加工装置及び加工装置用プログラム
【課題】レーザ穴あけ加工機に於いて、粗密入り混じった状態で不規則に並んだ穴配置に対して、全体の加工時間を不必要に延長すること無く、蓄熱による加工不良を回避する。
【解決手段】穴位置データから密集格子点の要素となる穴群を抽出する装置S301と、抽出された穴群を近接点毎に集めて格子点領域に分ける装置S302と、熱の放散が良好となる様に各格子点領域内の穴群の加工順序を決定する装置S303と、格子点領域及び密集格子点の要素以外の単独穴の加工順序を決定する装置S304とを以って、加工対象上の穴位置の加工順序を決定し、当該加工順序に従って、加工機は穴あけ加工を行う。
【解決手段】穴位置データから密集格子点の要素となる穴群を抽出する装置S301と、抽出された穴群を近接点毎に集めて格子点領域に分ける装置S302と、熱の放散が良好となる様に各格子点領域内の穴群の加工順序を決定する装置S303と、格子点領域及び密集格子点の要素以外の単独穴の加工順序を決定する装置S304とを以って、加工対象上の穴位置の加工順序を決定し、当該加工順序に従って、加工機は穴あけ加工を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばレーザ光を用いて所定のシートに穴をあける加工技術に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ光の照射による穴あけ加工に於いては、単独加工では良好な穴が加工可能である加工パラメータであっても、高密度に配置された穴群を連続で加工した場合には、蓄熱の影響により、加工穴の変形又は加工位置ズレが起こる。
【0003】
これを防ぐために、高密度の格子点状に配置された穴群に対して、中心から外側に向けて渦巻状に加工して熱を放散しながら加工する方法(例えば特許文献1を参照。)、又は、連続して加工される穴間距離を長く設定する方法(例えば特許文献2を参照。)が、提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−35977号公報
【特許文献2】特開2002−224874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、パソコン又は携帯電話等のマザーボードの様な加工対象に於いては、加工穴が粗密入り乱れて配置されており、蓄熱の影響で加工不良が発生する配置場所は限られる。
【0006】
この様な配置に対して、加工対象に含まれる全ての加工穴を高密度の格子点状に配置された点群と捉えて、加工対象の中心から外側に向って渦巻き状に加工するときには、熱の放散は良好なために加工不良は抑えられるが、加工時間が不必要に延びると言う問題点が新たに生じる。同様に、連続して穴をあける場合の最短穴間距離に制限を与える方法に於いても、加工時間が不必要に延びると言う問題点がある。
【0007】
又、作業者が、蓄熱の影響が大きい領域又は穴群を指定して、加工順序を上記の渦巻き状にする様に指令したり、或いは、作業者が手作業で加工順序を入れ替えたりすることは、数万個にもなる穴数を考えると、作業者の手間が多すぎて問題がある。
【0008】
この発明は斯かる問題点を解決するために成されたものであり、その目的は、全体の加工時間を不必要に延長することなく、蓄熱による加工不良を回避可能な加工装置及び加工方法ないしは加工装置用プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の主題は、レーザ光を加工対象に照射することで前記加工対象に穴をあける加工装置であって、穴位置データから密集格子点の要素となる穴位置を抽出する密集格子点要素抽出部と、抽出された穴位置を一定の規則に従って集めて1つ以上の格子点領域に分ける格子点領域分配部と、前記1つ以上の格子点領域毎に、熱が1次元的に又は2次元的に当該格子点領域の中心から外側へ向かって放散される様に、当該格子点領域内の穴位置の加工順序を決定する格子点内順序決定部と、前記格子点内順序決定部によって各格子点領域内の穴位置の加工順序が決定された前記1つ以上の格子点領域、及び、前記密集格子点要素抽出部によって前記密集格子点要素としては抽出されなかった穴位置、の加工順序を、トラベリングセールスマン問題の解決方法を利用して決定する格子点領域及び格子点外順序決定部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の主題によれば、密集格子点要素抽出部と、格子点領域分配部と、格子点内順序決定部との具備により、蓄熱の影響が顕著となる穴位置群に対しては熱の放散が良好となる加工順序が取られ、格子点領域及び格子点外順序決定部の具備により、密集格子点群の要素以外の穴位置群に対しては加工速度を重視した加工順序が取られるので、粗密入り混じって不規則に配置された加工対象の穴位置群に対しても、加工時間を不必要に延ばすことなく、蓄熱の影響による加工不良を回避することが出来る。
【0011】
以下、この発明の様々な具体化を、添付図面を基に、その効果・利点と共に詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の各実施の形態に係るレーザ加工機全体の概略を示す図である。
【図2】加工対象上の穴配置の一例を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る加工順序決定装置の構成を示す図である。
【図4】密集格子点要素抽出装置により抽出された格子点領域を示す図である。
【図5】格子点領域分配装置による格子点要素の分配過程を示す図である。
【図6】格子点領域分配装置による格子点要素の分配過程を示す図である。
【図7】格子点領域分配装置による格子点要素の分配過程を示す図である。
【図8】格子点領域分配装置による格子点要素の分配過程を示す図である。
【図9】格子点内順序決定装置による格子点領域内の加工順序の一例を示す図である。
【図10】格子点内順序決定装置による格子点領域内の加工順序の一例を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態1に係る加工順序の一例を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態2に係る加工順序の一例を示す図である。
【図13】本発明の実施の形態3に係る格子点領域内の加工順序の一例を示す図である。
【図14】本発明の実施の形態4に係る格子点領域内の加工順序の一例を示す図である。
【図15】本発明の実施の形態4に係る格子点領域内の加工順序の一例を示す図である。
【図16】本発明の実施の形態6に係る加工順序決定装置の構成を示す図である。
【図17】本発明の実施の形態7に係る加工順序決定装置の構成を示す図である。
【図18】本発明の実施の形態8に係る加工順序決定装置の構成を示す図である。
【図19】本発明の実施の形態9に係る加工順序決定装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施の形態1)
この発明の本実施の形態に係る穿孔方法について、図面を参照して具体的に記載する。
【0014】
図1は、本実施の形態に係るレーザ加工機の全体構成を概略的に示す図である。尚、図1は、後述する、その他の全ての実施の形態に於いても援用される。
【0015】
図1に於いて、レーザ光源101から出射されたレーザ光102は、ガルバノミラー103a,103bによってその角度が調整され、fθレンズ104により集光された上で、保護ウインドウ105を通過後に、加工対象106を融解して穴をあける。ここで、保護ウインドウ105は、加工対象106を加工した際に生じる加工屑からfθレンズ104を保護するものである。加工対象106は、XYステージ107上に搭載されている。
【0016】
加工位置の調整は、XYステージ107と2枚のガルバノミラー103a,103bにより行われる。ガルバノミラー103a,103bは高速な移動・位置決めを行うことが可能ではあるが、fθレンズ104の大きさが限られるために、ガルバノミラー103a,103bによる調整可能範囲は、加工対象106の大きさ(例えば500mm角)に比して、小さい範囲(例えば50mm角)に制限される。それに対して、XYステージ107は、その移動速度は低速ではあるが、加工対象106を大きく動かすことが可能である。
【0017】
一般的な加工に於いては、加工対象106の穴群は、ガルバノミラー103a,103bによる調整可能な範囲の領域(以下「ガルバノ範囲」と言う。)によりグループ分けされ、各ガルバノ範囲内の穴群の加工は、XYステージ107を動かさずに、ガルバノミラー103a,103bによる位置調整のみで行われる。そして、一つのガルバノ範囲内の加工が全て終わったならば、XYステージ107の移動により、別のガルバノ範囲内の加工に工程が移る。
【0018】
但し、XYステージ107及びガルバノミラー103a,103bを同時に動かしながら加工対象106を加工する方法も知られている。
【0019】
本発明は、主に、ガルバノ範囲内の加工順序に関るものである。
【0020】
図2は、一つのガルバノ範囲内に配置された穴を模式的に示す図である。図2では、穴は粗密入り混じって配置されており、全体としては不規則に並んでいる。但し、高密度で穴が配置されている箇所に於いては、穴が格子点状に配置されている場合が多い。これは、穴をあけた加工対象106上にマウントされる半導体部品のサイズが規格で定められているために、高密度に半導体部品を並べた場合であっても、結果的には一定間隔の穴が配置されることとなるからである。
【0021】
図3は、本実施の形態に係る穴の加工順序を決定する装置の構成を示す図である。以下、図3に基づいて、本実施の形態に於ける加工順序決定方法を記載する。尚、図3に示す各装置S301,S302,S303,S304は、それぞれの機能を呈する回路としてハードウェア的に実現されても良いが、マイクロコンピュータ又はDSP等によってソフトウェア的に実現されても良い。以下の記載に於いては、例えば図1のレーザ加工機の動作を制御する制御装置(例えば、後述する図18の制御装置S1801を参照。)がその内部に有するマイクロコンピュータに搭載されているプログラムの実行によって、図1のレーザ加工機が加工対象106に対して加工する際の加工順序が決定される。その意味に於いては、図3は、図1のレーザ加工機が加工対象106の各穴位置を加工する順序を決定・制御するプログラムの各処理機能(図3の各装置に該当。)を示すフローチャートに該当しているとも言える。
【0022】
穴位置データは、LAN等のネットワーク、又は、USBメモリー等の情報機器媒体を通じて、密集格子点要素抽出装置S301に入力される。穴位置データは、ガルバノ範囲内の(x軸方向,y軸方向)絶対位置等で表されているものとする。ここで、加工対象106上の位置は、適宜定義されたx軸座標及びy軸座標の2次元で表現されるものとする。但し、穴位置データは相対位置等で表されていても良く、加工対象106上の位置表現方法も、x軸座標及びy軸座標の2次元表現に限定されるものではなく、本発明は入力データの形式に限定されるものではない。
【0023】
加工順序決定用パラメータは、蓄熱の影響を回避するために、図3に示されている各装置S301〜S304によって適宜用いられるものである。尚、以下の記載に於いて用いるパラメータ及び/又は順序決定方式は、個別に指定されても良いし、或いは、予めテーブル形式で用意された何種類かのパラメータセットによって指定されても良い。
【0024】
密集格子点要素抽出装置S301は、入力された穴位置データより、蓄熱の影響が大きくなる密集格子点の要素である穴群(穴位置群)を抽出し、抽出された穴群をそれ以外の穴群から分離する。密集格子点要素の抽出は、以下の様に行われる。
【0025】
密集格子点要素抽出装置S301は、全ての穴位置(以降の記載では、「点」と言う。)に於いて、或る点よりx軸方向及びy軸方向の両方に関して一定距離以内に他の点が存在する場合には、当該点を密集格子点要素の点として抽出する。例えば、点i,j,kの座標がそれぞれ(0,0),(d1,0),(0,d2)であるとし、d1及びd2の絶対値が基準距離dよりも小さい場合には、密集格子点要素抽出装置S301は、座標(0,0)の点iを、密集格子点の要素として抽出する。ここでは、基準距離dが、同装置S301により用いられる加工順序決定用パラメータに該当する。
【0026】
このとき、x軸方向(y軸方向)は厳密に一致している必要性は無く、多少のマージンを取っても良い。例えば、点i,j,kの座標がそれぞれ(0,0),(d1,e1),(e2,d2)であるとし、d1及びd2の絶対値が基準距離dよりも小さく、且つ、e1及びe2が基準距離eよりも小さい場合には、密集格子点要素抽出装置S301は、座標(0,0)の点iを、密集格子点の要素として抽出する。このとき、基準距離eは、半導体のサイズ規格によって決まる最小の穴間距離の数分の1程度が良い。
