説明

力制御ロボット

【課題】力制御ロボットのエンドエフェクタの振動を抑制し、エンドエフェクタに作用する力の検出精度を向上させる。
【解決手段】一方が固定端、他方が可動端となるロボットアーム1の可動端に弾性部材3aを介して接続されたエンドエフェクタ2は、エンドエフェクタコントローラ6によって開閉動作等を制御される。力覚センサ3は、エンドエフェクタ2に作用する外力を、弾性部材3aの変形量より検出する。エンドエフェクタコントローラ6は、弾性部材3aよりロボットアーム1の固定端側に支持され、ロボットコントローラ5は、力覚センサ3の検出値に基づいてロボットアーム1の動作を修正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品の組み付け等の作業を行うロボットアームの先端部に、力検出手段とエンドエフェクタを備えた力制御ロボットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、小型で複雑な構造をした製品の組み立てに対する自動化の要求が高まっており、これらの製品は複雑な動作で正確な力制御を伴う組み立てが必要となる。従来より、把持した部品を正確かつ確実に組み付けるため、垂直多関節型のロボットアームの先端に物体を把持する可動機構部を備えるロボットハンド(エンドエフェクタ)と力覚センサを搭載した力制御ロボットがある。力制御ロボットは、組み付け時にロボットハンドにかかる力を力覚センサで検知しながら、ロボットアームとロボットハンドの制御をすることで、複雑な構造をした製品の正確な組み立てを行う。力制御ロボットのようなハンドのセンサ信号を利用して制御を行うロボットには、ロボットアームの先端に取り付けるロボットハンド上に、ロボットハンドの制御回路が搭載される(特許文献1参照)。
【0003】
図5は従来の力制御ロボットを示すもので、(a)は力制御ロボットの全体図であり、(b)は、(a)の力制御ロボットの先端部を拡大したものである。この力制御ロボットは、ロボットアーム101と、ロボットアーム101を制御するロボットコントローラ105、力覚センサ103、エンドエフェクタ102によって構成される。力覚センサ103はロボットアーム101の可動端側に取り付けられており、エンドエフェクタ102は力覚センサ103を介し、ロボットアーム101に取り付けられている。力覚センサ103は、例えば弾性部材と、弾性部材の変形量を検出する変位センサで構成される。エンドエフェクタ102は、物体を把持する把持機構部102aと、把持機構部102aを駆動する駆動部102b、駆動部102bを駆動制御するエンドエフェクタコントローラ106で構成されている。駆動部102bは、把持機構部102aを動かす動力としてのサーボモータを有している。エンドエフェクタコントローラ106は、エンドエフェクタ102の駆動部102bに配置される。エンドエフェクタコントローラ106は、サーボモータを駆動するサーボ回路と、力覚センサの信号処理を行う信号処理回路等を搭載している。
【0004】
ロボットコントローラ105は、組み立ての動作プログラムに基づいて、ロボットアーム101を駆動制御しロボットアーム101を動作させる。また、エンドエフェクタコントローラ106に、力、速度、位置などの動作の指令を送り、エンドエフェクタ102を動作させる。
【0005】
ロボットアーム101の先端アームフレーム101aからエンドエフェクタ102へ至る電線部材は、複数本の電線107からなる。そして、エンドエフェクタコントローラ106とロボットコントローラ105間の制御信号と、信号処理を施したセンサの検出値の伝達を行う。また、エンドエフェクタ102で必要とする電力を電源から供給するための役割もはたしている。エンドエフェクタコントローラ106は、ロボットコントローラ105より指令を受け、エンドエフェクタ102内のサーボモータを駆動する。この際、エンドエフェクタ102で把持した部品121がワーク122に当接したときの部品121とワーク122間で発生する力を、力覚センサ103の弾性部材のたわみ変位量として検出する。ロボットコントローラ105は、この検出データを元に、ロボットアーム101の動作を修正し、把持された部品121とワーク122間で発生する力を調整しながら部品121をワーク122に組み付ける。
