説明

動力源回転数可変型CVT制御システム

パワートレーン制御システム(21)が開示されている。パワートレーン制御システムは、動力源(24)、および動力源の出力部(30)に結合されたCVT(26)を有し得る。パワートレーン制御システムはさらに、動力源およびCVTと通信する制御装置(48)を有し得る。制御装置は、複数の速度モードを備えるマップ(58)有し、かつ、複数の速度モードの少なくとも1つに対して、制御装置は、CVT出力回転数または対地速度の少なくとも一方に基づいて実際の動力源の回転数を変更するように構成され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願明細書は、一般的に、CVTトランスミッションを備える機械用の制御システムに関し、より詳しくは、CVT出力回転数に基づいて動力源の回転数を変更するための制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、オンハイウェイ商用車両(vocational vehicle)、オフハイウェイ運搬トラック、ホイールローダ、モータグレーダ、および他のタイプの重機などの機械類が様々な作業に使用される。これらの機械類は一般的に、これらの作業を完了するのに必要な動力を提供するエンジン、例えば、ディーゼルエンジン、ガソリンエンジン、または気体燃料エンジンなどとして供し得る動力源を含む。動力源によって生成される動力が、例えば連続可変トランスミッション(「CVT」)などのトランスミッションを介して、1つ以上の地面とかみ合う装置に伝達されて、機械の推進を行い得る。
【0003】
機械制御システムを使用して、動力源とCVTの動作を連動させかつ調整して、機械の応答性および効率を改善させることが多く行われている。例えば、機械の走行中、動力源およびCVTは、動力源およびCVTが実質的に安定的で効率的な動作を行う回転数およびトルクの範囲を有し得る。この範囲外での動作は、燃費を増大させおよび/または応答性を低減させることがある。
【0004】
動力源およびCVTを制御するための一方法が、2007年3月20日Kurasらに発行された(特許文献1)に記載されている。(特許文献1)では、エンジンが最適な回転数条件で運転する(すなわち、エンジンが最も効率的に動作する回転数の範囲内)ように伝達比を調整するエンジンアンダースピード制御システムが説明されている。(特許文献1)の制御システムでは、制御装置に入力信号を与える操作者用入力部について説明されている。操作者用入力部を、例えば、操作者がペダルを押し下げて機械の出力回転数の増大を要求することができるアクセルペダルとし得る。入力信号は、要求された回転数を与えることができ、次いで制御装置は、この入力信号をモータ回転数コマンドに変換する(モータは、エンジンによって駆動されるCVTの構成部品である)。(特許文献1)の制御システムは、モータ回転数コマンドが回転数の上限値を上回ることおよび回転数の下限値を下回ることがないようにする。これらの限界値は、モータ回転数コマンドが回転数の上限値および下限値内に留まる限り、モータトルクコマンドがモータのトルク能力内に留まるように計算される。特定のモータ回転数におけるモータトルク限界値はモータのトルク−回転数曲線から決定できる。(制御装置によって実施される)エンジンアンダースピード制御アルゴリズムはまた、エンジンがラギング(lugging)し始める場合(例えば、エンジン回転数が閾値未満に落ち込む場合)にモータ回転数コマンドを低減させる。それゆえ、(特許文献1)の方法によれば、CVTは、モータ回転数コマンドの変化に迅速に応答する一方で、モータおよびトランスミッションの損傷を回避することを可能にしている。
【0005】
(特許文献1)の機械は、モータを、このモータおよびトランスミッションに発生し得る損傷を回避しつつ、これらに対する応答性を維持するのに役に立ち得るが、全ての条件下においてエンジンの効率的な動作および制御を提供することはできない。モータ回転数を制御することのみによって、(特許文献1)の制御システムは、現在発生している変速比、作業器具条件、および負荷条件で、エンジンが非効率的および/または非応答性のエンジン回転数(すなわち、低すぎるまたは高すぎるかのいずれか)において動作できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7,192,374号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
