説明

加工ヘッドに配置された遮蔽装置ならびに加工ヘッドおよび遮蔽装置を備えた加工機械

遮蔽装置(8)は、加工機械(1)の加工ヘッド(6)において出射する加工ビーム(19)および/または加工ビーム(19)の加工箇所(20)を周囲に対して遮蔽する。遮蔽装置(8)は、構成要素ホルダ(16)に取り付けられた遮蔽要素(18)を備えた少なくとも2つの遮蔽ユニット(13)を有している。遮蔽ユニット(13)の構成要素ホルダ(16)は、加工ビーム(19)を遮蔽するためかつ/または加工ビーム(19)の加工箇所(20)を遮蔽するために、構成要素ホルダ(16)に対応して配置された遮蔽要素(18)と共に、互いに相対運動可能である。加工機械の加工ヘッド(6)は、前述の遮蔽装置(8)を備えている。加工機械は、このような加工ヘッド(6)を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮蔽装置であって、遮蔽装置は、加工機械の加工ヘッドに配置するために設けられており、遮蔽装置により、加工ヘッドにおいて出射する加工ビームおよび/または工作物における加工ビームの加工箇所が周囲に対して遮蔽可能であり、遮蔽装置は、少なくとも1つの遮蔽ユニットを備えており、遮蔽ユニットは、運転時に加工ビームの軸と一致する装置軸線に沿って延在しており、遮蔽ユニットは、少なくとも1つの遮蔽要素と、1つまたは複数の遮蔽要素を保持する構成要素ホルダとを備えているものに関する。
【0002】
さらに本発明は、加工ビームが出射するところの、工作物を加工するための加工機械の加工ヘッドに関し、ならびに本発明は、このような加工ヘッドならびに冒頭で述べたような遮蔽装置を備えた加工機械に関する。
【0003】
工作物を加工するために、様々な種類の加工ビームが用いられる。たとえば高圧ウォータジェット、プラズマビームおよび特にレーザビームの構成をした加工ビームが挙げられる。人および物を保護するために、加工ビームおよび/または該当する工作物における加工ビームの加工箇所は、周囲から遮蔽されている。遮蔽は、たとえば加工機械の作業範囲全体を包囲する保護ボックスにより行われる。このような保護ボックスは、特に工作物の取扱いに際して、たとえば加工機械に対する取付けおよび取外しに際して邪魔である。それゆえ保護ボックスの代わりに遮蔽装置が用いられ、遮蔽装置は、位置的に加工ビームもしくは加工箇所の直ぐ傍の領域に限定される。
【0004】
冒頭で述べたこのような構成の背景技術は、ドイツ連邦共和国実用新案登録第29620304号明細書において公知である。この背景技術では、工作機械の加工ヘッドに遮蔽装置が設けられており、遮蔽装置は、リング状の保護ブラシとして構成された遮蔽ユニットを備えている。保護ブラシは、加工ビームの軸線と同軸的であり、ベースを備えており、ベースに、遮蔽要素として弾性的な毛が取り付けられている。保護ブラシの毛は、加工ビームの軸線に沿って延在していて、加工ビームならびに加工箇所を、加工ビームの半径方向に周囲に対して遮蔽する。保護ブラシの周方向に延在する毛の複数の列は、加工ビームの半径方向にみて相前後して、かつ特に効果的な遮蔽を保証するために、保護ブラシの周方向にみて互いにずらして位置する。保護ブラシ全体は、加工ビームを中心に回動可能である。
【0005】
本発明の課題は、遮蔽状態が改善された遮蔽装置、ならびに加工ビームおよび/または加工ビームの加工箇所の遮蔽が改善された加工ヘッドおよび加工機械を提供することである。
【0006】
この課題は、請求項1に記載された遮蔽装置、請求項10に記載された加工ヘッドならびに請求項11に記載された加工機械により解決される。
【0007】
本発明による遮蔽装置は、少なくとも2つの遮蔽ユニットを備えており、遮蔽ユニットは、互いに相対運動し、これにより相対的に調節可能である。このようにして本発明による遮蔽装置は、柔軟に構成することができる。相対運動を実現するために、少なくとも1つの遮蔽ユニットは、位置変化可能に形成されている。本発明による遮蔽装置の柔軟性に基づいて、加工ビームおよび加工箇所の効果的な遮蔽は、特に加工されるべき工作物の幾何学形状が変化する場合でも保証されている。工作物幾何学形状の変化は、加工ビームの付近で、たとえば該当する工作物が一様でない幾何学形状を有し、加工に際して工作物と加工ビームとの相対運動が行われる場合に生じる。
