説明

割出しテーブル装置

【課題】テーブルの荷重を片持ち支持する部分をなくして、テーブル剛性を高めることにより、大型のワークを載せたことによるテーブルの変形をなく、精密な加工を可能にできるようにする。
【解決手段】ワークを載置し、支持軸16によって水平に支持され、下方に突き出る外周部30が形成され、この外周部30の下面に摺動面31が形成されたテーブル12と、テーブル12の外周部の摺動面31が摺動する支持面34が形成された支持部32を有し、支持軸16が中央部に垂直に固定されたテーブルベース14と、からなり、テーブルベース14の中央部に垂直に支持軸16を固定し、支持軸16の上端部にテーブル12のラジアル荷重およびスラスト荷重を支持する軸受20を設け、テーブル12の外周部の内側に形成された被クランプ部46に係合するクランプ軸52を有するクランプ装置40を配置するとともに、クランプ装置40よりもよりもさらに内側でテーブル本体に固定された大リング歯車26を有するテーブル駆動装置を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械の割出しテーブル装置に係り、特に、大型ワークを加工するテーブルであってもテーブル剛性を高められるようにした割出しテーブル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械では、ワークを割り出す機能をもったテーブルが利用されている。この種の割出しテーブルには、軸受で支持し、テーブルの外周部にウォームホイールを形成し、ウォームホイールに噛み合うウォームで駆動するテーブルが知られている(特許文献1)。従来の割出しテーブルでは、テーブルの摺動面は、機械本体の支持面に接触した状態で回転し、割り出した後は、クランプ手段で固定される。
【0003】
従来の割出しテーブルでは、図4に示されるように、テーブル110が回転すると、その摺動面110aが機械本体の支持面111aを摺動し、テーブル110に載置されるワークの荷重は、支持面111aで支持されることになる。このとき、テーブル110の外周部にはウォームホイール113が設けられていることから、支持面111aの外側にあるテーブル110の外周部は、支持面111aによって片持ち支持されている構造になっている。言い換えると、支持面111aの外径よりも外側に張り出したテーブル外周部のワークの荷重は、直接支えられていないため、このワークの荷重を片持ち支持することによってテーブル110に変形が生じることになる。
【特許文献1】特開昭63−127843号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような構造の割出しテーブルでは、比較的小型のテーブルであれば、片持ち支持による変形を小さくするためにテーブルを厚くすることで剛性を高めるなどの対策を施すことが容易である。
【0005】
ところが、大型ワークの精密加工に用いる割出しテーブルでは、テーブルの大きさと同程度の大きさのワークを加工する場合があり、ワーク支持部(ワークの荷重がテーブルにかかる部分)がテーブル外周部である片持ち支持部に存在し、ワーク支持部がテーブルの外側になるほど、テーブルの変形による誤差が大きくなることから、大型ワークの精密加工で問題が顕在化する。
【0006】
近年、制御技術の進歩により、大型ワークを超精密加工できる工作機械が開発され、それに伴って、割出しテーブルの大型化が進んでいる。このような大型割出しテーブルでは、テーブルの厚さを増すなどの剛性の強化により対処しようとすると、テーブルの著しい重量増加によって、テーブルの回転駆動系において、モータの容量増強、動力伝動機構の強度向上も必然的に要求されることになる。このため、テーブル装置全体が必要以上に大型化するという問題があった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、前記従来技術の有する問題点を解消し、テーブルの荷重を片持ち支持する部分をなくして、テーブル剛性を高めることにより、大型のワークを載せたことによるテーブル変形を少なくし、精密な加工を可能にできるようにした割出しテーブル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、本発明による割出しテーブル装置は、ワークを載置し、支持軸によって水平に支持され、下方に突き出る外周部が形成され、前記外周部の下面に摺動面が形成されたテーブルと、前記テーブルの外周部の摺動面が摺動する支持面が形成された支持部を有し、前記支持軸が中央部に垂直に固定されたテーブルベースと、前記支持軸の上端部に取り付けられ、前記テーブルのラジアル荷重およびスラスト荷重を支持する軸受と、 前記テーブルの外周部の内側に形成された被クランプ部に係合するクランプ軸を有し、前記支持面の内側の位置で周方向に複数配設されたクランプ装置と、前記クランプ装置よりもさらに内側でテーブル本体に固定された大リング歯車を有するテーブル駆動装置と、
