説明

加工対象物の加工方法

【課題】仮固定時の仮接着性、耐熱性、耐溶剤性、レジスト現像液耐性、及び耐酸性に優れ、かつ、仮固定の解除時の剥離性及び洗浄性に優れる加工対象物の加工方法を提供する。
【解決手段】(a)加工対象物を、接着剤を用いて支持基材上に仮固定する工程と、(b)仮固定された加工対象物を加工する工程と、(c)加工済みの加工対象物を、剥離剤を用いて支持基材から剥離する工程とを含み、工程(a)の接着剤として、アイオノマーを含有する接着剤を用い、かつ、工程(c)の剥離剤として、酸を用いる、加工対象物の加工方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハ等の加工対象物の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体シリコンウエハ等の加工対象物を加工するに際して、加工中に加工対象物が動かないように、接着剤を用いて加工対象物と支持基材を仮固定することが必要である。
この仮固定に用いられる接着剤の一例として、アクリル酸と特定のアクリル酸ヒドロキシアルキル等との共重合体を主成分とし、無機または有機塩基により80%以上中和されている温水洗浄性液状接着剤が提案されている(特許文献1)。
他の例として、酸化エチレンの重合により得られるポリエチレングリコールの主鎖を親水基とし、その両端に酸化プロピレンを親油基として部分付加重合させたブロックポリマーを主成分とする温水洗浄性液状接着剤が提案されている(特許文献2)。
他の例として、ウレタン(メタ)アクリレート、特定の(メタ)アクリル酸誘導体モノマー、及び光重合開始剤を含有してなる接着剤組成物が提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−331212号公報
【特許文献2】特開平6−240224号公報
【特許文献3】特開2006−257312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
仮固定に用いる接着剤に望まれる物性として、(a)接着強度が大きいこと(仮接着性)、(b)加工時の種々の条件に対する耐性に優れること(耐熱性、耐溶剤性、レジスト現像液耐性、耐酸性)(c)特定の剥離条件下で容易に剥離すること(剥離性)、(d)剥離後の加工対象物及び支持基板の各々の剥離面から、接着剤の残渣が容易に洗浄除去されること(洗浄性)、等が挙げられる。
本発明は、仮固定時の仮接着性、耐熱性、耐溶剤性、レジスト現像液耐性、及び耐酸性に優れ、かつ、仮固定の解除時の剥離性及び洗浄性に優れる加工対象物の加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、仮固定用の接着剤として、アイオノマーを含有する接着剤を用い、かつ、仮固定の解除時に、酸を用いればよいことを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[4]を提供するものである。
[1](a)加工対象物を、接着剤を用いて支持基材上に仮固定する仮固定工程と、(b)仮固定された前記加工対象物を加工する加工工程と、(c)加工済みの前記加工対象物を、剥離剤を用いて前記支持基材から剥離する剥離工程とを含む加工対象物の加工方法であって、工程(a)の前記接着剤として、アイオノマーを含有する接着剤を用い、かつ、工程(c)の前記剥離剤として、酸を用いる、加工対象物の加工方法。
[2]工程(a)の前記接着剤中のアイオノマーの含有割合が、10〜100質量%である前記[1]に記載の加工対象物の加工方法。
[3]工程(c)の前記剥離剤が、有機酸である前記[1]又は[2]に記載の加工対象物の加工方法。
[4]前記加工対象物がウエハである前記[1]〜[3]のいずれかに記載の加工対象物の加工方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の加工対象物の加工方法は、接着剤を用いて加工対象物と支持基材を仮固定する際の仮接着性、耐熱性、耐溶剤性、レジスト現像液耐性、及び耐酸性に優れ、かつ、仮固定を解除する時の剥離性及び洗浄性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施例1で用いたカルボン酸変性ブチラール樹脂のIRチャートである。
