説明

創傷被覆材用光重合性材料

水の存在下で光重合性の組成物であって、(a)オレフィン系不飽和結合と柔軟性のある親水性鎖とを有する第1の水溶性モノマーと、(b)オレフィン系不飽和結合と硬化に際して粘着性を付与する基とを有し、かつ高いラジカル重合効率を有する、第1のモノマーの重量に対して0.2から20重量部の第2の水溶性モノマーと、(c)第1のモノマーの重量に対して0.001から0.5重量部の架橋剤と、(d)第1のモノマーの重量に対して0.001から0.5重量部の光開始剤と、(e)組成物の全重量に対して20%超から50重量%までの低分子量ポリオールとを含む組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合性材料に関し、より詳細には光重合性組成物、前記組成物を重合して得られる接着性組成物、および、その接着性組成物の使用、例えば創傷被覆材の製造における使用に関する。本発明は特に、開放創の治療、外科的開口および切開のためのヒドロゲル創傷被覆材用のシート材料の製造に適用することができるが、これに限るわけではない。
【背景技術】
【0002】
炭水化物から誘導される材料をベースとしたヒドロゲル、およびその創傷被覆材への適用はよく知られている。そうした材料が特許文献に(例えば、特許文献1、2、3および4参照)記載されている。
【0003】
特に、特許文献5には、水の存在下で光重合性であり、
(a)オレフィン系不飽和結合と柔軟性のある親水性鎖を有する第1のモノマーと、
(b)オレフィン系不飽和結合と高い重合効率を有しており、硬化の際の粘着性に寄与することができる第2のモノマーと、
(c)架橋剤と、
(d)光開始剤と
を含む組成物が記載されている。
【0004】
特許文献5は、上記組成物の光重合によって得られる接着性ゲル組成物も記載している。
【0005】
創傷被覆材用に適したヒドロゲルの作製においては、多くの競合する要件を満たす必要がある。ヒドロゲルは、好ましくは、創傷周りの皮膚に粘着するが、患者を不快にさせることなく、治癒領域に裂傷を負わせることなく、かつそこに損傷を与えることなく剥離によって取り除くことができなければならない。ヒドロゲルは好ましくは、創傷領域に適合するものでなければならず、かつ伸縮可能であり、水和により粘着性となることが望ましい。また、そのヒドロゲルは細胞に有毒なものであったり、溶血性であったりしてはならない。それは、創傷の治癒の進行が観察できるように透明または透けて見えることが好ましい。ヒドロゲルは、創傷の分泌物を吸収することができなければならず、創傷部に浸出して肉芽組織の形成を妨げる恐れがある成分を含まないようにしなければならない。最後に、ヒドロゲルは殺菌できなければならず、好ましくは放射線によって殺菌できなければならない。特許文献5の組成物は、上記の望ましい特性の多くを有しているが、皮膚への粘着能力のすべて、またはほぼすべてを失うことなく放射線により殺菌することはできない点で、大きな欠陥があることが分かっている。放射線照射は、最適な殺菌方法であるので、そのことは、その組成物を創傷被覆材として実質的にあまり望ましくないものにしている。
【0006】
特許文献5は、2から20重量%のプロピレンジオール(プロパン−1,2−ジオール)を光重合性組成物に付加して、適切なレベルの粘着性を提供する助けとすることを提案しているが、20重量%までのプロピレンジオールを含む特許文献5の組成物は、実際には放射線照射後、ヒトの皮膚に十分な粘着をもたらさないことが分かっている。さらに、特許文献5の実施例では、10重量%を超えるプロピレンジオールを付加させると望ましくない高い粘着性がもたらされることが記述されており(実施例II)、16重量%を超えるプロピレンジオールを付加させると相分離が起こることが記述されている(実施例14)。
【0007】
【特許文献1】国際公開第95/17166号パンフレット
【特許文献2】欧州特許出願公開第0455324号明細書
【特許文献3】国際公開第88/08310号パンフレット
【特許文献4】国際公開第98/19311号パンフレット
【特許文献5】国際公開第00/14131号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、放射線によって殺菌することができる接着性創傷被覆材用のヒドロゲルが依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
驚くべきことに、出発材料を適切に選択することによって、放射線により殺菌可能な創傷被覆材のための接着性組成物を形成させることができる光重合性組成物を製造することができることを見出した。
【0010】
