説明

加速度センサ

【課題】圧電素子の温度による出力変化を精度よく補正することができる加速度センサを提供する。
【解決手段】振動検出用の圧電素子20と、この圧電素子20とは温度特性が異なる圧電素子21とを電気的絶縁シート22を介して重ね合わせた振動センサを構成する。この振動センサを、圧電素子20,21が被測定面に直交する線上に位置するように金属ケース1内に固定する。そして、圧電素子20、21の出力電圧差から温度を算出し、圧電素子20の出力電圧の温度補正を行なう

【発明の詳細な説明】
【発明の属する技術分野】
【0001】
本発明は、生産設備の振動診断等に使用される振動センサで、特に常時監視用に配備される温度補償付き圧電型加速度センサをセンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の生産設備の回転機械や電動機等における監視用振動センサは、所定の周波数で平坦な周波数特性を有する圧電型加速度センサが使用される(特許文献1参照)。しかし、圧電素子は温度によって出力電圧などが変動するため、温度を検出するためのサーミスタや半導体センサなどをセンサ内の圧電素子近傍に配置して温度を検出し補正していた。
図4は、従来の圧電型加速度センサの例として圧縮型タイプを示すもので、以下、図4に基いて従来の圧電型加速度センサの構成を説明する。
図4において、有底筒状の金属ケース1には測定物に固定するためのネジ部1aが形成されている。また、金属ケース1の内周底部にはネジタップ1bが形成されており、このネジタップ1bには固定ネジ2が螺合されるようになっている。さらに、金属ケース1の底部にはドーナツ状円盤型の圧電素子3が設けられており、この圧電素子3の両面には出力用電極3a、3bが取り付けられている。
圧電素子3上には、上面の一部に感温素子12が取り付けられた中空状の金属等の重り4が搭載されており、この重り4は圧電素子3への負荷を構成している。また、これら圧電素子3および重り4は固定ネジ2によって金属ケース1のネジタップ1bに固定されている。
【0003】
そして、圧電素子3および重り4と固定ネジ2の間には絶縁チューブ5が介装されており、この絶縁チューブ5は金属ケース1と重り4が固定ネジ2を介してショートするのを防止するものである。
また、固定ネジ2の頭部2aと重り4の間には絶縁スペーサ6が設けられており、この絶縁スペーサ6は金属ケース1と重り4が固定ネジ2を介してショートするのを防止するものである。
絶縁スペーサ6と重り4の間には接続端子7が介装されており、圧電素子3の出力は金属ケース1と重り4および接続端子7を介した間から取り出されるようになっている。また、絶縁スペーサ6および接続端子7は、固定ネジ2によって金属ケース1のネジタップ1bに固定されている。
金属ケース1の上端開口部にはコネクタ本体8がカシメ部1cによって固定されており、金属ケース1とコネクタ本体部8の間にOリング9が介装されることにより、金属ケース1とコネクタ本体8の連結部が防水されている。
コネクタ本体8には振動出力端子10と温度出力端子15、16が設けられており、振動出力端子10は振動出力用リード線11を介して接続端子7に接続され、振動出力用リード線11は半田11a、11bによって振動接続端子7と振動出力端子10に固定されている。また、温度出力端子15、16は感温素子用リード線13、14を介して感温素子に接続され、感温素子用リード線13、14は半田13a、13b、14a、14bによって温度出力端子15、16と感温素子に固定されている。なお、感温素子12は重り4の上面ではなく、金属ケース1の底面に取り付けられる場合もある。また、振動出力端子10としては筐体をアースと兼用する一端子タイプと、二本の振動出力端子を用いる二端子タイプ等がある。
【0004】
このように構成された加速度センサにあっては、圧電素子3の出力用電極3a、3bは加速度センサへの外部振動を検知し、この振動により圧電素子3に発生した電圧を出力として取り出すことができる。
さらに、感温素子12には圧電素子3の温度が重り4を介して伝達され、温度変化に応じた抵抗変化や電圧変化を出力として取り出すことができる。
なお、この加速度センサは内部に電気回路等を有していないが、インピーダンス変換回路や温度検出回路等を構成したタイプもある。
【特許文献1】特開2004-317228号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような従来の加速度センサは、振動を検出する圧電素子の温度を熱容量の異なる重りを介して検出するため、圧電素子の温度を正確に検出することができないことや、金属ケースの底面に感温素子を取り付ける場合は、感温素子の取り付けスペース分、センサが大型化し共振周波数が低下するために高周波数域まで平坦な振動特性が得られないといった問題もあった。
この発明の主たる目的は、圧電素子の温度による出力変化を精度よく補正することができる加速度センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は、振動検出用の第1の圧電素子と、この第1の圧電素子とは温度特性が異なる第2の圧電素子とを電気的絶縁シートを介して重ね合わせた振動センサを、第1、第2の圧電素子が被測定面に直交する線上に位置するように金属ケース内に固定し、第1、第2の圧電素子の出力電圧差から温度を算出し、第1の圧電素子の出力電圧の温度補正を行なうことを特徴とする。
