説明

動作チェッカー

【課題】必要に応じて報知回路またはデバイスを動作チェック可能な動作チェッカーを提供する。
【解決手段】メタルケーブルまたはメタルバイパスケーブルの配線前または配線後に拘わらず、必要に応じて、メタルケーブルまたはメタルバイパスケーブルの端末またはそれらの接続材に設けられた報知回路またはデバイスを動作チェックできる。手動スイッチの入力操作で圧電素子から発生したチェック電圧を報知回路またはデバイスに印加する場合には、電池を含む外部電源を必要とせず、構造が簡単でかつランニングコストが不要で報知回路またはデバイスを動作チェックできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は動作チェッカー、詳しくはメタルケーブルまたはメタルバイパスケーブルの状態を報知する報知回路またはデバイスの死活判別可能な動作チェッカーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1に開示された充電表示器のように、高圧(メタル)ケーブルの端末などの高電圧機器の絶縁層の表面の一部に、その周囲の導電性または半導電性の接地部から切り離された導電性または半導電性の非接地部(電極)を設け、この非接地部と接地部とを液晶表示部を介して電気的に接続して充電表示器を構成し、高電圧機器に所定の高電圧が印加されたとき、充電表示回路(報知回路)からの指令に基づき、液晶表示部に電圧印加中であることを表示させるものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2615861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された充電表示器には、液晶表示部に充電状態を液晶表示する充電表示回路の動作チェック機能が配備されていなかった。その結果、ケーブル配線の充電後、充電表示回路の故障により回路表示部に充電状態が表示されなかった場合、接続状態や配線状態または開閉器などの機材の故障といった原因の追求に多大な手間を要していた。
また、充電表示器の使用中にも、充電表示回路の短絡などにより液晶表示部から充電状態の表示が消えてしまう場合がある。そのため、停電状態を示す表示に対する信頼性は低く、その後に行われる停電復旧作業の安全性に疑問が残った。
【0005】
そこで、発明者は、鋭意研究の結果、充電表示器に充電表示回路が正常に動作するか否かを検査する動作チェッカーを開発すれば、場所や時期に拘わりなく、充電表示回路をいつでも動作チェックできることを知見し、この発明を完成させた。
【0006】
この発明は、必要に応じて報知回路またはデバイスの動作チェックを行うことができる動作チェッカーを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、メタルケーブルまたはメタルバイパスケーブルの端末またはそれらの接続材の外周面に設けられるとともに、その中心導体と、該中心導体の外周面から離間して設けられた電極との間で誘起された電圧によって動作され、かつ前記メタルケーブルまたはメタルバイパスケーブルの状態を報知する報知回路またはデバイスに、所定のチェック電圧を印加することで、前記報知回路またはデバイスが正常に動作するか否かをチェックする動作チェッカーである。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、メタルケーブルまたはメタルバイパスケーブルを充電することで、中心導体と電極との間で電圧が誘起され、報知回路を介して、第3者に対してメタルケーブルまたはメタルバイパスケーブルの所定の状態の報知が行われる。または、前記中心導体と電極との間に誘起された電圧によりデバイスが動作される。
報知回路またはデバイスの動作チェック時には、例えば、現場において、メタルケーブルまたはメタルバイパスケーブルの配線の前後に拘わらず、必要に応じて動作チェッカーにより報知回路またはデバイスが正常に動作しているか否かのチェックを行うことができる。
