下、(a−1)成分という。)、および、必要に応じて、分子内にビニル基を少なくとも1個有し、かつ水酸基を有しない単量体(a−2)(以下、(a−2)成分という。)からなるものを用いることもできる。
【0014】
該(a−1)成分としては、例えば、各種公知のヒドロキシ(メタ)アクリレート類、エポキシ(メタ)アクリレート類、水酸基を有するウレタン(メタ)アクリレート類、および水酸基を有するポリエステルアクリレート類を用いることができる。
【0015】
該ヒドロキシ(メタ)アクリレート類としては、例えば、5官能ヒドロキシ(メタ)アクリレート〔ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート等〕、3官能ヒドロキシ(メタ)アクリレート〔ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等〕、2官能ヒドロキシ(メタ)アクリレート〔ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、エピクロロヒドリン変性1,6−ヘキサンジオールジアクリレート等〕、これらのうち対応するもののオリゴマーなどが挙げられ、これらは単独で、または複数種を組み合わせて使用できる。
【0016】
また、該エポキシ(メタ)アクリレート類としては、例えば、3官能エポキシ(メタ)アクリレート〔グリセリントリエポキシ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性グリセロールトリエポキシ(メタ)アクリレート等〕、2官能エポキシ(メタ)アクリレート〔ビスフェノールAジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸を反応させて得られるビスフェノールAエポキシ(メタ)アクリレート、グリセリンジエポキシ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジエポキシ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジエポキシ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジエポキシ(メタ)アクリレート等〕、1官能エポキシ(メタ)アクリレート〔ロジングリシジルエステルと(メタ)アクリル酸を反応させて得られるロジンエポキシアクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等〕、これらのうち、対応するもののオリゴマーなどが挙げられ、これらは単独で、または複数種を組み合わせて使用できる。
【0017】
該ウレタン(メタ)アクリレート類とは、前記ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート類、ポリイソシアネート類、および必要に応じてポリオール類を反応させることにより得られる、末端に(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマーをいう。該ポリイソシアネート類としては、具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、およびこれらの誘導体等が挙げられる。また該ポリオール類としては、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、トリメチロールプロパン、ポリオキシプロピレントリオール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0018】
該ポリエステル(メタ)アクリレート類とは、多塩基酸類および多価アルコール類を各種公知の手段で縮合反応させて得られる、末端に前記(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマーをいう。該多塩基酸類としてはマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シストラコン酸およびこれらの無水物等の不飽和多塩基酸や、必要に応じてフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘット酸、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、アゼライン酸、およびこれらのうち対応するものの無水物等の飽和多塩基酸などが挙げられる。また、該多価アルコール類としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、トリエチレングリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジヒドロキシペンタジエン、ペンタエリスリトール、グリセリン、ジグリセリン、ジトリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0019】
(a−1)成分の中でも、前記ヒドロキシ(メタ)アクリレート類および/またはエポキシ(メタ)アクリレート類を用いると、目止め層とシリコーン剥離層との密着性や、シリコーン剥離層の硬化性が良好になるため好ましい。
【0020】
