説明

加熱調理器

【課題】グリル庫内の清掃を簡単に、かつ綺麗に行なえるグリル装置を提供する。
【解決手段】グリル装置2は、グリル庫3内に収容されるグリル皿6と、グリル皿の底面を加熱してグリル皿に載置された被調理物を加熱する下方加熱部5と、グリル庫内の温度を検出する庫内温度センサ73と、平面放熱体52の温度を検出する放熱体温度センサ72と、グリル皿6の温度を検出するグリル皿温度センサ71と、下方加熱部5の熱源を加熱制御する制御部9とを備える。制御部9は、各温度検出手段の温度検出結果に基づいて下方加熱部5の温度を制御することにより被調理物が載置されない状態で水が貯溜されたグリル皿6を下方加熱部5により加熱して水蒸気を発生させてグリル庫3内を水蒸気で充満させる清掃モードを実行可能としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚などの被調理物を少なくとも下方側から加熱調理する加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヒータなどの加熱部を備え、受け皿に水を入れて水蒸気を発生させながら魚などの被調理物を焼成して調理する加熱調理器が知られている(特許文献1)。この加熱調理器は、受け皿内の水を加熱することにより、受け皿にこびり付いた汚れを取り易くしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−249290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、加熱調理器においては、魚を焼いている間に脂がグリル庫内の壁面に飛散してしまい、調理後にグリル庫内を清掃する必要がある。
【0005】
そこで、加熱部を利用して受け皿内の水を蒸発させてグリル庫壁面に結露させることが考えられる。この場合、加熱部を加熱する時、グリル庫内の温度が高くなり過ぎてしまうと、受け皿内の水が蒸発しても直ぐに乾燥してグリル庫壁面に結露が生じない。また、グリル庫内の温度が高過ぎると清掃作業が行なえない問題もある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、グリル庫内の温度が高くなり過ぎることなくグリル皿内の水を蒸発させて、グリル庫内の清掃を簡単に行なうことのできる加熱調理器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
グリル庫内に収容されるグリル皿と、
グリル皿の底面を加熱してグリル皿に載置された被調理物を加熱する下方加熱部と、
グリル庫内の温度を検出する庫内温度検出手段と、
グリル皿内の水の温度を検出する水温検出手段と、
下方加熱部を加熱制御する制御部とを備え、
制御部は、各温度検出手段の温度検出結果に基づいて下方加熱部の温度を制御することにより被調理物が載置されない状態で水が貯溜されたグリル皿を下方加熱部により加熱して水蒸気を発生させてグリル庫内を水蒸気で充満させる清掃モードを実行可能としていることを特徴とするものである。
【0008】
本発明の加熱調理器によれば、下方加熱部によりグリル皿の底面のみを加熱するため、グリル皿を加熱してもグリル庫内の急激な温度上昇を抑制できる。その結果、庫内温度検出手段と水温検出手段の温度検出結果に基づいて、グリル庫内の温度が水蒸気による結露が可能な温度となっている状態で、下方加熱部による加熱でグリル皿内の水を蒸発させることができるので、グリル皿から蒸発した水蒸気をグリル庫の壁面全体に結露させて壁面の汚れを落ち易くすることができ、グリル庫内の清掃を簡単に行なうことができる。
【0009】
また、本発明の加熱調理器は、清掃モードの入力操作部を備え、下方加熱部は、グリル庫の底面に設けられており、グリル皿の底面と接触してグリル皿を加熱する放熱体と、この放熱体を加熱する熱源とを備え、水温検出手段が、グリル皿内の水の熱がグリル皿を介して伝熱される放熱体の温度を検出する放熱体温度検出手段であり、制御部は、清掃モードの入力操作が行なわれた場合には、グリル庫内の温度がグリル庫壁面に水蒸気による結露が可能な所定の温度以下である場合に下方加熱部による加熱を開始させ、清掃モード中において、下方加熱部による加熱で放熱体の温度の温度変化率が急激に大きく変動して温度が上昇した場合にはグリル皿内の水の蒸発が終了したと判断して下方加熱部による加熱を終了させるように制御する構成とすることが好ましい。
【0010】
