説明

力覚検出装置および車輪型ロボット

【課題】 ロボットの移動を制御するのに好適なユーザインターフェースとしての力覚検出装置を提供する。
【解決手段】 車輪型ロボット100は、ユーザインターフェースとしての操作部40を有する。操作部40は、基体10の後方に伸長し水平に配置された1対のフレーム80r、80lと、棒状のハンドル82と、基体10の右側面側のフレーム80rの先端に設けられた3軸力覚センサ84rと、基体10の左側面側のフレーム80lの先端に設けられた3軸力覚センサ84lと、ハンドル82の一端と3軸力覚センサ84rとを連結するフローティングコネクタ86rと、ハンドル82の他端と3軸力覚センサ84lとを連結するフローティングコネクタ86lとを有して構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドルを介して付与される力を検出する力覚検出装置に係り、特に、ロボットの移動を制御するのに好適なユーザインターフェースとしての力覚検出装置および車輪型ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、盲導犬型ロボットとしては、例えば、特許文献1記載の技術が知られている。
特許文献1記載の技術は、飼い主を認識する機能と、接触センサを有する手綱部と、接触センサの検出結果に基づいて飼い主がロボットに接触していることを認知する機能と、飼い主がロボットから離れると飼い主を探して接触する機能とを備えるものである。
なお、従来、力覚センサとしては、例えば、特許文献2、3記載の技術が知られている。
【特許文献1】特開2006−345960号公報
【特許文献2】特開2004−45044号公報
【特許文献3】特表2007−510232号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1記載の技術にあっては、接触センサを有する手綱部が設けられているに過ぎず、この手綱部では、盲導犬型ロボットの移動を利用者が自在に操作するのが困難であるという問題があった。
特許文献2、3記載の力覚センサを手綱部に設け、力覚センサの検出結果に基づいて盲導犬型ロボットの移動を制御することも考えられるが、この構成では、手綱部を引っ張る力や握る力を検出できるだけであり、利用者の意思に沿って盲導犬型ロボットの移動を制御するのは困難である。
【0004】
そこで、本発明は、このような従来の技術の有する未解決の課題に着目してなされたものであって、ロボットの移動を制御するのに好適なユーザインターフェースとしての力覚検出装置および車輪型ロボットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
〔発明1〕 上記目的を達成するために、発明1の力覚検出装置は、一端が揺動可能に支持されたハンドルと、前記ハンドルの一端の側に設けられ、前記ハンドルを介して付与される力を検出する多軸力覚センサとを備える。
このような構成であれば、ハンドルに力を付与すると、ハンドルの一端が揺動可能に支持されているので、ハンドルに付与された力がハンドルを介して多軸力覚センサに伝達される。そして、多軸力覚センサにより、ハンドルを介して付与された力が検出される。
ここで、ハンドルの一端の側に多軸力覚センサを設けることには、ハンドルの一端に多軸力覚センサを直接設けること、およびハンドルの一端と何らかの媒体を介して多軸力覚センサを設けることが含まれる。
【0006】
〔発明2〕 さらに、発明2の力覚検出装置は、発明1の力覚検出装置において、前記ハンドルは、他端が揺動可能に支持され、さらに、前記ハンドルの他端に設けられ、前記ハンドルを介して付与される力を検出する第2多軸力覚センサを備える。
このような構成であれば、ハンドルに力を付与すると、ハンドルの他端が揺動可能に支持されているので、ハンドルに付与された力がハンドルを介して多軸力覚センサおよび第2多軸力覚センサに伝達される。そして、多軸力覚センサおよび第2多軸力覚センサにより、ハンドルを介して付与された力が検出される。
ここで、ハンドルの他端の側に第2多軸力覚センサを設けることには、ハンドルの他端に第2多軸力覚センサを直接設けること、およびハンドルの他端と何らかの媒体を介して第2多軸力覚センサを設けることが含まれる。