【0006】
このようにして、部品121やワーク122、エンドエフェクタ102などの破損を防止し、良好な状態で把持した部品121をワーク122に挿入し組み付けを行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭63−312089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら従来の力制御ロボットでは、力覚センサに支えられたエンドエフェクタ(ロボットハンド)の上に、エンドエフェクタコントローラを配置しているために、以下のような未解決の課題がある。
【0009】
従来の力制御ロボットは、エンドエフェクタ、力覚センサ、ロボットアームの各々を、ユニット単位で連結し構成されているため、エンドエフェクタコントローラはエンドエフェクタ上に実装される。ロボットアームの重心から遠く離れたエンドエフェクタ上に、制御回路や、力覚センサの信号処理回路などを搭載すると、ロボットアームの過般重量が増加する。そのため、エンドエフェクタ先端の固有振動周波数が低下し、ロボットが動作中の振動や、停止した際の残留振動が大きくなる。振動が大きくなると、力覚センサで正確な検出ができないことから、力制御ロボットによる組み立て作業の正確さを悪化させる原因となっていた。
【0010】
また、エンドエフェクタコントローラに接続された電線部材は、ロボットアームの関節軸の回転や曲げ動作により、電線部材が引きつられたりロボットに巻きついたりするなどして、電線部材に大きな外力が加わることがある。電線部材に外力が加わり引っ張られると、その外力はエンドエフェクタコントローラから、エンドエフェクタへ伝わるため、力覚センサで本来検出したくない余計な力成分を検出することになる。その結果、力覚センサで正確な検出ができないことから、力制御ロボットによる組み立て作業の正確さを悪化させる原因となっていた。
【0011】
本発明は、力制御ロボットの振動を抑制するとともに、ロボットによる組み立て時のエンドエフェクタに加わる力を高精度に検出し、正確な組み立てを行うことのできる力制御ロボットを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の力制御ロボットは、一端が固定端、他端が可動端となるロボットアームと、前記ロボットアームの可動端に弾性部材を介して接続され、部品を把持する把持機構部及び把持駆動部を備えたエンドエフェクタと、前記エンドエフェクタの前記把持駆動部を制御し、前記把持機構部を動作させるエンドエフェクタコントローラと、前記ロボットアームの動作を制御するロボットコントローラと、前記エンドエフェクタの前記把持機構部に作用する外力を、前記弾性部材の変形量より検出する力検出手段と、前記ロボットアームの可動端に配置され、前記エンドエフェクタコントローラを前記弾性部材より前記ロボットアームの固定端側に支持する支持手段と、を有し、前記ロボットコントローラは、前記力検出手段の検出値に基づいて前記ロボットアームの動作を修正することを特徴とする。
【0013】
また、一端が固定端、他端が可動端となるロボットアームと、前記ロボットアームの可動端に接続され、部品を把持する把持機構部及び把持駆動部と、前記把持駆動部を弾性部材を介して支持するエンドエフェクタ筐体と、を備えたエンドエフェクタと、前記エンドエフェクタの前記把持駆動部を制御し、前記把持機構部を動作させるエンドエフェクタコントローラと、前記ロボットアームの動作を制御するロボットコントローラと、前記エンドエフェクタの前記把持機構部に作用する外力を、前記弾性部材の変形量より検出する力検出手段と、を有し、前記エンドエフェクタ筐体は、前記ロボットアームの可動端において前記エンドエフェクタコントローラを前記弾性部材より前記ロボットアームの固定端側に支持する支持手段を備え、前記ロボットコントローラは、前記力検出手段の検出値に基づいて前記ロボットアームの動作を修正することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
