説明

動力伝達装置

【課題】 出力シャフトのオフセットを極小化しうる動力伝達装置を提供する。
【解決手段】 第1の端においてトランスミッションと結合可能なケーシングに、第1の軸の周りに回転可能な入力部材および出力部材を支承せしめ、前記入力部材と前記出力部材との間に断続部材を配置し、ギヤ部を前記出力部材を支承するベアリングより前記第1の端に向かって突出させ、出力シャフトに連結された第2のギヤ部をこれに噛合せしめる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に適用される自動車用パワーテークオフユニットのごとき動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば前輪駆動の自動車では、車体の前方に据えられたエンジンがトルクを発生し、これをトランスミッションが受けてデファレンシャルを通じて左右の前輪に配分する。四輪駆動車の場合には、通常、かかるトランスミッションと組み合わせて、トルクの一部を後輪へ分配するパワーテークオフユニット(PTU)が利用される。
【0003】
PTUは、車体に対して横方向に延びた入力シャフト周りのトルクを、縦方向に延びた出力シャフト周りのトルクに変換する。出力シャフトはプロペラシャフトに駆動的に連結されており、これを介してトルクが後輪へ伝達される。
【0004】
しばしば、パートタイム四輪駆動を実現するべく、トルクの伝達経路においてトルクの伝達を断続する装置が設けられる。エネルギ消費を抑制する観点からは、重いプロペラシャフトより以前においてトルクの伝達を遮断するのが有利であり、従って好ましくは断続装置はPTUの内部に設けられる。これはPTUを大型化する要因となりうる。
【0005】
PTUは、通常、トランスミッションと横に並んで配置されるので、その出力シャフトは必然的に車体の中心から横方向に外れ(オフセット)、従ってプロペラシャフトもオフセットされる。車体に印加される荷重および力は対称的であることが好ましく、車体前後に長く伸びてトルクが加わるプロペラシャフトがオフセットを有するのは好ましくない。すなわち、PTUの出力シャフトおよびプロペラシャフトのオフセットは、その解決が長く望まれていた技術的課題である。
【0006】
特許文献1,2は、関連する技術を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−269605号公報
【特許文献2】特開2009−292307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、トルク伝達の断続を可能にしながら小型であり、出力シャフトのオフセット、ひいてはプロペラシャフトのオフセットを極小化しうる動力伝達装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
トランスミッションのトルクを断続可能に伝達する動力伝達装置は、第1の端と、前記第1の端と対向する第2の端と、前記第1の端と前記第2の端とを結ぶ第1の軸と、前記第1の軸と平行でない第2の軸と、を有し、前記第1の端において前記トランスミッションと結合可能なケーシングと、前記ケーシングに支承され、前記トランスミッションにより駆動されて前記第1の軸の周りに回転可能な入力部材と、前記第2の端においてベアリングを介して前記ケーシングに回転可能に支承され、前記第1の軸の周りに回転可能な出力部材と、前記第1の端に向けて前記出力部材に嵌合し、前記出力部材と一体に回転可能であって、前記トルクの伝達を遮断する第1の位置と、前記入力部材と係合して前記入力部材から前記出力部材へ前記トルクを伝達する第2の位置と、の間で前記第1の軸の方向に可動な断続部材と、前記ベアリングより前記第1の端に向かって突出し、前記ベアリング以外の支承なしに前記出力部材と一体に回転するギヤ部と、前記トルクを伝えるべく前記ギヤ部と噛み合う第2のギヤ部を備え、前記第2の軸の周りに回転可能な軸部材と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
トルクを断続する断続部材は入力部材と出力部材との間に配置されるので、エネルギ消費を抑制しつつ、動力伝達装置の小型化が可能である。ギヤ部が第1の端に近接しているので、これと噛み合う第2のギヤ部も第1の端に近接し、以って軸部材(出力シャフト)のオフセットを極小にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態に係る動力伝達装置の断面図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る動力伝達装置の断面図である。
