説明

励起光の光源装置および電子内視鏡システム

【課題】既存の電子内視鏡システムを利用して、自家蛍光画像の撮像機能を安価に実現することができる励起光の光源装置および電子内視鏡システムを提供する。
【解決手段】電子内視鏡システムは、白色光の光源装置と、励起光の光源装置と、白色光を導光して被写体に照射し、反射光を固体撮像素子で光電変換して白色光画像を撮像するか、白色光が遮光された状態で、励起光が照射された被写体から発せられる自家蛍光を固体撮像素子で光電変換して自家蛍光画像を撮像する内視鏡装置と、内視鏡装置の挿入部の先端部にキャップとして装着され、固体撮像素子で受光される光のうち、励起光を含む所定帯域の波長の光をカットする励起光カットフィルタと、白色光画像および自家蛍光画像の合成画像を生成する信号処理回路とを備える。励起光の光源装置は、励起光を常時照射し、白色光の光量制御信号に基づいて、励起光の光量が、白色光の光量と所定の相関をもって変化するように、励起光の光量を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の狭帯域の励起光(狭帯域光)を被写体(被検体)に照射するための励起光の光源装置、および、励起光が照射された被写体から発せられる自家蛍光を固体撮像素子で光電変換して自家蛍光画像を撮像する電子内視鏡システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、被写体の体腔内に白色光(通常光)を照射し、白色光が照射された体腔内の観察対象部位からの反射光を固体撮像素子で受光し光電変換して白色光画像(通常光画像)を撮像し、モニタ画面上に表示する電子内視鏡システムが広く実用化されている。
【0003】
また、固体撮像素子を用いた電子内視鏡装置の分野では、近年、胃粘膜等の消化器管における分光反射率に基づいて、狭帯域バンドパスフィルタを組み合わせた分光イメージングを行う装置、すなわち狭帯域フィルタ内蔵電子内視鏡装置(NBI(Narrow Band Imaging))が注目されている。この装置は、面順次式のR(赤),G(緑),B(青)の回転フィルタの代わりに、狭(波長)帯域のバンドパスフィルタを設け、これら狭帯域バンドパスフィルタを介して照明光を順次出力し、これらの照明光で得られた信号に対しそれぞれの重み付けを変えながらR,G,B(RGB)信号の場合と同様の処理を行うことにより、分光画像を形成するものである。このような分光画像によれば、胃、大腸等の消化器において、従来では得られなかった微細構造等が抽出される。
【0004】
一方、被写体に白色光を照射して観察するばかりでなく、特定波長の狭帯域の励起光を照射することにより被写体から発せられる自家蛍光を固体撮像素子で受光し光電変換して自家蛍光画像を撮像し、モニタ画面上に表示する蛍光内視鏡装置が知られている。この自家蛍光は、生体組織内の内因性蛍光物質から発せられる。例えば、観察対象部位が気道粘膜であれば、自家蛍光の大部分は粘膜下層から発せられると考えられ、内因性蛍光物質としては、リボフラビン、トリプトファン、チロシン、NADH、NADPH、ポルフィリン、コラーゲン、エラスチン、フィブロネクチンあるいはFAD等が考えられている。
【0005】
ところで、自家蛍光画像を撮像するためには、自家蛍光画像の撮像機能がある電子内視鏡システムを新規に購入する必要がある。しかし、白色光画像の撮像機能はあるが、自家蛍光画像の撮像機能はない電子内視鏡システムを既に所有している場合、新規に電子内視鏡システムを購入するための費用が必要となるだけでなく、既存の電子内視鏡システムが不要になる虞がある。そのため、既存の電子内視鏡システムを利用して、安価に自家蛍光画像の撮像機能を実現することが望まれる。
【0006】
ここで、本発明に関連性のあると思われる特許文献1,2には、励起光の導光部(光ファイバー)を内視鏡装置の鉗子入口から挿入し、鉗子出口から励起光を照射することにより、自家蛍光画像の撮像機能を実現する電子内視鏡システムが記載されている。
【0007】
しかし、これらはいずれも白色光画像の撮像機能はあるが、自家蛍光画像の撮像機能はない既存の電子内視鏡システムを利用して、自家蛍光画像の撮像機能を実現するものではなく、新規に電子内視鏡システムを購入する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−21580号公報
【特許文献2】特開2005−319212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、白色光画像の撮像機能はあるが、自家蛍光画像の撮像機能はない既存の電子内視鏡システムを利用して、自家蛍光画像の撮像機能を安価に実現することができる励起光の光源装置および電子内視鏡システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、白色光の光源装置から発せられる白色光を導光して被写体に照射し、その反射光を固体撮像素子で受光し光電変換して白色光画像を撮像する内視鏡装置を利用して、自家蛍光画像を撮像するために使用される励起光の光源装置であって、
所定波長の励起光を常時発する光源部と、
前記内視鏡装置の鉗子チャンネルの内部に装着され、前記光源部から発せられる励起光を導光して被写体に照射する導光部と、
前記白色光の光源装置における白色光の光量制御信号に基づいて、前記光源部から発せられる励起光の光量が、前記白色光の光源装置から発せられる白色光の光量と所定の相関をもって変化するように、前記光源部から発せられる励起光の光量を制御する光量制御部とを有する励起光の光源装置を提供するものである。
【0011】
ここで、前記光源部は、前記励起光として、405nm±10nmの波長のレーザ光を出力するものであることが好ましい。
【0012】
また、前記光量制御部は、前記励起光の光量が前記白色光の光量に対して一定の比率で変化するように、前記励起光の光量を制御するものであることが好ましい。
【0013】
また、本発明は、白色光を発する白色光の光源装置と、
上記のいずれかに記載の励起光の光源装置と、
被写体の体腔内に挿入される挿入部を有し、前記白色光の光源装置から発せられる白色光を前記挿入部の先端まで導光して被写体に照射し、その反射光を固体撮像素子で光電変換して白色光画像を撮像するか、前記白色光の光源装置からの白色光が遮光された状態で、前記励起光の光源装置から発せられる励起光が照射された被写体から発せられる自家蛍光を前記固体撮像素子で光電変換して自家蛍光画像を撮像する内視鏡装置と、
前記内視鏡装置の挿入部の先端部にキャップとして装着され、前記固体撮像素子で受光される光のうち、前記励起光の光源装置から照射される所定波長の励起光を含む所定帯域の波長の光をカットする励起光カットフィルタと、
前記内視鏡装置によって撮像された白色光画像および自家蛍光画像に画像処理を施して、前記白色光画像と前記自家蛍光画像とが重ね合わせられた合成画像を生成する信号処理回路とを備える電子内視鏡システムを提供する。