本発明の第1の態様によれば、水の存在下で光重合性であり、
(a)オレフィン系不飽和結合と柔軟性のある親水性鎖を有する第1のモノマーと、
(b)オレフィン系不飽和結合と硬化に際して粘着性を付与する基を有し、かつ高いラジカル重合効率を有する、第1のモノマーの重量に対して0.2から20重量部の第2のモノマーと、
(c)第1のモノマーの重量に対して0.001から0.5重量部の架橋剤と、
(d)第1のモノマーの重量に対して0.001から0.5重量部の光開始剤と、
(e)組成物の全重量に対して20%超から50重量%までの低分子量ポリオールと
を含む組成物を提供する。
【0011】
本発明の第2の態様によれば、上記の(a)から(e)の成分を含む水溶液を、光に曝露するステップを含む、接着性ゲル組成物の製造方法を提供する。
【0012】
本発明の第3の態様によれば、シート状のゲル組成物を放射線にかけるステップを含む殺菌した接着性創傷被覆材の製造方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
第1のモノマー
上記組成物において、第1のモノマーは、オレフィン系不飽和結合と、柔軟性のある親水性鎖、好ましくはエチレン基または他のアルキレン基と結合したオリゴマー性ポリオキシアルキレン鎖と、を有する水溶性化合物である。好ましい部類の化合物は以下の式の化合物である。
【0014】
【化1】

【0015】
(式中、R1はヒドロキシルまたはC1〜C4アルコキシを表し、
2はC2〜C3アルコキシを表し、
3は−O−または−CO−であり、
4、R5およびR6は水素またはC1〜C4アルキルを表し、
nは1〜25、好ましくは約5〜10である)。
【0016】
前記ポリオキシアルキレン鎖はポリエチレングリコール鎖であってよく、該ポリエチレングリコール鎖に少量のポリプリピレングリコール、またはその親水特性を妨げないか毒性を付与しない他の単位を含んでもよい。上記式のうちで特に好ましい部類の化合物は、R1がヒドロキシル−、メトキシ−またはエトキシ−を表し、R2がエトキシ−(任意選択で少量のプロポキシ−または他のアルコキシ単位を有する)を表し、R3が−CO−を表し、R4がメチルを表し、R5およびR6が水素を表すものである。
【0017】
以下の式の化合物が好ましい。
CH3,CH2,O(CH2CH2O)nCOC(CH3)=CH2
3CO(CH2CH2O)nCOC(CH3)−CH2または
HO(CH2CH2O)nCOC(CH3)−CH2
(式中、nは上記と同様である)。いくつかの用途では、次式の化合物も好ましい。
CH2=CH(CH3)−CO[OCH2CH2(CH3)]p[OCH2CH2qOH
(式中、pおよびqは正の整数であり、但し、pとqの合計は2〜25、好ましくは約5〜10の範囲である)。
【0018】
上記のすべての化合物は、好ましくは水溶性液体の形態である。その分子量は、好ましくは200〜700、より好ましくは300〜600、最も好ましくは約350〜400の範囲である。
【0019】
第2のモノマー
第2のモノマーは、次式であってよい水溶性化合物である。
CH2=CR78
(式中、R7は水素またはメチルを表し、R8は得られるポリマーゲルに皮膚付着性を付与するが毒性は付与しない極性非オリゴマー性非イオン基を表す)。R8の例には
−CONR910
(式中、R9、R10は水素、低級(C1〜C4)アルキルまたは低級ヒドロキシアルキルを表す)が含まれる。この部類の化合物には、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドおよびN−(2−ヒドロキシプロピル)−メタクリルアミドが含まれる。R8
−COOR11
(式中、R11はC1〜C4モノ、ジもしくはポリ−ヒドロキシアルキル基を表す)も含むことができる。この部類の化合物には、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、グリセリルモノアクリレートまたはグリセリルモノメタクリレートが含まれる。R8は置換アミノ基も含むことができ、該窒素原子に結合した環状基(該環状基は任意選択で>C=Oまたは−OH基で置換されていてよい)を含む。適切な化合物はN−ビニルピロリドンである。R8はアルキルスルホン基も含むことができる。適切な化合物はビニルメチルスルホンである。
【0020】
架橋剤
架橋剤は好ましくは次式の化合物である。
【0021】
【化2】

【0022】
(式中、R13はHまたはCH3であり、R12は極性結合基を表し、好ましくは水溶性である)。R12は、所望の組合せの特性を提供するように選択することができ、オレフィン性基間の長さがより長いほど、ゲルはよりマクロ孔質性となる。適切な架橋剤は水溶性または水混和性のジオレフィン性アクリレートまたはメタクリレート、例えば