(a−2)成分としては、(a−1)成分と共重合しうるものであれば特に限定されず、各種公知のものを使用できる。具体的には、例えば、1官能(メタ)アクリレート〔2−エチルヘキシルアクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルピロリドン、ラウリルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、モルホリンアクリルアミド、エチルカルビトールアクリレート、メチルトリグリコールアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート等〕、2官能(メタ)アクリレート〔ヘキサメチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4ーブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2,2’−ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ビスフェノールAテトラエチレングリコールジアクリレート等〕、3官能(メタ)アクリレート〔トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性グリセロールトリアクリレート、プロピレンオキシド変性グリセロールトリアクリレート、εカプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート等〕、4官能(メタ)アクリレート〔ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等〕などが挙げられ、これらは単独で、または複数種を組み合わせて使用できる。
【0021】
(a)成分における(a−1)成分および(a−2)成分の各含有量は特に限定されないが、目止め層とシリコーン剥離層との密着性の観点より、(a)成分100重量部中、(a−1)成分が通常75〜100重量部程度、および、(a−2)成分が通常0〜25重量部程度であるのがよい。
【0022】
本発明では、(a)成分の水酸基価(JIS K 1557)が、通常100〜500mgKOH/g程度、特に230〜350mgKOH/gであると、目止め層と基材との密着性や、目止め層とシリコーン剥離層との密着性を向上できるため好ましい。
【0023】
(a)成分の粘度は特に限定されないが、通常、25℃において7,000〜200,000mPa・s程度である。なお、当該粘度は、TV−20形粘度計(コーンプレートタイプ、製品名TVE−20H、東機産業株式会社製)で測定した値である(以下、同様)。
【0024】
該目止め剤には、前記(a)成分および水の他にも、(a)成分の重合反応をすみやかに開始させる目的で、各種公知の光重合開始剤を含有させてもよい。該光重合開始剤は特に限定されないが、例えば、ベンゾフェノン系光開始剤〔ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、o−ベンゾイル安息香酸メチルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸エステル、ベンゾイル安息香酸メチル、フェニルベンゾフェノン、トリメチルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン等〕、アセトフェノン系光開始剤〔フェノキシジクロロアセトフェノン、ブチルジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ヒドロキシメチルフェニルプロパンオン、イソプロピルフェニルヒドロキシメチルプロパンオン、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等〕、その他、アントラキノン、ベンジル、ベンジルメチルケタールなどが挙げられ、これらは単独で、または複数種を組み合わせて使用できる。
【0025】
なお、該目止め剤における光重合開始剤の含有量は特に限定されないが、(a)成分100重量部に対し、通常1〜30重量部程度の範囲である。
【0026】
また、該目止め剤には、必要に応じて各種公知の添加剤を配合できる。具体的には、例えば、重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、レベリング剤、顔料や、光開始剤の反応性を向上させるための光増感剤が挙げられ、これらは単独で、または複数種を組み合わせて使用できる。
【0027】
該目止め剤は、水を希釈剤として用いる点に特徴があるが、その希釈程度は特に限定されない。具体的には、例えば、(a)成分自体の25℃における粘度(mPa・s)に対して、希釈後の目止め剤(すなわち、(a)成分に水を所定量配合したもの)の25℃における粘度(mPa・s)が0.65倍程度以下となる範囲である。当該範囲とすることにより、当該目止め剤の基材への塗工性や、作業性が良好になる。
【0028】
なお、該目止め剤の粘度は特に限定されないが、塗工性の観点より、25℃における粘度が通常50〜5,000mPa・s程度、好ましくは500〜3,500mPa・sとなる範囲である。
【0029】
本発明の剥離基材は、基材の少なくとも片面に、該目止め剤を硬化させてなる目止め層(A)、および、カチオン重合性活性エネルギー線硬化型シリコーン組成物(b)(以下、(b)成分という)を含有するシリコーン剥離剤を硬化させてなるシリコーン剥離層(B)が設けられたものである。当該剥離基材が、例えば両面粘着テープ用途に供される場合には、基材の両面に目止め剤層(A)及び前記シリコーン剥離層(B)を有する態様をとる。
【0030】
