説明

動力噴霧機

【課題】 使用環境に応じてエンジンと電動モータのいずれをも動力源として駆動し得るようにした動力噴霧機を提供する。
【解決手段】
噴霧機本体10には、エンジンEに設けられるエンジン出力側ジョイント21と電動モータMに設けられるモータ出力側ジョイント22とのいずれもが選択的に着脱自在に装着される従動側ジョイント20が設けられており、従動側ジョイント20にはポンプ18を駆動するポンプ駆動軸が回転自在に装着されている。エンジン出力軸と電動モータの出力軸とに駆動側クラッチ部材としてのクラッチシューが装着されるとともにポンプ駆動軸には従動側クラッチ部材としてのクラッチドラムが装着される。従動側ジョイント20にエンジンEまたは電動モータMが装着されたときにクラッチシューとクラッチドラムとによりクラッチ機構としての遠心クラッチが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエンジンと電動モータのいずれをも動力源として駆動し得るようにした動力噴霧機に関する。
【背景技術】
【0002】
農作物等の植物に水や農薬等の液体を散布するための可搬型の動力噴霧機として背負い式の動力噴霧機が使用されている。この動力噴霧機は液体を収容するタンクと、先端にノズルが設けられた噴霧管と、タンクと噴霧管のそれぞれに接続されタンク内の液体を吸引しノズルに向けて圧送するポンプとを有している。ポンプを駆動させるための動力源として特許文献1及び2に示されるようにエンジンを使用する場合と、特許文献3に示されるように電動モータを使用する場合とがあり、動力源としてはエンジンと電動モータのいずれかが使用される。
【0003】
動力源としてエンジンを使用する場合には、燃料を補充することにより長時間でもエンジンを駆動し続けられるという利点があるが、エンジン駆動時の騒音や振動が電動モータ駆動時よりも大きいという欠点がある。これに対し、動力源として電動モータを使用する場合には、電動モータ駆動時の騒音や振動がエンジン駆動時よりも小さいという利点があるが、電動モータを駆動させるための電力の確保に限度がある。例えば、電動モータを使用する動力噴霧機には、電源コネクタを商用電源端子に接続して使用する電源接続式と、充電式バッテリを搭載するバッテリ搭載式とがあるが、電源接続式は接続コードが噴霧作業の障害となるうえ噴霧場所の近くに商用電源端子が存在しない場合には使用することができず、バッテリ搭載式はバッテリ容量の限界から長時間使用することができず充電作業も煩雑であるという問題がある。
【特許文献1】特開平11−235146号公報
【特許文献2】特開2002−59043号公報
【特許文献3】特開平8−224512号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の通り、エンジンを使用する動力噴霧機と電動モータを使用する動力噴霧機とのそれぞれには利点と欠点とがあることから、作業者が噴霧場所や噴霧量等の使用環境に応じてエンジンと電動モータのいずれをも動力源として選択的に使用することができれば噴霧作業の作業性を向上させることができる。
【0005】
本発明の目的は、使用環境に応じてエンジンと電動モータのいずれをも動力源として駆動し得るようにした動力噴霧機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の動力噴霧機は、タンク内の液体をノズルから噴射するポンプを噴霧機本体に装着し、エンジンに設けられるエンジン出力側ジョイントと電動モータに設けられるモータ出力側ジョイントとのいずれもが選択的に着脱自在に装着される従動側ジョイントを前記噴霧機本体に設け、前記電動モータの出力軸に設けられた駆動側クラッチ部材と前記エンジンの出力軸に設けられた駆動側クラッチ部材とのいずれもが選択的に組み付けられる従動側クラッチ部材を前記ポンプのポンプ軸に設け、前記エンジン出力側ジョイントまたは前記モータ出力側ジョイントが前記従動側ジョイントに締結されたときに前記駆動側クラッチ部材と前記従動側クラッチ部材とによりクラッチ機構を形成することを特徴とする。
【0007】
本発明の動力噴霧機は、前記従動側クラッチ部材をクラッチドラムにより構成し、前記駆動側クラッチ部材を遠心力により前記クラッチドラムの内周面に押し付けられるクラッチシューにより構成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、噴霧機本体に設けられた従動側ジョイントにエンジンと電動モータとのいずれかを選択的に装着することができるので、動力噴霧機のポンプをエンジンと電動モータのいずれをも動力源として駆動することができる。したがって、エンジンと電動モータとをアタッチメントとして用意しておき、使用環境に応じていずれか一方の動力源を用いて動力噴霧機を駆動させることにより噴霧作業の作業性を向上させることができる。