【0007】
〔発明3〕 さらに、発明3の力覚検出装置は、発明2の力覚検出装置において、前記多軸力覚センサは、互いに直交する3軸の方向に付与される力をそれぞれ検出する3軸力覚センサであり、前記3軸の1つを前記ハンドルの軸方向と一致させて前記ハンドルの一端の側に設けられており、前記第2多軸力覚センサは、互いに直交する3軸の方向に付与される力をそれぞれ検出する3軸力覚センサであり、前記3軸の1つを前記ハンドルの軸方向と一致させて前記ハンドルの他端に設けられている。
このような構成であれば、多軸力覚センサおよび第2多軸力覚センサにより、ハンドルの伸長方向およびこれと直交する2軸の方向に付与された力をそれぞれ求めることができるとともに、ハンドルに生じるモーメントを求めることもできる。
【0008】
〔発明4〕 一方、上記目的を達成するために、発明4の車輪型ロボットは、基体と、前記基体に取り付けられた車輪とを備え、前記車輪の回転により移動する車輪型ロボットであって、発明1ないし3のいずれか1項に記載の力覚検出装置を備える。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように、発明1の力覚検出装置によれば、多軸力覚センサの検出結果に基づいて、ハンドルを単に引っ張る力や握る力ではなく、ハンドルに付与された力および方向を把握することが可能となるので、ロボットのユーザインターフェースとして適用した場合は、従来に比して、利用者の意思に沿ってロボットの移動を比較的適切に制御することができるという効果が得られる。
【0010】
さらに、発明2の力覚検出装置によれば、多軸力覚センサおよび第2多軸力覚センサの検出結果に基づいて、ハンドルに付与された力および方向をさらに正確に把握することが可能となるので、利用者の意思に沿ってロボットの移動をさらに適切に制御することができるという効果が得られる。
さらに、発明3の力覚検出装置によれば、多軸力覚センサおよび第2多軸力覚センサにより、ハンドルの伸長方向およびこれと直交する2軸の方向に付与された力をそれぞれ求めることができるとともに、ハンドルに生じるモーメントを求めることもできるという効果が得られる。
【0011】
一方、発明4の車輪型ロボットによれば、発明1の力覚検出装置と同等の効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。図1ないし図8は、本発明に係る力覚検出装置および車輪型ロボットの実施の形態を示す図である。
まず、本発明を適用する車輪型ロボット100の構成を説明する。
図1は、車輪型ロボット100の正面図である。
図2は、車輪型ロボット100の側面図である。
【0013】
車輪型ロボット100は、図1および図2に示すように、基体10と、基体10の両側面にそれぞれ回転可能に設けられた1対の駆動輪20と、基体10の前部および後部にそれぞれ設けられた2つのキャスタ装置30と、基体10の後上部に設けられた操作部40とを有して構成されている。
次に、操作部40の構成を説明する。
【0014】
図3は、操作部40の斜視図である。
図4は、図3の一部を拡大した拡大図である。
操作部40は、図3および図4に示すように、基体10の後方に伸長し水平に配置された1対のフレーム80r、80lと、棒状のハンドル82と、基体10の右側面側のフレーム80rの先端に設けられた3軸力覚センサ84rと、基体10の左側面側のフレーム80lの先端に設けられた3軸力覚センサ84lと、ハンドル82の一端と3軸力覚センサ84rとを連結するフローティングコネクタ86rと、ハンドル82の他端と3軸力覚センサ84lとを連結するフローティングコネクタ86lとを有して構成されている。
【0015】
3軸力覚センサ84r、84lは、互いに直交する3軸(x、y、z)の方向に付与される力をそれぞれ検出する力覚センサであって、3軸の1つをハンドル82の軸方向と一致させてフローティングコネクタ86r、86lの一端に連結している。
ハンドル82の両端は、フローティングコネクタ86r、86lの他端に連結している。
【0016】
