説明

動脈硬化検出装置

【課題】短時間で正確に、しかも被検体に大きな負担を課さずに直接的な動脈硬化の診断を行なうことが可能な動脈硬化検出装置を提供する。
【解決手段】血管径の数値シミュレーションを行なう数値シミュレーション部812と、被検体に送信された超音波のエコーデータに基づいて血管径を計測する径計測部82と、前記数値シミュレーション部812で得られた血管径と前記径計測部82で得られた血管径との差を算出する差分算出部83と、この差分算出部83で算出された差に基づいて動脈硬化に関する評価を行なう評価部84と、この評価部84による評価結果を表わす画像が表示される表示部と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動脈硬化を検出する動脈硬化検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、動脈硬化を診断する手法として血液検査による手法があるが(例えば、特許文献1参照)、この手法は間接的な手法に過ぎないため、直接的に動脈硬化を診断する手法が試みられている。この直接的な動脈硬化の診断手法としては、例えば脈波伝播速度PWV(Pulse Wave Velocity)を計測して診断を行なう手法や、一心拍の血圧変動に対応する血管径の変化に基づいて算出されるStiffness Parameter βに基づいて診断を行なう手法や、被検体の上腕動脈においてカフなどによって血流を一時遮断し、開放後の血管径増加率を%FMD(Flow−Mediated Dilation)として計測し診断を行なう手法などが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−169696号公報
【特許文献2】特開2004−105549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、PWMを計測して診断する手法では、伝播速度が互いに異なる弾性血管と筋性血管とを区別せずに計測を行なっているため正確な診断を行なうことが困難であるなどの問題がある。また、Stiffness Parameter βに基づいて診断を行なう手法では、計測に要する時間が20〜30分と長いことなどが問題である。また、%FMDを計測する手法においても、検査に時間がかかるという問題や、検査者間、検査施設間において再現性が低いといった問題がある。さらに、上述の三つのいずれの手法も被検体の動脈を遮断する必要があり、被検体に対する負担が重い。
【0005】
このようなことから、短時間で正確に、しかも被検体に大きな負担を課さずに直接的な動脈硬化の診断を行なうことが可能な装置が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、第1の観点の発明は、 血管径の数値シミュレーションを行なう数値シミュレーション部と、被検体に送信された超音波のエコーデータに基づいて血管径を計測する径計測部と、前記数値シミュレーション部で得られた血管径と前記径計測部で得られた血管径との差を算出する差分算出部と、この差分算出部で算出された差に基づいて動脈硬化に関する評価を行なう評価部と、この評価部による評価結果を表わす画像が表示される表示部と、を備えることを特徴とする動脈硬化検出装置である。
【0007】
第2の観点の発明は、第1の観点の発明において、前記数値シミュレーション部は、血管壁の壁面モデルとしてフォークトモデルを適用して数値シミュレーションを行なうことを特徴とする動脈硬化検出装置である。
【0008】
第3の観点の発明は、第2の観点の発明において、前記数値シミュレーション部による数値シミュレーションは、血管壁に血流の圧力がかかった場合の前記フォークトモデルにおける血管壁の変位を算出し、該変位を初期の血管径に加算して、血管径の算出を行なうものであることを特徴とする動脈硬化検出装置である。
【0009】
第4の観点の発明は、第2、3の観点の発明において、前記フォークトモデルにおいて並列に接続されたバネとダンパーにおける弾性係数及び粘性係数は、被検体の血管壁について、年代別に実験的に得られた値であることを特徴とする動脈硬化検出装置である。
【0010】
第5の観点の発明は、第1〜4のいずれか一の観点の発明において、前記数値シミュレーション部は、前記エコーデータに基づく超音波画像における血管に設定された計算格子において数値シミュレーションを行なうことを特徴とする動脈硬化検出装置である。
【0011】
第6の観点の発明は、第5の観点の発明において、前記超音波画像において特定される血管に前記計算格子を設定する計算格子設定部を備えることを特徴とする動脈硬化検出装置である。
【0012】
第7の観点の発明は、第1〜6のいずれか一の観点の発明において、前記径計測部は、超音波画像において特定された血管の径を計測することを特徴とする動脈硬化検出装置である。
