説明

加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成システム

【課題】本発明は、迅速に加圧滅菌・乾燥することが可能で、かつ小型化された高度に滅菌可能な加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成システムを提供する。
【解決手段】本発明の加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成システム1は、蓋部により密閉される加圧槽2と、加圧槽2自体を加熱するための電磁誘導加熱手段3と、加圧槽2に接続された水蒸気導出管4と、水蒸気導出管4に設けられた圧力設定弁5と、圧力設定弁5に接続された水蒸気放出管6、水蒸気放出管6に接続された滅菌水タンク23とを有する。圧力設定弁5は、加圧槽2内の圧力が所定の圧力値以上となった場合に開状態となり、加圧槽2内の圧力を一定に保ち、過圧を防ぐことができる。そして水と被滅菌対象物Aを加圧槽2に容れ、加圧槽2自体を加熱することで、被滅菌対象物Aを加圧した状態で加熱滅菌できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱手段として電磁誘導加熱手段を用いた滅菌機能、乾燥機能および滅菌水生成機能を備えた加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成システムに関するものである。特に、設定温度までの上昇が急速な電磁誘導加熱手段を用いた滅菌装置を備えた加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成システムに関するものである。
【0002】
さらに本発明は、歯科診療ユニットに組み込んだ加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成システムに関するものである。
【背景技術】
【0003】
従来から、所定の温度と圧力の飽和水蒸気を作り、加圧および加熱することで微生物を殺菌する滅菌器はオートクレーブと呼ばれ知られている。しかし、一般的なオートクレーブには大型なものが多く、加熱手段として電熱線等を用いるために、設定温度にまで温度上昇にかかる時間が長いものが多く、狭い場所に配置したり簡便に使用する装置としては、必ずしも適したものではなかった。
【0004】
また、加熱手段として電磁誘導加熱手段を備えた蒸気滅菌装置も既に知られてはいるが、加圧しているわけではなく、医療分野で滅菌装置として効果を発揮するには改良すべき余地が多いものである。特に、簡便にして歯科診療ユニットに組み込んだ加圧滅菌システム、乾燥システム及び滅菌水生成システムというものは見られない。
【0005】
例えば、特開2001−245959号公報(特許文献1)には、蒸気滅菌装置において、スケール付着による不具合を防止するとともに、滅菌槽内の清掃作業を容易にするために、滅菌槽を外側から加熱する電磁誘導加熱手段を備えた蒸気滅菌装置が開示されている。
しかし、これにおいては、スケール付着による不具合を防止するための構造的な説明は為されているが、加圧や圧力という用語が使われていないことからも、単なる蒸気滅菌装置と判断される。そして蒸気滅菌と加圧蒸気滅菌は全くの別技術から成るものであり、効果にも大きな違いがある。よって、当然のことながら、実際の加圧滅菌システムを構成する際に、どの程度の加圧滅菌処理仕様(圧力と時間)を達成すれば十分な滅菌効果を発揮できるかの検証は為されていない。
【0006】
また、電磁誘導加熱手段を用いるという点では、特開2002−96061号公報(特許文献2)が公知である。これは、簡単な加熱操作により浄水器内部の一般細菌の増殖防止効果を飛躍的に増大させるだけでなく、加熱操作の必要頻度が少なく、加熱に要するエネルギーを最小限に抑制できる省エネルギー効果の高い浄水器の加熱殺菌装置を提供することを目的とするものである。そして、活性炭が収容された浄水器本体と、この浄水器本体とは別体で加熱する手段を具備した加熱器を備え、浄水器本体は水道水の蛇口に連結可能であって、浄水器内部には少なくとも一対の電極と、電極間に電圧を印加する電源とを備え、加熱器は浄水器本体を収容可能で、かつ、収容した浄水器本体を加熱するIHコイルやシーズヒーター等の加熱手段を備えた構成の浄水器の加熱殺菌装置が開示されている。
しかし、これは浄水器の加熱殺菌装置であり、やはり、実際に滅菌システムを構成する際に、どの程度の加圧滅菌処理(圧力と時間)をすれば十分な滅菌効果を発揮できるかの検証は為されていない。また、これは活性炭を使用するものであるために、取替え時期を誤ると効果が著しく低下したり、取替えには手間や費用がかかり、実際に大きな問題となってくる。
【0007】
また、過熱水蒸気を用いた洗浄殺菌器に関する一般的技術として、食肉類を搬送する搬送機器、その付属機器、その周辺設備のうちの一つ以上に対する洗浄及び殺菌を、100℃以上、多くの場合は400〜500℃の過熱水蒸気を含む洗浄殺菌媒体により効率的に行うことのできる極めてコンパクトな洗浄殺菌機を提供するものとして、特開平11−346645号公報(特許文献3)が公知である。これには、蒸気を発生させる蒸気発生部と、加熱空気を発生させる加熱空気発生部と、前記蒸気だけ、又は前記加熱空気だけ、又は前記蒸気と前記加熱空気の混合気体を加熱して所定温度の洗浄殺菌媒体とする媒体加熱部と、前記洗浄殺菌媒体を前記搬送機器等に吹きつけるノズル部とを備え、少なくとも前記媒体加熱部を電磁誘導加熱装置で構成する加熱水蒸気を用いた洗浄殺菌器が開示されている。
【0008】
一方、本体から外部に誘導する水路を加熱させることにより初期に導出された湯温が低くなることを防ぐ電気湯沸器を得ることを目的とするものとして、特開平6−22850号公報(特許文献4)が公知である。これには、電磁誘導作用を受ける液体を収容する容器と、該容器の液体を器体の外部に導く導出口に連接する電磁誘導作用を受ける水路とからなり、かつ前記容器の側方に電磁誘導装置を配置することにより、容器と水管を同時に加熱することにより、初期に少量の湯を出湯した場合にでも、高温の湯を得ることができる電磁誘導を用いた湯沸器が開示されている。
【0009】
このように、一般的に加熱手段として電磁誘導装置を用いることは周知であり、慣用された技術であることは出願人も認めるものである。しかしながら、これを、従来の加熱手段に代えて加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成システムの加熱手段として用いようとした場合には、その滅菌条件を十分に検証し、それに合った制御を行う必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001−245959号公報
【特許文献2】特開2002−96061号公報
【特許文献3】特開平11−346645号公報
【特許文献4】特開平6−22850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述したように、医療機関で高度な滅菌操作が必要な場合の滅菌にはオートクレーブ(高圧蒸気滅菌)を用いることが多い。しかし、オートクレーブは高度な滅菌を行うことができる一方で、滅菌に時間がかかり迅速に滅菌することができない。また、オートクレーブ装置自体が比較的大掛かりなため、設置場所を選ぶ。
【0012】
そこで、本発明は、迅速で十分な滅菌処理を行うことができる加圧滅菌システムの開発が第一の目的であり、さらに、装置自体をポータブルなものから大掛かりなものまで可能なシステムを提供することを目的とする。それにより、例えば、歯科診療ユニットに組み込み可能な加圧滅菌システムを提供するものである。さらには、狭いところにも設置可能ということで、救急車、飛行機、潜水艦、船など救急医療や戦場などにも設置が可能なものである。
【0013】
また、本発明においては、滅菌終了後に器具を取り出す必要があるが、蒸気を使用するために、蒸気は一部乾燥するが基本的には水分がある程度ついた状態で滅菌した器具を取り出さなくてはならない場合もある。この場合には、この水分のついた滅菌器具をそのまま使用することにより二次感染を引き起こす可能性がある。そうかといってぬぐうわけにもいかない。そこで、滅菌後、器具・機材を乾燥できるシステムも提供するものである。
【0014】
