説明

創傷治癒を促進するための薬剤組成物及び方法

【課題】皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は加速するための方法及び薬剤組成物を記述する。
【解決手段】この方法は、皮膚創傷に治療上有効量のアディポカイン、脂肪細胞モジュレーター、脂肪細胞、脂肪細胞に分化することができる細胞、又はアディポカインを分泌することができる細胞を投与し、それによって皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は加速するステップを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、創傷治癒プロセスを促進するための方法及び薬剤組成物に関する。特に、本発明は、皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進するための、脂肪細胞によって分泌される生物活性分子(アディポカイン)並びに脂肪細胞の分化、増殖及び/又は活性を制御する生物活性分子を利用する。
【背景技術】
【0002】
創傷治療における第一の目標は、創傷の閉鎖を実現することである。開放皮膚創傷は、創傷の主要な一カテゴリーを表し、熱傷創、神経障害性潰瘍、褥瘡、静脈性うっ血性潰瘍、及び糖尿病性潰瘍が含まれる。
【0003】
開放皮膚創傷は、通常6つの主要な構成要素、すなわち(i)炎症、(ii)線維芽細胞増殖、(iii)血管増殖、(iv)結合組織合成、(v)上皮化、及び(vi)創傷収縮を含むプロセスによって治癒する。これらの構成要素が個別に又は全体として適切に機能しない場合に、創傷治癒が損なわれる。栄養不良、感染、薬剤(例えば、アクチノマイシン及びステロイド)、高齢及び糖尿病を含む多数の要因が、創傷治癒に影響を与える恐れがある[Hunt、及びGoodson、Current Surgical Diagnosis & Treatment、(Way;Appleton & Lange)、86〜98頁(1988年)を参照のこと]。身体の様々な部分における外科手技後の創傷治癒について、外科手術は成功するものの開放創傷が治癒しないという一般的な問題も存在する。
【0004】
皮膚は、成長及び分化する細胞が厳密に区画化されている重層扁平上皮である。生理的状態では、増殖は、基底膜に接着している基底細胞に限られている。分化は、基底細胞が基底膜への接着を維持できなくなり、DNA合成を止め、一連の形態的及び生化学的変化を経る空間的プロセスである。最終的な成熟ステップは、皮膚の保護バリアを形成する角質層の生成である(1、2)。基底細胞が分化にかかわる際の最も初期の変化は、基底細胞が基底膜から脱着し遊走する能力に関連する(3)。同様の変化は、細胞が創傷領域に遊走し、且つ増殖能が向上する創傷治癒プロセスに関連するものである。これらのプロセスは、皮膚層の再構築及び表皮層の適切な分化の誘導にとって必須である。
【0005】
表皮細胞の成長、分化及び遊走を制御する機序の分析は、マウス及びヒトケラチノサイト用の培養系の開発によって非常に容易になってきた(2、4)。ケラチノサイトをin vitroで成長速度の高い基底増殖性細胞として維持することができる。さらに、分化を、in vivoでの表皮の成熟様式に従ってin vitroで誘導することができる。初期の事象には、半接着斑成分の損失(3、5)、及びα6β4インテグリンの選択的損失、及び基質タンパク質への細胞付着が含まれる。これは、インテグリン発現の変化がケラチノサイト分化の初期の事象であることを示唆している。初期における半接着斑接触の損失は、ケラチノサイトの基底上部遊走を招き、培養ケラチノサイト及び皮膚におけるケラチン1(K1)の誘導に関連付けられる(1、3、6)。顆粒層表現型へのさらなる分化は、β1とβ4インテグリン発現の下方制御、基質タンパク質すべてへの接着能力の損失を伴い、その後にコーニファイドエンベロープ形成及び細胞死が続く。分化細胞は、最終的に培養皿から成熟した扁平細胞として離脱する(2、7)。このin vitroでの分化プログラムは、in vivoでの表皮の成熟様式に厳密に従う。
【0006】
創傷治癒は、表皮細胞の成長、分化、及び/又は遊走を直接的又は間接的に促進する様々な生物活性剤によってin vivoで誘導することができる。したがって、米国特許第5,591,709号及び第5,461,030号は、創傷の閉鎖を誘導するための、インスリン、成長ホルモン、トリヨードチロニン、チロキシンなど非ステロイド系のアナボリックホルモンの使用を記述している。米国特許第5,145,679号は、創傷の閉鎖を誘導するための、インスリン及びパンクレアチンの使用を記述している。米国特許第6,541,447号は、創傷の閉鎖を誘導するための、成長因子と成長ホルモンの混合物の使用を記述し、国際出願第PCT/IL01/00675号は、創傷の閉鎖を誘導するための、PKC調節剤の使用を記述している。しかし、従来技術には、創傷治癒に関連するプロセスを誘導又は加速するために、脂肪細胞、脂肪細胞モジュレーター、又は脂肪細胞によって分泌された分子を利用するための教示はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
米国特許第5,591,709号
米国特許第5,461,030号
米国特許第5,145,679号
米国特許第6,541,447号
国際出願第PCT/IL01/00675号
【非特許文献】
【0008】
Hunt、及びGoodson、Current Surgical Diagnosis & Treatment、(Way;Appleton & Lange)、86〜98頁(1988年)
(参考文献)
数字により引用されている参考文献(追加の参考文献は本文中に引用されている)
1.Hennings, H.、Michael, D.、Cheng, C.、Steinert, P.、Holbrook, K.、及びYuspa, S. H.、「培養におけるマウス表皮細胞の増殖及び分化のカルシウム制御(Calcium regulation of growth and differentiation of mouse epidermal cells in culture)」、細胞、19巻、245〜254頁、1980年。
2.Yuspa, S. H.、Kilkenny, A. E.、Steinert, P. M.、及びRoop, D. R.、「マウス表皮分化マーカーの発現は、in vitroで制限細胞外カルシウム濃度によって厳密に制御されている(Expression of murine epidermal differentiation markers is tightly regulated by restricted extracellular calcium concentrations in vitro)」、J. Cell Biol.、109巻、1207〜1217頁、1989年。
3.Fuchs, E.、「表皮分化:必須のもの(Epidermal differentiation: the bare essentials)」、J. Cell Biol.、111巻、2807〜2814頁、1990年。
4.Yuspa, S. H.、「扁平細胞癌の病原:皮膚発癌の研究からの教訓(The pathogenesis of squamous cell cancer: lessons learned from studies of skin carcinogenesis)--33rd G. H. A.」、Clowes Memorial Award Lecture、Cancer Res.、54巻、1178〜1189頁、1994年。
5.Hennings, H.及びHolbrook, K. A.、「培養における表皮細胞の細胞−細胞の接触及び分化のカルシウム制御、超微細構造的研究(Calcium regulation of cell-cell contact and differentiation of epidermal cells in culture. An ultrastructural study)」、Exp. Cell Res.、143巻、127〜142頁、1983年。
6.Tennenbaum, T.、Li, L.、Belanger, A. J.、De Luca, L. M.、及びYuspa, S. H.、「ラミニン接着及びα6β4インテグリン制御の選択的変化は、ケラチノサイト成熟における初期ステップに関連している(Selectivechanges in laminin adhesion and α6β4 integrin regulation are associated with the initial steps in keratinocyte maturation)」、Cell Growth Differ.、7巻、615〜628頁、1996年。
7.Tennenbaum, T.、Belanger, A. J.、Quaranta, V.、及びYuspa, S. H.、「表皮分化及び扁平上皮の腫瘍進行におけるインテグリンの分化制御及び細胞外基質結合(Differential regulation of integrins and extracellular matrix binding in epidermal differentiation and squamous tumor progression)」、J. Invest. Dermatol.、1巻、157〜161頁、1996年。
8.Weinstein, M. L.、「創傷治癒のアップデート:文献の概説(Update on wound healing: a review of the literature)」、Mil. Med.、163:620〜624,1998年。
9.Singer, A. J.及びClark, R. A.、「皮膚創傷治癒(Cutaneous wound healing)」、N.Engl. J. Med.、341巻、738〜746頁、1999年。
10.Whitby, D. J.及びFerguson, M. W.、「胎児創傷治癒における成長因子の免疫組織化学的局在化(Immunohistochemical localization of growth factors in fetal wound healing)」、Dev. Biol.、147巻、207〜215頁、1991年。