説明の機械システムは、上述の問題の1つ以上を解決することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では、本明細書はパワートレーン制御システムに関する。パワートレーン制御システムは、動力源、および動力源の出力部に結合されたCVTを含み得る。パワートレーン制御システムはさらに、動力源およびCVTと通信する制御装置を含み得る。制御装置は、複数の速度モードを備えるマップを含み、かつ、複数の速度モードの少なくとも1つに対して、制御装置は、CVT出力回転数または対地速度の少なくとも一方に基づいて、実際の動力源の回転数を変更するように構成され得る。
【0009】
別の態様では、本明細書は、機械の制御方法に関する。本方法は、回転出力を生成すること、および回転出力を、CVTを駆動するように導くことを含む。本方法はさらに、CVT出力回転数を測定すること、および測定されたCVT出力回転数に基づいて、回転出力の実際の回転数を変更することを含み得る。実際の回転数の変更は、複数の速度モードの少なくとも1つを実行するときに発生し得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】例示的に説明する機械の概略図である。
【図2】図1の機械と共に使用され得る、例示的に説明するパワートレーンおよび制御システムの概略図である。
【図3】図2のパワートレーンを制御するための例示的なマップのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に例示的な機械10を示す。機械10を、採鉱、建設、農業、運搬などの産業、または当分野で知られている他のいずれかの産業に関連した、ある種の動作を行う移動車両とし得る。例えば、機械10を、ホイールローダ、採掘機、バックホー、モータグレーダなどの土工機械、または当分野で知られている他のいずれかの好適な土工機械とし得る。あるいは、機械10を、荷物運搬車両、船舶、乗用車、または他のいずれかの好適な動作を実行する機械とし得る。機械10は、1つ以上の牽引装置12、作業器具16、オペレータステーション18、およびパワートレーン20を含み得る。
【0012】
牽引装置12は、機械10の並進運動を可能とするように構成された、機械10の両側に配置された1つ以上の車輪(片側のみ示す)を含み得る。あるいは、牽引装置12は無限軌道、ベルト、または当分野で知られている他の牽引装置を含み得る。いずれの牽引装置12も駆動可能および/または操縦可能である。
【0013】
作業器具16は、例えば、バケット、排土板、ショベル、リッパ、ハンマー、引掛け装置などの特定の作業を行うために使用されるいずれかの装置、または当分野で知られている他のいずれかの作業を行う装置を含み得る。1つ以上の作業器具16は、機械10に取り付け可能でありかつオペレータステーション18から制御可能である。作業器具16は、直接ピボットまたはリンケージ装置を介して、機械10に接続することができ、かつ1つ以上の油圧アクチュエータ、電気モータ、または他のいずれかの適切な方法で作動させることができる。作業器具16は、ピボット、回転、摺動、旋回、上昇、または当分野で知られているいずれかの方法で機械10に対して動くことができる。
【0014】
オペレータステーション18は、操作者が機械10を制御する場所とし得る。オペレータステーション18は、機械10に搭載されていても搭載されていなくてもよく、パワートレーン20の1つ以上の構成部品を制御するために操作者入力装置22(図2参照)を含み得る。操作者入力装置22は操作者席の近くに配置され、かつ単軸または多軸のジョイスティック、ホイール、ノブ、プッシュプル装置、ボタン、ペダル、または当分野で知られている他のいずれかの入力装置として供し得る。オペレータステーション18が、例えば、ステアリング装置、制動装置、ギヤ比選択装置、および/または当分野で知られている他の操作者入力装置などの追加的な操作者入力装置を含み得るようにする。
【0015】