【図3】本発明の第3実施形態に係る動力伝達装置の断面図である。
【図4】何れかの実施形態による動力伝達装置が組み込まれた四輪駆動車の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の幾つかの例示的な実施形態を添付の図面を参照して以下に説明する。
【0013】
図4を参照するに、何れかの実施形態による動力伝達装置1(または、101,201)は、例えばパートタイム四輪駆動車301に好適に利用される。エンジンあるいは電気モータとエンジンとの組み合わせが発生する駆動力(トルク)は、トランスミッション303のフロントデフ305を介して左右のフロントアクスル307に分配される。またトルクの一部は、パワーテークオフユニットたる動力伝達装置1(101,201)が受容し、プロペラシャフト309を介してリアデフ311に伝達され、左右のリアアクスル313に分配される。以下の実施形態によれば、トルク伝達の断続を可能にしながら小型の動力伝達装置1(101,201)を実現し、これは車体の中心Cに対する出力シャフトのオフセットOFを低減しうる。
【0014】
第1の実施形態に係る動力伝達装置1は、ケーシング3と、このケーシング3に回転可能に支持され駆動力(トルク)が入力される入力部材5と、ケーシング3に入力部材5と相対回転可能に支持され入力部材5に入力された駆動力を出力するギヤ部7を有する出力部材9と、ケーシング3内に軸方向移動可能に配置され入力部材5と出力部材9との間に伝達される駆動力を断続部11を介して断続する断続部材13と、この断続部材13を軸方向移動操作するアクチュエータ15とを備えている。
【0015】
ケーシング3は図1中で左端に示した第1の端においてトランスミッション303と結合可能である。第1の端と、第1の端に対向した第2の端とを結ぶ第1の軸(図中において水平に描かれた一点鎖線)の周りに、入力部材5と出力部材9とは回転可能にされている。ケーシング3は、第1の軸と平行でない第2の軸(図中において垂直に描かれた一点鎖線)を有しており、後述の軸部材31は、この第2の軸の周りに回転可能にされており、出力シャフトとして機能する。
【0016】
そして、入力部材5と出力部材9とは、それぞれの軸方向端面17,19が軸方向に対向して配置されている。
【0017】
また、断続部材13は、入力部材5と出力部材9との軸方向端面17,19間に配置されている。
【0018】
さらに、出力部材9と断続部材13とは、連結部21を介して一体回転可能に連結され、連結部21は、断続部材13を断続部11の接続方向に移動させるカムを有する対向した噛み合い歯により構成される。
【0019】
また、出力部材9と断続部材13との間には、断続部材13を断続部11の接続方向に付勢する付勢部材23が配置されている。
【0020】
さらに、出力部材9と断続部材13とは、嵌合して互いの軸心同士のセンタリング部24が形成されている。
【0021】
また、断続部11は、入力部材5と断続部材13との軸方向間で対向する対向歯25,27の噛み合いにより構成される。
【0022】
図1に示すように、動力伝達装置1は、ケーシング3と、入力部材5と、出力部材9と、方向変換ギヤ組29と、軸部材31と、断続部材13と、アクチュエータ15などから構成されている。
【0023】
ケーシング3は、複数の分割ケースからなり、車体フレームや他の動力伝達機構を収容するケーシングなどの静止系部材(不図示)に固定される。このケーシング3内には、入力部材5と、出力部材9とが回転可能に収容されている。なお、本実施の形態のケーシング3においては、内部に各種部材の収容空間が広く形成されたケーシング本体4と、主に出力部材9の支持部を備えケーシング本体4を閉塞するカバー6とからなっている。
【0024】
入力部材5は、中空状に形成され、外周がベアリング33を介してケーシング3に回転可能に支持されている。なお、このベアリング33は、入力部材5の外周を周方向の4箇所で支持する4点接触軸受となっており、入力部材5の支持が安定化されている。但し、入力部材5を軸方向に2点支持する一対のベアリングを用いてもよい。また、入力部材5とケーシング3との径方向間には、ケーシング3の内部と外部とを区画するシール部材35が配置されている。また、入力部材5の内周側には、入力側の伝達機構(不図示のデファレンシャル装置など)に連結されたシャフト(不図示の車軸或いは車軸中間軸など)が入力部材5と相対回転可能に挿通されている。このシャフトと入力部材5との径方向間には、ケーシング3の内部と外部とを区画するシール手段であると共に摺動部材であるXリング37が配置されている。
