説明

助勢限界認定装置、助勢限界認定方法および助勢限界認定装置を備えた車両用ブレーキシステム

【課題】変圧室が大気圧となる前に助勢限界を認定することが可能な装置,方法および、その認定装置を備えた車両用ブレーキシステムを提供することを課題とする。
【解決手段】バキュームブースタの助勢限界を認定する装置において、ブレーキ操作部材に操作力が加えられて、変圧室圧PHが大気圧PTに近づく過程において、変圧室圧が低下したとき(t2〜t3)に、助勢限界と認定するように構成する。ブレーキ操作時には、変圧室への大気の流入に伴って、通常、変圧室圧は増加しつづける。しかし、急ブレーキ操作時等においては、変圧室圧が大気圧になる前に、変圧室圧が低下する場合がある。このような場合には、変圧室圧と負圧室圧との差が減少することで、バキュームブースタによる助勢力が小さくなり、ブースタ効果が低下する。したがって、変圧室圧の低下時に助勢限界と認定すれば、変圧室が大気圧となる前に助勢限界を認定することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バキュームブースタによる助勢限界を認定する装置、方法およびその装置を備えた車両用ブレーキシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の多くには、ブレーキ操作部材への操作力を助勢するためにバキュームブースタが搭載されている。バキュームブースタは、通常、負圧室と、その負圧室と大気とに選択的に連通させられる変圧室とを有し、運転者によってブレーキ操作部材に操作力が加えられていない場合には、変圧室が負圧室に連通させられており、ブレーキ操作部材に操作力が加えられた場合に、負圧室と変圧室との連通が遮断されるとともに変圧室が大気に連通させられることで、負圧室と変圧室との差圧に依拠してブレーキ操作部材に加えられる操作力を助勢する構造とされている。このため、差圧が増加している際には、バキュームブースタによって助勢される力は増加するが、差圧が増加しなくなると、助勢力は増加しなくなり、バキュームブースタによる助勢が限界に達することになる。バキュームブースタによる助勢が限界に達すると、バキュームブースタによる助勢力が増加しなくなり、運転者がブレーキ操作に違和感を抱く虞がある。下記特許文献には、バキュームブースタによる助勢が限界に達しているか否かを監視するべく、助勢限界を認定可能な装置に関する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−80497号公報
【特許文献2】特開平2001−171511号公報
【特許文献3】特開平10−236294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バキュームブースタによる助勢力は、上述したように、変圧室の空気圧である変圧室圧と負圧室の空気圧である負圧室圧との差が大きくなることで、増加する。ただし、変圧室圧が大気圧となると、負圧室圧は概ね一定であるため、変圧室圧と負圧室圧との差は概ね一定となり、助勢力は増加しなくなる。上記特許文献3に記載の助勢限界認定装置においては、そのことに着目し、変圧室圧が大気圧となった時点に助勢限界に達したことを認定している。確かに、変圧室圧と負圧室圧との差が一定となった時点において、実際に助勢限界に達するが、例えば、急ブレーキ操作時等においては、変圧室へ大気が流入している過程、つまり、変圧室圧が大気圧になる前に、変圧室圧と負圧室圧との差が小さくなる場合もあり、そのような場合には、バキュームブースタによるブースタ効果が低下する。このため、変圧室圧が大気圧になる前に助勢限界とみなすことが望ましい場合もある。本発明は、そのような事情に鑑みてなされたものであり、変圧室圧が大気圧になる前に助勢限界を認定することが可能な装置および方法を提供することを課題とする。
【0005】
また、助勢限界が認定された場合には、ブースタ効果の低下による違和感を運転者に抱かせないように、バキュームブースタとは異なる装置等によって制動力を増加させることが望ましい。ただし、変圧室圧が大気圧となった時点において助勢限界を認定していては、変圧室圧が大気圧になる前にブースタ効果が低下した場合には、バキュームブースタとは異なる装置等によって制動力を増加させるタイミングがズレてしまい、運転者がブレーキ操作に違和感を抱く虞がある。本発明は、そのような事情に鑑みてなされたものであり、変圧室圧が大気圧になる前にブースタ効果が低下した場合であっても、運転者が違和感を抱くことなくブレーキ操作をすることが可能な車両用ブレーキシステムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の助勢限界認定装置および助勢限界認定方法は、ブレーキ操作部材に操作力が加えられて、変圧室圧が大気圧に近づく過程において、その変圧室圧が低下したときに、バキュームブースタによる助勢限界を認定するように構成される。また、上記課題を解決するために、本発明の車両用ブレーキシステムは、上記発明の助勢限界認定装置によって助勢限界が認定された場合に、バキュームブースタとは異なる装置によって制動力を増加させるように構成される。
【発明の効果】
【0007】
ブレーキ操作が開始されると、変圧室への大気の流入に伴って、変圧室圧が大気圧になる迄、通常、変圧室圧は増加しつづける。しかし、急ブレーキ操作時等においては、変圧室圧が大気圧になる前に、変圧室圧が低下する場合がある。このような場合には、変圧室圧と負圧室圧との差が減少することで、バキュームブースタによる助勢力が小さくなり、ブースタ効果が低下することになる。したがって、本発明の助勢限界認定装置および認定方法によれば、変圧室圧が大気圧になる前に助勢限界を認定することが可能となる。また、本発明の車両用ブレーキシステムにおいては、上記発明の助勢限界認定装置によって助勢限界が認定された場合に、作動液加圧装置等によって、ブレーキ装置に作用する作動液の液圧を、マスタシリンダによって加圧される作動液の液圧より高くすることが可能である。したがって、本発明のブレーキシステムによれば、変圧室圧が大気圧になる前にブースタ効果が低下した場合であっても、運転者が違和感を抱くことなくブレーキ操作をすることが可能となる。
【発明の態様】
【0008】
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、それらの発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。なお、(1)項ないし(11)項が、それぞれ、請求項1ないし請求項10に相当する。
【0009】
(1)運転者によってブレーキ操作部材に加えられる操作力を助勢するバキュームブースタによる助勢限界を認定する助勢限界認定装置であって、
前記バキュームブースタが、
負圧室と、その負圧室と大気とに選択的に連通させられる変圧室とを有し、運転者によって前記ブレーキ操作部材に操作力が加えられていない場合には、前記変圧室が前記負圧室に連通させられており、前記ブレーキ操作部材に操作力が加えられた場合に、それら負圧室と変圧室との連通が遮断されるとともに前記変圧室が大気に連通させられることで、それら負圧室と変圧室との差圧に依拠して前記ブレーキ操作部材に加えられる操作力を助勢する構造とされ、
当該助勢限界認定装置が、
前記ブレーキ操作部材に操作力が加えられて、前記変圧室内の空気圧である変圧室圧が大気圧に近づく過程において、その変圧室圧が低下したときに、前記バキュームブースタによる助勢限界を認定する助勢限界認定装置。
【0010】
本項に記載のバキュームブースタにおいては、変圧室への大気の流入に伴って変圧室圧が大気圧となると、負圧室圧は概ね一定であるため、変圧室圧と負圧室圧との差は概ね一定となり、助勢力は増加しなくなる。助勢力が増加しなくなると、バキュームブースタによるブースタ効果が低下し、バキュームブースタによる助勢が限界に達することになる。そこで、変圧室圧が大気圧となった時点において助勢限界に達したことを認定する装置が検討されている。変圧室圧が大気圧となった場合には、ブレーキ操作が解除されない限り、変圧室圧と負圧室圧との差が大きくなることは殆ど無いため、実際に助勢限界に達している。しかし、例えば、急ブレーキ操作時等においては、変圧室へ大気が流入している過程、つまり、変圧室圧が大気圧になる前に、ブースタ効果が低下する場合もある。このため、変圧室圧が大気圧になる前に助勢限界とみなすことが望ましい場合もある。
【0011】
以上のことに鑑みて、本項に記載された助勢限界認定装置においては、ブレーキ操作時に、変圧室圧が大気圧に近づく過程において、その変圧室圧が低下したときに、バキュームブースタによる助勢限界を認定している。ブレーキ操作時には、変圧室への大気の流入に伴って、通常、変圧室圧は大気圧になる迄増加しつづける。しかし、急ブレーキ操作時等においては、変圧室圧が大気圧になる前に、変圧室圧が低下する場合がある。このような場合には、変圧室圧と負圧室圧との差が減少し、バキュームブースタによるブースタ効果が弱まることになる。したがって、本項に記載の助勢限界認定装置によれば、変圧室圧が大気圧になる前に助勢限界を認定することが可能となる。
【0012】
本項に記載された「助勢限界認定装置」は、変圧室圧が低下しているときに助勢限界を認定するものであればよく、例えば、変圧室圧が大気圧に近づく過程において変圧室圧が低下した時点、つまり、変圧室圧が上昇から低下に転じた時点において助勢限界を認定するものであってもよく、変圧室圧が最も低下した時点、つまり、変圧室圧が低下から上昇に転じた時点において助勢限界を認定するものであってもよい。また、それら2つの時点の間において、助勢限界を認定するものであってもよい。