図2に示すように、パワートレーン20は、機械10を推進させるために共に動作する構成部品を含み得る。具体的には、パワートレーン20は、連続可変トランスミッション(「CVT」)26に駆動式に結合された動力源24を含み得る。パワートレーン20が、動力源24とCVT26とを結合させるためにトルクコンバータ(図示せず)も含むようにする。
【0016】
動力源24は、機械10(図1を参照)を動作させるための動力出力を提供し得る。動力源24は、ディーゼルエンジン、ガソリンエンジン、気体燃料エンジン(例えば、天然ガス機関)などの燃焼機関、または当分野で知られている他のいずれかのタイプの燃焼機関として供し得る。あるいは、動力源24は、燃料電池、または電気モータと結合された蓄電装置などの非燃焼型動力源として供し得る。動力源24は、牽引装置12(図1参照)を駆動するための回転出力を提供し、それにより機械10を推進させることができる。動力源24はまた、回転出力を提供して、作業器具16を作動させるために使用される液圧回路25を駆動させることができる。
【0017】
CVT26は、動力源24の出力部30から牽引装置12に回転出力を伝達する複数のサブコンポーネント(または動力伝達経路)を含み得る。サブコンポーネントは、例えば、機械式トランスミッション27および油圧式トランスミッション28を含み得る。機械式トランスミッション27および油圧式トランスミッション28は、図2に示すように並行して、または直列に動作し得るようにする。
【0018】
CVT26の機械式トランスミッション27は、複数の前進ギヤ比、1つ以上の後進ギヤ比、および1つ以上のクラッチ(図示せず)を備える、例えば、マルチ回転数で双方向の機械式トランスミッションとして供し得る。機械式トランスミッション27は、クラッチを選択的に作動させて、予め定められた組み合わせのギヤ(図示せず)を係合させ、個別の出力ギヤ比を生成することができる。機械式トランスミッション27は、シフト変更が動力源の回転数、操作者が選択した最大ギヤ比、および制御装置内に記憶されたシフトマップに基づく自動式のトランスミッションとし得る。あるいは、機械式トランスミッション27は、係合されたギヤが操作者によって手動で選択されるマニュアルトランスミッションとし得る。
【0019】
油圧式トランスミッション28は、第1の流体通路42および第2の流体通路44によって相互接続されたポンプ38およびモータ40を含み得る。ポンプ38は、例えば、流体を加圧するために動力源24の出力部30によって回転される可変容量型ポンプとし得る。ポンプ38は、加圧流体を、流体通路42または44を介してモータ40に導き、それゆえ、それに続いてモータ40を回転させ得る。油圧式トランスミッション28の「ギヤ比」または「有効ギヤ比」は、ポンプ38の容量を変更することによって変えることができる。ポンプ38の動作限界値内でポンプ38の流体容量を無限に変更できる(すなわち、ポンプ38の動作限界値内のどの流体容量も達成可能である)ので、無数の有効ギヤ比を生じ得るようにする。あるいは、油圧式トランスミッション28は、電気式連続可変トランスミッション、ローラベースの連続可変トランスミッション、またはプーリベースの連続可変トランスミッションとして供し得る。
【0020】
機械式トランスミッション27および油圧式トランスミッション28の出力を、機械式トランスミッション27および油圧式トランスミッション28と機械出力部36との間に配置された1つ以上のギヤアセンブリ32(図2には1つのみ示す)を使用して、組み合わせることができる。ギヤアセンブリ32は、例えば、遊星歯車装置を含み得る。各ギヤアセンブリ32は、例えば、キャリア33、リングギヤ35、および太陽歯車37を有し得る。太陽歯車37を、牽引装置12に結合され得る機械出力部36に接続することができる。機械式トランスミッション27をキャリア33に接続することができ、および油圧式トランスミッションをリングギヤ35に接続することができる。あるいは、ギヤアセンブリ32の出力側に油圧式トランスミッションまたは機械式トランスミッション27のいずれかを配置し(すなわち、機械出力部36に結合させて)、その後出力30の経路をギヤアセンブリ32に直接接続する(例えば、機械式トランスミッション27がギヤアセンブリ32の出力端部に配置される場合、出力30の経路はキャリア33に接続され得る)ことによって、並列配置を生じ得るようにする。