特に、メタルケーブルまたはメタルバイパスケーブルの端末またはそれらの接続材に対して、動作チェッカーを別体または着脱自在に設けた場合には、既存の報知器またはデバイス付機材(ケーブル端末、ケーブル接続材)の報知回路またはデバイスの動作チェックにも利用することができる。
【0009】
メタルケーブルおよびメタルバイパスケーブルとしては、遮蔽層付きの例えばCVケーブルなどを採用することができる。メタルケーブルおよびメタルバイパスケーブルは、送電用または配電用のケーブルである。メタルケーブルおよびメタルバイパスケーブルは、低圧用、高圧用、特別高圧用、超高圧用の何れのものでもよい。
電極の形状は任意である。例えば、板形状、リング形状、ハーフリング状(C形状)などを採用することができる。
「中心導体の外周面から離間した状態」とは、メタルケーブルまたはメタルバイパスケーブルの端末またはそれらの接続材において、中心導体の外周面からこの外周面より外方へ所定の長さ離間した電気的な絶縁状態をいう。
【0010】
動作チェッカーは、所定の報知回路またはデバイスを動作チェックするもので、チェック電圧を報知回路またはデバイスに印加し、報知回路またはデバイスが正常に動作するか否かを検査する。
動作チェッカーの構造は任意である。例えば、手動スイッチを移動操作し、その操作力を外力として電源となる圧電素子を変形させて発生した所定の電圧を報知回路またはデバイスに印加する圧電素子型のものを採用することができる。
【0011】
動作チェッカーにより報知回路またはデバイスの動作チェックが行われる対象物としては、例えば、メタルケーブルまたはメタルバイパスケーブルの端末またはそれらの接続材を採用することができる。その他、開閉器ブッシングなどでもよい。
動作チェッカーは、前記対象物に一体的に設けてもよい。また、対象物とは別体に設け、動作チェック時のみに報知回路またはデバイスに対して電気的に接続し、報知回路またはデバイスの動作をチェックするものでもよい。
また、動作チェッカーは、低電圧のチェック電圧(5〜20V)を電極または報知回路またはデバイスに印加するものでも、高電圧のチェック電圧(1kV〜22kV)を中心導体に印加するものでもよい。
【0012】
動作チェッカーとしては、交流電流を発生させる交流発生回路により発生した数ボルト〜10ボルトのチェック電圧を、直接、前記電極に印加するものを採用してもよい。
動作チェッカーを、メタルケーブルまたはメタルバイパスケーブルの端末またはそれらの接続材に対して着脱自在とした場合、その着脱構造は任意である。ただし、動作チェッカーの装着時、動作チェッカーの出力端子(高電圧の場合)が接続されるのは、メタルケーブルまたはメタルバイパスケーブルが接続される前の端末内の導体接続端子(中心導体)、または、メタルケーブルまたはメタルバイパスケーブルが接続される前の接続材に内蔵された中心導体などである。一方、チェック電圧が低電圧の場合、動作チェッカーの出力端子が接続されるのは、メタルケーブルまたはメタルバイパスケーブルが接続される前後の端末内の電極、または、メタルケーブルまたはメタルバイパスケーブルが接続される前後の接続材に内蔵された電極などである。これにより、既存の充電表示器付端末や既存の充電表示器付接続材に対して、報知回路またはデバイスの動作チェックを行うことができる。
【0013】
ここでいう「報知」とは、人間の視覚、聴覚などを利用し、メタルケーブルまたはメタルバイパスケーブルの所定の状態を第3者に知らせる(警報を含む)ことをいう。報知回路とは、その報知を行う報知器を作動させる回路である。