を備えたことを特徴とするものである。
【0009】
本発明では、前記クランプ装置は、前記クランプ軸に結合されるピストンと、ピストンが上下に移動可能に収容される環状シリンダ室を形成し、前記支持部の下面に固定されるシリンダと、アンクランプするときに、前記クランプ軸を押し上げる付勢部材と、から構成される。
【0010】
さらに、本発明では、前記テーブルの上部は、ワークを載置する上面を含むテーブルの上部は、直方体にすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、テーブルの荷重を片持ち支持する部分をなくして、テーブル剛性を高めることにより、大型のワークを載せたことによるテーブルの変形を少なくし、精密な加工が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明による割出しテーブル装置の一実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態による割出しテーブル装置の要部を示す断面図である。この図1において、参照番号10は割出しテーブル装置の全体を示す。この割出しテーブル装置は、横中ぐりフライス盤に設置される割出しテーブルに適用される実施形態である。
【0013】
割出しテーブル装置10は、加工対象のワークが載置されるテーブル12と、テーブルベース14を含む。
テーブルベース14の中央部には、支持軸16が垂直に挿入されている。この支持軸16はボルト17によりテーブルベース14に固定されている。テーブル12の中心部には、軸穴18が形成されている。テーブル12は、水平な姿勢で支持軸16の上端部で軸受20を介して回転可能に支持されている。この場合、軸穴18は段付きの穴になっていて、テーブル12を支持する軸受20は、下段の内径の小さい方の穴に挿着されている。支持軸16の上端には、軸受ナット21が螺合し、カラー22を介して軸受20の内周部は固定され、軸受20の外周部は軸受押え23により固定されている。
【0014】
この割出しテーブル装置10では、軸受20は、テーブル12のラジアル荷重を受けて回転軸の芯を精度良く確保するとともに、回転するときにスラスト荷重を支えることができるように、この実施形態では円すいコロ軸受が用いられている。軸受20には、アンギュラ球軸受とスラストコロ軸受との組み合わせを用いてもよい。なお、参照番号24は、軸穴18を塞ぐための蓋を示している。
【0015】
次に、テーブル12を駆動する機構について説明する。図1において、参照番号26は、大リング平歯車を示す。テーブル12の下面には、一段盛り上がった円環部分25が形成され、ここに大リング平歯車26が固定されている。この大リング平歯車26には、小平歯車27が噛み合っている。この小平歯車27は、図示しないサーボモータによって駆動される。以上のようなテーブル駆動装置は、次に説明するテーブル12の外周部30よりも内側に配置されている。
【0016】
そこで、テーブル12の外周部30について説明する。図1において、テーブル12の外周部には下方に突き出るようにして円環状の外周部30が形成されている。この外周部30のテーブルベース14側の端面は、水平な摺動面31になっている。
【0017】
これに対して、テーブルベース14の方では、外周部30の水平な摺動面31に対向する面は、中心部に較べて一段高くなった支持部32の上面に形成され、テーブル12を支持する支持面33になっている。割り出すためにテーブル12を回転させるときには、摺動面31がテーブルベース14の支持面33を摺動しながら回転することができる。好ましくは、図1に示されるように、支持面33には摺動面31の全域に油が行き渡るように複数条の油溝34が周方向に形成されている。この油溝34には、図示しない潤滑装置により油通路35を通して潤滑油が供給される。なお、油溝34については、摺動面31の方に形成してもよい。テーブル12とテーブルベース14との境目を覆うように、外周全体にわたってカバー36が取り付けられている。このカバー36によって、摺動面31に切り屑などの異物の侵入を防止している。
【0018】
次に、テーブル12を割り出した後で、テーブル12をテーブルベース14に対して固定するクランプ装置40について説明する。
