加飾シート
【課題】箔ばりや箔こぼれの発生を抑制し、優れた製造効率で加飾成形品を製造することを可能とし、かつ良好な高硬度性と優れた転写性及びより形状が複雑な成形品を得られる成形性とを付与する加飾シート、該加飾シートを用いた加飾成形品を提供することを課題とする。
【解決手段】基材フィルムの片面に少なくとも離型層とハードコート層形成層とを順に有する加飾シートであって、該離型層が水系メラミン樹脂を含む塗工液で形成されてなり、該離型層と該ハードコート層形成層との20℃における剥離強度が0.06〜0.4N/18mmであり、80℃における剥離強度が0.06〜0.5N/18mmである加飾シート、該シートを用いた加飾成形品である。
【解決手段】基材フィルムの片面に少なくとも離型層とハードコート層形成層とを順に有する加飾シートであって、該離型層が水系メラミン樹脂を含む塗工液で形成されてなり、該離型層と該ハードコート層形成層との20℃における剥離強度が0.06〜0.4N/18mmであり、80℃における剥離強度が0.06〜0.5N/18mmである加飾シート、該シートを用いた加飾成形品である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加飾シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、三次元曲面などの複雑な表面形状を有する樹脂成形体の加飾には、射出成形同時加飾方法が用いられる。射出成形同時加飾方法とは、射出成形の際に金型内に挿入された加飾シートをキャビティ内に射出注入された溶融した射出樹脂と一体化させて、樹脂成形体表面に加飾を施す方法であって、樹脂成形体と一体化される加飾シートの構成の違いによって、一般に射出成形同時ラミネート加飾法と射出成形同時転写加飾法に大別される。
射出成形同時転写加飾法においては、射出成形同時転写加飾用の加飾シートの転写層側を金型内に向けて転写層側から熱盤によって加熱し、該加飾シートが金型内形状に沿うように成形して金型内面に密着させて型締した後、キャビティ内に溶融した射出樹脂を射出して該加飾シートと射出樹脂とを一体化し、次いで加飾成形品を冷却して金型から取り出した後、基材フィルムを剥離することにより転写層を転写した加飾成形品を得ることができる。
【0003】
このようにして得られる加飾成形品は、従来用いられている家庭用電化製品、自動車内装品などの分野に加えて、例えば近年パソコン市場の拡大に伴う、日常携帯できるモバイルパソコンを含めたノート型のパソコンの分野での使用や、自動車外装、携帯電話分野での使用も注目されている。これらの分野においては、加飾シートに対して、加飾成形品に良好な高硬度性などの表面特性を付与しうると同時に、形状が複雑な成形品を得られる成形性が求められる。
【0004】
ところで、射出成形同時転写加飾法においては、加飾成形品を冷却して金型から取り出した後、基材フィルムを剥離する際に、被加飾体の端部あるいは表面に凹部や貫通孔などがあると、これらの箇所には加飾したくない場合でも転写層が残ってしまう、いわゆる箔ばりや、加飾シートをスリット加工する際に、スリット部付近の転写層の一部が加飾シートから剥離し脱落してしまう、いわゆる箔こぼれが生じることがある。箔ばりが生じると、これを除去作業に時間と手間がかかり作業効率が悪化し、また、除去作業の際に転写されるべき部分が剥離してしまい、結果として加飾成形品の外観不良の原因となってしまう。また、箔こぼれが生じると、脱落した転写層の一部が転写層の表面や加飾シートに付着し、転写不良や加飾成形品の外観不良の原因となってしまう。さらに、脱落した転写層が、加飾シートと金型との間に挟まることで、該加飾シートを通じて、その部分の加飾成形品の表面に凹みが発生する成形不良を起こす原因となる場合があった。
【0005】
そのため、箔ばりや箔こぼれといった現象を防止することが課題となっている。例えば、箔こぼれを防止する方法として、基材シートの上にスリット部をはずして離型層を設ける方法がある(例えば、特許文献1参照)。この方法により箔こぼれの問題は解消されるものの、成形品ごとに個別の離型層を作製する必要が生じるため、作業効率が悪くなる場合があった。また、箔ばりや箔こぼれへの対応として、各種構成を有する加飾シートが検討されている(例えば、特許文献2〜6)。しかし、特許文献2及び3に開示されるものでは、箔こぼれ防止層を追加的に設ける必要があるため、印刷工程や製造工程の増加につながり、製造効率が悪化し、コストアップの要因となってしまう。特許文献4に開示されるものは、転写層を構成する各層をストライプ上に設ける必要があるため、高硬度性を付与するために加飾成形品の最表面層を厚くすることが困難であり、特許文献5に開示されるものも、加飾成形品の最表面層を厚くすることが困難であることから、転写層の高硬度性などの物性の点で課題がある。また、特許文献6に開示されるものでは、予め易接着処理された機材シートを用いて、スリット部を除いて印刷塗工して離型層を形成するため、製造効率が悪化し、コストアップの要因となってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3953867号公報
【特許文献2】実開平6−65258号公報
【特許文献3】実開平6−65259号公報
【特許文献4】実開平4−45799号公報
【特許文献5】特開平6−183124号公報
【特許文献6】特開平11−58584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような状況下で、箔ばりや箔こぼれの発生を抑制し、優れた製造効率で加飾成形品を製造することを可能とし、かつ良好な高硬度性と優れた転写性及びより形状が複雑な成形品を得られる成形性とを付与する加飾シート、該加飾シートを用いた加飾成形品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記課題を達成するために鋭意研究を重ねた結果、下記の発明により当該課題を解決できることを見出した。すなわち本発明は、以下の加飾シート、これを用いた加飾成形品の製造方法、ならびに該製造方法により得られる加飾成形品を提供するものである。
【0009】
1.基材フィルムの片面に少なくとも離型層とハードコート層形成層とを順に有する加飾シートであって、該離型層が親水性樹脂を含む塗工液で形成されてなり、該離型層と該ハードコート層形成層との20℃における剥離強度が0.06〜0.4N/18mmであり、80℃における剥離強度が0.06〜0.5N/18mmである加飾シート。
2.下記の工程(1)〜工程(5)を有する加飾成形品の製造方法。
工程(1)射出成型金型内に上記1に記載の加飾シートを配する工程
工程(2)キャビティ内に溶融樹脂を射出し、冷却・固化して、樹脂成形体と加飾シートとを積層一体化させる射出工程
工程(3)樹脂成形体と加飾シートとが一体化した成形体を金型から取り出す工程
工程(4)成形体から加飾シートの基材フィルムを剥離する工程
工程(5)前記成形体上に設けられたハードコート層形成層を硬化させるハードコート層形成工程
3.上記2に記載の製造方法により得られる加飾成形品。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、箔ばりや箔こぼれの発生を抑制し、優れた製造効率で加飾成形品を製造することを可能とし、かつ良好な高硬度性と優れた転写性及びより形状が複雑な成形品を得られる成形性とを付与する加飾シート、該加飾シートを用いた加飾成形品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の加飾シートの断面を示す模式図である。
【図2】本発明の加飾成形品の断面を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[加飾シート]
本発明の加飾シートは、基材フィルムの片面に少なくとも離型層とハードコート層形成層とを順に有する加飾シートであって、該離型層が親水性樹脂を含む塗工液で形成されてなり、該離型層と該ハードコート層形成層との20℃における剥離強度が0.06〜0.4N/18mmであり、80℃における剥離強度が0.06〜0.5N/18mmである。以下、本発明の加飾シートを、図1及び図2を参照しながら説明する。図1は、本発明の加飾シートの好ましい一態様についての断面を示す模式図である。図2は、本発明の加飾成形品の好ましい一態様についての断面を示す模式図である。
図1に示される本発明の加飾シート10は、ポリエステルフィルムからなる基材フィルム11の一方の表面に、離型層12、ハードコート層形成層13、アンカー層14、絵柄層15及び接着層16を順に積層してなり、基材フィルム11の他方の面(離型層11を設けた面とは反対側の面)に帯電防止層19を積層してなるものである。また、図2に示される本発明の加飾成形品20は、樹脂成形体21の表面に、接着層16、絵柄層15、アンカー層14及びハードコート層形成層13が硬化してなるハードコート層22が順に積層したものである。
【0013】
《基材フィルム》
基材フィルム11としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体などのビニル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂;ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチルなどのアクリル系樹脂;ポリスチレン等のスチレン系樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、三酢酸セルロース、セロファン、ポリカーボネート、ポリウレタン系などのエラストマー系樹脂などによるものが利用される。これらのうち、成形性及び剥離性が良好である点から、ポリエステル系樹脂、特にポリエチレンテレフタレート(以下「PET」という。)が好ましい。
基材フィルム11の厚さとしては、成形性や形状追従性、取り扱いが容易であるとの観点から、25〜150μmの範囲が好ましく、さらに50〜100μmの範囲がより好ましい。
【0014】
《離型層12》
離型層12は、好ましくはハードコート層形成層13、アンカー層14、絵柄層15及び接着層16が順に積層してなる転写層17が基材シート11からの剥離を容易に行われるために設けられる層であり、スリット部分を含む全面に設けられる層である。該離型層12を有することで、本発明の加飾シートから転写層17を確実に、かつ容易に被転写体へ転写させ、基材フィルム11、離型層12、及び必要に応じて設けられる帯電防止層19からなる剥離層18を確実に剥離することができる。
【0015】
離型層12は、箔ばりや箔こぼれの発生を抑制する観点から、親水性を有する樹脂により形成されることが好ましい。親水性樹脂は、分子内に水酸基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基、スルホン酸基及び/又はエーテル基を有する水溶性又は水分散性の親水性樹脂であることが好ましい。例えば、水系メラミン樹脂、水系ポリエステル樹脂、水系ポリエステルウレタン樹脂などのほか、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロース、キトサン、ポリエチレンオキサイド、水溶性ナイロン、これらの重合体を形成するモノマーの共重合体、2−メトキシポリエチレングリコールメタクリレート/アクリル酸2−ヒドロキシルエチル共重合体等のポリオキシエチレン鎖を有するアクリル系重合体などが好ましい。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明においては、後述するハードコート層形成層との組み合わせにより良好な離型性(剥離強度)が得られる観点から、水系メラミン樹脂、水系ポリエステル樹脂が好ましく、基材フィルム上に均一に塗工できるレベリング性を向上させる観点から、これらを組み合わせて用いることが特に好ましい。水系メラミン樹脂と水系ポリエステル樹脂とを併用して用いる場合、その配合比(質量比)は、基材フィルム上に均一に塗工できるレベリング性を向上させる観点から、2/1〜50/1が好ましく、5/1〜15/1がより好ましい。
【0016】
親水性樹脂として水系ポリエステル樹脂を用いる場合、該ポリエステル樹脂の数平均分子量Mnは、5000〜50000が好ましく、5000〜30000がより好ましく、5000〜10000がさらに好ましい。数平均分子量が上記範囲内であると、良好な剥離強度が得られる。なお、上記数平均分子量Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)による標準ポリスチレン換算の値である。
