説明

加熱調理器

【課題】加熱物の材質に係らず加熱することができ、過度の温度上昇を防止できる加熱調理器を提供する。
【解決手段】耐熱性の天板3と、電磁誘導加熱手段たる加熱コイル4を制御する制御手段とを備えた加熱調理器において、天板3の所定方向である下方に、電磁誘導加熱可能な加熱部たる加熱板21を設ける。加熱板21は所定温度であるキュリー温度以上で磁性の変化が生じ、電磁誘導加熱を停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁誘導加熱により加熱物を加熱する加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加熱調理器は、図9に示すように、加熱物を載せる天板101を有し、この天板101以外に操作部102を設けている(例えば特許文献1)。
【0003】
また、加熱物の過度の温度上昇を防止するため、別に専用部品として安全装置を設けることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−231686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の加熱調理器では、天板101の外に操作部102を設けているため、本体サイズが大きくなり、使用する際にスペースを取るという問題がある。
【0006】
また、加熱物の過度の温度上昇を防止するために別部品の安全装置を設けると、コストが上昇する。
【0007】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、加熱物の材質に係らず加熱することができ、過度の温度上昇を防止できる加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明の加熱調理器では、天板と、電磁誘導加熱手段とを備えた加熱調理器において、前記天板の所定方向に、電磁誘導加熱可能な加熱部を設け、この加熱部は所定温度以上で磁性の変化が生じ、電磁誘導加熱を停止させることを特徴とする。
【0009】
また、請求項2の発明の加熱調理器では、前記加熱部に連通部を設けたことを特徴とする。
【0010】
さらに、請求項3の発明の加熱調理器では、前記天板に前記加熱部を密着させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、天板の所定方向に加熱部を配置し、この加熱部の電磁誘導加熱により天板を加熱するから、加熱物の材質に係らず、加熱することができる。また、所定温度以上になると、加熱部において電磁誘導加熱をしないことから、過度の温度上昇を防止できる。さらに、所定温度以上になると、加熱部に磁性の変化が生じ、電磁誘導加熱をしなくなる。
【0012】
また、請求項2の発明によれば、天板上の加熱物を電磁誘導加熱することができる。したがって、加熱部と加熱物の両者を電磁誘導加熱することができるから、加熱物の材質を選ばずに加熱を行うことができる。
【0013】
また、請求項3の発明によれば、密着させることにより、熱効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例1を示す加熱調理器の斜視図である。
【図2】同上、断面図である。
【図3】本発明の実施例2を示す加熱調理器の断面図である。
【図4】同上、キュリー温度を説明するグラフ図である。
【図5】本発明の実施例3を示す加熱調理器に用いる加熱部の平面図である。
【図6】本発明の実施例4を示す加熱調理器の断面図である。
【図7】同上、平面図である。
【図8】同上、側面吸気路の拡大断面図である。
【図9】従来例の加熱調理器の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら、本発明における加熱調理器の好ましい実施例を説明する。
【実施例1】
【0016】
以下、本発明における加熱調理器の実施例1について図1〜図2を参照しながら説明する。同図に示すように、加熱調理器1は、ケース状をなす樹脂製の本体2の上部に、耐熱ガラス製の天板3を設け、この天板3の下方には、後述する調理容器を電磁誘導加熱する加熱手段たる加熱コイル4が設けられている。尚、前記耐熱ガラスは、耐熱性結晶化ガラスなどが用いられる。
【0017】
前記本体2内には、マイクロコンピュータなどで構成された制御手段5が設けられ、この制御手段5は、前記加熱コイル4を制御する。前記制御手段5は、加熱コイル4のオン・オフ制御以外にも、加熱コイル4による加熱温度を検出するセンサ(図示せず)の温度データにより加熱温度を一定に保つなどの温度制御を行ったり、タイマー手段(図示せず)により加熱時間を計測して設定時間経過後に加熱コイル4による加熱を停止したりするなど各種の制御を行う。
