加速度検出装置、加速度センサおよび加速度検出方法
【課題】加速度検出素子の出力が異常であるか否かを容易に判定する。
【解決手段】車両Cの加速度を検出可能な加速度検出装置であって、互いに直交する少なくとも3軸の検出軸p,q,rに対応する加速度検出素子を有する加速度センサと、加速度センサを駆動制御する制御手段とを備え、各検出軸p,q,rは、車体を基準とした水平面に対して所定の角度で傾斜する方向に車体にそれぞれ配置され、重力方向の加速度をそれぞれ検出可能に設けられており、制御手段は、加速度検出素子から出力される加速度の値に基づいて、車両Cの任意の方向に作用している加速度の値を演算可能であることを特徴とする。
【解決手段】車両Cの加速度を検出可能な加速度検出装置であって、互いに直交する少なくとも3軸の検出軸p,q,rに対応する加速度検出素子を有する加速度センサと、加速度センサを駆動制御する制御手段とを備え、各検出軸p,q,rは、車体を基準とした水平面に対して所定の角度で傾斜する方向に車体にそれぞれ配置され、重力方向の加速度をそれぞれ検出可能に設けられており、制御手段は、加速度検出素子から出力される加速度の値に基づいて、車両Cの任意の方向に作用している加速度の値を演算可能であることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加速度検出装置、加速度センサおよび加速度検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な自動車においては、車両に発生する加速度を検出するために加速度検出素子を有する加速度検出装置を備えたものが知られており、加速度検出装置で検出された加速度の値は、ブレーキ液圧をコントロールするブレーキ制御装置(アンチロックブレーキシステムなど)やカーナビゲーションシステムといった各種車載機器において参照されている。
【0003】
従来、加速度検出装置としては、3軸方向の加速度を検出可能な運動センサを有するもの(例えば、特許文献1参照)や、車両の左右方向へ向けてそれぞれ所定角度となるように配置した2軸の加速度センサを有するものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2002−22445号公報
【特許文献2】特開平9−113535号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記のように加速度センサで検出される加速度の値は、カーナビゲーションシステムやブレーキ制御装置といった各種車載機器において参照されるため、加速度センサが正常に機能しているか否かを判定するための故障診断が重要になってきている。
【0006】
ところで、前記した特許文献2に記載された加速度検出装置では、2つの加速度センサの出力値の変動幅の違いを検出し、その検出に基づいて加速度センサの異常の有無を判断することが開示されている。
しかしながら、特許文献1に開示されているような3次元方向のセンサを有するものにおいて異常を診断するためには、それぞれのセンサに対応する診断用の素子等を別途設ける必要や、特定の条件で車両を加速させた上で診断を行う必要がある等、構成や手順が複雑になるという問題を有している。
【0007】
本発明は、このような観点からなされたものであり、互いに直交する少なくとも3軸の検出軸に対応する加速度検出素子を有するものにおいて、加速度検出素子の出力が異常であるか否かを容易に、かつ頻繁に検出することができる加速度検出装置および加速度センサを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決する本発明は、車両の加速度を検出可能な加速度検出装置であって、互いに直交する少なくとも3軸の検出軸に対応する加速度検出素子を有する加速度センサと、前記加速度センサから出力される加速度の値を入力して処理する制御手段と、を備え、前記各検出軸は、前記車両の車体を基準とした水平面に対して所定の角度で傾斜する方向に前記車体にそれぞれ配置され、重力方向の加速度をそれぞれ検出可能に設けられており、前記制御手段は、前記加速度検出素子から出力される加速度の値に基づいて、前記車両の任意の方向に作用している加速度の値を演算可能であることを特徴とする。
ここで、「車体を基準とした水平面」とは、基準となる路面上、例えば水平にされた路面上に車両が停止しているとき等において、路面と平行になる車体の面をいう。
【0009】
この加速度検出装置によれば、互いに直交する少なくとも3軸の検出軸に対応する加速度検出素子を有しており、各検出軸は、重力方向の加速度をそれぞれ検出可能に配置されているので、制御手段により、重力方向を含む、車両の全ての方向に作用している加速度の値を合成や分解等による演算によって求めることができる。そして、各検出軸が、重力方向の加速度をそれぞれ検出可能に配置されているので、これらの検出された重力方向の加速度から、加速度検出素子のうちのいずれかの加速度検出素子の出力が異常であるか否かを容易に、かつ精度よく判定することができる。
【0010】
また、前記各検出軸は、前記車体を基準とした水平面に対してそれぞれ均等な角度で下方へ傾斜している構成とするのがよい。
【0011】
この加速度検出装置によれば、車体を基準とした水平面に対してそれぞれ均等な角度で各検出軸が下方へ傾斜しているので、各加速度検出素子による重力方向の加速度の検出を好適に行うことができ、これらの検出された重力方向の加速度から、加速度検出素子のうちのいずれかの加速度検出素子の出力が異常であるか否かをより容易に、かつより精度よく判定することができる。
【0012】
また、前記制御手段は、複数の前記加速度検出素子で検出される加速度の値に基づいて、前記車両の前後方向、左右方向および上下方向に作用している加速度の値を演算可能である構成とするのがよい。
【0013】
この加速度検出装置によれば、各検出軸方向で同時に検出された加速度に基づいて、車両の前後方向、左右方向および上下方向等に作用している加速度の値を制御手段による合成や分解等の演算によって容易に求めることができる。そして、各検出軸が、重力方向の加速度をそれぞれ検出可能に配置されているので、重力方向の加速度の合成値から加速度検出素子のいずれか1つが異常であるか否かを容易に判定することができる。
【0014】
また、前記制御手段は、前記各加速度検出素子で検出される加速度の値に基づいて重力方向の加速度の合成値を演算する合成値演算手段と、演算された合成値が予め設定された所定の正常範囲内にあるか否かを判定し、正常範囲内にないと判定した場合に複数の前記加速度検出素子のうち少なくとも1つが異常であることを判定する判定手段とを備えている構成とするのがよい。
ここで、「所定の正常範囲内」とは、各加速度検出素子の被検出体への取付誤差や各加速度検出素子の固有の出力精度の影響を加味して各加速度検出素子が正常であるかどうかを判断するための、幅をもって設定された重力方向の合成値の範囲をいう。
【0015】
この加速度検出装置によれば、合成値演算手段により、各加速度検出素子で検出された加速度の値に基づいて重力方向の加速度の合成値が演算され、判定手段により、演算された合成値が予め設定された所定の正常範囲内にあるか否かが判定され、正常範囲内にないと判定された場合に、複数の加速度検出素子のうち少なくとも1つが異常であることが判定される。したがって、より確実性の高い異常判定を実現することができる。
【0016】
また、前記車両が停止状態であるか否かを判定する停止状態判定手段を備えており、前記判定手段は、前記停止状態判定手段が停止状態であると判定したときにのみ判定を行う構成とするのがよい。
【0017】
この加速度検出装置によれば、車両の停止状態という安定した状態において判定手段による異常判定が行われることとなるので、例えば、加速度の変動しやすい車両の走行中に異常判定が行われる場合に比べて、確実性の高い判定を行うことができる。
また、少なくとも3軸の加速度の合成値にて判断することから、あらゆる傾斜や凹凸のある路面でも確実性の高い判定が可能となる。
【0018】
また、本発明の加速度センサは、車両の加速度を検出可能な車載用の加速度センサであって、互いに直交する少なくとも3軸の検出軸に対応する加速度検出素子を有し、前記各検出軸は、前記車両の車体を基準とした水平面に対して所定の角度で傾斜する方向にそれぞれ配置され、重力方向の加速度をそれぞれ検出可能に設けられている構成とするのがよい。
【0019】