このような構成によれば、下方加熱部の熱源は放熱体のみを加熱し、この熱源により加熱された放熱体によってグリル皿を加熱することができ、さらに、放熱体はグリル皿の底面に接触してグリル皿のみを加熱するため、グリル皿を加熱してもグリル庫内の急激な温度上昇を抑制できる。さらに、清掃モードの入力操作が行なわれることにより清掃モードが開始されるが、グリル庫内の温度がグリル庫壁面に水蒸気による結露が可能な所定の温度以下とならなければ下方加熱部による加熱を開始させないので、下方加熱部による無駄な加熱を防ぎ、確実にグリル庫壁面に結露させることができる。
【0011】
ところで、放熱体によりグリル皿を加熱してグリル皿内の水が完全に蒸発してしまうと、グリル皿のみを加熱することになるのでグリル皿及び放熱体の温度が急上昇する。そこで、制御部は、清掃モード開始後に下方加熱部による加熱が開始された場合、放熱体の温度の温度変化率が急激に大きく変動して温度が上昇した時を蒸発が終了したと判断して下方加熱部による加熱を終了させる。制御部によってこのように下方加熱部を加熱制御することで、グリル皿を無駄に加熱することを阻止することができるし、グリル庫内の温度上昇も防止できるので結露状態の壁面が直ぐに乾燥してしまうのも阻止することができる。
【0012】
また、本発明の加熱調理器は、清掃モードの入力操作部を備え、水温検出手段が、グリル皿内の水の熱が伝熱されるグリル皿の温度を検出するグリル皿温度検出手段であり、制御部は、清掃モードの入力操作が行なわれた場合には、グリル庫内の温度がグリル庫壁面に水蒸気による結露が可能な所定の温度以下である場合に下方加熱部による加熱を開始させ、清掃モード中において、下方加熱部による加熱でグリル皿の温度の温度変化率が急激に大きく変動して温度が上昇した場合には蒸発が終了したと判断して下方加熱部による加熱を終了させるように制御する構成とすることもできる。
【0013】
この場合、制御部は、清掃モード開始後に下方加熱部による加熱が開始された場合、グリル皿の温度の温度変化率が急激に大きく変動して温度が上昇した時を蒸発が終了したと判断して下方加熱部による加熱を終了させるようにする。制御部によってこのように下方加熱部を加熱制御する場合も、グリル皿を無駄に加熱することを阻止することができるし、グリル庫内の温度上昇も防止できるので結露状態の壁面が直ぐに乾燥してしまうのも阻止することができる。
【0014】
さらに、本発明の加熱調理器の制御部は、下方加熱部が放熱体と熱源とにより構成される場合、タイマーを備え、清掃モード開始後、庫内温度検出手段で検出した庫内温度の温度変化率が小さくなったときを水蒸気発生開始時と判断してタイマーにより時間の測定を開始し、放熱体の温度変化率が急上昇する前に測定開始から水蒸気の充満が完了したとみなす設定時間が経過すると下方加熱部の加熱を終了させるように制御する構成とすることが好ましい。
【0015】
清掃モード開始により水が貯溜されたグリル皿が下方加熱部により加熱され始めると、グリル皿の温度上昇及び水の温度上昇によりグリル庫の庫内温度も上昇していくが、水蒸気が発生し始めると水蒸気の潜熱により庫内温度の上昇率が小さくなる。そこで、制御部は、清掃モード開始後、庫内温度検出手段で検出した庫内温度の温度変化率が小さくなったときを水蒸気発生開始時と判断してタイマーにより経過時間の測定を開始し、測定開始から水蒸気の充満が完了したとみなす設定時間経過後に下方加熱部の加熱を終了させるように制御する。
このような構成により、グリル皿内の水が蒸発し始めてからグリル庫内に適度に水蒸気が充満する時間を予め設定しておいて、この設定時間が経過することで蒸発処理を終了させることができるので、グリル皿に水が残っていても無駄な加熱を防止できる。
【0016】
本発明の加熱調理器の制御部は、タイマーを備え、清掃モード開始後、グリル皿温度検出手段で検出したグリル皿の温度の温度変化率が小さくなったときを水蒸気発生開始時と判断してタイマーにより時間の測定を開始し、グリル皿の温度変化率が急上昇する前に測定開始から水蒸気の充満が完了したとみなす設定時間が経過すると下方加熱部の加熱を終了させるように制御する構成とすることもできる。
【0017】
清掃モード開始により水が貯溜されたグリル皿が下方加熱部により加熱され始めると、グリル皿内の水の温度が上昇していくが、水蒸気が発生し始めるとグリル皿内の水の温度が沸点となって一定となる。そこで、制御部は、清掃モード開始後、グリル皿温度検出手段で検出したグリル皿温度の温度変化率が小さくなったときを水蒸気発生開始時と判断してタイマーにより時間の測定を開始し、測定開始から水蒸気の充満が完了したとみなす設定時間経過後に下方加熱部の加熱を終了させるように制御することもできる。
