説明

創薬に有用な大環状化合物ライブラリーのコンビナトリアル合成

【課題】大環状化合物ライブラリーの提供。
【解決手段】スクリーニングアッセイの実施、又は他の大環状化合物の製造に用いることができる合成化合物のライブラリーであって、2〜5のビルディングユニット、1〜4のアミノ酸、および分子全体の形状を制御するテザー鎖を組み込んだ大環状化合物のライブラリー。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、生物学上重要な構造を有する新規な大環状化合物に関する。
【0002】
本発明はまた、ラクタムまたはMitsunobu環化によるこれらの新規な化合物の製造方法に関する。
【発明の背景】
【0003】
だれもが知っているように、医薬品化学の研究はバイオテクノロジーによって劇的な変化を遂げた。これまでは合成化学および天然物スクリーニングが薬剤研究の中心であったが、現在では分子生物学がスクリーニングおよび分子標的の確定に続く駆動力となっている。
【0004】
近年、バイオテクノロジー関連会社のほとんどの研究は、それらの低いバイオアベイラビリティー、迅速な代謝、および経口活性の不足に関連する問題はあるにしても、ペプチドおよびタンパク質治療薬に向けられてきた。これらの制限のため、研究グループは、可能性ある薬剤の同定および至適化には未だ小分子が最も実効的な道である可能性が高いとの認識に基づいて、創薬に関しては非ペプチド物質の化学合成に頼り続けている。
【0005】
また、知られているように、コンビナトリアル化学は、好適な化学的ビルディングブロックと系統的に結合させることにより大規模な化学ライブラリーを得ることのできる手法である。組合せによるか、または高スループットスクリーニング手法と組み合せたいずれか他の高スループットパラレル合成法によって、かかる化学的に多様な大規模なライブラリーを得ることができれば、リード化合物創製および至適化の極めて有力な手段となる。
【0006】
医薬品会社は、コンビナトリアル合成の能力を利用して、分子の大規模なコレクション(またはライブラリー)を構築し、分子多様性に関する現存の情報源を増大させ、高スループットロボットスクリーニング装置を用いることにより、毎年数百万の生物学的アッセイデータ点を捕捉するように、その能力を十分に開拓することに益々関心を寄せている。
【0007】
この新しい科学はまだ成熟しておらず、現在までのところ、好結果を生む骨格のほとんどは、ごく少ない工程で一般に合成される小さな複素環から誘導される。そのため、いくつかの特定のライブラリーはベンゾジアゼピンのような生物活性コアを中心にして構築されてきた。しかしながら、このアプローチは革新的なリード化合物構造を作り出す真の方法と考えることはできない。むしろ、これは存在するリード化合物を至適化する手段であり、一般に薬剤開発計画に適用される。
【0008】
革新的なリード化合物を探索するランダムライブラリーは、現在のところごく少数である。一例として、ジケトピペラジンに基づいたライブラリーでは、種々の標的においてこのライブラリーをスクリーニングした後に、ニューロキニン-2受容体に対するマイクロモル以下の新規なリード化合物が得られた。
【0009】
必ずしも全ての骨格から可能性ある薬剤候補が得られるとは限らないことは明らかである。1または2段階の化学工程しか必要としないいくつかの極めて単純な分子は、それらから生み出しうるライブラリーが巨大な大きさであることから非常に魅力のあるものであると考えられる。それにもかかわらず、あまりにも単純な分子は標的特異性、薬剤となる分子の先行必要条件が不十分でありがちであるため、それらから有用なリード化合物は通常得られない。
【0010】
優れた医薬活性を有する一群の有機構造は「大員環」と呼ばれている。タキソール、エポシロン、エリトロマイシン、ネオカルチノスタチン、リファンピンおよびアンフォテリシンのような化合物は、臨床検査中またはすでに市販されている薬剤のいずれかであり、この重要な分類に属している。それらの合成に関する情報が不足しているために、通常は製薬業者がそれらに取り組むことがなく、これらの製品の大多数が自然に存在するものである。
【0011】
近年、本発明者らは大員環合成の分野の専門技術を開発した。かかる専門技術により、彼らはβ-ターンによく似た部分的ペプチド大員環ライブラリーの合成および評価方法を開発し、それによって莫大な量のコンホメーション制限構造の迅速な検索を可能にした。
【発明の目的および概要】
【0012】
本発明の第1の目的は、広範な種類の官能基を用いて、かつ広範な種類の溶媒系および樹脂の存在下で行うことができ、それゆえそれをスクリーニングアッセイの実施にまたは他の大環状化合物の合成の手段として用いることが可能な生物学上重要な構造を有する広範な種類の大環状化合物の製造に用いることのできる方法を提供することである。かかる合成化合物のライブラリーは、実際には、高スループット生物学的スクリーニングアッセイで現在使用されている抽出天然物のライブラリーと同様に魅力的である。
【0013】
本発明のもう1つの目的は、2〜5のビルディングユニット、1〜4のアミノ酸、および分子の全体の形状を制御するテザー鎖を組み込んだ大環状化合物のライブラリーを提供することである。
【0014】
さらに詳しくは、本発明の大環状化合物は一般式(I)を有する:
【化1】

【0015】
{式中、(A)部分はその-NH-基が
【化2】

【0016】
部分のカルボニル基と結合している
【化3】

【0017】
、-(CH2)y-二価の基、または共有結合であり;
(B)部分はその-NH-基が(A)部分と結合している
【化4】

【0018】
、-(CH2)z-二価の基、または共有結合であり;
(C)部分はその-NH-基が(B)部分と結合している
【化5】

【0019】
、-(CH2)t-二価の基、または共有結合であり;
(T)部分は-Y-L-Z-基であり;かつ
Xは-SO2-Ar、-SO2-CH3、-SO2CF3、-H、-COH、-CO-CH3、-CO-Ar、-CO-R、-CO-NHR、-CO-NHAr、-CO-O-tBu、-CO-O-CH2-Ar
【化6】

【0020】
であり、
・Arは芳香族基または置換芳香族基であり、
・aは0、1および2からなる群から選択される整数であり、
・Rはnが1ないし16の整数である一価の基-(CH2)n-CH3または-(CH2)n-Arであり、
・R0、R1、R2、R3およびR4
【化7】

【0021】
からなる群から独立に選択され、
R5、R61およびR62は各々-H、-SO2-CH3、-SO2-CF3、-COH、-COCH3、-CO-Ar、-CO-Rまたは-CO-NHR(ここで、Rは上記の定義に同じ)、-CONHAr、-COO-tBuおよび-COO-CH2-Arからなる群から独立に選択される一価の基であり、この基は
-O-CH3、-CH3、-NO2、-NH2、-NH-CH3、-N(CH3)2、-CO-OH、-CO-O-CH3、-CO-CH3、-CO-NH2、OH、F、Cl、BrおよびIからなる群から選択される少なくとも1個の一価の基で置換されていてもいなくともよく、
R7
-H、-COH、-CO-CH3、-CO-R(ここで、Rは上記の定義に同じ)、-CO-Arおよび-CO-tBuからなる群から選択される一価の基であり、この基は
-O-CH3、-CH3、-NO2、-NH2、-NH-CH3、-N(CH3)2、-CO-OH、-CO-O-CH3、-CO-CH3、-CO-NH2、OH、F、Cl、BrおよびIからなる群から選択される少なくとも1個の置換基で置換されていていなくともよく、
R8は-OH、-NH2、-OCH3、-NHCH3、-O-tBuおよび-O-CH2-Arからなる群から選択される一価の基であり、この基は
-O-CH3、-CH3、-NO2、-NH-CH3、-N(CH3)2、-CO-OH、-CO-O-CH3、-CO-CH3、-CO-NH2、OH、F、Cl、Br、Iからなる群から選択される少なくとも1個の基で置換されていてもいなくともよく、
R9は-H、-tBu、-CO-CH3、-COAr、-CO-R(ここで、Rは上記の定義に同じである)および-COHからなる群から選択される一価の基であり、この基は
-O-CH3、-CH3、-NO2、-NH2、-NH-CH3、-N(CH3)2、-CO-OH、-CO-O-CH3、-CO-CH3、-CO-NH2、OH、F、Cl、Brおよび、Iからなる群から選択される少なくとも1個の一価の基で置換されていていなくともよい
からなる群から選択される一価の基であり;
Yは二価の基-CH2または-CO-であり;
Zは二価の基-NH-または-O-であり;
x、y、zおよびtは0、1および2からなる群から各々独立に選択される整数であり;
Lは、下記からなる群から選択される二価の基である:
-(CH2)d-A-(CH2)j-B-(CH2)e-(dおよびeは独立に1ないし5の整数であり、jは0ないし5の整数であり、ここでAおよびBは、
-O-、-NH-、-NR-(ここで、Rは上記の定義に同じ)、-S-、-CO-、-SO-、-CO-O-、-O-CO-、-CO-NH-、-NH-CO-、-SO2-NH-、-NH-SO2-、
【化8】

