説明

動脈硬化の検出装置

【課題】従来技術では、眼底像と同期させている心電図信号を得る場合に、被験者の身体数カ所に心電図信号取得用の電極を貼り付ける必要があり、煩雑である点と、心臓の脈動と眼底血管の脈動は、遠位である故の位相差が認められ、実際にタイミングを合わせることが当初考えたよりも若干困難であるという点。
【解決手段】パルスオキシメーターの脈波信号の検出機構と、これにより検出されたパルスオキシメーターの脈波信号に同期させた眼底像を検出可能な眼底像の検出機構を備えた、動脈硬化の検出装置を提供することで、上記の課題を解決可能であることを見出した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用装置に関する発明であり、さらに具体的には、生体シグナルの一種である、動脈血酸素飽和度(SpO)を反映したパルスオキシメーター信号と眼底像の組み合わせにより、被験者の動脈硬化を侵襲なく的確に検出することが可能な動脈硬化の検出装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
特に、今日の高齢化社会を考慮すると、「病気にならない状態」を如何に維持するかが、今後の医療費の抑制と個々人のQOL(Quality of Life)を向上させる上で最も重要な要素となることは明らかである。
【0003】
予防対象疾患の中でも、動脈硬化は、各種の生活習慣病と大いに関連しており、動脈硬化を予防することは、生活習慣病を予防することと同意であると言っても過言ではない。
【0004】
しかしながら、動脈硬化は、自覚症状が乏しく、現実に、糖尿病等の生活習慣病が顕在化してはじめて気づくのが現状である。さらに、血管造影等の本格的な動脈硬化の検査は、身体の負担を伴う傾向が強い。
【0005】
このような現状から、本発明者は、体内血管の状態を直接的に観察することが可能な眼底像に着目し、当該眼底像の情報を正確に把握することを目的として、眼底カメラを心電図信号と同期させて、眼底像の解析を行うことで、非侵襲で動脈硬化を検出可能なシステムを開発した(特許文献1)。
【特許文献1】特願2001−532658号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の先行技術は、今までの動脈硬化の診断についての考えを一変させることが可能な画期的な診断システムであることは疑いのないところであるが、プロトタイプ特有の改良点の検討を行うことも重要である。上記の先行技術において、改良点として考えられるところは、眼底像と同期させている心電図信号を得る場合に、被験者の身体数カ所に心電図信号取得用の電極を貼り付ける必要があり、煩雑である点と、心臓の脈動と眼底血管の脈動は、遠位である故の位相差が認められ、実際にタイミングを合わせることが当初考えたよりも若干困難であるという点が挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、この課題について検討を重ねた。その結果、動脈血酸素飽和度(SpO)を動脈血の光の吸収を指標として計測することが可能なパルスオキシメーターから得られる脈波信号も、心電図信号と同様に眼底血管の挙動と共通する周期性を有することに着目した。パルスオキシメーターの脈波信号は、一般的に心電図信号よりも簡便に取得することが可能であり、かつ、眼底とより近位の耳朶においても簡便に取得することが可能である。これらのことから、パルスオキシメーターの脈波信号を心電図信号に代えて用いることにより、上記の先行技術をさらに実用的に改良することが可能であることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、パルスオキシメーターの脈波信号の検出機構と、これにより検出されたパルスオキシメーターの脈波信号に同期させた眼底像を検出可能な眼底像の検出機構を備えた、動脈硬化の検出装置(以下、本検出装置ともいう)を提供する発明である。
【0009】