この加速度センサによれば、互いに直交する少なくとも3軸の検出軸に対応する加速度検出素子を有しており、各検出軸は、前記車両の車体を基準とした水平面に対して所定の角度で傾斜する方向にそれぞれ配置され、重力方向の加速度をそれぞれ検出可能に設けられているので、各検出軸で同時に加速度を検出することができ、車両の任意の方向、例えば、車両の前後方向、左右方向および上下方向に作用している加速度の値を求めることに寄与する。
【0020】
また、本発明の加速度検出方法は、互いに直交する少なくとも3軸の検出軸に対応する加速度検出素子を有する加速度センサによって車両の所定方向の加速度を検出する加速度検出方法であって、前記各検出軸が、前記車両の車体を基準とした水平方向から所定の角度で傾斜する方向に前記車体にそれぞれ配置され、重力方向の加速度をそれぞれ検出可能となっており、前記加速度検出素子から出力される加速度の値に基づいて、前記車両の任意の方向に作用している加速度の値を演算することを特徴とする。
【0021】
このような加速度検出方法によれば、互いに直交する少なくとも3軸の検出軸に対応する加速度検出素子を有しており、各検出軸は、重力方向の加速度をそれぞれ検出可能に配置されているので、制御手段により、重力方向を含む、車両の全ての方向に作用している加速度の値を合成や分解等による演算によって求めることができる。そして、各検出軸が、重力方向の加速度をそれぞれ検出可能に配置されているので、これらの検出された重力方向の加速度から、加速度検出素子のうちのいずれかの加速度検出素子の出力が異常であるか否かを容易に、かつ精度よく判定することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、互いに直交する少なくとも3軸の検出軸に対応する加速度検出素子を有するものにおいて、加速度検出素子の出力が異常であるか否かを容易に、かつ頻繁に検出することができる加速度検出装置、加速度センサおよび加速度検出方法が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための最良の形態について適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0024】
図1に示すように、本実施形態に係る加速度検出装置10は、金属製やプラスチック製等のハウジング10Aの内部に、加速度センサ11および制御手段としての制御部12が収納されて構成される。加速度検出装置10は、ボルト10aおよびナット10bにより取付部ブラケットBKに固定され、この取付部ブラケットBKを介して、図3(a)〜(c)に示すように、被検出体としての車両Cの車体の中央付近に取り付けられている。なお、制御部12からの信号は、ハウジング10Aの外部に設けられた端子Tを介して、車載機器としてのブレーキ制御装置B(図4参照)へ出力される。
【0025】
なお、図2、図3(a)〜(c)に示すように、本実施形態においては、車両C(図3(a)〜(c))の車体を基準とした水平面内にある車体の前後方向の軸Yを第1基準軸(以下、単に「基準軸Y」ということがある。)とし、水平面内において基準軸Yと直交する車体の左右方向の軸Xを第2基準軸(以下、単に「基準軸X」ということがある。)とし、基準軸Yおよび基準軸Xと直交する軸であって鉛直面内にある車体の上下方向の軸Zを第3基準軸(以下、単に「基準軸Z」ということがある。)とする。
【0026】
加速度センサ11(図1参照、以下同じ)は、3つの図示しない加速度検出素子を有しており、その検出軸p,q,rの方向が基準軸X,Y,Zの方向からずれた状態となるように配置されている。検出軸p,q,rは、互いに直交しており、図2に示すように、重力方向の加速度をそれぞれ検出可能に配置されている。つまり、検出軸p,q,rは、いずれも、基準軸X,Yを含む同一水平面内に配置されておらず、水平方向(基準軸X,Yを含む水平面)から所定の角度で傾斜する方向に軸線を向けて配置されている。本実施形態では、各検出軸p,q,rが、前記水平面(車体を基準とした水平面)に対してそれぞれ均等な角度で下方へ傾斜している。傾斜角度はそれぞれ約35.3度となるように設定されている。なお、加速度検出素子としては、例えば、歪ゲージ型、静電容量型、ピエゾ抵抗型などの素子を使用することができるが、これらに限定されるものではない。また、加速度センサ11は、基板Pに形成された図示せぬプリント配線を介して制御部12(図1参照、以下同じ)に接続されており、これによって加速度検出素子で検出した加速度の値を示す信号が制御部12に出力されるようになっている。
【0027】
図3(a)に示すように、基準軸X,Yを含む水平面(X−Y平面)に投影された加速度検出素子の検出軸pは、第1基準軸Xに対して角度θHで傾斜しており、加速度検出素子の検出軸qは、第2基準軸Yに対して角度θH’で傾斜している。一方、図3(b)に示すように、基準軸Y,Zを含む鉛直面(Y−Z平面)に投影された加速度検出素子の検出軸p,qは、基準軸Yに対して角度θJで傾斜しており、加速度検出素子の検出軸rは、基準軸Y,Zを含む鉛直面内において、第3基準軸Zに対して角度θJ’で傾斜している。この例では、角度θHが基準軸Xから30度で傾斜するように、角度θH’が基準軸Yから60度で傾斜するように、さらに、角度θJが基準軸Yから54.7度、θJ’が基準軸Zから54.7度で傾斜するように設定されている。
【0028】
制御部12は、図4に示すように、記憶手段12Aと、演算手段12Bと、合成値演算手段12Cと、判定手段12Dと、停止状態判定手段12Eとを備えて構成されている。
【0029】
記憶手段12Aは、基準軸X,Y,Z(図3(a)(b)参照)と加速度検出素子の検出軸p,q,rとのなす角度に関連した角度情報(本実施形態では、角度θH,θH’,θJ,θJ’と、基準軸X,Y,Z方向に作用している加速度の値をそれぞれ算出するための演算式と、各加速度検出素子の故障を判定するための故障判定閾値を予め記憶しておくものであり、EEPROM(Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory)等の不揮発性半導体メモリで構成されている。また、記憶手段12Aは、図示せぬプリント配線を介して演算手段12Bに接続されている。これにより、記憶手段12Aに記憶された角度情報等を演算手段12Bで読み出すことが可能になっている。ここで、EEPROMは、紫外線消去型のUV−EPROMを改良して、紫外線の代わりに電気的に消去できるようにしたEPROMである。また、このEEPROMは、UV−EPROMと違って、特別な消去装置が不要であり、システムに組み込んだまま簡単に消去や再書き込みができるといったメリットを有している。
【0030】
記憶手段12Aに記憶された各加速度検出素子の故障判定閾値は、判定手段12Dへ入力される。ここで、加速度検出素子の故障判定閾値とは、加速度検出素子が正常に作動しているかどうかを判断するための判定値となり得るものである。故障判定閾値は、重力方向の加速度の値に、加速度検出素子が有する固有の誤差や、後記する算出誤差等を加味して設定するようにしてもよい。
【0031】
演算手段12Bは、加速度検出素子で検出された加速度の値Ap,Aq,Arと記憶手段12Aで記憶している角度情報(角度θH,θH’,θJ,θJ’)とに基づいて、基準軸X,Y,Z方向に作用している加速度の値Ax,Ay,Azを算出するものである。つまり、この演算手段12Bは、記憶手段12Aで記憶している角度情報および基準軸X,Y,Z方向に作用している加速度の値Ax,Ay,Azをそれぞれ算出するための演算式を読み出す機能と、読み出した角度情報と加速度検出素子にて検出された加速度の値Ap,Aq,Arとを、読み出した演算式に順次代入して基準軸X、Y、Z方向に作用している加速度の値Ax,Ay,Azを算出する機能とを少なくとも備えている。なお、制御部12には、図示は省略するが、各加速度検出素子から出力された信号を加速度の値Ap,Aq,Arに変換する手段と、演算手段12Bで算出した基準軸X、Y、Z方向の加速度の値Ax,Ay,Azをブレーキ制御装置B等に出力する手段とを備えている。
【0032】
合成値演算手段12Cは、各加速度検出素子で検出される加速度の値Ap,Aq,Arに基づいて重力方向の加速度の合成値を演算するものである。
ここで、各加速度検出素子が正常に機能している場合には、この合成値Aは理論上、重力加速度g(≒9.8m/s2)が合成値Aとして求まることになる。つまり、
