説明

包埋剤除去装置及び包埋剤除去方法

【課題】包埋カセットに固着した包埋剤を、該包埋カセットを傷付けることなく安全且つ確実に除去することが可能であるうえ、効率良く均一な仕上がりで除去すること。
【解決手段】包埋ブロックBが固定された包埋カセット1から、固着した包埋剤Pを除去する装置であって、包埋カセットが載置される載置面2aを有し、該載置面上に載置された包埋カセットの底面1Cを加熱する加熱板2と、加熱板上に配設され、載置された包埋カセット1を挟み込んで、該包埋カセット1の4つの側面1F、1B、1L、1Rのうち少なくとも2つの側面を加熱する複数の加熱ブロック3、4と、を備え、複数の加熱ブロックのうちの少なくとも1つが、載置面の面内方向に移動可能とされ、該移動によって残りの加熱ブロックと協働して包埋カセットを挟み込む包埋剤除去装置10を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包埋ブロックが固定された包埋カセットに固着した不要な包埋剤を除去する包埋剤除去装置及び包埋剤除去方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人体や実験動物等から取り出した生体試料を検査、観察する方法の1つとして、パラフィンや樹脂等の包埋剤によって生体試料を包埋した包埋ブロックから薄切片を作製し、この薄切片に対して例えば染色処理を行って、生体試料を検査、観察する方法が知られている。一般的に包埋ブロックから上記薄切片を作製する場合には、細胞レベルでの観察を可能とするために3μm〜5μm程度の厚さで均一に薄切する必要がある。そのため、鋭利な薄い切断刃を使用して、熟練の作業者による手作業や、専用の薄切装置等を利用して薄切作業が行われている。
【0003】
ところで、通常包埋ブロックは、識別コード等が付与された包埋カセットに固定されており、上記薄切作業時においても包埋カセットに固定されたままの状態となっている。つまり包埋カセットは、薄切作業時における包埋ブロックの固定台として機能している。加えて、この包埋カセットは、包埋ブロックを作製する段階から使用される容器としても使用されている。そのため、包埋カセットには不要な包埋剤が固着し易いものであった。
【0004】
詳細に説明すると、包埋ブロックを作製する場合には、まず包埋カセット内に生体試料を収容した状態で該生体試料の脱水、脱脂処理が行われると共に、パラフィン等の包埋剤による置換処理が施される。この置換処理の際、包埋カセットごと包埋剤に浸漬させるので、包埋カセットの側面や底面等に包埋剤が固着し易いものであった。
なお、置換処理された生体試料は、その後包埋剤の中に包埋されることで包埋ブロックになり、該包埋ブロックは包埋カセットに固着されて一体化される。
【0005】
このように、包埋カセットに不要な包埋剤が固着してしまうと、包埋カセットをがたつかせる原因となってしまう。特に、薄切片を作製する際には、包埋ブロックを正確且つ均一な厚さで薄切することが重要であり、そのためには包埋カセットをステージ等の載置台上に安定にセットすることが必要とされている。
しかしながら、包埋カセットに不要な包埋剤が固着していると、がたつき易く、包埋カセットを安定にセットさせることが難しくなり、均一な品質の薄切片を作製することができない場合があった。
【0006】
そのため、包埋ブロックを作製した後、作業者が手作業で包埋カセットに固着した包埋剤を刃のようなもので削り取ったり、加熱板に包埋カセットを押し付けて固着した包埋剤を溶かし取ったり(特許文献1参照)する作業を行っているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実用新案登録第3067577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の方法は、単純な作業であるうえ非常に時間のかかる作業であるので効率的ではなく、大量処理することが難しかった。特に、前臨床試験等を行う場合には、一試験当たり数百個から数千個、多いときには数万個の包埋ブロックを作製することがあり、作業者に多大な負担がかかっていた。
また、作業者が手作業で行うので、怪我する可能性もあるうえ、固着具合によっては包埋剤が薄く膜状に残ったり、フレーク状の破片が残ったままの状態になったりし易く、包埋剤を完全に取り切ることができない場合もあった。加えて、包埋カセット側に傷を付けてしまう可能性もあった。
【0009】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、包埋カセットに固着した包埋剤を、該包埋カセットを傷付けることなく安全且つ確実に除去することが可能であるうえ、効率良く均一な仕上がりで除去することができる包埋剤除去装置及び包埋剤除去方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記課題を解決するために以下の手段を提供する。
(1)本発明に係る包埋剤除去装置は、包埋ブロックが固定された包埋カセットから、固着した包埋剤を除去する包埋剤除去装置であって、前記包埋カセットが載置される載置面を有し、該載置面上に載置された包埋カセットの底面を加熱する加熱板と、前記加熱板上に配設され、載置された前記包埋カセットを挟み込んで、該包埋カセットの少なくとも2つの側面を加熱する複数の加熱ブロックと、を備え、前記複数の加熱ブロックのうちの少なくとも1つが、前記載置面の面内方向に移動可能とされ、該移動によって残りの加熱ブロックと協働して前記包埋カセットを挟み込むことを特徴とする。
【0011】
本発明に係る包埋剤除去装置によれば、加熱板の載置面上に包埋カセットを載置すると、複数の加熱ブロックのうちの少なくとも1つが載置面の面内方向に移動し、他の残りの加熱ブロックと協働して包埋カセットを挟み込む。これにより、包埋カセットの底面及び少なくとも2つの側面が加熱板及び加熱ブロックによって加熱される。そのため、包埋ブロックの作製段階において包埋カセットに不要な包埋剤が固着していたとしても、これら包埋剤を融解することができ、包埋カセットから溶かし取ることができる。
【0012】
特に、底面及び少なくとも2つの側面から同時に包埋剤を除去できるので、効率良く確実に除去することが可能である。また、従来のように手作業で除去作業を行う必要がないので、均一な仕上がりで除去できると共に、安全であるうえ包埋カセット側を傷付けてしまう恐れもない。更に、包埋カセットを傷付けてしまうことがないので、除去した包埋剤に包埋カセットの切削片が混入することがなく、包埋剤を再利用することも可能である。
【0013】
(2)また、上記本発明に係る包埋剤除去装置において、前記加熱ブロックが、前記包埋カセットを囲繞しながら挟み込んで、該包埋カセットの4つの側面を加熱しても良い。
【0014】
この場合には、複数の加熱ブロックが包埋カセットの周囲を取り囲みながら挟み込むので、包埋カセットの4つの側面を加熱でき、全ての側面から不要な包埋剤を融解して溶かし取ることができる。従って、包埋カセットからより確実に包埋剤を除去することができる。
【0015】
(3)また、上記本発明に係る包埋剤除去装置において、前記加熱ブロックを移動させる可動部を備え、該可動部が、予め決められた移動量に達するまで前記加熱ブロックを移動させ続けても良い。
【0016】
この場合には、可動部が予め決められた移動量に達するまで加熱ブロックを移動させ続けるので、包埋カセットの側面に固着した包埋剤に接触して一旦移動が妨げられたとしても、包埋剤を融解させながら加熱ブロックをさらに移動させることができる。従って、包埋カセットのサイズを考慮して移動量を設定することで、固着した包埋剤の厚みに影響されることなく包埋カセットの側面に複数の加熱ブロックを押し当てることが可能である。従って、固着した包埋剤の厚みに関係なく包埋剤をより確実に溶かし取り易い。
【0017】
(4)また、上記本発明に係る包埋剤除去装置において、前記加熱ブロックが、前記包埋カセットを挟みこんだ後、該包埋カセットの側面に接したまま該側面に沿って往復移動させられても良い。
【0018】
この場合には、加熱ブロックが包埋カセットを挟みこんだ後、さらに該包埋カセットの側面に接したまま側面に沿って往復移動するので、単に加熱するだけの場合よりも包埋剤を側面から擦り落とすように溶かし取ることができる。従って、包埋剤の除去をより確実に行うことができる。
【0019】
(5)また、上記本発明に係る包埋剤除去装置において、前記加熱ブロックには、前記包埋カセットを挟みこんだ際に、該包埋カセットの上面を加熱するフランジ部が取り付けられていても良い。
【0020】
この場合には、包埋ブロックの作製段階において包埋カセットの側面及び底面だけでなく、上面にも不要な包埋剤が固着していたとしても、上面から包埋剤を溶かし取ることができる。
【0021】
(6)また、上記本発明に係る包埋剤除去装置において、前記加熱板の下方に配設され、融解された前記包埋剤を回収する回収容器を備え、前記加熱板には、前記載置面に開口すると共に厚さ方向に貫通され、融解された前記包埋剤を前記回収容器に導く回収部が形成されていても良い。
【0022】
この場合には、包埋カセットの底面及び側面から融解した包埋剤を、回収部を通じて載置面上から速やかに排除することができると共に、回収容器内に回収することができる。特に、融解した包埋剤を載置面上から速やかに排除できるので、溶けた包埋剤が包埋カセットに纏わり付いてしまうことを防止することができ、再固着を防いで除去の確実性を向上できる。また、融解した包埋剤を回収できるので、該包埋剤の再利用を図り易く、コストカットに繋げることができる。
【0023】
(7)また、上記本発明に係る包埋剤除去装置において、前記回収容器を前記包埋剤の融点よりも高い温度に加熱する容器加熱手段を備えていても良い。
【0024】
この場合には、回収容器が包埋剤の融点よりも高い温度に加熱されているので、回収した包埋剤が回収容器内で固化してしまうことを抑制でき、回収容器から容易に取り出して再利用を図り易い。
【0025】
(8)また、上記本発明に係る包埋剤除去装置において、前記包埋カセットに接する前記加熱ブロックの接触面には、融解された前記包埋剤を前記加熱板側に流動させる排出部が形成されていても良い。
【0026】
この場合には、包埋カセットの側面から融解した包埋剤を、排出部を通じて加熱板側に積極的に流動させることができるので、溶けた包埋剤が加熱ブロックの上部や包埋カセットの上面等に乗り上がってしまい難い。従って、融解した包埋剤が意図しない箇所に流動して固着してしまうことを防ぎつつ、除去の確実性を高めることができる。
【0027】
(9)また、上記本発明に係る包埋剤除去装置において、前記加熱板の上方に配設され、載置された前記包埋カセットの上方を覆う着脱自在のカバー体を備え、該カバー体が、前記包埋剤の融点よりも低い温度に設定されていても良い。
【0028】
この場合には、包埋カセットの加熱時に包埋剤が仮に気化してしまったとしても、この気化した包埋剤をカバー体に付着させることができる。すると、この付着した包埋剤は、カバー体が包埋剤の融点よりも低い温度に設定されているので、速やかに固まり固着する。そのため、付着した包埋剤が包埋ブロックや包埋カセットに向けて落下して再固着してしまうことを防ぐことができる。