【0027】
又、基準距離d及びeの各々の値がx軸方向及びy軸方向に関して異なっていて、或る点iからx軸方向(y軸方向)に関して基準距離da以内に他の点が存在しており、もう一方のy軸方向(x軸方向)に関しても距離db(>da)以内に他の点が存在する場合には、密集格子点要素抽出装置S301は、当該点iを、密集格子点要素として抽出することとしても良い。
【0028】
又は、密集格子点要素抽出装置S301は、単純に密度を利用して密集格子点要素を抽出しても良い。例えば、或る点iから半径dの円領域以内に他の点がh個以上存在するときには、密集格子点要素抽出装置S301は、当該点iを密集格子点要素として抽出する。又は、或る点iから半径d1の円領域以内に他の点がh1個以上存在し且つ或る点iから半径d2の円領域以内に他の点がh2個以上存在する場合に、密集格子点要素抽出装置S301は、当該点iを密集格子点要素として抽出する様に、基準となる距離を何段階かに分けても良い。
【0029】
密集格子点要素抽出装置S301は,例えば、図2の穴配置から図4に示す様な点群を抽出する。
【0030】
次に、図3の格子点領域分配装置S302は、密集格子点要素抽出装置S301により抽出された点群を、一定の規則に従って、1つ以上の集合に分ける。
【0031】
先ず,同装置S302は、抽出された点群をx座標昇順でソートする。x座標が同一の点群に対しては、同装置S302は、y座標昇順でソートする。そして、同装置S302は、図5に示す様に、x座標同一の点群を一つの列とする。その上で、同装置S302は、図6に示す様に、各列の中で点間距離が同一の点群を一つの組とする。最後に、同装置S302は、図7に示す様に、組内の点間距離が同一(図上でy軸方向)で、組同士の距離も同一(図上でx軸方向)であり、且つ、組内の点でy軸方向最小の座標とy軸方向最大の座標とが等しい組同士を、一つの領域としてまとめる。
【0032】
これらの処理によって、各領域は、x軸方向及びy軸方向の点間距離が同一の長方形状の格子点群になる。
【0033】
このとき、格子点領域分配装置S302は、マージンの範囲が各組内の点間距離よりも小さい範囲内であれば、y軸方向の最小座標とy軸方向の最大座標とにマージンを取って一つの領域にまとめても良い。この場合のマージンは、同装置S302により用いられる加工順序決定用パラメータに該当する。
【0034】
又は、格子点領域分配装置S302は、図8に示す様に、組を領域に分ける際にy軸方向の最小座標を大きい方に合わせ、y軸方向の最大座標を小さい方に合わせることとしても良い。
【0035】
又は、格子点領域分配装置S302は、x軸方向とy軸方向とを入れ替えて一連の作業を行い、どちらか一方の好ましい領域分けを選択し、或いは、作成された両方の領域分けから順次に好ましい領域を選択していっても良い。その際、格子点領域分配装置S302は、選択すべき好ましい領域として、一つの領域内に含まれる点の数が多いもの、又は作成される領域の数が少ないもの、又はx軸方向の点数とy軸方向の点数とが近いものを、選ぶと良い。
【0036】
図3の格子点内順序決定装置S303は、格子点領域分配装置S302によって分けられた各格子点領域内に於ける加工順序を決定する。その際、同装置S303は、各格子点領域内での熱の放散が良く成る様に、各格子点領域の加工順序を決定する。その様な格子点領域内の熱の放散が良く成る、幾つかの採り得る加工順序決定方法の何れを採用するかを指示する指令が、同装置S303により用いられる加工順序決定用パラメータに該当する。
【0037】
例えば、ある格子点領域内の加工点が、y軸方向にn個の点が並び、x軸方向にm個の点が並んで成る(n×m)個の格子点状に配置されているものとする。
【0038】
若しn≧mのときには、格子点内順序決定装置S303は、図9(a)に示す様に、y軸方向昇順に、
【0039】
【数1】
【0040】
で与えられる行目、及び、x軸方向昇順に、
【0041】
【数2】
【0042】
で与えられる列目の点を始点として穴を開ける加工を始め、上記始点が含まれる列内をy軸正方向に上記始点を含めて(n−m+2)点分の加工を行うという加工順序を決定する。ここで、
【0043】
【数3】
【0044】
で示される記号は実数xの床関数であり、実数xを越えない最大の整数を出力する。その後は、格子点内順序決定装置S303は、格子点領域内の加工済みの点を囲う様に、時計周りに加工順序を決める。
【0045】
若しm>nのときには、格子点内順序決定装置S303は、図9(b)に示す様に、y軸方向昇順に、
【0046】
【数4】
【0047】
で与えられる行目、及び、x軸方向昇順に、
【0048】
【数5】
【0049】
で与えられる列目の点を始点として加工を始め、上記始点が含まれる列内をx軸正方向に上記始点を含めて(m−n+2)点分の加工を行うと言う加工順序を決定する。その後は、格子点内順序決定装置S303は、格子点領域内の加工済みの点を囲う様に、反時計周りに加工順序を決める。
【0050】
この様に加工順序を決定することによって、熱は中心から外側に向って放散されながら各格子点領域内の点は加工されるので、加工不良を引き起こす蓄熱を抑えることが出来る。
【0051】
その他の加工順序決定方法としては、次の様な方法が挙げられる。
【0052】
例えば、行単位若しくは列単位で各格子点領域内の点の加工を行うことで、中心から外側に向って1次元方向に熱を放散する方法がある。
【0053】
若しn≧mのときには、格子点内順序決定装置S303は、図10(a)に示す様に、x軸方向昇順に、
【0054】
【数6】
【0055】
で与えられる列目から加工を始め、格子点領域内の加工済みの列を囲う様にx軸方向の正負均等の加工を行う加工順序を決定する。
【0056】
逆にm>nのときには、格子点内順序決定装置S303は、図10(b)に示す様に、y軸方向昇順に、
【0057】
【数7】
【0058】
で与えられる行目から加工を始め、格子点領域内の加工済みの行を囲う様にy軸方向の正負均等の加工を行う加工順序を決定する。
【0059】
尚、今回の例では、行方向又は列方向の内で長手となる方向に関して加工を行ったが、逆に短手方向で加工を行っても良い。
【0060】
或いは、格子点内順序決定装置S303は、一定距離以内の列(行)を連続して加工しない様に順序付けしても良く、この順序付けを上記の領域内加工順序決定方法と組み合わせることとしても良い。
【0061】
或いは、格子点内順序決定装置S303は、一定距離以内の点を連続して加工しない様に順序付けしても良く、この順序付けを上記の領域内加工順序決定方法と組み合わせることとしても良い。
【0062】
図3の格子点領域及び格子点外順序決定装置S304は、格子点内順序決定装置S303によって加工順序が決定された(一般に複数の)格子点領域を加工する順番と、密集格子点要素抽出装置S301によって密集格子点要素としては抽出されなかった点(以下「単独点」と言う。)群を加工する順番とを、併せて決定する。その際、単独点に対する加工に関しては、加工速度を重視した加工順序が採用される。
【0063】
これらの加工順番の決定には、トラベリングセールスマン問題(以下「TSP」と言う。)の解法を利用することが可能である。ここで、TSPとは、グラフ問題の一種であり、複数の頂点と頂点間を移動するコストが与えられたときに、全ての頂点を一度ずつ通過して最初の頂点に戻ってくる際に合計のコストが最小となる移動順序を求める問題である。
【0064】
加工時間は点間を繋ぐ経路の合計距離に関して単調増加するので、特に蓄熱の影響を考慮していない状況の下では、加工時間短縮の為に点間距離をコストとしたTSP問題の解法が加工順序決定で広く用いられている。
【0065】
TSPの解法を利用した加工順序の決定方法としては、次の様な方法を採用出来る。
【0066】
即ち、各格子点領域の中心座標が当該格子点領域の代表点に設定され、各代表点と各単独点との集合に対してTSP問題の解法が施される。或る代表点が加工順序として選ばれたときには、格子点領域及び格子点外順序決定装置S304は、当該代表点に対応する格子点領域に対して格子点内順序決定装置S303によって決められた加工順序を適用した後に、次の点に移ることとする。
【0067】
又は、各格子点領域を代表する点として、或る格子点領域の外の点から当該格子点領域を代表する点に移動する際には、当該格子点領域内の加工順序に於いて始点となる点を用いる一方で、或る格子点領域を代表する点から当該格子点領域の外の点に移動する際には、当該格子点領域内の加工順序に於いて終点となる点を用いる方法が、採用可能である。
【0068】
最終的に、格子点領域及び格子点外順序決定装置S304は、図11に示す様な加工順序を決定する。図11に於いて、参照記号Sは加工の始点を表し、参照記号Eは加工の終点を表す。そして、同装置S304によって決定された加工順序を与える出力信号は、レーザ加工機の制御装置(図示せず。)又は外部計算機に送信され、然るべき手段によって加工経路を表示する処理等が行われることにより、作業者が加工経路の確認を行うことが出来る様に構成される。そして、必要であれば、作業者による加工経路の修正が行われ、図1に示すレーザ加工機が、その制御装置による制御の下で、最終的に決定された加工順序に従って穴あけの加工を実施する。
【0069】
本実施の形態によれば、加工対象106に散在する密集格子点の要素のみを抽出し、密集格子点の要素に対しては熱の放散が良好となる加工順序(1次元的に又は2次元的に各格子点領域の中心から外側に向けて熱が放散される順序。)で、密集格子点以外の点に対しては従来の方法で決定した加工順序で、レーザ加工機が加工対象106に対して加工を行うこととしているので、加工時間の延長を抑えながら蓄熱による加工不良を防ぐ効果が得られる。従って、加工機の加工時間ないしは実働時間を低減することが出来るので、加工機に於いて消費される電力を低減化(省エネルギー化)することが可能となる。
【0070】
(実施の形態2)
実施の形態1では、格子点領域及び格子点外順序決定装置S304は、格子点領域と単独点との加工順序をまとめてTSPの解法で求めたが、格子点領域の加工順序の決定方法と単独点の加工順序の決定方法とを分けても良い。
【0071】
例えば、図3の格子点領域及び格子点外順序決定装置S304は、蓄熱の影響により加工不良が発生し易い密集格子点領域の加工を、単独点の加工よりも先に終わらせる加工順序に設定することで、単独点の加工による蓄熱の影響を回避することが出来、蓄熱の影響による加工不良を抑える効果が増す。
【0072】
具体的には、格子点領域及び格子点外順序決定装置S304は、実施の形態1と同様に、各格子点領域の代表点を用いてTSPの解法を利用する方法等によって、各格子点領域の加工順序を決定する。格子点領域の加工順序が決定したら、同装置S304は、その加工順序の後に、TSPの解法を利用して決定した単独点の加工順序を繋ぐことにより、加工対象106上の全ての点の加工順序を定める。
【0073】
このとき、同装置S304が、近接する格子点領域同士は連続して加工しない様に各格子点領域の加工順序を決定するときには、蓄熱の影響による加工不良を更に効果的に抑えることが出来る。その際の近接判定は、例えば、x軸方向の一番近い距離とy軸方向の一番近い距離との何れか短い方の距離を基準距離と比較する方法等により実行される。
【0074】
又、同装置S304が、近接判定が出された格子点領域を、加工順序が決まっていない格子点領域だけになるまで加工順序決定の候補から外すときには、加工不良を更に一層効果的に抑えることが出来る。
【0075】
又、加工対象106の一定領域内に於いて近接判定が出る格子点領域が多数配置されており、結果的に連続して加工が行われるときには、同装置S304が、一部の格子点領域を単独点の加工後に加工する様な加工順序に決定する。この様な加工順序決定は、蓄熱の影響による加工不良を更に一層抑えるのに効果的である。
【0076】
本実施の形態によれば、図12に示す様な加工順序で加工が行われることになるので、各格子点領域がその他の格子点領域の加工及び単独点の加工による蓄熱の影響を受けることを抑えることが出来、本実施の形態は蓄熱に起因した加工不良の発生を抑えるのに効果的である。
【0077】
(実施の形態3)
実施の形態1では、図3の格子点領域分配装置S302は、密集格子点要素抽出装置S301により抽出された点群を、全ての行又は列に含まれる点数が等しい長方形状の格子点領域に分けていたが、各点から基準距離以内の点を全て繋げたときに繋がっている全点を一つの格子領域に設定しても良い。即ち、格子領域内の点同士は、基準距離以内の点を辿ることで、全て繋がる。
【0078】
そして、図3の格子点内順序決定装置S303は、次の様に各格子点領域内の点群の加工順序を決定する。先ず、同装置S303は、格子点領域内の中心点を、次の様に求める。即ち、同装置S303は、各格子点領域内に含まれる点のx座標値の合計とy座標値の合計とをそれぞれ当該格子点領域内に含まれる点数で除算して重心を求め、この重心を当該格子点領域の中心点に決定する。
