説明

助手席用エアバッグ装置

【課題】部品点数を低減させることができ、かつ、ミッドマウントタイプであっても、インストルメントパネルにおけるエアバッグの収納部位近傍に位置している近接物を不必要に押圧することを抑制可能な助手席用エアバッグ装置の提供。
【解決手段】助手席用エアバッグ装置Mでは、エアバッグ18が折り畳まれて形成される折り完了体72の周囲を覆うラッピング部材42が、エアバッグ18とともに収納部位10側に取り付けられる取付部と、取付部から前方に延びるラッピング本体44と、取付部から後方に延びてエアバッグ18の膨張初期に近接物との間に介在されるように構成されるカバー部47と、を備える。カバー部47は、エアバッグ18の折畳時に、前後縮小折りバッグ57の周囲を覆うとともに、先端側部位48を、前後縮小折りバッグ57における上折畳部63と下折畳部64との間に挟み込ませるようにして、配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の助手席前方におけるインストルメントパネルの上面後端付近に配設された収納部位内に折り畳まれて収納されるエアバッグを有するとともに、エアバッグを、膨張用ガスの流入時に、収納部位から後上方に向かって突出させつつ展開させる構成のミッドマウントタイプの助手席用エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ミッドマウントタイプの助手席用エアバッグ装置は、インストルメントパネルの上面側に配置されるトップマウントタイプの助手席用エアバッグ装置と比較して、車両後方側となる助手席に近い位置に搭載されることから、インストルメントパネルにおけるエアバッグの収納部位に近接物が接近している状態で作動する場合、膨張初期のエアバッグが、近接物を強く押圧する場合があり、近接物への押圧力を極力抑制させることが望ましい。
【0003】
そして、トップマウントタイプの助手席用エアバッグ装置としては、近接物に対する押圧力を抑制可能に、エアバッグの周囲にカバー布を配設させる構成のものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−116117公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の助手席用エアバッグ装置では、エアバッグの収納部位と近接物との距離が比較的大きなトップマウントタイプであり、また、カバー布とは別に、折り畳まれたエアバッグの外周側を覆うラッピングシートが必要であることから、部品点数を低減させる点に改善の余地があった。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、部品点数を低減させることができ、かつ、ミッドマウントタイプであっても、インストルメントパネルにおけるエアバッグの収納部位近傍に位置している近接物を、不必要に押圧することを抑制可能な助手席用エアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る助手席用エアバッグ装置は、車両の助手席前方におけるインストルメントパネルの上面後端付近に配設された収納部位内に折り畳まれて収納されるエアバッグを有するとともに、エアバッグを、膨張用ガスの流入時に、収納部位から後上方に向かって突出させつつ展開させる構成のミッドマウントタイプの助手席用エアバッグ装置であって、
エアバッグが、折り畳まれて形成される折り完了体の周囲を、ラッピング部材により覆われた状態で、収納部位内に収納されるとともに、膨張完了時の形状を、頂部を前端側に配設させた略四角錐形状として、膨張完了時に乗員側となる後端側において略鉛直方向に沿って配置される乗員側壁部と、乗員側壁部の周縁から前方に延びるとともに前端側にかけて収束される先細り形状の周壁部と、を備えて、膨張完了時の周壁部の下面側に、内部に膨張用ガスを流入可能に開口して、周縁を収納部位側に取り付けられるガス流入口を配設させて構成され、
ラッピング部材が、
ガス流入口の周縁とともに収納部位側に取り付けられる取付部と、
取付部から前方に延びるように形成されて、折り完了体の周囲を覆うように構成されるラッピング本体と、
取付部から後方に延びるように形成されるとともに、エアバッグの膨張初期において、インストルメントパネルに接近して位置する近接物との間に介在されるように構成されるカバー部と、
を備える構成とされ、
折り完了体が、
乗員側壁部の上端側における左右の略中央をガス流入口に接近させるように、少なくとも周壁部の部位を折り畳むことにより、予備折りバッグを形成した後、
予備折りバッグを、前後方向の幅寸法を縮めつつ、折畳部位をガス流入口の上方に配置させるようにして、かつ、前側を開口させるように上折畳部と下折畳部とを設けた折重部を、形成するような前後縮小折りにより、折り畳み、
前後縮小折りバッグにおけるガス流入口の周縁に取付部を係止させた状態のラッピング部材におけるカバー部を、先端側部位を折重部における上折畳部と下折畳部との間に挟み込ませるようにして、前後縮小折りバッグの周囲を覆うように配置させ、
前後縮小折りバッグを、カバー部上に折畳部位を載置させるように、左右方向の幅寸法を縮めつつ、左右縮小折りすることにより、
形成され、
ラッピング本体が、折り完了体の外周側を覆うように、配置され、
先端側部位が、取付部側の部位を上折畳部側に位置させ、端縁を下折畳部側に位置させるように、蛇腹折りされた状態で、上折畳部と下折畳部との間に配置されることを特徴とする。
【0008】