【0014】
ここで、前記信号処理回路は、さらに、前記励起光カットフィルタによってカットされた白色光画像の成分を補うように、該白色光画像の色調を補正するものであることが好ましい。
【0015】
また、前記信号処理回路は、さらに、被写体の病変部および正常部について、あらかじめ撮像された白色光画像および自家蛍光画像を用いて、前記合成画像における白色光画像および自家蛍光画像の特性のバランスを調整するものであることが好ましい。
【0016】
また、前記信号処理回路によってバランスが調整される特性は、γ値、輝度レベル、コントラストのうちの少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0017】
また、前記信号処理回路は、さらに、前記白色光画像の赤色成分および青色成分と前記自家蛍光画像の緑色成分とを合成して前記合成画像を生成するものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の電子内視鏡システムは、励起光カットフィルタと、本発明の励起光の光源装置とを追加するだけで、白色光画像の撮像機能はあるが、自家蛍光画像の撮像機能はない既存の電子内視鏡システムを利用して、自家蛍光画像の撮像機能を実現することができる。そのため、本発明の電子内視鏡システムの使用者は、既存の電子内視鏡システムを無駄にすることなく、自家蛍光画像の撮像機能を安価に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の電子内視鏡システムの構成を表す一実施形態の概略図である。
【図2】図1に示す電子内視鏡システムの内部構成を表すブロック図である。
【図3】励起光カットフィルタの分光透過率特性を表すグラフである。
【図4】信号処理回路の構成を表すブロック図である。
【図5】(A)および(B)は、ロータリーシャッタ、白色光光源及び位置検出器の位置関係を示す概略図である。
【図6】光量制御が施された白色光および励起光の光量の変化を表すタイミングチャートである。
【図7】自家蛍光観察モードのときの処理の概略を表すブロック図である。
【図8】白色光観察モードのときの電子内視鏡システムの動作を表すタイミングチャートである。
【図9】自家蛍光観察モードのときの電子内視鏡システムの動作を表すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明の励起光の光源装置および電子内視鏡システムを詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明の電子内視鏡システムの構成を表す一実施形態の概略図、図2は、その内部構成を表すブロック図である。これらの図に示す電子内視鏡システム10は、白色光画像の撮像機能はあるが、自家蛍光画像の撮像機能はない既存の電子内視鏡システムを利用して、自家蛍光画像の撮像機能を実現したものである。電子内視鏡システム10は、電子内視鏡装置12、プロセッサ装置14、白色光の光源装置16、励起光の光源装置18、モニタ20等によって構成されている。
【0022】
ここで、電子内視鏡システム10は、被写体に白色光を照射して白色光画像を撮像する白色光観察モードと、被写体に白色光と励起光とを交互に照射して白色光画像と自家蛍光画像とを交互に撮像し、両者の合成画像を生成する自家蛍光観察モードとを有する。白色光観察モードと自家蛍光観察モードとの切替は、後述する電子内視鏡装置12の観察モード切替ボタンによって行われる。
【0023】
電子内視鏡装置(内視鏡スコープ)12は、被写体の体腔内に挿入され、観察対象部位に照明光(白色光、励起光)を照射して撮像するための可撓性の挿入部22と、挿入部22の基端部分に連設された操作部24と、電子内視鏡装置12とプロセッサ装置14と白色光の光源装置16との間を接続するためのコネクタ26と、操作部とコネクタとの間を接続するユニバーサルコード28とを備えている。
【0024】
コネクタ26は、白色光の光源装置16に接続され、その一方の接続部に電子内視鏡装置12のユニバーサルコード28が接続されている。コネクタ26の他方の接続部は、後述する励起光の光源装置18のコネクタ106の一方の接続部とコード52を介して接続されている。本実施形態の場合、図2に示すように、電子内視鏡装置12の観察モード切替ボタン50からの観察モード信号、プロセッサ装置14の同期パルスドライバ58からの同期パルスおよび測光回路62からの輝度値信号が白色光の光源装置16に入力される。
【0025】
挿入部22の先端には、体腔内撮影用のCCD(固体撮像素子)42(図2参照)などが内蔵された先端部22aが連設されている。先端部22aの後方には、複数の湾曲駒を連結した湾曲部22bが設けられている。湾曲部22bは、操作部24に設けられたアングルノブ30が操作されて、挿入部22内に挿設されたワイヤが押し引きされることにより、上下左右方向に湾曲動作する。これにより、先端部22aが体腔内の所望の方向に向けられる。
【0026】
電子内視鏡装置12の挿入部22の先端部22aには、CCDの受光面で受光される光のうち、励起光の光源装置18から照射される所定波長(本実施形態では、波長405nm±10nm)の狭帯域の励起光(狭帯域光)を含む所定帯域の波長の光をカット(遮光)する励起光カットフィルタ32がキャップとして装着されている。なお、照明光は、励起光カットフィルタ32でカットされない。励起光カットフィルタ32は、着脱自在であり、電子内視鏡装置12の挿入部22の先端部22aに手動で装着される。
【0027】
図3は、励起光カットフィルタの分光透過率特性を表すグラフである。グラフの縦軸は光強度、横軸は光の波長を表す。このグラフに示すように、所定の光強度の405nm±10nmの励起光を被写体に照射すると、励起光が照射された被写体の部位(例えば、膠原線維等)から、約420〜650nmの波長帯域の自家蛍光が発せられる。自家蛍光は、励起光と比べて極めて微弱な光であるため、自家蛍光を観察するためには、励起光カットフィルタ32によって励起光をカットする必要がある。
【0028】
このグラフに示す励起光カットフィルタ32は、励起光の波長405nm±10nmを含む415nm以下の波長帯域の光をカットする。励起光カットフィルタ32を透過する光のうち、415nm以下の波長帯域の光の透過率は0.0001%程度であり、この波長帯域の光は実質的に遮光され、CCD42の受光面には受光されない。なお、405nm±10nmの波長帯域の光(つまり、励起光の波長帯域の光)をカットすればよく、本実施形態においても395nm以下の波長帯域の光をカットしない方が望ましい。
【0029】
図2に示すように、電子内視鏡装置12の挿入部22の先端部22aには、観察窓34、照明窓36、鉗子出口38b等が設けられている。
【0030】