また、上記の発明において、振動センサの上面に重りを搭載し、金属ケースに固定してなることを特徴とする。
さらに、上記の発明において、第1、第2の圧電素子は、温度―出力特性が1次関数で表され、かつその関数の定数が異なる2種類の圧電素子であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、温度特性が異なる2種類の圧電素子を重ねて使用し、その特性差から温度を検知するようにしたことによって、圧電素子の温度を正確に検知することができ、重ねた圧電素子が重りの役目も果たすので、小型化・低コスト化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は、本発明の第1の実施例を示すもので、有底筒状の金属ケース1には測定物に固定するためのネジ部1aが形成されている。この金属ケース1の内底部に第1の圧電素子20と、例えばポリエステルフィルムなどの電気絶縁シート22を挟んで、第2の圧電素子21が重ね合わせて接着材等で貼り付けられている。
また、金属ケース1の上端開口部にはコネクタ本体8がカシメ部1cによって固定されており、金属ケース1とコネクタ本体部8の間にOリング9が介装される事により、金属ケース1とコネクタ本体8の連結部が防水されている。
また、コネクタ本体8には第1の圧電素子20の振動出力端子23と第2の圧電素子21の振動出力端子24、25が設けられており、第1の振動出力端子23は第1の振動出力用リード線30を介して第1の圧電素子20の出力電極20bに接続に接続されており、出力電極20aは金属ケース1にアースされている。
また、第2の振動出力端子24、25は第2の振動出力用リード線31、32を介して第2の圧電素子21の出力電極21a、21bに接続されている。
なお、ここでは第1の圧電素子20は1端子型を示したが2端子型にしても同様であることは言うまでもない。
【0009】
このような構成において、第1および第2の圧電素子20、21の温度―出力特性は、図2に示すような1次関数で表される傾斜の異なる直線状の相関を示した特性である。
この図2は、横軸に温度、縦軸が感度比を表すグラフを示すもので、感度比とは温度10℃の時の振動レベルと異なる温度における同じ振動レベル時の電圧出力比を表すものである。
ここで、第1の圧電素子20、第2の圧電素子21の関数を次の(1)、(2)式としたとき、第2の圧電素子21の関数をとした時、出力電圧差からその時の温度Xは、(3)式から求めることができる。
【0010】
[数1]
Y1=a1X+b1・・・(1)
【0011】
[数2]
Y2=a2X+b2・・・(2)
【0012】
[数3]
X=(Y2-Y1)+(b2-b1)/(a2-a1) ・・・(3)
これにより、振動検出用の第1の圧電素子20の温度を検出することができ、正確な温度補正が可能になる。また、図示しないが、第1の圧電素子20を2端子型として、金属ケース1の間に電気絶縁シートで絶縁する方法もあり、この場合は電気ノイズの影響が小さくなる。
図3は、本発明の他の実施例を示すもので、基本的には図1に示した第1の実施例と同様であるが、第2の圧電素子21の上に重り4を搭載した点が異なるだけである。これにより、感度を高くすることができる。また、図示しないが、従来の実施例に示したように第1、第2の圧電素子20、21をボルトで固定しても温度検出は同様に行なえる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施例を示す縦断面図である。
【図2】本発明の圧電素子の温度特性例を示す図である。
【図3】本発明の第2の実施例を示す縦断面図である。
【図4】従来の実施例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0014】
1 金属ケース
20 第1の圧電素子
21 第2の圧電素子
22 絶縁シート
23 第1の圧電素子の出力端子
24,25 第2の圧電素子の出力端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動検出用の第1の圧電素子と、該第1の圧電素子とは温度特性が異なる第2の圧電素子とを電気的絶縁シートを介して重ね合わせた振動センサを、第1、第2の圧電素子が被測定面に直交する線上に位置するように金属ケース内に固定し、前記第1、第2の圧電素子の出力電圧差から温度を算出し、前記第1の圧電素子の出力電圧の温度補正を行なうことを特徴とする加速度センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の加速度センサにおいて、前記振動センサの上面に重りを搭載し、前記金属ケースに固定してなることを特徴とする加速度センサ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の加速度センサにおいて、前記第1、第2の圧電素子は、温度―出力特性が1次関数で表され、かつその関数の定数が異なる2種類の圧電素子であることを特徴とする加速度センサ。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−229090(P2009−229090A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−71344(P2008−71344)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【Fターム(参考)】