報知回路としては、例えば、メタルケーブルまたはメタルバイパスケーブルの充電状態を電気光学素子の点灯または点滅により報知する充電表示器の充電表示回路、メタルケーブルまたはメタルバイパスケーブルの充電状態を表示する液晶ディスプレイの充電表示回路、メタルケーブルまたはメタルバイパスケーブルの劣化を電気光学素子の点灯または点滅の輝度変化により報知するケーブル劣化診断器の診断結果表示回路、メタルケーブルまたはメタルバイパスケーブルの部分放電の発生を検査するコロナ放電測定器の測定値表示回路、メタルケーブルまたはメタルバイパスケーブルの断線を電気光学素子の無点灯または無点滅によって報知するケーブル断線診断器の診断結果表示回路、メタルケーブルまたはメタルバイパスケーブルの電圧測定器の測定値表示回路などを採用することができる。その他、メタルケーブルまたはメタルバイパスケーブルの所定の状態を知らせるメロディー、ブザー音、電子音声などの音をスピーカから発生させる発音器の発音回路などを採用することができる。
【0014】
報知回路が設けられる基板は、メタルケーブルまたはメタルバイパスケーブルのうち、何れか1つの端末の外周面またはその接続材の外周面に露出状態で取り付けてもよい。また、メタルケーブルの場合には、基板をメタルケーブルの端末の内部またはメタルケーブルの接続材の内部に埋め込むことができる。また、メタルバイパスケーブルの場合には、基板をメタルバイパスケーブルの端末の内部またはメタルバイパスケーブルの接続材の内部に埋め込むことができる。
【0015】
ここでいう電気光学素子としては、例えば、発光ダイオード(LED)の他、EL素子、発光ランプ、液晶ディスプレイを採用することができる。
発光ダイオードとして高輝度発光ダイオードを採用してもよい。高輝度発光ダイオードとは、例えば1000mcdの輝度を有した発光素子である。高輝度発光ダイオードを採用することで、一般的な発光ダイオードに比べて、より明るく点灯または点滅させることができる。高輝度発光ダイオードを10mcd以上で点灯または点滅させるために必要な電流は、20μA以上である。発光素子の点滅間隔は任意である。例えば、0.1〜3秒間隔である。
【0016】
液晶ディスプレイとしては、例えば、太陽光などの外光を反射する反射型の液晶ディスプレイ、または、外光による反射光の表示とバックライトの透過光による表示とを併用可能な半透過型の液晶ディスプレイ、高輝度発光ダイオードなどの発光ダイオードなどを採用することができる。
電気光学素子の使用数は任意である。例えば、液晶ディスプレイのみ、発光ダイオードのみ、または液晶ディスプレイが1つと、発光ダイオードが1つとの合計2つ以上などである。
メタルケーブルまたはメタルバイパスケーブルには交流電圧が充電されるので、報知回路は整流回路を有している。報知回路は各種の基板に設けられる。
ここでいうデバイスとは、メタルケーブルまたはメタルバイパスケーブルの状態を報知するデバイスをいう。具体的には、液晶モジュール、圧電素子、各種のセンサなどを採用することができる。
デバイスの使用数は任意である。1つまたは2つ以上でもよい。
【0017】
また、動作チェッカーとして、交流電流を発生させる交流発生回路と、この交流発生回路により生じた電圧を昇圧し、中心導体に印加されるチェック電圧を発生させる圧電トランスとを有したものとしてもよい。この場合、チェック電圧をメタルケーブルまたはメタルバイパスケーブルの端末またはそれらの接続材の中心導体に印加し、報知回路またはデバイスの動作チェックを行うことができる。
【0018】
交流発生回路としては、例えば、タイマーIC/555発信回路などを採用することができる。
圧電トランスは、電圧の印加により形状が変化する圧電セラミックスを本体とする。圧電セラミックスに入力側から電圧を印加し、圧電逆効果により圧電セラミックスを機械的に大きく振動させる。これにより、出力側で機械的歪みを発生させ、これを圧電効果により電荷として出力することで、入力側より高い電圧を出力側から得ることができるものである。
【0019】
請求項2に記載の発明は、前記チェック電圧を発生させる圧電素子と、前記圧電素子を変形させて交流電圧を発生させる機構とを有した請求項1に記載の動作チェッカーである。
【0020】