フローティングコネクタ86r、86lは、例えば、ボールジョイントによる首ふり作用と偏心移動作用により3次元方向にズレを吸収する連結具であって、ハンドル82の一端および他端をそれぞれ揺動可能に支持する。フローティングコネクタとしては、例えば、ヒロタカ精機株式会社のフローティングコネクタ(http://www.mekatoro.net/mechatro_parts/stylec/pdf/P01-149.html:2008年4月現在)を採用することができる。
【0017】
次に、キャスタ装置30の構成を説明する。
図5は、キャスタ装置30の正面図である。
キャスタ装置30は、図5に示すように、キャスタ31と、キャスタ31を上下動させるリニアアクチュエータ32と、キャスタ31が受けた床反力を検出する床反力検出部33とを有して構成されている。
【0018】
リニアアクチュエータ32は、直線運動する直動軸32aを有し、フレーム34により支持されている。
フレーム34は、金属板を断面逆U字状に形成してなり、U字の開口端部の両側から水平方向にそれぞれ伸長するフランジ34aを有する。フランジ34aは、基体10の内底面に取り付けられている。フレーム34の上面には、貫通穴(不図示)が形成されている。リニアアクチュエータ32は、出力軸面32bを下向きにし、フレーム34の貫通穴に直動軸32aを挿通させてフレーム34の上方に設置されている。出力軸面32bは、ボルト34bによりフレーム34の上面に固定されている。
【0019】
床反力検出部33は、基体10の下方に設置され、高剛性ニードルガイド35を介してリニアアクチュエータ32に連結されている。リニアアクチュエータ32は、推力は強いが軸方向に直交する曲げモーメントに弱いという性質がある。そこで、高剛性ニードルガイド35で曲げモーメントを受ける構成を採用することにより、曲げモーメントに対する強度を向上することができる。
【0020】
基体10の底面のうちフレーム34の開口部の真下には、貫通穴10aが形成されている。高剛性ニードルガイド35は、シャフト35aを有し、シャフト35aを貫通穴10aに挿通させてフレーム34に固定されている。シャフト35aの上端は、直動軸32aに連結され、シャフト35aの下端は、床反力検出部33の上部に連結されている。
一方、キャスタ31は、従動輪31aと、従動輪31aを回転可能に支持し収容する車輪支持枠31bと、車輪支持枠31bの上部に取り付けられたキャスタ支持軸31cとを有して構成されている。
キャスタ支持軸31cは、従動輪31aの回転軸と直交する方向に回転可能に車輪支持枠31bに取り付けられている。キャスタ支持軸31cの上端は、床反力検出部33の下部に連結されている。
【0021】
次に、車輪型ロボット100の移動制御システムを説明する。
図6は、車輪型ロボット100の移動制御システムを示すブロック図である。
各リニアアクチュエータ32には、図6に示すように、リニアアクチュエータ32の直動位置を検出するエンコーダ42と、アクチュエータ指令信号およびエンコーダ42の直動位置検出信号に基づいてリニアアクチュエータ32の駆動を制御するドライバ44とが設けられている。
【0022】
各駆動輪20には、駆動輪20を回転駆動する車輪モータ50がそれぞれ設けられている。各車輪モータ50には、車輪モータ50の回転角度位置を検出するエンコーダ52と、モータ指令信号およびエンコーダ52の角度位置検出信号に基づいて車輪モータ50の駆動を制御するドライバ54とが設けられている。
【0023】
車輪型ロボット100は、さらに、CPU60と、外部のPC等と無線通信を行う無線通信部74と、無線通信部74とCPU60の入出力を中継するハブ76と、警告音等を出力するスピーカ78とを有して構成されている。
CPU60は、指令信号出力I/F61を介してドライバ44、54に指令信号を出力し、位置検出信号入力I/F62を介してエンコーダ42、52の位置検出信号を入力する。また、センサ信号入力I/F63を介して3軸力覚センサ84r、84lおよび各床反力検出部33からセンサ信号を入力する。また、通信I/F64を介してハブ76と信号の入出力を行い、サウンド出力I/F65を介してスピーカ78に音声信号を出力する。
【0024】
次に、CPU60で実行される処理を説明する。
