説明

加熱調理容器のコーティング層構造

本発明は加熱調理容器のコーティング層構造に係り、さらに詳しくは、アルミニウム製加熱調理容器の表面に陽極酸化法による酸化アルミニウム(Al)層と、人体に全く無害な陰イオン放出及び遠赤外線放射の無機質セラミックコーティング剤または非粘着性の無機質セラミックコーティング剤とをこの順に積層して加熱時における発ガン性物質の放出を抑え、熱伝導率を増大させると共に、耐蝕性及び耐摩耗性を高める加熱調理容器のコーティング層構造に関する。
本発明は、アルミニウム製加熱調理器具の本体の内側面に形成された凹凸部に陽極酸化法により酸化アルミニウム層が形成された加熱調理容器において、前記酸化アルミニウム層の上に、シランよりなってバインダーの役割を果たす結合剤40〜50wt%と、前記結合剤としてのシランと化学反応して結合され、0.1〜1.2μmの粒子径の粉末酸化ケイ素20〜40wt%と水60〜80wt%が混合されてなるケイ素混合物27〜34wt%と、前記結合剤とケイ素混合物との間において塗膜の割れを防ぐと共に粘度を調節して塗膜の物理化学的な特性を改善するために、トルマリン、黄土、絹雲母、紫水晶、生鉱石、竹炭、医王石、貴陽石、黒曜石、麦飯石、光明石、溶岩及び鬼石よりなる群から選ばれるいずれか1種以上の天然石材質からなる粉末状の機能性充填剤10〜19wt%と、石英、モンゾナイト、片麻岩類及び流紋岩質凝灰岩などの天然鉱物質群から選ばれるいずれか1種以上を含む遠赤外線放射物質と、ストロンチウム、バナジウム、ジルコニウム、セリウム、ネオディミウム、ランタン、バリウム、ルビジウム、セシウム及びガリウムよりなる群から選ばれるいずれか1種の希土類天然石の陰イオン放出物質とからなるセラミックパウダー5〜15wt%と、色相を発色するための顔料分1〜2wt%と、が混合された陰イオン放出及び遠赤外線放射の無機質セラミックコーティング層が設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は加熱調理容器のコーティング層構造に係り、さらに詳しくは、アルミニウム製加熱調理容器の表面に陽極酸化法による酸化アルミニウム(Al)層と、人体に全く無害な陰イオン放出及び遠赤外線放射の無機質セラミックコーティング剤または非粘着性の無機質セラミックコーティング剤とをこの順に積層して加熱時における発ガン性物質の放出を抑え、熱伝導率を増大させると共に、耐蝕性及び耐摩耗性を高める加熱調理容器のコーティング層構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、アルミニウム素材の加熱用の調理器具には種々のタイプがあるが、洗浄性の向上と食物調理時における焼き付きの防止のために、アルミニウム製調理器具被塗物にサンドブランスター処理により粗度(粗さ)を与えて表面積を増大させた後、テフロン(登録商標)などにより塗装したものが用いられている。しかしながら、この場合、テフロン(登録商標)塗装作業中における微細なピン孔の発生が避けられず、塩分、酸性、アルカリ性の食物調理または保存時にピン孔などに起因してアルミニウムが腐食してしまうという問題点が引き起こされる。
【0003】
また、上記の問題点を解消するために、大韓民国実用新案登録第206737号公報(登録日:2000年5月24日)には、アルミニウム製調理容器の表面の上に陽極酸化法(アノダイジング)による酸化アルミニウム被膜層とテフロン(登録商標)コーティング層をこの順に設けることにより、調理容器の表面とテフロン(登録商標)コーティング層との接着力を高めると共に、食物の焼き付きを防ぐ技術が開示されているが、この技術は、前記テフロン(登録商標)そのものの表面強度が弱いため、さじと箸または金べらなどの使用が頻繁に行われる加熱調理器具の特性から、表面磨耗や傷つきなどが発生しやすい結果、調理容器本来の機能を早期に失ってしまう。なお、最近には、テフロン(登録商標)から発ガン性物質が出ることが知られることに伴い、テフロン(登録商標)被覆調理容器の使用を避けているのが現状である。