【0008】
構成要素ホルダの相対運動により、構成要素ホルダに取り付けられた遮蔽要素は、たとえば工作物幾何学形状に応じて、周囲が加工ビームおよび/または加工箇所からアプローチ不能であるかもしくは害を及ぼさない範囲でアプローチ可能であるように、位置決めすることができる。遮蔽ユニットとしてたとえばブラシが考えられ、ブラシの毛は遮蔽要素として機能する。さらに遮蔽要素として、経糸ならびに工作物表面に対して横方向に弾性変形可能または変位可能な要素が考えられる。遮蔽ユニットの遮蔽要素は、たとえば群を成して配置することができかつ/または互いにずらして配置することができる。構造方式とは無関係に、遮蔽要素は、加工ビームもしくは加工箇所の付近からの有害な放出を防止するという役割を有している。たとえばレーザビームによる工作物加工に際して、周囲は、有害な光線に対して遮蔽する必要がある。さらに工作物加工に際して発生する有害物質、たとえば健康を損なう蒸気および材料加工の生産物、たとえば材料の飛散物が加工ビームもしくは加工箇所付近から離間することを防止する必要がある。工作物、特に金属板のレーザ加工は、本発明による遮蔽装置の主な適用範囲である。遮蔽装置は、たとえばいわゆる「コンビ機械」、つまりレーザならびに打抜きおよび/または変形ユニットを備えた機械や純粋なレーザ加工に用いられる機械、たとえばレーザ平床(フラットベッド)機械に設けることができる。
【0009】
請求項1、10、11に記載された発明の格別な態様は、従属請求項2〜9および12〜15から明らかである。
【0010】
請求項2による本発明の好適な態様によれば、互いに相対運動可能な遮蔽ユニットが、運転時に加工ビームの軸線と一致する装置軸線の半径方向に段階的に設けられている。このようにして加工ビームもしくは加工箇所の周りに相前後して複数の遮蔽面が形成される。たとえば工作物が加工ビームの半径方向に遮蔽面の1つを越えて移動し、これにより遮蔽面の遮蔽ユニットに遮蔽隙間が生じると、この隙間は、別の遮蔽面の遮蔽ユニットが形成された遮蔽隙間を覆う位置に移動することにより、閉じられる。装置軸線の半径方向に形成された、遮蔽ユニットの相互間隔は、目的に応じて選択される。
【0011】
遮蔽ユニットもしくは該当する構成要素ホルダの相対運動は、本発明によれば様々に行うことができる。装置軸線に沿った相対運動(図3)や装置軸線に対して横方向の相対運動、特に装置軸線の周方向の相対運動(図4)ならびに装置軸線の縦方向および横方向の相対運動が挙げられる。装置軸線に沿った1つまたは複数の遮蔽ユニットの運動は、工作物に相応に調節された圧力を及ぼすために利用される。このような圧力により、たとえば板状の工作物、特に金属板の、特に加工に伴う高速の工作物運動に際して危惧される「がたつき」が防止される。
【0012】
本発明の別の好適な態様によれば、該当する構成要素ホルダの運動に関する連結により、遮蔽ユニットの自動の相対的な位置決めが実現される(請求項5)。構成要素ホルダの1つが、この構成要素ホルダが占める位置から変位される場合、好適には、別の構成要素ホルダも同様にその位置を変化するようになる。その際、構成要素ホルダの運動に関する連結は、構成要素ホルダの1つの位置変化により生じる遮蔽隙間が、別の構成要素ホルダの位置変化の結果として閉じられるように、行われる。
【0013】
様々な遮蔽ユニットもしくは構成要素ホルダの運動が互いに連結されているか、または互いに分離されているかに応じて、形成される遮蔽隙間を閉じるために、好適には、遮蔽ユニットもしくは構成要素ホルダは、互いに逆向きに運動する(請求項6)。
【0014】
遮蔽ユニットの相対運動を形成するために様々な可能性が提案されている。工作物加工に際して行われる、遮蔽装置と工作物との相対運動が、遮蔽ユニットもしくは構成要素ホルダの相対運動をもたらす場合には、要求される構造に関する手間は最小である(請求項12)。遮蔽ユニット全体をモータ駆動なく相対的に位置決めすることが考えられる。モータレスに運動させられる遮蔽ユニットの運動に関する連結が考えられるが、これは必然的ではない。
【0015】