水系ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、−25〜90℃が好ましく、0〜90℃がより好ましく、60〜80℃がさらに好ましい。ガラス転移温度が上記範囲内であると、良好な剥離強度が得られる。ここで、ガラス転移温度(Tg)は、DSC装置を用い、昇温速度8℃/minの条件で測定した値である。
また、当該ポリエステルポリオール系樹脂においては、接着性能の観点から、重量平均分子量Mwが25000以上であることが好ましい。さらに水酸基価は、好ましくは1〜25mgKOH/g、より好ましくは3〜20mgKOH/gであり、酸価は、好ましくは5mgKOH/g以下、より好ましくは3mgKOH/g以下である。水酸基価及び酸価が上記範囲内であると、良好な剥離強度が得られる。
【0017】
上記の親水性樹脂は、その使用形態として、水分散液として用いることが好ましい。水分散液として用いる場合には、水中に分散させたディスパージョン、あるいはエマルションの状態で用いることができ、より粒子径が小さいディスパージョンの状態であることが好ましい。水分散液中の親水性樹脂の平均粒径は0.001〜0.1μm程度であることが好ましく、0.001〜0.05μmであることがより好ましい。
【0018】
水系メラミン樹脂を用いる場合、該樹脂の硬化を促進するため、酸触媒を使用することが好ましい。上記酸触媒としては特に限定されず、例えば、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸などが好ましく挙げられる。この酸触媒は、水系メラミン樹脂だけでなく、水系ポリエステル樹脂や水系ポリエステルウレタン樹脂とも反応しゲル化を生じる場合があるので、水系メラミン樹脂と水系ポリエステル樹脂あるいは水系ポリエステルウレタン樹脂とを併用する場合には、これらの樹脂を混和した後に、酸触媒を添加することが好ましい。また、ゲル化防止の観点から、水系メラミン樹脂に酸触媒を添加し混和した後に、水系ポリエステル樹脂あるいは水系ポリエステルウレタン樹脂を混和させてもよい。
【0019】
離型層12の離型性を向上させるため、フッ素樹脂系離型剤、シリコーン樹脂系離型剤のほか、ワックスなどの公知の離型剤を用いることもできる。また、シリカ(コロイダルシリカ、ヒュームドシリカ、沈降性シリカなど)、アルミナ、ジルコニア、チタニア、酸化亜鉛などの無機粒子を、5〜40質量%の範囲で添加し、マット感のある離型層を形成することもできる。さらに、例えばアクリル樹脂などのビニル系樹脂やセルロース系樹脂などを主成分とするインキ中に、上記の親水性樹脂や離型剤を添加したものを用いて離型層12を形成してもよい。
【0020】
離型層12の形成は、上記のような親水性樹脂などに必要な添加剤を加えたものを適当な溶剤に溶解または分散して調製したインキを、基材シート11上に公知の手段により塗布・乾燥させて行うことができ、厚みは0.01〜5μm程度が好ましく、0.1〜2μmがより好ましい。
離型層12の形成における塗工法としては、ワイヤーバーコート法、ドクターブレード法、マイクログラビアコート法、グラビアロールコート法、リバースロールコート法、エアーナイフコート法、ロツドコート法、ダイコート法、キスコート法、リバースキスコート法、含浸法、カーテンコート法、スプレーコート法、ディップコート法などの方法を単独または組合せて適用することができる。
【0021】
《ハードコート層形成層13》
ハードコート層形成層13は、硬化することにより加飾成形品20におけるハードコート層22を形成する層である。該ハードコート層22は、加飾成形品の最外層となり、摩耗や光、薬品などから成形品や絵柄層を保護するための層である。よって、ハードコート層形成層13は、硬化することで、優れた高硬度性と耐スクラッチ性はもちろんのこと、耐薬品性や耐汚染性などの表面物性に優れるという性能を有する層であることを要する。
【0022】
ハードコート層形成層13に用いる樹脂としては、前記性能を考慮しつつ、用途に応じて要求されるその他の機能を果たすことのできる物性を有する樹脂を、適宜選択すればよい。このような樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂や、熱硬化性樹脂及び電離放射線硬化性樹脂などの硬化性樹脂が挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、アクリル樹脂、セルロース系樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂、或いは、酢酸ビニル樹脂などのビニル重合体などを使用することができる。また、熱硬化性樹脂としては、メラミン樹脂、2液硬化型ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などを使用することができる。また、上記電離放射線硬化性樹脂としては、アクリレート系や、エポキシ系などの電離放射線硬化性樹脂を使用することができる。
ハードコート層としてより優れた性能が必要な場合には、熱可塑性樹脂よりは硬化性樹脂を、さらに硬化性樹脂においては電離放射線硬化性樹脂を使用することが好ましい。そして、これらの各種樹脂のなかでも、熱硬化性樹脂や電離放射線硬化性樹脂などの硬化性樹脂は、従来から箔こぼれが生じやすいことが知られているが、本発明によりその防止を図ることができるという効果の点で、本発明においては好適である。
【0023】
(電離放射線硬化性樹脂)
ハードコート層形成層13の形成に用いられる電離放射線硬化性樹脂は、紫外線や電子線等の電離放射線によって硬化可能な樹脂組成物であり、具体的には、分子中にラジカル重合性不飽和結合、又はカチオン重合性官能基を有する、プレポリマー(所謂オリゴマーも包含する)及び/又はモノマーを適宜混合した樹脂組成物が好ましくは用いられる。これらプレポリマー又はモノマーは、単体又は複数種を混合して用いる。
【0024】
上記プレポリマー又はモノマーは、具体的には、分子中に(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等のラジカル重合性不飽和基、エポキシ基等のカチオン重合性官能基等を有する化合物からなる。また、ポリエンとポリチオールとの組み合わせによるポリエン/チオール系のプレポリマーも用いられる。
【0025】
ラジカル重合性不飽和基を有するプレポリマーの例としては、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等が使用できる。分子量としては、通常250〜100,000程度のものが用いられる。
また、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、これと共重合可能な、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルなどの官能基含有(メタ)アクリル系化合物、あるいは(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のカルボン酸とを共重合してなるアクリル(メタ)アクリレートプレポリマーも、ラジカル重合性不飽和基を有するプレポリマーとして挙げられる。
【0026】
ラジカル重合性不飽和基を有するモノマーの例としては、単官能モノマーとして、メチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等がある。また、多官能モノマーとして、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等もある。
【0027】
カチオン重合性官能基を有するプレポリマーの例としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ化合物等のエポキシ系樹脂、脂肪酸系ビニルエーテル、芳香族系ビニルエーテル等のビニルエーテル系樹脂のプレポリマーがある。
上記のポリチオールとしては、トリメチロールプロパントリチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラチオグリコレート等のポリチオールがある。また、上記のポリエンとしては、ジオールとジイソシアネートによるポリウレタンの両端にアリルアルコールを付加したもの等がある。
【0028】
紫外線又は可視光線にて硬化させる場合には、上記電離放射線硬化性樹脂に、さらに光重合開始剤を添加する。ラジカル重合性不飽和基を有する樹脂系の場合は、光重合開始剤として、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル類を単独又は混合して用いることができる。また、カチオン重合性官能基を有する樹脂系の場合は、光重合開始剤として、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル等を単独又は混合物として用いることができる。なお、これらの光重合開始剤の添加量としては、電離放射線硬化性樹脂100質量部に対して、0.1〜10質量部程度である。
【0029】
(樹脂組成物)
本発明において、ハードコート層形成層13は、通常上記熱可塑性樹脂や、熱硬化性樹脂及び電離放射線硬化性樹脂などの樹脂、その他の添加剤などを含む樹脂組成物により形成される。
また、樹脂として電離放射線硬化性樹脂を採用する場合、添加剤としてシリコーンも好ましく挙げられる。シリコーンとしては、シリコーンオイルや反応性シリコーンが例示でき、反応性シリコーンとしては、電離放射線で硬化時に電離放射線硬化性樹脂と反応し結合して一体化したり、1部は残留するものもある。該反応性シリコーンとしてはアクリル変性、メタクリル変性、又はエポキシ変性などで変性した反応性シリコーンなどがある。シリコーンを含有させる質量基準での割合としては電離放射線硬化性樹脂組成物100質量部に対して、0.1〜10質量部程度、好ましくは0.3〜5質量部である。この範囲未満では表面が汚染しやすく、また、この範囲を超えてはアンカー層への接着層の密着性が低くなってしまう。
【0030】
樹脂組成物中にはフィラーも好ましく添加される。フィラーとしては、マイクロシリカやポリエチレンワックスが例示できる。ポリエチレンワックスとしては、ポリエチレン系樹脂の粒子やビーズが挙げられるが、好ましくは球状ビーズである。ただし、ポリエチレンワックスを添加すると、箔切れが低下するため、その添加量は、樹脂100質量部に対して、0.01〜10質量部程度が好ましく、より好ましくは0.1〜5質量部である。
また、樹脂組成物中には、シリカ(コロイダルシリカ、ヒュームドシリカ、沈降性シリカなど)、アルミナ、ジルコニア、チタニア、酸化亜鉛などの無機粒子や、その表面にビニル基、(メタ)アクリロイル基、及びアリル基といったエチレン性不飽和結合や、エポキシ基、シラノール基などの反応性官能基を有する反応性無機粒子も好ましく添加される。高硬度性が得られる観点からは、反応性無機粒子の添加が好ましい。
【0031】
〈その他の添加剤〉
前記樹脂組成物中には、更に必要に応じて適宜、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、セルロース系樹脂等の熱可塑性樹脂、多官能イソシアネート化合物、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、光安定剤、重合禁止剤、架橋剤、帯電防止剤、酸化防止剤、レベリング剤、チキソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、熱ラジカル発生剤、アルミキレート剤などといった他の公知の添加剤を添加することもできる。
【0032】
〈ハードコート層形成層13の形成〉
ハードコート層形成層13は、本発明で用いられる樹脂組成物をグラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法、ダイコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などにより塗工することで、形成することができる。
ハードコート層形成層13の厚さは、0.1〜20μmの範囲が好ましく、より好ましくは1〜10μmである。厚さが上記範囲内であると、優れた高硬度性と耐スクラッチ性はもちろんのこと、耐薬品性や耐汚染性などの表面物性が得られると同時に、優れた成形性や形状追従性を得ることができる。また、材料費の点でも有利である。
【0033】
《離型層12とハードコート層形成層13との剥離強度》
本発明の加飾シートは、離型層12とハードコート層形成層13との20℃における剥離強度が0.06〜0.4N/18mmであり、80℃における剥離強度が0.06〜0.5N/18mmであることを要する。