CH2=CH(CH3)−CO−O−CH2−CH2−O−COCH(CH3)=CH2
CH2=CH−CO−NH−CH2−NH−CO−CH=CH2および
CH2=C(CH3)−CO−O−(CH2CH2O)n−O−CO−C(CH3)=CH2
(但し、nは整数である)である。
【0023】
重合を水系で行う場合、架橋剤は水溶性であることが好ましい。
【0024】
光開始剤
重合後にヒドロゲル中に細胞毒性の残留物を残さない限り、任意の適切な光開始剤を用いることができる。好ましい光開始剤の例には、
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン
が含まれる。
【0025】
低分子量ポリオール
低分子量ポリオールは、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、低分子量ポリエチレングリコール(例えば、1000未満、好ましくは500未満のMW)またはグリセロールであってよい。特定の理論に拘泥するわけではないが、ポリオールの一部は連鎖移動によってポリマー構造中に取り込まれ、ポリオールの一部は取り込まれないままとなると考えられる。
【0026】
本発明による特に好ましい組成物では、第1のモノマーはポリエチレングリコールモノメタクリレートであり、第2のモノマーは2−ヒドロキシエチルアクリレートであり、架橋剤はポリエチレングリコールジメタクリレートであり、ポリオールはプロピレングリコールである。
【0027】
本発明の他の特徴
ガンマ線またはベータ線を照射させて殺菌した後でも、所望の接着特性を有するヒドロゲルを得るためには、その成分と相対量を正しく選択することが重要であることが判明した。第1のモノマーはヒドロキシル末端の材料であることが好ましい。
【0028】
第2のモノマーはヒドロキシル置換のアクリレートまたはメタクリレートであり、第1のモノマーの重量に対して0.2から20重量部、最も好ましくは1から10重量部の量で存在することが好ましい。
【0029】
架橋剤は水溶性ジオレフィン性アクリレートまたはメタクリレートであり、第1のモノマーの重量に対して0.001から0.5重量部、最も好ましくは0.03から0.3重量部の量で存在することが好ましい。
【0030】
低分子量ポリオールはプロピレングリコールであることが好ましい。加えるポリオールの量は、放射線照射後の組成物の所望の粘着性に依存することになる。ポリオールは25から45重量%、より好ましくは30から45重量%、最も好ましくは35から45重量%の量で存在することが好ましい。
【0031】
本発明の未硬化組成物は増粘剤をさらに含むことができ、特に、第1のモノマーの重量が第2のモノマーの量に対して比較的少ない場合、例えば、それらが約1:10の重量比である場合はそうである。例えば、ポリビニルアルコールは、未硬化組成物に粘性を付与し、該組成物が剥離紙上に施すことができるようにする。それが存在しないと、均一な層を得ることが困難になる可能性がある。混入させる量は、硬化組成物の所望の粘着性にも関連して選択することになり、混入させるポリビニルアルコールの量が増加すると、一般に、硬化組成物の粘着性が低下する結果となる。炭水化物をベースとした増粘剤も含めることができ、例えば、キトサン(これは、治癒特性を有すると考えられているので好ましい)、カラギーナンまたはグアーガムを挙げることができる。
【0032】
ゲル組成物を、直ぐには使用せず、硬化させる前に保存するか、かつ/または輸送する場合、早期に重合してしまうのを防止するために、ラジカル重合防止剤、例えば4−メトキシフェノールまたはヒドロキノンを加えることが望ましい。
【0033】
該組成物は生物学的に活性な材料をさらに含むことができ、該材料は重合の際に保持され、ヒトまたは動物の身体に施用されたときに重合組成物から徐々に放出される。創傷被覆材用の平板状シート・ヒドロゲルの場合、生物学的に活性な材料は、例えば、成長因子、抗菌剤、抗真菌剤、防腐剤、麻酔剤、創傷清拭剤、抗炎症剤、酵素または細胞栄養素であってよい。経皮パッチの場合、組成物は、経皮投与できる薬物をさらに含むことができる。
【0034】
組成物の重合
組成物は、紫外線により重合させることができ、0.1〜3mm、一般に約1.5mmの厚さの層に事前成形することができる。該成形は、混合物を基材上に注加し、該混合物を光により重合させて、透明で密着性があり、粘着性で水吸収性である水不溶性シートゲルを形成することによってなされる。重合したシートは自己支持性であり内部強化材を必要としない。これは、伸縮性が是非必要な場合には有利である。しかし、所望により、重合させる前に、補強材、例えば網目状の繊維材料を組成物中に混入させることができる。シート組成物の場合、下地シートや剥離紙シートを用いて、皮膚に貼れるようにすることもできる。