【0013】
(2)当該助勢限界認定装置が、
前記変圧室圧が最も低下した時点において前記バキュームブースタによる助勢限界を認定するように構成された(1)項に記載の助勢限界認定装置。
【0014】
ブレーキ操作時に変圧室圧が大気圧に近づく過程において、変圧室圧が低下するほど、変圧室圧と負圧室圧との差が減少すると考えられる。したがって、本項に記載の助勢限界認定装置によれば、ブースタ効果がある程度低下した時点において助勢限界を認定することが可能となる。
【0015】
(3)前記バキュームブースタが、
ハウジングと、
そのハウジング内を前記負圧室と前記変圧室とに区画するとともに、前記ブレーキ操作部材に操作力が加えられた場合に、前記負圧室の容積が減少するとともに前記変圧室の容積が増大するように、前記ハウジング内において動くダイヤフラムと
を有する(1)項または(2)項に記載の助勢限界認定装置。
【0016】
本項に記載のバキュームブースタにおいては、ブレーキ操作に伴って、負圧室の容積が減少するとともに変圧室の容積が増大する。変圧室の容積が増加する速度は、運転者によるブレーキの操作速度が速くなれば、高くなる。一方で、変圧室への大気の流入速度には限界がある。このため、後に詳しく説明するが、急ブレーキ操作時には、変圧室圧への大気の流入に伴って変圧室圧が大気圧に近づく過程において、変圧室圧が低下する場合がある。つまり、本項に記載のバキュームブースタにおいては、急ブレーキ操作時等に、変圧室が大気圧になる前にブースタ効果が低下する場合があるのである。このため、本項に記載の助勢限界認定装置では、変圧室圧が低下したときに助勢限界を認定する効果が充分に活かされる。
【0017】
(4)前記バキュームブースタが、
前記変圧室が大気に連通させられた場合にその変圧室に空気が流入する流入路と、
その流入路に設けられたフィルタと
を有する(1)項ないし(3)項のいずれか1つに記載の助勢限界認定装置。
【0018】
変圧室内への大気の流入路に、塵、埃等の流入を防止するためのフィルタが設けられている場合には、大気はフィルタを介して変圧室に流入することになり、変圧室への大気の流入速度は、フィルタが無い場合と比較して低くなる。したがって、フィルタを介して変圧室へ大気が流入する構造のバキュームブースタにおいては、上述したように、急ブレーキ操作時等に、変圧室が大気圧になる前にブースタ効果が低下する場合があるのである。このため、本項に記載の助勢限界認定装置では、変圧室圧が低下したときに助勢限界を認定する効果が充分に活かされる。
【0019】
(5)当該助勢限界認定装置が、
前記ブレーキ操作部材の操作量が減少した場合には、前記変圧室圧の低下に依拠した前記バキュームブースタによる助勢限界の認定を禁止するように構成された(1)項ないし(4)項のいずれか1つに記載の助勢限界認定装置。
【0020】
ブレーキ操作時において、変圧室への大気の流入に伴って、通常、変圧室圧は大気圧になる迄増加しつづける。しかし、運転者がブレーキ操作の最中にブレーキ操作部材への操作力を一旦弱めて、再度ブレーキ操作部材を踏み込む場合がある。このような場合には、変圧室が負圧室に連通させられて、変圧室が低下することがある。つまり、助勢限界に達していなくても変圧室圧が低下することがあるのである。本項に記載の助勢限界認定装置においては、ブレーキ操作時に変圧室が負圧室に連通させらる可能性がある場合には、変圧室圧の低下に依拠したバキュームブースタによる助勢限界の認定を禁止することが可能となっており、助勢限界の誤判定を回避することが可能となっている。
【0021】
本項に記載の「助勢限界認定装置」は、ブレーキ操作部材の操作量が減少したか否かを判定するための判定部を有していてもよい。その判定部は、当然、ブレーキ操作部材の操作量自体によって判定してもよく、ブレーキ操作部材の操作速度,ブレーキ操作部材に加えられる操作力とバキュームブースタによって助勢される助勢力とに依拠して加圧される作動液の圧力,その圧力の変化速度等のブレーキ操作部材の操作量を指標するものによって判定してもよい。
【0022】
(6)当該助勢限界認定装置が、
前記ブレーキ操作部材の操作速度が閾速度以下の場合には、前記変圧室圧の低下に依拠した前記バキュームブースタによる助勢限界の認定を禁止するように構成された(1)項ないし(5)項のいずれか1つに記載の助勢限界認定装置。
【0023】
バキュームブースタの助勢限界に依拠して変圧室圧が低下する現象は、急ブレーキ操作時に発生することが多い。つまり、急ブレーキ操作時以外に変圧室圧が低下しても、助勢限界に達していない場合がある。本項に記載の助勢限界認定装置においては、急ブレーキ操作時以外の場合には、変圧室圧の低下に依拠したバキュームブースタによる助勢限界の認定を禁止することが可能となっている。したがって、本項に記載の助勢限界認定装置によれば、助勢限界の誤判定を回避することが可能となる。
【0024】
本項に記載の「助勢限界認定装置」は、ブレーキ操作部材の操作速度が閾速度以下であるか否かを判定するための判定部を有していてもよい。その判定部は、当然、ブレーキ操作部材の操作速度自体によって判定してもよく、ブレーキ操作部材に加えられる操作力とバキュームブースタによって助勢される助勢力とに依拠して加圧される作動液の圧力の変化速度等のブレーキ操作部材の操作速度を指標するものによって判定してもよい。
【0025】
(7)(1)項ないし(6)項のいずれか1つに記載の助勢限界認定装置と、
前記ブレーキ操作部材と、
前記バキュームブースタと、
前記ブレーキ操作部材に加えられる操作力と前記バキュームブースタによって助勢される助勢力とに依拠して作動液を加圧するマスタシリンダと、
そのマスタシリンダによって加圧された作動液によって制動力を発生させるブレーキ装置と、
そのブレーキ装置と前記マスタシリンダとの間を作動液が流通可能にそれらを連通させる連通路と、
その連通路に設けられて、前記ブレーキ装置と前記マスタシリンダとの間の作動液の流通を許容する状態と禁止する状態とを切換える流通状態切換器と、
その流通状態切換器と前記ブレーキ装置との間において、そのブレーキ装置に作用する作動液を加圧する作動液加圧装置と、
前記ブレーキ装置に作用する作動液の液圧を制御可能に調整する調整器と、
前記流通状態切換器を制御することで、前記ブレーキ装置と前記マスタシリンダとの間の作動液の流通状態を切換え、前記作動液加圧装置を制御することで、その作動液加圧装置の作動と停止とを切換え、前記調整器を制御することで、前記ブレーキ装置に作用する作動液の液圧を制御する制御装置と
を備えた車両用ブレーキシステムであって、
前記制御装置が、
前記助勢限界認定装置によって前記バキュームブースタによる助勢限界が認定された場合に、前記ブレーキ装置と前記マスタシリンダとの間の作動液の流通を禁止するとともに、前記ブレーキ装置に作用する作動液の液圧が前記マスタシリンダによって加圧される作動液の液圧より高くなるように、前記流通状態切換器と前記作動液加圧装置と前記調整器とを制御するように構成された車両用ブレーキシステム。
【0026】
助勢限界が認定された場合には、ブースタ効果の低下による違和感を運転者に抱かせないように、制動力を増加させることが望ましい。ただし、変圧室圧が大気圧となった時点において助勢限界を認定していては、変圧室圧が大気圧になる前にブースタ効果が低下した場合には、制動力を増加させるタイミングがズレてしまい、運転者がブレーキ操作に違和感を抱く虞がある。本項に記載のシステムでは、上述したような助勢限界認定装置によって助勢限界を認定するとともに、その装置によって助勢限界が認定された場合に、作動液加圧装置等によって、ブレーキ装置に作用する作動液の液圧を、マスタシリンダによって加圧される作動液の液圧より高くすることが可能となっている。したがって、本項に記載のシステムによれば、変圧室圧が大気圧になる前にブースタ効果が低下した場合であっても、運転者が違和感を抱くことなくブレーキ操作をすることが可能となる。
【0027】
本項に記載の「流通状態切換器」と「調整器」とは、独立した2つの機器であってもよく、それぞれの機能を備えた1つの機器であってもよい。つまり、本項に記載の「ブレーキシステム」が、例えば、「流通状態切換器」として機能する弁と「調整器」として機能する弁との2つの弁を備えていてもよく、「流通状態切換器」の機能と「調整器」の機能とを備えた弁、詳しく言えば、作動液の流通を許容する状態と禁止する状態とを切換えるとともに、禁止する状態においてブレーキ装置に作用する作動液の液圧を制御可能に調整する弁を1つ備えていてもよい。また、本項に記載の「作動液加圧装置」は、リザーバ等から作動液を汲み上げてその作動液を加圧する構造であってもよく、マスタシリンダによって加圧された作動液を汲み上げてその作動液を加圧する構造であってもよい。後者の構造の「作動液加圧装置」は、例えば、流通路のマスタシリンダと流通状態切換器との間の部分から分岐した補給路に接続され、その補給路からの作動液を加圧する構造とすることができる。
【0028】
(8)前記制御装置が、
前記助勢限界認定装置によって前記バキュームブースタによる助勢限界が認定された場合に、前記ブレーキ装置と前記マスタシリンダとの間の作動液の流通が禁止された状態において前記マスタシリンダによって加圧される作動液の液圧が高いほど、その液圧と前記ブレーキ装置に作用する作動液の液圧との差が大きくなるように、前記調整器を制御するように構成された(7)項に記載の車両用ブレーキシステム。
【0029】