20℃及び80℃における剥離強度が下限値の0.06N/18mm未満であると、剥離強度が小さすぎて、箔ばりや箔こぼれが生じるため、これらの除去作業に時間と手間がかかり作業効率が悪化し、また加飾成形品の外観不良を招いてしまう。一方、20℃及び80℃における剥離強度が上限値の0.4あるいは0.5N/18mmよりも大きいと、剥離強度が大きすぎて、転写不良による加飾成形品の外観不良を招いてしまう。このような観点から、離型層12とハードコート層形成層13との20℃における剥離強度は、0.1〜0.3N/18mmが好ましく、0.14〜0.25N/18mmがより好ましい。また、80℃における剥離強度は、0.07〜0.5N/18mmが好ましく、0.07〜0.4N/18mmがより好ましい。
【0034】
また、本発明の加飾シートは、剥離強度の経時変化が少ないという特徴を有する。より具体的には、本発明の加飾シートは、作製してから120時間放置した後においても、放置した環境に影響されることなく、剥離強度が作製直後の数値から低下しにくいという特徴を有する。この特徴は、離型層が親水性を有する樹脂により形成される場合、特に親水性を有する樹脂として水系メラミン樹脂と水系ポリエステルウレタン樹脂とを併用した場合に顕著に現れる。
【0035】
本発明における剥離強度は、以下のようにして測定した値である。まず、幅50mm、長さ150mmの両面テープを、該テープと同じサイズにした加飾シートの基材フィルムの離型層が設ける面とは反対側の面(帯電防止層が設けられている場合は帯電防止層面)に貼り付け、平らな台に固定した。次に、固定した加飾シートの転写層17面に幅18mm、長さ100mmのセロファンテープ(ニチバン(株)製のセロファン粘着テープ、「セロテープ(登録商標)」)を密着させ、密着させたセロファンテープに沿ってカッターで切り込みを入れた。次に、密着させたセロテープ(登録商標)ごと転写層17を剥離層18から剥離させて、転写層17を10mmほど浮かせ、その先端に引っ掛け治具を貼り付けた。所定の温度(20℃又は80℃)下において3分間放置した後、該引っ掛け治具にテンションゲージ(荷重測定用)のフックをひっかけ、該テンションゲージを転写層17と剥離層18との剥離角度が常に90°となるように、剥離速度を100〜500mm/秒の範囲で、ゆっくりと引き上げて、該テンションゲージの示す荷重を剥離強度(N/18mm)とした。
【0036】
上記のようにしてテンションゲージを引き上げると、テンションゲージの示す荷重は振れるため、得られる剥離強度は一定の振れ幅を有する値となる。本発明において、該振れ幅の全範囲は、本発明で規定する剥離強度の範囲内に含まれることを要する。すなわち、該振れ幅の全範囲が本発明で規定する剥離強度の範囲内に含まれている加飾シートが、本発明の加飾シートに該当する。一方、該振れ幅の範囲の一部でも、本発明で規定する剥離強度の範囲外となる場合、そのような剥離強度を有する加飾シートは本発明の加飾シートには含まれない。
【0037】
本発明において、離型層12とハードコート層形成層13との剥離強度は、ポリエステル樹脂量の増減により調節できる。さらに、剥離層12を形成する材料、例えば親水性樹脂の種類や、これに添加するフッ素樹脂系離型剤、シリコーン樹脂系離型剤や、ワックスなどの離型剤、あるいは無機粒子などにより調節することができる。なお、例えば離型層12の形成に無機粒子を用いた場合には、離型層12がマット感を有するため、ハードコート層が落ち着いたマット感を有する意匠とすることができる。
【0038】
《アンカー層14》
アンカー層14は、ハードコート層形成層13と接着層16、あるいは絵柄層15がある場合は絵柄層15との密着性を向上させるために、所望により設けられる層である。
アンカー層14は、2液性硬化ウレタン樹脂、熱硬化ウレタン樹脂、メラミン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、塩素含有ゴム系樹脂、塩素含有ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ビニル系共重合体樹脂などを使用し、例えば上記のように形成したハードコート層形成層13の上に、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などにより塗工して形成することができる。
アンカー層14の厚さは、通常0.1〜5μm程度であり、好ましくは1〜5μm程度である。
【0039】
《絵柄層15》
絵柄層15は、加飾成形品に所望の意匠性を付与するための層であり、所望により設けられる層である。絵柄層15の絵柄は任意であるが、例えば、木目、石目、布目、砂目、幾何学模様、文字などからなる絵柄を挙げることができる。また、絵柄層15は、上記絵柄を表現する柄パターン層及び全面ベタ層を単独で又は組み合わせて設けることができ、全面ベタ層は、通常、隠蔽層、着色層、着色隠蔽層などとして用いられる。
【0040】
絵柄層15は、通常は、上記のように形成したハードコート層形成層13の上、あるいはアンカー層14の上に、ポリビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、セルロース系樹脂などの樹脂をバインダーとし、適当な色の顔料又は染料を着色剤として含有する印刷インキによる印刷を行うことで形成する。印刷方法としては、グラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、転写シートからの転写印刷、昇華転写印刷、インクジェット印刷などの公知の印刷法が挙げられる。
絵柄層15の厚みは、意匠性の観点から5〜40μmが好ましく、5〜30μmがより好ましい。
【0041】
《接着層16》
接着層16は、転写層17を接着性よく樹脂成形体に転写するために形成される層である。この接着層16には、樹脂成形体の素材に適した感熱性又は感圧性の樹脂を適宜使用する。例えば、樹脂成形体の材質がアクリル系樹脂の場合は、アクリル系樹脂を用いることが好ましい。また、樹脂成形体の材質がポリフェニレンオキサイド・ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン系樹脂の場合は、これらの樹脂と親和性のあるアクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂などを使用することが好ましい。さらに、樹脂成形体の材質がポリプロピレン樹脂の場合は、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩素化エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、環化ゴム、クマロンインデン樹脂を使用することが好ましい。
【0042】
接着層16の形成方法としては、グラビアコート法、ロールコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷法がある。なお、絵柄層15が樹脂成形体に対して充分な接着性を有する場合には、接着層16を設けなくてもよい。
接着層16の厚さは、通常0.1〜5μm程度が好ましい。
【0043】
《帯電防止層19》
本発明の加飾シートは、帯電防止層19を設けることができる。帯電防止層19は、加飾シートへの異物の付着を防止するために好ましく設けられる層であり、基材フィルム11の離型層を設ける面とは反対側の面に設けられる。
帯電防止層に用いられる帯電防止剤としては、カルボン酸系、スルホン酸系、リン酸系などのアニオン性界面活性剤;第4級アンモニウム系などのカチオン系界面活性剤;アルキルベタイン系、アルキルイミダゾリン系、アルキルアラニン系などの両性界面活性剤;アルキレンオキサイド重合体、アルキレンオキサイド共重合体、脂肪族アルコール−アルキレンオキサイド付加物などのノニオン系界面活性剤;カーボンや、金、白金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、チタン、モリブデンなどの各種金属粉末などの無機導電性物質;ポリアセチレン、ポリピロール、ポリパラフェニレン、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリフェニレンビニレン、ポリビニルカルバゾール、あるいはアミノカルボン酸、ジカルボン酸及びポリエチレングリコールからなるポリエーテルエステルアミド樹脂などの導電性高分子などが好ましく挙げられる。
【0044】
帯電防止層は、上記した帯電防止剤と有機溶剤などからなる塗料を、グラビアコート法、ロールコート法などのコート法や、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷法により形成する。このようにして形成する帯電防止層の厚さは、通常0.1〜5μmであることが好ましい。帯電防止層の厚さが上記範囲内であれば、優れた帯電防止性能が効率よく得られる。
【0045】
《加飾シートの用途など》
本発明の加飾シートは、箔ばりや箔こぼれの発生を抑制しうること、あるいはハードコート層形成層が必要に応じて熱乾燥するだけタックフリーとなるため、耐ブロッキング性に優れ、同時に耐熱性も付与しうることから、製造効率に優れるものである。また、タックフリーとするために電離放射線の照射や高温の焼付けなどによる半硬化処理を行う必要がないため、優れた成形性や形状追従性を有するものとなる。さらに、成型転写後にハードコート層形成層を電離放射線を用いて硬化することにより、優れた高硬度性及び耐スクラッチ性が得られる。これらのことから、家庭用電化製品、自動車内装品などの分野や、パソコンの分野、とりわけパソコンの筐体など、幅広い分野において使用することができる。
【0046】
[加飾成形品の製造方法]
本発明の加飾成形品の製造方法は、工程(1)射出成型金型内に本発明の加飾シートを配する工程;工程(2)キャビティ内に溶融樹脂を射出し、冷却・固化して、樹脂成形体と加飾シートとを積層一体化させる射出工程;工程(3)樹脂成形体と加飾シートとが一体化した成形体を金型から取り出す工程;工程(4)成形体から加飾シートの基材フィルムを剥離する工程;及び工程(5)前記成形体上に設けられたハードコート層形成層を電離放射線を硬化させるハードコート層形成工程を有するものである。
【0047】
《工程(1)》
工程(1)は、本発明の加飾シートを成形金型内に配し、挟み込む工程である。具体的には、加飾シートを、可動型と固定型とからなる成形用金型内に転写層17を内側にして、つまり、基材フィルム11が固定型側となるように加飾シートを送り込む。この際、枚葉の加飾シートを1枚ずつ送り込んでもよいし、長尺の加飾シートの必要部分を間欠的に送り込んでもよい。
【0048】
加飾シートを成形金型内に配する際、(i)単に金型を加熱し、該金型に真空吸引して密着するように配する、あるいは(ii)転写層17側から熱盤を用いて加熱し軟化させて、加飾シートが金型内の形状に沿うように予備成型して、金型内面に密着させる型締を行って、配することができる。(ii)の時の加熱温度は、基材フィルム11のガラス転移温度近傍以上で、かつ、溶融温度(または融点)未満の範囲であることが好ましく、通常はガラス転移温度近傍の温度で行う。なお、上記のガラス転移温度近傍とは、ガラス転移温度±5℃程度の範囲であり、一般に70〜130℃程度である。また、(ii)の場合には、加飾シートを成形金型表面により密着させる目的で、加飾シートを熱盤で加熱し軟化させる際に、真空吸引することもできる。
【0049】
《工程(2)》
工程(2)は、キャビティ内に溶融樹脂を射出し、冷却・固化して、樹脂成形体と加飾シートとを積層一体化させる射出工程である。射出樹脂が熱可塑性樹脂の場合は、加熱溶融によって流動状態にして、また、射出樹脂が熱硬化性樹脂の場合は、未硬化の液状組成物を適宜加熱して流動状態で射出して、冷却して固化させる。これによって、加飾シートが、形成された樹脂成形体と一体化して貼り付き、加飾成形品となる。射出樹脂の加熱温度は、射出樹脂によるが、一般に180〜280℃程度である。
【0050】
(射出樹脂)
加飾成形品に用いられる射出樹脂としては、射出成形可能な熱可塑性樹脂あるいは、熱硬化性樹脂(2液硬化性樹脂を含む)であればよく、様々な樹脂を用いることができる。このような熱可塑性樹脂材料としては、例えばポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ABS樹脂(耐熱ABS樹脂を含む)、AS樹脂、AN樹脂、ポリフェニレンオキサイド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂などが挙げられる。また、熱硬化性樹脂としては、2液反応硬化型のポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は、単独でもよいし、二種以上混合して用いてもよい。
【0051】
《工程(3)及び工程(4)》