【0009】
本発明によれば、従動側ジョイントからエンジンや電動モータを取り外したときには、クラッチ機構を構成する駆動側クラッチ部材と従動側クラッチ部材とが外部に露出するので、クラッチ機構のメンテナンスや駆動側クラッチ部材や従動側クラッチ部材の交換作業を容易に行うことができる。
【0010】
本発明によれば、クラッチ機構としては、クラッチドラムと、遠心力によりクラッチドラムの内周面に押し付けられるクラッチシューとにより構成される遠心クラッチを用いることができる。ポンプ駆動軸にクラッチドラムを設け、エンジンや電動モータの出力軸にクラッチシューを装着することにより、クラッチシューを交換することなく、クラッチドラムに対するクラッチシューの押し付け力や摩擦係数等をエンジンと電動モータとで異ならせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明の一実施の形態である動力噴霧機の側面図であり、図1(A)は噴霧機本体にエンジンが装着された状態を示し、図1(B)は噴霧機本体に電動モータが装着された状態を示す。図2はエンジンと電動モータのいずれもが装着されていない状態の噴霧機本体を示す正面図である。
【0012】
この動力噴霧機は、農作物等の植物に水や農薬等の液体を散布するために用いられる背負い式の可搬型動力噴霧機であり、噴霧機本体10を有している。噴霧機本体10の下端部には動力噴霧機を地面等に載置する際に土台となる底板11が設けられ、上端部には水や農薬等の液体を収容するタンク12が設けられており、タンク12の天壁部にはタンク注入口を閉じるタンクキャップ13が着脱自在に装着されている。噴霧機本体10には図示しない担ぎ帯が取り付けられるようになっており、作業者が噴霧作業を行う際には、背当て部14に背中を当てるようにして動力噴霧機は作業者の背中に担がれる。
【0013】
図2に示すように、噴霧機本体10には先端にノズル15が設けられた噴霧管16が可撓性のホース17を介して取り付けられている。噴霧機本体10には噴霧管16に係合する図示しないホルダーが設けられており、噴霧作業が行われないときには噴霧管16をホルダーに固定しておくことができ、噴霧作業を行うときには作業者は噴霧管16を手に持って操作を行うことになる。
【0014】
タンク12内の液体を吸引してノズル15から噴射するために噴霧機本体10にはポンプ18が取り付けられており、ホース17はポンプ18の吐出口に接続されている。なお、噴霧機本体10とタンク12とを樹脂材料により一体に成形するようにしても良く、タンク12と噴霧機本体10とを別部材としてこれらを組み立てるようにしても良い。
【0015】
このように、動力噴霧機はポンプ18を駆動してタンク12内の液体を吸引しノズル15から噴射する噴霧機本体10を有しており、噴霧機本体10に設けられた従動側ジョイント20には、ポンプ18を駆動させるための動力源としてエンジンEと電動モータMとのいずれもが選択的に着脱自在に装着されるようになっている。エンジンEの端部には、図1(A)に示すように、従動側ジョイント20に着脱自在に装着されるエンジン出力側ジョイント21が設けられ、電動モータMの端部には、図1(B)に示すように、従動側ジョイント20に着脱自在に装着されるモータ出力側ジョイント22が設けられている。従動側ジョイント20には円筒形状のインロー部20aが突設され、エンジン出力側ジョイント21とモータ出力側ジョイント22には、それぞれインロー部20aが嵌合する凹部が形成されている。
【0016】
図3はエンジンEが装着された動力噴霧機におけるエンジン出力側ジョイント21と従動側ジョイント20を示す拡大断面図であり、図4は電動モータMが装着された動力噴霧機におけるモータ出力側ジョイント22と従動側ジョイント20を示す拡大断面図であり、図5(A)はエンジン出力側ジョイント21を示す正面図であり、図5(B)はモータ出力側ジョイント22を示す正面図であり、図6は図3における6−6線に沿う断面図である。
【0017】
図3に示すようにエンジン出力側ジョイント21には従動側ジョイント20のインロー部20aが嵌合する凹部21aが形成され、図4に示すようにモータ出力側ジョイント22にはインロー部20aが嵌合する凹部22aが形成されている。図3および図4に示すように、従動側ジョイント20にはポンプ軸23を支持する軸受24が組み込まれ、ポンプ軸23にはクラッチドラム25が従動側クラッチ部材として取り付けられており、クラッチドラム25は円板部25aとこれの外周部から軸方向に延びる円筒部25bとを有し、円板部25aにポンプ軸23が取り付けられている。