このような構成により、グリル皿内の水が蒸発し始めてからグリル庫内に適度に水蒸気が充満する時間を設定しておいて、この設定時間が経過することで蒸発処理を終了させることができるので、グリル皿に水が残っていても無駄な加熱を防止できる。
【0018】
本発明の加熱調理器は、清掃モードの状態を報知する報知手段を備え、制御部は、清掃モード中において下方加熱部の加熱を終了させた後、庫内温度がお手入れ可能温度まで低下したと判断したときに清掃モードを終了すると判定し、報知手段に清掃モードが終了したことを報知させるように制御する構成とすることが好ましい。
【0019】
このような構成により、下方加熱部の加熱を終了させた後、庫内温度がお手入れ可能温度まで低下したと判断したときに清掃モード終了を報知手段により使用者に報知するので、使用者はグリル庫内が清掃に適した温度まで低下した状態で火傷する虞もなく安全にグリル庫内を清掃することができる。
【0020】
本発明の加熱調理器は、下方加熱部が、上面が平面である平面放熱体と、平面放熱体を加熱する電気ヒータとを有し、電気ヒータは平面放熱体の上面側に露出しない位置に設けられ、平面放熱体は上面がグリル庫内に露出するようにグリル庫の底面部に組み付けられている構成とすることが好ましい。
【0021】
下方加熱部をこのように構成することで、電気ヒータがグリル庫内に露出しないので脂で汚れることはなく、グリル庫内に露出する平面放熱体の上面のみを清掃すればよいので清掃が容易になる。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明の加熱調理器は、下方加熱部によりグリル皿の底面のみを加熱するので、グリル皿を加熱してもグリル庫内の急激な温度上昇を抑制できる。その結果、庫内温度検出手段と水温検出手段の温度検出結果に基づいて、グリル庫内の温度が水蒸気による結露が可能な温度となっている状態で、下方加熱部による加熱でグリル皿内の水を蒸発させることができるので、グリル皿から蒸発した水蒸気をグリル庫の壁面全体に結露させて壁面の汚れを落ち易くすることができ、グリル庫内の清掃を簡単に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係るグリル装置を備えるガスコンロの全体構成を示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るグリル装置の部分構成を示す分解斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係るグリル装置の下方加熱部を下方から見た斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係るグリル装置の下方加熱部の要部部分断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係るグリル装置のグリル皿を下方から見た斜視図である。
【図6】本発明の実施形態に係るグリル装置の加熱制御を行なうための制御構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の実施形態に係るグリル装置の清掃モード時の制御部による制御を示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施形態に係るグリル装置の清掃モード時のグリル庫内の温度、グリル皿温度、及び、放熱体温度の時間経過に伴う温度変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(実施形態1)
以下に、本発明の実施形態に係る加熱調理器としてのグリル装置について、図1から図7を参照しながら説明する。
図1に示すように、本実施形態のグリル装置2は、システムキッチンのカウンタトップC内に埋設して使用するビルトイン式のガスコンロ1に組み込まれた後方排気式のグリル装置である。
【0025】
ガスコンロ1は、天板11の上面に、鍋やフライパン等の調理器具を支持する五徳12が載置されているとともに、五徳12の中央には、ガスの燃焼炎によって調理器具を加熱するコンロバーナ13が配設されている。
【0026】
グリル装置2は、ガスコンロ1の内部に設けられており、魚などの被調理物を加熱調理するためのグリル庫3と、このグリル庫3の天井部31に組み付けられている上方加熱部4と、グリル庫3の底面部32に組み付けられている下方加熱部5とを備えている。また、グリル庫3の前面は、開閉自在なグリル扉33により開閉される。グリル庫3内には、矩形状のグリル皿6が配置され、グリル皿6に置かれた被調理物を上方加熱部4及び下方加熱部5で加熱するようになっている。
【0027】