また、医療機関では、滅菌装置だけでなく、感染のリスクを下げるためにも滅菌水を用いることが望ましい。しかしながら、上記従来の滅菌装置や滅菌システムでは、対象物を滅菌することは意図されているものの、加圧滅菌水を得ることは意図されていない。また、今までは高価な滅菌水を購入するか、滅菌水を得るための高価な設備投資が必要であった。そこで本発明は、共通する滅菌装置を使用して滅菌水生成システムを構成することを可能とするものである。
【0015】
活性炭などの吸着材や紫外線などを用いる水質浄化システムで浄化された水を使用することも考えられるが、このような浄化水は飲料水などとしては問題ないが、消毒程度であり高度に滅菌を必要とする医療分野で使用する水は大掛かりの装置を長時間使用して浄化水を得るものでない限り、十分なものは得ることはできない。
【0016】
そこで、本発明は、フィルター交換などが永久に不要で、高度な医療分野でも使用できる加圧滅菌水を得ることができる滅菌水生成システムを提供することを、上記以外の目的とする。それにより、例えば、歯科診療ユニットに滅菌水生成システムを組み込み、高度な滅菌水を歯科診療ユニットへ提供することも、また、歯科診療ユニットからの感染物などを含んだ排水を滅菌し、滅菌水として廃棄することも可能とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成システムは、以下の構成・特徴を有するものである。
【0018】
(1)開閉可能な蓋部により密閉される加圧槽と、前記加圧槽自体を加熱するための複数の電磁誘導加熱手段と、前記加圧槽に接続された水蒸気導出管と、前記水蒸気導出管に設けられた圧力設定弁と、前記圧力設定弁に接続された水蒸気放出管とを備え、前記水蒸気放出管から放出された水蒸気を冷却手段により冷却して滅菌水を得るための滅菌水タンクとを備え、前記圧力設定弁は、前記加圧槽内の圧力が0.25MPa〜0.35MPaの範囲から選択された設定圧力以上となった場合に開状態となるものであり、さらに前記電磁誘導加熱手段への通電時間を制御する制御手段と、前記圧力設定弁の設定圧力に対応した滅菌処理時間を記録した制御情報記憶手段とを備えており、かつ、
水と被滅菌対象物を前記加圧槽に容れ、前記電磁誘導加熱手段により前記加圧槽自体を加熱することで前記加圧槽に容れた水を加熱して蒸発させ、前記被滅菌対象物を加圧した状態で高圧高温滅菌し、前記被滅菌対象物を加圧した状態で高圧高温滅菌後に前記加圧槽の層内を滅菌・乾燥槽部と水槽部とに区画するシャッターを閉じた後に前記第2の電磁誘導加熱手段により前記滅菌・乾燥槽部を過熱して該滅菌・乾燥槽部内の水蒸気を過熱して前記被滅菌対象物を加圧滅菌し乾燥する加圧滅菌・乾燥システムと、
前記加圧槽に前記水を容れた状態で前記電磁誘導加熱手段により前記加圧槽自体を加熱することで、前記加圧槽に容れた前記水を加熱・加圧し、加熱殺菌された水蒸気を得て前記滅菌水タンクに滅菌水を得る滅菌水生成システムと、
を構成する加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成システムであって、
前記圧力設定弁の設定圧力が設定されると、前記制御手段により、前記制御情報記憶手段に記録された設定圧力に対応した滅菌処理時間に基づいて前記通電時間が定められることを特徴とする加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成システム。
【0019】
(2)前記電磁誘導加熱手段は、前記加圧槽の底部及び側面自体を加熱するように配置されたことを特徴とする(1)記載の加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成システム。
【0020】
(3)前記加圧槽は、0.25から0.5MPaの圧力に対し耐圧性を有することを特徴とする(1)又は(2)記載の加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成システム。
【0021】
(4)前記加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成システムは歯科診療ユニットに組み込み可能であり、前記加圧槽に接続された給水管をさらに有し、前記給水管は、上水道から供給された水道水又は前記歯科診療ユニットより供給された廃水を前記加圧槽に供給することを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項記載の加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成システム。
従って、上記(4)の加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成システムは、前記加圧槽と接続された前記給水管から、歯科診療ユニットより供給された排水を前記加圧槽に供給し、滅菌後に配水管により歯科診療ユニットや器具機材の洗浄などの生体に直接関わらないものへ使用か、トイレの水などへの再利用か下水に廃棄することが可能である。これに対して従来は、細菌を含んだ汚染水が下水に直接流されることもあった。
【0022】
(5)前記加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成システムは、さらに前記滅菌水タンクに接続された送水管を有し、前記送水管は前記滅菌水タンクから送水された滅菌水を、前記被滅菌対象物を滅菌するために前記加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成システムへ供給することを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項記載の加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成システム。
これにより、水資源の無駄を排除することを特徴とする。
【0023】
(6)前記加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成システムの高温部と低温部とにペルティエ素子を接続して発電を可能としたことを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項記載の加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成システム。
つまり、上記(6)の加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成システムは、例えば、加圧槽等の高温部と冷却手段等の低温部とにペルティエ素子接続して発電を可能とすることで、その電力を回生するか、歯科診療ユニットやその他の電力として使用するかもしくは冷却システム等に当該電力を再利用するように構成することも可能である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成装置の加熱手段として電磁誘導加熱手段を採用することにより、従来よりも迅速に加圧蒸気滅菌することが可能で、かつ小型化された高度に滅菌可能な加圧滅菌システムを提供することができる。つまり、電磁誘導加熱手段による滅菌処理の時間を、昇圧時間以降の滅菌時間に必要な時間を予め求めておくことにより、従来よりも迅速な加圧蒸気滅菌を達成することが可能なものである。また、迅速に加圧滅菌水を得ることが可能で、かつ小型化された滅菌水生成システムとして提供することもできる。
【0025】
また、本発明の加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成システムを、歯科診療ユニットに組み込んだシステムを構成することにより、極めて衛生的な歯科診療を可能とする歯科診療ユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成システムの実施例を表すシステム構成図。
【図2】歯科診療ユニットに本発明の加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成システムを組み込んだ実施例を示した斜視図。
【図3】本発明の加圧滅菌システムの操作状況に沿った圧力変化図。
【図4】設定圧力毎における本発明の加圧滅菌システムの操作状況に沿った圧力変化図。
【図5】滅菌処理の良否を比較した写真及びこれらを基にパターン化した図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成システムにおいて共通する基本構成は電磁誘導加熱手段を備えた滅菌装置である。本発明の加圧滅菌システムの基本構成である滅菌装置は、水及び被滅菌対象物を入れた後に蓋を閉めることにより密閉される加圧槽と、該加圧槽自体を加熱するための電磁誘導加熱手段と、加圧槽の上部に設けられた水蒸気導出管と、該水蒸気導出管に設けられた圧力設定弁と、該圧力設定弁を介して水蒸気導出管に接続された水蒸気放出管とから成るものである。
