説明

加熱ユニットの製造方法及び加熱容器

【課題】保存中にケース内の発熱剤が反応したり、被加熱材を加熱する際に発熱剤が出てしまうことが高度に抑制されている加熱ユニットを安定して製造する方法、及び該加熱ユニットを備えた加熱容器の提供を目的とする。
【解決手段】本発明の製造方法は、加熱ユニット1を製造する方法であって、防湿シート50を、シール部51の切り込み部52の周辺部分を残してフランジ13に貼着する工程(1)と、破断用紐70を切り込み部で開口部12に折り返す工程(2)と、前記切り込み部52の周辺部分をフランジ13に貼着する工程(3)と、水蒸気透過シート60を貼着する工程(4)と、を含むことを特徴とする。また、本発明の加熱容器は加熱ユニット1を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱ユニットの製造方法及び加熱容器に関する。
【背景技術】
【0002】
食材(例えば弁当)等の被加熱材を収容すると共に、収容した被加熱材を加熱することが可能な加熱容器として、水和反応により水蒸気と熱とを発生する水和反応式の加熱ユニットを備えた加熱容器が知られている。
【0003】
水和反応式の加熱ユニットとしては、ケース内に水袋と生石灰等の発熱剤とが収容されると共に、ケース開口部に防湿シートが貼着され、破断用紐にて水袋と防湿シートとを同時に破断させて、水和反応を引き起こして加熱する加熱ユニットが示されている(例えば、特許文献1)。
しかし、特許文献1の加熱ユニットでは、破断用紐は防湿シートを貫通して引き出されているため、ケース内部の気密性が充分に維持できないことがあった。ケース内部の気密性が低くなってケース内部に湿気が入ると、発熱剤の劣化が生じてしまう。
【0004】
そこで、防湿シートに貫通孔を設ける必要がなく、前記加熱ユニットに比して内部の気密性がより高い加熱ユニットとして、図9に示すように、ケース210内に、吸水シート220と、水袋230と、生石灰等の発熱剤240とが収容されると共に、ケース210の開口部212に防湿シート250と水蒸気透過シート260が貼着され、破断用紐270にて水袋230と防湿シート250とを同時に破断させて、水和反応を引き起こして加熱する加熱ユニット201が示されている(特許文献2)。
【0005】
加熱ユニット201では、防湿シート250はシール部251がケース210のフランジ213に貼着されるが、破断用紐270を通過させる部分は他の部分に比べて貼着する幅を狭くしている。これにより、破断用紐270を引っ張って水袋230と防湿シート250を破断する際に、防湿シート250のシール部251が破断されやすくなるため、容易に水和反応を起こして被加熱材を加熱することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−360439号公報
【特許文献2】特開2005−304691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、加熱ユニット201におけるシール部251の破断用紐270が通過している部分は、貼着する際に該破断用紐270の厚みのために押圧しにくく、またその貼着幅も狭いことから、貼着不良が生じるおそれがある。
防湿シート250の貼着不良が生じると、その部分からケース210内部に湿気が入り、保存時に該湿気によって発熱剤240が反応してしまう。また、破断用紐270により防湿シート250を破断する際、シール部251における破断用紐270を通過させる部分周辺で防湿シート250がうまく破断されずに捲り上がり、それに伴って水蒸気透過シート260も捲られて開口することで、該開口から発熱剤が出てしまうおそれがある。
そのため、貼着不良を生じさせずに防湿シートを安定してしっかりとフランジに貼着することで、保存中にケース内の発熱剤が反応したり、被加熱材を加熱する際に発熱剤が出てしまうことをより高度に抑制できる加熱ユニットが望まれている。
【0008】
本発明は、保存中にケース内の発熱剤が反応したり、被加熱材を加熱する際に発熱剤が出てしまうことが高度に抑制されている加熱ユニットを安定して製造する方法、及び該製造方法により得られる加熱ユニットを備えた加熱容器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記課題を達成するために以下の構成を採用した。