本発明の助手席用エアバッグ装置では、エアバッグの膨張初期において、インストルメントパネルに接近して位置する近接物との間に介在されるカバー部が、エアバッグを折り畳んで形成される折り完了体の周囲を覆うラッピング部材の一部から、構成されている。そのため、従来の助手席用エアバッグ装置と比較して、部品点数を低減させることができ、取付部位も共用できることから、組付工数も低減させることができる。
【0009】
また、本発明の助手席用エアバッグ装置では、カバー部は、ガス流入口の周縁とともに収納部位側に取り付けられる取付部から後方に連なるように配置されて、折り畳み途中のエアバッグにおいて、予備折り後に前後方向の幅寸法を縮めるように折り畳まれた前後縮小折りバッグの周囲を、後方側から上方側を経て前方側にかけて覆うように、配置される構成であり、収納部位に収納される折り完了体においては、カバー部の上方に、左右方向の幅寸法を縮めるように折り畳まれる左右縮小折りにより形成される折畳部位が、載置されることとなる。そのため、本発明の助手席用エアバッグ装置では、エアバッグの膨張初期に、まず、収納部位から、左右縮小折りにより形成される折畳部位が、後上方に突出しつつ、内部に膨張用ガスを流入させない薄い状態で、左右に広がるように展開することとなり、その後、カバー部により後方側から上方側を経て前方側にかけての周囲を覆われた状態の前後縮小折りバッグが、内部に膨張用ガスを流入させつつ、収納部位から後上方に向かって突出することとなる。このとき、本発明の助手席用エアバッグ装置では、カバー部の先端側部位が、前後縮小折りバッグの前面側において、折重部を構成する上折畳部と下折畳部との間に挟み込まれていることから、カバー部が前後縮小折りバッグから離隔することを抑制できて、カバー部により前後縮小折りバッグの後方側から上方側を経て前方側にかけての外周側を覆った状態を、維持させることができる。そのため、収納部位近傍に近接物が接近している場合に、エアバッグの膨張初期に、カバー部を、エアバッグと近接物との間に確実に介在させることができる。
【0010】
さらに、本発明の助手席用エアバッグ装置では、前後縮小折りバッグの前面側に位置するカバー部の先端側部位は、取付部側の部位を上折畳部側に位置させ、端縁を下折畳部側に位置させるように、蛇腹折りされた状態で、上折畳部と下折畳部との間に配置されることから、前後縮小折りバッグが折りを解消しつつ後上方に向かって突出する際に、カバー部は、この前後縮小折りバッグの突出に伴って、蛇腹折りの折りを解消しつつ上方に突出されることとなり、極力、エアバッグから離隔することを抑制され、かつ、前後に広い範囲でエアバッグを覆うことが可能となる。その結果、エアバッグのカバー部に対してずれ移動可能な範囲を広く確保することができて、近接物との距離が小さなミッドマウントタイプであっても、膨張初期のエアバッグが近接物と接触した際に、エアバッグが直接近接物と接触することを防止でき、かつ、エアバッグを、カバー部によって、近接物に対して円滑に滑らせることができて、膨張するエアバッグが、近接物を後方に向かって不必要に押圧することを抑制できる。
【0011】
したがって、本発明の助手席用エアバッグ装置では、部品点数や組付工数を低減させることができ、かつ、ミッドマウントタイプであっても、インストルメントパネルにおけるエアバッグの収納部位近傍に位置している近接物を、不必要に押圧することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態である助手席用エアバッグ装置の車両前後方向の断面図である。
【図2】実施形態の助手席用エアバッグ装置の車両左右方向の断面図である。
【図3】実施形態の助手席用エアバッグ装置で使用されるエアバッグを単体で膨張させた状態の前方から見た斜視図である。
【図4】図3のエアバッグの前後方向に沿った断面図である。
【図5】図3のエアバッグを構成する部材を示す平面図である。
【図6】実施形態の助手席用エアバッグ装置で使用されるラッピング部材の平面図である。
【図7】実施形態のエアバッグを予備折りした後を示すもので、乗員側壁部側から見た図である。
【図8】実施形態のエアバッグを予備折りした後を示すもので、ガス流入口側から見た図である。
【図9】図7のIX−IX部位の端面図である。
【図10】図7のX−X部位の端面図である。
【図11】実施形態のエアバッグの予備折り後の折畳工程を示す図である。
【図12】実施形態のエアバッグの折畳工程を示す図であり、図11の後の工程を示す。
【図13】実施形態のエアバッグの折畳工程を示す図であり、図12の後の工程を示す。
【図14】実施形態の助手席用エアバッグ装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態を示す車両側方から見た概略断面図である。
【図15】実施形態の助手席用エアバッグ装置において、近接乗員が接近している状態でのエアバッグの展開膨張状態を示す車両前後方向に沿った概略図である。
【図16】実施形態の助手席用エアバッグ装置において、近接乗員が接近している状態のエアバッグの展開膨張状態を示す車両左右方向に沿った概略図である。
【図17】実施形態の助手席用エアバッグ装置において、近接小柄乗員が接近している状態でのエアバッグの展開膨張状態を示す車両前後方向に沿った概略図である。
【図18】実施形態のエアバッグの他の折畳工程を示す図である。
【図19】実施形態のエアバッグの折畳工程を示す図であり、図18の後の工程を示す。