11.Kiritsy, C. P.、Lynch,. B.、及びLynch, S. E.、「皮膚創傷治癒における成長因子の役割:概説(Role of growth factors in cutaneous wound healing: a review)」、Crit. Rev. Oral Biol. Med.、4巻、729〜760頁、1993年。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、創傷治癒を促進する新規手法が必要であり、これを有することは極めて有利なはずであることが広く認識されている。本発明は、創傷治癒に関連するプロセスを誘導又は加速するために、脂肪細胞、脂肪細胞に分化することができる細胞、脂肪細胞によって分泌される生成物、及び脂肪細胞モジュレーターを利用することによって創傷を治療する新規手法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の発明者らは、創傷治癒研究において実験を実施し、脂肪細胞が、治癒プロセスの初期段階中に、創隙における遊走性ケラチノサイトに密接に関連していることを明らかにし、創傷治癒プロセスに脂肪細胞、脂肪細胞モジュレーター、及びアディポカインが関与し、したがってこれらを使用してプロセスに影響を与え得ることを指摘した。
【0011】
本発明を、下記に続く好ましい実施形態及び実施例のセクションでさらに詳述するように実施に移して、創傷にアディポカイン又は脂肪細胞モジュレーターを投与すると、実質的に及び効果的に創傷治癒を実際に促進することが判明した。
【0012】
したがって、本発明の一態様によれば、皮膚創傷に治療上有効量のアディポカインを投与し、それによって皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は加速するステップを含む、皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は加速する方法が提供される。
【0013】
本発明の別の態様によれば、皮膚創傷に治療上有効量の、アディポカインの発現及び/又は分泌を調節することができる作用物質を投与し、それによって皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は加速するステップを含む、皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は加速する方法が提供される。
【0014】
本発明のさらに別の態様によれば、皮膚創傷に治療上有効量の脂肪細胞の分化を調節することができる作用物質を投与し、それによって皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は加速するステップを含む、皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は加速する方法が提供される。
【0015】
本発明のさらに別の態様によれば、皮膚創傷に治療上有効量の脂肪細胞を皮膚創傷に誘引することができる作用物質を投与し、それによって皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は加速するステップを含む、皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は加速する方法が提供される。
【0016】
本発明の追加の一態様によれば、皮膚創傷に治療上有効量の皮膚創傷での脂肪細胞の増殖を高めることができる作用物質を投与し、それによって皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は加速するステップを含む、皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は加速する方法が提供される。
【0017】
本発明のさらに追加の一態様によれば、皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は加速するために、皮膚創傷に治療上有効量の脂肪細胞を移植するステップを含む皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は加速する方法が提供される。
【0018】
本発明のさらに追加の態様によれば、皮膚創傷に治療上有効量の前脂肪細胞を移植し、それによって皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は加速するステップを含む皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は加速する方法が提供される。
【0019】
本発明のさらに追加の一態様によれば、皮膚創傷に治療上有効量の幹細胞を移植し、それによって皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は加速するステップを含む皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は加速する方法が提供される。
【0020】
本発明の別の態様によれば、アディポカインを発現し分泌するように皮膚創傷の細胞を形質転換し、それによって皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は加速するステップを含む皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は加速する方法が提供される。
【0021】
本発明のさらに別の態様によれば、有効成分としての治療上有効量のアディポカイン、及び薬剤組成物の局所塗布用に設計された薬剤として許容できる担体を含む、皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は加速する薬剤組成物が提供される。
【0022】
本発明のさらに別の態様によれば、有効成分としての治療上有効量のアディポカインの発現及び/又は分泌を調節することができる作用物質、及び薬剤組成物の局所塗布用に設計された薬剤として許容できる担体を含む、皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は加速する薬剤組成物が提供される。
【0023】
本発明のさらに別の態様によれば、有効成分としての治療上有効量の脂肪細胞の分化を調節することができる作用物質、及び薬剤組成物の局所塗布用に設計された薬剤として許容できる担体を含む、皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は加速する薬剤組成物が提供される。
【0024】
本発明のさらに別の態様によれば、有効成分としての治療上有効量の脂肪細胞を皮膚創傷に誘引することができる作用物質、及び薬剤組成物の局所塗布用に設計された薬剤として許容できる担体を含む皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は加速する薬剤組成物が提供される。
【0025】
本発明のさらに別の態様によれば、有効成分としての治療上有効量の脂肪細胞の増殖を高めることができる作用物質、及び薬剤組成物の局所塗布用に設計された薬剤として許容できる担体を含む、皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は加速する薬剤組成物が提供される。
【0026】
本発明のさらに別の態様によれば、アディポカイン又は脂肪細胞モジュレーターを創傷に投与するステップと、創傷をケラチノサイト遊走及び/又は表皮の閉鎖について評価して、それによってアディポカイン又は脂肪細胞モジュレーターの創傷治癒を誘導又は加速する能力を決定するステップとを含む、アディポカイン又は脂肪細胞モジュレーターの創傷治癒プロセスを誘導又は加速する能力を決定する方法が提供される。
【0027】
下記に記載する本発明の好ましい実施形態における別の特徴によれば、アディポカインは、アディプシン、アディポネクチン、レジスチン、レプチン、リポタンパク質リパーゼ、アンジオテンシノーゲン、アンジオテンシン様4,1−ブチリルグリセロール、マトリックスメタロプロテアーゼ2、マトリックスメタロプロテアーゼ9、血管内皮増殖因子、インターロイキン6、及び腫瘍壊死因子αからなる群から選択される。アディポカインがアディプシンであることが好ましい。
【0028】
記載された好ましい実施形態におけるさらに別の特徴によれば、脂肪細胞調節剤は、PPARレギュレーター、好ましくはPPAR−γアンタゴニスト、より好ましくはGW9662である。
【0029】
記載された好ましい実施形態におけるさらに別の特徴によれば、脂肪細胞はヒト脂肪細胞であり、好ましくは自家ヒト脂肪細胞である。
【0030】
記載された好ましい実施形態におけるさらに別の特徴によれば、前脂肪細胞はヒト前脂肪細胞であり、好ましくは自家ヒト前脂肪細胞である。
【0031】
記載された好ましい実施形態におけるさらに別の特徴によれば、幹細胞はヒト幹細胞であり、好ましくは自家ヒト幹細胞である。
【0032】
記載された好ましい実施形態におけるさらに別の特徴によれば、移植が、さらにアディポカインの発現及び/又は分泌の調節を含む。
【0033】
記載された好ましい実施形態におけるさらに別の特徴によれば、調節が分化によって行われる。
【0034】
記載された好ましい実施形態におけるさらに別の特徴によれば、分化が、前脂肪細胞を前脂肪細胞の脂肪細胞への分化を高めることができる物質に曝露させることによって行われる。
【0035】
記載された好ましい実施形態におけるさらに別の特徴によれば、分化の促進が、幹細胞を幹細胞の脂肪細胞への分化を高めることができる物質に曝露することによって行われる。
【0036】
記載された好ましい実施形態におけるさらに別の特徴によれば、創傷が、潰瘍、熱傷、裂傷、及び外科的切開創からなる群から選択される。
【0037】
記載された好ましい実施形態におけるさらに別の特徴によれば、薬剤組成物担体が、水性液剤、ゲル剤、クリーム、パスタ剤、ローション剤、スプレー剤、懸濁剤、粉剤、分散剤、膏薬及び軟膏剤からなる群から選択される。
【0038】
記載された好ましい実施形態におけるさらに別の特徴によれば、薬剤組成物は、固体支持体を含む。
【0039】
記載された好ましい実施形態におけるさらに別の特徴によれば、脂肪細胞モジュレーターは、脂肪細胞分化モジュレーター、又は脂肪細胞活性モジュレーターである。
【0040】
記載された好ましい実施形態におけるさらに別の特徴によれば、創傷は実験動物において作製される切創である。
【0041】