【0013】
第8の観点の発明は、第1〜7のいずれか一の観点の発明において、前記評価結果を表わす画像は、前記エコーデータに基づく超音波画像上に表示されることを特徴とする動脈硬化検出装置である。
【発明の効果】
【0014】
上記観点の発明によれば、前記数値シミュレーション部で得られた血管径と前記径計測部で得られた血管径との差に基づく動脈硬化に関する評価結果を表わす画像が表示されるので、医師等の診断者は、短時間で正確に、しかも被検体に大きな負担を課さずに直接的な動脈硬化の診断を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態における超音波診断装置の概略構成の一例を示すブロック図である。
【図2】エコーデータ処理部と制御部の詳細構成を示すブロック図である。
【図3】動脈硬化に関する評価を表わす画像の作成及び表示と、血流の速度及び圧力の算出のフローチャートである。
【図4】1心周期における血圧の変動を示す図である。
【図5】計算格子の設定の説明図である。
【図6】フォークトモデルを示す図である。
【図7】数値シミュレーション部で得られた血管径と径計測部で得られた血管径との差が閾値を超えた部分にカラー画像が表示された表示部の一例を示す図である。
【図8】変形例におけるエコー処理部と制御部の詳細構成を示すブロック図である。
【図9】変形例における作用を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図1〜図6に基づいて詳細に説明する。図1に示す超音波診断装置1は、超音波プローブ2、送受信部3、エコーデータ処理部4、表示制御部5、表示部6、操作部7及び制御部8を備える。前記超音波診断装置は、本発明における動脈硬化検出装置の実施の形態の一例である。
【0017】
前記超音波プローブ2は、生体組織に対して超音波の送受信を行なう。また、前記送受信部3は、前記超音波プローブ2を所定のスキャンパラメータで駆動させてスキャン面を走査させる。そして、前記送受信部3は、前記超音波プローブ2で得られたエコー信号について、整相加算処理等の信号処理を行なう。
【0018】
前記エコーデータ処理部4は、図2に示すようにBモード処理部41及びドプラ処理部42を有する。前記Bモード処理部41は、前記送受信部3から出力されたエコー信号に対し、対数圧縮処理、包絡線検波処理等のBモード処理を行ない、Bモードデータを作成する。また、前記ドプラ処理部42は、前記送受信部3から出力されたエコー信号に基づいてドプラデータを作成する。ドプラデータには、流速データ、分散データ及びパワーデータが含まれる。
【0019】
具体的には、前記ドプラ処理部42は、前記送受信部3から出力されたエコー信号に対し、直交検波処理を行ない、MTIフィルタ(Moving Target Indication Filter)でMTI処理してエコーのドプラ信号を求め、さらにMTI処理後の信号に対し、自己相関演算を行なう。そして、自己相関演算結果から平均流速と、流速の分散と、パワーとを求める。
【0020】
前記表示制御部5は、前記Bモードデータに対し、スキャンコンバータ(Scan Converter)による走査変換を行なってBモード画像データを作成し、このBモード画像データに基づくBモード画像を前記表示部6に表示させる。ただし、前記表示制御部5は、Bモード画像データの作成に加え、前記ドプラデータに対してスキャンコンバータによる走査変換を行なってドプラ画像データを作成し、このドプラ画像データに基づくドプラ画像を表示させるようになっていてもよい。
【0021】
また、前記表示制御部5は、後述するように動脈硬化の指標を表わす画像を前記表示部6に表示させるようになっている。
【0022】
前記表示部6は、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)などで構成される。前記操作部7は、操作者が指示や情報を入力するためのキーボード及びポインティングデバイス(図示省略)などを含んで構成されている。
【0023】
前記制御部8は、特に図示しないがCPU(CentRal Processing Unit)を有して構成される。この制御部8は、前記HDD9に記憶された制御プログラムを読み出し、前記超音波診断装置1の各部における機能を実行させる。
【0024】
前記制御部8の詳細構成について説明すると、この制御部8は、計測融合シミュレーション部81、径計測部82、差分算出部83及び評価部84を有している。そして、前記計測融合シミュレーション部81は、計算格子設定部811、数値シミュレーション部812及びフィードバック部813を有している。これら各部の説明は後述する。ちなみに、前記径計測部82は本発明における径計測部の実施の形態の一例であり、前記差分算出部83は、本発明における差分算出部の実施の形態の一例である。また、前記評価部84は本発明における評価部の実施の形態の一例であり、前記数値シミュレーション部812は、本発明における数値シミュレーション部の実施の形態の一例である。
