説明

加熱装置を用いた構造物の基礎構造

【課題】 構造物の基礎部分を確実に保温することができるとともに、埋設作業において多大な労力を費やすことなく、故障の際に交換される導電管内の絶縁電線の交換コストを抑えるとともに、汎用性の極めて高い構造物の基礎構造を提供する。
【解決手段】 基礎部分より露出され、導電管の一端部の隣接する端部同士を接続する第1の端部接続ボックスと、基礎部分より露出され、導電管の他端部の隣接する端部同士を
接続する第2の端部接続ボックスとからなり、導電管内部と、第1の端部接続ボックスと
、第2の端部接続ボックスを通り、電源に直列接続されたケーブルまたは絶縁電線からなる一次回路と、一次回路の電流とは逆向きの誘導電流を、導電管と、第1の端部接続ボッ
クスと、第2の端部接続ボックスを介して発生させ、これによって導電管を発熱させる二次回路とから構成される加熱装置を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の基礎構造に関するものであり、さらに詳しくは、低温液体の貯蔵タンクの基礎構造に関するものである。
に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、液化天然ガス(LNG)、液化石油ガス(LPG)などの低温の液体や、重油などの加熱保温を要する内容物をタンクに貯蔵することが行われている。
このような低温液体と高粘性重油などの流体とは、加熱保温の目的が異なる。
【0003】
特に、低温液体は、タンクと大地を熱絶縁して凍上防止するために大地に接する基礎部等を加熱するもので内容物を加熱するものではない。
一方、高粘性重油等の貯蔵タンクは、内容物の温度降下で固化又は高粘性化しないよう内容物をある温度に加熱保温するものである。
【0004】
また、貯蔵タンクには地上方式、地下方式があり、地上方式の場合には凍上防止策として大地と接触するタンク底部の基礎コンクリート部に加熱装置を設置している。
さらに地下方式の場合には、底部基礎部と側面コンクリート壁又は周辺大地を冷熱防止のために加熱保温することがある。
【0005】
低温液体貯蔵タンクの基礎部の加熱装置としては、従来、基礎部分に埋設されたトレース管に温水等の熱媒を流して加熱する方法が使われている。
しかしながら、この方式では温水等を作る付帯設備が必要であり、その保守管理が必要で維持コストもかかるという問題があった。
【0006】
このため、保守管理を殆ど必要とせず、またクリーンエネルギーの電気を利用した加熱装置の開発が従来より研究されており、このような電気加熱法のひとつとして表皮電流を利用した加熱方法がある。
【0007】
このような加熱方法は、特許文献1(特公昭46−588号公報)に開示されている。
すなわち、この表皮電流加熱管装置100は、図8に示したように、複数の並列に配置した高磁性管102、104の両端を、電気的に相互に接続線101、108を介して接続するとともに、この高磁性管102、104の内部に、絶縁電線110を直列に配置し、絶縁電線110の両端を交流電源112に接続している。
【0008】
これによって、交流電源112から電気を流すと絶縁電線110を介して、図8の矢印114の方向に電流が流れる。この絶縁電線110を流れる電流によって、高磁性管102、104の内表面部分に、絶縁電線110を流れる電流と逆向きの誘導電流が生じて、図8の矢印116の方向に流れ、これにより、高磁性管102、104を発熱させるようになっている。
【0009】
この表皮電流加熱管装置100は、地上タンクの場合には構造物の底部に設置されるのが一般的である。
このような表皮電流加熱管装置は、地下タンクの場合にはタンク周辺の大地を加熱するため、例えば上記特許文献1に開示された表皮電流加熱管装置を構造物である貯蔵タンクの周りを囲うように配置してタンク周辺の土壌を加熱し、冷熱が隣接する構造物に障害を及ぼすのを防止しており、この方法が特許文献2(特公昭56−678号公報)に開示さ
れている。
【0010】
すなわち、図9(a)の縦断面図および図9(b)の平面図に示したように、このような基礎部分の構造200は、複数のU字形の強磁性管202が、一定間隔離間して、タンクの表面201の外周側の大地206内に埋設されている。そして、これらの強磁性管202の上端が、大地206の地表面208の下に設けられた接続箱210に連結されている。
【0011】
そして、これらの接続箱210は、地上に配置された保護管212の引込箱213に、接続管214を介して接続されている。
そして、絶縁電線216が、この保護管212内に挿通されて、引込箱213から、接続管214、接続箱210、U字形の強磁性管202の内部を介して、直列に交流電源218に接続されている。
【0012】
これにより、交流電源218から絶縁電線216に電流を流すことによって、図9(a)の矢印215方向に電流が流れ、これが一次回路を構成するようになっている。
そして、この一次回路を流れる電流の作用によって、図9(a)の矢印220方向に、強磁性管202と接続箱210にループ状に逆向きの誘導電流が生じて、これにより強磁性管202が発熱する二次回路が形成されており、これによって、タンクの表面201の外周側の大地206を加熱することができるようになっている。
【0013】
なお、引込箱213を介して、強磁性管202内の絶縁電線216を挿通、交換することができるようになっており、これにより、万一故障が起こったときなどに強磁性管202はそのままにして、強磁性管202に挿通した絶縁電線216を簡単に取り替えられるよう構成されている。
【0014】
また、大地206の地表面208より上方に位置する保護管212内には、図9(a)に示したように、絶縁電線216が往復して配設されているため、交流電源218より電流を流した際に、保護管212内で相互に逆向きの電流が流れるために保護管212内には誘導電流は発生しない。そのため、保護管212の部分が発熱することはないようになっている。
【0015】
また、特許文献3(特公昭56−48387号公報)には、重油などの温度保持が必要な内容物を保有するためのタンクの基礎構造に、上記特許文献1に開示された表皮電流加熱管装置を適用した方法が開示されている。
【0016】
このタンクの基礎構造300では、図10(a)の平面図および図10(b)の縦断面図に示したように、上記特許文献1に開示された表皮電流加熱管装置を、タンク306の底部と、タンク306の下方の地面内の基礎部分に湾曲形状で設置し、タンク306内の内容物とタンク306を加熱するように構成されている。
【0017】
すなわち、このようなタンクの基礎構造300では、図10(a)の平面図に示したように、円形のタンク306に対して、均一に加熱するように、タンクの外周部の方が中心部よりも、電熱管302の配置密度が大きくなるように、電熱管302を湾曲して配設されている。
【0018】
そして、これらの電熱管302内には絶縁電線が挿通され、電源と接続される回路が形成されている。
これにより、電源より絶縁電線に電流を流すと、絶縁電線を覆う電熱管302に誘導電流が生じて、電熱管302が発熱して、タンク306の下方の地面308を加熱すること
ができるように構成されている。
【0019】