CPU60は、ROM等の所定領域に格納されている制御プログラムを起動させ、その制御プログラムに従って、図7のフローチャートに示す走行制御処理を実行する。
図7は、走行制御処理を示すフローチャートである。
走行制御処理は、駆動輪20の駆動およびキャスタ装置30の上下動を制御する処理であって、CPU60において実行されると、まず、図7に示すように、ステップS100に移行する。
【0025】
ステップS100では、3軸力覚センサ84rからセンサ信号を入力し、ステップS102に移行して、3軸力覚センサ84lからセンサ信号を入力し、ステップS104に移行する。
ステップS104では、基体10の前後方向をx軸、左右方向をy軸、上下方向をz軸とし、入力したセンサ信号に基づいて、ハンドル82に付与されるx軸方向の力Fx、y軸方向の力Fyおよびz軸方向の力Fzを下式(1)により算出する。なお、x軸は、基体10の前方向を正、y軸は、基体10の右方向を正、z軸は、基体10の上方向を正とする。

Fx=Frx+Flx
Fy=Fry+Fly
Fz=Frz+Flz …(1)
【0026】
上式(1)において、Frxは、3軸力覚センサ84rで検出されたx軸方向の力、Fryは、3軸力覚センサ84rで検出されたy軸方向の力、Frzは、3軸力覚センサ84rで検出されたz軸方向の力をそれぞれ示す。また、Flxは、3軸力覚センサ84lで検出されたx軸方向の力、Flyは、3軸力覚センサ84lで検出されたy軸方向の力、Flzは、3軸力覚センサ84lで検出されたz軸方向の力をそれぞれ示す。
【0027】
次いで、ステップS106に移行して、入力したセンサ信号に基づいて、ハンドル82にz軸回りに生じるモーメントMz、およびx軸回りに生じるモーメントMxを下式(2)により算出する。

Mx=(Frz−Flz)×L
Mz=(Frx−Flx)×L …(2)

上式(2)において、Lは、ハンドル82の長さを示す。
【0028】
次いで、ステップS108に移行して、x軸方向の力Fxが「0」よりも大きいか否かを判定し、「0」よりも大きいと判定したとき(Yes)は、車輪型ロボット100を前進(x軸の正方向に移動)させる要求であると判定し、ステップS110に移行して、駆動輪20が正転駆動するようにドライバ54へのモータ指令信号を生成し、生成したモータ指令信号をドライバ54に出力し、ステップS112に移行する。
【0029】
ステップS112では、x軸方向の力Fxが「0」よりも小さいか否かを判定し、「0」よりも小さいと判定したとき(Yes)は、車輪型ロボット100を後退(x軸の負方向に移動)させる要求であると判定し、ステップS114に移行して、駆動輪20が逆転駆動するようにドライバ54へのモータ指令信号を生成し、生成したモータ指令信号をドライバ54に出力し、ステップS116に移行する。
【0030】
ステップS116では、y軸方向の力Fyが「0」よりも大きいか否かを判定し、「0」よりも大きいと判定したとき(Yes)は、車輪型ロボット100を右旋回させる要求であると判定し、ステップS118に移行する。
ステップS118では、基体10の左側面側の駆動輪20(以下、左駆動輪20という。)の回転数が基体10の右側面側の駆動輪20(以下、右駆動輪20という。)の回転数よりも大きくなるようにドライバ54へのモータ指令信号を生成し、生成したモータ指令信号をドライバ54に出力し、ステップS120に移行する。なお、この場合、左駆動輪20の回転数を増加させてもよいし、右駆動輪20の回転数を減少させてもよいし、両方の回転数を適宜増減させてその相対差を調整してもよい。回転数の制御は、例えば、モーメントMx、Mzに基づいて行うことができる。
【0031】
ステップS120では、y軸方向の力Fyが「0」よりも小さいか否かを判定し、「0」よりも小さいと判定したとき(Yes)は、車輪型ロボット100を左旋回させる要求であると判定し、ステップS122に移行する。
ステップS122では、右駆動輪20の回転数が左駆動輪20の回転数よりも大きくなるようにドライバ54へのモータ指令信号を生成し、生成したモータ指令信号をドライバ54に出力し、ステップS124に移行する。なお、この場合、右駆動輪20の回転数を増加させてもよいし、左駆動輪20の回転数を減少させてもよいし、両方の回転数を適宜増減させてその相対差を調整してもよい。回転数の制御は、例えば、モーメントMx、Mzに基づいて行うことができる。
