説明

加飾容器

【課題】意匠性に優れ、しかも、長期間にわたって見栄えの良さを保持することができ、しかも、手指から落としにくい加飾容器を提供する。
【解決手段】表面の少なくとも一部が樹脂成形体によって構成された容器であって、上記樹脂成形体の表面にプリズム状凹凸面8が形成され、このプリズム状凹凸面8に対応する上記樹脂成形体の部分に、オーロラ調の色調を有するフィルム材6が配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加飾容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化粧料を収容したコンパクト容器や口紅容器等の各種の化粧料容器等には、単に機能性だけでなく、見栄えがよい、商品イメージを反映したデザインである、といった意匠性も要求されている。そのため、上記化粧料容器等に加飾を施す技術が、従来からいろいろと提案されている。例えば、化粧料容器を構成する容器本体や蓋体の表面に塗料を塗る等してオーロラ調やオパール調に見えるような加飾を施すことが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−231900号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、近年、化粧料容器等に様々な加飾が施されており、単にオーロラ調等に加飾するだけでは、顧客の目を強く引き付けることができないという問題がある。しかも、経時的に塗料が変質したり磨耗,損傷したりして、早期に見栄えが悪くなるという問題がある。しかも、容器本体や蓋体の表面がすべすべしていると、手指が滑りやすく、容器を手指から落としやすいという問題もある。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、意匠性に優れ、しかも、長期間にわたって見栄えの良さを保持することができ、しかも、手指から落としにくい加飾容器の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明の加飾容器は、表面の少なくとも一部が樹脂成形体によって構成された容器であって、上記樹脂成形体の表面にプリズム状凹凸面が形成され、このプリズム状凹凸面に対応する上記樹脂成形体の部分に、オーロラ調の色調を有するフィルム材が配設されているという構成をとる。
【発明の効果】
【0006】
すなわち、本発明の加飾容器は、その表面の少なくとも一部を構成する樹脂成形体の表面にプリズム状凹凸面が形成され、このプリズム状凹凸面に対応する上記樹脂成形体の部分に、オーロラ調の色調を有するフィルム材が配設されている。したがって、本発明の加飾容器では、上記フィルム材により、容器表面にオーロラ調の光学的な色模様が見えるうえ、上記プリズム状凹凸面により、上記色模様の輝きが増し、深みのある立体的な色模様となって見え、従来例のように、容器表面に塗料を塗る等したものとは全く異なる色模様であり、意匠性に優れる。しかも、本発明の加飾容器では、上記フィルム材やプリズム状凹凸面が早期に変質したり磨耗,損傷したりすることがなく、長期間にわたって見栄えの良さを保持することができる。しかも、本発明の加飾容器の表面は、上記プリズム状凹凸面を形成した部分がざらざらしており、手指が滑りにくく、容器を手指から落としにくくなる。しかも、上記フィルム材は、複数の透明フィルムを積層したものからなるため、強度が強く、運搬時等に本発明の加飾容器の表面に衝撃等が作用しても、これを吸収することができる。
【0007】
なお、本発明において、「プリズム状凹凸面」とは、微小凹凸(表面粗さ:十点平均粗さで0.1〜30μm程度)が形成されこの微小凹凸によりプリズム効果を奏する面を意味している。上記微小凹凸の形状としては、(一辺が底辺となる)断面形状略三角形の突条が所定方向に多数並設されたもの(図3参照)や、断面形状略V字の溝が所定方向に多数併設されたものや、角錐形状(例えば、4角錐形状),角錐台形状(例えば、4角錐台形状)もしくは円錐形状,円錐台形状の多数の凸部が整列状に(例えば、所定方向と、これに直交する方向に整列状に)立設されたもの(図7参照)や、凹曲面と凸曲面とを所定方向に交互に連続させた波形状のもの等があげられ、市販されているプリズムシートを用い、このプリズムシートのプリズム面を容器表面に転写することで形成することができる各種のものが考えられる。
【0008】
また、本発明において、「オーロラ調の色調を有するフィルム材」とは、各層の光路差干渉(屈折率×厚み)による特定波長の多重増反射を利用した構造発色によりオーロラ調の色調を呈する多層積層構造のフィルム材、色および屈折率の少なくとも一方が異なる多数の透明フィルムを積層することによりオーロラ調の色調を呈するフィルム材等(箔でもよい)からなり、それ自身で容器表面の形状に沿う形状寸法に形成されているものを意味する。
【0009】
このようなフィルム材は、上記フィルム材を積層する容器の色を基調色としたオーロラ調の色調を容器表面に付与することができる。また、上記透明フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系、ポリエチレン,ポリプロピレン等のポリオレフィン系、ナイロン等のポリアミド系、その他セルロース系、ビニル系等の透明フィルムが用いられる。また、上記フィルム材としては、例えば、PET製の極薄透明プラスチックフィルムを多数積層したフィルム等、各種の市販品が用いられる。また、容器と上記市販品とをくっつきやすくするために、上記市販品にポリカーボネート(PC)等をラミネートしたものも、上記フィルム材として用いられる。上記フィルム材の厚みは、通常、1〜100μm程度に設定されている。
