説明

動脈瘤治療システム、デバイスおよび方法

【課題】動脈瘤のみをカバーするように正確に配備され、目標動脈瘤に隣接する血管または副枝血管に与える干渉を制限することができる血管内動脈瘤治療デバイスを提供することにある。
【解決手段】頭蓋内血管のような主要血管内の動脈瘤を治療する閉塞システム、閉塞方法および閉塞装置。本発明の手段により治療できる動脈瘤の種類として、膨張動脈瘤(真性動脈瘤とも呼ばれる)、血管壁の層が部分的に離層された解離性動脈瘤および球状嚢(これも血管壁により形成されている)に流体的に連結された基血管の比較的小さい開口により形成された「偽」動脈瘤と呼ばれるものがある。閉塞システムは、基血管内に配備されかつ動脈瘤への流体流を制限するように構成された閉塞デバイスを有している。デバイスのパッチは、動脈瘤のネックをカバーする。システムは、パッチと一定の関係を有しかつデバイスの軸線方向および回転方向の位置決めができるマーカを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動脈瘤を治療するシステム、装置またはデバイスおよび方法に関する。より詳しくは、本発明の実施形態は、少なくとも一部に動脈瘤を含む頭蓋内血管系内に配備されて動脈瘤を治療できる閉塞システムに関する。
【背景技術】
【0002】
動脈瘤を治療する幾つかの方法が臨床的に使用されており、成功の度合いが異なっている。例えば、開頭術は、血管外から動脈瘤の位置を見定め、治療を行う手術である。この形式の手術は大きい欠点を有している。例えば、開頭術を受ける患者は、全身麻酔を受けなくてはならない。また、外科医は動脈瘤に到達するのに種々の組織を切断しなければならないという事実から、患者は動脈瘤の領域内に大きな傷を受ける。例えば大脳動脈瘤の治療では、外科医は、一般に患者の頭蓋の一部を除去しなければならずかつ動脈瘤に到達するには脳組織も傷付けなくてはならない。
【0003】
動脈瘤の治療に使用される他の技術は、血管内から行われる。このような技術は、一般に、動脈瘤の嚢内にマスを形成する試みを含んでいる。一般に、動脈瘤へのアクセスにマイクロカテーテルが使用される。マイクロカテーテルの遠位側チップは動脈瘤の嚢内に配置され、マイクロカテーテルは、動脈瘤の嚢内に塞栓物質を射出するのに使用される。塞栓物質として、例えば着脱可能なコイルがある。これらの形式の塞栓物質の射出は欠点を有し、これらの欠点の大部分は、塞栓物質が動脈瘤から出て、基動脈内に移動することを伴うことにある。これは、基動脈の永久的かつ不可逆的な塞栓を引き起こす。
【0004】
動脈瘤を治療する他の血管内技術として、動脈瘤のネックを通る血流を制限するデバイスの使用がある。動脈瘤は、しばしば、副枝血管および側枝血管に近接または隣接して位置する。血管に近接する形態の動脈瘤は、この方法で動脈瘤を治療することにより塞栓される。したがって、デバイスを正確に配置できることは、治療が成功を収めるために重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,972,027号明細書
【特許文献2】米国特許第6,602,282号明細書
【特許文献3】米国特許第6,077,297号明細書
【特許文献4】2007年6月12日付米国特許第7,229,413号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような血管内デバイスは、動脈瘤のみをカバーするように正確に配備され、目標動脈瘤に隣接する血管または副枝血管に与える干渉を制限することが有利である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
簡単にいえば一態様では、本発明は円筒状の血管内動脈瘤治療デバイスに関する。本発明のデバイスは、流体流制限部分すなわちパッチを備えた拡大可能なスリーブすなわちスカフォードを有し、パッチは、スリーブが血管内に配備されたときにスリーブの少なくとも一部を通る流体流を阻止するようにスリーブ上に配置される。またデバイスは、スリーブ上に配置された1つまたは複数の放射線不透過性マーカを有し、該マーカは、血管系内にスリーブを配備すると例えばX線透視装置によりマーカを観察する間にパッチの正確な方向を決定できるように、パッチに対して一定の関係を有している。
【0008】
他の態様では、本発明は、拡大可能なスカフォードを備えた頭蓋内動脈瘤治療デバイスに関する。スカフォードは流体流制限パッチを備え、該パッチは、スカフォードの非周方向部分を通る流体流を阻止する。また、スカフォードは、パッチに関して非対称的に定められた関係を有する放射線不透過性マーカを有している。該マーカは、パッチの位置を決定すべく大脳血管系内にスカフォードを配備する間に観察されるように構成されている。 更に別の態様では、本発明は、動脈瘤好ましくは頭蓋内動脈瘤を治療する方法に関する。この方法の段階として、拡大可能なスカフォードを備えた動脈瘤治療デバイスを、流体流を制限する非周方向に配置されたパッチおよび該パッチに対して一定の関係を有する放射線不透過性マーカと組み合わせて用意する段階を有している。この方法の他の段階は、動脈瘤への流体流を制限する位置において動脈瘤に隣接してパッチを配置すべく、放射線不透過性マーカの位置を同時的にモニタリングする間に、動脈瘤を患う患者の血管系内にデバイスを配備する段階である。この方法はまた、動脈瘤への体液を制限することにより動脈瘤を治癒できるようにする段階を有している。
【0009】
一態様では、この治癒段階は、ポリマー、種々の種類および状態の金属、または当業界で知られている他の塞栓材料のような動脈瘤充填用塞栓材料を用いることなく達成される。
【0010】
他の態様では、本発明は動脈瘤デリバリシステムに関する。動脈瘤デリバリシステムは、流体流を制限する非周方向に配置されたパッチおよび該パッチに対して一定の関係を有する放射線不透過性マーカと組み合わされる拡大可能なスカフォードを備えた動脈瘤治療デバイスと、動脈瘤への流体流が制限されるように、動脈瘤治療デバイスを患者の血管系内に配備する手段とを有している。
【0011】
他の態様では、本発明は、拡大可能なスカフォードを備えた頭蓋内動脈瘤治療デバイスに関する。スカフォードは、該スカフォードの非周方向部分を通る流体流を阻止する流体流制限パッチを有している。また、スカフォードは、パッチに対して非対称的に形成されたエコー源性(echogenic)マーカを有している。このマーカは、パッチの位置を決定すべく頭蓋内血管系内にスカフォードを配備する間に観察できる構成を有している。
【0012】