このようなタンクの基礎構造300では、円形のタンク306に対して、タンクの外周部の方が中心部よりも、電熱管302の配置密度が大きくなるように、電熱管302を湾曲して配設されているので、タンク306内部とタンク306の下方の地面308を均一に加熱することができ、タンク306内の内容物を所望の温度で管理することができるようになっている。
【0020】
また、複数の電熱管302の端部には、図10(a)に示したように、端部箱(プルボックス)304が配設されているため、万が一絶縁電線が破損損傷するなどして故障した際に、端部箱304の蓋を外して、絶縁電線の交換ができるようになっている。
【特許文献1】特公昭46−588号公報
【特許文献2】特公昭56−678号公報
【特許文献3】特公昭56−48387号公報
【特許文献4】特願2005−190385号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
しかしながら、特許文献2(特公昭56−678号公報)に開示されたタンクの基礎部分の構造200では、複数のU字形の強磁性管202をタンクの表面201の周りを囲うように配置するように構成されているため、敷設作業に多大な労力がかかってしまう。
【0022】
また、強磁性管202がU字形であるため、故障が起こった際において交換される強磁性管202内の絶縁電線104は、U字形の往復分の距離となり無駄な交換コストが嵩むとともに、U字形の強磁性管202内に絶縁電線204を挿着する作業は、U字部分に絶縁電線104が引っかかり、交換作業が難しく、手間と時間がかかってしまうことになる。
【0023】
さらに、特許文献3(特公昭56−48387号公報)に開示されたタンクの基礎構造300では、タンク306の底部と、タンク306の下方の地面内の基礎部分に設置される電熱管302は、湾曲形状を有している。
【0024】
このため、電熱管302を湾曲形状に、施工単位ごとに、すなわち、タンク306の大きさに応じて、湾曲率を計算して、曲げ加工などの加工を施して複数の異なった形状の電熱管302を用意する必要があり汎用性が極めて乏しく、コストが嵩んでしまうことになる。また、低温液体の貯蔵タンクに適用する場合、電熱管を加熱目的からタンク内底部に設置することはできない。
【0025】
このため、本発明者等は、特許文献4(特願2005−190385号)において、構造物の基礎部分を確実に加熱保温することができるとともに、加熱装置の敷設作業が簡単で、加熱装置が故障の際に交換される導電管内の絶縁電線の交換コストを抑えることができるとともに、汎用性の極めて高い加熱装置を用いた構造物の基礎構造を既に提案している。
この構造物の基礎構造400は、図11に示したように、いわゆる誘導式の加熱装置402を備えており、構造物の基礎401部分に複数の導電管404が平行に設置されている。そして、導電管404の両端部には、それぞれ開閉蓋406付きのプルボックス408が接続されている。
【0026】
また、導電管404の端部に備えられたプルボックス408同士は、接続配管410を介して接続されている。そして、この接続配管410内を通って、プルボックス408の
基礎側の底面412と底面412とを、ジャンパー線413、底面412に設けた端子415を介して接続することにより、電気的に接続されている。
【0027】
このような導電管404と、プルボックス408と、接続配管410の内部には、交流電源414に直列に接続された絶縁電線416が配設されている。
なお、加熱装置402は、図12に示したように、構造物であるタンク418の基礎401内に配設されており、プルボックス408と接続配管410の部分が、基礎401の基礎壁面420より外方となるように設置されている。
【0028】
このように構成される加熱装置402では、交流電源42の交流電源414を入れることにより、導電管404と、プルボックス408と、接続配管410を通り、再度電源42に戻るよう直列に接続された絶縁電線416内を、図11に示した一次回路Aのように電流が流れることとなる。
【0029】
さらに、絶縁電線416を介して一次回路Aのように電流が流れると、この方向とは逆向きの流れである二次回路Bのように、誘導電流がループ状に導電管404の内表面部分に生じ、この誘導電流によるジュール熱で導電管404が発熱され、加熱対象であるタンクの基礎401が加熱されるようになっている。
【0030】
また、特許文献4(特願2005−190385号)においては、いわゆる直列式の加熱装置402を備えた構造物の基礎構造400を提案している。
この構造物の基礎構造400の加熱装置402では、図13に示したように、絶縁電線416の一端部を、交流電源414に接続するとともに、絶縁電線416の他端部416aを、終端側のプルボックス408の底面412に接続している。
【0031】
そして、始端側のプルボックス408の底面412に接続したジャンパー線413の他端部が、交流電源414に接続されている。
このような状態で、交流電源414より電流を流すと、導電管404と、プルボックス408と、接続配管410内の絶縁電線416を通り、終端側のプルボックス408の底面412まで電流が内部回路Cとして流れる。
【0032】
そして、終端側のプルボックス408の底面412から、導電管404、プルボックス408、接続配管40を通り、最終的に始端側のプルボックス408の底面412に接続したジャンパー線413を介して、再度交流電源414に電流が戻る、導電管404内を上記内部回路Cと逆向きに電流が、外部回路Dとして流れるように構成されている。
【0033】
これによって、導電管404が発熱して、加熱対象であるタンクの基礎401が加熱されるようになっている。
なお、上記いずれの場合でも、接続配管410内においては、絶縁電線416とともにジャンパー線413が配設されており、接続配管410内を通る電流とジャンパー線413を通る電流とは、相互に反対方向に流れているので、接続配管410では誘導電流は発生しない。そのため接続配管410では発熱せず、接続配管410でのオーバーヒートによる絶縁電線416とジャンパー線413の破損損傷を防止するように構成されている。
【0034】
このように構成することによって、絶縁電線416が万が一不良の場合には、導電管404の両端部に設けられたプルボックス408の開閉蓋406を取り外して、不良な絶縁電線416を引き抜き、良好な絶縁電線416を再度プルボックス408に接続された導電管404内へ挿通し、電気的に接続するだけで対応できるため、作業効率が極めて高くなっている。
【0035】
しかしながら、特許文献4(特願2005−190385号)の加熱装置402を備えた構造物の基礎構造400では、プルボックス408、プルボックス408同士を接続する接続配管410、プルボックス408の底面412に設けた端子415、ジャンパー線413などを設けなければならず、複雑な構成となり、部品点数も多くなり、施工に手間と時間がかかり、コストも高くつくことになる。
【0036】
しかもこのように、部品点数が多く、電気的接続箇所が多くなると、電気的な接触不良などが発生することが多く、加熱装置として確実に機能することができないおそれもある。
【0037】