このように、気化した包埋剤をカバー体に積極的に固着させることができるので、気化した包埋剤が意図しない箇所に固着したり、包埋ブロックや包埋カセットに再固着したりしてしまうことを防止することができる。しかも、固着した包埋剤が多量に蓄積した場合には、カバー体自身を容易に交換することも可能である。
また、カバー体が包埋カセットの上方を覆っているので、包埋剤の加熱時に臭気が発生したとしても、該臭気を閉じ込め易い。
【0029】
(10)また、上記本発明に係る包埋剤除去装置において、載置された前記包埋カセットを払拭台上に移送させる移送部と、前記払拭台上にて、前記包埋カセットの底面及び側面を同時又は各別に払拭布で払拭する払拭部と、を備え、該払拭部が、前記払拭布を加熱した状態で払拭しても良い。
【0030】
この場合には、包埋カセットの底面及び側面を加熱して包埋剤を融解させた後、包埋カセットを払拭台上に移送させ、該払拭台上にて包埋カセットの底面及び側面を払拭布で払拭することができる。従って、融解された包埋剤が包埋カセットに残存していたとしても、残滓を払拭布で拭き取ることができ、底面及び側面を包埋剤がより確実に取り除かれたクリーン面に仕上げることができる。しかも、払拭布を加熱した状態で払拭するので、残った包埋剤を溶かしながら拭き取ることができ、拭き取り効果を高めることができる。
【0031】
(11)また、上記本発明に係る包埋剤除去装置において、前記払拭台上に移送された前記包埋カセットの前後の向きを判別する判別部を備え、前記移送部が、前記判別部による判別結果に基づいて前記包埋カセットの前後の向きを変更し、その向きを一定方向に配列させても良い。
【0032】
この場合には、包埋カセットの前後の向きを一定方向に揃えた状態で、払拭部による払拭を行わせることができるので、包埋カセットの底面及び側面をより確実に払拭することができる。
【0033】
(12)また、上記本発明に係る包埋剤除去装置において、前記移送部が、前記包埋カセットを挟持する移送ハンドと、挟持した前記包埋カセットを前記移送ハンドから離脱させる方向に弾性力で押圧する弾性部材と、を備えていても良い。
【0034】
この場合には、移送ハンドにより包埋カセットを挟持した状態で所定位置まで移送した後、挟持を解除すると、これと同時に包埋カセットは弾性部材による弾性力によって強制的に押圧されて、移送ハンドから離脱させられる。従って、移送ハンドと包埋カセットとの間に、例えば包埋カセットに残っていた包埋剤の影響等によって接着力が生じていたとしても、この接着力の影響を受けることなく包埋カセットを離脱させることができる。従って、包埋カセットを所定位置で正しい姿勢で開放することができる。
【0035】
(13)また、上記本発明に係る包埋剤除去装置において、前記払拭布が、一方向に延在した帯状に形成され、前記払拭部が、前記払拭布の一部分を前記包埋カセットの底面及び側面に押し当てる押圧部と、押し当てられた前記払拭布を前記一方向に沿って移動させる移動部と、を備えていても良い。
【0036】
この場合には、包埋カセットの底面及び側面に払拭布を押し当てた状態で、払拭布を移動させることで、これら底面及び側面を確実に拭き取ることができる。特に、帯状の払拭布を移動させる方式であるので、同じ払拭布を使用し続けるのではなく、清浄な部分を利用して拭き取りを行うことができ、底面及び側面をよりクリーンな面に仕上げ易い。
【0037】
(14)また、上記本発明に係る包埋剤除去装置において、前記移動部が、前記払拭布を互いの外周面で挟み込む2つの回転体を備え、一方の前記回転体と前記払拭布との接触幅が、他方の前記回転体と前記払拭布との接触幅よりも小さくても良い。
【0038】
この場合には、2つの回転体の間に払拭布を挟み込みながら移動させることができるので、払拭布を滑らせることなく確実に移動させることができる。特に、払拭布に対する接触幅が2つの回転体で異なり、両回転体の接触比率を変化させることができる。そのため、拭き取った包埋剤が払拭布に浸透することで該払拭布が粘性を有してしまったとしても、払拭布が2つの回転体に貼り付いて巻き込み等の不具合が発生させてしまうことを抑制することができる。
【0039】
(15)また、上記本発明に係る包埋剤除去装置において、前記移動部が、前記払拭布を互いの外周面で挟み込む2つの回転体を備え、少なくとも一方の前記回転体の外周面が、凹凸形状とされていても良い。
【0040】
この場合には、2つの回転体の間に払拭布を挟み込みながら移動させることができるので、払拭布を滑らせることなく確実に移動させることができる。特に、少なくとも一方の前記回転体の外周面が凹凸形状とされているので、この凹凸を利用してより確実に払拭布を滑らすことなく移動させることができる。
【0041】
(16)また、上記本発明に係る包埋剤除去装置において、前記包埋カセットを複数収容する収容体と、該収容体に収容されている複数の前記包埋カセットの中から、任意に選択した1つを前記載置面上に載置する搬入部と、前記包埋カセットを搬出すると共に保管体に収納する搬出部と、を備えていても良い。
【0042】
この場合には、大量の包埋カセットの処理に自動的に対応することが可能であるうえ、不要な包埋剤の除去作業を自動的に行うことができる。
つまり、搬入部が収容体にセットされている複数の包埋カセットの中から選択した1つの包埋カセットを加熱板の載置面上に自動的に載置する。するとこれ以降、上述したように加熱板及び加熱ブロックによる加熱によって不要な包埋剤を融解し、包埋カセットから取り除く作業が行われる。そして、この作業が終了すると、搬出部が包埋カセットを搬出して、保管体に自動的に収納する。
このようにして、収容体に収容されている複数の包埋カセットを次々に処理することができるので、効率良く短時間で大量の包埋カセットからの包埋剤除去作業を行うことができる。従って、非常に使い易く、自動化に対応し且つ処理能力に優れた装置とすることができる。
【0043】
(17)また、上記本発明に係る包埋剤除去装置において、前記収容体に収容されている前記包埋カセットの前後の向きを判別する収容時判別部を備え、前記搬入部が、前記収容時判別部による判別結果に基づいて前記包埋カセットの前後の向きを変更し、その向きを一定方向に配列させた状態で前記載置面上に載置しても良い。
【0044】
この場合には、包埋カセットの前後の向きを一定方向に揃えた状態で加熱板の載置面上に載置できるので、全ての包埋カセットを同じ条件で加熱しながら包埋剤の除去を行うことができる。また、保管体に対して同じ向きで包埋カセットを収納することが可能であるので、自動化により適している。
【0045】
(18)本発明に係る包埋剤除去方法は、包埋ブロックが固定された包埋カセットから、固着した包埋剤を除去する包埋剤除去方法であって、加熱板の載置面上に前記包埋カセットが載置された後、複数の加熱ブロックのうちの少なくとも1つを載置面の面内方向に移動させ、該移動によって残りの加熱ブロックと協働して包埋カセットを挟み込む挟圧工程と、前記加熱板により前記包埋カセットの底面を加熱すると共に、前記複数の包埋ブロックにより前記包埋カセットの少なくとも2つの側面を加熱する加熱工程と、を備えていることを特徴とする。
【0046】
本発明に係る包埋剤除去方法によれば、上述した包埋剤除去装置と同様の作用効果を奏することができる。即ち、包埋カセットの底面及び少なくとも2つの側面から同時に包埋剤を除去でき、効率良く確実に除去することが可能である。また、従来のように手作業で除去作業を行う必要がないので、均一な仕上がりで除去できると共に、安全であるうえ包埋カセット側を傷付けてしまう恐れもない。更に、包埋カセットを傷付けてしまうことがないので、除去した包埋剤に包埋カセットの切削片が混入することがなく、包埋剤を再利用することも可能である。
【0047】
(19)また、上記本発明に係る包埋剤除去方法において、前記狭圧工程の際、複数の前記加熱ブロックで前記包埋カセットを囲繞しながら挟み込み、前記加熱工程の際、前記包埋カセットの4つの側面を加熱しても良い。
【0048】
この場合には、上述した包埋剤除去装置と同様の作用効果を奏することができる。即ち、複数の加熱ブロックで包埋カセットの周囲を取り囲みながら挟み込むことで、包埋カセットの4つの側面を加熱でき、全ての側面から不要な包埋剤を融解して溶かし取ることができる。従って、包埋カセットからより確実に包埋剤を除去することができる。
【0049】
(20)また、上記本発明に係る包埋剤除去方法において、前記挟圧工程の際、予め決められた移動量に達するまで前記加熱ブロックを移動させ続けても良い。
【0050】
この場合には、上述した包埋剤除去装置と同様の作用効果を奏することができる。即ち、固着した包埋剤の厚みに影響されることなく包埋カセットの側面に複数の加熱ブロックを押し当てることが可能であり、固着した包埋剤の厚みに関係なく包埋剤をより確実に溶かし取り易い。
【0051】
(21)また、上記本発明に係る包埋剤除去方法において、前記加熱工程の際、前記加熱ブロックを前記包埋カセットの側面に接したまま該側面に沿って往復移動させても良い。
【0052】
この場合には、上述した包埋剤除去装置と同様の作用効果を奏することができる。即ち、単に加熱するだけの場合よりも包埋剤を側面から擦り落とすように溶かし取ることができ、包埋剤の除去をより確実に行うことができる。
【0053】
(22)また、上記本発明に係る包埋剤除去方法において、前記加熱工程後、前記包埋カセットを払拭台上に移送させ、該払拭台上にて包埋カセットの底面及び側面を同時又は各別に払拭布で払拭する払拭工程を備え、該払拭工程時、前記払拭布を加熱した状態で払拭しても良い。
【0054】
この場合には、上述した包埋剤除去装置と同様の作用効果を奏することができる。即ち、融解された包埋剤が包埋カセットに残存していたとしても、残滓を払拭布で拭き取ることができ、底面及び側面を包埋剤がより確実に取り除かれたクリーン面に仕上げることができる。しかも、払拭布を加熱した状態で払拭するので、残った包埋剤を溶かしながら拭き取ることができ、拭き取り効果を高めることができる。
【0055】
(23)また、上記本発明に係る包埋剤除去方法において、収容体に収容されている複数の前記包埋カセットの中から、任意に選択した1つを前記載置面上に載置する搬入工程と、前記包埋カセットを搬出すると共に保管体に収納する搬出工程と、を備えていても良い。
【0056】
この場合には、上述した包埋剤除去装置と同様の作用効果を奏することができる。即ち、大量の包埋カセットの処理に自動的に対応することが可能であるうえ、不要な包埋剤の除去作業を自動的に行うことができる。
【発明の効果】
【0057】
本発明に係る包埋剤除去装置及び包埋剤除去方法によれば、包埋カセットに固着した不要な包埋剤を、該包埋カセットを傷付けることなく安全且つ確実に除去することが可能であるうえ、効率良く均一な仕上がりで除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明に係る包埋剤除去装置で包埋剤を除去する前の包埋カセットと、除去した後の包埋カセットの斜視図である、
【図2】図1に示す包埋ブロックを薄切して得られた薄切片を利用して作製された薄切片標本の斜視図である。
【図3】本発明に係る包埋剤除去装置の第1実施形態を示す構成図である。
【図4】図3に示す加熱板の断面図である。
【図5】図3に示す加熱板を上方から見た図であって、該加熱板の載置面上に包埋カセットを載置した直後の状態を示す図である。