エンドエフェクタコントローラの実装位置がロボットアームの重心に近づくため、ロボットの動作中や、停止の際の振動を抑制することができる。その結果、力検出手段の検出値の振動による誤差分の影響が小さくなり、高精度な力制御による複雑な組み立てを行うことができる。
【0015】
また、エンドエフェクタコントローラに接続された電線部材から受ける外力を、力検出手段に伝えない構成となるため、ロボットによる組み立て時のエンドエフェクタに加わる正確な力を読み取ることができる。これによって、より一層高精度な力制御による複雑な組み立てを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例1による力制御ロボットを示すもので、(a)はその全体を示す模式図、(b)はロボットアームの可動端とエンドエフェクタを拡大して示す図である。
【図2】実施例1に係るもので、(a)はエンドエフェクタが変位したときの変位中心を示す図、(b)は一変形例を示す図である。
【図3】実施例2による力制御ロボットを示すもので、(a)はその全体を示す模式図、(b)はロボットアームの可動端とエンドエフェクタを拡大して示す図である。
【図4】実施例2に係るもので、エンドエフェクタが変位したときの変位中心を示す図である。
【図5】従来の力制御ロボット示すもので、(a)はその全体を示す模式図、(b)はロボットアームの可動端とエンドエフェクタを拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0017】
図1は、実施例1による力制御ロボットを示すもので、(a)に示すように、ロボットアーム1は、n個(n≧1、整数)の関節軸を備え、軸と軸との間はアームフレーム等の機構部品により連結されている。ロボットアーム1は、一端を固定端、他端を可動端とし、可動端にはエンドエフェクタ2と力覚センサ3が配置され、固定端は架台4に固定される。ロボットアーム1の可動端は、力覚センサ3を介して、エンドエフェクタ2と接続されている。ロボットアーム1の各軸を、固定端側より、第1軸、第2軸、・・・第N―1軸、第N軸とし、可動端を構成する第N軸のアームフレームを、先端アームフレーム1aとよぶこととする。ロボットアーム1は、サーボモータ等の動力源を備え、ロボットコントローラ5からの制御信号と、電源10からの電力供給により、サーボモータを駆動し各関節軸を駆動制御する。
【0018】
この多関節ロボットの先端部分を拡大したものを図1(b)に示す。力覚センサ3は、弾性部材3aを介して対向して向かい合った被検出部3bと変位検出部3cの相対変位を検出する変位センサ(力検出手段)によって構成される。被検出部3bと変位検出部3cの位置関係は図1(b)の配置と逆であってもかまわない。
【0019】
変位センサは、例えば非接触式の磁気式センサなどで構成され、エンドエフェクタ2の把持機構部2aが外力を受けた際の弾性部材3aの変形量を、変位検出部3cの相対変位として検出することで、把持機構部2aに加わった力を変位として検出する。
【0020】
エンドエフェクタ2は、把持機構部2a及び駆動部(把持駆動部)2bにより構成され、駆動部2bには把持機構部2aを駆動する動力源2cを備えている。把持機構部2aは、把持対象となる部品に合わせて、さまざまな形態の把持機構部品に交換し、駆動部2bに取り付けることができる。駆動部2bは、把持機構部2aの把持動作を駆動する機構が備えられており、駆動するためのギアやリンク等のメカニカルな機構及びアクチュエータで構成されている。把持機構部2aは、例えば部品を把持するグリッパであり、動力源2cは、例えばサーボモータを採用する。
【0021】
ロボットアーム1の第N軸と弾性部材3aとの間の先端アームフレーム1aは、エンドエフェクタ2の開閉を制御するエンドエフェクタコントローラ6を弾性部材3aより固定端側に支持する支持手段を有する。エンドエフェクタコントローラ6は、エンドエフェクタ上の電気回路と、ロボットコントローラ5とに電気的に接続されている。