記載された好ましい実施形態におけるさらに別の特徴によれば、アディポカイン又は脂肪細胞モジュレーターの投与は1つ又は複数の濃度で実施される。
【0042】
記載された好ましい実施形態におけるさらに別の特徴によれば、アディポカイン又は脂肪細胞モジュレーターの投与は1つ又は複数の塗布方法で実施される。
【0043】
本発明は、創傷治癒を誘導又は加速するために、脂肪細胞、脂肪細胞に分化することができる細胞、脂肪細胞モジュレーター、及び脂肪細胞によって分泌された分子を利用した、創傷を治療するための新規薬剤組成物及び方法を提供する。
【0044】
別段の定義のない限り、本明細書で使用する技術及び科学用語はすべて、本発明が属する技術分野における技術者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載するものと同様の又はそれと等価の方法及び材料を、本発明の実施又は試験で使用することができるが、適切な方法及び材料を下記に記載する。矛盾する場合は、定義を含めて本特許明細書が優先する。さらに、材料、方法、及び実施例は、例示するものにすぎず、限定するためのものではない。
【0045】
本発明は、本明細書では例として記述するにすぎない添付図面を参照して説明する。ここで具体的に図面を詳細に参照する場合、示される詳細は例としてのものであって、本発明の好ましい実施形態を例示的に考察するためのものにすぎず、本発明の原理及び概念的側面についての最も有用で容易に理解されうる説明と思われるものを提供するために提示されていることが強調される。この点に関して、本発明の構造細部を本発明の根本的理解に必要とされるより詳細に示す試みは行っておらず、図面を用いた説明によって、本発明の複数の形をいかに実施するかが当業者に明らかになる。
【0046】
図面では、
図1は、インスリンが創傷領域における脂肪細胞動員及び表皮細胞遊走に及ぼす効果を示す。C57BLマウスの背部に切開によって創傷を作製した。創傷を、毎日6日間治癒を誘導するインスリン(1μM)の局所塗布で処置し、次いでマウスを屠殺し、その創傷を表皮細胞遊走及び脂肪細胞動員について分析した。表皮細胞遊走は、K14抗体染色によって決定し、創傷が創隙全体にわたって陽性染色を呈した場合陽性とみなした。脂肪細胞動員は、H&E染色によって決定し、脂肪細胞が肉芽組織内部に検出された場合陽性とみなした。暗い棒は、インスリン処理を表し、明るい棒は緩衝液で処理した対照を表している。結果は、閉鎖(陽性)創傷のパーセントで提示し、棒はそれぞれ6回の反復の平均±標準誤差を表している。
【0047】
図2A〜Bは、脂肪細胞と創傷治癒プロセスの関連を表す組織化学の顕微鏡写真である。C57BLマウスの背部に切開によって創傷を作製した。創傷7日後に、マウスを屠殺し、次いで薄切し、K14抗体で染色して、遊走性表皮細胞をハイライトした。顕微鏡写真は、創傷治癒プロセスの初期段階中、動員脂肪細胞が多量に創隙に存在していることを示している(図2A、倍率20倍;図2B、倍率10倍)。
【0048】
図3は、PPARγアンタゴニスト(GW9662)がin vitroで一次ケラチノサイト遊走に及ぼす効果を示す。培養ケラチノサイトを、2μMのGW9662で処理しない(対照)、或いは処理した。ケラチノサイト遊走を、光学顕微鏡下で観察した。上側パネルは、処理前(0日)の培養物の顕微鏡写真を示し、下側左及びパネルはそれぞれ、得られた対照及び処理培養物(2日)を示す。青線は、遊走性ケラチノサイトの端部を示し、矢印は、未処理の対照に比べて、GW9662で処理した培養物の改善された遊走を示している。
【0049】
図4は、PPARγアンタゴニスト(GW9662)及びアディプシンがin vivoで創傷治癒に及ぼす効果を示すグラフである。C57BLマウスの背部に切開によって創傷を作製し、ついで創傷を測定した(0日)。創傷領域を、PBS(対照)、アディプシン、又はGW9662 2μMの局所塗布で毎日6日間処理した。次いで、マウスを屠殺し、その創傷領域を測定した(6日)。各処理について、初期の創傷領域から6日で収縮した創傷領域の部分を算出した(創傷収縮%)。グラフは、GW9662とアディプシンはともに、緩衝液で処理した対照に比べて実質的な創傷収縮を促進したことを示している。
【0050】
図5は、PPARγアンタゴニスト(GW9662)及びアディプシンがin vivoで創傷の閉鎖に及ぼす効果を示す組織化学の顕微鏡写真である。C57BLマウスの背部に切開によって創傷を作製し、次いでその領域を測定した(0日)。創傷を、PBS(対照)、アディプシン 1μM、又はGW9662 2μMの局所塗布で毎日6日間処理した。次いで、マウスを屠殺し、その創傷をパラホルムアルデヒドで固定し、倍率5倍の双眼顕微鏡下で観察した。顕微鏡写真は、GW9662又はアディプシンで処理した創傷領域は、緩衝液で処理した対照の創傷領域より実質的に小さいことを示している。
【0051】
図6は、アディプシンが表皮細胞遊走及び創傷の閉鎖に及ぼす効果を示す。C57BLマウスの背部に切開によって創傷を作製した。創傷を1μMのアディプシンの局所塗布で毎日7日間処理し、次いで屠殺し、薄切し、表皮の閉鎖及び遊走について、K14抗体染色によって分析した。表皮の閉鎖は、創傷が創隙全体にわたって陽性染色を呈した場合陽性とみなした。表皮遊走は、創傷が陽性染色を呈するものの、創隙全体にわたってではない場合陽性とみなした。棒グラフは、表皮の閉鎖と表皮遊走とが、アディプシンによって顕著に改善されたことを示している。棒はそれぞれ、6回の反復の平均を表している。
【0052】
図7は、PPARγアンタゴニスト(GW9662)及びアディプシンが創傷の閉鎖(収縮)に及ぼす効果を示す組織化学の顕微鏡写真である。C57BLマウスの背部に切開によって創傷を作製し、アディプシン(1μM)、GW9662(2μM)で毎日6日間処理し、或いは処理しなかった(対照)。創傷して6日後、処理マウスを屠殺した。創傷の組織化学的薄切を行い、H&E(上側パネル)又はK14抗体(下側パネル)で染色し、倍率5倍の光学顕微鏡下で観察した。収縮は、真皮創傷両側(黒線で示す)が単一野で観察できた場合陽性とみなした。未処理の対照切片(右側)の開放創傷領域は大きすぎて、単一野に包含できず(したがって、真皮収縮陰性とみなす)、アディプシン処理切片(左側)及びGW9662処理切片(中央)は、真皮収縮陽性を示している。
【0053】
図8は、PPARγアゴニスト(トログリタゾン)がin vitroで一次ケラチノサイト遊走に及ぼす効果を示す。培養ケラチノサイトを、100μMのトログリタゾンで処理しない(対照)、或いは処理し、その遊走を光学顕微鏡下で観察した。上側パネル(0時間)は、処理前の培養物の顕微鏡写真を示し、下側の左右のパネルはそれぞれ、得られた対象及び処理培養物(48時間以内)を示す。線は、培養ケラチノサイトの端部を示し、未処理の対照に比べて、トログリタゾンで処理した培養ケラチノサイトの遊走が実質的に阻害されたことを示唆している。
【0054】
図9は、インスリン及びPPARγアゴニスト(トログリタゾン)がin vivoで創傷の閉鎖に及ぼす効果を示す組織化学の顕微鏡写真である。C57BLマウスの背部に切開によって創傷を作製し、PBS(対照)、インスリン(10nM)、トログリタゾン(100μM)、又はトログリタゾン(100μM)+インスリン(10nM)の組合せの局所塗布で毎日6日間処理した。次いで、マウスを屠殺し、その創傷をパラホルムアルデヒドで固定し、倍率5倍の双眼顕微鏡下で観察した。顕微鏡写真は、インスリンで処理した創傷領域は、緩衝液で処理した対照より実質的に小さいが、トログリタゾンで処理した創傷、及びトログリタゾン+インスリンで処理した創傷は、緩衝液で処理した対照より実質的に大きいことを示している。
【0055】
図10は、インスリン及びPPARγアゴニスト(トログリタゾン)が創傷の閉鎖の発生に及ぼす効果を示す。C57BLマウスの背部に切開によって創傷を作製した。創傷を、PBS(対照)、インスリン(10nM)、トログリタゾン(100μM)、又はトログリタゾン(100μM)+インスリン(10nM)の局所塗布で毎日6日間処理し、次いで屠殺し、薄切し、創傷の閉鎖について分析した。創傷の閉鎖は、K14及びK1抗体染色によって決定した。創傷の閉鎖は、創傷が創隙全体にわたって陽性染色を呈した場合陽性とみなした。棒はそれぞれ、6回の反復の平均を表している。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】インスリンが創傷領域における脂肪細胞動員及び表皮細胞遊走に及ぼす効果を示すグラフである。
【図2A】脂肪細胞と創傷治癒プロセスの関連を表す組織化学の顕微鏡写真である(図2A、倍率20倍)。
【図2B】脂肪細胞と創傷治癒プロセスの関連を表す組織化学の顕微鏡写真である(図2B、倍率10倍)
【図3】PPARγアンタゴニスト(GW9662)がin vitroで一次ケラチノサイト遊走に及ぼす効果を示す図である。
【図4】PPARγアンタゴニスト(GW9662)及びアディプシンがin vivoで創傷治癒に及ぼす効果を示すグラフである。
【図5】PPARγアンタゴニスト(GW9662)及びアディプシンがin vivoで創傷の閉鎖に及ぼす効果を示す組織化学の顕微鏡写真である。
【図6】アディプシンが表皮細胞遊走及び創傷の閉鎖に及ぼす効果を示すグラフである。
【図7】PPARγアンタゴニスト(GW9662)及びアディプシンが創傷の閉鎖(収縮)に及ぼす効果を示す組織化学の顕微鏡写真である。
【図8】PPARγアゴニスト(トログリタゾン)がin vitroで一次ケラチノサイト遊走に及ぼす効果を示す図である。
【図9】インスリン及びPPARγアゴニスト(トログリタゾン)がin vivoで創傷の閉鎖に及ぼす効果を示す組織化学の顕微鏡写真である。
【図10】インスリン及びPPARγアゴニスト(トログリタゾン)が創傷の閉鎖の発生に及ぼす効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
本発明は、創傷治癒プロセスを加速する方法及び薬剤組成物に関する。具体的には、本発明は、脂肪細胞、脂肪細胞に分化することができる細胞、脂肪細胞によって分泌された生物活性分子(アディポカイン)、及び脂肪細胞モジュレーターを皮膚創傷の治癒プロセスを加速するために利用する。
【0058】
本発明の少なくとも一実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用が、下記の説明で記載する、又は実施例のセクションで例示する成分の構築の詳細及び配合に限定されないと理解されるべきである。本発明は、他の実施形態が可能であり、或いは様々な方式で実施又は行うこともできる。また、本明細書で使用する語句及び用語は、説明のためのものであって、限定するものとみなされるべきではないことを理解されたい。