前述したように、パルスオキシメーターは、動脈血酸素飽和度(SpO)を簡便に計測するための計測機器である。酸素と結合しているヘモグロビン(酸化ヘモグロビン)に可視光線(660nm)を当てると赤く見えるのに対し、酸素と結合していないヘモグロビン(還元ヘモグロビン)は黒く見える。一方、赤外線(940nm)を当てると、酸化ヘモグロビンは黒く見え、還元ヘモグロビンは赤く見える。このような色の相違は、ヘモグロビン毎に吸光度が異なるために起こる現象である。このような特性を利用して、光の吸収(吸光度)を測定することで、酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンの割合が判明し、酸素飽和度が得られることとなる。しかしながら、光の吸収は動脈だけでなく、静脈や組織等でも起こるため、動脈のみを区別し、酸素飽和度を求める必要がある。ここで、動脈血は拍動によって吸光成分が変化しているため、全体の吸光成分から拍動していない成分(静脈や組織等)を差し引くことによって、SpOを求めることができる。パルスオキシメーターのプローブに付いているセンサ(発光部と受光部から構成されている)の発光部から、赤色光と赤外光の2波長光を数百回/秒の頻度で交互に発光させ、これにより得られる上記のように差し引き計算されてえら得た信号を基に、経時的にSpOを計測することが可能である。実際に、パルスオキシメーターにおいて表示されるSpOは、数秒間のSpOの平均値が表示されるが、本検出方法において用いられる「パルスオキシメーターの脈波信号」とは、このような平均値ではなく、上記センサから直接得られる脈波の信号である。当該脈波信号は、微弱な電気信号として得られるので、当該電気信号と、眼底像の情報を同期させることにより、本検出装置の目的を達成することができる。
【0010】
「パルスオキシメーターの脈波信号の検出機構」は、上述したように、可視光と赤外光を断続的に発光する発光部と、当該発光部から発光された光が、指尖、耳朶等の被験部位を透過して得られる透過光とその微弱な変化を感知して、当該変化を微弱な電流の変化に変換可能な光センサ機能を有する受光部を備えている。この微弱の電流の変化は、「位相変化する脈波信号」として表現されるが、当該脈波信号に対して、必要に応じた処理、上述のように静脈や組織の要素が差し引く演算処理や増幅処理が施されることも許容される。また、特定の位相を示す電気信号のみを感知して、外部に伝達する出力端子を用いることもできる。
【0011】
上記の「眼底像の検出機構」は、上記の「パルスオキシメーターの脈波信号の検出機構」により検出された脈波信号の特定の位相に同期させて、眼底像を検出可能な機構である。
【0012】
本発明において、「同期させる」とは、パルスオキシメーターの脈波信号における特定の位相に対して、一定のタイミングで眼底像の検出機構を呼応させて作動させることを意味する。例えば、パルスオキシメーターの脈波信号を構成する一つの波単位におけるいずれかの時点、例えば、当該波単位の立ち上がり時点から、一定のタイミングで眼底像の検出機構を作動させることを意味する。このタイミングは、一定に保たれており、かつ、パルスオキシメーターの脈波信号の同一のパターンが再び発生するタイミングよりも短いタイミングであれば、特に限定されない。このように、眼底像をパルスオキシメーターの脈波信号に同期させて検出することにより、眼底血管についての情報、具体的には、動脈硬化についての指標を得る上で不可欠な血管径についての情報を的確に得ることができる。すなわち、随時任意に撮影された眼底写真では、ウインドケッセル現象により、心臓の拡張と収縮に対応して変化する眼底血管径について、正確に評価することが困難であったが、眼底像をパルスオキシメーターの脈波信号に同期させて検出すれば、一定の脈波拍動タイミングにおける眼底血管像を得ることが可能であり、眼底血管径についても、正確な評価を行うことが可能となる。
【0013】
眼底像の検出手段として、眼底を撮影可能な機構を備えるカメラ(具体的には、いわゆる眼底カメラが挙げられる:アナログカメラであってもデジタルカメラであってもよい)が挙げられ、この場合には、パルスオキシメーターの脈波信号の特定の位相と同期してシャッターが下りるように設定されている。なお、人間の脈波の周期が通常、0.6〜1.0秒程度であることを考慮すると、好適には0.4秒に1回以上の頻度でシャッターが下り、かつ、シャッターが下りた時点と露光される時点の時差が可能な限り短いことが好適である。よって、技術的にこのような条件を満たすことが容易な、CCD等の撮像素子を用いたデジタルカメラであることが好適である。
【0014】
前述したように、本検出装置により、一定の脈動位相における眼底血管像を得ることが可能である。この眼底血管像から得られる情報を、被験者の動脈硬化の進展と関連付けることにより、被験者の動脈硬化の検出を行うことができる。この関連付けの具体的な手段は、特に限定されないが、眼底血管径についての情報が、被験者の動脈硬化を検出する上で、特に有力な情報となる。これらの眼底血管径についての情報を、従来の動脈硬化の判定基準、例えば、前述した、「1969年の文部省高血圧研究班の条件」、「K−W分類」、「Seheie分類」等にあてはめて、被験者の動脈硬化を検出することができる。