【0022】
エンドエフェクタコントローラ6は、動力源2cの駆動制御回路と、力覚センサ3の出力(検出値)を変位検出部3cから受け取り信号処理する信号処理回路を備えている。さらにエンドエフェクタコントローラ6は、ロボットコントローラ5との通信回路を備え、把持機構部2aを駆動する駆動パターンや力覚センサ3の出力の信号処理演算した結果を、制御線7aにより通信する。ロボットコントローラ5から把持機構部2aに指示する駆動パターンは、例えばエンドエフェクタ2がグリッパ式のハンドであれば、グリッパの開閉位置、速度、力などを指令値とする。制御線7aを伝達される信号は、例えば差動のシリアル信号プロトコルなどによって行われる。
【0023】
また、エンドエフェクタコントローラ6は、力覚センサ3、エンドエフェクタ2及びエンドエフェクタコントローラ6自身で消費する電力を、外部の電源10より受けるための電力線7bを備えている。ここで、制御線7aと電力線7bは1本の線として示されているが、それぞれ、2本以上の束線であってかまわない。
【0024】
図1に示した力制御ロボットが、エンドエフェクタ2で把持した部品をワークに組み付ける際の動作シーケンスを以下に説明する。エンドエフェクタコントローラ6は、ロボットコントローラ5よりエンドエフェクタ2の動作の指令を受けて、エンドエフェクタ2内のサーボモータを駆動する。この際、エンドエフェクタ2で把持した部品がワークに当接したときにエンドエフェクタ2に作用する外力を、力覚センサ3の弾性部材3aのたわみ変位量(変形量)として検出する。ロボットコントローラ5は、この検出値に基づき、ロボットアーム1の動作を修正し、エンドエフェクタ2に把持された部品とワーク間で発生する力を調整しながら部品をワークに組み付ける。
【0025】
力制御ロボットは、このような駆動制御の修正を行うことで、把持された部品やワーク、エンドエフェクタ2などの破損を防止し、良好な状態で把持した部品をワークに挿入して組み付けを行う。
【0026】
本実施例の特徴は、エンドエフェクタコントローラ6を、エンドエフェクタ2に搭載せず、ロボットアーム1の第N軸と弾性部材3aとの間の先端アームフレーム1aに搭載したことにある。
【0027】
この構成により、エンドエフェクタ2にエンドエフェクタコントローラ6を搭載する場合に比べて、エンドエフェクタコントローラ6が力制御ロボットの固定端側の架台4により近づくため、エンドエフェクタ先端の固有振動周波数の低下が抑制される。そのため、力覚センサ3にとって検出誤差の要因となるエンドエフェクタ2の振動を低減することができ、正確な組み付けを行うことができる。振動収束を待つ必要がなくなるので、ロボットの作業性も向上する。
【0028】
また、ロボットアーム1の第N軸と弾性部材3aとの間の先端アームフレーム1aに、エンドエフェクタコントローラ6が支持されるため、ロボットアーム1が動作した際の制御線7aと電力線7bの引きつれによる外力を、エンドエフェクタ2に伝えない。さらに、ロボットアーム1が動いたとき、エンドエフェクタコントローラ6とエンドエフェクタ2の間にロボットアーム1の動く関節を介さない。そのため、エンドエフェクタコントローラ6とエンドエフェクタ2とを接続する電線が引っ張られたり、よじれることがなくなり、組み立ての際の力をより正確に検出することができる。すなわち、制御線7aと電力線7bなどの電線を中継留めする中継部材や、保護部材といった、部品を新規に追加することなしに、問題となるケーブルからの外力による力覚センサの検出誤差も排除することができる。
【0029】
図2(a)に示すように、エンドエフェクタ2が外力を受けたとき、ロボットアーム1の可動端に対するエンドエフェクタ2の位置変化が最も小さい作動中心部21を介して、エンドエフェクタ2の電気部品とエンドエフェクタコントローラ6を接続する。エンドエフェクタ2の中心と力覚センサ部中心を結ぶ直線をZ軸とすると、図2(a)ではエンドエフェクタ2と弾性部材3aの接合面とZ軸との交差点が、作動中心部21となる。このようにエンドエフェクタ2とエンドエフェクタコントローラ6とを電気接続する電線を、ここではエンドエフェクタ線とよぶこととする。エンドエフェクタ線は、実際は複数の電線である。エンドエフェクタ線を、作動中心部21を介してエンドエフェクタ2に結線すると、エンドエフェクタ2が弾性部材3aを支点に動いたときに力検出手段の検出誤差の要因となる、電線のばね成分により発生する力の影響を抑制することができる。つまり、力覚センサ3によるさらなる高精度な力の検出が可能となり、正確な組み立てが実現できる。