【0025】
この入力部材5の軸方向端部の内周には、入力側の伝達機構に一体回転可能に連結されるスプライン形状の連結部39が形成され、入力部材5に駆動力が入力される。この入力部材5に入力された駆動力は、後述のごとく断続部11が噛み合うと、断続部材13を介して出力部材9に出力される。
【0026】
出力部材9は、中空状に形成され、軸心が入力部材5の軸心と同心となるように入力部材5と直列に配置され、ベアリング41,43を介してケーシング3のカバー6に入力部材5と相対回転可能に支持されている。ベアリング41,43は、ラジアル荷重のみならずスラスト荷重をも支えるべく、一対の円錐ころ軸受である。また、出力部材9の端部には、ナット45がねじ締結され、ベアリング41,43に予圧が付与されると共に出力部材9の軸方向位置が位置決めされる。また、出力部材9の内周側には、入力側の伝達機構に連結されたシャフトが出力部材9と相対回転可能に挿通されている。このシャフトとケーシング3との径方向間には、ケーシング3の内部と外部とを区画するシール部材47が配置されている。この出力部材9の端部外周には、入力部材5から伝達された駆動力を出力する方向変換ギヤ組29を構成するギヤ部7が設けられている。
【0027】
方向変換ギヤ組29は、大径のリングギヤであるギヤ部7と、小径のピニオン49とからなるベベルギヤ組で変速駆動されるように構成され、出力部材9に伝達された駆動力を方向変換する。この方向変換ギヤ組29を構成するピニオン49は、軸部材31の軸方向一端側に軸部材31と連続する一部材で形成され、出力部材9から出力された駆動力を方向変換して軸部材31に伝達する。
【0028】
ギヤ部7は出力部材9と一体に回転するように構成されており、また好ましくはこれと一体に形成される。ギヤ部7はベアリング41,43より左端(第1の端)に向かって突出しており、ベアリング41,43以外による支承を受けていない。すなわち出力部材9に関わる何れの部材よりも左方に配置される。ベアリング41,43は上述のごとく一対の円錐ころ軸受であるので、ギヤの噛み合いによる荷重を受けても出力部材9が偏心運動ないし歳差運動を起こすことはない。
【0029】
ピニオン(第2のギヤ部)49は、好ましくは軸部材31の一部分として形成され、ギヤ部7と噛み合うことにより出力部材9に伝達された駆動力(トルク)を軸部材31に伝達する。左端に近接したギヤ部7に左から噛み合うので、軸部材31の軸心はさらに左端寄りとなり、車体の中心Cに近接する。すなわちオフセットOFが低減される。
【0030】
軸部材31は、軸心が入力部材5及び出力部材9の軸心と直交する方向に配置され、軸方向に配置された2つのベアリング51,53を介してケーシング3のケーシング本体4に回転可能に支持されている。この軸部材31の他端側外周には、スプライン形状の連結部55が形成され、プロペラシャフトなどを介して出力側の伝達機構(不図示)側に連結された連結部材57が一体回転可能に連結されている。
【0031】
連結部材57は、軸部材31の端部にナット59をねじ締結することによって軸方向位置が固定されると共に、ベアリング51,53に予圧が付与され軸部材31の軸方向位置が位置決めされる。また、連結部材57とケーシング3との径方向間にはケーシング3の内部と外部とを区画するシール部材61が配置されると共に、連結部材57の外周にはシール部材61のリップ部と摺動するダストカバー63が配置されている。この連結部材57に軸部材31を介して伝達された駆動力は、出力側の伝達機構に伝達される。
【0032】
このような入力部材5と出力部材9とは、それぞれの軸方向端面17,19が軸方向に対向して配置されている。このため、入力部材5と出力部材9とが径方向にオーバーラップして配置された2重構造となることがなく、入力部材5と出力部材9との軸方向長さを縮小することができる。この入力部材5と出力部材9との間の動力伝達は、断続部材13によって断続される。
【0033】
断続部材13は、中空状に形成されて入力部材5と出力部材9との軸方向端面17,19間に配置され、軸方向一端側外周が出力部材9の内周に形成された凹部65に軸方向移動可能に挿入されている。また、断続部材13の内周側には、入力側の伝達機構に連結されたシャフトが断続部材13と相対回転可能に挿通されている。この断続部材13は、連結部21を介して出力部材9と一体回転可能に連結されている。