【0059】
成人の皮膚は、角質化した重層表皮と、支持及び栄養を提供するコラーゲンに富んだ真皮結合組織の厚い下層の2層を含む。皮膚は、外界に対する保護バリアとして働く。したがって、皮膚における損傷又は破損があれば、迅速且つ効率的に治療しなければならない。本明細書の上記の背景技術のセクションで記載したように、皮膚修復の第一段階は、初期創傷を塞ぐ血餅の形成によって実現する。その後、炎症細胞、線維芽細胞、及び毛管が血餅に侵入して、肉芽組織を形成する。次の段階は、創傷を再上皮化するものであり、基底ケラチノサイトがその半接着斑接触を維持できなくなり、肉芽組織に遊走して、創傷を被覆するはずである。ケラチノサイト遊走に続いて、ケラチノサイトは増殖性ブーストに入り、傷形成中に失われた細胞の置換が可能になる。創傷が単層のケラチノサイト(すなわち、表皮の閉鎖)で被覆された後、新しい重層表皮が形成され、新しい基底膜が再確立される(8〜11)。
【0060】
本願発明者らは、創傷治癒研究において実験を実施し、予想外に、創傷治癒プロセスの初期段階中、脂肪細胞は、創傷領域での遊走性ケラチノサイトと密接に関連していることを明らかにした。したがって、下記の実施例のセクションの実施例1は、創隙での遊走性ケラチノサイトの出現が同じ領域での動員脂肪細胞の出現に直接相関していたことを示している。さらに、インスリン処理創傷は、対照の未処理創傷より、多くの脂肪細胞を創隙に動員し、その後速く治癒した。この新たに明らかにされた、創傷を治癒する際の脂肪細胞と遊走性ケラチノサイトの密接な関連は、動員脂肪細胞の発生と創傷治癒効率の間で観察される直接相関とともに、脂肪細胞、脂肪細胞モジュレーター、及び脂肪細胞産物(アディポカイン)が創傷治癒プロセスに関与し、したがってこれらを使用してプロセスに影響を与え得ることを指摘している。
【0061】
脂肪細胞は、エネルギー恒常性の維持において、インスリン分泌、インスリン作用、グルコース及び脂質代謝、エネルギー収支、炎症、並びに生殖を制御する役割を担うアディポカインとして知られているいくつかの生物活性分子を分泌する。
【0062】
しかし、脂肪細胞によって分泌された生物活性分子が創傷治癒に関与する可能性は、従来技術によって教示も示唆もされていない。
【0063】
上記に記述する初期の知見に基づいて、さらに本発明を実施に移して、本発明の発明者らは、知られているアディポコン(adipokone)のリストから選択された、例示的なアディポカインであるアディプシンは、in vitroでケラチノサイト遊走を実質的に加速し、in vivoで皮膚創傷治癒を効果的に促進すると予想し、その後明らかにした(下記の実施例のセクションの実施例3を参照のこと)。
【0064】
したがって、本発明の一態様によれば、皮膚創傷に治療上有効量のアディポカインを投与し、それによって皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は加速するステップを含む、皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は加速する方法が提供される。
【0065】
本明細書では「創傷」という用語は、様々な方式のいずれか一つ(例えば、長期床上安静による褥瘡、外傷によって誘導された創傷、切創、潰瘍、熱傷、外科的切開など)で開始され、様々な特性をもつ、皮膚及び皮下組織への損傷を幅広く指す。
【0066】
創傷は、通常は創傷の深さに応じて、(i)I度:表皮に限定される創傷、(ii)II度:真皮に至る創傷、(iii)III度:皮下組織に至る創傷、及び(iv)IV度(又は全層創傷):骨が露出した創傷(例えば、大転子や仙骨など骨圧痛点(bony pressure point))の4階級のうちの1つに分類される。
【0067】
本明細書で使用する「部分厚創傷」という用語は、I度〜III度を包含する創傷を指す。部分厚創傷の例には、熱傷創、褥瘡、静脈性うっ血性潰瘍、及び糖尿病性潰瘍が含まれる。
【0068】
本明細書で使用する「深部創傷」という用語は、III度とIV度の両方の創傷を含むことを意味する。
【0069】
本明細書で使用する「慢性創傷」という用語は、30日以内に治癒しない創傷を指す。
【0070】
創傷に関して「治癒」という用語は、瘢痕形成によるような創傷を修復するプロセスを指す。
【0071】
本発明によって、深部創傷及び慢性創傷を含めてすべての創傷タイプを治療することが考えられる。
【0072】
本明細書では、「アディポカイン」という用語は、脂肪細胞によってin vivo又はin vitroで分泌される生物活性分子を指し、脂肪細胞によって分泌される酵素、成長因子、サイトカイン、及びホルモンが含まれるが、これらに限定されない。本発明のアディポカインは、補体D(アディプシン)、C3及びB因子;血管内皮増殖因子(VGEF)、アディポネクチン(Acrp30);レジスチン;レプチン;リポタンパク質リパーゼ(LPL);アンジオテンシノーゲン;アンジオテシン様4,1−ブチリルグリセロール(モノブチリン);マトリックスメタロプロテアーゼ2及び9;腫瘍壊死因子α(TNFα)、並びにインターロイキン6からなる群から選択されることが好ましい。アディポカインがアディプシンであることが好ましい。
【0073】
アディポカインを創傷に投与することに加えて、創傷の治癒も、本発明のいくつかの実施形態にしたがって、脂肪細胞モジュレーターによって誘導又は加速されることがある。
【0074】
本明細書では「脂肪細胞モジュレーター」という語句は、脂肪細胞からのアディポカインの発現及び/又は分泌、脂肪細胞分化、脂肪細胞増殖、脂肪細胞遊走を調節、或いは脂肪細胞を創隙に誘引することができる任意の分子を指す。
【0075】
脂肪細胞は、脂質生成として知られているプロセスにおいて前脂肪細胞から分化される。培養に際して、脂質生成は、インスリン、デキサメタゾン、及びイソブチルメチルキサンチンに完全に依存しており、インスリン、グルココルチコイド、及びcAMP経路の関与を強調する。
【0076】
多くのシグナル伝達及び生化学経路は、このプロセスで必須の役割を果たすが、脂質生成中に起こる周知の変化の大部分は、遺伝子転写レベルである。脂肪生成プロセスに関与する重要な転写因子には、CCAAT/エンハンサー結合タンパク質ファミリーに属するタンパク質、脂肪細胞決定及び分化依存因子1(ステロール調節エレメント結合タンパク質1としても知られている)、並びにペルオキシソーム増殖剤アクチベータ受容体γが含まれる(Rangwala及びLazar、Ann.Rev.Nutt.、20巻、535〜539頁、2000年)。
【0077】
ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体(PPAR)は、PPARα、PPARβ、及びPPARγの3つのタイプを含む。これらは、標的遺伝子のプロモーター領域中の規定のヌクレオチド配列に結合することによって遺伝子活性を直接調節するリガンド誘導性核内受容体である。PPARγは、脂肪細胞特異的遺伝子のトランス活性化によって最終分化において重要な役割を果たす。最近の結果によって、表皮におけるPPARとコレステロール代謝経路間のクロストークが示唆されている。PPARのアイソフォームはすべて、胎児及び成体の皮膚で発現される。PPARγ発現は、胎児成熟後期において劇的に増大する。成人の皮膚と同様に生後の皮膚では、PPARγの発現は減少する。重要な役割が、表皮形成中のケラチノサイト分化におけるPPARβ及びPPARαに対して示唆されている(Wabli W.、Swiss Med.Wkly.132巻、83〜91頁、2002年)。PPARβ及びPPARαは、創傷皮膚の端部で上方制御されること、及びこれらのアイソフォームのヌルマウスは、創傷治癒が損なわれていることも実証されている(Michalnikら、J.Cell Biol.、154巻、799〜814頁、2001年)。しかし、創傷治癒プロセスにおけるPPARγの関与は、従来技術では記載も示唆もされていない。
【0078】
米国特許第6,403,656号は、表皮細胞の分化異常に関連する皮膚障害の治療のためのPPARγアクチベータの使用を記載している。さらに、国際出願第PCT/US99/28101号は、肥満症及び糖尿病の治療のための、プロスタグランジンJ2又はD2などのPPARγアクチベータの使用を記載している。しかし、これらの開示はいずれも、創傷治癒に使用するためのPPARγアクチベータ又は阻害剤の使用を教示も示唆もしていない。
【0079】
本発明の発明者らは、さらに本発明を実施に移して、PPARγ活性は、創傷治癒プロセスに逆に相関していることを明らかにした。したがって、下記の実施例のセクションの実施例2は、PPARγアゴニストであるトログリタゾンを投与すると、創傷収縮が阻害されることを示している。一方、PPARγアンタゴニストであるGW9662を投与すると、創傷収縮が促進される。
【0080】
したがって、本発明の別の態様によれば、皮膚創傷に治療上有効量の脂肪細胞の分化を調節することができる作用物質を投与し、それによって皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は加速するステップを含む皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は加速する方法が提供される。本発明のこの態様による作用物質は、脂肪細胞分化に関与する転写因子など任意の因子のアゴニスト又はアンタゴニストとすることができ、CCAAT/エンハンサー結合タンパク質ファミリーに属するタンパク質、脂肪細胞決定及び分化依存因子1、並びにPPARγが含まれるが、これだけに限定されない。作用物質は、PPAR−γアンタゴニストが好ましく、GW9662がより好ましい。
【0081】
脂肪細胞分化モジュレーターに加えて、創傷治癒プロセスは、他の脂肪細胞モジュレーターを利用することによって促進することができる。したがって、本発明の教示によれば、皮膚創傷の治癒プロセスは、皮膚創傷に治療上有効量の(i)脂肪細胞からのアディポカインの発現及び/又は分泌を調節し、(ii)脂肪細胞増殖を高め、(ii)脂肪細胞遊走を高め、或いは(iii)脂肪細胞を創傷領域に誘引することができる作用物質を投与することによって、誘導又は加速することができる。
【0082】