グリル庫3は、その形状が前面が開口された略直方体であり、スチール製の薄板で形成されている。グリル庫3の内壁面は焼きついた汚れを直ぐに拭き取れるようにするためにフッ素コートや触媒塗装を施すことが好ましい。また、グリル庫3の内壁部材は、強度に優れるステンレスで構成することが好ましい。
【0028】
上方加熱部4は、多数の炎孔を形成したセラミック製の燃焼板を有する表面燃焼式のガスバーナ41で構成され、燃焼板を下方に向けた姿勢でグリル庫3の天井部31に組み付けられている。そして、上方加熱部4を燃焼させると、燃焼板が赤熱し、燃焼板からの輻射熱でグリル皿6に載せた被調理物が上方から加熱される。
【0029】
下方加熱部5は、図3に詳しく示すように、熱源となる線状電気ヒータ51と、この線状電気ヒータ51の上方に配置される平面放熱体52とを有する。
線状電気ヒータ51としては、蛇行又は円形に曲げたシーズヒータを用いる。本実施形態では円形に曲げたシーズヒータ(例えば、AC100V電源で消費電力700W)を用いている。線状電気ヒータ51は、制御部9によって細かい温度制御が行なわれる。
【0030】
下方加熱部5の平面放熱体52は、底面に凹凸が形成されるため鋳物で構成されている。平面放熱体52は、アルミニウム、アルミ合金、銅、銅合金など熱伝導性の優れた金属を鋳込んで形成されている。平面放熱体52は、円形に曲げた線状電気ヒータ51を覆い、グリル庫3の底面部32に形成した開口部34を覆う大きさを有する円板状に形成されている。
【0031】
さらに、平面放熱体52は、上面が平面となっており、図4に詳しく示すように、グリル皿6の底面の温度を検出するグリル皿温度センサ71が貫通される貫通孔53が中央部に形成され、図3及び図4に示すように、外周部を下方に向けて湾曲させ、下面における貫通孔53の外側にグリル庫3の底面部32の開口部34に固定される環状突起54が形成されている。さらに、下面における貫通孔53と環状突起54との間に、平面放熱体52の温度を検出する放熱体温度センサ72が挿入される凹部55が形成されている。
【0032】
図1及び図2に示すように、平面放熱体52は、グリル庫3の底面部32と平面放熱体52の上面とができるだけ段差が小さくなるように、グリル庫3の底面部32に形成した開口部34を覆って組み付けられる。
【0033】
そして、線状電気ヒータ51は、平面放熱体52により完全に覆われてグリル庫3の底面部32の下方に配置された状態となり、かつ、グリル庫3の内部には露出しないようになっている。即ち、下方加熱部5は、平面放熱体52の上面のみがグリル庫3の内部に露出された状態となる。
【0034】
さらに、平面放熱体52の上面の大きさは、矩形のグリル皿6の底面の大きさよりも小さくなっている。平面放熱体52の上面をグリル皿6の底面よりも小さくすることで、平面放熱体52の上面がグリル皿6で覆われた状態になるので、平面放熱体52によりグリル皿6のみを加熱することができ、平面放熱体52の放熱によるグリル庫3の壁面の加熱を抑制できる。しかも、平面放熱体52に接触しないグリル皿6の外周部は、温度が中心部よりも下がるので、被調理物から染み出てグリル皿6の周囲に溜まった脂の温度上昇及びグリル皿6の近くのグリル庫3の壁面の温度上昇を抑えることができる。
【0035】
ところで、グリル皿6内に溜められる水は加熱されると温度が上昇していくが、このとき水の熱はグリル皿6を介して平面放熱体52に伝熱される。そこで、グリル皿6内の水の温度を間接的に検出するため、本実施形態では、グリル皿6の温度及び平面放熱体52の温度を検出することでグリル皿6内の水の温度検出を行なう。
【0036】
そして、グリル皿6の温度を測定するグリル皿温度センサ71は、グリル皿6の温度を直接測定するために、平面放熱体52の上面から、この上面とほぼ面一となるように露出させている。グリル皿温度センサ71は、各図では省略してグリル皿6の底面に接触する円形の平面を有する接触部のみが記載されている。グリル皿温度センサ71は、サーミスタにより構成されており、グリル皿温度センサ71でグリル皿6の温度を直接測定することにより被調理物の脂の発火を防止することができるし、グリル皿6に水を溜めて蒸発させる場合には、グリル皿6内の水が沸騰したことや、水が無くなっていることを検知することができる。
【0037】
なお、グリル皿温度センサ71は、貫通孔53に貫通させて配置させる場合、コイルバネなどの付勢手段により上部先端が平面放熱体52の上面よりやや突出させるように上方に向けて付勢した状態で貫通孔53内に上下動可能に挿通させて配置させるようにしてもよい。このような構成とすることで、平面放熱体52にグリル皿6を置くと、グリル皿6がグリル皿温度センサ71を下方に押し付けるようにしてグリル皿6の底面とグリル皿温度センサ71とが確実に接触する。