下記図面、詳細な説明および特許請求の範囲の記載により、本発明を以下に例示する。幾つかの図面は、視覚的印象と例えばX線透視装置を用いて見たデバイスとの組合せとして示された構造および関係を発明者が視覚化したものであると理解されたい。換言すれば、ひとたびデバイスが血管内に配置されると、視覚的モニタリングはもはや不可能になり、例えばマーカのようなX線透視により視認できる特徴が、モニタリングできる全てである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1A】本発明の少なくとも1つの実施形態による動脈瘤治療デバイスを示す斜視図である。
【図1B】本発明の少なくとも1つの実施形態による図1Aのデバイスを示す長手方向端面図である。
【図2A】本発明の少なくとも1つの実施形態による動脈瘤治療デバイスに使用するスリーブ型スカフォードを示す斜視図である。
【図2B】図2Aのスカフォードを示す展開図である。
【図3A】本発明の少なくとも1つの実施形態による、内部配置型パッチを備えた動脈瘤治療デバイスを示す斜視図である。
【図3B】本発明の少なくとも1つの実施形態による図3Aのデバイスを示す長手方向端面図である。
【図4A】本発明の少なくとも1つの実施形態による、1対のパッチを備えた動脈瘤治療デバイスを示す斜視図である。
【図4B】本発明の少なくとも1つの実施形態による図4Aのデバイスを示す長手方向端面図である。
【図5A】本発明の少なくとも1つの実施形態による、スカフォードが一体成形されたパッチを備えた動脈瘤治療デバイスを示す斜視図である。
【図5B】本発明の少なくとも1つの実施形態による図5Aのデバイスを示す長手方向端面図である。
【図6】本発明の少なくとも1つの実施形態による、パッチの形状を確立するスカフォードが一体成形されたパッチを備えた動脈瘤治療デバイスを示す斜視図である。
【図7A】大脳動脈内の動脈瘤を示すグラフィック図である。
【図7B】図7Aに示した動脈瘤に配備された動脈瘤治療デバイスを示すグラフィック図である。
【図8A】重大フレーム、中間フレームおよび長期治療時間フレームを有する動脈瘤部位に配備された動脈瘤治療デバイスを示すグラフィック図である。
【図8B】重大フレーム、中間フレームおよび長期治療時間フレームを有する動脈瘤部位に配備された動脈瘤治療デバイスを示すグラフィック図である。
【図8C】重大フレーム、中間フレームおよび長期治療時間フレームを有する動脈瘤部位に配備された動脈瘤治療デバイスを示すグラフィック図である。
【図9】動脈瘤治療システムが配備された大脳動脈瘤部位を示す断面図である。
【図10A】本発明の少なくとも1つの実施形態による放射線不透過性マーカを備えたアンカット移植フレームを示す斜視図である。
【図10B】本発明の少なくとも1つの実施形態による、頂側放射線不透過性マーカを備えた動脈瘤治療デバイスを示す斜視図である。
【図10C】本発明の少なくとも1つの実施形態により血管内に正しく配置された動脈瘤治療デバイスを示す図面である。
【図10D】図10Cの動脈瘤治療デバイスを示す他の斜視図である。
【図10E】本発明の少なくとも1つの実施形態により血管内に正しくなく配置された動脈瘤治療デバイスを示す図面である。
【図10F】図10Eの動脈瘤治療デバイスを示す他の斜視図である。
【0014】
【図11A】本発明の少なくとも1つの実施形態による放射線不透過性マーカを備えたアンカット移植フレームを示す斜視図である。
【図11B】本発明の少なくとも1つの実施形態による、両側の放射線不透過性ーカを備えた動脈瘤治療デバイスを示す斜視図である。
【図12A】本発明の少なくとも1つの実施形態による放射線不透過性マーカを備えたアンカット移植フレームを示す斜視図である。
【図12B】本発明の少なくとも1つの実施形態による、頂側放射線不透過性マーカおよびパッチの中間点に向かって延びている突出部を備えた動脈瘤治療デバイスを示す斜視図である。
【図12C】図12Aの形状を有するデバイスが正しく配備されたところを示すグラフィック斜視図である。
【図12D】図12Cの動脈瘤治療デバイスを示す他の斜視図である。
【図12E】図12Cの動脈瘤治療デバイスを示す他の斜視図である。
【図13A】本発明の少なくとも1つの実施形態による放射線不透過性マーカを備えた移植フレームを示す図面である。
【図13B】本発明の少なくとも1つの実施形態による、頂側放射線不透過性マーカおよびパッチの縁部に向かって延びている複数の突出部を備えた動脈瘤治療デバイスを示す斜視図である。
【図14A】本発明の少なくとも1つの実施形態による、パッチの周囲延びているマーカを備えた動脈瘤治療デバイスを示す斜視図である。
【図14B】図14Aの形状を有する正しく配備されたデバイスのグラフィック斜視図である。
【図14C】図14Aの形状を有する正しく配備されたデバイスのグラフィック側面図である。
【図15】本発明の少なくとも1つの実施形態による、全パッチをカバーするマーカを備えた動脈瘤治療デバイスを示す斜視図である。
【図16A】本発明の少なくとも1つの実施形態による、スカフォードの少なくとも一部に配置された他のマーカ形状を示す斜視図である。
【図16B】図16Aの形状を備えた配備デバイスを示す種々のグラフィック斜視図および側面図であり、図16Bは正しく配置されたデバイスを示す図面である。
【図16C】図16Aの形状を備えた配備デバイスを示す種々のグラフィック斜視図および側面図であり、図16Cは正しく配置されたデバイスを示す図面である。
【図16D】図16Aの形状を備えた配備デバイスを示す種々のグラフィック斜視図および側面図であり、図16Dは正しくなく配置されたデバイスを示す図面である。
【図16E】図16Aの形状を備えた配備デバイスを示す種々のグラフィック斜視図および側面図であり、図16Eは正しくなく配置されたデバイスを示す図面である。
【図17A】本発明の少なくとも1つの実施形態による、スカフォードの少なくとも一部に配置された他のマーカ形状を示す斜視図である。
【図17B】本発明の少なくとも1つの実施形態による、スカフォードの少なくとも一部に配置された他のマーカ形状を示す斜視図である。
【図17C】図17Bの形状を備えた配備デバイスを示す種々のグラフィック斜視図および側面図であり、図17Cは正しく配置されたデバイスを示す図面である。
【図17D】図17Bの形状を備えた配備デバイスを示す種々のグラフィック斜視図および側面図であり、図17Dは正しく配置されたデバイスを示す図面である。
【図17E】図17Bの形状を備えた配備デバイスを示す種々のグラフィック斜視図および側面図であり、図17Eは正しくなく配置されたデバイスを示す図面である。
【図17F】図17Bの形状を備えた配備デバイスを示す種々のグラフィック斜視図および側面図であり、図17Fは正しくなく配置されたデバイスを示す図面である。
【図18A】本発明の少なくとも1つの実施形態によるガイドワイヤの機械的インターロック部分を示す斜視図である。