【0018】
エンジンEは4サイクルの単気筒ガソリンエンジンであり、図3に示すように、クランク軸からなるエンジン出力軸26を回転自在に支持するクランクケース27を有し、クランクケース27にはピストンが往復動自在に装着されるシリンダ等のエンジン構成部材(図示省略)が組み込まれ、クランクケース27は図1(A)に示すようにエンジンカバー28により覆われている。エンジンEにはリコイルスタータが設けられており、リコイルノブ29を手動で引っ張ることにより、エンジン出力軸26を手動で回転させてエンジンEを始動させることができる。エンジンEの下側にはガソリンを収容する燃料タンク30が設けられており、燃料タンク30内のガソリンを燃料としてエンジンEを駆動させると、エンジン出力軸26が回転駆動するとともにエンジン出力軸26に取り付けられた冷却ファン31がエンジンEを冷却する。なお、エンジンとしては2サイクルエンジンを用いても良い。
【0019】
図3に示すように、エンジン出力軸26の先端部には円板状の回転板32が固定されており、この回転板32に図6に示すように回転方向にほぼ180度の位相をずらして固定される2本の支持ピン33にはそれぞれクラッチシュー34が駆動側クラッチ部材として支持ピン33を中心に揺動自在に装着され、それぞれのクラッチシュー34の先端にはクラッチドラム25の円筒部25bの内周面に接触する摩擦接触部34aが設けられている。それぞれのクラッチシュー34の間には引っ張りコイルばね35が装着されており、この引っ張りコイルばね35によりクラッチシュー34のそれぞれには摩擦接触部34aがクラッチドラム25の円筒部25bから離れる方向のばね力が加えられている。
【0020】
駆動側クラッチ部材としてのクラッチシュー34と従動側クラッチ部材としてのクラッチドラム25とによりクラッチ機構である遠心クラッチ36が構成されている。したがって、リコイルノブ29を引っ張ってエンジンEを始動させるときには、遠心クラッチ36が開放状態となってリコイルノブ29には大きな抵抗力が加わらないので容易にエンジンEを始動させることができる。エンジン回転数の上昇にともなってクラッチシュー34に加わる遠心力により、クラッチシュー34は引っ張りコイルばね35のばね力に抗して拡開し、クラッチドラム25の円筒部25bの内周面に摩擦接触部34a押し付けられてクラッチドラム25とクラッチシュー34は連結される。エンジン出力軸26が遠心クラッチ36を介してポンプ軸23に直結状態となると、ポンプ軸23を介してポンプ18が駆動される。
【0021】
電動モータMは断面略四角形状のモータケース37を有し、このモータケース37内にはアマチュアシャフトからなるモータ出力軸38が図4に示すように回転自在に支持されており、モータケース37内にはモータ出力軸38に固定されるアーマチュア(図示省略)やアーマチュアに対向するマグネット(図示省略)がモータ構成部材として組み込まれている。電動モータMの下側には図1(B)に示すようにリチウムイオン電池等の充電式バッテリ39が装着されており、このバッテリ39から供給される電力により電動モータMを駆動させることができる。ただし、商用電源端子に接続されるプラグを有するケーブルを電動モータMに取り付けて、商用電力によりモータ駆動を行うようにしても良い。
【0022】
図4に示すように、モータ出力軸38の先端部には円板状の回転板32aが固定されており、この回転板32aには、図6に示した回転板32と同様に駆動側クラッチ部材を構成するクラッチシュー34等が設けられ、ポンプ軸23に取り付けられるクラッチドラム25とともに遠心クラッチ36aを形成する。図6に示すように、噴霧機本体10にエンジンEが装着される場合も電動モータMが装着される場合も遠心クラッチ36,36aは同様の構造となっている。この遠心クラッチ36aにより、電動モータMの回転数が所定値以上に増加するまではクラッチシュー34をクラッチドラム25に接触させることなく、つまりモータ出力軸38に大きな抵抗力を加えることなくモータ回転数を上げることができ、モータ回転数の上昇にともない増加する遠心力により、クラッチシュー34はばね力に抗して拡開しクラッチドラム25の円筒部25bの内周面に押し付けられてクラッチドラム25と連結され、モータ出力軸38は遠心クラッチ36aを介してポンプ軸23と直結状態とされる。
【0023】