請求項2に記載の発明によれば、圧電素子を変形させて交流電圧を発生させる機構により圧電素子を変形させ、圧電素子から発生したチェック電圧を報知回路またはデバイスに印加するので、構造が簡単で、かつ外部電源や電池の内蔵が不要でランニングコストが発生しない。電池を内蔵した場合には、電池残量のチェックや電池交換をしなければならないが、これらが不要となる。また、電池の残量がゼロの時の動作不良を回避することもできる。
【0021】
メタルケーブルの端末またはメタルケーブルの接続材と、メタルバイパスケーブルの端末またはメタルバイパスケーブルの接続材としては、例えば直線接続筒、T分岐接続筒、絶縁栓、コネクタ、π分岐アダプタなどを採用することができる。
外力を入力可能な手動スイッチとしては、例えば、ばねにより始発点に復帰する押しボタン、回転スイッチ、横スライドスイッチなどを採用することができる。
圧電素子としては、例えば、バイモルフ型圧電素子、ユニモルフ型圧電素子、積層型圧電素子などを採用することができる。
圧電素子を変形させて交流電圧を発生させる機構としては、例えば、手動スイッチの入力操作力を利用したものを採用することができる。外力を入力可能な手動スイッチとしては、例えば、ばねにより始発点に復帰する押しボタン、回転スイッチ、横スライドスイッチなどを採用することができる。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に記載の発明によれば、チェック電圧を報知回路またはデバイスに印加することで、必要に応じて所定の報知回路またはデバイスが正常に動作しているか否かをチェックすることができる。
特に、メタルケーブルまたはメタルバイパスケーブルの端末またはそれらの接続材に対して、動作チェッカーを別体または着脱自在に設けた場合には、既存の報知回路またはデバイスの動作チェックにも利用することができる。
【0023】
また、請求項2に記載の発明によれば、圧電素子を変形させて交流電圧を発生させる機構により圧電素子を変形させ、圧電素子から発生したチェック電圧を報知回路またはデバイスに印加するように構成したので、電池を含む外部電源を必要とせず、構造が簡単でかつランニングコストがかからず、報知回路またはデバイスを動作チェックすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明の実施例1に係る動作チェッカーが搭載された充電表示器付きの直線接続筒の長さ方向に直交する縦断面図である。
【図2】この発明の実施例1に係る動作チェッカーが搭載された充電表示器付きの直線接続筒の長さ方向に平行な縦断面図である。
【図3】この発明の実施例1に係る動作チェッカーが搭載された充電表示器付きの直線接続筒の平面図である。
【図4】この発明の実施例2に係る動作チェッカーを示す構成図である。
【図5】この発明の実施例3に係る動作チェッカーを示す構成図である。
【図6】この発明の実施例3に係る動作チェッカーが搭載された充電表示器付きの直線接続筒の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、この発明の実施例を具体的に説明する。なお、説明の都合上、何れも特記がなければ、長さ方向は直線接続筒の長さ方向、左右方向は直線接続筒の図1における左右方向、上下方向は直線接続筒の図1における上下方向をいう。直線接続筒を構成する各部材において、元側とは直線接続筒の長さ方向の中間側をいい、先側とは直線接続筒の長さ方向の端側をいう。
【実施例】
【0026】
図1〜図3において、10はこの発明の実施例1に係る動作チェッカー70が付設された充電表示器(以下、充電表示器)である。この充電表示器10は、高圧バイパスケーブル(メタルバイパスケーブル)11の一端部に接続された直線接続筒(接続材)12に設けられ、直線接続筒12の中心導体13の外周面から離間して設けられた埋め込み電極14と、直線接続筒12の外周面に設けられ、中心導体13と埋め込み電極14との間で誘起された電圧によって、高圧バイパスケーブル11が充電状態であることを表示する反射型の液晶ディスプレイ60と、赤色に発光する2対の高輝度発光ダイオード15と、液晶ディスプレイ60および高輝度発光ダイオード15用の充電表示回路(報知回路)が形成された回路基板16と、回路基板16の充電表示回路が正常に動作するか否かを動作チェックする前記動作チェッカー70とを備えている。