【図18B】本発明の少なくとも1つの実施形態によるガイドワイヤの機械的インターロック部分に取付けられたデバイスを示す側面図である。
【図19A】本発明の少なくとも1つの実施形態による、拘束カテーテルまたは同様な構造をもたない機械的インターロッキングガイドワイヤ上の配備前のデバイスを示す斜視図であり、デバイス縮小状態に維持されているところを示す。
【図19B】本発明の少なくとも1つの実施形態による部分的に配備された型デバイスを示す斜視図である。
【図19C】完全に配備された図19Aおよび図19Bのデバイスを示す斜視図である。
【図20】本発明の少なくとも1つの実施形態による、パイロットインジケータを備えた他のデバイス形状を示す斜視図である。
【0015】
【図21A】本発明の少なくとも1つの実施形態による全体として尖った形状を有するパイロットインジケータを備えたクリンプすなわち縮小されたデリバリワイヤの遠位端を示す斜視図である。
【図21B】本発明の少なくとも1つの実施形態によるデリバリワイヤおよびパイロットインジケータの他の形状の遠位端を示す斜視図である。
【図21C】本発明の少なくとも1つの実施形態によるパイロットインジケータの他の形状を有する図21Bと同じ形状のデリバリワイヤの、それぞれ配備前および配備後の状態を示す斜視図である。
【図21D】本発明の少なくとも1つの実施形態によるパイロットインジケータの他の形状を有する図21Bと同じ形状のデリバリワイヤの、それぞれ配備前および配備後の状態を示す斜視図である。
【図22】図21Dのデリバリワイヤの遠位端、移植およびパイロットインジケータの組合わせを示す斜視図である。
【図23A】本発明の少なくとも1つの実施形態による、それぞれデリバリワイヤおよびデバイスインターロック機構の他の実施形態を示す斜視図である。
【図23B】本発明の少なくとも1つの実施形態による、それぞれデリバリワイヤおよびデバイスインターロック機構の他の実施形態を示す斜視図である。
【図24A】本発明の少なくとも1つの実施形態による、それぞれデリバリワイヤおよびデバイスインターロック機構の他の実施形態を示す斜視図である。
【図24B】本発明の少なくとも1つの実施形態による、それぞれデリバリワイヤおよびデバイスインターロック機構の他の実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1つの特徴を簡単に説明すると、本発明の少なくとも1つの実施形態による動脈瘤治療デバイス10が、図1および図3-図6に示されている。デバイス10(選択的閉塞デバイス(selective occlusion device:SOD)とも呼ばれる)は、デリケートな血管構造を膨張させかつ損傷を与える、一層の悪化力を除去することによりおよび組織を治癒しかつ病気でない状態および歪んでいない状態にすることにより、主として動脈瘤を治療するように設計されている。本発明の種々の実施形態により治療可能な動脈瘤の種類として、膨張動脈瘤(真性動脈瘤とも呼ばれる)、血管壁の層が部分的に離層された解離性動脈瘤および球状嚢(これも血管壁により形成されている)に流体的に連結された基血管の比較的小さい開口により形成された「偽」動脈瘤と呼ばれるものがある。
【0017】
デバイス10は、スカフォード12と、流体流制限領域すなわちパッチ14と、放射線不透過性マーカ16とを有している。図2Aおよび図2Bに示された例示のスカフォード12は、複数の曲がりくねったリングセグメント18を有している。セグメント18は、少なくとも1つのS字状リンク20により互いに連結されている。スカフォード12の種々の適当な例示実施形態が上記特許文献1および2に開示されている。尚、これらの特許文献1および2は、その全体を本願に援用する。Advantec Durafrex設計と、Scimed RADIUS設計とを組み合わせた構造を考えることもできる。セグメント18、20は半径方向に拡大可能であり、このことは、セグメントが小径の形状から半径方向に拡大した一般に円筒状の形状に変換できることを意味している。拡大形状は、プロテーゼが所望の目標部位に移植されたときに達成される。
【0018】
デバイス10は、該デバイスを所定位置に係止(アンカー)すると同時に、動脈瘤の嚢すなわちキャビティへの開口を通る流れを遮断する膜を支持するのに最小の半径方向外向き力で済むように設計された自己拡大型スカフォード12である。自己拡大材料の使用により、配備中に周囲の血管に殆ど損傷を与えることがなく、かつ必要に応じてデバイス10を再固定および再配置することができる。スカフォード12は、デリバリワイヤを安定して保持しかつ配備カテーテルを前進させることにより再配置される。スカフォード12を配備するには、デリバリワイヤを安定して保持しかつカテーテルを引き戻す。デリバリワイヤは、100%より小さく拡大した後に、スカフォードの捕捉を維持するように設計できる。この場合、医療専門家(一般的には、インターベンション神経放射線科医)が、動脈瘤または周囲の血管に対するデバイスの配置が不充分であると感じるときは、スカフォードを、デリバリワイヤを介してカテーテル内に引き戻すことができる。スカフォードがその意図した拡大状態を超えて拡大された場合には、スカフォードは復元できない。
【0019】
スカフォード12は、例えば頭蓋内動脈瘤に通じる曲がりくねった血管系を通して操縦するのに有利な高いフレキシビリティを有する支持フレームであるのが好ましい。好ましい材料としてニチノール(Nitinol:登録商標)のようなニッケルチタン合金がある。他の材料として、ステンレス鋼、タンタル、種々の形態のコバルト/クロム合金、例えばポリ-ラクティック−コ−グリコール酸(poly-lactic-co-glycolic acid:PLGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリドキサノン(PDO)等の種々のポリマー、および他の種々の適当な自己拡大型剛性および/またはフレキシブル材料がある。或いは、スカフォードは、少なくとも一部をエコー源性材料から形成できる。
【0020】
頭蓋内血管系は非常にデリケートである。したがって、デバイス10は、血管壁に最小圧力を加える機構を用いて配給(デリバリ)される。半径方向外向き力は入念に制御され、これにより血管壁への損傷が最小になる。また、デバイス10の形状は、動脈瘤の近くまたは動脈瘤に隣接した血管への流体のアクセスを可能にし、このため、重要な脳組織への血流を可能にする。血管開口すなわち動脈瘤のアクセスポートへのパッチ14の正確な配置が、X線透視装置を介して視認される放射線不透過性マーカ16により案内される現場回転(in-situ rotation)により達成される。或いは、超音波を用いてエコー源性マーカを視認することもできる。