【0028】
このような滅菌装置を備えた加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成システムは、加圧槽内の圧力が所定の設定圧力値以上となった場合に開状態となる圧力設定弁を備えているものである。この圧力設定弁の圧力は自由に設定可能できるように構成されている。例えば、後述のように、0.25から0.5MPa(約2.5から5気圧)の圧力を設定できるような構成となっている。これにより、この加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成システムを使用する場合には、水と被滅菌対象物を加圧槽に容れ、電磁誘導加熱手段により加圧槽自体を加熱することで、加圧槽内の水が加熱されて蒸気を発生することにより急速に加圧槽内の圧力が上昇し、加圧槽内の水は極めて短い時間で設定圧力に対応した沸点で沸騰する。これにより、加圧槽内の前記被滅菌対象物を加圧した状態で所望の設定時間を正確に加熱滅菌処理できる。
【0029】
本発明の加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成システムでは、滅菌装置の加熱手段として電磁誘導加熱手段を用いるものであるが、これは、加圧槽自体を直接加熱するために熱効率が高く、加熱速度が速い。従って、加圧槽内の水を短時間で設定圧力に対応した沸点にまで加熱することが可能であり、それにより予め定められた時間内での滅菌処理を行うことにより十分な滅菌効果が期待できるものである。つまり、従来の滅菌システムのように設定した温度にまでジワジワと上昇するものではなく、設定した圧力に対応した沸点までの温度上昇が、極めて急激に達成されるため、従来の滅菌システムのように、所定の温度にまで達成する前の滅菌作用を考慮した滅菌時間を採用することができない。しかし、電磁誘導加熱手段を加熱手段として採用することにより、従来の加圧滅菌器よりも小型化することが可能となり、狭い空間にも設置することができ、トータルでかかる滅菌時間をさらに短くすることができる。
【0030】
高圧蒸気滅菌では蒸気を加圧していることが重要な意味を持つ。蒸気なしで温度と圧力をかけたとしても、加圧しないで蒸気だけをかけたとしても、本発明において達成された短時間での滅菌は期待できない。このような場合には、少なくとも数時間以上、場合によっては24時間以上の時間をかけても同等の効果を得られないものである。
【0031】
本発明の加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成システムの好ましい形態のものは、加圧槽が、0.25から0.5MPa(約2.5から5気圧)の圧力、少なくとも0.25から0.35MPa(約2.5から3.5気圧)に対し耐圧性を有するものである。医療現場では、院内感染防止のために微生物や病原体を死滅させる必要があるため、高度な滅菌が要求される。後述する実施例に示された通り、加圧槽内を少なくとも0.25MPa以上の圧力にすることで、迅速に医療現場で要求される高度な滅菌を短時間で実現することができる。同様に、加圧槽内に水を容れた状態で電磁誘導加熱手段により加熱することで、加圧槽内が加圧され、加熱殺菌された水蒸気を得て、滅菌水タンクに滅菌水を得ることができる。少なくとも0.25MPa程度以上から0.35MPa程度の圧力に対し耐圧性を有する加圧槽として、例えば鉄、ステンレス、アルミニウムもしくはそれらを含む合金などの使用により実施可能であることは実験的に検証されている。
【0032】
本発明の加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成システムは、加圧滅菌システムの基本構成である滅菌装置に加えて、滅菌水生成手段を備えるものである。つまり、滅菌装置の加圧槽の上部に設けられた水蒸気導出管と、該水蒸気導出管に設けられた圧力設定弁と、該圧力設定弁を介して水蒸気導出管に接続された水蒸気放出管と、該水蒸気放出管から放出された水蒸気を冷却する冷却手段と、滅菌水を貯めるための滅菌水タンクから成る。このように、電磁誘導加熱手段を採用することにより、短時間で滅菌水を得ることができる。また、装置の小型化を実現することができ、狭い空間に滅菌水生成システムを設置することができるようになる。
【0033】
本発明の加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成システムのうち実施例として好ましいものは、加圧槽の上部に接続された給水管を有するものである。この給水管には、例えば、水道水または歯科診療ユニットから排水された水を加圧槽に供給することができる。歯科診療ユニットは、歯科治療用の診療台であって、患者用椅子及び治療に必要な歯の切削機械、切削物や唾液の吸引のためのバキューム、エア噴射、患者のうがい用の洗口器具(スピットン)などが備わっており、バキュームやスピットンから排水された水を加圧槽内に供給し、滅菌水を得ることで、歯科診療ユニットから排水される水の滅菌及び浄化が歯科診療ユニット内で可能となり、環境汚染を低減できる。また、水道水から得た滅菌水は生体に直接関わる部分への仕様に供給できる。勿論、本発明の加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成システムは、個々の歯科診療ユニットに対して設けることも可能であるが、複数代の歯科診療ユニットに対して1つ設けることも可能である。
【0034】
さらに、本発明の加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成システムのうち実施例として好ましいものは、滅菌水タンクに接続された滅菌水の送水管を有するものである。この滅菌水は完全な滅菌がなされている滅菌水であるので、医療現場での再使用が可能なものである。そこで、加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成システムを歯科診療ユニットに組み込めば、この送水管により滅菌水タンクから送水された滅菌水を歯科診療ユニットへ供給して使用もしくは再使用することができる。このように、本発明においては、滅菌水生成システムにより、水道水等から得られた滅菌水を歯科診療ユニットへ供給することで、滅菌水を歯を削るときの給水、観血的処置の際の洗浄水、患者のうがい、器具や補綴物の洗浄などの高度な滅菌が求められる部分に利用することができ、衛生的な診療現場を提供することができる。このように組み合わせた構成とすることで、本来捨てるはずであった歯科診療ユニットから排水された水から滅菌水を得て、今までそのまま排水としていた汚染水を滅菌水にして排水したり、生体に関わらない部分、例えば、歯科診療ユニットのスピットン等の洗浄水などや、その他のシステム(建屋内でのトイレ用の中水等)に再利用することができるため、地球環境保護の観点からも有効である。
【0035】
さらに、本発明の加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成システムのうち実施例として好ましいものは、滅菌水タンクに接続された滅菌水の送水管を有するものである。この送水管は、滅菌水タンクから送水された滅菌水を、本加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成システムへ回生する構成としている。本発明の加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成システムにおいては、被滅菌対象物を滅菌するために加圧滅菌するとき、加圧槽内には所定量の水が必要である。この加圧滅菌システムにおいて必要な所定量の水として、滅菌水生成システムから得られた滅菌水を利用することで、より完全に近い滅菌と水資源を無駄にしないシステムを実現することが可能となる。
【0036】
さらに、本発明の加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成システムのうち実施例として好ましいものは、電磁誘導加熱手段が加圧槽の底部及び側面を加熱するように配置されているものである。また、電磁誘導加熱手段は加圧槽と一体化された構造となっていてもよい。このように、電磁誘導加熱手段を加圧槽の底部及び側面に配置することで、加圧槽全体の加熱速度が早まり、より迅速に滅菌水を生成することが可能となる。
