説明

動く歩道、および動く歩道の電気装置の保守方法

床またはその他の支持体などの固定基盤(1)に設置されたフレーム(2)と、フレーム(1)に支持されたコンベヤ(3)と、コンベヤを駆動する電源装置(4)と、歩道面を形成し、床またはその他の支持体などの固定基盤の上にコンベヤの輸送方向に対してコンベヤの上流および/または同様にコンベヤの下流に配設された入口スロープおよび/または出発スロープ(5、6)あるいはそれに類するものと、電気装置(7、8、9)とを含む動く歩道。入口スロープおよび/または出発スロープ(5、6)あるいはそれに類するものはフレーム覆い(10)を備え、この覆いの中は空洞の内部空間(11)となっていて、この空間に動く歩道の電気装置(7、8、9)が収納される。電気機器を処理するため、動く歩道を停止させて通行止めにし、処理を必要とする電気機器を含む入口スロープおよび/または出発スロープを動く歩道から取り外し、新しい、または処理された入口スロープおよび/または出発スロープを動く歩道に連結し、処理を必要とする入口スロープおよび/または出発スロープを、処理場で処理するために動く歩道から運び出し、動く歩道を始動して通行に供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段に規定される動く歩道に関するものである。また、本発明は、請求項12の前段に規定される方法に関するものである。
【発明の背景】
【0002】
国際公開公報第WO 2005/042392号による従来技術の動く歩道は、床やその他の支持体などの固定基盤上に設置されたフレームを含む。コンベヤは、フレームに支持される。コンベヤは、電源装置で駆動される。歩道面を形成する入口スロープ、および同様の出発スロープが、床またはその他の支持体などの固定基盤の、コンベヤの輸送方向に対してコンベヤの上流およびそれに対応する下流にそれぞれ配設される。また動く歩道には、一般的にいろいろな電気装置が設けられている。この種の動く歩道用フレームは、必然的に浅い構造をとるため、内部の空間が非常に狭い。この空間は、たいていの場合、もとからコンベヤの駆動装置類の部材で埋まってしまうため、処理を行う際にアクセスしやすいように電気装置を設置するのは難題である。
【発明の目的】
【0003】
本発明は、上述の欠点を解消することを目的とする。
【0004】
本発明はとくに、電気装置に簡単にアクセスすることができて保守作業をしやすい動く歩道を開示することを目的とする。
【0005】
本発明はさらに、長時間停止することなく、迅速な保守作業が可能な動く歩道を開示することを目的とする。
【0006】
本発明はまた、できるだけ短い停止時間で保守作業を行える方法を開示することを目的とする。
【発明の概要】
【0007】
本発明による動く歩道は、請求項1に開示されている事項により特徴付けられる。本発明による方法は、請求項12に開示されている事項により特徴付けられる。
【0008】
本発明による動く歩道は、床またはその他の支持体などの固定基盤に設置されたフレーム、フレームに支持されたコンベヤ、コンベヤを駆動する電源装置、歩道面を含み、床やその他の支持体などの固定基盤に、コンベヤの輸送方向に対してコンベヤの上流またはそれに対応する下流に配設される入口スロープおよび/または出発スロープもしくはそれに類するもの、および電気装置を含む。
【0009】
入口スロープおよび/または出発スロープもしくはそれに類するものは、フレーム覆いを含み、フレーム覆いは内部が空洞になっていて、そこに電気装置が設置される。
【0010】
スロープ内に動く歩道の主要な電気装置を設置することは、動く歩道の空間活用および作業性の観点から考えると有利である。
【0011】
本発明による電気機器の保守方法では、動く歩道を停止させて通行止めにし、保守作業が必要な電気機器を収容している入口スロープおよび/または出発スロープを動く歩道から取り外し、新品または処理された入口スロープおよび/または出発スロープを動く歩道に連結する。保守作業を要する入口スロープおよび/または出発スロープは、保守作業場で処理するために動く歩道から運び出され、動く歩道は、運転が開始され、通行可能になる。
【0012】
動く歩道の電気装置は、本発明の方法によって、簡単で手早い保守作業をできる限り迅速に行えるため、停止時間を最大限短くすることができる。必要な処置に多大な時間を要するために動く歩道の運転区域での作業が適当でない場合、保守作業を要する入口スロープおよび/または出発スロープを、動く歩道から単に取り外して、同様の新品または処理済みのものと交換できる。保守作業が必要なスロープを保守作業場に移送して、人間工学的に良好で安全な状況で、操作可能な状態に処理することができる。
