説明

加熱消毒装置および加熱消毒方法

【課題】 土壌の加熱消毒にかかる手間を可能なかぎり少なくすると共に、土壌の加熱消毒にかける時間とコストを少なくすることができる加熱消毒装置および加熱消毒方法を提供すること。
【解決手段】 土壌Gを耕起する耕耘体7と耕起した土壌G’に散水する散水器8とを有し、車両2に取り付けられる耕耘散水装置4、および、土壌Gを消毒するための加熱流体Bを生成するボイラ5と生成された加熱流体を前記散水器に送るポンプ6とを有する加熱流体生成装置3からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場などの所定の領域(この明細書では、これらを単に圃場という)の土壌を加熱消毒するために加熱流体によって土壌の消毒を行なう加熱消毒装置および加熱消毒方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より圃場の土壌を消毒するために、薬剤を用いることがあるが、これは自然環境などに悪影響を及ぼすおそれがあることに加えて、その使用についても制限がある。そこで、近年では、圃場の土壌を加熱流体(一般的には熱湯である)を用いて加熱消毒することが行われている。
【0003】
すなわち、加熱消毒の対象となる圃場の各部に散水ノズルを備えた複数の散水管を配置し、これらの散水管を用いて一斉に熱湯を散布する。次いで、処理後の圃場の全面を覆うようにビニールシートなどの断熱被覆シートを敷設すること(以下、ホース式散水という)が行われている。これにより、熱湯散布後の長い時間をかけて土壌の温度を高く保つことができ、その加熱消毒を行なうことができる。しかしながら、前記ホース式散水を行うためには大掛かりで長い時間と労力がかかる前準備が必要であるだけでなく、熱湯散布後にも長い時間をかけて加熱消毒処理を行なう必要があり、かつ、後片付けにも多大の時間と労力がかかるという問題があった。
【0004】
そこで、本願出願人は特許文献1に示すように、被牽引型の走行フレームに加熱流体の供給管を設け、この供給管に熱湯を供給しながら走行フレームを牽引することにより、圃場を移動しながら集中的に熱湯を散布して、その加熱消毒を行なうこと(以下、牽引式散水という)を提案し、実施するに至っている。これによって、加熱消毒処理の前準備や後片付けにかかる手間を少なくすることができるので有用である。また、特許文献1に示される走行フレームは加熱消毒の対象となっている圃場の凹凸によって走行フレームが斜めになったとしても、その軌道を自動修正することができるので、安定した加熱消毒処理を行なうことが可能である。
【特許文献1】特許第3538607号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記ホース式散水および牽引式散水の加熱消毒装置は何れも圃場の上から熱湯を散布する方法であるので、土壌の透水性や傾斜による影響を受けるという問題があった。つまり、法面などの傾斜した部分では、せっかく散布した熱湯が傾斜によって流れてしまい、下層部分においては十分な加熱消毒を行うことができなかった。また、透水性が悪い土壌では高温の熱湯が土壌に浸透しないので、下層部分の加熱消毒を行えないことがあった。
【0006】
つまり、従来の加熱消毒装置は何れも加熱消毒の対象となっている圃場の状態に応じて加熱消毒の効果が一様に現れることがなく、それだけ加熱消毒処理のムラが発生することがあった。ゆえに、従来の加熱消毒の方法では、全ての部分において十分に加熱消毒するために散布する熱湯の量は必然的に多くなっていた。
【0007】
加えて、従来の加熱消毒装置ではホース式散水および牽引式散水の何れを行なう場合にも散水ホースや走行フレームのような比較的大掛かりな特殊器具を用いる必要があるので、加熱消毒のための前準備を幾らかでも行なう必要があるだけでなく、各作業者はこれらの特殊器具を使用するための技能を身につける必要もあった。
【0008】