当業者によって容易に実施できる、特定の作用物質であるのか、例えば、アディポカインであるのか又は脂肪細胞モジュレーターであるのかを決定する検査が、本発明において、このような特定の作用物質が、実際に傷治癒プロセスの誘導物質又は加速物質であるかを試験するために提供される。
【0083】
したがって、アディポカイン又は脂肪細胞モジュレーターの皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は加速する能力は、当該アディポカイン又は脂肪細胞モジュレーターを皮膚創傷に投与し、処置後の創傷をケラチノサイト遊走、及び/又は表皮の閉鎖について評価することによって決定することができる。
【0084】
好ましくは、C57BLマウスの背部に切開によって創傷を作製し、それぞれ1つ又は複数の濃度のアディポカインを用いた1つ又は複数の塗布方法で処置する。
【0085】
創傷して所望の期間、好ましくは約6日後に、マウスを屠殺し、創傷の生検材料を採取する。次いで、当技術分野で知られている方法を使用して、好ましくは下記の実施例のセクションに記載するような手順を使用して、創傷の生検材料を創隙へのケラチノサイト遊走、及び/又は創隙の表皮の閉鎖について分析する。
【0086】
ケラチノサイト遊走、及び/又は表皮の閉鎖の発生が未処理の対照に比べて大幅に増大すれば、試験対象のアディポカイン又は脂肪細胞モジュレーターが、皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は加速することができると決定されるはずである。
【0087】
本発明の別の態様によれば、皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は加速するように、脂肪細胞、好ましくは自家脂肪細胞を創傷に移植する。
【0088】
脂肪細胞は、任意の動物供給源の脂肪組織、好ましくはヒト供与者から、最も好ましくは自家ヒト供給源から得ることができる。脂肪組織は、外科手術、吸引、脂肪吸引、ペニキュレクトミー(penniculectomy)などよく認識されているプロトコルを使用して、或いは生検によって皮下又は腎周囲の部位、好ましくは皮下の部位から採取することができる。脂肪細胞は、物理的細胞接触を破壊する酵素(例えば、コラゲナーゼ)を使用する、或いは機械的撹拌、音波又は超音波エネルギーなどを使用することによって脂肪組織試料から分離することが好ましい。分離された脂肪細胞は、例えば国際出願第PCT/US00/30623号に詳細に記載されるなどの当技術分野で知られている適切な組織培養技法を使用して培養することができる。培養脂肪細胞を準コンフルエントに到達するまで増殖させ、次いで増殖培地から穏やかな掻爬によって取り出し、創傷に移植する。
【0089】
脂肪細胞を培養前脂肪細胞から発生させることもできる。本明細書では「前脂肪細胞」という用語は、脂肪細胞に分化することができる任意の細胞を指す。前脂肪細胞は、ヒト脂肪細胞であることが好ましく、患者自身の脂肪組織又は他の組織から単離された自家脂肪細胞がより好ましい。脂肪組織は、外科手術、吸引、脂肪吸引、ペニキュレクトミーなどよく認識されているプロトコルを使用して、或いは生検によって皮下又は腎周囲の部位から採取することができる。前脂肪細胞は、Rodbellら(Meth.Enzymol.、31巻、103〜114頁、1974年)によって記載されるなどの方法を使用して採取した組織から単離することができる。単離された前脂肪細胞は、Haunerら(Journal Clin.Invest.、34巻、1663〜1670頁、1989年)、Digbyら(Diabetes、5巻、138〜141頁、1998年)、及び国際出願第PCT/US00/02208号によって記載されるような方法及び手順を使用して、in vitroでの増殖、拡大、及び脂肪細胞への分化を行うことができる。分化された脂肪細胞は、Freshney(Culture of Animal Cells、310〜312頁、第3版、1994年)によって記載するなどの回収方法を使用して培地から回収し、好ましくは国際出願第PCT/US97/0061号に記載するなどのグラフトチャンバーを経由して創傷に移植することができる。脂肪細胞の移植して少なくとも1日後、好ましくは少なくとも1週間後に、グラフトチャンバーを創傷から除去することができる。場合によっては、移植された脂肪細胞を、制限なくPPAR−γアンタゴニスト、好ましくはGW9662などの脂肪細胞モジュレーターに曝露する。
【0090】
本発明の別の態様によれば、皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は加速するように前脂肪細胞を創傷に移植する。前脂肪細胞は、本明細書の上記で脂肪細胞について記載するなどの方法及び手順を使用するが、分化ステップを省略して、in vitroで単離、増殖、及び拡大することができる。本明細書の上記で脂肪細胞について記載するなどの手順を使用して、非分化前脂肪細胞を培地から回収し、創傷に移植する。場合によっては、移植された前脂肪細胞を、制限なくPPAR−γアンタゴニスト、好ましくはGW9662などの脂肪細胞モジュレーターに曝露する。
【0091】
脂肪細胞及び/又は前脂肪細胞を培養幹細胞から発生させることもできる。本明細書では「幹細胞」という用語は、最終分化しておらず、制限なく分割することができ、分割して幹細胞である細胞を生じるか、或いは非可逆的に分化して前脂肪細胞や脂肪細胞など新しいタイプの細胞を生じる胚又は成体の細胞を指す。
【0092】
幹細胞の単離及びex vivo拡大は、当技術分野でよく知られている方法を使用して行うことができる。例えばVan Eppsら(Blood Cells、20巻、411頁、1994年)、及びEmerson S.G.(Blood、87巻、3082頁、1996年)は、骨髄、末梢血又は新生児の臍帯血からのヒト造血幹細胞の単離、及び培養によるその拡大のための手順を記述している。ヒト胚幹細胞(hESC)は、米国特許第5,843,780号に記載、さらにReubinoffら(Nature Biotech.、18巻、399頁、2000年)によって記載されるなどの方法を使用して、ヒトのin vivo着床前胚又はin vitro受精胚から得られたヒト胚盤胞細胞から調製することができる。ヒト間葉幹細胞(hMSC)は、米国特許第5,197,985号、第5,486,359号、及び第6,214,369号に記載するなどの方法を使用して単離し拡大することができる。脂肪組織など間葉組織の特定のタイプのいずれかに分化することができるhMSCは、骨髄、血液、真皮及び骨膜中に存在する。
【0093】
幹細胞を皮膚創傷に直接投与し、in vivoでの脂肪細胞への分化をこのような分化を進行させる因子の共投与して又は共投与せずに可能にすることができる。或いは、幹細胞を前脂肪細胞又は脂肪細胞にex vivoで分化し、次いで創傷に移植することができる。
【0094】
培養hMSCは、米国特許第6,322,784号に記載するなどの方法を使用して、脂肪生成分化に誘導することができる。したがって、脂肪細胞は、細胞をグルココルチコイド、及びcAMP生成を上方制御する、或いはホスホジエステラーゼ阻害剤などcAMP分解を阻害することができる化合物に曝露することによって、一次hMSCから発生させることができる。幹細胞から発生した脂肪細胞は、その後、皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は加速するように上記に記述するなどの手順を使用して、回収し、創傷に移植する。
【0095】
本発明の一代替実施形態では、創傷細胞を、アディポカインを発現し分泌するように形質転換して、それによって、皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は加速する。
【0096】
創傷細胞は、ケラチノサイト、脂肪細胞、又は前脂肪細胞など創傷治癒プロセスに関与する任意の細胞タイプとすることができる。アディプシン、アディポネクチン、レジスチン、レプチン、リポタンパク質リパーゼ、アンジオテンシノーゲン、アンジオテンシン様4,1−ブチリルグリセロール、マトリックスメタロプロテアーゼ2、マトリックスメタロプロテアーゼ9、及び腫瘍壊死因子αなどのアディポカインをコードするポリヌクレオチドによって、細胞を形質転換することができる。或いは、米国特許第5,223,425号に記載されるアディプシン/補体D活性をコードするポリヌクレオチドなど、アディポカイン活性を可能にするポリペプチドをコードするポリヌクレオチドによって、細胞を形質転換することもできる。
【0097】
適切なポリヌクレオチドを、当技術分野内で知られている様々な方法のいずれか1つによって細胞に導入することができる。このような方法は、一般的な記載がSambrookら[Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Springs Harbor Laboratory、ニューヨーク(New York)(1989年、1992)];Ausubelら[Current Protocols in MolecularBiology、John Wiley and Sons、米国メリーランド州ボルティモア(Baltimore,Maryland)(1989年)];Changら[Somatic Gene Therapy、CRC Press、米国ミシガン州アナーバー(Ann Arbor,MI)(1995年)];Vegaら[Gene Targeting、CRC Press、米国ミシガン州アナーバー(Ann Arbor,MI)(1995年)];Vectors[A Survey of Molecular Cloning Vectors and Their Uses、Butterworths、米国マサチューセッツ州ボストン(Boston MA)(1988年)]、及びGilboaら[Biotechniques、4巻、6号、504〜512頁(1986年)]にでており、例えばステーブル又はトランジェントなトランスフェクション、リポフェクション、電気穿孔法及び組換えウイルスベクターによる感染が含まれ得る。さらに、中枢神経系に影響を与えるベクターについては米国特許第4,866,042号、また相同的組換えを誘導するポジティブ−ネガティブ選択方法については米国特許第5,464,764号、及び第5,487,992号を参照のこと。
【0098】