【0032】
ステップS124では、z軸方向の力Fzが「0」よりも大きいか否かを判定し、「0」よりも大きいと判定したとき(Yes)は、キャスタ装置30を伸長させる要求であると判定し、ステップS126に移行して、キャスタ装置30が伸長するようにドライバ44へのアクチュエータ指令信号を生成し、生成したアクチュエータ指令信号をドライバ44に出力し、ステップS128に移行する。
【0033】
ステップS128では、z軸方向の力Fzが「0」よりも小さいか否かを判定し、「0」よりも小さいと判定したとき(Yes)は、キャスタ装置30を短縮させる要求であると判定し、ステップS130に移行して、キャスタ装置30が短縮するようにドライバ44へのアクチュエータ指令信号を生成し、生成したアクチュエータ指令信号をドライバ44に出力し、一連の処理を終了して元の処理に復帰させる。
【0034】
一方、ステップS128で、z軸方向の力Fzが「0」以上であると判定したとき(No)は、一連の処理を終了して元の処理に復帰させる。
一方、ステップS124で、z軸方向の力Fzが「0」以下であると判定したとき(No)は、ステップS128に移行する。
一方、ステップS120で、y軸方向の力Fyが「0」以上であると判定したとき(No)は、ステップS124に移行する。
【0035】
一方、ステップS116で、y軸方向の力Fyが「0」以下であると判定したとき(No)は、ステップS120に移行する。
一方、ステップS112で、x軸方向の力Fxが「0」以下であると判定したとき(No)は、ステップS116に移行する。
一方、ステップS108で、x軸方向の力Fxが「0」以下であると判定したとき(No)は、ステップS112に移行する。
【0036】
なお、床反力検出部33からのセンサ信号に基づいてキャスタ装置30の駆動を制御することもできる。具体的には、例えば、センサ信号に基づいて、前部のキャスタ装置30のキャスタ31が受けた床反力FFおよび後部のキャスタ装置30のキャスタ31が受けた床反力FBを算出する。床反力FF、FBがいずれも標準床反力FNよりも大きいときは、床反力FF、FBと標準床反力FNの差が小さくなるように、両方のキャスタ装置30のキャスタ31を短縮させる。また、床反力FF、FBがいずれも標準床反力FNよりも小さいときは、床反力FF、FBと標準床反力FNの差が小さくなるように、両方のキャスタ装置30のキャスタ31を伸長させる。また、床反力FFが床反力FBよりも大きいときは、床反力FFと床反力FBの差が小さくなるように、前部のキャスタ装置30のキャスタ31を伸長させる。また、床反力FBが床反力FFよりも大きいときは、床反力FFと床反力FBの差が小さくなるように、後部のキャスタ装置30のキャスタ31を伸長させる。
【0037】
次に、本実施の形態の動作を説明する。
図8は、利用者によるハンドル82の操作状態を示す図である。
利用者は、図8(a)に示すように、ハンドル82に対して左前方向に力を付与すると、ハンドル82の両端がフローティングコネクタ86r、86lにより揺動可能に支持されているので、ハンドル82に付与された力がハンドル82を介して3軸力覚センサ84r、84lに伝達される。そして、3軸力覚センサ84r、84lにより、x、y、z軸方向の力Frx、Fry、Frz、Flx、Fly、Flzがそれぞれ検出される。次いで、ステップS100〜S106を経て、3軸力覚センサ84r、84lからセンサ信号が入力され、センサ信号に基づいて、x、y、z軸方向の力Fx、Fy、FzおよびモーメントMx、Mzが算出される。この場合、左前方向に力を付与しているので、x軸方向の力Fxは正の値、y軸方向の力Fyは負の値として得られる。
【0038】
x軸方向の力Fxが「0」よりも大きいので、ステップS110を経て、モータ指令信号に基づいてドライバ54が車輪モータ50を駆動する。車輪型ロボット100は、車輪モータ50が駆動されると、車輪モータ50の動力が駆動輪20に伝達され、駆動輪20の駆動により走行することができる。前部および後部のキャスタ装置30は、従動輪31aであるので、車輪型ロボット100の走行に伴って回転する。そして、駆動輪20が正転駆動することにより車輪型ロボット100が前進する。