【図2】実施例1で得られた金属中和物のIRチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の加工対象物の加工方法は、(a)加工対象物を、接着剤を用いて支持基材上に仮固定する仮固定工程と、(b)仮固定された前記加工対象物を加工する加工工程と、(c)加工済みの前記加工対象物を、剥離剤を用いて前記支持基材から剥離する剥離工程と、を含む加工対象物の加工方法であって、工程(a)の接着剤として、アイオノマーを含有する接着剤を用い、かつ、工程(c)の剥離剤として、酸を用いるものである。
【0009】
[工程(a);仮固定工程]
工程(a)は、加工対象物を、接着剤を用いて支持基材上に仮固定する工程である。
加工対象物の例としては、シリコンウエハや半導体ウエハ等の半導体に用いられる基板、樹脂基板等の半導体後工程に用いられる基板、ガラス基板等のディスプレイ材料に用いられる基板、金属基板、金属箔、研磨パッド等が挙げられる。なお、加工対象物としての半導体ウエハには、通常、配線や絶縁膜などが形成されている。
支持基材の例としては、半導体ウエハ、ガラス基板、樹脂基板、金属基板、金属箔、研磨パッドなどが挙げられる。支持基材である半導体ウエハとしては、通常、配線や絶縁膜などが形成されている基板等が用いられる。
仮固定工程において、支持基材または加工対象物に接着剤を塗布するに際して、支持基材または加工対象物(以下、塗布対象物ともいう。)の面内における接着剤の広がりを均一にするため、塗布対象物の表面を予め疎水化処理しておくことが好ましい。
上述の接着剤の塗布方法としては、(イ)接着剤を塗布対象物(支持基材または加工対象物)へ直接塗布する方法、(ロ)接着剤を、離型処理が施されたPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム上に一定の膜厚となるように塗布して成膜した後、この膜を塗布対象物(支持基材または加工対象物)へラミネート方式により転写する方法、などが挙げられる。
上述の接着剤の塗布量は、塗布対象物の接着面のサイズや、加工処理で要求される仮接着性の程度に応じて任意に選択することができるが、接着剤層の厚みが通常は0.01μm〜2mm、好ましくは0.05μm〜1mm、より好ましくは0.1μm〜0.5mmとなる量で塗布すればよい。接着剤層の厚みが前記範囲外にあると、接着力が充分ではないことがあり、塗布対象物と接着剤層との剥がれが生じる場合がある。なお、接着剤層の厚みは、接着剤の塗布量および張り合わせるときの圧力で調整することができる。
支持基材と加工対象物とを貼り合せる方法としては、支持基材および加工対象物の何れか一方または双方に上述の接着剤を塗布して、両者を貼り合せる方法などが挙げられる。この際の温度は、通常は20〜200℃である。このようにして、支持基材と加工対象物とが強固に接着される。
接着剤としては、アイオノマーを含有する接着剤が用いられる。
アイオノマーを含有する接着剤の一例を、以下に説明する。
【0010】
アイオノマーを含有する接着剤の一例は、(A)(a1)下記式(1)に示す構造単位、および(a2)下記式(2)に示す構造単位を含有するカルボキシル基含有重合体が、金属イオンによって少なくとも部分的に中和されてなる金属中和物(アイオノマー)、を含有する接着剤用組成物を用いて調製される。
【化1】

【化2】

(a2)構造単位を示す式(2)中、Rは直接結合、メチレン基、炭素数2〜12のアルキレン基、または炭素数1〜8のアルキル基で水素原子の一部が置換されていてもよいアリーレン基を示す。
アルキレン基は、直鎖状と分枝鎖状のいずれでもよい。アルキレン基の炭素数は、仮接着性および耐熱性の観点から、2〜12、好ましくは2〜9、より好ましくは2〜6、特に好ましくは2〜4である。
アリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられる。
は、耐熱性の観点から、好ましくは炭素数2〜4のアルキレン基である。
【0011】
(a1)構造単位と(a2)構造単位のモル比((a1)/(a2))は、好ましくは1/9〜9/1、より好ましくは2/8〜8/2である。該比が1/9〜9/1である場合、剥離性の点で好ましい。
金属イオンの例としては、Na、K、Mg2+、Ca2+、Zn2+、Zr4+等が挙げられる。中でも、Mg2+、Zn2+は、耐熱性の点で好ましい。
金属中和物(A)中の(a2)構造単位に由来する構造単位において、カルボキシル基(−COOH)を有する非中和構造単位100%に対する金属中和部分(−COOM;Mは金属イオンを示す。)を有する中和構造単位のモル比は、接着性の観点から、好ましくは10〜400%、より好ましくは10〜300%、さらに好ましくは10〜200%、特に好ましくは10〜80%である。