【0018】
前記天板3上には、使用時に、加熱物たる調理容器6が載置され、この調理容器6は、熱伝導性の良好な非磁性体材料、例えばアルミニウムやその合金などからなり、前記天板3に当接する側、すなわち下側には、磁性体材料からなる発熱体7が溶射又は一体に取り付けられている。そして、前記加熱コイル4に高周波電流を通電すると、発熱体7が発熱して調理容器6が加熱されるようになっている。
【0019】
前記天板3の中央部には、多重円からなる表示部11が設けられ、この表示部1の外側円部12が磁力線による電磁誘導加熱範囲に略対応している。この例では、前記天板3の上面で、該天板3の角部13側に表示及び操作領域14を設け、この表示及び操作領域14には、表示器たるLED15及び液晶表示部16や、操作部たる運転スイッチ17及び温度設定スイッチ18などが設けられ、それら運転スイッチ17及び温度設定スイッチ18には、操作部への圧力を検知する検知手段を備えた圧力検知スイッチが用いられる。そして、前記LED15,液晶表示部16,運転スイッチ17及び温度設定スイッチ18は、前記制御手段5に電気的に接続されており、その制御手段5により、LED15の点灯が制御され、液晶表示部16の表示が制御され、また、運転スイッチ17及び温度設定スイッチ18の操作に応じて、制御手段5が加熱コイル4などを制御する。尚、液晶表示部16に圧力検知スイッチを組み込んでも良い。
【0020】
このように方形の天板3において、加熱コイル4の電磁波の影響の少ない天板3の角部13側で、天板3の縁に沿うように、運転スイッチ17や温度設定スイッチ18を配置することにより、従来のような張出し部が不要となり、本体2のコンパクト化を図ることができる。
【0021】
以上のように本実施例では、耐熱性の天板3と、この天板3を設けた本体2と、天板3上の加熱物たる調理容器6を発熱させる加熱手段たる加熱コイル4と、この加熱コイル4を制御する制御手段5とを備えた加熱調理器において、天板3の所定位置である上面に、加熱コイル4を操作する操作部たる運転スイッチ17及び温度設定スイッチ18を設け、これら運転スイッチ17及び温度設定スイッチ18への圧力を検知する検知手段を備えたから、天板3に操作部を位置させたことにより、サイズが小さくなり、使用スペースを小さくすることができる。このため、例えば卓上に置いてすき焼きや鍋物調理をしたとき、卓上スペースを広く使え、調理の材料をゆったりと置くことができる。
【0022】
また、操作部に圧力検知スイッチを用いており、圧力検知スイッチは天板3の上面と略面一に設けることができるから、調理容器6の邪魔にならない。
【実施例2】
【0023】
以下、本発明における加熱調理器の実施例2について、図3〜図4を参照しながら説明する。尚、上記実施例1と同一部分に同一符号を付して説明する。
【0024】
図3〜図4に示すように、前記天板3の下面に、加熱部たる加熱板21を密着して設け、この加熱板21はNi−Fe合金などで構成され、1mm前後の厚さを有する。この場合、天板3と加熱板21との間にシリコンなどの溶剤を介在して密着することができる。また、前記加熱板21は磁性体材料からなり、そのキュリー温度は200℃である。
【0025】
また、前記加熱板21の下部に断熱板22を設け、下方への熱伝導を抑制し、前記断熱板22は前記加熱板21に密着している。前記断熱板22の下部には、前記加熱コイル4が配置され、この加熱コイル4はコイル支持板23上に取り付けられており、天板3を上から見たときに渦巻き状に配置され、前記外側円部12内に位置する。また、前記コイル支持板23は、ガラス材料、PP樹脂やPET樹脂等の絶縁材料から形成されている。
【0026】
そして、前記加熱コイル4とコイル支持板23が、PCB(プリント配線基板)組立体24の上部に組み込まれ、このPCB組立体24には加熱コイル4を駆動するためのプリント配線基板(図示せず)が設けられている。前記PCB組立体24は前記本体2の底板25の上に配置され、この底板25の底面には脚部26が設けられている。また、前記断熱板22の下面には温度センサ27が設けられ、この温度センサ27により検出した断熱板22の温度データを、前記制御手段5に出力するように構成している。
【0027】
Ni−Fe合金などで構成される厚さ1mm前後の前記加熱板21は、キュリー温度に達すると磁化を失い、電磁誘導がほとんどなくなる。図4は、キュリー温度を説明するグラフであり、横軸に温度、縦軸に透磁率と磁束密度と保磁力を取り、透磁率が低下する下降線と、その前の接線が交差する位置の温度がキュリー温度と定義される。尚、図4はキュリー温度が略260℃の場合を示している。