基材としては、剥離基材用途に供しうるものであれば、特に限定されないが、目止め剤層(A)との密着性の観点より、各種公知のプラスチックフィルムまたは紙を用いるのが好ましい。該プラスチックフィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等のフィルムが挙げられる。なお、当該基材上には、印刷インキ層などが設けられていてもよい。なお、該プラスチックフィルムは、コロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理、易接着コート処理等の表面加工処理が施されていてもよい。また、該紙としては、例えばアート紙、キャストコート紙、フォーム用紙、PPC用紙、上質コート紙、クラフト紙、純白ロール紙等の成紙やポリエチレンラミネート紙、グラシン紙等の合成紙が挙げられる。
【0031】
該基材の厚さも特に制限されず、剥離基材を供する用途により適宜決定できる。例えば、該剥離基材を粘着シートに供する場合には、ロール状の形態とされることから、通常10〜100μm程度であるのが好ましい。
【0032】
該目止め層(A)の厚さは特に限定されないが、通常0.1〜20μm程度、好ましくは1〜5μmである。
【0033】
(b)成分は特に限定されず、各種公知のものを特に制限なく用いることができる。具体的には、例えば、分子内にエポキシ官能基を少なくとも2個有するポリオルガノシロキサン(b−1)(以下、(b−1)成分という。)、および、各種公知のカチオン発生開始剤(b−2)(以下(b−2)成分)からなるものが挙げられる。
【0034】
該(b−1)成分としては、(b−2)成分の存在下に開環カチオン重合するものであれば特に限定されず、各種公知のものを用いることができる。具体的には、例えば下記一般式(3)で示されるものが挙げられる。
【0035】
【化1】

(式中、Rは炭素数1〜10のアルキル基、Xはエポキシ基を有する官能基を表す)
【0036】
Rの種類は特に限定されないが、メチル基のものは入手容易であるため好ましい。また、Xは(b−2)成分によって開環カチオン重合が進行するものであれば特に限定されず、例えばγ−グリシジルオキシプロピル基、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、β−(4−メチル−3,4エポキシシクロヘキシル)プロピル基などが挙げられる。また、繰り返し単位数mは通常0〜2,800程度の整数、およびnは2〜600程度の整数であるのが好ましく、n/(m+n)=0.001〜0.5程度であるのが好ましい。なお、市販品としては、例えば、ローディア社製、商品名「シリコリース UV POLY200」が挙げられる。
【0037】
該(b−1)成分の粘度は特に限定されないが、シリコーン剥離剤の塗工性の観点より、25℃において通常5〜500,000mPa・s程度、好ましくは10〜10,000mPa・sとなる範囲である。
【0038】
(b−2)成分は特に限定されず、各種公知のものを使用できる。具体的には、例えば(R、ArN、(R、(Rはアルキル基および/またはアリール基を、Arはアリール基を、Xは[B(C]、[B(C]、[B(CCF]、[(CBF]、[CBF]、[B(C]、BF、PF、AsF、SbF、SbCl、HSO、またはClO等を示す)で表される化合物が挙げられる。これらのなかでも、反応性が高いことから(Rで表される化合物が好ましい。なお、市販品としては、例えばローディア社製、商品名「シリコリース UV CATA211」が挙げられる。
【0039】
(b)成分における(b−1)成分および(b−2)成分の各含有量は特に限定されないが、シリコーン剥離層(B)の硬化性を考慮して、(b−1)成分100重量部に対して、(b−2)成分が通常0.01〜10重量部程度、好ましくは0.2〜2重量部となる範囲である。
【0040】
なお、該シリコーン剥離剤には、前記添加剤を含有させることができる。例えば、前記光増感剤として、チオキサントン、2−クロルチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系光増感剤を、(b−2)成分100重量部に対して、通常0〜5重量部程度含有させることができる。
【0041】
また、シリコーン剥離剤には、必要に応じて、各種公知の希釈溶剤を含有させてもよい。具体的には、例えば、エステル系溶剤〔酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、ぎ酸エチル、プロピオン酸ブチル、メトキシプロピルアセテート等〕、アルコール系溶剤〔メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、2−エチルヘキサノール、エチレングリコール、メトキシプロパノール等〕、ケトン系溶剤〔セトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等〕、エーテル系溶剤〔ジオキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等〕、セロソルブ系溶剤〔セロソルブアセテート、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等〕、芳香族炭化水素系溶剤〔トルエン、キシレン、ソルベッソ#100(商品名、エクソン社製)、ソルベッソ#150(商品名、エクソン社製)等〕、脂肪族炭化水素系溶剤〔ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等〕が挙げられ、これらは単独で、または複数種を組み合わせて使用できる。これらの中でも、シリコーン剥離層(B)の乾燥性の観点より、酢酸エチル、低級アルコール、アセトン、およびメチルエチルケトンが好ましい。