【0034】
この連結部21は、出力部材9の周方向に複数形成された凸部と、断続部材13の周方向に複数形成された凹部とが係合されている。これらの凸部と凹部との回転方向の係合面には、同一傾斜のカム面が形成され、断続部材13の軸方向他端側に設けられた断続部11に向けて断続部材13を付勢し、以って断続部11の噛み合いを強化している。
【0035】
また、断続部材13の軸方向端面と出力部材9の凹部65との軸方向間には、断続部材13を断続部11の接続方向に付勢する付勢部材23が配置されている。このように断続部材13と一体回転可能に連結する出力部材9との間に付勢部材23を配置することにより、断続部11の接続が解除された状態で、断続部材13と出力部材9との間に相対回転が発生しないので、付勢部材23が断続部材13及び出力部材9と摺動することがない。
【0036】
断続部11は、入力部材5と断続部材13との軸方向に対向する対向面にそれぞれ設けられた複数の対向歯(第1のクラッチ歯,第2のクラッチ歯)25,27の噛み合いにより構成される。この断続部11は、対向歯25,27が噛み合うと、入力部材5と出力部材9との間の動力伝達が可能となり、入力側の伝達機構から入力部材5に入力された駆動力が出力部材9を介して出力側の伝達機構に出力される。また、断続部11は、対向歯25,27の噛み合いが解除されると、入力部材5と出力部材9との間の動力伝達が遮断され、入力側の伝達機構から入力部材5に入力された駆動力が出力部材9に伝達されず、出力側の伝達機構に駆動力が伝達されることがない。このような断続部11は、断続部材13の軸方向移動によって断続され、断続部材13はアクチュエータ15によって軸方向移動操作される。
【0037】
アクチュエータ15は、電動モータ67と、シフトフォーク69とを備えている。電動モータ67は、ケーシング3のカバー6の外部に固定され、モータ軸71がケーシング3の内部に配置され一端側がカバー6に支持され、他端側がケース本体4に支持されている。このモータ軸71には、シフトフォーク69が螺合されている。
【0038】
シフトフォーク69は、一端側がモータ軸71に螺合され、他端側が断続部材13の外周に設けられた係合溝73に駆動的に係合している。シフトフォーク69と係合溝73との係合は、図1より明らかなように、ベアリング41,43やギヤ部7よりも、左端(第1の端)により近い位置である。また、シフトフォーク69の一端側には、断続部11の対向歯25,27が噛み合うときの待ち機構となる待ちバネ75が配置されている。このシフトフォーク69は、電動モータ67の起動により、断続部11の接続解除方向(図1における右方向)に移動し、断続部材13を付勢部材23の付勢力に抗して断続部11の接続解除方向(第1の位置)に移動させる。この断続部材13の移動により、断続部11の接続が解除されて入力部材5と出力部材9との間の動力伝達が遮断される。また、断続部11を接続させる場合には、電動モータ67を逆回転させ、シフトフォーク69を断続部11の接続方向に移動(図1におけるシフトフォーク69の位置に移動)させ、付勢部材23の付勢力によって断続部材13を断続部11の接続方向(第2の位置)に移動させて断続部11を接続し、入力部材5と出力部材9との間の動力伝達を可能とする。
【0039】
このように構成された動力伝達装置1では、断続部材13が付勢部材23の付勢力によって、常時、断続部11の接続方向に付勢されており、断続部11が接続状態となって入力部材5と出力部材9との間の動力伝達が可能となっている。このとき、断続部11は、断続部材13と出力部材9との連結部21に形成されたカムによって接続が強化されている。この状態からアクチュエータ15の電動モータ67を起動させ、シフトフォーク69を断続部11の接続解除方向に移動させることにより、断続部材13が断続部11の接続解除方向に移動され、断続部11が接続解除状態となって入力部材5と出力部材9との間の動力伝達が遮断される。
【0040】
断続部11は必然的に入力部材5と出力部材9との間に配置される。ここで動力伝達が遮断されるので、トランスミッション303から入力されたトルクは、プロペラシャフト309のみならず出力部材9、方向変換ギヤ組29、軸部材31の何れの回転にも消費されない。よって本実施形態はエネルギ消費を抑制しうる。またかかる部位は、先行技術においてはシャフトが延長されているに過ぎないが、本実施形態では、断続部11やシフトフォーク69を配置するためにかかる部位を利用している。すなわち、これらの配置のために特別のスペースを必要としないので、結果的に動力伝達装置1の小型化が可能である。