工程(3)は、加飾シートと樹脂成形体とが一体化した成形体を金型から取り出す工程であり、工程(4)は、該成形体から加飾シートの基材フィルムを剥離する工程である。基材フィルム11は、離型層12を有しているので、該離型層12とハードコート層形成層13との境界面で、基材フィルム11と離型層12、及び必要に応じて設けられる帯電防止層19を含む剥離層18を加飾成形品20から容易に剥離することができる。このようにして、樹脂成形体21の表面に、接着層16、絵柄層15、アンカー層14及びハードコート層形成層13が順に積層する成形品が得られる。
【0052】
《工程(5)》
工程(5)は、工程(4)で得られた成形品におけるハードコート層形成層13を硬化させて、ハードコート層を形成する工程である。工程(5)の硬化においては、ハードコート層形成層13の形成に電離放射線硬化性樹脂を用いる場合は、酸素濃度2%以下の雰囲気下で電離放射線を照射して行うことができ、電離放射線のうち電子線を照射する場合に行うことが好ましい。このように硬化を行うことで、加飾シートの形状追従性や成形性を維持しつつ、優れた高硬度性及び耐スクラッチ性が得られるという、相反する性能をさらに高い基準で達成することが可能となる。
【0053】
酸素濃度2%以下の雰囲気は、例えば窒素、アルゴン、水素など、好ましくは窒素を用いる、あるいは酸素濃度が2%以下程度となるように空気吸引を行うなどの方法により得ることができる。
【0054】
ハードコート層形成層13の硬化は、該ハードコート層形成層13の形成に熱可塑性樹脂あるいは熱硬化性樹脂を用いる場合は、これらの樹脂が硬化するのに十分な温度条件で処理すればよく、また電離放射線硬化性樹脂を用いる場合は、電子線及び紫外線などの電離放射線を照射して行うことができる。
電離放射線として電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いるポリマーやモノマーの種類、あるいはハードコート層形成層13の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70〜300kV程度が好ましい。照射線量は、通常5〜300kGy(0.5〜30Mrad)、好ましくは10〜50kGy(1〜5Mrad)の範囲で選定される。また、電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器を用いることができる。
電離放射線として紫外線を用いる場合には、波長190〜380nmの紫外線を含むものを放射し、その照射線量は500〜1500mJ程度である。紫外線源としては特に制限はなく、例えば高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ、カーボンアーク燈などが用いられる。
【0055】
このようにして得られた加飾成形品は、優れた高硬度性を有し、耐薬品性や耐汚染性などの表面物性にも優れるものである。また、より形状が複雑な成形品に対応しうる成形性が得られる本発明の加飾シートを使用することで、仕上がりにも優れた加飾成形品が得られる。
本発明の加飾成形品は、これらの優れた特性をいかして、家庭用電化製品、自動車内装品などの分野や、パソコンの分野、とりわけパソコンの筐体など、幅広い分野において好適に使用することができる。
【実施例】
【0056】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この例によってなんら限定されるものではない。なお、本発明における評価方法は、以下の方法にて行った。
1.試験サンプルの作製
基材フィルム(「S−10(品番)」,厚さ:38μm,東レ株式会社製,ポリエチレンテレフタレートフィルム,易接着層未処理)上に、各実施例及び比較例で用いる離型層形成用塗工液を塗工し、ドライヤー乾燥の後、180℃のオーブン内で20秒間加熱処理して0.9g/m2の離型層を形成した。次いで、各実施例及び比較例で用いたアクリル系ハードコート剤を塗工量5g/m2でグラビア印刷してハードコート層形成層を形成し、出力可変型UVランプシステム(「DRS−10/12QN(型番)」,フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社製)を用い、照射線量:25mJ/cm2の積算光量となるように、紫外線を照射して、該ハードコート層形成層のプレキュアを行い、試験サンプルを得た。
2.剥離強度の測定
試験サンプルについて、上記剥離強度の測定方法に従って、20℃及び80℃における剥離強度を測定した。ここで、剥離速度は、300mm/分程度とした。また、加飾シートについて、20℃の環境下、40℃の環境下、及び40℃90%RHの環境下で各々120時間放置した後の剥離強度を、上記の測定方法に従って測定した。また、このときの剥離速度も、300mm/分程度とした。
2.高硬度性の評価
試験サンプルを、各実施例及び比較例における硬化方法により硬化させた後、JIS K5600−5−4に準拠して、鉛筆引掻き塗膜硬さ試験機(「D−NP(型番)」,株式会社東洋精機製作所製)、及び鉛筆引掻き値試験用鉛筆(三菱鉛筆株式会社製)を用いて鉛筆硬度を測定した。
各硬度の鉛筆でインキ塗工層を引掻く試験を5回行い、3回以上傷跡が生じなかった鉛筆の硬度を、試験サンプルの鉛筆硬度とした。
【0057】
実施例1
(1)加飾シートの製造
基材フィルム(「S−10(品番)」,厚さ:38μm,東レ株式会社製,ポリエチレンテレフタレートフィルム,易接着層未処理)上に、下記の離型層形成用塗工液をグラビアリバースコートにより厚さ1μmとなるように塗工し、加熱硬化させて離型層を形成した。次いで、アクリル系ハードコート剤(アクリル樹脂性状:重量平均分子量:30万,ガラス転移温度:105℃,単官能・多官能アクリレート、アクリレート系プレポリマーの総含有量:5質量%以下)をグラビア印刷して2μmのハードコート層形成層を形成し、アクリル系印刷インキで木目模様をグラビア印刷して厚さ3μmの絵柄層を形成し、アクリル系塗工液を厚さ2μmで塗布して接着層を形成した。さらに、基材フィルムの離型層を設けた面とは反対側の面に、カチオン系界面活性剤を主成分とする塗工液(カチオン系界面活性剤:第四級アンモニウム塩)を塗工量1g/m2でグラビア印刷し、帯電防止層を形成し、実施例1の加飾シートを得た。該加飾シートについて、剥離強度の測定を行った。剥離強度の測定結果を第1表に示す。
【0058】
(離型層形成用塗工液)
下記の水系メラミン樹脂と希釈溶剤を攪拌機で攪拌した後、酸触媒を加え、さらに水系ポリエステル樹脂を加えて塗工液とした。
水系メラミン樹脂(メラミン・ホルムアルデヒドアルキルモノアルコール(炭素数1〜12)縮合物80質量%含有の水分散液:20質量%未満,メタノール:2質量%未満,ホルムアルデヒド:0.8%未満含有):100質量部
水系ポリエステル樹脂(「バイロナールMD1500(品番)」,東洋紡株式会社製,ディスパージョンタイプ,樹脂分のガラス転移温度(Tg):77℃,数平均分子量:8000,水酸基価:14KOHmg/g,酸価:3KOHmg/g以下):5質量部
酸触媒(有機アミン系酸触媒):3質量部
希釈溶剤(メタノールと水を2:1の割合で配合):200質量部
【0059】
(2)加飾成形品の製造
上記(1)で得られた加飾シートを、70℃に加熱した金型に吸引し、金型内面に密着させた。金型は、80mm角の大きさで、立ち上がり10mm、コーナー部が3Rのトレー状である深絞り度の高い形状のものを用いた。
一方、射出樹脂としてABS樹脂(「クラスチックMTH−2(品番)」,日本エイアンドエル株式会社製)を用いて、これを230℃にて溶融状態にしてから、キャビティ内に射出した。冷却して金型から取り出した後、基材フィルムを剥離して、樹脂成形品の表面に接着層、印刷層、アンカー層及びハードコート層形成層を順に有する成形品を得た。さらに、大気雰囲気下において、出力可変型UVランプシステム(「DRS−10/12QN(型番)」,フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社製)を用い、照射線量:1000mJで、該成形品に紫外線を照射して、ハードコート層形成層を硬化させて、ハードコート層とした実施例1の樹脂成形品を得た。
【0060】
3.箔ばりの評価
得られた樹脂成形品において、箔ばりの状態を目視で確認し、下記の基準で評価した。当該評価を第1表に示す。
○ :箔ばりは全く確認されなかった
△ :箔ばりが若干確認されたものの、実用上問題ない
× :著しい箔ばりが確認された
4.箔こぼれの評価
得られた加飾シートをスリット加工した際の、箔こぼれの状態を目視で確認し、下記の基準で評価した。当該評価を第1表に示す。
○ :箔ばりは全く確認されなかった
△ :箔ばりが若干確認されたものの、実用上問題ない
× :著しい箔ばりが確認された
5.外観(成形性)の評価
得られた樹脂成形品について、その外観(成形性)を下記の基準で評価した。当該評価を第1表に示す。
◎ :ハードコート層(及びその形成層)に塗装割れや白化が全く確認できず、良好に金型の形状に追従した
○ :ハードコート層(及びその形成層)に僅かな塗装割れや軽微な白化が確認された
△ :ハードコート層(及びその形成層)に若干の塗装割れや軽微な白化が確認されたが、実用上問題ない
× :ハードコート層(及びその形成層)に著しい塗装割れや白化が確認された
5.外観(耐熱性)の評価
また、得られた樹脂成形品について、ゲート部(樹脂射出部)周囲の外観(耐熱性)を下記の基準で評価した。当該評価を第1表に示す。
◎ :ハードコート層(及びその形成層)に流動による変形や白化が全く確認されなかった
○ :ハードコート層(及びその形成層)に僅かな流動による変形や軽微な白化が確認された
△ :ハードコート層(及びその形成層)に若干の流動による変形や軽微な白化が確認されたが、実用上問題ない
× :ハードコート層(及びその形成層)に著しい流動による変形や白化が確認された
【0061】
実施例2及び比較例1
実施例1において、離型層を形成する塗工液を第1表に示されるものとし、ハードコート層形成層を形成するハードコート剤を第1表に示されるものとした以外は、実施例1と同様にして加飾シート及び加飾成形品を得た。使用した加飾シートについて、上記の高硬度性の評価、剥離強度の測定及び箔こぼれの評価を行い、得られた加飾成形品について、上記の箔ばり及び外観の評価を行った。その結果を第1表に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
実施例で用いた加飾シートは、加飾成形品に優れた高硬度性、成形性を付与し、また箔こぼれの点での優れた性能を示し、これを用いた加飾成形品は箔ばり及び外観の評価の点で優れていることが確認された。一方、比較例で用いた加飾シートは、箔こぼれの点で不十分であり、これを用いて得られた加飾成形品は、箔ばりの点で優れたものとはならなかった。また、実施例で用いた加飾シートの剥離強度は、120時間の放置前後での変化はほとんどなく、安定した品質を保つことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明によれば、箔ばりや箔こぼれの発生を抑制し、優れた製造効率で加飾成形品を製造することを可能とし、かつ良好な高硬度性と優れた転写性及びより形状が複雑な成形品を得られる成形性とを付与する加飾シート、該加飾シートを用いた加飾成形品を提供することができる。よって、本発明は、家庭用電化製品、自動車内装品、自動車外装、携帯電話分野などの分野や、パソコンの分野、とりわけパソコンの筐体などの、幅広い分野において有効である。
【符号の説明】
【0065】
10 加飾シート
11 基材フィルム
12 離型層
13 ハードコート層形成層
14 アンカー層
15 絵柄層
16 接着層
17 転写層
18 剥離層
19 帯電防止層
20 加飾成形体
21 樹脂成形体
22 ハードコート層
【技術分野】
【0001】
本発明は、加飾シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、三次元曲面などの複雑な表面形状を有する樹脂成形体の加飾には、射出成形同時加飾方法が用いられる。射出成形同時加飾方法とは、射出成形の際に金型内に挿入された加飾シートをキャビティ内に射出注入された溶融した射出樹脂と一体化させて、樹脂成形体表面に加飾を施す方法であって、樹脂成形体と一体化される加飾シートの構成の違いによって、一般に射出成形同時ラミネート加飾法と射出成形同時転写加飾法に大別される。
射出成形同時転写加飾法においては、射出成形同時転写加飾用の加飾シートの転写層側を金型内に向けて転写層側から熱盤によって加熱し、該加飾シートが金型内形状に沿うように成形して金型内面に密着させて型締した後、キャビティ内に溶融した射出樹脂を射出して該加飾シートと射出樹脂とを一体化し、次いで加飾成形品を冷却して金型から取り出した後、基材フィルムを剥離することにより転写層を転写した加飾成形品を得ることができる。