運転者は、自身の意図する制動力を発生させるべく、ブレーキ操作部材を操作している。ブレーキ操作中に変圧室圧が増加し続けている場合には、運転者の操作力、つまり、マスタシリンダによって加圧された作動液の液圧(以下、「マスタシリンダ圧」という場合がある)に応じて制動力は大きくなるため、運転者の意図する制動力は発生させられている。しかし、助勢限界時には、ブースタ効果が低下するため、運転者の意図する制動力を発生させることができなくなる。本項に記載のシステムにおいては、助勢限界と認定された後に、マスタシリンダ圧が高いほど、作動液加圧装置等に依拠して発生させられる制動力を大きくすることが可能となっている。したがって、本項に記載のシステムによれば、助勢限界時においても、運転者に意図する制動力を発生させることが可能となる。
【0030】
(9)前記制御装置が、
前記助勢限界認定装置によって前記バキュームブースタによる助勢限界が認定された場合に、前記ブレーキ装置と前記マスタシリンダとの間の作動液の流通が禁止された状態において前記マスタシリンダによって加圧される作動液の液圧の増大に伴って、その液圧と前記ブレーキ装置に作用する作動液の液圧との差が増大するとともに、前記変圧室圧が大気圧になった後の前記差の増大勾配が、前記変圧室圧が大気圧になる迄の前記増大勾配より大きくなるように設定された規則に基づいて、前記調整器を制御するように構成された(7)項または(8)項に記載の車両用ブレーキシステム。
【0031】
変圧室への大気の流入時に変圧室圧が、一旦、低下して、助勢限界と認定された後でも、変圧室圧が大気圧まで変化する際に、変圧室圧と負圧室圧との差が僅かに大きくなる。そして、変圧室圧が大気圧となった後は、変圧室圧と負圧室圧との差は殆ど変化しない。このため、変圧室圧が低下したことに依拠して助勢限界と認定された場合に、助勢力は、変圧室圧が低下した後に変圧室圧が大気圧となるまでは、ブレーキ操作に伴って僅かに増加し、変圧室圧が大気圧となった後は、殆ど変化しない。つまり、変圧室圧が大気圧に近づく過程において、変圧室圧が低下したときに、バキュームブースタによるブースタ効果が低下し、変圧室圧が大気圧になったときには、さらに、ブースタ効果が低下する。本項に記載のシステムにおいては、助勢限界と認定された後に、マスタシリンダ圧が高いほど、作動液加圧装置等に依拠して発生させられる制動力を大きくするとともに、その制動力の増加勾配を、変圧室圧が大気圧となった後に、変圧室圧が大気圧となる迄より大きくすることが可能となっている。したがって、本項に記載のシステムによれば、ブースタ効果が低下した後に、変圧室圧が大気圧となることでブースタ効果がさらに低下しても、運転者が意図する制動力を発生させることが可能となる。
【0032】
本項に記載の「増大勾配」は、マスタシリンダ圧の増大に伴って変圧室圧と負圧室圧との差を増大させる場合のマスタシリンダ圧の単位増大量あたりの変圧室圧と負圧室圧との差の増大量であり、それらの差のマスタシリンダ圧の増大量に対する比率によって示すことが可能である。また、本項に記載の「設定された規則」は、変圧室圧と負圧室圧との差と、マスタシリンダ圧との関係を示すものであり、具体的に言えば、関数,マップデータ等がその規則に該当する。
【0033】
(11)運転者によってブレーキ操作部材に加えられる操作力を助勢するバキュームブースタによる助勢限界を認定する助勢限界認定方法であって、
前記バキュームブースタが、
負圧室と、その負圧室と大気とに選択的に連通させられる変圧室とを有し、運転者によって前記ブレーキ操作部材に操作力が加えられていない場合には、前記変圧室が前記負圧室に連通させられており、前記ブレーキ操作部材に操作力が加えられた場合に、それら負圧室と変圧室との連通が遮断されるとともに前記変圧室が大気に連通させられることで、それら負圧室と変圧室との差圧に依拠して前記ブレーキ操作部材に加えられる操作力を助勢する構造とされ、
当該助勢限界認定方法が、
前記ブレーキ操作部材に操作力が加えられて、前記変圧室内の空気圧である変圧室圧が大気圧に近づく過程において、その変圧室圧が低下したときに、前記バキュームブースタによる助勢限界を認定する助勢限界認定方法。
【0034】
本項に記載の態様は、カテゴリを助勢限界の認定方法とした請求可能発明の態様である。本項に記載の認定方法によれば、先に説明したように、変圧室圧が大気圧になる前にブースタ効果が低下した場合において、変圧室圧が大気圧になる前に助勢限界を認定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】請求可能発明の実施例である車両用ブレーキシステムを概略的に示す図である。
【図2】図1の車両用ブレーキシステムの備えるバキュームブースタおよびマスタシリンダを示す概略断面図である。
【図3】図1の車両用ブレーキシステムの備える作動液液圧制御装置を概略的に示す図である。
【図4】図3の作動液液圧制御装置の備える圧力制御弁を示す概略断面図である。
【図5】図2のバキュームブースタの拡大断面図である。
【図6】運転者による操作力とマスタシリンダ圧(ブレーキシリンダ圧)との関係を示すグラフである。
【図7】マスタシリンダ圧と大気圧時圧力差との関係を示すグラフである。
【図8】(a)変圧室の空気圧および負圧室の空気圧の時間経過に対する変化と、(b)マスタシリンダ圧の時間経過に対する変化とを概略的に示すチャートである。
【図9】急ブレーキ操作時における運転者による操作力とマスタシリンダ圧(ブレーキシリンダ圧)との関係を示すグラフである。
【図10】マスタシリンダ圧と低下時圧力差との関係を示すグラフである。
【図11】急ブレーキ操作時におけるマスタシリンダ圧と圧力差との関係を示すグラフである。
【図12】ブレーキ制御プログラムを示すフローチャートである。
【図13】ブレーキ制御プログラムにおいて実行される助勢限界判定サブルーチンを示すフローチャートである。
【図14】車両用ブレーキシステムの制御を司る制御装置の機能を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、請求可能発明の実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、本請求可能発明は、下記実施例の他、前記〔発明の態様〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
【実施例】
【0037】
<車両用ブレーキシステムの構成>
図1に、本実施例の車両用ブレーキシステム10を概略的に示す。ブレーキシステム10は、各車輪に対応して設けられたブレーキ装置14(図1では、1輪のみを図示している)を備えており、ブレーキ装置14は、ディスクブレーキ装置とされている。ブレーキ装置14は、車輪と共に回転するブレーキディスク16と、車体に取り付けられるブレーキキャリパ17と、ブレーキキャリパ17に保持されるブレーキシリンダ18およびブレーキパッド19とを含んで構成されている。
【0038】
運転者の操作力によって、ブレーキ操作部材であるブレーキペダル20が操作されると、ブレーキペダル20に連結されるバキュームブースタ22によって、操作力が助勢される。さらに、助勢された操作力は、バキュームブースタ22に連結されるマスタシリンダ24に伝えられて、その内部に収容される作動液を加圧する。作動液の液圧の変化は、マスタシリンダ24から主配管26a,26bを通じて、各車輪に設けられたブレーキ装置14のブレーキシリンダ18まで伝達される。ブレーキ装置14の詳しい構造についての説明は省略するが、ブレーキシリンダ18は、加圧された作動液によって作動し、ブレーキパッド19をブレーキディスク16に押し付ける。したがって、ブレーキ装置14は、このブレーキパッド19とブレーキディスク16との間に生じる摩擦によって、車輪の回転を抑制させて車両を減速させるための制動力を発生させることができる。
【0039】
バキュームブースタ22は、負圧状態とされる負圧室28を備えており、その負圧室28には、吸引口30が設けられている。吸引口30には、負圧配管32が接続されており、負圧配管32は、インテークマニホルド34の分岐部36に接続されている。インテークマニホルド34は、その両端に開口を持ち、エンジン38に空気を供給するための給気配管として機能する。詳しく説明すると、インテークマニホルド34の一方の開口は、大気から空気を吸い込むための吸込口40となっており、他方の開口は、エンジン38が空気を吸引するための吸気部42に連結されている。また、インテークマニホルド34の吸込口40と分岐部36との間には、電子制御式のスロットル弁44が設置されている。スロットル弁44は、エンジン38へ吸い込まれる空気の量を調整することが可能とされている。このため、インテークマニホルド34の内部におけるスロットル弁44と吸気部42との間は、スロットル弁44の開度,エンジン38の回転数等に応じた負圧状態とされるのである。したがって、分岐部36に接続された負圧配管32、および、負圧配管32に接続された負圧室28も負圧状態とされるのである。また、負圧配管32には、チェック弁50が設けられており、そのチェック弁50は、インテークマニホルド34から負圧室28への負圧の供給は許容するが、負圧室28からインテークマニホルド34への負圧の供給は禁止する構造とされている。言い換えれば、チェック弁50は、インテークマニホルド34から負圧室28への空気の供給は禁止するが、負圧室28からインテークマニホルド34への空気の供給は許容する構造とされている。
【0040】