【0021】
図2Aおよび図2Bに示すように、スカフォードの形状には閉セル設計が採用されている。スカフォード12は低プロファイルを有し、これは、血管内の血流の遮断を最小にする点で有益である。デバイス10は、血管の内周に基づいて種々のサイズに製造される。動脈瘤の位置により、血管のサイズは大きく異なっている。小さいサイズは、頭蓋内動脈瘤に特に有効である。本発明の目的から、頭蓋内動脈瘤には、頸動脈を含む、大動脈弓より上位の血管系内に位置する動脈瘤が含まれる。配備後の周囲は約2.0mmから約6.0mmの範囲内にある。配備後の周囲は、病んだ血管の内周に基づいて、約2.0mmより小さくするか、約6.0mmより大きくすることができる。デバイス10の長さは、約15mmから約20mmの範囲内にある。また、デバイス10の長さは、約15mmより小さくするか、約20mmより大きくすることができる。完全配備時のスカフォード12の長さ変化は、配備前の長さの約5%-約25%の間にある。スカフォード12の長さの変化は、配備前の形状から20%より小さいことが好ましい。
【0022】
スカフォード12の流体遮断パッチすなわち流体流制限パッチ14の表面積は、理想的には動脈瘤開口またはアクセス領域のみに跨る最小面積に維持される。適当なパッチ材料として、パリレン、ポリシロキサン、シリコーン、ポリウレタン、PTFEおよび他の生体安定性ポリマーおよび材料がある。適当な材料は、長期の血液相容性または体液相容性を有している。可能性あるパッチ材料の他の特徴は、損傷なく装填、保管および配備が行えるようにフレームに強力に接着される、定常的に制御可能な厚さを有する高度にフレキシブルな膜として適用できることである。現行の技術として、エレクトロ-スピニング、ディップコーティング、キャスティングおよび従来技術で広く知られている他の技術がある。最小の非全周パッチ14のサイズの他の利益は、全周に配置されるパッチと比較してスカフォード12の剛性を低減でき、したがってスカフォード12のフレキシビリティを向上できることである。
【0023】
図3-図6を参照すると、SOD10の他の実施形態が示されている。スカフォード12に対するパッチ14の配置は変えることができる。少なくとも1つの実施形態では、パッチ14は、スカフォード12の内面上に配置される(図3Aおよび図3B)。他の実施形態は、1対のパッチ14を有している(図4Aおよび図4B参照)。1対のパッチ14の形状は均一であるのが好ましく、一方のパッチは図1Aに示すようにスカフォードの外面上に配置され、第2のパッチは図3Aに示すようにスカフォードの内面上に配置される。
【0024】
更に別の実施形態(図5Aおよび図5B)では、パッチ22は、前の実施形態のようにスカフォードの頂に配置されるのではなく、スカフォード12と一体に形成されている。パッチ22は生体安定性ポリマーから形成され、スカフォード12上の所望位置にプレスされる。この実施形態は、図5Bから理解されようが、デバイス10のドラフト厚さを制限できる長所を有する。パッチ22の厚さは、スカフォード12とほぼ同じであるか、スカフォードより小さく、このため血管を通って流れる血液に与える作用を制限できる。他の実施形態(図6)では、パッチ24はスカフォード12と一体に成形されている。パッチ24の形状は、セグメント18、20により制限される。
【0025】
動脈瘤治療デバイス10の近位端26および遠位端28には、1対の放射線不透過性マーカ16が配置されている。マーカ16は、配備中の膜14の回転位置を表示すべく、デバイス10に配置される。スカフォード12の近位端26および遠位端28には、X線透視マーカ16として機能するプラチナが埋入される。放射線不透過性材料とスカフォード12とを組合せる広範囲の方法を考えることができ、例えば合金形成、めっき、コーティング、物理的蒸着、接着および当業界で広く知られた他の適当な方法がある。しかしながら、この設計には剛性が付加されるため、放射線不透過性を得るにはプラチナの薄い層が好ましい。他の方法として、スカフォードに放射線不透過性コイルを取付けて、放射線不透過性を得ることもできる。この実施形態では、マーカは、回転位置決めを補助できると同時に、X線透視装置または現場放射線不透過性マーカを視認する他の方法を用いて視認できるように配向される。放射線不透過性材料は、遠位側および近位側セグメント18の外面の1/2に配置される。マーカ16は、デバイス10の対向端部26、28および対向側部30、32に配置される。遠位側マーカ16は頂側30に配置され、一方、近位側マーカ16は底側32に配置される。マーカ16の配置は、パッチ14に対して定められた関係を有し、血管系内にスリーブ10を配備したときにパッチ14の位置を決定する。他の放射線不透過性構造を考えることもでき、それらの幾つかをより完全に後述する。
【0026】
図7Aおよび図7Bを参照すると、動脈瘤の一例が示されている。主血管34、動脈瘤嚢36および隣接血管38が示されている。方向矢印は、主血管34を通って動脈瘤嚢36および隣接血管38の両方に流れる血流を示している(図7A)。デバイス10を動脈瘤の側部に配備すると、血液が動脈瘤嚢36内に流入することが防止される(図7B)。特に留意すべきは、隣接血管38の開口が動脈瘤嚢36の開口に直接対向していることである。この例では、デバイス10は、非全周に配置されたパッチ、すなわちスカフォード12上で360°の全周流体流制限パッチすなわちゾーンより非常に小さいゾーンをカバーするパッチを有している。本願において非全周とは、スカフォード12の内面または外面の360°より小さい周囲、場合によっては流体制限パッチ14によりカバーされた周囲を意味する。周方向カバーの度合いは、流体を制限すべき動脈瘤開口の半径方向幅により決定される。周方向閉塞の度合いを決定する基準のフレームは、基血管の内面からである。かくして、例えば、30°、60°90°および360°より僅かに小さい、内在するスカフォードの半径方向周囲(subtended radial circumference)、例えば大きい動脈瘤開口を本発明により考えることができる。
【0027】
ここで図8A-図8Cを参照すると、デバイス10の配備後の動脈瘤嚢36の生理学的進行の一例が示されている。これらの図面は、SOD10により治療されている動脈瘤嚢すなわち血管膨張36の例示であり、SOD10の配備に対して動脈瘤が如何に反応するかを示している。SOD10は大脳動脈34内に配備されている。配備直後(図8A)は、動脈瘤嚢36は、その最大かつ重大な状態にある。図8Bは配備後の中間的な時間経過した状態を示し、ここでは、嚢36は、動脈瘤への血流の欠乏によりサイズが縮小している。時間が経過すると、動脈瘤の壁のリモデリング(再造形)と結合した嚢36内のクロットの分解がほぼ完了し、動脈瘤嚢36の更なる縮小が生じる(図8C)。