アディポカインをコードするポリヌクレオチドを創傷細胞に導入するための好ましい手法は、ウイルスベクターを使用することによるものである。ウイルスベクターは、より高い効率の形質転換、特定の細胞型への標的指向、及び特定の細胞型での伝播を含めて複数の利点をもたらす。ウイルスベクターは、癌細胞の受容体など特定の細胞の受容体によって標的特異性を変更するように、特定の受容体又はリガンドで修飾することもできる。
【0099】
レトロウイルスベクターは、本発明での使用に適したベクターの一クラスを表す。遺伝子の哺乳類細胞への伝達の際には、欠損レトロウイルスをルーチンで使用する[総説については、Miller,A.D.、Blood、76巻、271頁(1990年)を参照のこと]。ポリヌクレオチドをコーディングするアディポカインを含めて、組換えレトロウイルスを周知の分子技法を使用して構築することができる。レトロウイルスゲノムの一部分を除去して、レトロウイルス複製を欠損にすることができ、次いで複製欠損レトロウイルスをウイルス粒子にパッケージすることができ、標準技法を使用しながら、ヘルパーウイルスを使用して標的細胞に感染させるために使用することができる。組換えレトロウイルスを生成し、細胞をこのようなウイルスにin vitro又はin vivoで感染させるプロトコルは、例えばAusubulら編[Current Protocols in Molecular Biology、Greene Publishing Associates(1989年)]にでている。レトロウイルスは、様々な遺伝子を、上皮細胞、内皮細胞、リンパ球、筋芽細胞、肝細胞及び骨髄細胞を含めて多数の様々な細胞型に導入しているために使用されている。
【0100】
別の適切な発現ベクターは、アデノウイルスベクターとすることができる。アデノウイルスは、幅広く研究されルーチンに使用される遺伝子導入ベクターである。アデノウイルスベクターの重要な利点には、分裂及び静止細胞の比較的高い形質導入効率、広範囲の上皮組織への自然向性、並びに高力価の容易な生成が含まれる[Russel,W.C.、[J.Gen.Virol.、81巻、57〜63頁(2000年)]。アデノウイルスDNAを核に輸送するが、それに組み込まない。したがって、アデノウイルスベクターを用いた場合の突然変異生成のリスクは最小限に抑えられ、短期の発現は、特に多剤耐性癌細胞などの癌細胞の治療に適している。実験的癌治療に使用されるアデノウイルスベクターは、Sethら[P.Seth編、Adenoviruses:Basic biology to Gene Therapy、Landes、米国テキサス州オースティン(Austin,TX)、(1999年)、103〜120頁の「癌遺伝子治療用のアデノウイルスベクター(Adenovirus vectors for cancer gene therapy)」]によって記載されている。
【0101】
発現を具体的な細胞型に限定する特徴も含むことがある。このような特徴には、例えば所望の細胞型に対して特異的なプロモーター及び調節エレメントが含まれる。ウイルスベクターは、抗体フラグメントを細胞の外側に分泌するためのシグナルをコードするヌクレオチド配列を含むこともある。分泌シグナルは、一般に短い配列(7〜20個の残基)の疎水性アミノ酸を含む。本発明での使用に適した分泌シグナルは、幅広く利用可能であり、当技術分野でよく知られている。例えばvon Heijne[J.Mol.Biol.、184巻、99〜105頁、(1985年)]、及びLejら[J.Bacteriol.、169巻、4379頁、(1987年)]を参照のこと。
【0102】
組換えベクターを複数の方式で投与することができる。ウイルスベクターを使用する場合、手順はその標的特異性を利用することができ、したがってこのようなベクターは腫瘍部位に局所投与する必要がない。しかし、局所投与は、より迅速でより有効な治療を提供することができる。ウイルスベクターの投与は、例えば対象者に静脈内又は皮下注射することによって行うこともできる。注射した後、ウイルスベクターは、感染に適切な標的特異性で宿主細胞を認識するまで循環する。
【0103】
本発明によれば、アディポカイン又は脂肪細胞モジュレーターを、本質的に又は薬剤組成物の有効成分として、治療に使用することができる。
【0104】
本明細書では、「薬剤組成物」という用語は、本明細書に記載する有効成分のうちの1つ又は複数と、生理的に適切な担体や賦形剤など他の化学成分との調合物を指す。薬剤組成物の目的は、有機体への化合物の投与を容易にすることである。
【0105】
以降、同義的に使用されることがある「生理的に許容できる担体」及び「薬剤として許容できる担体」という語句は、有機体に対して著しい刺激を引き起こさず、且つ投与された有効成分の生物活性及び特性を阻害しない担体又は希釈液を指す。アジュバントは、これらの語句内に包含される。
【0106】
本明細書では「賦形剤」という用語は、有効成分の投与をさらに容易にするために薬剤組成物に添加された不活性物質を指す。賦形剤の例には、制限なく炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖、及び様々なタイプのデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油、並びにポリエチレングリコールが含まれる。
【0107】
製剤技法及び薬物投与は、参照により本明細書に組み込まれる「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、Mack Publishing Co.、米国ペンシルベニア州イーストン(Easton,PA)、最新版に出ている。
【0108】
本発明の薬剤組成物は、当技術分野でよく知られているプロセス、例えば通常の混合、溶解、造粒、糖衣錠作成、分級、乳化、カプセル化、エントラップ、及び/又は凍結乾燥プロセスを用いて製造することができる。
【0109】
したがって、本発明に従って使用する薬剤組成物は、有効成分を薬剤として使用することができる製剤に加工するのを容易にする賦形剤及び佐剤を含む、1つ又は複数の生理的に許容できる担体を使用して通常の方式で調製することができる。
【0110】
本発明によれば、薬剤として許容できる担体は局所塗布に適しており、本明細書の下記にさらに詳述するように、例えばゲル剤、クリーム、パスタ剤、ローション剤、スプレー剤、懸濁剤、粉剤、分散剤、膏薬及び軟膏剤とすることができるが、これらに限定されない。固体支持体を、創傷への有効成分の放出遅延のために使用することもできる。
【0111】
本発明の場合の使用に適した薬剤組成物には、意図した目的を実現するのに有効な量の有効成分を包含する組成物が含まれる。さらに詳細には、治療上有効量は、有効成分の、創傷治癒を誘導又は加速するのに有効な量を意味する。
【0112】
治療上有効量の決定は、特に本明細書で提供されている詳細な開示、本明細書で開示されているアッセイ、及び下記の実施例のセクションを考慮に入れて、当業者が十分に対応できる範囲にある。
【0113】
本発明の方法で使用される製剤の場合、治療上有効量又は用量は先ず、本明細書に記載するような実験動物を使用する皮膚創傷アッセイから推定することができる。このような情報を使用して、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定することができる。
【0114】
本明細書に記載する有効成分の毒性及び治療有効性は、標準薬剤手順によって、in vitro、細胞培養、又は実験動物で決定することができる。これらのin vitro及び細胞培養アッセイ、並びに動物研究から得られたデータは、ヒトに使用するための一連の用量を調製する上で使用することができる。用量は、使用する剤形、及び利用する投与経路に応じて変わることがある。厳密な製剤、投与経路、及び用量は、個々の医師が患者の病態を考えて選択することができる(例えば、Finglら、1975年、「治療の薬理学的基礎(The Pharmacological Basis of Therapeutics)」、第1章、1頁)。
【0115】
投与量及び間隔を、例えば創傷治癒を誘導するのに十分な有効成分のレベルに個別に調整することができる(最小有効濃度、MEC)。MECは、各調製について変わるものであるが、in vitroデータから推定することができる。MECを実現するのに必要とされた用量は、個体の特性及び投与経路に応じて異なるものである。
【0116】
治療対象の創傷の重症度及び応答性に応じて、投与は、数日から数週間、又は創傷の縮小が実現するまで継続する治療単位で単回又は複数回の投与とすることができる。
【0117】
組成物の投与量は、言うまでもなく、治療の対象者、疾患の重症度、投与方式、処方医師の判断などに応じて異なる。
【0118】
本発明の組成物は、望むなら、FDA承認キットなど、有効成分を含有する1つ又は複数の単位剤形を含んでいてもよいパック又はディスペンサー装置として提供することができる。パックは、例えば局所投与用の製剤を分配するためのチューブに形成された金属又はプラスチック箔を含むことができる。パック又はディスペンサー装置には投与用の取扱説明書が添付されていることがある。また、パック又はディスペンサーは、薬剤の製造、使用、又は販売を規制する政府機関によって定められた形の通知書が容器に付随して添付されていることもあり、その通知書は、組成物の形、又はヒト又は動物用の投与についての機関の承認を示すものである。このような通知書は、例えば米国食品医薬品局の承認を受けた処方箋薬の表示、又は承認を受けた製品添付文書とすることができる。適合性のある薬剤担体中で調製された本発明の調製物を含む組成物は、上記にさらに詳述されているかのように調製し、適切な容器に入れ、適用病態の治療用の表示をすることもできる。
【0119】
本発明の有効成分の好ましい投与モードは、局所(topical)−局所(local)投与であるが、当技術分野でよく知られているような適切な製剤を使用した、経口、筋肉内、静脈内、皮下、経皮、腹腔など許容できる投与経路による全身投与は排除されないことが理解されよう。
【0120】
したがって、本発明は、創傷の治癒を安全に且つ効率的に誘導し加速するための、脂肪細胞、脂肪細胞に分化することができる細胞、脂肪細胞モジュレーター、及び脂肪細胞によって分泌された分子を利用することによる創傷の治療に使用するための新規の方法及び組成物を提供する。
【0121】
本発明の追加の目的、利点、及び新規の特徴は、限定するためのものではない下記の実施例の検討時に当業者に明らかになるであろう。さらに、本明細書の上記に記述され、下記の特許請求の範囲のセクションに請求されているような本発明の様々な実施形態及び態様はそれぞれ、下記の実施例で実験的な裏付けを得る。
【実施例】
【0122】