【0079】
そして、同装置S303は、各格子点領域内の点群を、当該格子点領域の中心点からの距離が近い点から順次に加工していく様に、加工順序を決定する。但し、中心点からの距離が同じ点群に関しては、同装置S303は、y座標が重心以上の点をx座標昇順で加工し、その後にy座標が重心より小さい点をx座標降順で加工すると言う加工順序に決定する。
【0080】
例えば、或る格子点領域内の点群の加工順序は、図13に示される様になる。図13の黒点は中心点を表し、数字は各点の加工順序を表す。
【0081】
本実施の形態によれば、一つの行又は列に含まれる点の数が異なっていても、それらの点群は一つの格子点領域として扱われるため、各格子点領域に含まれる点数が増加し、その結果として、加工時間の短縮化と、良好に熱が放散される加工順序が決定されると言う効果が得られる。
【0082】
(実施の形態4)
実施の形態3に於いては、各格子点領域の重心位置が当該格子点領域の中心点に設定されていたが、重心位置に最も近い加工対象の点が中心点として設定されても良い。蓋し、半導体素子のサイズ規格から、点間距離は単位長さ(例えば50μm)の自然数倍であることが多いので、加工対象の点と一致する様に中心点が設定されると、中心点から同距離になる点群が増える結果、熱の放散が良好で且つ加工時間が短い加工順序を設定し易くなる。
【0083】
格子点領域内の点群の加工順序の決定方法としては、実施の形態3で既述した決定方法以外に、次の様な決定方法が採用可能であり、その決定方法を採用するならば、加工時間の更なる短縮化が見込まれる。
【0084】
即ち、或る点の、中心点からのx座標方向の距離をΔxと表し、且つ、y座標方向の距離をΔyと表して、図3の格子点内順序決定装置S303は、加算値(Δx+Δy)が小さい点から順次に加工していくことに決定する。その際に、加算値(Δx+Δy)が同じ値となる点群に関しては、同装置S303は、先ず、中心点のx座標の値よりも小さいx座標の値を有する各点をy座標昇順で加工し、その後に、中心点のx座標の値以上のx座標の値を有する各点をy座標降順で加工する様に、加工順序を決定する。その結果、例えば、加工順序は、図14に示される様になる。図14に於いて、数字は加工順序を表し、中心点は加工順序1の点である。
【0085】
或いは、図3の格子点内順序決定装置S303は、次の様な方法により、格子点領域内の点群の加工順序を決定しても良い。
【0086】
即ち、同装置S303は、或る点の、中心点からのx座標方向の距離をΔxとして表し、y座標方向の距離をΔyと表すとき、Max{Δx,Δy}の値が小さい点から順次に加工していくことに決定する。その際に、Max{Δx,Δy}の値が同じ点群に関しては、同装置S303は、先ず、x座標の値が中心点のx座標値よりも小さく、且つ、y座標の値が中止点のy座標値以上の点を、x座標昇順及びy座標昇順で加工し、その後に、x座標値が中心点のx座標値以上で、且つ、y座標値が中止点の座標値以上の点を、x座標昇順及びy座標降順で加工し、その後に、x座標値が中心点のx座標値以上で、且つ、y座標値が中止点のy座標値よりも小さい点を、x座標降順及びy座標降順で加工し、その後に、x座標値が中心点のx座標値よりも小さく、且つ、y座標値が中止点のy座標値よりも小さい点を、x座標降順及びy座標昇順で加工すると言う加工順序を決定する。
【0087】
その場合の加工順序は、例えば図15に示される様になる。図15に於いて、数字は加工順序を表し、中心点は加工順序1の点である。
【0088】
本実施の形態によれば、格子点領域内で中心点から同距離になる点群が増加するため、図1のレーザ光102の照射点が最短距離で移動することになる点群が多い加工順序の設定が容易となり、熱の放散が良好で且つ加工時間が延長されるのを更に抑える効果が得られる。
【0089】
(実施の形態5)
実施の形態1〜4の各々に於いては、密集格子点要素抽出装置S301で抽出された点群の全点が、図3の格子点領域分配装置S302によって何れかの格子点領域に含まれ、それ以降の装置の処理に於いては単独点とは異なる規則で加工順序が決定されていた。しかし、格子点領域分配装置S302に於いて一つの格子点領域に含まれる要素が少ない場合には(例えば数個程度の場合)、同装置S302は、その格子点領域に含まれる点群を単独点に戻す処理を行っても良い。
【0090】
本実施の形態によれば、点数が少なく蓄熱の影響が小さい格子点領域に含まれる点群が単独点として扱われるため、TSP問題の解法が適用される点数が増えたり、格子点領域の近接判定が出力される頻度が減ったりするので、結果的に加工時間が短縮される効果がある。
【0091】
(実施の形態6)
実施の形態1〜5の各々に於いては、図3の格子点領域及び格子点外順序決定装置S304が出力した加工順序データを、作業者が評価し、必要であれば加工順序決定用パラメータを作業者が変更して、再度、加工順序データを出力させることを想定していた。しかしながら、シミュレーション及び検査装置を用いて自動的に加工順序決定用パラメータを調整することとしても良い。本実施の形態は、この改良点の実現化に関する。
【0092】
図16は、本実施の形態に於ける加工順序決定方法を模式的に示す機能ブロック図に該当する装置構成図である。既述した実施の形態1〜5(図3)と比較して、蓄熱量計算装置S1601及びパラメータ変更装置S1602の各機能部が、ソフトウェアのプログラムに追加されている。勿論、これらの装置S1601,S1602もハードウェア的に実現可能な構成要素ではあるが、本例では、マイクロコンピュータ等によってソフトウェア的に実現される構成要素である。
【0093】
図16に於いて、最初に格子点領域及び格子点外順序決定装置S304が加工順序データを出力する迄の一連の処理工程は、実施の形態1で既述した内容と同様であるので(但し、最初の加工順序決定に用いられる各加工順序決定用パラメータとしては、変更可能な加工順序決定用初期パラメータが用いられる。)、実施の形態1でその動作を記載した各装置S301〜S304に於ける処理の記載は、ここでは割愛される。
【0094】
図16の蓄熱量計算装置S1601は、1)図1のレーザ光102の出力及び発振周波数、ガルバノミラー103a,103bの移動速度、及び加工対象106の素材と言う様な加工パラメータと、2)格子点領域及び格子点外順序決定装置S304が出力した加工順序のデータとから、当該加工順序に従って図1のレーザ加工機が加工対象106の穴あけ加工を行うシミュレーションを実行した際に、加工対象106上の加工直前の各加工点(レーザ光10の照射点)の温度、並びに、fθレンズ104及び保護ウインドウ105をレーザ光102が通過する位置(レーザ光10が正に加工しようとする加工点に到達する迄に通過した光路上の通過点)の温度を計算すると共に、計算された各点の温度と予め定められた温度とを順次に比較処理して両者の上下関係を判断する。
【0095】
若し、蓄熱量計算装置S1601が計算した各加工点の温度が対応する予め定められた温度以下である場合及び同装置S1601が計算したレーザ光10の各通過点の温度が対応する予め定められた温度以下である場合にのみ、蓄熱量計算装置S1601は、格子点領域及び格子点外順序決定装置S304が作成した上記加工順序データを出力する。
【0096】
これに対して、予め定められた温度よりも蓄熱量計算装置S1601が計算した温度の方が高くなる点(以下「過蓄熱点」と言う。)が存在する場合には、蓄熱量計算装置S1601からの指令信号を受信して、図16のパラメータ変更装置S1602は、各装置S301〜S303の何れかに於いて用いられる少なくとも一つの加工順序決定用パラメータを変更する。その際の加工順序決定用パラメータ変更の処理は、例えば、次の様な方針の下に行われる。
【0097】
若し過蓄熱点が単独点に存在する場合、つまり密集格子点要素の抽出に漏れがあった場合には、パラメータ変更装置S1602は、密集格子点要素抽出装置S301に於ける距離判定基準を長く設定する。若し、格子点領域内に過蓄熱点がある場合には、パラメータ変更装置S1602は、1)格子点内順序決定装置S303に於いて格子点領域内の点群の加工順序を決定する際に前記した熱の放散が良好となる実施の形態(決定方法)を適宜選択する様に、加工順序決定用パラメータを変更するか、2)格子点領域及び格子点外順序決定装置S303に於いて格子点領域の近接判定の基準距離を長くなる様に変更するか、或いは、3)当該格子点領域の加工順序を単独点加工の後に変更する等の方策を、採り得る。又、レーザ光10の各通過点の内に過蓄熱点が存在する場合にも、パラメータ変更装置S1602は、適宜に加工順序決定用パラメータを変更する処理を行う。或いは、作業者ないしは設計者が、過蓄熱点と判定された光学部品(本例では、fθレンズ104及び/又は保護ウインドウ105)の設定変更ないしは設計変更を行うことで対処することも可能である。
【0098】
加工順序決定用パラメータの変更の結果、蓄熱量計算装置S1601は、格子点領域及び格子点外順序決定装置S304が改めて作成・出力した加工順序データによる加工のシミュレーションを再度実行する。そして、蓄熱量計算装置S1601は、上記加工シミュレーションを通じて計算した各点の温度が予め定められた温度以下となっていることを検出した場合にのみ、蓄熱量計算装置S1601は、格子点領域及び格子点外順序決定装置S304が改めて作成した加工順序データを出力する。他方、蓄熱量計算装置S1601が過蓄熱点の存在を再び検出した場合には、再度、パラメータ変更装置S1602によるパラメータの変更が実行されて、各装置S301〜S304の動作が繰返される。
【0099】
本実施の形態によれば、加工不良が発生する温度条件が上記の予め定められた温度として入力されるならば、その温度条件を満足し且つ加工時間が出来るだけ延長されない様に調整された加工順序データが蓄熱量計算装置S1601より出力されるため、作業者による加工順序決定用のパラメータ調整の手間を省くことが出来ると言う効果がある。
【0100】
(実施の形態7)
実施の形態6に於いては、蓄熱量計算装置S1607により過蓄熱点の存在が検出された場合には、パラメータ変更装置S1602によって加工順序決定用パラメータが変更されて、各装置S301〜S304は再度の加工順序を作成しているが、蓄熱量計算装置S1601が格子点領域及び格子点外順序決定装置S304の順序決定過程を看視して直接操作を加えることとしても良い。
【0101】
図17は、本実施の形態に係る加工順序決定方法を模式的に示す機能ブロック図に該当する装置構成図である。
【0102】
図17に於いて、蓄熱量計算装置S1601は、格子点領域及び格子点外順序決定装置S304が加工順序を加工開始点から順番に決定していく過程を看視する。つまり、同装置S1601は、加工順序が一つ(格子点領域又は単独点)決定される度に、追加された格子点領域内の点群又は単独点の蓄熱を計算し、既述した比較処理を実行する。
【0103】
若し追加された格子点領域内の点群中に過蓄熱点が存在することが蓄熱量計算装置S1601の処理により検出された場合には、同装置S1601から出力信号の受信に応じて、格子点領域及び格子点外順序決定装置S304は、当該格子点領域の加工順序への追加を破棄すると共に、当該格子点領域に対して近接判定を出力する。即ち、同装置S304は、当該格子点領域の加工順序を後ろ側に移す処理を実行する。この処理は、当該格子点領域の順番を単独点の加工後に移すことも含む。
【0104】
又は、単独点に過蓄熱点が存在することが検出された場合には、実施の形態6で既述した点と同様に密集格子点要素の抽出に漏れが在る為、蓄熱量計算装置S1601は、パラメータ変更装置S1602に対して、密集格子点要素抽出装置S301に於いて用いられる加工順序決定用パラメータの変更を指示する。この指示を受けて、パラメータ変更装置S1602は、指示された通りのパラメータ変更処理を実行する。
【0105】
或いは、追加された格子点領域内の点群中に過蓄熱点が存在する場合に於いて、格子点領域及び格子点外順序決定装置S304は、上記の当該格子点領域の加工順序への追加を破棄しておいた上で、上記の近接判定処理を全て蓄熱量計算装置S1601に委ねることにして、格子点領域の近接判定を内部で処理しないこととしても良い。この場合、同装置S304は、破棄した追加対象であった格子点領域の代わりとなる他の格子点領域又は単独点を追加の候補として決定して良いか否かを蓄熱量計算装置S1601に問い合わせることとなり、蓄熱量計算装置S1601は、その保有する温度データに基づいて、その追加候補の許否を判断する。そして、蓄熱量計算装置S1601により追加の候補が許可されたときには、格子点領域及び格子点外順序決定装置S304は、その追加の候補を加工順序へ追加処理する。
【0106】
尚、蓄熱量計算装置S1601によって或る格子点領域内の点群中に過蓄熱点が存在すると判定されない限り、格子点領域の加工順序の決定に制限は存在しない。