【0012】
本発明において、前記カルボキシル基含有重合体は、さらに(a3)下記式(3)に示す構造単位を含有することができる。
【化3】

式(3)で示される(a3)構造単位を含有することによって、接着剤の耐熱性を向上させることができる。
式(3)中、Rは水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、または炭素数1〜8のアルキル基で水素原子の一部が置換されていてもよいアリール基を示す。
アルキル基は、直鎖状と分枝鎖状のいずれでもよい。アルキル基の炭素数は、耐熱性および剥離性の観点から、2〜12、好ましくは2〜9、より好ましくは2〜6である。
アリール基としては、フェニル基、ナフタレン基等が挙げられる。
は、耐熱性の観点から、好ましくは、炭素数2〜6のアルキル基である。
(a1)構造単位と(a2)構造単位の合計(100モル%)に対する(a3)構造単位のモル比は、好ましくは50〜500モル%、より好ましくは100〜400モル%である。該モル比が50モル%未満では、接着剤の耐熱性が低下する可能性がある。該モル比が500モル%を超えると、仮固定の解除時の剥離性が低下する可能性がある。
【0013】
前記カルボキシル基含有重合体は、さらに(a4)下記式(4)に示す構造単位を含有することができる。
【化4】

式(4)で示される(a4)構造単位を含有することによって、仮接着性を向上させることができる。
式(4)中、Rは炭素数1〜12のアルキル基、または炭素数1〜8のアルキル基で水素原子の一部が置換されていてもよいアリール基を示す。
アルキル基は、直鎖状と分枝鎖状のいずれでもよい。アルキル基の炭素数は、仮接着性の観点から、1〜12、好ましくは1〜9、より好ましくは1〜6、特に好ましくは1〜4である。
アリール基としては、フェニル基、ナフタレン基等が挙げられる。
は、仮接着性の観点から、好ましくは、炭素数1〜4のアルキル基である。
(a1)構造単位と(a2)構造単位の合計(100モル%)に対する(a4)構造単位のモル比は、好ましくは0.1〜100モル%、より好ましくは1〜10モル%である。該モル比が0.1〜100モル%である場合、仮接着性の点で好ましい。
【0014】
前記の構造単位(a1)〜(a4)をすべて含む場合、前記カルボキシル基含有重合体の構造単位の全量を100モル%とするとき、各構造単位の割合は、接着剤の物性バランスを良好にする観点から、好ましくは、構造単位(a1)の割合が5〜60モル%、構造単位(a2)の割合が5〜50モル%、構造単位(a3)の割合が10〜80モル%、構造単位(a4)の割合が0.1〜10モル%であり、より好ましくは、構造単位(a1)の割合が10〜50モル%、構造単位(a2)の割合が10〜45モル%、構造単位(a3)の割合が20〜70モル%、構造単位(a4)の割合が0.1〜5モル%であり、さらに好ましくは、構造単位(a1)の割合が10〜45モル%、構造単位(a2)の割合が10〜40モル%、構造単位(a3)の割合が30〜70モル%、構造単位(a4)の割合が0.1〜4モル%であり、特に好ましくは、構造単位(a1)の割合が10〜35モル%、構造単位(a2)の割合が10〜30モル%、構造単位(a3)の割合が50〜70モル%、構造単位(a4)の割合が1〜4モル%である。
【0015】
カルボキシル基含有重合体の重量平均分子量は、好ましくは1,000〜100,000、より好ましくは2,000〜50,000、特に好ましくは5,000〜30,000である。該分子量が1,000〜100,000の範囲内にあると、接着性の点で優れるため好ましい。
【0016】
接着剤用組成物は、(A)金属中和物に加えて、(B)希釈剤、を含有することができる。
(B)希釈剤を含有することによって、接着剤用組成物の保存性をより良好にすることができる。
(B)希釈剤の例としては、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等が挙げられる。中でも、接着剤用組成物の貯蔵安定性の観点から、テトラヒドロフランが好ましい。
(B)希釈剤の配合量は、特に限定されないが、接着剤用組成物を塗布する際のハンドリング性の観点から、(A)金属中和物100質量部(乾燥質量)に対して、好ましくは100〜3,000質量部、より好ましくは300〜2,000質量部である。