【0025】
さて、本例の超音波診断装置1の作用について説明する。本例の超音波診断装置1においては、超音波の送受信を行なってエコーデータを取得し、前記Bモードデータ及び前記ドプラデータを作成する。これらBモードデータ及びドプラデータは、図示しないRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等のメモリ、HDD(ハードディスクドライブ:Hard Disk Drive)などに記憶される。そして、これらBモードデータ及びドプラデータを用いて、動脈硬化に関する評価を表わす画像を作成して表示し、さらには血流の速度や圧力を算出する。
【0026】
動脈硬化に関する評価を表わす画像の作成及び表示と、血流の速度及び圧力の算出について、図3に示すフローチャートに基づいて説明する。この図3に示すフローチャートでは、1心周期につき、S1〜S4の各ステップをNループ繰り返す。図4は、1心周期における血圧の変動を表わすグラフであり、前記S1〜S4の各ステップをNループ繰り返すことにより、1心周期における各時点の血圧の血管径、血流の速度及び圧力が算出され、1心周期で拡張及び収縮する血管における血管径、血流の速度及び圧力が、1心周期についてN回算出される。
【0027】
各ステップについて具体的に説明すると、先ずステップS1では、前記数値シミュレーション部812が血管径の数値シミュレーションを行なって血管径Xsを算出し、前記径計測部83がBモード画像における血管径Xmの計測を行なう。ここでは、前記血管径Xs,Xmとして、血管の直径を算出及び計測するものとする。
【0028】
前記数値シミュレーション部812による数値シミュレーションについて具体的に説明する。前記数値シミュレーション部812による数値シミュレーションを行なうにあたり、先ず前記計算格子設定部811は、図5に示すようにBモード画像BGにおいて特定される血管blの上半分における所定の領域Rに計算格子Ci(i=1〜n(n:自然数))を設定する。血管blの特定はBモードデータに基づいて行なわれる。ちなみに、Bモード画像BGにおいて血管blは周囲よりも輝度が低いため、Bモードデータにおいて血管blの特定が可能である。なお、Bモード画像データに基づいて血管blの特定が行なわれてもよい。
【0029】
前記数値シミュレーション部812は、血流の圧力によって血管壁の変位x(i)が生じ、初期半径rs(i)の状態から半径rs(i)となった場合のこの半径rs(i)を算出する。すなわち、下記の(式1)により、半径rs(i)を算出する。
rs(i)=rs(i)+x(i) ・・・(式1)
半径rs(i)の算出は、各計算格子Ci毎に行なう。ただし、本例では血管の上半分又は下半分における各計算格子Ciについて半径rs(i)の算出を行なうものとする。従って、前記計算格子Ciは上半分又は下半分のみ設定されてもよい。そして、前記数値シミュレーション部812は、算出された半径rs(i)を2倍して直径を算出し、血管径Xs(i)を得る。これにより、n個の計算格子Ciについての血管径Xs(i)が得られる。
【0030】
前記(式1)において、初期半径rs(i)は、計測部位における血管部分の標準的な半径(図4の時刻0における半径)とする。
【0031】
次に、前記(式1)における変位x(i)の算出について説明する。血管壁wの壁面モデルとして、図6に示すようにバネspとダンパーdaが並列に接続されたモデルであるフォークトモデルを適用した場合、壁面における力学の釣り合いは、下記(式2)となる。
【数1】

(式2)において、f(i)は血管壁wにかかる力、kは血管壁wの弾性係数、cは血管壁wの粘性係数である。変位x(i)は、(式2)のf(i),k,cに具体的な数値を代入して算出される。
【0032】
前記(式2)において、k,cは、被検体の年代に応じて実験的に得られた値であって、年代別に得られた健常者の平均値である。また、(式2)において、f(i)は下記(式3)で得られる値である。
f(i)=P(i)×S(i) ・・・(式3)
この(式3)において、P(i)は所定点(例えば後述のステップS3で圧力を算出する際に設定される計算格子)における血流の圧力(血圧)、S(i)は計算格子Ciにおける血管壁wの面積であり、f(i)として計算格子Ciにおける血管壁w全体にかかる圧力が算出される。前記P(i)としては、前のループにおけるステップS3で算出された値を近似的な値として用いる。なお、最初のループにおいては予め設定された値を用いる。
【0033】
前記径計測部83による血管径Xm(i)の計測について具体的に説明する。例えば、Bモード画像において、血管は周囲の組織よりも輝度が低くなっている。従って、前記径計測部83は、Bモード画像の輝度に基づいて特定される血管の直径を算出する。血管径は、計算格子ごとに算出される。