【0022】
、立体配置ZまたはEを有する-CH=CH-、
1,2、1,3、または1,4位に置換基-G2-を有する
【化9】

【0023】
(G1
-O-、-NH-、-NR-(ここで、Rは上記の定義に同じ)、-S-、Z立体配置を有する-CH=CH-、および-CH=N-からなる群から選択され、
G2
-O-、-NH-、-NR-(ここで、Rは上記の定義に同じ)、-CO-O-、-O-CO-、-CO-NH-、-NH-CO-、-SO2NH-および-NH-SO2-からなる群から選択される)
からなる群から独立に選択される。
【0024】
上記化合物の塩もまた本発明の範囲内にある。
【0025】
理解されるように、本発明の新規な大環状化合物は、2〜5のビルディングユニット、1〜4のアミノ酸単位および分子の形状を制御するテザー鎖を組み込んでいる。
【0026】
これらの化合物はペプチダーゼに対し増強された安定性を示し、対応する開環した直鎖状の同等物と比べて、促進された細胞浸透性を示す。
【0027】
本発明のいくつかの化合物は、それらの環内にβ-ターンモチーフ:
【化10】

【0028】
を含んでいる。
【0029】
β-ターンは、ペプチドおよびタンパク質二次構造の3つの主要なモチーフの1つであることが知られている。β-ターンは、抗原および抗体間、ペプチドホルモンおよびそれらの受容体間、ならびに調節酵素およびそれらの対応する基質間の相互作用をはじめとする数多くの生物学的分子認識系において、重要な役割を果たしている。標的化された受容体との高い親和性と、それに対する選択的結合を得るために、β-ターン様構造は、受容体が結合するペプチドリガンド側鎖の機能性と配向性の両方を再現しなければならない。
【0030】
結合の原因である重要な残基の同定の困難を倍化するβ-ターン構造固有の多様性は、β-ターン様構造の設計を極めて困難かつ興味深いものにしている。
【0031】
理解されるように、本発明は、数多くの側鎖の組合せならびに複数の異なる側鎖配向を組み込んだそれらの構造に起因してβ-ターン様構造として用いることができ、それゆえに評価可能な化合物を提供することにより、上記の問題点を回避することを可能にする。
【0032】
β-ターン様構造のライブラリーの作製が本発明の目標であることは明らかである。しかしながら、本発明の目的はかかる化合物に限定されるものではない。本発明に従う数多くの他の化合物が存在し、その中には他の注目するジまたはトリペプチドモチーフを含むものがあって、それらの構造については、発明者らのコンホメーション制限的アプローチによりその活性コンホメーションを探求する必要がある。
【0033】
知られているように、細胞外マトリックスおよび血液中に存在する数多くの付着タンパク質には、それらの細胞認識部位としてトリペプチドアルギニン−グリシン−アスパラギン酸(RTGD)が含まれている。これらのタンパク質としては、フィブロネクチン、ビトロネクチン、オステオポンチン、カラゲーン(callagens)、トロンボスポンジン、フィブリノーゲンおよびフォンウィルブラント因子が挙げられる。付着タンパク質各々のRGD配列は、構造的に関連ある受容体、即ち、2つの膜貫通サブユニットを有するヘテロ二量体タンパク質であるインテグリン系の少なくとも一構成員によって認識される。これらの受容体にはただ1つの付着タンパク質のRGD配列とだけ結合するものもあるが、それらの一群を認識するものもある。個々のタンパク質におけるRGD配列のコンホメーションがこの認識特異性にとって決定的に重要である可能性がある。原形質膜の細胞質側では、受容体が細胞外マトリックスを細胞骨格に連結している。
【0034】
10を超える実証済みのまたは推定のRGD含有付着促進タンパク質がすでに同定されており、インテグリンファミリーは、少なくともこれらのタンパク質を認識する同数の受容体を含んでいる。付着タンパク質およびそれらの受容体は一緒になって、細胞に足場、移動のための牽引力および極性、配置、分化、およびおそらくは増殖のためのシグナルを提供する多才な認識系を構成している。制御されたトポロジーにおいて、配列Arg-Gly-Aspを含有する本発明の化合物は、細胞の細胞付着プロセスを阻害することができるであろう。かかる化合物は、抗血栓症および癌研究の分野において重要であると考えられる。
【0035】
また、本発明の範囲には、ジアリールブリッジを含有する上記式(I)の化合物も含まれる。
【0036】
理解されるように、本発明の化合物はかなりのフレキシビリティーを有しており、それらのスペーサー部分の性質によって、通常のβ-ターンとは極めて異なる構造にも採用することができる。これは本発明の範囲が広く、かつ分子モデリング設計によりβおよび非β-ターンの設計が可能になることを意味している。
【0037】
本発明の主要な利点は、式(I)の化合物が小さな環のように堅く結ばれすぎてもおらず、脂肪族鎖のように緩すぎもしないということである。
【0038】
上記の化合物を製造する本発明の方法は基本的に以下の工程:
a)カップリングによって、天然または合成アミノ酸に由来する次式で示される第1の構成要素を製造する工程と;
【化11】