【0017】
前記の接着剤用組成物は、乾燥させることによって、接着剤として用いることができる。
接着剤中のアイオノマーの含有割合は、好ましくは10〜100質量%、より好ましくは20〜100質量%、さらに好ましくは50〜100質量%、特に好ましくは80〜100質量%である。
接着剤中のアイオノマー以外の成分の例としては、グリセリン、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン等のケトン類などの溶媒、非イオン系界面活性剤などの表面張力調節剤;酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ケイ素などの金属酸化物;ポリスチレン架橋粒子などが挙げられる。
接着剤の形態の例としては、無定形、シート状等が挙げられる。中でも、シート状の接着剤は、接着時の作業の効率性が良い点で好ましい。
シート状の接着剤は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン製の基材シートの上に形成させることができる。この場合、接着剤の使用時に、シート状の接着剤(接着剤層)を基材シートから剥離させ、例えば、半導体シリコンウエハ等の加工対象物と支持基材の間に介在させて、仮固定のために用いればよい。
シート状の接着剤の厚さは、好ましくは50〜500μm、より好ましくは100〜300μmである。
加工対象物と支持基材の間に接着剤を介在させる際に、接着強度の向上の観点から、加熱することが好ましい。加熱温度は、好ましくは100〜200℃、より好ましくは120〜170℃である。加熱温度が200℃を超えると、接着強度の向上が頭打ちになる一方、熱エネルギー量が多くなり、経済的に不利である。
【0018】
上述の接着剤用組成物の製造方法について説明する。
該接着剤用組成物の製造方法は、(a1)構造単位を含有する水酸基含有重合体と、酸無水物を反応させて、(a1)構造単位及び(a2)構造単位を含有するカルボキシル基含有重合体を得た後、該カルボキシル基含有重合体と、アルコキシドを反応させて、前記金属中和物を得るものである。
(a1)構造単位を含有する水酸基含有重合体の例としては、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
酸無水物の例としては、無水コハク酸、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水ピロメリット酸、無水グルタル酸等が挙げられる。
(a1)構造単位を含有する水酸基含有重合体と、酸無水物との反応は、開環エステル化反応であり、例えば、有機溶媒中で加熱下で混合することにより行なうことができる。
該反応における有機溶媒の例としては、シクロヘキサノン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒等が挙げられる。加熱温度は、好ましくは100〜180℃、より好ましくは120〜160℃である。反応時間は、好ましくは5〜20時間、より好ましくは7〜15時間である。
【0019】
カルボキシル基含有重合体とアルコキシドの反応は、例えば、有機溶媒中で加熱下に混合することにより行なうことができる。
アルコキシドの例としては、マグネシウムエトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムt−ブトキシド、ジルコニウムt−メトキシド、ジルコニウムt−エトキシド等が挙げられる。
該反応における有機溶媒(希釈剤)の例としては、テトラヒドロフラン等が挙げられる。加熱温度は、好ましくは40〜100℃、より好ましくは55〜80℃である。反応時間は、好ましくは5〜20時間、より好ましくは7〜15時間である。
該反応は、PKbが8以上、好ましくは8〜14のアルカリを用いて行なうことが好ましい。
カルボキシル基含有重合体とアルコキシドの反応によって生じる金属中和物は、アイオノマーであり、金属イオンによって分子間結合した重合体である。
反応後、真空または減圧条件下で加熱して乾燥させることによって、有機溶媒(希釈剤)が除去された接着剤用組成物を得ることができる。この場合、加熱温度は、例えば、60〜170℃である。
なお、本明細書中、「接着剤用組成物」の語は、有機溶媒(希釈剤)を含むものと、有機溶媒(希釈剤)を含まないものの両方を包含する。
接着剤用組成物は、加圧下で加熱することによって、シート状の接着剤となる。この場合、加圧及び加熱は、熱プレス機等を用いて行なうことができる。加熱温度は、好ましくは120〜170℃である。