[1]開口部を有するケースと、前記開口部を密封する防湿シートと、前記防湿シート上に設けられ、水蒸気を透過する水蒸気透過シートと、前記ケースの内部に収容された水袋と、前記ケースの内部に収容され、水和反応により発熱する発熱剤と、前記水袋及び前記防湿シートを破断するための破断用紐とを具備し、前記ケースの前記開口部にフランジが形成され、該フランジに前記防湿シートが貼着されており、前記防湿シートの前記フランジに貼着されるシール部に、前記フランジの幅よりも短い切り込み部が形成されており、前記破断用紐の一端が前記ケースの内部から、前記水袋の水が封入されていない部分を通り、かつ前記シール部を通って前記切り込み部から前記ケースの外部に引き出されている加熱ユニットを製造する方法であって、前記防湿シートを、前記シール部の前記切り込み部の周辺部分を残して前記フランジに貼着する工程(1)と、前記破断用紐を前記切り込み部で前記開口部側に折り返す工程(2)と、前記防湿シートの前記切り込み部の周辺部分を前記フランジに貼着する工程(3)と、前記水蒸気透過シートを貼着する工程(4)と、を含むことを特徴とする加熱ユニットの製造方法。
[2]前記工程(3)の貼着と工程(4)の貼着とを同時に行う、[1]に記載の加熱ユニットの製造方法。
[3]前記フランジの前記工程(1)で前記防湿シートが貼着される範囲内に、前記破断用紐の形状に対応する凹部が形成されている、[1]又は[2]に記載の加熱ユニットの製造方法。
[4][1]〜[3]のいずれかの製造方法により得られる加熱ユニットと、該加熱ユニットを収容する容器本体とを具備し、前記加熱ユニットに備えられた前記破断用紐の一端が、前記容器本体を貫通して前記容器本体の外部に引き出されている加熱容器。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造方法によれば、保存中にケース内の発熱剤が反応したり、被加熱材を加熱する際に発熱剤が出てしまうことが高度に抑制された加熱ユニットを安定して製造できる。
また、本発明の加熱容器は、前記加熱ユニットを備えているため、保存中にケース内の発熱剤が反応したり、被加熱材を加熱する際に発熱剤が出てしまうことが高度に抑制されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の加熱ユニットの一実施形態例を示した分解斜視図である。
【図2】図1の加熱ユニットの防湿シートの切り込み部周辺の拡大図である。
【図3】本発明の加熱ユニットを製造する様子を示した工程図である。
【図4】本発明の加熱ユニットを製造する様子を示した工程図である。
【図5】本発明の加熱ユニットを製造する様子を示した工程図である。
【図6】本発明の加熱ユニットを製造する様子を示した工程図である。
【図7】本発明の加熱ユニットを製造する様子を示した工程図である。
【図8】本発明の加熱容器の一実施形態を示した分解斜視図である。
【図9】従来の加熱ユニットの一例を示した分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<加熱ユニットの製造方法>
[加熱ユニット]
図1及び2に基づいて、本発明の製造方法により得られる加熱ユニットの一実施形態例について詳述する。
本実施形態の加熱ユニット1は、図1に示すように、正方形の角部が切欠された形状の底面11を有し、上端に開口部12を有する箱形のケース10内に、水袋30と、水和反応により水蒸気と熱とを発生する発熱剤40とが収容されている。また、ケース10の内面全体(底面及び側壁)に沿って、吸水性のあるシート20が設けられており、この内部に、底面側から水袋30及び発熱剤40が順次配置されている。
【0013】
ケース10は、加熱ユニットのケースに通常用いられるケースを用いることができ、例えば、樹脂製(ポリプロピレン製等)のケースが挙げられる。ケース10の上端部の開口部12にはフランジ13が形成されている。
シート20は、ケース10内部で破断用紐70を支持できるものであればよく、例えば紙製のものが挙げられる。また、本実施形態のように、吸水紙等の水袋30から流出した水を吸収できるものを用いることもできる。
