説明

動く浸水想定区域ビューワーシステム

【課題】破堤点毎、時系列の浸水想定区域を見たい場合は、浸水想定区域図作成時の中間結果として出力図でしか応えられなく、簡単に見ることができない。
【解決手段】地理情報若しくは河川情報に基づき、主として背景地図データ1、浸水想定区域データ2、標高データ3、施設データ4、被害予測データ5等の必要データを予め変換プログラム6を介して事前にデータ変換し、その変換された各データ1A,2A,3A,4A、5Aを取り込むことにより、本ビューワーシステムAを構築する。また、本ビューワシステムAは、破堤点別、時系列別による浸水想定区域図の氾濫解析結果を動的に表示する動的表示手段を備え、大別して画面表示基本機能、浸水範囲・浸水深関連機能、避難情報関連機能、地盤高関連機能、簡易印刷・画面コピー機能を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地図画像を背景に利用して想定破堤地点別に浸水想定区域を表示することができるビューワーシステムであり、更に詳しくは、河川管理者が作成した浸水想定区域図の氾濫解析結果を利用した浸水シミュレーションの結果を、詳細な背景地図と標高データ等とを関連防災情報の上に、任意の範囲、縮尺、配色及び進行速度などで表示でき、延いては、浸水の時間経過による変化を見ることで、住民の避難計画策定の支援にも役立つことができる有用な動く浸水想定区域ビューワーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
浸水想定区域制度は、洪水予報河川制度を受けて、洪水予報河川について浸水想定区域の指定を義務付け、適切な避難場所の設定等の円滑かつ迅速な避難のための処置を講じることにより、一層効果的な住民の避難の確保を図ることを目的としている。
【0003】
従来、浸水想定区域図は、この制度の的確な運用を図るための基本資料であり、国又は都道府県による浸水想定区域の指定、公表、関係市町村の長への周知の際に使用されると共に、市町村防災会議が、少なくとも浸水想定区域毎に洪水予報の伝達方法、避難場所その他洪水時の円滑かつ迅速な避難の確保を図るために必要な事項について定める際の基本資料となるものである(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
ここに「浸水想定区域」とは、洪水などにより河川の堤防が決壊した場合に浸水が予想される区域のことで、河川管理者が指定し、また、「浸水想定区域図」とは、その浸水想定区域と区域内の浸水深、その他必要とされる事項を示した図面のことであり、事前に浸水想定区域・浸水の深さを把握しておくことで、少しでも浸水による被害を少なくするために公表されるものである。
【非特許文献1】浸水想定区域図作成マニュアル及び中小河川浸水想定区域図作成の手引き(国土交通省河川局治水課:平成17年6月作成)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の浸水想定区域図にあっては、全想定破堤点の最大浸水域を合わせたものであるため、破堤点毎、時系列の浸水想定区域を見たい場合は、浸水想定区域図作成時の中間結果として、出力図でしか応えられなく、いつでも簡単に見ることができないといった問題がある。
【0006】
更に、従来の浸水想定区域図だけでは、特定の破堤地点、破堤経過時間後の浸水想定区域を迅速に見ることは困難であり、また、破堤経過時間毎の浸水想定区域を連続して見ることができないことも相俟って、ある破堤地点の浸水域の拡がりや浸水区域の浸水深を迅速に見ることは不可能であった。
【0007】
本発明はこのような従来の問題点に鑑みてなされたもので、GIS(Geographic Information System:地理情報システム )を用いて破堤点毎、時系列毎に浸水想定区域を表示し、破堤後の浸水の時間経過による浸水状況の変化をいつでも簡単にアニメーションで表示することができる有用な動く浸水想定区域ビューワーシステムを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の如き従来の問題点を解決し、所期の目的を達成するため本発明の要旨とする構成は、地図画像を背景に利用したビューワーシステムにおいて、地理座標に基づき、背景地図データ、浸水想定区域データ、標高データ、施設データ、被害予測データ等の必要データと、破堤点別、時系列別の浸水想定区域図の氾濫解析結果を動的に表示する動的表示手段とを備えてなる動く浸水想定区域ビューワーシステムに存する。
【0009】