図2は、バキュームブースタ22およびマスタシリンダ24の断面図である。バキュームブースタ22は、中空のハウジング56と、ハウジング56内に設けられたパワーピストン58とを含んで構成されている。パワーピストン58は、ハブ60とダイアフラム62とを含んで構成され、ハウジング56の内部は、ハブ60とダイアフラム62とにより、マスタシリンダ24側の負圧室28と、ブレーキペダル20側の変圧室64とに区画されている。
【0041】
ハブ60のマスタシリンダ24の側には、凹部66が設けられている。その凹部66にはゴム製のリアクションディスク68が嵌入されており、さらに、プッシュロッド70の一端が凹部66に嵌入されている。プッシュロッド70のもう一端は、マスタシリンダ24の加圧ピストン72aと係合している。また、プッシュロッド70と並列に、圧縮コイルばね74が配設されている。
【0042】
マスタシリンダ24は、ハウジング76と、2つの加圧ピストン72a,72bとを含んで構成されている。2つの加圧ピストン72a,72bは、ハウジング76の内部において直列に配設されており、ハウジング76にそれの内部を摺動可能に嵌合されている。さらに、マスタシリンダ24には、2つの加圧ピストン72a,72bの各々に隣接して2つの加圧室78a,78bがそれぞれ設けられており、各加圧室78a,78b内には、それぞれ圧縮コイルばね79a,79bが配設されている。
【0043】
ハブ60のブレーキペダル20の側には、凹部66に連通する段付き穴80が設けられており、その内部にはリアクションロッド82が嵌入されている。リアクションロッド82は、バルブオペレーティングロッド84の一端に係合しており、バルブオペレーティングロッド84のもう一端は、ブレーキペダル20に接続されている。また、ハブ60とリアクションロッド82とは、凹部66において板状のストッパキー86によって結合されている。したがって、ブレーキペダル20が操作されると、バルブオペレーティングロッド84、リアクションロッド82を介してハブ60が移動させられて、さらに、ハブ60の移動によって、リアクションディスク68、プッシュロッド70を介して加圧ピストン72aが移動させられる。つまり、マスタシリンダ24は、ブレーキペダル20の操作によって加圧ピストン72aが移動させられるように構成されているのである。そして、加圧ピストン72aが移動させられると、加圧室78a内の作動液が加圧されて、加圧ピストン72bが、その加圧された作動液によって移動させられる。
【0044】
加圧室78aには、図3に示すように、主配管26aが接続され、加圧室78bには、主配管26bが接続されており、作動液の圧力上昇は、2つの配管系統によって、各車輪のブレーキシリンダ18へと伝達されている。ちなみに、主配管26aは、右前輪側および左後輪側に配置された2つのブレーキシリンダ18に接続され、主配管26bは、左前輪側および右後輪側に配置された2つのブレーキシリンダ18に接続されている。それら2つの配管系統は互いに構成が共通することから、以下、主配管26aを含む配管系統のみを代表的に説明し、主配管26bを含む配管系統については説明を省略する。
【0045】
主配管26aは、加圧室78aから延び出た後に二股状に分岐しており、1本の基幹配管90と2本の分岐配管92とが互いに接続されて構成されている。各分岐配管92の先端にブレーキシリンダ18が接続されている。各分岐配管92の途中には常開の電磁開閉弁である増圧制御弁94が設けられ、開状態でマスタシリンダ24からブレーキシリンダ18へ向かう作動液の流れを許容する。各分岐配管路92には、増圧制御弁94を迂回するバイパス配管96が接続され、各バイパス配管96には作動液戻り用の逆止弁98が設けられている。各分岐配管92のうち増圧制御弁94とブレーキシリンダ18との間の部分からリザーバ配管100が延びてリザーバ102に至っている。各リザーバ配管100の途中には常閉の電磁開閉弁である減圧制御弁104が設けられ、開状態でブレーキシリンダ18からリザーバ102へ向かう作動液の流れを許容する。
【0046】
リザーバ102は、作動液をスプリングによって加圧状態において収容する構造とされており、ポンプ配管106によってポンプ108の吸入側に接続されている。ポンプ108の吸入側には逆止弁である吸入弁110、吐出側には逆止弁である吐出弁112がそれぞれ設けられている。ポンプ108の吐出側と基幹配管90とを接続する補助配管114には、オリフィス116と固定ダンパ118とがそれぞれ設けられており、それらにより、ポンプ108の脈動が軽減される。
【0047】
基幹配管90には、補助配管114との接続点とマスタシリンダ24との間の部分に圧力制御弁120が設けられている。圧力制御弁120は、ポンプ108の非作動時には、マスタシリンダ24とブレーキシリンダ18との間の作動液の双方向の流れを許容し、ポンプ108の作動時には、ポンプ108からの作動液をマスタシリンダ24に逃がすとともに、その逃がすときのポンプ108の吐出圧の高さをマスタシリンダ24の液圧に基づいて変化させる構造とされている。具体的に説明すれば、圧力制御弁120は、図4に示すように、ハウジング(図示省略)と、マスタシリンダ側に設けられた弁子130と、ブレーキシリンダ側に設けられた弁座132と、それら弁子130および弁座132の相対移動を制御するソレノイド134とを有している。ソレノイド134の消磁状態においては、図4(a)に示すように、スプリング136の弾性力によって弁子130は弁座132から離間させられており、圧力制御弁120は、その状態において、マスタシリンダ側とブレーキシリンダ側との間での双方向の作動液の流れを許容する。つまり、消磁状態において、圧力制御弁120は開弁されている。一方、ソレノイド134の励磁状態においては、図4(b)に示すように、ソレノイド134の磁気力によって弁子130が弁座132に向かって付勢され、弁子130が弁座132に着座させられる。この際、弁子130には、ブレーキシリンダ圧とマスタシリンダ圧との差に基づく力F1とスプリング136の弾性力F2との和と、ソレノイド134の磁気力によって弁子130が付勢される力F3とが互いに逆向きに作用する。
【0048】
上述のような構造から、ソレノイド134の励磁状態において、圧力差に基づく力F1と弾性力F2との和が付勢力F3以下である間は、圧力制御弁120は閉じており、ポンプ108からの作動液がマスタシリンダ24に流れることが阻止される。このため、ポンプ108の作動に伴ってポンプ108の吐出圧が増加し、ブレーキシリンダ18にマスタシリンダ圧より高い液圧を作用させることが可能となる。それに対し、ポンプ108の吐出圧、すなわちブレーキシリンダ圧が増加し、圧力差に基づく力F1と弾性力F2との和が付勢力F3より大きくなれば、弁子130が弁座132から離間し、ポンプ108からの作動液がマスタシリンダ14に流れる。このため、ポンプ108の吐出圧、すなわちブレーキシリンダ圧は、圧力差に基づく力F1と弾性力F2との和が付勢力F3より大きくなった時点のブレーキシリンダ圧に維持される。つまり、ソレノイド134の励磁状態において、ポンプ108を作動させることで、付勢力F3から弾性力F2を減じた力に相当する圧力分、マスタシリンダ圧より高い液圧を、ブレーキシリンダ18に作用させることが可能となる。また、弁子130が弁座132に着座させられた状態でのスプリング136の弾性力F2は一定であることから、付勢力F3の大きさ、つまり、ソレノイド134への通電量を制御することで、圧力差に基づく力F1を制御することが可能となる。つまり、ソレノイド134への通電量を制御することで、ブレーキシリンダ圧とマスタシリンダ圧との圧力差、詳しく言えば、ブレーキシリンダ圧からマスタシリンダ圧を減じた圧力差を制御することが可能となる。このように、圧力制御弁120は、作動液の流通を許容する状態と禁止する状態とを切換えるとともに、作動液の流通を禁止した状態においてブレーキシリンダ圧を制御可能に調整することが可能とされているのである。つまり、圧力制御弁120は、流通状態切換器と調整器としての2つの機能を有しているのである。
【0049】
また、図3に示すように、基幹配管90には、その圧力制御弁120を迂回するようにバイパス配管140が接続されており、そのバイパス配管140には、マスタシリンダ24からブレーキシリンダ18への作動液の流れを許容し、その逆向きの流れを阻止する逆止弁146が設けられている。また、基幹配管90のうちマスタシリンダ24と圧力制御弁120との間の部分から延びてポンプ配管106に至る補給配管148が設けられており、その補給配管148の途中には常閉の電磁開閉弁である流入制御弁150が設けられている。また、ポンプ配管106と補給配管148との接続点とポンプ配管106とリザーバ配管100との接続点との間に、補給配管148からリザーバ102に向かう作動液の流れを阻止し、その逆向きの流れを許容する逆止弁152が設けられている。
【0050】
上述のような構造によって、増圧制御弁94および圧力制御弁120が開弁されるとともに、減圧制御弁140および流入制御弁150が閉弁された状態において、運転者によってブレーキペダル20が踏み込まれた場合には、加圧ピストン72a,72bの移動に伴って、加圧室78a,78b内の作動液が加圧されて、その作動液の圧力上昇が、連通路としての主配管26a,26bを通じて各車輪のブレーキ装置14へと伝達される。そして、ブレーキ装置14が制動力を発生させるのである。
【0051】
また、バキュームブースタ22のパワーピストン58を構成するハブ60の内部には、図2に示すように、弁機構160が設けられており、弁機構160は、負圧室28と変圧室64との連通または遮断、あるいは、変圧室64と大気との連通または遮断を行えるように構成されている。弁機構160は、ブレーキペダル20の操作に依拠して移動させられるバルブオペレーティングロッド84に連動して、それらの連通および遮断を行うことが可能となっている。