【0107】
本実施の形態によれば、蓄熱量を随時計算しながら格子点領域及び単独点の順序を決定するため,蓄熱が問題にならない格子点領域の近接判定を無視することが出来るため、加工時間を更に抑え得ると言う効果がある。又、加工順序決定までに要する工数を減らすことが出来ると言う効果もある。
【0108】
(実施の形態8)
実施の形態6及び7に於いては、加工対象106の温度特性が正確に判っていない場合には、加工順序データ生成後のレーザ加工機による試し加工の品質チェックを作業者が行い、その結果、設定された温度条件が不適切である場合には適宜調整が必要であったが、検査装置を用いて当該作業を代替することとしても良い。
【0109】
図18は、本実施の形態に係る加工順序決定方法を模式的に示す機能ブロック図を示す構成図である。実施の形態1〜5(図3)と比較して、本実施の形態では、実施の形態6に於いて記載したパラメータ変更装置S1602と、レーザ加工機制御装置S1801と、加工結果検査装置S1802とが、追加されている。
【0110】
図18のレーザ加工機制御装置S1801は、レーザ光102の出力及び発振周波数と言う様な加工パラメータ、及び、加工順序に基づいて、図1のレーザ加工機を動作させてその加工の実施を制御する機器であり、既述した各実施の形態1〜7に於いても加工時には使用されていたが、陽には示されていなかった。
【0111】
加工結果検査装置S1802は、試し加工終了後の加工対象106をカメラ等の撮像装置により撮影・計測した上で、加工した穴の位置と目標位置との比較、及び、加工された穴の形と理想的な穴の形とを比較する処理等を実行して、蓄熱の影響による加工不良が起こっているか否かを検査する。
【0112】
そして、加工結果検査装置S1802が、加工不良が加工対象106に起こっていることを検出したときには、実施の形態6で既述した場合と同様に、パラメータ変更装置S1602は、加工順序決定用のパラメータを熱の放散が良好となる様に変更して、各装置S301〜S304は、再度、加工順序のデータを生成する。
【0113】
これに対して、加工結果検査装置S1802が加工対象106上の加工不良を確認することが出来なかった場合には、装置S304が出力した当該加工順序データに従って、図1の加工機は装置S1801の制御の下で本加工を行う。
【0114】
本実施の形態によれば、試し加工を行いながら加工順序決定用のパラメータの調整を行うため、加工対象106の温度特性が不明瞭な場合であっても、加工不良が発生しない程度に熱の放散が良好で且つ加工時間が出来るだけ延長されない様に調整された加工順序を決定出来るため、作業者による加工順序決定用のパラメータ調整の手間を省く効果がある。
【0115】
(実施の形態9)
実施の形態8に於いては、蓄熱のシミュレーションを行っていなかったが、実施の形態6又は7に記載の蓄熱量計算装置S1601を、実施の形態8に於ける図18の装置に追加しても良い。
【0116】
図19は、本実施の形態に係る加工順序決定方式を模式的に示す機能ブロック図に該当する装置構成図である。
【0117】
加工対象106の温度特性が正確ではなかったとしても、蓄熱量計算装置S1601は、蓄熱し易い位置を把握し、大雑把な温度条件を導出することは出来るので、蓄熱量計算装置S1601は、蓄熱の影響が顕著に現れる様な加工順序を排除することが出来る。
【0118】
本実施の形態によれば、蓄熱の影響が顕著に現れる様な加工順序は蓄熱量計算装置S1601に於いて排除されるので、加工対象106の温度特性が不明瞭な場合であっても、試し加工を行う回数を減らすことが出来ると言う効果がある。
【0119】
(実施の形態10)
加工結果検査装置S1802のカメラ等のハードウェアを除いた各装置の機能の一部又は全てを実現する処理工程を、外部の計算機(パーソナルコンピュータ等)上に於いて実現しても良い。即ち、外部の計算機内に、実施の形態1〜9の各々で記載した加工順序決定処理を行うプログラムを搭載する様にしても良い。この場合、外部の計算機内の該当機能部をも含めて、「加工装置」の構成は定義される。
【0120】
斯かる場合には、導入・保守に要するコストを低減することが出来ると言う効果が得られる。
【0121】
尚、実施の形態1〜9の各々に於いて、密集格子点要素抽出装置S301、格子点領域分配装置S302、格子点内順序決定装置S303、格子点領域及び格子点外順序決定装置S304、蓄熱量計算装置S1601、パラメータ変更装置S1602、及び、加工結果検査装置S1802を、それぞれ別個にハードウェア装置として設置することとしても良いことは、既述した通りである。
【0122】
(付記)
以上、本発明の実施の形態を詳細に開示し記述したが、以上の記述は本発明の適用可能な局面を例示したものであって、本発明はこれに限定されるものではない。即ち、記述した局面に対する様々な修正や変形例を、この発明の範囲から逸脱することの無い範囲内で考えることが可能である。
【符号の説明】
【0123】
101 レーザ光源、102 レーザ光、106 加工対象、S301 密集格子点要素抽出装置、S302 格子点領域分配装置、S303 格子点内順序決定装置、S304 格子点領域及び格子点外順序決定装置、S1601 蓄熱量計算装置、S1602 パラメータ変更装置、S1802 加工結果検査装置。
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばレーザ光を用いて所定のシートに穴をあける加工技術に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ光の照射による穴あけ加工に於いては、単独加工では良好な穴が加工可能である加工パラメータであっても、高密度に配置された穴群を連続で加工した場合には、蓄熱の影響により、加工穴の変形又は加工位置ズレが起こる。
【0003】
これを防ぐために、高密度の格子点状に配置された穴群に対して、中心から外側に向けて渦巻状に加工して熱を放散しながら加工する方法(例えば特許文献1を参照。)、又は、連続して加工される穴間距離を長く設定する方法(例えば特許文献2を参照。)が、提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−35977号公報
【特許文献2】特開2002−224874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、パソコン又は携帯電話等のマザーボードの様な加工対象に於いては、加工穴が粗密入り乱れて配置されており、蓄熱の影響で加工不良が発生する配置場所は限られる。
【0006】
この様な配置に対して、加工対象に含まれる全ての加工穴を高密度の格子点状に配置された点群と捉えて、加工対象の中心から外側に向って渦巻き状に加工するときには、熱の放散は良好なために加工不良は抑えられるが、加工時間が不必要に延びると言う問題点が新たに生じる。同様に、連続して穴をあける場合の最短穴間距離に制限を与える方法に於いても、加工時間が不必要に延びると言う問題点がある。
【0007】
又、作業者が、蓄熱の影響が大きい領域又は穴群を指定して、加工順序を上記の渦巻き状にする様に指令したり、或いは、作業者が手作業で加工順序を入れ替えたりすることは、数万個にもなる穴数を考えると、作業者の手間が多すぎて問題がある。
【0008】
この発明は斯かる問題点を解決するために成されたものであり、その目的は、全体の加工時間を不必要に延長することなく、蓄熱による加工不良を回避可能な加工装置及び加工方法ないしは加工装置用プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の主題は、レーザ光を加工対象に照射することで前記加工対象に穴をあける加工装置であって、穴位置データから密集格子点の要素となる穴位置を抽出する密集格子点要素抽出部と、抽出された穴位置を一定の規則に従って集めて1つ以上の格子点領域に分ける格子点領域分配部と、前記1つ以上の格子点領域毎に、熱が1次元的に又は2次元的に当該格子点領域の中心から外側へ向かって放散される様に、当該格子点領域内の穴位置の加工順序を決定する格子点内順序決定部と、前記格子点内順序決定部によって各格子点領域内の穴位置の加工順序が決定された前記1つ以上の格子点領域、及び、前記密集格子点要素抽出部によって前記密集格子点要素としては抽出されなかった穴位置、の加工順序を、トラベリングセールスマン問題の解決方法を利用して決定する格子点領域及び格子点外順序決定部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の主題によれば、密集格子点要素抽出部と、格子点領域分配部と、格子点内順序決定部との具備により、蓄熱の影響が顕著となる穴位置群に対しては熱の放散が良好となる加工順序が取られ、格子点領域及び格子点外順序決定部の具備により、密集格子点群の要素以外の穴位置群に対しては加工速度を重視した加工順序が取られるので、粗密入り混じって不規則に配置された加工対象の穴位置群に対しても、加工時間を不必要に延ばすことなく、蓄熱の影響による加工不良を回避することが出来る。
【0011】
以下、この発明の様々な具体化を、添付図面を基に、その効果・利点と共に詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の各実施の形態に係るレーザ加工機全体の概略を示す図である。
【図2】加工対象上の穴配置の一例を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る加工順序決定装置の構成を示す図である。
【図4】密集格子点要素抽出装置により抽出された格子点領域を示す図である。
【図5】格子点領域分配装置による格子点要素の分配過程を示す図である。
【図6】格子点領域分配装置による格子点要素の分配過程を示す図である。
【図7】格子点領域分配装置による格子点要素の分配過程を示す図である。
【図8】格子点領域分配装置による格子点要素の分配過程を示す図である。
【図9】格子点内順序決定装置による格子点領域内の加工順序の一例を示す図である。
【図10】格子点内順序決定装置による格子点領域内の加工順序の一例を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態1に係る加工順序の一例を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態2に係る加工順序の一例を示す図である。
【図13】本発明の実施の形態3に係る格子点領域内の加工順序の一例を示す図である。
【図14】本発明の実施の形態4に係る格子点領域内の加工順序の一例を示す図である。
【図15】本発明の実施の形態4に係る格子点領域内の加工順序の一例を示す図である。
【図16】本発明の実施の形態6に係る加工順序決定装置の構成を示す図である。
【図17】本発明の実施の形態7に係る加工順序決定装置の構成を示す図である。
【図18】本発明の実施の形態8に係る加工順序決定装置の構成を示す図である。
【図19】本発明の実施の形態9に係る加工順序決定装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施の形態1)
この発明の本実施の形態に係る穿孔方法について、図面を参照して具体的に記載する。
【0014】
図1は、本実施の形態に係るレーザ加工機の全体構成を概略的に示す図である。尚、図1は、後述する、その他の全ての実施の形態に於いても援用される。
【0015】
図1に於いて、レーザ光源101から出射されたレーザ光102は、ガルバノミラー103a,103bによってその角度が調整され、fθレンズ104により集光された上で、保護ウインドウ105を通過後に、加工対象106を融解して穴をあける。ここで、保護ウインドウ105は、加工対象106を加工した際に生じる加工屑からfθレンズ104を保護するものである。加工対象106は、XYステージ107上に搭載されている。
【0016】
加工位置の調整は、XYステージ107と2枚のガルバノミラー103a,103bにより行われる。ガルバノミラー103a,103bは高速な移動・位置決めを行うことが可能ではあるが、fθレンズ104の大きさが限られるために、ガルバノミラー103a,103bによる調整可能範囲は、加工対象106の大きさ(例えば500mm角)に比して、小さい範囲(例えば50mm角)に制限される。それに対して、XYステージ107は、その移動速度は低速ではあるが、加工対象106を大きく動かすことが可能である。
【0017】
一般的な加工に於いては、加工対象106の穴群は、ガルバノミラー103a,103bによる調整可能な範囲の領域(以下「ガルバノ範囲」と言う。)によりグループ分けされ、各ガルバノ範囲内の穴群の加工は、XYステージ107を動かさずに、ガルバノミラー103a,103bによる位置調整のみで行われる。そして、一つのガルバノ範囲内の加工が全て終わったならば、XYステージ107の移動により、別のガルバノ範囲内の加工に工程が移る。