本発明の動力噴霧機においては、ポンプ18に設けられる従動側ジョイント20に対して、エンジンEと電動モータMのいずれをも選択的に装着することができるので、アタッチメントとしてエンジンEと電動モータMとを用意しておくことにより、使用環境に応じて動力噴霧機をエンジン駆動式とモータ駆動式とのいずれとしても使用することができる。例えば、静粛性が要求されない場所ではエンジンEを駆動源として噴霧作業を行うことができ、静粛性が要求される場所では電動モータMを駆動源として噴霧作業を行うことができ、使用者は使用環境に応じて駆動源を選択することができる。
【0024】
更に、この動力噴霧機では従動側ジョイント20からエンジンEや電動モータMを取り外したときには、遠心クラッチ36,36aを構成するクラッチドラム25やクラッチシュー34は外部に露出するので、遠心クラッチ36,36aのメンテナンスやクラッチシュー34の交換等のメンテナンス作業を容易に行うことができる。また、図4及び図6に示すように、ポンプ軸23にクラッチドラム25を取り付けるとともにエンジンEや電動モータMにクラッチシュー34を装着することにより、クラッチシュー34を交換することなく、クラッチドラム25に対するクラッチシュー34の押し付け力や摩擦係数等をエンジンEと電動モータMとで相違した設定とすることができる。
【0025】
図1に示すように、噴霧機本体10にはエンジンEと電動モータMのいずれもが着脱自在に装着されるとともに締結されるようになっており、エンジンEにはエンジン出力側ジョイント21の両側に図5(A)に示すように締結レバー41が揺動自在に設けられ、電動モータMにはモータ出力側ジョイント22の両側に、図5(B)に示すように同様に締結レバー41aが揺動自在に設けられ、それぞれの締結レバー41,41aは同様の構造となっており、噴霧機本体10の従動側ジョイント20に形成された締結用溝42に係合するようになっている。
【0026】
図7は締結レバー41,41aと締結用溝42の詳細を示す拡大断面図である。図2に示すように従動側ジョイント20の両側にはクランプブロック43が設けられ、締結用溝42はそれぞれのクランプブロック43に形成されている。図7に示すように、締結レバー41,41aは作業者により把持されてピン44を中心に揺動操作される操作部45と、操作部45に一体に設けられ締結用溝42内に挿入される係合アーム46とを有している。エンジン出力側ジョイント21にはこれに固定されるピン44により締結レバー41が揺動自在に取り付けられ、モータ出力側ジョイント22にはこれに固定されるピン44により締結レバー41aが揺動自在に取り付けられることになる。
【0027】
締結用溝42は、図7に示すように、エンジン出力側ジョイント21およびモータ出力側ジョイント22が選択的に装着される装着面に開口する開口部42aから略L字形状に曲げられて形成されており、締結レバー41,41aを図7において破線で示すようにロック解除位置に回動させた状態のもとでエンジンEまたは電動モータMを噴霧機本体10に組み付けると、締結レバー41,41aの係合アーム46は開口部42aから締結用溝42内に挿入される。この状態のもとで作業者が操作部45により締結レバー41,41aを図7において反時計方向に回動させると、実線で示すように、クランプブロック43に形成された係合面47に係合アーム46が接触する。
【0028】
クランプブロック43には係合アーム46を係合面47との間で締め付けるラッチ48が締結用溝42内に出没自在に装着されるとともに突出方向のばね力が付勢されている。締結レバー41,41aを図7において破線で示す位置から実線で示す位置に向けて回動させると、係合アーム46がラッチ48を引っ込めるように移動させた後に係合面47に接触する。この位置まで係合アーム46が回動されると、ラッチ48が係合アーム46の背面側に突出して係合アーム46は係合面47との間でロックされる。このように、噴霧機本体10にエンジンEまたは電動モータMを締結する際には、それぞれ2本の締結レバー41,41aを回動させて係合アーム46を締結用溝42に挿入させてラッチ48を係合アーム46に係合させることになる。
【0029】
噴霧機本体10からエンジンEや電動モータMを取り外す際に、係合アーム46とラッチ48との係合を解くために、クランプブロック43にはラッチ48に連動するロック解除ボタン49が設けられており、このロック解除ボタン49が押し込まれるとラッチ48は締結用溝42の外部に後退移動し、ラッチ48による係合アーム46のロックが解除される。
【0030】
このように、エンジンEおよび電動モータMのそれぞれに設けられる締結レバー41,41aは、従動側ジョイント20に設けられるラッチ48に選択的に係合させることができ、エンジン出力側ジョイント21とモータ出力側ジョイント22とのいずれをも選択的に従動側ジョイント20に締結することができるので、アタッチメントとしてエンジンEと電動モータMとを用意しておくことにより、使用環境に応じて動力噴霧機をエンジン駆動式とモータ駆動式とのいずれとしても使用することができる。締結レバー41,41aを回動操作するという簡単な作業により、エンジン出力側ジョイント21やモータ出力側ジョイント22を従動側ジョイント20に容易に締結することができるので、従動側ジョイント20へのエンジンEや電動モータMの脱着作業を容易に行うことができる。