また、前記必要データは、地図画面の背景に表示する背景地図データ、破堤点や越水ラインの位置情報である破堤点データ、想定破堤地点の浸水シミュレーション結果を時間毎に記録した浸水時系列データ、浸水シミュレーション表示時に同時に表示する各種情報を集録した浸水関連データ、破堤点選択時若しくは破堤点毎、時系列毎に表示する浸水人口数、浸水家屋数、被害額等の情報を集録した被害予測データ、地盤高、高水位を表す数値標高データ、避難場所や公共施設、病院などの施設位置とその詳細を表す施設データ、浸水想定区域を表す浸水想定区域データ、広域図を表示するためのインデックス用データの全て又は何れかを選択又は組み合わせるのが良い。
【0010】
更に、前記動的表示手段は、選択した破堤点の浸水シミュレーション結果を表示する浸水シミュレーション表示機能と、地理座標に基づき背景地図を表示する地図表示機能と、表示されている地図がどこに位置するのかを示した広域図を表示するインデックス表示機能と、全破堤点の最大浸水範囲を浸水深に応じて色分けして表示する浸水深関連機能と、破堤点毎の最大浸水範囲を表示する浸水範囲表示機能と、破堤後の経過時間を想定して浸水想定区域を浸水深に応じて色分け表示する浸水深時系列別表示機能と、指定経過時間まで浸水想定区域を連続して浸水深に応じて色分け表示する浸水深表示設定機能と、施設情報及び施設情報の詳細を表示する施設情報表示機能と、破堤点毎若しくは時系列毎の想定被害額、浸水人口数、浸水家屋数等の被害表示機能と、破堤地点毎に、降雨波形、雨量規模、破堤幅の氾濫計算パターンを複数設け、切り替えることによりそれぞれの氾濫計算パターンに応じた浸水想定区域を表示する機能と、浸水想定区域の連続表示中に施設ポイントが浸水想定区域内に入った時点で強調表示する浸水強調表示機能と、浸水深のランク別に表示色を変更する表示色変更機能と、浸水深のランク分けを表示する浸水深ランク別表示機能と、浸水深のランク分け、表示色を自動割り当てする自動ランク設定機能と、任意地点からの徒歩避難可能圏内を表示する避難圏内表示機能と、任意地点の地盤高を表示する地盤高表示機能と、任意地点より標高が低い所を標高差に応じて色分け表示する標高差表示機能と、表示されている画面を印刷する画面印刷機能と、任意区間の断面表示及び距離を計測する断面・距離計測機能と、任意区間の水位断面図を表示する水位断面図作成機能と、範囲指定による面積を計測する面積計測機能との全て又は何れかを選択又は組み合わせるのが良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明は上述のように構成され、破堤点毎、時系列毎に浸水想定区域を表示し、破堤後の浸水の時間経過による浸水状況の変化をいつでも簡単にアニメーションで表示することができるといった効果を奏する。
【0012】
特に、背景地図データ、浸水想定区域データ、標高データ、施設データ等の必須データを組み合わせ、破堤点、経過時間などの指定により浸水想定区域及び浸水深表示までを即座に、効率的に行うことができるものであり、破堤氾濫時の浸水状況及び避難計画を予め想定することに効果を発揮する。
【0013】
また、背景地図等と合わせて浸水状況や施設情報を表示できるので、市町村による地域防災計画や洪水ハザードマップの検討に優れた利点を有する。しかも、表示結果の印刷、コピーなどが簡単に行えるので、平常時及び緊急時の情報伝達に優れた効果を奏する。
【0014】
更に、浸水の範囲や深さなどを動的に見ることができる他、浸水状況の断面表示や標高差による色分けなどの様々なGIS機能を用いているため、水害時における行動計画の支援や、避難計画の策定にも利用できるといった効果を奏する。
【0015】
特に、河川管理者が作成した浸水想定区域図の氾濫解析結果を利用した浸水シミュレーションの結果を、詳細な背景地図と標高データ等とを関連防災情報の上に、任意の範囲、縮尺、配色及び進行速度などで分かり易く表示できるため、浸水の時間経過による変化を見ることで、住民の避難計画策定の支援にも役立つことができる。
【0016】
また、紙地図上の浸水想定区域図や洪水ハザードマップとは異なり、情報が固定されることなく、時々刻々と変化する実際の洪水・氾濫の様子をシミュレートすべくアニメーションで表現することができるので、誰にでも簡単かつリアルに洪水・氾濫の様子を視認させることができる。
【0017】
このように本発明は、破堤後の経過時間毎の浸水想定区域の表示や、浸水の時間経過による変化をアニメーションで見ることができるため、住民の避難計画策定の支援に役立つ他、河川管理者、市町村防災担当者の水災時における具体的な行動計画の支援を行い、また、平常時の危機管理演習にも利用できるなど、本発明を実施することはその実益的価値が甚だ大である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