【0042】
該シリコーン剥離剤の粘度は、希釈溶剤の有無や塗工方式にもよるため特に限定されないが、一般的には、25℃において50〜200,000mPa・s程度である。
【0043】
また、シリコーン剥離層(B)の厚さも特に限定されないが、通常0.05〜10μm程度、好ましくは0.1〜2.5μmである。
【0044】
該剥離基材は、基材の少なくとも片面に、本発明に係る目止め剤を塗工し、ラジカル重合により硬化させて目止め層(A)を形成させた後、該目止め層(A)の上面に前記シリコーン剥離剤を塗工し、カチオン重合により硬化させてシリコーン剥離層(B)を形成させることにより製造できる。
【0045】
目止め剤およびシリコーン剥離剤を塗工する手段は特に限定されず、例えばロールコーター、メイヤーバー、ワイヤーバー、ブレードコーター、エアナイフコーター等が挙げられる。
【0046】
目止め剤をラジカル重合により硬化させる手段、および、シリコーン剥離剤をカチオン重合により硬化させる手段しては、例えば、紫外線または電子線を照射する方法が挙げられる。なお、目止め層(A)はタックがないようにする必要がある。
【0047】
硬化の際に用いられる紫外線の光源は特に限定されず、例えば水銀アーク灯、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ等の各種公知のものを例示できる。また、光源の出力は通常80W/cm以上が好ましく、紫外線の照射光量としては、5mJ/cm以上が好ましい。
【0048】
電子線照射に用いられる電子線の加速器は特に限定されず、例えばエレクトロカーテンシステム、スキャンニングタイプ等の各種公知のものを例示できる。なお、加速電圧は100〜1000kV程度である。
【実施例】
【0049】
以下、実施例および比較例をあげて本発明を具体的に説明する。なお、各例中、部および%は特記ない限り重量基準である。粘度は、TV−20形粘度計、コーンプレートタイプ、型番「TVE−20H」、東機産業株式会社製を用いて25℃の粘度を測定した値である。
【0050】
実施例1
攪拌機、温度計、および冷却管を備えた200ml容のフラスコに、遮光下に、(a−1)成分としての、グリセリンジエポキシアクリレート(水酸基価483mgKOH/g)80重量部及びロジンエポキシアクリレート(水酸基価131mgKOH/g)(荒川化学工業株式会社製、商品名「ビームセット101」)20重量部からなる混合物(水酸基価413mgKOH/g、粘度25,000mPa・s/25℃)、ならびに、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名「イルガキュアー184」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)10重量部を仕込み、攪拌しながら50〜60℃まで加温し、次いで水を5重量部添加し、30分間攪拌混合した。その後、室温まで冷却して、紫外線硬化性の目止め剤を得た。
【0051】
実施例2〜9、比較例1〜4
(a)成分の種及び重量部、ならびに水の重量部を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にして、紫外線硬化性の目止め剤を得た。
【0052】
【表1】

【0053】
表1中、各記号は以下の通りである。
GDEA:グリセリンジエポキシアクリレート
RoA:ロジンエポキシアクリレート(荒川化学工業株式会社製、商品名「ビームセット101」)
HDEA:ヘキサンジオールエポキシアクリレート
BAA:ビスフェノールAエポキシアクリレート
HEGDA:ヘキサエチレングリコールジアクリレート
PGEA(n=1):プロピレングリコールエポキシアクリレート(プロピレンオキシドユニットの繰り返し単位数nは1)
PGEA(n=11):プロピレングリコールエポキシアクリレート(プロピレンオキシドユニットの繰り返し単位数nは11)
V:(a)成分としての水酸基価(mgKOH/g)
Vn:(a−1)成分自体の水酸基価(mgKOH/g)
(w):重量部
【0054】
(試験1:目止め層の硬化性、および基材に対する密着性)
基材としてポリプロピレンを主原料に用いた合成紙(商品名「ユポSGS80」、王子油化合成紙株式会社製)を用い、この片面に、実施例1の目止め剤を、硬化後の膜厚が2μmとなるように、市販の塗工機(商品名「RI−2型印刷適性試験機」、石川島産業機械株式会社製)を用いて塗工したところ、均一な塗工面が得られた。
【0055】
実施例1〜9、比較例3、および比較例4の目止め剤についても、同様の方法で塗工したところ、均一な塗工面が得られた。
【0056】
なお、比較例1および2の目止め剤についても、同様の方法で塗工したが、均一な塗工面が得られなかった。そのため、比較例1および2の目止め剤の目止め剤を用いた各基材は、以下の操作および試験に供さなかった。
【0057】
次に、市販の紫外線照射装置(商品名:「出力可変型UVコンベアシステム、CV110Q−E」、フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社製、光源ユニット:I600、Hバルブ、240W/cm、ランプ出力55%、基材表面からのランプの高さ:53mm、
ベルト速度:60m/分、照射線量:商品名「EYE UV METER、ヘッドセンサー部 PD−254、アイグラフィクス株式会社製」;10mJ/cm)を用いて、目止め層を形成することにより、各試験用試料を得た。
【0058】