本発明は、このような現状に鑑み、構造物の基礎部分を確実に保温することができるとともに、複雑な構成でなく、部品点数も少なく、加熱装置の敷設作業が簡単で、加熱装置が故障の際に交換される導電管内の絶縁電線の交換コストを抑えることができるとともに、汎用性の極めて高い加熱装置を用いた構造物の基礎構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0038】
本発明は、前述したような従来技術における課題及び目的を達成するために発明されたものであって、本発明の基礎構造は、
構造物の基礎部分に埋設され、一定間隔離間して並設配置された2本の導電管と、
前記基礎部分より露出され、前記導電管の一端部の隣接する端部同士を接続する第1の
端部接続ボックスと、
前記基礎部分より露出され、前記導電管の他端部の隣接する端部同士を接続する第2の端部接続ボックスと、
からなり、ループ状に接続された発熱ユニットを備え、
前記導電管内部と、第1の端部接続ボックスと、第2の端部接続ボックスを通り、電源
に直列接続されたケーブルまたは絶縁電線からなる一次回路と、
前記電源から一次回路を介して電流を流した際に、一次回路の電流とは逆向きの誘導電流を、導電管と、第1の端部接続ボックスと、第2の端部接続ボックスを介して、それら
の内表面付近に発生させ、
これによって導電管を発熱させる、導電管と、第1の端部接続ボックスと、第2の端部
接続ボックスからなる二次回路と、
から構成される加熱装置を備えたことを特徴とする。
【0039】
このように構成することによって、2本の導電管が、その端部同士が、一つの端部接続ボックスで接続されているので、従来の特許文献4に開示された加熱装置を備えた基礎構造400に比較して、端部接続ボックス(プルボックス)の数を低減できるとともに、プルボックス408同士を接続する接続配管410、プルボックス408の底面412に設けた端子415、ジャンパー線413などを設ける必要がなく、複雑な構成とならず、部品点数も少なく、施工が簡単であり、コストも低減することができる。
【0040】
しかも、このように部品点数が少ないので、電気的接続箇所が少なくなり、電気的な接触不良などが発生することがなく、加熱装置として確実に機能することができる。
従って、構造物の基礎部分を確実に加熱保温することができるとともに、複雑な構成でなく、部品点数も少なく、加熱装置の敷設作業が簡単で、加熱装置が故障の際に交換される導電管内の絶縁電線の交換コストを抑えることができるとともに、汎用性の極めて高い加熱装置を用いた構造物の基礎構造を提供することができる。
【0041】
また、本発明の基礎構造は、前記発熱ユニットが複数組備えられ、これらの発熱ユニット同士が、隣接する端部接続ボックスの間を接続し、基礎部分より露出する接続配管を介して連結されていることを特徴とする。
【0042】
また、本発明の基礎構造は、前記複数組の発熱ユニット同士が、隣接する第1の端部接
続ボックスの間を接続し、基礎部分より露出する第1の接続配管を介して連結されている
ことを特徴とする。
【0043】
また、本発明の基礎構造は、前記複数組の発熱ユニット同士が、隣接する第2の端部接続ボックスの間を接続し、基礎部分より露出する第2の接続配管を介して連結されていることを特徴とする。
【0044】
このように構成することによって、複数組の発熱ユニットを構造物の基礎部分に配設することができるので、構造物の基礎部分を均一に加熱することができ、しかも、接続配管の数も、特許文献4の従来の加熱装置を備えた基礎構造400に比較して少なくすることができる。
【0045】
また、本発明の基礎構造は、前記誘導電流が、第1の端部接続ボックス、第2の端部接
続ボックスの基礎側の壁面を介して流れるように構成されていることを特徴とする。
このように誘導電流が、第1の端部接続ボックス、第2の端部接続ボックスの基礎側の
壁面を介して流れるので、これらの端部接続ボックスの外側へ漏れ出ることがなく安全である。
【0046】
また、本発明の基礎構造は、前記端部接続ボックスが、基礎部分の外側に取付けられていることを特徴とする。
このように構成することによって、タンクの基礎部分より外側にプルボックスが露出しているので、万が一の故障の際にも、この露出するプルボックスを介して、導電管内の絶縁電線の交換の際に、作業性が極めて良好であり、しかも、加熱装置のメンテナンスが極めて容易である。
【0047】
また、本発明の基礎構造は、前記端部接続ボックスが、基礎部分に一部埋設状態で取付けられていることを特徴とする。
このように構成することによって、プルボックスを強固に保持することができるとともに、基礎構造の端部から飛び出すプルボックスの飛び出し量を調整することにより、プルボックスが邪魔にならず、どのような施工現場にも対応して設置することができる。
【0048】
また、本発明の基礎構造は、前記加熱装置が、基礎部分に複数段に上下に重ねて埋設されていることを特徴とする。
このように構成することによって、加熱装置が一段の時よりもよりも、効率良く構造物の基礎部分を加熱することができるとともに、部分的に必要な熱量が異なる場合にも容易に対応できる。
【0049】
また、本発明の基礎構造は、前記加熱装置が、発熱ユニットの位置がずれるように、基礎部分に複数段に上下に重ねて埋設されていることを特徴とする。
このように発熱ユニットの位置がずれるように、基礎部分に複数段に上下に重ねて埋設されているので、さらに効率良く構造物の基礎部分を均一に加熱することができるとともに、部分的に必要な熱量が異なる場合にも容易に対応できる。
【0050】
また、本発明の基礎構造は、前記加熱装置が、前記構造物の基礎底面に対して平行に設置されることを特徴とする。
また、構造物の基礎底面に対して平行に設置することによって、構造物全体の基礎部分を効率良く加熱することができる。
【0051】
また、本発明の前記基礎構造は、三つの加熱装置が、並列に三相電源に接続されていることを特徴とする。
このように構成することによって、三つの回路に対して、設置される電源の数を一つとすることができるため、電源設置にかかるコストを抑えることができる。また、電源の数を抑えることができるため、電源管理が容易である。
【0052】
また、本発明の基礎構造は、前記基礎部分に、複数の前記加熱装置を配置して構成したことを特徴とする。
このように構成することによって、万が一加熱装置が故障しても構造物の基礎構造の一部分のみを修理すればよいため、故障による影響を最小限とすることができる。
【0053】
また、本発明の基礎構造は、前記構造物が、低温液体の貯蔵タンクであることを特徴とする。
このように構成することによって、特に冷凍液体の貯蔵タンク周辺の大地が凍結して盛り上がる凍上現象を確実に防止することができ、タンクが破損損傷して、タンクの内容物が漏洩することがない。
【0054】
また、本発明の基礎構造は、構造物の基礎部分に埋設され、一定間隔離間して並設配置された複数の導電管と、
前記導電管の電源側始端に接続された始端接続ボックスと、
前記導電管の最終端に接続された終端接続ボックスと、
前記基礎部分より露出され、前記導電管の一端部の隣接する端部同士を接続する第1の
端部接続ボックスと、