【0028】
したがって、加熱コイル4に通電すると、電磁誘導加熱により加熱板21が発熱し、この加熱板21が密着する天板3を加熱、蓄熱させ、天板3上に載置した調理容器6の加熱を行うことができる。この場合、加熱板21が発熱するから、調理容器6が電磁誘導により発熱する必要がなく、調理容器6に非磁性体を用いることができる。
【0029】
また、加熱板21はキュリー温度に達すると、磁化を失い、電磁誘導による発熱がほとんどなくなるから、温度ヒューズなどの安全装置が不要となり、安価なものになる。
【0030】
以上のように本実施例では、耐熱性の天板3と、この天板3を設けた本体2と、電磁誘導加熱手段たる加熱コイル4を制御する制御手段5とを備えた加熱調理器において、天板3の所定方向である下方に、電磁誘導加熱可能な加熱部たる加熱板21を設け、この加熱板21は、所定温度以上で電磁誘導加熱を発生せず、電磁誘導加熱しないから、天板3の下方に配置した加熱板21の電磁誘導加熱により天板3を加熱し、調理容器6の材質に係らず、加熱することができる。また、所定温度以上になると、加熱板21において電磁誘導加熱が発生しないから、過度の温度上昇を防止できる。
【0031】
また、本実施例では、加熱板21は所定温度であるキュリー温度以上で磁性の変化が生じ、電磁誘導加熱を停止させるから、キュリー温度に達すると、加熱板21における電磁誘導発熱がほとんどなくなるため、温度ヒューズなどの安全装置が不要になり、安価にできる。
【0032】
さらに、本実施例では、天板3に加熱部たる加熱板21を密着させたから、加熱コイル4と、加熱板21又は/及び調理容器6との間の距離を短くでき、磁性が強くなり、効率よく調理容器6を加熱でき、熱効率の向上を図ることができる。
【実施例3】
【0033】
以下、本発明における加熱調理器の実施例3について、図5を参照しながら説明する。尚、上記各実施例と同一部分に同一符号を付して説明する。
【0034】
図5に示すように、この実施例3は、上記実施例2において、加熱板21に連通部たる連通孔28,29を設けており、加熱コイル4のない中央位置に円形の連通孔28を設け、この連通孔28を中心に長穴状の連通孔29を複数放射状に配置し、この長穴状の連通孔29は、放射方向に長く、加熱コイル4上に位置する。
【0035】
そして、この例では、調理容器6が磁性材を有する場合、加熱板21に貫通形成した連通孔28,29を磁力線が通過することにより、天板3上の調理容器6を直接電磁誘導加熱することができ、また、加熱板21も加熱コイル4による電磁誘導加熱により発熱する。
【0036】
以上のように本実施例では、加熱部たる加熱板21に連通部たる連通孔28,29を設けたから、磁力線が連通孔28,29を通って天板3上の調理容器6を直接的に電磁誘導加熱することができる。したがって、加熱板21と調理容器6の両者を電磁誘導加熱することができるから、調理容器6の材質を選ばずに加熱を行うことができる。
【0037】
また、複数の連通孔29が放射状に配置されているから、磁力線を通す材料からなる天板3上の調理容器6を効率よく加熱することができる。
【実施例4】
【0038】
以下、本発明における加熱調理器の実施例4について、図6〜図8を参照しながら説明する。尚、上記各実施例と同一部分に同一符号を付して説明する。
【0039】
図6〜図8に示すように、前記本体2は、前記底板25と上部部材たる上枠31を組み立ててなり、この上枠31は、側板32の上端に、開口部を有する上板部33を一体に設け、この上板部33上に前記天板3を載置した状態で該天板3が取付けられている。
【0040】
前記本体2内には、前記加熱コイル4を制御する前記制御手段5が設けられ、この制御手段5は、電子部品を実装した制御基板34を備える。
【0041】
また、前記本体2内には、前記制御基板34に近接して、送風手段たる冷却ファン35が設けられ、この冷却ファン35は前記側板32から離れた位置に配置されている。そして、前記冷却ファン35の下面に対応して、前記底板25に複数の底板吸気口36を設け、前記冷却ファン35の側面に対応して、前記側板32に複数の側板吸気口37を設けている。
【0042】
前記本体2内には、前記側板吸気口37から前記冷却ファン35に至る側板吸気路38が区画形成されている。この側板吸気路38は、上下が上枠31の上板部33と底板25とにより外部と区切られ、左右が縦方向板状の仕切り部39,39により本体2内部と区切られている。前記仕切り部39は、上仕切り板40と下仕切り板41に上下に分割されており、その上仕切り板40を前記上枠31に一体に設け、その下仕切り板41を前記底板25に一体に設け、それら上,下仕切り板40,41の先端には相互に係合する段差状の係合部40A,41Aが形成されている。また、前記側板吸気口37と対向する側板32に排気口42を設けている。尚、前記冷却ファン35は、上下から吸い込み、排気口42側の側面部35Aから排気するものである。