【図6】図5に示す状態から、2つの加熱ブロックにより包埋カセットを囲繞しながら挟み込んでいる状態を示す図である。
【図7】図3に示す回収容器の断面図である。
【図8】図3に示す加熱ブロックの変形例を示す図であって、接触面に排出部が形成されている加熱ブロックの図である。
【図9】図3に示す包埋剤除去装置の変形例を示す図であって、加熱板の上方に包埋ブロックの搬入時の勢いを吸収するガイド部が配設されている状態を示す上面図である。
【図10】図9に示すガイド部を側方から見た図である。
【図11】図3に示す加熱板の排出部の変形例を示す断面図である。
【図12】図3に示す包埋剤除去装置の変形例を示す図であって、包埋カセットの上方にトラップパネルが配設されている状態を示す斜視図である。
【図13】図3に示す包埋剤除去装置の別の変形例を示す図であって、加熱時に加熱ブロックを包埋ブロックの側面に沿って往復移動させる場合の流れ図である。
【図14】本発明に係る包埋剤除去装置の第2実施形態を示す構成図である。
【図15】図14に示す包埋剤除去装置における加熱板周辺の上面図である。
【図16】図14に示す包埋剤除去装置における第1払拭部周辺の断面図である。
【図17】図14に示す包埋剤除去装置における第2払拭部周辺の断面図である。
【図18】図14に示す包埋剤除去装置における第3払拭部周辺の断面図である。
【図19】一対のセンサにより包埋カセットの前後面に検出光を照射している状態を示す斜視図である。
【図20】図14に示す包埋剤除去装置における各引出部の拡大図である。
【図21】第1移送ハンド及び第2移送ハンドにより包埋カセットを移送する際、該包埋カセットのどの部分を挟持するかを説明するための図である。
【図22】図14に示す収容体の変形例を示す平面図である。
【図23】図14に示す収容体の別の変形例を示す側面図である。
【図24】図14に示す収容体の更に別の変形例を示す斜視図である。
【図25】図14に示す収容体の更に別の変形例であるディスクトレイを示す斜視図である。
【図26】図25に示すC−C線に沿った断面図である。
【図27】図25に示すディスクトレイを積み重ねた状態を示す斜視図である。
【図28】図14に示す第2払拭部の変形例を示す断面図である。
【図29】図14に示す第1払拭部の変形例を示す断面図である。
【図30】図14に示す各払拭布から、拭き取ったパラフィンを取り除く構成の一例を示す断面図である。
【図31】図14に示す保管体の変形例を示す斜視図である。
【図32】本発明に係る変形例を示す図であって、包埋カセットの上面を加熱するフランジ部が取り付けられた加熱ブロックの斜視図である。
【図33】図32に示す状態から、加熱ブロックにより包埋カセットを挟み込んでいる状態を示す図である。
【図34】本発明に係る変形例を示す図であって、ゴムリングが取り付けられている第2移送ハンドの斜視図である。
【図35】図34に示すD−D線に沿った断面図である。
【図36】図34に示す状態から包埋カセットを挟持した状態を示す図である。
【図37】図36に示すE−E線に沿った断面図である。
【図38】本発明に係る変形例を示す図であって、判別ポイントにてヒータブロックを利用して第1移送ハンドを加熱している状態を示す斜視図である。
【図39】本発明に係る変形例を示す図であって、供給台の搬出口にて包埋カセットの前後方向を判別している状態を示す斜視図である。
【図40】本発明に係る変形例を示す図であって、払拭布を引き出す引出部周辺の斜視図である。
【図41】本発明に係る変形例を示す図であって、払拭布を引き出す引出部を構成するギアの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る第1実施形態について図面を参照して説明する。
本実施形態の包埋剤除去装置は、図1に示すように、包埋ブロックBが固定された包埋カセット1から、該包埋カセット1の底面1Cや側面1F、1B、1L、1Rに固着した不要な包埋剤であるパラフィンPを除去する装置である。
【0060】
はじめに、包埋ブロックB及び包埋カセット1について簡単に説明する。
包埋ブロックBは、ホルマリン固定された生体試料内の水分をパラフィン置換した後、さらに周囲をパラフィンPによってブロック状に固められたものである。これにより、生体試料SがパラフィンP内に包埋された状態となっている。
なお、生体試料Sとしては例えば実験動物等から取り出した臓器等の組織であり、医療分野、製薬分野、生物分野等の各分野における要求によって適宜選択されるものである。
【0061】
包埋カセット1は、耐薬品性を有する樹脂等により作製されたものであり、上記包埋ブロックBを固定する固定台としての役割を果している。この際、包埋ブロックBは、包埋カセット1の上面に固定されている。また、包埋カセット1の4つの側面1F、1B、1L、1Rのうち、前面1Fの一部は下方に面が向いた傾斜面となっており、該傾斜面上に包埋カセット1の製造番号や、包埋ブロックBの作製日、生体試料Sの各種データ等を含む図示しない識別コードが記録されている。よって、この識別コードを読み取ることで、包埋ブロックBの品質管理を行うことが可能とされている。
【0062】
なお、本実施形態では、上記前面1F側を「前方」、この前面1Fに対して反対側の後面1B側を「後方」として、カセット本体の向きを定義する。また、前面1F及び後面1Bの2側面を前後面1F、1Bと称すると共に、残りの2側面を左右面1L、1Rと称する。
つまり、包埋カセット1の4つの側面は、前後面1F、1B及び左右面1L、1Rを指す。また、「前方」及び「後方」を結ぶ仮想方向を前後方向とし、該前後方向及び厚さ方向にそれぞれ直交する方向を左右方向とする。
【0063】
ところで、上記包埋ブロックBは、通常、作製段階において包埋ブロックBの上面に固定されるものであって、その際にパラフィンPが包埋カセット1の底面1Cや4つの側面1F、1B、1L、1Rに固着し易い。本実施形態の包埋剤除去装置は、この固着してしまった不要なパラフィンPを除去するものである。
【0064】
なお、不要なパラフィンPが除去された包埋カセット1は、その後、人手又は機械的に薄切装置のステージ上に固定された後、包埋ブロックBが薄切されて薄切片Mが作製される。この薄切片Mは、水やお湯等の液体によって薄切時に生じた皺やカール等の歪みが除去された後、図2に示すように、スライドガラス等の基板G上に固定されて薄切片標本Hとなるものである。
【0065】
〔包埋剤除去装置〕
続いて、本実施形態の包埋剤除去装置について、説明する。
図3に示すように、包埋剤除去装置10は、包埋カセット1の底面1Cを加熱する加熱板2と、包埋カセット1の4つの側面1F、1B、1L、1Rを加熱する第1加熱ブロック3及び第2加熱ブロック4の2つの加熱ブロックと、第2加熱ブロック4を移動させる可動部5と、加熱板2の下方に配設された回収容器6と、これらの各構成品を制御する制御部7と、を備えている。
【0066】
加熱板2は、例えば水平方向に平行に配設された金属製の板状部材であり、上面が、包埋カセット1が載置される載置面2aとされている。この加熱板2は、内部に図示しないヒータが内蔵されており、温度制御部11によって所望の設定温度に加熱されるようになっている。本実施形態では、パラフィンPの融点(略60℃)以上、沸点以下の温度である略90℃に加熱されるように設定されている。これにより、載置面2a上に載置された包埋カセット1の底面1Cを略90℃に加熱することが可能とされている。
【0067】
第1加熱ブロック3及び第2加熱ブロック4は、共に加熱板2の載置面2a上に配設された平面視L字形の金属製の部材であり、加熱板2と同様に内部に図示しないヒータが内蔵され、温度制御部11によって所望の設定温度に加熱されるようになっている。本実施形態では、加熱板2と同様に略90℃に加熱されるように設定されている。
【0068】
第1加熱ブロック3は、包埋カセット1の前面1F及び左右面1L、1Rの一方(1L)に対して接するように平面視L字状に形成され、加熱板2の載置面2a上に固定されている。これに対して、第2加熱ブロック4は、包埋カセット1の後面1B及び左右面1L、1Rの他方(1R)に対して接するように平面視L字状に形成され、第1加熱ブロック3に対して点対称の関係となるように載置面2a上に配設されていると共に、載置面2aの面内方向に移動可能に配設されている。
【0069】
具体的に第2加熱ブロック4は、可動部5によって第1加熱ブロック3に対して接近離間するように移動させられるようになっている。より詳細には、第1加熱ブロック3の角部と、第2加熱ブロック4の角部と、を結ぶ対角線上に沿って移動させられるようになっている。
そして、第2加熱ブロック4が移動することにより、載置面2a上に載置された包埋カセット1を第1加熱ブロック3と第2加熱ブロック4とで協働しながら囲繞して挟み込み、包埋カセット1の4つの側面1F、1B、1L、1Rを加熱するようになっている。
なお、上記可動部5としては、ピストンを利用した機構でも構わないし、ボールネジ等を利用した機構でも構わないし、一般的に公知な機構を採用すれば良い。
【0070】
また、上記温度制御部11は、制御部7によってその作動がさらに制御されている。また、加熱板2、第1加熱ブロック3及び第2加熱ブロック4の材質は、銀、銅やアルミニウム等の熱伝導の優れた材質にすることが好ましい。
【0071】
ところで、本実施形態の加熱板2には、全面に亘って多数の回収部(孔)12が形成されている。これら回収部12は、載置面2aに開口すると共に加熱板2の厚さ方向に貫通しており、加熱板2、第1加熱ブロック3及び第2加熱ブロック4の加熱によって融解されたパラフィンPを回収容器6に導く役割を果している。
上記回収部12は、図4に示すように、加熱板2の載置面2aから厚さ方向略中間部まではストレート状に形成され、厚さ方向略中間部から下面側に向かう部分は漸次拡径するように形成されている。そのため、加熱板2の下側における回収部12の一部はテーパー面12aとされている。
【0072】
図3に示すように、回収容器6は加熱板2の下方に配設されており、融解されたパラフィンPを回収する役割を担っている部材であり、加熱容器6aと、該加熱容器6aの内側に配置されたゴム製の容器本体6bと、で構成されている。
【0073】
加熱容器6aは、上部の開口サイズが加熱板2よりも大きくなるように設計され、且つ上記温度制御部11によって内蔵された図示しないヒータが加熱されて温度上昇するように設計された容器であり、重量検知台15上に載置されている。なお、本実施形態では、この加熱容器6aはパラフィンPの融点(略60℃)以上、沸点以下の温度である略90℃に加熱されるように設定されている。また、温度制御部11は容器加熱手段としても機能する。
【0074】
ゴム製の容器本体6bは、パラフィンPの融点以上の温度の耐熱性を有するゴム材料から形成されており、加熱容器6aの内側に配置されて加熱されている。加熱容器6aによって容器本体6bが加熱されることにより、加熱板2から垂れた溶融したパラフィンPが容器本体6bの内側で石筍状に伸びて固まることなく、また、容器本体6bの内側に空間を作ることなく融解したパラフィンPで満たされるようになっている。
なお、容器本体6bを加熱容器6aから取り出すことにより、パラフィンPを容器本体6bの内法に沿った形で固化させることができると共に、ゴム製の容器本体6bを引っ張って変形させることで、固化したパラフィンPを一塊にして綺麗且つ簡単に取り出すことが可能とされている。