【0010】
また、上記樹脂成形体の表面に上記フィルム材が、上記表面のプリズム状凹凸面に沿って折り曲げられた状態で固着されていると、上記フィルム材自体がプリズム状凹凸面に沿って折り曲げられているため、オーロラ調の光学的な色模様がより一層輝いて見え、非常に深みのある立体的な色模様となって見える。なお、本発明において、「樹脂成形体の表面に上記フィルム材が……固着されている」とは、樹脂成形体の表面に上記フィルム材が埋設された状態で固着されていてもよいし、樹脂成形体の表面上に上記フィルム材が載置された状態で固着されていてもよい。
【0011】
また、上記プリズム状凹凸面が、上記透明樹脂成形体の表面にプリズムシートのプリズム面を転写することにより形成されていると、上記プリズムシートとして、市販品を用いることにより、安価に上記プリズム状凹凸面を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
つぎに、本発明の実施の形態を図面にもとづいて詳しく説明する。
【0013】
図1は本発明の加飾容器の一実施の形態を示している。この実施の形態では、加飾容器として、化粧料容器を用いている。図において、1は上面にファンデーション等の化粧料(図示せず)を収容するための凹部1aが形成された合成樹脂製の容器本体であり、2は上記容器本体1の上面を蓋する合成樹脂(この合成樹脂は、透明である必要はなく、透明であっても、不透明であってもよい)製の蓋体であり、その後端部から突設された連結部3が上記容器本体1の後端部にヒンジ連結されている。図1において、4は上記蓋体2の下面の凹部2aに収容,貼着された鏡である。
【0014】
上記蓋体2には、図2に示すように、その上面の略全面に、オーロラ調の色調を有し模様が全く印刷されていないフィルム材6が固着されているとともに、後述するプリズムシート7のプリズム面7a(図4参照)の転写によってプリズム状凹凸面8が形成されており、上記転写により、上記フィルム材6が、上記蓋体2の上面のプリズム状凹凸面8に沿って折り曲げられた状態で、上記蓋体2の上面に固着されている(図3参照)。
【0015】
上記フィルム材6の原料フィルム材としては、PET製の極薄透明プラスチックフィルムを多数積層したフィルムに厚み250μmのPCをラミネートしたものが用いられる。そして、この市販品を予め所定寸法に切断し、ついで、これを真空成形もしくは圧空成形したのち、不要部分を切断することで、それ自身が保形性を有する所望形状(この実施の形態では、上記蓋体2の上面の形状と同じ形状)のフィルム材6を作製する。このように作製したフィルム材6を、上記蓋体2を型成形する際に、公知のインサート成形等により上記蓋体2の上面に固着することを行う。
【0016】
一方、上記プリズム状凹凸面8は、上記蓋体2の上面(すなわち、上記フィルム材6)に、上記プリズムシート7のプリズム面7aの微小凹凸を転写することにより形成されたものである。この形成に際しては、上記インサート成形等により蓋体2を成形したのち、この成形された蓋体2の上面を加熱して軟らかくし、その状態で、この上面に上記プリズムシート7のプリズム面7aを押し当てる等して(図4参照)このプリズム面7aの微小凹凸を転写し、プリズム状凹凸面8を形成することを行う。
【0017】
このように、上記実施の形態では、上記蓋体2の上面に設けたフィルム材6により、オーロラ調の色調の色模様を付与することができるうえ、上記プリズム状凹凸面8により、上記色模様の輝きが増し、深みのある立体的な色模様となって見える。特に、上記実施の形態では、フィルム材6自体がプリズム状凹凸面8に沿って折り曲げられているため、オーロラ調の光学的な色模様がより一層輝いて見え、非常に深みのある立体的な色模様となって見える。しかも、上記フィルム材6,プリズム状凹凸面8は早期に変質したり磨耗,損傷したりすることがなく、長期間にわたって見栄えの良さを保持することができる。しかも、上記蓋体2の上面は、上記プリズム状凹凸面8によりざらざらしており、手指が滑りにくく、化粧料容器を手指から落としにくくなる。しかも、上記フィルム材6は、複数の透明フィルムを積層したものからなるため、強度が強く、運搬時等に化粧料容器の表面に衝撃等が作用しても、これを吸収することができる。しかも、フィルム材6の原料フィルム材を真空成形もしくは圧空成形してフィルム材6を作製しているため、この真空成形時もしくは圧空成形時に原料フィルム材を延ばすことができ、これにより、フィルム材6を原料フィルム材よりもオーロラに似た色調にすることができる。
【0018】
図5は本発明の加飾容器の他の実施の形態に用いる蓋体を示している。この実施の形態に用いる蓋体2は透明合成樹脂製であり、その凹部2aの上面に上記フィルム材6が固着されている。したがって、この実施の形態に用いる蓋体2には、その上面にフィルム材6が固着されておらず、また、プリズム状凹凸面8が直接形成されている。それ以外の部分は上記実施の形態に用いる蓋体2と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。図5の蓋体2を用いた実施の形態でも、上記実施の形態と同様の作用・効果を奏する。しかも、上記フィルム材6とプリズム状凹凸面8との間に厚みがある分、上記蓋体2の上面に付与される色模様は、より深みがあってより立体的な色模様となる。