前記基礎部分より露出され、前記導電管の他端部の隣接する端部同士を接続する第2の端部接続ボックスとを備えるとともに、
前記第1の端部接続ボックスと第2の端部接続ボックスとが、前記導電管を介して相互
に接続され、
前記始端接続ボックスと、導電管内部と、第1の端部接続ボックスと、第2の端部接続
ボックスと、終端接続ボックスの内部を通るケーブルまたは絶縁電線からなる内部回路と、
前記内部回路末端から、終端接続ボックスと、導電管と、第1の端部接続ボックスと、
第2の端部接続ボックスと、始端接続ボックスを介して、内部回路とは逆向きに電流が流れるように電源に直列的に接続された外部回路と、
からなる電流印加回路とを備え、
前記電源から電流印加回路の内部回路および外部回路を介して電流を流した際に、導電管を発熱させるよう構成した加熱装置を備えたことを特徴とする。
【0055】
このように構成することによって、2本の導電管が、その端部同士が、一つの端部接続ボックスで接続されているので、従来の特許文献4に開示された加熱装置を備えた基礎構造400に比較して、端部接続ボックス(プルボックス)の数を低減できるとともに、プルボックス408同士を接続する接続配管410、プルボックス408の底面412に設けた端子415、ジャンパー線413などを設ける必要がなく、複雑な構成とならず、部品点数も少なく、施工が簡単であり、コストも低減することができる。
【0056】
しかも、このように部品点数が少ないので、電気的接続箇所が少なくなり、電気的な接触不良などが発生することがなく、加熱装置として確実に機能することができる。
従って、構造物の基礎部分を確実に加熱保温することができるとともに、複雑な構成でなく、部品点数も少なく、加熱装置の敷設作業が簡単で、加熱装置が故障の際に交換される導電管内の絶縁電線の交換コストを抑えることができるとともに、汎用性の極めて高い加熱装置を用いた構造物の基礎構造を提供することができる。
【0057】
また、誘導電流を生じさせる構造である上記の基礎構造に比べ、接続配管の量を少なくすることができるため、複雑な構成とならず、部品点数も少なく、施工が簡単であり、コストも低減することができる。
【発明の効果】
【0058】
本発明によれば、2本の導電管が、その端部同士が、一つの端部接続ボックスで接続されているので、複雑な構成とならず、部品点数も少なく、施工が簡単であり、コストも低減することができる。
【0059】
しかも、部品点数が少ないので、電気的接続箇所が少なくなり、電気的な接触不良などが発生することがなく、加熱装置として確実に機能することができる。
従って、構造物の基礎部分を確実に加熱保温することができるとともに、複雑な構成でなく、部品点数も少なく、加熱装置の敷設作業が簡単で、加熱装置が故障の際に交換される導電管内の絶縁電線の交換コストを抑えることができるとともに、汎用性の極めて高い加熱装置を用いた構造物の基礎構造を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0060】
以下、本発明の実施の形態(実施例)を図面に基づいてより詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施例である加熱装置を備えた構造物の基礎構造の構成図、図2は、図1のX−X線の要部拡大断面図、図3は、図1のY−Y線の要部拡大断面図、図4は、本発明の第1の実施例である加熱装置を備えた構造物の基礎構造に三相電源を用いた場合の構成図である。
【0061】
図1において、符号10は、本発明の加熱装置12を備えた構造物の基礎構造を示している。
この基礎構造10は、例えば、低温液体の貯蔵タンクなどの構造物の基礎部分14に適用されるものであり、この基礎部分14に本発明の加熱装置12が埋設されている。
【0062】
図1に示したように、加熱装置12は、複数の一定間隔離間して配置された発熱ユニット16を備えている。
この発熱ユニット16は、構造物の基礎部分14に埋設された直線状の第1の導電管18と、この第1の導電管18と一定間隔離間して略平行に埋設された第2の導電管20とを備えている。
【0063】
また、第2の導電管20は、図1に示したように、中央の略直線部分22と、その両端に形成された屈曲部24、26とを備えている。
これらの第1の導電管18の一端部18aと、第2の導電管20の一端部20aは、第1の端部接続ボックス(プルボックス)28に接続されている。
【0064】
すなわち、この第1の端部接続ボックス28には、第1の導電管18の一端部18aと
接続するためのノズル30が設けられており、このノズル30と第1の導電管18の一端部18aとが、溶接により接続されている。
【0065】
一方、第1の端部接続ボックス28には、第2の導電管20の一端部20aの屈曲部2
4の端部24aと接続するためのノズル32が設けられており、このノズル32と第2の導電管20の一端部20aの屈曲部24の端部24aとが、溶接により接続されている。
【0066】
さらに、これらの第1の導電管18の他端部18bと、第2の導電管20の他端部20bは、第2の端部接続ボックス34に接続されている。
すなわち、この第2の端部接続ボックス34には、第1の導電管18の他端部18bと接続するためのノズル36が設けられており、このノズル36と第1の導電管18の他端部18bとが、溶接により接続されている。
【0067】
一方、第2の端部接続ボックス34には、第2の導電管20の他端部18bの屈曲部26の端部26aと接続するためのノズル38が設けられており、このノズル38と第2の導電管20の他端部20bの屈曲部26の端部26aとが、溶接により接続されている。
【0068】
なお、これらの第1の端部接続ボックス28、第2の端部接続ボックス34には、それ
ぞれ、プルボックスに取付けられた開閉自在な開閉蓋29、31を備えている。
従って、発熱ユニット16は、第1の導電管18と、第2の導電管20と、第1の端部
接続ボックス28と、第2の端部接続ボックス34とが、ループ状に接続されている。
【0069】
そして、図1に示したように、この実施例の加熱装置12では、このように構成される発熱ユニット16が複数組、この実施例では3組(16a〜16c)備えられている。そして、これらの発熱ユニット16同士が、隣接する第1の端部接続ボックス28の間を接
続し、基礎部分14より露出する接続配管40を介して連結されている。
【0070】
この場合、接続配管40としては、例えば、電線管、または、電線管とフレキシブル電線管との組み合わせからなる。
なお、この場合、図1に示したように、終端側の発熱ユニット16cの第1の端部接続
ボックス28には、接続配管40が一つだけ接続されているが、中間の発熱ユニット16bの第1の端部接続ボックス28には、接続配管40が両側に位置する発熱ユニット16
a、16cの接続のために、2つの接続配管40が接続されている。
【0071】
さらに、始端側の発熱ユニット16aには、接続配管40の一方側が、交流電源42への電源配管となっている。
このように構成される発熱ユニット16の第1の導電管18と、第2の導電管20と、第1の端部接続ボックス28と、第2の端部接続ボックス34の内部には、交流電源42
に直列に接続された絶縁電線44が配設されている。