【0018】
但し、XYステージ107及びガルバノミラー103a,103bを同時に動かしながら加工対象106を加工する方法も知られている。
【0019】
本発明は、主に、ガルバノ範囲内の加工順序に関るものである。
【0020】
図2は、一つのガルバノ範囲内に配置された穴を模式的に示す図である。図2では、穴は粗密入り混じって配置されており、全体としては不規則に並んでいる。但し、高密度で穴が配置されている箇所に於いては、穴が格子点状に配置されている場合が多い。これは、穴をあけた加工対象106上にマウントされる半導体部品のサイズが規格で定められているために、高密度に半導体部品を並べた場合であっても、結果的には一定間隔の穴が配置されることとなるからである。
【0021】
図3は、本実施の形態に係る穴の加工順序を決定する装置の構成を示す図である。以下、図3に基づいて、本実施の形態に於ける加工順序決定方法を記載する。尚、図3に示す各装置S301,S302,S303,S304は、それぞれの機能を呈する回路としてハードウェア的に実現されても良いが、マイクロコンピュータ又はDSP等によってソフトウェア的に実現されても良い。以下の記載に於いては、例えば図1のレーザ加工機の動作を制御する制御装置(例えば、後述する図18の制御装置S1801を参照。)がその内部に有するマイクロコンピュータに搭載されているプログラムの実行によって、図1のレーザ加工機が加工対象106に対して加工する際の加工順序が決定される。その意味に於いては、図3は、図1のレーザ加工機が加工対象106の各穴位置を加工する順序を決定・制御するプログラムの各処理機能(図3の各装置に該当。)を示すフローチャートに該当しているとも言える。
【0022】
穴位置データは、LAN等のネットワーク、又は、USBメモリー等の情報機器媒体を通じて、密集格子点要素抽出装置S301に入力される。穴位置データは、ガルバノ範囲内の(x軸方向,y軸方向)絶対位置等で表されているものとする。ここで、加工対象106上の位置は、適宜定義されたx軸座標及びy軸座標の2次元で表現されるものとする。但し、穴位置データは相対位置等で表されていても良く、加工対象106上の位置表現方法も、x軸座標及びy軸座標の2次元表現に限定されるものではなく、本発明は入力データの形式に限定されるものではない。
【0023】
加工順序決定用パラメータは、蓄熱の影響を回避するために、図3に示されている各装置S301〜S304によって適宜用いられるものである。尚、以下の記載に於いて用いるパラメータ及び/又は順序決定方式は、個別に指定されても良いし、或いは、予めテーブル形式で用意された何種類かのパラメータセットによって指定されても良い。
【0024】
密集格子点要素抽出装置S301は、入力された穴位置データより、蓄熱の影響が大きくなる密集格子点の要素である穴群(穴位置群)を抽出し、抽出された穴群をそれ以外の穴群から分離する。密集格子点要素の抽出は、以下の様に行われる。
【0025】
密集格子点要素抽出装置S301は、全ての穴位置(以降の記載では、「点」と言う。)に於いて、或る点よりx軸方向及びy軸方向の両方に関して一定距離以内に他の点が存在する場合には、当該点を密集格子点要素の点として抽出する。例えば、点i,j,kの座標がそれぞれ(0,0),(d1,0),(0,d2)であるとし、d1及びd2の絶対値が基準距離dよりも小さい場合には、密集格子点要素抽出装置S301は、座標(0,0)の点iを、密集格子点の要素として抽出する。ここでは、基準距離dが、同装置S301により用いられる加工順序決定用パラメータに該当する。
【0026】
このとき、x軸方向(y軸方向)は厳密に一致している必要性は無く、多少のマージンを取っても良い。例えば、点i,j,kの座標がそれぞれ(0,0),(d1,e1),(e2,d2)であるとし、d1及びd2の絶対値が基準距離dよりも小さく、且つ、e1及びe2が基準距離eよりも小さい場合には、密集格子点要素抽出装置S301は、座標(0,0)の点iを、密集格子点の要素として抽出する。このとき、基準距離eは、半導体のサイズ規格によって決まる最小の穴間距離の数分の1程度が良い。
【0027】
又、基準距離d及びeの各々の値がx軸方向及びy軸方向に関して異なっていて、或る点iからx軸方向(y軸方向)に関して基準距離da以内に他の点が存在しており、もう一方のy軸方向(x軸方向)に関しても距離db(>da)以内に他の点が存在する場合には、密集格子点要素抽出装置S301は、当該点iを、密集格子点要素として抽出することとしても良い。
【0028】
又は、密集格子点要素抽出装置S301は、単純に密度を利用して密集格子点要素を抽出しても良い。例えば、或る点iから半径dの円領域以内に他の点がh個以上存在するときには、密集格子点要素抽出装置S301は、当該点iを密集格子点要素として抽出する。又は、或る点iから半径d1の円領域以内に他の点がh1個以上存在し且つ或る点iから半径d2の円領域以内に他の点がh2個以上存在する場合に、密集格子点要素抽出装置S301は、当該点iを密集格子点要素として抽出する様に、基準となる距離を何段階かに分けても良い。
【0029】
密集格子点要素抽出装置S301は,例えば、図2の穴配置から図4に示す様な点群を抽出する。
【0030】
次に、図3の格子点領域分配装置S302は、密集格子点要素抽出装置S301により抽出された点群を、一定の規則に従って、1つ以上の集合に分ける。
【0031】
先ず,同装置S302は、抽出された点群をx座標昇順でソートする。x座標が同一の点群に対しては、同装置S302は、y座標昇順でソートする。そして、同装置S302は、図5に示す様に、x座標同一の点群を一つの列とする。その上で、同装置S302は、図6に示す様に、各列の中で点間距離が同一の点群を一つの組とする。最後に、同装置S302は、図7に示す様に、組内の点間距離が同一(図上でy軸方向)で、組同士の距離も同一(図上でx軸方向)であり、且つ、組内の点でy軸方向最小の座標とy軸方向最大の座標とが等しい組同士を、一つの領域としてまとめる。
【0032】
これらの処理によって、各領域は、x軸方向及びy軸方向の点間距離が同一の長方形状の格子点群になる。
【0033】
このとき、格子点領域分配装置S302は、マージンの範囲が各組内の点間距離よりも小さい範囲内であれば、y軸方向の最小座標とy軸方向の最大座標とにマージンを取って一つの領域にまとめても良い。この場合のマージンは、同装置S302により用いられる加工順序決定用パラメータに該当する。
【0034】
又は、格子点領域分配装置S302は、図8に示す様に、組を領域に分ける際にy軸方向の最小座標を大きい方に合わせ、y軸方向の最大座標を小さい方に合わせることとしても良い。
【0035】
又は、格子点領域分配装置S302は、x軸方向とy軸方向とを入れ替えて一連の作業を行い、どちらか一方の好ましい領域分けを選択し、或いは、作成された両方の領域分けから順次に好ましい領域を選択していっても良い。その際、格子点領域分配装置S302は、選択すべき好ましい領域として、一つの領域内に含まれる点の数が多いもの、又は作成される領域の数が少ないもの、又はx軸方向の点数とy軸方向の点数とが近いものを、選ぶと良い。
【0036】
図3の格子点内順序決定装置S303は、格子点領域分配装置S302によって分けられた各格子点領域内に於ける加工順序を決定する。その際、同装置S303は、各格子点領域内での熱の放散が良く成る様に、各格子点領域の加工順序を決定する。その様な格子点領域内の熱の放散が良く成る、幾つかの採り得る加工順序決定方法の何れを採用するかを指示する指令が、同装置S303により用いられる加工順序決定用パラメータに該当する。
【0037】
例えば、ある格子点領域内の加工点が、y軸方向にn個の点が並び、x軸方向にm個の点が並んで成る(n×m)個の格子点状に配置されているものとする。
【0038】
若しn≧mのときには、格子点内順序決定装置S303は、図9(a)に示す様に、y軸方向昇順に、
【0039】
【数1】
【0040】
で与えられる行目、及び、x軸方向昇順に、
【0041】
【数2】
【0042】
で与えられる列目の点を始点として穴を開ける加工を始め、上記始点が含まれる列内をy軸正方向に上記始点を含めて(n−m+2)点分の加工を行うという加工順序を決定する。ここで、
【0043】
【数3】
【0044】
で示される記号は実数xの床関数であり、実数xを越えない最大の整数を出力する。その後は、格子点内順序決定装置S303は、格子点領域内の加工済みの点を囲う様に、時計周りに加工順序を決める。
【0045】
若しm>nのときには、格子点内順序決定装置S303は、図9(b)に示す様に、y軸方向昇順に、
【0046】
【数4】
【0047】
で与えられる行目、及び、x軸方向昇順に、
【0048】
【数5】
【0049】
で与えられる列目の点を始点として加工を始め、上記始点が含まれる列内をx軸正方向に上記始点を含めて(m−n+2)点分の加工を行うと言う加工順序を決定する。その後は、格子点内順序決定装置S303は、格子点領域内の加工済みの点を囲う様に、反時計周りに加工順序を決める。
【0050】
この様に加工順序を決定することによって、熱は中心から外側に向って放散されながら各格子点領域内の点は加工されるので、加工不良を引き起こす蓄熱を抑えることが出来る。
【0051】
その他の加工順序決定方法としては、次の様な方法が挙げられる。
【0052】
例えば、行単位若しくは列単位で各格子点領域内の点の加工を行うことで、中心から外側に向って1次元方向に熱を放散する方法がある。
【0053】
若しn≧mのときには、格子点内順序決定装置S303は、図10(a)に示す様に、x軸方向昇順に、
【0054】
【数6】
【0055】
で与えられる列目から加工を始め、格子点領域内の加工済みの列を囲う様にx軸方向の正負均等の加工を行う加工順序を決定する。
【0056】
逆にm>nのときには、格子点内順序決定装置S303は、図10(b)に示す様に、y軸方向昇順に、
【0057】
【数7】
【0058】
で与えられる行目から加工を始め、格子点領域内の加工済みの行を囲う様にy軸方向の正負均等の加工を行う加工順序を決定する。
【0059】
尚、今回の例では、行方向又は列方向の内で長手となる方向に関して加工を行ったが、逆に短手方向で加工を行っても良い。
【0060】
或いは、格子点内順序決定装置S303は、一定距離以内の列(行)を連続して加工しない様に順序付けしても良く、この順序付けを上記の領域内加工順序決定方法と組み合わせることとしても良い。
【0061】
或いは、格子点内順序決定装置S303は、一定距離以内の点を連続して加工しない様に順序付けしても良く、この順序付けを上記の領域内加工順序決定方法と組み合わせることとしても良い。
【0062】
図3の格子点領域及び格子点外順序決定装置S304は、格子点内順序決定装置S303によって加工順序が決定された(一般に複数の)格子点領域を加工する順番と、密集格子点要素抽出装置S301によって密集格子点要素としては抽出されなかった点(以下「単独点」と言う。)群を加工する順番とを、併せて決定する。その際、単独点に対する加工に関しては、加工速度を重視した加工順序が採用される。
【0063】
これらの加工順番の決定には、トラベリングセールスマン問題(以下「TSP」と言う。)の解法を利用することが可能である。ここで、TSPとは、グラフ問題の一種であり、複数の頂点と頂点間を移動するコストが与えられたときに、全ての頂点を一度ずつ通過して最初の頂点に戻ってくる際に合計のコストが最小となる移動順序を求める問題である。
【0064】
加工時間は点間を繋ぐ経路の合計距離に関して単調増加するので、特に蓄熱の影響を考慮していない状況の下では、加工時間短縮の為に点間距離をコストとしたTSP問題の解法が加工順序決定で広く用いられている。
【0065】
TSPの解法を利用した加工順序の決定方法としては、次の様な方法を採用出来る。
【0066】
即ち、各格子点領域の中心座標が当該格子点領域の代表点に設定され、各代表点と各単独点との集合に対してTSP問題の解法が施される。或る代表点が加工順序として選ばれたときには、格子点領域及び格子点外順序決定装置S304は、当該代表点に対応する格子点領域に対して格子点内順序決定装置S303によって決められた加工順序を適用した後に、次の点に移ることとする。
【0067】
又は、各格子点領域を代表する点として、或る格子点領域の外の点から当該格子点領域を代表する点に移動する際には、当該格子点領域内の加工順序に於いて始点となる点を用いる一方で、或る格子点領域を代表する点から当該格子点領域の外の点に移動する際には、当該格子点領域内の加工順序に於いて終点となる点を用いる方法が、採用可能である。
【0068】