【0004】
特に、アメリカ環境保護局(EPA)は、フライパンなどのコーティング剤として用いられるテフロン(登録商標)の原料となるパーフロロオクタン酸(PFOA:perfluoro octanoic acid)の製造を禁止することを製造会社に対して要請し、且つ、デュポン社をはじめとする総合化学会社に対して2015年までにパーフロロオクタン酸の製造禁止に協力することと、3M社とデュポン社など全世界の8個の化学会社に対して一旦2010年までにこの物質の使用を95%低減することを要請しており、既にデュポン社はこの要請を受け入れることを明らかにした。この理由から、アルミニウム製加熱調理容器の表面に人体に無害で且つ食物の焼き付きがなく、しかも、熱伝導に優れた代替物質によるコーティング層付き加熱調理容器が切望されているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】大韓民国実用新案登録第206737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、アルミニウム製調理容器の表面の上に陽極酸化法による酸化アルミニウム被膜層を形成した後、その上に発ガン性物質の放出がなくしかも環境にやさしい陰イオン放出及び遠赤外線放射の無機質セラミックコーティング剤または非粘着性の無機質セラミックコーティング剤を塗布することから、人体に無害であり、熱伝導に優れていることから、食材を満遍なく煮込むことができると共に、表面強度が極めて高いことから、さじと箸または金べらなどを使用する場合であっても磨耗や傷つきなどの現象が発生しない結果、寿命を延ばすことのできる加熱調理容器のコーティング層構造を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、アルミニウム製加熱調理器具の本体の内側面に形成された凹凸部に陽極酸化法により酸化アルミニウム層が形成された加熱調理容器において、前記酸化アルミニウム層の上に、シランよりなってバインダーの役割を果たす結合剤40〜50wt%と、前記結合剤としてのシランと化学反応して結合され、0.1〜1.2μmの粒子径の粉末酸化ケイ素20〜40wt%と水60〜80wt%が混合されてなるケイ素混合物27〜34wt%と、前記結合剤とケイ素混合物との間において塗膜の割れを防ぐと共に粘度を調節して塗膜の物理化学的な特性を改善するために、トルマリン、黄土、絹雲母、紫水晶、生鉱石、竹炭、医王石、貴陽石、黒曜石、麦飯石、光明石、溶岩及び鬼石よりなる群から選ばれるいずれか1種以上の天然石材質からなる粉末状の機能性充填剤10〜19wt%と、石英、モンゾナイト、片麻岩類及び流紋岩質凝灰岩などの天然鉱物質群から選ばれるいずれか1種以上を含む遠赤外線放射物質と、ストロンチウム、バナジウム、ジルコニウム、セリウム、ネオディミウム、ランタン、バリウム、ルビジウム、セシウム及びガリウムよりなる群から選ばれるいずれか1種の希土類天然石の陰イオン放出物質とからなるセラミックパウダー5〜15wt%と、色相を発色するための顔料分1〜2wt%と、が混合された陰イオン放出及び遠赤外線放射の無機質セラミックコーティング層が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、アルミニウム製調理容器の表面の上に陽極酸化法による酸化アルミニウム被膜層を形成した後、その上に発ガン性物質の放出がなくしかも環境にやさしい陰イオン放出及び遠赤外線放射の無機質セラミックコーティング剤または非粘着性の無機質セラミックコーティング剤を塗布することから、人体に無害であり、熱伝導に優れていることから、食材を満遍なく煮込むことができると共に、表面強度が極めて高いことから、さじと箸または金べらなどを使用する場合であっても磨耗や傷つきなどの現象が発生しない結果、寿命を延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明による加熱調理容器のコーティング層形成工程を示す工程手順図である。