【0038】
また、平面放熱体52の温度を検出する放熱体温度センサ72は、サーミスタにより構成されており、平面放熱体52の内部温度を検出するために、平面放熱体52の上面から露出しないように平面放熱体52の下面側から凹部55に挿入させて配置される。グリル皿6に水を溜めて蒸発させる場合には、グリル皿6内の水が蒸発しきって無くなると平面放熱体52の温度が急激に上昇するので、放熱体温度センサ72によって平面放熱体52の温度を検出することによっても、グリル皿6内の水の状態を検知することができる。
【0039】
さらに、本実施形態では、図1及び図2に示すように、グリル庫3の内部温度を測定する庫内温度センサ73がグリル庫3の壁面に設けられている。庫内温度センサ73もサーミスタにより構成されている。
【0040】
グリル庫3内に配置されるグリル皿6は、アルミニウム製の鋳物で構成されており、全体として浅い矩形の皿状に形成されている。グリル皿6は、図5に示すように、その底面中心部に突出させて形成される円形部分61を平面放熱体52と接触させるようなっている。
【0041】
グリル庫3の前面開口部を開閉するグリル扉33は、グリル庫3を構成する部材に対して摺動可能に支持されている。さらに、グリル扉33には、グリル皿6を支持する支持枠体35が一体に固定されており、グリル扉33の前後の摺動に伴って、グリル皿6を載せた状態で支持枠体35も前後に移動するようになっている。支持枠体35は、ステンレスなどの金属の線材を曲げ加工して構成されている。
【0042】
また、グリル装置2は、図1及び図2に示すように、グリル庫3内で調理中の被調理物から発生した油煙や上方加熱部4で発生した燃焼ガスなどをグリル庫3の外に排出するために、上方加熱部4と下方加熱部5の後方に、グリル庫3内からガスコンロ1における天板11の後部上面に形成する排気口に連通する排気通路8も形成されている。
【0043】
さらに、グリル庫3と排気通路8との間は、図2にも示すように、多孔が形成された仕切板81が設けられており、排気通路8における仕切板81の近くの下部には、被調理物から発生した油煙を焼き切って脱煙、脱臭化するためのアフターバーナ82が配置されている。アフターバーナ82は、上方加熱部4と同様の表面燃焼式ガスバーナで構成されている。
【0044】
本実施形態のグリル装置2では、グリル庫3と排気通路8との間を仕切る仕切板81を設けているので、グリル装置2の清掃範囲は、グリル庫3内の仕切板81より前方の範囲にでき、清掃範囲を狭くできるし、アフターバーナ82が配置される排気通路8内が汚れ難くなる。
【0045】
さらに、本実施形態のガスコンロ1は、図示していないが、前面パネル又は天板11上に操作部が設けられており、この操作部は、図6のブロック図に示すように、グリル庫3内を清掃するための清掃モードを入力するための清掃モードスイッチ14(入力操作部)を備えている。
【0046】
また、ガスコンロ1は、図6に示すように、本体内に上方加熱部4及び下方加熱部5の加熱制御を行なうための制御部9を備えている。この制御部9には、清掃モードスイッチ14により入力された清掃モード開始の信号や、グリル皿温度センサ71、放熱体温度センサ72及び庫内温度センサ73で検出した温度が入力される。検出温度は、制御部9内の記憶部91に記憶される。
【0047】
制御部9は、各温度センサ71〜73から出力された温度検出結果に基づいて、上方加熱部4及び下方加熱部5の温度を制御するようになっており、記憶部91に記憶される検出温度に基づいて温度上昇率を算出する温度上昇率算出部92と、グリル皿6内の水の蒸発開始時からの時間経過を測定するタイマー93も備えている。
【0048】
また、ガスコンロ1は、制御部9による制御で清掃モード終了などの情報を使用者に報知するための報知手段としてのLED21及びスピーカー22も備えている。
【0049】
次に、本実施形態におけるグリル装置2の調理時の動作について説明する。被調理物の調理を行う際は、グリル扉33を開いて、グリル皿6を手前に引き出し、グリル皿6に被調理物を載せて、グリル皿6をグリル庫3内に戻してグリル扉33を閉める。
そして、グリル庫3内にグリル皿6が配置された状態で、例えば、上方加熱部4及びアフターバーナ82を点火すると共に、下方加熱部5の線状電気ヒータ51に通電して平面放熱体52を加熱して調理を開始する。
【0050】
本実施形態のグリル装置2によれば、上方加熱部4により被調理物を上方から加熱しながら、下方加熱部5の線状電気ヒータ51を通電して平面放熱体52が加熱されると、この平面放熱体52の上面に接触して配置されるグリル皿6が加熱され、グリル皿6に置かれた被調理物の下面側が加熱される。
