説明

加熱調理器

【課題】設置スペースを増大させることなく、制御回路の機能追加により実装面積を増大させた基板も収容可能な基板ケーシングを備えた加熱調理器を得る。
【解決手段】本体は、加熱コイルと、風路と、を備え、風路は、本体の後方上部に形成された吸気口41と、冷却ファン42と、加熱コイルを制御する回路が搭載されている基板43を収容する基板ケーシング44と、この基板ケーシング44の上部に配置され、多数の通気孔を有する底部と多数の通気孔45Aを有する天面部側壁とを有する加熱コイル用風路ダクト45とを備え、冷却ファン42の吸引力により吸気口41から外気を吸引して、この外気と基板43及び加熱コイルを熱交換することで基板43及び加熱コイルを冷却する。基板ケーシング44の上部は開口しており、加熱コイル用風路ダクト45の底部で基板ケーシング44の上端と対向する位置に伸縮部材を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の加熱調理器において、フラットな天板上に載置された鍋は、この天板の下方に配設された加熱コイルから発せられた交番磁界により誘導加熱されるので、火を使わずに鍋を加熱することができる。加熱時には被加熱物(鍋)、加熱コイル、加熱コイルを制御する基板上の制御回路などからも発熱があるため、冷却ファンを用いて強制空冷が行われている。従来の加熱調理器において、冷却ファンを駆動することで、外気を吸気口から吸引し、冷却ファン経由で基板と加熱コイルに同時に通風することでこれらの冷却が行われるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−038653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、加熱調理器の機能の高度化とともに印刷回路基板の実装密度が高くなってきている。しかしながら基板の実装密度も飽和状態まで到達しており、これ以上実装密度を上げることが困難な状況である。そこで、基板の実装容量の増大という課題を基板の面積を増大させることで対応することが考えられる。なお、機能の大幅な拡大を行う必要がある場合には、基板および基板ケーシングの再設計が必要になるが、大抵は、機能の増大は小幅なものにすぎないため、基板面積の増大量も15%以下に過ぎない。
しかしながら、従来の基板ケーシングには所定サイズの基板しか搭載できないように設計されている。従って、異なるサイズの基板を収容することができない。また、機能追加などにより基板の縦長、幅、あるいは高さを変更することも許されないという問題があった。
そこで、予め、基板ケーシングの内容積を十分に取っておき、将来の機能追加に対応できるように空きスロットを設けておき、所定サイズの基板単位で増設が可能なように構成する必要がある。この結果、機能の追加量は微々たるものに過ぎないにも拘わらず、新たな基板を追加するための無駄な設置スペースの増大を招き、ひいては装置の大型化を招くという問題があった。
【0005】
本発明は上記のような問題点を解決するために為されたものであり、主な目的は、設置スペースを増大させることなく、制御回路の機能追加により実装面積を増大させた基板も収容可能な基板ケーシングを備えた加熱調理器を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る加熱調理器は、被加熱物を載置する天板と、この天板の下方に設けられた本体と、を備え、本体は、被加熱物を誘導加熱する複数の加熱コイルと、風路とを備え、風路は、本体の後方上部に形成された吸気口と、冷却ファンと、加熱コイルを制御する回路が搭載されている基板を収容する基板ケーシングと、この基板ケーシングの上部に配置され、多数の通気孔を有する底部と多数の通気孔を有する天面部と側壁とを有する加熱コイル用風路ダクトとを備え、冷却ファンの吸引力により吸気口から吸引した外気により基板及び加熱コイルを冷却し、基板ケーシングの上部は開口しており、加熱コイル用風路ダクトの底部で前記基板ケーシングの上端と対向する位置に伸縮部材を設けたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、基板ケーシングの設置スペースを増大させることなく、制御回路の機能追加により実装面積を増大させた基板も収容可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態1における加熱調理器の構成を示す斜視図である。
【図2】図1の基板ケーシング44と加熱コイル用風路ダクト45の配置を示す斜視図である。