【図2】本発明による加熱調理容器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面に基づき、本発明による加熱調理容器のコーティング層構造を詳述する。
【0011】
先ず、本発明に用いられる陰イオン放出及び遠赤外線放射の無機質セラミックコーティング剤は、化学式RSiX4−nのシランよりなってバインダーの役割を果たす無機質結合剤40〜50wt%と、0.2〜1.0μmの粒子径の粉末酸化ケイ素(SiO)20〜40wt%に水60〜80wt%が混入されて前記結合剤としてのシランと化学反応して結合されるケイ素混合物34〜27wt%と、前記結合剤とケイ素混合物との間において塗膜の割れを防ぐと共に粘度を調節して塗膜の物理化学的な特性を改善する機能性充填剤10〜19wt%と、色相を発色するための顔料分1〜2wt%と、遠赤外線を放射すると共に陰イオンを放出するセラミックパウダー2〜15wt%と、が混合されてなる。
【0012】
前記化学式RSiX4−nにおいて、Xは互いに同じであっても異なっていてもよく、加水分解可能な基またはヒドロキシ基であり、ラジカルRは互いに同じであっても異なっていてもよく、水素、炭素数10未満のアルキル基を示し、nは0、1または2であるシランが1以上用いられる。
【0013】
本発明に用いられる他の陰イオン放出及び遠赤外線放射の無機質セラミックコーティング剤は、メチルトリメトキシシラン33〜47wt%と、テトラエトキシシラン17〜23wt%及びシリカゾル30〜50wt%よりなってバインダーの役割を果たす無機質結合剤65〜83wt%と、前記結合剤とケイ素混合物との間において塗膜の割れを防ぐと共に粘度を調節して塗膜の物理化学的な特性を改善する機能性充填剤10〜19wt%と、色相を発色するための顔料分1〜2wt%と、遠赤外線を放射すると共に陰イオンを放出するセラミックパウダー2〜15wt%と、が混合されてなる。
【0014】
前記陰イオン放出及び遠赤外線放射の無機質セラミックコーティング剤に添加される機能性充填剤としては、チタン酸カリウム、アルミナなどを使用可能であり、これらの粒子形状が針状または板状であるため結合剤の間において塗膜の割れを防いだりコーティング剤の粘度を調節する役割を果たす。この機能性充填剤は、全体の重量部に対して10wt%以下に添加される場合に艶や接着力の低下を引き起こすことがあり、全体の重量部に対して19wt%以上に添加される場合に塗膜の表面が荒くなるなどむしろ悪影響を与えてしまうため、全体の重量部に対して10〜19wt%の範囲内で添加されることが好ましい。
【0015】
前記陰イオン放出及び遠赤外線放射の無機質セラミックコーティング剤に添加されるセラミックパウダーは、遠赤外線を放射すると共に陰イオンを放出する材質である。遠赤外線放射物質としては、常温40℃における遠赤外線放射率が90%以上の石英、モンゾナイト、片麻岩類及び流紋岩質凝灰岩などの天然鉱物質群(トルマリン、黄土、絹雲母、紫水晶、生鉱石、竹炭、医王石、貴陽石、黒曜石、麦飯石、光明石、溶岩、鬼石)から選ばれるいずれか1種以上を含むセラミックが使用可能である。また、セラミックパウダーの陰イオン放出物質としては、ストロンチウム、バナジウム、ジルコニウム(または、ジルコニア)、セリウム、ネオディミウム、ランタン、バリウム、ルビジウム、セシウム及びガリウムよりなる群から選ばれるいずれか1種の希土類天然石が使用可能である。なお、上記の物質は既に陰イオン及び遠赤外線を放出することが知られている。
【0016】
このセラミックパウダーは、2wt%以下に添加される場合に遠赤外線及び陰イオンの放出効果が期待し難く、15wt%以上に添加される場合には塗膜の状態変化及び接着力が低下する恐れがある。このため、高い陰イオン放出効果が得られ、塗膜の状態変化を防ぐと共に、接着力を強く維持するためには、このセラミックパウダーを全体の重量部に対して2〜15wt%の範囲内で添加することが好ましい。
【0017】