|A|={(Ap)2+(Aq)2+(Ar)2}1/2=g=9.8m/s2
となる。したがって、合成値Aが重力加速度gとして算出されない場合には、加速度センサ11の加速度検出素子のいずれかが異常であることを判定することができる。
【0033】
判定手段12Dは、この異常の判定を行うものであり、合成値Aは、予め設定された所定の正常範囲内にあるか否かを判定し、その判定結果に基づいて加速度検出素子のうち少なくとも1つが異常であることを判定する。ここで、正常範囲とされる合成値Aは、例えば、各加速度検出素子の取り付け誤差の影響、各加速度検出素子の固有の出力精度の影響等を考慮して設定した補正係数α,βに基づいて設定することができる。例えば、合成値Aは、2つの故障判定閾値g(1−α)、g(1+β)の範囲内にあるか否か、つまり、g(1−α)≦A≦g(1+β)として設定された条件を満たすか否かによって判定される。
このように、重力方向の加速度の合成値Aで判定するようになっているので、あらゆる勾配路面であっても判定が可能である。
【0034】
判定手段12Dによる判定結果は、ブレーキ制御装置Bに出力される。また、判定手段12Dは、後記するように停止状態判定手段12Eにより車両Cが停止状態であると判定したときにその判定信号を受けて異常の判定を行うようになっている。
【0035】
停止状態判定手段12Eは、車両Cが停止状態であるか否かを判定するものであり、停止状態であると判定したときに判定信号を判定手段12Dに出力する。停止状態判定手段12Eには、例えば、車両Cに設けられた車輪速度センサSが接続されており、車輪速度センサSからの信号や図示しない算出部によって求められる推定車両速度等の値に基づいて車両Cの停止状態を判定する。
【0036】
次に、加速度センサ11の各加速度検出素子の異常の判定の手順を説明する。図5は異常の判定の流れを示すフローチャートである。
まず、車両Cが停止状態にされると、制御部12の停止状態判定手段12Eにより車両Cが停止状態であることが判定され(S01)、加速度センサ11から各加速度検出素子の加速度の値Ap,Aq,Arが合成値演算手段12Cに取得される(S02)。そして、合成値演算手段12Cは、取得した加速度の値Ap,Aq,Arに基づいて重力方向の加速度の合成値Aを演算する(S03)。その後、判定手段12Dは、演算された合成値Aが予め設定された所定の正常範囲内にあるか否かを判定し(S04)、正常範囲内であると判定(Yes)した場合、異常なしと判定し(S05)、ステップS01へ戻る。
【0037】
一方、判定手段12Dは、演算された合成値Aが正常範囲内ではないと判定(S04:No)した場合、異常ありと判定し(S06)、その判定をブレーキ制御装置Bへ出力して(S07)、フローを終了する。
【0038】
ここで、図6,図7を参照して、停車路面状況における各検出軸p,q,rの信号レベル(加速度絶対値)および異常判定の可否について説明する。
本実施形態では、各検出軸p,q,rが、水平方向から所定角度傾斜しており、加速度を同一平面には存在しない3つの検出軸p,q,rの方向の加速度成分Ap,Aq,Arとして取得することが可能であるので、図6(b)に示すように、水平路面に停車した場合には、各検出軸p,q,rの方向のいずれもが重力加速度gの方向に一致することはないが、各加速度検出素子の加速度の値Ap,Aq,Arが、ともにゼロではない、ある所定の加速度、例えば、「中」レベルの加速度を示す。これによって、各検出軸p,q,rの異常判定は、その信号レベルの大きさ(ゼロではない、ある所定の加速度、例えば、「中」レベルの加速度)から可能となる。
【0039】
一方、図7(a)(b)に示すように、勾配路面(少なくとも水平面からの勾配が角度θJ(θJ’)未満の路面)に停車した場合にも、各検出軸p,q,rの方向のいずれもが重力加速度gの方向に一致することはなく、信号レベルは、図6(a)に示すように、各検出素子p、q、rはそれぞれ「中」レベル±Δa、±Δb、±Δc(Δa、Δb、Δcは勾配角度に応じた所定値)となる。これによって、各検出軸p,q,rの異常判定は、前記したように3軸の合成値Aから可能となる。つまり、3軸の合成値Aが重力加速度gとして算出されたか否かで、異常であるか否かを判定することができる。
【0040】
比較例として、基準軸X,Y,Zにそれぞれ沿う検出軸p’,q’,r’とした加速度検出装置を示し、停車路面状況における各検出軸p’,q’,r’の信号レベル(加速度絶対値)および異常判定の可否について、図8,図9を参照して説明する。
図8(b)に示すように、水平路面に停車した場合には、検出軸p’,q’の方向が水平方向となり、検出軸r’の方向が重力方向に一致する状態となる。したがって、図8(a)に示すように、検出軸p’,q’の信号レベルは、「ゼロ」となる。これによって、検出軸p’,q’の異常判定は、行い難くなる。
また、検出軸r’の方向が重力方向に一致する状態となるので、検出軸r’の信号レベルは、「大」レベルとなり、検出軸r’の異常判定のみ可能となる。したがって、3軸の検出軸p’,q’,r’の異常判定を同時に行うことができない。
【0041】
一方、図9に示すように、勾配路面に停車した場合には、各検出軸p’,q’,r’の方向のいずれもが重力加速度gの方向に一致することはなくなるが、検出軸p’,q’の水平方向からの傾斜は小さく、信号レベルは、いずれも「小」レベル(判定する閾値に埋もれてしまうような、判定をするには値しないレベル)となる。また、検出軸r’の信号レベルは、「やや大」レベルとなる。したがって、異常判定は、3軸の合成値Aから可能になるが、検出軸p’,q’の信号レベルが「小」レベルであることから、その判定精度は低いものとなり、判定の確実性を有しない。
【0042】
これに対して本実施形態の加速度検出装置10では、加速度検出素子の出力が異常であるか否かを高精度で行えるという利点が得られる。
【0043】
以上のように構成された本実施形態に係る加速度検出装置10によると、互いに直交する少なくとも3軸の検出軸p,q,rに対応する加速度検出素子を有しており、各検出軸p,q,rは、重力方向の加速度をそれぞれ検出可能に配置されているので、制御部12により、重力方向を含む、車両Cの全ての方向に作用している加速度の値を合成等による演算によって求めることができる。そして、各検出軸p,q,rが、重力方向の加速度をそれぞれ検出可能に配置されているので、これらの検出された重力方向の加速度から、加速度検出素子のうちのいずれかの加速度検出素子の出力が異常であるか否かを容易に、かつ頻繁に判定することができる。
【0044】
また、各検出軸p,q,rは、車体を基準とした水平面に対してそれぞれ均等な角度で下方へ傾斜しているので、各加速度検出素子による重力方向の加速度の検出を好適に行うことができ、これらの検出された重力方向の加速度から、加速度検出素子のうちのいずれかの加速度検出素子の出力が異常であるか否かをより容易に、かつより精度よく判定することができる。
【0045】
また、合成値演算手段12Cにより、各加速度検出素子で検出された加速度の値Ap,Aq,Arに基づいて重力方向の加速度の合成値Aが演算され、判定手段12Dにより、演算された合成値Aが予め設定された所定の正常範囲内にあるか否かが判定され、その判定結果に基づいて複数の加速度検出素子のうち少なくとも1つが異常であることが判定される。したがって、各加速度検出素子の車体への取付誤差や各加速度検出素子の固有の出力精度の影響等を考慮した異常の判定が可能となり、これによって確実性の高い異常の判定を実現することができる。
【0046】
また、車両Cの停止状態を判定する停止状態判定手段12Eを備えており、車両Cの停止状態という安定した状態において判定手段12Dによる異常判定が行われることとなるので、例えば、加速度の変動しやすい車両Cの走行中に異常の判定が行われる場合に比べて確実性の高い判定を行うことができる。しかも、判定手段12Dによって異常であると判定された場合でも車両Cは停止状態であるので、車両Cの走行前にブレーキ制御装置B等に対して判定結果を踏まえた制御等を好適に行うことが可能となる。
【0047】
また、各検出軸p,q,rの方向で同時に検出された加速度の値Ap,Aq,Arに基づいて、車両Cの前後方向(基準軸Y方向)、左右方向(基準軸X方向)および上下方向(基準軸Z方向)等に作用している加速度の値Ax,Ay,Azを制御部12による合成や分解等の演算によって容易に求めることができる。