【0052】
詳しく説明すると、弁機構160は、バルブオペレーティングロッド84を貫通させた状態でハブ60の内部に設けられたコントロールバルブ162と、ハブ60内部と負圧室28とを連通する第1連通穴164と、ハブ60内部と変圧室64とを連通する第2連通穴166とを備えている。コントロールバルブ162は、バルブオペレーティングロッド84と並列に配設されたコイルスプリング168によってリアクションロッド82に向かって付勢されており、ブレーキペダル20が操作されていない状態(図2に示す状態)においては、コントロールバルブ162のマスタシリンダ24側の端部は、リアクションロッド82のブレーキペダル20側の端部に形成されたボス部170に当接している。この状態において、コントロールバルブ162とボス部170とによって、ハブ60のマスタシリンダ24側の内部空間は大気と遮断され、その内部空間に、第1連通穴164および第2連通穴166が開口した状態となる。つまり、負圧室28と変圧室64とが連通し、変圧室64と大気とは遮断された状態となり、負圧室28と変圧室64とは等圧の負圧状態となっている。
【0053】
そして、ブレーキペダル20が操作されていない状態から運転者によって踏み込まれると、バルブオペレーティングロッド84がマスタシリンダ24側に移動し、その移動に伴って、リアクションロッド82およびコントロールバルブ162もマスタシリンダ24側に移動する。コントロールバルブ162の移動によって、図5(a)に示すように、コントロールバルブ162が、ハブ部60内部への第1連通穴164の開口の内側に形成された凸部172に当接し、大気と遮断されたハブ60の内部空間174には、第1連通穴164は開口せずに、第2連通穴166のみが開口した状態となる。つまり、変圧室64と大気とは遮断され、負圧室28と変圧室64とも遮断された状態となる。
【0054】
そして、さらにブレーキペダル20が踏み込まれることで、図5(b)に示すように、バルブオペレーティングロッド84の移動に伴って、コントロールバルブ162とリアクションロッド82のボス部170との当接が解除される。コントロールバルブ162が凸部172に当接しているため、コントロールバルブ162はマスタシリンダ24側に移動せず、リアクションロッド82が、バルブオペレーティングロッド84とともに、マスタシリンダ24側に移動するためである。この状態において、ハブ60のマスタシリンダ24側の内部空間174は、コントロールバルブ162とボス部170との隙間を介して大気と連通し、その内部空間174に第2連通穴166のみが開口した状態となる。つまり、負圧室28と変圧室64とは遮断され、変圧室64と大気とが連通した状態となる。このような状態においては、負圧室28は負圧状態となっているが、変圧室64への大気の流入によって、変圧室64の負圧は低くなり、0となる。つまり、変圧室64の絶対気圧は大気圧となる。このため、負圧室28と変圧室64との間に圧力差が発生し、その圧力差による差圧力が、操作力によるパワーピストン58の移動方向と同じ方向に作用するため、バキュームブースタ22は、ブレーキ操作における運転者の操作力を助勢することができるのである。なお、ハブ60のブレーキペダル20側の端部の内周部には、バルブオペレーティングロッド84を貫通させた状態でフィルタ176が設けられており、図5(b)の矢印に示すように、流入路として機能するハブ60の内部を介して、大気が変圧室64へ流入する際に、塵,埃等が入り込まないようにされている。
【0055】
一方、ブレーキペダル20に加えられる操作力が解除された場合には、まず、リアクションロッド82が、バルブオペレーティングロッド84とともに、ブレーキペダル20側に移動し、リアクションロッド82のボス部170とコントロールバルブ162とが、図5(a)に示すように当接する。そして、リアクションロッド82とバルブオペレーティングロッド84とがさらにブレーキペダル20側に移動すると、リアクションロッド82によってコントロールバルブ162がブレーキペダル20側に移動させられて、図2に示すように、コントロールバルブ162と凸部172との当接が解除させられる。つまり、まず、変圧室64と大気とが遮断された状態となり、遮断された後に、変圧室64と大気とが連通した状態となる。したがって、この状態において、変圧室64から負圧室28へ空気が流入し、負圧室28と変圧室64とは、負圧状態において同じ空気圧となる。つまり、負圧室28と変圧室64との間の圧力差がなくなり、操作力もなくなるため、加圧ピストン72,パワーピストン58等は、圧縮コイルばね74および圧縮コイルばね79a,79bの圧縮ばね力によって、ブレーキペダル20が操作されていない場合の位置へと戻されるのである。なお、バキュームブースタ22のハウジング56には、変圧室64内の空気圧を検出する圧力センサ178が設けられている。
【0056】
本システム10では、図1に示すように、ブレーキ電子制御ユニット(以下、単に「ブレーキECU」という場合がある)180が設けられている。ブレーキECU180は、各種制御弁94,104,120,150、ポンプ108の作動を制御する制御装置であり、各ブレーキ装置14のブレーキシリンダ18に作用させる作動液の液圧を制御するものである。ブレーキECU180は、CPU,ROM,RAM等を備えたコンピュータを主体として構成されたコントローラ182と、ポンプ108の有するポンプモータ184に対応する駆動回路186と、各種制御弁94,104,120,150のそれぞれに対応する複数の駆動回路188,190,192,194とを有している(図14参照)。それら複数の駆動回路186,188,190,192,194には、コンバータ196を介してバッテリ198が接続されており、ポンプモータ184、各種制御弁94,104,120,150に、そのバッテリ198から電力が供給される。
【0057】
さらに、複数の駆動回路186,188,190,192,194には、コントローラ182が接続されており、コントローラ182が、それら複数の駆動回路186,188,190,192,194に各制御信号を送信する。詳しくは、コントローラ182は、ポンプモータ184の駆動回路186にモータ駆動信号を送信し、増圧制御弁94,減圧制御弁104,流入制御弁150のそれぞれの駆動回路188,190,194に各制御弁を開閉するための制御信号を送信する。さらに、圧力制御弁120の駆動回路192には、圧力制御弁120の有するソレノイド134の発生させる磁気力を制御するための電流制御信号を送信する。このように、コントローラ182が各駆動回路186,188,190,192,194に各制御信号を送信することで、ポンプモータ184、各種制御弁94,104,120,150の作動を制御する。
【0058】
また、コントローラ182には、上記圧力センサ178[PH]とともに、マスタシリンダ24の液圧であるマスタシリンダ圧を検出する液圧センサ200[PM]と、大気圧を検出する大気圧センサ[PT]202とが接続されており、各センサによる検出値は、後に説明するブレーキシステム10の制御において利用される。なお、[ ]の文字は、上記センサを図面において表す場合に用いる符号である。
【0059】
<車両用ブレーキシステムの制御>
本システム10において、通常、増圧制御弁94および圧力制御弁120が開弁されるとともに、減圧制御弁140および流入制御弁150が閉弁されており、運転者によってブレーキペダル20が踏み込まれた場合には、マスタシリンダ24内の作動液が加圧されて、その作動液の圧力上昇が、主配管26a,26bを通じて各車輪のブレーキ装置14へと伝達される。そして、加圧された作動液によってブレーキ装置14が制動力を発生させるのである。つまり、通常、運転者による操作力およびバキュームブースタ22による助勢力によって加圧された作動液に依拠して、ブレーキ装置14が制動力を発生させるのである。
【0060】
ただし、バキュームブースタ22は、上述したように、ブレーキ操作に伴って変圧室64に大気が流入し、その変圧室64と負圧室28との間の圧力差を利用して、運転者による操作力を助勢する構造とされていることから、変圧室64内の空気圧である変圧室圧が大気圧に達するまでは助勢力は増加するが、変圧室圧が大気圧に達すると助勢力は増加しなくなる。このため、運転者による操作力が増加する際に、変圧室圧が大気圧に達するまでは操作力と助勢力との増加によってマスタシリンダ圧は増加するが、変圧室圧が大気圧に達すると操作力の増加のみによってマスタシリンダ圧は増加する。このため、運転者による操作力(踏力)Fとマスタシリンダ圧PMとの関係は、図6の実線に示すようになる。ちなみに、図中のFTは、変圧室圧が大気圧に達したときの操作力である。
【0061】
図から解るように、操作力FがそのFTを超えると、マスタシリンダ圧PMの増加勾配が急減する。増圧制御弁94および圧力制御弁120が開弁されるとともに、減圧制御弁140および流入制御弁150が閉弁された状態において、マスタシリンダ圧PMとブレーキシリンダ18に作用する作動液の液圧とは同じであるため、図の縦軸は、ブレーキシリンダ18に作用する作動液の液圧であるブレーキシリンダ圧PBと考えることができる。つまり、変圧室圧が大気圧になると、バキュームブースタ22による助勢が限界に達し、制動力の増加勾配が急減するのである。制動力の増加勾配、詳しく言えば、単位操作力あたりの制動力の増加量が減ると、運転者はブレーキの効きが悪くなったと感じて、ブレーキ操作に違和感を感じる虞があり、制動力の増加勾配の急減は望ましくない。
【0062】