【0034】
次に、ステップS2では、前記差分算出部813が、前記数値シミュレーション部812で得られた血管径Xs(i)と前記径計測部83で得られた血管径Xm(i)の差D(i)を求める。すなわち、
D(i)=Xs(i)−Xm(i) ・・・(式4)
そして、この(式4)で算出された差D(i)に基づいて、前記評価部84が動脈硬化に関する評価を行なう。
【0035】
ここで、動脈硬化が進行していると血管内が閉塞し、血管径が健常者と比べて小さくなる。前記数値シミュレーション部812で得られた血管径Xs(i)は、年代別の健常者の血管径であり、前記差D(i)が大きくなるほど動脈硬化が進行していることになる。従って、前記評価部84は、動脈硬化に関する評価として、前記差D(i)が所定の閾値DTHを超えているか否かを判定する。この閾値DTHは、動脈硬化と診断される値に設定されるものとする。前記評価部84は、前記差D(i)が前記閾値DTHを超えていると判定した場合、前記表示制御部5へ信号を出力する。
【0036】
ステップS2において、前記差D(i)が前記閾値DTHを超えていると判定された場合、図7に示すように、前記表示部6に表示されたBモード画像BGには、前記差D(i)が前記閾値DTHを超えている部分に、所定の色からなるカラー画像CGを表示する。このカラー画像CGは、血管blの外側にこの血管blに沿うようにして帯状に表示される。前記カラー画像CGは、動脈硬化に関する評価結果を表わす画像の実施の形態の一例である。
【0037】
次に、ステップS3では、前記計測融合シミュレーション部81が計測融合シミュレーションを行なって血流の速度及び圧力の算出を行なう。具体的には、Bモード画像における血管に設定された計算格子について、前記数値シミュレーション部812が、血流の速度及び圧力についての数値シミュレーションを、ナビエ・ストークス方程式と圧力方程式とを用いて行ない、この数値シミュレーションによる算出値と、前記ドプラ処理部42で得られたドプラデータとの差を前記フィードバック部813で算出して前記数値シミュレーション部812にフィードバックし、数値シミュレーションで得られる速度との差を補償するように計算結果を実際の血流場に収束させて、血流の速度及び圧力を算出する(詳細は、例えば特許4269623号公報参照)。
【0038】
ちなみに、ステップS3における計算格子は、ステップS1において設定される計算格子とは異なり、前記特許4269623号公報に記載されているように、格子点(縦線と横線の交差点)であってもよく、格子点における血流の速度及び圧力を算出するようになっていてもよい。
【0039】
ちなみに、特に図示しないが、ステップS3において算出された血流の速度や圧力を示す画像を前記表示部6に表示してもよい。
【0040】
次に、ステップS4では、Nループ目であるか否かの判定を行なう。Nループ目に達していない場合(ステップS4においてNO)、ステップS1の処理へ戻り、再度このステップS1以降の処理を行なう。一方、Nループ目に達した場合(ステップS4においてYES)、処理を終了する。
【0041】
以上説明した本例の超音波診断装置1によれば、前記数値シミュレーション部812で得られた血管径Xs(i)と前記径計測部82で得られた血管径Xm(i)との差D(i)に基づいて、動脈硬化に関する評価結果を表わす画像として、前記カラー画像CGが表示されるので、被検体の動脈を遮断する必要がなく大きな負担を課さずに、短時間で正確に直接的な動脈硬化の診断を行なうことができる。
【0042】
次に、上記実施形態の変形例について説明する。この変形例においては、図8に示すように前記制御部8は差分算出部83を有しておらず、前記フィードバック部813からの入力に基づいて、前記評価部84が動脈硬化に関する評価を行なう。具体的に図9のフローチャートに基づいて説明する。
【0043】
先ず、図9のステップS1′において、前記計測融合シミュレーション部81が前記所定の領域R(図5参照)内において計測融合シミュレーションを行なって、血管径Xr(i)を算出する。具体的には、先ず上述のステップS1と同様にして前記数値シミュレーション部812が血管径Xs(i)を算出し、前記径計測部82により血管径Xm(i)を得る。そして、前記フィードバック部813がこれら血管径Xs(i)と血管径Xm(i)との差D(i)を求めてこの差D(i)に応じた仮想的外力fs(i)を数値シミュレーションにフィードバックすることにより、前記差D(i)を補償するように数値シミュレーションの結果を実際の血管径の値に収束させる。これにより前記血管径Xr(i)が得られる。この場合において、前記フィードバック部813は、本発明における差分算出部の実施の形態の一例である。
【0044】
フィードバックは、仮想的外力fs(i)を上記(式2)の左辺に与えて行なう。具体的には、以下の(式5)である。
【数2】