【0072】
なお、本実施例では、絶縁電線44として、導体の外側が絶縁層で絶縁された構造を有する絶縁電線を使用しているが、これに限定されるものではなく、絶縁電線の代わりに導体上の絶縁層の外側に外傷保護用のシース層が設けられた構造を有するケーブルを用いることもでき、設置する環境に応じて適宜選択するとよい。
【0073】
なお、このような絶縁電線とケーブルとは、いずれにおいても耐熱性を有するものを適用することが望ましい。
すなわち、図1に示したように、交流電源42に接続された絶縁電線44は、先ず、始端側の発熱ユニット16aの第1の端部接続ボックス28に導入され、第1の導電管18
を通って、第2の端部接続ボックス34に導入される。
【0074】
そして、絶縁電線44は、第2の端部接続ボックス34から、第2の導電管20を通り、再び、第1の端部接続ボックス28に導入される。
このように始端側の発熱ユニット16aの第1の端部接続ボックス28に戻った絶縁電
線44は、接続配管40を通って、隣接する中間の発熱ユニット16bの第1の端部接続
ボックス28に導入される。
【0075】
そして、中間の発熱ユニット16bでは、始端側の発熱ユニット16aと同様にして、絶縁電線44は、ループ状に、第1の導電管18、第2の端部接続ボックス34、第2の
導電管20を通り、再び、第1の端部接続ボックス28に導入され、接続配管40を通っ
て、隣接する終端側の発熱ユニット16cの第1の端部接続ボックス28に導入される。
【0076】
さらに、終端側の発熱ユニット16cでも、始端側の発熱ユニット16aと同様にして、絶縁電線44は、ループ状に、第1の導電管18、第2の端部接続ボックス34、第2の導電管20を通り、再び、第1の端部接続ボックス28に導入される。
【0077】
そして、この終端側の発熱ユニット16cで、再び、第1の端部接続ボックス28に導
入された絶縁電線44は、接続配管40を介して、中間の発熱ユニット16bの第1の端
部接続ボックス28、始端側の発熱ユニット16aを通り、交流電源42に直列に接続されている。
【0078】
なお、図1のX−X線断面図である図2に示したように、略円筒断面形状を有する第1の導電管18、第2の導電管20の内部に配設された絶縁電線44は、これらの導電管18、20の内部に自由な状態で挿通されている。
【0079】
この際、隣り合う第1の導電管18、第2の導電管20同士の間隔は、特に限定されるものではないが、例えば、構造物の基礎構造10の長尺方向の幅が100mであれば、隣り合う導電管18と導電管20との間隔は1mとすることが好ましい。
【0080】
また導電管18、20は、磁性管であり、例えば、外径が20mm以上から61mm以下のJIS規格品である汎用炭素鋼鋼管を用いると良い。
さらに、予め標準長を有する汎用炭素鋼鋼管を、長尺方向に複数本溶接にて接続することにより、所望の長さの導電管18、20とすることができる。
【0081】
このように、規格品の炭素鋼鋼管を導電管18、20として用いることにより、どのような施工現場であっても、比較的簡単に加熱装置12を設けることができ、開発コスト、施工コストなどを抑えることができる。
【0082】
さらに、第1の端部接続ボックス28、第2の端部接続ボックス34は、一般的に円筒
型、箱型などの形状からなり、炭素鋼またはステンレスまたはこれらの組み合わせからなることが好ましい。
【0083】
また、絶縁電線44が万が一不良の場合には、導電管18と導電管20の両端部に設けられた第1の端部接続ボックス28、第2の端部接続ボックス34の開閉蓋29、31を
取り外して、不良な絶縁電線44を引き抜き、良好な絶縁電線44を再度プルボックス28、34に接続された導電管18、20内へ挿通し、電気的に接続するだけで対応できるため、作業効率が極めて高い。
【0084】
さらに、これらを基礎部分14の全幅に至るまで配設して構成された加熱装置12は、図3に示したように、構造物であるタンク46の基礎48内に配設されており、第1の端
部接続ボックス28と、第2の端部接続ボックス34と、接続配管40の部分が基礎48の基礎壁面50より外方となるように設置されている。
【0085】
なお、基礎48部分は、コンクリートよりなることが好ましい。
本実施例においては、第1の端部接続ボックス28と、第2の端部接続ボックス34は
、基礎48の基礎壁面50に取付けられているが、これに限定されるものではなく、基礎48内部に端部接続ボックス28、34を、一部埋め込んだ状態(図示せず)で取り付けてもよい。
【0086】
また、基礎48とタンク46との間には、断熱層52が設けられており、例えば、タンク46内の内容物が低温液体であれば、タンク46の温度が基礎48に直接伝わり難くなされている。
【0087】
このように構成される加熱装置12は、交流電源42の電源を入れることにより、電流が、図1の矢印Aに示したように、交流電源42に接続された絶縁電線44内を、始端側の発熱ユニット16aの第1の端部接続ボックス28、第1の導電管18、第2の端部接
続ボックス34、第2の導電管20を通り、再び、第1の端部接続ボックス28にループ
状に流れる。
【0088】
そして、始端側の発熱ユニット16aの第1の端部接続ボックス28から、電流が絶縁
電線44内を、接続配管40を通って、隣接する中間の発熱ユニット16bの第1の端部
接続ボックス28に流れる。
【0089】
中間の発熱ユニット16bでは、始端側の発熱ユニット16aと同様にして、電流が絶縁電線44内を、図1の矢印Aに示したように、第1の端部接続ボックス28、第1の導
電管18、第2の端部接続ボックス34、第2の導電管20を通り、再び、第1の端部接
続ボックス28にループ状に流れる。
【0090】
そして、中間の発熱ユニット16bの第1の端部接続ボックス28から、電流が絶縁電
線44内を、接続配管40を通って、隣接する終端側の発熱ユニット16cの第1の端部
接続ボックス28に流れる。
【0091】
終端側の発熱ユニット16cでは、始端側の発熱ユニット16aと同様にして、電流が絶縁電線44内を、図1の矢印Aに示したように、第1の端部接続ボックス28、第1の
導電管18、第2の端部接続ボックス34、第2の導電管20を通り、再び、第1の端部
接続ボックス28にループ状に流れる。
【0092】
そして、この終端側の発熱ユニット16cに至った電流は、電流が絶縁電線44内を、図1の矢印Aに示したように、接続配管40を介して、中間の発熱ユニット16bの第1
の端部接続ボックス28、始端側の発熱ユニット16aを通り、交流電源42に至るように流れる。
【0093】
このようにして、交流電源42からの電流は、第1の端部接続ボックス28、第1の導
電管18、第2の端部接続ボックス34、第2の導電管20内を通るように、直列に接続された絶縁電線44内を、図1に示した一次回路Aのように電流が流れることとなる。
【0094】
さらに、絶縁電線44内を、一次回路Aのように電流が流れると、図1に示したように、この方向とは逆向きの流れである二次回路Bのように、誘導電流が流れることになる。
すなわち、発熱ユニット16では、第1の端部接続ボックス28の底部、基礎側の壁面
