説明

加飾成形体の製法

【課題】レーザ照射によって、非平面状の表面に形成された薄膜層を部分的に除去する際、その除去部分以外を保護するためのマスキングを、低コストで簡単に、熟練を必要とすることなく行なうことができ、しかもその仕様を柔軟に変更することのできる優れた加飾成形品の製法の提供をする。
【解決手段】非平面状の表面の少なくとも一部に接着層5を介して薄膜層4が形成された成形体3に対し、レーザ照射Aを行なうことにより、その照射部分の薄膜層4を部分的に除去し、その下の面を露出させて表面模様を形成する際に、上記レーザ照射Aのための照射位置データを援用してマスキングシート材に対しレーザ照射Bを行い、上記レーザ照射Aによる薄膜層除去予定部分(上記表面模様)と同一形状の切欠き部Qを形成したマスキングシート10を用いてマスキングするようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非平面状の表面を有し、その表面の少なくとも一部に直接または他の層を介して薄膜層が形成された成形体に対し、レーザ照射を行なうことにより、その照射部分の薄膜層を除去し、その下の面を露出させて表面模様を形成するようにした加飾成形体の製法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化粧料を収容したコンパクト容器や口紅容器等には、単に見栄えがよい、商品イメージを反映したデザインである、といった意匠性だけでなく、機能性、耐久性も要求される。
このような要求に応える技術として、例えば、表面の少なくとも一部が透明樹脂成形体によって構成された容器であって、着色された接着層を介してその表面に薄膜層が形成され、表面の薄膜層の一部がレーザ照射で除去されて、着色された接着層を露出させることで、その表面の色模様を形成させる技術が開示されている(特許文献1参照)。この技術によると、効率よく、美麗な外観が維持される表面模様が付与された容器を提供することができる。
【特許文献1】特開2007−216417号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1のように、表面に薄膜層が形成された成形体に対し、その薄膜層の一部をレーザ照射によって除去し、その薄膜層除去部分を表面模様とする場合、照射対象面が平面状であれば特に問題はないが、照射対象面が湾曲や凹凸等を有する非平面状である場合には、一般的に用いられる二次元レーザ照射機を用いることができず、立体形状の被加工物を加工することができる特殊な三次元レーザ照射機を用いることが必要となる。このように、通常の二次元レーザ照射機で加工が可能な照射対象面の形状には制限がある。
【0004】
そして、上記三次元レーザ照射機は、高価な機械であるため、製造工程に新たにこの機械を導入することは容易でなく、また、この機械を新たに導入して製品を製造すると、製造コストがアップするという問題点もある。しかも、この三次元レーザ照射機に用いる照射位置データは、二次元レーザ照射機に用いるものと比較すると、その内容が複雑であるため、容易に薄膜層除去予定部分のデザイン(照射位置データ)の変更を行いにくいという問題もある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、照射対象の表面が非平面状であっても、特殊な三次元レーザ照射機を用いることなく、二次元レーザ照射機を用いて、低コストで簡単に、成形体表面に形成された薄膜層を除去し、表面模様を形成することができる、優れた加飾成形体の製法の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明は、非平面状の表面に、直接または他の層を介して薄膜層が形成された成形体に対し、レーザ照射Aを行なうことにより、その照射部分の薄膜層を部分的に除去し、その下の面を露出させて表面模様を形成するようにした加飾成形体の製法であって、非平面状の表面を有する成形体を準備する工程と、上記成形体の、非平面状の表面の少なくとも一部に、直接または他の層を介して薄膜層を形成する工程と、上記レーザ照射Aのための照射位置データを準備する工程と、マスキングシート材に、上記照射位置データを援用してレーザ照射Bを行ない、上記レーザ照射Aによる薄膜層除去予定部分と同一形状の切欠き部を形成することにより、マスキングシートを作製する工程と、上記薄膜層が形成された成形体の非平面状の表面に沿うよう上記マスキングシートを重ね、レーザ照射Aによる薄膜層除去予定部分を上記マスキングシートの切欠き部から露出させ、それ以外の部分を保護した状態で、レーザ照射Aを行なう工程とを備えるようにした加飾成形体の製法を第1の要旨とする。