【0015】
本発明者は、眼底動脈と眼底静脈(本発明において、「眼底動脈」とは、医学用語にいう「網膜動脈」を意味し、「眼底静脈」とは、医学用語にいう「網膜静脈」を意味するものとする)の交叉部近傍における眼底静脈の狭窄の度合いが、動脈硬化の進展と関連付けることが可能な非常に有用な指標となり得ることを見出している。そして、一定の脈動位相における眼底血管像を得ることが可能な本検出装置は、この指標を得るために非常に有用である。
【0016】
この眼底静脈の狭窄の度合いは、本検出装置により得られる眼底像を、目視で直接観察することにより検出することも可能である。また、上述の眼底像の検出機構に、眼底静脈の狭窄を検出可能な、眼底静脈の狭窄の検出手段を設けて、この過程を自動化することもできる。この眼底静脈の狭窄の検出手段としては、例えば、スキャナー等に取り込まれることにより、電子情報に変換された上述の眼底像のデータを、検出するための手段がプログラミングされているソフトウエア(例えば、眼底静脈と眼底動脈の交叉部を検出するための手段及び/又は交叉部近傍における眼底静脈の狭窄の度合いを把握して算出するための手段等)を挙げることが可能であり、このようなソフトウエアで、上述の眼底像のデータを処理することにより、簡便かつ確実に、所望の眼底静脈の狭窄を検出することができる。
【0017】
ここで、本発明者が見出している、動脈硬化の進展を検出する上において有用な、眼底静脈の狭窄の指標について説明する。
【0018】
眼底動脈と眼底静脈の交叉部において、これらの眼底血管は、外膜同士を共有することが知られている。そして、かかる交叉部において、動脈硬化が認められる場合には、眼底動脈の内部が硬化を起こし、この動脈の内膜の硬化による「引きつれ力」により、眼底静脈が、交叉部近傍において狭窄を起こす。この引きつれ力による狭窄が著しいほど、交叉部近傍において、動脈の硬化が進展していることを表している。
【0019】
本発明者は、本来の眼底静脈の外径と、眼底動脈と眼底静脈の交叉部近傍における眼底静脈の外径との比(以下、Vレシオともいう)が、動脈硬化を示す眼底静脈の交叉部近傍における狭窄の指標として、極めて有用であることを見出している。
Vレシオは、以下のようにして算出する。
【0020】
図1は、眼底静脈の引きつれ狭窄が認められる、眼底動脈と眼底静脈の模式図であり、眼底動脈10の下側を眼底静脈20が交叉し、交叉部30近傍において、眼底動脈10の内膜が硬化を起こし(図示せず)、その硬化による引きつれ力により、眼底静脈20の交叉部30近傍における狭窄が認められる。
眼底動脈10の外径をΦAとして、交叉部30から、眼底静脈20の末梢側に3×ΦA程度離れた部位を確認して、その位置の眼底静脈20の外径を、交叉部30において引きつれ狭窄が全く認められない場合の眼底静脈の外径とみなして、これをV2として、交叉部30の眼底動脈10の直側部(例えば、交叉部30から1/10×ΦA程度の距離)の眼底静脈20の外側径をV1とする。
【0021】
この場合のV1とV2の比(通常は、V1/V2)を、Vレシオとして算出する。Vレシオ(V1/V2)が小さい程、交叉部30近傍における、眼底動脈10の硬化が進展していることを示し、動脈硬化のリスクが高いことを表している。
【0022】
図2は、眼底動脈11の血管内膜の硬化が、交叉部31より、少しズレた方向に拡がっている場合(硬化部分:111及び112)を示す模式図であり、眼底静脈21において、交叉部31近傍で、引きつれ力が互い違いに働いた結果、眼底静脈21が交叉部31近傍で、位置のズレを起こしていることを示している。
【0023】
このような場合には、上述したVレシオ(V1/V2)を、若干補正する必要がある。具体的には、交叉部31において、眼底動脈11を挟んだ、眼底静脈21の左右の外径の中央を結んだベクトル線(211)が、眼底静脈21の外径の0.5〜1.0倍ズレている場合には、上述したVレシオの値から0.1を引いた補正値を動脈硬化の検出に用いるべきVレシオとする。また、上記の外径のズレが、眼底静脈21の外径の1.0倍を超えてズレている場合には、上述したVレシオの値から0.2を引いた補正値を動脈硬化の検出に用いるべきVレシオとする。
【0024】