このクランプ装置40は、クランプ軸42とピストン44を主要な構成要素としている。クランプ軸42は、軸部と、この軸部の上部に形成された頭部42aと、軸部の下部に形成されたねじ部51と、ねじ部51の下端に形成されたバネ受け部54からなる。テーブル12の外周部30の内側に張り出すように形成された被クランプ部46には、クランプ軸42の頭部42aが係合し、これによりテーブル12は固定される。なお、テーブル12は回転するため、クランプ軸42との緩衝を避けるため、被クランプ部46の内周46aは同一半径である。この実施形態では、クランプ装置40は、テーブル12の外周部30の内側において同一円周上で一定の間隔をあけて複数配置されている。
【0019】
図2に示すように、テーブルベース14の支持部32には、同一円周上で一定の間隔をあけて複数の貫通穴47が形成されており、クランプ軸42の軸部は、貫通穴47に挿入されている。支持部32の下面では、貫通穴47の周囲にボス部48が形成されている。このボス部48には、テーブル12をクランプするクランプ力を発生するクランプシリンダ49が固定されている。このクランプシリンダ49には、環状のピストン室50が形成されるとともに、ピストン44が摺動自在に収容されている。クランプ軸42の軸部はピストン44と係合されている。なお、クランプ軸42の下端は、ねじ部51になっており、このねじ部51にナット52を締結することにより、ピストン44の下限位置を規制している。
【0020】
環状のピストン室50には、供給口53から図示しない圧油装置により圧油が供給されるようになっている。ピストン室50に供給された圧油によって、ピストン44は下方に動き、これによりクランプ軸42の頭部42aで被クランプ部46を大きな力でクランプすることができる。
【0021】
他方、アンクランプするときには、ピストン室50を大気に開放することにより行う。この実施形態では、クランプ軸42の下端にあるバネ受け部54でガイド55に収納されたバネ56の弾性力を受け、このバネ56の弾性力でクランプ軸42を押し上げるようになっている。なお、図2において、参照番号58は、クランプ軸42のクランプ圧力を均一に調整する調整ブロックを示す。調整ブロック58は支持部32の上面にボルト等により固定されている。
【0022】
本実施形態による割出しテーブル装置10は、以上のように構成されるものであり、次に、その作用並びに効果について説明する。
テーブル12を割り出す動作前のアンクランプ動作について説明する。
【0023】
テーブル12を回転可能な状態にするために、クランプ装置40のピストン室50への圧油の供給を停止するとともに大気に開放する。これは、圧油供給ラインとベントラインを切り替える図示しない電磁弁を操作することにより行われる。ピストン室50の減圧により、ピストン44はバネ56の弾性力で押し上げられ、ピストン室50の上下方向の隙間が無くなるまで上昇する。このピストン44の上昇により、クランプ軸42が上昇しそれまで被クランプ部46を押さえ付けていたクランプ軸42の頭部42aが被クランプ部46のクランプ面46bから離れるのでクランプ状態が解除される。また、油溝34を通じてテーブル12の摺動面31には、満遍なく油を供給しておく。以上でテーブル12は、回転可能な状態になる。本実施形態では、テーブル12の荷重は、中央の支持軸16で軸受20を介して支持されており、被クランプ部46のクランプ面46bには、クランプ力がかからないため、アンクランプの状態でテーブル12の摺動面31が油を介して支持面34に接触した状態で回転できる状態になる。なお、アンクランプすると、バネ56はなくても、アンクランプの状態になりテーブル12は回せる状態になる。
【0024】
次に、割出し動作について説明する。
図示しないサーボモータが起動して、小平歯車27が回転し、大リング平歯車26に動力を伝動する。大リング平歯車26はテーブル12に固定されており、大リング平歯車26と一体でテーブル12が回る。テーブル12の回転角度は、図示しないエンコーダによって検出され、所定角度回転したら、サーボモータの回転は停止される。テーブル12が停止したところで、油溝33への潤滑油の供給は停止される。
【0025】
次いで、クランプ装置40が作動する。クランプシリンダ49のピストン室50に圧油が供給されると、圧油の圧力でピストン44が押し下げられる。これにより、クランプ軸42の頭部42aは、テーブル12の外周部30の内側にある被クランプ部46をテーブルベース14に対して押し付けて拘束する。このとき、調整ブロック58を利用して、クランプ軸42の傾きを防ぎ、頭部42aを被クランプ部46に均一な圧力で接触させることができる。以後、割り出された位置で、ワークの加工が行われる。
【0026】
本実施形態による割出しテーブル装置の構造には次のような特徴がある。
【0027】
第1に、テーブル12には片持ち支持される構造がないために、テーブル剛性の高い剛構造とすることができる。
【0028】