【0003】
このようにして得られる加飾成形品は、従来用いられている家庭用電化製品、自動車内装品などの分野に加えて、例えば近年パソコン市場の拡大に伴う、日常携帯できるモバイルパソコンを含めたノート型のパソコンの分野での使用や、自動車外装、携帯電話分野での使用も注目されている。これらの分野においては、加飾シートに対して、加飾成形品に良好な高硬度性などの表面特性を付与しうると同時に、形状が複雑な成形品を得られる成形性が求められる。
【0004】
ところで、射出成形同時転写加飾法においては、加飾成形品を冷却して金型から取り出した後、基材フィルムを剥離する際に、被加飾体の端部あるいは表面に凹部や貫通孔などがあると、これらの箇所には加飾したくない場合でも転写層が残ってしまう、いわゆる箔ばりや、加飾シートをスリット加工する際に、スリット部付近の転写層の一部が加飾シートから剥離し脱落してしまう、いわゆる箔こぼれが生じることがある。箔ばりが生じると、これを除去作業に時間と手間がかかり作業効率が悪化し、また、除去作業の際に転写されるべき部分が剥離してしまい、結果として加飾成形品の外観不良の原因となってしまう。また、箔こぼれが生じると、脱落した転写層の一部が転写層の表面や加飾シートに付着し、転写不良や加飾成形品の外観不良の原因となってしまう。さらに、脱落した転写層が、加飾シートと金型との間に挟まることで、該加飾シートを通じて、その部分の加飾成形品の表面に凹みが発生する成形不良を起こす原因となる場合があった。
【0005】
そのため、箔ばりや箔こぼれといった現象を防止することが課題となっている。例えば、箔こぼれを防止する方法として、基材シートの上にスリット部をはずして離型層を設ける方法がある(例えば、特許文献1参照)。この方法により箔こぼれの問題は解消されるものの、成形品ごとに個別の離型層を作製する必要が生じるため、作業効率が悪くなる場合があった。また、箔ばりや箔こぼれへの対応として、各種構成を有する加飾シートが検討されている(例えば、特許文献2〜6)。しかし、特許文献2及び3に開示されるものでは、箔こぼれ防止層を追加的に設ける必要があるため、印刷工程や製造工程の増加につながり、製造効率が悪化し、コストアップの要因となってしまう。特許文献4に開示されるものは、転写層を構成する各層をストライプ上に設ける必要があるため、高硬度性を付与するために加飾成形品の最表面層を厚くすることが困難であり、特許文献5に開示されるものも、加飾成形品の最表面層を厚くすることが困難であることから、転写層の高硬度性などの物性の点で課題がある。また、特許文献6に開示されるものでは、予め易接着処理された機材シートを用いて、スリット部を除いて印刷塗工して離型層を形成するため、製造効率が悪化し、コストアップの要因となってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3953867号公報
【特許文献2】実開平6−65258号公報
【特許文献3】実開平6−65259号公報
【特許文献4】実開平4−45799号公報
【特許文献5】特開平6−183124号公報
【特許文献6】特開平11−58584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような状況下で、箔ばりや箔こぼれの発生を抑制し、優れた製造効率で加飾成形品を製造することを可能とし、かつ良好な高硬度性と優れた転写性及びより形状が複雑な成形品を得られる成形性とを付与する加飾シート、該加飾シートを用いた加飾成形品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記課題を達成するために鋭意研究を重ねた結果、下記の発明により当該課題を解決できることを見出した。すなわち本発明は、以下の加飾シート、これを用いた加飾成形品の製造方法、ならびに該製造方法により得られる加飾成形品を提供するものである。
【0009】
1.基材フィルムの片面に少なくとも離型層とハードコート層形成層とを順に有する加飾シートであって、該離型層が親水性樹脂を含む塗工液で形成されてなり、該離型層と該ハードコート層形成層との20℃における剥離強度が0.06〜0.4N/18mmであり、80℃における剥離強度が0.06〜0.5N/18mmである加飾シート。
2.下記の工程(1)〜工程(5)を有する加飾成形品の製造方法。
工程(1)射出成型金型内に上記1に記載の加飾シートを配する工程
工程(2)キャビティ内に溶融樹脂を射出し、冷却・固化して、樹脂成形体と加飾シートとを積層一体化させる射出工程
工程(3)樹脂成形体と加飾シートとが一体化した成形体を金型から取り出す工程
工程(4)成形体から加飾シートの基材フィルムを剥離する工程
工程(5)前記成形体上に設けられたハードコート層形成層を硬化させるハードコート層形成工程
3.上記2に記載の製造方法により得られる加飾成形品。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、箔ばりや箔こぼれの発生を抑制し、優れた製造効率で加飾成形品を製造することを可能とし、かつ良好な高硬度性と優れた転写性及びより形状が複雑な成形品を得られる成形性とを付与する加飾シート、該加飾シートを用いた加飾成形品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の加飾シートの断面を示す模式図である。
【図2】本発明の加飾成形品の断面を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[加飾シート]
本発明の加飾シートは、基材フィルムの片面に少なくとも離型層とハードコート層形成層とを順に有する加飾シートであって、該離型層が親水性樹脂を含む塗工液で形成されてなり、該離型層と該ハードコート層形成層との20℃における剥離強度が0.06〜0.4N/18mmであり、80℃における剥離強度が0.06〜0.5N/18mmである。以下、本発明の加飾シートを、図1及び図2を参照しながら説明する。図1は、本発明の加飾シートの好ましい一態様についての断面を示す模式図である。図2は、本発明の加飾成形品の好ましい一態様についての断面を示す模式図である。
図1に示される本発明の加飾シート10は、ポリエステルフィルムからなる基材フィルム11の一方の表面に、離型層12、ハードコート層形成層13、アンカー層14、絵柄層15及び接着層16を順に積層してなり、基材フィルム11の他方の面(離型層11を設けた面とは反対側の面)に帯電防止層19を積層してなるものである。また、図2に示される本発明の加飾成形品20は、樹脂成形体21の表面に、接着層16、絵柄層15、アンカー層14及びハードコート層形成層13が硬化してなるハードコート層22が順に積層したものである。
【0013】
《基材フィルム》
基材フィルム11としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体などのビニル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂;ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチルなどのアクリル系樹脂;ポリスチレン等のスチレン系樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、三酢酸セルロース、セロファン、ポリカーボネート、ポリウレタン系などのエラストマー系樹脂などによるものが利用される。これらのうち、成形性及び剥離性が良好である点から、ポリエステル系樹脂、特にポリエチレンテレフタレート(以下「PET」という。)が好ましい。
基材フィルム11の厚さとしては、成形性や形状追従性、取り扱いが容易であるとの観点から、25〜150μmの範囲が好ましく、さらに50〜100μmの範囲がより好ましい。
【0014】
《離型層12》
離型層12は、好ましくはハードコート層形成層13、アンカー層14、絵柄層15及び接着層16が順に積層してなる転写層17が基材シート11からの剥離を容易に行われるために設けられる層であり、スリット部分を含む全面に設けられる層である。該離型層12を有することで、本発明の加飾シートから転写層17を確実に、かつ容易に被転写体へ転写させ、基材フィルム11、離型層12、及び必要に応じて設けられる帯電防止層19からなる剥離層18を確実に剥離することができる。
【0015】
離型層12は、箔ばりや箔こぼれの発生を抑制する観点から、親水性を有する樹脂により形成されることが好ましい。親水性樹脂は、分子内に水酸基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基、スルホン酸基及び/又はエーテル基を有する水溶性又は水分散性の親水性樹脂であることが好ましい。例えば、水系メラミン樹脂、水系ポリエステル樹脂、水系ポリエステルウレタン樹脂などのほか、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロース、キトサン、ポリエチレンオキサイド、水溶性ナイロン、これらの重合体を形成するモノマーの共重合体、2−メトキシポリエチレングリコールメタクリレート/アクリル酸2−ヒドロキシルエチル共重合体等のポリオキシエチレン鎖を有するアクリル系重合体などが好ましい。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明においては、後述するハードコート層形成層との組み合わせにより良好な離型性(剥離強度)が得られる観点から、水系メラミン樹脂、水系ポリエステル樹脂が好ましく、基材フィルム上に均一に塗工できるレベリング性を向上させる観点から、これらを組み合わせて用いることが特に好ましい。水系メラミン樹脂と水系ポリエステル樹脂とを併用して用いる場合、その配合比(質量比)は、基材フィルム上に均一に塗工できるレベリング性を向上させる観点から、2/1〜50/1が好ましく、5/1〜15/1がより好ましい。
【0016】
親水性樹脂として水系ポリエステル樹脂を用いる場合、該ポリエステル樹脂の数平均分子量Mnは、5000〜50000が好ましく、5000〜30000がより好ましく、5000〜10000がさらに好ましい。数平均分子量が上記範囲内であると、良好な剥離強度が得られる。なお、上記数平均分子量Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)による標準ポリスチレン換算の値である。
水系ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、−25〜90℃が好ましく、0〜90℃がより好ましく、60〜80℃がさらに好ましい。ガラス転移温度が上記範囲内であると、良好な剥離強度が得られる。ここで、ガラス転移温度(Tg)は、DSC装置を用い、昇温速度8℃/minの条件で測定した値である。
また、当該ポリエステルポリオール系樹脂においては、接着性能の観点から、重量平均分子量Mwが25000以上であることが好ましい。さらに水酸基価は、好ましくは1〜25mgKOH/g、より好ましくは3〜20mgKOH/gであり、酸価は、好ましくは5mgKOH/g以下、より好ましくは3mgKOH/g以下である。水酸基価及び酸価が上記範囲内であると、良好な剥離強度が得られる。
【0017】
上記の親水性樹脂は、その使用形態として、水分散液として用いることが好ましい。水分散液として用いる場合には、水中に分散させたディスパージョン、あるいはエマルションの状態で用いることができ、より粒子径が小さいディスパージョンの状態であることが好ましい。水分散液中の親水性樹脂の平均粒径は0.001〜0.1μm程度であることが好ましく、0.001〜0.05μmであることがより好ましい。
【0018】
水系メラミン樹脂を用いる場合、該樹脂の硬化を促進するため、酸触媒を使用することが好ましい。上記酸触媒としては特に限定されず、例えば、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸などが好ましく挙げられる。この酸触媒は、水系メラミン樹脂だけでなく、水系ポリエステル樹脂や水系ポリエステルウレタン樹脂とも反応しゲル化を生じる場合があるので、水系メラミン樹脂と水系ポリエステル樹脂あるいは水系ポリエステルウレタン樹脂とを併用する場合には、これらの樹脂を混和した後に、酸触媒を添加することが好ましい。また、ゲル化防止の観点から、水系メラミン樹脂に酸触媒を添加し混和した後に、水系ポリエステル樹脂あるいは水系ポリエステルウレタン樹脂を混和させてもよい。
【0019】
離型層12の離型性を向上させるため、フッ素樹脂系離型剤、シリコーン樹脂系離型剤のほか、ワックスなどの公知の離型剤を用いることもできる。また、シリカ(コロイダルシリカ、ヒュームドシリカ、沈降性シリカなど)、アルミナ、ジルコニア、チタニア、酸化亜鉛などの無機粒子を、5〜40質量%の範囲で添加し、マット感のある離型層を形成することもできる。さらに、例えばアクリル樹脂などのビニル系樹脂やセルロース系樹脂などを主成分とするインキ中に、上記の親水性樹脂や離型剤を添加したものを用いて離型層12を形成してもよい。