【0027】
高圧バイパスケーブル11は、6.6kVの高圧送電用のもので、ケーブル中心に配置される導体と、導体を覆う架橋ポリエチレンの絶縁層と、絶縁層の外周面を覆う銅編組である遮蔽層と、遮蔽層の外周面を覆う塩化ビニルからなる被覆(シース)とにより構成された架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブルである。
【0028】
次に、図1〜図3を参照して、直線接続筒12を具体的に説明する。
直線接続筒12は、その長さ方向に離間配置された一対の円筒形状のスリーブ金具18と、各スリーブ金具18の元部(高圧バイパスケーブル11の接続側とは反対側の端部)に外挿される一対の円筒形状のロック用スライド金具19と、各スリーブ金具18の元部同士を連結する円筒形状の厚肉な外部金具20と、外部金具20の平坦な上部および下部に着脱自在に配設されるとともに、1つの前記液晶ディスプレイ60と、2対の前記高輝度発光ダイオード15と、前記回路基板16とが配設された一対の光学素子固定金具30と、直線接続筒12の内部空間に収納された円筒形状の外部半導電層17と、外部半導電層17の内部に埋め込まれた略円筒形状の絶縁層40と、絶縁層40の軸線上に埋め込まれた円筒形状の中心導体13とを備えている。
【0029】
両スリーブ金具18は、アルミニウム合金製の筒体である。両スリーブ金具18の内周部のうち、元側の半分の領域には、環状溝21が形成されている。両環状溝21の奥部には、外径がスリーブ金具18の内径と略同じで、かつ接続側の端部にフランジ22aが形成されたスライド金具22が装着されている。両環状溝21には、両スライド金具22を環状溝21の先側の奥部に位置決めするスライド金具用コイルばね26が挿入されている。また、両スリーブ金具18の長さ方向の中間部付近には、スリーブ金具18の周方向へ45°間隔で、外端部が若干小径化された8個のボール孔18aが形成されている。各ボール孔18aには、一部を外方へ突出させて8個のロックボール23が収納されている。各ロックボール23は、外方へ突出した部分とは反対側の部分が、スライド金具22の外周面に当接されている。
【0030】
両スリーブ金具18の厚肉な元部の上部には、一対のビス孔18cが形成されている。また、両スリーブ金具18の先部の外周面には、幅が狭い1条の環状溝18dが形成されている。両環状溝18dには、ロック用スライド金具19の抜け防止用のストッパリング50が装着されている。
各ロック用スライド金具19は、各スリーブ金具18の長さ方向の中間部に外挿されるアルミニウム合金製の厚肉な円筒体である。各ロック用スライド金具19の先部は、内径を一定にして、先方向へ向かって徐々に薄肉化されている。また、各ロック用スライド金具19の内周面のうち、元側の略半分の領域には、幅が広い環状溝19aが形成されている。環状溝19aの奥面と前記スリーブ金具18の厚肉な元部の先側の端面との間には、各ロック用スライド金具19を、対応するストッパリング50の方向へ付勢するロック用コイルばね27が挿入されている。
【0031】
各ロック用スライド金具19の先部の内周面には、その周方向へ45°間隔で前記8個のロックボール23の一部が掛止される略半球形状の凹部19bが形成されている。各凹部19bに各ロックボール23が嵌入されることで、ロック用スライド金具19の長さ方向の位置が決定される。各ロック用スライド金具19の元側の上部には、ロック用スライド金具19の表裏面を貫通して一対の位置決め用の切欠部19cが形成されている。ロック用スライド金具19の回り止めは、切欠部19cを介して、ロックピン28を前記ビス孔18cに掛止することでなされる。