本システム10では、バキュームブースタ22による助勢が限界に達しても、制動力の増加勾配が急減することなく、ブレーキの効きが悪くならないように、ブレーキシリンダ圧PBを増加させる制御、所謂、ブレーキ効き特性制御を実行している。詳しく言えば、バキュームブースタ22による助勢が限界に達しても、図6の一点鎖線に示すように、ブレーキシリンダ圧PBを変化させるべく、バキュームブースタ22による助勢が限界に達した後に、作動液加圧装置としてのポンプ108を作動させて、そのポンプ108によって作動液を加圧する制御を実行している。具体的には、バキュームブースタ22による助勢が限界に達した後に、増圧制御弁94が開弁されるとともに減圧制御弁140が閉弁された状態が維持され、流入制御弁150が開弁されるとともに、ポンプ108が作動させられる。そして、さらに圧力制御弁120のソレノイド134が励磁状態とされる。圧力制御弁120は、上述したように、ソレノイド134への通電量を制御することで、ブレーキシリンダ圧PBとマスタシリンダ圧PMとの圧力差、詳しく言えば、ブレーキシリンダ圧PBからマスタシリンダ圧PMを減じた圧力差ΔPを制御することが可能な構造とされている。したがって、その圧力差ΔPが、図6中での斜線に相当する大きさになるように、ソレノイド134への通電量を制御することで、ブレーキシリンダ圧PBを、図6の一点鎖線に示すように変化させるのである。
【0063】
本システム10では、バキュームブースタによる助勢限界後において、ブレーキシリンダ圧とマスタシリンダ圧との圧力差ΔPが、図に示すように、操作力Fの増大、つまり、マスタシリンダ圧PMの増大に伴って大きくなるように、ソレノイド134への通電量を制御している。具体的には、コントローラ182のコンピュータには、図7に示すようなマスタシリンダ圧PMをパラメータとする圧力差ΔPに関するマップデータ、詳しく言えば、変圧室圧が大気圧となったことに起因して生じさせるべき圧力差(以下、「大気圧時圧力差」という場合がある)ΔPTに関するマップデータが格納されており、大気圧時圧力差ΔPTが、その設定された規則であるマップデータを参照することによって決定される。ちなみに、図中のPMTは、変圧室圧が大気圧に達したときのマスタシリンダ圧である。そして、その決定された大気圧時圧力差ΔPTに基づく力F1と圧力制御弁120の有するスプリング136の弾性力F2とを加えた力をソレノイド134が発生できるように、ソレノイド134への供給電流iが決定される。このように決定された供給電流iをソレノイド134へ通電するとともに、ポンプ108を作動させることで、ブレーキシリンダ圧PBを図6の一点鎖線に示すように変化させることが可能となり、バキュームブースタによる助勢限界の前後にかかわらず、ブレーキの効き特性を一定にすることが可能となる。
【0064】
上述したブレーキ効き特性制御においては、変圧室圧が大気圧となった時点において助勢限界であると認定し、その時点以降にブレーキ装置に作用する作動液に圧力が加えられている。変圧室圧が大気圧となると、負圧室28と変圧室64との差が大きくならず、バキュームブースタ22による助勢が限界に達するためである。しかし、変圧室64への大気の流入に伴って変圧室圧が大気圧に近づく過程において、負圧室28と変圧室64との差が大きくならず、逆に、その差が小さくなり、バキュームブースタによるブースタ効果が低下する場合がある。
【0065】
詳しく説明すれば、ブレーキ操作に伴って、バキュームブースタ22のダイヤフラム62は負圧室28側に動き、負圧室28の容積が減少するとともに、変圧室64の容積は増加する。このため、ブレーキ操作に伴う変圧室64への大気の流入が無いと仮定すれば、変圧室64の容積の増加に依拠して、変圧室圧は低下する。一方で、ブレーキペダル20が操作されると、実際には、変圧室64へ大気が流入して、変圧室圧は増加する。変圧室64への大気の流入に依拠した変圧室圧の増加速度は、通常、変圧室64の容積増加に依拠した変圧室圧の低下速度よりも高いため、変圧室圧は、低下することなく、大気圧となる迄増加する。しかし、変圧室64へ大気が流入する際に、大気は、図5(b)の矢印に示すように、比較的狭い隙間を通って変圧室内に流入するとともに、フィルタ176を介して変圧室内に流入するため、大気の流入速度には限界がある。このため、例えば、急ブレーキ操作時には、変圧室64の容積の増加速度が高くなり、容積増加に依拠した変圧室圧の低下速度が、大気の流入に依拠した変圧室圧の増加速度より高くなる場合がある。このような場合には、変圧室圧への大気の流入に伴って変圧室圧が大気圧に近づく過程において、変圧室圧が低下する。
【0066】
一方で、ブレーキ操作に伴って負圧室28の容積が減少する際に、負圧室28内の空気圧である負圧室圧が高くなる場合がある。負圧室28は、逆止弁50を介して負圧配管32によってインテークマニホルド34に接続されており、負圧室28の容積が減少しても、通常は、負圧室内の空気がインテークマニホルド34へ流出するため、負圧室圧は大きくは変化しない。ただし、負圧室28内の空気は、負圧配管32,逆止弁50を介して、インテークマニホルド34へ流出するため、空気の流出速度には限界があり、急ブレーキ等において、負圧室28の容積の減少速度が高い場合には、負圧室圧が高くなる場合がある。
【0067】
図8(a)に、急ブレーキ操作時における変圧室圧PH(実線)および負圧室圧PF(一点鎖線)を、図8(b)に、マスタシリンダ圧PMを、時間tの経過を横軸とするグラフにて概略的に示す。ブレーキ操作開始時点(t1)においては、負圧室28と変圧室64とは連通していることから、変圧室圧PHと負圧室圧PFとは同じとなっており、その後、ブレーキ操作に伴って、変圧室64へ大気が流入して、変圧室圧PHは大気圧PTに近づいていく。変圧室圧PHは大気圧PTに近づく過程において、t2経過時に変圧室圧PHは低下し始め、t3時点において変圧室圧PHが最も低下する。つまり、t2経過時からt3時点までは、変圧室64の容積増加に依拠した変圧室圧の低下速度が、変圧室64はの大気の流入に依拠した変圧室圧の増加速度より高くなり、変圧室圧PHが低下したと考えられる。そして、t3時点以降、変圧室圧PHは再び増加し、t4時点において、変圧室圧PHは大気圧PTとなる。一方、負圧室圧PFは、負圧室28の容積の増加に伴って増加して、負圧室28内の空気がインテークマニホルド34へ流出することで、減少する。
【0068】
図から解るように、t1時点からt2時点までは、変圧室圧PHが急激に増加しているため、変圧室圧PHと負圧室圧PFとの差は大きくなっている。そして、t2経過時からt3時点までは、変圧室圧PHが低下するとともに、負圧室圧PFが高くなるため、変圧室圧PHと負圧室圧PFとの差は小さくなっている。特に、変圧室圧PHが最も低下するt3時点においては、変圧室圧PHと負圧室圧PFとの差は相当小さくなる。このため、t3時点以降のマスタシリンダ圧PMの増加勾配は、t1時点からt3時点までのマスタシリンダ圧PMの増加勾配より小さくなっている。つまり、変圧室圧PHが大気圧となる前に、t3時点において、バキュームブースタによるブースタ効果が低下するのである。なお、t3時点においてブースタ効果が低下しても、変圧室圧PHがt4時点において大気圧となるまでは、変圧室圧PHと負圧室圧PFとの差はある程度大きくなることから、t3経過時からt4時点までのマスタシリンダ圧PMの増加勾配は、t4時点以降のマスタシリンダ圧PMの増加勾配より僅かに大きくなっている。
【0069】
そこで、本システム10では、ブレーキ操作に伴って変圧室圧が大気圧に近づく過程において、変圧室圧が低下したときには、減圧室圧が大気圧となった時点ではなく、変圧室圧が最も低下した時点において助勢限界とみなし、ブレーキ効き特性制御を実行している。変圧室圧が最も低下した時点に開始されるブレーキ効き特性制御と、減圧室圧が大気圧となった時点に開始されるブレーキ効き特性制御とは、開始条件は異なっているが、制御方法に関しては、殆ど同じである。このため、変圧室圧の低下時におけるブレーキ効き特性制御の説明において、制御方法の同じ部分については説明を省略あるいは簡略するものとする。
【0070】
ブレーキ操作に伴って変圧室圧が大気圧に近づく過程において、変圧室圧が低下する場合の運転者による操作力(踏力)Fとマスタシリンダ圧PMとの関係は、図9の実線に示すようになる。ちなみに、図中のPMTは、変圧室圧が大気圧に達したときのマスタシリンダ圧であり、PMDは、変圧室圧が最も低下したときのマスタシリンダ圧である。本制御においても、図9の一点鎖線に示すように、ブレーキシリンダ圧PBを変化させるべく、ブレーキシリンダ圧PBとマスタシリンダ圧PMとの圧力差ΔPが、図中での斜線に相当する大きさになるように、ソレノイド134への通電量が制御される。
【0071】
具体的には、コントローラ182のコンピュータには、図10に示すようなマスタシリンダ圧PMをパラメータとする圧力差ΔPに関するマップデータ、詳しく言えば、変圧室圧が低下したことに起因して生じさせるべき圧力差(以下、「低下時圧力差」という場合がある)ΔPDに関するマップデータが格納されており、変圧室圧が最も低下した時点から大気圧に達するまで、つまり、マスタシリンダ圧PMがPMD以上PMT未満である場合において、低下時圧力差ΔPDが、その設定された規則であるマップデータを参照することによって決定される。ちなみに、図中のΔP0は、変圧室圧が大気圧に達したときにあるべき圧力差ΔPである。そして、変圧室圧が大気圧に達した後、つまり、マスタシリンダ圧PMがPMT以上となった場合には、図7に示すマップデータを参照することによって、大気圧時圧力差ΔPTが決定され、その決定された大気圧時圧力差ΔPTとΔP0とを和したものが、生じさせるべき圧力差ΔPとなる。