【0041】
このような動力伝達装置1では、ケーシング3に入力部材5と出力部材9とが回転可能に支持され、ケーシング3に断続部材13が軸方向移動可能に配置されているので、ケーシング3側のみで設計変更を行うことができ、動力伝達装置1を他の機構から独立して設計することができる。
【0042】
また、入力部材5と出力部材9とは、それぞれの軸方向端面17,19が軸方向に対向して配置されているので、入力部材5と出力部材9の軸方向長さを縮小して配置させることができ、重量を低減して動力伝達装置1を小型化することができる。
【0043】
さらに、断続部材13を出力部材9のギヤ部7より軸方向端側に配置させることで、ピニオン49の軸方向先端側に断続部材13を配置させることができ、動力伝達装置1を軸方向にさらに小型化することができる。
【0044】
従って、このような動力伝達装置1では、重量を低減し、ケーシング3側のみで設計を行うことができるので、小型化しつつ、独立して設計することができる。
【0045】
また、断続部材13は、入力部材5と出力部材9との軸方向端面17,19間に配置されているので、軸方向長さが縮小された入力部材5と出力部材9との間で断続部材13の移動ストロークを確保することができ、断続部11の断続特性を安定化させることができる。
【0046】
さらに、出力部材9と断続部材13とは、連結部21を介して一体回転可能に連結され、連結部21は、断続部材13を断続部11の接続方向に移動させるカムを有するので、連結部21のカムによって断続部11の接続を強化することができる。
【0047】
また、出力部材9と断続部材13との間には、断続部材13を断続部11の接続方向に付勢する付勢部材23が配置されているので、一体回転可能に連結された出力部材9及び断続部材13と付勢部材23とが摺動することがなく、付勢部材23の耐久性を向上することができる。
【0048】
さらに、断続部11は、入力部材5と断続部材13との軸方向間で対向する対向歯25,27の噛み合いにより構成されるので、断続部材13の軸方向移動ストロークを最小限に抑えることができ、動力伝達装置1を小型化することができる。加えて、入力部材5と出力部材9との間の動力伝達を確実な動作で断続することができ、断続部11の断続特性を安定化させることができる。
【0049】
(第2実施形態)
図2を用いて第2実施形態について説明する。
【0050】
本実施の形態に係る動力伝達装置101は、入力部材103と出力部材105とは、それぞれの軸方向端面107,109が軸方向に対向して配置されている。
【0051】
また、断続部111は、入力部材103と断続部材113との径方向間に形成された噛み合い歯115,117の噛み合いにより構成される。なお、第1実施形態と同一の構成には、同一の記号を記して構成及び機能説明は第1実施形態を参照するものとし省略するが、第1実施形態と同一の構成であるので、得られる効果は同一である。
【0052】
図2に示すように、入力部材103は、軸方向の一端側の外径が他端側の外径より小径に形成されている。出力部材105は、ギヤ部7から軸方向の入力部材103側に向けてボス部119が延設されている。これらの入力部材103の一端側と出力部材105のボス部119とは、それぞれの軸方向端面107,109が軸方向に対向して配置されている。このように入力部材103と出力部材105とを配置させることにより、入力部材103と出力部材105とが径方向にオーバーラップして配置された2重構造となることがなく、入力部材103と出力部材105との軸方向長さを縮小することができる。また、入力部材103と出力部材105とが軸方向により近接して配置されているので、さらに入力部材103と出力部材105との軸方向長さを縮小することができる。なお、入力部材103の端部と出力部材105の端部との間は、噛み合い部を形成して互いにセンタリングさせてもよい。この入力部材103と出力部材105との間の動力伝達は、断続部材113によって断続される。
【0053】
断続部材113は、環状に形成され、内周に形成された噛み合い歯117と出力部材105の外周に形成されたスプライン形状の連結部121とをスプライン連結させることにより出力部材105と一体回転可能で軸方向移動可能に配置されている。また、断続部材113の軸方向端面と出力部材105のギヤ部7の壁部との軸方向間には、断続部材113を断続部111の接続方向に付勢する付勢部材23が配置されている。このように断続部材113と一体回転可能に連結する出力部材105との間に付勢部材23を配置することにより、断続部111の接続が解除された状態で、断続部材113と出力部材105との間に相対回転が発生しないので、付勢部材23が断続部材113及び出力部材105と摺動することがない。