前記無機質溶液としての結合剤において、メチルトリメトキシシランとテトラエトキシシランがそれぞれ33〜47wt%及び17〜23wt%以下に添加される場合には反応性が低下し、メチルトリメトキシシランとテトラエトキシシランがそれぞれ33〜47wt%及び17〜23wt%以上に添加される場合には過反応が起きて結合剤としての物性が低下してしまう。このため、最適な物性を得るには、メチルトリメトキシシランとテトラエトキシシランの添加量を上記の範囲内に留めておくことが好ましい。
【0018】
また、シリカゾルが30〜50wt%以下または30〜50wt%以上に添加される場合には、前記メチルトリメトキシシランとテトラエトキシシランとの間におけるシリコン−酸素−金属の結合力が弱くて高熱において剥離されてしまう現象が発生する。このため、シリカゾルの添加量を上記の範囲内に留めておくことが好ましい。
【0019】
上述したように、本発明に用いられる陰イオン放出及び遠赤外線放射の無機質セラミックコーティング剤は、乾燥温度が大気条件下において200℃である比較的に低温焼成を行うことができ、陰イオン放射量が空気1cc当たりに800〜2,000であるために多量の遠赤外線放射及び陰イオン放出が可能になるだけではなく、高温に加熱される場合にバインダー混合物とセラミックパウダーとの間の結合力がなお一層強くなって基材から剥離されないために一般の家電製品や調理用品などの生活用品に採用される金属またはプラスチック基材の表面に衛生的に適用可能であり、しかも人体に有効な作用をするという効果がある。
【0020】
さらに、本発明に用いられる非粘着性の強化した無機質セラミックコーティング剤は、メチルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、シリカゾル及びフロロシランが混合されてなる無機質溶液65〜78wt%と、塗膜の物理化学的な特性を改善すると共に耐久性、耐老化性、耐磨耗性を強化させるためのチタン酸カリウム、アルミナ、遠赤外線または陰イオンを放出するためのトルマリン、黄土、絹雲母、紫水晶、生鉱石、竹炭、医王石、貴陽石、黒曜石、麦飯石、光明石、溶岩及び鬼石よりなる群から選ばれるいずれか1種以上の鉱物質よりなる機能性添加剤10〜19wt%と、色相を発色するための顔料1〜2wt%と、滑り性及び耐磨耗性を補完可能な水溶性シリコンオイルとしてのシリコンオイル重合体2〜15wt%と、を混合してなる。
【0021】
本発明に用いられる他の非粘着性の無機質セラミックコーティング剤は、シランを所定のミクロン寸法の酸化ケイ素粒子、またはアルカリ及びアルカリ土金属の酸化物や水酸化物よりなる群から選ばれる1種以上の化合物の存在下で加水分解及び縮重合した無機質溶液65〜78wt%と、塗膜の物理化学的な特性を改善するための機能性充填剤10〜19wt%と、色相を発色するための顔料分1〜2wt%と、光触媒機能を発揮可能なナノ寸法のチタンオキシド0.5〜10wt%と、滑り性及び掃除性を補完可能なシリコン系のオイル重合体2〜15wt%と、が混合されてなる。
【0022】
前記無機質溶液は、メチルトリメトキシシラン33〜47wt%、テトラエトキシシラン17〜23wt%及びシリカゾル30〜50wt%よりなる。ここで、前記メチルトリメトキシシランとテトラエトキシシランがそれぞれ33wt%及び17wt%以下に添加される場合に反応性が低下し、前記メチルトリメトキシシランとテトラエトキシシランがそれぞれ47wt%及び23wt%以上に添加される場合には過反応が起きて結合剤としての物性が低下してしまう。このため、最適な物性を得るには、結合剤の添加量を上記の範囲内に留めておくことが好ましい。
【0023】
前記シリカゾルが30wt%以下または50wt%以上に添加される場合に、前記メチルトリメトキシシランとテトラエトキシシランとの間におけるシリコン−酸素−金属の結合力が弱くて高熱において剥離されるような現象が発生する。このため、シリカゾルの添加量を上記の範囲内に留めておくことが好ましい。
【0024】