【0039】
{式中、X、R1、A、B、Cは上記の定義に同じであり、カップリングが液相で行われる場合には、Spは
【化12】

【0040】
であり、かつ、Pは-CH3または-CH2-Phであり、かつ、カップリングが固相で行われる場合には、Spは
【化13】

【0041】
であり、かつ、Pはポリスチレンである}
b)工程a)で製造される第1の構成要素を、次式で示される第2の構成要素(以後「テザー」と呼ぶ)とカップリングする工程と;
H-Y-L-Z-PGz
{式中、Y、LおよびZは上記定義に同じであり、かつ、PGzは保護基である}、
c)工程b)で得られる化合物から保護基PGzを除去する工程と;さらに
d)工程c)で得られる非保護生成物の大環化を行い、上記の工程(a)および(b)が固相で行われる場合には切断して式(I)の所望の化合物を得る工程と
を含んでなる。
【0042】
認識され得るように、このプロセスは、ラクタムまたはMistunobu環化を用いて本発明の化合物のライブラリーを作製する。それは非常に用途が広く、コンビナトリアルな方法で、固相または液相のいずれかで行うことができる。
【0043】
本発明およびその利点については、限定されるものではないが、添付の図面に関する以下の詳細な説明および実施例によってさらに理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の式(I)の化合物を有し得る構造の詳細図。
【図1a】図1と同様の詳細図。
【図2】図1に示される「分類2」ライブラリーの一部である式(8)の化合物(式中、Yがメチレン基(-CH2-)であり、かつ位置1、2および3のアミノ酸がα-アミノ酸である(x、y、z=0))のライブラリーを得るために行わねばならない工程の順序を示す概略図。
【図2a】図2と同様の該略図。
【図2b】図2に同様の該略図。
【図3】図1に示される「第2分類」ライブラリーの一部である式(9)〜(12)の化合物(式中、Yがメチレン基(-CH2-)であり、かつ位置1、2および3のアミノ酸がα-アミノ酸である(x、y、z=0))の他のライブラリーを得るために行わねばならない工程を示す概略図。
【図4】図1に示される「第2分類」ライブラリーの一部である式(17)および(18)の化合物(式中、Yがカルボニル基(-CO-)であり、かつ位置1、2および3のアミノ酸がα-アミノ酸である(x、y、z=0))のライブラリーを得るために行わねばならない工程の順序を示す概略図。
【図4a】図4と同様の概略図。
【図4b】図4と同様の概略図。
【発明の詳細な記述】
【0045】
上記のように、本発明のプロセスは数多くの大環状化合物を製造するために十分に用途が広く、その主要な「分類」が図1に例示されている。このプロセスは、
a)天然または合成アミノ酸由来の第1のビルディングブロックをカップリングすることにより作製する工程、
b)工程a)で作製した第1のビルディングブロックと「テザー」と呼ばれる第2のビルディングブロックとをカップリングする工程、
c)工程b)で得られた化合物から保護基を除去する工程、および
d)工程c)で得られた保護されていない生成物の大環化を行って所望の化合物を得る工程
の基本的工程を含んでなるものである。
【0046】
上記のように、このプロセスにより、IRORI コンビナトリアル化学設備またはArgonault装置のような他の設備を用いて、液相中または固体支持体上のいずれかで、多数の化合物の製造が可能になる
図2aに示される合成では、「A」で示す適当に保護した第1のアミノ酸を、チオエステル(液相または固相)またはオキシムエステル(カイザー樹脂固相支持体)として活性化して、式(1)の化合物を得る。アミン保護(α-アミノ酸の場合はPGα、β-アミノ酸の場合はPGβ、γ-アミノ酸の場合はPGγ)を取り除いて、式(2)の化合物を得る。次いで、「B」で示す第2のアミノ酸を同様に加えて式(3)の化合物を得、続いてさらにアミン保護を取り除いて式(4)の化合物を得る。式(C)の第3の酸(図2b)と式(4)のアミンとをカップリングして式(5)のスルホンアミドを得、これを直ちにMitsunobu条件下で式(D)のアルコールとカップリングして式(6)の化合物を得る。この式(6)の化合物はまた、ペプチドと式(E)の酸とのカップリングにより、式(4)の化合物から直接得ることもできる。次いで、末端アルコール(Z=O)またはアミン(Z=NH)保護基(PGz)を切断して、対応する式(7)のアルコールまたはアミンを得、これに環化および切断を同時に施して、本発明の式(8)の所望の化合物を得ることができる。
【0047】
図3に示されるように、式(8)の化合物のオルト保護(PG1、PG2、PG3および第4のアミノ酸が導入される場合はPG4)を除去して本発明の式(9)の化合物を得ることができる。本発明の式(10)のもう1つの化合物は、分子のスルホンアミド部分の切断により式(8)の化合物から得ることができる。得られる遊離アミンを種々の酸(図1のX基参照)とカップリングして本発明の式(11)の化合物を得る。その後のオルト保護基(Xがアミノ酸である場合はPG0、PG1、PG2、PG3および第4のアミノ酸が導入される場合はPG4)の切断により本発明の式(12)の化合物を得る。
【0048】
図4に示されるように、式(4)のアミンから式(C’)のアミノ酸をカップリングして本発明の式(13)の化合物を得ることもでき、そのアミン保護基(PGa、PGbまたはPGg)を切断して式(14)のアミンを得ることもできる。次いで、式(D’)のヒドロキシ酸(Z=O)またはアミノ酸(Z=NH)をカップリングして本発明の式(15)の化合物を得る。さらに、末端アルコール(Z=O)またはアミン(Z=NH)保護基(PGz)を切断して対応する式(16)のアルコールまたはアミンを得、これに対して環化および切断を同時に行って、本発明の式(17)の所望の化合物を得ることができる。式(17)の化合物(図4b参照)のオルト保護(PG1、PG2、PG3および第4のアミノ酸が導入される場合はPG4)を取り除いて式(18)の化合物を得ることができる。
【0049】
上記の合成例では、位置1、2および3が占有されている「第2分類」種のライブラリーの作製を扱っている。図1に示される「第1分類、3分類および4分類」種のライブラリーもまさに同じ方法で作製することができる。「第1分類」種ライブラリーでは、エキストラアミノ酸が位置4に組み込まれている。「第3分類」種ライブラリーでは、位置3および4が空いており、「第4分類」種ライブラリーでは、位置2、3および4が空いている。
【0050】
このように何十、何百およびさらには幾千もの異なる化合物の化学ライブラリーを、有効かつ信頼性ある方法で生み出すことができる。このような事実から、医薬化合物の製造もしくはかかる医薬化合物の同定に向けた化学中間体または他の有用な種としてこれらのライブラリーを用いることができる。またこれらの化合物のいくつかのものは、さらなる改変を行わずに用いることができる。よって、かかる複合体ライブラリーを信頼性あるかつ予測可能な様式で作製できることが大いに望まれる。
【0051】
本明細書において使用される「医薬の」とは、いくつかの治療上または生理学上有益な作用を提供する化合物の能力を意味する。本明細書において使用されるように、その用語はヒトのような定温哺乳類をはじめとする動物に局所的または全身的な作用をもたらす生理学的または薬理学的な活性のいずれをも包含する。医薬上活性な薬剤は末梢神経、アドレナリン作用性受容体、コリン作用性受容体、骨格筋、心血管系、平滑筋、血液循環系、シノプティック部位、ニューロエフェクター接合部、内分泌物およびホルモン系、免疫系、生殖系、骨格系、オータコイド系、消化および排泄系、ヒスタミン系および中枢神経系、ならびに他の生物学的系で作用すると考えられる。よって、本発明の組成物から誘導される化合物を、鎮静剤、精神賦活薬、精神安定薬、抗痙攣薬、筋肉弛緩薬、抗パーキンソン薬剤、鎮痛薬、抗炎症薬、局所麻酔薬、筋肉収縮薬、抗生物質、抗ウイルス薬、抗レトロウイルス薬、抗マラリア薬、利尿薬、脂質調節薬、抗アンドロゲン薬、駆虫薬、組織形成薬および化学療法薬として用いてもよい。これらの化合物をさらに心血管疾患、中枢神経系疾患、癌代謝障害、感染症および皮膚疾患ならびに他の生物学的障害および感染症の治療に用いてもよい。
【0052】
本発明の化合物の可能性ある使用のうち、科学的研究における研究試薬としての使用がある。本発明によれば、現在のところ、複数の化合物を製造して研究用化合物のライブラリーを創製することが可能である。かかるライブラリーは有用であることがわかっており、新規な薬剤の探索に重要である。かかる化合物の化学的およびコンホメーション的多様性、例えば多数の機能化可能な部位を考えると、極めて多数の異なる化合物を製造することが可能である。さらに、かかる化合物を選択的に、すなわち、既知の種の集団を確実に製造できるような様式で製造することができ、実際には化学種の分類の全ての可能性ある構成員が確実に合成される。