【0075】
重量検知台15は、中身が空の状態のおける上記回収容器6の重量でゼロ設定されており、融解されたパラフィンPが回収されたときの回収容器6の重量増加分を検知して、その検知重量を制御部7に送信している。つまり、回収したパラフィンPの重量を制御部7に送信している。
【0076】
制御部7は、上述した各構成品を総合的に制御しており、例えば、加熱板2、第1加熱ブロック3、第2加熱ブロック4及び加熱容器6aがそれぞれ所望する温度に加熱されるように温度制御部11を制御している。また、加熱板2の載置面2aに包埋カセット1が載置されたときに、第2加熱ブロック4を移動させるように可動部5を制御している。更に、重量検知台15から送られてきたパラフィンPの重量に基づいて回収容器6の回収容量に対する回収割合、即ち回収率を算出し、一定の回収率に達したときに警報等を報知するようになっている。
【0077】
〔包埋剤除去装置の作用〕
次に、上述したように構成された包埋剤除去装置10により、包埋カセット1から固着した不要なパラフィンPを除去する方法について説明する。
はじめに、加熱板2、第1加熱ブロック3、第2加熱ブロック4及び加熱容器6aは、共に所望する温度に加熱されているものとする。また、回収容器6内はまだ空の状態であるとする。
【0078】
続いて、パラフィンPの除去作業を開始する。
まず、図3に示すように、包埋カセット1を加熱板2の載置面2a上に載置する工程を行う。この工程は、ロボット等の機械で機械的に行っても構わないし、作業者が手動で行っても構わない。そして、包埋カセット1が載置面2a上に載置されると、加熱板2により包埋カセット1の底面1Cが徐々に加熱されはじめると同時に、可動部5が第2加熱ブロック4の移動を開始させる。
【0079】
これにより、第2加熱ブロック4は、図5に示すように、載置面2aの面内方向であって、且つ第1加熱ブロック3の角部と第2加熱ブロック4の角部とを結ぶ対角線に沿って第1加熱ブロック3に接近するように移動し、図6に示すように、該第1加熱ブロック3と協働して包埋カセット1の周囲を取り囲みながら挟み込む(挟圧工程)。
この挟圧工程の際、第2加熱ブロック4が第1加熱ブロック3に接近するにつれて包埋カセット1の4つの側面1F、1B、1L、1Rは徐々に加熱されはじめる。そして、囲繞が終了した時点で、包埋カセット1の底面1C及び4つの側面1F、1B、1L、1Rは、加熱板2、第1加熱ブロック3及び第2加熱ブロック4によって効率良く加熱される(加熱工程)。
【0080】
そして、この加熱工程により、包埋ブロックBの作製段階において、包埋カセット1の底面1C及び4つの側面1F、1B、1L、1Rに不要なパラフィンPが固着していたとしても、これらパラフィンPを融解することができ、包埋カセット1から溶かし取ることができる。
特に、底面1C及び4つの側面1F、1B、1L、1Rから同時にパラフィンPを除去できるので、効率良く確実に除去することが可能である。また、従来のように手作業で除去作業を行う必要がないので、安全であるうえ、均一な仕上がりで除去できると共に、安全であるうえ包埋カセット1側を傷付けてしまう恐れもない。
【0081】
このように、本実施形態の包埋剤除去装置10及び包埋剤除去方法によれば、包埋カセット1に固着した不要なパラフィンPを、包埋カセット1を傷付けることなく安全且つ確実に除去することが可能であるうえ、効率良く均一な仕上がりで除去することができる。
また、第2加熱ブロック4は、対角線に沿って移動しながら第1加熱ブロック3に接近するので、図5に示すように、包埋カセット1の向きが両加熱ブロック3、4に対して多少斜めになった状態で載置されたとしても包埋カセット1の姿勢を修正でき、最終的には図6に示すように、両加熱ブロック3、4で包埋カセット1を囲繞することができる。
従って、包埋カセット1の載置に格別な注意を払う必要がないので、使い易く、効率の良いパラフィンP除去作業を行える。
【0082】
ところで、本実施形態においては、図3に示すように、包埋カセット1の底面1C及び4つの側面1F、1B、1L、1Rから融解したパラフィンPを、回収部12を通じて載置面2a上から速やかに排除することができると共に、加熱板2の下方に配設された回収容器6内に回収することができる。特に、融解したパラフィンPを載置面2a上から速やかに排除できるので、溶けたパラフィンPが包埋カセット1に纏わり付いてしまうことを防止することができ、再固着を防いで除去の確実性を向上できる。
【0083】
また、回収部12を通過するパラフィンPは、図4に示すように、加熱板2の下面側に達した後に回収容器6内に落下して回収されるが、その際、拡径した部分に速やかに拡がりながらテーパ面12aに沿って滑らかに流動したうえで回収容器6内に落下する。そのため、パラフィンPは回収部12内で滞留して詰まり難いうえ、加熱板2の下面側に回り込んで該下面に固着し、該固着の蓄積によって回収部12を閉塞させてしまうといったことも生じ難い。従って、回収部12を通じて確実にパラフィンPを回収容器6内に導くことができる。
【0084】
また、融解したパラフィンPを回収できるので、回収したパラフィンPの再利用を図り易く、コストカットに繋げることができる。しかも、上述したように包埋カセット1を傷付けてしまうことがないので、除去したパラフィンPに包埋カセット1の切削片(切削屑)が混入し難い。よって、この点からもパラフィンPの再利用を容易に図り易い。
【0085】
更に、本実施形態の回収容器6は、加熱容器6aの内側にゴム製の容器本体6bが配置されているので、回収後に容器内で固化したパラフィンPを容易に取り出し易い。つまり、図7に示すように、ゴム製の容器本体6bを加熱容器6aから取り出した後、室温に放置冷却する。この冷却によってパラフィンPが固化した後、引っ張り等により伸展させて容器本体6bに変形を付けることで、該容器本体6bから固化したパラフィンPを剥離させ易くなり、固化したパラフィンPを一塊にして容器本体6bから容易に取り出すことができる。
なお、ゴム製の容器本体6bとしては、パラフィンPが容易に剥離するような性質を有するものが良く、例えばシリコンゴムが好ましい。
【0086】
また、回収容器6内に融解したパラフィンPが回収され始めると、重量検知台15がその回収されたパラフィンPの重量を制御部7に送信する。すると制御部7は、この送られてきた重量から、回収容器6での回収率を算出し、一定の回収率に達した時点でその旨を報知する。これにより、回収容器6が回収されたパラフィンPで満杯になってしまうことを防ぐことができ、最適なタイミングで回収したパラフィンPの取り出し作業を行うことができる。
【0087】
ところで、第1加熱ブロック3及び第2加熱ブロック4で包埋カセット1を囲繞しながら挟み込んだ状態で、包埋カセット1の底面1C及び4つの側面1F、1B、1L、1Rの加熱を一定時間行うと、可動部5は第2加熱ブロック4を再移動(後退)させて、第1加熱ブロック3から離間させる。
これにより、パラフィンPが除去された包埋カセット1を加熱板2から回収することが可能となり、パラフィンPの除去が必要な次の新たな包埋カセット1を載置面2aに載置することが可能となる。
その後、上述した一連の流れの除去方法を繰り返すことで、大量の包埋カセット1を次々と効率良く処理することができる。
【0088】
なお、上記第1実施形態において、可動部5が第2加熱ブロック4を移動させる際、予め決められた移動量に達するまで移動させ続けるように構成しても構わない。
この場合には、包埋カセット1の側面1F、1B、1L、1Rに固着したパラフィンPの影響により第2加熱ブロック4の移動が一旦妨げられたとしても、パラフィンPを融解させながら第2加熱ブロック4を更に移動させることができる。従って、包埋カセット1のサイズを考慮して移動量を設定することで、固着したパラフィンPの厚みに影響されることなく包埋カセット1の4つの側面1F、1B、1L、1Rに第1加熱ブロック3及び第2加熱ブロック4を押し当てることが可能である。従って、固着したパラフィンPの厚みがある場合であっても、パラフィンPをより確実に溶かし取り易い。
【0089】
また、上記第1実施形態において、図8(a)に示すように、第1加熱ブロック3及び第2加熱ブロック4の接触面(包埋カセット1に接触する面)に、融解されたパラフィンPを加熱板2側に流動させる溝形状若しくは孔形状からなる排出部20を形成しても良い。
具体的にこの排出部20は、厚さ方向に延びたV字状の溝部であり、間隔を開けて接触面に複数形成されている。このように排出部20を形成することで凹凸を付けることができ、接触面の表面積を大きくすることができるので、加熱効率を高めてパラフィンPをより融解させ易い。
【0090】
また、融解したパラフィンPを、この溝形状若しくは孔形状からなる排出部20を通じて加熱板2側に積極的に流動させることができるので、溶けたパラフィンPが第1加熱ブロック3及び第2加熱ブロック4の上部や包埋カセット1の上面等に乗り上がってしまい難い。従って、融解したパラフィンPが意図しない箇所に流動して固着してしまうことを防ぎつつ、除去の確実性を高めることができる。
【0091】
なお、図8(b)に示すように、上記排出部20を第1加熱ブロック3及び第2加熱ブロック4の下部側に向かって漸次開口が広くなるように形成した場合には、溶けたパラフィンPをより積極的に加熱板2側に流動させることが可能である。
【0092】
また、上記第1実施形態において、図9及び図10に示すように、加熱板2の上方にゴム等の弾性体で形成されたガイド部21を配設しても良い。具体的にこのガイド部21は、基端部が図示しない支持部に片持ち状に支持され、先端部が自由端とされた撓み変形自在な可撓性を有する板部材とされている。そして、このガイド部21は、包埋カセット1、第1加熱ブロック3及び第2加熱ブロック4よりも上方に位置し、且つ先端部が包埋ブロックBの側面に接触する程度の高さに配設されている。
【0093】
このようにガイド部21を配設した場合には、包埋カセット1を加熱板2の載置面2aに載置する際に、例えば、矢印A方向から包埋カセット1を載置面2a上に勢い良く搬入させたとしても、その勢いをガイド部21で吸収することができる。つまり、搬入時に包埋カセット1に勢いが付いていたとしても、包埋ブロックBがガイド部21に接触し、該ガイド部21が撓み変形することで包埋カセット1の勢いを吸収することができる。
従って、第1加熱ブロック3及び第2加熱ブロック4に対して包埋カセット1を過度に接触させることなく、載置面2a上に確実に留まらせることができるうえ、包埋カセット1の向きを過度に変化(例えば、90度回転してしまう等)させることなく留まらせることができる。
よって、コンベア等を利用して載置面2a上に包埋カセット1を搬入させる構成にしたとしても、上記ガイド部21により安定的な包埋カセット1の載置を実現できるので、搬入時の機械化等に対応し易い。
【0094】
また、上記第1実施形態において、図11に示すように加熱板2内の孔形状からなる回収部12を厚さ方向に亘ってストレート状に形成し、加熱板2の下面側に上記回収部12の開口を囲むリング部材22を設けても構わない。
この場合であっても、融解したパラフィンPが上記回収部12を通過する際に加熱板2の下面側に回り込んでしまうことをリング部材22で規制することができるので、回収部12がパラフィンPで塞がり難いうえ、パラフィンPを回収容器6に向けてスムーズに落下させ易い。