地理座標に基づき、背景地図データ、浸水想定区域データ、標高データ、施設データ、被害予測データ等の必要データを組み合わせて、破堤点別、時系列別による浸水想定区域図の氾濫解析結果を動的に表示せしめる。必要データとしては、地図画面の背景に表示する背景地図データ、破堤点や越水ラインの位置情報である破堤点データ、想定破堤地点の浸水シミュレーション結果を時間毎に記録した浸水時系列データ、浸水シミュレーション表示時に同時に表示する各種情報を集録した浸水関連データ、破堤点選択時若しくは破堤点毎、時系列毎に表示する浸水人口数、浸水家屋数、被害額等の情報を集録した被害予測データ、地盤高、高水位を表す数値標高データ、避難場所や公共施設、病院などの施設位置とその詳細を表す施設データ、浸水想定区域を表す浸水想定区域データ、広域図を表示するためのインデックス用データの全て又は何れかを選択又は組み合わせるのが良い。
【実施例1】
【0019】
次に、本発明の実施の一例を図面を参照しながら説明する。図中Aは、本発明に係る動く浸水想定区域ビューワーシステムであり、この動く浸水想定区域ビューワーシステム(以下、単に「本ビューワーシステム」という)Aは、図1に示すように、地理情報若しくは河川情報に基づき、主として背景地図データ1、浸水想定区域データ2、標高データ3、施設データ4、被害予測データ5等の必要データを予め変換プログラム6を介して事前にデータ変換し、その変換された各データ1A,2A,3A,4A、5Aを取り込むことにより、本ビューワーシステムAを構築している。
【0020】
本ビューワーシステムAの取り込み可能な必要データとしては、上述した各データ1,2,3,4、5の他、例えば、破堤点や越水ラインの位置情報である破堤点データ、想定破堤地点の浸水シミュレーション結果を時間毎に記録した浸水時系列データ、浸水シミュレーション表示時に同時に表示する各種情報を集録した浸水関連データ、広域図を表示するためのインデックス用データなどが挙げられる。
【0021】
また、本ビューワーシステムAは、破堤点別、時系列別による浸水想定区域図の氾濫解析結果を動的に表示する動的表示手段を備えており、この動的表示手段は、大別して(1)画面表示基本機能、(2)浸水範囲・浸水深関連機能、(3)避難情報関連機能、(4)地盤高関連機能、(5)簡易印刷・画面コピー機能を有するものである。以下、各機能について更に詳しく説明する。
【0022】
(1)画面表示基本機能
背景地図データ1は、様々な地図データを表示する画面表示基本機能を備えている。この画面表示基本機能は、対象河川周辺の地図や広域図などを表示する機能であり、地図表示機能と、インデックス表示機能と、断面・距離計測機能と、面積計測機能とから構成されている。
【0023】
地図表示機能は、地理座標に基づき背景地図1aを表示するものであり、具体的には、図2に示すように、対象河川周辺の地図や広域図を表示したり、指定した地点周辺の地図を拡大、縮小表示することができる。
【0024】
その他、指定した矩形範囲を拡大表示したり、地図を既定の縮尺で表示することは勿論のこと、地図上、広域図上若しくは背景地図上で指定した点を中心に表示したり、浸水想定区域全体を表示することができる。更には、後述するように、指定した点間の距離を表示したり、指定した多角形範囲の面積を表示することができるように工夫されている。
【0025】
インデックス表示機能は、表示されている地図がどこに位置するのかを示す広域図(インデックス)2aを表示するものであり、表示するデータ名、図形や文字の色や大きさなどを設定する必要がある。
【0026】
断面・距離計測機能は、任意区間の断面表示及び距離を計測するもので、具体的には、[画面]メニューの[距離・断面]を選択し、地図画面上でクリックを繰り返し、図3(a)に示すように、始点から終点を折れ線7で結び、終点でダブルクリックすることで、折れ線7に沿った始終点間の距離(m)と地形断面グラフ7aを表示するものである(図3(b)参照)。尚、該当範囲に標高データがない場合は距離のみが表示される。
【0027】
また、面積計測機能は、範囲指定による面積を計測するものであり、具体的には、[画面]メニューの[面積]を選択し、地図画面上でクリックを繰り返し、図4に示すように、多角形8を描き、最終点でダブルクリックすると、多角形の面積9を表示することができる(図4(b)参照)。
【0028】
(2)浸水範囲・浸水深関連機能
浸水想定区域データ2は、浸水想定区域図を表示して、想定破堤点の位置と名称を表示すると共に、破堤点名を基に破堤点を検索表示し、指定した破堤点・経過時間での浸水想定状況を表示することができる浸水範囲・浸水深関連機能を備えている。