前記外部金具20は、上下部が後述する中間金具65となった厚肉なアルミニウム合金製の円筒体で、両端の開口部を両スリーブ金具18の元部に外挿させることで、両スリーブ金具18を連結させる部材である。
【0032】
上下一対の光学素子固定金具30は、断面円弧形状でかつ平面視して矩形状のアルミニウム製の部材である。両光学素子固定金具30は、その四隅を、外部金具20の上端部または下端部のねじ孔20aに4本のビス61を螺合することで、外部金具20と連結される。
両光学素子固定金具30の中央部の表側には、前記反射型の液晶ディスプレイ60が設けられている(図3)。各液晶ディスプレイ60は、太陽光などの外光を反射することで、充電を略した「充」という文字を液晶表示する。
両光学素子固定金具30の長さ方向の両端部の表側には、1対ずつ前記高輝度発光ダイオード15が配設されている。各高輝度発光ダイオード15は10mcdで発光する。
【0033】
両光学素子固定金具30の下側には、前記回路基板16が設けられている。両回路基板16には、液晶ディスプレイ60と各高輝度発光ダイオード15とが電気的に接続されている。両回路基板16の裏面の中央部には、銅製のコイルばね63の元部が固定されている。両コイルばね63の先端部は、埋め込み電極14の外周面に当接されている。両回路基板16の充電表示回路は、充電中、液晶ディスプレイ60に「充」の文字を液晶表示し、かつ各高輝度発光ダイオード15を、例えば0.5秒間隔で点滅させる。また、両回路基板16の充電表示回路には、動作チェッカー70から出力された動作チェック用電源の入力回路が接続されている。
【0034】
前記外部半導電層17は、半導電性ゴムからなる円筒体である。外部半導電層17の長さ方向の中間部の両側部分の外周面には、アルミニウム合金からなる環状の外部埋め込み金具64が埋め込まれている。また、両外部埋め込み金具64の外周面に内周面が面接触したアルミニウム合金からなる環状の中間金具65が、両スリーブ金具18の元側の端部の内周部に形成された環状溝18gに嵌入されている。両スリーブ金具18と中間金具65と外部埋め込み金具64とは、合計4本の埋め込みねじ80により、直線接続筒12の上部および下部で螺合されている。
【0035】
外部半導電層17の内部空間には、絶縁性ゴムからなる円筒形状の絶縁層40を介して、前記中心導体13と埋め込み電極14とが収納されている。絶縁層40の両端部は、外部半導電層17の両側の開口部から外方へ突出している。
中心導体13は、その軸線が外部半導電層17の軸線と合致した銅合金製の直線的なスリーブである。中心導体13の両端の開口部13aには、2本の高圧バイパスケーブル11の端部が電気的に接続されるように構成されている。また、中心導体13には、両高圧バイパスケーブル11を接続した際、内部空気が外部へ漏れるように空気抜き孔が形成されている。
【0036】
埋め込み電極14は、銅合金からなるリング状(円環形状)の部材で、絶縁層40の長さ方向の中間部の外周部に埋め込まれている。具体的には、中心導体13の長さ方向の中間部の外周に、所定距離離間して埋め込み電極14が埋設されている。埋め込み電極14の内周面と中心導体13の外周面との離間距離(最短距離)は、約7mmである。これにより、埋め込み電極14と中心導体13との間で1600Vの電圧が誘起される。
また、埋め込み電極14の上部および下部には、短尺な一対の突起14aが一体形成されている。両突起14aの先端面には、埋め込み電極14の製造時に用いられる電極固定用の孔14bが形成されている。
【0037】
動作チェッカー70は、手動スイッチ71の入力操作により圧電素子72を変形させ、圧電素子72から発生したチェック電圧(交流電圧)を充電表示回路に印加するもので、直線接続筒12の右側部の外部金具20に埋設されている。
具体的には、動作チェッカー70は、外部金具20の右上部分に埋め込まれた矩形板形状を有するバイモルフ型の前記圧電素子72と、外部金具20の右側部分に形成された大径なスイッチ収納孔20bに収納され、圧電素子72の1つのコーナー部分を連続的に振動させる前記手動スイッチ71とを有している。圧電素子72と回路基板16とは、一対のリード線Lにより電気的に接続されている。