【0037】
本発明の加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成システムは、前記加圧槽等の高温部と前記冷却手段等の低温部にペルティエ素子接続して発電を可能とし、その電力を回生するか、歯科診療ユニットやその他の電力として使用するかもしくは冷却システム等に当該電力を利用するように構成するため、省電力が可能となる。
【0038】
以下、図面を用いて本発明を実施するための具体的な実施形態を説明する。しかしながら、以下説明する実施形態は本発明を適用した単なる実施例であって、当業者にとって自明な範囲で適宜設計変更が可能なものであり、それらも本発明の技術的思想に包含されるものであれば技術的範囲に含まれる。
【実施例1】
【0039】
図1は、本発明の加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成システムの一実施例としての構成例を表す図面である。図1に示す加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成システム1は、被滅菌対象物Aの高圧蒸気滅菌を行う滅菌システムであり、医療現場で要求される高度な滅菌が可能となる。この加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成システム1を構成する主要部である滅菌装置10は、水を貯めておく水槽部16と開閉可能な蓋部7を備えた滅菌乾燥槽部17からなる加圧槽2と、水槽部自体と滅菌乾燥槽部17自体を加熱する電磁誘導加熱手段3と、加圧槽2の上部に設けられた水蒸気導出管4と、該水蒸気導出管4に適宜箇所に配置された圧力設定弁5と、該圧力設定弁5の反対側に接続された水蒸気放出管6とを有する。この水蒸気放出管6は、切替弁19により外部に開放、またはコネクト部26と冷却器30を介して滅菌水タンク23に接続されている。該滅菌水タンク23 は、滅菌水排出管31より切替弁20を介して、外部に開放、もしくは送水管21からコネクト部25を介して給水管9に接続されている給水弁24に接続されている。該滅菌水タンク23は、該コネクト部25と該コネクト部26と該コネクト部27において取り外すことができ、本加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成システムから加圧滅菌・乾燥システム部を分離させることができる。
【0040】
滅菌乾燥槽部17は、本滅菌システム1の使用時においては、加圧蒸気滅菌および滅菌後に乾燥させるために被滅菌対象物Aを容れる槽である。本滅菌システム1が医療現場で用いられる場合、被滅菌対象物Aは、例えば、手術器具、診療器具、試薬などであり、滅菌乾燥槽部17と水槽部16との間には滅菌対象物Aを載置するための網状物(図示なし)(過熱水蒸気が通過する空隙を備えていればどのような構成でも構わない)が設けられており、その下にシャッター8が設けられている。このシャッター8は、図示されていない駆動手段により開閉自在に構成されており、滅菌時は開状態を維持し、乾燥時は閉状態を維持するように構成されている。このシャッター8の開閉駆動制御は、制御手段11によって達成される。滅菌時には蓋部7が閉められる。この蓋部7は加圧槽2の一部にピボット式により開閉自在に取り付けても良いし、簡易に着脱自在に構成しても良い。但し、加圧槽2内の圧力に耐えて閉状態を維持し得る構成を採用しなければならない。加圧槽2は、本実施例においては、0.25から0.35MPa(約2.5から3.5気圧)に加圧して実施したが、この程度に加圧しても変形しないように耐圧性を有しているとともに、滅菌処理の際の150℃(蒸気圧は約0.5MPa)程度の高温・高圧にも耐えられる素材から成っている。さらに、電磁誘導により加熱するため、滅菌乾燥槽部17は、ある程度の導電性を有しながら、ある程度の電気抵抗がある素材より成る。本発明の加圧槽2の素材例は、鉄、ステンレス、アルミニウムなどやそれらを含む合金などである。また、ある程度の熱容量を有し赤熱や変形を防止するために、一定程度の厚みが必要であり、そのことにより耐圧性が増し、大きな加熱電流が得られる一方、厚みがありすぎると均一に加熱することが難しいため、より好ましい例としては、厚さ3mm程度のステンレスを含む加圧槽2である。このような厚みのある加圧槽2を使用したとしても、加熱手段として電磁誘導加熱手段3を使用しているため、従来のオートクレーブで行われていたボイラーによる加熱と比較しても装置全体として小型化することができる。小型化を実現することによって、本発明の加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成システム1は、狭い空間にも置くことが可能となり、例えば、救急車やヘリコプター、飛行機、潜水艦、船などの中や事件事故の現場や戦場などの救急医療の現場にも設置が可能となる。
【0041】
電磁誘導加熱手段3は、加圧槽2に容れられた被滅菌対象物Aを加圧蒸気滅菌するために、水槽部16および滅菌乾燥槽部17を加熱するための手段であり、電磁誘導により水槽部16に誘導電流を流すことにより水槽部16自体を加熱し、それにより水槽部16内の水を加熱する。電磁誘導加熱手段3は、水槽部16の底部もしくは底部と側面に設けられている。また、滅菌乾燥槽部17を構成する槽の中央部に設けられた過熱水蒸気用コイル14は、加圧滅菌時に該電磁誘導手段3により加熱され滅菌乾燥槽部17内に充満している水蒸気をさらに加熱し、滅菌乾燥槽部17内の圧力を所定圧力(例えば、0.25〜0.35MPa)まで短時間で達成させるに補助として作用させることができる。滅菌終了後は、シャッター8が閉まり、該過熱水蒸気用コイル14が通電され、滅菌乾燥槽部17自体を加熱し、その中の水蒸気を過熱して器具・機材の被滅菌対象物Aを乾燥させる。電磁誘導加熱手段3は、電磁誘導コイルを一つ以上有しており、これらの滅菌用コイル13及び過熱水蒸気用コイル14には交流電源15が接続されている。なお、図示はしないが、複数の電磁誘導コイルを水槽部および滅菌加圧槽2の加熱面(底部もしくは底部と側面)に対して上下に重ねて設けてもよい。このように電磁誘導コイル13、14を重ねて配置することで、一つの電磁誘導コイルの場合と比べ、より多くの誘導電流が流れるために効率よく加圧槽2を加熱することができる。さらに、これも図示はしないが、複数のコイルが各々別回路になるように構成してもよい。別回路として構成し、各々のコイルに異なる位相(例えば、三相交流の場合はU,V,Wの各相)の電流を流すことで、水槽部16および滅菌乾燥槽部17にさらに大きな誘導電流を流すことができ、より効率のよい短時間での加熱を行うことができる。そして、これらの電磁誘導コイルを格納した容器又は筐体(図示なし)を構成した場合には、その容器又は筐体の上面と加圧槽2の底部は、密着するように構成されている。また、図示しないが、水槽部16の底部に水の流動を許す管を設け、この水が通っている管自体にコイルを巻きつけることにより、管自体と水槽部16の底部自体を加熱しその中の水を加熱してもよい。この管は、渦巻状、放射状、柵状などの形態を採用することが可能であり、水槽部16の底部或いは側部を全体的に覆うように構成する。これにより、より効率の高い水の加熱が可能となる。
【0042】
本発明の加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成システム1は、本システム1全体を制御するための制御手段11を備えている。この制御手段11は、主に滅菌装置10の電磁誘導加熱手段3への電力供給時間の制御と、圧力設定弁5の設定圧力の制御を行っている。この電力供給時間の制御と設定圧力の制御は、本加圧滅菌システム1の成否を決定付けるものであり、後段にて詳説する。図示されていない電源ボタンを押下することにより、交流電源15から通電されると電磁誘導コイル13および14に電流が流れ、ジュール熱により水槽部16および滅菌乾燥槽部17が加熱される。さらに、水槽部16および滅菌乾燥槽部17と電磁誘導加熱手段3とを一体化した構成としてもよい。
【0043】
