説明

力学量センサ

【課題】径時的に基板とターミナルとの接続信頼性が低下することを抑制することができる力学量センサを提供する。
【解決手段】基板30に平面から突出した端子部32を備え、ターミナル40に当該ターミナル40を貫通する挿入孔41を形成する。そして、端子部32をターミナル40の挿入孔41に挿入し、端子部32とターミナル40とを機械的、電気的に接続する。これによれば、端子部32をターミナル40と機械的に接続するため、経時的に基板30とターミナル40との接続信頼性が低下することを抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出部から出力された電気信号に応じたセンサ信号を出力する基板と、このセンサ信号を外部回路に出力するターミナルとを備えた力学量センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、特許文献1には、物理量に応じた電気信号を出力する検出部と、検出から出力された電気信号に応じたセンサ信号を出力する基板と、このセンサ信号を外部回路に出力するターミナルとを備えた力学量センサとして圧力センサが提案されている。
【0003】
この圧力センサでは、ハウジングとコネクタケースとが一体的に組み付けられており、ハウジングとコネクタケースとの間の空間に検出部および基板が備えられている。そして、コネクタケースにはターミナルが備えられており、このターミナルは基板とバネ部材を介して電気的に接続されている。具体的には、バネ部材は、一端部が基板に導電性接着剤等を介して機械的、電気的に接続されており、他端部はコネクタケースがハウジングに組み付けられたときにターミナルと接触することによって電気的に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−315833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような圧力センサでは、バネ部材がターミナルと接触することによって電気的に接続されており、バネ部材のへたりによって経時的に基板とターミナルとの接続信頼性が低下してしまうという問題がある。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、径時的に基板とターミナルとの接続信頼性が低下することを抑制することができる力学量センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、物理量に応じた電気信号を出力する検出部(24)と、検出部(24)と電気的に接続されて電気信号に応じたセンサ信号を生成する基板(30)と、基板(30)と電気的に接続され、センサ信号を外部に出力するターミナル(40)と、を備え、基板(30)には、基板(30)の平面から突出した状態で基板(30)と機械的、電気的に接続されている端子部(32)が備えられ、ターミナル(40)には、当該ターミナル(40)を貫通する挿入孔(41)が形成され、端子部(32)は、ターミナル(40)の挿入孔(41)に挿入されてターミナル(40)と機械的、電気的に接続されていることを特徴としている。
【0008】
これによれば、端子部(32)はターミナル(40)と機械的に接続されているため、経時的に基板(30)とターミナル(40)との接続信頼性が低下することを抑制することができる。
【0009】
例えば、請求項2に記載の発明のように、中空筒形状であって、一端部側に測定媒体を導入する圧力導入孔(13)が形成されていると共に他端部側に収容凹部(15)が形成されたハウジング(10)と、中空筒形状であって、一端部側に圧力導入孔(13)と連通する通路(23)が形成され、他端部側に圧力導入孔(13)に導入された圧力によって変形可能なダイヤフラム部(22)を有すると共に当該ダイヤフラム部(22)上に検出部(24)が配置され、ハウジング(10)に備えられるステム(20)と、筒状部材であって、一端部が収容凹部(15)に収容されると共に収容凹部(15)の端部(16)がかしめられることによってハウジング(10)と一体的に組み付けられ、ターミナル(40)を保持するコネクタケース(50)と、を備え、基板(30)は、ハウジング(10)とコネクタケース(50)との間の空間に備えられ、コネクタケース(50)には、ターミナル(40)に形成された挿入孔(41)を露出させる貫通孔(54)が形成されているものとすることができる。このように、測定媒体の圧力を検出する圧力センサに本発明を適用することができる。
【0010】
また、請求項3に記載の発明のように、ハウジング(10)における収容凹部(15)の端部(16)を貫通孔(54)を覆う状態でコネクタケース(50)にかしめ、端部(16)とコネクタケース(50)との間に当該端部(16)と当該コネクタケース(50)との間の隙間を閉塞するポッティング剤(80)を備えることができる。
【0011】
これによれば、ハウジング(10)とコネクタケース(50)との間の空間に貫通孔(54)を介して水等の異物が浸入することを抑制することができる。