観察窓34の奥には、被写体内の像光を取り込むための結像レンズ等の光学系40が取り付けられ、さらに光学系40の奥には、CCD42が取り付けられている。CCD42は、例えばインターライントランスファ型のCCDである。CCD42には、プロセッサ装置14との間で各種信号のやり取りを行うための信号線44a、44bが接続されている。つまり、信号線44a、44bは、ユニバーサルコード28及びコネクタ26を介してCCD42とプロセッサ装置14との間に接続されている。
【0031】
一方、照明窓36の奥には、照射レンズ46が設けられている。この照射レンズ46には、ライトガイドとしての光ファイバー(例えば、石英からなる)48の出射端が面している。白色光の光源装置16から発せられ、光ファイバー48によって照射レンズ46まで導かれた白色光は、照明窓36を通して被写体に照射される。つまり、光ファイバー48は、ユニバーサルコード28及びコネクタ26を介して白色光の光源装置16から電子内視鏡装置12の挿入部22の先端部22aの照射レンズ46まで敷設されている。
【0032】
操作部24には、鉗子等の処置具を挿入するための鉗子入口38aが設けられている。挿入部22の内部には、鉗子入口38aから先端部22aの鉗子出口38bまで延びる鉗子チャンネル38(図2参照)が形成されている。電子内視鏡システム12では、自家蛍光観察モードのときに、励起光の光源装置18の光ファイバー104が鉗子入口38aから鉗子出口38bに到達するまで挿入され、鉗子チャンネル38の内部に装着される。これにより、励起光の光源装置18から発せられる励起光が光ファイバー104によって先端部22aまで導光され、鉗子出口38bから被写体に照射される。
【0033】
また、操作部24には、複数の機能割り当てボタンが設けられている。機能割り当てボタンは、各種の機能をプログラマブルに割り当て可能なものであり、本実施形態では、そのうちの1つの機能割り当てボタンが観察モード切替ボタン50として割り当てられている。観察モード切替ボタン50は、白色光観察モードと自家蛍光観察モードとを切り替えるための切替手段である。なお、プロセッサ装置14にも機能割り当てボタンが設けられている場合には、プロセッサ装置14の機能割り当てボタンの1つを観察モード切替ボタンとして割り当てることもできる。観察モードを表す観察モード信号が観察モード切替ボタン50から信号線44cを介してプロセッサ装置14のCPU64および白色光の光源装置16のCPU94に入力される。
【0034】
続いて、プロセッサ装置14は、電子内視鏡装置12、白色光の光源装置16、励起光の光源装置18、モニタ20、キーボード(図示せず)、プリンタ(図示せず)等と電気的に接続され、電子内視鏡システム10全体の動作を統括的に制御する。プロセッサ装置14には、図2に示すように、CCDドライバ54、タイミングジェネレータ(以下、TGと略す)56、同期パルスドライバ58、信号処理回路60、測光回路62、及びプロセッサ装置14の動作を制御するCPU64が設けられている。
【0035】
CCDドライバ54は、信号線44aを介してCCD42に接続され、CCDドライバ54には、CPU64とこのCPU64によって制御されるTG56が接続されている。CCDドライバ54は、CPU64から入力される観察モード信号、および、TG56から入力されるタイミング信号に基づいて、観察モードに対応した、CCD42の蓄積電荷の読み出しタイミング(撮像信号の出力タイミング)を規定する読み出しパルス、および、CCD42の電子シャッタのシャッタ速度を決める電子シャッタパルスを生成し、これをもとに信号線44aを介してCCD42の動作を制御する。
【0036】
また、同期パルスドライバ58にもTG56が接続され、TG56から入力される、読み出しパルスと同じタイミングを含むタイミング信号に基づいて、読み出しパルスの周期に同期した同期パルスを白色光の光源装置16の同期処理回路86および励起光の光源装置18の同期処理回路96に出力する。同期パルスは、CCD42の電荷蓄積期間および撮像信号出力期間と、白色光の照射期間および遮光期間と、励起光の照射期間および遮光期間との同期をとるための同期信号である。
【0037】
信号処理回路60には、CCD42から出力されるアナログの撮像信号が信号線44bを介して入力されるとともに、CPU64から観察モード信号が入力される。信号処理回路60は、図4に示すように、A/D変換回路66と、色調補正部68と、画像処理部70とによって構成されている。なお、色調補正部68および画像処理部70は、例えば、それぞれ対応する処理を行うソフトウェアと、このソフトウェアを格納するEPROM(書き換え可能型ROM)等の記憶装置等によって構成される。
【0038】
CCD42からのアナログの撮像信号は、A/D変換回路66でA/D変換されてデジタル画像データとされた後、色調補正部68により色調補正され、さらに、画像処理部70により、バランス調整処理、高感度化処理、γ補正処理、階調補正処理等の各種の画像処理が施されて内視鏡画像の映像信号とされる。そして、画像処理後の映像信号が、プロセッサ装置14にケーブル接続されたモニタ20(図1参照)に出力され、内視鏡画像が表示される。
【0039】
信号処理回路60は、白色光観察モードのときに、内視鏡画像として、電子内視鏡装置12よって撮像された白色光画像をモニタ20に出力する。一方、自家蛍光観察モードのときには、電子内視鏡装置12よって同期パルスの1サイクル毎に交互に撮像された白色光画像および自家蛍光画像に画像処理を施して、例えば、両者が重ね合わせられた合成画像を生成し、この合成画像を内視鏡画像としてモニタ20に出力する。なお、白色光画像と自家蛍光画像を1サイクル毎に交互に撮像することは必須ではなく、例えば、白色光画像をi(iは1以上の整数)回撮像し、自家蛍光画像をj(jは1以上の整数)回撮像することを交互に繰り返してもよい。
【0040】
自家蛍光観察モードに限らず、白色光観察モードにおいても、撮像された白色光画像は、励起光カットフィルタ32によって、415nm以下の波長帯域の成分、つまり、B画像のうちの低波長側の一部の成分がカットされてCCD42で受光されるため、黄色がかった色調となる。色調補正部68は、励起光カットフィルタ32によってカットされたB画像の成分を補うように、撮像された白色光画像の色調を補正する。
【0041】
励起光カットフィルタ32がない場合の白色光画像のうちのB画像に対して、励起光カットフィルタ32によって一部の成分がカットされたB’画像は次式(1)で表される。
B’=B×(1−b)=B×α … (1)
ここで、bは、B画像の全成分を1としたときの、励起光カットフィルタ32によってカットされた成分であり、式(1)では、α=(1−b)と表している。従って、B画像は、式(2)で求めることができる。
B=B’/α … (2)
【0042】
式(2)で示すように、A/D変換後の映像信号が光強度に対して線形である場合には、B’画像を係数αで除算してB画像のカットされた成分bに相当する成分を増加させることでB画像のカットされた成分bを補正することができる。また、線形でない場合には、例えば、乗算、加算、マトリクス変換等の演算処理によって、B画像のカットされた成分bに相当する成分を増加させることができる。また、B画像のカットされた成分bに相当する成分の分だけG画像およびR画像の成分を減少させてもよい。