なお、孔形状からなる回収部12の代わりとして、加熱板2にパラフィンPを回収容器6に導く、溝形状からなる回収部を設けても構わない。
【0095】
また、上記第1実施形態において、図12に示すように、加熱板2の上方に載置された包埋カセット1の上方を覆う着脱自在のトラップパネル(カバー体)23を配設しても構わない。
具体的にこのトラップパネル23は、金属性のプレートの上面に複数のフィン23aが取り付けられた放熱部材であり、パラフィンPの融点よりも低い温度を維持するように設定されている。
【0096】
このようにトラップパネル23を配設することで、包埋カセット1の加熱時にパラフィンPが仮に気化したとしても、この気化したパラフィンPをこのトラップパネル23に付着させることができる。すると、この付着したパラフィンPは、トラップパネル23がパラフィンPの融点よりも低い温度に設定されているので速やかに固まり固着する。これにより、付着したパラフィンPが包埋ブロックBや包埋カセット1に向けて落下して、再固着してしまうことを防ぐことができる。
【0097】
このように、気化したパラフィンPをトラップパネル23に積極的に固着させることができるので、気化したパラフィンPが意図しない箇所に固着したり、包埋ブロックBや包埋カセット1に再固着したりしてしまうことを防止することができる。しかも、固着したパラフィンPが多量に蓄積した場合には、トラップパネル23を容易に交換することも可能である。また、トラップパネル23が包埋カセット1の上方を覆っているので、パラフィンPの加熱時に臭気が発生したとしても、該臭気を閉じ込め易い。
【0098】
また、上記第1実施形態において、回収容器6を加熱容器6aとゴム製の容器本体6bとで構成したが、耐熱ゴム製の容器をヒータで直接加熱しても構わない。この場合、ヒータが容器加熱手段として機能する。
【0099】
また、上記第1実施形態では、第1加熱ブロック3と第2加熱ブロック4とで包埋カセット1を挟み込んで加熱した後、第2加熱ブロック4を第1加熱ブロック3から離間させたが、直ちに離間させる必要はない。
例えば、図13に示すように、第2加熱ブロック4を対角線に沿って第1加熱ブロック3に接近するように移動させ、両加熱ブロック3、4で包埋カセット1を挟み込む(挟圧工程)と同時に加熱(加熱工程)を行っている最中に、第2加熱ブロック4を往復移動させても構わない。具体的には、第2加熱ブロック4を包埋カセット1の側面1Rに接触させたまま、該側面1Rに沿って第2加熱ブロック4を往復移動させる。
【0100】
こうすることで、包埋カセット1を単に加熱するだけの場合よりも、固着してしまった不要なパラフィンPを側面1Rから擦り落とすように溶かし取ることができる。従って、パラフィンPの除去をより確実に行うことができる。
【0101】
なお、図示の場合では、第2加熱ブロック4を包埋カセット1の側面1Rに沿って往復移動させた例を示したが、第2加熱ブロック4を後面1Bに接触させたまま、該後面1Bに沿って往復移動させても構わない。更には、包埋カセット1の向きを略180度変えた状態で加熱板2の載置面2a上に載置した場合には、包埋カセット1の側面1L又は前面1FからパラフィンPをより確実に溶かし取ることも可能である。特に、先に述べたように、包埋カセット1の前面1Fには識別コードが記録されているので、前面1FからパラフィンPを溶かし取ることが好ましい。
【0102】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態について図面を参照して説明する。
なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分について、同一の符号を付しその説明を省略する。
本実施形態の包埋剤除去装置30は、包埋カセット1を加熱板2に搬入する工程、及び加熱が終了した包埋カセット1を搬出する工程を含め、全て自動に行われるように構成された装置である。
【0103】
〔包埋剤除去装置〕
本実施形態の包埋剤除去装置30は、図14に示すように、包埋カセット1を複数収容する収容体31と、該収容体31に収容されている複数の包埋カセット1の中から任意に選択した1つを、加熱板2の載置面2a上に載置する搬入部32と、加熱が終了した包埋カセット1を払拭台33上に移送させる移送部34と、払拭台33上にて包埋カセット1の底面1C及び4つの側面1F、1B、1L、1Rを同時又は各別に払拭布65、66、67で払拭する払拭部35と、払拭された包埋カセット1を搬出すると共に保管体36に収納する搬出部37と、これら各構成品を内部に収容する装置ケース38と、を備えている。
【0104】
はじめに、装置ケース38について説明する。
この装置ケース38は、全体的に箱型に形成されており、内部空間が中間パネル38aによって上部空間E1と下部空間E2とに区分けされている。そして、上部空間E1内に主な各構成品が配設されている。また、この装置ケース38に温度制御部11及び制御部7が接続されている。
【0105】
次に、本実施形態の加熱板2及び回収容器6の配設位置について説明する。
まず、上部空間E1内には、中間パネル38a上に固定された支持枠体40が配設されており、この支持枠体40の上部に搬入板41及び加熱板2が並設した状態で略水平に支持されている。
また、支持枠体40の下方に位置する下部空間E2内には、回収容器6が重量検知台15上に載置された状態で配設されている。なお、中間パネル38aには図示しない開口部が形成されており、融解されたパラフィンPは加熱板2の回収部12を通過後、支持枠体40の内部及びこの開口部を通過した後に回収容器6内に落下して回収されるようになっている。
【0106】
次に、収容体31について説明する。
この収容体31は、上部空間E1内にて加熱板2から離間し、且つ略同じ高さで配設されており、一方向に延出した長尺な供給台42と、この供給台42上に配設されたコンベア43と、該コンベア43上にセットされた収納トレー44と、を備えている。
【0107】
供給台42は、コンベア43を間に挟んで平行に配設された一対のガイド壁部42aが上面から突出しており、断面視略C形状に形成されている。コンベア43は供給台42の上面に配設され、該上面と一対のガイド壁部42aとで画成された部分に収まっている。そして、このコンベア43は、図示しない駆動機構により供給台42の長手方向に移動可能とされている。
【0108】
収納トレー44は、包埋カセット1が収容自在とされた断面視略C形状のトレーであり、コンベア43上に一列に並べられた状態で複数セットされている。そして、これら複数の収納トレー44のそれぞれに包埋カセット1が収容されている。
よって、複数の包埋カセット1は、収納トレー44に収容された状態でコンベア43の移動に伴って供給台42上を移動可能とされている。
【0109】
次に、搬入部32について説明する。
この搬入部32は、収容体31に収容されている複数の包埋カセット1の中から、任意に選択した包埋カセット1を上記搬入板41上に搬送する第1搬入部50と、搬送された包埋カセット1を加熱板2の載置面2a上に送り込む第2搬入部51と、を備えている。
【0110】
第1搬入部50は、上記供給台42及び上記搬入板41の上方に配設されると共に、両者の間に架け渡されるように配設されたガイドレール52と、このガイドレール52に沿って移動可能とされたハンド部53と、を備えている。
ハンド部53は、上下動可能とされていると共に、一対の爪部53aを利用して包埋カセット1の前後面1F、1Bを挟持可能とされている。これにより、収納トレー44に収容されている包埋カセット1を収容体31から取り出し、搬入板41上に搬送することが可能とされている。
なお、供給台42のガイド壁部42aのうち、ガイドレール52の真下に位置する一部には、切欠部が形成されており、搬出口42bとして機能している。そのため、包埋カセット1を持ち上げなくても、スライドさせるだけで搬出口42bを通じて収容体31から包埋カセット1を取り出すことが可能とされている。
【0111】
ところで、搬入板41上には、図14及び図15に示すように、ハンド部53によって搬送されてきた包埋カセット1を位置決めさせるための位置決めブロック55が固定されている。これにより、この位置決めブロック55を利用して、毎回決まった位置に包埋カセット1を搬送することが可能とされている。
また、搬入板41上には、位置決めブロック55によって位置決めされた包埋カセット1を、搬入板41上を滑らすように押し出して載置面2a上に送り込む押し出しブロック56が配設されている。この押し出しブロック56は、押し出し本体部57に対して移動自在とされた押し出しロッド58の先端に固定されている。包埋カセット1は、この押し出しブロック56によって、搬入板41上から加熱板2の載置面2a上に押し出されるようになっている。
これら押し出し本体部57、押し出しロッド58及び押し出しブロック56は、上記第2搬入部51として機能する。
【0112】
ところで、本実施形態の第2加熱ブロック4は、押し出しブロック56の押し出し先に位置するように配設されており、可動本体部60に対して移動自在とされた可動ロッド61の先端に固定されている。よって、第2加熱ブロック4は、可動ロッド61の移動により第1加熱ブロック3に対して接近離間し、該第1加熱ブロック3と協働して包埋カセット1を囲繞しながら挟み込むことが可能とされている。
なお、上述した可動本体部60及び可動ロッド61は、可動部5として機能する。また、可動本体部60は、加熱板2の隅角部に固定されている。
【0113】
次に払拭台33について説明する。
図14に示すように、この払拭台33は、供給台42に対して平行に延在するように長尺に形成された台であり、上面が加熱板2の載置面2aと面一となるように高さ設定された状態で、一端側が加熱板2に連結固定されている。また、払拭台33の他端側には、保管体36に連結されたスライダー62が固定されている。
なお、払拭台33の横幅は、包埋カセット1の左右方向の横幅と略同一とされている。また、この払拭台33は、加熱板2、第1加熱ブロック3、第2加熱ブロック4及び加熱容器6aと同様に、内部に図示しないヒータが内蔵されており温度制御部11によってパラフィンPの融点以上、沸点以下の温度に加熱されている。
【0114】
ところで、本実施形態の包埋剤除去装置30は、上記払拭台33上にて、まず包埋カセット1の4つの側面1F、1B、1L、1Rのうち、前後面1F、1Bを払拭し、その後、残りの左右面1L、1Rを払拭し、その後、底面1Cを払拭するように構成されている。つまり、3つの払拭布65、66、67を利用して、上記順番で各別に払拭するように構成されている。
【0115】
次にこれら3つの払拭布65、66、67について説明する。
これら3つの払拭布65、66、67は、全て一方向に延在した帯状に形成されており、ロール状に巻回されたロール部65a、66a、67aから引き出されて使用される。なお、払拭布65、66、67の材質としては、紙、綿100%等の織布や不織布であっても良く、特に限定されるものではない。但し、一定の引っ張り強さを有し、伸びが少なく、パラフィンPの吸込み性が良い材質であることが好ましい。
【0116】