本発明は上述の事柄を考慮に入れてなされたものであって、その目的は、土壌の加熱消毒にかかる手間を可能なかぎり少なくすると共に、土壌の加熱消毒にかける時間とコストを少なくすることができる加熱消毒装置および加熱消毒方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の加熱消毒装置は、土壌を耕起する耕耘体と耕起した土壌に散水する散水器とを有し、車両に取り付けられる耕耘散水装置、および、土壌を消毒するための加熱流体を生成するボイラと生成された加熱流体を前記散水器に送るポンプとを有する加熱流体生成装置からなることを特徴としている。なお、本発明における加熱流体とは熱湯だけでなく蒸気や過熱蒸気を含む。また、前記散水器は例えば、耕耘体に沿って設けられて耕起された土壌に万遍なく散水するための散水ノズルを備えた散水管である。
【0010】
前記車両がトラクタであってもよい(請求項2)。
【0011】
前記耕耘散水装置が、加熱消毒処理後の土壌を被覆するための断熱被覆シートの一端を掛合させる掛合部を備えてあってもよい(請求項3)。この断熱被覆シートは少なくとも外気との接触を抑えるものであればよく、例えば比較的入手しやすいビニールシートなどを用いることができる。
【0012】
前記加熱流体生成装置を耕耘散水装置に一体的に形成してあってもよい(請求項4)。
【0013】
前記加熱流体生成装置を耕耘散水装置および前記車両から離れた位置に設置し、前記加熱流体を散水管に供給するための給水可撓管を備えてあってもよい(請求項5)。
【0014】
請求項6に記載の加熱消毒方法は、土壌を耕起する耕耘体と耕起した土壌に散水する散水器とを有する耕耘散水装置を車両に取付け、前記耕耘体により土壌を耕起しながら、加熱流体を前記散水器から散水して土壌を加熱消毒することを特徴としている。
【0015】
前記耕耘散水装置に、加熱消毒処理後の土壌を被覆するための断熱被覆シートの一端を掛合させる一方、前記断熱被覆シートの他端を加熱消毒の対象となっている領域の端部に固定してもよい(請求項7)。前記断熱被覆シートは折り畳んで、その他端をアンカーなどによって圃場の端部に固定することも可能であるが、断熱被覆シートを巻き取ってなるロールを回動自在に設置することにより、この断熱被覆シートの他端を圃場の端部に固定してあってもよい。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の加熱消毒装置は、土壌を耕起しながら加熱流体を散布するので、深いところに位置する土壌も含めて耕起した全ての土壌を一気に加熱することができる。つまり、加熱消毒する必要のある土壌の全てを菌類の死滅する約55℃以上に熱する時間が大幅に短縮される。また、加熱消毒処理にかかる時間を短縮できるので、作業労力を少なくし、水や燃料の消費量を削減できる。加えて、耕起した全ての土壌を確実に昇温できるので、加熱消毒処理のムラをなくすことができる。つまり、圃場の傾斜(傾斜圃場や法面を含む)、透水性、湿り具合などにほとんど全く影響を受けずに確実に加熱消毒処理を行うことができる。また、従来のように加熱消毒処理のための前準備を行なう必要がない。
【0017】
前記車両がトラクタである場合(請求項2)には、作業者は、使い慣れた既存のトラクタに本発明の加熱消毒装置を取り付けて、簡単に通常の耕耘作業を行うのとほゞ同じ感覚で加熱消毒処理を行うことができる。そして、通常の耕起作業と兼ねることができ、散水量も少ないので圃場の乾燥も早く、定植までの期間を短縮できる。加えて、土壌を耕起しながら加熱消毒することにより、従来のように断熱被覆シートによって覆わなくても十分に高温に加熱できるので、露地での広い圃場でも加熱消毒処理が可能になる。
【0018】
前記耕耘散水装置が、加熱消毒処理後の土壌を被覆するための断熱被覆シートの一端を掛合させる掛合部を備えてなる場合(請求項3)には、加熱消毒装置による加熱消毒処理後の土壌を断熱被覆シートによって覆うことができるので、外気温度に関係なく土壌の温度を長時間にわたって保つことができるので、より確実な加熱消毒処理を行うことができる。なお、作業者は耕耘機やトラクタなどの農作業用の車両を前進させているだけで、断熱被覆シートによる被覆を行うことができるので、それだけ簡便である。断熱被覆シートは容易に入手できるビニールシートで十分であるが、それ自体に断熱効果を持つものであってもよい。
