説明

加工液供給装置

【課題】フローティングノズルの磨耗を簡単な位置検出器で検出できる加工液供給装置1を提供。
【解決手段】研削砥石3の外周面4をツルーイングやドレッシングするドレッサ5と、外周面に向かって加工液を供給するノズル25を設ける。ノズルは外周面に開口する開口部26と、開口部の両側に研削砥石両側面側に延出する鍔部27a、27bを設け、ノズルを研削砥石外周面に付勢する付勢部材14と、ノズルを付勢方向自在に支持するノズル支持部材11と、ノズル支持部材とノズルとの相対位置を検出する位置検出器32と、を設け、ノズル支持部材をドレッサを軸支するドレッサ支持台6に固定する。ドレッサはロータリードレッサとする。さらに、単結晶ダイヤモンドドレッサを砥石軸方向に移動可能にし、ノズル支持部材を研削砥石に対して鍔部により位置保持できるように、砥石軸方向に移動可能にドレッサ支持台に取付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドレッサによる研削砥石のツルーイングやドレッシング処理時に、加工液を供給する加工液供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、砥石によりワーク外周を研削する円筒研削盤やセンタレス研削盤においては、砥石の外周をツルーイング(形直し)あるいはドレッシング(目直し)(以下「ドレッシング等」という)をするためにドレッサが設けられている。また、ドレッシング等を行うに当たっては、例えば、特許文献1においては、ロータリードレッサを用いてドレッシング等を高精度に行うために、砥石に加工液を供給し、砥石の温度を安定化させている。
【0003】
しかし、特許文献1のものでは、加工液を供給するノズルが砥石外周面から離隔した位置に設けられているので、ノズルから吐出された加工液が必ずしも砥石に対して有効に作用しているとは限らない。また、回転する砥石の外周の連れ周り空気流により、加工液の供給が阻まれ充分な加工液が加工点に供給されないという問題があった。
【0004】
そこで、例えば、特許文献2、3においては、ノズル開口部を砥石外周面に向けて開口させ、開口部の両側に、砥石の両側面に延出する鍔部を設ける。さらにノズル先端の砥石外周面側の形状を砥石外周断面形状に相似に形成して、開口部より砥石外周面に加工液を吐出して、加工液を供給すると同時に連れ周り空気流を遮断し、加工点に加工液を供給するようにしている。
【0005】
さらに、ノズルは砥石外周との接触や、加工液と共につれ回る砥石から離脱した砥石粒等によって磨耗する。そこで、特許文献2のものでは、ノズルが設けられた本体を砥石軸直角方向に移動できるようにし、さらに、スプリング等により付勢して、ノズル開口部から吐出す加工液噴流とバランスさせ、砥石外周面とノズル開口部間の隙間を調整できるようにし、砥石又はノズルの磨耗に応じて適切な隙間を得られるようにしている。このものはフローティングノズルと呼ばれている。一方、特許文献3においては、ノズル位置調整はノズル位置をダイヤルゲージ等で測定し、隙間を制御している。
【0006】
ところで、砥石側も使用により磨耗する。特に、ドレッシング等加工時には砥石側の外周面が削られ、その量は加工時の磨耗量に比べ大きくなる。ドレッシング等時には砥石とドレッサとの距離等が重要である。そこで、特許文献1の場合、接触センサにより砥石とドレッサとの接触により砥石の磨耗量に関係なくドレッサ位置を制御できるようにされている。また、これを利用することにより砥石磨耗量(外径位置等)を計算できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−038620号公報
【特許文献2】特開2005−303305号公報
【特許文献3】特開2003−311618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一方、ノズルについては、ノズル開口部が磨耗し、ノズルとしての機能がなくなるまで磨耗しないように監視しなければならない。しかし、ノズルについては、研削盤本体又は砥石軸台等に取付けられており、磨耗量を検知しようとしても、それが砥石側の磨耗量なのかノズル側の磨耗量かを判断しなければならない。このため、肉眼で確認したり、前述した砥石磨耗量を計算して求めたり、他の検出装置が必要となる。
【0009】
本発明の課題は、かかる問題点に鑑みて、砥石外周面に開口するノズルを砥石外周面に付勢しながら加工液を供給するフローティングノズルの磨耗を複雑な計算等をすることなくリミットスイッチ、光電スイッチ、近接スイッチ等の簡単な位置検出器で検出できる加工液供給装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明においては、回転軸に取付けられた円筒又は円盤状の研削砥石と、前記研削砥石外周面に向かって進退して前記研削砥石の外周面をツルーイングやドレッシングするドレッサと、前記研削砥石の外周面に向かって加工液を供給するノズルと、を有する加工液供給装置において、前記ノズルは前記研削砥石の外周面に開口する開口部と、前記開口部の両側に前記研削砥石両側面側に延出する鍔部と、を有し、前記ノズルを前記研削砥石外周面に付勢する付勢部材が設けられており、前記ノズルを付勢方向自在に支持するノズル支持部材と、前記ノズル支持部材と前記ノズルとの相対位置を検出する位置検出器と、を備え、前記ノズル支持部材は前記ドレッサを軸支するドレッサ支持台に固定されている加工液供給装置を提供することにより前述した課題を解決した。