【図3】図2の基板ケーシング44から加熱コイル用風路ダクト45を切り離した状態の基板ケーシング44の外観を示す斜視図である。
【図4】図2の基板ケーシング44から加熱コイル用風路ダクト45を切り離した状態の基板ケーシング44の外観を示す別の斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態1における加熱調理器の伸縮部材47の構成を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
ここでは、一例として加熱口が2口以上の加熱調理器を挙げて説明する。
図1は本発明の実施の形態1における加熱調理器の構成を示す斜視図であり、天板を外した状態を示している。
図1に示すように、加熱調理器100は、本体10と、本体10の上部に設けられ、鍋などの被加熱物を載置する天板(図示せず)とから構成されている。本体10は2段に構成されており、上段には、加熱コイル(図示せず)が少なくとも左右の前側に1つずつ設けられている。また下段には、左右のほぼ中央且つ前側に魚などを焼くためのグリル20が設けられている。グリル20の前側には、グリルの引き出し、押し込みを操作するためのグリル扉21が設けられている。また、グリル20の背面には、グリル20内で発生した排煙を外部へ排出するためのグリル排気ダクト22が接続され、後方へ延設され、さらに上方へ延設され、上端はグリル排気口23となっている。
また、グリル20を左右に挟む前側には操作部30が設けられており、調理モード選択や火力設定などのスイッチ類が設けられている。
また、グリル20の左右の外側には、風路40が1つずつ設けられている。この風路40は、吸気口41、外気を吸気口41から吸引するための冷却ファン42、冷却ファン42の出口と接続され、基板43を収納する基板ケーシング44、及び加熱コイル用風路ダクト45から構成されている。加熱コイル用風路ダクト45の底部は基板ケーシング44の天面と連通し、加熱コイル用風路ダクト45の天面には加熱コイルに供給する冷却風を噴出するための通気孔45Aが多数穿設されている。
【0010】
次に、風路の動作について簡単に説明する。調理者が操作部30の運転スイッチを操作することで、冷却ファン42が図示しない駆動回路によって回転駆動される。これにより、外気が冷却ファン42の吸引力によって吸気口41から吸引され、冷却ファン42を順次通過した後、基板ケーシング44内を通過する。このとき、基板43は通過する外気と熱交換することで冷却される。また、基板ケーシング内で基板43との熱交換を終了した空気は、その後上昇して加熱コイル用風路ダクト45内に入り、通気孔45Aから噴流となって上方へ噴出し、加熱コイル用風路ダクト45の上部に位置する加熱コイル(図示せず)を冷却する。加熱コイルとの熱交換を完了した空気は後方へ進み、後部に設けられた排気口(図示せず)から外部へ排出される。
【0011】
図2は図1の基板ケーシング44と加熱コイル用風路ダクト45の配置を示す斜視図であり、図3は図2の基板ケーシング44から加熱コイル用風路ダクト45を切り離した状態の基板ケーシング44の外観を示す斜視図である。
図2に示すように、基板ケーシング44の上に加熱コイル用風路ダクト45が載置される。この場合、図2に示すように、基板ケーシング44の上部には蓋がなく開口している。基板ケーシング44の上部には加熱コイル用風路ダクト45が載置される。即ち、加熱コイル用風路ダクト45の底部が蓋の代用品として利用される。これにより、塵埃や水分などの浸入を防止することが可能である。
また、この加熱コイル用風路ダクト45の底部で基板ケーシング44の上端と対向する位置に伸縮部材47を設ける。伸縮部材47としては、図5(a)に示すように蛇腹構造であり、蛇腹部47aは耐熱性のゴムなどにより構成する。ここで、蛇腹部47aの下端及び上端は、それぞれ、基板ケーシング44の上端及び加熱コイル用風路ダクト45の底部で基板ケーシング44の上端と対向する位置と嵌着して取り付ける。なお、図5(b)に示すように多段のスライド構造としてもよい。このスライド部47bは、耐熱性の樹脂などにより構成する。これらの伸縮部材47は、上下方向に縮む方向に付勢される。これにより、機能追加などにより高さが所定サイズの基板よりも高くなった基板を収容しても、高さが増した基板が伸縮部材47の縮む力に抗して、加熱コイル用風路ダクト45の底部がその基板の位置だけ所定分上昇することにより問題なくこれらを収容可能になる。