【0019】
前記加熱流体生成装置を耕耘散水装置に一体的に形成してある場合(請求項4)には、加熱流体生成装置によって生成される加熱流体の温度を高く保ったままの状態で、この加熱流体をすぐに土壌に散布することができるので、それだけ土壌の温度を一気に引き上げることができる。
【0020】
前記加熱流体生成装置を耕耘散水装置および前記車両から離れた位置に設置し、前記加熱流体を散水管に供給するための給水可撓管を備えてなる場合(請求項5)には、大型の加熱流体生成装置を設置することが可能であるから、多量の加熱流体を生成することができる。したがって、加熱消毒処理をより早く確実に行うことができる。
【0021】
請求項6に記載の加熱消毒方法は、既存の車両に耕耘散水装置を取り付けて、車両によって土壌を耕起すると同時にその加熱消毒を行なうので、深いところを含む耕起した全ての土壌を一気にまた確実に加熱消毒でき、作業時間が大幅に短縮されると共に、加熱消毒処理のムラを無くすことができる。ゆえに、傾斜した圃場や透水性などの土壌の状況に影響されない確実な加熱消毒を行うことができる。また、作業者は使い慣れたトラクタや耕耘機に、本発明の加熱消毒装置を取り付けるだけで加熱消毒を行うので、加熱消毒処理を行うための前準備がほとんどなく、作業労力を少なくできる。そして、水や燃料の消費量を削減できる。加えて、通常の耕起作業と兼ねることができ、圃場の乾燥も早く、定植までの期間を短縮できる。また、露地での広い圃場でも加熱消毒処理が可能になる。
【0022】
前記耕耘散水装置に、加熱消毒処理後の土壌を被覆するための断熱被覆シートの一端を掛合させる一方、前記断熱被覆シートの他端を加熱消毒の対象となっている領域の端部に固定する場合(請求項7)には、外気温度に関係なく加熱消毒処理後の土壌の温度を長時間にわたって高く保つことができ、より確実な加熱消毒処理を行うことができる。また、作業者は断熱被覆シートによる被覆を特に意識せずに行うことができる。なお、断熱被覆シートは容易に入手できるビニールシートで十分であるが、それ自体に断熱効果を持つものであってもよい。さらに、前記断熱被覆シートの他端はアンカーなどによって圃場の端部に固定することにより、これを確実に固定することができる。一方、シートを巻き取ってなるロールを回動自在に設置して断熱被覆シートの他端を固定してある場合には圃場の端から端まで加熱消毒処理を行った後に、適宜の長さで断熱被覆シートを切断できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1〜3は本発明にかかる加熱消毒装置1の構成を示す図であり、図1は側面図、図2は平面図、図3は要部を拡大して示す図である。
【0024】
本発明の加熱消毒装置1は、トラクタや耕耘機などの農作業用の特殊車両2(本実施例の場合は耕耘装置付きトラクタである)に取り付けられるものであり、加熱流体B(熱湯または蒸気であり、以下熱水Bという)を生成するための加熱流体生成装置3と、土壌Gを耕起すると同時に前記加熱流体生成装置3によって生成された熱水Bを用いて耕起した土壌G’を加熱消毒する耕耘散水装置4とからなる。
【0025】
本実施例の加熱流体生成装置3は水を加熱して熱水Bを生成するためのボイラ5と、このボイラ5によって生成された熱水Bを送り出すためのポンプ6とを備えてなり、耕耘散水装置4の上に形成された載置台の上に載置するようにして、耕耘散水装置4と一体的に構成されている。
【0026】
前記耕耘散水装置4は、トラクタ2から伝達された動力を用いて回転することにより土壌Gを耕起する耕耘体7と、この耕耘体7の上方に取り付けられることにより耕起した土壌G’に万遍なく散水できるように構成された散水ノズル8aを備えてなる散水管(散水器の一例)8と、前記耕耘体7の上部を覆うとともに加熱消毒処理後の土壌G''の表面を抑える押え板としての機能も有するように構成されたロータカバー9とを備えている。
【0027】