【0011】
即ち、フローティングノズルを研削砥石外周側に設け、ノズルの支持部材をドレッサ支持台側に固定し、ノズル支持部材とノズルとの位置を検出する。研削砥石が磨耗しても、ドレッサはほとんど磨耗しないので、ドレッシング等時では、ドレッサ支持台と研削砥石の外周面との相対距離は変わらない。ノズル先端は研削砥石外周面に加工液を介して接することになるので、ノズル先端とドレッサ支持台の相対距離変化はノズルの磨耗量となる。ノズル先端とドレッサ支持台の相対距離変化は位置検出器で検出でき、所定の磨耗量、即ち所定の移動量に達したら検出信号等を送り異常を知らせることができる。
【0012】
また、ドレッサがロータリードレッサのように総型タイプの場合は、研削砥石軸直角方向のみの制御でよい。そこで、請求項2に記載の発明においては、前記ドレッサはロータリードレッサである加工液供給装置とした。
【0013】
さらに、単石ドレッサのような創成型のドレッサは研削砥石軸方向に移動させてドレッシング等を行う。この場合、フローティングノズルの鍔部が研削砥石と干渉してしまう。そこで、請求項3に記載の発明においては、前記ドレッサは前記砥石軸方向に移動可能にされており、前記ノズル支持部材は前記研削砥石に対して前記鍔部により位置保持できるように、前記砥石軸方向に移動可能に前記ドレッサ支持台に取付けられている加工液供給装置とした。また、請求項4に記載の発明においては、前記ドレッサは単結晶ダイヤモンドドレッサである加工液供給装置とした。
【発明の効果】
【0014】
本発明においては、フローティングノズルを研削砥石外周側に設け、ノズルの支持部材をドレッサ支持台側に固定し、ノズル支持部材とノズルとの位置を検出し、ノズルの磨耗量を容易に検知することができるので、複雑な計算が不要で、簡単な位置検出器でノズルの磨耗量の検出ができるものとなった。また、ドレッサがロータリードレッサのように総型タイプの場合に適する(請求項2)。
【0015】
さらに、請求項4に記載の発明においては、ノズル支持部材を砥石軸方向に摺動可能に位置保持できるようにしたので、単石、多石ドレッサであっても、ノズルの磨耗量を検出できる加工液供給装置となった。また、請求項4に記載の発明においては、ドレッサが単結晶ダイヤモンドドレッサのような創成型のドレッサに使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態を示すロータリードレッサを用いた加工液供給装置の説明図であり、(a)は正面図、(b)は(a)のA−A線断面図である。
【図2】本発明の他の実施の形態を示す単石ダイヤモンドドレッサを用いた加工液供給装置の説明図であり、(a)は正面図、(b)は(a)のB−B線断面図である。部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1に示すように、本発明の加工液供給装置1は、図示しない研削盤テーブルに設けられた砥石台10と、砥石台の回転軸2に取付けられ、図示しないモータにより回転駆動される円盤状の研削砥石3が設けられている。研削砥石の外周面4をツルーイングやドレッシングするドレッサ5がドレッサ支持台6に回転自在に軸支されている。ドレッサ支持台6を移動させることにより、ドレッサ5を研削砥石外周面4に向かって(図でみて矢印7方向)進退可能にされている。ドレッサ5の砥石回転方向に隣接するように、ヒンジ8を介してノズル支持部材11がドレッサ支持台6に取付けられている。
【0018】
ノズル支持部材11は砥石軸直角方向に挿通穴12が貫通し、挿通穴下端にスプリング穴13が開けられている。挿通穴12に連通穴22を有するノズル本体21が挿通穴の中心軸方向に摺動可能に挿入されている。ノズル本体21の先端にはノズル25が設けられている。ノズル25は研削砥石の外周面に開口する開口部26と、開口部の両側に研削砥石3の両側面3a、3b側にそれぞれ延出する鍔部27a、27bとが設けられている。研削砥石の両側面3a,3bと鍔部27a,274bとの隙間は、両幅方向で0.4〜1mmである。また、開口部26が開口する開口面28は、研削砥石外周4とほぼ同形状とされる。開口部26は連通穴22の下側端と連通している。連通穴22の他端側は図示しない加工液を供給する加工液(潤滑)ユニットに接続されている。
【0019】
ノズル上端25aとスプリング穴13との間にスプリング(付勢部材)14が設けられており、ノズル25を研削砥石外周面4側に押しつける(付勢する)。ノズル本体21とノズル25の自重によりノズル25が砥石外周4を押しつける力が発生する場合は、スプリング14を装着する必要はない。ノズル本体上部にはストッパ15が設けられノズル支持部材11の上端11aに当接することによりノズル本体21の下方への離脱を防止する。ストッパ15は検出体を兼ねており、ノズル支持部材に設けられた近接スイッチ32でストッパ位置を検出できるようにされている。ストッパ15を近接スイッチ32が検出した場合に信号を取り出すようにされている。また、図示しない制御装置により、ドレッサ5の位置が研削砥石に接触している状態で、かつ近接スイッチ32の信号がある場合にはノズル磨耗限界信号として取り出すように制御されている。