【0020】
[工程(b);加工工程]
工程(b)は、仮固定された加工対象物を加工する工程である。
加工は、単一の加工であってもよいし、あるいは、二つ以上の加工を組み合わせたものでもよい。
加工対象物がウエハである場合、加工の一例として、ウエハの薄化、レジスト形成、RIE/O2アッシング、絶縁膜形成、スパッタ、レジスト形成、Sn/Cuめっき、レジスト剥離、リフローの各加工をこの順に組み合わせたものが挙げられる。
この場合、各工程において、仮固定に用いられた接着剤は、種々の雰囲気に対する耐性を備えている必要がある。例えば、絶縁膜形成、及びリフローの際には、各々、200℃で1時間程度、260℃で10秒間程度の高温雰囲気に対する耐性が必要である。レジスト形成の際には、溶剤に対する耐性が必要である。Sn/Cuめっきの際には、耐酸性が必要である。上述の接着剤用組成物を用いることによって、これらの耐性を備えた接着剤を調製することができる。
【0021】
[工程(c);剥離工程]
工程(c)は、加工済みの加工対象物を、剥離剤を用いて支持基材から剥離する工程である。
剥離剤としては、酸が用いられる。
酸の例としては、p−トルエンスルホン酸水溶液、カンファースルホン酸などの有機酸や塩酸、酢酸、硫酸などの無機酸等が挙げられる。これらの中でも、接着剤への浸透性に優れていることから、剥離性に優れている有機酸が好ましい。
剥離剤である酸のpKaは、好ましくは0.1〜6、より好ましくは1〜6、特に好ましくは1〜4である。pKaが0.1〜6の範囲内にある場合、剥離剤による基板へのダメージと剥離性とのバランスの点から好ましい。
剥離剤である酸の温度は、好ましくは0〜200℃、より好ましくは20〜100℃である。
【実施例】
【0022】
[実施例1;金属中和物1の合成]
ナス型フラスコに積水化学社製のポリビニルブチラール樹脂(商品名:エスレックB・K(BL−1)(重量平均分子量19,000;前記式(1)で示される水酸基を有する構造単位36モル%、前記式(4)で示されるアセチル基を有する構造単位3モル%、前記式(3)で示されるブチラール基を有する構造単位61モル%)2.5gを、予めモレキュラーシーブス3Aで一晩乾燥し30分間窒素バブリングして脱水したシクロヘキサノン22.5gに溶解した。その後、無水コハク酸330mgをフラスコに投入し、窒素気流下140℃で10時間加熱し、反応させた。反応後、溶液を室温まで冷却した。その後、溶液をヘキサン125mLに攪拌しながら5分間かけて滴下した。滴下後、析出した固体をデカンテーションにより分離し、真空下70℃で15時間乾燥して、カルボン酸変性ブチラール樹脂(A)を得た。こうして得た樹脂(A)2.5gを和光純薬社製の脱水グレードテトラヒドロフラン(水分含量:50ppm未満)22.5gに溶解した。その後、溶液にマグネシウムエトキシド129mg、及び、予めモレキュラーシーブス3Aで一晩乾燥し、30分間窒素バブリングして脱水したn−ブタノール2.5gを投入した。
その後、窒素気流下、65℃で10時間反応させ、アイオノマーのテトラヒドロフラン溶液1を得た。この溶液1をヘキサン100mLに投入し、15分間攪拌した。得られた固形物を取り出し、真空下75℃で12時間乾燥し、アイオノマーである金属中和物1を得た。
カルボン酸変性ブチラール樹脂(A)のIRスペクトル(図1)と金属中和物1のIRスペクトル(図2)を比べると、カルボン酸変性ブチラール樹脂(A)のカルボニルの吸収(1733cm-1)のピークが、金属中和物1では変化していることから、金属中和物1がアイオノマーであることを確認することができた。
金属中和物1は、構造単位(a1)の割合が21モル%、構造単位(a2)の非中和構造単位(a2−1)の割合が10モル%、構造単位(a2)の中和構造単位(a2−2)の割合が5モル%、構造単位(a3)の割合が61モル%、構造単位(a4)の割合が3モル%であった。
【0023】
[実施例2;金属中和物2の合成]
マグネシウムエトキシドの量を64mgに変えたこと以外は実施例1と同様にして実験し、アイオノマーである金属中和物2を得た。
金属中和物2は、構造単位(a1)の割合が21モル%、構造単位(a2)の非中和構造単位(a2−1)の割合が12.5モル%、構造単位(a2)の中和構造単位(a2−2)の割合が2.5モル%、構造単位(a3)の割合が61モル%、構造単位(a4)の割合が3モル%であった。
【0024】