好ましくは、複数(3か所程度)の、乳頭部より1乳頭径以上離れた眼底動脈と眼底静脈の交叉部における、Vレシオの平均値を算出して、これを被験者のVレシオとして、動脈硬化の検出指標とすることができる。
【0025】
このVレシオ等により求められる、眼底動脈と眼底静脈の交叉部近傍における眼底静脈の狭窄の度合いを、複数の被験者の年令に応じて標準化処理して得られる標準化情報と、被験者各々における前記の狭窄の度合いとを関連付けて、被験者各々の動脈の老化の程度(血管年令)を検出することも可能である。
【発明の効果】
【0026】
本発明により、従来よりも、被験者の身体的な負担を軽減することが可能であり、かつ、実施態様によっては、検出の精度を向上させることが可能な、眼底像の変化を指標として、動脈硬化を検出することができる装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図3は、本検出装置の構成を示すブロック図である。
図3において、本検出装置40は、パルスオキシメーターの脈波信号の検出部41、当該脈波信号の感知部42及び眼底像の検出部43で構成されている。
【0028】
さらに、パルスオキシメーターの脈波信号の検出部41は、プローブ411及び増幅部412で構成されている。また、感知部42は、波形解析処理部421及び出力部422で構成されている。さらに、眼底像の検出部43は、入力部431、波形信号感知・伝達部432、シャッター機構433、撮像部434、光電変換部435、出力部436及び解析部437で構成されている。
【0029】
パルスオキシメーターの脈波信号の検出部41において、プローブ411は、これを、SpOを計測すべき身体部位に装着して使用する。計測すべき身体部位としては、指尖又は耳朶が挙げられるが、眼底から近位にあり、脈波と眼底血管の動きの間にタイムラグが少なく、精度の高い検出を行うことが容易であるという点から耳朶を選択することが好適である。プローブ411は、装着する身体部位によって、当該部位における装着に適した形態を有するが、概ね、(1)外部からの光を遮断するための遮光機能、(2)可視光と赤外光を交互に被験部位に向けて照射するための発光部、(3)被験部位を透過した、前記の可視光と赤外光を受光し、その強度と変化を微弱電流に変換させる光センサ機能を有する受光部、が備わっている。
【0030】
図4は、耳朶に装着可能な態様のプローブ411を示した解説図である。図4において、被験者Aの耳朶4111を包み込むように、遮光カバー4112が装着され、実質的にプローブ411からの光漏れがない状態で、耳朶4111から脱落しないように固定されている。遮光カバー4112の内部には、電送線4113からの電流により、赤外光(940nm)と可視光(660nm)を交互に連続的に数百回/秒の頻度で発光させることが可能な発光部4114と、上記の赤外光と可視光を感知し、これらの強度と変化を微弱電流として変換して出力することが可能な受光部4115が、耳朶4111の表裏のいずれか一方別々に装着されている。前述のように、発光部4114から発光した赤外光と可視光は、それぞれ、耳朶4111を、矢印4116の方向に進み、その過程で、耳朶の中の毛細動脈、毛細静脈及び組織において一部吸収され、その残光が受光部4114にて感受後、微弱な電気信号に変換され、電送線4117を介して、増幅部412に伝達される。
【0031】
増幅部412は、前記のようにプローブ411で検出されたパルスオキシメーターの脈波信号(電気信号)の増幅処理を行う機構である。
【0032】
感知部42において、波形解析処理部421は、増幅部412において増幅処理されたパルスオキシメーターの脈波信号(電気信号)に対して、本発明において必要な脈波の選択処理を行う機構である。例えば、当該脈波における特定の位相を示す脈波信号(電気信号)を、後述するシャッター機構433への信号として用いる場合には、当該脈波の特定のピーク波における特定のタイミング(例えば、当該ピーク波の立ち上がりから一定時間後)を、特異的に選択処理する機構である。具体的には、特定のパルスオキシメーターの脈波信号の特定のタイミングの信号を特異的に増幅処理するための、フィルタアンプ等の選択的増幅手段を、波形解析処理部421に備えることができる。また、必要に応じて、選択的増幅手段により選択増幅されたアナログの脈波信号をデジタル化するための、A/D変換機構を波形解析処理部に設けることもできる。また、吸光全体から、耳朶の微細静脈や組織の吸光成分を差し引く処理を行う機能を、当該処理部421に設けることもできる。