28aから、第2の導電管20を通り、第2の端部接続ボックス34の底部、基礎側の壁面34aから、第1の導電管18に至るループ状の誘導電流がこれらの内表面部分に生じるようになっている。
【0095】
これによって、この誘導電流によるジュール熱で、第1の導電管18と、第2の導電管20は、発熱され、加熱対象であるタンクの基礎48へ電熱されるようになっている。
なお二次回路Bは、発熱ユニット16にそれぞれ生じるようになっており、図1に示した第1の実施例においては、発熱ユニット16a〜16cによって、三つの二次回路Bが形成されていることとなる。
【0096】
なお、この場合、このように誘導電流が、第1の端部接続ボックス28、第2の端部接
続ボックス34の基礎側の壁面28a、34aを介して流れるので、これらの端部接続ボックス28、34の外側へ漏れ出ることがなく安全である。
【0097】
このように第1の導電管18と、第2の導電管20に生ずる誘導電流によって、導電管18、20を加熱する加熱装置12は、特許文献1(特公昭46−588号公報)に既に開示されており、公知の技術である。
【0098】
なお、導電管18、20内を流れる電流は、以下の関係式で表される導電管18、20の深さSの内表面付近に集中して流れ、導電管18、20の外表面には電圧は殆ど現れない。
【0099】
これは、導電管の肉厚が、電源周波数・導電管の電気抵抗率・比透磁率などによって決まる導電管の表皮深さの数倍以上であり、導電管の長さがその直径よりも十分に大きいときには、導電管に流れる電流は導電管の内表面部分のみに流れ、導電管の外表面には殆ど電圧が現れないため、この外表面を良導体で接続しても実用上この良導体に電流が流れないというものである。
【0100】
以下に関係式を記す。
S=5030SQRT(ρ/μf)
但しt=2S、L>d
S(cm)・・・表皮深さ
ρ(Ωcm)・・導電管の抵抗率
μ・・・・・・導電管の比透磁率
f(Hz)・・・電源周波数
SQRT(ρ/μf)・・・(ρ/μf)の平方根
t(cm)・・・導電管の肉厚
d(cm)・・・導電管の内径
L(cm)・・・導電管の長さ
上記関係式を満たすことにより、導電管18、20の外表面を低インピーダンスの電線で短絡しても電流は殆ど流れず、被加熱物である基礎48と接触させても安全であり、加熱装置12として利用することができる。
【0101】
なお、接続配管40内においては、図1に示したように、絶縁電線44が往復して配設され、これらを流れる電流が相互に逆向きであるので、接続配管40内では、誘導電流は発生しないことになる。
【0102】
これは、基礎48以外の部分は加熱する必要はなく、逆に加熱してしまうとオーバーヒートを生ずるおそれがあるため、接続配管40の加熱を防止することができる。
このような原理を用いた本発明の加熱装置12を備えた基礎構造10によれば、基礎48内に配設された導電管18、20の内表面部分を流れる誘導電流によって、導電管18、20のみを加熱することができ、タンク46の基礎48部分のみを加熱することができる。
【0103】
また、このような加熱装置12は、図4に示したように、三つの直列回路を一つの三相電源54に並列に接続して使用する基礎構造10とすることもできる。
このように三相電源54を用いれば、一回路につき一電源とした場合に比べ、電源の数を少なくできコストを抑えることができるとともに、電源管理が極めて容易となる。
【0104】
さらに、この実施例では、発熱ユニット16の数は、この実施例では、3組としたが、
タンク46の大きさに応じて、この数は、適宜変更可能である。
また、加熱装置12は、タンク46の基礎48部分に複数配置すると良い。
【0105】
さらに、加熱装置12を、タンク46の基礎48部分に複数段に上下に重ねて埋設してもよい。
このように構成することによって、加熱装置12が一段の時よりもよりも、効率良く構造物の基礎部分を加熱することができる。
【0106】
この場合には、図5に示したように、加熱装置12が、発熱ユニット16の位置がずれるように(図5に一点鎖線で示したように)、基礎部分に複数段に上下に重ねて埋設するようにしてもよい。
【0107】
なお、この場合、発熱ユニット16の位置をずらす方法としては、特に限定されるものではなく、図5に示したように、略点対称に配置する以外にも、加熱装置12を長手方向に位置をずらして配置するなど適宜変更可能である。
【0108】
このように発熱ユニットの位置がずれるように、基礎部分に複数段に上下に重ねて埋設されているので、さらに効率良く構造物の基礎部分を均一に加熱することができる。
また、加熱装置12は、構造物の底部に対して平行に設置するのが望ましい。
【0109】
このように構成することによって、構造物の基礎部分の深さが深くなることを抑えることができ、例えば、基礎部分に使用されるコンクリートの量を、加熱装置をタンクの周辺に垂直に設置した場合に比べて少なくすることができる。
【0110】
また、構造物の底部に対して平行に設置することによって、構造物全体の基礎部分を効率良く加熱することができる。
さらに、この実施例では、隣接する第1の端部接続ボックス28同士を、接続配管40
を介して接続するようにしたが、図示しないが、第2の端部接続ボックス34同士を接続配管40を介して接続することも可能である。
【0111】
このように構成することによって、2本の導電管18、20が、その端部同士が、一つの端部接続ボックス28、34で接続されているので、従来の特許文献4に開示された加熱装置を備えた図11に示した基礎構造400に比較して、端部接続ボックス(プルボックス)の数を低減できるとともに、プルボックス408同士を接続する接続配管410、プルボックス408の底面412に設けた端子415、ジャンパー線413などを設ける必要がなく、複雑な構成とならず、部品点数も少なく、施工が簡単であり、コストも低減することができる。
【0112】
しかも、このように部品点数が少ないので、電気的接続箇所が少なくなり、電気的な接触不良などが発生することがなく、加熱装置として確実に機能することができる。
従って、構造物の基礎部分を確実に保温することができるとともに、複雑な構成でなく、部品点数も少なく、加熱装置の敷設作業が簡単で、加熱装置が故障の際に交換される導電管内の絶縁電線の交換コストを抑えることができるとともに、汎用性の極めて高い加熱装置を用いた構造物の基礎構造を提供することができる。
【0113】
図6は、本発明の加熱装置を備えた構造物の基礎構造の第2の実施例を示したものである。
図6の加熱装置を備えた構造物の基礎構造は、基本的には、図1に示した実施例の加熱装置を備えた構造物の基礎構造と同じ構成であるので、同じ構成部材には、同じ参照番号を付してその詳細な説明を省略する。
【0114】
すなわち、この実施例の加熱装置12では、第1の導電管18の電源側始端に接続された始端接続ボックス21と、第1の導電管18の最終端に接続された終端接続ボックス23とを備えている。
【0115】
そして、図6に示したように、対向して対応する位置にある第1の端部接続ボックス2
8と第2の端部接続ボックス34とが、第1の導電管18を介して相互に接続されている。そして、対向して位置がずれた第1の端部接続ボックス28と第2の端部接続ボックス
34とが、斜めに配置された第2の導電管20を介して相互に接続されている。