【図20】実施形態のエアバッグの折畳工程を示す図であり、図19の後の工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、実施形態の助手席用エアバッグ装置Mは、図1,14に示すように、インストルメントパネル(以下「インパネ」と省略する)1における上面2の後端付近に配置されるミッドマウントタイプとされている。助手席用エアバッグ装置Mは、図1,2に示すように、折り畳まれたエアバッグ18と、エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーター8と、エアバッグ18及びインフレーター8を収納保持する収納部位としてのケース10と、エアバッグ18及びインフレーター8をケース10に取り付けるためのリテーナ14と、折り畳まれたエアバッグ18の後上方を覆うエアバッグカバー6と、折り畳まれたエアバッグ18(折り完了体72)の周囲を覆うラッピング部材42と、を備えて構成されている。
【0014】
なお、本明細書での上下、前後、及び、左右の方向は、特に断らない限り、車両の上下、前後、及び、左右の方向に一致するものである。
【0015】
エアバッグカバー6は、図1,2に示すように、合成樹脂製のインパネ1と一体的に形成されて、エアバッグ18の展開膨張時に、前後二枚の扉部6a,6aをエアバッグ18に押されて開かせ、ケース10の上端側に形成される突出用開口10aを開口させるように、構成されている。また、エアバッグカバー6における扉部6a,6aの周囲には、ケース10に連結される連結壁部6bが、形成されている。
【0016】
インフレーター8は、実施形態の場合、外形形状を、軸方向を左右方向に略沿わせた略円柱状としたシリンダタイプとされている。特に、実施形態では、インフレーター8として、異なるタイミングで膨張用ガスを吐出可能な2種類のガス吐出口8a,8bを、外周面に多数配設させたデュアルタイプのものを使用している(図2参照)。このインフレーター8は、図2に示すように、軸方向の両端側を、ケース10における後述する下部室12から露出させ、両端側に、リード線を結線させるコネクタ(図符号省略)を配置させている。
【0017】
収納部位としてのケース10は、実施形態の場合、図1,2に示すように、上方を開口させた略直方体形状の上部室11と、上部室11の下方において上部室11と連通するように配置される下部室12と、を備えている。上部室11は、エアバッグカバー6の連結壁部6bを係止させる略四角筒形状の周壁部11aと、周壁部11aの下端側における前後両縁側から内方に向かって延びる底壁部11bと、を備える構成とされるもので、折り畳まれたエアバッグ18(折り完了体72)を内部に収納させる構成である。底壁部11bには、リテーナ14のボルト14aを挿通させるための挿通孔(図符号省略)が、形成されている。下部室12は、前後左右の幅寸法を、上部室11より小さく設定されて、インフレーター8を内部に収納させるもので、上部室11における底壁部11bの内周縁から下方に延びるように形成されるとともに、左右両端側を、インフレーター8の両端(端面)を露出可能に開口させて構成されている。また、下部室12における下面側には、ケース10を車両のボディ側に取り付けるためのブラケット(図符号省略)が、配設されている。
【0018】
リテーナ14は、略四角環状とされるとともに、前後方向の中央側を、インフレーター8の外周面に沿って、上方に突出するように湾曲させて構成されるもので、前縁側と後縁側とに、それぞれ、下方に突出する複数のボルト14a(実施形態の場合3箇所ずつ)を、備えている。実施形態の場合、エアバッグ18とインフレーター8とは、エアバッグ18の内部に配置されるリテーナ14のボルト14aを、エアバッグ18におけるガス流入口22の周縁21、ケース10における上部室11の底壁部11bに貫通させて、ナット15止めさせることにより、ケース10に取り付けられている。インフレーター8は、ボルト14aをナット15止めした際に、ケース10の下部室12とリテーナ14とにより上下から挟持されることにより、ケース10に取り付けられる構成である。
【0019】
エアバッグ18は、図14に示すように、膨張完了時に、インパネ1の上面2とインパネ1上方のウィンドシールド4との間を塞ぐように配置可能な袋状とされるもので、膨張完了時の形状を、図3,4に示すように、頂部を前端側に配設させた略四角錐形状として、膨張完了時に乗員側となる後端側において略鉛直方向に沿って配置される乗員側壁部26と、乗員側壁部26の周縁から前方に延びるとともに前端側にかけて収束される先細り形状(実施形態の場合、略円錐形状)の周壁部19と、を備える構成とされている。周壁部19は、エアバッグ18の膨張完了時において、上下両側で略左右方向に沿って配置される上側壁部19a,下側壁部19bと、左右両側で略前後方向に沿って配置される左側壁部19c,右側壁部19dと、から構成されている。膨脹完了時のエアバッグ18において、下側壁部19bの前後の中央より前方となる位置において、左右の中央となる位置には、内部に膨張用ガスを流入させるように長方形状に開口されて、周縁21をケース10における上部室11の底壁部11bに取り付けられるガス流入口22が、形成されている。ガス流入口22の周縁21には、リテーナ14のボルト14aを挿通させて、ガス流入口22の周縁21をケース10の底壁部11bに取り付けるための複数(実施形態の場合、6個)の取付孔23が、形成されている。また、エアバッグ18における左側壁部19cと右側壁部19dとの領域には、余剰の膨張用ガスを排気可能なベントホール24が、形成されている(図3,4参照)。
【0020】