【0033】
出力部422は、波形解析処理部421において、選択的に増幅されたパルスオキシメーターの脈波信号を、眼底像検出部43に向けて出力するための機構(例えば、出力端子等)である。
【0034】
眼底像の検出部43において、入力部431は、出力部422から出力された選択的に増幅されたパルスオキシメーターの脈波信号を、この検出部に入力するための機構(例えば、入力端子等)である。波形信号感知・伝達部432は、入力部431から入力される脈波信号を感知して、これを適切なON/OFF信号として、シャッター機構433に伝達する機構である。このシャッター機構433には、前記ON/OFF信号の「ON」信号を感知して(特定の脈波信号に対応したパルス信号等)、撮像部434を作動させ、同「OFF」信号(前記パルス信号以外の状態等)に対しては撮像部434の作動を抑制する手段が備わっている。すなわち、この撮像部434は、特定のパルスオキシメーターの脈波信号に同期したタイミングにのみ、作動して、被験者の眼底を撮像することができる。なお、この撮像部433には、通常の眼底カメラが具備する、被験者の眼底を撮像するための機構、例えば、接眼レンズ、光源、アライメント機構、画角調整機構等を、必要に応じて具備していることは勿論である。
【0035】
撮像部434において、特定のパルスオキシメーターの脈波信号に同期して撮像された眼底像の光情報は、光電変換部435において電気情報に変換され(アナログ情報であってもデジタル情報であってもよい)、この電気情報が出力部436において出力され(例えば、モニター像やプリンター像)、撮像時点での眼底像が測定者に提供される。また、この電気情報を解析部437で、適切な解析をすることによって、前記眼底像の情報を、さらに有益な情報へと変換することができる。この有益な情報とは、例えば、被験者の、前述したVレシオ、さらには血管年令等が挙げられる。解析部437には、適切なソフトウエア、例えば、眼底動脈と眼底静脈の適切な交叉部を選択するためのソフトウエア、前記交叉部からVレシオを算出するためのソフトウエア及び前記Vレシオから血管年令を算定するためのソフトウエア等を挙げることができる。
【0036】
このようにして、本検出装置40では、パルスオキシメーターの脈波信号の検出部41において、被験者から検出される当該脈波信号が、当該脈波信号の感知部42で、特定の脈波の位相に応じたタイミング処理がなされ、この特定のタイミングに基づく電気信号を、眼底像の検出手段と同期させる。このことにより、ウインドケッセル現象に左右されない安定した眼底像を、眼底像の検出部43により得ることが可能である。この安定した眼底像から得られる、必要に応じた適切な演算処理を施した情報により、被験者の動脈硬化に関連する情報を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】眼底静脈の引きつれ狭窄が認められる、眼底動脈と眼底静脈の模式図である。
【図2】、眼底動脈の血管内膜の硬化が、交叉部より、少しズレた方向に拡がっている場合を示す模式図である。
【図3】本検出装置の構成を示すブロック図である。
【図4】パルスオキシメーターのプローブを耳朶に装着する場合の態様を示した図面である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルスオキシメーターの脈波信号の検出機構と、これにより検出されたパルスオキシメーターの脈波信号に同期させた眼底像を検出可能な眼底像の検出機構を備えた、動脈硬化の検出装置。
【請求項2】
前記検出装置のパルスオキシメーターの脈波信号の検出機構が、当該信号の取得を、ヒト耳朶から行うことが可能な手段を備えた検出機構である、請求項1記載の動脈硬化の検出装置。
【請求項3】
眼底像の検出機構に、眼底動脈と眼底静脈の交叉部近傍における眼底静脈の狭窄を検出可能な、眼底静脈の狭窄の検出手段を設けた、請求項1又は2記載の動脈硬化の検出装置。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−253485(P2008−253485A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−98277(P2007−98277)
【出願日】平成19年4月4日(2007.4.4)
【出願人】(507023692)株式会社網膜情報診断研究所 (1)
【Fターム(参考)】