【0007】
また、本発明は、第1の要旨の製法において、上記成形体として、その非平面状の表面が、湾曲状もしくは凹凸状の表面になっているものを用いるようにした加飾成形体の製法を第2の要旨とする。
【0008】
また、本発明は、第1または第2の要旨の製法において、上記マスキングシート材として、裏面に粘着層と、この粘着層を被覆する剥離シートとを備えたものを用いるようにした加飾成形体の製法を第3の要旨とする。
【0009】
さらに、本発明は、第1〜3のいずれかの要旨の製法において、上記レーザ照射Aとして、YAGレーザ、YVO4レーザ、半導体レーザのいずれかを用い、上記レーザ照射Bとして、COレーザを用いるようにした加飾成形体の製法を第4の要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、非平面状の表面に、直接または他の層を介して薄膜層が形成された成形体に対して、レーザ照射Aを行ない、その照射部分の薄膜層を除去しその下の面を露出させて表面模様を形成するようにした加飾成形体の製法において、マスキングシート材に上記照射位置データを援用してレーザ照射Bを行うことにより、上記レーザ照射Aによる薄膜層除去予定部分と同一形状の切欠き部が形成されたマスキングシートを作製し、これを上記成形体の非平面状の表面に沿わせて重ね、その切欠き部から、上記レーザ照射Aの薄膜層除去予定部分を露出させ、それ以外の部分を保護した状態で、レーザ照射Aを行なうようにしたものである。この製法によれば、従来は、特殊な三次元レーザ照射機を用いなければならなかった、非平面状の表面を有する成形体の表面加工を、そのような三次元レーザ照射機を用いることなく、平面加工に汎用されている二次元レーザ照射機によって行なうことができる。したがって、低コストで簡単に、立体的形状の成形体の非平面状の表面に、美麗な表面模様が付与された加飾成形体を得ることができる。
【0011】
そして、二次元レーザ照射機の照射位置データは、複雑な三次元レーザ照射機に用いるものと比べ、その変更が容易に行なえるため、より簡便に、短期間でニーズに応じた多種多様な、美麗な表面模様付きの製品を製造できるようになる。
【0012】
しかも、レーザ照射Aによる薄膜層の除去予定部分のデザインを変更しても、変更後のレーザ照射Aの照射位置データを援用することで、上記マスキングシートの仕様(切欠き部)を容易に変更することができる。そして、マスキングシートの切欠き部は、レーザ照射の一工程で作製することができるため、マスキング作業に、このマスキングシートを用いることにより、さらに簡便に、短期間でニーズに応じた多種多様な、美麗な表面模様付きの製品を製造できるようになる。
【0013】
また、本発明のなかでも、特に、上記成形体として、その非平面状の表面が、湾曲状もしくは凹凸状の表面になっているものを用いるようにしたものは、化粧料容器として用いられることの多い、円柱形状のコンパクト容器や、ボトル容器等の成形体の側周表面に、表面模様を形成することができる。したがって、化粧料容器製造の低コスト化、迅速化、容易化を実現することができる。
【0014】
そして、本発明のなかでも、特に、マスキングシート材として、裏面に粘着層と、この粘着層を被覆する剥離シートとを備えた、いわゆるシール材を用いるようにしたものは、マスキングシート作製後、裏面の剥離シートをはがし、粘着層を露出させるだけで、この粘着層を介して簡単に成形体に接着させることができる。したがって、マスキングシートを成形体に固定させやすく、成形体のマスキング作業がさらに迅速化、容易化して、成形体に対するレーザ照射作業の効率、精度をより向上させることができる。
【0015】
さらに、本発明のなかでも、特に、上記レーザ照射Aとして、YAGレーザ、YVO4レーザ、半導体レーザのいずれかによって行なうようにすると、上記成形体表面の薄膜層の部分的な除去を、効率よく、しかも美麗に仕上ることができ、好適である。また、上記
レーザ照射Bとして、COレーザを用いるようにしたものは、大出力の連続発振が可能であるため、上記マスキングシートの切欠き部を効率よく形成することができ、好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