【0012】
そして、請求項4に記載の発明のように、端子部(32)をターミナル(40)と溶接接合することができる。また、請求項5に記載の発明のように、端子部(32)をターミナル(40)とはんだ接合することができる。さらに、請求項6に記載の亜発明のように、端子部(32)を挿入孔(41)に圧入することができる。この場合、請求項7に記載の発明のように、端子部(32)を基板(30)側と反対側の先端部に向かって先細り形状とすることができる。
【0013】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態における圧力センサの断面図である。
【図2】(a)は図1中のA−A断面図、(b)は図1中のB−B断面図である。
【図3】図1に示す圧力センサの製造工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は、本実施形態における力学量センサとしての圧力センサの断面図、図2(a)は図1中のA−A断面図、図2(b)は図1中のB−B断面図である。
【0016】
図1および図2に示されるように、本実施形態の圧力センサは、ハウジング10と、ステム20と、基板30と、ターミナル40と、コネクタケース50とを備えて構成されている。
【0017】
ハウジング10は、切削や冷間鍛造等により加工された中空円筒形状の金属製のケースであり、一端部側の外周面には、被取付部材にネジ結合可能なネジ部11が形成されている。また、ハウジング10の一端部側には、ハウジング10の一端部に形成された開口部12からハウジング10の他端部側に延びる圧力導入孔13が形成されており、この圧力導入孔13に測定媒体が導入されるようになっている。
【0018】
ステム20は、中空円筒形状に加工された金属製の部材であり、ステム20の外周部に設けられた雄ネジ部21が、ハウジング10の圧力導入孔13に形成された雌ネジ部14にネジ止めされてハウジング10内に収納されている。そして、このステム20には、軸一端部側に圧力導入孔13と連通する通路23が形成され、軸他端部側にハウジング10に導入された圧力によって変形可能な薄肉状のダイヤフラム部22が形成されている。これにより、測定媒体の圧力が圧力導入孔13から通路23を介してダイヤフラム部22に伝えられる。
【0019】
そして、ステム20のダイヤフラム部22上には、単結晶Si(シリコン)等からなる圧力検出用のセンサチップ24が固定されている。このセンサチップ24は集積回路を有し、ステム20の内部(通路23)に導入された圧力によってダイヤフラム部22が変形したとき、この変形に応じた抵抗値の変化を電気信号に変換して出力する検出部(歪みゲージ)として機能するものである。
【0020】
具体的には、ステム20内に導入された圧力によってダイヤフラム部22が変形すると、これに応じてダイヤフラム部22上に設置されたセンサチップ24の歪みゲージが変形する。このとき、この変形によるピエゾ抵抗効果により、歪みゲージの抵抗値が変化する。したがって、この抵抗値の変化を検出することにより歪みゲージに加えられた応力、すなわちステム20内に導入された圧力を検出することができる。そして、ダイヤフラム部22に印加された圧力に応じた電気信号がセンサチップ24から出力される。
【0021】
基板30は、センサチップ24とワイヤ60を介して電気的に接続されており、センサチップ24から出力される電気信号を変換してセンサ信号を生成する図示しない回路やICチップ、これらを接続する配線パターン等を備えたセラミック回路基板等であり、ハウジング10の他端部側に接着剤等で固定されている。具体的には、基板30は、円形板状とされており、略中央部に厚さ方向に貫通する貫通孔31が形成されている。そして、この貫通孔31内にセンサチップ24(ステム20のダイヤフラム部22)が位置するように、ハウジング10の他端部側に接着されている。
【0022】
なお、本実施形態では、センサチップ24には電源用、グランド用、出力信号用の3つのパッドが形成されているため、基板30は、3本のワイヤ60を介してセンサチップ24と電気的に接続されている(図1中では2本のみ図示)。
【0023】
さらに、基板30には、ターミナル40と電気的に接続される端子部32が備えられている。この端子部32は、銅合金等で構成された金属棒状のものであり、基板30の平面方向と垂直方向に突出すると共に基板30と機械的、電気的に接続されるように、図示しないはんだを介して基板30に備えられている。本実施形態では、端子部32は、センサチップ24に電源用、グランド用、出力用の3つのパッドが形成されているため、図2に示されるように3つ備えられている。
【0024】
コネクタケース50は、圧力センサで検出された圧力値の信号を外部に出力するためのコネクタをなすものであり、PPS(ポリフェニレンサルファイド)等の樹脂を型成形することにより形成された円柱状のものである。そして、一端部側にフランジ部51が構成されていると共にハウジング10に組み付けられた際にハウジング10との間に空間を構成する凹部52が形成され、他端部側に開口部53が形成されている。