【0014】
水袋30は、複数の樹脂層(ポリエチレン層等)の間に水分を透過しない防湿層(アルミニウム層等)を挟持した積層体フィルム等を熱溶着にて袋状に成形し、その内部に水を封入したもので、水袋30の端部(図示では三方の端部)には適宜水が封入されていない熱溶着部31が形成されている。そして、一端部の熱溶着部31の略中央部には、後述する破断用紐を挿通するための切り込み部32が形成されている。
発熱剤40は、水和反応により水と水蒸気を発生して被加熱材を加熱できるものであればよく、例えば、粒状の生石灰(酸化カルシウム)等が挙げられる。
【0015】
加熱ユニット1では、ケース10のフランジ13上に、防湿シート50と水蒸気透過シート60とが順次貼着されている。
防湿シート50は、水分を透過しないシートであればよく、例えば、複数の樹脂層の間に防湿層を挟持した積層体フィルム等からなり、その周縁部が熱溶着にてケース10のフランジ13に貼着されるシートが挙げられる。以下、この熱溶着部をシール部51という。この防湿シート50によって、ケース10の開口部12が密閉されている。
また、防湿シート50には、シール部51にフランジ13の幅よりも短い切り込み部52が形成されている。
【0016】
水蒸気透過シート60は、水蒸気を透過するものを用いることができ、例えば、不織布が挙げられる。また、水蒸気透過シート60は、その周縁部が、接着剤等からなるシール材61を介して防湿シート50に貼着されている。
なお、防湿シート50と水蒸気透過シート60とをケース10のフランジ13上に貼着する形態は、前記形態に限定されず、例えば、防湿シート50についても水蒸気透過シート60と同様に、接着剤等からなるシール材を介してケース10のフランジ13に貼着される形態としてもよい。
【0017】
さらに、加熱ユニット1には、水袋30及び防湿シート50を破断するための破断用紐70が備えられている。
この例では、切り込み部32を挟んで2箇所に、ホッチキス針等からなる固定具33が取り付けられることで、水袋30の熱溶着部31がシート20の底面に固定されている。破断用紐70は、シート20と水袋30との間、水袋30の切り込み部32、防湿シート50のシール部51を順次通って、切り込み部52に挿通されてケース10の内部から外部に引き出されている。さらに、ケース10の外部に引き出された破断用紐70は、開口部12側へと折り返され、防湿シート50と水蒸気透過シート60との間を通り、その一端が防湿シート50の他側まで引き廻されている。
【0018】
一方、破断用紐70の他端はシート20に支持されている。
この例では、シート20の固定具33が取り付けられた側と反対側の側壁略中央部に、切り込み部21が形成されている。そして、破断用紐70の他端には切り込み部21の幅よりも大きい結び目71が形成されており、この結び目71をストッパとして機能させ、切り込み部21に破断用紐70の他端を係止して支持する構成になっている。
【0019】
水蒸気透過シート60は、破断用紐70を上記の如く配設した後に取り付けられており、水蒸気透過シート60の裏面側の周縁部における破断用紐70が通っていない箇所がシール材61を介して防湿シート50に貼着されている。これによって、破断用紐70が加熱ユニット1から引き出される位置が固定されている。
【0020】
加熱ユニット1では、加熱ユニット1の外部に引き出された破断用紐70の一端を引っ張ることで、防湿シート50と水袋30とが同時に破断される。
すなわち、破断用紐70の一端を引っ張ると、防湿シート50はケース10に固定されているため移動しないが、破断用紐70の切り込み部52に係止されている部分が引っ張られて防湿シート50の他端部側に向けて移動するため、防湿シート50が破断される。
水袋30についても同様である。すなわち、水袋30はシート20に固定されているため移動しないが、破断用紐70の水袋30の切り込み部32に係止されている部分が引っ張られて他端部側に移動するため、水袋30が破断される。
【0021】
防湿シート50と水袋30とが同時に開裂されることで、水袋30に封入されていた水が袋の外部に流出し、水袋30上に配置された発熱剤40と接触する。その結果、発熱剤40の水和反応が進行して水蒸気と熱とが発生し、これらが防湿シート50の開裂した箇所を通り、さらに水蒸気透過シート60を透過して加熱ユニット1の外部に放出されることで、被加熱材を良好に加熱することができる。