【0029】
浸水深関連機能は、浸水想定区域図を表示し、想定破堤点の位置や名称、更には全破堤点の最大浸水範囲を浸水深に応じて色分けして表示するものである。具体的には、図5に示すように[コンテンツ]ツールバー10の[浸水想定区域]ボタン10aを押すと、地図画面上に浸水想定区域を浸水深毎に色分け表示するもので、ボタンのクリックで表示の有無を切替えできると共に、表示色の色や階調の幅は[設定]メニューの[浸水深表示色/階調変更]で設定する。
【0030】
また、破堤点の表示は、想定破堤点・越水ラインの有無を切り替えることで表示でき、具体的には[破堤点]メニューの[破堤点]を選択すると、図6に示すように、破堤点を地図画面上に「赤い点」10bで表示する。
【0031】
更に、[破堤点]メニューの[キロポスト](図示せず)を選択すると、点の横に破堤点名を表示するものである。尚、計算条件が異なる等により浸水シミュレーションを表示できない破堤点は表示しない。
【0032】
また、必要に応じて浸水想定シミュレーションを表示する破堤点を指定する。指定方法としては、例えば、[地図画面上で指定した点を選択]する場合と、[破堤点名から検索した点を選択]する場合とがあり、[破堤点検索]ダイアログ11を表示する。
【0033】
具体的には、図7に示すように、全破堤点一覧11aの中から該当破堤点名をクリックし、[地図検索]ボタン11bを押して選択する。その他、一覧の破堤点を名前で絞り込んでから選択することもでき、その場合は破堤点名の一部を枠内に入力した後で、絞り込まれた一覧から選択すれば良い。選択した破堤点は、図8に示すように、地図画面上に青い点11cで表示され、同時に選択した破堤点の時系列データがとる最大の範囲を灰色11dで表示される。
【0034】
浸水シミュレーション表示機能は、選択した破堤点の浸水シミュレーション結果を表示するもので、具体的には、[破堤点]メニューの[破堤シミュレーション]ボタンを押して、図9に示すように、シミュレーション表示操作ダイアログ12を表示し、地図画面に破堤前後のシミュレーション結果が表示される(図9(a)(b)参照)。尚、地図画面12cに施設の名称を表示している場合は、図9(c)(d)に示すように、施設がある地点の浸水状況に応じて表示が変わるように設定されている。
【0035】
また、この浸水シミュレーションの連続表示は、図10に示すように、操作ダイアログ13の矢印ボタン13aを押すことで、シミュレーション結果の連続表示(疑似アニメーション)を開始するものであり、開始経過時刻13b、終了経過時刻13cを設定できる。因に、このアニメーション機能は、氾濫の予測結果をアニメーション化して動的に表示するものであることから、防災関係者の理解を容易になすものである。
【0036】
また、表示スピードの調整13dでアニメーションの表示スピードを変更でき、[確定]ボタン13eを押すと、選択した経過時刻のシミュレーション結果表示したまま、地図画像表示に戻り、この状態で水位断面図等を作成することができる。尚、[キャンセル]ボタン13fを押すと、破堤点を選択した状態に戻るようにプログラムされている。
【0037】
尚、確定ボタン13eを押した後は、図11に示すように、選択した破堤点の、選択した経過時刻でのシミュレーション結果13Aを表示したまま、他の基本表示操作ができ、破堤点を選択解除するまで、選択した破堤点名と計算条件、経過時刻をステータスバー3a(図2参照)に表示するものである。
【0038】
このように、浸水シミュレーション表示機能は、洪水予測に応じて破堤等の危険があると想定される箇所及び近傍の浸水シミュレーションデータを、時間経過毎に浸水想定区域図に浸水地区名及び避難場所などと合わせて表示できるので頗る便利である。
【0039】
また、水位断面図作成機能は、図12に示すように、任意区間の水位断面図14を表示するもので(図12(b)参照)、指定した区間の地形断面と、シミュレーション結果による浸水深・浸水位を合わせて表示するものである。
【0040】
具体的には、[破堤点]メニューの[水位断面図]を選択し、地図画面上でクリックを繰り返し、図12(a)に示すように、始点から終点を折れ線14aで結び、最終点でダブルクリックをすることで、地盤高、浸水深/浸水位、高水位のグラフ14bを表示できるもので、標高データのない範囲は0mと判断される。
【0041】
更に、浸水関連情報は、地図画面の右隅又は指定した座標に、浸水に関連する情報を表示する機能であり、表示内容を浸水関連情報データに格納し、表示する項目指定を時系列データの属性に予め格納する。
【0042】