【0028】
デバイス10の配備により、隣接血管38への血流を阻止することなく動脈瘤の治療が行われる。フレームの遠位端および近位端に配置された放射線不透過性マーカ16(図1A、図3A、図4A、図5Aおよび図6参照)は、動脈瘤嚢36に対するデバイス10(したがってパッチ12)の軸線方向位置を医者に表示することができる。これは、デバイスが頭蓋内に配備される場合に特に重要である。頭蓋内血管内の血流が好ましくなく制限されると、患者に重大な破壊的作用を及ぼすため、デバイス10の適正な配置を行うことは重大である。図9は配備されたデバイス10を示す側面図であり、低プロファイルデバイス10により血流の遮断が最小になっているところが図式に示されている。デバイス10のパッチ22(図5A参照)は、嚢36内への血流を制限しかつ血管34を通る血流の制限は最小に留めるように位置決めされている。
【0029】
ここで図10-図17を参照すると、種々の形態の放射線不透過性マーカ16を備えたデバイス10の幾つかの実施形態が示されている。マーカ16は、デバイス10を配備するときに医者へのガイダンスを与え、これにより膜14の正しい回転位置決めが行えるようにしている。医者のような医療専門家は、X線透視装置を用いてデバイスを視認できる。X線透視装置の好ましい方向は、しばしば特定の医者の好みに基づいて定められる。しかしながら、図10Dには、X線透視装置の考えられる1つの有効な方向が示されている。
【0030】
図10A-図10Fを参照すると、他のX線透視装置用マーカ構成が示されている。移植フレーム40(図10A)には、スカフォード12上にマーカ16の形状を表わす回転感応パターンが設けられている(図10B参照)。マーカ41は回転感応パターンを表示する。デバイス10が回転されると、マーカの長さは、方向により長くなるか、短くなる。医者が動脈瘤のプロファイルを視界に入れていると仮定すると、示唆される理想的な方向は、マーカ16が視認されるときに最短となりかつ動脈瘤と同じ側にある。対応する動脈瘤治療デバイス10が提供される(図10B参照)。この実施形態は、図1Aと比較して同様なマーカ16を有しているが、該マーカ16はデバイス10の頂側30に配置され、180°の弧を形成している。一方の弧16が遠位端28のセグメント18の1/2を包囲し、これに対して近位側の弧16は周囲の他の1/2を包囲する。図10Cおよび図10Dは、デバイス10の正しい配置、すなわちパッチ14が動脈瘤ネックを横切って位置決めされ、これにより動脈瘤嚢36内への血流を防止する配置を示す。デバイスが回転されると、膜は動脈瘤から離れた正しくない位置に位置決めされる(図10Eおよび図10F参照)。これとは別に、図11Bは、代わりの放射線不透過性パターンを有するデバイス10に対応する、移植フレーム12の放射線不透過性パターンを示している(図1Aおよび図11B)。
【0031】
図12A-図12Eを参照すると、動脈瘤治療デバイス10に設けられた更に別の放射線不透過性パターンが示されている。移植フレーム40は、遠位端26および近位端28に沿って延びる全体としてT型のパターンを有し、T型の底はフレーム40の長手方向軸線上で延びている。遠位側および近位側の両マーカ41はフレーム40の頂側30に配置されている。「T」の形状は、回転位置に対するパッチ14の位置を表示する。スカフォード12の対応する放射線不透過性パターンは図10Bと同じであり、頂側30に近い2つのセグメント20の付加マーカを備えている(図12B参照)。図12Cおよび図12Dにはデバイス10の正しい現場配置が示され、図12Eにはデバイス10の正しくない現場配置が示されている。
【0032】
図13Aおよび図13Bによれば、他の放射線不透過性パターンが提供される。このパターンは、全体としてU型の形状を有している。スカフォード12は図10Bと同じパターンを有し、デバイス10の対向側部には2つのセグメントの付加マーカが設けられている(図12B参照)。別の構成として、放射線不透過性マーカ16はパッチ14上に配置できる。パッチ14の輪郭を含む種々のパターンが考えられる(図14A参照)。図14Bおよび図14Cには、図14Aに示した実施形態の正しい現場配置が示されている。更に別の実施形態では、パッチ14の全体が放射線不透過性材料により具現されている。
【0033】
更に別の実施形態では、デバイス10は図16Aに示すような他の放射線不透過性パターンを有している。デバイスの適正な現場配置が図16Bおよび図16Cに示されている。デバイス10の付加回転によりデバイスは正しくなく配置され、図16Dおよび図16Eには現場描写が示されている。
【0034】
図17A-図17Fを参照すると、デバイス10の他の実施形態が示されている。図17Bには、スカフォード12上の対応する放射線不透過性パターンが示されている。この特定パターンは、パターンの一部が、パッチ14が配置される箇所より近位側のスカフォード12上に全体的に配置されている点で前の実施形態とは異なっている。また、パッチ14に対応するパターンの形状は、図6のパッチ14と同様な形状を有している。また、図6のパッチ14を放射線不透過性材料中に埋入することも考えられる(図15)。図17Aおよび図17Bの適正な現場配置が、図17Cおよび図17Dに概略的に示されている。図17Cに示すようにデバイス10が回転されると、デバイスは正しくなく配置され、図17Eおよび図17Fには現場描写が示されている。
【0035】
上記放射線不透過性パターンの各々は、動脈瘤治療デバイス10の軸線方向位置並びに膜コンポーネントの回転方向を表示するマーカ16を示す。動脈瘤治療デバイス10は、遠位側部分に放射線不透過性パターンが見えるように部分的に配備され、膜が正しい方向に向くように回転され、次に完全に配備される。完全配備後に、近位端の放射線不透過性パターンを視認でき、回転位置のチェックを行うことができる。パッチ14に対するマーカ16の位置を知る医療専門家は、デバイス10を配備する間にマーカ16を観察し、これにより、パッチ14が、動脈瘤膨張部、球状部または他の嚢状構造体内への血流を制限しかつ嚢状構造体を治癒することを確保できる。本発明の種々の実施形態は、動脈瘤の膨張部すなわち嚢36内にポリマー、金属または他の任意の異物材料を配置する必要なく、動脈瘤の治療または再吸収を行うことができる。
【0036】