エアバッグ18における乗員側壁部26は、膨張完了時に、助手席に着座した乗員MPと対向するように乗員側に配置されるもので、実施形態の場合、膨張完了時に、左右方向の中央を、上下の略全域にわたって前方側に凹ませるように、凹凸を有して構成されている。すなわち、乗員側壁部26は、エアバッグ18の膨張完了時に、左右方向の中央で凹む凹部27と、凹部27の左右両側で相対的に後方へ突出するように形成される突出部28L,28Rと、を、上下方向に沿って連続的に配設させるようにして、構成されている(図4参照)。実施形態では、膨張完了後のエアバッグ18の乗員側壁部26に乗員MP(助手席に着座している乗員)が当接する際、まず、乗員MPの左右の肩部MSが、後方へ突出している突出部28L,28Rと当たって拘束され、肩部MSを突出部28L,28Rにより拘束された状態で、乗員MPの頭部MHを凹部27内に進入させるようにして、頭部MHが凹部27の周囲の部位により、保護されることとなる(図14参照)。実施形態のエアバッグ18では、凹部27における凹みの先端は、後述する第2基布38L,38Rの内側縁部38a,38a相互を縫着させて構成される縫合部位49から構成され、各突出部28L,28Rにおける突出の先端は、後述する第1基布33の左側部位35,右側部位36の周縁部35a,36aと、第2基布38L,38Rの外側縁部38d,38dと、をそれぞれ縫着させて構成される縫合部位50L,50Rから、構成されている。なお、実施形態の場合、この凹部27の凹んだ状態と、突出部28L,28Rの隆起した状態と、は、周壁部19における上側壁部19a及び下側壁部19bの領域となる前方側に延びるように、ガス流入口22近傍となる位置まで連続的に、形成されている(図4参照)。
【0021】
また、実施形態のエアバッグ18は、図3,4に示すように、内部に整流布30を配設させている。整流布30は、ガス流入口22の上方を覆うとともに、前後方向の両端側を開口させた略筒形状とされるもので、ガス流入口22から流入した膨張用ガスGを、前後両側に整流する構成とされている。すなわち、実施形態のエアバッグ18では、ガス流入口22から流入した膨張用ガスGは、整流布30の前後の開口30a,30bから、前後両側に向かうように整流されて、エアバッグ18内に流入することとなる(図4参照)。この整流布30は、図5に示すような整流布素材40から、構成されている。整流布素材40は、ガス流入口22の周縁21に連結される連結部40aと、連結部40aの左右両側から左右に延びる本体部40b,40bと、を備えている。
【0022】
エアバッグ18は、所定形状の基布の周縁相互を結合させて構成されるもので、実施形態の場合、図5に示すように、左側壁部19c,右側壁部19d,下側壁部19bの前側部位を構成する第1基布33と、上側壁部19a,乗員側壁部26,下側壁部19bの後側部位を構成する2枚の第2基布38L,38Rと、から構成されている。
【0023】
第1基布33は、開いた蝶の形に近似した左右対称形として、ガス流入口22の周縁21を構成する略長方形状の下側部位34と、下側部位34から左右両側に延びるように配設される略三角板形状の左側部位35,右側部位36と、を備える構成とされている。下側部位34は、膨張完了時のエアバッグ18における下側壁部19bの前側部位を構成し、左側部位35及び右側部位36は、それぞれ、膨張完了時のエアバッグ18における左側壁部19c,右側壁部19dを、主に構成することとなる。
【0024】
第2基布38L,38Rは、略C字形状に湾曲した帯状の左右一対として構成されるもので、膨張完了時における上側壁部19aから後側の乗員側壁部26を経て下側壁部19bの後側部位にかけての領域を、左右で2分割するように、構成されている。実施形態の場合、各第2基布38L,38Rは、外側縁部38d,38dの形状を、それぞれ、第1基布33における左側部位35,右側部位36の周縁部35a,36aにおける元部側縁部35b,36bを除いた部位の形状と略一致させるように、構成されている。なお、エアバッグ18を構成する第1基布33,第2基布38L,38Rと、整流布素材40と、は、実施形態の場合、ポリエステル糸やポリアミド糸等からなる可撓性を有した織布であって、シリコン等のコーティング剤を塗布しないノンコート布から、構成されている。
【0025】
ラッピング部材42は、可撓性を有したシート材から構成されるもので、実施形態の場合、エアバッグ18と同様に、ポリエステル糸やポリアミド糸等からなるノンコート布から、形成されている。ラッピング部材42は、幅寸法W1(図6参照)を、エアバッグ18を折り畳んで形成される折り完了体の幅寸法W2(図13のB参照)と略一致させて構成される帯状とされるもので、図6に示すように、ガス流入口22の周縁21とともにケース10側に取り付けられる取付部43と、取付部43から前方に延びるように形成されるラッピング本体44と、取付部43から後方に延びるように形成されるカバー部47と、を備えて構成されている。
【0026】
取付部43は、エアバッグ18に形成されるガス流入口22と取付孔23とに対応した開口43a,43bを、それぞれ、有する構成とされて、エアバッグ18の折り畳み時において、ガス流入口22の周縁21(取付孔23)から突出しているリテーナ14のボルト14aを、開口43bに挿通させることにより、ガス流入口22の周縁21に係止された状態で、ガス流入口22の周縁21とともに、ケース10に取り付けられる構成である。
【0027】
ラッピング本体44は、折り完了体72の周囲を覆うもので、前後方向の長さ寸法L1(図6参照)を、折り完了体72の左右両側を除いた周囲(前方から上方を経て後方にかけて)を全周にわたって覆い可能な寸法に設定されている。ラッピング本体44の先端44a側には、リテーナ14のボルト14aを挿通可能な挿通孔44bが、形成されている。また、ラッピング本体44において、折り完了体72の周囲に配置させた際に、折り完了体72の上面側を覆う上側部位45の前後の略中央には、スリット45aが、形成されている。スリット45aは、実施形態の場合、詳細には、上側部位45における左右両縁側を除いて形成されるもので、左右方向に略沿って連続的な直線状とされる2つのメインスリットと、メインスリットにおける内側の端部の前後に配置される2つの補助スリットと、を備えている。このラッピング本体44は、インフレーター8の作動時において、エアバッグ18の内部に膨張用ガスが流入すると、スリット45a間の部位を破断させて、前後に分離されることとなる。