【0053】
上記のことから、当業者ならば抗菌、抗真菌、抗ウイルス、組織形成抑制性または他の所望の医薬的、生物学的、または化学的活性を有する化合物を同定する目的で、本発明の範囲および精神の範囲内にある化合物を含むかかるライブラリーを合成し、病原体に対して、または試験もしくはアッセイにおいてライブラリーをアッセイする方法については理解できよう。
【実施例】
【0054】
既に概要を述べた方法による本発明の大環状化合物の調製を、制限的でない以下の特定の例により説明する。
【0055】
例1
135員のライブラリー(液相)(図2a参照)
このライブラリー(ファミリー2型)は、4又は5つの炭素を有する脂肪族鎖により頭部から尾部へと連結された、3つの天然のL-α-アミノ酸の線状配列からなる。第1のアミノ酸(AA1)はグリシン、ロイシン、およびメチオニンであり、第2のアミノ酸(AA2)はグリシン、ヒスチジン(Doc)、ロイシン、プロリン、およびバリンであり、第3のアミノ酸(AA3)はグリシン、メチオニン、およびフェニルアラニンである。
【0056】
3つの第3のアミノ酸(Boc-AA3)は、3-メルカプト-プロピオン酸メチルと結合させることによりチオエステルに変換された。形成された化合物を5つの第2のアミノ酸と結合させて15のジペプチドを生成し、次いでこれらを9つのN-アルキル化されたN-betsyl-アミノ酸と結合させることにより、135の線状トリペプチドに変換した。銀陽イオンに補助されたラクタム化により、線状トリペプチドチオエステルの端と端との接合による環化を達成した。
【0057】
アミノ酸、チオエステル(Boc-AA3-S(CH2)2CO2Me)
クロロトリメチルシラン(276mL,2.18mol)を、メタノール(267mL,6.6mol)中の3-メルカプトプロピオン酸(70g,0.66mol)の溶液に、−10℃でゆっくりと添加した。次いで反応混合物を0℃で1時間、および室温で1時間撹拌した。この混合物を、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液を用いて中和してpH8にし、ジクロロメタン(3×300mL)を用いて抽出した。合体した有機相を炭酸ナトリウム飽和水溶液(2×200mL)、塩水(2×200mL)で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で蒸発させた。次いで残渣を蒸留し(70℃/20mmHg)、3-メルカプトプロピオン酸メチルを無色の油状物(61.2g)として77%の収率で得た。
【0058】
1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミドヒドロクロライド(42mmol)を、ジクロロメタン(80mL)中の、N-Bocアミノ酸(33mmol)、3-メルカプトプロピオン酸メチル(30mmol)、および4-ジメチルアミノピリジン(3mmol)の溶液に0℃で添加した。得られた混合物を1時間0℃で、および30分室温で撹拌した。反応混合物を酢酸エチル(200mL)を用いて希釈し、1N塩酸(2×50mL)、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液(2×50mL)、塩水(2×50mL)で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、蒸発させて所望のチオエステル(Boc-AA3-S(CH2)2CO2Me)を95乃至100%の範囲の収率で得た。
【0059】
ジペプチド(Boc-AA2-AA3-S(CH2)2CO2Me)
ジクロロメタン(2mL)中のN-Bocアミノ酸チオエステル(Boc-AA3-S(CH2)2CO2Me)(5mmol)の溶液に、トリエチルシラン(10mmol)、次いでトリフルオロ酢酸(3mL)を添加した。反応混合物を1時間室温で撹拌し、次いでトルエン(2×10mL)を用いて希釈し、溶剤を蒸発させてH-AA3-S(CH2)2CO2MeのTFA塩を得た。
【0060】
テトラヒドロフラン(5mL)およびジクロロメタン(5mL)中のN-Bocアミノ酸(Boc-AA2-OH)(5mmol)および1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(5mmol)の溶液に、1-(3-ジメチルアミノ-プロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(7mmol)を0℃で添加した。得られた混合物を5分0℃で、および20分室温で撹拌し、次いで0℃にまで冷却した。
【0061】
H-AA3-S(CH2)2CO2Me(5mmol)のTFA塩のジクロロメタン(5mL)中溶液を上記の反応混合物に0℃で添加し、続いてジイソプロピルエチルアミン(7mL)を添加した。次いで、得られた反応混合物を同温で10分撹拌した。氷水槽を取り外し、反応物を2乃至4時間室温で撹拌した。最後に、反応混合物を酢酸エチル(80mL)で希釈し、1N塩酸(2×15mL)、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液(2×15mL)、塩水(2×20mL)で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、蒸発させてジペプチド(Boc-AA2-AA3-S(CH2)2CO2Me)を80乃至100%の収率で得た。
【0062】
アルキル化トリペプチド(N-Bts-(N-アルキル化)-AA1-AA2-AA3-SCH2)2CO2Me)
ジクロロメタン(1mL)中のN-Bocジペプチド(0.5mmol)の溶液に、トリエチルシラン(2mmol)、続いてトリフルオロ酢酸(1mL)を添加した。反応混合物を1時間室温で撹拌し、次いでトルエン(2×5mL)で希釈し、蒸発させてジペプチドTFA塩を得た。
【0063】
テトラヒドロフラン(2mL)およびジクロロメタン(2mL)中の、アルキル化されたN-betsylアミノ酸(0.5mmol)および1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(0.5mmol)の溶液に、1-(3-ジメチル-アミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(0.7mmol)を0℃で添加した。得られた混合物を5分0℃で、次いで30分室温で撹拌し、0℃にまで冷却した。
【0064】
ジクロロメタン(2mL)中のジペプチドTFA塩(0.5mmol)の溶液を、上記の反応混合物に0℃で添加し、続いてジイソプロピルエチルアミン(0.8mmol)を添加した。次いで反応混合物を10分同温で添加した。氷水槽を取り外し、反応物を2乃至4時間室温で添加した。反応混合物を酢酸エチル(50mL)を用いて希釈し、1N 塩酸(2×10mL)、炭酸ナトリウム飽和水溶液(2×10mL)、塩水(2×10mL)で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、蒸発させてアルキル化されたトリペプチド(Bts-(N-アルキル化)-AA1-AA2-AA3-S(CH2)2CO2Me)を11乃至100%の収率で得た。
【0065】
シクロトリペプチドの調製
ジクロロメタン(1mL)中のアルキル化されたトリペプチド(Bts-(N-アルキル化)-AA1-AA2-AA3-S(CH2)2CO2Me)(0.5mmol)の溶液に、トリエチルシラン(2mmol)を添加し、続いてトリフルオロ酢酸(1mL)を添加した。反応混合物を1時間室温で撹拌し、次いでトルエン(2×5mL)で希釈し、溶剤を蒸発させてアルキル化されたトリペプチドのTFA塩を得た。
【0066】
酢酸エチル(250mL)中のアルキル化されたトリペプチドのTFA塩(0.5mmol)の溶液に、ジイソプロピルエチルアミン(1.0mmol)およびトリフルオロ酢酸銀(1.5mmol)を添加した。反応混合物を1乃至3時間室温で添加した(反応を薄膜クロマトグラフィでモニタリング)。塩水(50mL)および1.0M チオ硫酸ナトリウム水溶液(30mL)を添加し、60分撹拌した。有機相をEDTA飽和水溶液(2×50mL)、1N 塩酸(50mL)、塩水(2×50mL)で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、蒸発させて粗成物を得た。必要ならばこの粗成物をフラッシュカラムクロマトグラフィにより精製することができる。
【表1】