水槽部16が急速に加熱されると、その中に容れられた水が加熱されて、短時間の内に沸点(設定圧力により相違)にまで到達し沸騰する。この際、加圧滅菌時に該電磁誘導手段3により加熱され滅菌乾燥槽部17内に充満している水蒸気をさらに加熱し、滅菌乾燥槽部17内の圧力を該圧力までさらに短時間で達成させるに補助として作用させることができる。水蒸気導出管4は、加圧槽2に接続されており、加圧槽2を電磁誘導加熱手段3で加熱することにより発生する水蒸気を滅菌乾燥槽部17より排出するための管である。被滅菌対象物Aを加圧蒸気滅菌するために、加圧槽2の中には被滅菌対象物Aと共に、所定量の水18が給水管9から供給される。この水を供給するタイミングは特に限定されるものではないが、加圧槽2の蓋部7を閉めた後で圧力設定弁5の圧力設定の前が望ましい。加圧槽2の蓋部7を閉めた後で、給水管9から水を供給する場合には、圧力設定弁5は開放しておくことが好ましい。この水の所定量の供給は、制御手段11の制御により自動的に行われる。この水は、水道水でもよいが、滅菌水タンク23に貯蔵している滅菌水などを用いることにより、より精度の高い滅菌を行える。加圧槽2を電磁誘導加熱手段3により急速加熱することにより、加圧槽2内で水から水蒸気が短時間の内に発生し、発生した水蒸気は、圧力設定弁5に設定した圧力以上の水蒸気圧になるとこの水蒸気導出管4より加圧槽2から滅菌水タンク23または外へ排出される。この排出される水蒸気は、滅菌状態であるので環境に悪影響を及ぼさない。
【0044】
圧力設定弁5は、水蒸気導出管4に設けられており、加圧槽2内の圧力が所定の設定圧力値(例えば、0.25〜0.35MPa)以上となった場合に開状態となるものである。例えば、この圧力設定弁5は、リリーフバルブで構成するのが一例である。この圧力設定弁5の圧力設定は、手動により操作するように構成することもできるし、電磁弁などを使用して制御手段11により術者が所望の圧力を設定するように構成した圧力設定手段12を設けることもできる。また、サーモスタット等の温度計測手段(図示なし)により加圧槽2内の温度を計測し、所定の温度以上となった場合に弁を開くよう電子的に制御する構成としてもよい。いずれの場合も、密閉された水槽部16や滅菌乾燥槽部17を電磁誘導加熱手段3により急速に加熱することにより、加圧槽2内に水蒸気が短時間の内に発生し、加圧槽2内の圧力が急速に上がる。この加圧槽2内の圧力が設定された圧力以上になると圧力設定弁5が開き、加圧槽2内の水蒸気を水蒸気導出管4から導出することで、加圧槽2内の圧力が設定値以上に上がることを防止している。これにより、加圧槽2内の被滅菌対象物Aの所定圧力・所定温度での滅菌処理が短時間の内に開始される。本発明の加圧滅菌システム1における所定圧力・所定温度での望ましい滅菌処理時間は、後段で詳述するが、圧力設定弁5の設定圧力に対して一義的に定められ、制御情報として制御情報記憶手段28に記憶されている。
【0045】
圧力設定弁5にリリーフバルブを選択する理由としては、(1)構造が簡単なので壊れにくい、(2)大きさが小さくて済む、(3)電子式と違い、圧力設定をスプリングで機械的に行うため、「設定圧+α」でバルブが開き、「設定圧−β」でバルブが閉じる。つまり、見た目にはほぼ連続的に水蒸気放出管から水蒸気が出ているように見えるが、実は間歇的に出ているものである。このことは、槽内の圧力が設定圧の前後、+αから−βの範囲内で陽圧になったり陰圧になったりしていることを意味している。これは、より効果的な被滅菌対象物Aについた微生物等の不活性化の可能性を意味しており格別な効果である。また、圧力設定弁5に電子式を選択する理由としては、圧力の設定は極めて簡便に行うことができ、しかも圧力を一定に保つ方法以外に、設定圧±α(αは小さい値)の範囲内、或いは+αから−βの範囲内であえて圧力を変動的に設定する方法も可能である。
【0046】
外部に開放された水蒸気放出管6が、水蒸気導出管4に接続されており、圧力設定弁5が開状態となり、切替弁27を水蒸気放出部22側にすると、水蒸気導出管4から導出される加圧槽2内の水蒸気は水蒸気放出部22から外気へ放出される。このため、水蒸気放出管6は、外部へ開口する構成であればどのような形状でもよい。なお、圧力設定弁5を加圧槽2の蓋部7に直接設置することにより、水蒸気放出管6は、水蒸気導出管4に含まれる構成としてもよい。水蒸気放出管6から排出される水蒸気は、かなり高温で勢いもある(高圧)ことから、器具・機材の簡単な乾燥、消毒(滅菌までをする必要性がないもの)や洗浄等に使用することが可能である。
【0047】
水蒸気放出管6は、水蒸気導出管4に接続されており、圧力設定弁5が開状態となり、切替弁19が滅菌水タンク23の側になっている場合、滅菌乾燥槽部17内の水蒸気は水蒸気導出管4から滅菌水タンク23へ導出され、水蒸気が滅菌水タンク23内に滞留するような構成となっており、例えば、その形状は円筒状である。
【0048】
滅菌水タンク23は、水蒸気放出管6から導出された水蒸気が冷却されて得られた滅菌水を貯めるタンクである。好ましくは、導出された水蒸気を水蒸気放出管6路内で冷却する冷却器30を滅菌水タンク23の上部近傍に備えており、冷却器30で冷却された蒸気が滅菌水となって滅菌水タンク23に貯蔵されるようになっている。
【0049】
以上のような構成を有する本発明の加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成システム1における作用を説明する。本発明の加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成システム1において、加圧蒸気滅菌を行う際に、まず被滅菌対象物Aを加圧槽2に収容し、所定量(システム1の設計・仕様によって異なるが、例えば、0.5〜10リットル)の水18を入れ、蓋部7を閉めて加圧槽2を密閉する。この際、加圧槽2に給水管9を設けた構成であれば、蓋部7を閉めた後に給水することも可能である。給水管9には弁24を設ける必要がある。この場合には、圧力設定弁5を開放して給水するのが好ましい。次に、圧力設定弁5の圧力の設定を行う。この圧力の設定により滅菌処理温度(設定圧力における沸点)が定まり、これに従って、加圧滅菌を行う。
滅菌終了後、シャッター8が閉まり、加圧槽2は水槽部16と滅菌乾燥槽部17に区画される。この時、水槽部16の水蒸気導出管29が開かれる。次いで、滅菌乾燥槽部17を構成する槽の中央部に設けられた過熱水蒸気用コイル14が通電され、滅菌乾燥槽部17自体を加熱し、その中の水蒸気を過熱して器具・機材の被滅菌対象物Aを乾燥させる。
また、被滅菌対象物Aを滅菌せず、滅菌水生成システムとして使用する際の作用を説明する。滅菌水生成システムにおいて、水の加圧蒸気滅菌を行う際に、まず処理すべき水を加圧槽2内に収容し、加圧槽2を蓋部7で密閉する。水は、例えば水道水その他の水を使用可能である。加圧槽2に給水管9を設けた構成の場合には、加圧槽2を蓋部7で密閉した後に給水弁24を開けて所定量の水を供給することができる。この給水量の制御は制御手段11によって行う。次に、制御手段11の電源スイッチ(図示なし)をONすることにより、交流電源15から電磁誘導加熱手段3へ通電し、加圧槽2の底部および側面を急速に加熱することで、加圧槽2内の水18を短時間の内に加熱し、水蒸気を発生させる。加圧槽2内が飽和水蒸気で満たされると、加圧槽2内の圧力が上がり始め、設定した圧力値以上の圧力となった場合、圧力設定弁5が開き、水蒸気導出管4を通って加圧槽2内の水蒸気が水蒸気放出管6より加圧槽2の外へ放出される。水蒸気放出管6から放出された水蒸気は、冷却器30により冷却されることにより滅菌水が生成され、滅菌水タンク23に貯留される。このように、加熱手段として電磁誘導加熱手段3を用いることにより加圧槽2自体を急速に加熱することで、短時間で滅菌水を得ることができ、また、小型化することができるため、狭い空間にも加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成システム1を設置することが可能となり、救急車やヘリコプター、飛行機、潜水艦、船などの中や事件事故の現場や戦場などの救急医療現場などでの幅広い場面で滅菌水を簡単に生成することができるようになる。
【0050】
加圧滅菌時の本発明の好ましい実施態様では、制御手段11において、設定圧力或いは設定温度が設定されると、それに対応した滅菌処理時間が自動的に設定され(後述)、電源ボタン(図示なし)を押下することにより、交流電源15から電磁誘導加熱手段3へ通電し、加圧槽2の底部および側面自体を加熱することで、加圧槽2内の水18を急速に加熱し、短時間の内に水蒸気を発生させる。加圧槽2内が飽和水蒸気で満たされると、加圧槽2内の圧力が上がり始め、上記設定した所定の圧力値以上の圧力となった場合には、圧力設定弁5が開き、水蒸気導出管4を通って加圧槽2内の水蒸気が水蒸気放出管6より加圧槽外へ放出される。なお、加圧槽2内の圧力の上昇をさらに早めるために、制御装置11からの制御信号により、通電の最初は圧力設定弁5を開いておいて、加熱初期には加圧槽2内の空気を外へ逃がし、所定時間(制御装置11に予め設定されることが好ましい)又は所定温度(この場合には、加圧槽2内に温度センサ(図示なし)を設ける必要がある)になった時点で圧力設定弁5を閉じて加圧槽2を密閉する構成としてもよいし、制御装置11からの制御信号により、該電磁誘導手段3により加熱され滅菌乾燥槽部17内に充満している水蒸気を、滅菌乾燥槽部17を構成する槽の中央部に設けられた過熱水蒸気用コイル14でさらに加熱し、滅菌乾燥槽部17内の圧力を上記設定圧力まで短時間で達成させるに補助として作用させることもできる。