加熱ユニット1では、防湿シート50が、加熱ユニット1の外部からケース10内に侵入する水分を遮断し、ケース10内に収容された発熱剤40が劣化することを防止するが、破断用紐70により、水袋30のみならず、防湿シート50をも同時に破断するので、被加熱材を加熱する際には、防湿シート50が水蒸気と熱との放出を阻害することはない。
【0022】
また、破断用紐70は、防湿シート50と水蒸気透過シート60との間を通って配設されているため、破断用紐70を引っ張った際に、防湿シート50は破断されるが、水蒸気透過シート60は破断されない。このように防湿シート50のケース10と反対側に、破断用紐70により破断されない水蒸気透過シート60を設けることで、水蒸気と熱との放出を阻害することなく、水和反応により生成される固形物等が加熱ユニット1の外部に漏洩することを防止できる。この水蒸気透過シート60は、防湿シート50の破断された箇所から放出された水蒸気を分散させて、水蒸気透過シート60から均一に放出し、被加熱材を均一に加熱するという機能も併せ持つ。
【0023】
以上のように、加熱ユニット1により被加熱材を良好に加熱することができる。
シート20は、ケース10内部で破断用紐70を支持する破断用紐支持材として用いるが、本実施形態の加熱ユニット1では、ケース10の内面全体に沿ってシート20を設け、この内部に水袋30と発熱剤40とが配置されている。このような形態は、ケース10と反応物とが直接接することがなく、シート20が断熱機能を呈するため、水和反応によって高温が発生してもケース10の熱変形や加熱容器外への熱伝導が抑制される。
さらに、本実施形態では断熱材として吸水性のあるシート20を用いていることで、吸水によって、水和反応の発熱による断熱材自身の万一の発火等を抑制することもできる。
【0024】
また、加熱ユニット1では、シート20内において、底面側から水袋30及び発熱剤40が順次配置されている。これによって、シート20の他、水袋30も断熱機能を呈し、ケース10の発熱による影響をより一層低減できる。また、破断用紐支持材としても機能するシート20と水袋30とを固定具33で固定し、その後、発熱剤40を充填すればよいので、製造も容易である。
さらに、発熱剤40には先端が尖った形状のものもあり、発熱剤40が水袋30の下側に配置されていると、輸送時等に、発熱剤40によって水袋30にピンホール等が形成されるおそれがある。しかし、発熱剤40を水袋30の上側に配置する場合には、係るおそれがない。この理由は定かではないが、本発明者は、水袋30がクッション材として機能し、発熱剤40の水袋30に対する作用が緩和されるためであると推察している。
【0025】
さらに、加熱ユニット1では、破断用紐70が、シール部51の幅よりも短い切り込み部52から引き出されていることで、破断用紐70においてシール部51にて防湿シート50及びケース10に固着されている部分(以下、「紐固着部分」という。)は、シール部51の幅、すなわちフランジ13の幅より狭くなっている。これにより、高気密性を保ちつつ、破断用紐70を容易にシール部51から剥離し、防湿シート50を簡易に開裂することができる。
【0026】
破断用紐70をシール部51から容易に剥離するには、高気密性を保てる範囲内で紐固着部分の長さa(図2)をなるべく短くすることが好ましい。すなわち、紐固着部分の長さa(mm)と、シール部51の幅b(mm)(フランジ13の幅と同等)の比(a/b)を0.4〜0.6とすることが好ましい。長さaは切り込み部52の長さを調整することにより調整できる。
好ましい形態の具体例としては、シール部51の幅bが10mmである場合、紐固着部分の長さaを4mm程度とする形態等が挙げられる。
【0027】
また、加熱ユニット1では切り込み部52が設けられていることで、破断用紐70を引っ張ると、破断用紐70が切り込み部52を起点としてその延在方向に沿って滑らかに移動し、防湿シート50が良好に開裂される。
【0028】
[製造方法]
以下、本発明の加熱ユニットの製造方法の一実施形態例として、前述の加熱ユニット1の製造方法について説明する。