【0035】
受け皿に重合混合物を送って紫外線源を通し、得られた重合シートを受け皿から取り出すことによって、少量のヒドロゲルを一括処理で(in batches)作製することができる。より大量には、エンドレス・ベルト(例えば剥離剤を塗布したプラスチック材料でできている)を用いて製造することができる。該ベルトは、重合混合物をベルト上に所望の深さに注加する注加工程(casting station)と、混合物に紫外線を適用する重合工程(polymerization station)と、ベルトからヒドロゲルのシートを取り出す剥離工程(stripping station)と、剥がされたシートを好都合なサイズの断片に切断する切断工程(cutting station)とを通って連続的に進む。
【0036】
切断したシートは殺菌(好ましくは放射線によって殺菌)し、ブリスター包装(blister pack)か密封小袋に詰めることができる。
【0037】
組成物の使用
平板状シートゲルの具体的な用途は創傷被覆材であり、例えば、上記したような火傷、外科的開口および切開(例えば結腸切開)用途、薬物送達パッチ用途、あるいは微生物学的スワブ用途(microbiological swabs)用途の創傷被覆材である。
【0038】
照射
硬化させたヒドロゲルは、粒子線、例えばベータ線照射(電子ビーム)で殺菌することができるが、ガンマ線照射でヒドロゲルを殺菌して、殺菌した創傷被覆材を形成することが好ましい。一般に、放射線量は15から55キログレイの範囲である。照射作用によって、ヒドロゲルの粘着性および接着性はかなり低下するが、本発明の好ましい実施形態によれば、硬化性組成物の成分の選択を適切に行えば、優れた殺菌した接着性ヒドロゲル創傷被覆材を得ることができることが判明した。
【0039】
粘着性
重合し、かつ照射された組成物が妥当な程度に粘着性であることは、創傷被覆材としての成果を挙げるのに非常に重要である。ヒドロゲルは、乾燥皮膚に十分粘着するが、湿潤した皮膚に対しては、治癒領域に損傷を与えることなく、創傷部位から取り除くことができるほどに弱くしか粘着しないのが理想的である。
【0040】
しかし、ヒドロゲルが十分粘着した場合でも、剥離により不快感なく容易に取り除けなければならない。ヒドロゲルの引張強度がその接着剥離強度より大きく、その結果、裂けたり破損したりすることなく容易に取り除くことができることが好ましい。照射されたヒドロゲルのヒトの乾燥皮膚に対する接着剥離強度は、不快感なく剥離できるようにするためには、少なくとも1.0Nであるが、2.5Nを超えないことが好ましい。照射されたヒドロゲルのヒトの皮膚に対する接着剥離強度は1.5から2.0Nであることが最も好ましい。本明細書では、剥離強度は以下に説明する皮膚付着性試験により測定する。
【0041】
本発明を以下の実施例によって説明する。
【実施例1】
【0042】
本発明によるヒドロゲルの作製
ガラスビーカーを電子天秤上に置き、5.00gの脱イオン水をそれに加えた。次いで、以下の成分をピペットでビーカーに加えた。
8.00g 2−ヒドロキシエチルアクリレート
1.00g ポリ(エチレングリコール)メタクリレート、350(PEGモノ)
0.15g ポリ(エチレングリコール)ジメタクリレート(PEGジ)
0.25g Darocure1173
5.00g グリセロール
5.25g、7.00g、8.75g、10.50gまたは14.00gのプロピレングリコール(1,2−プロパンジオール)
【0043】
これらの配合物における、組成物の全重量に対するプロピレングリコールの割合は、それぞれ、21.3%、26.5%、31.1%、35.1%、41.9%であった。
【0044】
各成分を完全に混合し、次いで1枚のシリコン処理した剥離紙上に薄層を形成させた。これを5回転/分で回転するFusion LC6Eコンベアーを備えたUV硬化装置に通した。使用した電球は、15cmの長さで200〜400nmの波長を有するものであった。粘着性ゲルの自己支持型シートが剥離紙上に形成された。該ゲルは、柔軟性があり、剥離紙から取り除くのが容易であった。このゲルを、25キログレイの線量のガンマ線照射で殺菌した。照射後、これは乾燥皮膚に十分接着したが、湿潤皮膚へは殆んど、またはまったく接着しなかった。
【0045】