【0043】
さらに、励起光カットフィルタ32によってG画像のうちの低波長側の一部の成分がカットされる場合もある。この場合、励起光カットフィルタ32によって一部の成分がカットされたG’画像についてもB’画像の場合と同様に、色調補正を行うことが望ましい。
【0044】
自家蛍光観察モードの場合、前述のように、白色光画像と自家蛍光画像が同期パルスの1サイクル毎に交互に撮像される。画像処理部70では、図7中央部右に示すように、白色光画像および自家蛍光画像が撮像された後、較正データを用いて、白色光画像と自家蛍光画像とのバランス調整が行われる。自家蛍光画像は、白色光画像と比べて輝度成分が非常に微弱であるため、両者の合成画像において自家蛍光画像を適切に観察するためには、両者の特性(γ値、輝度レベル、コントラスト等)のバランスを適切に設定する必要がある。
【0045】
較正データは、不特定の被写体の病変部(早期ガン等の発生部)および正常部について、あらかじめ白色光画像および自家蛍光画像を撮像し、例えば、白色光画像における病変部と正常部のコントラストと、自家蛍光画像における病変部と正常部のコントラストとを比較して、両者のコントラストが等しくなるように較正するためのデータである。例えば、白色光画像のコントラストに対して自家蛍光画像のコントラストが1/5であった場合、画像処理部70では、較正データを用いて、自家蛍光画像のコントラストを5倍にするバランス調整が行われる。γ値や輝度レベル等についても同様である。
【0046】
白色光画像と自家蛍光画像のバランスは、CCD42等の特性に依存するため、バランス調整は、電子内視鏡システム10の工場出荷前、もしくは、電子内視鏡システム10を初めて使用する前等に、少なくとも1回実施することが望ましい。
【0047】
続いて、画像処理部70では、図7の中央部に示すように、表示階調処理データを用いて、撮像された白色光画像および自家蛍光画像に表示階調処理が行われ、表示用の白色光画像と自家蛍光画像が生成される。表示階調処理は、モニタ20に対応したγ補正処理や階調補正処理を含む。
【0048】
そして、画像処理部70では、図7の下部に示すように、表示用の白色光画像のR画像およびB画像をそれぞれRチャンネル信号およびBチャンネル信号として割り当てられ、表示用の自家蛍光画像のG画像をGチャンネル信号として割り当てられて、RGBの各チャンネル信号を合成して合成画像が生成され、モニタ20に表示される。合成画像は、例えば、正常部がG色の色調で表示され、病変部がマゼンタの色調で表示されるように合成処理される。なお、合成画像だけでなく白色光画像と合成画像を並べて表示してもよい。
【0049】
ここで、励起光が照射された被写体から発せられる自家蛍光は、正常部よりも病変部の方が輝度レベルが低下することが知られている。しかし、画像処理部70は、自家蛍光だけでは、輝度レベル低下の原因が病変部なのか、撮像距離が遠いためなのかを判断できない。そこで、画像処理部70は、白色光画像のG画像と自家蛍光画像の輝度レベルを比較し、両者が共に低い場合には、撮像距離が遠くて輝度レベルが低いと判断し、G色の色調で表示する。また、白色光画像のG画像の輝度レベルが高く、自家蛍光画像の輝度レベルが低い場合には、病変部であると判断し、マゼンタの色調で表示する。
【0050】
また、高感度化処理には、デジタルゲイン、フレーム加算、デジタルビニング等の処理が含まれる。デジタルゲインは、デジタル画像データを所定の増幅率で増幅する処理である。フレーム加算は、CCD42によって撮像される、連続する複数のフレームの画像データを加算する処理である。デジタルビニングは、CCD42の隣あう複数の撮像画素(ピクセル)を1組とし、受光面積を大きくしてCCD42の感度を上げる処理である。
【0051】
測光回路62には、信号処理回路60から白色光画像の映像信号(デジタル画像データ)が入力される。測光回路62は、信号処理回路60から入力される白色光画像の映像信号の輝度成分、本実施形態の場合には、G画像の輝度成分の平均値等から被写体像の輝度を表す輝度値信号を出力する。測光回路62から出力される輝度値信号は、白色光の光源装置16の光量制御回路80および励起光の光源装置18の光量制御回路98に入力される。
【0052】
続いて、白色光の光源装置16は、図2に示すように、白色光光源72、レンズ74、絞り調節機構76、ロータリーシャッタ78、光量制御回路80、絞り駆動ドライバ82、位置検出器84、同期処理回路86、回転制御回路88、モータドライバ90、モータ92、および、白色光の光源装置16の動作を制御するCPU94を備えている。
【0053】
白色光光源72は、白色光の光源装置16の電源がオンのときに常にオンして白色光を発する。白色光光源72としては、例えば、キセノンランプ、ハロゲンランプ、LED(発光ダイオード)、蛍光発光素子ランプ、またはLD(レーザーダイオード)などが使用される。白色光光源72から発せられる白色光は、レンズ74で集光され、絞り調節機構76を介して電子内視鏡装置12の光ファイバー48の入射端48aに導かれる。
【0054】
光量制御回路80は、測光回路62からの輝度値信号に基づいて、撮像される白色光画像の輝度、本実施形態の場合には、図7の上部左に示すように、G画像の輝度の平均値があらかじめ設定された所定の輝度となるように、CPU94の制御により、白色光の光源装置16から発せられる白色光の光量を制御する。光量制御は、白色光画像が撮像される毎に毎回行われる。光量制御回路80からは、白色光の光量を制御するための光量制御信号が出力され、絞り駆動ドライバ82および励起光の光源装置18の光量制御回路98に入力される。
【0055】
絞り駆動ドライバ82は、光量制御回路80からの光量制御信号に基づいてデジタルの駆動パルスを出力するデジタル回路である。
【0056】
絞り調節機構76は、レンズ74とロータリーシャッタ78との間に配置され、白色光光源72から発せられる白色光の光量を調節する。絞り調節機構76は、例えば、絞り径を可変させる複数の絞り羽根、及びこの絞り羽根を移動させるモータなどから構成される。絞り調節機構76は、絞り駆動ドライバ82からの駆動パルスによって駆動され、その絞り量(つまり、白色光の光量)が調節される。
【0057】
位置検出器84は、フォトセンサなどから構成され、ロータリーシャッタ78の外周近傍に配置されている。位置検出器84は、白色光光源72の光路P内を、ロータリーシャッタ78の遮光部78bが通過するときはオン信号、光通過部78aが通過するときはオフ信号を同期処理回路86へ出力する(図3参照)。なお、位置検出器84はロータリーシャッタ78の外周近傍以外の場所に配置されても良く、例えばロータリーシャッタ78の内部に配置されてもよい。
【0058】