【0025】
そして、このコネクタケース50のフランジ部51側がOリング70を介してハウジング10に組み付けられている。具体的には、ハウジング10には収容凹部15が形成されており、コネクタケース50のフランジ部51側がハウジング10の収容凹部15内にはめ込まれ、収容凹部15の端部16がコネクタケース50のフランジ部51にかしめられることにより、コネクタケース50がハウジング10に組み付けられて一体化されている。
【0026】
また、コネクタケース50には、ターミナル40が備えられており、各ターミナル40はインサートモールドによりコネクタケース50と一体に成形されることによってコネクタケース50内に保持されている。本実施形態では、電源用、グランド用、出力(センサ)信号用の3本のターミナル40がコネクタケース50に保持されている。
【0027】
各ターミナル40は、L字状の棒状部材とされており、一端部側がフランジ部51に位置すると共に、他端部側が開口部53から突出するようにコネクタケース50内に保持されている。
【0028】
そして、コネクタケース50のうちフランジ部51には、各ターミナル40の一端部側の一部を露出させる貫通孔54がコネクタケース50の軸方向(図1中紙面上下方向)に沿って形成されている。つまり、本実施形態では、コネクタケース50は、3本のターミナル40を保持しているため、フランジ部51には3つの貫通孔54が形成されている。
【0029】
ターミナル40のうち貫通孔54から露出する部分には、コネクタケース50の軸方向(図1中紙面上下方向)に沿ってターミナル40を貫通する挿入孔41が形成されている。そして、この挿入孔41に基板30に備えられた端子部32が挿入され、溶接接合されることによってターミナル40と端子部32とが機械的、電気的に接続されている。なお、図1では、端子部32は、基板30側と反対側の先端部が挿入孔41から突き出している状態を示しているが、先端部が挿入孔41内に位置してもよい。
【0030】
また、上記のように、コネクタケース50のフランジ部51にはハウジング10の端部16がかしめられているが、この端部16は貫通孔54を覆うようにかしめられている。そして、ハウジング10の端部16とフランジ部51との間には、シリコーン樹脂等で構成されるポッティング剤80が配置されており、このポッティング剤80によって端部16とフランジ部51との間の隙間が閉塞されている。以上が本実施形態における圧力センサの構成である。
【0031】
次に、図1に示す圧力センサの製造方法について説明する。図3は、図1に示す圧力センサの製造工程を示す断面図である。
【0032】
まず、図3(a)に示されるように、ステム20のダイヤフラム部22上にセンサチップ24を接着剤等を介して固定し、このステム20の雄ネジ部21をハウジング10の雌ネジ部14にネジ止めする。その後、端子部32を備えた基板30をハウジング10の他端部に接着剤を介して固定する。
【0033】
続いて、コネクタケース50のフランジ部51側をOリング70を介してハウジング10の収容凹部15にはめ込む。具体的には、コネクタケース50に形成された貫通孔54に端子部32が挿入され、かつ、ターミナル40に形成された挿入孔41に端子部32が挿入されるように、コネクタケース50のフランジ部51をハウジング10の収容凹部15にはめ込む。そして、コネクタケース50に形成された貫通孔54から熱を供給して端子部32とターミナル40とを溶接接合し、端子部32とターミナル40とを機械的、電気的に接続する。
【0034】
その後、図3(b)に示されるように、ハウジング10の端部16をコネクタケース50のフランジ部51にかしめ、ハウジング10とコネクタケース50とを組み付けて一体化する。
【0035】
続いて、図3(c)に示されるように、ハウジング10の端部16とコネクタケース50のフランジ部51との間の隙間が閉塞されるようにポッティング剤80を配置することにより、上記圧力センサが製造される。
【0036】
以上説明したように、本実施形態の圧力センサでは、端子部32がターミナル40の挿入孔41に挿入され、端子部32とターミナル40とが溶接接合によって機械的、電気的に接続されている。このため、経時的に基板30とターミナル40との接続信頼性が低下することを抑制することができる。
【0037】
また、バネ部材を介して基板30とターミナル40との電気的な接続を行わないため、例えば、バネ部材としてコイル状のものを用いる場合と比較して、基板30とターミナル40とを接続する接続部がコイルとして機能することもなく、応答性が低下することも抑制することができる。
【0038】
さらに、ハウジング10の端部16とコネクタケース50のフランジ部51との間にはポッティング剤80が配置されている。このため、ハウジング10の端部16とコネクタケース50のフランジ部51との間の隙間から貫通孔54を介してハウジング10とコネクタケース50との間のセンサチップ24等が搭載されている空間に水等の異物が浸入することを抑制することができる。