更に、医者が放射線不透過性パターンに基づいて血管内にデバイス10を適正に配置できるように現場回転方向を示すのに適した他の放射線不透過性パターンを考えることもできる。好ましいスカフォード形状に関して種々の実施形態を説明しかつ図示したが、本願で説明したように、他のスカフォード12の形状を考えることもできる。現場回転方向を示す他のスカフォード12およびパッチ14の形状に適用される放射線不透過性パターンを考えることもできる。また、当業者ならば、他の放射線不透過性パターンも存在しかつ膜の回転方向を示すのにSODフレームおよび/または膜に適用できることは理解されよう。
【0037】
治療デバイス10は、種々の方法で動脈瘤の部位に配給できる。好ましいデリバリ方法として、トルクワイヤベースデリバリシステムがある。近位側の回転力および挿入力を、動脈瘤部位での遠位側回転および変位に信頼性をもってかつ予測可能に伝達できるトルクワイヤの使用は、1つのデバイスデリバリアプローチである。他のアプローチとして、デバイスとトルクワイヤとの間の機械的ロック、またはワイヤに圧縮されたスカフォードを回転させるのに充分な付着力を有するが、カテーテルチップを通過して配備されるとスカフォードを離脱できる、ワイヤ上の接着性コーティング/発泡体がある。
【0038】
図18Aを参照すると、代表的なトルクベースガイドワイヤインターフェース42が示されている。図18Bの断面図には、スカフォード44に連結されたインターフェース42が示されている。上記特許文献3にはこのインターフェースシステムが開示されており、該特許文献3はその全体を本願に援用する。
【0039】
図19Aを参照すると、機械的インターロックを備えたトルクベースガイドワイヤインターフェース46の他の実施形態が示されている。インターフェース46は、配備前の形状である圧縮されたSOD10を有している。図19Bは、デリバリスリーブ48から延びておりかつデリバリワイヤ50上にクリンプされた、部分的に配備されたSOD10を示している。SOD10は、デリバリスリーブ48により半径方向に拘束される。
【0040】
図20に示すように、動脈瘤36に対するパッチ14の回転並進位置を識別する手段は、SOD10を制御する同じデリバリワイヤ50上でデバイス10の遠位側のインジケータ(単一または複数)52を有している。パイロットインジケータ52は、該インジケータ52の方向によりSOD10の方向が決定されるように配置される。ワイヤ50上でSOD10の前方にはマーカ52が配備されている。インジケータ52は、血管34の内径より小さい大きさに拡大する。これにより、(クリンプ位置と比較して)マーカ52のより良い解像度を維持しながら、デバイス10の自由回転を行うことができる。インジケータ52はデリバリカテーテル54の外部にあるが、SOD10は依然としてデリバリカテーテル54内に拘束されている。医者は、SOD10が配備されるときにパッチ14が血管34内の動脈瘤ネックをカバーするように、動脈瘤36に対してマーカ52を回転する。
【0041】
この場合、デリバリシステム56がひとたび大脳血管系34内で前進され、動脈瘤36の遠位側の所定位置を占めると、次のステップが遂行される。
A)デリバリワイヤ50のパイロットインジケータ56の一部を配備すべく、マイクロカテーテル54が引き戻される。
B)パイロットインジケータ52により案内されるSOD10が動脈瘤36と同じ位置を占めるまで、システム全体56(マイクロカテーテル、デリバリワイヤおよびSODを含む)が長手方向に移動される。
C)パッチ14を動脈瘤36の前方に適正に位置決めすべく、デリバリワイヤ50が、インジケータ52により示された動脈瘤36の方向に回転される。
D)満足できる位置に位置決めされたならば、デリバリワイヤ50に対してマイクロカテーテル54を引き戻し、SOD10を部分的に配備する。
E)デバイスマーカ52の位置に基づいて、回転方向および軸線方向の位置を調節する。
F)調節によりデバイス10の満足できる位置決めがなされない場合には、デバイス10を再捕捉する。この再捕捉は、デリバリワイヤ50を静止させ、その後にカテーテル54を前進させることにより行う。ステップDおよびステップEは、医者が、部分的に配備されたデバイス10の位置に満足するまで反復される。
G)デバイス10の満足できる配置が得られた後に、マイクロカテーテル54を引き戻して、デバイス10を完全に配備する。
H)マイクロカテーテル54、デリバリワイヤ50およびインジケータ52を引出す。
【0042】
ここで図21A-図21Dを参照すると、パイロットインジケータ52の種々の実施形態が示されている。図21Aは、全体として尖っているパイロットインジケータ52を備えたデリバリワイヤの遠位端66を示している。図21Bは、配備位置にあるデリバリワイヤ50およびパイロットインジケータ52の他の形状の遠位端66を示している。デリバリワイヤ50は遠位側チップ56を有し、該遠位側チップ56は曲った形状のパイロットインジケータを超えて延びている。図21Cおよび図21Dは図21Bと同じ形状のデリバリワイヤを示しており、パイロットインジケータ52は異なる形状を有している。図22は、図21Dデリバリワイヤ50と、機械的インターロック機構60の一実施形態と、デバイス10と、図21Dのパイロットインジケータ52との組合せを示し、これらの全ては配備された状態すなわち拡大された状態で示されている。
【0043】
図23Aおよび図23Bには、デリバリワイヤおよびデバイスインターロック機構62の他の実施形態が示されている。図18Aおよび図18Bには、ストラット間に嵌合される複数のスポークを備えた他の機械的インターロック機構が示されている。スポークは、ステントがカテーテルから押出されるときに早期配備を防止する。この機械的インターロック構成は、デバイス10を血管系内で軸線方向および回転方向に位置決めする他の手段である。
【0044】
図23Aおよび図23Bは、スポーク設計の適用を示す。遠位端66に補完対をなすスポーク64を設けることにより、ストラット68がきつくロックされ、デリバリワイヤ50の回転を可能にし、デバイス10を回転させる。近位端70では、ストラットは、1組のスポーク64と、延長部72を備えた1組のスポークとの間にサンドイッチされる。延長部72の非常に小さい部分は、完全に拡大したフレーム12と接触した状態に維持され、デリバリワイヤ50が復元する前に回転方向への小さい最終的調節を可能にする。
【0045】
図24Aおよび図24Bには、デリバリワイヤ50およびデバイスインターロック機構74の他の実施形態が示されている。この実施形態は、スカフォード12の近位端70および遠位端66でストラットを補完する、より簡単な機械的インターロック設計74である。図23Aおよび図23Bで説明した実施形態と非常に良く似ているように、インターロックは、スカフォード12の端部をきつくロックし、デリバリワイヤ50のあらゆる回転をスカフォード12の回転に伝達する。接着性を有し、しなやかで、焼結されまたは粗面化された表面を有し、前に配備されたデバイスを摩擦により回転移動させることができるデリバリワイヤを備えた、デバイス10の他の位置決め手段を考えることができる。デバイス10を位置決めする付加手段は、デバイス10の回転移動および軸線方向移動を可能にする。