つぎに、本発明を実施するための最良の形態について説明する。ただし、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。
【0017】
本発明の加飾成形体の製法により得られる加飾成形体の一例として、図1に示す平面視円形のコンパクト容器があげられる。図において、1は本体部、2は蓋体であり、この本体部1の円筒状側壁の表面に、レーザ照射Aによって、薄膜層4が部分的に除去され、その下の、着色された接着層5が露出して、表面模様Pが形成されている。そして、上記蓋体2の後端部には、下向きにヒンジ部が突設されており(図示を省略している)、このヒンジ部が本体部1の後端部と係合することにより、蓋体2が上方に開くようになっている。
【0018】
より詳しく説明すると、上記本体部1は、図2にその一部断面図を示すように、アクリル樹脂からなる円筒状の成形体3の外周面の表面に、金属光沢を有するアルミニウム蒸着からなる薄膜層4を、赤色に着色された透明の接着層5を介して積層してなるものである。そして、上記薄膜層4が部分的に除去され、その除去部分からその下の面(接着層5)が露出し、赤みのある透明色を呈し、蔓草を模した表面模様Pが周方向に形成されている。なお、図2において、各層の断面は模式的であり、実際の厚みとは異なっている(以下の図においても同じ)。
【0019】
上記本体部1は、本発明の製法により、例えば、つぎのようにして得ることができる。
【0020】
まず、図3(a)で示すような、ベースシート6上に薄膜層4と接着層5とがこの順で積層された転写シートを準備する。
【0021】
上記転写シートにおいて、ベースシート6は、転写される部分(薄膜層4と接着層5)を安定した状態で保持するためのもので、その材質および厚みは、従来から転写シート(いわゆる「転写箔」を含む、以下同じ)に用いられているものと同様のものでよい。そして、上記薄膜層4の厚みも、従来から加飾成形体の加飾に用いられているものと同様でよい。
【0022】
また、上記接着層5は、従来から転写シートの接着層に用いられる接着剤組成物を用いて成形し、その厚みも任意に設定することができる。この例では、アクリル系樹脂を主成分とする、赤味がかった透明色の接着層5が形成されている。
【0023】
一方、上記本体部1の形状が賦形された成形体3を、射出成形機等を用いて成形する。そして、この成形体3の外周面の表面に、上記転写シートの接着層5を密着させ、ロール転写機、アップダウン転写機等の転写機を用いて、所定温度、所定圧をかけ、上記接着層5を、上記成形体3の外周面の表面全体に接着させる。冷却後、ベースシート6を薄膜層4から剥がすことにより、図3(b)に示すように、成形体3の外周面の表面全体に、接着層5を介して薄膜層4を形成することができる。なお、このとき、上記成形体3の外周面の表面全面は、上記薄膜層4のアルミニウム蒸着層の金属光沢色を呈している。
【0024】
つぎに、上記成形体3において、上記薄膜層4を部分的に除去し、その下の面である接着層5を露出させて表面模様Pを形成するために、YAGレーザ照射(レーザ照射A)を行う。ただし、それに先立って、上記YAGレーザ照射時に用いるマスキングシート10(図4参照)を作製する。
【0025】
すなわち、まず、上記YAGレーザ照射時に使用する、上記薄膜層4の除去予定部分〔表面模様P(この例では、図1の本体部1表面に示した蔓草模様)形成予定部分〕の照射位置データを準備する。
【0026】
そして、マスキングシート材として、裏面にアクリル系粘着剤からなる粘着層7と、これを被覆する剥離材からなる剥離シート8とを備えた厚さ200μmのポリエチレンテレフタレート(PET)製のシート9(図5参照)を準備し、これに対して、上記YAGレーザ照射時に使用する照射位置データを援用して、CO2レーザ照射(レーザ照射B)を行なう。これによって、図4に示すように、上記YAGレーザ照射による薄膜層4除去予定部分と同一形状、すなわち、表面模様Pと同じ形状に切欠き部Qが形成されたマスキングシート10を得ることができる。このマスキングシート10の一部断面図を図5に示す。なお、上記「同一形状」とは、全く同一の形状のほか、これにマスキングシート10の厚みや形体表面の湾曲もしくは凹凸の形状等を考慮した形状も含む趣旨である。
【0027】