具体的には、図13に示すように、浸水シミュレーション表示に連動して、浸水に関連する情報15を表示するもので、表示の有無は[破堤点]メニューから[浸水関連情報]を選択して切り替えられる。
【0043】
また、施設浸水状況ダイアログ16は、図14(a)に示すように、表示中の浸水シミュレーション表示で、施設浸水状況欄16aに浸水中と判断した施設数及び全施設数が表示される。具体的には、破堤点を選択し、浸水シミュレーション画面の特定の時刻を[確定]にした状態で、[破堤点]メニューから[施設浸水状況]を選択すれば良い。
【0044】
尚、施設名称一覧ダイアログ17は、図14(b)に示すように、浸水中の施設名称を一覧表示するもので、施設名称一覧欄17aで名称一覧を表示したい種別名を選択し、[施設属性表示]ボタン17bを選択する。また、名称一覧を表示したい種別名をダブルクリックして表示することもできる。
【0045】
更に、属性値確認は、浸水中の施設属性を表示するもので、具体的には図14(c)に示すように、属性値確認ダイアログ18で属性を表示したい施設名称を選択し、[施設属性表示]を選択すれば良い。また、施設属性を表示したい施設名称をダブルクリックして表示することもできる。
【0046】
また、被害予測機能は、図15に示すように、選択中の破堤点に関する浸水人口数、浸水家屋数、被害額等の被害予測情報19を表形式で表示するものであり、具体的には[破堤点]メニューから[被害予測]を選択すれば、図15に示すように、市町村名別に最大浸水深、浸水面積、浸水人口、床下人口、床上人口、浸水家屋などが表示される。尚、表示内容は、[CSV出力]ボタン19aを選択し、保存するファイル名を指定するだけで、CSVファイル形式として保存することができる。
【0047】
更に、浸水表示設定機能は、破堤点やシミュレーションに関する設定を変更するものであり、浸水深表示色/階調設定は、浸水深の表示色や階調範囲、階調幅を設定する機能である。浸水シミュレーション時の浸水深表示、浸水想定区域(最大浸水深)の浸水深表示、地盤高低地(数値設定)の標高差表示に影響する。
【0048】
具体的には、設定メニューから[浸水深表示色/階調変更]ボタン(図示せず)を選択し、変更画面を表示し、カラー変更、ランク追加、ランク削除、自動ランク設定、保存、読み込みを行うことができる。
【0049】
従って、浸水深のランク別に表示色を変更したり、浸水深のランク分けを表示したり(浸水深ランク別表示機能)、浸水深のランク分け、表示色を自動で割り当てることなどが可能になる(自動ランク設定機能)。
【0050】
また、浸水時系列データ変更は、同一破堤点で計算条件等が異なる浸水時系列データがある場合、表示データを切り替えるもので、具体的には[設定]メニューから[浸水時系列データ変更]ボタン(図示せず)を選択することで、変更画面が表示される。
【0051】
更に、データ表示確認機能として、施設属性が挙げられる。具体的には、[確認]メニューの[施設属性]を選択し、地図画面1aに表示されている施設12cの上にマウスを合わせると、図16図(a)に示すように、該当施設データ12bの名称12aを表示するもので、更に施設データ12bをクリックすると、図16(b)に示すように、属性値確認欄20で詳細な情報を表示できるようにプログラムされている。
【0052】
また、[確認]メニューの[半径2km範囲]を選択し、地図画面1a上をクリックすると、図17(a)に示すように、指定範囲を中心に半径2kmの円21を表示できると共に、[確認]メニューの[地盤高低地]を選択し、地図画面1a上をクリックすれば、図17(c)に示すように、指定標高の位置よりも低い範囲を階調色22で表示することができる。
【0053】
更に、[確認]メニューの[地盤高低地(数値指定)]を選択し、図18に示すように、標高値欄23に所定の標高値(m)23aに数値を入力すると、指定して標高値よりも低い範囲を階調色23bで表示することができる。尚、表示色や階調数、階調幅は[浸水深表示色/階調変更]で設定することができる。
【0054】
また、データ表示設定機能としては、施設データ表示切替えと標高データ切替えが挙げられる。施設データ切替えは、施設データの記号・注記表示の有無を切り替えるもので、具体的には、図19に示すように、[設定]メニューの[施設データ表示切替]画面24を選択し、表示する項目にチェックを入れることで切替え可能となる。
【0055】
標高データ切替えは、各種表示に使う標高データを選択するもので、具体的には、図20に示すように、[設定]メニューから[標高データ切替]画面25を選択し、一覧の中からデータを選択する。因に、図20(b)はメッシュ間隔が大きい標高データ、図20(c)はメッシュ間隔が小さい標高データである。
【0056】