前記シリコン系のオイル重合体は、滑り性(掃除容易性)と耐磨耗性を与えるためのものであって、例えば、水溶性シリコンオイル群から選ばれるいずれか1種以上の材質よりなる。ここで、このシリコン系のオイル重合体が2wt%以下に添加される場合に滑り性と耐磨耗性を高める効果があまり得られず、前記シリコン系のオイル重合体が15wt%以上に添加される場合には塗膜の状態変化及び接着力が低下する恐れがある。このため、滑り性と耐磨耗性の向上、塗膜の状態変化の防止及び強い接着力の維持のためには、シリコン系のオイル重合体の添加量を全体の重量部に対して2〜15wt%の範囲内に留めておくことが好ましい。
【0025】
前記チタンオキシドは、光触媒機能を発揮させるために添加されるものであって、前記チタンオキシドの粒子径が1〜100nmのものを使用する必要がある。ここで、前記チタンオキシドが全体の重量部に対して0.5wt%以下に添加される場合に光触媒としての機能を発揮することができず、前記チタンオキシドが10wt%以上に添加される場合には極めて高価な光触媒の消費量が増えて経済性に劣ってしまう。このため、前記チタンオキシドの添加量を0.5〜10wt%の範囲内に留めておくことが好ましい。
【0026】
前記機能性添加剤は、耐久性、耐老化性、耐磨耗性などの物理化学的な特性を強化させるために添加されるものであって、チタン酸カリウムやアルミナなどが使用可能である。また、石英−モンゾナイト、片麻岩類及び流紋岩質凝灰岩の天然鉱物質群から選ばれるいずれか1種以上の遠赤外線鉱物質、または、トルマリン、黄土、絹雲母、紫水晶、生鉱石、竹炭、医王石、貴陽石、黒曜石、麦飯石、光明石、溶岩及び鬼石よりなる群から選ばれるいずれか1種以上の遠赤外線及び陰イオン鉱物質、または、海藻炭及び備長炭よりなる群から選ばれるいずれか1種以上の炭材質などを添加して特別な機能を与えることができる。これらは粒子形状が針状または板状であるため、結合剤の間において塗膜の割れを防いだりコーティング剤の粘度を調節する役割を果たす。
【0027】
この機能性添加剤は、10wt%以下に添加される場合に艶や接着力の低下を引き起こす恐れがあり、19wt%以上に添加される場合には塗膜の表面が荒くなるなどむしろ悪影響を与えてしまう。このため、機能性添加剤の添加量を10〜19wt%の範囲内に留めておくことが好ましい。
【0028】
上記したように、本発明に用いられる非粘着性の無機質セラミックコーティング剤は、無機質バインダーに非粘着性及び掃除容易性を示す有効物質を配合してなる無機質塗膜を一般の家電製品や調理用品などの生活用品に採用される金属またはプラスチック基材の表面にコーティングすることにより、衛生性に優れており、人体に無害である他、非粘着性及び掃除容易性を強化させることができる。その結果、その最終品が要求する物性を満足することができ、他のコーティング剤に比べて乾燥温度が120〜160℃の範囲となる比較的に低温焼成を行うことができる他、色相の表現自由度を上げて製品の質を高めることができるという効果がある。
【0029】
以下、図1及び図2に基づき、本発明による陰イオン放出及び遠赤外線放射の無機質セラミックコーティング剤または非粘着性の無機質セラミックコーティング剤を用いて加熱調理容器のコーティング層構造を形成する過程を実施例を挙げて説明する。
【0030】
図1は、本発明による加熱調理容器のコーティング層を形成する工程を示す工程手順図であり、図2は、本発明による加熱調理容器の断面図である。
【実施例1】
【0031】
先ず、図1の(a)に示すように、アルミニウム製加熱調理器具の本体1の内側面に対してサンドブラスト作業を行うことにより、図1の(b)に示すように、本体1の内面に微細な凹凸部2を形成する表面粗さが与えられる結果、後続する酸化アルミニウムの蒸着過程において酸化アルミニウムが強固に接着可能な表面積を増大させる粗度形成段階を行う。
【0032】
前記粗度形成段階が完了すると、サンドブラスト作業による異物を除去するための洗浄及び乾燥段階を行う。
【0033】