該ゲルは水を吸収した際も、その透明性、伸縮性および密着性を保持した。その重量、面積および厚さは増大したが、透明性や取扱い易さは保持された。接着性が保持されている乾燥皮膚上でそのゲルを取り替えることができた。生理食塩水での抽出および生理食塩水抽出物の赤血球との接触による生物試験によって、溶血反応や細胞毒性は示されなかった。硬化したゲルは、毒性量の未反応モノマーを有していないことが結論付けられた。
【0046】
ゲルの他の評価を実施した。具体的には、細胞毒性、皮膚炎症および溶血反応の試験に合格した。
【0047】
ゲルの水の取り込みについても試験した。計量したゲルの試料を塩化ナトリウム(5.6g)の水(600ml)溶液に入れ、時間間隔をおいて取り出し再計量した。24時間後、試料自体の約100%の水を取り込んでいることが分かった。
【0048】
皮膚付着性試験
以下の手順を用いてゲルの皮膚付着性を試験した。シリコン処理剥離紙で両面を覆ったゲル層を切断して、幅2.5cm、長さ10cmの試料を作製した。試料の一端で、ゲル層の小さな面積部分を剥離紙から分離し、該ゲル層に強力紙挟み(bulldog clip)を取り付けた。剥離紙を一方の面から取り外し、これを剃ったヒトの皮膚に貼付し、他方の面上の剥離紙は、ゲルが乾燥するのを避けるためにそのままにしておいた。気泡を排除するように注意し、500gの荷重を剥離紙の上で5〜6回通過させて、下にあるゲル層が皮膚にしっかり押し付けられるようにした。強力紙挟みを力測定装置の一方の端部に連結し、糸を介してその他端を電動機に連結した。電動機に電源を入れると、その糸に張力が生じてゲル層は皮膚から引っ張られた。ゲル層を皮膚から引っ張る力を記録した。
【0049】
皮膚付着性試験の結果を表1に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
他の比較例では、組成物において20重量%のプロピレングリコールを用いたこと以外は上記の手順を繰り返した。その組成物の皮膚付着性は1N未満であった。
【0052】
読者の注目は、本出願に関連して本明細書と同時か本明細書に先行して出願され、かつ、本明細書とともに閲覧できるすべての文献および文書に向けられる。そうしたすべての文献および文書の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0053】
本明細書(添付した特許請求の範囲、要約および図面のいずれをも含む)で開示した特徴のすべて、および/または開示した方法又はプロセスのすべてのステップは、そうした特徴および/またはステップの少なくともいくつかが互いに相容れない組合せである場合を除いて、任意の組合せで組み合わせることができる。
【0054】
本明細書(添付した特許請求の範囲、要約および図面のいずれをも含む)で開示した各特徴は、別段の指定のない限り、同一であるか同等か類似した目的に役立つ代替の特徴で置き換えることができる。したがって、別段の指定のない限り、開示した各特徴は、包括的な一連の同等か類似した特徴の一例に過ぎない。
【0055】
本発明は、上記したどの実施形態の詳細にも限定されるものではない。本発明は、本明細書(添付した特許請求の範囲、要約および図面のいずれをも含む)で開示した新規な特性のいずれにも、または特性の新規な組合せのいずれにも拡張されるものであり、あるいは、そのように開示した新規な方法またはプロセスのステップのいずれにも、または方法またはプロセスのステップの新規な組合せのいずれにも拡張されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水の存在下で光重合性の組成物であって、
(a)オレフィン系不飽和結合と柔軟性のある親水性鎖を有する第1の水溶性モノマーと、
(b)オレフィン系不飽和結合と硬化に際して粘着性を付与する基とを有し、かつ高いラジカル重合効率を有する、第1のモノマーの重量に対して0.2〜20重量部の第2の水溶性モノマーと、
(c)第1のモノマーの重量に対して0.001〜0.5重量部の架橋剤と、
(d)第1のモノマーの重量に対して0.001〜0.5重量部の光開始剤と、
(e)組成物の全重量に対して20重量%超〜50重量%までの低分子量ポリオールと
を含むことを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記第1のモノマーは、エチレンまたは他のアルキレン基と結合したオリゴマー性ポリオキシアルキレン鎖を含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記第1のモノマーは次式の化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の組成物。