【0051】
また、グリル庫3内を清掃する際には、グリル扉33を開いて、グリル皿6を手前に引き出し、グリル皿6に所定量(例えば100ml)の水を入れて、グリル皿6をグリル庫3内に戻してグリル扉33を閉める。
【0052】
そして、グリル庫3内に水が入ったグリル皿6が配置された状態で、操作部の清掃モードスイッチ14を入力する。清掃モードが開始されると、庫内温度センサ73で検出した庫内温度に基づいて、庫内温度が所定温度以下である場合には、下方加熱部5の線状電気ヒータ51に通電して平面放熱体52を加熱してグリル皿6内の水を加熱し始める。なお、清掃モード中は上方加熱部4は加熱されない。このとき、グリル皿6は、平面放熱体52の上面を覆った状態で接触するので、平面放熱体52が放熱しても、グリル皿6のみ加熱され、グリル庫3内の温度はグリル皿6の温度上昇に伴って上昇する程度あり、グリル庫3壁面の温度が急上昇することを抑制できる。
【0053】
また、下方加熱部5では、線状電気ヒータ51の熱が平面放熱体52の全体に伝えられて平面放熱体52の上面全面からほぼ均一に放熱させることができるので、グリル皿6の略全体を均一に加熱できる。その結果、グリル皿6に所定量の水を入れて蒸発させる場合には、グリル皿6のほぼ全面で水を加熱させて沸騰させることができ、短時間でグリル皿6内の水を蒸発させることができる。
【0054】
次に、図7のフローチャート及び図8の温度変化グラフを参照して、制御部9による、清掃モードの制御動作について説明する。
【0055】
使用者が水を入れたグリル皿6をグリル庫3内に配置して清掃モードスイッチ14を押すと(ステップS1)、庫内温度センサ73で検出した庫内温度に基づいて庫内温度が40℃以下か否かの判断を行なう(ステップS2)。
【0056】
庫内温度が40℃を超えている場合には(ステップS2でNo)は、清掃モードを拒否する判定を行い(ステップS12)、清掃モードが拒否されたことをLED21により点灯表示し、スピーカー22により報知を行う(ステップS13)。このように庫内温度が40℃を超えている場合には、グリル皿6内の水を蒸発させても、直ぐにグリル庫3内が乾燥してしまい、グリル庫3の壁面に結露しないので、庫内温度が40℃を超えている場合には線状電気ヒータ51を加熱させないようにすることで無駄な電力消費を抑えられる。
【0057】
また、図8のグラフにおいて庫内温度が約20℃のときに加熱開始していることを示しているように、庫内温度が40℃以下である場合には(ステップS2でYes)、線状電気ヒータ51をONして平面放熱体52を加熱し始める(ステップS3)。
【0058】
平面放熱体52によりグリル皿6内の水が加熱されると庫内温度も上昇していくので、庫内温度が60℃以上となり、かつ、温度上昇率算出部92で逐次算出していく庫内温度上昇率が小さくなったか否かを判定する(ステップS4)。図8の第1変曲点に示すように、庫内温度が60℃以上となり、かつ、温度上昇率が小さくなると(ステップS4でYes)、グリル皿6から水蒸気が発生したと判断してタイマー93により経過時間を測定し始める(ステップS5)。ここで、温度上昇率算出部92は、庫内温度の10秒間の温度変化が+1.5℃以内の状態を2回連続すると、温度上昇率が小さくなったと判断する。なお、ステップS4において、庫内温度上昇率が小さくなったか否かを判定したが、グリル皿6の温度上昇率が小さくなったか否かを判定するようにしてもよい。
【0059】
経過時間について予め設定している設定時間(庫内に水蒸気が十分に充満したとみなされる時間)が経過したか否かを判定し(ステップS6)、設定時間が経過していない場合には(ステップS6でNo)、さらに、温度上昇率算出部92で逐次算出していくグリル皿6の温度上昇率が大きくなるように変化したか否かを判定する(ステップS7)。図8の第2変曲点で示すように、グリル皿6の温度上昇率が大きくなった場合には(ステップS7でYes)、グリル皿6内に水が無くなったと判断して(ステップS8)、線状電気ヒータ51をOFFする(ステップS9)。ここで、温度上昇率算出部92は、庫内温度の5秒間の温度変化が+2.5℃以上の状態を2回連続すると、温度上昇率が大きくなったと判断する。なお、ステップS7において、グリル皿6の温度上昇率が大きくなるように変化したか否かを判定したが、温度上昇率算出部92で逐次算出していく平面放熱体52の温度上昇率が大きくなるように変化したか否かを判定することにより、グリル皿6内の水が無くなったか否かを判定するようにしてもよい。