すなわち、テーブル12の中央部では、スラスト荷重も受けられるようにした軸受20を配置し、テーブル12の一番外側に摺動面31を配置し、クランプ装置40を摺動面31の内側に配置している。その上で、動力を伝動する大リング平歯車26をテーブル12の下部であってクランプ装置40の配置される円周上よりも内側に配置している。
【0029】
このような配置にすることにより、片持ち支持の構造部分をテーブル12から完全になくすことができるため、図4に示した従来のテーブルのように、摺動面10aの外側に必然的に片持ち部分ができるテーブル構造と異なり、テーブル剛性の高い剛構造となる。
【0030】
第2に、本実施形態によれば、大型のワークの加工に対応するためのテーブルの大型化に適合する構造になる。
【0031】
すなわち、大型のワークに対応できるように、テーブル12を大きく、つまり直径の大きなテーブル12にしても、上記したように片持ち支持の構造がないことにはかわりはない。このため、テーブル12を剛性確保のため厚くしたりする必要がなく、テーブルの厚さの比較的薄いテーブルで大型のワークの載せるようにしても、加工精度の維持に必要な剛性を確保することができる。
【0032】
なお、テーブル12の形状は、円柱体または正方体でもよく、あるいはテーブル12の上側だけを図3に示すように、直方体のワークを載置するために、例えば幅Aが1300mm以上の直方体にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態による割出しテーブル装置の要部を示す断面図。
【図2】同割出しテーブル装置のクランプ装置の断面図。
【図3】本発明による割出しテーブル装置のテーブルの構成例を示す平面図。
【図4】従来の割出しテーブル装置における片持ち支持構造を示す断面図。
【符号の説明】
【0034】
10 割出しテーブル装置
12 テーブル
14 テーブルベース
16 支持軸
20 軸受
26 大リング平歯車
27 小平歯車
30 外周部
31 摺動面
34 油溝
36 カバー
40 クランプ装置
42 クランプ軸
44 ピストン
49 クランプシリンダ
50 ピストン室
56 バネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを載置し、支持軸によって水平に支持され、下方に突き出る外周部が形成され、前記外周部の下面に摺動面が形成されたテーブルと、
前記テーブルの外周部の摺動面が摺動する支持面が形成された支持部を有し、前記支持軸が中央部に垂直に固定されたテーブルベースと、
前記支持軸の上端部に取り付けられ、前記テーブルのラジアル荷重およびスラスト荷重を支持する軸受と、
前記テーブルの外周部の内側に形成された被クランプ部に係合するクランプ軸を有し、前記支持面の内側の位置で周方向に複数配設されたクランプ装置と、
前記クランプ装置よりもさらに内側でテーブル本体に固定された大リング歯車を有するテーブル駆動装置と、
を備えたことを特徴とする割出しテーブル装置。
【請求項2】
前記クランプ装置は、
前記クランプ軸に結合されるピストンと、
ピストンが上下に移動可能に収容される環状シリンダ室を形成し、前記支持部の下面に固定されるシリンダと、
アンクランプするときに、前記クランプ軸を押し上げる付勢部材と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の割出しテーブル装置。
【請求項3】
前記クランプ装置には、前記クランプ軸の頭部の下面と当接し、前記クランプ軸の頭部のクランプ圧力を均一に調整する調整ブロックが配設されたことを特徴とする請求項2に記載の割出しテーブル装置。
【請求項4】
前記摺動面または支持面には、油溝が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の割出しテーブル装置。
【請求項5】
前記テーブルとテーブルベースとの間で摺動面と支持面の境目を覆うように、外周全体にわたってカバーが設けられたことを特徴とする請求項4に記載の割出しテーブル装置。
【請求項6】
前記軸受は、円すいころ軸受からなることを特徴とする請求項1に記載の割出しテーブル装置。
【請求項7】
ワークを載置する上面を含むテーブルの上部は、直方体であることを特徴とする請求項1に記載の割出しテーブル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−248230(P2009−248230A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−97887(P2008−97887)
【出願日】平成20年4月4日(2008.4.4)
【出願人】(000003458)東芝機械株式会社 (843)
【Fターム(参考)】