次に、上記の説明とともに、本発明を非限定的に説明する下記の実施例に言及する。
【0123】
一般に、本明細書で使用する用語、及び本発明で使用する実験室手順には、分子、生化学、微生物学、及び組換えDNAの技法が含まれる。このような技法は、文献で十分に説明されている。例えば、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、Sambrookら、(1989年);「Current Protocols in Molecular Biology」、I〜III巻、Ausubel,R.M.編、(1994年);Ausubelら、「Current Protocols in Molecular Biology」、John Wiley and Sons、米国メリーランド州ボルティモア(Baltimore,Maryland)、(1989年);Perbal、「A Practical Guide to Molecular Cloning」、John Wiley & Sons、米国ニューヨーク(New York)、(1988年);Watsonら、「Recombinant DNA」、Scientific American Books、米国ニューヨーク(New York);Birrenら編、「Genome Analysis:A Laboratory Manual Series」、1〜4巻、Cold Spring Harbor Laboratory Press、米国ニューヨーク(New York)、(1998年);米国特許第4,666,828号;第4,683,202号;第4,801,531号;第5,192,659号、及び第5,272,057号に記載の方法;「Cell Biology:A Laboratory Handbook」、I〜III巻、Cellis,J.E.編、(1994年);Freshneyによる「Culture of Animal Cells−A Manual of Basic Technique」、Wiley−Liss,米国ニューヨーク(New York)、(1994年)、3版;「Current Protocols in Immunology」、I〜III巻、Coligan J.E.編、(1994年);Stitesら編、「Basic and Clinical Immunology」(8版)、Appleton & Lange、米国コネチカット州ノーウォーク(Norwalk,CT)、(1994年);Mishell 及びShiigi編、「Selected Methods in Cellular Immunology」、W.H.Freeman and Co.、米国ニューヨーク(New York)、(1980年)を参照のこと;利用可能なイムノアッセイは、特許及び科学文献で幅広く記載されている。例えば、米国特許第3,791,932号;第3,839,153号;第3,850,752号;第3,850,578号;第3,853,987号;第3,867,517号;第3,879,262号;第3,901,654号;第3,935,074号;第3,984,533号;第3,996,345号;第4,034,074号;第4,098,876号;第4,879,219号;第5,011,771号、及び第5,281,521号;「Oligonucleotide Synthesis」、Gait,M.J.編、(1984年);「Nucleic Acid Hybridization」、Hames,B.D.及びHiggins S.J.編、(1985年);「Transcription and Translation」、Hames,B.D.及びHiggins S.J.編、(1984年);「Animal Cell Culture」、Freshney,R.I.編、(1986年);「Immobilized Cells and Enzymes」、IRL Press、(1986年);「A Practical Guide to Molecular Cloning」、Perbal,B.、(1984年)及び「Methods in Enzymology」、1〜317巻、Academic Press;「PCR Protocols:A Guide To Methods And Applications」、Academic Press、米国カリフォルニア州サンディエゴ(San Diego,CA)、(1990年);Marshakら、「Strategies for Protein Purification and Characterization−A Laboratory Course Manual」、CSHL Press、(1996年)を参照のこと;これらのすべてを、本明細書に完全に記述されているかのように参照により組み込む。他の全般的な参考文献がこの文献全体にわたって提供されている。この文献における手順は当技術分野でよく知られているものと考えられ、読者の便宜のため提供されている。この文献に包含されている情報すべてを参照により本明細書に組み込む。
【0124】
材料及び実験方法
材料:標準化学物質はすべて、(Sigma−Aldrich、米国セントルイス(St.Louis,USA))からのものであった。パラプラスト包埋剤もSigmaから購入した。抗ケラチン14抗体及び抗ケラチン1ポリクロナール抗体は、Bacto−Covance(米国カリフォルニア州リッチモンド(Richmond,CA USA))から購入した。ビオチン化ヤギ抗ウサギ抗体、及びストレプトアビジン西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)は、ZYMED Laboratories Inc.(米国カリフォルニア州サンフランシスコ(San Francisco,CA USA))から購入した。GW9662は、Cayman Chemicals(米国ミシガン州アナーバー(Ann Arbor Michigan USA))から購入した。アディプシン(補体D因子)は、Calibiochem(米国カリフォルニア州サンディエゴ(San Diego CA USA))から購入した。ヘマトキシリンは、DAKO corp.(米国カリフォルニア州カーピンテリア(Carpinteria CA USA))から購入した。エオシンは、ICN Biomedicals Inc.(米国オハイオ州オーロラ(Aurora Ohio USA))から購入し、エンテランは、MERCK(ドイツ ダルムシュタット(Darmstadt Germany))から購入した。
【0125】
マウスケラチノサイトの単離及び培養:一次ケラチノサイトを、参考(reference)18で記載するような新生児の皮膚から単離した。ケラチノサイトを、8%Chelex(Chelex−100、BioRad)で処理したウシ胎児血清を含有するイーグル最小必須培地(EMEM)で培養した。増殖性基底細胞表現型を維持するために、最終Ca2+濃度を0.05mMに調整した。プレーティングして5〜7日後に実験を行った。
【0126】
ケラチノサイト遊走アッセイ:一次マウスケラチノサイトを、PPARγアンタゴニストであるGW9662(μM)又はPPARγアゴニストであるトログリタゾン(μM)で処理しない、或いは処理した。処理して24時間後、創傷擦過アッセイを行い、創傷直後(0日)、及び48時間(2日)後、代表的な野を写真撮影した。創傷の閉鎖の平均を、創傷擦過の初期幅に比べて百分率(創傷の閉鎖%)として表した。
【0127】
創傷治癒アッセイ:C57BLマウスの背部に20mmの切開によって創傷を作製し、様々な作用物質で毎日6日間処理した。創傷の6日後に、マウスを屠殺した。創傷の生検材料を採取し、加工し、様々な創傷治癒パラメータ、すなわち創傷収縮、脂肪細胞の遊走及び分化、表皮細胞遊走、並びに表皮の閉鎖について形態学的及び/又は組織化学的な分析を行った。
【0128】
創傷収縮分析:創傷領域を、処理前後に測定し、創傷領域の低減パーセントを算出した。
【0129】
パラフィン包埋された創傷切片の調製:創傷の生検材料を4%パラホルムアルデヒドで固定し、次いで増加する濃度のエタノール(50〜100%)で脱水した。脱水調製物を、まずパラフィン50%とキシレン50%の溶液、次いで純パラフィンに浸漬した。次いで、このパラフィンブロックをミクロトームで薄切し、切片をSuper Frost(商標)スライドにマウントした。
【0130】
H&E染色:パラフィン包埋された創傷切片スライドを、60℃で60分間インキュベートし、スライドをトルエン(100%)で10分間2回、エタノール100%で15分間1回、及びエタノール100%で10分間1回洗浄することによって脱パラフィンした。脱パラフィンしたスライドをヘマトキシリン(すぐ使用できる溶液)で10分間染色し、水ですすぎ、エオシン(DDW中0.5%)で5分間染色し、次いで70%エタノールで1分間洗浄した。その後、スライドを、95%エタノールで5分間1回、100%エタノールで5分間2回、及びキシレン(100%)で10分間2回洗浄することによって脱水し、次いでエンテラン(MERCK、ドイツ ダルムシュタット(Darmstadt Germany))を使用してシールした。
【0131】
ケラチン4及びケラチン14染色:パラフィン包埋された創傷切片スライドを、上記のH&E染色で記載したように脱パラフィンし、ブロッキング液(PBS中5%BSA及び5%Tween 20(商標))で1時間インキュベートした。次いで、スライドを、抗ケラチン1又は抗ケラチン14抗体(Babco−Covance)でブロッキング液(PBS中5%BSA及び5%Tween 20(商標))中(1:1000)で、4℃で終夜インキュベートした。その後、スライドを、洗浄用緩衝剤(PBS中5%Tween 20(商標))で5回洗浄し、続いてビオチン化ヤギ抗ウサギ抗体(ZYMED Laboratories Inc.)をブロッキング液(PBS中5%BSA及び5%Tween 20(商標))中に懸濁させて(1:200)1時間インキュベートした。次いで、スライドを洗浄用緩衝剤で3回洗浄し、続いて第二級ビオチン化ストレプトアビジン抗体をブロッキング液に溶かして(1:300)室温で1時間インキュベートした。その後、スライドを、洗浄用緩衝剤で5分間2回、PBSで5分間1回、及びTRIS緩衝剤(PBS中0.05M)で1回洗浄し、続いて発色のためDAB試薬(DDWに溶解させた1金1銀の2錠)でインキュベートした。スライドを水に浸漬することによって反応を終結し、続いてエオシン(DDW中0.5%ICN)で対比染色した。
【0132】
実験結果
(実施例1)
創傷治癒プロセス中における脂肪細胞と遊走性ケラチノサイトとの関係