【0060】
また、ステップS6で、図8の第2変曲点に到達することなく、タイマー93で計測している経過時間が設定時間を経過した場合には(ステップS6でYes)、線状電気ヒータ51をOFFする(ステップS9)。このようにグリル皿6内の水が蒸発しきっていなくても、設定時間としてグリル庫3内に水蒸気が充満する時間を予め設定しておいて、この設定時間を経過した時は、グリル皿6の水の残量に関係なく、線状電気ヒータ51をOFFするので、線状電気ヒータ51を無駄に加熱し続けなくてよくなる。
【0061】
さらに、ステップS7で、グリル皿6の温度上昇率が大きくなっていない場合には(ステップS7でNo)、ステップ6に戻って、設定時間が経過しているか否かの判定を行なう。
【0062】
ステップS9で、線状電気ヒータ51がOFFされた後、庫内温度及びグリル皿温度の検出温度が、45℃以下になると(ステップS10でYes)、清掃モードが終了したと判定して、清掃モードが終了した旨を報知するため、LED21により点灯表示を行い、スピーカー22により報知を行なう(ステップS11)。使用者は、清掃モード終了の報知により安全にグリル庫3内の拭き取り清掃を開始することができる。
【0063】
なお、ステップS3で線状電気ヒータ51をONした後、すぐにグリル皿6の温度又は平面放熱体52の温度が急上昇(例えば、5秒間の温度変化が+2.5℃以上となる状態を2回連続)した場合には、線状電気ヒータ51をOFFしてグリル皿6に水が無い旨を報知するようにしてもよい。
【0064】
以上のように、本実施形態に係るグリル装置2は、制御部9による制御で、グリル皿6に入れられた水を下方加熱部5を利用して蒸発させる清掃モードの制御を行なうので、グリル装置2全体の構造が複雑となることなく簡単な構成でグリル庫3を水蒸気で充満させて、グリル庫3内の壁面全体に十分に結露させることができる。その結果、結露させた状態からグリル庫3内の温度が清掃可能温度まで低下させた後、簡単に、かつ、綺麗にグリル庫3を清掃することができる。
【0065】
さらに、本実施形態に係るグリル装置2は、線状電気ヒータ51がグリル庫3内に露出せず、平面放熱体52の上面のみをグリル庫3内に露出させた状態で平面放熱体52をグリル庫3の底面部32に組み付けた構成となっている。そのため、グリル庫3の底面部32と平面放熱体52とが一体化されてグリル庫3の底面はできるだけ段差を小さくすることができるので、グリル庫3内の内面を清掃する際に、平面放熱体52の上面及びグリル庫3の壁面を拭くだけの簡単な作業で手入れを行なうことができ、清掃がし易くなる。
【0066】
(その他)
また、前記各実施形態では、下方加熱部5は、平面放熱体52の底面に近接させて線状電気ヒータ51を配置させる構成であったが、平面放熱体の内部に線状電気ヒータを埋め込むように構成することもできる。さらに、平面放熱体の底面に線状電気ヒータが嵌め込まれる溝を形成して、溝に線状電気ヒータを嵌め込むように構成することもできる。また、電気ヒータは、線状電気ヒータに限らず例えば面状のものでもよい。
【0067】
線状電気ヒータを平面放熱体の内部に埋め込む場合には、例えば平面放熱体を形成するための鋳型の内部に予め線状電気ヒータを配置させておいて、鋳型内に溶解したアルミニウムなどの金属を注湯して鋳込み成型する。鋳込む金属は、アルミニウムやアルミニウム合金などの熱伝導性に優れた金属を用いることが好ましい。また、下方加熱部5は、電気ヒータのみで構成することもでき、この場合、電気ヒータは、グリル皿6の底面より水平方向外側に出ないように配置して、グリル庫3の壁面を電気ヒータで直接加熱しないようする。
【0068】
さらに、本発明の加熱調理器は、上方加熱部4に蛇行状に湾曲させた線状電気ヒータ(シーズヒータ)を用いても、清掃モード時には、上記実施形態と同様の清掃効果が得られる。
【0069】
本発明に係るグリル装置は、上記各実施形態に限定されるものではなく、種々の設計変更を施すことが可能である。
さらに、上記実施形態に係るグリル装置は、ガスコンロに組み込まれるものを挙げたが、IHコンロなどの各種の加熱調理器に組み込まれたものでもよく、また、独立に設置されるグリル装置に適用することもできる。
【符号の説明】
【0070】
2 グリル装置
3 グリル庫
4 上方加熱部
5 下方加熱部
6 グリル皿
8 排気通路
9 制御部
14 清掃モードスイッチ
21 LED(報知手段)
22 スピーカー(報知手段)
41 ガスバーナ
51 線状電気ヒータ(熱源)
52 平面放熱体
71 グリル皿温度センサ
72 放熱体温度センサ
73 庫内温度センサ
91 記憶部