極めて確実な機能性に関して、遮蔽ユニットの構成要素ホルダは、本発明によれば、モータ駆動装置により、互いに相対運動可能である(請求項7)。モータ駆動装置の数値制御式の制御装置が特に好適である(請求項13)。特に遮蔽ユニットの相対運動を形成するために、モータ駆動装置の数値制御式の制御装置は、加工機械の数値制御式の制御装置に組み込むことができ、したがって機械制御装置の別の制御ユニットと協働する。たとえば工作物運動に対して遮蔽ユニットの相対運動を調整すると好適である。このようにして遮蔽装置の構成は、たとえば加工ビームもしくは加工箇所付近で変化する工作物幾何学形状に適合させることができる。
【0016】
用いられる遮蔽ユニットの幾何学形状は、本発明に従って様々であってよい。特に装置軸線を少なくとも部分的に包囲する遮蔽ユニットが好適である(請求項8)。実地において特にリング状の遮蔽ユニットが認められる。さらにたとえば直方体またはローラ状のブラシの構成をした真っ直ぐに延びる遮蔽ユニットも考えられる。このような遮蔽ユニットは、加工ビームもしくは加工箇所の周りに全面的な遮蔽が形成されるように配置される。
【0017】
好適には、装置軸線に対して横方向に可撓性のもしくは柔軟な遮蔽要素を備えた遮蔽ユニットが用いられる。このような遮蔽要素は、変化する工作物幾何学形状に適合させることができる。遮蔽装置と工作物との相対運動に際して遮蔽要素が工作物表面上を僅かな摩耗で擦過するために、遮蔽要素の長さは、遮蔽要素を通過する工作物の高さよりも極めて大きくなっている。たとえば遮蔽要素として設けられた柔軟な毛の長さは、最大工作物高さの少なくとも2倍であってよい。したがって工作物表面と、該当する構成要素ホルダに固定された、遮蔽要素の端部との間に、比較的大きな間隔が残ることがある。この中間スペースは、本発明の好適な態様によれば、閉じたカバー、好適には遮蔽板により覆われる(請求項9)。閉じたカバーは、工作物の上側で効果的な遮蔽が保証されるように機能し、それも、可撓性の遮蔽要素が工作物の上側で遮蔽隙間形成につながる位置(姿勢)を占める場合にも機能する。
【0018】
レーザ加工機に本発明を用いると特に実用的であり、そのレーザ加工ヘッドにおいてレーザ加工ビームが出射する(請求項14)。このようなレーザ加工ビームに基づいて、不規則な運転状況では、加工箇所の周囲において人および材料に極めて高い危険性が生じることがある。このことはとりわけレーザ加工ビームが可視範囲または可視範囲に近い範囲、たとえば0.2μm〜0.3μmにある波長を有する場合に当てはまる。このようなレーザ加工ビームは、たとえば固体レーザから形成される。したがって本発明は、好適には、レーザ加工ビームが固体レーザに起因するようなレーザ加工機械に用いられる(請求項15)。同等の波長範囲を有するレーザビームは、別の活性媒体により形成することもできる。その際にも、本発明による遮蔽装置を使用すると好適である。
【0019】
以下に、図面に基づいて本発明を詳説する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】加工ヘッドと遮蔽装置とを備えた加工機械の全体を示す図である。
【図2】図1に示す遮蔽装置を詳しく示す図である。
【図3】加工ヘッドと共に図1および図2に示す遮蔽装置の断面図である。
【図4】図1〜図3に示す遮蔽装置の駆動構造を示す断面図である。
【図4a】図1〜図4に示す遮蔽装置の変化態様を示す断面図である。
【図5】図1に示す加工機械において変形された金属板パネルを加工する際の状態を示す図である。
【図6】第2の構造を有する遮蔽装置の遮蔽ユニットを示す図である。
【図7】第3の構造を有する遮蔽装置の遮蔽ユニットを示す図である。
【図8】第4の構造を有する遮蔽装置の遮蔽ユニットを示す図である。
【図9】第5の構造を有する遮蔽装置の遮蔽ユニットを示す図である。
【図10】第6の構造を有する遮蔽装置の遮蔽ユニットを示す図である。
【図11】第7の構造を有する遮蔽装置の遮蔽ユニットを示す図である。
【0021】
図1からいわゆる「コンビ機械」として構成された加工機械1が看取される。コンビ機械では、工作物のレーザ加工だけでなく打抜き加工/変形加工も実施することができる。加工機械1は、開口スペース3を有するC字形の機械フレーム2を備えており、開口スペース3に、一般的な構造をした座標ガイド4が配置されている。座標ガイド4には、加工されるべき工作物として金属板パネル5が設置されている。