【0048】
図10(a)〜(d)に加速度検出装置10の変形例を示す。この例では、図10(b)に示すように、基準軸X,Yを含む水平面(X−Y平面)に投影された加速度検出素子の検出軸pは、第1基準軸Xに対して角度θH1で傾斜しており、加速度検出素子の検出軸qは、第2基準軸Yに対して角度θH1’で傾斜している。つまり、基準軸Yを挟んで、基準軸X,Yを含む水平面(X−Y平面)に投影された検出軸pと検出軸qとが非対称位置に配置されている。一方、図10(c)に示すように、基準軸Y,Zを含む鉛直面(Y−Z平面)に投影された加速度検出素子の検出軸p,qは、基準軸Yに対して角度θJ1,θJ2で傾斜しており、同じく加速度検出素子の検出軸rは、第3検出軸Zに対して角度θJ3で傾斜している。
【0049】
このような加速度検出装置10においても同様に、各検出軸p,q,rが、基準軸X,Yを含む同一水平面内に配置されておらず、重力加速度gを3軸の検出軸p,q,rの方向の加速度成分Ap,Aq,Arの合成値として取得することが可能であり、水平路面および勾配路面のいずれに停車した場合においても、各検出軸p,q,rの方向のいずれもが重力加速度g(不図示)の方向に一致することがないので、それぞれの信号レベルも「中」レベル±Δa’、±Δb’、±Δc’(Δa’、Δb’,Δc’は勾配角度に応じた所定値)となって、各検出軸p,q,rに沿う加速度検出素子の異常判定を精度よく行うことができる。
【0050】
なお、前記実施形態では、3軸の検出軸p,q,rとして説明したが、検出軸を4軸以上として構成してもよい。
【0051】
前記実施形態では、筐体10A内に加速度検出装置10を収納した構成としたが、本発明はこれに限られることなく、図11に示すように、ブレーキ制御装置Bに内蔵して構成してもよい。ブレーキ制御装置Bは、図12(b)(c)に示すように、車両Cの前側に取り付けられており、図11に示すように、各種部材・機器の基体となるポンプボディ(基体)B1と、ポンプボディB1の取付面B11に一体に固着されるコントロールハウジングB2と、ポンプボディB1の取付面B12に一体に固着され、ブレーキ液を送る図示せぬポンプの動力となる電動モータB3とを主に備えている。また、コントロールハウジングB2は、電磁弁駆動用の図示せぬ電磁コイルが装着されるコントロールケースB21と、このコントロールケースB21の開口部を密閉するコントロールカバーB22とを備えており、その内部には、電磁弁等を制御する電子部品等が装着された基板B23などが収容される。この例では、この基板B23上に加速度検出装置10としての加速度センサ11および制御部12が実装されている。
【0052】
このようなブレーキ制御装置Bに組み付けられた加速度検出装置10においても、互いに直交する少なくとも3軸の検出軸p,q,rに対応する加速度検出素子を有しており、各検出軸p,q,rは、重力方向の加速度をそれぞれ検出可能に配置されているので、制御部12により、重力方向を含む、車両Cの全ての方向に作用している加速度の値を合成等による演算によって求めることができる。そして、各検出軸p,q,rが、重力方向の加速度をそれぞれ検出可能に配置されているので、これらの検出された重力方向の加速度から、加速度検出素子のうちのいずれかの加速度検出素子の出力が異常であるか否かを容易に、かつ頻繁に判定することができる。
【0053】
なお、この例では、専用のICチップや半導体メモリを利用して制御部12を構成する場合を例示したが、ブレーキ制御装置Bに予め組み込まれているICチップや半導体メモリ等を利用して制御部12を構成してもよく、この場合には、部品点数の増加を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施形態に係る加速度検出装置を示す斜視図である。
【図2】加速度検出装置の検出軸の方向を示す模式斜視図である。
【図3】車両における検出軸の方向を示す平面図(a)と、車両における検出軸の方向を示す側面図(b)と、車両における検出軸の方向を示す後面図(c)である。
【図4】加速度検出装置における処理の流れを示すブロック図である。
【図5】異常の判定の流れを示すフローチャートである。
【図6】停車路面状況における各検出軸の信号レベルおよび異常判定の可否を示す表(a)と、水平路面における検出軸と加速度の合成値との関係を示す模式側面図(b)である。
【図7】勾配路面における検出軸と加速度の合成値との関係を示す模式側面図(a)と、模式後面図(b)である。
【図8】比較例の停車路面状況における各検出軸の信号レベルおよび異常判定の可否を示す表(a)と、水平路面における模式側面図(b)である。
【図9】同じく勾配路面における模式側面図である。
【図10】変形例の加速度検出装置の検出軸の方向を示す模式斜視図(a)と、車両における検出軸の方向を示す平面図(b)と、車両における検出軸の方向を示す側面図(c)と、車両における検出軸の方向を示す後面図(d)である。
【図11】加速度検出装置が組み込まれた車載機器としてのブレーキ制御装置を示す分解斜視図である。
【図12】加速度検出装置の検出軸の方向を示す模式斜視図(a)と、車両における検出軸の方向を示す平面図(b)と、車両における検出軸の方向を示す側面図(c)と、車両における検出軸の方向を示す後面図(d)である。
【符号の説明】
【0055】
10 加速度検出装置
11 加速度センサ
12 制御部(制御手段)
12A 記憶手段
12B 演算手段
12C 合成値演算手段
12D 判定手段
A 合成値
B ブレーキ制御装置
B23 基板
C 車両
p,q,r 検出軸
【技術分野】
【0001】
本発明は、加速度検出装置、加速度センサおよび加速度検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な自動車においては、車両に発生する加速度を検出するために加速度検出素子を有する加速度検出装置を備えたものが知られており、加速度検出装置で検出された加速度の値は、ブレーキ液圧をコントロールするブレーキ制御装置(アンチロックブレーキシステムなど)やカーナビゲーションシステムといった各種車載機器において参照されている。
【0003】
従来、加速度検出装置としては、3軸方向の加速度を検出可能な運動センサを有するもの(例えば、特許文献1参照)や、車両の左右方向へ向けてそれぞれ所定角度となるように配置した2軸の加速度センサを有するものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2002−22445号公報
【特許文献2】特開平9−113535号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記のように加速度センサで検出される加速度の値は、カーナビゲーションシステムやブレーキ制御装置といった各種車載機器において参照されるため、加速度センサが正常に機能しているか否かを判定するための故障診断が重要になってきている。
【0006】
ところで、前記した特許文献2に記載された加速度検出装置では、2つの加速度センサの出力値の変動幅の違いを検出し、その検出に基づいて加速度センサの異常の有無を判断することが開示されている。
しかしながら、特許文献1に開示されているような3次元方向のセンサを有するものにおいて異常を診断するためには、それぞれのセンサに対応する診断用の素子等を別途設ける必要や、特定の条件で車両を加速させた上で診断を行う必要がある等、構成や手順が複雑になるという問題を有している。
【0007】
本発明は、このような観点からなされたものであり、互いに直交する少なくとも3軸の検出軸に対応する加速度検出素子を有するものにおいて、加速度検出素子の出力が異常であるか否かを容易に、かつ頻繁に検出することができる加速度検出装置および加速度センサを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決する本発明は、車両の加速度を検出可能な加速度検出装置であって、互いに直交する少なくとも3軸の検出軸に対応する加速度検出素子を有する加速度センサと、前記加速度センサから出力される加速度の値を入力して処理する制御手段と、を備え、前記各検出軸は、前記車両の車体を基準とした水平面に対して所定の角度で傾斜する方向に前記車体にそれぞれ配置され、重力方向の加速度をそれぞれ検出可能に設けられており、前記制御手段は、前記加速度検出素子から出力される加速度の値に基づいて、前記車両の任意の方向に作用している加速度の値を演算可能であることを特徴とする。