前記ボイラ5は加熱消毒処理に必要な水を蓄積すると共に、図外の燃料タンクから供給される燃料を燃焼させることにより、この水を加熱することにより例えば98℃の熱水Bとするものであり、この熱水Bを給湯管5aを用いてポンプ6に供給する。なお、熱水Bの温度は高ければ高いほど効果的な加熱消毒処理を行うことができるので、本実施例では水が液体でいられる最も高い温度として沸点に近い98℃まで加熱する例を示しているが、本発明はこの温度に限定されるものではない。
【0028】
すなわち、熱水Bの温度は土壌G’を加熱消毒できる55℃よりも十分に高い温度であればよく、例えば、100℃以上になるまで加熱して水蒸気として熱水Bを供給してもよい。さらには、熱水Bを数百度以上の過熱蒸気としてもよい。この熱水Bが水蒸気や加熱蒸気であれば、土壌G’の温度をさらに隅々まで一気に引き上げることができる。
【0029】
前記ポンプ6は熱水Bをトラクタ2の移動速度や土壌G’の温度などに合わせて適量ずつ散水管8に供給するものである。本実施例ではポンプ6をボイラ5と散水管8の間に設けているので、熱水Bの流量を容易に制御することが可能であるが、このポンプ6をボイラ5と一体的に形成してもよい。また、ポンプ6はボイラ5内の熱水Bを押し出すようにして散水管8に供給するものであってもよい。この場合、熱水Bの流量制御は給湯管5aの前後に設けた流量調整弁の開閉によって行うことができる。なお、熱水Bを散布した土壌G’の温度は図外の放射温度計などによって測定することができる。
【0030】
本例に示す前記耕耘体7はトラクタ2の進行方向に対して直角かつ水平方向に配置された回転軸7a(図3のみに図示)と、複数の耕耘爪7bとを有するロータリー式のものが一般的に用いられているが、クランク式、スクリュー式など、種々の形状の耕耘体7を用いることができる。何れの場合にも、耕耘体7は横方向に所定幅Wの土壌Gを耕起する機能を有するものである。また、トラクタ2からの動力によって回転することにより土壌Gを効果的に耕起する。
【0031】
前記散水管8はロータカバー9の内側で耕耘体7の上方に、この耕耘体7に沿って横方向に配置された管であり、適所に複数のノズル8aを備えることにより、前記熱水Bが耕起した土壌B’に万遍なく散布されるように構成してある。本例に示すように前記散水管8はトラクタ2の進行方向に対して直角となる横方向に配置され、その長さを前記耕耘体7の幅Wに合わせて形成してあり、これが耕耘体7に沿う方向であるから、耕耘体7によって耕起された土壌G’の幅方向の全域において熱水Bを土壌G’に散水することができる。
【0032】
散水管8の位置は耕起された土壌G’に熱水Bを万遍なく散布できる位置であればどこに配置されていてもよいが、図1に示すように耕耘体7がロータリー式である場合には、その回転軸7aとほゞ平行に配置されていることが望ましい。
【0033】
前記ロータカバー9は耕耘体7の上部を覆うことにより回転する耕耘体7に巻き込まれることがないように保護するとともに、耕起した土壌G’が周囲に飛び散らないようにする。また、本例のようにロータカバー9内に散水管8を配置してある場合には、この熱水Bが周囲に飛び散らないようにすると共に、その温度が外気によって冷却されないように保温しながら、熱水Bによる熱を効率的に土壌G’に伝達させる役割を果たしている。
【0034】
加えて、本実施例のロータカバー9にはその後端部近傍に例えばビニールシートなどの断熱被覆シートSの一端を掛合させる掛合部(フック)9aを形成してある。このフック9aは例えば先端部が進行方向に向かって突出してなり、ビニールシートS側の掛合穴をフック9aに引っかけられるように構成してある。ビニールシートSの幅は前記耕耘体7の幅Wと同程度に形成する。
【0035】
ビニールシートは例えば図2に示すように加熱消毒処理の対象となる土壌Gの端部に折り畳んだ状態で配置し、その他端側をアンカーAなどによって固定する。あるいは、図4に示すように、ビニールシートSをロール状に巻き取っておき、加熱消毒処理の対象となる土壌Gの端部において、そのビニールシートSを巻き取ってなるロールRを回動自在に設置することにより、ビニールシートSの他端側を固定してもよい。