【0051】
さらに、本発明の好ましい実施態様においては、後述する実施例で実証された通り、0.25MPa以上0.35MPa未満では滅菌時間を15分以上25分以下とし、0.35MPa以上0.4MPa未満では滅菌時間を10分以上20分以下として滅菌処理を行う。本発明にいう「滅菌時間」(「滅菌処理時間」とも呼ぶ。)とは、図3を用いて説明すると、装置の操作時間(T=0→T=t3)から、被滅菌対象物Aを入れて電源ボタン押し下げ後、加圧滅菌に必要な圧力にまで加熱する時間(昇圧時間:T=0→T=t1)、及び滅菌を終了して加熱を止めて被滅菌対象物Aを取り出すまでの時間(取り出し時間:T=t2→T=t3)を除いた時間を言う。つまり、所定気圧(対応する所定温度)に達した後、該気圧を保持して被滅菌対象物Aを滅菌処理する時間(滅菌時間:T=t1→T=t2)を言う。
【0052】
本発明の加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成システム1では、この滅菌時間を各設定圧力毎に実験的に求め、それを制御情報として制御情報記憶手段28に記憶しておき、制御手段11は、その制御情報記憶手段28に記憶された制御情報を基にして、滅菌装置10の電磁誘導加熱手段3を制御するものである。従来のオートクレーブでは、昇温・昇圧時間に要する時間が長かったことで、その時間内での滅菌作用も考慮した時間の設定となっていたが、本発明のように、加熱手段として電磁誘導加熱手段3を用いた場合には、従来の数値をそのまま用いず、設定圧力に対する新たな概念としての「滅菌時間」を見出す必要があった。「滅菌時間」の制御に関しては、滅菌時間のカウントダウンタイマーをつけることも可能である。
【0053】
図4は、設定圧力毎の本発明の加圧滅菌システムでの望ましい「滅菌時間」を表示したものである。この図は、各設定圧力での処理推移を、加圧槽2内圧力が設定圧力に昇圧された時点を合わせて各操作状況を記載しているものである。因みに、従来型オートクレーブ(図4の点線表示)では0.2MPaで昇圧時間は約25分、滅菌時間は約20分である。この場合は、昇圧時間の25分の後半部分は随分滅菌処理にも寄与していると考えられる。これを表にして示すと以下の表1のとおりである。
【0054】
【表1】

【0055】
このように、本発明の電磁誘導加熱手段3を備えた加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成システム1においては、昇圧時間が3分から5.5分と短く、各圧力での必要な滅菌時間は25分から5分である。この滅菌時間を設定圧力に対応して制御情報記憶手段28内に記憶しているものである。ところで、昇圧時間は加圧槽2の大きさや構造により個々に相違してくるものである。そこで、昇圧時間は個別に設定するのが好ましい。例えば、装置製造時にその加圧槽2に対応した昇圧時間を制御情報記憶手段28内に予め記憶しておくのも良い。また、エンドユーザが自らの使用実態に合った状況で、事前に設定できるように構成することも可能である。本発明の加圧滅菌システム1においては、以上のように、設定圧力に対して別々に定められた「昇圧時間」と「滅菌時間」を加算した「合計時間」を制御手段11によって通電時間として制御するものである。
【0056】
滅菌後の乾燥については、本発明の電磁誘導加熱手段3を備えた加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成システム1において、滅菌終了後に、水槽部16と滅菌乾燥槽部17を区画するシャッター8を閉鎖後、滅菌乾燥槽部17の水蒸気を制御手段11によって電磁誘導加熱手段3を介して、滅菌乾燥槽部17側面の過熱水蒸気用コイル14に通電し、過熱水蒸気を作ることによって行う。過熱水蒸気(170℃以上)は、水蒸気を170℃以上に過熱させたもので対象物を乾燥させることができる。この乾燥時の制御は、被滅菌対象物Aがガーゼなどの場合は焦げずに乾燥だけを行うことができる条件を制御手段11によって通電時間として制御するものである。
【実施例2】
【0057】
図3は、歯科診療ユニット70に加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成システム41を組み込んだシステムの一例を示した斜視図である。歯科診療ユニット70は、歯科治療用の診療台であって、患者用椅子71及び治療に必要な歯の切削機械、切削物や唾液の吸引のためのバキューム、エア噴射のための機械が備えられた治療器具載置台72、患者用のうがい用の洗口器具(スピットン)73が備わった補助台74から構成されている。本発明の加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成システム41は、この歯科診療ユニット70に対応して設けられ、バキュームやスピットン73から排水された水を給排水管60から給水弁61を開いて加圧槽42に供給することができる。このような構成にすることで、歯科診療ユニット70から排水される水の滅菌及び浄化が可能となる。歯科診療ユニット70からの排水を本発明の加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成システム41で滅菌することにより、従来型の配管にフィルターを取り付けて雑菌を除去する方法や、紫外線照射を行う浄化方法よりも、より完全に近い滅菌を行うことができる。
【0058】
本発明の加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成システム41を歯科診療ユニット70に組み込んだシステムの好ましい実施態様は、滅菌水タンク59に接続された滅菌水排出管65を有するものである。滅菌水排出管65は、滅菌水タンク59から導き出された水道水を滅菌して得られた滅菌水を歯科診療ユニット70へ供給することができる。このように本発明の加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成システム41から得られた滅菌水を歯科診療ユニット70へ供給することで、滅菌水を患者のうがい、器具や補綴物の洗浄に利用することができ、衛生的な診療現場を提供することができる。また、本構成を、上述した歯科診療ユニット70からの水を給排水管60に接続して加圧槽42に供給する構成と組み合わせてもよい。このように組み合わせることにより、本来捨てるはずであった歯科診療ユニット70から排水された水から加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成システム41により滅菌水を得て、歯科診療ユニット70の器具機材洗浄など生体に直接関わらないものへの使用や、その他の滅菌水を必要とするシステムにて再利用するという循環する仕組みができるため、地球環境保護の観点からも有効となる。
【実施例3】
【0059】
さらに、本発明において加圧槽2,42や水蒸気導出管4,44は高温になるため、低温部との間にペルティエ素子(図示無し)を接続することにより発電させることもできる。その際、素子までの熱を伝導させるためにはヒートパイプを用いてもよい。装置稼動時には、室温と加圧槽2,42や水蒸気導出管4,44との間で100℃以上の温度差になるので効率的に発電が可能である。また、ここで発電した電力は、加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成システム1,41そのものに供給してもよいし、さらにもう一つのペルティエ素子に配線し、滅菌水蒸気を冷やすために使用してもよい。これにより省エネルギーにも貢献でき、地球環境保護の上でも有効な手段である。このようにペルティエ素子により発電した電力は、(1)滅菌器そのものに回生、(2)歯科診療ユニットや歯科機材の電力として利用、(3)その他、照明等の電力の補助へ使用することが可能である。
【0060】