【0028】
カバー部47は、エアバッグ18の膨張初期において、インパネ1に接近して位置する近接物との間に介在されるように構成されている。カバー部47は、長尺帯状とされており、実施形態の場合、前後方向の長さ寸法L2(図6参照)を、ラッピング本体44の前後方向の長さ寸法L1の1.6倍程度に、設定されている。このカバー部47の長さは、エアバッグ18の膨張初期に、インパネ1に接近している近接物(実施形態の場合、近接乗員NP1や幼児等の近接小柄乗員NP2)との間に確実に介在可能で、かつ、近接物との接触後に、エアバッグ18を、カバー部47によって、近接物に対して円滑に滑らせることが可能な寸法に、設定されている。
【0029】
次に、実施形態の助手席用エアバッグ装置Mの車両への搭載について、説明をする。
【0030】
まず、エアバッグ18の製造について説明をする。平らに展開した状態の第1基布33の下側部位34に、整流布素材40の連結部40aを重ねて、ガス流入口22の周縁21となる部位で縫着させ、孔明け加工により、ガス流入口22及び取付孔23を形成する。次いで、整流布素材40の本体部40b,40bの縁部相互を縫着させて、整流布30を形成する。その後、第2基布38L,38Rを相互に重ね、内側縁部38a,38a相互を縫着させて、縫合部位49を形成する。次いで、内側縁部38aの縫い代を内側に配置させつつ、前側縁部38b,38bを略直線状に配置させるように、第2基布38L,38Rを開き、開いた第2基布38L,38Rの前側縁部38b,38bを、第1基布33における下側部位34の前側縁部34aに縫着させる。同様に、開いた各第2基布38L,38Rの後側縁部38c,38cを、第1基布33における下側部位34の後側縁部34bに縫着させる。そして、下側部位34における前後の左側縁部34cを、第1基布33における左側部位35の元部側縁部35bに縫着させ、下側部位34における前後の右側縁部34dを、同様に、第1基布33における右側部位36の元部側縁部36bに縫着させる。その後、左側部位35の周縁部35aと第2基布38Lの外側縁部38dとを縫着させて縫合部位50Lを形成し、右側部位36の周縁部36aと第2基布38Rの外側縁部38dとを縫着させて縫合部位50Rを形成する。そして、縁部の縫い代を外部に露出させないように、ガス流入口22を利用して反転させれば、エアバッグ18を製造することができる。
【0031】
そして、このようにして製造したエアバッグ18を、折り畳む。エアバッグ18は、各取付孔23からボルト14aを突出させるようにして、内部にリテーナ14を配置させた状態で、予備折り工程と、前後縮小折り工程と、左右縮小折り工程と、を経て、折り畳まれることとなる。なお、この折畳工程における前後、左右の方向は、エアバッグ18におけるガス流入口22の開口面に沿う方向を基準としている。
【0032】
予備折り工程で形成される予備折りバッグ53は、乗員側壁部26の左右方向の略中央に配置される縫合部位49(凹部27の先端)を中心として、縫合部位50L,50Rを左右両側に開き、乗員側壁部26の中央側の領域(縫合部位50L,50R間の部位)を前後の略全域にわたって平らに展開するようにして、形成されている。具体的には、予備折りバッグ53は、図7,8に示すように、縫合部位49を左右の中央において前後方向に沿わせるように配置させるとともに、乗員側壁部26の膨張完了時における上端側中央部位26aを、ガス流入口22と上下で対向させるように配置させるようにして、周壁部19の部位と、乗員側壁部26における縫合部位50L,50Rよりも左右の外方に位置する領域と、を折り畳んで、左右対称形として、形成されている。さらに詳細には、実施形態の場合、予備折りバッグ53は、周壁部19の領域と、乗員側壁部26において縫合部位50L,50Rよりも左右の外方に位置する領域と、を、前後方向に略沿って配置される谷折りの折目VL1,VL2(図7〜10参照)をつけて折り込み、周壁部19の領域を、左右方向に略沿って配置される谷折りの折目HL1,HL2,HL3(図7〜10参照)をつけて折り込むことにより、形成されている。
【0033】
前後縮小折り工程では、予備折りバッグ53は、前後方向の幅寸法を縮めるように、折り畳まれることとなる。具体的には、図11のA,B及び図12のAに示すように、予備折りバッグ53において、ガス流入口22の後方に位置する後側部位54を、後端54a側を周壁部19側(下面側)に向かって巻くように、左右方向に沿った折目をつけてロール折りし、ガス流入口22上に載置させるようにして、ロール折り部位58を形成する。その後、図12のB,Cに示すように、予備折りバッグ53において、ガス流入口22の前方に位置する前側部位55を、前端55aをガス流入口22に接近させるように、左右方向に沿った折目をつけて蛇腹折りした蛇腹折り部位59を、ロール折り部位58上に載せれば、前後縮小折りが完了し、前後方向の幅寸法をケース10の上部室11内に収納可能に縮められた前後縮小折りバッグ57を形成することができる。そして、この前後縮小折りバッグ57では、図12のCに示すように、蛇腹折り部位59が、前側を開口させるように構成されていることから、実施形態の前後縮小折りバッグ57では、蛇腹折り部位59においてこの開口62より上側に位置する部位から構成される上折畳部63と、蛇腹折り部位59における開口62より下側に位置する部位とロール折り部位58とから構成される下折畳部64と、を備えた折重部61が、形成されることとなる。