【表2】

【表3】

【0067】
betsyl化されたc-Met-Leu-Phe-リンカー化合物のスペクトルデータ
trans-リンカー(c-B-MLF-1): 1H NMR(CDCl3, 300MHz):8.32(1H, br),8.19(1H, dd, J=8.0 and 1.7Hz),8.01(1H, dd, J=8.5 and 1.7Hz),7.70-7.59(2H, m),7.34-7.22(5H, m),6.91(1H, br),6.66(1H, br),5.70-5.60(1H, m),5.21-5.16(1H, m),4.64-4.59(2H, m),3.92-3.85(3H, m),3.35-3.20(2H, m),3.30(1H, dd, J=14.0 and 4.7Hz),3.16(1H, dd, J=13.9 and 9.3Hz),2.47-2.32(3H, m),2.09-2.04(3H, m),1.97(3H, s),1.73-1.44(3H, m),0.86(3H, d, J=6.3Hz),0.81(3H, d, J=6.3Hz)。LC-MS:m/e:671(M+)。
【0068】
Cis-リンカー(c-B-MLF-2): 1H NMR(CDCl3, 300MHz):8.65(1H, J=5.9Hz),8.05(1H, dd, J=8.9 and 1.6Hz),8.00(1H, d, J=8.1Hz),7.66-7.57(2H, m),7.33-7. 22(3H, m),7.16(2H, d, J=7.1Hz),6.71-6.68(2H, m),5.72-5.56(2H, m),5.01(1H, t, J=7.3Hz),4.54(1H, dt, J=8.7 and 4.9Hz),4.08-4.00(2H, m),3.94(1H, dd, J=16.4 and 7.3Hz),3.67-3.56(2H, m),3.23(1H, dd, J=14.1 and 4.8Hz), 3.00(1H, dd, J=14.1 and 9.0Hz),2.67-2.47(2H, m),2.36-2.11(1H, m),2.09(3H, s),2.07-1.99(1H, m),1.92-1.82(1H, m),1.61-1.52(1H, m),1.49-1.41(1H, m),0.93(3H, d, J=6.5Hz),0.87(3H, d, J=6.3Hz)。LC-MS:m/e:657(M+)。
【0069】
アセチレン-リンカー(c-B-MLF-3): 1H NMR(CDCl3, 300MHz):8. 32(2H, d, J=8.1Hz),8.01(1H, d, J=8.0Hz),7.72-7.60(2H, m),7.49(1H, br), 7.31-7.20(5H, m),6.80(1H, br),4.80-4.76(1H, m),4.42-4.36(2H, m),4.13-3.95(3H, m),3.45-3.40(1H, m),3.29(1H, dd, J=14.2 and 5.6Hz),3.14(1H, dd,=14.1 and 10.1Hz),2.54-2.47(3H, m),2.12-2.08(1H, m),1.97(3H, s),1.74(2H, t, J=7.6Hz),1.42-1.33(1H, m),0.82(3H, d, J=6.6Hz),0.78(3H, d, J=6.6Hz)。LC-MS:m/e:655(M+)。
【0070】
例2
シクロトリペプチドからのbetsyl基の除去
1)溶液中:
カリウム・トリメチルシラノラート(0.2mmol)を、THFおよびEtOHの脱酸素混合物(1:1,1mL)中の2-ナフタレンチオール(0.2mmol)の溶液に室温で添加し、得られた混合物を20分撹拌した。次いで、N-Bts-シクロトリペプチド(0.1mmol)を添加した。得られた混合物を1時間撹拌し、蒸発させて乾燥させた。残渣をカラムにより精製し、脱保護された生成物を77乃至86%の範囲の収率で得た。
【0071】
2)固相支持体上:
ポリスチレン-チオフェノル樹脂(0.2mmol)を、THFおよびEtOHの脱酸素混合物(1:1,1mL)中のカリウム・トリメチルシラノラート(0.2mmol)の溶液に室温で添加し、得られた混合物を20分撹拌した。ろ液を濾過により除去した。樹脂をTHFおよびEtOHの脱酸素混合物(1:1,3×2mL)で洗浄し、THFおよびEtOHの脱酸素混合物(1:1,1mL)中のN-Bts-シクロトリペプチド(0.1mmol)の溶液に添加した。得られた混合物を1時間撹拌した。樹脂を濾過により除去し、THFおよびEtOH(1:1混合物,2×2mL)で洗浄した。ろ液を濃縮して、粗成物を定量的収率で得た。
【0072】
c-Met-Leu-Phe-リンカー化合物についてのデータ
trans-リンカー(c-MLF-1): 1H NMR(CDCl3, 300MHz):7.77(1H, d, J=7.7Hz),7.307.14(5H, m),6.65(1H, d, J=7.4Hz),6.53(1H, br),5.56-5.64(1H, m),5.32-5.22(1H, m),4.03-3.95(2H, m),3.79-3.68(1H, m),3.57-3.35(3H, m),3.12-3.02(2H, m),2.96-2.86(1H, m),2.61-2.50(2H, m),2.24-1.98(3H, m),2.10(3H, s),1.78(2H, m),1.55-1.39(2H, m),0.86(3H, d, J=6.6Hz),0.83(3H, d, J=6.8Hz)。LC-MS:m/e:474(M+)。
【0073】
Cis-リンカー(c-MLF-2): 1H NMR(CDCl3 & CD3OD, 300MHz):7.27-7.14(5H, m),5.80-5.71(1H, m),5.68-5.53(1H, m),4.21-4.09(2H, m),3.88(1H, dd, J=14.0 and 6.0Hz),3.64(1H, dd, J=14.0 and 7.3Hz),3.34-3.15(5H, m),2.52(2H, t, J=7.3Hz), 2.07(3H, s),2.00-1.86(2H, m),1.53-1.15(3H, m),0.80(6H, d, J=6.6Hz)。LC-MS:m/e:460(M+)。
【0074】
アセチレン-リンカー(c-MLF-3): 1H-NMR(CDCl3, 300MHz):7.92(1H, d, J=8.8Hz),7.34(1 H,d,J=9.2Hz),7.31-7.17(5H,m),7.02(1H,t,=5.9Hz),4.21(1H,q,J=8.0Hz),4.10-3.99(2H,m),3.79(1H,dm,J=15. 5Hz),3.67(1H,dm,J=16.0Hz),3.49-3.35(3H,m),3.25(1H,dd,J=8.8 and 4.3Hz),2.60-2.54(2H,m),2.15-1.99(1H,m),2.11(3H,s),1.80-1.68(2H,m),1.57-1.46(2H,m),0.86(6H,d,J=6.3Hz)。LC-MS:m/e:458(M+)。
【0075】
例3
N-ホルミル-シクロトリペプチドの調製
遊離アミン大員環(例2参照)を、蟻酸(0.2mL)および無水酢酸(0.1mL)の混合物に添加し、反応混合物を室温で15分、次いで55℃で5分、最後に室温で2時間撹拌した。反応混合物を蒸発させて乾燥させ、カラムクロマトグラフィにより精製して所望の化合物を81乃至100%の収率で得た。
【0076】
ホルミル化されたc-Met-Leu-Phe-リンカー化合物についてのデータ
trans-リンカー(c-f-MLF-1): 1H NMR(CDCl3, 300MHz):8.72(1H, s),7.92(1H, s),7.38 7.22(5H, m),6.78(1H, br),5.83(1H, d, J=10. 0Hz), 5.68-5.58(1H, m),4.96-4.89(1H, m),4.02-3.68(5H, m), 3.34(1H, dd, J=14.0 and 10.0Hz),2.78(1H, dd, J= 13.5 and 5.2Hz),2.67-2.51(3H, m),2.42-2.31(1H, m), 2.18-2.04(1H, m),2.06(3H, s),1.99-1.53(6H, m),1.03(3H, d, J=6.0Hz),0.94(3H, d, J=6.0Hz)。LC-MS:m/e:502(M+)(84.2%)。
【0077】
Cis-リンカー(c-f-MLF-2): 1H NMR(CDCl3, 300MHz):8.04(1H, s),7.29-7.18(5H, m), 6.82-6.74(1H, m),6.39(1H, d, J=9. 5Hz),6.16(1 H, dd, J=18. 0 and 7.5Hz),6. 94-6.85(1H, m),4.80-4.72(1 H, m),4.24-3.68(5H, m),3.50-3.43(1H, m),2.87-2.79(1H, m),2.61-2.45(3H, m),2.14-2.01(1H, m),2.11(3H, s),1.74-1.62(1H, m),1.43-1.25(3H, m),0.93-0.78(6H, m)。LC-MS:m/e:488(M+)。
【0078】
アセチレン-リンカー(c-f-MLF-3): 1H NMR(CDCl3, 300MHz):8.10(1H, s),7.83(1H, br), 7.31-7.16(5H, m),6.97(1H, br),6.45(1H, br),4. 35 4.01(5H, m),3.87-3. 71(2H, m),3.38(1H, dd, J=14.5 and 5.0Hz),3.24-3.16(1H, m),2.59-2.23(3H, m),2.08(3H, s),1.66-1.25(4H, m),0.84(6H, t, J.=6.0Hz)。LC-MS:m/e:486(M+)。
【0079】
例4 カイザー樹脂上の固相合成
樹脂へのBoc-アミノ酸の固定
カイザー樹脂(2.0g,0.95mmol/g)に、N-Bocアミノ酸および4-ジメチルアミノピリジン(0.25当量)の0.2M 溶液を添加した。5分振とうした後、ジイソプロピルカルボジイミド(1.5当量)を添加し、反応混合物を16時間撹拌した。樹脂を、ジクロロメタン(3×30mL)、テトラヒドロフラン(1×30mL)、メタノール(1×30mL)、ジクロロメタン(1×30mL)、メタノール(1×20mL)、テトラヒドロフラン(1×30mL)、メタノール(1×20mL)、ジクロロメタン(2×30mL)で洗浄し、窒素流により乾燥させた。次いで、樹脂上の無反応のヒドロキシ基を、ジクロロメタン(20mL)中の無水酢酸(5mL)およびジイソプロピルエチルアミン(1mL)と室温で2時間反応させることによりキャッピングした。樹脂を洗浄し、既述した手順と同様に乾燥させた。置換レベルは0.2〜0.3mmol/gであった。
【0080】
ジペプチドの形成(Quest 210(登録商標)で実施)
ジクロロメタン(20mL)中の25% TFAを、上記樹脂(0.4mmol, 2.0g,0.2mmol/g)に添加し、30分撹拌した。次いで、樹脂をジクロロメタン(3×30mL)、メタノール(1×20mL)、ジクロロメタン(1×30mL)、メタノール(1×20mL)、ジクロロメタン(1×30mL)、メタノール(1×20mL)、ジクロロメタン(2×30mL)で洗浄し、窒素流により乾燥させた。
【0081】
60%ジクロロメタン/テトラヒドロフラン中の、ヒドロキシベンゾトリアゾールおよびジイソプロピルカルボジイミドの0.2M溶液を、N-Bocアミノ酸に、次いでジイソプロピルエチルアミン(1.5当量)に添加した。得られた混合物を30分室温で撹拌し、次いで樹脂(Quest 210(登録商標)で200mg)に移し、室温で30分撹拌した。次いで、ジイソプロピルエチルアミン(2.0mmol)を添加し、樹脂のアリコートのカイザー試験で陰性になるまで(2乃至4時間)撹拌した。樹脂をジクロロメタン(3×4mL)、テトラヒドロフラン(1×4mL)、メタノール(1×4mL)、ジクロロメタン(1×4mL)、メタノール(1×4mL)、テトラヒドロフラン(1×4mL)、メタノール(1×4mL)、ジクロロメタン(2×4mL)で洗浄し、窒素流により乾燥させた。
【0082】
トリペプチドの形成
ジクロロメタン(4mL)中の25%TFAを、Boc-保護されたジペプチド樹脂(0.04mmol, 200mg,0.2mmol/g)に添加し、30分撹拌した。次いで、樹脂をジクロロメタン(3×4mL)、メタノール(1×4mL)、ジクロロメタン(1×4mL)、メタノール(1×4mL)、ジクロロメタン(1×4mL)、メタノール(1×4mL)、ジクロロメタン(2×4mL)で洗浄し、窒素流により乾燥させた。
【0083】
60% ジクロロメタン/テトラヒドロフラン中のヒドロキシベンゾトリアゾールおよびジイソプロピルカルボジイミドの0.2M溶液を、N-Bts アミノ酸に、続いてジイソプロピルエチルアミン(1.5当量)に添加した。得られた混合物を30分室温で撹拌し、次いで樹脂(Quest 210(登録商標)で200mg)に移し、室温で30分撹拌した。樹脂をジクロロメタン(3×4mL)、テトラヒドロフラン(1×4mL)、メタノール(1×4mL)、ジクロロメタン(1×4mL)、メタノール(1×4mL)、テトラヒドロフラン(1×4mL)、メタノール(1×4mL)、ジクロロメタン(2×4mL)で洗浄し、窒素流により乾燥させた。
【0084】
ミツノブ(Mitsunobu)反応
5-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-trans-2-ペンタン-1-オール又はN-tert-ブトキシカルボニル-2-(2-ヒドロキシエトキシ)-シンナミルアミン、およびトリフェニルホスフィンの0.2M溶液を、無水テトラヒドロフラン中のトリペプチド樹脂(0.036mmol, 180mg,0.2mmol/g、Quest 210(登録商標)で)に、続いてアゾジカルボン酸ジエチル(1.5当量)に添加した。混合物を2時間撹拌し、樹脂を洗浄し、既述した手順と同様に乾燥させた。
【0085】
アルキル化トリペプチドの環化
N-アルキル化された線状トリペプチド(0.016mmol, 80mg)を、ジクロロメタン(4mL)中の25% TFAを用いて30分処理し、ジクロロメタン、メタノールで洗浄し、窒素流により乾燥させた。
【0086】
トルエン(2mL)、無水酢酸(1mL)、およびジイソプロピルエチルアミン(1mL)を上記樹脂に添加し、2時間撹拌した。樹脂を濾過により除去し、ジクロロメタン(3×4mL)で洗浄した。ろ液のアリコートをLC-MSにより分析した。ろ液を濃縮し、次いで酢酸エチル(15mL)を用いて希釈した。溶液を1N 塩酸(2mL)、飽和炭酸水素ナトリウム(2mL)、塩水(3mL)で洗浄し、乾燥させ蒸発させて、粗成物を得た。
【表4】