本実施形態の製造方法は、防湿シート50を、シール部51の切り込み部52の周辺部分51A(図2)を残してフランジ13に貼着する工程(1)と、破断用紐70を切り込み部52で開口部12側に折り返す工程(2)と、防湿シート50の切り込み部52の周辺部分51Aをフランジ13に貼着する工程(3)と、水蒸気透過シート60を貼着する工程(4)とを含む方法である。
【0029】
本実施形態の製造方法では、まず、破断用紐70に結び目71を形成し、該結び目71がストッパとなるようにして、破断用紐70をシート20の切り込み部21に挿入する。次いで、破断用紐70がシート20と水袋30の間、水袋30の切り込み部32を順次通過するようにして、シート20と水袋30とを固定具33で固定し、それらをシート20がケース10の内部に沿うように挿入して、水袋30上に発熱剤40を配置する(図3)。
次いで、防湿シート50でケース10の開口部12を覆い、破断用紐70を防湿シート50の切り込み部52に通してケース10の内部から外部に引き出した状態とする(図4)。
【0030】
次いで、工程(1)において、シール部51における切り込み部52の周辺部分51Aを除くシール部分51Bをフランジ13に熱溶着により貼着する(図4)。工程(1)においては、シール部51における周辺部分51Aを貼着させず、破断用紐70を、フランジ13と防湿シート50とでシール部分51Bに固着させる。
【0031】
このとき、フランジ13におけるシール部分51Bに相当する範囲内(工程(1)において貼着される範囲内)で破断用紐70の形状に対応する凹部14(図1参照)が形成されていれば、シール部分51Bにおいて破断用紐70周辺を押圧することが容易になるため、ケース10内部の高度な気密性をより実現しやすくなる。
すなわち凹部14は破断用紐70の前記紐固着部分の長さaを有する凹部であり、この凹部14に沿って破断用紐70が防湿シート50の切り込み部52まで導かれる。
【0032】
本発明の製造方法では、防湿シート50のシール部分51Bの貼着の確実性を高め、気密性に優れた加熱ユニット1をより確実に得る点から、工程(1)を2回繰り返すことが好ましい。
【0033】
工程(1)の後、工程(2)において、ケース10の内部から引き出された破断用紐70を、防湿シート50の切り込み部52で開口部12側へと折り返す(図5)。
【0034】
次いで、工程(3)において防湿シート50のシール部51における切り込み部52の周辺部分51Aをフランジ13に熱溶着により貼着する(図6)。
工程(3)においては、開口部12側に折り返した破断用紐70の周辺部分51Cが加熱されないように熱溶着を行う。
また、工程(3)においては、前記周辺部分51Aがしっかりと貼着される方法であればよく、シール部51における前記周辺部分51Cを除くシール部分51Dを熱溶着することにより周辺部分51Aを貼着する方法が好ましい。
【0035】
工程(4)では、防湿シート50上に水蒸気透過シート60を設置し、シール材61を介して防湿シート50と水蒸気透過シート60とを熱溶着により貼着する(図7)。シール材61は、ケース10から防湿シート50の切り込み部52にて引き出されて折り返された破断用紐70が、水蒸気透過シート60に固着されてしまわないように設ける。
前述のシール部51のシール部分51Dとシール材61の形状が同じ形状であれば、同じヒートシーラを用いて熱溶着を行うことができる。
【0036】
また、本発明の製造方法では、工程(3)におけるシール部51の周辺部分51Aの貼着と、工程(4)におけるシール材61を介した水蒸気透過シート60の貼着とを同時に行ってもよい。すなわち、防湿シート50のシール部51におけるシール部分51D(周辺部分51Aを含んでいる。)の貼着と、シール材61を介した水蒸気透過シート60の貼着を同時に行ってもよい。
また、この場合、シール部51の周辺部分51Aと、シール材61での水蒸気透過シート60の貼着の確実性を向上させる点から、それらを同時に貼着する熱溶着を2回行うことが好ましい。
【0037】