前記洗浄及び乾燥段階が完了すると、加熱調理器具の本体1の内側面に形成された凹凸部2の全面に水酸法、硫黄酸法、クロム酸法などを用いたアノダイジング(陽極酸化法)処理を施すことにより、図1の(c)に示すように、耐蝕性や耐磨耗性の向上した硬い酸化アルミニウム被膜層3を形成する酸化アルミニウム被膜層形成段階を行う。
【0034】
前記酸化アルミニウム被膜層形成段階が完了すると、図1の(d)に示すように、シランよりなってバインダーの役割を果たす結合剤40〜50wt%と、前記結合剤としてのシランと化学反応して結合され、0.1〜1.2μmの粒子径の粉末酸化ケイ素20〜40wt%と水60〜80wt%が混合されてなるケイ素混合物27〜34wt%と、前記結合剤とケイ素混合物との間において塗膜の割れを防ぐと共に粘度を調節して塗膜の物理化学的な特性を改善するためにトルマリン、黄土、絹雲母、紫水晶、生鉱石、竹炭、医王石、貴陽石、黒曜石、麦飯石、光明石、溶岩及び鬼石よりなる群から選ばれるいずれか1種以上の天然石材質と、からなる粉末状の機能性充填剤10〜19wt%と、石英、モンゾナイト、片麻岩類及び流紋岩質凝灰岩などの天然鉱物質群から選ばれるいずれか1種以上を含む遠赤外線放射物質と、ストロンチウム、バナジウム、ジルコニウム(または、ジルコニア)、セリウム、ネオディミウム、ランタン、バリウム、ルビジウム、セシウム及びガリウムよりなる群から選ばれるいずれか1種の希土類天然石の陰イオン放出物質と、からなるセラミックパウダー5〜15wt%と、色相を発色するための顔料分1〜2wt%と、が混合された陰イオン放出及び遠赤外線放射の無機質セラミックコーティング剤を塗布するセラミックコーティング剤塗布段階を行う。
【0035】
前記セラミックコーティング剤塗布段階が完了すると、120〜160℃の温度条件下において1〜2時間かけて乾燥する乾燥段階を行うことにより、図1の(d)に示すように、酸化アルミニウム被膜層3の上に陰イオン放出及び遠赤外線放射の無機質セラミックコーティング層4が積層形成される。
【0036】
このように酸化アルミニウム被膜層3と陰イオン放出及び遠赤外線放射の無機質セラミックコーティング層4がこの順に積層された加熱調理器具は、酸化アルミニウム被膜層3により無機質セラミックコーティング層4と本体1との間の結合力がなお一層強化される。これにより、さじと箸または金べらなどを使用する場合であっても磨耗及び傷付きの現象が発生しないことから、寿命を延ばすことができると共に人体に無害であり、しかも、熱伝導に優れていることから、食物が満遍なく煮えるというメリットが得られる。
【実施例2】
【0037】
先ず、図1の(a)に示すように、アルミニウム製加熱調理器具の本体1の内側面に対してサンドブランスター作業を行うことにより、図1の(b)に示すように、本体1の内面に微細な凹凸部2を形成する表面粗度が与えられる結果、後続する酸化アルミニウムの蒸着過程において酸化アルミニウムが強固に接着可能な表面積を増大させる粗度形成段階を行う。
【0038】
前記粗度形成段階が完了すると、サンドブランスター作業による異物を除去するための洗浄及び乾燥段階を行う。
【0039】
前記洗浄及び乾燥段階が完了すると、加熱調理器具の本体1の内側面に形成された凹凸部2の全面に水酸法、硫黄酸法、クロム酸法などを用いたアノダイジング(陽極酸化法)処理を施すことにより、図1の(c)に示すように、耐蝕、耐磨耗性の向上した硬い酸化アルミニウム被膜層3を形成する酸化アルミニウム被膜層形成段階を行う。
【0040】
前記酸化アルミニウム被膜層形成段階が完了すると、図1の(d)に示すように、メチルトリメトキシシラン33〜47wt%と、テトラエトキシシラン17〜23wt%及びシリカゾル30〜50wt%よりなってバインダーの役割を果たす無機質結合剤65〜83wt%と、前記結合剤とケイ素混合物との間において塗膜の割れを防ぐと共に粘度を調節して塗膜の物理化学的な特性を改善する機能性充填剤10〜19wt%と、色相を発色するための顔料分1〜2wt%と、遠赤外線を放射すると共に陰イオンを放出するセラミックパウダー2〜15wt%と、が混合されてなる陰イオン放出及び遠赤外線放射の無機質セラミックコーティング剤を塗布するセラミックコーティング剤塗布段階を行う。