ここで、「車体を基準とした水平面」とは、基準となる路面上、例えば水平にされた路面上に車両が停止しているとき等において、路面と平行になる車体の面をいう。
【0009】
この加速度検出装置によれば、互いに直交する少なくとも3軸の検出軸に対応する加速度検出素子を有しており、各検出軸は、重力方向の加速度をそれぞれ検出可能に配置されているので、制御手段により、重力方向を含む、車両の全ての方向に作用している加速度の値を合成や分解等による演算によって求めることができる。そして、各検出軸が、重力方向の加速度をそれぞれ検出可能に配置されているので、これらの検出された重力方向の加速度から、加速度検出素子のうちのいずれかの加速度検出素子の出力が異常であるか否かを容易に、かつ精度よく判定することができる。
【0010】
また、前記各検出軸は、前記車体を基準とした水平面に対してそれぞれ均等な角度で下方へ傾斜している構成とするのがよい。
【0011】
この加速度検出装置によれば、車体を基準とした水平面に対してそれぞれ均等な角度で各検出軸が下方へ傾斜しているので、各加速度検出素子による重力方向の加速度の検出を好適に行うことができ、これらの検出された重力方向の加速度から、加速度検出素子のうちのいずれかの加速度検出素子の出力が異常であるか否かをより容易に、かつより精度よく判定することができる。
【0012】
また、前記制御手段は、複数の前記加速度検出素子で検出される加速度の値に基づいて、前記車両の前後方向、左右方向および上下方向に作用している加速度の値を演算可能である構成とするのがよい。
【0013】
この加速度検出装置によれば、各検出軸方向で同時に検出された加速度に基づいて、車両の前後方向、左右方向および上下方向等に作用している加速度の値を制御手段による合成や分解等の演算によって容易に求めることができる。そして、各検出軸が、重力方向の加速度をそれぞれ検出可能に配置されているので、重力方向の加速度の合成値から加速度検出素子のいずれか1つが異常であるか否かを容易に判定することができる。
【0014】
また、前記制御手段は、前記各加速度検出素子で検出される加速度の値に基づいて重力方向の加速度の合成値を演算する合成値演算手段と、演算された合成値が予め設定された所定の正常範囲内にあるか否かを判定し、正常範囲内にないと判定した場合に複数の前記加速度検出素子のうち少なくとも1つが異常であることを判定する判定手段とを備えている構成とするのがよい。
ここで、「所定の正常範囲内」とは、各加速度検出素子の被検出体への取付誤差や各加速度検出素子の固有の出力精度の影響を加味して各加速度検出素子が正常であるかどうかを判断するための、幅をもって設定された重力方向の合成値の範囲をいう。
【0015】
この加速度検出装置によれば、合成値演算手段により、各加速度検出素子で検出された加速度の値に基づいて重力方向の加速度の合成値が演算され、判定手段により、演算された合成値が予め設定された所定の正常範囲内にあるか否かが判定され、正常範囲内にないと判定された場合に、複数の加速度検出素子のうち少なくとも1つが異常であることが判定される。したがって、より確実性の高い異常判定を実現することができる。
【0016】
また、前記車両が停止状態であるか否かを判定する停止状態判定手段を備えており、前記判定手段は、前記停止状態判定手段が停止状態であると判定したときにのみ判定を行う構成とするのがよい。
【0017】
この加速度検出装置によれば、車両の停止状態という安定した状態において判定手段による異常判定が行われることとなるので、例えば、加速度の変動しやすい車両の走行中に異常判定が行われる場合に比べて、確実性の高い判定を行うことができる。
また、少なくとも3軸の加速度の合成値にて判断することから、あらゆる傾斜や凹凸のある路面でも確実性の高い判定が可能となる。
【0018】
また、本発明の加速度センサは、車両の加速度を検出可能な車載用の加速度センサであって、互いに直交する少なくとも3軸の検出軸に対応する加速度検出素子を有し、前記各検出軸は、前記車両の車体を基準とした水平面に対して所定の角度で傾斜する方向にそれぞれ配置され、重力方向の加速度をそれぞれ検出可能に設けられている構成とするのがよい。
【0019】
この加速度センサによれば、互いに直交する少なくとも3軸の検出軸に対応する加速度検出素子を有しており、各検出軸は、前記車両の車体を基準とした水平面に対して所定の角度で傾斜する方向にそれぞれ配置され、重力方向の加速度をそれぞれ検出可能に設けられているので、各検出軸で同時に加速度を検出することができ、車両の任意の方向、例えば、車両の前後方向、左右方向および上下方向に作用している加速度の値を求めることに寄与する。
【0020】
また、本発明の加速度検出方法は、互いに直交する少なくとも3軸の検出軸に対応する加速度検出素子を有する加速度センサによって車両の所定方向の加速度を検出する加速度検出方法であって、前記各検出軸が、前記車両の車体を基準とした水平方向から所定の角度で傾斜する方向に前記車体にそれぞれ配置され、重力方向の加速度をそれぞれ検出可能となっており、前記加速度検出素子から出力される加速度の値に基づいて、前記車両の任意の方向に作用している加速度の値を演算することを特徴とする。
【0021】
このような加速度検出方法によれば、互いに直交する少なくとも3軸の検出軸に対応する加速度検出素子を有しており、各検出軸は、重力方向の加速度をそれぞれ検出可能に配置されているので、制御手段により、重力方向を含む、車両の全ての方向に作用している加速度の値を合成や分解等による演算によって求めることができる。そして、各検出軸が、重力方向の加速度をそれぞれ検出可能に配置されているので、これらの検出された重力方向の加速度から、加速度検出素子のうちのいずれかの加速度検出素子の出力が異常であるか否かを容易に、かつ精度よく判定することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、互いに直交する少なくとも3軸の検出軸に対応する加速度検出素子を有するものにおいて、加速度検出素子の出力が異常であるか否かを容易に、かつ頻繁に検出することができる加速度検出装置、加速度センサおよび加速度検出方法が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための最良の形態について適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0024】
図1に示すように、本実施形態に係る加速度検出装置10は、金属製やプラスチック製等のハウジング10Aの内部に、加速度センサ11および制御手段としての制御部12が収納されて構成される。加速度検出装置10は、ボルト10aおよびナット10bにより取付部ブラケットBKに固定され、この取付部ブラケットBKを介して、図3(a)〜(c)に示すように、被検出体としての車両Cの車体の中央付近に取り付けられている。なお、制御部12からの信号は、ハウジング10Aの外部に設けられた端子Tを介して、車載機器としてのブレーキ制御装置B(図4参照)へ出力される。
【0025】
なお、図2、図3(a)〜(c)に示すように、本実施形態においては、車両C(図3(a)〜(c))の車体を基準とした水平面内にある車体の前後方向の軸Yを第1基準軸(以下、単に「基準軸Y」ということがある。)とし、水平面内において基準軸Yと直交する車体の左右方向の軸Xを第2基準軸(以下、単に「基準軸X」ということがある。)とし、基準軸Yおよび基準軸Xと直交する軸であって鉛直面内にある車体の上下方向の軸Zを第3基準軸(以下、単に「基準軸Z」ということがある。)とする。
【0026】
加速度センサ11(図1参照、以下同じ)は、3つの図示しない加速度検出素子を有しており、その検出軸p,q,rの方向が基準軸X,Y,Zの方向からずれた状態となるように配置されている。検出軸p,q,rは、互いに直交しており、図2に示すように、重力方向の加速度をそれぞれ検出可能に配置されている。つまり、検出軸p,q,rは、いずれも、基準軸X,Yを含む同一水平面内に配置されておらず、水平方向(基準軸X,Yを含む水平面)から所定の角度で傾斜する方向に軸線を向けて配置されている。本実施形態では、各検出軸p,q,rが、前記水平面(車体を基準とした水平面)に対してそれぞれ均等な角度で下方へ傾斜している。傾斜角度はそれぞれ約35.3度となるように設定されている。なお、加速度検出素子としては、例えば、歪ゲージ型、静電容量型、ピエゾ抵抗型などの素子を使用することができるが、これらに限定されるものではない。また、加速度センサ11は、基板Pに形成された図示せぬプリント配線を介して制御部12(図1参照、以下同じ)に接続されており、これによって加速度検出素子で検出した加速度の値を示す信号が制御部12に出力されるようになっている。