【0087】
例5
IRORI MACROKANS(登録商標)におけるチオエステル樹脂上における、betsyl化された大環状トリペプチドの合成
大環状トリペプチドを、固相支持体(カイザー樹脂、例4を参照)上での合成について与えられた手順と同様にして、MACROKANS(登録商標)(160mgのアミノメチル樹脂)において合成した:
【表5】

【0088】
例6
IRORI MINIKANS(登録商標)におけるチオエステル樹脂上における、メシル化された大環状トリペプチドの合成
大環状トリペプチドを、固体支持体(カイザー樹脂、例4を参照)上での合成について与えられた手順と同様にして、MINIKANS(登録商標)(60mgのアミノメチル樹脂)において合成した。
【表6】

【0089】
ビルディングブロックの特定の例
<テザー・ビルディングブロック>(D型、図2bを参照)
テザー・ビルディングブロックは以下の式を有してなる:
HO−Y−L−Z−PG。
【0090】
以下の3つのテザー・ビルディングブロック;4-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-cis-2-ブテン-1-オール(Y=CH2,L=[Z]アルケン,Z=CH2)、4-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-2-ブチン-1-オール(Y=CH2,L=アルキン,Z=CH2)、および5-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-trans-2-ペンタン-1-オール(Y=CH2,L=CH2-[E]アルケン,Z=CH2)を、商業的に入手可能なcis-2-ブテン-1,4-ジオール、2-ブチン-1,4-ジオール、および3-アミノ-1-プロパノールからそれぞれ合成した。
【0091】
4-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-2-ブチン-1-オールの調製
Dowex 50WX8-100 イオン交換樹脂(53g)を、ジクロロメタン(800mL)中の2-ブチン-1,4-ジオール(153.9g,1.77mol)、およびジヒドロピラン(250mL,2.66mol)の懸濁液に室温で添加した。得られた混合物を60分撹拌し、トリエチルアミン(10mL)で反応を停止させた。樹脂を濾過により除去した。ろ液を炭酸水素ナトリウム飽和水溶液(100mL)、塩水(3×300mL)で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で蒸発させて、所望のモノ保護された2-ブチン-1,4-ジオールを50%の収率で得た。
【0092】
テトラヒドロフラン(50mL)中の、モノ保護された2-ブチン-1,4-ジオール(20.4g,0.12mol)およびトリフェニルホスフィン(40.9g,0.16mol)の溶液に、ヒドラゾ酸(113mL,1.6M トルエン中,0.18mol)を0℃で添加した。このおよそ0℃の溶液に、アゾジカルボン酸ジイソプロピル(29.5mL,0.15mol)を滴下添加した。反応物を0℃で30分、および室温で30分撹拌した。トリフェニルホスフィン(40.9g,0.16mol)を0℃で添加し、反応物を一晩室温で撹拌した。水(50mL)を添加した後、混合物を60℃で4時間加熱し、1N 塩酸(140mL)を添加した。1時間撹拌した後、塩水(140mL)およびジクロロメタン(500mL)を添加した。水相をジクロロメタン(3×100mL)で洗浄した。炭酸カリウム(16.5g,0.12mol)を、続いてテトラヒドロフラン(100mL)中のジカルボン酸ジ-tert-ブチル(26.2,0.12mol)の溶液を添加した。反応混合物を18時間撹拌し、次いでジクロロメタン(1×300mL,2×50mL)を用いて抽出した。合体した有機抽出物を塩水(50mL)で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で蒸発させた。残渣を、ドライパック(dry-pack)シリカゲルカラムにより精製し、標題化合物を50%収率で得た。
【0093】
4-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-cis-2-ブテン-1-オールの調製
標題化合物を、cis-2-ブテン-1,4-ジオールから、4-tert-ブトキシカルボニルアミノ-2-ブチン-1-オールに用いた手順に従って、全収率30%で合成した。
【0094】
5-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-trans-2-ペンタン-1-オールの調製
ジクロロメタン(1.6L)中のジカルボン酸ジ-tert-ブチル(382.8g,1.75mol)の溶液を、3-アミノ-1-プロパノール(263.6g,3.51mol)に2時間に亘り添加した。反応混合物をさらに40分撹拌し、水(1L)を添加した。有機相を水(3×500mL)で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で蒸発させて、3-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-1-プロパノールを96%の収率で得た。
【0095】
ジメチルスルホキシド(321mL,4.5mol)およびトリエチルアミン(941mL,6.75mol)を、ジクロロメタン(1.2L)中の3-tert-ブトキシカルボニルアミノ-1-プロパノール(262.6g,1.5mol)の溶液に0℃で添加した。三酸化硫黄ピリジン複合体(286.4g,1.8mol)を6回に分けて添加した。次いで、反応混合物を0℃で30分および室温で30分撹拌した。反応物を0℃にまで冷却し、1N 塩酸を用いてクエンチし、塩水(2×500mL)で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で蒸発させて3-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)プロピオンアルデヒドを得た。
【0096】
アセトニトリル(1.3L)中の上記粗製アルデヒド(1.5mol)の溶液に、ホスホノ酢酸トリメチル(409.7 g,2.25mol)、および水酸化リチウム(53.9g,2.25mol)を添加し、一晩室温で撹拌した。反応を水(50mL)を用いて停止させた。アセトニトリル溶剤を減圧下で蒸発することにより除去した。次いで、残渣をジエチルエーテル(800mL)を用いて希釈し、1N 水酸化ナトリウム(3×300mL)、塩水(2×500mL)で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で蒸発させて所望のtrans-不飽和メチルエステルを得た。
【0097】
水素化ジイソブチルアルミニウム(1.12L,ジクロロメタン中に1.0M,1.12mol)を、ジクロロメタン(250mL)中のメチルエステル(102.75g,0.445mol)に0℃で滴下添加した。得られた混合物をさらに1時間撹拌し、次いで1M 酒石酸水溶液(1.4L)中にゆっくりと注ぎ、ジクロロメタン(3×500mL)を用いて抽出した。合体した有機相を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で蒸発させた。残渣をドライパックシリカゲルカラムにより精製し、標題化合物を3段階で40%の収率で得た。
【0098】
<アミノ酸ビルディングブロック>(AおよびB型、図2a)
N-Bocアミノ酸は、以下に記載の方法により調製されたNoc-Boc-Nim-Doc-ヒスチジンを除き、商業的に入手可能である。
【0099】
Noc-Boc-Nim-Doc-ヒスチジンの調製
トルエン(300mL)中の2,4-ジメチル-3-ペンタノール(83.2g,0.72mol)およびトリエチルアミン(125mL,0.90mol)の溶液を、トルエン(531mL)中のホスゲン(531mL,トルエン中に20% 1.07mol)の溶液に、0℃でゆっくりと(30分)添加した。混合物をさらに30分同温で撹拌した。氷冷水(500mL)を添加し、有機相を氷冷水(2×100mL)で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で蒸発させた。次いで残渣を減圧下で蒸留させ(6cmのHg,33-35℃)、Doc-Clを無色の油状物で得た(92g,72%)。
【0100】
テトラヒドロフラン(250mL)中のDoc-Cl(57.9g,0.32mol)の溶液に、水(350mL)中のNoc-Boc-ヒスチジン(69g,0.27mol)および炭酸カリウム(41.1g,0.28mol)を0℃で添加した。得られた混合物(pH=10)を2時間同温で、および1時間室温で撹拌した。この反応混合物に水(150mL)およびヘキサン(200mL)を添加した。分離した水相を、ジエチルエーテルおよびヘキサンの混合物(1:1;3×200mL)で洗浄し、20% クエン酸水溶液を用いてpH2〜3にまで酸性にし、次いでジクロロメタン(3×200mL)で抽出した。合体したジクロロメタン溶液を塩水(200mL)で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で蒸発させて、粗製のNoc-Boc-N-Doc-ヒスチジンを定量的収率で得た。
【0101】
<C型のビルディングブロック>(図2b参照)
N-betsyl保護されたアミノ酸(Bts-AA1)を、アミノ酸と、メルカプトベンゾチアゾールおよび塩素から得られた塩化betsyl(ベンゾチアゾール-2-スルホニルクロライド)との反応により合成した。
【0102】
N-betsylアミノ酸(Bts-AA1OH)の調製
塩素ガスを、水(500mL)中の酢酸(250mL)の溶液中に5℃で、橙色の沈殿物が十分に形成されるまでバブリングさせた。酢酸水(750mL,水中に33%)のメルカプトベンゾチアゾール(0.7mol)の溶液を、上記混合物に3時間に亘り数回に分けて添加した。反応混合物を1時間撹拌し、0℃で濾過し、次いで冷水で洗浄した。固体を低温のジクロロメタン(500mL)中に溶解させ、低温の塩水(2×100mL)、低温の飽和炭酸水素ナトリウム(100mL)、塩水(100mL)で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、10℃で減圧下にて蒸発させた。次いで固体を低温のジエチルエーテル(100mL)、低温のアセトニトリル(100mL)で洗浄し、濾過し、ポンピングして塩化betsyl(ベンゾチアゾール-2-スルホニルクロライド)を得た。
【0103】
0.25N 水酸化ナトリウム水溶液(0.08mol)中のアミノ酸(0.11mol)の溶液に、室温で(初期pHはおよそ9.5)、塩化betsyl(0.1mol)を添加した。得られた混合物を18時間激しく撹拌した。反応の経過中に、1.0N 水酸化ナトリウム水溶液を用いて反応物のpHを9.5乃至10.0に調整した。反応混合物をジエチルエーテル(3×50mL)で洗浄した。次いで水相を0℃にまで冷却し、6N HClを用いてpH1.5〜2.0にまで酸性にし、酢酸エチル(3×100mL)を用いて抽出した。合体した酢酸エチル溶液を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で蒸発させて、所望の化合物を74〜85%収率で得た。
【0104】
<E型のビルディングブロック>(図2bを参照)
これらのビルディングブロックは、C型のビルディングブロックをミツノブ反応条件でD型のビルディングブロックを用いてアルキル化したものに該当する。このアルキル化を実施可能とするために、Cの酸官能基を保護化しなければならない。所望の化合物を得るために、用いた保護基は最終的に除去される。
【0105】
N-アルキル化されたN-betsylアミノの調製
ジヒドロフラン(90mmol)およびp-トルエンスルホン酸ピリジニウム(1.5mmol)を、ジクロロメタン(50mL)中のN-betsylアミノ酸(30mmol)の懸濁液中に0℃で添加した。得られた混合物を15分0℃、および60分室温で撹拌した。反応混合物をジエチルエーテル(150mL)を用いて希釈し、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液(20mL)、塩水(20mL)で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で蒸発させてアミノ酸のテトラヒドロフラニルエステルを得た。このエステル(30mmol)、アルコール(D型ビルディングブロック)(すなわち4-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-cis-2-ブテン-1-オール、又は4-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-2-ブチン-1-オール、又は5-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-trans-2-ペンタン-1-オール))(43.5mmol)、およびトリフェニルホスフィン(49mmol)の混合物をトルエン(20mL)中に懸濁させ、真空中で3回供沸的に蒸留した。残渣をテトラヒドロフラン(40mL)中に溶解させた。アゾジカルボン酸ジイソプロピル(43.5mmol)を0℃で添加した。15分0℃で、および30分室温で撹拌した後、1N 塩酸(30mL)およびメタノール(30mL)を添加し、さらに60分撹拌した。有機溶剤を蒸発により除去した後、水相を水(30mL)を用いて希釈し、溶媒のpHを炭酸カリウムを用いて12に調整し、ジエチルエーテル(3×60mL)で洗浄し、次いで1N 塩酸を用いてpH2〜3にまで酸化させ、ジクロロメタン(3×200mL)で抽出した。合体したジクロロメタン溶液を塩水(100mL)で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で蒸発させて、所望のアルキル化されたN-betsylアミノ酸を全体の収率68〜89%で得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で示される大環状化合物:
【化1】