【0013】
動く歩道の一実施例において、フレーム覆いは独立モジュールであり、フレームに着脱可能に連結される。
【0014】
動く歩道の一実施例において、フレームは第1コネクタを含み、第1コネクタは動く歩道の電源装置などの電気機器に接続する。入口スロープおよび/または出発スロープは第2コネクタを含み、第2コネクタは、スロープの内部空間に設けられた電気機器に接続し、第1コネクタに接続するのに適している。
【0015】
動く歩道の一実施例において、入口スロープおよび/または出発スロープの電気機器は、動く歩道の機能を制御する制御手段を備える。
【0016】
動く歩道の一実施例において、入口スロープおよび/または出発スロープの電気機器は、周波数変換器、または少なくともインバータを備える。
【0017】
動く歩道の一実施例において、入口スロープおよび/または出発スロープの電気機器は、変圧器を備える。
【0018】
動く歩道の一実施例において、フレーム覆いは水平または傾斜した上部面を備え、この上部面は乗客用の歩道面を形成する。
【0019】
動く歩道の一実施例において、歩道面は開口部を備え、この開口部を通して内部空間にある電気機器にアクセスすることができ、また歩道面は、開口部を覆うことができる開閉可能な蓋を備える。
【0020】
動く歩道の一実施例において、上部面は水平であり、入口スロープおよび/または出発スロープは段差を少なくとも1つ有する。
【0021】
動く歩道の一実施例において、動く歩道は、モジュール式であり、基本的に適切な位置に固定され、コンベヤの全長の主要部分を構成する中央部モジュールと、中央部モジュールに着脱可能に連結され、コンベヤの主要部分より短い部分を含む少なくとも1つの端部モジュールと、処理可能な部材とを備える。入口スロープおよび/または出発スロープは、端部モジュールに対し、モジュール式に取り外し、および連結することが可能であり、端部モジュールとともに、または別々に動くことができる。
【0022】
動く歩道の一実施例において、動く歩道は2つの端部モジュールを備え、これらは中央部モジュールに対して、モジュール方式に取り外し、および連結することが可能である。
【発明の詳細な説明】
【0023】
以下、本発明を、実施例におけるいくつかの例を用いて、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0024】
図1〜図5は動く歩道を示し、この歩道は、床またはその他の支持体など、固定基盤1に設置されたフレーム2を含む。コンベヤ3は、例えば本願と同一の出願人による国際公開公報第WO 2005/042391号に記載されているパレットコンベヤなどでよい。このコンベヤでは、連続するパレットが無端リング状の軌道を移動し、この軌道には上部分があり、この上部分は動く歩道の始端から終端まで乗客を輸送する実走路としての機能を果たし、またこの軌道には下部分があり、この下部分は、終端裏側から始端までパレットを移送する走路として機能し、フレーム2に支持される。
【0025】
また、動く歩道は電源装置4を含み、この装置は好ましくは、狭い空間に収まり、固定基盤より高い位置でフレーム2と接続する平型の永久磁石同期電動機である。
【0026】
図1におけるコンベヤの輸送方向(左から右)に見て、入口スロープ5はコンベヤ3の上流に位置し、同様に、出発スロープ6はコンベヤの下流に位置する。スロープ5および6は歩道面を形成し、乗客はこのスロープに沿ってコンベヤ3へ進むことができる。この図では、スロープ5、6の上部面14が傾斜しているため、車椅子もコンベヤ3に乗ることができる。図2は、出発スロープ6の別の選択肢を示し、ここでは上部面14は水平であり、段差17を有している。
【0027】
これらの図は出発スロープ6がフレーム覆い10を含むことを示し、フレーム覆い内は空洞の内部空間11となっている。動く歩道の電気装置7、8、9が、フレーム覆い10の内部空間11に収められている。
【0028】
図3および図4に示すように、フレーム覆い10の上部面14は開口部15を含み、この開口部を通して内部空間11の電気装置7、8、9に簡単に近づくことができる。開口部15は開閉可能な蓋16で覆われている。図5は、図4におけるフレーム覆い10の構造の代わりとなる構造を示し、この構造では蓋4が不要となる代わりに、上部面14を含むフレーム覆い10が電気装置7、8、9から動かされ、電気装置はそのままの位置である。したがって、この場合、電気装置は点検・処理中、露出状態となる。