以上説明した本発明の製造方法によれば、貼着不良を生じさせずに、防湿シートを安定してしっかりとフランジに貼着することができる。そのため、本発明の製造方法は、保存中にケース内の発熱剤が反応したり、破断用紐による破断の際に防湿シートの端部がうまく破断されずに捲れて水蒸気透過シートにも開口が生じ、該開口から発熱剤が出てしまうことを高度に抑制できる加熱ユニットを安定して製造できる。
【0038】
なお、本発明の加熱ユニットの製造方法は、前述の加熱ユニット1を製造する方法には限定されない。例えば、凹部14が設けられていないケースを用いる方法であってもよく、シート20として吸水性のないシートを用いて製造する方法であってもよい。また、シート20として吸水性のないシートを用いる場合、該シートはケース内部で破断用紐を支持できる範囲であれば、前述のようなケース内部全体に沿うような形態でなくてもよい。
【0039】
<加熱容器>
次に、図8に基づいて、前述の加熱ユニット1を備えた加熱容器の一実施形態について詳述する。
本実施形態の加熱容器2は、円状底面81を有し、上端に開口部82を有する外側容器本体80と、上端に開口部92を有する類似形状の内側容器本体90とが重ねられた2重容器本体内に、前記加熱ユニット1が収容され、その上に、食材等の被加熱材を収容することが可能な被加熱材容器110と、取り外し可能な蓋体120とが順次取り付けられて概略構成されている。
【0040】
容器本体のうち、外側容器本体80は紙製である。これによって、加熱容器2内部の保温効果が高まり、被加熱材を効率良く加熱できる。しかも、加熱容器2外への熱伝導が抑制されるので、使用者は熱く感じることなく加熱容器2を持つことができる。内側容器本体90の材質は特に制限はなく、樹脂が好ましい。容器本体を2種構造とすることは、容器本体間に介在する空気層によっても、内部の保温性が高められると同時に加熱容器2外への熱伝導が抑制される点で好適である。
【0041】
外側容器本体80、内側容器本体90の側壁には、略同位置に各々貫通孔83、93が形成されており、加熱ユニット1から引き出された破断用紐70は、これら貫通孔を貫通して容器本体の外部に引き出されている。
また、外側容器本体80、内側容器本体90の側壁上部には、各々内面側から外面側に向けて突出した複数の突出部84、94が互いに嵌合するように設けられている。これによって、外側容器本体80に内側容器本体90が取外し可能に固定され、破断用紐70が通る貫通孔83、93の位置がずれないようになっている。
【0042】
さらに、内側容器本体90の底部には、加熱ユニット1のフランジ13より下方が収納される加熱ユニット収納部91が設けられている。これによって、加熱ユニット1が内側容器本体90に取外し可能に固定され、加熱ユニット1から引き出された破断用紐70と貫通孔83、93の位置がずれないようになっている。
また、加熱ユニット収納部91の底面には、ボール紙等の断熱材100が収容されており、加熱ユニット1の底面が直接内側容器本体90に触れないようになっている。
【0043】
被加熱材容器110は、円状底面111を有し、上端に開口部112を有する容器である。該容器は側壁の上部が外方に折り曲げられた形状を有し、この折り曲げ部113が外側容器本体80と内側容器本体90の側壁上部に嵌合し、取外し可能に固定されている。折り曲げ部113の上端面114は平坦面となっている。また、折り曲げ部113の内側(被加熱材収容側)には上端面114より一段低い部分に、別の平坦面115が設けられており、この平坦面115には複数の穴部116が開口されている。
【0044】
蓋体120は、被加熱材容器110の上部形状に沿った周縁部を有する樹脂材からなっている。すなわち、蓋体120の周縁部に沿って、被加熱材容器110の上端面114及び折り曲げ部113の外側部分に沿った平坦面と、側面とからなる角部121が設けられている。さらに、この角部121には、内側(被加熱材容器110側)から外側に向けて盛り上がった突出部122が複数、半径方向に延在している。
かかる突出部122を設けることで、被加熱材容器110と蓋体120との間に、適度な隙間が形成されるので、この隙間を介して、発熱反応によって発生する水蒸気や熱が適度に外部に放出される。これによって、被加熱材容器110の内圧上昇が抑えられ、蓋体120の被加熱材容器110からの離脱が抑えられる。
【0045】