また、3つの払拭布65、66、67のうち、第1払拭布65は包埋カセット1の前後面1F、1Bを払拭することに使用され、第2払拭布66は包埋カセット1の左右面1L、1Rを払拭することに使用され、第3払拭布67は包埋カセット1の底面1Cを払拭することに使用される。
【0117】
第1払拭布65は、中間パネル38a上に固定された支持板70にロール部65aが回転自在に保持されており、下部空間E2内に配設された第1引出部72によって引き出されて使用されている。この際、第1払拭布65は、ロール部65aから引き出された後、払拭台33の側方及び下方を囲むように取り回されるようになっている。
【0118】
詳細に説明する。
図14及び図16に示すように、払拭台33と中間パネル38aとの間には、側面払拭用架台80が配設されている。この側面払拭用架台80は払拭台33に沿って長尺に形成されており、天壁部81が払拭台33の下方に位置している。この天壁部81上には、払拭台33を間に挟んで向かい合うように、一対の土台部82が固定されている。この土台部82は、その上面が払拭台33上に載置される包埋カセット1の上面よりも高くなるように高さ調整されている。そして、これら一対の土台部82の上面に、方向転換ローラ83が回転自在に支持されている。また、天壁部81には、一対の土台部82よりも内側に第1払拭布65を挿通させる挿通孔81a(図16参照)が形成されている。
【0119】
そして、第1払拭布65は、ロール部65aから引き出された後、該ロール部65a側に位置する方向転換ローラ83によって下方に向きを変え、挿通孔81aを通過して一旦天壁部81の下方に引き回される。そして、側面払拭用架台80に固定された2本の下方ローラ84(図16参照)に掛け渡された後、再度挿通孔81aを通過して天壁部81の上方に引き回され、その後、残りの方向転換ローラ83に掛け渡されることで、側面払拭用架台80の外側を通過しながら中間パネル38aに向かう。そして、中間パネル38aに形成されたスリット状の貫通孔85(図14参照)を通過した後、第1引出部72を介して巻取部86にロール状に巻き取られるようになっている。
【0120】
このように、第1払拭布65は、払拭台33の側方及び下方を囲むように取り回されながら第1引出部72によって引き出され、最終的に巻取部86に巻き取られるように設計されている。
【0121】
続いて、第2払拭布66について説明する。
この第2払拭布66は、図14に示すように、第1払拭布65と同じ支持板70にロール部66aが回転自在に保持されており、該第1払拭布65とスライダー62との間に配設されている。そして、図14及び図17に示すように、上述した第1払拭布65の各取り回し機構と同じ機構により、払拭台33の側方及び下方を囲むように取り回されながら第2引出部73によって引き出され、最終的に巻取部86に巻き取られるように設計されている。よって、各構成品の詳細な説明は、上記と同様であるので省略する。
【0122】
続いて、第3払拭布67について説明する。
この第3払拭布67は、図14に示すように、第1払拭布65及び第2払拭布66が支持された支持板70に対して平行に配設された状態で中間パネル38a上に固定された支持板71にロール部67aが回転自在に保持されており、第2払拭布66とスライダー62との間に配設されている。そして、第3払拭布67は、ロール部67aから引き出された後、払拭台33の上面に重なるように取り回されるようになっている。
【0123】
詳細に説明する。
図14及び図18に示すうに、払拭台33と中間パネル38aとの間には、底面払拭用架台87が配設されている。この底面払拭用架台87は、支柱部88を介して中間パネル38a上に固定されており、払拭台33の下方に位置している。この底面払拭用架台87上には、ロール部67a側に方向転換ローラ89aが回転自在に支持されている。この際、方向転換ローラ89aは、その最下点が払拭台33の上面に面一となるように高さ調整されている。
一方、底面払拭用架台87上において、払拭台33を挟んで上記方向転換ローラ89aに向かい合う位置には、もう1つの方向転換ローラ89bが回転自在に支持されている。この方向転換ローラ89bは、最上点が払拭台33の上面に面一となるように高さ調整されている。
【0124】
また、底面払拭用架台87上には、上記2つの方向転換ローラ89a、89bよりも内側に一対のカセット規制板90が払拭台33を挟んで向かい合うように配設されている。この一対のカセット規制板90は、移送されてきた包埋カセット1の左右面1L、1Rに接し、第3払拭布67の移動に伴って包埋カセット1が横滑りすることを規制する役割を担っている。
【0125】
そして、第3払拭布67は、ロール部67aから引き出された後、該ロール部67a側に位置する方向転換ローラ89aによって水平に向きを変え、払拭台33の上面に重なった状態で引き回された後、残りの方向転換ローラ89bに掛け渡されることで、下方に向きを変えて底面払拭用架台87の外側を通過しながら中間パネル38aに向かう。そして、中間パネル38aに形成されたスリット状の貫通孔85を通過した後、第3引出部74を介して巻取部86にロール状に巻き取られるようになっている。
【0126】
このように、第3払拭布67は、払拭台33の上面に重なるように取り回されながら第3引出部74によって引き出され、最終的に巻取部86に巻き取られるように設計されている。
【0127】
ところで、本実施形態では、払拭台33上において、上述した第1払拭布65、第2払拭布66及び第3払拭布67が待機している位置をそれぞれ第1払拭ポイント、第2払拭ポイント及び第3払拭ポイントとする。また、加熱板2と第1払拭ポイントとの間には、包埋カセット1の前後を判別する判別ポイントが設定されている。
【0128】
この判別ポイントにおいては、図14及び図19に示すように、払拭台33を挟んで一対のセンサ(判別部)91が向かい合うように配設されている。これら一対のセンサ91は、判別ポイントに移送されてきた払拭台33上の包埋カセット1の前後面1F、1Bに向けてそれぞれ検出光L1を照射すると共に、その反射光L2を受光するセンサとされている。そして、制御部7は、これら一対のセンサ91による反射光L2の受光の有無によって包埋カセット1の前後を判別するようになっている。
【0129】
詳細には、図19に示すように、包埋カセット1の前面1Fは識別コードが付与される傾斜面になっているので、照射された検出光L1は、照射方向とは異なる方向に反射される。そのため、前面1Fに検出光L1を照射しているセンサ91は反射光L2を受光することがない。一方、包埋カセット1の後面1Bは垂直な面であるので、照射された検出光L1は照射方向と同じ方向に反射される。そのため、後面1Bに検出光L1を照射しているセンサ91は反射光L2を受光することになる。
このように、一対のセンサ91による反射光L2の有無に基づいて、包埋カセット1の判別を行うことが可能とされている。
【0130】
次に移送部34について説明する。
図14に示すように移送部34は、加熱板2上にて加熱が終了した包埋カセット1を、載置面2a上から払拭台33上の各位置、具体的には判別ポイント、第1払拭ポイント、第2払拭ポイント及び第3払拭ポイントに、この順番でそれぞれ移送する部材であって、第1移送ハンド(移送ハンド)95と、第2移送ハンド(移送ハンド)96と、を備えている。
【0131】
第1移送ハンド95は、払拭台33の上方に前後左右及び上下方向に移動可能で、且つ上下軸回りに回転可能とされ、載置面2a上に載置された包埋カセット1の左右面1L、1Rを挟持しながら載置面2a上及び払拭台33上を滑らすことで、包埋カセット1を移送するハンドである。
【0132】
具体的にこの第1移送ハンド95は、包埋カセット1を載置面2a上から判別ポイントに移送し、その後、判別ポイントから第1払拭ポイントに移送し、その後、第1払拭ポイントから第2払拭ポイントに移送するように制御部7によって制御されている。
【0133】
特に、制御部7は、判別ポイントにて包埋カセット1の前面1Fが各払拭布65、66、67のロール部65a、66a、67a側に向いていると判別した場合には、該判別ポイントから第1払拭ポイントに包埋カセット1を移送する際に、包埋カセット1の向きを180度方向変換するように第1移送ハンド95を制御するようになっている。
この場合、第1移送ハンド95は、上下軸回りに180度回転して、払拭台33上で滑らせながら包埋カセット1の向きを変え、前面1Fを供給台42側に向けながら第1払拭ポイントに移送するようになっている。
【0134】
また、制御部7は、第1払拭ポイントから第2払拭ポイントに包埋カセット1を移送させる際に、包埋カセット1の向きを90度方向変換させ、前面1Fがスライダー62側に向くように第1移送ハンド95を制御するようにもなっている。
なお、上述したように、第1移送ハンド95は、どのポイントに包埋カセット1を移送する場合であっても、包埋カセット1の左右面1L、1Rを挟持し、包埋カセット1の前後面1F、1Bを挟持することがない。
【0135】
続いて、第2移送ハンド96は、払拭台33の上方に前後左右及び上下方向に移動可能とされ、包埋カセット1の前後面1F、1Bを挟持しながら払拭台33上を滑らすことで、包埋カセット1を移送するハンドである。
具体的にこの第2移送ハンド96は、第2払拭ポイントから第3払拭ポイントに移送し、その後、第3払拭ポイントからスライダー62まで移送するように制御部7によって制御されている。
【0136】
特に、第2移送ハンド96は、第1移送ハンド95が触っていない包埋カセット1の前後面1F、1Bを挟持しながら移送するようになっている。また、第2移送ハンド96は、包埋カセット1を第3払拭ポイントに移送した際に、該包埋カセット1を下方に押し付けて、相対的に第3払拭布67を包埋カセット1の底面1Cに押し当てる役割も担っている。
【0137】
次に、払拭部35について説明する。
払拭部35は、第1払拭布65を利用して包埋カセット1の前後面1F、1Bを払拭する第1払拭部100と、第2払拭布66を利用して包埋カセット1の左右面1L、1Rを払拭する第2払拭部101と、第3払拭布67を利用して包埋カセット1の底面1Cを払拭する第3払拭部102と、を備えている。
【0138】
第1払拭部100は、図14及び図16に示すように、第1払拭布65の一部分を包埋カセット1の前後面1F、1Bに押し当てる一対の押圧ブロック(押圧部)110と、押し当てられた第1払拭布65をその長手方向に沿って移動させる上記第1引出部(移動部)72と、で構成されている。
一対の押圧ブロック110は、上述した一対の土台部82内に移動可能に内蔵されており、第1移送ハンド95によって包埋カセット1が第1払拭ポイントに搬送されると、包埋カセット1側に移動して、第1払拭布65を前後面1F、1Bに押し当てるようになっている。この際、供給台42側に位置する押圧ブロック110は、包埋カセット1の前面1Fの傾斜に合わせて接触面が傾斜しており、前面1Fの全体に第1払拭布65を押し当てることが可能とされている。
【0139】
なお、これら一対の押圧ブロック110は、制御部7によって作動が制御されていると共に、内部に図示しないヒータが組み込まれて、パラフィンPの融点以上、沸点以下の温度に加熱されている。これにより、第1払拭布65を加熱した状態で、包埋カセット1の前後面1F、1Bに押し当てることが可能とされている。
また、制御部7は、第1払拭布65が包埋カセット1の前後面1F、1Bに押し当てられた後、第1引出部72を作動させることで、包埋カセット1の前後面1F、1Bを払拭させるようになっている。