【0046】
他の実施形態では、マーカ16は、エコー源性、したがって超音波視認可能に構成できる。エコー源性マーカ16は、パッチ14、スカフォード12またはパッチ14とスカフォード12との組合せにおいてコーティングの形態に構成できる。本願に開示された全ての放射線不透過性マーカ16が考えられ、エコー源性マーカ16として適している。また、エコー源性マーカが用いられるパッチ14の回転並進位置を識別する手段は、当業界で知られた医療用ソノグラフィック器械または他の超音波ベース診断器械のような超音波デバイスを用いて遂行される。また、スカフォード12および/またはパッチ14は、少なくとも一部をエコー源性材料から製造でき、したがって、マーカ16は、スカフォード12および/またはパッチ14の構造体内に埋入できる。また、パイロットインジケータ52にはエコー源性コーティングを設けるか、少なくとも一部をエコー源性材料から製造できる。エコー源性コーティングの例は、上記特許文献4に開示されており、該特許文献4はその全体を本願に援用する。当業界で知られておりかつ血管系内のデバイス10の軸線方向位置および回転方向位置を視覚化するのに適した他のエコー源性コーティングおよび材料を考えることもできる。
【0047】
本発明は、本明細書に開示された実施形態および説明に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に包含される実施形態の一部および異なる実施形態の要素の組合せを含むこれらの実施形態の変更形態をも包含するものである。
【符号の説明】
【0048】
10 動脈瘤治療デバイス
12 スカフォード
14 流体流制限領域(パッチ)
16 放射線不透過性マーカ
18 リングセグメント
20 S字状リンク
26 近位端
28 遠位端
40 移植フレーム
42 トルクベースガイドワイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の血管内動脈瘤治療デバイスにおいて、
拡大可能なスリーブを有し、該スリーブは、
流体流制限パッチを備え、該パッチは、スリーブが血管内に配備されたときにスリーブの一部を通る流体流を阻止するようにスリーブ上に配置され、前記デバイスは更に、
スリーブ上に配置された放射線不透過性マーカを有し、該マーカは、血管系内のスリーブの配備がパッチの位置を決定するように、パッチに対して一定の関係を有することを特徴とするデバイス。
【請求項2】
前記スリーブはフレキシブルであることを特徴とする請求項1記載のデバイス。
【請求項3】
前記スリーブは縮小可能かつ再位置決め可能であることを特徴とする請求項1記載のデバイス。
【請求項4】
前記パッチは、パリレン、ポリシロキサン、シリコーン、ポリウレタンおよびePTFEからなる群から選択されたポリマー材料または生体安定性材料からなる群から選択された材料からなることを特徴とする請求項1記載のデバイス。
【請求項5】
前記パッチは、スリーブ上で周方向および軸線方向の一部に配置されていることを特徴とする請求項1記載のデバイス。
【請求項6】
前記パッチは、スリーブの外側部分に配置されていることを特徴とする請求項1記載のデバイス。
【請求項7】
前記パッチは、スリーブの内側部分に配置されていることを特徴とする請求項1記載のデバイス。
【請求項8】
前記パッチは、スリーブと一体に形成されていることを特徴とする請求項1記載のデバイス。
【請求項9】
前記マーカはパッチ上に配置されていることを特徴とする請求項1記載のデバイス。
【請求項10】
デバイスは1対の対向端部を有し、マーカはパッチの対向端部に配置されていることを特徴とする請求項1記載のデバイス。
【請求項11】
前記マーカはパッチに関して非対称的に配置され、パッチは、特定の血管領域への流体流を制限するように構成されていることを特徴とする請求項1記載のデバイス。
【請求項12】
頭蓋内動脈瘤治療デバイスにおいて、
拡大可能なスカフォードを有し、該スカフォードが、
流体流制限パッチを備え、該パッチが、スカフォードの非周方向部分を通る流体流を阻止し、デバイスが更に、
パッチに関して非対称的に定められた関係を有する放射線不透過性マーカを有し、該マーカは、パッチの位置を決定すべく大脳血管系内にスカフォードを配備する間に観察されるように構成されていることを特徴とするデバイス。
【請求項13】
前記パッチは、パリレン、ポリシロキサン、ポリウレタンおよびePTFEからなる群から選択された生体安定性材料からなる閉塞膜であることを特徴とする請求項12記載のデバイス。
【請求項14】
前記スカフォードは、配備の後に血管内の寸法に定められることを特徴とする請求項12記載のデバイス。
【請求項15】
前記パッチはスカフォードの内側および外側の両方に配置されることを特徴とする請求項13記載のデバイス。
【請求項16】
前記マーカは、スカフォード上に部分的に配置された放射線不透過性コーティングであることを特徴とする請求項13記載のデバイス。
【請求項17】
前記マーカはパッチに一体化されていることを特徴とする請求項13記載のデバイス。
【請求項18】
a)拡大可能なスカフォードを備えた動脈瘤治療デバイスを、流体流を制限する非周方向に配置されたパッチおよび該パッチに対して一定の関係を有する放射線不透過性マーカと組み合わせて用意する段階と、
b)動脈瘤への流体流を制限する位置において動脈瘤に隣接してパッチを配置すべく、放射線不透過性マーカの位置を同時的にモニタリングする間に、動脈瘤を患う患者の血管系内に前記段階a)のデバイスを配備する段階と、
c)動脈瘤への減少した流体流に基づいて、動脈瘤を収縮できるようにする段階とを有することを特徴とする動脈瘤の治療方法。
【請求項19】
前記デバイスの配備前に、血管系内での回転移動を一層容易にすべくスカフォードを部分的に拡大する段階を更に有することを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記デバイスを配備する段階は、動脈瘤に隣接する血管への流体流の制限を回避するようにパッチを配置することからなることを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項21】
前記デバイスは、配備後は血管内の寸法を有することを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項22】