遊走表皮細胞(ケラチノサイト)及び動員脂肪細胞が7日齢の創傷組織で観察された(図2A〜B)。観察された動員脂肪細胞は、貯蔵脂肪を本質的に含んでいないと思われた(すなわち、初期の脂肪細胞)。図1で理解できるように、遊走性ケラチノサイトは、未処理の創傷の約60%で創隙全体にわたって観察され、動員脂肪細胞も未処理の創傷の約60%に存在した。図1は、遊走性ケラチノサイト及び動員脂肪細胞がそれぞれ、インスリンで処理した創傷の約90%及び80%で観察されたことも示している。
【0133】
これらの結果によって、創傷治癒プロセスの初期段階中におけるケラチノサイトの創隙領域への遊走は、同じ領域への脂肪細胞の動員と密接に関連していることが判明する。したがって、結果は、脂肪蓄積細胞に完全には分化していない遊走脂肪細胞が、創傷治癒プロセスに関与していることを示唆している。
【0134】
(実施例2)
PPARγモジュレーターがケラチノサイト遊走及び創傷収縮に及ぼす効果
ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体γ(PPARγ)の活性を阻害すること又は高めることがケラチノサイト遊走に及ぼす効果をin vitroで評価した。図3で理解できるように、培養一次マウスケラチノサイトをPPARγアンタゴニストであるGW9662で処理すると、ケラチノサイト遊走が促進された。一方、培養ケラチノサイトをPPARγアゴニストであるトログリタゾンで処理すると、ケラチノサイト遊走を阻害した(図8)。
【0135】
PPARγアンタゴニスト及びアゴニストをそれぞれ使用して、PPARγの活性を阻害すること又は高めることが創傷治癒に及ぼす効果を、in vivoでも評価した。したがって、C57BLマウスの背部に切創を作製し、PBS緩衝剤(対照)又は様々な作用物質で毎日6日間処理した。創傷して6日後、マウスを屠殺し、次いで創傷を分析した。図4、5、及び6で理解できるように、GW9662(PPARγアンタゴニスト)で処理すると、対照に比べて創傷収縮が促進された。一方、トログリタゾン(PPARγアゴニスト)で同様の処理を行うと、創傷収縮が阻害された(図9)。さらに、トログリタゾンは、インスリンによって誘導される創傷治癒を損なう(図9及び10)。
【0136】
したがって、結果は、PPARγ活性化は創傷治癒を妨げること、PPARγ阻害は創傷治癒プロセスを効果的に促進できることを明確に実証している。したがって、結果は、GW9662などのPPARγアンタゴニストを使用して、創傷治癒を効果的に加速することができることを示唆している。
【0137】
(実施例3)
アディプシンがケラチノサイト遊走及び創傷収縮に及ぼす効果
アディプシン(脂肪細胞から分泌される補体D因子)が創傷治癒に及ぼす効果をin vivoで評価した。したがって、C57BLマウスの背部に切創を作製し、PBS緩衝剤(対照)又は1μMのアディプシンで毎日6日間処理した。創傷して6日後、マウスを屠殺し、次いで創傷を分析した。図4、5、及び7で示されているように、アディプシンは、創傷収縮を実質的に促進した(図4、5、及び7)。さらに、アディプシンは、緩衝液で処理した対照(緩衝液対照)に比べて、表皮の閉鎖を約15%から約30%に高め、ケラチノサイト遊走を約30%から約65%に高めた(図6)。
【0138】
これらの結果は、アディプシンなどのアディポカインが効果的に創傷治癒を誘導又は加速することができることを実証している。
【0139】
明確にするために別々の実施形態で記載されている本発明のいくつかの特徴を、単独の実施形態で組み合わせて提供できることも理解される。逆に、簡潔のために単独の実施形態で記載されている本発明の様々な特徴を、別々に又は適切な任意の小組合せで提供することもできる。
【0140】
本発明をその特定の実施形態に関連して記述してきたが、多くの代替形態、修正形態、及び変形形態が当業者に明らかであることは自明である。したがって、添付の特許請求の範囲の精神及び幅広い範囲内に含まれるこのような代替形態、修正形態、及び変形形態のすべてを包含するよう意図されている。刊行物、特許、特許出願、並びに本明細書で記載されている名称及び/又はデータベースアクセッション番号によって特定される配列のすべては、個々の刊行物、特許、特許出願、又は配列がそれぞれ、参照により本明細書に組み込まれるように具体的に且つ個別に示唆されている場合と同程度に参照によりその全体を本明細書に組み込まれる。さらに、本願における参考文献の引用又は識別は、本発明にとってこのような参考文献を従来技術として利用できることを認めるものと解釈されないものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は加速するための局所塗布用の薬剤組成物であって、アディプシンを除くアディポカイン及び脂肪細胞モジュレーターからなる群から選択される作用物質の治療上有効量、及び薬剤として許容できる担体を含む、薬剤組成物。
【請求項2】
アディポカインが、脂肪細胞によって分泌される生物活性分子であって、脂肪細胞によって分泌される酵素、成長因子、サイトカイン及びホルモンからなる群から選択される、請求項1に記載の薬剤組成物。
【請求項3】
アディポカインが、アディポネクチン、レジスチン、レプチン、リポタンパク質リパーゼ、アンジオテンシノーゲン、アンジオテンシン様4,1−ブチリルグリセロール、マトリックスメタロプロテアーゼ2、マトリックスメタロプロテアーゼ9、血管内皮増殖因子(VEGF)、インターロイキン6及び腫瘍壊死因子α(TNF−α)からなる群から選択される、請求項2に記載の薬剤組成物。
【請求項4】
脂肪細胞モジュレーターが、脂肪細胞からのアディポカインの発現及び/又は分泌を調節することができる作用物質、脂肪細胞の分化を調節することができる作用物質、脂肪細胞を皮膚創傷に誘引することができる作用物質、又は皮膚創傷において脂肪細胞の増殖を高めることができる作用物質である、請求項1に記載の薬剤組成物。
【請求項5】
脂肪細胞の分化を調節することができる作用物質が、PPAR−γアンタゴニスト、好ましくはGW9662である、請求項4に記載の薬剤組成物。
【請求項6】
皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は加速するための薬剤組成物であって、皮膚創傷への移植用に設計され、治療上有効量の脂肪細胞、前脂肪細胞又は幹細胞、及び薬剤として許容できる担体を含む、薬剤組成物。
【請求項7】
脂肪細胞、前脂肪細胞又は幹細胞が、ヒトの脂肪細胞、前脂肪細胞又は幹細胞、好ましくは自家ヒトの脂肪細胞、前脂肪細胞又は幹細胞であって、
脂肪細胞又は前脂肪細胞は、脂肪細胞モジュレーターに予め曝露させておくことができ、及び、幹細胞は、幹細胞の脂肪細胞への分化を高めることができる物質に予め曝露させておくことができる、
請求項6に記載の薬剤組成物。
【請求項8】
脂肪細胞モジュレーターが、PPAR−γアンタゴニスト、好ましくはGW9662である、請求項7に記載の薬剤組成物。
【請求項9】
皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は加速するための、局所投与用、特に皮下投与用に設計された薬剤組成物であって、アディプシンを除くアディポカインをコードするポリヌクレオチドを含むウイルスベクター、好ましくはアデノウイルスベクターの治療上有効量、及び薬剤として許容できる担体を含む、薬剤組成物。
【請求項10】
アディポカインが、アディポネクチン、レジスチン、レプチン、リポタンパク質リパーゼ、アンジオテンシノーゲン、アンジオテンシン様4,1−ブチリルグリセロール、マトリックスメタロプロテアーゼ2、マトリックスメタロプロテアーゼ9、血管内皮増殖因子(VEGF)、インターロイキン6及び腫瘍壊死因子α(TNF−α)からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
【請求項11】
皮膚創傷が、長期床上安静による褥瘡、外傷によって誘導された創傷、切創、潰瘍、熱傷又は外科的切開である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の薬剤組成物。
【請求項12】
薬剤組成物が、水性液剤、ゲル剤、クリーム、パスタ剤、ローション剤、スプレー剤、懸濁剤、粉剤、分散剤、膏薬及び軟膏剤からなる群から選択され、固体支持体を含んでいてもよい、請求項1〜5のいずれか一項に記載の薬剤組成物。
【請求項13】
皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は加速するための局所塗布用に適合させた薬剤組成物の製造のためのアディプシンを除くアディポカイン及び脂肪細胞モジュレーターからなる群から選択される作用物質の使用。
【請求項14】
皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は加速するための皮膚創傷への移植用に適合させた薬剤組成物の製造のための脂肪細胞、前脂肪細胞及び幹細胞からなる群から選択される作用物質の使用。
【請求項15】
皮膚創傷の細胞を、アディプシンを除くアディポカインを発現し分泌するように形質転換して、それによって、皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は加速するための薬剤組成物の製造のためのアディポカインをコードするポリヌクレオチドを含むウイルスベクター、好ましくはアデノウイルスベクターの使用。
【請求項16】
作用物質がアディポネクチンである、請求項1の薬剤組成物。
【請求項17】
アディポカインがアディポネクチンである、請求項9の薬剤組成物。
【請求項18】
作用物質がアディポネクチンである、請求項13の使用。
【請求項19】
アディポカインがアディポネクチンである、請求項15の使用。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−68663(P2011−68663A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−264697(P2010−264697)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【分割の表示】特願2006−522494(P2006−522494)の分割
【原出願日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(506041730)ヒーラー リミテッド (2)
【Fターム(参考)】