また、フィードバックに用いる仮想的外力fs(i)は、下記(式6)となる。
fs(i)=K(Xs(i)−Xm(i)) ・・・(式6)
(式6)において、Kは計算の加速係数であり圧力の単位を含む係数である。
【0045】
以上の計測融合シミュレーションにより得られた血管径Xr(i)は、前記表示部6に表示されるようになっていてもよい。
【0046】
前記ステップS1′において前記フィードバック部813で算出された前記差D(i)は、前記評価部84へ出力される。そして、ステップS2′において、前記評価部84は、前記差D(i)に基づいて、上述のステップS2と同様にして動脈硬化の評価を行なう。そして、前記差D(i)が前記閾値DTHを超えている部分に、所定の色からなるカラー画像CGを表示する。
【0047】
ただし、前記評価部84は、前記仮想的外力fs(i)に基づいて動脈硬化の評価を行なってもよい。前記差D(i)が大きくなるほど、前記仮想的外力fs(i)も大きくなるので、前記仮想的外力fs(i)が所定の閾値を超えていれば動脈硬化が進行しているものとする。前記仮想的外力fs(i)が前記閾値を超えている場合、閾値を超えていると判定された部分に、所定色からなるカラー画像CGを表示する。
【0048】
ステップS3,S4については、上述と同様であり説明を省略する。
【0049】
以上、本発明を前記各実施形態によって説明したが、本発明はその主旨を変更しない範囲で種々変更実施可能なことはもちろんである。例えば、前記評価部84による動脈硬化に関する評価として、前記差D(i)の大きさに応じた色からなるカラー画像CGを表示するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 超音波診断装置(動脈硬化検出装置)
6 表示部
82 径計測部
83 差分算出部
84 評価部
811 計算格子設定部
812 数値シミュレーション部
813 フィードバック部(差分算出部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管径の数値シミュレーションを行なう数値シミュレーション部と、
被検体に送信された超音波のエコーデータに基づいて血管径を計測する径計測部と、
前記数値シミュレーション部で得られた血管径と前記径計測部で得られた血管径との差を算出する差分算出部と、
該差分算出部で算出された差に基づいて動脈硬化に関する評価を行なう評価部と、
該評価部による評価結果を表わす画像が表示される表示部と、
を備えることを特徴とする動脈硬化検出装置。
【請求項2】
前記数値シミュレーション部は、血管壁の壁面モデルとしてフォークトモデルを適用して数値シミュレーションを行なうことを特徴とする請求項1に記載の動脈硬化検出装置。
【請求項3】
前記数値シミュレーション部による数値シミュレーションは、血管壁に血流の圧力がかかった場合の前記フォークトモデルにおける血管壁の変位を算出し、該変位を初期の血管径に加算して、血管径の算出を行なうものであることを特徴とする請求項2に記載の動脈硬化検出装置。
【請求項4】
前記フォークトモデルにおいて並列に接続されたバネとダンパーにおける弾性係数及び粘性係数は、被検体の血管壁について、年代別に実験的に得られた値であることを特徴とする請求項2又は3に記載の動脈硬化検出装置。
【請求項5】
前記数値シミュレーション部は、前記エコーデータに基づく超音波画像における血管に設定された計算格子において数値シミュレーションを行なうことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の動脈硬化検出装置。
【請求項6】
前記超音波画像において特定される血管に前記計算格子を設定する計算格子設定部を備えることを特徴とする請求項5に記載の動脈硬化検出装置。
【請求項7】
前記径計測部は、超音波画像において特定された血管の径を計測することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の動脈硬化検出装置。
【請求項8】
前記評価結果を表わす画像は、前記エコーデータに基づく超音波画像上に表示されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の動脈硬化検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−55621(P2012−55621A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204292(P2010−204292)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(300019238)ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー (1,125)
【Fターム(参考)】