更に、浸水強調表示機能は、浸水想定区域の連続表示中に施設ポイントが浸水想定区域内に入った時点で強調表示される。また、浸水範囲表示機能は、破堤点毎の最大浸水範囲を表示するものであり、浸水深時系列別表示機能は、破堤後の経過時間を想定して浸水想定区域を浸水深に応じて色分け表示するものである。
【0057】
3.避難情報関連機能
施設情報データ4は、施設情報表示機能と避難圏内表示機能と合わせ持つ避難情報関連機能を備えている。施設情報表示機能は、施設情報及び施設情報の詳細を表示するものである。具体的には、名称、収容可能人数等、各種属性の表示するもので、地図画面1a上に施設の位置と名称を表示したり、指定した施設の詳細情報を表示する。更には、施設表示の凡例を表示したり、施設の記号、注記表示の有無を切り替えることができる(図13・図14・図16参照)。
【0058】
避難圏内表示機能は、任意地点からの徒歩避難可能圏内を表示するものであり、具体的には、避難計画を立てる際の参考となるように指定した地点から半径2km範囲内を円で表示することができる(図17(a)参照)。
【0059】
4.地盤高関連機能
標高データ3は、地盤高表示機能及び標高差表示機能とからなる地盤高関連機能を備えている。地盤高表示機能は、任意地点の地盤高を表示するものであり、標高差表示機能は、任意地点より標高が低い所を標高差に応じて色分け表示するものである。具体的には、指定した地点より標高が低い範囲を階調色で表示し或いは指定した標高値より低い範囲を階調色で表示するもので(図17(c)参照)、表示や処理に使う標高データを切り替えることができる。
【0060】
5.簡易印刷・画面コピー機能
また、簡易印刷機能は、表示されている画面を、破堤点キロポスト名、破堤後の経過時間などと合わせ、指定した用紙サイズで印刷するもので、印刷前に印刷プレビューを見ることができ、表示されている画面の中心を用紙の中心として、用紙に入るエリア(画面表示エリア外でも)を印刷できる。
【0061】
具体的には、地図画面の内容をタイトルや縮尺と共に印刷する他、破堤シミュレーション表示画面では、破堤点名や経過時間なども合わせて印刷する。また、印刷結果を予め画面上で確認したり(印刷プレビュー)、画面コピー機能では、地図画面上の指定範囲をクリップボードにコピーすることができる。
【0062】
尚、破堤点を選択した状態で印刷すると、右下に破堤点名を印刷表示し、特定の経過時刻を表示してる場合(例えば、浸水シミュレーション表示後、[確定]ボタンを選択した場合)、経過時間も合わせて印刷できるようにプログラムされている。
【0063】
このように構成される本発明の動く浸水想定区域ビューワーシステムAは、背景地図データ1を、ラスターデータ(画像データ)とし、アンチエイリアス処理を施すことにより急激な濃淡の変化を、段階的な変化になるように加工したデータを地理座標に基づき表示することができる。
【0064】
また、インデックス図(広域図)2aは、表示している地図が全体地図のどこを表示しているのかを枠線で示すもので、表示している地図と連動してインデックス図の枠線表示がされるので便利である。
【0065】
更に、浸水深関連機能は、全破堤点の浸水想定区域の最大浸水域を合わせ、浸水深に応じて色分け表示することができるため、破堤点毎に最大浸水想定区域を表示することができる(図2参照)。
【0066】
また、破堤後の経過時間を指定し、その時間の浸水想定区域を浸水深に応じて色分け表示したり(図10参照)、指定した経過時間まで浸水想定区域を連続して浸水深に応じて色分け表示することができる(破堤点浸水範囲表示機能)。
【0067】
しかも、浸水想定区域を連続表示している時に、施設のポイント、施設名称が浸水想定区域内に入った時点で、強調表示されるので、危険が差し迫っていることを視覚的に訴えることができる(浸水強調表示機能)。
【0068】
更に、浸水深のランク毎に表示色を変更したり、浸水深のランク分けを追加、変更、削除し、延いては浸水深のランク分け及びそのランク表示色を自動的に割り当てることができる(自動ランク設定機能)。
【0069】
また、地図1a上の任意地点からの徒歩避難可能圏を表示したり、地図1a上の任意地点の地盤高表示ができるものである(図17参照)。その際、任意地点より標高が低い所を、標高差に応じて色分け表示する(標高差表示機能)。
【0070】
更に、任意区間の地形断面表示及びその距離を計測したり、任意区間の水位断面図を表示することができる他、指定した範囲の面積を計測することも簡単に行うことができるので、頗る便利である(図3、図4、図12参照)。
【0071】