【0034】
そして、前後縮小折り後に、リテーナ14のボルト14aを開口43bに挿通させるようにして、ラッピング部材42の取付部43を、ガス流入口22の周縁21の下面側に取り付ける(図12のC参照)。その後、ラッピング部材42において、前後縮小折りバッグ57から後方に延びるように配置されているカバー部47を、図13のAに示すように、前後縮小折りバッグ57の左右方向の中央において、後方側から上方側を経て前方側にかけて覆うように配置させ、先端側部位48を、開口62から挿入させるようにして、折重部61における上折畳部63と下折畳部64との間(蛇腹折り部位59の上下の中間部位)に挟み込ませる。このとき、先端側部位48は、取付部43側となる元部側部位48aを上折畳部63側に位置させ、端縁48bを下折畳部64側に位置させるように、蛇腹折りされた状態で、上折畳部63と下折畳部64との間に配置されている。詳細には、先端側部位48は、折幅を、ロール折り部位58や蛇腹折り部位59より小さくして、多段に蛇腹折りされている(図13のA参照)。
【0035】
その後、左右縮小折り工程において、前後縮小折りバッグ57を、左右方向の幅寸法と縮めるように、折り畳む。具体的には、図13のA,Bに示すように、前後縮小折りバッグ57において、カバー部47の左側に位置する左側部位66と、カバー部47の右側に位置する右側部位67と、を、それぞれ、前後方向に沿った折目をつけてカバー部47の左右両縁付近で折り返し、端部66a,67aをガス流入口22側に向けつつ、ガス流入口22上に載せるようにロール折りして、左側折畳部69,右側折畳部70を形成すれば、左右縮小折りが完成し、左右方向の幅寸法をケース10の上部室11内に収納可能な寸法に縮められた折り完了体72を形成することができる。この折り完了体72では、前後縮小折りバッグ57における左側部位66,右側部位67を折り畳んで形成される左側折畳部69,右側折畳部70は、カバー部47の上に載置されることとなる。
【0036】
次いで、ラッピング部材42において、折り完了体72から前方に延びるように配置されているラッピング本体44を、折り完了体72の前方側から上方側を経て後方側にかけて覆うように配置させ、先端44a側に配設される挿通孔44bに、折り完了体72から突出しているリテーナ14のボルト14aを挿通させて、先端44a側を係止させれば、図13のCに示すように、折り完了体72の周囲を、ラッピング本体44により覆うことができる。
【0037】
その後、ケース10の下部室12にインフレーター8を収納させ、ボルト14aを上部室11の底壁部11bから突出させるように、折り完了体72をケース10の上部室11内に収納させる。そして、底壁部11bから突出している各ボルト14aにナット15を締結させれば、折り畳まれたエアバッグ18とインフレーター8とを、ケース10に取り付けることができる。このとき、同時に、ラッピング部材42の取付部43も、エアバッグ18におけるガス流入口22の周縁21とともにケース10側に取り付けられることとなる。
【0038】
その後、車両に搭載されたインパネ1におけるエアバッグカバー6の連結壁部6bに、ケース10における上部室11の周壁部11aを連結させ、ケース10に設けられた所定のブラケット(図符号省略)を、車両のボディ側の部材に固定させれば、助手席用エアバッグ装置Mを車両に搭載することができる。
【0039】
助手席用エアバッグ装置Mの車両への搭載後、車両の前面衝突時、インフレーター8のガス吐出口8a,8bから膨張用ガスが吐出されれば、エアバッグ18が、ラッピング部材42におけるラッピング本体44の上側部位45のスリット45aの間の部位を破断するとともに、エアバッグカバー6の扉部6a,6aを、図14に示すように押して開かせることとなる。そして、エアバッグ18は、扉部6a,6aを開いて形成されるケース10の突出用開口10aから、後上方へ向かって突出するとともに、車両の後方側へ展開膨張して、図14に示すように、インパネ1の上面2と、インパネ1の上方のウィンドシールド4と、の間を塞ぐように、膨張を完了させることとなる。
【0040】
そして、実施形態の助手席用エアバッグ装置Mでは、エアバッグ18の膨張初期において、インパネ1に接近して位置する近接物(近接乗員)との間に介在されるカバー部47が、エアバッグ18を折り畳んで形成される折り完了体72の周囲を覆うラッピング部材42の一部から、構成されている。そのため、従来の助手席用エアバッグ装置と比較して、部品点数を低減させることができ、また、取付部位(取付部43)も共用できることから、組付工数も低減させることができる。
【0041】
また、実施形態の助手席用エアバッグ装置Mでは、カバー部47は、ガス流入口22の周縁21とともにケース10側に取り付けられる取付部43から後方に連なるように配置されて、折り畳み途中のエアバッグ18において、予備折り後に前後方向の幅寸法を縮めるように折り畳まれた前後縮小折りバッグ57の周囲を、後方側から上方側を経て前方側にかけて覆うように、配置される構成であり、ケース10の上部室11内に収納される折り完了体72においては、カバー部47の上方に、左右方向の幅寸法を縮めるように折り畳まれる左右縮小折りにより形成される折畳部位としての左側折畳部69,右側折畳部70が、載置されることとなる。そのため、実施形態の助手席用エアバッグ装置Mでは、エアバッグ18の膨張初期に、まず、ケース10の突出用開口10aから、左右縮小折りにより形成される左側折畳部69,右側折畳部70が、後上方に突出しつつ、内部に膨張用ガスを流入させない薄い状態で、左右に広がるように展開することとなり、その後、カバー部47により後方側から上方側を経て前方側にかけての周囲を覆われた状態の前後縮小折りバッグ57が、内部に膨張用ガスを流入させつつ、ケース10から後上方に向かって突出することとなる。このとき、実施形態の助手席用エアバッグ装置Mでは、カバー部47の先端側部位48が、前後縮小折りバッグ57の前面側において、折重部61を構成する上折畳部63と下折畳部64との間に挟み込まれていることから、カバー部47が前後縮小折りバッグ57から離隔することを抑制できて、カバー部47により前後縮小折りバッグ57の後方側から上方側を経て前方側にかけての外周側を覆った状態を、維持させることができる。そのため、ケース10近傍に近接物(近接乗員NP1,NP2)が接近している場合に、エアバッグ18の膨張初期に、カバー部47を、エアバッグ18と近接物(近接乗員NP1,NP2)との間に確実に介在させることができる(図15〜17参照)。