本実施形態の加熱容器2では、被加熱材容器110内に被加熱材を収容し、蓋体120を取り付けた状態で、外側容器本体80から引き出された破断用紐70を引っ張ることで、加熱ユニット1から水蒸気と熱とが発生され、これらが穴部116を通って被加熱材容器110内に導かれ、収容された被加熱材が加熱される。また、被加熱材として食材を収容する場合には、発生した水蒸気と熱により、食材を蒸して調理することも可能である。
なお、被加熱材を蒸す必要がなく、被加熱材容器110の下方から加熱するだけでも充分に加熱できる場合には、被加熱材容器110に穴部116を設けなくてもよい。
【0046】
本実施形態の加熱容器2は前記加熱ユニット1を備えたものであり、さらには、加熱ユニット1の下方に断熱材100を設け、容器本体を2重構造としているので、加熱ユニット1のケース10や、外側容器本体80、内側容器本体90に対して影響を与えることなく、発熱反応を実施することができる。すなわち、反応熱によるケース10等の熱変形や加熱容器2外への熱伝導を抑制しつつ、被加熱材を良好に加熱することができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の加熱ユニット及び加熱容器は、食材等の被加熱材を収容すると共に、これを必要な際に加熱する加熱容器、例えば弁当箱等に好ましく利用できる。
【符号の説明】
【0048】
1 加熱ユニット 10 ケース 12 開口部 13 フランジ 30 水袋 40 発熱剤 50 防湿シート 51 シール部 51A 切り込み部の周辺部分 52 切り込み部 60 水蒸気透過シート 70 破断用紐 2 加熱容器 80、90 容器本体 110 被加熱材容器 120 蓋体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有するケースと、前記開口部を密封する防湿シートと、前記防湿シート上に設けられ、水蒸気を透過する水蒸気透過シートと、前記ケースの内部に収容された水袋と、前記ケースの内部に収容され、水和反応により発熱する発熱剤と、前記水袋及び前記防湿シートを破断するための破断用紐とを具備し、
前記ケースの前記開口部にフランジが形成され、該フランジに前記防湿シートが貼着されており、
前記防湿シートの前記フランジに貼着されるシール部に、前記フランジの幅よりも短い切り込み部が形成されており、
前記破断用紐の一端が前記ケースの内部から、前記水袋の水が封入されていない部分を通り、かつ前記シール部を通って前記切り込み部から前記ケースの外部に引き出されている加熱ユニットを製造する方法であって、
前記防湿シートを、前記シール部の前記切り込み部の周辺部分を残して前記フランジに貼着する工程(1)と、
前記破断用紐を前記切り込み部で前記開口部側に折り返す工程(2)と、
前記防湿シートの前記切り込み部の周辺部分を前記フランジに貼着する工程(3)と、
前記水蒸気透過シートを貼着する工程(4)と、を含むことを特徴とする加熱ユニットの製造方法。
【請求項2】
前記工程(3)の貼着と工程(4)の貼着とを同時に行う、請求項1に記載の加熱ユニットの製造方法。
【請求項3】
前記フランジの前記工程(1)で前記防湿シートが貼着される範囲内に、前記破断用紐の形状に対応する凹部が形成されている、請求項1又は2に記載の加熱ユニットの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかの製造方法により得られる加熱ユニットと、該加熱ユニットを収容する容器本体とを具備し、前記加熱ユニットに備えられた前記破断用紐の一端が、前記容器本体を貫通して前記容器本体の外部に引き出されている加熱容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−184039(P2010−184039A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−30152(P2009−30152)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(000010065)フクビ化学工業株式会社 (150)
【出願人】(504281994)双日プラネット株式会社 (3)
【Fターム(参考)】