上記式中、
(A)部分はその-NH-基が
【化2】

部分のカルボニル基と結合している
【化3】

、-(CH2)y-二価の基、または共有結合であり;
(B)部分はその-NH-基が(A)部分と結合している
【化4】

、-(CH2)z-二価の基、または共有結合であり;
(C)部分はその-NH-基が(B)部分と結合している
【化5】

、-(CH2)t-二価の基、または共有結合であり;
(T)部分は-Y-L-Z-基であり;かつ
Xは-SO2-Ar、-SO2-CH3、-SO2CF3、-H、-COH、-CO-CH3、-CO-Ar、-CO-R、-CO-NHR、-CO-NHAr、-CO-O-tBu、-CO-O-CH2-Ar
【化6】

であり、
・Arは芳香族基、置換芳香族基または複素環式芳香族基であり、
・aは0、1および2からなる群から選択される整数であり、
・Rはnが1ないし16の整数である一価の基-(CH2)n-CH3または-(CH2)n-Arであり、
・R0、R1、R2、R3およびR4
【化7】

からなる群から独立に選択され、
プロリンおよびヒドロキシプロリンを位置0、2および3に用いてもよく、XがCOである場合には位置1に用いてもよいく、
R5、R61およびR62は各々-H、-SO2-CH3、-SO2-CF3、-COH、-COCH3、-CO-Ar、-CO-Rまたは-CO-NHR(ここで、Rは上記の定義に同じ)、-CONHAr、-COO-tBuおよび-COO-CH2-Arからなる群から独立に選択される一価の基であり、この基は
-O-CH3、-CH3、-NO2、-NH2、-NH-CH3、-N(CH3)2、-CO-OH、-CO-O-CH3、-CO-CH3、-CO-NH2、OH、F、Cl、BrおよびIからなる群から選択される少なくとも1個の一価の基で置換されていてもいなくともよく、
R7
-H、-COH、-CO-CH3、NHOH、NHOR、NHR、-CO-R(ここで、Rは上記の定義に同じ)、-CO-Arおよび-CO-tBuからなる群から選択される一価の基であり、この基は
-O-CH3、-CH3、-NO2、-NH2、-NH-CH3、-N(CH3)2、-CO-OH、-CO-O-CH3、-CO-CH3、-CO-NH2、OH、F、Cl、BrおよびIからなる群から選択される少なくとも1個の置換基で置換されていていなくともよく、
R8は-OH、-NH2、-OCH3、-NHCH3、-O-tBuおよび-O-CH2-Arからなる群から選択される一価の基であり、この基は
-O-CH3、-CH3、-NO2、-NH-CH3、-N(CH3)2、-CO-OH、-CO-O-CH3、-CO-CH3、-CO-NH2、OH、F、Cl、Br、Iからなる群から選択される少なくとも1個の基で置換されていてもいなくともよく、
R9は-H、-tBu、-CO-CH3、-COAr、-CO-R(ここで、Rは上記の定義に同じである)および-COHからなる群から選択される一価の基であり、この基は
-O-CH3、-CH3、-NO2、-NH2、-NH-CH3、-N(CH3)2、-CO-OH、-CO-O-CH3、-CO-CH3、-CO-NH2、OH、F、Cl、Brおよび、Iからなる群から選択される少なくとも1個の一価の基で置換されていていなくともよい
からなる群から選択される一価の基であり;
Yは二価の基-CH2または-CO-であり;
Zは二価の基-NH-または-O-であり;
x、y、zおよびtは0、1および2からなる群から各々独立に選択される整数であり;
Lは、-(CH2)d-A-(CH2)j-B-(CH2)e-(dおよびeは独立に1ないし5の整数であり、jは0ないし5の整数であり、jが0である場合はAまたはBが存在する)
からなる群から選択される二価の基であり;AおよびBは、
-O-、-NH-、-NR-(ここで、Rは上記の定義に同じ)、-S-、-CO-、-SO-、-CO-O-、-O-CO-、-CO-NH-、-NH-CO-、-SO2-NH-、-NH-SO2-、
【化8】

、立体配置ZまたはEを有する-CH=CH-、
1,2、1,3、または1,4位に置換基-G2-を有する
【化9】

からなる群から独立に選択され;
G1は、
-O-、-NH-、-NR-(ここで、Rは上記の定義に同じ)、-S-、Z立体配置を有する-CH=CH-、および-CH=N-からなる群から選択され、
G2は、
-O-、-NH-、-NR-(ここで、Rは上記の定義に同じ)、-CO-O-、-O-CO-、-CO-NH-、-NH-CO-、-SO2NH-および-NH-SO2-からなる群から選択される。
【請求項2】
式(a):
【化10】

{式中、L、Z、R、R1、R2およびR3は請求項1で示されたものと同一の意味を有し、かつ、(PG1)、(PG2)および(PG3)はペプチド合成においてオルト保護に通常用いられる保護基である}
で示される、請求項1に記載の大環状化合物。
【請求項3】
式(9):
【化11】

{式中、L、Z、R、R1、R2およびR3請求項1で示されたものと同一の意味を有する}
で示される、請求項1に記載の大環状化合物。
【請求項4】
式(10):
【化12】