最終的に、格子点領域及び格子点外順序決定装置S304は、図11に示す様な加工順序を決定する。図11に於いて、参照記号Sは加工の始点を表し、参照記号Eは加工の終点を表す。そして、同装置S304によって決定された加工順序を与える出力信号は、レーザ加工機の制御装置(図示せず。)又は外部計算機に送信され、然るべき手段によって加工経路を表示する処理等が行われることにより、作業者が加工経路の確認を行うことが出来る様に構成される。そして、必要であれば、作業者による加工経路の修正が行われ、図1に示すレーザ加工機が、その制御装置による制御の下で、最終的に決定された加工順序に従って穴あけの加工を実施する。
【0069】
本実施の形態によれば、加工対象106に散在する密集格子点の要素のみを抽出し、密集格子点の要素に対しては熱の放散が良好となる加工順序(1次元的に又は2次元的に各格子点領域の中心から外側に向けて熱が放散される順序。)で、密集格子点以外の点に対しては従来の方法で決定した加工順序で、レーザ加工機が加工対象106に対して加工を行うこととしているので、加工時間の延長を抑えながら蓄熱による加工不良を防ぐ効果が得られる。従って、加工機の加工時間ないしは実働時間を低減することが出来るので、加工機に於いて消費される電力を低減化(省エネルギー化)することが可能となる。
【0070】
(実施の形態2)
実施の形態1では、格子点領域及び格子点外順序決定装置S304は、格子点領域と単独点との加工順序をまとめてTSPの解法で求めたが、格子点領域の加工順序の決定方法と単独点の加工順序の決定方法とを分けても良い。
【0071】
例えば、図3の格子点領域及び格子点外順序決定装置S304は、蓄熱の影響により加工不良が発生し易い密集格子点領域の加工を、単独点の加工よりも先に終わらせる加工順序に設定することで、単独点の加工による蓄熱の影響を回避することが出来、蓄熱の影響による加工不良を抑える効果が増す。
【0072】
具体的には、格子点領域及び格子点外順序決定装置S304は、実施の形態1と同様に、各格子点領域の代表点を用いてTSPの解法を利用する方法等によって、各格子点領域の加工順序を決定する。格子点領域の加工順序が決定したら、同装置S304は、その加工順序の後に、TSPの解法を利用して決定した単独点の加工順序を繋ぐことにより、加工対象106上の全ての点の加工順序を定める。
【0073】
このとき、同装置S304が、近接する格子点領域同士は連続して加工しない様に各格子点領域の加工順序を決定するときには、蓄熱の影響による加工不良を更に効果的に抑えることが出来る。その際の近接判定は、例えば、x軸方向の一番近い距離とy軸方向の一番近い距離との何れか短い方の距離を基準距離と比較する方法等により実行される。
【0074】
又、同装置S304が、近接判定が出された格子点領域を、加工順序が決まっていない格子点領域だけになるまで加工順序決定の候補から外すときには、加工不良を更に一層効果的に抑えることが出来る。
【0075】
又、加工対象106の一定領域内に於いて近接判定が出る格子点領域が多数配置されており、結果的に連続して加工が行われるときには、同装置S304が、一部の格子点領域を単独点の加工後に加工する様な加工順序に決定する。この様な加工順序決定は、蓄熱の影響による加工不良を更に一層抑えるのに効果的である。
【0076】
本実施の形態によれば、図12に示す様な加工順序で加工が行われることになるので、各格子点領域がその他の格子点領域の加工及び単独点の加工による蓄熱の影響を受けることを抑えることが出来、本実施の形態は蓄熱に起因した加工不良の発生を抑えるのに効果的である。
【0077】
(実施の形態3)
実施の形態1では、図3の格子点領域分配装置S302は、密集格子点要素抽出装置S301により抽出された点群を、全ての行又は列に含まれる点数が等しい長方形状の格子点領域に分けていたが、各点から基準距離以内の点を全て繋げたときに繋がっている全点を一つの格子領域に設定しても良い。即ち、格子領域内の点同士は、基準距離以内の点を辿ることで、全て繋がる。
【0078】
そして、図3の格子点内順序決定装置S303は、次の様に各格子点領域内の点群の加工順序を決定する。先ず、同装置S303は、格子点領域内の中心点を、次の様に求める。即ち、同装置S303は、各格子点領域内に含まれる点のx座標値の合計とy座標値の合計とをそれぞれ当該格子点領域内に含まれる点数で除算して重心を求め、この重心を当該格子点領域の中心点に決定する。
【0079】
そして、同装置S303は、各格子点領域内の点群を、当該格子点領域の中心点からの距離が近い点から順次に加工していく様に、加工順序を決定する。但し、中心点からの距離が同じ点群に関しては、同装置S303は、y座標が重心以上の点をx座標昇順で加工し、その後にy座標が重心より小さい点をx座標降順で加工すると言う加工順序に決定する。
【0080】
例えば、或る格子点領域内の点群の加工順序は、図13に示される様になる。図13の黒点は中心点を表し、数字は各点の加工順序を表す。
【0081】
本実施の形態によれば、一つの行又は列に含まれる点の数が異なっていても、それらの点群は一つの格子点領域として扱われるため、各格子点領域に含まれる点数が増加し、その結果として、加工時間の短縮化と、良好に熱が放散される加工順序が決定されると言う効果が得られる。
【0082】
(実施の形態4)
実施の形態3に於いては、各格子点領域の重心位置が当該格子点領域の中心点に設定されていたが、重心位置に最も近い加工対象の点が中心点として設定されても良い。蓋し、半導体素子のサイズ規格から、点間距離は単位長さ(例えば50μm)の自然数倍であることが多いので、加工対象の点と一致する様に中心点が設定されると、中心点から同距離になる点群が増える結果、熱の放散が良好で且つ加工時間が短い加工順序を設定し易くなる。
【0083】
格子点領域内の点群の加工順序の決定方法としては、実施の形態3で既述した決定方法以外に、次の様な決定方法が採用可能であり、その決定方法を採用するならば、加工時間の更なる短縮化が見込まれる。
【0084】
即ち、或る点の、中心点からのx座標方向の距離をΔxと表し、且つ、y座標方向の距離をΔyと表して、図3の格子点内順序決定装置S303は、加算値(Δx+Δy)が小さい点から順次に加工していくことに決定する。その際に、加算値(Δx+Δy)が同じ値となる点群に関しては、同装置S303は、先ず、中心点のx座標の値よりも小さいx座標の値を有する各点をy座標昇順で加工し、その後に、中心点のx座標の値以上のx座標の値を有する各点をy座標降順で加工する様に、加工順序を決定する。その結果、例えば、加工順序は、図14に示される様になる。図14に於いて、数字は加工順序を表し、中心点は加工順序1の点である。
【0085】
或いは、図3の格子点内順序決定装置S303は、次の様な方法により、格子点領域内の点群の加工順序を決定しても良い。
【0086】
即ち、同装置S303は、或る点の、中心点からのx座標方向の距離をΔxとして表し、y座標方向の距離をΔyと表すとき、Max{Δx,Δy}の値が小さい点から順次に加工していくことに決定する。その際に、Max{Δx,Δy}の値が同じ点群に関しては、同装置S303は、先ず、x座標の値が中心点のx座標値よりも小さく、且つ、y座標の値が中止点のy座標値以上の点を、x座標昇順及びy座標昇順で加工し、その後に、x座標値が中心点のx座標値以上で、且つ、y座標値が中止点の座標値以上の点を、x座標昇順及びy座標降順で加工し、その後に、x座標値が中心点のx座標値以上で、且つ、y座標値が中止点のy座標値よりも小さい点を、x座標降順及びy座標降順で加工し、その後に、x座標値が中心点のx座標値よりも小さく、且つ、y座標値が中止点のy座標値よりも小さい点を、x座標降順及びy座標昇順で加工すると言う加工順序を決定する。
【0087】
その場合の加工順序は、例えば図15に示される様になる。図15に於いて、数字は加工順序を表し、中心点は加工順序1の点である。
【0088】
本実施の形態によれば、格子点領域内で中心点から同距離になる点群が増加するため、図1のレーザ光102の照射点が最短距離で移動することになる点群が多い加工順序の設定が容易となり、熱の放散が良好で且つ加工時間が延長されるのを更に抑える効果が得られる。
【0089】
(実施の形態5)
実施の形態1〜4の各々に於いては、密集格子点要素抽出装置S301で抽出された点群の全点が、図3の格子点領域分配装置S302によって何れかの格子点領域に含まれ、それ以降の装置の処理に於いては単独点とは異なる規則で加工順序が決定されていた。しかし、格子点領域分配装置S302に於いて一つの格子点領域に含まれる要素が少ない場合には(例えば数個程度の場合)、同装置S302は、その格子点領域に含まれる点群を単独点に戻す処理を行っても良い。
【0090】
本実施の形態によれば、点数が少なく蓄熱の影響が小さい格子点領域に含まれる点群が単独点として扱われるため、TSP問題の解法が適用される点数が増えたり、格子点領域の近接判定が出力される頻度が減ったりするので、結果的に加工時間が短縮される効果がある。
【0091】
(実施の形態6)
実施の形態1〜5の各々に於いては、図3の格子点領域及び格子点外順序決定装置S304が出力した加工順序データを、作業者が評価し、必要であれば加工順序決定用パラメータを作業者が変更して、再度、加工順序データを出力させることを想定していた。しかしながら、シミュレーション及び検査装置を用いて自動的に加工順序決定用パラメータを調整することとしても良い。本実施の形態は、この改良点の実現化に関する。
【0092】
図16は、本実施の形態に於ける加工順序決定方法を模式的に示す機能ブロック図に該当する装置構成図である。既述した実施の形態1〜5(図3)と比較して、蓄熱量計算装置S1601及びパラメータ変更装置S1602の各機能部が、ソフトウェアのプログラムに追加されている。勿論、これらの装置S1601,S1602もハードウェア的に実現可能な構成要素ではあるが、本例では、マイクロコンピュータ等によってソフトウェア的に実現される構成要素である。
【0093】
図16に於いて、最初に格子点領域及び格子点外順序決定装置S304が加工順序データを出力する迄の一連の処理工程は、実施の形態1で既述した内容と同様であるので(但し、最初の加工順序決定に用いられる各加工順序決定用パラメータとしては、変更可能な加工順序決定用初期パラメータが用いられる。)、実施の形態1でその動作を記載した各装置S301〜S304に於ける処理の記載は、ここでは割愛される。
【0094】
図16の蓄熱量計算装置S1601は、1)図1のレーザ光102の出力及び発振周波数、ガルバノミラー103a,103bの移動速度、及び加工対象106の素材と言う様な加工パラメータと、2)格子点領域及び格子点外順序決定装置S304が出力した加工順序のデータとから、当該加工順序に従って図1のレーザ加工機が加工対象106の穴あけ加工を行うシミュレーションを実行した際に、加工対象106上の加工直前の各加工点(レーザ光10の照射点)の温度、並びに、fθレンズ104及び保護ウインドウ105をレーザ光102が通過する位置(レーザ光10が正に加工しようとする加工点に到達する迄に通過した光路上の通過点)の温度を計算すると共に、計算された各点の温度と予め定められた温度とを順次に比較処理して両者の上下関係を判断する。
【0095】
若し、蓄熱量計算装置S1601が計算した各加工点の温度が対応する予め定められた温度以下である場合及び同装置S1601が計算したレーザ光10の各通過点の温度が対応する予め定められた温度以下である場合にのみ、蓄熱量計算装置S1601は、格子点領域及び格子点外順序決定装置S304が作成した上記加工順序データを出力する。
【0096】
これに対して、予め定められた温度よりも蓄熱量計算装置S1601が計算した温度の方が高くなる点(以下「過蓄熱点」と言う。)が存在する場合には、蓄熱量計算装置S1601からの指令信号を受信して、図16のパラメータ変更装置S1602は、各装置S301〜S303の何れかに於いて用いられる少なくとも一つの加工順序決定用パラメータを変更する。その際の加工順序決定用パラメータ変更の処理は、例えば、次の様な方針の下に行われる。
【0097】
若し過蓄熱点が単独点に存在する場合、つまり密集格子点要素の抽出に漏れがあった場合には、パラメータ変更装置S1602は、密集格子点要素抽出装置S301に於ける距離判定基準を長く設定する。若し、格子点領域内に過蓄熱点がある場合には、パラメータ変更装置S1602は、1)格子点内順序決定装置S303に於いて格子点領域内の点群の加工順序を決定する際に前記した熱の放散が良好となる実施の形態(決定方法)を適宜選択する様に、加工順序決定用パラメータを変更するか、2)格子点領域及び格子点外順序決定装置S303に於いて格子点領域の近接判定の基準距離を長くなる様に変更するか、或いは、3)当該格子点領域の加工順序を単独点加工の後に変更する等の方策を、採り得る。又、レーザ光10の各通過点の内に過蓄熱点が存在する場合にも、パラメータ変更装置S1602は、適宜に加工順序決定用パラメータを変更する処理を行う。或いは、作業者ないしは設計者が、過蓄熱点と判定された光学部品(本例では、fθレンズ104及び/又は保護ウインドウ105)の設定変更ないしは設計変更を行うことで対処することも可能である。