【0042】
さらに、実施形態の助手席用エアバッグ装置Mでは、前後縮小折りバッグ57の前面側に位置するカバー部47の先端側部位48は、取付部43側となる元部側部位48aを上折畳部63側に位置させ、端縁48bを下折畳部64側に位置させるように、蛇腹折りされた状態で、上折畳部63と下折畳部64との間に配置されることから、前後縮小折りバッグ57が折りを解消しつつ後上方に向かって突出する際に、カバー部47は、この前後縮小折りバッグ57の突出に伴って、蛇腹折りの折りを解消しつつ上方に突出されることとなり、極力、エアバッグ18から離隔することを抑制され、かつ、前後に広い範囲でエアバッグ18を覆うことが可能となる。その結果、エアバッグ18のカバー部47に対してずれ移動可能な範囲を広く確保することができて、近接物(近接乗員NP1,NP2)との距離が小さなミッドマウントタイプであっても、膨張初期のエアバッグ18が近接物(近接乗員NP1,NP2)と接触した際に、エアバッグ18が直接近接物(近接乗員NP1,NP2)と接触することを防止でき、かつ、エアバッグ18を、カバー部47によって、近接物(近接乗員NP1,NP2)に対して円滑に滑らせることができて、膨張するエアバッグ18が、近接物(近接乗員NP1,NP2)を後方に向かって不必要に押圧することを抑制できる。
【0043】
具体的には、近接乗員NP1が、頭部NHをエアバッグカバー6の扉部6a,6aの上面側に接触させるように、インパネ1に接近している状態では、エアバッグ18は、左側折畳部69と右側折畳部70との折りを解消しつつ、前後縮小折りバッグ57における左側部位66,右側部位67を、内部に膨張用ガスを流入させない薄い状態で、近接乗員NP1の頭部NHから左右にすり抜けさせるように、左右に広く展開されることとなる。そして、前後縮小折りバッグ57が、内部に膨張用ガスを流入させつつ、折りを解消するように後上方に向かって突出することとなるが、近接乗員NP1との間に、前後に広く展開されたカバー部47が介在されることから、エアバッグ18は、前後縮小折りを解消しつつ、近接乗員NP1に対して前方に滑るように膨張することとなって(図15参照)、近接乗員NP1の頭部NHを後方に向かって強く押圧することを抑制できる。
【0044】
また、図17に示すように、近接小柄乗員NP2が、腹部をインパネ1に接触させるように、インパネ1に接近している状態では、左右縮小折りを解消するように左右に広く展開した前後縮小折りバッグ57が、折りを解消するように後上方に向かって突出する際に、カバー部47が、エアバッグ18に対して捲くれることなく、エアバッグ18とともに前上方に向かって展開し、かつ、近接小柄乗員NP2とエアバッグ18との間に、上下に広く展開されることから、エアバッグ18が、近接小柄乗員NP2の上半身から頭部にかけてを、後方に向かって強く押圧することを抑制することができる。
【0045】
したがって、実施形態の助手席用エアバッグ装置Mでは、部品点数や組付工数を低減させることができ、かつ、ミッドマウントタイプであっても、インパネ1におけるエアバッグ18の収納部位(ケース10)近傍に位置している近接乗員NP1,NP2等の近接物を、不必要に押圧することを抑制できる。
【0046】
また、エアバッグ18は、図18〜20に示すように折り畳んでもよい。図18〜20に示す折畳工程では、上述の予備折りバッグ53と僅かに形状を異ならせた予備折りバッグ53Aの前後方向の幅寸法を縮めるように折り畳む前後縮小折り工程において、後側部位54Aの後端54a側を周壁部19側(下面側)に向かって巻くように左右方向に沿った折目をつけてロール折りして形成される後側ロール折り部位76と、前側部位55Aの前端55a側を周壁部19側(下面側)に向かって巻くように左右方向に沿った折目をつけてロール折りして形成される前側ロール折り部位77と、を、前後で並設させるようにして、前後縮小折りバッグ75が、形成されることとなる。この前後縮小折りバッグ75では、前側ロール折り部位77は、図19のDに示すように、反転されるようにして、ガス流入口22の上に載置されることから、反転される部位において、前側を開口させるように構成されている。すなわち、この前後縮小折りバッグ75では、前側ロール折り部位77において、この開口80より上側に位置する部位から構成される上折畳部81と、開口80より下側に位置する部位から構成される下折畳部82と、を備えた折重部79が、形成されることとなる(図19のD参照)。この前後縮小折りバッグ75は、上述の前後縮小折りバッグ57と同様にして、図19のD及び図20に示すように、ラッピング部材42のカバー部47を周囲に配置させ、カバー部47の先端側部位48を、開口80から挿入させるようにして、蛇腹折りした状態で折重部79における上折畳部81と下折畳部82との間に挟み込ませた状態で、左右縮小折りを経て、カバー部47上に左側折畳部69A,右側折畳部70Aを載置させるようにして、折り完了体72Aを形成するように、折り畳まれることとなる。なお、この折畳工程において、上述の折り完了体72を形成する工程と同一の部位には、同一の図符号の末尾に「A」を付して詳細な説明を省略する。