【0054】
断続部111は、入力部材103と断続部材113との径方向間に位置する外周面と内周面とにそれぞれ設けられた複数の噛み合い歯(第1のクラッチ歯,第2のクラッチ歯)115,117の噛み合いにより構成される。噛み合い歯115,117も第1の軸に沿って伸びたスプラインのように形成されており、付勢部材23の付勢力によって断続部材113が入力部材103側に移動されると噛み合い歯115,117が噛み合い、以ってこの断続部111は入力部材103と出力部材105との間で動力伝達を可能にする。また、断続部111は、アクチュエータ15の起動により断続部材113が付勢部材23の付勢力に抗して出力部材105側に移動されると噛み合い歯115,117の噛み合いが解除され、入力部材103と出力部材105との間の動力伝達が遮断される。
【0055】
このような動力伝達装置101では、入力部材103と出力部材105とのそれぞれの軸方向端面107,109が軸方向により近接して配置されているので、入力部材103と出力部材105の軸方向長さをより縮小して配置させることができ、重量を低減して動力伝達装置101を小型化することができる。
【0056】
また、断続部111は、入力部材103と断続部材113との径方向間に形成された噛み合い歯115,117の噛み合いにより構成されるので、断続部材113が入力部材103の径方向にオーバーラップして配置され、動力伝達装置101を軸方向にさらに小型化することができる。加えて、断続部材113の軸方向移動ストロークを確保することができ、断続部111の断続特性を向上することができる。
【0057】
(第3実施形態)
図3を用いて第3実施形態について説明する。
【0058】
本実施の形態に係る動力伝達装置201は、出力部材9と断続部材13とは、スプライン形状の連結部203を介して一体回転可能に連結されている。なお、第1実施形態と同一の構成には、同一の記号を記して構成及び機能説明は第1実施形態を参照するものとし省略するが、第1実施形態と同一の構成であるので、得られる効果は同一である。
【0059】
図3に示すように、断続部材13は、中空状に形成されて入力部材5と出力部材9との軸方向端面17,19間に配置され、軸方向一端側外周が出力部材9の内周に形成された凹部65に軸方向移動可能に挿入されている。この断続部材13の軸方向一端側外周と出力部材9の凹部65の内周との間には、スプライン形状の連結部203が形成され、出力部材9と断続部材13とが一体回転可能で断続部材13が軸方向移動可能にスプライン連結されている。
【0060】
この連結部203において、断続部材13の軸方向端面と出力部材9の凹部65の底部との軸方向間には、断続部材13を断続部11の接続方向に付勢する付勢部材23が配置されている。このように断続部材13と一体回転可能に連結する出力部材9との間に付勢部材23を配置することにより、断続部11の接続が解除された状態で、断続部材13と出力部材9との間に相対回転が発生しないので、付勢部材23が断続部材13及び出力部材9と摺動することがない。
【0061】
このような動力伝達装置201では、出力部材9と断続部材13とがスプライン形状の連結部203を介して一体回転可能に連結されているので、簡易な構造で断続部材13を出力部材9と一体回転可能で軸方向移動可能に配置させることができる。
【0062】
なお、本発明の実施の形態に係る動力伝達装置では、断続部材が出力部材と一体回転可能に連結されている。これは、断続部の接続を解除した状態で、断続部材が回転されることを防止し、燃費向上を図るためである。しかしながら、周辺部材の干渉などによって断続部材と出力部材とを一体回転可能に連結できない場合には、断続部材と入力部材とを一体回転可能に連結させてもよい。
【0063】
また、第1実施形態に係る動力伝達装置では、断続部材と出力部材との連結部が凹凸部の係合となっており、凹凸部の係合面にカム面が形成されているが、断続部材の端部外周と出力部材の凹部内周にそれぞれスプライン形状の連結部を設けてスプライン連結させてもよい。
【0064】
さらに、第2実施形態に係る動力伝達装置では、断続部材と出力部材との連結部にスプライン連結を採用しているが、これに限らず、第1実施形態の動力伝達装置のような凹凸部の連結であってもよい。この場合の断続部は、断続部材と入力部材とのうち一方の端部を大径に形成して内周に噛み合い歯を設け、他方の端部を小径に形成して外周に噛み合い歯を設ければよい。