【0098】
加工順序決定用パラメータの変更の結果、蓄熱量計算装置S1601は、格子点領域及び格子点外順序決定装置S304が改めて作成・出力した加工順序データによる加工のシミュレーションを再度実行する。そして、蓄熱量計算装置S1601は、上記加工シミュレーションを通じて計算した各点の温度が予め定められた温度以下となっていることを検出した場合にのみ、蓄熱量計算装置S1601は、格子点領域及び格子点外順序決定装置S304が改めて作成した加工順序データを出力する。他方、蓄熱量計算装置S1601が過蓄熱点の存在を再び検出した場合には、再度、パラメータ変更装置S1602によるパラメータの変更が実行されて、各装置S301〜S304の動作が繰返される。
【0099】
本実施の形態によれば、加工不良が発生する温度条件が上記の予め定められた温度として入力されるならば、その温度条件を満足し且つ加工時間が出来るだけ延長されない様に調整された加工順序データが蓄熱量計算装置S1601より出力されるため、作業者による加工順序決定用のパラメータ調整の手間を省くことが出来ると言う効果がある。
【0100】
(実施の形態7)
実施の形態6に於いては、蓄熱量計算装置S1607により過蓄熱点の存在が検出された場合には、パラメータ変更装置S1602によって加工順序決定用パラメータが変更されて、各装置S301〜S304は再度の加工順序を作成しているが、蓄熱量計算装置S1601が格子点領域及び格子点外順序決定装置S304の順序決定過程を看視して直接操作を加えることとしても良い。
【0101】
図17は、本実施の形態に係る加工順序決定方法を模式的に示す機能ブロック図に該当する装置構成図である。
【0102】
図17に於いて、蓄熱量計算装置S1601は、格子点領域及び格子点外順序決定装置S304が加工順序を加工開始点から順番に決定していく過程を看視する。つまり、同装置S1601は、加工順序が一つ(格子点領域又は単独点)決定される度に、追加された格子点領域内の点群又は単独点の蓄熱を計算し、既述した比較処理を実行する。
【0103】
若し追加された格子点領域内の点群中に過蓄熱点が存在することが蓄熱量計算装置S1601の処理により検出された場合には、同装置S1601から出力信号の受信に応じて、格子点領域及び格子点外順序決定装置S304は、当該格子点領域の加工順序への追加を破棄すると共に、当該格子点領域に対して近接判定を出力する。即ち、同装置S304は、当該格子点領域の加工順序を後ろ側に移す処理を実行する。この処理は、当該格子点領域の順番を単独点の加工後に移すことも含む。
【0104】
又は、単独点に過蓄熱点が存在することが検出された場合には、実施の形態6で既述した点と同様に密集格子点要素の抽出に漏れが在る為、蓄熱量計算装置S1601は、パラメータ変更装置S1602に対して、密集格子点要素抽出装置S301に於いて用いられる加工順序決定用パラメータの変更を指示する。この指示を受けて、パラメータ変更装置S1602は、指示された通りのパラメータ変更処理を実行する。
【0105】
或いは、追加された格子点領域内の点群中に過蓄熱点が存在する場合に於いて、格子点領域及び格子点外順序決定装置S304は、上記の当該格子点領域の加工順序への追加を破棄しておいた上で、上記の近接判定処理を全て蓄熱量計算装置S1601に委ねることにして、格子点領域の近接判定を内部で処理しないこととしても良い。この場合、同装置S304は、破棄した追加対象であった格子点領域の代わりとなる他の格子点領域又は単独点を追加の候補として決定して良いか否かを蓄熱量計算装置S1601に問い合わせることとなり、蓄熱量計算装置S1601は、その保有する温度データに基づいて、その追加候補の許否を判断する。そして、蓄熱量計算装置S1601により追加の候補が許可されたときには、格子点領域及び格子点外順序決定装置S304は、その追加の候補を加工順序へ追加処理する。
【0106】
尚、蓄熱量計算装置S1601によって或る格子点領域内の点群中に過蓄熱点が存在すると判定されない限り、格子点領域の加工順序の決定に制限は存在しない。
【0107】
本実施の形態によれば、蓄熱量を随時計算しながら格子点領域及び単独点の順序を決定するため,蓄熱が問題にならない格子点領域の近接判定を無視することが出来るため、加工時間を更に抑え得ると言う効果がある。又、加工順序決定までに要する工数を減らすことが出来ると言う効果もある。
【0108】
(実施の形態8)
実施の形態6及び7に於いては、加工対象106の温度特性が正確に判っていない場合には、加工順序データ生成後のレーザ加工機による試し加工の品質チェックを作業者が行い、その結果、設定された温度条件が不適切である場合には適宜調整が必要であったが、検査装置を用いて当該作業を代替することとしても良い。
【0109】
図18は、本実施の形態に係る加工順序決定方法を模式的に示す機能ブロック図を示す構成図である。実施の形態1〜5(図3)と比較して、本実施の形態では、実施の形態6に於いて記載したパラメータ変更装置S1602と、レーザ加工機制御装置S1801と、加工結果検査装置S1802とが、追加されている。
【0110】
図18のレーザ加工機制御装置S1801は、レーザ光102の出力及び発振周波数と言う様な加工パラメータ、及び、加工順序に基づいて、図1のレーザ加工機を動作させてその加工の実施を制御する機器であり、既述した各実施の形態1〜7に於いても加工時には使用されていたが、陽には示されていなかった。
【0111】
加工結果検査装置S1802は、試し加工終了後の加工対象106をカメラ等の撮像装置により撮影・計測した上で、加工した穴の位置と目標位置との比較、及び、加工された穴の形と理想的な穴の形とを比較する処理等を実行して、蓄熱の影響による加工不良が起こっているか否かを検査する。
【0112】
そして、加工結果検査装置S1802が、加工不良が加工対象106に起こっていることを検出したときには、実施の形態6で既述した場合と同様に、パラメータ変更装置S1602は、加工順序決定用のパラメータを熱の放散が良好となる様に変更して、各装置S301〜S304は、再度、加工順序のデータを生成する。
【0113】
これに対して、加工結果検査装置S1802が加工対象106上の加工不良を確認することが出来なかった場合には、装置S304が出力した当該加工順序データに従って、図1の加工機は装置S1801の制御の下で本加工を行う。
【0114】
本実施の形態によれば、試し加工を行いながら加工順序決定用のパラメータの調整を行うため、加工対象106の温度特性が不明瞭な場合であっても、加工不良が発生しない程度に熱の放散が良好で且つ加工時間が出来るだけ延長されない様に調整された加工順序を決定出来るため、作業者による加工順序決定用のパラメータ調整の手間を省く効果がある。
【0115】
(実施の形態9)
実施の形態8に於いては、蓄熱のシミュレーションを行っていなかったが、実施の形態6又は7に記載の蓄熱量計算装置S1601を、実施の形態8に於ける図18の装置に追加しても良い。
【0116】
図19は、本実施の形態に係る加工順序決定方式を模式的に示す機能ブロック図に該当する装置構成図である。
【0117】
加工対象106の温度特性が正確ではなかったとしても、蓄熱量計算装置S1601は、蓄熱し易い位置を把握し、大雑把な温度条件を導出することは出来るので、蓄熱量計算装置S1601は、蓄熱の影響が顕著に現れる様な加工順序を排除することが出来る。
【0118】
本実施の形態によれば、蓄熱の影響が顕著に現れる様な加工順序は蓄熱量計算装置S1601に於いて排除されるので、加工対象106の温度特性が不明瞭な場合であっても、試し加工を行う回数を減らすことが出来ると言う効果がある。
【0119】
(実施の形態10)
加工結果検査装置S1802のカメラ等のハードウェアを除いた各装置の機能の一部又は全てを実現する処理工程を、外部の計算機(パーソナルコンピュータ等)上に於いて実現しても良い。即ち、外部の計算機内に、実施の形態1〜9の各々で記載した加工順序決定処理を行うプログラムを搭載する様にしても良い。この場合、外部の計算機内の該当機能部をも含めて、「加工装置」の構成は定義される。
【0120】
斯かる場合には、導入・保守に要するコストを低減することが出来ると言う効果が得られる。
【0121】
尚、実施の形態1〜9の各々に於いて、密集格子点要素抽出装置S301、格子点領域分配装置S302、格子点内順序決定装置S303、格子点領域及び格子点外順序決定装置S304、蓄熱量計算装置S1601、パラメータ変更装置S1602、及び、加工結果検査装置S1802を、それぞれ別個にハードウェア装置として設置することとしても良いことは、既述した通りである。
【0122】
(付記)
以上、本発明の実施の形態を詳細に開示し記述したが、以上の記述は本発明の適用可能な局面を例示したものであって、本発明はこれに限定されるものではない。即ち、記述した局面に対する様々な修正や変形例を、この発明の範囲から逸脱することの無い範囲内で考えることが可能である。
【符号の説明】
【0123】
101 レーザ光源、102 レーザ光、106 加工対象、S301 密集格子点要素抽出装置、S302 格子点領域分配装置、S303 格子点内順序決定装置、S304 格子点領域及び格子点外順序決定装置、S1601 蓄熱量計算装置、S1602 パラメータ変更装置、S1802 加工結果検査装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を加工対象に照射することで前記加工対象に穴をあける加工装置であって、
穴位置データから密集格子点の要素となる穴位置を抽出する密集格子点要素抽出部と、
抽出された穴位置を一定の規則に従って集めて1つ以上の格子点領域に分ける格子点領域分配部と、
前記1つ以上の格子点領域毎に、熱が1次元的に又は2次元的に当該格子点領域の中心から外側へ向かって放散される様に、当該格子点領域内の穴位置の加工順序を決定する格子点内順序決定部と、
前記格子点内順序決定部によって各格子点領域内の穴位置の加工順序が決定された前記1つ以上の格子点領域、及び、前記密集格子点要素抽出部によって前記密集格子点要素としては抽出されなかった穴位置、の加工順序を、トラベリングセールスマン問題の解決方法を利用して決定する格子点領域及び格子点外順序決定部とを、
備えたことを特徴とする、
加工装置。
【請求項2】
請求項1記載の加工装置であって、
前記レーザ光の出力及び発振周波数並びに前記加工対象の素材を含む加工パラメータと、前記格子点領域及び格子点外順序決定部より出力される前記加工順序とから、前記加工順序に従って前記加工対象を加工するシミュレーションを行った場合に於ける、前記加工対象上の各レーザ光照射点の温度及び前記レーザ光が前記各レーザ光照射点に到達する迄の光路上の各通過点の温度を計算し、計算された各温度と、当該温度に対応する、加工不良が発生する温度条件として予め定められた温度とを比較し、計算された各温度の何れもが前記対応する予め定められた温度以下の場合にのみ前記シミュレーションに用いられた前記加工順序を出力する蓄熱量計算部と、
前記蓄熱量計算部が、計算された温度が前記対応する予め定められた温度よりも高いレーザ光照射点の存在を検出した場合、又は、計算された温度が前記対応する予め定められた温度よりも高いレーザ光の光路上の通過点の存在を検出した場合には、前記密集格子点要素抽出部、前記格子点領域分配部、前記格子点内順序決定部、及び前記格子点領域及び格子点外順序決定部の内の少なくとも一つにより用いられる加工順序決定用パラメータを変更するパラメータ変更部とを更に備えており、
前記パラメータ変更部が前記加工順序決定用パラメータを変更した場合には、前記密集格子点要素抽出部、前記格子点領域分配部、前記格子点内順序決定部、及び前記格子点領域及び格子点外順序決定部は改めて加工順序を決定して前記蓄熱量計算部に出力することを特徴とする、
加工装置。
【請求項3】
請求項1記載の加工装置であって、
前記格子点領域及び格子点外順序決定部より出力される前記加工順序に従って試し加工された後の前記加工対象に蓄熱の影響による加工不良が起こっているか否かを検出する加工結果検査部と、
前記加工結果検査部が加工不良の発生を検出した場合には、前記密集格子点要素抽出部、前記格子点領域分配部、前記格子点内順序決定部、及び前記格子点領域及び格子点外順序決定部の内の少なくとも一つにより用いられる加工順序決定用パラメータを変更するパラメータ変更部とを更に備えており、
前記パラメータ変更部が前記加工順序決定用パラメータを変更した場合には、前記密集格子点要素抽出部、前記格子点領域分配部、前記格子点内順序決定部、及び前記格子点領域及び格子点外順序決定部は改めて加工順序を決定し出力することを特徴とする、
加工装置。
【請求項4】
請求項2記載の加工装置であって、