【0029】
図4に示すように、スロープのフレーム覆い10は、独立モジュールであるのが好ましく、単一体として移動でき、フレーム2に着脱自在に連結される。電気的接続またはデータ接続を実現するために、動く歩道のフレーム2は第1コネクタ12を含み、この第1コネクタは動く歩道の電気装置、例えば電源装置4に接続される。入口スロープ5および/または出発スロープ6は第2コネクタ13を含み、第2コネクタはスロープの内部空間11の電気装置7、8、9に接続され、また、第1コネクタ12への接続に適している。好ましくは、第1コネクタ12と第2コネクタ13とが電気的に接続されるとともに、スロープ6は動く歩道のフレーム2に物理的に取り付けられる。
【0030】
入口スロープ5および/または出発スロープ6の電気装置は、動く歩道の各機能を制御する制御装置7、周波数変換器またはインバータ8、変圧器9、およびその他の同様の電気装置を備える。
【0031】
図1はまた、動く歩道の好適なモジュール構造も示す。動く歩道は、基本的に適切な位置に取り付けられた中央部モジュール18を備えることもでき、中央部モジュールはコンベヤ3の全長の主要部分を含む。
【0032】
さらに、2つの端部モジュール19、20が有り、中央部モジュール18に対しモジュール式に取り外し、および連結することが可能である。端部モジュール19、20は、コンベヤ3の一部を含み、両者は主要部分より短く、さまざまな処理可能部品を含む。入口スロープ5および/または出発スロープ6は、端部モジュール19、20に対しモジュール式に取り外し、および連結することができ、また、端部モジュールと共に、または別々に動くことができる。
【0033】
入口スロープ5または出発スロープ6に含まれる電気機器に保守作業の必要が生じ、その場で作業を行うのに時間がかかる場合には、動く歩道は停止され、通行止めになる。この問題のある電気装置を収容する入口スロープ5または6は、端部モジュール19または20から取り外され、このスロープと端部モジュールの間の電気的接続12、13も解除される。類似の新品または処理されたスロープが、端部モジュール19または20に連結される。コネクタ12および13は相互に接続される。処理を要するスロープ5または6は、保守作業場で処理を行うために、動く歩道から運び出される。最後に動く歩道を始動し、通行に供する。
【0034】
本発明は上述の実施例への適用に限定するものでなく、特許請求の範囲に規定された発明の概念の範囲内であれば、さまざまに変更可能である。例えば、本発明を適用する際に、使用するスロープを、動く歩道の長手方向とは別の方向に傾斜させたり、下り坂にしたりすることもできる。発明の概念は傾斜スロープではなく覆いにも適していて、この覆いは、少なくとも1つの段差を有するか、または動く歩道を支持する床面と動く歩道のコンベヤとの間に、段差を少なくとも1つ形成する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明による動く歩道の第1実施例を示す概略側面図である。
【図2】本発明による動く歩道の第2実施例の一部を示す概略側面図である。
【図3】図1の動く歩道の上面図である。
【図4】図3の動く歩道の、スロープを取り外して蓋を開いた状態での、IV−IV間の断面を示す図である。
【図5】本発明による動く歩道の第3実施例の一部を示す、図4と同様の図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床またはその他の支持体などの固定基盤(1)上に設置されたフレーム(2)と、該フレーム(1)に支持されたコンベヤ(3)と、該コンベヤを駆動する電源装置(4)と、歩道面を形成し、床またはその他の支持体などの固定基盤の上に、該コンベヤの輸送方向に見てコンベヤの上流および/または同様にコンベヤの下流に配設された入口スロープおよび/または出発スロープ(5、6)あるいはそれに類するものと、電気装置(7、8、9)とを含む動く歩道において、前記入口スロープおよび/または出発スロープ(5、6)あるいはそれに類するものはフレーム覆い(10)を含み、該フレーム覆いの中は空洞の内部空間(11)となっていて、該空間に前記動く歩道の前記電気装置(7、8、9)が配置されることを特徴とする動く歩道。
【請求項2】
請求項1に記載の動く歩道において、前記フレーム覆い(10)は、独立モジュールであり、前記フレーム(2)に対して、取外しおよび連結が可能であることを特徴とする動く歩道。