【0031】
なお、本実施の形態においては、従動側ジョイント20に締結用溝42およびラッチ48を設けるとともにエンジンEおよび電動モータMに締結レバー41,41aを設けるようにしているが、これとは逆に、従動側ジョイント20に締結レバー41を設けるとともにエンジンEおよび電動モータMに締結用溝42およびラッチ48を設けるようにしても良く、この場合でも本実施の形態における操作と同様の操作により、エンジン出力側ジョイント21やモータ出力側ジョイント22を従動側ジョイント20に容易に締結することができる。
【0032】
図8(A)は図1(A)に示すエンジン回転数調整器を拡大して示す斜視図であり、図8(B)は図1(B)に示すモータ回転数調整器を拡大して示す斜視図である。図1に示すように噴霧機本体10には、作業者が動力噴霧機を背負った状態で指先が届く位置に棒状の支持部材50が突出して設けられており、従動側ジョイント20にエンジンEが装着される場合には、この支持部材50にはエンジン回転数を調整するためのエンジン回転数調整器51が着脱自在に装着され、従動側ジョイント20に電動モータMが装着される場合には、支持部材50にはモータ回転数を調整するためのモータ回転数調整器52が着脱自在に装着されるようになっている。
【0033】
エンジン回転数調整器51は図8(A)に示すようにケーブル53を介してエンジンEに接続されており、ホルダ54とこのホルダ54に支持ピン55により図中矢印で示す方向に揺動自在に支持されるレバー56とを有している。ホルダ54には断面略C字形の装着バンド57が取り付けられ、装着バンド57はその開口端部57aで拡開自在となっている。この開口端部57aにはボルト58が挿通されるようになっており、装着バンド57を支持部材50に嵌め込んだ状態のもとで、開口端部57aに挿通されたボルト58にナット59を締結することにより、支持部材50に対してエンジン回転数調整器51を着脱自在に装着することができる。
【0034】
ケーブル53は可撓性を有するアウターチューブ53aとこの中に移動自在に収容されるインナーケーブル53bとを有しており、インナーケーブル53bの一端はレバー56に接続され、他端はエンジンEのスロットル(図示省略)に接続されている。また、アウターチューブ53aの一端はホルダ54に固定され、他端はエンジンカバー28に固定されており、ホルダ54とエンジンEとの間におけるインナーケーブル53bの移動経路長はアウターチューブ53aにより所定の長さに制限されている。したがって、レバー56を操作することにより、インナーケーブル53bを介してスロットルを開閉操作して、エンジン回転数を調整することができる。
【0035】
モータ回転数調整器52は図8(B)に示すように電気コード61を介して電動モータMに接続されており、エンジン回転数調整器51に設けられたホルダ54と同様のホルダ62とこのホルダ62に支持ピン63により図中矢印で示す方向に回転自在に支持される操作部としてのダイアル64とを有している。ホルダ62には断面略C字形の装着バンド65が取り付けられ、装着バンド65はその開口端部65aで拡開自在となっている。この開口端部65aにはボルト66が挿通されるようになっており、装着バンド65を支持部材50に嵌め込んだ状態のもとで、開口端部65aに挿通されたボルト66にナット67を締結することにより、支持部材50に対してモータ回転数調整器52を着脱自在に装着することができる。
【0036】
図9は図8(B)に示すモータ回転数調整器に組み込まれる可変抵抗器の回路図である。ホルダ62には可変抵抗器68が込み込まれており、可変抵抗器68は電気コード61を介して電動モータMの制御装置(図示省略)に接続され、バッテリ39から電源電圧が印加される抵抗69と電動モータMに接続される移動端子70とを有している。移動端子70は調整ダイアル64に固定されるとともに抵抗69に摺動自在に接触している。したがって、操作部としての調整ダイアル64を回転操作することにより、移動端子70と抵抗69との接触位置を変化させることにより、バッテリ39から電動モータMへ供給される駆動電流を変化させて、電動モータMの回転数を調整することができる。
【0037】
図10(A)は本発明の他の実施の形態である動力噴霧機の噴霧機本体10を示す正面図であり、図10(B)はこの噴霧機本体10に着脱自在に装着されるエンジンEを示す正面図であり、図10(C)はこの噴霧機本体に着脱自在に装着される電動モータMを示す正面図である。