【0022】
機械フレーム2の上側のフレーム脚部は、自由端部で、レーザ加工ヘッドとして構成された加工ヘッド6を支持している。加工ヘッド6の周りに、装置軸線7に沿って運動可能もしくは位置決め可能な遮蔽装置8が配置されている。遮蔽装置8は、機械フレーム2に取り付けられていて、装置軸線7に沿って運動する際に、機械フレーム2においてガイドされる。加工ヘッド6は、遮蔽装置8とは別に、装置軸線7の方向に運動可能かつ調節可能である。加工ヘッド6の他に、機械フレーム2の上側のフレーム脚部に、打抜き/変形ステーション9が設けられており、打抜き/変形加工ステーション9により、打抜き加工、エンボス加工ならびに変形加工および任意の工作物加工を実施することができる。
【0023】
加工機械1でレーザ加工する際に、金属板パネル5は、公知のように、座標ガイド4により、加工ヘッド6の下側で、図1からは看取されないレーザ加工ビームに対して相対的に移動させられる。レーザ加工ビームの軸線は、装置軸線7と重なる。
【0024】
レーザ加工ヘッドの代わりに、加工ヘッド6として、たとえば高圧・ウォータジェット・加工ヘッドまたはプラズマ加工ヘッドを設けてもよい。
【0025】
主要な全機能、特に加工機械1の全ての駆動は、数値制御式の機械制御装置10により制御され、機械制御装置10には、特に遮蔽装置8の数値制御式の制御ユニット11が組み込まれている。
【0026】
加工ヘッド6において出射するレーザビームは、図示していない固体レーザにより形成され、光導体を介して加工ヘッド6に供給される。
【0027】
図2には、遮蔽装置8の詳細を示している。遮蔽装置8には、遮蔽金属板として形成された閉じたカバー12が設けられており、カバー12は、加工ヘッド6において出射する加工ビームおよび/または金属板パネル5における加工ビームの加工箇所を部分的に周囲に対して遮蔽する。
【0028】
図2において遮蔽ユニット13は殆ど隠れて示されており、全部で4つの遮蔽ユニット13を遮蔽装置8が備えており、遮蔽ユニット13は、装置軸線7と同軸的なブラシとして構成されている。遮蔽装置8の基板14に遮蔽ユニット13が支承されており、遮蔽ユニット13は、加工ヘッド6の運転時に、レーザビーム軸線と一致する装置軸線7を中心に回動可能に形成されている。遮蔽ユニット13を回動駆動するために駆動モータ15が働き、駆動モータ15は、制御ユニット11により数値制御式に制御される。
【0029】
リング状に形成された、遮蔽ユニット13の構成要素ホルダ16は、遮蔽装置8の基板14に向いた側に、それぞれ歯環17を備えている(図3)。歯環17とは反対側で、構成要素ホルダ16は、弾性的なブラシ毛として形成された遮蔽要素18を保持しており、毛は、装置軸線7に沿って延在している。
【0030】
図3には、遮蔽装置8の、装置軸線7の半径方向にみて互いにずらして位置する4つの遮蔽ユニット13を示している。遮蔽ユニット13の遮蔽要素18は、図3に示す加工ビーム19、図示の態様ではレーザ加工ビームと、金属板パネル5におけるレーザ加工ビームの加工箇所20とを、周囲に対して遮蔽する。運転時には、加工ヘッド6は、基板14の中央の開口を通って遮蔽装置8に進入する。ホルダアングル部材21を介して、遮蔽装置8は、加工機械1の機械フレーム2に支承されており、その際、装置軸線7の方向に調節可能にガイドされる。
【0031】
遮蔽ユニット13は、装置軸線7を中心に互いに相対運動可能である。
【0032】
遮蔽ユニット13の相対運動は、駆動モータ15(図1〜図4)を用いて行うことも、モータレス(図4a)で行うこともできる。金属板パネル5等が工作物加工前または加工中に座標ガイド4により遮蔽装置8に対して相対的に運動させられると、金属板パネル5により、遮蔽ユニット13は、互いに相対運動させられる。択一的に、遮蔽ユニット13は、駆動モータ15により互いに相対運動可能である。この場合、遮蔽ユニット13の駆動は、駆動ピニオン22(図4)を介して行われ、駆動ピニオン22は、駆動モータ15のモータシャフトに被せ嵌められていて、遮蔽ユニット13に設けられた、モータシャフトに対応して配置された歯環17と噛合う。モータレス駆動の場合、駆動モータ15および駆動モータ15の駆動ピニオン22は省略可能である(図4a)。