前記蓄熱量計算部より出力される前記加工順序に従って試し加工された後の前記加工対象に蓄熱の影響による加工不良が起こっているか否かを検出する加工結果検査部を更に備えており、
前記パラメータ変更部は、前記加工結果検査部が加工不良の発生を検出した場合にも、前記加工順序決定用パラメータを変更することを特徴とする、
加工装置。
【請求項5】
レーザ光を加工対象に照射することで前記加工対象に穴をあける加工装置の加工順序を決定するためのプログラムであって、
穴位置データから密集格子点の要素となる穴位置を抽出する密集格子点要素抽出処理と、
抽出された穴位置を一定の規則に従って集めて1つ以上の格子点領域に分ける格子点領域分配処理と、
前記1つ以上の格子点領域毎に、熱が1次元的に又は2次元的に当該格子点領域の中心から外側へ向かって放散される様に、当該格子点領域内の穴位置の加工順序を決定する格子点内順序決定処理と、
前記格子点内順序決定処理によって各格子点領域内の穴位置の加工順序が決定された前記1つ以上の格子点領域、及び、前記密集格子点要素抽出処理によって前記密集格子点要素としては抽出されなかった穴位置、の加工順序を、トラベリングセールスマン問題の解決方法を利用して決定する格子点領域及び格子点外順序決定処理とを、
コンピュータに実現させるために備えたことを特徴とする、
加工装置用プログラム。
【請求項6】
請求項5記載の加工装置用プログラムであって、
前記コンピュータに実現させるために、
前記レーザ光の出力及び発振周波数並びに前記加工対象の素材を含む加工パラメータと、前記格子点領域及び格子点外順序決定処理により出力される前記加工順序とから、前記加工順序に従って前記加工対象を加工するシミュレーションを行った場合に於ける、前記加工対象上の各レーザ光照射点の温度及び前記レーザ光が前記各レーザ光照射点に到達する迄の光路上の各通過点の温度を計算し、計算された各温度と、当該温度に対応する、加工不良が発生する温度条件として予め定められた温度とを比較し、計算された各温度の何れもが前記対応する予め定められた温度以下の場合にのみ前記シミュレーションに用いられた前記加工順序を出力する蓄熱量計算処理と、
前記蓄熱量計算処理により、計算された温度が前記対応する予め定められた温度よりも高いレーザ光照射点の存在を検出した場合、又は、計算された温度が前記対応する予め定められた温度よりも高いレーザ光の光路上の通過点の存在を検出した場合には、前記密集格子点要素抽出処理、前記格子点領域分配処理、前記格子点内順序決定処理、及び前記格子点領域及び格子点外順序決定処理の内の少なくとも一つの処理により用いられる加工順序決定用パラメータを変更するパラメータ変更処理とを更に備えており、
前記パラメータ変更処理により前記加工順序決定用パラメータが変更された場合には、前記密集格子点要素抽出処理、前記格子点領域分配処理、前記格子点内順序決定処理、及び前記格子点領域及び格子点外順序決定処理が改めて実行されて、再度、加工順序を決定した後に、前記蓄熱量計算処理が再度実行されることを特徴とする、
加工装置用プログラム。
【請求項7】
請求項5記載の加工装置用プログラムであって、
前記コンピュータに実現させるために、
前記格子点領域及び格子点外順序決定処理により決定された前記加工順序に従って試し加工された後の前記加工対象に蓄熱の影響による加工不良が起こっているか否かを検出する加工結果検査処理と、
前記加工結果検査処理により加工不良の発生が検出された場合には、前記密集格子点要素抽出処理、前記格子点領域分配処理、前記格子点内順序決定処理、及び前記格子点領域及び格子点外順序決定処理の内の少なくとも一つの処理により用いられる加工順序決定用パラメータを変更するパラメータ変更処理とを更に備えており、
前記パラメータ変更処理により前記加工順序決定用パラメータが変更された場合には、前記密集格子点要素抽出処理、前記格子点領域分配処理、前記格子点内順序決定処理、及び前記格子点領域及び格子点外順序決定処理が改めて実行されて、再度、加工順序が決定されて、その後に、再度、前記加工結果検査処理が実行されることを特徴とする、
加工装置用プログラム。
【請求項8】
請求項6記載の加工装置用プログラムであって、
前記コンピュータに実現させるために、
前記蓄熱量計算処理により出力される前記加工順序に従って試し加工された後の前記加工対象に蓄熱の影響による加工不良が起こっているか否かを検出する加工結果検査処理を更に備えており、
前記加工結果検査処理により加工不良の発生が検出された場合にも、前記加工順序決定用パラメータを変更する前記パラメータ変更処理が実行されることを特徴とする、
加工装置用プログラム。
【請求項1】
レーザ光を加工対象に照射することで前記加工対象に穴をあける加工装置であって、
穴位置データから密集格子点の要素となる穴位置を抽出する密集格子点要素抽出部と、
抽出された穴位置を一定の規則に従って集めて1つ以上の格子点領域に分ける格子点領域分配部と、
前記1つ以上の格子点領域毎に、熱が1次元的に又は2次元的に当該格子点領域の中心から外側へ向かって放散される様に、当該格子点領域内の穴位置の加工順序を決定する格子点内順序決定部と、
前記格子点内順序決定部によって各格子点領域内の穴位置の加工順序が決定された前記1つ以上の格子点領域、及び、前記密集格子点要素抽出部によって前記密集格子点要素としては抽出されなかった穴位置、の加工順序を、トラベリングセールスマン問題の解決方法を利用して決定する格子点領域及び格子点外順序決定部とを、
備えたことを特徴とする、
加工装置。
【請求項2】
請求項1記載の加工装置であって、
前記レーザ光の出力及び発振周波数並びに前記加工対象の素材を含む加工パラメータと、前記格子点領域及び格子点外順序決定部より出力される前記加工順序とから、前記加工順序に従って前記加工対象を加工するシミュレーションを行った場合に於ける、前記加工対象上の各レーザ光照射点の温度及び前記レーザ光が前記各レーザ光照射点に到達する迄の光路上の各通過点の温度を計算し、計算された各温度と、当該温度に対応する、加工不良が発生する温度条件として予め定められた温度とを比較し、計算された各温度の何れもが前記対応する予め定められた温度以下の場合にのみ前記シミュレーションに用いられた前記加工順序を出力する蓄熱量計算部と、
前記蓄熱量計算部が、計算された温度が前記対応する予め定められた温度よりも高いレーザ光照射点の存在を検出した場合、又は、計算された温度が前記対応する予め定められた温度よりも高いレーザ光の光路上の通過点の存在を検出した場合には、前記密集格子点要素抽出部、前記格子点領域分配部、前記格子点内順序決定部、及び前記格子点領域及び格子点外順序決定部の内の少なくとも一つにより用いられる加工順序決定用パラメータを変更するパラメータ変更部とを更に備えており、
前記パラメータ変更部が前記加工順序決定用パラメータを変更した場合には、前記密集格子点要素抽出部、前記格子点領域分配部、前記格子点内順序決定部、及び前記格子点領域及び格子点外順序決定部は改めて加工順序を決定して前記蓄熱量計算部に出力することを特徴とする、
加工装置。
【請求項3】
請求項1記載の加工装置であって、
前記格子点領域及び格子点外順序決定部より出力される前記加工順序に従って試し加工された後の前記加工対象に蓄熱の影響による加工不良が起こっているか否かを検出する加工結果検査部と、
前記加工結果検査部が加工不良の発生を検出した場合には、前記密集格子点要素抽出部、前記格子点領域分配部、前記格子点内順序決定部、及び前記格子点領域及び格子点外順序決定部の内の少なくとも一つにより用いられる加工順序決定用パラメータを変更するパラメータ変更部とを更に備えており、
前記パラメータ変更部が前記加工順序決定用パラメータを変更した場合には、前記密集格子点要素抽出部、前記格子点領域分配部、前記格子点内順序決定部、及び前記格子点領域及び格子点外順序決定部は改めて加工順序を決定し出力することを特徴とする、
加工装置。
【請求項4】
請求項2記載の加工装置であって、
前記蓄熱量計算部より出力される前記加工順序に従って試し加工された後の前記加工対象に蓄熱の影響による加工不良が起こっているか否かを検出する加工結果検査部を更に備えており、
前記パラメータ変更部は、前記加工結果検査部が加工不良の発生を検出した場合にも、前記加工順序決定用パラメータを変更することを特徴とする、
加工装置。
【請求項5】
レーザ光を加工対象に照射することで前記加工対象に穴をあける加工装置の加工順序を決定するためのプログラムであって、
穴位置データから密集格子点の要素となる穴位置を抽出する密集格子点要素抽出処理と、
抽出された穴位置を一定の規則に従って集めて1つ以上の格子点領域に分ける格子点領域分配処理と、
前記1つ以上の格子点領域毎に、熱が1次元的に又は2次元的に当該格子点領域の中心から外側へ向かって放散される様に、当該格子点領域内の穴位置の加工順序を決定する格子点内順序決定処理と、
前記格子点内順序決定処理によって各格子点領域内の穴位置の加工順序が決定された前記1つ以上の格子点領域、及び、前記密集格子点要素抽出処理によって前記密集格子点要素としては抽出されなかった穴位置、の加工順序を、トラベリングセールスマン問題の解決方法を利用して決定する格子点領域及び格子点外順序決定処理とを、
コンピュータに実現させるために備えたことを特徴とする、
加工装置用プログラム。
【請求項6】
請求項5記載の加工装置用プログラムであって、
前記コンピュータに実現させるために、
前記レーザ光の出力及び発振周波数並びに前記加工対象の素材を含む加工パラメータと、前記格子点領域及び格子点外順序決定処理により出力される前記加工順序とから、前記加工順序に従って前記加工対象を加工するシミュレーションを行った場合に於ける、前記加工対象上の各レーザ光照射点の温度及び前記レーザ光が前記各レーザ光照射点に到達する迄の光路上の各通過点の温度を計算し、計算された各温度と、当該温度に対応する、加工不良が発生する温度条件として予め定められた温度とを比較し、計算された各温度の何れもが前記対応する予め定められた温度以下の場合にのみ前記シミュレーションに用いられた前記加工順序を出力する蓄熱量計算処理と、
前記蓄熱量計算処理により、計算された温度が前記対応する予め定められた温度よりも高いレーザ光照射点の存在を検出した場合、又は、計算された温度が前記対応する予め定められた温度よりも高いレーザ光の光路上の通過点の存在を検出した場合には、前記密集格子点要素抽出処理、前記格子点領域分配処理、前記格子点内順序決定処理、及び前記格子点領域及び格子点外順序決定処理の内の少なくとも一つの処理により用いられる加工順序決定用パラメータを変更するパラメータ変更処理とを更に備えており、
前記パラメータ変更処理により前記加工順序決定用パラメータが変更された場合には、前記密集格子点要素抽出処理、前記格子点領域分配処理、前記格子点内順序決定処理、及び前記格子点領域及び格子点外順序決定処理が改めて実行されて、再度、加工順序を決定した後に、前記蓄熱量計算処理が再度実行されることを特徴とする、
加工装置用プログラム。
【請求項7】
請求項5記載の加工装置用プログラムであって、
前記コンピュータに実現させるために、
前記格子点領域及び格子点外順序決定処理により決定された前記加工順序に従って試し加工された後の前記加工対象に蓄熱の影響による加工不良が起こっているか否かを検出する加工結果検査処理と、
前記加工結果検査処理により加工不良の発生が検出された場合には、前記密集格子点要素抽出処理、前記格子点領域分配処理、前記格子点内順序決定処理、及び前記格子点領域及び格子点外順序決定処理の内の少なくとも一つの処理により用いられる加工順序決定用パラメータを変更するパラメータ変更処理とを更に備えており、
前記パラメータ変更処理により前記加工順序決定用パラメータが変更された場合には、前記密集格子点要素抽出処理、前記格子点領域分配処理、前記格子点内順序決定処理、及び前記格子点領域及び格子点外順序決定処理が改めて実行されて、再度、加工順序が決定されて、その後に、再度、前記加工結果検査処理が実行されることを特徴とする、
加工装置用プログラム。
【請求項8】
請求項6記載の加工装置用プログラムであって、
前記コンピュータに実現させるために、
前記蓄熱量計算処理により出力される前記加工順序に従って試し加工された後の前記加工対象に蓄熱の影響による加工不良が起こっているか否かを検出する加工結果検査処理を更に備えており、
前記加工結果検査処理により加工不良の発生が検出された場合にも、前記加工順序決定用パラメータを変更する前記パラメータ変更処理が実行されることを特徴とする、
加工装置用プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2010−162548(P2010−162548A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−4322(P2009−4322)
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]