同期処理回路86は、位置検出器84からのオン・オフ信号、および、同期パルスドライバ58からの同期パルスに基づき、ロータリーシャッタ78の回転を制御するための同期処理を行う。同期処理回路86は、本実施形態では、オフ信号からオン信号に切り替わるエッジを位置検出信号として検出する。言い換えると、図5(A)に示すように、ロータリーシャッタ78の回転位置が、白色光光源72の光路Pに対して光通過部78aから遮光部78bに切り替わる境界線78cの位置、つまり、遮光期間の開始タイミングを位置検出信号として検出する。なお、同図(B)に示すように、遮光部78bから光通過部78aに切り替わる境界線78dの位置、つまり、照射期間の開始タイミングを位置検出信号として検出してもよい。
【0059】
CCD42では、図8のタイミングチャートに示すように、CCDドライバ54で生成される電子シャッタパルス及び読み取りパルスに応じて電荷の蓄積、及び撮像信号の出力が行われる。一方、同期処理回路86は、位置検出信号及び同期パルスに基づき、同期パルス(つまり、読み出しパルス)の出力タイミングに、照射期間から遮光期間への切り替わりのタイミングを合わせるように制御するための同期処理信号を出力し、回転制御回路88およびモータドライバ90を介して、モータ92の回転制御すなわちロータリーシャッタ78の回転制御を行う。これにより、CCD42の電荷蓄積期間および撮像信号出力期間と、白色光の照射期間および遮光期間とが同期される。
【0060】
また、同期処理回路86は、CPU94からの観察モード信号に基づき、自家蛍光観察モードの場合のロータリーシャッタ78が、白色光観察モードの場合のロータリーシャッタ78の半分の回転速度となるように、同期処理信号のタイミングを調整する。図8のタイミングチャートに示すように、白色光観察モードのとき、白色光の照射期間とこれに続く遮光期間を1サイクル(1フレーム)とすると、白色光の1サイクルは同期パルスの1サイクルと同じ周期となる。これに対し、自家蛍光観察モードのとき、白色光の1サイクルは同期パルスの2サイクルと同じ周期となる。つまり、自家蛍光観察モードの時、白色光の照射期間および遮光期間は、白色光観察モードのときの2倍の長さとなり、白色光は、同期パルスの2サイクルのうちの1サイクルのみ(つまり、同期パルスの1サイクルおきに)照射される。
【0061】
回転制御回路88は、同期処理回路86からの同期処理信号に基づき、モータタイミングパルスをモータドライバ90に出力する。モータドライバ90は、回転制御回路88からのモータタイミングパルスに基づいてモータ92の駆動パルスを出力する。モータ92は、パルスモータであり、モータドライバ90から駆動パルスが供給されると所定角度ずつ回転する。本実施形態では、48回の駆動パルスで1回転、すなわち1ステップ分(1個の駆動パルスにおける回転角度)で7.5°回転する。
【0062】
ロータリーシャッタ78は、図5に示すように、円板形状で一部に扇形の切り欠き部分を有する。同図では、切り欠き部分が光通過部78a、残りの部分が遮光部78bとして示されている。ロータリーシャッタ78は、白色光光源72の光軸と平行に配置されたモータ92の回転軸92aに接続され、モータ92の回転によってロータリーシャッタ78が回転されることにより、光通過部78aと遮光部78bとが交互に白色光光源72の光路P内に挿入される。光通過部78aが光路P内に挿入されると、光ファイバー48、照射レンズ46及び照明窓36を通して被写体内へ白色光が照射される照射期間となり(図5(A)に示す状態)、遮光部78bが光路P内に挿入されると、被写体内への白色光が遮光される遮光期間となる(図5(B)に示す状態)。
【0063】
つまり、ロータリーシャッタ78の光通過部78aの中心角と遮光部78bの中心角との比率は、白色光の照射期間と遮光期間との比率に等しくなる。これら光通過部78a及び遮光部78bの中心角は、白色光観察モードのときに、ロータリーシャッタ78の回転周期が、同期パルスの周期に等しくなるようにロータリーシャッタ78が回転制御された場合に、白色光の照射期間および遮光期間と、CCD42の電荷蓄積期間および撮像信号出力期間とが等しくなるように設定されている。
【0064】
上記のように、白色光は、CCD42の電荷蓄積期間に同期して照射され、CCD42の撮像信号出力期間には遮光される。このように、白色光を照射する必要のない期間に白色光を遮光することにより、電子内視鏡装置12の挿入部22の先端部22aの発熱を抑えることができる。
【0065】
続いて、励起光の光源装置18は、同期処理回路96と、光量制御回路98と、レーザドライバ100と、レーザ光源102と、光ファイバー104と、励起光の光源装置18とプロセッサ装置14とを接続するためのコネクタ106と、励起光の光源装置18とコネクタ106とを繋ぐユニバーサルコード108とを備えている。ここで、レーザドライバ100およびレーザ光源102は本発明の励起光の光源装置18の光源部、光ファイバー104は導光部を構成する。
【0066】
コネクタ106はプロセッサ装置14に接続され、その一方の接続部は、前述のように、白色光の光源装置16のコネクタ26の他方の接続部とコード52を介して接続され、他方の接続部に励起光の光源装置18のユニバーサルコード28が接続されている。本実施形態の場合、図2に示すように、プロセッサ装置14の同期パルスドライバ58からの同期パルスおよび白色光の光源装置16の光量制御回路80からの光量制御信号が励起光の光源装置18に入力される。
【0067】
同期処理回路96は、同期パルスドライバ58からの同期パルスに基づき、レーザ光源102の発光(点灯/消灯)を制御するための同期処理を行う。同期処理回路96は、図9のタイミングチャートに示すように、白色光の光源装置16の同期処理回路86の場合と同様に、CCD42の電荷蓄積期間および撮像信号出力期間と、励起光の照射期間および遮光期間との同期をとるとともに、白色光の照射期間および遮光期間と、励起光の照射期間および遮光期間との同期をとる(白色光の照射期間が励起光の遮光期間となり、白色光の遮光期間が励起光の照射期間となる)ように、レーザ光源の発光制御を行う同期処理信号を出力する。これにより、同期パルスの1サイクル毎に白色光と励起光とが交互に照射される。
【0068】
なお、同期処理回路96では、白色光観察モードのときにも同様にレーザ光の発光制御が行われるが、CCD42では、読み出しパルスおよび電子シャッタパルスの制御により、励起光による電荷の蓄積および撮像信号の出力が行われないように制御される。白色光観察モードのときには、本実施形態の場合、白色光と励起光が同時に被写体に照射される期間、励起光が照射された被写体からは自家蛍光が発せられる。しかし、自家蛍光の輝度成分は非常に微弱であるため、白色光画像においては誤差範囲であり、全く影響はない。
【0069】
上記のように、本実施形態では、観察モードに関係なく白色光と励起光とが交互に照射される。つまり、励起光は点滅しており、白色光の照射期間のとき遮光期間、白色光の遮光期間のとき照射期間となる。しかし、電子内視鏡装置12の挿入部22の先端部22aには励起光カットフィルタ32が装着されているので、励起光を常時照射しても何ら問題はない。また、励起光を常時照射する場合には同期処理回路96が不要となり、励起光の光源装置18の構造がシンプルにできるため望ましい。