【0039】
また、y軸方向の力Fyが「0」よりも小さいので、ステップS122を経て、モータ指令信号に基づいてドライバ54が車輪モータ50を駆動し、右駆動輪20の回転数が左駆動輪20の回転数よりも大きくなり、車輪型ロボット100が左旋回する。
これに対し、利用者は、図8(b)に示すように、ハンドル82に対して右後方向に力を付与すると、同様に、3軸力覚センサ84r、84lにより、x、y、z軸方向の力Frx、Fry、Frz、Flx、Fly、Flzがそれぞれ検出される。そして、ステップS100〜S106を経て、x、y、z軸方向の力Fx、Fy、FzおよびモーメントMx、Mzが算出される。この場合、右後方向に力を付与しているので、x軸方向の力Fxは負の値、y軸方向の力Fyは正の値として得られる。
【0040】
x軸方向の力Fxが「0」よりも小さいので、ステップS114を経て、モータ指令信号に基づいてドライバ54が車輪モータ50を駆動し、駆動輪20が逆転駆動することにより車輪型ロボット100が後退する。
また、y軸方向の力Fyが「0」よりも大きいので、ステップS118を経て、モータ指令信号に基づいてドライバ54が車輪モータ50を駆動し、左駆動輪20の回転数が右駆動輪20の回転数よりも大きくなり、車輪型ロボット100が右旋回する。
【0041】
このようにして、本実施の形態では、ハンドル82の一端を揺動可能に支持し、ハンドル82を介して付与される力を検出する3軸力覚センサ84rをハンドル82の一端の側に設けた。
これにより、3軸力覚センサ84rの検出結果に基づいて、ハンドル82を単に引っ張る力や握る力ではなく、ハンドル82に付与された力および方向を把握することが可能となるので、従来に比して、利用者の意思に沿って車輪型ロボット100の移動を比較的適切に制御することができる。
【0042】
さらに、本実施の形態では、ハンドル82の他端を揺動可能に支持し、ハンドル82を介して付与される力を検出する3軸力覚センサ84lをハンドル82の他端の側に設けた。
これにより、3軸力覚センサ84r、84lの検出結果に基づいて、ハンドル82に付与された力および方向をさらに正確に把握することが可能となるので、利用者の意思に沿って車輪型ロボット100の移動をさらに適切に制御することができる。
【0043】
さらに、本実施の形態では、3軸力覚センサ84rは、互いに直交する3軸の方向に付与される力をそれぞれ検出する3軸力覚センサであり、3軸の1つをハンドル82の軸方向と一致させてハンドル82の一端の側に設けられており、3軸力覚センサ84lは、互いに直交する3軸の方向に付与される力をそれぞれ検出する3軸力覚センサであり、3軸の1つをハンドル82の軸方向と一致させてハンドル82の他端に設けられている。
【0044】
これにより、3軸力覚センサ84r、84lにより、x、y、z軸方向の力Fx、Fy、Fzを求めることができるとともに、モーメントMx、Mzも求めることができる。
さらに、本実施の形態では、キャスタ装置30は、従動輪31aの回転軸と直交する方向に回転可能に車輪支持枠31bに取り付けられたキャスタ支持軸31cを有するキャスタ31と、直動軸32aを有するリニアアクチュエータ32とを備え、キャスタ支持軸31cおよび直動軸32aが軸方向に連結されている。
【0045】
これにより、キャスタ31およびリニアアクチュエータ32を軸方向に連結した構成を採用しているので、上下動の範囲を大きくする場合でも、必要トルクがさほど大きくならず、リニアアクチュエータ32が極端に大型化することがない。また、減速機も必要ない。したがって、大型化および重量の増加を抑制することができる。
さらに、本実施の形態では、キャスタ装置30は、キャスタ31が受けた床反力を検出する床反力検出部33を備え、キャスタ支持軸31cおよび直動軸32aが床反力検出部33を介して軸方向に連結されている。
【0046】
これにより、キャスタ支持軸31cと直動軸32aの間に床反力検出部33が介在しているので、キャスタ31が受けた床反力を容易に検出することができる。