【0021】
複合ギヤ比は、機械式トランスミッション27の別個のギヤ比および油圧式トランスミッション28の有効ギヤ比を変更することによって達成できるので、CVT26の入力および出力トルクならびに回転数特性を変更できる。例えば、リングギヤ35が地面に対して回転する回転数、およびキャリア33がリングギヤ35に対して回転する回転数が、太陽歯車37の回転速度を決定する。
【0022】
制御システム21は、機械10およびその構成部品の性能を監視しかつ修正し得る。特に、制御システム21は、回転数センサ46および制御装置48を含み得る。制御装置48は、通信回線50を介して回転数センサ46と、通信回線52を介して動力源24と、通信回線54を介してCVT26と、および通信回線56を介して操作者入力装置22と通信し得る。制御装置48はまた、液圧回路25および/または機械10の他の構成部品と通信し得るようにする(図示せず)。
【0023】
回転数センサ46を、機械出力部36の回転速度(すなわち、CVTの出力回転数)を感知するために配置し得る。回転数センサ46は、例えば、磁気ピックアップセンサ、回転エンコーダ、タコメータ、または対応する信号を生じるように構成された他のいずれかのタイプのセンサとして供し得る。回転数センサ46を、機械出力部36に関連したシャフトの近傍、または回転速度がCVTの出力回転数に関連している機械10の他のいずれかの構成部品(例えば、車軸、ホイール、ギヤ)の近傍に配置し得る。
【0024】
制御装置48は、単一のマイクロプロセッサ、または複数のマイクロプロセッサとして供し、それは、機械10の動作を制御する手段を含み得る。多数の市販のマイクロプロセッサを、制御装置48の機能を実行するように構成することができ、かつ制御装置48は、機械の多数の機能を制御可能な汎用の機械用マイクロプロセッサを容易に実装し得ることを理解されたい。制御装置48は、メモリ、二次記憶装置、プロセッサ、およびアプリケーションを実行する他のいずれかの構成部品を含み得る。種々の他の回路を制御装置48、例えば、電源回路、信号調整回路、データ収集回路、信号出力回路、信号増幅回路、および当分野で知られている他のタイプの回路に関連させ得る。
【0025】
制御装置48は、1つ以上のマップを制御装置48の内部メモリ内に記憶させて含み得る。これらのマップのそれぞれは、表、グラフ、および/または式の形態のデータの集合を含み得る。図3に示すように、制御装置48は、CVT出力回転数および/または機械対地速度に応じて動力源の回転数制限値(すなわち、動力源の回転出力の最大回転数)を制御するのに有用な少なくとも1つのマップ58を含み得る(CVT出力回転数および機械対地速度は双方とも、回転数センサ46から受信した信号を使用して測定可能であるかまたは計算可能であり、およびCVT出力回転数は容易に機械対地速度に変換可能であるかまたはその逆が可能である)。実際の(または現在の)動力源の回転数は、動力源の回転数限界値を下回る可能性があるが、上回ることはないようにする。マップ58は、複数の速度モード、例えば、低速モード60、中速モード62、および高速モード64の動力源の回転数限界値を指定し得る。速度モードは機械対地速度および/またはCVT出力回転数に直接関連し得る。例えば低速、中速および高速モード60、62、および64は、それぞれ約0〜8、8〜25、および19〜40km/時の対地速度に関連し得る(速度モードはまた、CVT出力回転数に関して表され得る)。例えば、低速モード60または中速モード62を使用するとき、制御装置48は実際の動力源の回転数を、動力源の回転数限界値までであるがそれを超えないように調整できるようにする。さらに、少なくとも1つの速度モード、例えば、高速モード64において、制御装置48が、CVT出力回転数に基づいて実際の動力源の回転数(または動力源の回転数コマンド)を制御し得るようにする。例えば、制御装置48は、実際の動力源の回転数を動力源の回転数限界値にするためのエンジン回転数コマンドを与え得る(操作者はもはや操作者入力装置22を用いて実際の動力源の回転数を直接制御することはない)。それゆえ、高速モード64では、操作者入力装置22は、CVT26の出力トルクを制御し得る。各回転数範囲を最適にして機械10の効率および応答性を最大にするようにする。