因に、GIS(地理情報システム)データは、河川基盤地図データ、河川基幹データベース、河川環境情報地図データ、流域地盤環境データを備えると共に、空間データベース、空間解析ツール及びマッピングツールという3つの機能を持ち、「位置要素」をキーとしてあらゆる地図の情報を統合することができる。
【0072】
従って、位置的に関連付けることにより、空間データベースに統合された情報は、例えば、河川流域における避難経路を解析して得ることができるため、氾濫シミュレーション結果を、本ビューワーシステムにリアルタイムに表示することができる。
【0073】
このように、GISデータは、空間データ+属性データという2種の情報を有し、かつ関連付けして管理することにより、例えば、河川の図形データと河川名・河川流域名を併せて管理することができるである。
【0074】
尚、本発明の動く浸水想定区域ビューワーシステムは、本実施例に限定されることなく、本発明の目的の範囲内で自由に設計変更し得るものであり、本発明はそれらの全てを包摂するものである。
【0075】
例えば、本明細書で言及している動的表示手段は、浸水想定区域図にあって氾濫解析計算の結果をアニメーション的に表示するもので、破堤点毎に時間経過と共に氾濫水の拡がりや浸水深を表示するだけではなく、計算結果のデータを加工することで、よりきめ細かな浸水情報や避難情報も表示できることは云うまでもない。
【0076】
また、堤防形状のデータ、計画高水流量或いは洪水予測情報に基づき所定地域の河川の溢水・破堤地点を想定し、該想定した溢水・破堤地点を含む氾濫領域に地形等の観測より得られた地形・標高データを組み合わせて解析し、該解析した結果をもとにリアルタイムに氾濫の状態をも予測でき、その状態をGISデータを活用し、ビジュアルに視認できるように構築しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本ビューワーシステムの全体を示す要部概略説明図である。
【図2】本ビューワーシステムのビューワー画面を示す説明図である。
【図3】本ビューワーシステムの断面・距離計測を示すもので、図3(a)は同地図画面に折れ線を結んだ状態を示す説明図、図3(b)は折れ線に沿った始終点間の距離と地形断面を示すグラフである。
【図4】図4(a)は本ビューワーシステムの面積計測を示す説明図、図4(b)は面積ボタンを示す説明図である。
【図5】本ビューワーシステムの浸水想定区域のコンテンツを示す説明図である。
【図6】本ビューワーシステムの破堤点の表示を示す説明図である。
【図7】本ビューワーシステムの破堤点検索を示す説明図である。
【図8】選択した破堤点の時系列データがとる最大の範囲を示す説明図である。
【図9】本ビューワーシステムの浸水シミュレーション表示を示す説明図である。
【図10】本ビューワーシステムの浸水シミュレーションの連続表示を示す説明図である。
【図11】選択した破堤点の経過時刻におけるシミュレーション結果を示す説明図である。
【図12】水位断面図の作成を示すもので、図12(a)は指定した区間のシミュレーション結果による地盤高、浸水深/浸水位/高水位を示す説明図、図12(b)はその地形・距離を示す水位断面図ある。
【図13】本ビューワーシステムの浸水関連情報を示す説明図である。
【図14】図14(a)は本ビューワーシステムの施設浸水状況を示す説明図、図14(b)は同施設名称一覧を示す説明図、図14(c)は同属性値確認を示す説明図である。
【図15】本ビューワーシステムの被害予測を示す説明図である。
【図16】図15(a)は本ビューワーシステムの施設属性を示す説明図、図15(b)は同属性値確認を示す説明図である。
【図17】図17(a)は本ビューワーシステムの半径2km範囲の確認を示す説明図、図17(b)は同地盤高低地を示す説明図、図17(c)は指定標高より低い範囲を示す説明図である。
【図18】本ビューワーシステムの標高値指定画面を示す説明図である。
【図19】本ビューワーシステムのデータ表示設定画面をを示す説明図である。
【図20】図20(a)は本ビューワーシステムの標高データ切替画面を示す説明図、図20(b)はメッシュ間隔が大きいデータ画面を示す説明図、図20(c)はメッシュ間隔が小さいデータ画面を示す説明図である。
【符号の説明】
【0078】
1 背景地図データ
1A 背景地図変換データ
1a 背景地図
1b 浸水深凡例
1c スケールバー
2 浸水想定区域データ
2A 浸水想定区域変換データ
2a 広域図(インデックス)
3 標高データ
3A 標高変換データ
3a ステータスバー
4 施設データ
4A 施設情報変換データ
5 被害予測データ
5a 被害予測変換データ
6 データ変換プログラム
7 折れ線
7a 地形断面グラフ
8 多角形
9 面積