【0070】
また、本実施形態では、励起光の光源装置18において、観察モード信号に基づく励起光の発光制御をしていないが、これに限定されず、観察モード信号に基づいて、白色光観察モードの場合には励起光の照射をしない(消灯する)ように制御してもよい。
【0071】
光量制御回路98は、図7の上部右に示すように、白色光の光源装置16の光量制御回路80からの白色光の光量制御信号に基づいて、レーザ光源102から発せられる励起光の光量が、白色光の光源装置16から発せられる白色光の光量と所定の相関をもって変化するように、例えば、励起光の光量が白色光の光量に対して1/10等の一定の比率で変化するように、レーザ光源102から発せられる励起光の光量を制御する。光量制御回路98からは、励起光の光量を制御するための励起光の光量制御信号が出力され、レーザドライバ100に入力される。
【0072】
図6は、光量制御が施された白色光および励起光の光量の変化を表すタイミングチャートである。同図の縦軸は光量、横軸は時間の流れ(同期パルスの1サイクル単位)を表している。白色光は、光量制御回路80によって、白色光画像が撮像される毎にその光量が制御される。一方、励起光は、光量制御回路98によって、1サイクル前の白色光の光量に対して1/10の光量となるように、その光量が制御される。このように、光量制御回路80の制御により、白色光の光量が変更された場合であっても、光量制御回路98の制御により、それに追従して励起光の光量が自動的に変更されるため、撮像時の白色光画像と自家蛍光画像の露出バランスを常に適正な状態に維持することができる。
【0073】
レーザドライバ100は、同期処理回路96からの同期処理信号、および、光量制御回路98からの光量制御信号に基づいて、所定のタイミング、所定の光量でレーザ光源102を駆動するためのレーザ駆動信号をレーザ光源102に出力する。レーザ駆動信号により、励起光の照射期間(レーザ光源102のオン)と遮光期間(レーザ光源102のオフ)のタイミングが制御されるとともに、励起光の光量が制御される。
【0074】
レーザ光源(励起光光源)102は、レーザドライバ100からのレーザ駆動信号に基づいて、励起光として、本実施形態の場合には、所定のタイミング、所定の光量に制御された405nm±10nmの短波長のレーザ光(パルス)を出力する。なお、レーザ光(励起光)の波長は、405nm±10nmに限定されず、自家蛍光を発する部位に応じて適宜決定すべきものである。レーザ光源102から発せられるレーザ光(つまり、励起光)は、光ファイバー104の入射端に導かれる。
【0075】
光ファーバー104は、励起光のライトガイドとなるものであり、前述のように、電子内視鏡装置12の操作部24の鉗子入口38aから鉗子出口38bに到達するまで挿入されて、挿入部22の内部に形成された鉗子チャンネル38の内部に装着される。光ファイバー104により、レーザ光源102から発せられる励起光が、鉗子チャンネル38内に装着された光ファイバー104の先端部まで導光され、電子内視鏡装置12の挿入部22の先端部22aの鉗子出口38bから被写体に照射される。
【0076】
上記のように、光ファイバー104は電子内視鏡装置12の鉗子チャンネル38内に装着されるが、光ファイバー104と鉗子チャンネル38の内壁との間には多少の隙間がある。そのため、励起光用の光ファイバー104の放熱効率は、あらかじめ挿入部22内に設けられている白色光用の光ファイバー48よりも優れている。また、励起光用の光ファイバー104が導光する光は青色成分であり、赤外光成分を含んでいないため、たとえ常時発光させたとしても発熱の問題はほとんど生じない。
【0077】
本実施形態の電子内視鏡システム10のうち、電子内視鏡装置12、プロセッサ装置14、白色光の光源装置16は、白色光画像の撮像機能はあるが、自家蛍光画像の撮像機能はない既存の電子内視鏡システムのものを利用することができる。つまり、既存の電子内視鏡システムにおいて、新たに、電子内視鏡装置12の挿入部22の先端部22aに装着される励起光カットフィルタ32と、励起光の光源装置16と、励起光の光源装置18を接続するためのコネクタ106とを追加するだけで本実施形態の電子内視鏡システム10を実現することができる。
【0078】
また、既存の電子内視鏡システムにおいて、自家蛍光観察モードの追加により生じる変更、例えば、機能割り当てボタンへの観察モード切替ボタンの割り当て、励起光の照射期間および遮光期間とCCD42の電荷蓄積期間および撮像信号出力期間とのタイミングの変更、信号処理部60における合成画像の生成、ロータリーシャッタ78の回転速度の変更等は、既存の電子内視鏡システムのハードウェアを一切変更することなく、ソフトウェア(ファームウェア)のアップデートで対応することができる。
【0079】
以上のように、本実施形態の電子内視鏡システム10は、励起光カットフィルタ32と、励起光の光源装置16と、コネクタ106とを追加するだけで、白色光画像の撮像機能はあるが、自家蛍光画像の撮像機能はない既存の電子内視鏡システムを利用して、自家蛍光画像の撮像機能を実現することができる。そのため、電子内視鏡システム10の使用者は、既存の電子内視鏡システムを無駄にすることなく、自家蛍光画像の撮像機能を安価に実現することができる。
【0080】
次に、電子内視鏡システム10の動作を説明する。
まず、白色光観察モードのときの動作を説明する。
【0081】
白色光観察モードの場合、電子内視鏡装置12とプロセッサ装置14および白色光の光源装置16とがコネクタ26およびユニバーサルコード28を介して接続された後、各装置の電源がオンとされる。白色光観察モードのときには、励起光の光源装置18を接続する必要はない。つまり、この状態は、観察モードの有無を除き、白色光画像の撮像機能はあるが、自家蛍光画像の撮像機能はない既存の電子内視鏡システムと同等であり、その作用もほぼ同様である。
【0082】
電子内視鏡装置12の観察モード切替ボタン50によって白色光観察モードに設定されると、白色光観察モードを表す観察モード信号がプロセッサ装置14のCPU64および白色光の光源装置16のCPU94に入力される。
【0083】
続いて、電子内視鏡装置12の挿入部22が被写体の体腔内に挿入され、湾曲部22bが操作部24のアングルノブ30の操作に応じて所望の方向に湾曲され、先端部22aが撮影対象部位の方向に向けられる。
【0084】
プロセッサ装置14では、CPU64の制御により、TG56でタイミング信号が生成される。このタイミング信号およびCPU64からの観察モード信号に基づいて、CCDドライバ54で観察モードに対応した読み出しパルスおよび電子シャッタパルスが生成され、CCD42に入力される。また、タイミング信号に基づいて、同期パルスドライバ58で同期パルスが生成され、白色光の光源装置16の同期処理回路86および励起光の光源装置18の同期処理回路96に入力される。