[実施例3;試験片1の作製]
実施例1で得た金属中和物1を膜厚200μmのポリテトラフルオロエチレン製の樹脂シートに挟み、熱プレス機を用いて145℃で膜厚600μmになるまでプレスした。得られた積層体から樹脂シートをはがすことにより、膜厚200μmのシート状接着剤(接着剤膜)を得た。このシート状接着剤を10mm×10mmに切断したものを、10mm×10mmに切断したシリコンウエハーおよび20mm×20mmに切断したガラス片の間に挟み、500gfの荷重を加えながら145℃で1時間圧着し、試験片1を得た。
試験片1の接着剤膜中のアイオノマーの含有割合は、100質量%であった。
[実施例4;試験片2の作製]
金属中和物1に代えて実施例2で得た金属中和物2を用いたこと以外は実施例1と同様にして、試験片2を得た。
試験片2の接着剤膜中のアイオノマーの含有割合は、100質量%であった。
[比較例1;試験片3の作製]
積水化学社製のポリビニルブチラール樹脂(商品名:エスレックB・K(BL−1))を20質量%の濃度で含むテトラヒドロフラン溶液を、20mm×20mmに切断したガラス片の上に載せて、70℃のホットプレートで加熱し、溶剤を飛ばした後、その上に10mm×10mmのシリコンウエハーを載せて、500gfの荷重を加えながら1時間圧着し、試験片3を得た。
【0025】
[試験片の評価]
得られた試験片1〜3について、以下の項目を評価した。
(1)接着強度
試験片を対象として、23℃で、万能ボンドテスター、「万能ボンドテスター シリーズ400」(デイジ社製)を用いて接着強度(MPa)を測定した。
(2)耐溶剤性
試験片を50℃の乳酸エチル中に10分間浸漬させ、接着を維持するかどうかを評価した。接着を維持した場合を○、剥離した場合を×とした。
(3)レジスト現像液耐性
試験片を50℃の水酸化ナトリウム水溶液(濃度:3質量%)中に10分間浸漬させ、接着を維持するかどうかを評価した。接着を維持した場合を○、剥離した場合を×とした。
(4)耐酸性
試験片を50℃の硫酸(濃度:10質量%)中に7時間浸漬させ、接着を維持するかどうかを評価した。接着を維持した場合を○、剥離した場合を×とした。
(5)耐熱性(200℃)
試験片を200℃で1時間加熱し、接着を維持するかどうかを評価した。接着を維持した場合を○、剥離した場合を×とした。
(6)耐熱性(260℃)
試験片を260℃で30秒間加熱し、接着を維持するかどうかを評価した。接着を維持した場合を○、剥離した場合を×とした。
(7)剥離性
前記の(5)及び(6)の耐熱性の評価試験を経た試験片を、80℃のp−トルエンスルホン酸水溶液(濃度:20質量%、pKa:1.7)に撹拌下で浸漬し、1時間以内に試験片が剥離するかどうかを評価した。剥離した場合を○、剥離しなかった場合を×とした。
(8)洗浄性
前記の(7)の剥離性の評価試験を経た試験片に対して、p−トルエンスルホン酸水溶液への浸漬を継続し、30分以内にシリコンウエハー及びガラス片の上に接着剤の残渣が消滅するかどうかを評価した。消滅した場合を○、消滅しなかった場合を×とした。
以上の結果を表1に示す。
【0026】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)加工対象物を、接着剤を用いて支持基材上に仮固定する仮固定工程と、
(b)仮固定された前記加工対象物を加工する加工工程と、
(c)加工済みの前記加工対象物を、剥離剤を用いて前記支持基材から剥離する剥離工程と
を含む加工対象物の加工方法であって、
工程(a)の前記接着剤として、アイオノマーを含有する接着剤を用い、かつ、工程(c)の前記剥離剤として、酸を用いる、加工対象物の加工方法。
【請求項2】
工程(a)の前記接着剤中のアイオノマーの含有割合が、10〜100質量%である請求項1に記載の加工対象物の加工方法。
【請求項3】
工程(c)の前記剥離剤が、有機酸である請求項1又は2に記載の加工対象物の加工方法。
【請求項4】
前記加工対象物がウエハである請求項1〜3のいずれか1項に記載の加工対象物の加工方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−148926(P2011−148926A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−12281(P2010−12281)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】