【0020】
離型層12の形成は、上記のような親水性樹脂などに必要な添加剤を加えたものを適当な溶剤に溶解または分散して調製したインキを、基材シート11上に公知の手段により塗布・乾燥させて行うことができ、厚みは0.01〜5μm程度が好ましく、0.1〜2μmがより好ましい。
離型層12の形成における塗工法としては、ワイヤーバーコート法、ドクターブレード法、マイクログラビアコート法、グラビアロールコート法、リバースロールコート法、エアーナイフコート法、ロツドコート法、ダイコート法、キスコート法、リバースキスコート法、含浸法、カーテンコート法、スプレーコート法、ディップコート法などの方法を単独または組合せて適用することができる。
【0021】
《ハードコート層形成層13》
ハードコート層形成層13は、硬化することにより加飾成形品20におけるハードコート層22を形成する層である。該ハードコート層22は、加飾成形品の最外層となり、摩耗や光、薬品などから成形品や絵柄層を保護するための層である。よって、ハードコート層形成層13は、硬化することで、優れた高硬度性と耐スクラッチ性はもちろんのこと、耐薬品性や耐汚染性などの表面物性に優れるという性能を有する層であることを要する。
【0022】
ハードコート層形成層13に用いる樹脂としては、前記性能を考慮しつつ、用途に応じて要求されるその他の機能を果たすことのできる物性を有する樹脂を、適宜選択すればよい。このような樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂や、熱硬化性樹脂及び電離放射線硬化性樹脂などの硬化性樹脂が挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、アクリル樹脂、セルロース系樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂、或いは、酢酸ビニル樹脂などのビニル重合体などを使用することができる。また、熱硬化性樹脂としては、メラミン樹脂、2液硬化型ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などを使用することができる。また、上記電離放射線硬化性樹脂としては、アクリレート系や、エポキシ系などの電離放射線硬化性樹脂を使用することができる。
ハードコート層としてより優れた性能が必要な場合には、熱可塑性樹脂よりは硬化性樹脂を、さらに硬化性樹脂においては電離放射線硬化性樹脂を使用することが好ましい。そして、これらの各種樹脂のなかでも、熱硬化性樹脂や電離放射線硬化性樹脂などの硬化性樹脂は、従来から箔こぼれが生じやすいことが知られているが、本発明によりその防止を図ることができるという効果の点で、本発明においては好適である。
【0023】
(電離放射線硬化性樹脂)
ハードコート層形成層13の形成に用いられる電離放射線硬化性樹脂は、紫外線や電子線等の電離放射線によって硬化可能な樹脂組成物であり、具体的には、分子中にラジカル重合性不飽和結合、又はカチオン重合性官能基を有する、プレポリマー(所謂オリゴマーも包含する)及び/又はモノマーを適宜混合した樹脂組成物が好ましくは用いられる。これらプレポリマー又はモノマーは、単体又は複数種を混合して用いる。
【0024】
上記プレポリマー又はモノマーは、具体的には、分子中に(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等のラジカル重合性不飽和基、エポキシ基等のカチオン重合性官能基等を有する化合物からなる。また、ポリエンとポリチオールとの組み合わせによるポリエン/チオール系のプレポリマーも用いられる。
【0025】
ラジカル重合性不飽和基を有するプレポリマーの例としては、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等が使用できる。分子量としては、通常250〜100,000程度のものが用いられる。
また、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、これと共重合可能な、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルなどの官能基含有(メタ)アクリル系化合物、あるいは(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のカルボン酸とを共重合してなるアクリル(メタ)アクリレートプレポリマーも、ラジカル重合性不飽和基を有するプレポリマーとして挙げられる。
【0026】
ラジカル重合性不飽和基を有するモノマーの例としては、単官能モノマーとして、メチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等がある。また、多官能モノマーとして、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等もある。
【0027】
カチオン重合性官能基を有するプレポリマーの例としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ化合物等のエポキシ系樹脂、脂肪酸系ビニルエーテル、芳香族系ビニルエーテル等のビニルエーテル系樹脂のプレポリマーがある。
上記のポリチオールとしては、トリメチロールプロパントリチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラチオグリコレート等のポリチオールがある。また、上記のポリエンとしては、ジオールとジイソシアネートによるポリウレタンの両端にアリルアルコールを付加したもの等がある。
【0028】
紫外線又は可視光線にて硬化させる場合には、上記電離放射線硬化性樹脂に、さらに光重合開始剤を添加する。ラジカル重合性不飽和基を有する樹脂系の場合は、光重合開始剤として、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル類を単独又は混合して用いることができる。また、カチオン重合性官能基を有する樹脂系の場合は、光重合開始剤として、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル等を単独又は混合物として用いることができる。なお、これらの光重合開始剤の添加量としては、電離放射線硬化性樹脂100質量部に対して、0.1〜10質量部程度である。
【0029】
(樹脂組成物)
本発明において、ハードコート層形成層13は、通常上記熱可塑性樹脂や、熱硬化性樹脂及び電離放射線硬化性樹脂などの樹脂、その他の添加剤などを含む樹脂組成物により形成される。
また、樹脂として電離放射線硬化性樹脂を採用する場合、添加剤としてシリコーンも好ましく挙げられる。シリコーンとしては、シリコーンオイルや反応性シリコーンが例示でき、反応性シリコーンとしては、電離放射線で硬化時に電離放射線硬化性樹脂と反応し結合して一体化したり、1部は残留するものもある。該反応性シリコーンとしてはアクリル変性、メタクリル変性、又はエポキシ変性などで変性した反応性シリコーンなどがある。シリコーンを含有させる質量基準での割合としては電離放射線硬化性樹脂組成物100質量部に対して、0.1〜10質量部程度、好ましくは0.3〜5質量部である。この範囲未満では表面が汚染しやすく、また、この範囲を超えてはアンカー層への接着層の密着性が低くなってしまう。
【0030】
樹脂組成物中にはフィラーも好ましく添加される。フィラーとしては、マイクロシリカやポリエチレンワックスが例示できる。ポリエチレンワックスとしては、ポリエチレン系樹脂の粒子やビーズが挙げられるが、好ましくは球状ビーズである。ただし、ポリエチレンワックスを添加すると、箔切れが低下するため、その添加量は、樹脂100質量部に対して、0.01〜10質量部程度が好ましく、より好ましくは0.1〜5質量部である。
また、樹脂組成物中には、シリカ(コロイダルシリカ、ヒュームドシリカ、沈降性シリカなど)、アルミナ、ジルコニア、チタニア、酸化亜鉛などの無機粒子や、その表面にビニル基、(メタ)アクリロイル基、及びアリル基といったエチレン性不飽和結合や、エポキシ基、シラノール基などの反応性官能基を有する反応性無機粒子も好ましく添加される。高硬度性が得られる観点からは、反応性無機粒子の添加が好ましい。
【0031】
〈その他の添加剤〉
前記樹脂組成物中には、更に必要に応じて適宜、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、セルロース系樹脂等の熱可塑性樹脂、多官能イソシアネート化合物、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、光安定剤、重合禁止剤、架橋剤、帯電防止剤、酸化防止剤、レベリング剤、チキソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、熱ラジカル発生剤、アルミキレート剤などといった他の公知の添加剤を添加することもできる。
【0032】
〈ハードコート層形成層13の形成〉
ハードコート層形成層13は、本発明で用いられる樹脂組成物をグラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法、ダイコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などにより塗工することで、形成することができる。
ハードコート層形成層13の厚さは、0.1〜20μmの範囲が好ましく、より好ましくは1〜10μmである。厚さが上記範囲内であると、優れた高硬度性と耐スクラッチ性はもちろんのこと、耐薬品性や耐汚染性などの表面物性が得られると同時に、優れた成形性や形状追従性を得ることができる。また、材料費の点でも有利である。
【0033】
《離型層12とハードコート層形成層13との剥離強度》
本発明の加飾シートは、離型層12とハードコート層形成層13との20℃における剥離強度が0.06〜0.4N/18mmであり、80℃における剥離強度が0.06〜0.5N/18mmであることを要する。
20℃及び80℃における剥離強度が下限値の0.06N/18mm未満であると、剥離強度が小さすぎて、箔ばりや箔こぼれが生じるため、これらの除去作業に時間と手間がかかり作業効率が悪化し、また加飾成形品の外観不良を招いてしまう。一方、20℃及び80℃における剥離強度が上限値の0.4あるいは0.5N/18mmよりも大きいと、剥離強度が大きすぎて、転写不良による加飾成形品の外観不良を招いてしまう。このような観点から、離型層12とハードコート層形成層13との20℃における剥離強度は、0.1〜0.3N/18mmが好ましく、0.14〜0.25N/18mmがより好ましい。また、80℃における剥離強度は、0.07〜0.5N/18mmが好ましく、0.07〜0.4N/18mmがより好ましい。
【0034】
また、本発明の加飾シートは、剥離強度の経時変化が少ないという特徴を有する。より具体的には、本発明の加飾シートは、作製してから120時間放置した後においても、放置した環境に影響されることなく、剥離強度が作製直後の数値から低下しにくいという特徴を有する。この特徴は、離型層が親水性を有する樹脂により形成される場合、特に親水性を有する樹脂として水系メラミン樹脂と水系ポリエステルウレタン樹脂とを併用した場合に顕著に現れる。
【0035】
本発明における剥離強度は、以下のようにして測定した値である。まず、幅50mm、長さ150mmの両面テープを、該テープと同じサイズにした加飾シートの基材フィルムの離型層が設ける面とは反対側の面(帯電防止層が設けられている場合は帯電防止層面)に貼り付け、平らな台に固定した。次に、固定した加飾シートの転写層17面に幅18mm、長さ100mmのセロファンテープ(ニチバン(株)製のセロファン粘着テープ、「セロテープ(登録商標)」)を密着させ、密着させたセロファンテープに沿ってカッターで切り込みを入れた。次に、密着させたセロテープ(登録商標)ごと転写層17を剥離層18から剥離させて、転写層17を10mmほど浮かせ、その先端に引っ掛け治具を貼り付けた。所定の温度(20℃又は80℃)下において3分間放置した後、該引っ掛け治具にテンションゲージ(荷重測定用)のフックをひっかけ、該テンションゲージを転写層17と剥離層18との剥離角度が常に90°となるように、剥離速度を100〜500mm/秒の範囲で、ゆっくりと引き上げて、該テンションゲージの示す荷重を剥離強度(N/18mm)とした。
【0036】