【0038】
噴霧機本体10の従動側ジョイント20の四隅には図10(A)に示すように取付孔71が形成され、エンジン出力側ジョイント21には同図(B)に示すように取付孔71のそれぞれに対応させて取付孔72が形成され、モータ出力側ジョイント22には同図(C)に示すように取付孔71のそれぞれに対応させて取付孔73が形成されている。これにより、従動側ジョイント20にエンジン出力側ジョイント21を突き合わせた状態で取付孔71と取付孔72に締結部材としてのボルトを貫通させてボルトにナットをねじ止めすることにより、従動側ジョイント20にエンジンEを着脱自在に装着することができる。また、従動側ジョイント20にモータ出力側ジョイント22を突き合わせた状態で取付孔71と取付孔73にボルトを貫通させてボルトにナットをねじ止めすることにより、従動側ジョイント20に電動モータMを着脱自在に装着することができる。なお、噴霧機本体10の取付孔71の位置にボルトを一体に取り付け、そのボルトを貫通させて取付孔72,73に貫通させるようにしても良く、逆に取付孔72,73の位置にボルトを一体に取り付け、取付孔71にボルトを貫通させるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施の形態である動力噴霧機の側面図であり、(A)は噴霧機本体にエンジンが装着された状態を示し、(B)は噴霧機本体に電動モータが装着された状態を示す。
【図2】エンジンと電動モータのいずれもが装着されていない状態の噴霧機本体を示す正面図である。
【図3】エンジンが装着された動力噴霧機におけるエンジン出力側ジョイントと従動側ジョイントを示す拡大断面図である。
【図4】電動モータが装着された動力噴霧機におけるモータ出力側ジョイントと従動側ジョイントを示す拡大断面図である。
【図5】(A)はエンジン出力側ジョイントを示す正面図であり、(B)はモータ出力側ジョイントを示す正面図である。
【図6】図3における6−6線に沿う断面図である。
【図7】締結レバーと締結用溝の詳細を示す拡大断面図である。
【図8】(A)は図1(A)に示すエンジン回転数調整器を拡大して示す斜視図であり、(B)は図1(B)に示すモータ回転数調整器を拡大して示す斜視図である。
【図9】図8(B)に示すモータ回転数調整器に組み込まれる可変抵抗器の回路図である。
【図10】本発明の他の実施の形態である動力噴霧機の噴霧機本体を示す正面図であり、(B)はこの噴霧機本体に着脱自在に装着されるエンジンを示す正面図であり、(C)はこの噴霧機本体に着脱自在に装着される電動モータを示す正面図である。
【符号の説明】
【0040】
10 噴霧機本体
12 タンク
15 ノズル
18 ポンプ
20 従動側ジョイント
21 エンジン出力側ジョイント
22 モータ出力側ジョイント
23 ポンプ軸
25 クラッチドラム(従動側クラッチ部材)
26 エンジン出力軸
34 クラッチシュー(駆動側クラッチ部材)
36 遠心クラッチ(クラッチ機構)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク内の液体をノズルから噴射するポンプを噴霧機本体に装着し、
エンジンに設けられるエンジン出力側ジョイントと電動モータに設けられるモータ出力側ジョイントとのいずれもが選択的に着脱自在に装着される従動側ジョイントを前記噴霧機本体に設け、
前記電動モータの出力軸に設けられた駆動側クラッチ部材と前記エンジンの出力軸に設けられた駆動側クラッチ部材とのいずれもが選択的に組み付けられる従動側クラッチ部材を前記ポンプのポンプ軸に設け、
前記エンジン出力側ジョイントまたは前記モータ出力側ジョイントが前記従動側ジョイントに締結されたときに前記駆動側クラッチ部材と前記従動側クラッチ部材とによりクラッチ機構を形成することを特徴とする動力噴霧機。
【請求項2】
請求項1記載の動力噴霧機において、前記従動側クラッチ部材をクラッチドラムにより構成し、前記駆動側クラッチ部材を遠心力により前記クラッチドラムの内周面に押し付けられるクラッチシューにより構成することを特徴とする動力噴霧機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−122(P2007−122A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−187332(P2005−187332)
【出願日】平成17年6月27日(2005.6.27)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】