【0038】
バイモルフ型の圧電素子72は、チタン酸ジルコン酸鉛層とチタン酸バリウム層とを積層し、印加電圧当たりの変位を大きくした素子である。
手動スイッチ71は、外部金具20の右側部分から外方へ突出した短尺な円柱形状の摘み部73と、外部金具20の右側部分に埋め込まれ、圧電素子72の1つのコーナー部分に当接可能な多数の突起74が、外周面に所定ピッチで配設された短尺な円柱形状の回転体75と、摘み部73と回転体75とを連結する回転軸76とを有している。
【0039】
次に、図1〜図3を参照して、この充電表示器10を搭載した直線接続筒12および動作チェッカー70の作動を説明する。
図1〜図3に示すように、2本の高圧バイパスケーブル11の端部を中心導体13の両開口部13aに電気的に接続する。この状態で高圧バイパスケーブル11に対地間電圧3.8kVを充電する。このとき、埋め込み電極14と中心導体13との隙間は約7mmである。これにより、中心導体13と埋め込み電極14との間で誘起された電圧は、回路基板16の定電圧回路により一定の電圧に制御され、制御回路に供給される。その結果、液晶ディスプレイ60の表示パネルの全面に、「充」の文字が液晶表示されるとともに、各高輝度発光ダイオード15が約0.5秒間隔で赤色に10mcdの輝度で点滅する。
【0040】
すなわち、日中(昼間)は、反射型の液晶ディスプレイ60が太陽光などの外光を反射するので、仮に充電表示器10が直射日光を受けても、「充」の液晶表示が視認可能となる。また、夜間や暗所では、高輝度発光ダイオード15が発光することで、これを視認することができる。これにより、昼夜に拘わらず高圧バイパスケーブル11の充電状態を視覚的に報知することができる。
作業者は、これらの「充」の液晶表示や点滅を目視することで、高圧バイパスケーブル11が充電状態にあることを知ることができる。
【0041】
動作チェッカー70の使用時には、摘み部73を摘み、回転軸76を中心として所定方向へ回転させる。これにより、回転体75が回転し、回転体75の外周面に配設された多数の突起74が、圧電素子72の1つのコーナー部分に間欠的に衝突する。その結果、圧電素子72が間欠的に変形し、約10Vの交流のチェック電圧が得られる。このチェック電圧は、リード線Lから回路基板16の充電表示回路に印加され、充電表示回路が正常であれば液晶ディスプレイ60に「充」の液晶表示がなされ、かつ高輝度発光ダイオード15が発光する。また、充電表示回路に短絡などがあれば、これらの充電状態を示す表示がなされない。
【0042】
このように、入力操作により圧電素子72を変形させ、圧電素子72から発生したチェック電圧をリード線Lにより充電表示回路に印加するため、構造が簡単で、かつ外部電源や内部電源が不要でランニングコストがかからない。したがって、例えば現場において、高圧バイパスケーブル11の配線前、または配線後に拘わらず、必要に応じて充電表示回路を動作チェックすることができる。
【0043】
次に、図4を参照して、この発明の実施例2に係る動作チェッカーが付設された充電表示器を説明する。
図4に示すように、この発明の実施例2の特徴は、実施例1の動作チェッカー70に代えて、回転体75Aの外周面に、多数個の板ばね77aの先端部に錘77bが固定された素子殴打ハンマ77が所定ピッチで突設された手動スイッチ71Aと、圧電素子72Aと、外部金具20の右側部分のうち、圧電素子72Aの1コーナー部分の近くに埋め込まれ、回転軸76を中心にして回転中の各錘77bの一部が当接し、各素子殴打ハンマ77の板ばね77aをそのばね力に抗して湾曲させるばね曲げピン79とを有する動作チェッカー70Aを採用した点である。
【0044】
