説明

加熱消毒用袋体

【課題】水蒸気の放出が確実、かつ、哺乳びんの出し入れが容易で、冷却時にマチフィルムが哺乳びんの口部に密着して哺乳びん又は袋体が変形することのない加熱消毒用袋体を得る。
【解決手段】哺乳びん60を内部に収容した状態で電子レンジで加熱するプラスチックフィルム製の加熱消毒用袋体1。この袋体1は、上面フィルム11と、下面フィルム12と、上面フィルム及び下面フィルムのそれぞれ一端部及び他端部に設けたマチフィルム13,14と、上面フィルム11及びマチフィルム13の一端部に設けた開閉自在なジッパー20とからなる。マチフィルム13には袋体1の高さ方向の中央部より上方に複数の水蒸気放出用開口部16が形成されている。少なくとも一つの開口部16が収容されている哺乳びん60の口部61に対向して位置し、冷却時にマチフィルム13が哺乳びん60の口部61に密着して哺乳びんの内部が負圧になって哺乳びん又は袋体が変形することが未然に防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱消毒用袋体、特に、哺乳びんを内部に収容した状態で電子レンジで加熱するプラスチックフィルム製の加熱消毒用袋体に関する。
【背景技術】
【0002】
洗浄済みの哺乳びんを電子レンジを用いて加熱消毒するためのバッグとして、特許文献1に記載のものが知られている。この加熱消毒用バッグは、図5及び図6に示すように、上面フィルム51の中央部に水蒸気放出用の開口部52を設け、プラスチックフィルム製のバッグ本体50の入口側と底部側に巾出し用のマチ部53,54を設けて哺乳びん60を収容できる立体的構造としたものである。なお、図5は使用前の断面図、図6は使用時の断面図である。また、入口側には開閉自在なジッパー56が設けられている。
【0003】
この加熱消毒用バッグによれば、確かに、水蒸気の放出が確実で、哺乳びん60の出し入れが容易な立体形状とすることができる。しかしながら、図6に示すように、哺乳びん60の口部61がマチ部53に密着した状態で冷却されると、哺乳びん60の内部が負圧となり、哺乳びん60又はバッグ自体が変形してしまうという不具合を有していた。
【特許文献1】特開2002−301141号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明の目的は、水蒸気の放出が確実で、哺乳びんの出し入れが容易であることは勿論、冷却時にマチフィルムが哺乳びんの口部に密着して哺乳びん又は袋体が変形することのない加熱消毒用袋体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の目的を達成するため、本発明は、
哺乳びんを内部に収容した状態で電子レンジで加熱するプラスチックフィルム製の加熱消毒用袋体であって、
前記加熱消毒用袋体は、上面フィルムと、下面フィルムと、上面フィルム及び下面フィルムのそれぞれ一端部及び他端部に設けた第1及び第2のマチフィルムと、前記上面フィルム及び前記第1のマチフィルムの一端部に設けた開閉自在なジッパーとからなり、
前記第1のマチフィルムには前記袋体の高さ方向のほぼ中央部又は中央部より上方に複数の水蒸気放出用開口部が形成されていること、
を特徴とする。
【0006】
本発明に係る加熱消毒用袋体は、袋体に哺乳びんなどと適量の水を入れて電子レンジで加熱し、沸騰した水蒸気にて哺乳びんなどを消毒する。哺乳びんはその底部側から袋体に挿入して収容する。第1のマチフィルムには複数の水蒸気放出用開口部が形成されているため、少なくとも一つの開口部が収容されている哺乳びんの口部に対向して位置し、冷却時に第1のマチフィルムが哺乳びん口部に密着していても哺乳びんの内部が負圧になることが防止され、哺乳びん又は袋体が変形する不具合が防止される。また、水蒸気放出用開口部が袋体の高さ方向のほぼ中央部又は中央部より上方に形成されているために、袋体からの沸騰した水の吹きこぼれがなく、水蒸気の放出が確実である。しかも、第1及び第2のマチフィルムが設けられているために哺乳びんの出し入れが容易な立体形状とすることができることは勿論である。
【0007】
本発明に係る加熱消毒用袋体において、前記複数の開口部は25mm以下の間隔で配置されていることが好ましい。哺乳びんは本体の外径が40mm、口部の外径が30mmであることが通常であり、開口部が25mm以下の間隔を有していれば、少なくとも一つの開口部が一つの哺乳びんの口部に対向して位置することになる。
【0008】
また、前記複数の開口部はスリット状に形成されていることが好ましい。開口部がスリット状であれば、製造時に“かす”が発生することがない。
【0009】
なお、本発明において、上面フィルム、下面フィルム、第1及び第2のマチフィルムという用語を用いたが、これらのフィルムは必ずしも独立した別個のフィルムを意味するものではなく、第1又は第2のマチフィルムが上面フィルムや下面フィルムと一体物であってもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係る加熱消毒用袋体の実施例について、添付図面を参照して説明する。
【0011】
図1に一実施例である加熱消毒用袋体1を示す。この袋体1は、授乳済みで洗浄した哺乳びん60や乳首、キャップなどを適量の水とともに内部に収容した状態で(図2参照)、電子レンジで加熱し、沸騰した水蒸気で哺乳びんなどを消毒するプラスチックフィルム製の加熱消毒用袋体である。なお、以下に説明するように、哺乳びん又は袋体1の変形を防止するために、哺乳びんはその底部側から袋体1に挿入して収容することが必要となる。
【0012】
加熱消毒用袋体1は、上面フィルム11と、下面フィルム12と、上面フィルム11及び下面フィルム12のそれぞれ一端部及び他端部に設けた第1及び第2のマチフィルム13,14と、上面フィルム11及び第1のマチフィルム13の一端部に設けた開閉自在なジッパー20とから構成されている。ジッパー20は、互いに嵌合/開放自在な凹部21と凸部22とからなる従来周知のもので、嵌合及び開放用のスライダ25が設けられている。
【0013】
それぞれのフィルム11〜14は、各辺部分a〜dで溶着され、一端部(ジッパー20部分)のみで開口される袋体1を構成している。第1及び第2のマチフィルム13,14は使用前の状態では、図1(B)に示すように、二つ折り状態に畳まれており、哺乳びん60を収容する際には、図2に示すように、袋体1が立体形状をなすように開かれる。
【0014】
この加熱消毒用袋体1は、一端部のジッパー20を開放するとともに第1及び第2のマチフィルム13,14を広げた状態で、2本の哺乳びん60を収容可能とされている(図3参照)。この収容状態で袋体1に適量の水、好ましくは、3分間程度で沸騰、消毒が終了する約70mlの水を入れ(水の高さを図2及び図3にラインLで示す)、ジッパー20を閉じ、電子レンジに入れて加熱し、沸騰によって発生する水蒸気で哺乳びん60などを消毒する。なお、1本の哺乳びん60のみであっても収容して加熱消毒可能である。
【0015】
ところで、加熱消毒用袋体1には、図3に示すように、第1のマチフィルム13に袋体1の高さ方向の中央部より上方に複数の水蒸気放出用開口部16が形成されている。この開口部16は電子レンジ内での加熱時に水蒸気を袋体1外に放出し、袋体1の破裂を防止するためのものである。
【0016】
電子レンジによる加熱消毒後は、電子レンジ内で自然冷却し、取り出した袋体1を傾けて開口部16から排水するか、それとともにジッパー20を開いて排水し、哺乳びんなどを袋体1から取り出す。
【0017】
この加熱消毒用袋体1において、第1のマチフィルム13には複数の水蒸気放出用開口部16が形成されているため、開口部16が収容されている哺乳びん60の口部61に対向して位置し、冷却時に第1のマチフィルム13が哺乳びん60の口部61に密着しても
開口部16が空気抜きとなって哺乳びん60の内部が負圧になることが未然に防止される。従って、負圧による哺乳びん60又は袋体1の変形が防止される。
【0018】
また、水蒸気放出用開口部16が袋体1の高さ方向の中央部より上方に形成されているために水蒸気の放出が確実である。開口部16の高さ位置は、沸騰した水が開口部16から吹きこぼれない高さであればよく、ほぼ中央部又は中央部より上方に形成されていることが好ましい。さらに、第1及び第2のマチフィルム13,14が設けられているために哺乳びん60の出し入れが容易な立体形状とすることができる。
【0019】
通常、哺乳びん60は本体部の外径が40mm、口部61の外径が30mmである。従って、開口部16が25mm以下の間隔Pに配置されていれば、少なくとも一つの開口部16が一つの哺乳びん60の口部61に対向して位置することになる。
【0020】
なお、複数の開口部16は小穴形状にくり抜いた形状のものを示したが、図4(A),(B)に示すように、螺旋形状やS字形状などのスリット状に形成されていてもよい。開口部16がスリット状であれば、製造時に“かす”が発生することがない。“かす”の捕集作業や捕集手段が不要であることは、製袋工程にとって大きな利点である。また、スリット状開口部16の両端部はスリットの内側を向くように形成されている。両端部がスリットの外側を向いていると、両端部から裂けやすいが、両端部が内側を向いていれば裂けにくくなる。
【0021】
(他の実施例)
なお、本発明に係る加熱消毒用袋体は前記実施例に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る加熱消毒用袋体の一実施例を示し、(A)は平面図、(B)は断面図である。
【図2】前記加熱消毒用袋体に哺乳びんを収容した状態を示す断面図である。
【図3】前記加熱消毒用袋体に哺乳びんを収容した状態を示す正面図である。
【図4】水蒸気放出用開口部の他の例を示す説明図である。
【図5】従来の加熱消毒用バッグを示す断面図である。
【図6】従来の加熱消毒用バッグに哺乳びんを収容した状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0023】
1…加熱消毒用袋体
11…上面フィルム
12…下面フィルム
13…第1のマチフィルム
14…第2のマチフィルム
16…開口部
20…ジッパー
60…哺乳びん