【0026】
低速モード60において、かつ機械対地速度が約0kphであるとき、動力源の回転数限界値を、動力源の最大定格回転数、例えば、約1700rpmに設定し得る。機械対地速度0kphにおいて動力源の回転数限界値を最大にすることは、液圧回路25における作動液の流れを高める可能性を生じ得る。低速モード60では、動力源の回転数限界値の傾向は一般的に、機械対地速度が増加するにつれて、速度8kphにおいて約1600rpmに到達するまで低減される。実際の動力源の回転数が動力源の回転数限界値をトラッキングしている場合、制御装置48は、機械走行速度を増大させる一方、油圧式トランスミッション28の有効ギヤ比を変更することによって実際の動力源の回転数(単一の別個のギヤ比)を低減させるようにする。例えば、操作者が操作者入力装置22を十分に作動させ(例えば、ペダルが完全に押し下げられる)、それゆえ実際の動力源の回転数に動力源の回転数限界値をトラッキングさせるようにする場合、制御装置48は、機械走行速度を増大させる一方、同時に、キャリアギア33の回転速度が変化するよりも速い速度で(ポンプ38を介して)リングギヤ35の回転速度を変更することによって、動力源の回転数を低減させる。制御装置48は、現在選択されている別個のギヤ比とは無関係に油圧式トランスミッション28の有効ギヤ比を継続的に調整して、指定された動力源の回転数の軌跡を達成するか(例えば、機械対地速度に応じた動力源の回転数の増大、動力源の回転数の低減、または一定の動力源の回転数)、または制御装置48の別の予め定められた制御目標に適合する(例えば、作業器具の動作に利用可能な指定の推進、指定のトルク、指定の燃料効率、および/または指定の出力)いずれかの複合ギヤ比を生じ得る。
【0027】
中速モード62では、動力源の回転数限界値を、実質的に一定のレベル、例えば、約1600rpmに設定し得る。1600rpmの動力源の回転数限界値は、単機能作業器具サイクル時間を達成するのに役に立ち得る。制御装置48が中速モード62から高速モード40に切り替わる(それゆえ各速度モードで使用される動力源の回転数限界値間で切り替わる)機械走行速度は、機械10の加速度および/または操作者入力装置の作動の程度(例えば、ペダルの押し下げ量)に依存し得る。機械の加速度を、回転数センサ測定値または他の適切な手段から計算し得るようにする。
【0028】
例えば、機械10が小さな加速および/または少量の操作者入力装置の作動を受けている場合、制御装置48は低い機械対地速度(例えば、約19kph)において中速モード62から高速モード64に切り替わる。あるいは、機械10が大きい加速および/または大量の操作者入力装置の作動を受けている場合、制御装置48は、より高い機械対地速度(例えば、約25kph)で中速モード62から高速モード64に切り替わる。中速モード62の動力源の回転数限界値から高速モード64の動力源の回転数限界値へのこの切り替えの遅れにより、厳しい加速条件下においても燃料効率を高めかつ機械の推進を増大させることができる。高加速条件中に使用される中速モード62のセクション(例えば、約19〜25kphのセクション)の動力源の回転数限界値は、19kphにおける約1600rpmから25kphにおける約1700rpmに増大し得る。
【0029】
高速モード64では、機械10が小さな加速および/または少量の操作者入力装置の作動を受けている場合(例えば、約19〜25kphのセクション)、実際の動力源の回転数は、実質的に一定のレベル、例えば、約1300rpmに設定され得る。高速モード64の上方セクション(例えば、約25〜40kphのセクション)では、動力源の回転数限界値は、対地速度に応じて増大し得る。動力源の回転数限界値は、機械対地速度に応じて増大し得るCVT26の損失特性をオフセットするために、増大する軌跡を取り得る。動力源の回転数限界値は40kphで約1700rpmの値まで増大し得るようにする。さらに、動力源の回転数限界値は、40kph超の速度と同じ割合で増大し続けるか、あるいは、1700rpmで水平状態になり得るようにする。低速モード60、中速モード62、および高速モード64における動力源の回転数限界値の増大および/または低減は全て、ほぼ線形であるか、または他のいずれかの適切な軌跡によって規定され得る。