上記のようにしてテンションゲージを引き上げると、テンションゲージの示す荷重は振れるため、得られる剥離強度は一定の振れ幅を有する値となる。本発明において、該振れ幅の全範囲は、本発明で規定する剥離強度の範囲内に含まれることを要する。すなわち、該振れ幅の全範囲が本発明で規定する剥離強度の範囲内に含まれている加飾シートが、本発明の加飾シートに該当する。一方、該振れ幅の範囲の一部でも、本発明で規定する剥離強度の範囲外となる場合、そのような剥離強度を有する加飾シートは本発明の加飾シートには含まれない。
【0037】
本発明において、離型層12とハードコート層形成層13との剥離強度は、ポリエステル樹脂量の増減により調節できる。さらに、剥離層12を形成する材料、例えば親水性樹脂の種類や、これに添加するフッ素樹脂系離型剤、シリコーン樹脂系離型剤や、ワックスなどの離型剤、あるいは無機粒子などにより調節することができる。なお、例えば離型層12の形成に無機粒子を用いた場合には、離型層12がマット感を有するため、ハードコート層が落ち着いたマット感を有する意匠とすることができる。
【0038】
《アンカー層14》
アンカー層14は、ハードコート層形成層13と接着層16、あるいは絵柄層15がある場合は絵柄層15との密着性を向上させるために、所望により設けられる層である。
アンカー層14は、2液性硬化ウレタン樹脂、熱硬化ウレタン樹脂、メラミン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、塩素含有ゴム系樹脂、塩素含有ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ビニル系共重合体樹脂などを使用し、例えば上記のように形成したハードコート層形成層13の上に、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などにより塗工して形成することができる。
アンカー層14の厚さは、通常0.1〜5μm程度であり、好ましくは1〜5μm程度である。
【0039】
《絵柄層15》
絵柄層15は、加飾成形品に所望の意匠性を付与するための層であり、所望により設けられる層である。絵柄層15の絵柄は任意であるが、例えば、木目、石目、布目、砂目、幾何学模様、文字などからなる絵柄を挙げることができる。また、絵柄層15は、上記絵柄を表現する柄パターン層及び全面ベタ層を単独で又は組み合わせて設けることができ、全面ベタ層は、通常、隠蔽層、着色層、着色隠蔽層などとして用いられる。
【0040】
絵柄層15は、通常は、上記のように形成したハードコート層形成層13の上、あるいはアンカー層14の上に、ポリビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、セルロース系樹脂などの樹脂をバインダーとし、適当な色の顔料又は染料を着色剤として含有する印刷インキによる印刷を行うことで形成する。印刷方法としては、グラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、転写シートからの転写印刷、昇華転写印刷、インクジェット印刷などの公知の印刷法が挙げられる。
絵柄層15の厚みは、意匠性の観点から5〜40μmが好ましく、5〜30μmがより好ましい。
【0041】
《接着層16》
接着層16は、転写層17を接着性よく樹脂成形体に転写するために形成される層である。この接着層16には、樹脂成形体の素材に適した感熱性又は感圧性の樹脂を適宜使用する。例えば、樹脂成形体の材質がアクリル系樹脂の場合は、アクリル系樹脂を用いることが好ましい。また、樹脂成形体の材質がポリフェニレンオキサイド・ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン系樹脂の場合は、これらの樹脂と親和性のあるアクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂などを使用することが好ましい。さらに、樹脂成形体の材質がポリプロピレン樹脂の場合は、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩素化エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、環化ゴム、クマロンインデン樹脂を使用することが好ましい。
【0042】
接着層16の形成方法としては、グラビアコート法、ロールコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷法がある。なお、絵柄層15が樹脂成形体に対して充分な接着性を有する場合には、接着層16を設けなくてもよい。
接着層16の厚さは、通常0.1〜5μm程度が好ましい。
【0043】
《帯電防止層19》
本発明の加飾シートは、帯電防止層19を設けることができる。帯電防止層19は、加飾シートへの異物の付着を防止するために好ましく設けられる層であり、基材フィルム11の離型層を設ける面とは反対側の面に設けられる。
帯電防止層に用いられる帯電防止剤としては、カルボン酸系、スルホン酸系、リン酸系などのアニオン性界面活性剤;第4級アンモニウム系などのカチオン系界面活性剤;アルキルベタイン系、アルキルイミダゾリン系、アルキルアラニン系などの両性界面活性剤;アルキレンオキサイド重合体、アルキレンオキサイド共重合体、脂肪族アルコール−アルキレンオキサイド付加物などのノニオン系界面活性剤;カーボンや、金、白金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、チタン、モリブデンなどの各種金属粉末などの無機導電性物質;ポリアセチレン、ポリピロール、ポリパラフェニレン、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリフェニレンビニレン、ポリビニルカルバゾール、あるいはアミノカルボン酸、ジカルボン酸及びポリエチレングリコールからなるポリエーテルエステルアミド樹脂などの導電性高分子などが好ましく挙げられる。
【0044】
帯電防止層は、上記した帯電防止剤と有機溶剤などからなる塗料を、グラビアコート法、ロールコート法などのコート法や、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷法により形成する。このようにして形成する帯電防止層の厚さは、通常0.1〜5μmであることが好ましい。帯電防止層の厚さが上記範囲内であれば、優れた帯電防止性能が効率よく得られる。
【0045】
《加飾シートの用途など》
本発明の加飾シートは、箔ばりや箔こぼれの発生を抑制しうること、あるいはハードコート層形成層が必要に応じて熱乾燥するだけタックフリーとなるため、耐ブロッキング性に優れ、同時に耐熱性も付与しうることから、製造効率に優れるものである。また、タックフリーとするために電離放射線の照射や高温の焼付けなどによる半硬化処理を行う必要がないため、優れた成形性や形状追従性を有するものとなる。さらに、成型転写後にハードコート層形成層を電離放射線を用いて硬化することにより、優れた高硬度性及び耐スクラッチ性が得られる。これらのことから、家庭用電化製品、自動車内装品などの分野や、パソコンの分野、とりわけパソコンの筐体など、幅広い分野において使用することができる。
【0046】
[加飾成形品の製造方法]
本発明の加飾成形品の製造方法は、工程(1)射出成型金型内に本発明の加飾シートを配する工程;工程(2)キャビティ内に溶融樹脂を射出し、冷却・固化して、樹脂成形体と加飾シートとを積層一体化させる射出工程;工程(3)樹脂成形体と加飾シートとが一体化した成形体を金型から取り出す工程;工程(4)成形体から加飾シートの基材フィルムを剥離する工程;及び工程(5)前記成形体上に設けられたハードコート層形成層を電離放射線を硬化させるハードコート層形成工程を有するものである。
【0047】
《工程(1)》
工程(1)は、本発明の加飾シートを成形金型内に配し、挟み込む工程である。具体的には、加飾シートを、可動型と固定型とからなる成形用金型内に転写層17を内側にして、つまり、基材フィルム11が固定型側となるように加飾シートを送り込む。この際、枚葉の加飾シートを1枚ずつ送り込んでもよいし、長尺の加飾シートの必要部分を間欠的に送り込んでもよい。
【0048】
加飾シートを成形金型内に配する際、(i)単に金型を加熱し、該金型に真空吸引して密着するように配する、あるいは(ii)転写層17側から熱盤を用いて加熱し軟化させて、加飾シートが金型内の形状に沿うように予備成型して、金型内面に密着させる型締を行って、配することができる。(ii)の時の加熱温度は、基材フィルム11のガラス転移温度近傍以上で、かつ、溶融温度(または融点)未満の範囲であることが好ましく、通常はガラス転移温度近傍の温度で行う。なお、上記のガラス転移温度近傍とは、ガラス転移温度±5℃程度の範囲であり、一般に70〜130℃程度である。また、(ii)の場合には、加飾シートを成形金型表面により密着させる目的で、加飾シートを熱盤で加熱し軟化させる際に、真空吸引することもできる。
【0049】
《工程(2)》
工程(2)は、キャビティ内に溶融樹脂を射出し、冷却・固化して、樹脂成形体と加飾シートとを積層一体化させる射出工程である。射出樹脂が熱可塑性樹脂の場合は、加熱溶融によって流動状態にして、また、射出樹脂が熱硬化性樹脂の場合は、未硬化の液状組成物を適宜加熱して流動状態で射出して、冷却して固化させる。これによって、加飾シートが、形成された樹脂成形体と一体化して貼り付き、加飾成形品となる。射出樹脂の加熱温度は、射出樹脂によるが、一般に180〜280℃程度である。
【0050】
(射出樹脂)
加飾成形品に用いられる射出樹脂としては、射出成形可能な熱可塑性樹脂あるいは、熱硬化性樹脂(2液硬化性樹脂を含む)であればよく、様々な樹脂を用いることができる。このような熱可塑性樹脂材料としては、例えばポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ABS樹脂(耐熱ABS樹脂を含む)、AS樹脂、AN樹脂、ポリフェニレンオキサイド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂などが挙げられる。また、熱硬化性樹脂としては、2液反応硬化型のポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は、単独でもよいし、二種以上混合して用いてもよい。
【0051】
《工程(3)及び工程(4)》
工程(3)は、加飾シートと樹脂成形体とが一体化した成形体を金型から取り出す工程であり、工程(4)は、該成形体から加飾シートの基材フィルムを剥離する工程である。基材フィルム11は、離型層12を有しているので、該離型層12とハードコート層形成層13との境界面で、基材フィルム11と離型層12、及び必要に応じて設けられる帯電防止層19を含む剥離層18を加飾成形品20から容易に剥離することができる。このようにして、樹脂成形体21の表面に、接着層16、絵柄層15、アンカー層14及びハードコート層形成層13が順に積層する成形品が得られる。
【0052】
《工程(5)》
工程(5)は、工程(4)で得られた成形品におけるハードコート層形成層13を硬化させて、ハードコート層を形成する工程である。工程(5)の硬化においては、ハードコート層形成層13の形成に電離放射線硬化性樹脂を用いる場合は、酸素濃度2%以下の雰囲気下で電離放射線を照射して行うことができ、電離放射線のうち電子線を照射する場合に行うことが好ましい。このように硬化を行うことで、加飾シートの形状追従性や成形性を維持しつつ、優れた高硬度性及び耐スクラッチ性が得られるという、相反する性能をさらに高い基準で達成することが可能となる。
【0053】
酸素濃度2%以下の雰囲気は、例えば窒素、アルゴン、水素など、好ましくは窒素を用いる、あるいは酸素濃度が2%以下程度となるように空気吸引を行うなどの方法により得ることができる。
【0054】
ハードコート層形成層13の硬化は、該ハードコート層形成層13の形成に熱可塑性樹脂あるいは熱硬化性樹脂を用いる場合は、これらの樹脂が硬化するのに十分な温度条件で処理すればよく、また電離放射線硬化性樹脂を用いる場合は、電子線及び紫外線などの電離放射線を照射して行うことができる。
電離放射線として電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いるポリマーやモノマーの種類、あるいはハードコート層形成層13の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70〜300kV程度が好ましい。照射線量は、通常5〜300kGy(0.5〜30Mrad)、好ましくは10〜50kGy(1〜5Mrad)の範囲で選定される。また、電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器を用いることができる。