【0027】
図3(a)に示すように、基準軸X,Yを含む水平面(X−Y平面)に投影された加速度検出素子の検出軸pは、第1基準軸Xに対して角度θHで傾斜しており、加速度検出素子の検出軸qは、第2基準軸Yに対して角度θH’で傾斜している。一方、図3(b)に示すように、基準軸Y,Zを含む鉛直面(Y−Z平面)に投影された加速度検出素子の検出軸p,qは、基準軸Yに対して角度θJで傾斜しており、加速度検出素子の検出軸rは、基準軸Y,Zを含む鉛直面内において、第3基準軸Zに対して角度θJ’で傾斜している。この例では、角度θHが基準軸Xから30度で傾斜するように、角度θH’が基準軸Yから60度で傾斜するように、さらに、角度θJが基準軸Yから54.7度、θJ’が基準軸Zから54.7度で傾斜するように設定されている。
【0028】
制御部12は、図4に示すように、記憶手段12Aと、演算手段12Bと、合成値演算手段12Cと、判定手段12Dと、停止状態判定手段12Eとを備えて構成されている。
【0029】
記憶手段12Aは、基準軸X,Y,Z(図3(a)(b)参照)と加速度検出素子の検出軸p,q,rとのなす角度に関連した角度情報(本実施形態では、角度θH,θH’,θJ,θJ’と、基準軸X,Y,Z方向に作用している加速度の値をそれぞれ算出するための演算式と、各加速度検出素子の故障を判定するための故障判定閾値を予め記憶しておくものであり、EEPROM(Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory)等の不揮発性半導体メモリで構成されている。また、記憶手段12Aは、図示せぬプリント配線を介して演算手段12Bに接続されている。これにより、記憶手段12Aに記憶された角度情報等を演算手段12Bで読み出すことが可能になっている。ここで、EEPROMは、紫外線消去型のUV−EPROMを改良して、紫外線の代わりに電気的に消去できるようにしたEPROMである。また、このEEPROMは、UV−EPROMと違って、特別な消去装置が不要であり、システムに組み込んだまま簡単に消去や再書き込みができるといったメリットを有している。
【0030】
記憶手段12Aに記憶された各加速度検出素子の故障判定閾値は、判定手段12Dへ入力される。ここで、加速度検出素子の故障判定閾値とは、加速度検出素子が正常に作動しているかどうかを判断するための判定値となり得るものである。故障判定閾値は、重力方向の加速度の値に、加速度検出素子が有する固有の誤差や、後記する算出誤差等を加味して設定するようにしてもよい。
【0031】
演算手段12Bは、加速度検出素子で検出された加速度の値Ap,Aq,Arと記憶手段12Aで記憶している角度情報(角度θH,θH’,θJ,θJ’)とに基づいて、基準軸X,Y,Z方向に作用している加速度の値Ax,Ay,Azを算出するものである。つまり、この演算手段12Bは、記憶手段12Aで記憶している角度情報および基準軸X,Y,Z方向に作用している加速度の値Ax,Ay,Azをそれぞれ算出するための演算式を読み出す機能と、読み出した角度情報と加速度検出素子にて検出された加速度の値Ap,Aq,Arとを、読み出した演算式に順次代入して基準軸X、Y、Z方向に作用している加速度の値Ax,Ay,Azを算出する機能とを少なくとも備えている。なお、制御部12には、図示は省略するが、各加速度検出素子から出力された信号を加速度の値Ap,Aq,Arに変換する手段と、演算手段12Bで算出した基準軸X、Y、Z方向の加速度の値Ax,Ay,Azをブレーキ制御装置B等に出力する手段とを備えている。
【0032】
合成値演算手段12Cは、各加速度検出素子で検出される加速度の値Ap,Aq,Arに基づいて重力方向の加速度の合成値を演算するものである。
ここで、各加速度検出素子が正常に機能している場合には、この合成値Aは理論上、重力加速度g(≒9.8m/s2)が合成値Aとして求まることになる。つまり、
|A|={(Ap)2+(Aq)2+(Ar)2}1/2=g=9.8m/s2
となる。したがって、合成値Aが重力加速度gとして算出されない場合には、加速度センサ11の加速度検出素子のいずれかが異常であることを判定することができる。
【0033】
判定手段12Dは、この異常の判定を行うものであり、合成値Aは、予め設定された所定の正常範囲内にあるか否かを判定し、その判定結果に基づいて加速度検出素子のうち少なくとも1つが異常であることを判定する。ここで、正常範囲とされる合成値Aは、例えば、各加速度検出素子の取り付け誤差の影響、各加速度検出素子の固有の出力精度の影響等を考慮して設定した補正係数α,βに基づいて設定することができる。例えば、合成値Aは、2つの故障判定閾値g(1−α)、g(1+β)の範囲内にあるか否か、つまり、g(1−α)≦A≦g(1+β)として設定された条件を満たすか否かによって判定される。
このように、重力方向の加速度の合成値Aで判定するようになっているので、あらゆる勾配路面であっても判定が可能である。
【0034】
判定手段12Dによる判定結果は、ブレーキ制御装置Bに出力される。また、判定手段12Dは、後記するように停止状態判定手段12Eにより車両Cが停止状態であると判定したときにその判定信号を受けて異常の判定を行うようになっている。
【0035】
停止状態判定手段12Eは、車両Cが停止状態であるか否かを判定するものであり、停止状態であると判定したときに判定信号を判定手段12Dに出力する。停止状態判定手段12Eには、例えば、車両Cに設けられた車輪速度センサSが接続されており、車輪速度センサSからの信号や図示しない算出部によって求められる推定車両速度等の値に基づいて車両Cの停止状態を判定する。
【0036】
次に、加速度センサ11の各加速度検出素子の異常の判定の手順を説明する。図5は異常の判定の流れを示すフローチャートである。
まず、車両Cが停止状態にされると、制御部12の停止状態判定手段12Eにより車両Cが停止状態であることが判定され(S01)、加速度センサ11から各加速度検出素子の加速度の値Ap,Aq,Arが合成値演算手段12Cに取得される(S02)。そして、合成値演算手段12Cは、取得した加速度の値Ap,Aq,Arに基づいて重力方向の加速度の合成値Aを演算する(S03)。その後、判定手段12Dは、演算された合成値Aが予め設定された所定の正常範囲内にあるか否かを判定し(S04)、正常範囲内であると判定(Yes)した場合、異常なしと判定し(S05)、ステップS01へ戻る。
【0037】
一方、判定手段12Dは、演算された合成値Aが正常範囲内ではないと判定(S04:No)した場合、異常ありと判定し(S06)、その判定をブレーキ制御装置Bへ出力して(S07)、フローを終了する。
【0038】
ここで、図6,図7を参照して、停車路面状況における各検出軸p,q,rの信号レベル(加速度絶対値)および異常判定の可否について説明する。
本実施形態では、各検出軸p,q,rが、水平方向から所定角度傾斜しており、加速度を同一平面には存在しない3つの検出軸p,q,rの方向の加速度成分Ap,Aq,Arとして取得することが可能であるので、図6(b)に示すように、水平路面に停車した場合には、各検出軸p,q,rの方向のいずれもが重力加速度gの方向に一致することはないが、各加速度検出素子の加速度の値Ap,Aq,Arが、ともにゼロではない、ある所定の加速度、例えば、「中」レベルの加速度を示す。これによって、各検出軸p,q,rの異常判定は、その信号レベルの大きさ(ゼロではない、ある所定の加速度、例えば、「中」レベルの加速度)から可能となる。
【0039】
一方、図7(a)(b)に示すように、勾配路面(少なくとも水平面からの勾配が角度θJ(θJ’)未満の路面)に停車した場合にも、各検出軸p,q,rの方向のいずれもが重力加速度gの方向に一致することはなく、信号レベルは、図6(a)に示すように、各検出素子p、q、rはそれぞれ「中」レベル±Δa、±Δb、±Δc(Δa、Δb、Δcは勾配角度に応じた所定値)となる。これによって、各検出軸p,q,rの異常判定は、前記したように3軸の合成値Aから可能となる。つまり、3軸の合成値Aが重力加速度gとして算出されたか否かで、異常であるか否かを判定することができる。