【0030】
マップ58の各速度範囲は、機械式トランスミッション27の、別個の1つのギヤ比に関連し得る。例えば、低速モード50は、第1の別個のギヤ比に関連し、中速モード62は第2の別個のギヤ比に関連し、および高速モード64は第3の別個のギヤ比に関連する。制御装置48は、機械走行速度、現在選択されている別個のギヤ比、または双方に基づいてマップ58において複数の速度モード間で切り替わるようにする。
【産業上の利用可能性】
【0031】
上述の制御システムは、動力源の制御が望まれるどの機械にも適用することができる。上述の制御システムは、対地速度に応じて動力源の回転数限界値を変更して燃費を削減する一方、機械の推進を最大にし得る。制御システム21の動作を以下説明する。
【0032】
一例では、機械10の操作者は操作者入力装置22を作動し、それゆえ機械の動きを要求する。操作者入力装置22は通信回線56を介して操作者要求を制御装置48に送信し、制御装置48は信号を、要求された動力源の回転数および動力源トルクに変換する。次いで制御装置48は、要求された動力源の回転数をマップ58と参照させて、要求された動力源の回転数が動力源の回転数限界値を確実に超えないようにする。制御装置48は、実際の動力源の回転数を、低速モード60の動力源の回転数限界値までであるがそれを超えない、要求された動力源の回転数に設定し得る。
【0033】
機械の動作中、制御装置48は回転数センサ46と連続的に通信して機械対地速度および/またはCVT出力回転数を決定する。機械対地速度が約8kphに到達するとき、制御装置48は、低速モード60の動力源の回転数限界値から中速モード62の動力源の回転数限界値に切り替わり得る。低速モード60から中速モード62への移行時に、制御装置48はまた、第1の別個のギヤ比から第2の別個のギヤ比への切り替えを命令し得る。
【0034】
中速モード62を実行している間、操作者は、実際の動力源の回転数を、動力源の回転数限界値までであるがそれを超えない値に継続的に自由に調整する。約19kphの機械対地速度に到達すると、制御装置48は回転数センサ46と通信を行う。制御装置48は回転数センサ46からの情報を使用して、機械10が加速中であるかどうか判定する。制御装置48はまた操作者入力装置22と通信して、操作者入力装置の作動の程度を判定する。機械10が閾値加速度超である場合および/または操作者入力装置22が閾値の作動量超である場合、制御装置48は、中速モード62の動力源の回転数限界値を、より高速の機械対地速度、例えば、25kphを達成するまで継続的に使用し得る。あるいは、機械10が閾値加速度を下回る場合および/または操作者入力装置22が閾値の作動量を下回る場合、制御装置48は、約19kphで高速モード64の動力源の回転数限界値に切り替わる。中速モード62から高速モード64への移行時には、制御装置48が、第2の別個のギヤ比から第3の別個のギヤ比への切り替えを命令し得るようにする。
【0035】
高速モード64を実行している間、制御装置48は、実際の動力源の回転数を動力源の回転数限界値にして、操作者入力装置22がCVT26の出力トルクのみを制御するようにする。しかしながら、動力源の回転数限界値曲線全体は、機械10に加えられるまたは機械10が受ける負荷に依存して拡大または縮小し得る(例えば、高速モード64の動力源の回転数限界値を表す図3の曲線全体は、上昇または下降し得る)ようにする。例えば、(例えば、作業器具16の使用に起因する)機械負荷の増大は、動力源の回転数限界値の曲線全体を拡大させる原因となり、かつ負荷の減少はその縮小の原因となり得る。制御装置48は、中速モード62または低速モード60のいずれかに関連する対地速度範囲まで機械対地速度が低減するまで、高速モード64に留まり得る。
【0036】
上述の制御システムのいくつかの利点が実現され得る。特に、上述の制御システムは、作業器具に関連したポンプの流れを増大させるために、操作者がより低速の対地速度において実際の動力源の回転数を制御できるようにすることによって生産性および応答性を増大させる。しかしながら、制御装置は、実際の動力源の回転数をより高速において強制的に動力源の回転数限界値にすることによって、最大の効率および推進を保証することができる。さらに、動力源の回転数限界値は、機械対地速度またはCVT出力回転数に応じて変化して、動力源およびCVTの組み合わせの特定の損失特性を適合するようにし得る。