【0033】
図4に示す遮蔽ユニット13のモータ駆動では、装置軸線7の半径方向に隣合う遮蔽ユニット13は、装置軸線7を中心に互いに逆向きに回動する。図4において半径方向外側に位置する遮蔽ユニット13およびこの遮蔽ユニット13に隣合う遮蔽ユニット13では、逆向きの回動運動が駆動ピニオン22によりもたらされ、駆動ピニオン22は、両方の遮蔽ユニット13の歯環17に噛合い、両方の遮蔽ユニット13を運動に関して互いに連結する。
【0034】
半径方向内側に位置する遮蔽ユニット13では、回動方向の変向は、図4によれば、伝動ピニオン23により行われ、伝動ピニオン23は、両方の遮蔽ユニット13の歯環17に係合し、独自のモータ駆動装置を備えていない。内側に位置する両方の遮蔽ユニット13をモータ駆動するために、モータ駆動式の駆動ピニオン22が働き、駆動ピニオン22は、内側に位置する2つのうちの外側の遮蔽ユニット13における歯環17と噛み合う。
【0035】
数値制御式の制御ユニット11もしくは機械制御装置10により、遮蔽ユニット13の相対運動が制御可能である。特に遮蔽ユニット13の回動運動は、遮蔽装置8に対する金属板パネル5の運動に適合させることができる。したがってたとえば遮蔽ユニット13の回動運動を、金属板運動に適合させることができ、それも、金属板パネル5上に載る遮蔽要素18が金属板パネル5に追従して、したがって金属板パネル5の運動にもかかわらず、側方へ変向されず、むしろ鉛直の方向性が維持されるように適合させることができ、その際、加工ビーム19もしくは加工箇所20の最適な遮蔽が保証される。
【0036】
図4aによれば、遮蔽ユニット13は、モータレスであるだけでなく、運動に関して互いに分離されている。図4に示すような駆動ピニオン22および伝動ピニオン23は設けられていない。その他の点では、図4の構成と図4aの構成とは一致している。金属板パネル5と遮蔽ユニット13との相対運動に基づいて、後者は、同一方向のみならず逆方向に回転可能である。専ら記載の相対運動に基づいて、図4aに示す遮蔽ユニット13は、加工ビーム19および加工ビーム19の加工箇所20が周囲に対して効果的に遮蔽されるように、位置決めされている。
【0037】
図4および図4aに示す4つの遮蔽ユニット13の代わりに、相対運動可能な3つの遮蔽ユニット13も考えられる。
【0038】
閉じたカバー12の端部は、金属板パネル5ひいては遮蔽要素18の自由端部から装置軸線7の方向に間隔を有している、つまり、カバー12は、金属板パネル5ひいては遮蔽要素18の自由端部から装置軸線7の方向に間隔を有して終了している。カバー12の下縁と金属板パネル5との間の間隔は、金属板パネル5が、図5に示すように縁曲げ部24を備えている場合にカバー12の下を通過できるように、設定されている。縁曲げ部24は、遮蔽装置8もしくは加工ヘッド6に対する相対運動に際して、遮蔽装置8のブラシ状の遮蔽要素18を運動方向(図5の矢印)に変向する。したがって縁曲げ部24の上側で、遮蔽要素18により形成される遮蔽に隙間が生じる。このような遮蔽隙間は、カバー12によりカバーされる。したがってカバー12は、たとえば有害なレーザビームが加工箇所20から周囲に放射し得る角度を低減する。
【0039】
さらに遮蔽隙間は、個々の遮蔽ユニット13が装置軸線7を中心に互いに相対回動することにより、閉じられる。たとえば縁曲げ部24が遮蔽ユニット13に遮蔽隙間を形成する場合、少なくとも1つの別の遮蔽ユニット13が、装置軸線7を中心に、形成された遮蔽隙間を覆う回動位置に移動する。
【0040】
金属板パネル5の表面に対する遮蔽要素18の自由端部の間隔は、様々であってよい。たとえば加工箇所20の傍に配置された遮蔽要素18は、通常そこに作用する極端な状況に基づいて比較的安定しており、したがって丈夫である必要があるが、遮蔽要素18は、僅かに金属板パネル5の表面から間隔を有しており、それゆえ遮蔽要素18は、金属板パネル5と遮蔽装置8との相対運動を妨げず、特に金属薄板パネルの運動に際して、金属板パネル5の表面に擦過痕を形成することはない。加工箇所20から離れて、したがって僅かな要求しか存在しない遮蔽要素18は、比較的軟らかく形成することができ、したがって金属板パネル5の運動を妨げることなく、もしくは金属板パネル5の擦過痕形成が危惧されることなく金属板パネル5の表面に載置可能である。さらに遮蔽ユニット13もしくは遮蔽ユニット13の遮蔽要素18を介して装置軸線7の方向に金属板パネル5に圧力を掛けることができ、このようにして特に金属薄板パネル5の高い移動速度に際して金属板パネル5のがたつきが防止される。