{式中、L、Z、R1、R2およびR3は請求項1で示されたものと同一の意味を有し、かつ、(PG1)、(PG2)および(PG3)はペプチド合成においてオルト保護に通常用いられる保護基である}
で示される、請求項1に記載の大環状化合物。
【請求項5】
式(11):
【化13】

{式中、L、Z、R1、R2およびR3が請求項1で示されたものと同一の意味を有し、かつ、(PG1)、(PG2)および(PG3)がペプチド合成においてオルト保護に通常用いられる保護基である}
で示される、請求項1に記載の大環状化合物。
【請求項6】
式(12):
【化14】

{式中、L、Z、X、R1、R2およびR3は請求項1で示されたものと同一の意味を有する}
で示される、請求項1に記載の大環状化合物。
【請求項7】
式(17):
【化15】

{式中、X、L、Z、R1、R2およびR3は請求項1で示されたものと同一の意味を有し、かつ、(PG1)、(PG2)および(PG3)はペプチド合成においてオルト保護に通常用いられる保護基である}
で示される、請求項1に記載の大環状化合物。
【請求項8】
式(18):
【化16】

{式中、L、Z、R1、R2およびR3は請求項1で示されたものと同一の意味を有する}で示される、請求項1に記載の大環状化合物。
【請求項9】
(PG1)R1、(PG2)R2、(PG3)R3、(PG4)R4の各々が独立に請求項1に定義される基R5、R6、R7、R8またはR9と同一の意味を有する、請求項2、4、5および7のいずれか1項に記載の大環状化合物。
【請求項10】
【化17】

からなる群から選択される、請求項1に記載の大環状化合物。
【請求項11】
請求項1に記載の式(I)の化合物の製造方法であって、
a)天然または合成アミノ酸に由来する、式:
【化18】

{式中、X、R1、A、B、Cは請求項1の定義に同じであり、カップリングが液相で行われる場合にはSpは
【化19】

であり、かつ、 Pは-CH3または-CH2-Phであり、かつ、カップリングが固相で行われる場合にはSpは
【化20】

であり、かつ、Pはポリスチレン、PEGポリスチレンまたはポリアクリルアミドまたはいずれかの好適な樹脂である}
で示される第1の構成要素をカップリングによって製造し、
b)工程a)で製造される第1の構成要素を以後「テザー」と呼ぶ式
H-Y-L-Z-PGz
{式中、Y、LおよびZは請求項1の定義に同じであり、かつ、PGzは保護基である}
で示される第2の構成要素とカップリングし、
c)工程b)で得られる化合物から保護基PGzを除去し;さらに
d)工程c)で得られる非保護生成物の大環化を行い、上記の工程(a)および(b)が固相で行われる場合には切断して式(I)の所望の化合物を得る
工程を含んでなる、方法。
【請求項12】
A、BまたはCがArgである場合に、
a)好適な保護オルニチン(Orn)残基をArgの代用物として用い、
b)Orn側鎖での保護の選択的脱保護を行い、さらに
c)適当な保護グアニル化試薬と反応させて保護Arg要素を得る
という工程をさらに含んでなる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項2に定義される式(8)の化合物の製造方法であって、
a)式A:
【化21】

{式中、(PGα)はアミン保護基であり、かつ、R3およびPG3は請求項1の定義に同じである}
で示されるアミノ酸を固相または液相のいずれかで式:
H-Sp-P
{式中、カップリングが液相で行われる場合には、Spは
【化22】

であり、かつ、Pは-CH3または-CH2-Phであり、カップリングが固相で行われる場合には、Spは
【化23】

であり、かつ、Pはポリスチレンである}
で示される化合物とカップリングして式(1)
【化24】

の化合物を得、
b)アミン保護基PGαを式(1)の化合物から除去して相当する式(2):
【化25】

の化合物を得、
c)式(2)の化合物を式B:
【化26】

{式中、PGαは上記の定義に同じであり、かつ、R2およびPG2は請求項1の定義に同じ}
で示される別のアミノ酸とカップリングして式(3):
【化27】

の化合物を得、
d)アミン保護基PGαを式(3)の化合物から除去して相当する式(4):
【化28】

の化合物を得、
e)式(4)の化合物を式(C):
【化29】

{式中、Rはnが1ないし16の範囲である-(CH2)n-CH3または-(CH2)n-Arである}
で示されるさらなるアミノ酸とカップリングして式(5):
【化30】

の化合物を得、さらに式(5)の化合物をMitsunobu条件下で式(D):
【化31】

{式中、LおよびZは請求項1の定義に同じであり、かつ、PGzは保護基である}
で示されるアルコールとカップリングして式(6):
【化32】

の化合物を得るか、
または、式(4)の化合物を式(E):
【化33】

{式中、R、L、R1、PG1およびPG2は上記の定義に同じ}
で示される化合物とカップリングして式(6)の化合物を直接得、
f)保護基PGzを式(6)の化合物から除去して相当する式(7):
【化34】

の化合物を得、さらに
g)式(7)の化合物の大環化と、カップリング工程が固相で行われる場合には切断を行って式(8)の所望の化合物を得る
工程を含んでなる方法。
【請求項14】
請求項13に定義される工程および請求項12に定義される式(8)の化合物の保護基PG1、PG2、PG3を除去して式(9)の所望の化合物を得るさらなる工程を含んでなる、請求項3に定義される式(9)の化合物の製造方法。
【請求項15】
請求項13に定義される工程および式(8)の化合物のスルホンアミド部分を切断して遊離アミン基を有する式(10)の所望の化合物を得るさらなる工程を含んでなる、請求項4に定義される式(10)の化合物の製造方法。
【請求項16】
請求項15に定義される工程および式(10)の化合物の遊離アミンを式HX(ここで、Xは請求項1で示される意味を有する)の酸とカップリングして式(11)の所望の化合物を得るさらなる工程を含んでなる、請求項5に定義される式(11)の化合物の製造方法。
【請求項17】
請求項16に定義される工程および式(11)の化合物のオルト保護基PG1、PG2およびPG3を切断して式(12)の所望の化合物を得るさらなる工程を含んでなる、請求項6に定義される式(12)の化合物の製造方法。
【請求項18】
請求項7に定義される式(17)の化合物の製造方法であって、
a)式(4):
【化35】

{式中、R2(PG2)、R3(PG3)はペプチド合成においてオルト保護に通常用いられる保護基であり、Aは請求項1で示されるものと同一の意味を有し、かつ、Pは-CH3または-CH2Phであり、かつ、カップリングが固相で行われる場合にはPはポリスチレンであってもよい}
で示されるアミンを式(C'):
【化36】

{式中、R1(PG1)はペプチド合成においてオルト保護に通常用いられる保護基であり、かつ、PGαはアミン保護基である}
で示されるアミノ酸とカップリングして式(13):
【化37】

の化合物を得、
b)アミノ保護基PGαを式(13)の化合物から除去して相当する式(14):
【化38】

の化合物を得、
c)式(14)の化合物を式(D'):
【化39】

{式中、Lは請求項1のものと同一の意味を有し、かつ、PGzは保護基である}
で示されるヒドロキシ酸(Z=O)またはアミノ酸(Z=NH)とカップリングして式(15):
【化40】

{式中、PGzは保護基である}
で示される化合物を得、
d)末端アルコール(Z=O)またはアミン(Z=H)保護基(PGz)を式(15)の化合物から除去して相当する式(16):
【化41】

のアルコールまたはアミンを得、
e)式(16)の化合物の大環化および式(16)の化合物の切断を一度に行って式(17):
【化42】

の所望の化合物を得る
工程を含んでなる方法。
【請求項19】
請求高17に定義される工程および第4のアミノ酸を導入する場合にはオルト保護(PG1)、(PG2)、(PG3)および(PG4)を式(17)の化合物から除去して式(18)の所望の化合物を得るさらなる工程を含んでなる、請求項8に定義される式(18)の化合物の製造方法。
【請求項20】
(PG1)R1、(PG2)R2、(PG3)R3、(PG4)R4および(PGz)Zの各々が独立に請求項1に定義される基R5、R6、R7、R8またはR9と同一の意味を有する、請求項11、13、16、17および18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
PG1、PG2、PG3、PG4およびPGzの少なくとも1個がカルバメートまたはトリチル基である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
カルバメートがBoc、FmocおよびDdzからなる群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
トリチルがTrtおよびMmtからなる群から選択される、請求項21に記載の方法。

【図1】
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【図1a】
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【図2】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【図4a】
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【図4b】
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【公開番号】特開2012−140400(P2012−140400A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−179715(P2011−179715)
【出願日】平成23年8月19日(2011.8.19)
【分割の表示】特願2001−528200(P2001−528200)の分割
【原出願日】平成12年10月4日(2000.10.4)
【出願人】(502120206)トランジーム ファーマ インコーポレイテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】TRANZYME PHARMA INC.
【Fターム(参考)】