【0116】
そして、図6に示した第2の実施例は、第1の実施例とは回路が異なり、一次回路と二次回路とに分かれていない。
このような基礎構造10は、始端接続ボックス21、第1の導電管18、第2の導電管20、第1の端部接続ボックス28、第2の端部接続ボックス34、終端接続ボックス2
3内に絶縁電線44が挿通されており、これにより内部回路Cが形成されている。
【0117】
すなわち、絶縁電線44の一端部は、始端接続ボックス21の基礎側の壁面21aに備えられた端子25と接続されており、絶縁電線44の他端部は、終端接続ボックス23の基礎側の壁面23aに備えられた端子27と接続されている。
【0118】
従って、このように構成される加熱装置12では、交流電源42の電源を入れることにより、電流が、図1の矢印Cに示したように、交流電源42に接続された絶縁電線44内を、始端接続ボックス21、第1の導電管18、第2の端部接続ボックス34、斜めに配置された第2の導電管20を通り、第2の端部接続ボックス34に対向して位置がずれた第1の端部接続ボックス28に流れる。
【0119】
そして、第1の端部接続ボックス28から、電流が絶縁電線44内を、第1の導電管1
8を介して、第1の端部接続ボックス28と対向して位置がずれた第2の端部接続ボック
ス34に流れる。
【0120】
同様にして、電流が絶縁電線44内を、第1の端部接続ボックス28と、第2の端部接
続ボックス34との間を、第1の導電管18、第2の導電管20を介して、終端接続ボックス23内まで流れる。
【0121】
このようにして、図6に示したように、内部回路Cが形成されている。
また、このような基礎構造10は、終端接続ボックス23、第1の導電管18、第2の導電管20、第1の端部接続ボックス28、第2の端部接続ボックス34、始端接続ボッ
クス21の内表面を電流が流れるように、内部回路Cとは逆向きに外部回路Dが形成されている。
【0122】
すなわち、上記のように、終端接続ボックス23内まで絶縁電線44内を流れた電流は、終端接続ボックス23の基礎側の壁面23aに備えられた端子27から、終端接続ボックス23の基礎側の壁面23aから、第1の導電管18を介して、終端接続ボックス23と対向する位置にある第1の端部接続ボックス28に至る。
【0123】
そして、第1の端部接続ボックス28から、斜めに配置された第2の導電管20を介し
て、第1の端部接続ボックス28に対向して位置がずれた第2の端部接続ボックス34に
至る。次いで、第1の導電管18を介して、第2の端部接続ボックス34に対向するように配置された第1の端部接続ボックス28に至る。
【0124】
同様にして、第1の端部接続ボックス28と、第2の端部接続ボックス34との間を、
第1の導電管18、第2の導電管20を介して、始端接続ボックス21に至る。
そして、始端接続ボックス21の基礎側の壁面21aに備えられた端子25から、絶縁電線44を介して、電流が交流電源42に至るようになっている。
【0125】
このようにして、図6に示したように、外部回路Dが形成されている。
このような内部回路Cと外部回路Dによって、電流印加回路が形成されており、この電流印加回路に電流を上記にように流すことによって、導電管18、20が発熱して、加熱対象であるタンクの基礎が加熱されるようになっている。
【0126】
このような回路とすれば、第1の端部接続ボックス28同士を接続する接続配管40を
省略できるので、接続配管40とその中に配線した絶縁電線44の量は、図1の実施例と比べ少なくすることができるため、コストを大幅に削減することができる。
【0127】
また、図7に示したように実施例2の回路においても、三つの直列回路を一つの三相電源54に並列に接続して使用した基礎構造10とすることができる。
このように三相電源54を用いれば、一回路につき一電源とした場合に比べ、電源の数を少なくできコストを抑えることができるとともに、電源管理が極めて容易となる。
【0128】
なお、以上述べた実施例において、導電管18と相対する導電管20は、所定間隔で、出来るだけ平行に配列されるように、導熱管18と導電管20の両端近くで曲げ加工されることが好ましい。
【0129】
以上、本発明の好ましい実施の態様を説明してきたが、本発明はこれに限定されることはなく、例えばタンクの基礎構造だけでなく、地下タンクへも適用して良い。この場合は、底部基礎構造部及び側壁構造物内に導電管をU字型に埋設設置して端部接続ボックス28はタンク側壁上部に取付けることになる。
【0130】
また、これらの基礎構造には、基礎内に平行に配設される導電管と導電管との間に、予備の導電管を備えても良いことは当然である。
さらに三相電源に接続される回路は、実施例1と実施例2の回路を混在しても良いなど本発明の目的を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】図1は、本発明の第1の実施例である加熱装置を備えた構造物の基礎構造の構成図である。
【図2】図2は、図1のX−X線の要部拡大断面図である。
【図3】図3は、図1のY−Y線の要部拡大断面図である。
【図4】図4は、本発明の第1の実施例である加熱装置を備えた構造物の基礎構造に三相電源を用いた場合の構成図である。
【図5】図5は、本発明の第1の実施例である加熱装置を備えた構造物の基礎構造の別の実施例の構成図である。
【図6】図6は、本発明の第2の実施例である加熱装置を備えた構造物の基礎構造の構成図である。
【図7】図7は、本発明の第2の実施例である加熱装置を備えた構造物の基礎構造に三相電源を用いた場合の構成図である。
【図8】図8は、従来の表皮電流加熱管装置の原理説明図である。
【図9】図9は、従来のタンクの基礎構造を説明する概略図である。
【図10】図10は、従来のタンクの基礎構造を説明する概略図である。
【図11】図11は、従来のタンクの基礎構造を説明する概略図である。
【図12】図12は、従来のタンクの基礎構造を説明する概略図である。
【図13】図13は、従来のタンクの基礎構造を説明する概略図である。
【符号の説明】
【0132】
10 基礎構造
12 加熱装置
14 基礎部分
16 発熱ユニット
16a〜16c 発熱ユニット
18 導電管
20 導電管
21 始端接続ボックス
23 終端接続ボックス
24 屈曲部
25 端子
26 屈曲部
27 端子
28 端部接続ボックス
28a 壁面
29、31 開閉蓋
30 ノズル
32 ノズル
34 端部接続ボックス
34a 壁面
36 ノズル
38 ノズル
40 接続配管
42 交流電源
44 絶縁電線
46 タンク
48 基礎
50 基礎壁面
52 断熱層
54 三相電源
100 表皮電流加熱管装置
101 接続線
102 高磁性管
104 絶縁電線
110 絶縁電線
112 交流電源
200 タンクの基礎部分の構造
201 表面
202 強磁性管
204 絶縁電線
206 大地
208 地表面
210 接続箱
212 保護管
213 引込箱
214 接続管
216 絶縁電線
218 交流電源
300 基礎構造
302 電熱管
304 端部箱
306 タンク
308 地面
400 基礎構造
401 基礎
402 加熱装置
404 導電管
