説明

加熱回転炉

【構成】 加熱回転炉10は、磁性材料からなる回転炉12およびそれの外側に設けられたコイル42を含む。コイル42から、高周波電源44から供給される高周波電力が発生される。その高周波電力によって回転炉12の周側面において誘導電流が発生し、その誘導電流によって回転炉12の周側面が発熱する。この熱が回転炉12内に放散され、回転炉内が加熱される。
【効果】 回転炉の周側面が発熱するので、熱効率が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は加熱回転炉に関し、たとえば粉体などを加熱処理する、加熱回転炉に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の加熱回転炉の一例が特許文献1に開示される。特許文献1に示す加熱回転炉では、ステンレス鋼やモリブデン合金からなる真空炉を軸周りに回転させ、その真空炉と同軸にかつ真空炉を取り囲むように配置した円筒状体の加熱手段によって炉内を加熱する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−284052号公報[F27B 7/06 B22F 1/00 F27B 7/12 F27B 7/24]
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている加熱回転炉では、加熱手段は回転炉から離れて炉内を加熱するものであるため、熱効率が必ずしもよくない、という問題がある。
【0005】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、加熱回転炉を提供することである。
【0006】
この発明の他の目的は、熱効率の向上が期待できる、加熱回転炉を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を採用した。なお、括弧内の参照符号および補足説明等は、この発明の理解を助けるために後述する実施の形態との対応関係を示したものであって、この発明を何ら限定するものではない。
【0008】
第1の発明は、少なくとも一部に磁性材料を含みかつ回転可能に支持された回転炉、および回転炉の外側に設けられて高周波磁力線を発生する高周波磁力線発生手段を備える、加熱回転炉である。
【0009】
第1の発明では、加熱回転炉(10:実施例において相当する部分を例示する参照符号。以下、同じ。)は、回転炉(12)を含み、この回転炉は少なくとも一部に磁性材料を含んで形成される。たとえばコイル(42)のような高周波磁力線発生手段は、高周波電源からの高周波電力を受けて、それの周囲に高周波磁力線を発生する。回転炉の少なくとも一部に存在する磁性材料がその高周波磁力線に電磁的に結合し、それによって、高周波磁力線によって誘導電流(渦電流)がその磁性材料部分に生じる。その誘導電流によってジュール熱が生じ、その熱が回転炉内部に放散される。したがって、回転炉内が誘導電流によって発生した熱で加熱される。
【0010】
第1の発明によれば、誘導電流によって回転炉自身が発熱するので、背景技術のように間接的な加熱手段に比べて、熱効率がよい。したがって、加熱回転炉を全体としてコンパクトに構成することができる。
【0011】
第2の発明は、第1の発明に従属し、回転炉は全体として磁性材料で形成される、加熱回転炉である。
【0012】
第2の発明では、回転炉(12)が全体として磁性材料で形成されるので、広い範囲において発熱させることができる。
【0013】
第3の発明は、第1の発明に従属し、回転炉は全体として非磁性材料で形成され、一部に磁性材料を含む、加熱回転炉である。
【0014】
第3の発明では、一部に磁性材料を含むので、発熱する範囲をその磁性材料の部分に限定することができる。
【0015】
第4の発明は、第1ないし第3の発明のいずれかに従属し、高周波磁力線発生手段は回転炉の周囲に設けられるコイルを含み、さらに非磁性材料からなり、コイルを固定的に保持する保持手段を備える、加熱回転炉である。
【0016】
第4の発明では、高周波磁力線発生手段は、回転炉(12)の全周にわたって巻回されたり、或いは周方向の一部においてのみ折り返して、または渦巻状に形成されたコイル(42)を含む。そのコイル(42)は、非磁性材料からなる保持手段、たとえば回転炉(12)の高さ方向の一部において回転炉を囲繞する環状体で形成される。そのような保持手段がコイル(42)を固定的に保持する。
【0017】
第5の発明は、第4の発明に従属し、保持手段は、非磁性材料で形成され、回転炉を全体に囲繞する外被を含む、加熱回転炉である。
【0018】
第5の発明では、保持手段を構成する外被(46)が回転炉(12)を全体に囲繞するので、回転炉(12)の外面は大気から熱的にほぼ完全に遮断される。したがって、回転炉(12)の外面からの熱の放散が抑制され、熱効率が一層高められる。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、回転炉内に直接熱を与えることができるので、熱効率が向上する。
【0020】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1はこの発明の加熱回転炉の一実施例を示す図解図である。
【図2】図2はこの実施例の加熱回転炉の断面構造を示す図解図である。
【図3】図3はこの発明の他の実施例を示す断面図解図である。