電離放射線として紫外線を用いる場合には、波長190〜380nmの紫外線を含むものを放射し、その照射線量は500〜1500mJ程度である。紫外線源としては特に制限はなく、例えば高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ、カーボンアーク燈などが用いられる。
【0055】
このようにして得られた加飾成形品は、優れた高硬度性を有し、耐薬品性や耐汚染性などの表面物性にも優れるものである。また、より形状が複雑な成形品に対応しうる成形性が得られる本発明の加飾シートを使用することで、仕上がりにも優れた加飾成形品が得られる。
本発明の加飾成形品は、これらの優れた特性をいかして、家庭用電化製品、自動車内装品などの分野や、パソコンの分野、とりわけパソコンの筐体など、幅広い分野において好適に使用することができる。
【実施例】
【0056】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この例によってなんら限定されるものではない。なお、本発明における評価方法は、以下の方法にて行った。
1.試験サンプルの作製
基材フィルム(「S−10(品番)」,厚さ:38μm,東レ株式会社製,ポリエチレンテレフタレートフィルム,易接着層未処理)上に、各実施例及び比較例で用いる離型層形成用塗工液を塗工し、ドライヤー乾燥の後、180℃のオーブン内で20秒間加熱処理して0.9g/m2の離型層を形成した。次いで、各実施例及び比較例で用いたアクリル系ハードコート剤を塗工量5g/m2でグラビア印刷してハードコート層形成層を形成し、出力可変型UVランプシステム(「DRS−10/12QN(型番)」,フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社製)を用い、照射線量:25mJ/cm2の積算光量となるように、紫外線を照射して、該ハードコート層形成層のプレキュアを行い、試験サンプルを得た。
2.剥離強度の測定
試験サンプルについて、上記剥離強度の測定方法に従って、20℃及び80℃における剥離強度を測定した。ここで、剥離速度は、300mm/分程度とした。また、加飾シートについて、20℃の環境下、40℃の環境下、及び40℃90%RHの環境下で各々120時間放置した後の剥離強度を、上記の測定方法に従って測定した。また、このときの剥離速度も、300mm/分程度とした。
2.高硬度性の評価
試験サンプルを、各実施例及び比較例における硬化方法により硬化させた後、JIS K5600−5−4に準拠して、鉛筆引掻き塗膜硬さ試験機(「D−NP(型番)」,株式会社東洋精機製作所製)、及び鉛筆引掻き値試験用鉛筆(三菱鉛筆株式会社製)を用いて鉛筆硬度を測定した。
各硬度の鉛筆でインキ塗工層を引掻く試験を5回行い、3回以上傷跡が生じなかった鉛筆の硬度を、試験サンプルの鉛筆硬度とした。
【0057】
実施例1
(1)加飾シートの製造
基材フィルム(「S−10(品番)」,厚さ:38μm,東レ株式会社製,ポリエチレンテレフタレートフィルム,易接着層未処理)上に、下記の離型層形成用塗工液をグラビアリバースコートにより厚さ1μmとなるように塗工し、加熱硬化させて離型層を形成した。次いで、アクリル系ハードコート剤(アクリル樹脂性状:重量平均分子量:30万,ガラス転移温度:105℃,単官能・多官能アクリレート、アクリレート系プレポリマーの総含有量:5質量%以下)をグラビア印刷して2μmのハードコート層形成層を形成し、アクリル系印刷インキで木目模様をグラビア印刷して厚さ3μmの絵柄層を形成し、アクリル系塗工液を厚さ2μmで塗布して接着層を形成した。さらに、基材フィルムの離型層を設けた面とは反対側の面に、カチオン系界面活性剤を主成分とする塗工液(カチオン系界面活性剤:第四級アンモニウム塩)を塗工量1g/m2でグラビア印刷し、帯電防止層を形成し、実施例1の加飾シートを得た。該加飾シートについて、剥離強度の測定を行った。剥離強度の測定結果を第1表に示す。
【0058】
(離型層形成用塗工液)
下記の水系メラミン樹脂と希釈溶剤を攪拌機で攪拌した後、酸触媒を加え、さらに水系ポリエステル樹脂を加えて塗工液とした。
水系メラミン樹脂(メラミン・ホルムアルデヒドアルキルモノアルコール(炭素数1〜12)縮合物80質量%含有の水分散液:20質量%未満,メタノール:2質量%未満,ホルムアルデヒド:0.8%未満含有):100質量部
水系ポリエステル樹脂(「バイロナールMD1500(品番)」,東洋紡株式会社製,ディスパージョンタイプ,樹脂分のガラス転移温度(Tg):77℃,数平均分子量:8000,水酸基価:14KOHmg/g,酸価:3KOHmg/g以下):5質量部
酸触媒(有機アミン系酸触媒):3質量部
希釈溶剤(メタノールと水を2:1の割合で配合):200質量部
【0059】
(2)加飾成形品の製造
上記(1)で得られた加飾シートを、70℃に加熱した金型に吸引し、金型内面に密着させた。金型は、80mm角の大きさで、立ち上がり10mm、コーナー部が3Rのトレー状である深絞り度の高い形状のものを用いた。
一方、射出樹脂としてABS樹脂(「クラスチックMTH−2(品番)」,日本エイアンドエル株式会社製)を用いて、これを230℃にて溶融状態にしてから、キャビティ内に射出した。冷却して金型から取り出した後、基材フィルムを剥離して、樹脂成形品の表面に接着層、印刷層、アンカー層及びハードコート層形成層を順に有する成形品を得た。さらに、大気雰囲気下において、出力可変型UVランプシステム(「DRS−10/12QN(型番)」,フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社製)を用い、照射線量:1000mJで、該成形品に紫外線を照射して、ハードコート層形成層を硬化させて、ハードコート層とした実施例1の樹脂成形品を得た。
【0060】
3.箔ばりの評価
得られた樹脂成形品において、箔ばりの状態を目視で確認し、下記の基準で評価した。当該評価を第1表に示す。
○ :箔ばりは全く確認されなかった
△ :箔ばりが若干確認されたものの、実用上問題ない
× :著しい箔ばりが確認された
4.箔こぼれの評価
得られた加飾シートをスリット加工した際の、箔こぼれの状態を目視で確認し、下記の基準で評価した。当該評価を第1表に示す。
○ :箔ばりは全く確認されなかった
△ :箔ばりが若干確認されたものの、実用上問題ない
× :著しい箔ばりが確認された
5.外観(成形性)の評価
得られた樹脂成形品について、その外観(成形性)を下記の基準で評価した。当該評価を第1表に示す。
◎ :ハードコート層(及びその形成層)に塗装割れや白化が全く確認できず、良好に金型の形状に追従した
○ :ハードコート層(及びその形成層)に僅かな塗装割れや軽微な白化が確認された
△ :ハードコート層(及びその形成層)に若干の塗装割れや軽微な白化が確認されたが、実用上問題ない
× :ハードコート層(及びその形成層)に著しい塗装割れや白化が確認された
5.外観(耐熱性)の評価
また、得られた樹脂成形品について、ゲート部(樹脂射出部)周囲の外観(耐熱性)を下記の基準で評価した。当該評価を第1表に示す。
◎ :ハードコート層(及びその形成層)に流動による変形や白化が全く確認されなかった
○ :ハードコート層(及びその形成層)に僅かな流動による変形や軽微な白化が確認された
△ :ハードコート層(及びその形成層)に若干の流動による変形や軽微な白化が確認されたが、実用上問題ない
× :ハードコート層(及びその形成層)に著しい流動による変形や白化が確認された
【0061】
実施例2及び比較例1
実施例1において、離型層を形成する塗工液を第1表に示されるものとし、ハードコート層形成層を形成するハードコート剤を第1表に示されるものとした以外は、実施例1と同様にして加飾シート及び加飾成形品を得た。使用した加飾シートについて、上記の高硬度性の評価、剥離強度の測定及び箔こぼれの評価を行い、得られた加飾成形品について、上記の箔ばり及び外観の評価を行った。その結果を第1表に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
実施例で用いた加飾シートは、加飾成形品に優れた高硬度性、成形性を付与し、また箔こぼれの点での優れた性能を示し、これを用いた加飾成形品は箔ばり及び外観の評価の点で優れていることが確認された。一方、比較例で用いた加飾シートは、箔こぼれの点で不十分であり、これを用いて得られた加飾成形品は、箔ばりの点で優れたものとはならなかった。また、実施例で用いた加飾シートの剥離強度は、120時間の放置前後での変化はほとんどなく、安定した品質を保つことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明によれば、箔ばりや箔こぼれの発生を抑制し、優れた製造効率で加飾成形品を製造することを可能とし、かつ良好な高硬度性と優れた転写性及びより形状が複雑な成形品を得られる成形性とを付与する加飾シート、該加飾シートを用いた加飾成形品を提供することができる。よって、本発明は、家庭用電化製品、自動車内装品、自動車外装、携帯電話分野などの分野や、パソコンの分野、とりわけパソコンの筐体などの、幅広い分野において有効である。
【符号の説明】
【0065】
10 加飾シート
11 基材フィルム
12 離型層
13 ハードコート層形成層
14 アンカー層
15 絵柄層
16 接着層
17 転写層
18 剥離層
19 帯電防止層
20 加飾成形体
21 樹脂成形体
22 ハードコート層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの片面に少なくとも離型層とハードコート層形成層とを順に有する加飾シートであって、該離型層が親水性樹脂を含む塗工液で形成されてなり、該離型層と該ハードコート層形成層との20℃における剥離強度が0.06〜0.4N/18mmであり、80℃における剥離強度が0.06〜0.5N/18mmである加飾シート。
【請求項2】
親水性樹脂が、水系メラミン樹脂である請求項1に記載の加飾シート。
【請求項3】
親水性樹脂が、水系メラミン樹脂と水系ポリエステル樹脂とを併用したものである請求項1又は2に記載の加飾シート。
【請求項4】
基材フィルムの離型層を設ける面とは反対側の面に、帯電防止層を有する請求項1〜3のいずれかに記載の加飾シート。
【請求項5】
下記の工程(1)〜工程(5)を有する加飾成形品の製造方法。
工程(1)射出成型金型内に請求項1〜4のいずれかに記載の加飾シートを配する工程
工程(2)キャビティ内に溶融樹脂を射出し、冷却・固化して、樹脂成形体と加飾シートとを積層一体化させる射出工程
工程(3)樹脂成形体と加飾シートとが一体化した成形体を金型から取り出す工程
工程(4)成形体から加飾シートの基材フィルムを剥離する工程
工程(5)前記成形体上に設けられたハードコート層形成層を硬化させるハードコート層形成工程
【請求項6】
請求項5に記載の製造方法により得られる加飾成形品。
【請求項1】
基材フィルムの片面に少なくとも離型層とハードコート層形成層とを順に有する加飾シートであって、該離型層が親水性樹脂を含む塗工液で形成されてなり、該離型層と該ハードコート層形成層との20℃における剥離強度が0.06〜0.4N/18mmであり、80℃における剥離強度が0.06〜0.5N/18mmである加飾シート。
【請求項2】
親水性樹脂が、水系メラミン樹脂である請求項1に記載の加飾シート。
【請求項3】
親水性樹脂が、水系メラミン樹脂と水系ポリエステル樹脂とを併用したものである請求項1又は2に記載の加飾シート。
【請求項4】
基材フィルムの離型層を設ける面とは反対側の面に、帯電防止層を有する請求項1〜3のいずれかに記載の加飾シート。
【請求項5】
下記の工程(1)〜工程(5)を有する加飾成形品の製造方法。
工程(1)射出成型金型内に請求項1〜4のいずれかに記載の加飾シートを配する工程
工程(2)キャビティ内に溶融樹脂を射出し、冷却・固化して、樹脂成形体と加飾シートとを積層一体化させる射出工程
工程(3)樹脂成形体と加飾シートとが一体化した成形体を金型から取り出す工程
工程(4)成形体から加飾シートの基材フィルムを剥離する工程
工程(5)前記成形体上に設けられたハードコート層形成層を硬化させるハードコート層形成工程
【請求項6】
請求項5に記載の製造方法により得られる加飾成形品。
【図1】
【図2】
【図2】
【公開番号】特開2012−45781(P2012−45781A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188603(P2010−188603)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
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