次に、以上の本発明の加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成システムを滅菌水生成システムとして使用した場合の具体的な実証結果を説明する。その際、電磁誘導加熱手段としては、最大消費電力650WのIH調理器(ミツタニ電気社 MIH-650)を用いた。加圧槽は、加圧槽内の圧力を計測するための圧力計や温度計を設置して、加圧槽としてはステンレス製圧力釜を改造したものを用い、加圧槽に水1000mlを入れた。圧力設定弁としては、インライン型リリーフバルブを使用し、所定の圧力値(2,2.5,3,3.5気圧)になるとバルブが開くように調節可能に構成した。滅菌水タンクとしては、一般的なガラス瓶を使用し、特別な冷却機は設けることなく大気に開放した。このような構成とすることで、良好に滅菌水を得ることができた。
【0061】
次に、本発明の技術的思想を構成する基本的事項について説明する。本発明を構成する基本的アイディアは、加圧滅菌システム及び滅菌水生成システムにおいては、図3において説明したように、被滅菌対象物Aの滅菌処理を(1)加圧槽内の圧力を予め設定した設定圧力まで昇圧させる昇圧時間(T=0→T=t1)、(2)所定圧力に達した以降、その設定圧力において被滅菌対象物Aを滅菌処理するのに必要な滅菌時間(実滅菌処理時間)(T=t1→T=t2)、(3)滅菌処理後に被滅菌対象物Aを加圧滅菌システムから取り出すのに必要な時間(T=t2→T=t3)として管理することから考え出されたものである。
【0062】
そこで、まず加圧槽内が所定圧力値に達するまでにかかる時間を検討する。電磁誘導加熱手段を用いて加熱する加圧滅菌システムと、従来型のボイラーにより加熱するオートクレーブとを用いて、加圧槽内が所定の圧力値になるまでの時間を比較検討した。本比較検討に使用した加圧滅菌システム1では、電磁誘導加熱手段13として、最大消費電力1400WのIHシステム(Sunsonic社 SIC-1400B)を用いた。被滅菌対象物Aを入れる加圧槽2として一般的な圧力鍋(容量3.5L,径18cm,底の厚み5mm,材質はアルミ合金、ステンレス鋼)を改造し、加圧槽2内の圧力を計測するための圧力計を設置するなど、本発明の加圧滅菌システム用に改良したものを用いた。200mlの水道水を加圧槽に入れて加圧滅菌を行った。
【0063】
本発明の電磁誘導加熱による加圧蒸気滅菌の所定気圧に達するまでの時間(昇圧時間)を示したものが表2である。なお、従来のボイラー式によるオートクレーブにおいては、2.0×10−1MPa(=0.2MPa=約2気圧)に達するまでの時間が24分40秒であった。これは、表1の結果と多少の差異があるが、表1の数値は何度かの実験での平均値である。
【表2】

【0064】
表2中、括弧内の温度は圧力と飽和水蒸気から算出した加圧槽内の温度を示している。表2から、電磁誘導加熱を利用して加熱した場合、2.0×10−1MPaに達するまでの昇圧時間が3分04秒と、従来型のオートクレーブ(約25分)と比較すると格段に早い時間で所望の圧力値を得られることがわかる。従って、本発明の加圧滅菌システムや滅菌水生成システムでは、所定圧力に達するまでの時間が極めて短くて済むため、従来システムと比較して、昇圧時間が短時間であるために、昇圧後に十分な滅菌処理を行う時間を確保することが必要であることが解った。このことは、従来のオートクレーブでは、昇圧時間中においても徐々に圧力が上がり、特に昇圧時間の後半では滅菌処理も行われていたために、その峻別も必要なく明確ではなかった。しかし、本発明においては、昇圧時間が極めて短いために、昇圧時間と滅菌時間を加算したトータル時間内での滅菌処理を考慮するのではなく、昇圧時間を除いた滅菌時間のみでの滅菌を考慮した時間を導き出す必要がある。
【0065】
そこで、本発明の加圧滅菌システムや滅菌水生成システムでの滅菌条件を検討するために、電磁誘導加熱手段を用いて加圧滅菌した場合の滅菌条件を検討した。滅菌がなされているかどうかの判定を行うために、Geobacillus stearothermophilusのディスクを含有するNAMSA社製バイオロジカルインジケータを使用した。本発明の加圧滅菌システム及び従来型の滅菌システム(オートクレーブ)の比較検討は以下のように行った。まず、所定時間、所定圧力を加えて滅菌操作をした後、容器の蓋をきちんと閉めることにより容器内の培地が入っているガラス製アンプルを割る。その後、55〜60℃で24時間培養を行い、ブロモクレゾール紫含有培地の色の変化で滅菌できているかの判定を行った。色が黄色に変化した場合、菌が増殖しており滅菌できていないことを示す。一方、色が紫のままで変化していない場合、菌が死滅していることを示し、滅菌できたことを意味する。
【0066】
表3は、温度及び圧力の条件と滅菌の可否の結果を示している。そして、24時間培養後のインジケータの撮影結果の写真及びこれらの写真をパターン化した概略図を図5に示した。撮影結果の写真は図5の(E)〜(H)に示し、これらに対応するパターン化した図を図5(A)〜(D)に示す。これらのパター化した図において、色が濃いパターン(濃い紫色)もの((A)の210,(B)の220,320,(C)の330,430,(D)の240,340,440)は濃い紫色のパターンで滅菌できていることを示し、色が薄いパターン(黄色)もの((A)の110,310,(B)の120,(C)の130,230,(D)の140)ほど滅菌できていないことを示している。
【表3】

【0067】
表3中の気圧の単位は10−1MPaであり、表中、(AC)とあるのは、従来のオートクレーブによって滅菌処理したことを示す。時間の単位は分:秒である。「滅菌時間」は、所定気圧に達した後、該気圧を保持してインジケータを滅菌した時間をいう。「滅菌終了までの時間」は、加熱を開始して所定気圧に達するまでの時間と滅菌時間を合計した時間である。「入れてから取り出すまでの時間」は、インジケータを加圧槽に入れてから滅菌処理を終了し取り出すまでの時間である。「気圧に達するまでの時間」は、加熱しはじめてから所定気圧に達するまでの時間である。
【0068】
表3の結果、2.0×10−1MPa、滅菌時間20分において、従来のオートクレーブにおいては、所定の気圧に達するまでの時間(昇圧時間)として24分40秒(約25分)かかったので、滅菌終了までの時間が44分40秒(約45分)かかった。それに対して、本発明の電磁誘導加熱による加圧蒸気滅菌では、昇圧時間は3分8秒だったので、滅菌終了までの時間は23分8秒とした。本発明の電磁誘導加熱の場合、従来のオートクレーブによる滅菌と比較して顕著に時間短縮が行えることがわかる。つまり、「滅菌時間」を独立して制御する必要があることが分かる。そして、図5(A)が2.0×10−1MPaで滅菌処理し、24時間培養後のインジケータの撮影結果である。左110が未滅菌、中央210がオートクレーブ、右310が電磁誘導加熱による加圧蒸気滅菌である。オートクレーブによる滅菌の場合、滅菌できたが、電磁誘導加熱による滅菌の場合、滅菌が不十分であった。このように同じ滅菌時間でありながら、従来のオートクレーブにおいては滅菌できているにも拘わらず、本発明の電磁誘導加熱の場合は未滅菌であるということは、従来のオートクレーブにおいては、滅菌時間以前の昇圧時間内でも滅菌処理が進んでいることが示唆している。益々、「滅菌時間」を独立して制御する必要があることが明確である。
【0069】
次に、本発明の電磁誘導加熱による滅菌を、2.5×10−1MPa(=0.25MPa=約2.5気圧)で滅菌終了までの時間を15分、20分、25分と変化させて検討を行った。表3の通り、所定の気圧に達するまでの時間(昇圧時間)は4分20秒、3分52秒、3分41秒(平均3分57秒で約4分)であった。このように、同じ設定圧力においても昇圧時間に多少のバラツキがあるのは、圧力槽内に入れる水の量により差が出ているものと推測される。従って、実際のシステムの設計においては供給水量の制御は重要である。図5(B)が24時間培養後のインジケータの撮影結果の写真をパターン化した図であり、左から滅菌終了までが15分、20分、25分である。15分の場合(120)、滅菌が不十分であったが、20分、25分の場合(220,320)は、滅菌できていることがわかる。
【0070】
また、本発明の電磁誘導加熱による滅菌処理を、3.0×10−1MPa(=0.3MPa=約3気圧)で滅菌終了までの時間を10分、15分、20分、25分と変化させて検討を行った。表3の通り、所定の気圧に達するまでの時間(昇圧時間)は4分26秒、4分53秒、4分40秒、5分20秒(平均4分49秒で約5分)であった。図5(C)が24時間培養後のインジケータの撮影結果をパターン化した図であり、左から滅菌終了までの時間が10分、15分、20分、25分である。10分、15分の場合(130,230)、滅菌が不十分であったが、20分、25分の場合(330,430)は、滅菌できていることがわかる。