【0030】
エンドエフェクタコントローラ6は、先端アームフレーム1aの外装表面に取り付けてもよいし、内部を空洞とした先端アームフレーム1aの内部に取り付けてもかまわない。先端アームフレーム1aにエンドエフェクタコントローラ6を固定する支持手段としては、先端アームフレーム1aに、エンドエフェクタコントローラ6を固定するための溝を設ける。また、先端アームフレーム1aとエンドエフェクタコントローラ6との間に、スペーサーなどの固定するための部材を介し、ネジや接着により、先端アームフレーム1aとエンドエフェクタコントローラ6を固定するようにしてもよい。本実施例のエンドエフェクタは平行グリッパタイプであるが、これに限らず、複数の関節と、フィンガーを供えた人間の手に近い多指形状の汎用ハンドであってもよい。
【0031】
図2(b)に示すように、弾性部材3aと先端アームフレーム1aの間に、弾性部材3aを支持する力覚センサ支持体3dが独立に存在した場合も、先端アームフレーム1aにエンドエフェクタコントローラ6を配置することで同様の効果を得ることができる。
【実施例2】
【0032】
図3は実施例2による力制御ロボットを示すもので、(a)に示すように、ロボットアーム1は、n個(n≧1、整数)の関節軸を備え、軸と軸との間はアーム等の機構部品により連結されている。ロボットアーム1は、一方を固定端、他方を可動端とし、固定端は架台4に固定され、可動端には、力覚センサ内蔵型のエンドエフェクタ22が配置されている。ロボットアーム1の各軸を、固定端側より、第1軸、第2軸、・・・第N―1軸、第N軸とし、可動端を構成する第N軸のアームフレームを、先端アームフレーム1aとよぶこととする。ロボットアーム1は、サーボモータ等の動力源を備え、ロボットコントローラ5からの制御信号と、電源10からの電力供給により、サーボモータを駆動し各関節軸を制御する。
【0033】
力覚センサ内蔵型のエンドエフェクタ22は、図3(b)に示すように、部品を把持する把持機構部22aと、把持機構部22aを駆動するための駆動部(把持駆動部)22bと、動力源22cと、エンドエフェクタ筐体22dとを有する。力覚センサ3は、エンドエフェクタ22が把持機構部22aで受けた力を変位に変換するための弾性部材3aと、被検出部3bと、変位検出部3cとを有する。弾性部材3aは、エンドエフェクタ22の駆動部22bとエンドエフェクタ筐体22dの間に配置されている。把持機構部22aの中心と力覚センサ3の中心を結ぶ直線をZ軸とする。
【0034】
把持機構部22aは、把持対象となる部品に合わせて、さまざまな形態の把持機構部品に交換し、駆動部22bに取り付けることができる。駆動部22bは、把持機構部22aの把持動作を駆動する機構が備えられており、駆動するためのギアやリンク等のメカニカルな機構及びアクチュエータ等がユニットとなっている。力覚センサ3は、対抗する被検出部3bと変位検出部3cの相対変位を、変位検出部3cで検出する変位センサによって構成される。
【0035】
力覚センサ3の被検出部3bはエンドエフェクタ22の駆動部22b側に配置され、対向するエンドエフェクタ筐体22dの底部に変位検出部3cが配置されている。被検出部3bと変位検出部3cの位置関係は逆であってもかまわない。
【0036】
エンドエフェクタ22で部品を把持して組み付けるときに部品に反力が加わると、把持機構部22aに力が伝わり、駆動部22bが弾性部材3aを支点に変位する。例えば被検出部3bを磁気出力素子とし、変位検出素子をホール素子などの磁気検出素子とすると、組み付け反力による、被検出部3bの変位を、変位検出部3cの出力の変化により検出する。これによって組み付け反力の大きさや方向を検出する。
【0037】