さらに、本実施の形態では、キャスタ支持軸31cおよび直動軸32aは、高剛性ニードルガイド35を介して連結されている。
これにより、高剛性ニードルガイド35により、軸方向に直交する曲げモーメントを受けることができるので、曲げモーメントに対する強度を向上することができる。
【0047】
さらに、本実施の形態では、車輪型ロボット100は、基体10の上下方向にキャスタ31を伸縮駆動するキャスタ装置30と、キャスタ31が受けた床反力を検出する床反力検出部33とを備え、床反力検出部33の検出結果に基づいてキャスタ装置30の駆動を制御する。
これにより、床反力検出部33の検出結果に基づいてキャスタ装置30の駆動が制御されるので、距離センサでは検出しにくい段差や床全体の傾きに対応することができる。したがって、段差や傾斜のある環境であってもスムースに移動することができるので、段差に対して高い適応性を実現することができる。
【0048】
さらに、本実施の形態では、車輪型ロボット100は、床反力検出部33からセンサ信号を入力し、入力したセンサ信号に基づいて、前部および後部のキャスタ31が受けた床反力FF、FBを算出し、算出した床反力FF、FBに基づいてリニアアクチュエータ32を制御する。
これにより、複数の床反力検出部33の検出結果に基づいて各キャスタ装置30の駆動が制御されるので、距離センサでは検出しにくい段差や床全体の傾きにさらに好適に対応することができる。したがって、段差に対してさらに高い適応性を実現することができる。
【0049】
さらに、本実施の形態では、車輪型ロボット100は、床反力FF、FBがいずれも標準床反力FNよりも大きいと判定したときは、両方のキャスタ装置30のキャスタ31が短縮するようにリニアアクチュエータ32を制御する。
これにより、両方のキャスタ31に荷重がかかり過ぎているような場合に、車輪型ロボット100を安定な姿勢に保つことができる。
【0050】
さらに、本実施の形態では、車輪型ロボット100は、床反力FF、FBがいずれも標準床反力FNよりも小さいと判定したときは、両方のキャスタ装置30のキャスタ31が伸長するようにリニアアクチュエータ32を制御する。
これにより、両方のキャスタ31が浮いているような場合に、車輪型ロボット100を安定な姿勢に保つことができる。
【0051】
さらに、本実施の形態では、車輪型ロボット100は、床反力FFが床反力FBよりも大きいと判定したときは、前部のキャスタ装置30のキャスタ31が伸長するようにリニアアクチュエータ32を制御する。
これにより、車輪型ロボット100が前傾姿勢または下り坂を走行中であるような場合に、車輪型ロボット100を安定な姿勢に保つことができる。
【0052】
さらに、本実施の形態では、車輪型ロボット100は、床反力FBが床反力FFよりも大きいと判定したときは、後部のキャスタ装置30のキャスタ31が伸長するようにリニアアクチュエータ32を制御する。
これにより、車輪型ロボット100が後傾姿勢または上り坂を走行中であるような場合に、車輪型ロボット100を安定な姿勢に保つことができる。
【0053】
〔他の実施の形態〕
なお、上記実施の形態においては、ハンドル82の両端を浮動可能に支持し、ハンドル82の一端および他端の側に3軸力覚センサ84r、84lを設けて構成したが、これに限らず、少なくとも一方を揺動可能に支持し、当該一方の側にのみ3軸力覚センサを設けて構成することもできる。
【0054】
また、上記実施の形態においては、3軸力覚センサ84r、84lを用いて構成したが、これに限らず、2軸または4軸以上の力覚センサを用いて構成することもできる。
また、上記実施の形態においては、ハンドル82と3軸力覚センサ84r、84lとを、フローティングコネクタ86r、86lを介して連結したが、これに限らず、直接または他の連結手段を介して連結することもできる。
【0055】
また、上記実施の形態においては、床反力FFが床反力FBよりも大きいと判定したときは、前部のキャスタ装置30のキャスタ31が伸長するようにリニアアクチュエータ32を制御したが、これに限らず、後部のキャスタ装置30のキャスタ31が短縮するようにリニアアクチュエータ32を制御することもできる。