【0041】
図1〜図4aに示す状況とは異なり、図6に示す態様では、2つの遮蔽ユニット13しか設けられていない。図6でも、遮蔽ユニット13は、装置軸線7を中心に互いに相対回動可能である。図1〜図4aに示す遮蔽ユニット13の場合と同様に、図6に示す遮蔽ユニット13の各構成要素ホルダ16に毛状の遮蔽要素18が設けられており、遮蔽要素18は、装置軸線7の半径方向にも装置軸線7を中心とする周方向にも互いにずらして位置する複数の構成要素列もしくはブラシ列を形成する。
【0042】
図7には、同心的な3つの遮蔽ユニット13を示しており、そのうちの半径方向内側に位置する2つの遮蔽ユニット13だけが、装置軸線7を中心に相対運動可能である。半径方向外側の遮蔽ユニット13は、遮蔽装置8の基板14に固定されている。
【0043】
図8において遮蔽ユニット33が設けられており、この遮蔽ユニット33は、前述の遮蔽ユニット13とは異なり、装置軸線7を包囲せず、むしろカーブせずに真っ直ぐに延びる構成要素ホルダ36を備えて形成されている。したがって遮蔽ユニット33は、互いに相対回動不能であり、相対的に長手方向移動可能である。装置軸線7に対して横向きの、遮蔽ユニット33の運動は、図8において両矢で示す。図8に示す遮蔽ユニット33を用いて加工ビーム19もしくは加工箇所20を周囲に対してできるだけ確実に遮蔽するために、遮蔽ユニット33の対偶は、たとえば矩形または多角形状に装置軸線7の周りに配置されている。遮蔽ユニット33の相対運動も、モータレスに金属板パネル5の運動により、または好適には数値制御式のモータ駆動装置によりもたらされる。
【0044】
図9には、遮蔽ユニット43を示しており、この遮蔽ユニット43は、たとえば図8に示す相対運動可能な遮蔽ユニット33と組み合わせることができる。遮蔽ユニット43は、構成要素ホルダ46に、遮蔽要素48としてばね荷重の掛けられたピンを備えており、ピンは自由端部において、全方向に回動可能に支承された球49で、金属板パネル5に載設されている。球による支承に基づいて、金属板パネル5は、僅かな摩擦でかつ擦過痕を形成せずに、遮蔽ユニット43の下側で遮蔽ユニット43を通過可能である。遮蔽要素48のばね荷重を掛けられた支承に基づいて、遮蔽ユニット43は、金属板パネル5の様々な表面形状に柔軟に適合する。
【0045】
図10には、遮蔽ユニット53を示しており、この遮蔽ユニット53は、たとえば図8に示す遮蔽ユニット33のような構成を有し、この遮蔽ユニット53に対して可動の第2の遮蔽ユニット53と組み合わせることができる。前述の遮蔽ユニット13,33,43とは異なり、遮蔽ユニット53は、構成要素ホルダ56に、斜めに設置された遮蔽要素58を備えている。この遮蔽要素58は毛として構成されていて、相並んで位置する複数の列を成して配置されている。相並んで位置する列のブラシは、互いに逆向きに傾斜している。
【0046】
図11において、真っ直ぐに延びる遮蔽ユニット63が、ローラ状の遮蔽ユニット64と組み合わされている。遮蔽ユニット63,64は、組付状態で、装置軸線7の半径方向に互いにずらして位置する。遮蔽ユニット63の構成要素ホルダ66ならびに回転シャフトにより形成される、ローラ状の遮蔽ユニット64の構成要素ホルダ67に、毛の構成をした遮蔽要素68が取り付けられている。遮蔽ユニット64は、回転軸線69を中心に、モータレスにまたはモータ駆動式に回動可能であり、これにより外側に位置する2つの遮蔽ユニット63に対して運動可能である。択一的または追加的に、遮蔽ユニット63は、回転軸線69に沿って、モータレスまたはモータ式に互いに相対運動可能であり、ひいては遮蔽ユニット64に対して運動可能である。遮蔽ユニット64は、構成要素ホルダ67の軸方向にみて相並んで配置された複数の群の遮蔽要素68を備えている。