そして、上記切欠き部Qが形成されたマスキングシート10の裏面の剥離シート8を剥がし、粘着層7を露出させてから、図6に示すように、上記成形体3の外周面に、上記YAGレーザによる薄膜層4除去予定部分がマスキングシート10の切欠き部Qから露出するように沿わせて重ね、YAGレーザ照射を行なう。このとき、上記粘着層7によって、マスキングシート10を成形体3に、簡単かつ正確に接着・固定することができる。
【0028】
この状態で、準備した上記照射位置データに従い、図7に示すように、YAGレーザ照射を行なうことにより、薄膜層4除去予定部分の除去加工を行なう。このとき、レーザ光に対し、成形体3を周方向に回転させながら外周面の表面全体に加工を行うため、レーザ光が斜めに当たる部分が発生する。このとき、マスキングシート10を用いることなくレーザ照射を行なうと、図10に示すように、レーザ光が照射対象面で反射して、除去予定部分以外の部位Xの薄膜層4を余分に除去してしまうが、上記の方法によれば、マスキングシート10によって、薄膜層4除去予定部分以外の部分を完全かつ容易に保護することができるため、除去予定部分の薄膜層4のみが正確に除去され、その下の面である接着層5が露出され表面模様P(この例では、上記の蔓草模様)を形成することができる。このようにして、成形体3に設計どおりの美麗な表面模様Pが形成された加飾成形体である本体部1を得ることができる。
【0029】
この構成によれば、成形体3の円筒状側壁の表面に形成された薄膜層4を部分的に除去し、表面模様Pを作製するために行なうYAGレーザ照射(レーザ照射A)の照射位置データを、マスキングシート材に対するCOレーザ照射(レーザ照射B)に援用することによって、上記表面模様Pの形状と同一形状に切欠き部Qが形成されたマスキングシート10を容易に作製することができる。したがって、このマスキングシート10の切欠き部Qを、薄膜層4除去予定部分に合わせて重ねるだけで、上記YAGレーザ照射の際のマスキング作業を簡単に行なうことができ、従来のように、熟練を必要とすることがない。また、上記マスキング作業を試行錯誤しながら行なう必要もなくなるため、作業の無駄がなく、製品の低コスト化を図ることができる。さらに、上記マスキングシート10には、裏面に粘着層7とこの粘着層を被覆する剥離シート8とが備えられているため、この剥離シート8を剥がし粘着層7を露出させることで、マスキングシート10を容易かつ正確に、成形体3表面上に接着・固定させることができ、上記マスキング作業をより効率よく行なうことができる。
【0030】
しかも、上記マスキングシート10は、上記成形体3に対するYAGレーザ照射の照射位置データを援用してこのCOレーザ照射により切欠き部Qを形成するため、成形体3表面に形成される表面模様Pの形状が複雑化しても、また、その形状を変更しても、容易に、複雑化、変更後の表面模様Pと同一形状に切欠き部Qを形成させることができる。
【0031】
また、上記マスキングシート10は、シート9部分がPETからなり、可撓性を有しているため、成形体3の表面が非平面状、すなわち、湾曲状や凹凸状等である場合でも、その非平面状の表面に沿わすことができ、この表面に隙間なく重ねることができる。したがって、マスキングにこれを用いると、上記YAGレーザ照射による薄膜層4除去予定部分以外の部分を正確に保護することができ、予定しない部位X(図10参照)まで除去された、いわゆる失敗品を製造するおそれがなくなる。
【0032】
そして、成形体3の表面が、非平面状、すわなち、湾曲曲面や凹凸状等であると、薄膜層4を除去するために、薄膜層除去予定部分がむらなくレーザ光に当たるよう、成形体3もしくは二次元レーザ照射機あるいはこのいずれもを動かすことが必要となる場合があるが、この製法によると、その場合でも、上記のように、薄膜層除去予定部分以外の部分を正確かつ完全に保護することができるため、予定しない部位Xの薄膜層4がYAGレーザ照射によって除去されることがなく、得られた製品は、設計どおりの美麗なものとなる。
【0033】
なお、上記の例では、成形体3の外周面の表面全周に、接着層5を介して薄膜層4を形成するようにしているが、成形体3の一部分のみに薄膜層4を形成して、限られた範囲に表面模様Pを付けるようにしてもよい。この場合、薄膜層4および表面模様P形成に掛かるコストおよび時間を低減することができる。
【0034】