【0037】
当業者には、本発明の範囲を逸脱することなく上述の制御システムに種々の変更および修正をなし得ることが理解される。本願明細書で説明した制御システムの詳細および実例を考慮すれば、制御システムの他の実施形態は当業者には明白である。例えば、上述のCVTの代わりにいかなる代替的なCVTも使用することができ、かつ全ての速度範囲は実際上の別個のギヤ比に関連させることができる。詳細および例は例示であると考えられるべきであり、真の範囲は以下の特許請求の範囲およびそれらの等価物に示されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源(24);
動力源の出力部(30)に結合されたCVT(26);および
動力源およびCVTと通信する制御装置(48)
を含み、制御装置が、複数の速度モードを備えるマップ(58)を含み、および制御装置が、複数の速度モードの少なくとも1つに対して、CVT出力回転数または対地速度の少なくとも一方に基づいて、実際の動力源の回転数を変更するように構成されている、パワートレーン制御システム(21)。
【請求項2】
マップが、複数の速度モードのそれぞれに対する動力源の回転数限界値を含む、請求項1に記載のパワートレーン制御システム。
【請求項3】
複数の速度モードの少なくとも1つが高速モード(64)を含み、かつ動力源の回転数限界値が、高速モードでは対地速度に応じて増大する、請求項2に記載のパワートレーン制御システム。
【請求項4】
制御装置が高速モードを実行するときにのみ、制御装置が、CVT出力回転数に基づいて実際の動力源の回転数を変更するように構成される、請求項3に記載のパワートレーン制御システム。
【請求項5】
制御装置が高速モードを実行するときに、CVTの出力トルクを制御するように構成された操作者入力装置(22)をさらに含む、請求項4に記載のパワートレーン制御システム。
【請求項6】
複数の速度モードが低速モード(60)および中速モード(62)を含み、かつ制御装置が低速モードおよび中速モードの一方を実行するとき、制御装置により、実際の動力源の回転数の調整が可能になる、請求項1に記載のパワートレーン制御システム。
【請求項7】
操作者入力装置をさらに含み、制御装置が、機械の加速または操作者入力装置の作動の程度の少なくとも一方に依存して、中速モードから高速モードへ切り替わるように構成されている、請求項6に記載のパワートレーン制御システム。
【請求項8】
CVTがさらに、油圧式トランスミッション(28)と並行して動作される機械式トランスミッション(27)を含み、かつ機械式トランスミッションが複数の別個のギヤ比を含み、複数の別個のギヤ比のそれぞれが複数の速度モードの1つに関連する、請求項1に記載のパワートレーン制御システム。
【請求項9】
回転出力を生成すること;
回転出力を、CVT(26)を駆動するように導くこと;
CVT出力回転数を測定すること;
測定したCVT出力回転数に基づいて回転出力の実際の回転数を変更すること
を含み、実際の回転数の変更が、複数の速度モードの少なくとも1つを実行するときに発生する、機械の制御方法。
【請求項10】
測定されたCVT出力回転数に基づいて回転出力の最大回転数を制限することをさらに含む、請求項9に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2010−540860(P2010−540860A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−526959(P2010−526959)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【国際出願番号】PCT/US2008/011163
【国際公開番号】WO2009/045326
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(391020193)キャタピラー インコーポレイテッド (296)
【氏名又は名称原語表記】CATERPILLAR INCORPORATED
【Fターム(参考)】