【0047】
特に、実施形態の助手席用エアバッグ装置Mでは、エアバッグ18として、膨張完了時の乗員側壁部26が、左右方向の中央を上下の略全域にわたって前方側に凹ませて構成される凹部27と、凹部27の左右両側において相対的に後方に突出するように配置される突出部28L,28Rと、を配設させて構成されており、突出部28L,28Rの先端(縫合部位50L,50R)を相互に離隔させるように開いて、凹部27の先端(縫合部位49)を中央に位置させるようにして、予備折りされている。そのため、エアバッグ18の膨張初期において、前後縮小折りを解消するように展開する際に、図16に示すように、内部に流入する膨張用ガスGが、突出部28L,28Rの先端側に向かうように流入することとなって、エアバッグ18を、後上方(乗員側)への突出を抑制して、一層左右に広く展開させることができる。その結果、図16に示すように、近接乗員NP1の頭部NHが接近している状態であっても、この近接乗員NP1の頭部NHを不必要に押圧することを的確に抑制することができる。
【0048】
また、実施形態のエアバッグ18は、内部に、ガス流入口22から流入した膨張用ガスを前後両側に流すように整流する整流布30を、配置させていることから、膨張初期において、前後縮小折りを解消するように展開する際に、後上方(乗員側)への突出を抑制して、前後に広く展開させることができる。そのため、実施形態の助手席用エアバッグ装置Mでは、ケース10近傍に位置している近接乗員NP1,NP2等の近接物を、エアバッグ18の膨張初期に、押圧することを的確に抑制することができる。
【符号の説明】
【0049】
1…インストルメントパネル(インパネ)、
6…エアバッグカバー、
8…インフレーター、
10…ケース(収納部位)、
18…エアバッグ、
19…周壁部、
21…周縁、
22…ガス流入口、
26…乗員側壁部、
42…ラッピング部材、
43…取付部、
44…ラッピング本体、
47…カバー部、
48…先端側部位、
53…予備折りバッグ、
57,75…前後縮小折りバッグ、
61,79…折重部、
63,81…上折畳部、
64,82…下折畳部、
69,69A…左側折畳部(折畳部位)、
70,70A…右側折畳部(折畳部位)、
72,72A…折り完了体、
NP1,NP2…近接乗員(近接物)、
M…助手席用エアバッグ装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の助手席前方におけるインストルメントパネルの上面後端付近に配設された収納部位内に折り畳まれて収納されるエアバッグを有するとともに、該エアバッグを、膨張用ガスの流入時に、前記収納部位から後上方に向かって突出させつつ展開させる構成のミッドマウントタイプの助手席用エアバッグ装置であって、
前記エアバッグが、折り畳まれて形成される折り完了体の周囲を、ラッピング部材により覆われた状態で、前記収納部位内に収納されるとともに、膨張完了時の形状を、頂部を前端側に配設させた略四角錐形状として、膨張完了時に乗員側となる後端側において略鉛直方向に沿って配置される乗員側壁部と、該乗員側壁部の周縁から前方に延びるとともに前端側にかけて収束される先細り形状の周壁部と、を備えて、膨張完了時の前記周壁部の下面側に、内部に膨張用ガスを流入可能に開口して、周縁を前記収納部位側に取り付けられるガス流入口を配設させて構成され、
前記ラッピング部材が、
前記ガス流入口の周縁とともに前記収納部位側に取り付けられる取付部と、
該取付部から前方に延びるように形成されて、前記折り完了体の周囲を覆うように構成されるラッピング本体と、
前記取付部から後方に延びるように形成されるとともに、前記エアバッグの膨張初期において、前記インストルメントパネルに接近して位置する近接物との間に介在されるように構成されるカバー部と、
を備える構成とされ、
前記折り完了体が、
前記乗員側壁部の上端側における左右の略中央を前記ガス流入口に接近させるように、少なくとも前記周壁部の部位を折り畳むことにより、予備折りバッグを形成した後、
該予備折りバッグを、前後方向の幅寸法を縮めつつ、折畳部位を前記ガス流入口の上方に配置させるようにして、かつ、前側を開口させるように上折畳部と下折畳部とを設けた折重部を、形成するような前後縮小折りにより、折り畳み、
前後縮小折りバッグにおける前記ガス流入口の周縁に前記取付部を係止させた状態の前記ラッピング部材における前記カバー部を、先端側部位を前記折重部における前記上折畳部と前記下折畳部との間に挟み込ませるようにして、前記前後縮小折りバッグの周囲を覆うように配置させ、
前記前後縮小折りバッグを、前記カバー部上に折畳部位を載置させるように、左右方向の幅寸法を縮めつつ、左右縮小折りすることにより、
形成され、
前記ラッピング本体が、前記折り完了体の外周側を覆うように、配置され、
前記先端側部位が、前記取付部側の部位を前記上折畳部側に位置させ、端縁を前記下折畳部側に位置させるように、蛇腹折りされた状態で、前記上折畳部と前記下折畳部との間に配置されることを特徴とする助手席用エアバッグ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−10430(P2013−10430A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144504(P2011−144504)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】