406 開閉蓋
408 プルボックス
410 接続配管
412 底面
413 ジャンパー線
414 交流電源
415 端子
416 絶縁電線
418 タンク
420 基礎壁面
A 一次回路
B 二次回路
C 内部回路
D 外部回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の基礎部分に埋設され、一定間隔離間して並設配置された2本の導電管と、
前記基礎部分より露出され、前記導電管の一端部の隣接する端部同士を接続する第1の
端部接続ボックスと、
前記基礎部分より露出され、前記導電管の他端部の隣接する端部同士を接続する第2の端部接続ボックスと、
からなり、ループ状に接続された発熱ユニットを備え、
前記導電管内部と、第1の端部接続ボックスと、第2の端部接続ボックスを通り、電源
に直列接続されたケーブルまたは絶縁電線からなる一次回路と、
前記電源から一次回路を介して電流を流した際に、一次回路の電流とは逆向きの誘導電流を、導電管と、第1の端部接続ボックスと、第2の端部接続ボックスを介して、それら
の内表面付近に発生させ、
これによって導電管を発熱させる、導電管と、第1の端部接続ボックスと、第2の端部
接続ボックスからなる二次回路と、
から構成される加熱装置を備えたことを特徴とする基礎構造。
【請求項2】
前記発熱ユニットが複数組備えられ、これらの発熱ユニット同士が、隣接する端部接続ボックスの間を接続し、基礎部分より露出する接続配管を介して連結されていることを特徴とする請求項1に記載の基礎構造。
【請求項3】
前記複数組の発熱ユニット同士が、隣接する第1の端部接続ボックスの間を接続し、基
礎部分より露出する第1の接続配管を介して連結されていることを特徴とする請求項2に
記載の基礎構造。
【請求項4】
前記複数組の発熱ユニット同士が、隣接する第2の端部接続ボックスの間を接続し、基礎部分より露出する第2の接続配管を介して連結されていることを特徴とする請求項2から3のいずれかに記載の基礎構造。
【請求項5】
前記誘導電流が、第1の端部接続ボックス、第2の端部接続ボックスの基礎側の壁面を
介して流れるように構成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の基礎構造。
【請求項6】
前記端部接続ボックスが、基礎部分の外側に取付けられていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の基礎構造。
【請求項7】
前記端部接続ボックスが、基礎部分に一部埋設状態で取付けられていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の基礎構造。
【請求項8】
前記加熱装置が、基礎部分に複数段に上下に重ねて埋設されていることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の基礎構造。
【請求項9】
前記加熱装置が、発熱ユニットの位置がずれるように、基礎部分に複数段に上下に重ねて埋設されていることを特徴とする請求項8に記載の基礎構造。
【請求項10】
前記加熱装置が、前記構造物の基礎底面に対して平行に設置されることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の基礎構造。
【請求項11】
三つの前記加熱装置が、並列に三相電源に接続されていることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の基礎構造。
【請求項12】
前記基礎部分に、複数の前記加熱装置を配置して構成したことを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の基礎構造。
【請求項13】
前記構造物が、低温液体の貯蔵タンクであることを特徴とする請求項1から12のいずれかに記載の基礎構造。
【請求項14】
構造物の基礎部分に埋設され、一定間隔離間して並設配置された複数の導電管と、
前記導電管の電源側始端に接続された始端接続ボックスと、
前記導電管の最終端に接続された終端接続ボックスと、
前記基礎部分より露出され、前記導電管の一端部の隣接する端部同士を接続する第1の
端部接続ボックスと、
前記基礎部分より露出され、前記導電管の他端部の隣接する端部同士を接続する第2の端部接続ボックスとを備えるとともに、
前記第1の端部接続ボックスと第2の端部接続ボックスとが、前記導電管を介して相互
に接続され、
前記始端接続ボックスと、導電管内部と、第1の端部接続ボックスと、第2の端部接続
ボックスと、終端接続ボックスの内部を通るケーブルまたは絶縁電線からなる内部回路と、
前記内部回路末端から、終端接続ボックスと、導電管と、第1の端部接続ボックスと、
第2の端部接続ボックスと、始端接続ボックスを介して、内部回路とは逆向きに電流が流れるように電源に直列的に接続された外部回路と、
からなる電流印加回路とを備え、
前記電源から電流印加回路の内部回路および外部回路を介して電流を流した際に、導電管を発熱させるよう構成した加熱装置を備えたことを特徴とする基礎構造。
【請求項15】
前記外部回路を流れる電流が、第1の端部接続ボックス、第2の端部接続ボックスの基
礎側の壁面を介して流れるように構成されていることを特徴とする請求項14に記載の基礎構造。
【請求項16】
前記端部接続ボックスが、基礎部分の外側に取付けられていることを特徴とする請求項14から15のいずれかに記載の基礎構造。
【請求項17】
前記端部接続ボックスが、基礎部分に一部埋設状態で取付けられていることを特徴とする請求項14から16のいずれかに記載の基礎構造。
【請求項18】
前記加熱装置が、基礎部分に複数段に上下に重ねて埋設されていることを特徴とする請求項14から17のいずれかに記載の基礎構造。
【請求項19】
前記加熱装置が、発熱ユニットの位置がずれるように、基礎部分に複数段に上下に重ねて埋設されていることを特徴とする請求項18に記載の基礎構造。
【請求項20】
前記加熱装置が、前記構造物の基礎底面に対して平行に設置されることを特徴とする請求項14から19のいずれかに記載の基礎構造。
【請求項21】
三つの前記加熱装置が、並列に三相電源に接続されていることを特徴とする請求項14から20のいずれかに記載の基礎構造。
【請求項22】
前記基礎部分に、複数の前記加熱装置を配置して構成したことを特徴とする請求項14から21のいずれかに記載の基礎構造。
【請求項23】
前記構造物が、低温液体の貯蔵タンクであることを特徴とする請求項14から22のいずれかに記載の基礎構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−9594(P2007−9594A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−193731(P2005−193731)
【出願日】平成17年7月1日(2005.7.1)
【特許番号】特許第3803359号(P3803359)
【特許公報発行日】平成18年8月2日(2006.8.2)
【出願人】(395011816)チッソエンジニアリング株式会社 (3)
【Fターム(参考)】