【0040】
比較例として、基準軸X,Y,Zにそれぞれ沿う検出軸p’,q’,r’とした加速度検出装置を示し、停車路面状況における各検出軸p’,q’,r’の信号レベル(加速度絶対値)および異常判定の可否について、図8,図9を参照して説明する。
図8(b)に示すように、水平路面に停車した場合には、検出軸p’,q’の方向が水平方向となり、検出軸r’の方向が重力方向に一致する状態となる。したがって、図8(a)に示すように、検出軸p’,q’の信号レベルは、「ゼロ」となる。これによって、検出軸p’,q’の異常判定は、行い難くなる。
また、検出軸r’の方向が重力方向に一致する状態となるので、検出軸r’の信号レベルは、「大」レベルとなり、検出軸r’の異常判定のみ可能となる。したがって、3軸の検出軸p’,q’,r’の異常判定を同時に行うことができない。
【0041】
一方、図9に示すように、勾配路面に停車した場合には、各検出軸p’,q’,r’の方向のいずれもが重力加速度gの方向に一致することはなくなるが、検出軸p’,q’の水平方向からの傾斜は小さく、信号レベルは、いずれも「小」レベル(判定する閾値に埋もれてしまうような、判定をするには値しないレベル)となる。また、検出軸r’の信号レベルは、「やや大」レベルとなる。したがって、異常判定は、3軸の合成値Aから可能になるが、検出軸p’,q’の信号レベルが「小」レベルであることから、その判定精度は低いものとなり、判定の確実性を有しない。
【0042】
これに対して本実施形態の加速度検出装置10では、加速度検出素子の出力が異常であるか否かを高精度で行えるという利点が得られる。
【0043】
以上のように構成された本実施形態に係る加速度検出装置10によると、互いに直交する少なくとも3軸の検出軸p,q,rに対応する加速度検出素子を有しており、各検出軸p,q,rは、重力方向の加速度をそれぞれ検出可能に配置されているので、制御部12により、重力方向を含む、車両Cの全ての方向に作用している加速度の値を合成等による演算によって求めることができる。そして、各検出軸p,q,rが、重力方向の加速度をそれぞれ検出可能に配置されているので、これらの検出された重力方向の加速度から、加速度検出素子のうちのいずれかの加速度検出素子の出力が異常であるか否かを容易に、かつ頻繁に判定することができる。
【0044】
また、各検出軸p,q,rは、車体を基準とした水平面に対してそれぞれ均等な角度で下方へ傾斜しているので、各加速度検出素子による重力方向の加速度の検出を好適に行うことができ、これらの検出された重力方向の加速度から、加速度検出素子のうちのいずれかの加速度検出素子の出力が異常であるか否かをより容易に、かつより精度よく判定することができる。
【0045】
また、合成値演算手段12Cにより、各加速度検出素子で検出された加速度の値Ap,Aq,Arに基づいて重力方向の加速度の合成値Aが演算され、判定手段12Dにより、演算された合成値Aが予め設定された所定の正常範囲内にあるか否かが判定され、その判定結果に基づいて複数の加速度検出素子のうち少なくとも1つが異常であることが判定される。したがって、各加速度検出素子の車体への取付誤差や各加速度検出素子の固有の出力精度の影響等を考慮した異常の判定が可能となり、これによって確実性の高い異常の判定を実現することができる。
【0046】
また、車両Cの停止状態を判定する停止状態判定手段12Eを備えており、車両Cの停止状態という安定した状態において判定手段12Dによる異常判定が行われることとなるので、例えば、加速度の変動しやすい車両Cの走行中に異常の判定が行われる場合に比べて確実性の高い判定を行うことができる。しかも、判定手段12Dによって異常であると判定された場合でも車両Cは停止状態であるので、車両Cの走行前にブレーキ制御装置B等に対して判定結果を踏まえた制御等を好適に行うことが可能となる。
【0047】
また、各検出軸p,q,rの方向で同時に検出された加速度の値Ap,Aq,Arに基づいて、車両Cの前後方向(基準軸Y方向)、左右方向(基準軸X方向)および上下方向(基準軸Z方向)等に作用している加速度の値Ax,Ay,Azを制御部12による合成や分解等の演算によって容易に求めることができる。
【0048】
図10(a)〜(d)に加速度検出装置10の変形例を示す。この例では、図10(b)に示すように、基準軸X,Yを含む水平面(X−Y平面)に投影された加速度検出素子の検出軸pは、第1基準軸Xに対して角度θH1で傾斜しており、加速度検出素子の検出軸qは、第2基準軸Yに対して角度θH1’で傾斜している。つまり、基準軸Yを挟んで、基準軸X,Yを含む水平面(X−Y平面)に投影された検出軸pと検出軸qとが非対称位置に配置されている。一方、図10(c)に示すように、基準軸Y,Zを含む鉛直面(Y−Z平面)に投影された加速度検出素子の検出軸p,qは、基準軸Yに対して角度θJ1,θJ2で傾斜しており、同じく加速度検出素子の検出軸rは、第3検出軸Zに対して角度θJ3で傾斜している。
【0049】
このような加速度検出装置10においても同様に、各検出軸p,q,rが、基準軸X,Yを含む同一水平面内に配置されておらず、重力加速度gを3軸の検出軸p,q,rの方向の加速度成分Ap,Aq,Arの合成値として取得することが可能であり、水平路面および勾配路面のいずれに停車した場合においても、各検出軸p,q,rの方向のいずれもが重力加速度g(不図示)の方向に一致することがないので、それぞれの信号レベルも「中」レベル±Δa’、±Δb’、±Δc’(Δa’、Δb’,Δc’は勾配角度に応じた所定値)となって、各検出軸p,q,rに沿う加速度検出素子の異常判定を精度よく行うことができる。
【0050】
なお、前記実施形態では、3軸の検出軸p,q,rとして説明したが、検出軸を4軸以上として構成してもよい。
【0051】
前記実施形態では、筐体10A内に加速度検出装置10を収納した構成としたが、本発明はこれに限られることなく、図11に示すように、ブレーキ制御装置Bに内蔵して構成してもよい。ブレーキ制御装置Bは、図12(b)(c)に示すように、車両Cの前側に取り付けられており、図11に示すように、各種部材・機器の基体となるポンプボディ(基体)B1と、ポンプボディB1の取付面B11に一体に固着されるコントロールハウジングB2と、ポンプボディB1の取付面B12に一体に固着され、ブレーキ液を送る図示せぬポンプの動力となる電動モータB3とを主に備えている。また、コントロールハウジングB2は、電磁弁駆動用の図示せぬ電磁コイルが装着されるコントロールケースB21と、このコントロールケースB21の開口部を密閉するコントロールカバーB22とを備えており、その内部には、電磁弁等を制御する電子部品等が装着された基板B23などが収容される。この例では、この基板B23上に加速度検出装置10としての加速度センサ11および制御部12が実装されている。
【0052】
このようなブレーキ制御装置Bに組み付けられた加速度検出装置10においても、互いに直交する少なくとも3軸の検出軸p,q,rに対応する加速度検出素子を有しており、各検出軸p,q,rは、重力方向の加速度をそれぞれ検出可能に配置されているので、制御部12により、重力方向を含む、車両Cの全ての方向に作用している加速度の値を合成等による演算によって求めることができる。そして、各検出軸p,q,rが、重力方向の加速度をそれぞれ検出可能に配置されているので、これらの検出された重力方向の加速度から、加速度検出素子のうちのいずれかの加速度検出素子の出力が異常であるか否かを容易に、かつ頻繁に判定することができる。
【0053】
なお、この例では、専用のICチップや半導体メモリを利用して制御部12を構成する場合を例示したが、ブレーキ制御装置Bに予め組み込まれているICチップや半導体メモリ等を利用して制御部12を構成してもよく、この場合には、部品点数の増加を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施形態に係る加速度検出装置を示す斜視図である。
【図2】加速度検出装置の検出軸の方向を示す模式斜視図である。
【図3】車両における検出軸の方向を示す平面図(a)と、車両における検出軸の方向を示す側面図(b)と、車両における検出軸の方向を示す後面図(c)である。
【図4】加速度検出装置における処理の流れを示すブロック図である。