【0036】
上述のように構成された加熱消毒装置1を用いて圃場の加熱消毒を行う場合には、加熱消毒装置1を既存のトラクタ2の耕耘装置と取り替えて接続し、ボイラ5を用いて熱水Bを生成し、ビニールシートSの一端を前記フック9aに掛合させると共に、このビニールシートSの他端を図2,図4に示すように加熱消毒処理の対象となる土壌Gの外側に固定する。そして、作業者は通常の耕起作業を行う場合と同じ感覚でトラクタ2を操作する。
【0037】
このとき、耕耘体7がトラクタ2から供給される動力を用いて土壌Gを耕起する一方、ボイラ5から供給される熱水Bがポンプ6を介して散水管8に供給されて耕起された土壌G’に散布される。これによって、土壌G’が一気に加熱昇温されてその温度を高くすることができる。加熱消毒処理後の土壌G''の温度は熱水Bの温度と流量および土壌Gの温度やトラクタ2の進行速度に影響される。そこで、加熱消毒処理後の土壌G''の温度が加熱消毒効果を得ることができる55℃以上よりも十分に高くなるように、熱水Bの温度および/または流量を調整する。
【0038】
本発明の加熱消毒装置1は従来のように熱水Bを上から散布するだけのものとは異なり、耕耘体7が土壌Gを耕起しながら熱水Bを散布するので、熱水Bが耕起された土壌G’の間にしっかりと入り込み、土壌Gの透水性や湿り具合などにほとんど全く影響を受けることなく、全ての部分において同程度温度を引き上げることができる。つまり、従来のように散布した熱水Bが土壌Gに浸透せずに流れることがないので、傾斜のある圃場においても透水性の悪い圃場においても加熱消毒処理を行うことができる。
【0039】
また、加熱消毒処理後の土壌G''はそのまま放置したとしても熱水Bを土壌G''によって閉じ込めるように作用するので、その高い温度を長時間に渡って保温することができる。加えて、本実施例に示すように加熱消毒装置1の後端部にビニールシートSの一端部を掛合させることにより、加熱消毒処理後の土壌G''をビニールシートSによって自動的に被覆して、この土壌G''が外気に直接的に接触しないようにすることができる。つまり、その温度を長時間に渡って高く保つことができる。
【0040】
上述のように、本発明の加熱消毒装置1を用いることにより、土壌Gを熱水Bによって効率的に加熱することができるので、使用する熱水Bの量を必要最小限に少なくすることができ、かつ、この熱水Bを生成するために必要な燃料の消費量も抑えることができる。また、耕起された土壌G’の全てを熱水Bによって一気に加熱できるので、加熱消毒処理にかかる時間が短縮でき、それだけ、作業者にかかる負担を少なくすることができる。
【0041】
さらに、従来に比べて散水水量が少ないので、土壌の乾燥も早く行うことができ、定植えるまでの期間を短縮することができる。そして、加熱消毒処理と田畑を耕起する作業と加熱消毒処理を兼ねて行うことができるので、一石二鳥であり作業者の負担をさらに軽減することができる。
【0042】
加えて、本発明の加熱消毒装置1を用いた加熱消毒処理は、従来のホース式散水を行う場合のように、圃場一杯に給水ホースを張りめぐらせるといった大掛かりな前準備を行う必要がなく、加熱消毒処理後に給水ホースの撤去を行う必要もない。また、従来の牽引式散水を行う場合のように、散水処理を行うためだけの特殊な走行フレームやウインチを用いた処理を行う必要もない。
【0043】
上述の各実施例では加熱流体生成装置3を耕耘散水装置4の上部に搭載するようにして加熱消毒装置1の構成を小型化し、その操作性を通常の耕耘装置を備えた状態のトラクタとほゞ同じとして、その取り扱いを容易にしているが、本発明はこの構成に限定されるものではない。
【0044】
図5は第2実施例の加熱消毒装置10の構成を示す平面図である。図5に示す加熱消毒装置10において、図1〜4と同じ符号を付した部材は、同一または同等の部材であるから、その詳細な説明を省略する。本実施例の加熱消毒装置10では、前記加熱流体生成装置3を、トラクタ2と耕耘散水装置4との間に形成した牽引台車11に搭載してある。