【図4】図4はこの発明のその他の実施例を示す断面図解図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1および図2を参照して、この発明の一実施例の加熱回転炉10は、回転炉12を含み、回転炉12は有底円筒形状であり、それの底部14には孔16が形成され、その孔16に、たとえば鉄やステンレスのような金属からなる空気管18の一端が臨まされる。したがって、この回転炉12の内部には空気管18から所定温度の空気が供給される。たとえば、炉内温度を低くしたいときには空気管18から低温の空気が供給され、炉内温度を少なくとも下げたくないときには加熱空気が供給される。
【0023】
ただし、回転炉12内に冷媒管を設け、この冷媒管(図示せず)にたとえば水のような冷媒を流して炉内温度を低下させることも可能である。
【0024】
回転炉12には適宜の蓋体20が、開閉可能に装着される。この蓋体20の一部に、回転炉12の内部に連通するように、排気管22が設けられる。この排気管22は通常封止されていて、必要なとき開放されて、回転炉12からガスを排出する。
【0025】
回転炉12は、この実施例では、底部14を含んで全体としてたとえば鉄などの磁性材料で形成され、空気管18が回転炉12の底部14に固着される。ただし、蓋体20は磁性材料でも非磁性材料でも、どちらで形成されてもよい。
【0026】
空気管18の一端側外周に、たとえば鉄のような金属ブロック24が、たとえば溶接やろう付けのような適宜の手段によって、固着される。金属ブロック24の上面には適宜数のねじ孔(雌ねじ)が形成され、そのねじ孔に、回転炉12の底部14を貫通したボルト26を螺入することによって、金属ブロック24が底部14の底面に固着される。金属ブロック24が外周に一体に付着されている空気管18は、したがって、金属ブロック24を介して、回転炉12の底部14底面に固着される。
【0027】
空気管18は、それの軸方向に間隔を隔てた2箇所において、たとえばボールベアリングのような軸受け28によって回転可能に支持される。これらの軸受け28は、詳しくは図示していないが、図2に示すたとえば鉄などの金属で形成された取付け台29によって固定的に支持される。上述のように空気管18が回転炉12に固着されるのであるから、この回転炉12が結局、取付け台29に固着された軸受け28によって回転可能に支持されることになり、空気管18が回転炉12の回転軸として機能する。ただし、取付け台29と空気管18との間には間隙があり、したがって、空気管18が回転するとき取付け台29に接触することない。
【0028】
また、図2から分かるように、取付け台29の上面が右下がりに傾斜しているので、その上面に固着された軸受け28の軸がその傾斜に応じて右に傾斜している。したがって、その軸受け28に挿通される回転軸としての空気管18も右に傾斜することになり、その傾斜している回転軸で支持される回転炉12も右に傾斜する。したがって、空気管18を回転軸として回転炉12が回転するとき、回転炉12内に収容されている粉体のような被処理物が規則的に上下に変位することになり、それによって自然に攪拌される。ただし、積極的に攪拌機能を付与するために、回転炉12内に攪拌羽根のような攪拌手段を設けることもできる。
【0029】
2つの軸受け28の間で、空気管18の外周にプーリ30が固着され、このプーリ30には、モータ32の出力軸34に固着されたプーリ36との間に、ベルト38が掛け渡される。したがって、モータ32によって回転炉12が空気管18を回転軸として回転される。
【0030】
回転炉12の外周を囲繞するように、外周とは間隔を隔てて、たとえばステンレスやアルミニウムのような非磁性材料からなる環状体40が固定的に設けられる。この環状体40の外周にはコイル42が巻き付けられる。コイル42には高周波電源44から高周波電流が流され、したがって、コイル42から高周波磁力線が発生される。つまり、コイル42が高周波磁力線発生手段として機能し、環状体40が高周波磁力線発生手段の保持手段として機能する。
【0031】
コイル42から発生した高周波磁力線が、このコイル42と磁気結合している、磁性材料からなる回転炉12の周側面に渦電流(誘導電流)を生じる。その渦電流によって、回転炉12それ自体の周面に発熱を生じる。発生された熱はそのまま回転炉12の内部に放散され、したがって、回転炉12内が直接加熱される。したがって、回転炉12に入れられた被処理物たとえば粉体が、効率よく加熱され得る。
【0032】
なお、たとえば回転炉12の内部にたとえば熱電対のような温度センサ(図示せず)を配置し、この温度センサで炉内温度を測定し、その温度に基づいて高周波電源44による高周波電力を制御(オン/オフのデューティ比や出力電力量の)すれば、コイル42から発生する高周波磁力線が変化し、回転炉12の炉内温度を直接制御できる。
【0033】
上述の実施例では、回転炉12が全体として磁性材料で形成されので、コイル42の高周波磁力線の及ぶ範囲を広くすれば、広い範囲において発熱させることができる。
【0034】
この発明の他の実施例が図3に示される。図3を参照して、この実施例の加熱回転炉10は、以下に説明する点を除いて図1および図2で説明した先の実施例と同様であり、ここでは重複する説明は省略する。
【0035】