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳びんを内部に収容した状態で電子レンジで加熱するプラスチックフィルム製の加熱消毒用袋体であって、
前記加熱消毒用袋体は、上面フィルムと、下面フィルムと、上面フィルム及び下面フィルムのそれぞれ一端部及び他端部に設けた第1及び第2のマチフィルムと、前記上面フィルム及び前記第1のマチフィルムの一端部に設けた開閉自在なジッパーとからなり、
前記第1のマチフィルムには前記袋体の高さ方向のほぼ中央部又は中央部より上方に複数の水蒸気放出用開口部が形成されていること、
を特徴とする加熱消毒用袋体。
【請求項2】
前記複数の開口部は25mm以下の間隔で配置されていることを特徴とする請求項1に記載の加熱消毒用袋体。
【請求項3】
前記複数の開口部はスリット状に形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の加熱消毒用袋体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−331776(P2007−331776A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−163684(P2006−163684)
【出願日】平成18年6月13日(2006.6.13)
【特許番号】特許第3839841号(P3839841)
【特許公報発行日】平成18年11月1日(2006.11.1)
【出願人】(000107284)ジェクス株式会社 (26)
【出願人】(391020757)株式会社奥田 (3)
【出願人】(391022234)石崎資材株式会社 (18)
【Fターム(参考)】