【0085】
白色光の光源装置16では、同期パルスドライバ58からの同期パルス、位置検出器84からのオン・オフ信号、および、CPU94からの観察モード信号に基づいて、同期処理回路86で同期処理が行われ、CCD42の電荷蓄積期間および撮像信号出力期間と、白色光の照射期間および遮光期間とが同期される。白色光観察モードでは、白色光の1サイクルが同期パルスの1サイクルと同じ周期となるように制御する同期処理信号が同期処理回路86から出力される。そして、同期処理信号に基づいて、回転制御回路88により回転制御が行われ、モータドライバ90によってモータ92が回転され、ロータリーシャッタ78が回転される。
【0086】
また、光量制御回路80により、測光回路62からの輝度値信号に基づいて、撮像された白色光画像のうちのG画像の輝度の平均値があらかじめ設定された所定の輝度となるように、白色光光源72から発せられる白色光の光量を制御するための光量制御信号が出力される。そして、絞り駆動ドライバ82により、光量制御回路80からの光量制御信号に基づいて絞り調節機構76が駆動され、その絞り量(つまり、白色光の光量)が調節される。
【0087】
図8は、白色光観察モードのときの電子内視鏡システムの動作を表すタイミングチャートである。このタイミングチャートには、上から順に、ロータリーシャッタ78の光透過/遮光タイミング、CCD42の読み出しパルス(同期パルス)、CCD42の電荷蓄積期間および撮像信号出力期間が表されている。同図に示すように、白色光観察モードでは、同期パルスの1サイクル毎に、所定の一定期間、白色光が照射される。
【0088】
白色光の照射期間には、白色光の光源装置16から発せられる白色光が、電子内視鏡装置12内の光ファイバー48によって先端部22aまで導光され、照射レンズ46、照射窓36を通して被写体の撮像対象部位に照射される。そして、白色光が照射された被写体からの反射光が、励起光カットフィルタ32、観察窓34、光学系40を通してCCD42で受光され、電子シャッタパルスに基づいて、光電変換されて白色光画像が撮像される。つまり、白色光画像に対応する電荷がCCD42に蓄積される。
【0089】
続いて、遮光期間になると、読み出しパルスに基づいて、撮像された白色光画像に対応する撮像信号がCCD42から読み出され、プロセッサ装置14の信号処理回路60に入力されて内視鏡画像の映像信号とされる。
【0090】
信号処理回路60では、内視鏡画像として、電子内視鏡装置14よって撮像された白色光画像の映像信号が順次モニタ20に出力され、白色光画像が表示される。これ以後、白色光の照射期間および遮光期間において、上記の動作が繰り返される。
【0091】
撮像が終了すると、電子内視鏡装置12の挿入部22が被写体の体腔内から取り出され、各装置の電源がオフとされる。
【0092】
続いて、自家蛍光観察モードのときの動作を説明する。
【0093】
自家蛍光観察モードの場合、電子内視鏡装置12とプロセッサ装置14および白色光の光源装置16とがコネクタ26およびユニバーサルコード28を介して接続されるとともに、励起光の光源装置18とプロセッサ装置14および白色光の光源装置16とがコネクタ106およびユニバーサルコード108を介して接続される。そして、励起光の光源装置18の光ファイバー104が電子内視鏡装置12の鉗子入口38aから挿入され、鉗子チャンネル38の内部に装着された後、各装置の電源がオンとされる。
【0094】
電子内視鏡装置12の観察モード切替ボタン50によって自家蛍光観察モードに設定されると、自家蛍光観察モードを表す観察モード信号がプロセッサ装置14のCPU64および白色光の光源装置16のCPU94に入力される。
【0095】
続いて、励起光の光源装置18の光ファイバー104が鉗子チャンネル38に装着された電子内視鏡装置12の挿入部22が被写体の体腔内に挿入され、同様に、先端部22aが撮影対象部位の方向に向けられる。なお、電子内視鏡装置12の挿入部22aを被写体の体腔内に挿入した後、励起光の光源装置18の光ファイバー104を電子内視鏡装置12の鉗子入口38aから挿入して鉗子チャンネル38内に装着してもよい。
【0096】
プロセッサ装置14では、前述のように、観察モード信号に対応する読み出しパルスおよび電子シャッタパルスと、同期パルスとが生成される。同期パルスの周期は、観察モードに関係なく常に同じである。
【0097】
自家蛍光観察モードのときの白色光の光源装置16の動作は、ロータリーシャッタ78が白色光観察モードのときの半分の速度で回転され、白色光の1サイクルが同期パルスの2サイクルと同じ周期となる点を除いて、白色光観察モードのときと同じである。白色光の1サイクルにおいて、一方の同期パルスのサイクルで白色光が照射され、他方の同期パルスのサイクルで励起光が照射される。つまり、同期パルスの1サイクル毎に白色光と励起光が交互に照射される。
【0098】
また、白色光の光源装置16では、自家蛍光観察モードのとき、図9に示すように、白色光の照射期間および遮光期間が白色光観察モードのときの2倍の長さとなるが、電子シャッタパルスに基づくCCD42の電子シャッタ動作により、自家蛍光観察モードのときのCCD42の蓄積期間は、白色光観察モードの場合のCCD42の蓄積時間と同じになるように制御される。
【0099】
励起光の光源装置18では、同期パルスに基づいて、同期処理回路96で同期処理が行われ、CCD42の電荷蓄積期間および撮像信号出力期間と、励起光の照射期間および遮光期間とが同期されるとともに、白色光の照射期間および遮光期間と、励起光の照射期間および遮光期間とが同期される。
【0100】
また、光量制御回路98により、白色光の光源装置16の光量制御回路80からの光量制御信号に基づいて、レーザ光源102から発せられる励起光の光量が、白色光の光量に対して1/10等の一定の比率で変化するように、レーザ光源102から照射される励起光の光量を制御するための光量制御信号が出力される。
【0101】
そして、同期処理回路96による同期処理、および、光量制御回路98による光量制御に基づいて、レーザドライバ100の駆動により、レーザ光源102から、所定のタイミング、所定の光量のレーザ光(励起光)が発せられ、光ファイバー104の入射端に導かれる。
【0102】
図9は、自家蛍光観察モードのときの電子内視鏡システムの動作を表すタイミングチャートである。このタイミングチャートには、上から順に、ロータリーシャッタ78の光透過/遮光タイミング、レーザ光源102の発光タイミング、CCD42の読み出しパルス(同期パルス)、CCD42の電荷蓄積期間および撮像信号出力期間が表されている。同図に示すように、自家蛍光観察モードでは、同期パルスの1サイクル毎に、白色光の照射期間と励起光の照射期間とが交互に繰り返される。
【0103】