また、この加熱コイル用風路ダクト45の底部で基板ケーシング44の上端と対向する位置と基板ケーシング44の上端との間に中空の中間部材を挟持させ、可能性のある最大基板サイズ(高さ)に合わせてこの中間部材の高さを調整する。これにより、機能追加などにより高さが所定サイズの基板よりも高くなった基板を収容しても底部がその基板の位置だけ所定分上昇することにより水平方向の設置スペースを増大させることなく、これらを収容することができる。また、高さ方向は従来の蓋分の高さが低くなるため、高さ方向のスペースの問題を解消することができる。
【0012】
図4は図2の基板ケーシング44から加熱コイル用風路ダクト45を切り離した状態の基板ケーシング44の外観を示す別の斜視図である。図4に示すように基板ケーシング44と加熱コイル用風路ダクト45との間に外周のサイズが基板ケーシング44の上端の外周サイズとほぼ一致する略矩形状の中空部材46を介在させる。これにより、中空部材46の高さ分空間を稼ぐことができるため、機能追加などにより高さが所定サイズの基板よりも高くなった基板を収容しても底部がその基板の位置だけ所定分上昇することにより水平方向の設置スペースを増大させることなく、これらを収容することができる。
なお、上記の中空部材の高さは従来の基板ケーシングの蓋の高さ程度にすると高さ方向のスペースも従来の高さを増大させることがなくなるため、スペースの問題を解消することができる。
また、加熱コイル用風路ダクト45の底部を弾性部材で構成する必要がなくなり、素材選択における自由度が拡大する。これにより、製造費用の圧縮を図ることが可能である。
なお、上記の例では、中空部材46の水平断面形状を略矩形状としたがこれに限る必要はなく基板ケーシング44から加熱コイル用風路ダクト45の底部へ送られる空気の気密が維持可能である範囲において、水平方向に飛び出した任意の形状でもよい。また、中空の開口部の水平断面形状も略矩形状に限定する必要なく、基板ケーシング44から加熱コイル用風路ダクト45の底部へ空気が十分に送られる範囲であればどのような形状でも良い。
【符号の説明】
【0013】
10 本体、20 グリル、21 グリル扉、22 グリル排気ダクト、23 グリル排気口、30 操作部、40 風路、41 吸気口、42 冷却ファン、43 基板、44 基板ケーシング、45 加熱コイル用風路ダクト、45A 通気孔、46 中空部材、47 伸縮部材、47a 蛇腹部、47b スライド部、100 加熱調理器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物を載置する天板と、この天板により上部開口部が覆われた本体と、を備え、
前記本体は、前記被加熱物を誘導加熱する複数の加熱コイルと、風路とを備え、
前記風路は、前記本体の後方上部に形成された吸気口と、冷却ファンと、前記加熱コイルを制御する回路が搭載されている基板を収容する基板ケーシングと、この基板ケーシングの上部に配置され、複数の通気孔を有する底部と複数の通気孔を有する天面部と側壁とを有する加熱コイル用風路ダクトとを備え、前記冷却ファンの吸引力により前記吸気口から吸引した外気により前記基板及び前記加熱コイルを冷却し、
前記基板ケーシングの上部は開口しており、
前記加熱コイル用風路ダクトの底部で前記基板ケーシングの上端と対向する位置に伸縮部材を設けたことを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
被加熱物を載置する天板と、この天板により上部開口部が覆われた本体と、を備え、
前記本体は、前記被加熱物を誘導加熱する複数の加熱コイルと、風路とを備え、
前記風路は、前記本体の後方上部に形成された吸気口と、冷却ファンと、前記加熱コイルを制御する回路が搭載されている基板を収容する基板ケーシングと、この基板ケーシングの上部に配置され、複数の通気孔を有する底部と複数の通気孔を有する天面部と側壁とを有する加熱コイル用風路ダクトとを備え、前記冷却ファンの吸引力により前記吸気口から吸引した外気により前記基板及び前記加熱コイルを冷却し、
前記基板ケーシングの上部は開口しており、
前記加熱コイル用風路ダクトの底部で前記基板ケーシングの上端と対向する位置と、前記基板ケーシングの上端との間に中空の中間部材を介在させたことを特徴とする加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−33353(P2012−33353A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−171000(P2010−171000)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000176866)三菱電機ホーム機器株式会社 (1,201)
【Fターム(参考)】