【0072】
図11に、変圧室圧の低下時におけるブレーキ効き特性制御での圧力差ΔPと、マスタシリンダ圧PMとの関係をグラフにて概略的に示す。マスタシリンダ圧PMがPMD以上PMT未満である場合、つまり、変圧室圧が最も低下した時点から大気圧になるまでは、図10に示すようなマップデータに従って圧力差ΔPが決定されており、マスタシリンダ圧PMがPMT以上である場合、つまり、変圧室圧が大気圧になった後は、図10に示すようなマップデータに従って圧力差ΔPが決定されているのである。図から解るように、変圧室圧が大気圧になった後の圧力差ΔPの増加勾配が、変圧室圧が大気圧になる迄の圧力差ΔPの増加勾配より大きくなっている。このように圧力差ΔPを決定することで、ブレーキシリンダ圧PBを図9の一点鎖線に示すように変化させることが可能となり、変圧室圧の低下時におけるブレーキ効き特性制御においても、ブレーキの効き特性を一定にすることが可能となる。
【0073】
ちなみに、上述したように、助勢限界に伴って変圧室圧が低下する場合があるが、運転者によるブレーキペダル20の操作方法によって変圧室圧が低下する場合がある。具体的には、例えば、運転者がブレーキ操作の最中にブレーキペダル20への操作力を一旦弱めて、再度ブレーキペダル20を踏み込むような場合である。このような場合には、変圧室が負圧室に連通させられて、変圧室が低下することがあるのである。そこで、本システム10では、助勢限界以外の要因で変圧室圧が低下する虞がある場合には、変圧室圧の低下時におけるブレーキ効き特性制御の実行を禁止している。詳しく言えば、ブレーキペダル20の操作量が減少しているような場合には、助勢限界以外の要因で変圧室圧が低下する虞があるため、変圧室圧の低下時におけるブレーキ効き特性制御の実行を禁止している。具体的には、マスタシリンダ圧PMの変化速度が0より大きい場合にはブレーキペダル20の操作量が増加していると考えられることから、マスタシリンダ圧PMの変化速度が負の値に設定された閾速度以下である場合には、変圧室圧の低下時におけるブレーキ効き特性制御の実行を禁止している。
【0074】
<制御プログラム>
本システム10において、バキュームブースタ22の助勢限界時に実行されるブレーキ効き制御は、図12にフローチャートを示すブレーキ制御プログラムが、イグニッションスイッチがON状態とされている間、短い時間間隔(例えば、数msec)をおいてコントローラ182により繰り返し実行されることによって行われる。以下に、その制御のフローを、図に示すフローチャートを参照しつつ、簡単に説明する。
【0075】
本プログラムに従う処理では、まず、ステップ1(以下、単に「S1」と略す。他のステップについても同様とする)において、液圧センサ200によってマスタシリンダ圧PMが検出される。次に、S2において、バキュームブースタ22による助勢限界を認定するべく、図13にフローチャートを示す助勢限界認定サブルーチンを実行するための処理が実行される。このサブルーチンにおいては、まず、S21において、ブレーキ操作がされているか否かが判定される。具体的には、マスタシリンダ圧PMが閾値を超えているか否かが判定される。マスタシリンダ圧PMが閾値を超えていると判定された場合、つまり、ブレーキ操作がされていると判定された場合には、S22において、大気圧時助勢限界フラグGTのフラグ値が1にされているか否かが判定される。そのフラグGTは、変圧室圧PHが大気圧PTになったことによってバキュームブースタによる助勢が限界に達しているか否かを示すフラグであり、そのフラグGTのフラグ値が1とされている場合には、変圧室圧PHが大気圧PTになったことによって助勢限界に達していることを示し、0とされている場合には、変圧室圧PHが大気圧PTになったことによっては助勢限界に達していないことを示している。
【0076】
大気圧時助勢限界フラグGTのフラグ値が0にされていると判定された場合には、S23において、圧力センサ178によって変圧室圧PHが検出され、S24において、大気圧センサ202によって大気圧PTが検出される。次に、S25において、変圧室圧PHが大気圧PTになっているか否かが判定される。変圧室圧PHが大気圧PTになっていないと判定された場合には、S26において、低下時助勢限界フラグGDのフラグ値が1にされているか否かが判定される。そのフラグGDは、ブレーキ操作中に変圧室圧PHが低下したことに依拠して助勢限界とみなされているか否かを示すフラグであり、そのフラグGDのフラグ値が1とされている場合には、変圧室低下に依拠して助勢限界とみなされていることを示し、0とされている場合には、変圧室低下に依拠して助勢限界とみなされていないことを示している。
【0077】
低下時助勢限界フラグGDのフラグ値が0にされていると判定された場合には、S27において、マスタシリンダ圧PMの変化速度Vが演算され、S28において、その演算されたマスタシリンダ圧PMの変化速度Vが閾速度V0以下であるか否かが判定される。変化速度Vが閾速度V0より高いと判定された場合には、S29において、変圧室圧PHが低下しているか否かが判定される。具体的には、今回の本プログラムの実行において検出された変圧室圧PHが、前回の本プログラムの実行において検出された前回変圧室圧PHPより小さいか否かが判定される。変圧室圧PHが前回変圧室圧PHPより小さいと判定された場合、つまり、変圧室圧PHが減少していると判定された場合には、S30において、変圧室圧低下フラグGGのフラグ値が1にされる。そのフラグGGは、変圧室圧PHが低下しているか否かを示すフラグであり、そのフラグGGのフラグ値が1とされている場合には、変圧室圧PHが低下していることを示し、0とされている場合には、変圧室圧PHが低下していないことを示している。次に、S31において、変圧室圧PHが最も低下したときのマスタシリンダ圧である低下時マスタシリンダ圧PMDが、今回の本プログラムの実行において検出されたマスタシリンダ圧PMとされる。
【0078】
また、S29において変圧室圧PHが低下していないと判定された場合には、S32において、変圧室圧低下フラグGGのフラグ値が1にされているか否かが判定される。そのフラグGGのフラグ値が1にされていると判定された場合には、S33において、そのフラグGGのフラグ値が0にされ、S34において、低下時助勢限界フラグGDのフラグ値が1にされる。また、S25において変圧室圧PHが大気圧PTになっていると判定された場合には、S35において、変圧室圧PHが大気圧PTとなったときのマスタシリンダ圧である大気圧時マスタシリンダ圧PMTが、今回の本プログラムの実行において検出されたマスタシリンダ圧PMとされ、S36において、大気圧時助勢限界フラグGTのフラグ値が1にされる。
【0079】
また、S28においてマスタシリンダ圧PMの変化速度Vが閾速度V0以下であると判定された場合には、S37において、変圧室圧低下フラグGGのフラグ値が1にされているか否かが判定され、そのフラグGGのフラグ値が1にされていると判定された場合には、S38において、そのフラグGGのフラグ値が0にされる。また、S21においてブレーキ操作がされていないと判定された場合には、S39〜S41において、低下時助勢限界フラグGD,大気圧時助勢限界フラグGT,変圧室圧低下フラグGGの各フラグ値が0にされる。各フラグGD,GT,GGのフラグ値が決定されると、このサブルーチンが終了する。ちなみに、このサブルーチンを実行することで、バキュームブースタによる助勢限界を認定することが可能であり、ブレーキ操作時に変圧室圧が低下した場合の助勢限界認定方法を実行することが可能となっている。
【0080】
助勢限界判定サブルーチンの実行の後、S3において、大気圧時助勢限界フラグGTのフラグ値が1とされているか否かが判定される。そのフラグGTのフラグ値が0とされていると判定された場合には、S4において、低下時助勢限界フラグGDのフラグ値が1とされているか否かが判定される。そのフラグGDのフラグ値が0とされていると判定された場合には、運転者による操作力とバキュームブースタ22による助勢力とによって制動力を発生させるべく、S5において、ソレノイド134への供給電流iが0に決定され、その決定された供給電流iに基づく電流制御信号が駆動回路192に送信される。そして、S6において、流入制御弁150を閉弁させるための制御信号が駆動回路194に送信され、S7において、ポンプモータ184を停止させるための制御信号が駆動回路186に送信される。
【0081】
また、S4において低下時助勢限界フラグGDのフラグ値が1とされていると判定された場合には、S8において、低下時マスタシリンダ圧PMDとマスタシリンダ圧PMとに基づいて、図10に示すようなマップデータを参照することによって低下時圧力差ΔPDが演算される。そして、S9において、ブレーキ効き特性制御に用いられる圧力差ΔPが、その演算された低下時圧力差ΔPDに決定される。また、S3において大気圧時助勢限界フラグGTのフラグ値が1とされていると判定された場合には、S10において、大気圧時マスタシリンダ圧PMTとマスタシリンダ圧PMとに基づいて、図7に示すようなマップデータを参照することによって大気圧時圧力差ΔPTが演算される。そして、S11において、低下時助勢限界フラグGDのフラグ値が1とされているか否かが判定され、そのフラグGDのフラグ値が1とされていると判定された場合には、S12において、制御に用いられる圧力差ΔPが、その演算された大気圧時圧力差ΔPTと、前回の本プログラムの実行において用いられた前回低下時圧力差ΔPDPとを和したものに決定される。ちなみに、前回低下時圧力差ΔPDPは、図10中でのΔP0に相当する。また、低下時助勢限界フラグGDのフラグ値が0とされていると判定された場合には、S13において、制御に用いられる圧力差ΔPが、演算された大気圧時圧力差ΔPTに決定される。