白色光の照射期間には、白色光の光源装置16から白色光が被写体に照射され、CCD42に白色光画像に対応する電荷が蓄積される。続いて、白色光の遮光期間になると、CCD42から白色光画像の撮像信号が出力される。
【0104】
励起光の光源装置18からの励起光の照射は、CCD42から白色光画像の撮像信号が出力されている期間、つまり、白色光の遮光期間に同時に行われる。なお、図9の例では、励起光の照射と白色光画像の撮像信号の出力の一部が同時に行われている。
【0105】
励起光の照射期間には、白色光の光源装置16からの白色光が遮光された状態で、励起光の光源装置18から発せられる励起光が光ファイバー104によって導光され、電子内視鏡装置12の先端部22aの鉗子出口38bから被写体に照射される。そして、励起光が照射された被写体から発せられる自家蛍光が、励起光カットフィルタ32、観察窓34、光学系40を通してCCD42で受光され、電子シャッタパルスに基づいて、光電変換されて自家蛍光画像が撮像される。つまり、自家蛍光画像に対応する電荷がCCD42に蓄積される。
【0106】
続いて、励起光の遮光期間になると、読み出しパルスに基づいて、撮像された自家蛍光画像に対応する撮像信号がCCD42から読み出され、プロセッサ装置14の信号処理回路60に入力される。
【0107】
続く白色光の光源装置16からの白色光の照射は、CCD42から自家蛍光画像の撮像信号が出力されている期間に同時に行われる。なお、図9の例では、白色光の照射と自家蛍光画像の撮像信号の出力の一部が同時に行われている。
【0108】
信号処理回路60では、電子内視鏡装置12よって撮像された白色光画像および自家蛍光画像に画像処理が施され、両者が重ね合わせられた合成画像が生成され、これが内視鏡画像としてモニタ20に表示される。これ以後、白色光の照射期間および遮光期間と、励起光の照射期間および遮光期間において、上記の動作が繰り返される。
【0109】
撮像が終了すると、電子内視鏡装置12の挿入部22が被写体の体腔内から取り出され、各装置の電源がオフとされる。
【0110】
本発明は、基本的に以上のようなものである。
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0111】
10 電子内視鏡システム
12 電子内視鏡装置
14 プロセッサ装置
16 白色光の光源装置
18 励起光の光源装置
20 モニタ
22 挿入部
22a 先端部
22b 湾曲部
24 操作部
26、106 コネクタ
26a 第1コネクタ
26b 第2コネクタ
28、108 ユニバーサルコード
30 アングルノブ
32 励起光カットフィルタ
34 観察窓
36 照明窓
38 鉗子チャンネル
38a 鉗子入口
38b 鉗子出口
40 光学系
42 CCD
44a、44b 信号線
46 照射レンズ
48、104 光ファイバー
48a 入射端
50 観察モード切替ボタン
52 コード
54 CCDドライバ
56 タイミングジェネレータ(TG)
58 同期パルスドライバ
60 信号処理回路
62 測光回路
64、94 CPU
66 A/D変換回路
68 色調補正部
70 画像処理部
72 白色光光源
74 レンズ
76 絞り調節機構
78 ロータリーシャッタ
80、98 光量制御回路
82 絞り駆動ドライバ
84 位置検出器
86、96 同期処理回路
88 回転制御回路
90 モータドライバ
92 モータ
100 レーザドライバ
102 レーザ光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
白色光の光源装置から発せられる白色光を導光して被写体に照射し、その反射光を固体撮像素子で受光し光電変換して白色光画像を撮像する内視鏡装置を利用して、自家蛍光画像を撮像するために使用される励起光の光源装置であって、
所定波長の励起光を常時発する光源部と、
前記内視鏡装置の鉗子チャンネルの内部に装着され、前記光源部から発せられる励起光を導光して被写体に照射する導光部と、
前記白色光の光源装置における白色光の光量制御信号に基づいて、前記光源部から発せられる励起光の光量が、前記白色光の光源装置から発せられる白色光の光量と所定の相関をもって変化するように、前記光源部から発せられる励起光の光量を制御する光量制御部とを有する励起光の光源装置。
【請求項2】
前記光源部は、前記励起光として、405nm±10nmの波長のレーザ光を出力するものである請求項1に記載の励起光の光源装置。
【請求項3】
前記光量制御部は、前記励起光の光量が前記白色光の光量に対して一定の比率で変化するように、前記励起光の光量を制御するものである請求項1または2に記載の励起光の光源装置。
【請求項4】
白色光を発する白色光の光源装置と、
請求項1〜3のいずれかに記載の励起光の光源装置と、
被写体の体腔内に挿入される挿入部を有し、前記白色光の光源装置から発せられる白色光を前記挿入部の先端まで導光して被写体に照射し、その反射光を固体撮像素子で光電変換して白色光画像を撮像するか、前記白色光の光源装置からの白色光が遮光された状態で、前記励起光の光源装置から発せられる励起光が照射された被写体から発せられる自家蛍光を前記固体撮像素子で光電変換して自家蛍光画像を撮像する内視鏡装置と、
前記内視鏡装置の挿入部の先端部にキャップとして装着され、前記固体撮像素子で受光される光のうち、前記励起光の光源装置から照射される所定波長の励起光を含む所定帯域の波長の光をカットする励起光カットフィルタと、
前記内視鏡装置によって撮像された白色光画像および自家蛍光画像に画像処理を施して、前記白色光画像と前記自家蛍光画像とが重ね合わせられた合成画像を生成する信号処理回路とを備える電子内視鏡システム。
【請求項5】
前記信号処理回路は、さらに、前記励起光カットフィルタによってカットされた白色光画像の成分を補うように、該白色光画像の色調を補正するものである請求項4に記載の電子内視鏡システム。
【請求項6】
前記信号処理回路は、さらに、被写体の病変部および正常部について、あらかじめ撮像された白色光画像および自家蛍光画像を用いて、前記合成画像における白色光画像および自家蛍光画像の特性のバランスを調整するものである請求項4または5に記載の電子内視鏡システム。
【請求項7】
前記信号処理回路によってバランスが調整される特性は、γ値、輝度レベル、コントラストのうちの少なくとも1つを含む請求項6に記載の電子内視鏡システム。
【請求項8】
前記信号処理回路は、さらに、前記白色光画像の赤色成分および青色成分と前記自家蛍光画像の緑色成分とを合成して前記合成画像を生成するものである請求項4〜7のいずれかに記載の電子内視鏡システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−10962(P2012−10962A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−150319(P2010−150319)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】