流体流を制限する非周方向に配置されたパッチおよび該パッチに対して一定の関係を有する放射線不透過性マーカと組み合わされる拡大可能なスカフォードを備えた動脈瘤治療デバイスと、動脈瘤への流体流が制限されるように、動脈瘤治療デバイスを患者の血管系内に配備する手段とを有することを特徴とする動脈瘤デリバリシステム。
【請求項23】
前記デバイスを配備する手段は、トルク伝達可能なガイドワイヤに取付けられた機械的インターロックであり、該インターロックは、血管内でのデバイスの回転および軸線方向位置決めができるように構成されていることを特徴とする請求項22記載のシステム。
【請求項24】
前記デバイスを配備する手段は、ガイドワイヤ上に配置された接着性を有するコーティングまたはしなやかなコーティングであり、該コーティングは、血管内でのデバイスの回転および軸線方向位置決めができるように構成されていることを特徴とする請求項22記載のシステム。
【請求項25】
前記マーカは放射線不透過性を有することを特徴とする請求項22記載のシステム。
【請求項26】
前記マーカはエコー源性を有することを特徴とする請求項22記載のシステム。
【請求項27】
前記パッチはエコー源性を有することを特徴とする請求項26記載のシステム。
【請求項28】
円筒状の血管内動脈瘤治療デバイスにおいて、
拡大可能なスリーブを有し、該スリーブは、
流体流制限パッチを備え、該パッチは、スリーブが血管内に配備されたときにスリーブの一部を通る流体流を阻止するようにスリーブ上に配置され、前記デバイスは更に、
スリーブ上に配置された放射線不透過性マーカを有し、該マーカは、血管系内のスリーブの配備がパッチの位置を決定するように、パッチに対して一定の関係を有することを特徴とするデバイス。
【請求項29】
デリバリワイヤを更に有し、該デリバリワイヤはこのチップより近位側に位置するパイロットインジケータを備え、該パイロットインジケータは、これを配置することによりパッチのおおよその位置および方向が決定されるように、パッチに対して一定の関係を有していることを特徴とする請求項28記載のデバイス。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図10E】
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【図10F】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図12D】
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【図12E】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図16C】
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【図16D】
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【図16E】
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【図17A】
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【図17B】
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【図17C】
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【図17D】
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【図17E】
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【図17F】
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【図18A】
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【図18B】
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【図19A】
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【図19B】
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【図19C】
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【図20】
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【図21A】
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【図21B】
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【図21C】
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【図21D】
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【図22】
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【図23A】
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【図23B】
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【図24A】
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【図24B】
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【公表番号】特表2012−524620(P2012−524620A)
【公表日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−507321(P2012−507321)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【国際出願番号】PCT/US2010/031764
【国際公開番号】WO2010/123911
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(511255753)レイク リージョン マニュファクチャリング インコーポレイテッド ディー/ビー/エイ レイク リージョン メディカル (2)
【Fターム(参考)】