また、成形体3の表面に形成される薄膜層4は、上記の例では、転写シートを用いた転写によって形成されたアルミニウム蒸着層を用いているが、その材料は、従来から成形体の加飾に用いられるものであれば、どのようなものでも差し支えない。たとえば、金属蒸着層の他、着色フィルム(シート)、ホログラムシート、金属箔、塗料塗膜等、各種のものが用いられる。そして、その形成方法は、蒸着、スパッタリング、メッキ、ホットスタンプ、コーティング等、その材質に応じて適宜の方法が採用される。
【0035】
そして、成形体3を構成する部材は、従来から容器等の成形品に用いられる部材であればよく、アクリル樹脂の他、例えば、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS樹脂)、ポリカーボネート(PC)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等があげられる。
【0036】
また、マスキングシート材を構成する部材のうち、シート部分として、PETからなるシート9を用いたが、レーザ照射Aの反射したレーザ光による薄膜層4の除去を防ぐことができればよく、PETの他、上質紙、合成紙、ポリ塩化ビニル等を用いることができる。なかでも、可撓性を有し、レーザ照射Bによる切欠き部形成が容易である点からは、PET、合成紙が好適に用いられる。なお、上記シート部分は、上記レーザ照射Aの反射したレーザ光による薄膜層4の除去を防ぐことができればよいことから、この限りにおいて、光を多少透すものであっても差し支えない。
【0037】
そして、上記マスキングシート材を構成する部材のうち、粘着層として、アクリル系粘着剤からなる粘着層7を用いたが、この粘着層7は、シート9を成形体3表面上に接着・固定させることができるものであればよく、シート9および成形体3の材質等によって、適宜に選択することができる。また、上記マスキングシート材を構成する部材のうち、被覆材として、剥離材からなる剥離シート8を用いたが、この剥離シート8は、粘着層7を成形体3表面上に接着・固定するまでの間保護し、また、使用時に粘着層7から容易に剥がすことができるものであればよく、粘着層7の材質等によって、適宜に選択することができる。
【0038】
さらに、上記の例では、マスキングシート材には、シート9の裏面に粘着層7と、これを被覆する剥離シート8とを備えたものを用いたが、マスキングシートを重ねるだけで、一定の効果を奏することができるため、粘着層7および剥離シート8を備えることは必ずしも必要ではない。この場合、マスキングシート10の製作コストの低減を図ることができ、ひいては製品コストの低減を実現することができる。ただし、マスキングシート10に粘着層7が備えられていると、容易かつ正確に成形体3に固定させることができるため、よりマスキングの効率、効果があがり、設計通りの美麗な製品を効率よく製造することができる。
【0039】
また、上記の例では、YAGレーザ照射によって、薄膜層4のみを除去し、その下の面である赤味がかった透明色の接着層5を露出させて表面模様Pを形成するようにしているが(図2)、接着層の色は赤色に限られず、求めるデザインに応じて、適宜に選択することができる。また、必ずしも接着層5に着色を施す必要はなく、露出した透明な接着層5を透して、その下の成形体3自身の表面を見せるようにして表面模様Pを形成するようにしてもよい。
【0040】
さらに、図8に、その一部断面図を示すように、薄膜層4だけでなく、接着層5も同時に除去し、成形体3自身の表面を露出させて、表面模様Pを形成するようにしてもよい。もちろん、薄膜層4を直接成形体3に形成し、接着層5を設けない場合も、照射部分の薄膜層4を除去し、成形体3自身の表面を露出させて、表面模様Pを形成することができる。
【0041】
また、上記の例では、マスキングシート10を、成形体3の外周面に、その表面全面を覆うように重ねているが、表面模様Pのサイズが小さい場合や、成形体3の表面の一部分のみに凹凸が形成されている場合等においては、必ずしもマスキングシート10を全面に重ねる必要はなく、必要な部分のみを覆うように重ねてもよい。この場合も、マスキング作業の迅速化を図ることができる。
【0042】
さらに、上記の例では、円筒状の外周面(側壁)に表面模様Pを形成するようにしているが、成形体の形状はこれに限られず、例えば、図9(a),(b)に示すような形状をはじめ、様々な形状に表面模様Pを形成することも可能である。また、表面模様Pを形成する部位についても、外周面(側壁)に限られない。
【0043】