10 コンテンツツールバー
10a 浸水想定区域ボタン
10b 赤い点
11 破堤点検索ダイアログ
11a 全破堤点一覧
11b 地図検索ボタン
11c 青い点
11d 灰色
12 シミュレーション表示操作ダイアログ
12a 施設の名称
12b 施設データ
12c 地図画面
13 操作ダイアログ
13A シミュレーション結果
13a 矢印ボタン
13b 開始経過時刻
13c 終了経過時刻
13d 表示スピード調整
13e 確定ボタン
13f キャンセルボタン
14 水位断面図
14a 折れ線
14b グラフ
15 水深関連情報
16 施設浸水状況ダイアログ
16a 施設浸水状況欄
16b 施設名称一覧ボタン
17 施設名称一覧ダイアログ
17a 施設名称一覧欄
17b 施設属性表示ボタン
18 属性値確認ダイアログ
18a 属性確認欄
19 被害予測情報
19a CSVボタン
20 属性値確認欄
21 半径2kmの円
22 階調色
23 標高値欄
23a 標高値(m)
23b 階調色
24 施設データ切替画面
25 標高データ切替画面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図画像を背景に利用したビューワーシステムにおいて、地理座標に基づき、背景地図データ、浸水想定区域データ、標高データ、施設データ、被害予測データ等の必要データと、破堤点別、時系列別による浸水想定区域図の氾濫解析結果を動的に表示する動的表示手段とを備えてなることを特徴とする動く浸水想定区域ビューワーシステム。
【請求項2】
前記必要データは、地図画面の背景に表示する背景地図データ、破堤点や越水ラインの位置情報である破堤点データ、想定破堤地点の浸水シミュレーション結果を時間毎に記録した浸水時系列データ、浸水シミュレーション表示時に同時に表示する各種情報を集録した浸水関連データ、破堤点選択時若しくは破堤点毎、時系列毎に表示する浸水人口数、浸水家屋数、被害額等の情報を集録した被害予測データ、地盤高、高水位を表す数値標高データ、避難場所や公共施設、病院などの施設位置とその詳細を表す施設データ、浸水想定区域を表す浸水想定区域データ、広域図を表示するためのインデックス用データの全て又は何れかを選択又は組み合わせてなることを特徴とする請求項1に記載の動く浸水想定区域ビューワーシステム。
【請求項3】
前記動的表示手段は、選択した破堤点の浸水シミュレーション結果を表示する浸水シミュレーション表示機能と、地理座標に基づき背景地図を表示する地図表示機能と、表示されている地図がどこに位置するのかを示した広域図を表示するインデックス表示機能と、全破堤点の最大浸水範囲を浸水深に応じて色分けして表示する浸水深関連機能と、破堤点毎の最大浸水範囲を表示する浸水範囲表示機能と、破堤後の経過時間を想定して浸水想定区域を浸水深に応じて色分け表示する浸水深時系列別表示機能と、指定経過時間まで浸水想定区域を連続して浸水深に応じて色分け表示する浸水深表示設定機能と、施設情報及び施設情報の詳細を表示する施設情報表示機能と、破堤点毎若しくは時系列毎の想定被害額、浸水人口数、浸水家屋数等の被害表示機能と、破堤地点毎に降雨波形、雨量規模、破堤幅の氾濫計算パターンを設け、切り替えることによりそれぞれの氾濫計算パターンに応じた浸水想定区域を表示する機能と、浸水想定区域の連続表示中に施設ポイントが浸水想定区域内に入った時点で強調表示する浸水強調表示機能と、浸水深のランク別に表示色を変更する表示色変更機能と、浸水深のランク分けを表示する浸水深ランク別表示機能と、浸水深のランク分け、表示色を自動割り当てする自動ランク設定機能と、任意地点からの徒歩避難可能圏内を表示する避難圏内表示機能と、任意地点の地盤高を表示する地盤高表示機能と、任意地点より標高が低い所を標高差に応じて色分け表示する標高差表示機能と、表示されている画面を印刷する画面印刷機能と、任意区間の断面表示及び距離を計測する断面・距離計測機能と、任意区間の水位断面図を表示する水位断面図作成機能と、範囲指定による面積を計測する面積計測機能との全て又は何れかを選択又は組み合わせてなることを特徴とする請求項1に記載の動く浸水想定区域ビューワーシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2008−83167(P2008−83167A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−260512(P2006−260512)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(000173577)財団法人河川情報センター (11)
【Fターム(参考)】