【0071】
さらに、本発明の電磁誘導加熱による滅菌処理を、3.5×10−1MPa(=0.35MPa=約3.5気圧)で滅菌終了までの時間を10分、15分、20分、25分と変化させて検討を行った。表3の通り、所定の気圧に達するまでの時間(昇圧時間)は4分50秒、5分4秒、4分44秒、4分47秒(平均4分51秒で約5分)であった。図5(D)が3.5×10−1MPaにおける24時間培養後のインジケータの撮影結果をパターン化した図であり、左から滅菌終了までの時間が10分、15分、20分、25分である。10分の場合(140)、滅菌が不十分であったが、15分、20分、25分の場合(240,340,440)は、滅菌できていることがわかる。
【0072】
従来型のオートクレーブでは、被滅菌対象物Aを入れてから取り出すまでに2.0×10−1MPaで約50分の時間がかかっていたため、緊急で滅菌された器具や滅菌水が必要となった場合であっても、時間を要し対応に苦慮していた。それに対して、本発明によれば、「滅菌時間」を適切に制御することによって、迅速に滅菌処理を行うことができることが示された。しかし、図5の結果からも理解されるように、電磁誘導加熱による滅菌であっても、「滅菌時間」を適切に制御することがなければ、従来のオートクレーブでの処理時間と同程度の時間で滅菌しても滅菌ができない場合があることが分かった(図5(A)の310)。このことから、本発明の加圧滅菌システムや滅菌水生成システムにおいては、滅菌時間を独立して制御することが必須であり、それにより有効な滅菌処理が可能であり、かつ短時間で滅菌が実現できていることがわかる。そうすることによって、本発明の加圧滅菌システム及び滅菌水生成システムでは、従来よりも小型化された装置で迅速に滅菌器具や滅菌水が得られることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、滅菌システム、乾燥システム及び滅菌水生成システムに関するものであり、特に高度な滅菌を行うための加圧蒸気滅菌による加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成システムに関する。さらに、本発明の加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成システムは、歯科診療ユニット等の医療ユニットに容易に組み込むことが可能である。
【符号の説明】
【0074】
A・・・被滅菌対象物
1,41・・・加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成システム
10,40・・・滅菌装置
2,42・・・加圧槽
3,43・・・電磁誘導加熱手段
4,44・・・水蒸気導出管
5,45・・・圧力設定弁(リリーフ弁)
6,46・・・水蒸気放出管
7,47・・・蓋
8・・・シャッター
9,48・・・給水管
11,49・・・制御手段
12,50・・・圧力設定手段
13,51・・・滅菌用コイル
14,52・・・過熱水蒸気用コイル
15,53・・・交流電源
16,54・・・水槽部
17,55・・・滅菌乾燥槽部
18,56・・・所定の水
19,20,57・・・切替弁
21,58・・・送水管
22・・・水蒸気放出部
23,59・・・滅菌水タンク
60・・・給排水管
24,61・・・給水弁
25,26,27・・・コネクト部
28,62・・・制御情報記憶手段
29,63・・・水蒸気導出管
30,64・・・冷却器
31,65・・・滅菌水排出管
70・・・歯科診療ユニット
71・・・患者用イス
72・・・治療器具載置台
73・・・先口器具(スピットン)
74・・・補助台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉可能な蓋部により密閉される加圧槽と、前記加圧槽自体を加熱するための複数の電磁誘導加熱手段と、前記加圧槽に接続された水蒸気導出管と、前記水蒸気導出管に設けられた圧力設定弁と、前記圧力設定弁に接続された水蒸気放出管とを備え、前記水蒸気放出管から放出された水蒸気を冷却手段により冷却して滅菌水を得るための滅菌水タンクとを備え、前記圧力設定弁は、前記加圧槽内の圧力が0.25MPa〜0.35MPaの範囲から選択された設定圧力以上となった場合に開状態となるものであり、さらに前記電磁誘導加熱手段への通電時間を制御する制御手段と、前記圧力設定弁の設定圧力に対応した滅菌処理時間を記録した制御情報記憶手段とを備えており、かつ、
水と被滅菌対象物を前記加圧槽に容れ、前記電磁誘導加熱手段により前記加圧槽自体を加熱することで前記加圧槽に容れた水を加熱して蒸発させ、前記被滅菌対象物を加圧した状態で高圧高温滅菌し、前記被滅菌対象物を加圧した状態で高圧高温滅菌後に前記加圧槽の層内を滅菌・乾燥槽部と水槽部とに区画するシャッターを閉じた後に前記第2の電磁誘導加熱手段により前記滅菌・乾燥槽部を過熱して該滅菌・乾燥槽部内の水蒸気を過熱して前記被滅菌対象物を加圧滅菌し乾燥する加圧滅菌・乾燥システムと、
前記加圧槽に前記水を容れた状態で前記電磁誘導加熱手段により前記加圧槽自体を加熱することで、前記加圧槽に容れた前記水を加熱・加圧し、加熱殺菌された水蒸気を得て前記滅菌水タンクに滅菌水を得る滅菌水生成システムと、
を構成する加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成システムであって、
前記圧力設定弁の設定圧力が設定されると、前記制御手段により、前記制御情報記憶手段に記録された設定圧力に対応した滅菌処理時間に基づいて前記通電時間が定められることを特徴とする加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成システム。
【請求項2】
前記電磁誘導加熱手段は、前記加圧槽の底部及び側面自体を加熱するように配置されたことを特徴とする請求項1記載の加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成システム。
【請求項3】
前記加圧槽は、0.25から0.5MPaの圧力に対し耐圧性を有することを特徴とする請求項1又は2記載の加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成システム。
【請求項4】
前記加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成システムは歯科診療ユニットに組み込み可能であり、前記加圧槽に接続された給水管をさらに有し、前記給水管は、上水道から供給された水道水又は前記歯科診療ユニットより供給された廃水を前記加圧槽に供給することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成システム。
【請求項5】
前記加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成システムは、さらに前記滅菌水タンクに接続された送水管を有し、前記送水管は前記滅菌水タンクから送水された滅菌水を、前記被滅菌対象物を滅菌するために前記加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成システムへ供給することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成システム。
【請求項6】
前記加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成システムの高温部と低温部とにペルティエ素子を接続して発電を可能としたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の加圧滅菌・乾燥・滅菌水生成システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−254989(P2011−254989A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−132038(P2010−132038)
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【出願人】(509121488)
【出願人】(501145136)
【Fターム(参考)】