【図5】異常の判定の流れを示すフローチャートである。
【図6】停車路面状況における各検出軸の信号レベルおよび異常判定の可否を示す表(a)と、水平路面における検出軸と加速度の合成値との関係を示す模式側面図(b)である。
【図7】勾配路面における検出軸と加速度の合成値との関係を示す模式側面図(a)と、模式後面図(b)である。
【図8】比較例の停車路面状況における各検出軸の信号レベルおよび異常判定の可否を示す表(a)と、水平路面における模式側面図(b)である。
【図9】同じく勾配路面における模式側面図である。
【図10】変形例の加速度検出装置の検出軸の方向を示す模式斜視図(a)と、車両における検出軸の方向を示す平面図(b)と、車両における検出軸の方向を示す側面図(c)と、車両における検出軸の方向を示す後面図(d)である。
【図11】加速度検出装置が組み込まれた車載機器としてのブレーキ制御装置を示す分解斜視図である。
【図12】加速度検出装置の検出軸の方向を示す模式斜視図(a)と、車両における検出軸の方向を示す平面図(b)と、車両における検出軸の方向を示す側面図(c)と、車両における検出軸の方向を示す後面図(d)である。
【符号の説明】
【0055】
10 加速度検出装置
11 加速度センサ
12 制御部(制御手段)
12A 記憶手段
12B 演算手段
12C 合成値演算手段
12D 判定手段
A 合成値
B ブレーキ制御装置
B23 基板
C 車両
p,q,r 検出軸
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の加速度を検出可能な加速度検出装置であって、
互いに直交する少なくとも3軸の検出軸に対応する加速度検出素子を有する加速度センサと、
前記加速度センサから出力される加速度の値を入力して処理する制御手段と、を備え、
前記各検出軸は、前記車両の車体を基準とした水平面に対して所定の角度で傾斜する方向に前記車体にそれぞれ配置され、重力方向の加速度をそれぞれ検出可能に設けられており、
前記制御手段は、前記加速度検出素子から出力される加速度の値に基づいて、前記車両の任意の方向に作用している加速度の値を演算可能であることを特徴とする加速度検出装置。
【請求項2】
前記各検出軸は、前記車体を基準とした水平面に対してそれぞれ均等な角度で下方へ傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の加速度検出装置。
【請求項3】
前記制御手段は、複数の前記加速度検出素子で検出される加速度の値に基づいて、前記車両の前後方向、左右方向および上下方向に作用している加速度の値を演算可能であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の加速度検出装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記各加速度検出素子で検出される加速度の値に基づいて重力方向の加速度の合成値を演算する合成値演算手段と、演算された合成値が予め設定された所定の正常範囲内にあるか否かを判定し、正常範囲内にないと判定した場合に複数の前記加速度検出素子のうち少なくとも1つが異常であることを判定する判定手段とを備えていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の加速度検出装置。
【請求項5】
前記車両が停止状態であるか否かを判定する停止状態判定手段を備えており、前記判定手段は、前記停止状態判定手段により停止状態であると判定したときにのみ判定を行うことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の加速度検出装置。
【請求項6】
車両の加速度を検出可能な車載用の加速度センサであって、
互いに直交する少なくとも3軸の検出軸に対応する加速度検出素子を有し、
前記各検出軸は、前記車両の車体を基準とした水平面に対して所定の角度で傾斜する方向にそれぞれ配置され、重力方向の加速度をそれぞれ検出可能に設けられていることを特徴とする加速度センサ。
【請求項7】
互いに直交する少なくとも3軸の検出軸に対応する加速度検出素子を有する加速度センサによって車両の所定方向の加速度を検出する加速度検出方法であって、
前記各検出軸が、前記車両の車体を基準とした水平方向から所定の角度で傾斜する方向に前記車体にそれぞれ配置され、重力方向の加速度をそれぞれ検出可能となっており、
前記加速度検出素子から出力される加速度の値に基づいて、前記車両の任意の方向に作用している加速度の値を演算することを特徴とする加速度検出方法。
【請求項1】
車両の加速度を検出可能な加速度検出装置であって、
互いに直交する少なくとも3軸の検出軸に対応する加速度検出素子を有する加速度センサと、
前記加速度センサから出力される加速度の値を入力して処理する制御手段と、を備え、
前記各検出軸は、前記車両の車体を基準とした水平面に対して所定の角度で傾斜する方向に前記車体にそれぞれ配置され、重力方向の加速度をそれぞれ検出可能に設けられており、
前記制御手段は、前記加速度検出素子から出力される加速度の値に基づいて、前記車両の任意の方向に作用している加速度の値を演算可能であることを特徴とする加速度検出装置。
【請求項2】
前記各検出軸は、前記車体を基準とした水平面に対してそれぞれ均等な角度で下方へ傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の加速度検出装置。
【請求項3】
前記制御手段は、複数の前記加速度検出素子で検出される加速度の値に基づいて、前記車両の前後方向、左右方向および上下方向に作用している加速度の値を演算可能であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の加速度検出装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記各加速度検出素子で検出される加速度の値に基づいて重力方向の加速度の合成値を演算する合成値演算手段と、演算された合成値が予め設定された所定の正常範囲内にあるか否かを判定し、正常範囲内にないと判定した場合に複数の前記加速度検出素子のうち少なくとも1つが異常であることを判定する判定手段とを備えていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の加速度検出装置。
【請求項5】
前記車両が停止状態であるか否かを判定する停止状態判定手段を備えており、前記判定手段は、前記停止状態判定手段により停止状態であると判定したときにのみ判定を行うことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の加速度検出装置。
【請求項6】
車両の加速度を検出可能な車載用の加速度センサであって、
互いに直交する少なくとも3軸の検出軸に対応する加速度検出素子を有し、
前記各検出軸は、前記車両の車体を基準とした水平面に対して所定の角度で傾斜する方向にそれぞれ配置され、重力方向の加速度をそれぞれ検出可能に設けられていることを特徴とする加速度センサ。
【請求項7】
互いに直交する少なくとも3軸の検出軸に対応する加速度検出素子を有する加速度センサによって車両の所定方向の加速度を検出する加速度検出方法であって、
前記各検出軸が、前記車両の車体を基準とした水平方向から所定の角度で傾斜する方向に前記車体にそれぞれ配置され、重力方向の加速度をそれぞれ検出可能となっており、
前記加速度検出素子から出力される加速度の値に基づいて、前記車両の任意の方向に作用している加速度の値を演算することを特徴とする加速度検出方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−19898(P2009−19898A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−180901(P2007−180901)
【出願日】平成19年7月10日(2007.7.10)
【出願人】(000226677)日信工業株式会社 (840)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月10日(2007.7.10)
【出願人】(000226677)日信工業株式会社 (840)
【Fターム(参考)】
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