図3の実施例の加熱回転炉10では、図1および図2に示した先の実施例図においては大部分が露出していた回転炉12が、回転炉12と同様の有底円筒形に形成される外被46によって、覆われる。外被46の周側面内面は、回転炉12の周側面外面と離間していて、底部48と底部14も離間していて、それらの間に前述の金属ブロック24が配置される。外被46は全体としてたとえばステンレスのような非磁性体で形成され、その開放側に、蓋体50が開閉可能に設けられる。この実施例の加熱回転炉10においては、このように外被46に蓋体50を設けているので、回転炉12は外被46および蓋体50によって完全に覆われる。そのため、回転炉12の外面は大気から熱的にほぼ完全に遮断される。したがって、回転炉12の外面からの熱の放散が抑制され、熱効率が一層高められる。
【0036】
そして、外被46の該当する場所の外周に、コイル42を巻回する。したがって、先の実施例と同じように、コイル42から発生された高周波磁力線によって回転炉12に渦電流が発生し、それによって回転炉12自体が発熱する。
【0037】
なお、回転炉12が外被46および蓋体50によって完全に覆われるので、この実施例では、先の実施例で使用していた蓋体20は省略する。
【0038】
また、図3の実施例では、外被46の開放側の周側面の一部に排気管52を設ける。この排気管52は、回転炉12と外被46との間の隙間に連通し、回転炉12の開放側から出たガスをその隙間から導出して排気する。
【0039】
この実施例では、好ましくは、この排気管52の内部に温度センサ54を配置する。この温度センサ54で排気の温度を測定し、測定した温度によって、高周波電源44による高周波電力を制御(オン/オフのデューティ比や出力電力量の)することによって、コイル42から発生する高周波磁力線が変化し、回転炉12内の温度を間接的に制御することができる。
【0040】
図4を参照して、この図4にはこの発明のその他の実施例が図解される。この実施例の加熱回転炉10は、以下に説明する点を除いて図1および図2に示した実施例または図3に示した実施例と同様であり、ここでは重複する説明は省略する。
【0041】
先の実施例においてはいずれも、回転炉12全体が鉄などの磁性材料で形成されたが、この実施例では、回転炉12は全体としてステンレスなどの非磁性材料で形成する。そして、回転炉12の周側面の内面(外面でもよい)に磁性材料からなる磁性体56を固着する。したがって、コイル42からの高周波磁力線に対して、回転炉12を形成する非磁性材料部分では誘導電流は発生しないが、磁性体56に誘導電流が生じることによって、この磁性体56が発熱し、その熱が炉内に放射され、炉内が加熱される。
【0042】
このように、回転炉12を全体を磁性材料で形成する必要はなく、少なくとも一部に磁性材料を含んで形成されればよい。磁性材料で形成される部分の付近が効率よく加熱されるので、回転炉12の一部のみを磁性材料で形成する実施例においては、加熱すべき部分に磁性材料を配置するようにすればよい。そうすれば、必要部分だけで発熱させることができるので、つまり、発熱する範囲をその磁性材料の部分に限定することができるので、さらなる熱効率の向上が期待できる。
【0043】
なお、上で説明した各実施例では、高周波磁力線発生手段を構成するコイルは回転炉12を全周に巻回されているが、コイルは回転炉を全周に巻回される必要はなく、周方向の一部にのみ、折り返して、または渦巻状に形成されてもよい。
【0044】
さらに、上述の各実施例では、空気管18を回転炉12の回転軸として利用したので、別に空気管を設ける場合に比べて、構造が簡単で、小型化可能であるが、空気管が不要な場合、あるいは別の場所に空気管を設けたほうがよい場合には、空気管18を中実の軸に置き換えて回転軸としてのみ機能させればよい。
【0045】
また、上で説明した各実施例はそれぞれ独立したものであるが、それぞれの構成部分または要素(コンポーネント)を適宜組み合わせて、さらに別の実施例を構成することもできるものである。たとえば、図4の実施例の回転炉12を図1および図2の実施例の回転炉と置き換えるなどのように。
【符号の説明】
【0046】
10 …加熱回転炉
12 …回転炉
18 …空気管
28 …軸受け
32 …モータ
42 …コイル
44 …高周波電源
46 …外被
56 …磁性体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部に磁性材料を含みかつ回転可能に支持された回転炉、および
前記回転炉の外側に設けられて高周波磁力線を発生する高周波磁力線発生手段を備える、加熱回転炉。
【請求項2】
前記回転炉は全体として磁性材料で形成される、請求項1記載の加熱回転炉。
【請求項3】
前記回転炉は全体として非磁性材料で形成され、一部に磁性材料を含む、請求項1記載の加熱回転炉。
【請求項4】
前記高周波電力発生手段は前記回転炉の周囲に設けられるコイルを含み、さらに
非磁性材料からなり、前記コイルを固定的に保持する保持手段を備える、請求項1ないし3のいずれかに記載の加熱回転炉。
【請求項5】
前記保持手段は、非磁性材料で形成され、前記回転炉を全材料に囲繞する外被を含む、請求項4記載の加熱回転炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−236822(P2010−236822A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−87020(P2009−87020)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(391053696)JOHNAN株式会社 (16)
【Fターム(参考)】