【0043】
したがって、底板25と上枠31とを組み立てると、上,下仕切り板40,41により、側板吸気口36の左右が本体2の内部と仕切られ、側板吸気路38が形成される。そして、冷却ファン35が駆動すると、底板吸気口36から外気が導入される以外は、側板吸気口37から外気が導入され、吸気口36,37から導入した外気が、排気口42から排気されるまでに、内部の制御基板34などを冷却する。尚、底板25と冷却ファン35の下面との間には隙間が設けられると共に、上板部33と冷却ファン35の上面との間には隙間が設けられ、これら上下の隙間から側板吸気口37から導入した空気を冷却ファン35が吸い込むことができる。
【0044】
以上のように本実施例では、本体2と、加熱物たる調理容器6を発熱させる電磁誘導加熱手段たる加熱コイル4と、この加熱コイル4を制御する制御手段5と、本体2に設けた底板25及び上部部材たる上枠31と、送風手段たる冷却ファン35と、この冷却ファン35により外気を吸込む底板吸気口36とを備えた加熱調理器において、底板25と本体2の側面たる側板32に側板吸気口37を設けたから、底板吸気口36が塞がっても、側板吸気口37から外気を吸い込むことができ、内部温度の上昇による故障の発生を防止することができる。
【0045】
また、本実施例では、側板吸気口37を冷却ファン35と離間しており、敷物などにより底板吸気口36が塞がれても、側板吸気口37は、底板吸気口36と離れているから、上述した敷物などの影響を受け難く、側板吸気口37により外気の取り入れ口を確保することができる。
【0046】
また、底板25と上枠31により、側面に設けた側板吸気口37と冷却ファン35との間の側板吸気路38を形成したから、吸気ダクトである側板吸気路38を底板25と上枠31で形成することにより、部品の削減ができ、また、吸気と排気を分離することにより、低い温度の外気により冷却することができるため、冷却効果を向上することができる。
【0047】
さらに、上仕切り板40を上枠31に一体に設け、その下仕切り板41を底板25に一体に設けたから、底板25と上枠31とを組み立てることにより、上,下仕切り板40,41により側板吸気口36の左右を本体2の内部と区切ることができる。
【0048】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、種々の変形実施が可能である。例えば、実施例では、天板に複数の操作部を設けたが、少なくとも1つの操作部を設ければよい。また、実施例では、1枚の加熱板に連通孔を設けたが、加熱板を複数に分割し、この分割した加熱板間に連通部を設けてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 加熱調理器
3 天板
4 加熱コイル(電磁誘導加熱手段)
21 加熱板(加熱部)
28 連通孔(連通部)
29 連通孔(連通部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天板と、電磁誘導加熱手段とを備えた加熱調理器において、前記天板の所定方向に、電磁誘導加熱可能な加熱部を設け、この加熱部は所定温度以上で磁性の変化が生じ、電磁誘導加熱を停止させることを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
前記加熱部に連通部を設けたことを特徴とする請求項1記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記天板に前記加熱部を密着させたことを特徴とする請求項1又は2記載の加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−93329(P2013−93329A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−282298(P2012−282298)
【出願日】平成24年12月26日(2012.12.26)
【分割の表示】特願2009−145843(P2009−145843)の分割
【原出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(390010168)東芝ホームテクノ株式会社 (292)
【Fターム(参考)】