力覚センサ内蔵型のエンドエフェクタ22は、ロボットアーム1の可動端に固着されたエンドエフェクタ筐体22dを有し、弾性部材3aは、Z方向に駆動部22bの重心位置に配置してある。ロボットアーム1が動作したとき働く慣性力は、弾性部材3aを介して結合されている駆動部22bと把持機構部22aを合わせた部分に主にかかる。把持機構部22aは、駆動部22bに比べて質量が充分に小さいので、重心位置への影響は小さく、(把持機構部22a+駆動部22bの重心位置)≒(駆動部22bの重心位置)となる。
【0038】
本実施例では、ロボットアーム1の先端アームフレーム1aに固着されたエンドエフェクタ筐体22dが、弾性部材3aよりロボットアーム1の固定端側にエンドエフェクタコントローラ26を支持する支持手段を備える。エンドエフェクタコントローラ26は、エンドエフェクタ上の電気回路と、ロボットコントローラ5に電気的に接続されている。なお、この構成で、先端アームフレーム1aにエンドエフェクタコントローラ26を支持させてもよい。
【0039】
エンドエフェクタコントローラ26は、駆動源22cの駆動制御回路と、力覚センサ3の出力を変位検出部3cから受け取り信号処理する信号処理回路を備えている。さらにエンドエフェクタコントローラ26は、ロボットコントローラ5との通信回路を備え、把持機構部22aを駆動する駆動パターンや力覚センサ部の信号処理演算した結果を、制御線27aにより通信する。ロボットコントローラ5から把持機構部22aに指示する駆動パターンは、例えばエンドエフェクタ22がグリッパ式のハンドであれば、グリッパの開閉位置、速度、力などを指令値とする。制御線27aを伝達される信号は、例えば差動のシリアル信号プロトコルなどによって行われる。
【0040】
また、エンドエフェクタコントローラ26は、力覚センサ3やエンドエフェクタ22、エンドエフェクタコントローラ26自身で消費する電力を、外部の電源10より受けるための電力線27bを備えている。ここで、制御線27aと電力線27bは1本の線として示されているが、それぞれ、2本以上の束線であってかまわない。
【0041】
本実施例による力制御ロボットが、エンドエフェクタ22で把持した部品をワークに組み付ける際の動作シーケンスを以下に説明する。エンドエフェクタコントローラ26は、ロボットコントローラ5よりエンドエフェクタ22の動作の指令を受けて、駆動部22b内のサーボモータを駆動する。この際、把持機構部22aで把持した部品が、ワークに当接したときの部品とワーク間で発生する力を、弾性部材3aのたわみ変位量(変形量)として検出する。ロボットコントローラ5は、この検出値に基づき、ロボットアーム1の動作を修正し、エンドエフェクタ22に把持された部品とワーク間で発生する力を調整しながら部品をワークに組み付ける。このようにして、力制御ロボットは、把持された部品やワーク、エンドエフェクタ22などの破損を防止し、良好な状態で把持した部品をワークに挿入して組み付けを行う。
【0042】
本実施例は、実施例1と同様の効果に加えて、弾性部材3aを把持機構部22aの近傍に備えたことにより、弾性部材3aの変形による駆動部22bの変形支点との距離を大きくとることができる。そのため、力覚センサでエンドエフェクタを支えた積層構造に比較して、エンドエフェクタ自体の小型化ができる。小型化によって、ロボットアーム先端の把持機構部22aの振動を抑制することができ、検出感度を落とすこと無く力覚センサ部で変位拡大することができる。また、変位拡大されていることから弾性部材3aの剛性も落とす必要が無くなり、小型化と同時に高速化への対応も可能となる。
【0043】
駆動部22bの重心位置と弾性部材3aの変形支点を一致させることで、弾性部材3aの変形支点と駆動部22bの重心位置の位置差によるモーメント力が力覚センサ部に及ぼす影響を極力小さくすることができる。よって、ロボットアーム1を動作させたときの、被検出部23bと変位検出部23cの位置決め静定時間を短くし、力覚センサ3の検出を高速化できる。
【0044】