【0140】
第2払拭部101は、図14及び図17に示すように、第2払拭布66の一部分を包埋カセット1の左右面1L、1Rに押し当てる一対の押圧ブロック(押圧部)111と、押し当てられた第2払拭布66をその長手方向に沿って移動させる上記第2引出部(移動部)73と、で構成されている。一対の押圧ブロック111は、上述した第1払拭部100と同様の作動をするので説明を省略する。
【0141】
第3払拭部102は、図14及び図18に示すように、包埋カセット1を下方に押し付け(図18に示す矢印F)、第3払拭布67の一部分を包埋カセット1の底面1Cに押し当てる上記第2移送ハンド(押圧部)96と、押し当てられた第3払拭布67をその長手方向に沿って移動させる上記第3引出部(移動部)74と、で構成されている。
第3払拭布67によって包埋カセット1の底面1Cを払拭する場合であっても、払拭台33が加熱されているので、やはり第3払拭布67を加熱した状態で包埋カセット1の底面1Cを払拭できるようになっている。
【0142】
ところで、上述した各払拭部35を構成する3つの引出部72、73、74は、図20に示すように各払拭布65、66、67を間に挟んで互いに噛合する駆動ギア(回転体)115及び従動ギア(回転体)116で構成されている。駆動ギア115は、制御部7によって作動が制御されており、間欠的に回転駆動する。この駆動ギア115の駆動により従動ギア116が追従して回転し、両ギア115、116の間に挟み込まれた各払拭布65、66、67を滑らせることなく確実に移動させることが可能とされている。
なお、本実施形態では、駆動ギア115及び従動ギア116を利用して各払拭布65、66、67を移動させるが、この場合に限られるものではなく、2つの回転体(例えばゴムローラ等)で各払拭布65、66、67を挟み込みながら移動させる構成とされていれば良い。この際、ギアのように外周面が凹凸形状に形成されていることが好ましい。
【0143】
次に、保管体36及び搬出部37について説明する。
図14に示すように、本実施形態の保管体36は、単なる箱型のトレーとされ、装置ケース38の外側に配設されている。そして、この保管体36と、払拭台33の他端側との間に架け渡されるようにスライダー62が配設されている。
また、第2移送ハンド96は、包埋カセット1の底面1Cの払拭が終了した後、該包埋カセット1を第3払拭ポイントからスライダー62の入口まで移送し、該スライダー62に投入する。これにより、包埋カセット1は、払拭台33上から搬出されると共に、保管体36に収納されるようになっている。よって、第2移送ハンド96及びスライダー62は、搬出部37として機能する。
【0144】
〔包埋剤除去装置の作用〕
次に、上述したように構成された包埋剤除去装置30を利用して、包埋カセット1に固着した不要なパラフィンPを除去する方法について説明する。
はじめに、図14に示すように、収容体31のコンベア43上には、複数の収納トレー44がセットされていると共に、これら各収納トレー44に包埋カセット1が収容されているものとする。この際、包埋カセット1は、装置ケース38bの外方に前面1Fが向くように収容されているものとする。
また、加熱板2、第1加熱ブロック3、第2加熱ブロック4、加熱容器6a、払拭台33及び押圧ブロック110、111のそれぞれが、パラフィンPの融点以上、沸点以下の温度に加熱されているものとする。
【0145】
まず、収容体31に収容されている複数の包埋カセット1の中から、任意に選択した1つを加熱板2の載置面2a上に載置する搬入工程を行う。
詳細に説明する。
コンベア43の移動によって包埋カセット1が供給台42に形成された搬出口42bに達すると、コンベア43が一時停止すると共に、第1搬入部50のハンド部53がガイドレール52に沿って包埋カセット1の真上に移動する。そして、このハンド部53は、包埋カセット1の前後面1F、1Bを挟持しながら搬出口42bを通じて包埋カセット1をスライド移動させ、搬入板41上に搬送する。この際、包埋カセット1は、図15に示すように、位置決めブロック55に接した状態で位置決めされる。
なお、搬送が終了したハンド部53は、次の包埋カセット1の搬送に備えて待機状態に移行する。
【0146】
包埋カセット1が搬入板41上に搬送されると、第2搬入部51の押し出しロッド58が可動して、押し出しブロック56を介して包埋カセット1を滑らすように押し出す。これにより、包埋カセット1は、加熱板2の載置面2a上にスライド移動し、第2加熱ブロック4に接した状態で位置決めされる。
この時点で、搬入工程が終了する。
【0147】
続いて、可動ロッド61が可動して、第2加熱ブロック4を介して包埋カセット1を載置面2a上で滑らせながら第1加熱ブロック3に接近させるように移動させる。その結果、第2加熱ブロック4は、第1加熱ブロック3と協働して包埋カセット1を囲繞しながら挟み込むことができる(挟圧工程)。
これ以降、先に説明した第1実施形態と同様に、加熱板2、第1加熱ブロック3及び第2加熱ブロック4による加熱工程が行われ、固着した不要なパラフィンPを融解し、包埋カセット1から溶かし取るように除去する作業が行われる。
【0148】
ところで、本実施形態の包埋剤除去装置30によれば、この後さらに包埋カセット1の底面1C及び4つの側面1F、1B、1L、1Rを払拭する作業が自動的に行われる。
まず、加熱によってパラフィンPの融解が終了すると、可動ロッド61が元の状態に復帰して第2加熱ブロック4が第1加熱ブロック3から離間し、包埋カセット1の挟み込みが解除される。
【0149】
すると、第1移送ハンド95が包埋カセット1の左右面1L、1Rを挟持して、包埋カセット1を加熱板2の載置面2a上及び払拭台33上を滑らせながら移動させ、払拭台33の判別ポイントに移動させる。そして、この位置で包埋カセット1の前後を正確に判別して、再確認する作業が行われる。
具体的には、図19に示すように、一対のセンサ91より包埋カセット1の前後面1F、1Bに検出光L1を照射し、その反射光L2の有無に基づいて前後を判別する。判別した結果、包埋カセット1の前面1Fが供給台42側に向いている場合には、第1移送ハンド95が包埋カセット1の左右面1L、1Rを挟持した後、払拭台33上を滑らせながら包埋カセット1をそのままの向きで第1払拭ポイントに移送する。
【0150】
これに対して、包埋カセット1の後面1Bが供給台42側に向いていると判別した場合には、第1移送ハンド95が包埋カセット1の左右面1L、1Rを挟持した後、上下軸回りに180度回転し、払拭台33上にて包埋カセット1の向きを反転させ、その後、払拭台33上を滑らせながら包埋カセット1を第1払拭ポイントに移送する。
【0151】
このように、収納トレー44に収容されている時に、仮に包埋カセット1の向きが間違って逆向きに収容されていたとしても、向きを正しく修正でき、必ず決まった向きで第1払拭ポイントに移送することができる。
【0152】
そして、包埋カセット1が第1払拭ポイントに移送されてくると、図14及び図16に示すように、一対の押圧ブロック110が包埋カセット1側に移動して、包埋カセット1の前後面1F、1Bに対して第1払拭布65をそれぞれ押し当てる。この際、上述したように包埋カセット1の前面1Fが必ず決まった向き(供給台42側に位置した向き)に向いているので、前後面1F、1Bと一対の押圧ブロック110とを確実に面合わせでき、前後面1F、1Bの全面に第1払拭布65をそれぞれ押し当てることができる。
【0153】
続いて、第1払拭布65の押し当てが終了した後、第1引出部72の駆動ギア115を回転駆動させる。これにより、駆動ギア115と従動ギア116との間で挟み込んでいる第1払拭布65を移動させることができ、この第1払拭布65を利用して包埋カセット1の前後面1F、1Bを払拭することができる。
従って、先ほど融解したパラフィンPが前後面1F、1Bに残存していたとしても、この時点で残滓を拭き取ることができ、前後面1F、1BをパラフィンPがより確実に取り除かれたクリーン面に仕上げることができる。しかも、第1払拭布65を加熱した状態で払拭するので、残ったパラフィンPを溶かしながら拭き取ることができ、拭き取り効果を高めることができる。
【0154】
特に、帯状の第1払拭布65を移動させる方式であるので、同じ部分で何度も払拭を行うのではなく、清浄な部分を利用して拭き取りを行うことができ、前後面1F、1Bをよりクリーンな面に仕上げ易い。
また、第1払拭布65を前後面1F、1Bに押し当てながら該第1払拭布65を移動させるので、摩擦抵抗が生じ易いが、互いに噛合している駆動ギア115と従動ギア116との間で第1払拭布65を挟み込んでいるので、滑り等を発生させることなく第1払拭布65を確実に移動させて、払拭作業を行うことができる。
【0155】
そして、包埋カセット1の前後面1F、1Bの払拭が終了すると、第1引出部72の駆動ギア115が停止すると共に、一対の押圧ブロック110が元の状態に復帰して第1払拭布65の押し付けが解除される。そして、第1移送ハンド95が再度包埋カセット1の左右面1L、1Rを挟持し、払拭台33上を滑らせながら包埋カセット1を第2払拭ポイントに移送させる。また、この際、第1移送ハンド95は、上下軸回りに90度回転して、前面1Fがスライダー62側に向くように包埋カセット1の向きを払拭台33上で1/4回転させる。
これにより、包埋カセット1は、図14に示すように前面1Fがスライダー62側に向いた状態で第2払拭ポイントに配設される。
【0156】
包埋カセット1が第2払拭ポイントに移送されてくると、図14及び図17に示すように、一対の押圧ブロック111が包埋カセット1側に移動して、包埋カセット1の左右面1L、1Rに対して第2払拭布66をそれぞれ押し当てる。続いて、第2引出部73の駆動ギア115を回転駆動し、この駆動ギア115と従動ギア116との間で挟み込んでいる第2払拭布66を移動させる。これにより、第2払拭布66を利用して包埋カセット1の左右面1L、1Rを払拭することができる。
従って、融解したパラフィンPが左右面1L、1Rに残存していたとしても、この時点で残滓を拭き取ることができ、左右面1L、1Rをクリーン面に仕上げることができる。
【0157】
このように、包埋カセット1の左右面1L、1Rの払拭が終了した時点で、4つの側面1F、1B、1L、1Rの全てをクリーン面に仕上げることができる。また、左右面1L、1Rの払拭が終了すると、第2引出部73の駆動ギア115が停止すると共に、一対の押圧ブロック111が元の状態に復帰して第2払拭布66の押し付けが解除される。
続いて、第1移送ハンド95ではなく、第2移送ハンド96が包埋カセット1の前後面1F、1Bを挟持し、払拭台33上を滑らせながら包埋カセット1を第3払拭ポイントに移送させる。
【0158】
そして、包埋カセット1が第3払拭ポイントに移送されてくると、図14及び図18に示すように、該包埋カセット1は自然と第3払拭布67上に乗った状態となる。そして、第2移送ハンド96は移送してきた包埋カセット1を下向きに押し付ける。これにより、第3払拭布67は、相対的に包埋カセット1の底面1Cに押し付けられた状態となる。