各群の遮蔽要素68は、構成要素ホルダ67から星状に延在している。隣合う群の遮蔽要素68は、周方向に回動軸線69を中心に角度値(β)だけ互いにずらして位置する。遮蔽ユニット64における端部側の各遮蔽要素68は、構成要素ホルダ67を中心に延びる螺旋軌道の開始点を成す。図11の配置構造も、別の遮蔽ユニットと組み合わせて、加工ビーム19もしくは加工箇所20を矩形または多角形状に包囲する遮蔽を形成することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮蔽装置であって、
当該遮蔽装置は、加工機械(1)の加工ヘッド(6)に配置するために設けられており、当該遮蔽装置により、加工ヘッド(6)において出射する加工ビーム(19)および/または工作物(5)における加工ビーム(19)の加工箇所(20)が周囲に対して遮蔽可能であり、当該遮蔽装置は、少なくとも1つの遮蔽ユニット(13,33,43,53,63,64)を備えており、該遮蔽ユニット(13,33,43,53,63,64)は、運転時に加工ビーム(19)の軸と一致する装置軸線(7)に沿って延在しており、該遮蔽ユニット(13,33,43,53,63,64)は、少なくとも1つの遮蔽要素(18,48,58,68)と、1つまたは複数の遮蔽要素(18,48,58,68)を保持する構成要素ホルダ(16,36,46,56,66,67)とを備えているものにおいて、
少なくとも2つの遮蔽ユニット(13,33,43,53,63,64)が設けられており、加工ビーム(19)を遮蔽するためかつ/または加工ビーム(19)の加工箇所(20)を遮蔽するための、該遮蔽ユニット(13,33,43,53,63,64)の構成要素ホルダ(16,36,46,56,66,67)は、該構成要素ホルダ(16,36,46,56,66,67)に対応して配置された遮蔽要素(18,48,58,68)と共に、互いに相対運動可能であることを特徴とする、遮蔽装置。
【請求項2】
互いに相対運動可能な遮蔽ユニット(13,33,43,53,63,64)は、装置軸線(7)の半径方向に互いにずらして配置されている、請求項1記載の遮蔽装置。
【請求項3】
遮蔽ユニット(13,33,43,53,63,64)の構成要素ホルダ(16,36,46,56,66,67)は、該構成要素ホルダ(16,36,46,56,66,67)に対応して配置された遮蔽要素(18,48,58,68)と共に、装置軸線(7)に沿って互いに相対運動可能である、請求項1または2の遮蔽装置。
【請求項4】
遮蔽ユニット(13,33,43,53,63,64)の構成要素ホルダ(16,36,46,56,66,67)は、該構成要素ホルダ(16,36,46,56,66,67)に対応して配置された遮蔽要素(18,48,58,68)と共に、装置軸線(7)に対して横方向に、特に装置軸線(7)の周方向に、互いに相対運動可能である、請求項1から3までのいずれか1項記載の遮蔽装置。
【請求項5】
遮蔽ユニット(13,33,43,53,63,64)の、互いに相対運動可能な構成要素ホルダ(16,36,46,56,66,67)は、運動に関して互いに連結されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の遮蔽装置。
【請求項6】
遮蔽ユニット(13,33,43,53,63,64)の、互いに相対運動可能な構成要素ホルダ(16,36,46,56,66,67)は、互いに逆向きに運動可能である、請求項1から5までのいずれか1項記載の遮蔽装置。
【請求項7】
遮蔽ユニット(13,33,43,53,63,64)の構成要素ホルダ(16,36,46,56,66,67)は、モータ駆動装置(15)により互いに相対運動可能である、請求項1から6までのいずれか1項記載の遮蔽装置。
【請求項8】
少なくとも1つの遮蔽ユニット(13)は、装置軸線(7)を少なくとも部分的に包囲する、請求項1から7までのいずれか1項記載の遮蔽装置。
【請求項9】