【0065】
好適な実施形態により本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記開示内容に基づき、当該技術分野の通常の技術を有する者が、実施形態の修正ないし変形により本発明を実施することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0066】
トルク伝達の断続を可能にしながら、出力シャフトのオフセット、ひいてはプロペラシャフトのオフセットを極小化しうるPTUのごとき動力伝達装置が提供される。
【符号の説明】
【0067】
1,101,201…動力伝達装置
3…ケーシング
5,103…入力部材
7…ギヤ部
9,105…出力部材
11,111…断続部
13,113…断続部材
15…アクチュエータ
17,19,107,109…軸方向端面
21,203…連結部
23…付勢部材
25,27…対向歯
115,117…噛み合い歯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスミッションのトルクを断続可能に伝達する動力伝達装置であって、
第1の端と、前記第1の端と対向する第2の端と、前記第1の端と前記第2の端とを結ぶ第1の軸と、前記第1の軸と平行でない第2の軸と、を有し、前記第1の端において前記トランスミッションと結合可能なケーシングと、
前記ケーシングに支承され、前記トランスミッションにより駆動されて前記第1の軸の周りに回転可能な入力部材と、
前記第2の端においてベアリングを介して前記ケーシングに回転可能に支承され、前記第1の軸の周りに回転可能な出力部材と、
前記第1の端に向けて前記出力部材に嵌合し、前記出力部材と一体に回転可能であって、前記トルクの伝達を遮断する第1の位置と、前記入力部材と係合して前記入力部材から前記出力部材へ前記トルクを伝達する第2の位置と、の間で前記第1の軸の方向に可動な断続部材と、
前記ベアリングより前記第1の端に向かって突出し、前記ベアリング以外の支承なしに前記出力部材と一体に回転するギヤ部と、
前記トルクを伝えるべく前記ギヤ部と噛み合う第2のギヤ部を備え、前記第2の軸の周りに回転可能な軸部材と、
を備えた、動力伝達装置。
【請求項2】
請求項1に記載の動力伝達装置であって、
前記ベアリングおよび前記ギヤ部よりも前記第1の端により近い位置において前記断続部材に駆動的に係合したシフトフォークを備え、前記シフトフォークを介して前記断続部材を駆動するアクチュエータをさらに備えた動力伝達装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の動力伝達装置であって、前記入力部材は第1のクラッチ歯を備え、前記断続部材は前記第1のクラッチ歯と係合する第2のクラッチ歯を備えた、動力伝達装置。
【請求項4】
請求項3に記載の動力伝達装置であって、前記第1のクラッチ歯は前記入力部材の端面に形成され、前記第2のクラッチ歯は前記断続部材の対向する端面に形成されている、動力伝達装置。
【請求項5】
請求項3に記載の動力伝達装置であって、前記第1のクラッチ歯および前記第2のクラッチ歯は、前記第1の軸に沿って延びたスプラインである、動力伝達装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかに記載の動力伝達装置であって、
前記断続部材を前記第2の位置に向けて付勢するカムを備え、前記断続部材を前記出力部材と一体に回転させるべく構成された連結部をさらに備えた、動力伝達装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れかに記載の動力伝達装置であって、
前記断続部材を前記第2の位置に向けて付勢する付勢部材をさらに備えた、動力伝達装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−63762(P2013−63762A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−176741(P2012−176741)
【出願日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【出願人】(000225050)GKNドライブラインジャパン株式会社 (409)
【Fターム(参考)】