これにより、回転軸76を中心にして手動スイッチ71Aの摘み部73を図4中の半時計方向へ回転させることで、回転体75Aの各素子殴打ハンマ77が同一方向へ回転する。このとき、各素子殴打ハンマ77は、その錘77bの一部がばね曲げピン79に当接し、さらに回転体75Aが回転することにより、板ばね77aがばね力に抗して押し曲げられる。その後、回転体75Aの回転がさらに進むことで、錘77bがばね曲げピン79から外れる。その直後、板ばね77aが、そのばね力によって回転体75Aの回転方向へ勢いよく戻る。これにより、錘77bが圧電素子72Aの1つのコーナーに高速度で衝突し、圧電素子72Aが実施例1の場合より大きく湾曲する。その結果、実施例1の場合に比べて高い電圧(例えば20kV)が得られる。このような錘77bの圧電素子72Aへの衝突は、回転体75Aが回転している間中、継続されるので、簡単な操作で、高い交流電圧を得ることができる。
その他の構成、作用および効果は、実施例1から推測可能な範囲であるので、説明を省略する。
【0045】
次に、図5および図6を参照して、この発明の実施例3に係る動作チェッカーが付設された充電表示器を説明する。
図5および図6に示すように、この発明の実施例3の特徴は、動作チェッカーとして、直線接続筒12に着脱自在に設けられ、かつ交流発生器85に設けられた交流発生回路86から発生した電圧を圧電トランス72Bにより昇圧して高圧のチェック電圧とし、この高圧のチェック電圧を直線接続筒12の中心導体13に印加する動作チェッカー70Bを採用した点である。
交流発生回路86としては、18Vの電池88を電源に使用し、60Hz、12Vを出力するタイマ/発振専用IC555を採用している。交流発生回路86は、携帯可能なサイズの交流発生器85に設けられている。また、圧電トランス72Bとしては、円柱形状で3kVを出力するものを採用している。圧電トランス72Bの長さ方向の元部が、交流発生器85の一端部に固定されている。
【0046】
図6に示すように、動作チェッカー70Bによる充電表示回路の動作チェック時には、圧電トランス72Bの出力端子72aを、高圧バイパスケーブル11が接続される前の直線接続筒12の中心導体13の露出した先端面に接触させる。その後、交流発生回路86のスイッチを入れることで、交流発生回路86から60Hz、12Vの電圧が出力され、それが圧電トランス72Bにより昇圧されて高圧のチェック電圧となり、中心導体13に印加される。このように構成したので、充電表示器10から取り外した動作チェッカー70Bを、既存の充電表示器付機材(ケーブル端末、ケーブル接続材)の充電表示回路の動作チェックにも利用することができる。
その他の構成、作用および効果は、実施例1から推測可能な範囲であるので説明を省略する。
【産業上の利用可能性】
【0047】
この発明は、例えば、充電表示器の充電表示回路の回路死活判別を行うために有用である。
【符号の説明】
【0048】
11 高圧バイパスケーブル(メタルバイパスケーブル)、
12 直線接続筒(接続材)、
13 中心導体、
14 埋め込み電極(電極)、
16 回路基板(報知回路)、
70,70A,70B 動作チェッカー、
71,71A 手動スイッチ、
72,72A 圧電素子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタルケーブルまたはメタルバイパスケーブルの端末またはそれらの接続材の外周面に設けられるとともに、その中心導体と、該中心導体の外周面から離間して設けられた電極との間で誘起された電圧によって動作され、かつ前記メタルケーブルまたはメタルバイパスケーブルの状態を報知する報知回路またはデバイスに、所定のチェック電圧を印加することで、前記報知回路またはデバイスが正常に動作するか否かをチェックする動作チェッカー。
【請求項2】
前記チェック電圧を発生させる圧電素子と、
前記圧電素子を変形させて交流電圧を発生させる機構とを有した請求項1に記載の動作チェッカー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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