少なくとも1つの遮蔽ユニット(13,33,43,53,63,64)に遮蔽要素(18,48,58,68)が設けられており、該遮蔽要素(18,48,58,68)は、装置軸線(7)に対して横方向に可撓性であり、遮蔽要素(18,48,58,68)の、装置軸線(7)から離れて位置する外側に、閉じたカバー(12)、好適には遮蔽金属板が設けられており、該カバー(12)は、遮蔽要素(18,48,58,68)の自由端部から間隔を有して終了している、請求項1から8までのいずれか1項記載の遮蔽装置。
【請求項10】
工作物(5)を加工するための加工機械(1)の加工ヘッドであって、
当該加工ヘッドにおいて加工ビーム(19)が出射するものにおいて、
請求項1から9までのいずれか1項記載の遮蔽装置(8)が設けられており、該遮蔽装置(8)により、加工ビーム(19)および/または工作物(5)における加工ビーム(19)の加工箇所(20)が、周囲に対して遮蔽可能であることを特徴とする、工作物を加工するための加工機械の加工ヘッド。
【請求項11】
工作物を加工するための加工機械であって、
加工ヘッド(6)を備え、該加工ヘッド(6)において加工ビーム(19)が出射し、該加工ヘッド(6)に遮蔽装置(8)が設けられており、該遮蔽装置(8)により、加工ビーム(19)および/または工作物(5)における加工ビーム(19)の加工箇所(20)が、周囲に対して遮蔽可能であるものにおいて、
遮蔽装置(8)は、請求項1から9までのいずれか1項記載の遮蔽装置(8)として形成されていることを特徴とする、工作物を加工するための加工機械。
【請求項12】
工作物(5)の加工に際して、遮蔽装置(8)と工作物(5)とが相対運動し、この遮蔽装置(8)と工作物(5)との相対運動に基づいて、遮蔽装置(8)の複数の遮蔽ユニット(13,33,43,53,63,64)の構成要素ホルダ(16,36,46,56,66,67)が、互いに相対運動可能である、請求項11記載の加工機械。
【請求項13】
遮蔽装置(8)は、請求項7記載の遮蔽装置(8)として形成されており、遮蔽ユニット(13,33,43,53,63,64)の構成要素ホルダ(16,36,46,56,66,67)を相対運動するためのモータ駆動装置(15)のために数値制御式の制御ユニット(11)が設けられており、該制御ユニット(11)は、加工機械の少なくとも1つの別の制御ユニットと協働する、請求項11または12記載の加工機械。
【請求項14】
レーザ加工ヘッドとして構成された加工ヘッド(6)を備え、該加工ヘッド(6)において加工ビーム(19)としてレーザ加工ビームが出射する、レーザ加工機械として構成された、好適にはコンビ機械またはレーザ平床機械として構成された、請求項11から13までのいずれか1項記載の加工機械。
【請求項15】
レーザ加工ヘッドとして構成された加工ヘッド(6)を備え、該加工ヘッド(6)において加工ビーム(19)としてレーザ加工ビームが出射し、該レーザ加工ビームの波長は、可視範囲付近または可視範囲内にあり、レーザ加工ビームは、好適には個体レーザから発生させられる、レーザ加工機械として構成された、好適にはコンビ機械またはレーザ平床機械として構成された、請求項11から14までのいずれか1項記載の加工機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図4a】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2013−507257(P2013−507257A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−533535(P2012−533535)
【出願日】平成22年8月10日(2010.8.10)
【国際出願番号】PCT/EP2010/061610
【国際公開番号】WO2011/045098
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(502300646)トルンプフ ヴェルクツォイクマシーネン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (76)
【氏名又は名称原語表記】Trumpf Werkzeugmaschinen GmbH + Co. KG
【住所又は居所原語表記】Johann−Maus−Strasse 2,D−71254 Ditzingen,Germany
【Fターム(参考)】