【請求項3】
請求項1または2に記載の動く歩道において、前記フレーム(2)は、前記電源装置(4)などの前記動く歩道の電気機器に接続された第1コネクタ(12)を含み、前記入口スロープおよび/または出発スロープ(5、6)は第2コネクタ(13)を含み、該第2コネクタは、該スロープの前記内部空間(11)の前記電気機器(7、8、9)に接続し、前記第1コネクタ(12)に対する接続に適していることを特徴とする動く歩道。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の動く歩道において、前記入口スロープおよび/または出発スロープ(5、6)の前記電気機器は、該動く歩道の機能を制御する制御手段(7)を含むことを特徴とする動く歩道。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の動く歩道において、前記入口スロープおよび/または出発スロープ(5、6)の前記電気機器は、周波数変換器、または少なくとも1つのコンバータ(8)を含むことを特徴とする動く歩道。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の動く歩道において、前記入口スロープおよび/または出発スロープ(5、6)の電気機器は、変圧器(9)を備えることを特徴とする動く歩道。
【請求項7】
請求項1ないし5のいずれかに記載の動く歩道において、前記フレーム覆い(10)は水平の、または傾斜した上部面(14)を備え、該上部面は乗客のための歩道面を形成することを特徴とする動く歩道。
【請求項8】
請求項7に記載の動く歩道において、前記上部面(14)は開口部(15)を含み、該開口部を通して前記内部空間(11)の前記電気機器(7、8、9)に近づくことができ、前記上部面はまた、開閉可能な方法で前記開口部(15)を覆う蓋(16)を備えることを特徴とする動く歩道。
【請求項9】
請求項7または8に記載の動く歩道において、前記入口スロープおよび/または出発スロープ(5、6)の水平な前記上部面(14)は、少なくとも1つの段差(17)を備えることを特徴とする動く歩道。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載の動く歩道において、該動く歩道は、モジュール式であり、実質的に適当な位置に固定された、前記コンベヤ(3)の全長の主要部分を構成する中央部モジュール(18)と、該中央部モジュール(18)に着脱可能に連結され、コンベヤの主要部分よりも短い部分を含む少なくとも1つの端部モジュール(19、20)と、処理可能な部材とを含み、前記入口スロープおよび/または出発スロープ(5、6)は、該端部モジュール(19、20)に対し、モジュール式に取り外し、および連結可能であり、該端部モジュールとともに、または別々に動くことができることを特徴とする動く歩道。
【請求項11】
請求項10に記載の動く歩道において、該動く歩道は2つの端部モジュール(19、20)を含み、該端部モジュールは前記中央部モジュール(18)に対して、モジュール式に取り外し、および連結可能であることを特徴とする動く歩道。
【請求項12】
請求項1ないし9のいずれかに基づく動く歩道の電気機器の保守方法において、該方法は、
−該動く歩道を停止させ、通行止めにし、
−処理を要する電気機器を収容する前記入口スロープおよび/または出発スロープを前記動く歩道から取り外し、
−新しい、または処理された入口スロープおよび/または出発スロープを前記動く歩道に連結し、
−前記処理を要する入口スロープおよび/または出発スロープを、処理場で処理するために前記動く歩道から運び出し、
−該動く歩道を始動して、通行に供することを特徴とする保守方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−504537(P2009−504537A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−526516(P2008−526516)
【出願日】平成18年7月3日(2006.7.3)
【国際出願番号】PCT/FI2006/000236
【国際公開番号】WO2007/020321
【国際公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(591159044)コネ コーポレイション (75)
【氏名又は名称原語表記】KONE CORPORATION
【Fターム(参考)】