【0082】
制御に用いられる圧力差ΔPが決定されると、ブレーキ効き特性制御を実行するべく、S14において、その決定された圧力差ΔPに基づいて、ソレノイド134への供給電流iが決定され、その決定された供給電流iに基づく電流制御信号が駆動回路192に送信される。そして、S15において、流入制御弁150を開弁させるための制御信号が駆動回路194に送信され、S16において、ポンプモータ184を駆動させるための制御信号が駆動回路186に送信される。以上の一連の処理の後、本プログラムの1回の実行が終了する。
【0083】
<コントローラの機能構成>
上記プログラムを実行するコントローラ182は、それの実行処理に鑑みれば、図14に示すような機能構成を有するものと考えることができる。図から解るように、コントローラ182は、S8〜S16の処理を実行する機能部、つまり、ブレーキ効き特性制御を実行する機能部として、ブレーキ効き特性制御実行部210を、S21〜S37の処理を実行する機能部、つまり、バキュームブースタ22による助勢限界を認定する機能部として、助勢限界認定部212を、それぞれ備えている。ちなみに、助勢限界認定部212は、助勢限界を認定するための助勢限界認定装置として機能している。
【0084】
なお、ブレーキ効き特性制御実行部210は、S8〜S13の処理を実行する機能部、つまり、マスタシリンダ圧PMとブレーキシリンダ圧PBとの間に生じさせるべき圧力差ΔPを決定する機能部として、圧力差決定部216を、S14〜S16の処理を実行する機能部、つまり、その圧力差決定部によって決定された圧力差ΔPをマスタシリンダ圧PMとブレーキシリンダ圧PBとの間に生じさせる機能部として、圧力差発生部218を、それぞれ有している。また、助勢限界認定部212は、S23〜S25の処理を実行する機能部、つまり、変圧室圧PHが大気圧PTになったことに依拠して助勢限界を認定する大気圧依拠助勢限界認定部220を、S27〜S32の処理を実行する機能部、つまり、変圧室圧PHが低下したことに依拠して助勢限界を認定する変圧室圧低下依拠助勢限界認定部222を、それぞれ有している。
【符号の説明】
【0085】
10:車両用ブレーキシステム 14:ブレーキ装置 20:ブレーキペダル(ブレーキ操作部材) 22:バキュームブースタ 24:マスタシリンダ 26:主配管(連通路) 28:負圧室 56:ハウジング 62:ダイヤフラム 64:変圧室 108:ポンプ(作動液加圧装置) 120:圧力制御弁(流通状態切換器)(調整器) 176:フィルタ 180:ブレーキ電子制御ユニット(制御装置) 212:助勢限界認定部(助勢限界認定装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者によってブレーキ操作部材に加えられる操作力を助勢するバキュームブースタによる助勢限界を認定する助勢限界認定装置であって、
前記バキュームブースタが、
負圧室と、その負圧室と大気とに選択的に連通させられる変圧室とを有し、運転者によって前記ブレーキ操作部材に操作力が加えられていない場合には、前記変圧室が前記負圧室に連通させられており、前記ブレーキ操作部材に操作力が加えられた場合に、それら負圧室と変圧室との連通が遮断されるとともに前記変圧室が大気に連通させられることで、それら負圧室と変圧室との差圧に依拠して前記ブレーキ操作部材に加えられる操作力を助勢する構造とされ、
当該助勢限界認定装置が、
前記ブレーキ操作部材に操作力が加えられて、前記変圧室内の空気圧である変圧室圧が大気圧に近づく過程において、その変圧室圧が低下したときに、前記バキュームブースタによる助勢限界を認定する助勢限界認定装置。
【請求項2】
当該助勢限界認定装置が、
前記変圧室圧が最も低下した時点において前記バキュームブースタによる助勢限界を認定するように構成された請求項1に記載の助勢限界認定装置。
【請求項3】
前記バキュームブースタが、
ハウジングと、
そのハウジング内を前記負圧室と前記変圧室とに区画するとともに、前記ブレーキ操作部材に操作力が加えられた場合に、前記負圧室の容積が減少するとともに前記変圧室の容積が増大するように、前記ハウジング内において動くダイヤフラムと
を有する請求項1または請求項2に記載の助勢限界認定装置。
【請求項4】
前記バキュームブースタが、
前記変圧室が大気に連通させられた場合にその変圧室に空気が流入する流入路と、
その流入路に設けられたフィルタと
を有する請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載の助勢限界認定装置。
【請求項5】
当該助勢限界認定装置が、
前記ブレーキ操作部材の操作量が減少した場合には、前記変圧室圧の低下に依拠した前記バキュームブースタによる助勢限界の認定を禁止するように構成された請求項1ないし請求項4のいずれか1つに記載の助勢限界認定装置。
【請求項6】
当該助勢限界認定装置が、
前記ブレーキ操作部材の操作速度が閾速度以下の場合には、前記変圧室圧の低下に依拠した前記バキュームブースタによる助勢限界の認定を禁止するように構成された請求項1ないし請求項5のいずれか1つに記載の助勢限界認定装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか1つに記載の助勢限界認定装置と、
前記ブレーキ操作部材と、
前記バキュームブースタと、
前記ブレーキ操作部材に加えられる操作力と前記バキュームブースタによって助勢される助勢力とに依拠して作動液を加圧するマスタシリンダと、
そのマスタシリンダによって加圧された作動液によって制動力を発生させるブレーキ装置と、
そのブレーキ装置と前記マスタシリンダとの間を作動液が流通可能にそれらを連通させる連通路と、
その連通路に設けられて、前記ブレーキ装置と前記マスタシリンダとの間の作動液の流通を許容する状態と禁止する状態とを切換える流通状態切換器と、
その流通状態切換器と前記ブレーキ装置との間において、そのブレーキ装置に作用する作動液を加圧する作動液加圧装置と、
前記ブレーキ装置に作用する作動液の液圧を制御可能に調整する調整器と、
前記流通状態切換器を制御することで、前記ブレーキ装置と前記マスタシリンダとの間の作動液の流通状態を切換え、前記作動液加圧装置を制御することで、その作動液加圧装置の作動と停止とを切換え、前記調整器を制御することで、前記ブレーキ装置に作用する作動液の液圧を制御する制御装置と
を備えた車両用ブレーキシステムであって、
前記制御装置が、
前記助勢限界認定装置によって前記バキュームブースタによる助勢限界が認定された場合に、前記ブレーキ装置と前記マスタシリンダとの間の作動液の流通を禁止するとともに、前記ブレーキ装置に作用する作動液の液圧が前記マスタシリンダによって加圧される作動液の液圧より高くなるように、前記流通状態切換器と前記作動液加圧装置と前記調整器とを制御するように構成された車両用ブレーキシステム。
【請求項8】
前記制御装置が、
前記助勢限界認定装置によって前記バキュームブースタによる助勢限界が認定された場合に、前記ブレーキ装置と前記マスタシリンダとの間の作動液の流通が禁止された状態において前記マスタシリンダによって加圧される作動液の液圧が高いほど、その液圧と前記ブレーキ装置に作用する作動液の液圧との差が大きくなるように、前記調整器を制御するように構成された請求項7に記載の車両用ブレーキシステム。
【請求項9】
前記制御装置が、
前記助勢限界認定装置によって前記バキュームブースタによる助勢限界が認定された場合に、前記ブレーキ装置と前記マスタシリンダとの間の作動液の流通が禁止された状態において前記マスタシリンダによって加圧される作動液の液圧の増大に伴って、その液圧と前記ブレーキ装置に作用する作動液の液圧との差が増大するとともに、前記変圧室圧が大気圧になった後の前記差の増大勾配が、前記変圧室圧が大気圧になる迄の前記増大勾配より大きくなるように設定された規則に基づいて、前記調整器を制御するように構成された請求項7または請求項8に記載の車両用ブレーキシステム。
【請求項10】
運転者によってブレーキ操作部材に加えられる操作力を助勢するバキュームブースタによる助勢限界を認定する助勢限界認定方法であって、
前記バキュームブースタが、
負圧室と、その負圧室と大気とに選択的に連通させられる変圧室とを有し、運転者によって前記ブレーキ操作部材に操作力が加えられていない場合には、前記変圧室が前記負圧室に連通させられており、前記ブレーキ操作部材に操作力が加えられた場合に、それら負圧室と変圧室との連通が遮断されるとともに前記変圧室が大気に連通させられることで、それら負圧室と変圧室との差圧に依拠して前記ブレーキ操作部材に加えられる操作力を助勢する構造とされ、
当該助勢限界認定方法が、
前記ブレーキ操作部材に操作力が加えられて、前記変圧室内の空気圧である変圧室圧が大気圧に近づく過程において、その変圧室圧が低下したときに、前記バキュームブースタによる助勢限界を認定する助勢限界認定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−111125(P2011−111125A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−272084(P2009−272084)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【Fターム(参考)】