また、上記実施の形態においては、床反力FBが床反力FFよりも大きいと判定したときは、後部のキャスタ装置30のキャスタ31が伸長するようにリニアアクチュエータ32を制御したが、これに限らず、前部のキャスタ装置30のキャスタ31が短縮するようにリニアアクチュエータ32を制御することもできる。
【0056】
また、上記実施の形態においては、リニアアクチュエータ32を用いて構成したが、リニアアクチュエータとしては、電気式(電磁式、静電式、圧電式等)、流体圧式(油圧式、水圧式等)、空圧式その他任意の方式のアクチュエータを採用することができる。
また、上記実施の形態においては、リニアアクチュエータ32を往復直線運動を行うものとして構成したが、これに限らず、一方向にのみ直線運動を行うものとして構成することもできる。
【0057】
また、上記実施の形態においては、本発明に係る力覚検出装置を操作部40として適用したが、これに限らず、本発明の主旨を逸脱しない範囲で他の場合にも適用可能である。例えば、台車、荷台、椅子、自転車、車椅子等の車輪として適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】車輪型ロボット100の正面図である。
【図2】車輪型ロボット100の側面図である。
【図3】操作部40の斜視図である。
【図4】図3の一部を拡大した拡大図である。
【図5】キャスタ装置30の正面図である。
【図6】車輪型ロボット100の移動制御システムを示すブロック図である。
【図7】走行制御処理を示すフローチャートである。
【図8】利用者によるハンドル82の操作状態を示す図である。
【符号の説明】
【0059】
100 車輪型ロボット
10 基体
20 駆動輪
30 キャスタ装置
31 キャスタ
31a 従動輪
31b 車輪支持枠
31c キャスタ支持軸
32 リニアアクチュエータ
32a 直動軸
32b 出力軸面
33 床反力検出部
10a 貫通穴
34、80r、80l フレーム
34a フランジ
34b ボルト
35 高剛性ニードルガイド
35a シャフト
40 操作部
82 ハンドル
84r、84l 3軸力覚センサ
86r、86l フローティングコネクタ
42、52 エンコーダ
44、54 ドライバ
50 車輪モータ
60 CPU
61〜65 I/F
74 無線通信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が揺動可能に支持されたハンドルと、
前記ハンドルの一端の側に設けられ、前記ハンドルを介して付与される力を検出する多軸力覚センサとを備えることを特徴とする力覚検出装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記ハンドルは、他端が揺動可能に支持され、
さらに、前記ハンドルの他端に設けられ、前記ハンドルを介して付与される力を検出する第2多軸力覚センサを備えることを特徴とする力覚検出装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記多軸力覚センサは、互いに直交する3軸の方向に付与される力をそれぞれ検出する3軸力覚センサであり、前記3軸の1つを前記ハンドルの軸方向と一致させて前記ハンドルの一端の側に設けられており、
前記第2多軸力覚センサは、互いに直交する3軸の方向に付与される力をそれぞれ検出する3軸力覚センサであり、前記3軸の1つを前記ハンドルの軸方向と一致させて前記ハンドルの他端に設けられていることを特徴とする力覚検出装置。
【請求項4】
基体と、前記基体に取り付けられた車輪とを備え、前記車輪の回転により移動する車輪型ロボットであって、
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の力覚検出装置を備えることを特徴とする車輪型ロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−8204(P2010−8204A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−167431(P2008−167431)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】