92 温度上昇率算出部
93 タイマー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリル庫内に収容されるグリル皿と、
グリル皿の底面を加熱してグリル皿に載置された被調理物を加熱する下方加熱部と、
グリル庫内の温度を検出する庫内温度検出手段と、
グリル皿内の水の温度を検出する水温検出手段と、
下方加熱部を加熱制御する制御部とを備え、
制御部は、各温度検出手段の温度検出結果に基づいて下方加熱部の温度を制御することにより被調理物が載置されない状態で水が貯溜されたグリル皿を下方加熱部により加熱して水蒸気を発生させてグリル庫内を水蒸気で充満させる清掃モードを実行可能としていることを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
請求項1に記載の加熱調理器において、
清掃モードの入力操作部を備え、
下方加熱部は、グリル庫の底面に設けられており、グリル皿の底面と接触してグリル皿を加熱する放熱体と、この放熱体を加熱する熱源とを備え、
水温検出手段が、グリル皿内の水の熱がグリル皿を介して伝熱される放熱体の温度を検出する放熱体温度検出手段であり、
制御部は、
清掃モードの入力操作が行なわれた場合には、グリル庫内の温度がグリル庫壁面に水蒸気による結露が可能な所定の温度以下である場合に下方加熱部による加熱を開始させ、
清掃モード中において、下方加熱部による加熱で放熱体の温度の温度変化率が急激に大きく変動して温度が上昇した場合にはグリル皿内の水の蒸発が終了したと判断して下方加熱部による加熱を終了させるように制御する構成としている加熱調理器。
【請求項3】
請求項1に記載の加熱調理器において、
清掃モードの入力操作部を備え、
水温検出手段が、グリル皿内の水の熱が伝熱されるグリル皿の温度を検出するグリル皿温度検出手段であり、
制御部は、
清掃モードの入力操作が行なわれた場合には、グリル庫内の温度がグリル庫壁面に水蒸気による結露が可能な所定の温度以下である場合に下方加熱部による加熱を開始させ、
清掃モード中において、下方加熱部による加熱でグリル皿の温度の温度変化率が急激に大きく変動して温度が上昇した場合にはグリル皿内の水の蒸発が終了したと判断して下方加熱部による加熱を終了させるように制御する構成としている加熱調理器。
【請求項4】
請求項2に記載の加熱調理器において、
制御部は、タイマーを備え、
清掃モード開始後、庫内温度検出手段で検出した庫内温度の温度変化率が小さくなったときを水蒸気発生開始時と判断してタイマーにより時間の測定を開始し、放熱体の温度変化率が急上昇する前に測定開始から水蒸気の充満が完了したとみなす設定時間が経過すると下方加熱部の加熱を終了させるように制御する構成としている加熱調理器。
【請求項5】
請求項3に記載の加熱調理器において、
制御部は、タイマーを備え、
清掃モード開始後、グリル皿温度検出手段で検出したグリル皿の温度の温度変化率が小さくなったときを水蒸気発生開始時と判断してタイマーにより時間の測定を開始し、グリル皿の温度変化率が急上昇する前に測定開始から水蒸気の充満が完了したとみなす設定時間が経過すると下方加熱部の加熱を終了させるように制御する構成としている加熱調理器。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載の加熱調理器において、
清掃モードの状態を報知する報知手段を備え、
制御部は、清掃モード中において下方加熱部の加熱を終了させた後、庫内温度がお手入れ可能温度まで低下したと判断したときに清掃モードを終了すると判定し、報知手段に清掃モードが終了したことを報知させるように制御する構成としている加熱調理器。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載の加熱調理器において、
下方加熱部は、上面が平面である平面放熱体と、平面放熱体を加熱する電気ヒータとを有し、電気ヒータは平面放熱体の上面側に露出しない位置に設けられ、平面放熱体は上面がグリル庫内に露出するようにグリル庫の底面部に組み付けられている加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−217610(P2012−217610A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86194(P2011−86194)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(000115854)リンナイ株式会社 (1,534)
【Fターム(参考)】