【0019】
なお、図5の蓋体2を用いた実施の形態において、上記フィルム材6を蓋体2の凹部2aの上面に接着,固定してもよいし、蓋体2の型成形時に一体化してもよい。また、この型成形時に、成形面にプリズムシート7をそのプリズム面7a(図4参照)を内側に向けた状態で剥離不能に貼着等してなる成形型(図示せず)を用いることにより、蓋体2の上面にプリズム状凹凸面8を形成してもよい。
【0020】
図6は本発明の加飾容器のさらに他の実施の形態に用いる蓋体を示している。この実施の形態に用いる蓋体2には、その内部にフィルム材6が配設されており、このフィルム材6に対応する上記蓋体2の上面の部分にプリズム状凹凸面8が直接形成されている。より詳しく説明すると、上記蓋体2の天井蓋部9が上下2層9a,9b(上側層9bは透明合成樹脂製であるが、下側層9aは透明合成樹脂製である必要がない)で構成されており、これら上下2層9a,9bの間にフィルム材6が固着されている。したがって、この実施の形態に用いる蓋体2には、その上面にフィルム材6が固着されておらず、また、上側層9bの上面にプリズム状凹凸面8が直接形成されている。それ以外の部分は、図1〜図5に示す実施の形態に用いる蓋体2と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。図6の蓋体2を用いた実施の形態でも、図1〜図5に示す実施の形態と同様の作用・効果を奏する。しかも、上記フィルム材6とプリズム状凹凸面8との間に厚みがある分、上記蓋体2の上面に付与される色模様は、より深みがあってより立体的な色模様となる。
【0021】
なお、図6の蓋体2を用いた実施の形態において、上記フィルム材6を下側層9aの上面に接着,固定してもよいし、この下側層9aの型成形時に一体化してもよい。また、この型成形時に、上記した方法で、上側層9bの上面にプリズム状凹凸面8を形成してもよい。
【0022】
また、上記各実施の形態では、加飾容器として、化粧料容器を用いているが、これに限定するものではなく、各種の容器を用いることができる。また、上記各実施の形態において、上記蓋体2に代えて、上記容器本体1にフィルム材6およびプリズム状凹凸面8を設けるようにしてもよい。また、上記各実施の形態では、上記フィルム材6に模様が印刷されていないが、印刷してもよい。また、上記各実施の形態では、上記フィルム材6とのくっつきやすさから、上記蓋体2をPC製にしているが、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)製等の各種の合成樹脂製にしてもよい。また、上記各実施の形態では、上記蓋体2の上面にだけプリズム状凹凸面8を形成しているが、上面およびその周側縁にプリズム状凹凸面8を形成してもよい。
【0023】
また、図1〜図5に示す実施の形態および図6の蓋体2を用いた実施の形態において、上記蓋体2の凹部2aの上面に、色彩等を施したシート材を接着,固定してもよい。また、図1〜図5に示す実施の形態において、フィルム材6を蓋体2の上面に接着,固定してもよいし、蓋体2の型成形時に、上記した方法で、蓋体2の上面にプリズム状凹凸面8を形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の加飾容器の一実施の形態を示す斜視図である。
【図2】蓋体の断面図である。
【図3】上記蓋体の要部の斜視図である。
【図4】プリズム状凹凸面の形成方法を示す説明図である。
【図5】本発明の加飾容器の他の実施の形態に用いる蓋体の断面図である。
【図6】本発明の加飾容器のさらに他の実施の形態に用いる蓋体の断面図である。
【図7】微小凹凸の形状の説明図である。
【符号の説明】
【0025】
6 フィルム材
8 プリズム状凹凸面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面の少なくとも一部が樹脂成形体によって構成された容器であって、上記樹脂成形体の表面にプリズム状凹凸面が形成され、このプリズム状凹凸面に対応する上記樹脂成形体の部分に、オーロラ調の色調を有するフィルム材が配設されていることを特徴とする加飾容器。
【請求項2】
上記樹脂成形体の表面に上記フィルム材が、上記表面のプリズム状凹凸面に沿って折り曲げられた状態で固着されている請求項1記載の加飾容器。
【請求項3】
上記プリズム状凹凸面が、上記樹脂成形体の表面にプリズムシートのプリズム面を転写することにより形成されている請求項1または2記載の加飾容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2006−341868(P2006−341868A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−168089(P2005−168089)
【出願日】平成17年6月8日(2005.6.8)
【出願人】(000158781)紀伊産業株式会社 (327)
【Fターム(参考)】