【0020】
かかる加工液供給装置1の作動について説明する。研削砥石3からドレッサ5及びノズル25が離れた位置で、ノズルから加工液を吐出ながら、ドレッサ支持台6を砥石軸直角方向に移動させ、ドレッサを研削砥石に近づける。ノズルの開口部26が研削砥石外周面4に近づくと加工液の反力により、スプリング14力とバランスしながら所定隙間を保ちながら研削砥石外周面に加工液を供給する。ストッパ15は近接スイッチ32と離れている。さらにドレッサ5を前進させ、所定のドレッシング等を行う。研削砥石3が磨耗しても、近接スイッチ32はストッパ15を検出しない。一方、ノズル25が磨耗すると、ストッパ15は近接スイッチ32に近づき、所定限度の磨耗に達した場合にストッパを近接スイッチが感知し、異常検出信号を出力する。これにより、研削砥石3の磨耗量の影響なくノズル25の磨耗量を確実に検出できる。
【0021】
次に本発明の他の実施例について図2を参照して説明する。他の実施例においては、単式ドレッサを使用した場合の例である。前述したと同様の部品については同符号を付し、説明の一部又は全部を省略する。図2に示すように、加工液供給装置1′のドレッサ5′は先端にダイヤモンド単石41が取付けられ、ドレッサ支持台6を砥石軸直角方向(矢印7)及び砥石軸方向(矢印9)に移動させることにより、砥石外周面のドレッシング等を行う。ドレッサ支持台6にはガイドレール42が砥石軸と平行に設けられている。ガイドレール42に沿って相対移動可能にリニアスライド43が設けられており、リニアスライドにノズル支持部材11′が取付られている。また、リニアスライド43に近接スイッチ32が設けられている。
【0022】
かかる加工液供給装置1′の作動について説明する。研削砥石3からドレッサ5及びノズル25が離れているが鍔部27が研削砥石の両側面より軸寄りにされた位置で、ノズルから加工液を吐出ながら、ドレッサ支持台6を砥石軸直角方向及び軸方向に移動させ、ドレッサ5′を研削砥石3に近づけてドレッシング等を行う。ノズルの開口部26が研削砥石外周面4に近づくと加工液の反力により、スプリング14力とバランスしながら所定隙間を保ちながら研削砥石外周面に加工液を供給する。その他については、前述と同様である。
【0023】
なお、リニアスライド移動範囲はドレッサ移動範囲と同じでよい。ドレッサ5′と研削砥石外周面4は大きな距離で離隔しなくてもよいので、研削砥石3とノズル先端25bとが完全に離れないように操作又は制御する。また、研削砥石先端、即ち、鍔部が研削砥石から離隔した場合は、再度研削砥石外周側面に位置するように、手動又は自動で制御する。かかる制御の他、ガイドバーやワイヤーを用いて、研削砥石とノズルとの軸方向の相対位置がずれないような機構を設けてもよいことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0024】
1、1′ 加工液供給装置
2 回転軸
3 研削砥石
3a、3b 研削砥石両側面
4 研削砥石外周面
5、5′ ドレッサ
6 ドレッサ支持台
11、11′ ノズル支持部材
14 付勢部材(スプリング)
25 ノズル
26 開口部
27a、27b 鍔部
32 位置検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に取付けられた円筒又は円盤状の研削砥石と、前記研削砥石外周面に向かって進退して前記研削砥石の外周面をツルーイングやドレッシングするドレッサと、前記研削砥石の外周面に向かって加工液を供給するノズルと、を有する加工液供給装置において、前記ノズルは前記研削砥石の外周面に開口する開口部と、前記開口部の両側に前記研削砥石両側面側に延出する鍔部と、を有し、前記ノズルを前記研削砥石外周面に付勢する付勢部材が設けられており、前記ノズルを付勢方向自在に支持するノズル支持部材と、前記ノズル支持部材と前記ノズルとの相対位置を検出する位置検出器と、を備え、前記ノズル支持部材は前記ドレッサを軸支するドレッサ支持台に固定されていることを特徴とする加工液供給装置。
【請求項2】
前記ドレッサはロータリードレッサであることを特徴とする請求項1記載の加工液供給装置。
【請求項3】
前記ドレッサは前記砥石軸方向に移動可能にされており、前記ノズル支持部材は前記研削砥石に対して前記鍔部により位置保持できるように、前記砥石軸方向に移動可能に前記ドレッサ支持台に取付けられていることを特徴とする請求項1記載の加工液供給装置。
【請求項4】
前記ドレッサは単結晶ダイヤモンドドレッサであることを特徴とする請求項3記載の加工液供給装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−179692(P2012−179692A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45450(P2011−45450)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000005197)株式会社不二越 (625)
【Fターム(参考)】