【0041】
前記セラミックコーティング剤塗布段階が完了すると、120〜160℃の温度条件下において1〜2時間かけて乾燥する乾燥段階を行うことにより、図1の(d)に示すように、酸化アルミニウム被膜層3の上に陰イオン放出及び遠赤外線放射の無機質セラミックコーティング層4aが積層形成される。
【0042】
このように酸化アルミニウム被膜層3と陰イオン放出及び遠赤外線放射の無機質セラミックコーティング層4aがこの順に積層された加熱調理器具は、酸化アルミニウム被膜層3により無機質セラミックコーティング層4aと本体1との間の結合力がなお一層強化される。これにより、さじと箸または金べらなどを使用する場合であっても磨耗及び傷付きの現象が発生しないことから、寿命を延ばすことができると共に人体に無害であり、しかも、熱伝導に優れていることから、食物が万遍なく煮えるというメリットが得られる。
【実施例3】
【0043】
先ず、図1の(a)に示すように、アルミニウム製加熱調理器具の本体1の内側面に対してサンドブランスター作業を行うことにより、図1の(b)に示すように、本体1の内面に微細な凹凸部2を形成する表面粗度が与えられる結果、後続する酸化アルミニウムの蒸着過程において酸化アルミニウムが強固に接着可能な表面積を増大させる粗度形成段階を行う。
【0044】
前記粗度形成段階が完了すると、サンドブランスター作業による異物を除去するための洗浄及び乾燥段階を行う。
【0045】
前記洗浄及び乾燥段階が完了すると、加熱調理器具の本体1の内側面に形成された凹凸部2の全面に水酸法、硫黄酸法、クロム酸法などを用いたアノダイジング(陽極酸化法)処理を施すことにより、図1の(c)に示すように、耐蝕、耐磨耗性の向上した硬い酸化アルミニウム被膜層3を形成する酸化アルミニウム被膜層形成段階を行う。
【0046】
前記酸化アルミニウム被膜層形成段階が完了すると、図1の(d)に示すように、シランを所定のミクロン寸法の酸化ケイ素粒子、またはアルカリ及びアルカリ土金属の酸化物や水酸化物よりなる群から選ばれる1種以上の化合物の存在下で加水分解及び縮重合した無機質溶液65〜78wt%と、塗膜の物理化学的な特性を改善するための機能性充填剤10〜19wt%と、色相を発色するための顔料分1〜2wt%と、光触媒機能を発揮可能なナノ寸法のチタンオキシド0.5〜10wt%と、滑り性及び掃除性を補完可能なシリコン系のオイル重合体2〜15wt%と、が混合されてなる非粘着性及び掃除容易性の強化した無機質セラミックコーティング剤を塗布するセラミックコーティング剤塗布段階を行う。
【0047】
前記セラミックコーティング剤塗布段階が完了すると、120〜160℃の温度条件下で1〜2時間かけて乾燥する乾燥段階を行うことにより、図1の(d)に示すように、酸化アルミニウム被膜層3の上に非粘着性及び掃除容易性の強化した無機質セラミックコーティング層5が積層形成される。
【0048】
このように酸化アルミニウム被膜層3と、非粘着性及び掃除容易性の強化した無機質セラミックコーティング層5がこの順に積層された加熱調理器具は、酸化アルミニウム被膜層3により無機質セラミックコーティング層5と本体1との間の結合力がなお一層強化される。これにより、さじと箸または金べらなどを使用する場合であっても磨耗及び傷付きの現象が発生しないことから、寿命を延ばすことができると共に、人体に無害であり、しかも、熱伝導に優れていることから、食物が満遍なく煮えるというメリットが得られる。
【符号の説明】
【0049】
1:本体
2:凹凸部
3:酸化アルミニウム層
4、4a:陰イオン放出及び遠赤外線放射の無機質セラミックコーティング層
5:非粘着性の無機質セラミックコーティング層
【図1(A)】

【図1(B)】

【図1(C)】