各試験用試料について、以下の基準で評価を行った。結果を表1に示す。
<硬化性:目止め層のタックを指触で評価>
○・・・タックがなく、硬化性が十分である。
×・・・タックが強く、硬化性が不十分である。
【0059】
<密着性:目止め層表面を指で強く5往復擦った時の塗膜の脱落を評価>
○・・・脱落が無く、密着性が十分である。
×・・・脱落が有り、密着性が不十分である。
【0060】
なお、表2に示すように、比較例3の目止め剤を用いた基材は、目止め層の硬化性と密着性がいずれも不十分であったため、以下の操作および試験に供さなかった。
【0061】
(試験2:剥離基材の作製)
まず、(b−1)成分としての「シリコリース UV POLY200」(商品名、ローディア社製)100重量部に、(b−2)成分としての「シリコリース UV CATA211」(商品名、オニウム系光開始剤、ローディア社製)5重量部を配合し、よく攪拌混合することにより、カチオン性紫外線硬化型シリコーン剥離剤を調製した。次いで、試験1で得た各試験用試料の目止め層面に、当該剥離剤を硬化後の膜厚が1μmとなるように、試験1の塗工機を用いて塗工した。次いで、試験1の紫外線照射機を用い、試験1と同様の条件において、塗工面に紫外線を照射することにより、目止め剤層およびシリコーン剥離層を有する剥離基材を得た。
【0062】
また、試験1で用いた前記基材の上に、直接前記カチオン性紫外線硬化型シリコーン剥離剤を塗工し、試験1と同様の条件において、当該剥離剤の塗工面に紫外線を照射することにより、シリコーン剥離層のみを有する剥離基材を得た。
【0063】
得られた剥離基材を、以下の試験に供した。
【0064】
<硬化性:指でシリコーン剥離層表面を軽く擦った後の表面状態を目視評価>
○・・・擦った跡が残らず、硬化が十分である。
×・・・擦った跡が残り、硬化が不十分である。
【0065】
<密着性:指でシリコーン剥離層表面を強く5往復擦った時の脱落を評価>
○・・・脱落が無く、密着性が十分である。
×・・・脱落が有り、密着性が不十分である。
【0066】
(試験3:剥離性能の評価)
試験2で作製した各剥離基材のシリコーン剥離層に、両面粘着テープ(商品名「NO.502テープ」、日東電工株式会社製)の黄色剥離紙を剥がした面を貼り合わせ、25℃で20g/cmの荷重を加えた。
次いで、1日後、および7日後において、引張り試験機(商品名「テンシロンUCT−500」、株式会社オリエンテック製、剥離角度180°、剥離速度0.3m/分)を用いて引き剥がし試験を行い、剥離に要した力(g/50mm)を測定した。結果を表2に示す。
【0067】
【表2】






【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニル基含有活性エネルギー線硬化型樹脂(a)100重量部に対し、水を1〜60重量部含有する剥離基材用目止め剤。
【請求項2】
ビニル基含有活性エネルギー線硬化型樹脂(a)が、分子内にビニル基を少なくとも1個、および水酸基を少なくとも1個有する単量体(a−1)、ならびに必要に応じて、分子内にビニル基を少なくとも1個有し、かつ水酸基を有しない単量体(a−2)からなるものである、請求項1に記載の剥離基材用目止め剤。
【請求項3】
ビニル基含有活性エネルギー線硬化型樹脂(a)100重量部中、(a−1)成分の含有量が75〜100重量部、および(a−2)成分の含有量が0〜25重量部であることを特徴とする、請求項1または2に記載の剥離基材用目止め剤。
【請求項4】
ビニル基含有活性エネルギー線硬化型樹脂(a)の水酸基価が100〜500mgKOH/gである、請求項1〜3のいずれかに記載の剥離基材用目止め剤。
【請求項5】
さらに光重合開始剤を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の剥離基材用目止め剤。
【請求項6】
25℃における粘度(mPa・s)が、ビニル基含有活性エネルギー線硬化型樹脂(a)自体の25℃における粘度(mPa・s)に対して0.65倍以下であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の剥離基材用目止め剤。
【請求項7】
25℃における粘度が3〜5,000mPa・sである、請求項1〜6のいずれかに記載の剥離基材用目止め剤。
【請求項8】
基材の少なくとも片面に、請求項1〜7のいずれかに記載の剥離基材用目止め剤を硬化させてなる目止め層(A)、およびカチオン重合性活性エネルギー線硬化型シリコーン組成物(b)を含有するシリコーン剥離剤を硬化させてなるシリコーン剥離層(B)が設けられた剥離基材。
【請求項9】
基材が、プラスチックフィルムまたは紙である、請求項8に記載の剥離基材。
【請求項10】
基材の少なくとも片面に、請求項1〜7のいずれかに記載の剥離基材用目止め剤を塗工し、ラジカル重合により硬化させて目止め層(A)を形成させた後、該目止め層(A)の上面にカチオン重合性活性エネルギー線硬化型シリコーン組成物(b)を含有するシリコーン剥離剤を塗工し、カチオン重合により硬化させてシリコーン剥離層(B)を形成させることを特徴とする、剥離基材の製造方法。

【公開番号】特開2008−239984(P2008−239984A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−48466(P2008−48466)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(000168414)荒川化学工業株式会社 (301)
【Fターム(参考)】