【0039】
(他の実施形態)
上記第1実施形態では、端子部32とターミナル40とを溶接接合によって機械的、電気的に接続する例を説明したが、次のようにしてもよい。すなわち、端子部32とターミナル40とをはんだ接合によって機械的、電気的に接続してもよい。また、端子部32とターミナル40とをレーザ溶接によって電気的、機械的に接続してもよい。さらに、端子部32を挿入孔41に圧入することにより、端子部32とターミナル40とを機械的、電気的に接続してもよい。この場合は、端子部32の先端部を先細り形状とすることにより、圧入工程を容易に行うことができる。
【0040】
また、上記第1実施形態では、圧力センサを例に挙げて説明したが、例えば、加速度を検出する加速度センサや角速度を検出する角速度センサに本発明を適用することもできる。すなわち、本発明は、基板30とターミナル40とを端子部32を介して電気的に接続してなる力学量センサに適用することができる。
【符号の説明】
【0041】
10 ハウジング
20 ステム
24 センサチップ(検出部)
30 基板
32 端子部
40 ターミナル
41 挿入孔
50 コネクタケース
51 フランジ部
54 貫通孔
80 ポッティング剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理量に応じた電気信号を出力する検出部(24)と、
前記検出部(24)と電気的に接続されて前記電気信号に応じたセンサ信号を生成する基板(30)と、
前記基板(30)と電気的に接続され、前記センサ信号を外部に出力するターミナル(40)と、を備え、
前記基板(30)には、前記基板(30)の平面から突出した状態で当該基板(30)と機械的、電気的に接続されている端子部(32)が備えられ、
前記ターミナル(40)には、当該ターミナル(40)を貫通する挿入孔(41)が形成され、
前記端子部(32)は、前記ターミナル(40)の挿入孔(41)に挿入されて前記ターミナル(40)と機械的、電気的に接続されていることを特徴とする力学量センサ。
【請求項2】
中空筒形状であって、一端部側に測定媒体を導入する圧力導入孔(13)が形成されていると共に他端部側に収容凹部(15)が形成されたハウジング(10)と、
中空筒形状であって、一端部側に前記圧力導入孔(13)と連通する通路(23)が形成され、他端部側に前記圧力導入孔(13)に導入された圧力によって変形可能なダイヤフラム部(22)を有すると共に当該ダイヤフラム部(22)上に前記検出部(24)が配置され、前記ハウジング(10)に備えられるステム(20)と、
筒状部材であって、一端部が前記収容凹部(15)に収容されると共に前記収容凹部(15)の端部(16)がかしめられることによって前記ハウジング(10)と一体的に組み付けられ、前記ターミナル(40)を保持するコネクタケース(50)と、を備え、
前記基板(30)は、前記ハウジング(10)と前記コネクタケース(50)との間の空間に備えられ、
前記コネクタケース(50)には、前記ターミナル(40)に形成された挿入孔(41)を露出させる貫通孔(54)が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の力学量センサ。
【請求項3】
前記ハウジング(10)における前記収容凹部(15)の端部(16)は、前記貫通孔(54)を覆う状態で前記コネクタケース(50)にかしめられ、
前記端部(16)と前記コネクタケース(50)との間には、当該端部(16)と当該コネクタケース(50)との間の隙間を閉塞するポッティング剤(80)が備えられていることを特徴とする請求項2に記載の力学量センサ。
【請求項4】
前記端子部(32)は、前記ターミナル(40)と溶接接合されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の力学量センサ。
【請求項5】
前記端子部(32)は、前記ターミナル(40)とはんだ接合されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の力学量センサ。
【請求項6】
前記端子部(32)は、前記挿入孔(41)に圧入されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の力学量センサ。
【請求項7】
前記端子部(32)は、前記基板(30)側と反対側の先端部に向かって先細り形状とされていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の力学量センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−96805(P2013−96805A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239108(P2011−239108)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】