【図1(D)】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム製加熱調理器具の本体(1)の内側面に形成された凹凸部(2)に陽極酸化法による酸化アルミニウム層(3)が設けられた加熱調理容器において、
前記酸化アルミニウム層(3)の上に、シランよりなってバインダーの役割を果たす結合剤40〜50wt%と、前記結合剤としてのシランと化学反応して結合され、0.1〜1.2μmの粒子径の粉末酸化ケイ素20〜40wt%と水60〜80wt%が混合されてなるケイ素混合物27〜34wt%と、前記結合剤とケイ素混合物との間において塗膜の割れを防ぐと共に粘度を調節して塗膜の物理化学的な特性を改善するために、トルマリン、黄土、絹雲母、紫水晶、生鉱石、竹炭、医王石、貴陽石、黒曜石、麦飯石、光明石、溶岩及び鬼石よりなる群から選ばれるいずれか1種以上の天然石材質からなる粉末状の機能性充填剤10〜19wt%と、石英、モンゾナイト、片麻岩類及び流紋岩質凝灰岩などの天然鉱物質群から選ばれるいずれか1種以上を含む遠赤外線放射物質と、ストロンチウム、バナジウム、ジルコニウム、セリウム、ネオディミウム、ランタン、バリウム、ルビジウム、セシウム及びガリウムよりなる群から選ばれるいずれか1種の希土類天然石の陰イオン放出物質とからなるセラミックパウダー5〜15wt%と、色相を発色するための顔料分1〜2wt%と、が混合された陰イオン放出及び遠赤外線放射の無機質セラミックコーティング層(4)が設けられていることを特徴とする加熱調理容器のコーティング層構造。
【請求項2】
アルミニウム製加熱調理器具の本体(1)の内側面に形成された凹凸部(2)に陽極酸化法による酸化アルミニウム層(3)が設けられた加熱調理容器において、
前記酸化アルミニウム層(3)の上に、メチルトリメトキシシラン33〜47wt%と、テトラエトキシシラン17〜23wt%及びシリカゾル30〜50wt%よりなってバインダーの役割を果たす無機質結合剤65〜83wt%と、前記結合剤とケイ素混合物との間において塗膜の割れを防ぐと共に粘度を調節して塗膜の物理化学的な特性を改善する機能性充填剤10〜19wt%と、色相を発色するための顔料分1〜2wt%と、遠赤外線を放射すると共に陰イオンを放出するセラミックパウダー2〜15wt%と、が混合された陰イオン放出及び遠赤外線放射の無機質セラミックコーティング層(4a)が設けられていることを特徴とする加熱調理容器のコーティング層構造。
【請求項3】
アルミニウム製加熱調理器具の本体(1)の内側面に形成された凹凸部(2)に陽極酸化法による酸化アルミニウム層(3)が設けられた加熱調理容器において、
前記酸化アルミニウム層(3)の上に、シランを所定のミクロン寸法の酸化ケイ素粒子、またはアルカリ及びアルカリ土金属の酸化物や水酸化物よりなる群から選ばれる1種以上の化合物の存在下で加水分解及び縮重合した無機質溶液65〜78wt%と、塗膜の物理化学的な特性を改善するための機能性充填剤10〜19wt%と、色相を発色するための顔料分1〜2wt%と、光触媒機能を発揮可能なナノ寸法のチタンオキシド0.5〜10wt%と、滑り性及び掃除性を補完可能なシリコン系のオイル重合体2〜15wt%と、が混合されてなる非粘着性の無機質セラミックコーティング層(5)が設けられていることを特徴とする加熱調理容器のコーティング層構造。

【図2】
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【公表番号】特表2009−543656(P2009−543656A)
【公表日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−520670(P2009−520670)
【出願日】平成19年5月1日(2007.5.1)
【国際出願番号】PCT/KR2007/002130
【国際公開番号】WO2008/010639
【国際公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(508368910)サーモロン コリア カンパニー,リミテッド (2)
【Fターム(参考)】