【0045】
前記牽引台車11はトラクタ2からの動力をそのまま耕耘散水装置4に伝達する機能と、前記加熱流体生成装置3を安定的に牽引する機能を有するものであればよい。本実施例のように、加熱流体生成装置3を牽引台車11に搭載することにより、ボイラ5を大型化することができ、それだけ処理能力を向上することができる。
【0046】
図6は第3実施例の加熱消毒装置20の構成を示す図である。図6に示す加熱消毒装置20において、図1〜5と同じ符号を付した部材は同一または同等の部材であるから、その詳細な説明を省略する。図6に示す加熱消毒装置20において、加熱流体生成装置3は加熱消毒処理の対象となる土壌Gからなる圃場の外側に固定的に設置されている。また、21はこの加熱流体生成装置3によって生成した熱水Bを耕耘散水装置4に供給する給水可撓管である。
【0047】
本実施例のように構成された加熱消毒装置20は、加熱流体生成装置3を据え置き型とすることにより、ボイラ5をさらに大型化することができ、一度に供給できる熱水Bの量をさらに多くすることができる。つまり、より高速に加熱消毒処理を行うことができ、それだけ、作業時間を短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第1実施例にかかる加熱消毒装置の構成を示す側面図である。
【図2】前記加熱消毒装置の平面図である。
【図3】前記加熱消毒装置の要部を拡大して示す側面図である。
【図4】前記加熱消毒装置を用いて加熱消毒処理を行う別の方法を示す図である。
【図5】本発明の第2実施例にかかる加熱消毒装置の構成を示す図である。
【図6】本発明の第3実施例にかかる加熱消毒装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
1,10,20 加熱消毒装置
2 特殊車両
3 加熱流体生成装置
4 耕耘散水装置
5 ボイラ
6 ポンプ
7 耕耘体
8 散水器
9a 掛合部
21 給水可撓管
B 加熱流体
G,G’,G'' 土壌
S 断熱被覆シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
土壌を耕起する耕耘体と耕起した土壌に散水する散水器とを有し、車両に取り付けられる耕耘散水装置、および、土壌を消毒するための加熱流体を生成するボイラと生成された加熱流体を前記散水器に送るポンプとを有する加熱流体生成装置からなることを特徴とする加熱消毒装置。
【請求項2】
前記車両がトラクタである請求項1に記載の加熱消毒装置。
【請求項3】
前記耕耘散水装置が、加熱消毒処理後の土壌を被覆するための断熱被覆シートの一端を掛合させる掛合部を備えてなる請求項1または2に記載の加熱消毒装置。
【請求項4】
前記加熱流体生成装置を耕耘散水装置に一体的に形成してある請求項1〜3の何れかに記載の加熱消毒装置。
【請求項5】
前記加熱流体生成装置を耕耘散水装置および前記車両から離れた位置に設置し、前記加熱流体を散水管に供給するための給水可撓管を備えてなる請求項1〜3の何れかに記載の加熱消毒装置。
【請求項6】
土壌を耕起する耕耘体と耕起した土壌に散水する散水器とを有する耕耘散水装置を車両に取付け、前記耕耘体により土壌を耕起しながら、加熱流体を前記散水器から散水して土壌を加熱消毒することを特徴とする加熱消毒方法。
【請求項7】
前記耕耘散水装置に、加熱消毒処理後の土壌を被覆するための断熱被覆シートの一端を掛合させる一方、前記断熱被覆シートの他端を加熱消毒の対象となっている領域の端部に固定する請求項6に記載の加熱消毒方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−204246(P2006−204246A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−23347(P2005−23347)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(591099588)明伸興産株式会社 (2)
【Fターム(参考)】