【化1】

(式中、
1はヒドロキシルまたはC1〜C4アルコキシを表し、
2はC2〜C3アルコキシを表し、
3は−O−または−CO−であり、
4、R5およびR6は水素またはC1〜C4アルキルを表し、
nは1〜25である)。
【請求項4】
前記ポリオキシアルキレン鎖はポリエチレングリコール鎖であり、少量のポリプリピレングリコールまたはその親水特性を妨げないか毒性を付与しない他の単位も任意選択で含んでよいことを特徴とする前記請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
1はヒドロキシル−、メトキシ−またはエトキシ−を表し、R2はエトキシ−(任意選択で少量のプロポキシ−または他のアルコキシ−単位を有する)を表し、R3は−CO−を表し、R4はメチルを表し、R5およびR6は水素を表すことを特徴とする請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
前記第1のモノマーは、
CH3,CH2,O(CH2CH2O)nCOC(CH3)=CH2
3CO(CH2CH2O)nCOC(CH3)−CH2または
HO(CH2CH2O)nCOC(CH3)−CH2
(式中、nは1から25の整数である)
であるか、前記第1のモノマーは、
CH2=CH(CH3)−CO[OCH2CH2(CH3)]p[OCH2CH2qOH
(式中、pおよびqは正の整数であり、但し、pとqの合計は2〜25の範囲である)
であることを特徴とする前記請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記第1のモノマーは200〜700の範囲の分子量を有する水溶性液体であることを特徴とする前記請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記第2のモノマーは、次式の化合物であって、
CH2=CR78
(式中、R7は水素またはメチルを表し、R8は極性非オリゴマー性非イオン基を表す)
得られるポリマーゲルに皮膚付着性を付与するが毒性は付与しない化合物であることを特徴とする前記請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
8
−CONR910
(R9、R10は水素、低級(C1〜C4)アルキルまたは低級ヒドロキシアルキルを表す)であるか、
8
−COOR11
(R11はC1〜C4モノ、ジもしくはポリ−ヒドロキシアルキル基を表す)
であるか、
8は置換アミノ基であって、窒素原子に結合している環状基を含み、該環状基は>C=Oまたは−OH基で任意選択で置換されているものであるか、
8はアルキルスルホン基であることを特徴とする請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記第2のモノマーは、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドまたはN−(2−ヒドロキシプロピル)−メタクリルアミド;2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、グリセリルモノアクリレートまたはグリセリルモノメタクリレート;N−ビニルピロリドンまたはビニルメチルスルホンであることを特徴とする請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記架橋剤は次式を有することを特徴とする前記請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【化2】

(式中、R13はHまたはCH3を表し、R12は極性結合基を表す)。
【請求項12】
前記架橋剤は水溶性または水混和性のジオレフィン性アクリレートまたはメタクリレートであることを特徴とする請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記架橋剤は、
CH2=CH(CH3)−CO−O−CH2−CH2−O−COCH(CH3)=CH2
CH2=CH−CO−NH−CH2−NH−CO−CH=CH2または
CH2=C(CH3)−CO−O−(CH2CH2O)n−O−CO−C(CH3)=CH2
(但し、nは整数である)
であることを特徴とする請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記光開始剤は、
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン
であることを特徴とする前記請求項1〜13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記低分子量ポリオールは、エチレングリコール、プロピレングリコール、低分子量ポリエチレングリコールまたはグリセロールであることを特徴とする前記請求項1〜14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記第1のモノマーはポリエチレングリコールモノメタクリレートであり、前記第2のモノマーは2−ヒドロキシエチルアクリレートであり、前記架橋剤はポリエチレングリコールジメタクリレートであり、前記ポリオールはプロピレングリコールであることを特徴とする前記請求項1〜15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記第2のモノマーは、前記第1のモノマーの重量に対して1〜10重量部の量で存在することを特徴とする前記請求項1〜16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記架橋剤は、前記第1のモノマーの重量に対して0.03〜0.3重量部の量で存在することを特徴とする前記請求項1〜17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記低分子量ポリオールは、組成物の全重量に対して25〜45重量%の量で存在することを特徴とする前記請求項1〜18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
前記低分子量ポリオールは、組成物の全重量に対して35〜45重量%の量で存在することを特徴とする前記請求項1〜19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
増粘剤をさらに含むことを特徴とする前記請求項1〜20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
前記請求項1〜21のいずれか一項に記載の組成物であって、生物学的に活性な材料をさらに含み、該組成物がヒトまたは動物の身体に施用されたときに、該材料は重合において保持され重合組成物から徐々に放出されることを特徴とする組成物。
【請求項23】
前記生物学的に活性な材料は、成長因子、抗菌剤、抗真菌剤、防腐剤、麻酔剤、創傷清拭剤、抗炎症剤、酵素または細胞栄養素であることを特徴とする請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
実質的に上記したものであることを特徴とする前記請求項1〜23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
請求項1〜24のいずれか一項に記載の組成物を、紫外線の存在下で光重合させるステップを含むことを特徴とする接着性組成物の製造方法。
【請求項26】
請求項25に記載の方法により作製することを特徴とする接着性組成物。
【請求項27】
請求項26に記載の接着性組成物を放射線照射することによって作製することを特徴とする殺菌された接着性組成物。
【請求項28】
1.0Nから2.5Nの接着剥離強度を有することを特徴とする請求項26または27に記載の組成物。
【請求項29】
1.5Nから2.0Nの接着剥離強度を有することを特徴とする請求項26〜28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
平板なシートの形態であることを特徴とする請求項26〜29のいずれか一項に記載の接着性組成物。
【請求項31】
請求項26〜30のいずれか一項に記載の接着性組成物を含むことを特徴とする創傷被覆材。
【請求項32】
ポリエチレングリコールモノメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレートおよびポリエチレングリコールジメタクリレートの重合残留物を含み、かつ、プロピレングリコールをさらに含むことを特徴とする架橋ポリマー組成物。

【公表番号】特表2008−509769(P2008−509769A)
【公表日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−526533(P2007−526533)
【出願日】平成17年6月3日(2005.6.3)
【国際出願番号】PCT/GB2005/002196
【国際公開番号】WO2006/018594
【国際公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(306038008)アバンティジェネシス リミテッド (2)
【Fターム(参考)】