図4に示すように、把持機構部22aが外力を受けたとき、エンドエフェクタ筐体22dに対する把持機構部22aの位置変化が最も小さい場所を作動中心部21と呼ぶことにする。図4では、作動中心部21は、駆動部22の重心となる。作動中心部21を介して、駆動部22bに実装されたサーボモータなどの電気回路及び電気部品と、エンドエフェクタコントローラ26とを電気接続する電線を、ここではエンドエフェクタ線とよぶこととする。エンドエフェクタ線は、実際は複数の電線である。エンドエフェクタ線を、作動中心部21を介して駆動部22bに結線すると、駆動部22bが弾性部材3aを支点に動いたとき、力覚センサ3の検出誤差の要因となる、電線のばね成分により発生する力の変動の影響を抑制することができる。つまり、力覚センサ3によるさらなる高精度な力の検出が可能となり、正確な組み立てが実現できる。
【0045】
上記実施例1、2において、エンドエフェクタの把持機構部は、部品を把持できるものであれば2本である必要はない。また、エンドエフェクタの駆動部は、把持機構部による把持を可能とする駆動機構であれば、駆動源(電磁式や圧空式など)や機構部(ギア、リンクなど)も何でも構わない。弾性部材は、エンドエフェクタが変位することができれば材質及び構成は限定されず、複数部品を組み合わせたユニットでも構わない。力覚センサ部は、ホール素子などを想定したが、相対変位が検出できるセンサであれば、レーザ変位計や渦電流センサ等でも構わない。また、検出素子の数、位置を変えることで6軸の検出も可能となる。
【符号の説明】
【0046】
1 ロボットアーム
1a 先端アームフレーム
2、22 エンドエフェクタ
3 力覚センサ
3a 弾性部材
4 架台
5 ロボットコントローラ
6、26 エンドエフェクタコントローラ
22d エンドエフェクタ筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が固定端、他端が可動端となるロボットアームと、
前記ロボットアームの可動端に弾性部材を介して接続され、部品を把持する把持機構部及び把持駆動部を備えたエンドエフェクタと、
前記エンドエフェクタの前記把持駆動部を制御し、前記把持機構部を動作させるエンドエフェクタコントローラと、
前記ロボットアームの動作を制御するロボットコントローラと、
前記エンドエフェクタの前記把持機構部に作用する外力を、前記弾性部材の変形量より検出する力検出手段と、
前記ロボットアームの可動端に配置され、前記エンドエフェクタコントローラを前記弾性部材より前記ロボットアームの固定端側に支持する支持手段と、を有し、
前記ロボットコントローラは、前記力検出手段の検出値に基づいて前記ロボットアームの動作を修正することを特徴とする力制御ロボット。
【請求項2】
一端が固定端、他端が可動端となるロボットアームと、
前記ロボットアームの可動端に接続され、部品を把持する把持機構部及び把持駆動部と、前記把持駆動部を弾性部材を介して支持するエンドエフェクタ筐体と、を備えたエンドエフェクタと、
前記エンドエフェクタの前記把持駆動部を制御し、前記把持機構部を動作させるエンドエフェクタコントローラと、
前記ロボットアームの動作を制御するロボットコントローラと、
前記エンドエフェクタの前記把持機構部に作用する外力を、前記弾性部材の変形量より検出する力検出手段と、を有し、
前記エンドエフェクタ筐体は、前記ロボットアームの可動端において前記エンドエフェクタコントローラを前記弾性部材より前記ロボットアームの固定端側に支持する支持手段を備え、
前記ロボットコントローラは、前記力検出手段の検出値に基づいて前記ロボットアームの動作を修正することを特徴とする力制御ロボット。
【請求項3】
前記エンドエフェクタコントローラは、前記エンドエフェクタの前記把持機構部が外力を受けたときの変位が小さい前記エンドエフェクタの作動中心部に電気接続されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の力制御ロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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