そして、成形体3表面の薄膜層4を除去するためのレーザ照射Aは、上記の例において、YAGレーザを用いているが、レーザの種類は照射対象の材料に応じて、YVO4レーザ、半導体レーザ、ルビーレーザ、COレーザ等、各種のレーザ装置を用いて行なうことができる。なかでも、YAGレーザ、YVO4レーザ、半導体レーザを用いると、成形体3表面に形成された薄膜層4の除去に際し、制御性、仕上がり性において好適である。
【0044】
一方、マスキングシート材へに切欠き部を形成させ、マスキングシート10を製作するために行なうレーザ照射Bは、上記の例では、COレーザを用いているが、照射対象の材料に応じ適宜に選択することができ、YAGレーザ、YVO4レーザ、半導体レーザ、ルビーレーザ等、各種のレーザ装置を用いて行なうことができる。ただし、マスキングシート10は、レーザ照射Aを行なう際のマスキングに用いられるものであり、レーザ照射Aによっては除去されないことが必要である。したがって、当然ながら、レーザ照射Bは、レーザ照射Aとは異なる種類のものとなる。なお、なかでも、COレーザを用いると、マスキングシート材に切欠き部を形成するに際し、制御性、仕上がり性において好適である。
【0045】
なお、図1は、本発明をコンパクト容器に適用したものであるが、本発明を適用する成形体は、容器に限らず、各種の樹脂成形体、あるいは樹脂成形体に他の部材を組み合わせた成形体等に適用可能である。例えば、携帯電話、文房具、家電製品、各種ケース等に広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施例の説明図である。
【図2】上記実施例における縦断面図である。
【図3】(a),(b)は、ともに上記実施例の製法の説明図である。
【図4】上記実施例の製法の説明図である。
【図5】上記実施例の製法の説明図である。
【図6】上記実施例の製法の説明図である。
【図7】上記実施例の製法の説明図である。
【図8】本発明の他の実施例の説明図である。
【図9】(a),(b)は、ともに本発明の他の実施例の説明図である。
【図10】従来技術の説明図である。
【符号の説明】
【0047】
3 成形体
4 薄膜層
5 接着層
10 マスキングシート
Q 切欠き部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
非平面状の表面に、直接または他の層を介して薄膜層が形成された成形体に対し、レーザ照射Aを行なうことにより、その照射部分の薄膜層を部分的に除去し、その下の面を露出させて表面模様を形成するようにした加飾成形体の製法であって、非平面状の表面を有する成形体を準備する工程と、上記成形体の、非平面状の表面の少なくとも一部に、直接または他の層を介して薄膜層を形成する工程と、上記レーザ照射Aのための照射位置データを準備する工程と、マスキングシート材に、上記照射位置データを援用してレーザ照射Bを行ない、上記レーザ照射Aによる薄膜層除去予定部分と同一形状の切欠き部を形成することにより、マスキングシートを作製する工程と、上記薄膜層が形成された成形体の非平面状の表面に沿うよう上記マスキングシートを重ね、レーザ照射Aによる薄膜層除去予定部分を上記マスキングシートの切欠き部から露出させ、それ以外の部分を保護した状態で、レーザ照射Aを行なう工程とを備えたことを特徴とする加飾成形体の製法。
【請求項2】
上記成形体として、その非平面状の表面が、湾曲状もしくは凹凸状の表面になっているものを用いるようにした請求項1記載の加飾成形体の製法。
【請求項3】
上記マスキングシート材として、裏面に粘着層と、この粘着層を被覆する剥離シートとを備えたものを用いるようにした請求項1または2記載の加飾成形体の製法。
【請求項4】
上記レーザ照射Aとして、YAGレーザ、YVO4レーザ、半導体レーザのいずれかを用い、上記レーザ照射Bとして、COレーザを用いるようにした請求項1〜3のいずれか一項に記載の加飾成形体の製法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−52161(P2010−52161A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−216767(P2008−216767)
【出願日】平成20年8月26日(2008.8.26)
【出願人】(000158781)紀伊産業株式会社 (327)
【Fターム(参考)】