続いて、第3引出部74の駆動ギア115を回転駆動し、この駆動ギア115と従動ギア116との間で挟み込んでいる第3払拭布67を移動させる。これにより、第3払拭布67を利用して包埋カセット1の底面1Cを払拭することができる。従って、融解したパラフィンPが底面1Cに残存していたとしても、この時点で残滓を拭き取ることができ、底面1Cをクリーン面に仕上げることができる。
なお、包埋カセット1は、カセット規制板90によって抑えられているので、第3払拭布67によって横滑りしてしまうことがない。
【0159】
上述したように、本実施形態では、包埋カセット1の前後面1F、1B、左右面1L、1R及び底面1Cを、この順番で各別に払拭する払拭工程を行い、これらの面を全てクリーン面に仕上げることができる。
そして、上記払拭工程が終了すると、再度第2移送ハンド96が払拭台33上を滑らせながら包埋カセット1を払拭台33の他端側まで移送し、スライダー62の入口に投入する。すると、包埋カセット1は、このスライダー62を滑り降り、自動的に保管体36に収納される。これにより、包埋剤除去装置30からの包埋カセット1の搬出と、保管体36への収納を行う搬出工程が終了する。
【0160】
そして、上述した一連の作業を、収容体31に収容されている包埋カセット1に対して順番に行うことで、これら複数の包埋カセット1を次々と処理することができ、効率良く短時間で大量の包埋カセット1からのパラフィン除去作業を行うことができる。従って、非常に使い易く、自動化に対応し、且つ処理能力に優れた高性能な装置とすることができる。
【0161】
特に、パラフィンPを溶かし取った後に払拭するので、不要なパラフィンPをより確実に除去することができ、その後に行われる包埋ブロックBの薄切作業を高精度に行わせることができ、高品質な薄切片Mの作製に繋げることができる。
【0162】
しかも、払拭作業を行っている際、第1移送ハンド95及び第2移送ハンド96の2つのハンドを使い分けており、これらハンド95、96によって包埋カセット1が汚れてしまったり、或いは、パラフィンPが付着してしまったりすることを防いでいる。
この点、詳細に説明する。
本第2実施形態では、加熱板2、第1加熱ブロック3及び第2加熱ブロック4によって、包埋カセット1からパラフィンPを溶かし取った後、図21に示すように、第1移送ハンド95により包埋カセット1の左右面1L、1Rを挟持しながら判別ポイント及び第1払拭ポイントに移送させ、その後、包埋カセット1の向きを90度変えながら第2払拭ポイントに移送させている。
【0163】
また、包埋カセット14つの側面1F、1B、1L、1RにパラフィンPが溶け残っていた(図21に示す符号P)としても、第1払拭ポイントで包埋ブロックBの前後面1F、1Bを払拭するので、この前後面1F、1BからパラフィンPを除去することができ、第2払拭ポイントで包埋ブロックBの左右面1L、1Rを払拭するので、この左右面1L、1RからパラフィンPを除去することができる。
つまり、前後面1F、1Bより後に左右面1L、1Rを払拭するように構成されている。そして、第1移送ハンド95は、その左右面1L、1Rを挟持しながら第2払拭ポイントまで包埋カセット1を移送している。そのため、第1移送ハンド95が仮に汚れていたとしても、第2払拭ポイントで左右面1L、1Rを払拭するので、第1移送ハンド95の汚れが包埋カセット1に影響を与えることがない。
【0164】
そして、包埋カセット1の左右面1L、1Rの払拭が終了した後の段階は、第1移送ハンド95とは別の第2移送ハンド96により包埋カセット1を移送している。この第2移送ハンド96は、4つの側面1F、1B、1L、1Rの全てが払拭された後の包埋カセット1を移送するハンドであるので、清浄なハンドとして利用することができる。従って、第2払拭ポイント以降、スライダー62に移送するまで包埋カセット1を清浄な状態のまま移送することができる。
【0165】
このように、第1移送ハンド95及び第2移送ハンド96の2つのハンドを使い分けているので、包埋カセット1が汚れてしまったり、或いは、パラフィンPが付着してしまったりし難い。
【0166】
更に、上記第2実施形態では第1移送ハンド95及び第2移送ハンド96が払拭台33上を滑らすように包埋カセット1を移送させるが、この払拭台33は加熱された状態となっている。そのため、溶けたパラフィンPが包埋カセット1の底面1Cに残っていたとしても、移送中に冷えて固化し難い。よって、包埋カセット1の移送が妨げられることがないうえ、払拭台33上に溶けたパラフィンPが固着してしまうことを防止することができる。
【0167】
なお、上記第2実施形態において、供給台42を図22に示すように無端状に連結し、コンベア43をチェーン型ベルトコンベアにして、例えば50個程度の複数の収納トレー44を循環させるようにしても構わない。
【0168】
更には、図23に示すように、複数の包埋カセット1を収容可能なマガジンを収容体120として利用しても構わない。このマガジンは、仕切り板121によって収容室が多段に区画されており、各収容室に包埋カセット1が横向きに収容されるようになっている。そして、この場合には、例えば、包埋カセット1を出し入れ可能とするロボット等を搬入部として採用し、任意に選択した包埋カセット1をマガジンから取り出して載置面2a上に載置するように構成すれば良い。
【0169】
また、上記マガジンに変えて、図24に示すように、複数の包埋カセット1を収容可能なトレーを収容体125として利用しても構わない。このトレーは、仕切り板126によって収容室が縦横に区画されており、各収容室に包埋カセット1が収容されるようになっている。この場合であっても、例えばロボット等を搬入部として採用し、任意に選択した包埋カセット1をトレーから取り出して載置面2a上に載置するように構成すれば良い。
【0170】
更に、図25に示すように、複数の包埋カセット1を円状に並べながら収容可能なディスクトレイ150を収容体として利用しても構わない。
このディスクトレイ150は、環状に形成されたトレー本体151と、このトレー本体151の上面に該トレー本体151の外周縁に沿って並べられ、包埋カセット1を収納する収納トレー152と、で構成されている。
トレー本体151は、例えば図示しない回転駆動部によって回転軸線O回りに回転可能とされたプレート部材である。また、トレー本体151の上面には、回転軸線Oを間にして径方向に向かい合うように配設された2つの取手155と4つの連結柱156と、収納トレー152の径方向内側である内周縁寄りに設けられている。なお、これら2つの取手155と4つの連結柱156とは、周方向に重ならないように配置されている。
【0171】
上記連結柱156の上部端面には、連結ピン156aが立設されている。また、トレー本体151の下面には、各連結柱156の真下に位置する部分に図示しない凹部が形成されている。この凹部は、上記連結ピン156aが嵌合可能なサイズの凹部とされている。
【0172】
収納トレー152は、図25及び25に示すように、底壁部152aと、該底壁部152aに連設されて互いに向き合う左右壁152bと、これら底壁部152a及び左右壁152bに連設されて包埋カセット1の前面1Fに対向する前壁152cと、で構成されている。これにより、前面1Fを径方向内側に向けた状態で包埋カセット1を収納トレー152に収納することが可能とされている。
なお、底壁部152aは、トレー本体151の径方向内側から径方向外側に向けて漸次厚みが増すように形成されており、包埋カセット1を前傾させた状態で収納可能とされている。これにより、トレー本体151の回転による遠心力によって包埋カセット1が収納トレー152から離脱してしまうことを抑制している。
【0173】
このように構成されたディスクトレイ150を収容体として採用した場合には、小さい設置スペースで複数の包埋カセット1を効率良く収容できるので、装置全体の小型化に貢献し易い。また、2つの取手155を利用してディスクトレイ150の持ち運びを容易に行えるので、取り扱い易く使い勝手に優れている。
【0174】
更には、図27に示すように、連結柱156を利用してディスクトレイ150を積み重ねることも可能である。つまり、下段に位置するディスクトレイ150の連結柱156の連結ピン156aに、上段のディスクトレイ150の凹部を嵌合させるように、組み合わせれば良い。こうすることで、複数のディスクトレイ150を安定的に積み重ねることができ、より大量の包埋カセット1を容易に加熱前の待機状態にしておくことができる。
【0175】
また、上記第2実施形態において、包埋カセット1を移送する際、払拭台33上を滑らすように移送させたが、包埋カセット1を持ち上げながら移送させても構わない。但し、払拭台33上を滑らすように移送させることで、第1移送ハンド95及び第2移送ハンド96の構成を簡略化できるので好ましい。
【0176】
また、包埋カセット1の側面1F、1B、1L、1Rを払拭する際に、包埋カセット1の角部に第1払拭布65又は第2払拭布66を押し当てるように構成しても構わない。
例えば、包埋カセット1の左右面1L、1Rに第2払拭布66を押し当てる際、図28に示すように、包埋カセット1の角部Nに押し当たるように押圧ブロック111の上部を包埋カセット1側にオーバーハングさせても良い。こうすることで、包埋カセット1の角部NにパラフィンPが固着していたとしても、取り除くことができる。
【0177】
また、上記第2実施形態では、包埋カセット1の前後面1F、1B、左右面1L、1R、底面1Cをそれぞれ各別に払拭したが、少なくとも前後面1F、1Bと底面1Cとを同時、又は左右面1L、1Rと底面1Cとを同時に払拭しても構わない。
例えば、前後面1F、1Bと底面1Cとを同時に払拭する場合には、図29に示すように、一対の押圧ブロック110と包埋カセット1と間、及び払拭台33と包埋カセット1との間、に第1払拭布65を引き回すようにすれば良い。こうすることで、前後面1F、1Bと底面1Cとを同時に払拭することができる。
【0178】
このように構成した場合には、包埋カセット1の底面1Cを単独で払拭する必要がないので、スループットを上げることができ、払拭工程をより短時間で効率良く行うことができる。また、上記第2実施形態における第3払拭布67を無くすことができ、第1払拭布65及び第2払拭布66の2本の払拭布で済むので、構成の簡略化を図ることができる。
【0179】
また、上記実施形態では、各払拭布65、66、67をロール部65a、66a、67aから引き出した後、巻取部86に巻き取るように構成したが、ループさせて無端状にし、再利用できるように構成しても構わない。
また、このように構成する場合には、各払拭布65、66、67を途中で洗浄し、拭き取ったパラフィンPを各払拭布65、66、67から取り除くように構成することが好ましい。
【0180】
この場合には、図30に示すように、水等の液体Wが貯留された洗浄タンク130を配設し、この洗浄タンク130内を通過するように各払拭布65、66、67を取り回す。そして、洗浄タンク130内にヒータ131を設け、液体WをパラフィンPの融点以上の温度(例えば100℃程度)に加熱するように設定する。また、洗浄タンク130内に、液体W内に一定量沈み且つ液面から突出する分離板132を配設し、液面上の空間を第1空間R1と第2空間R2とに間仕切るように設定する。そして、各払拭布65、66、67を第1空間R1側から液体W内に侵入させ、分離板132の下方を潜らせて第2空間R2側から液体W外に抜けるように取り回すように構成する。
【0181】
このようにすることで、各払拭布65、66、67が第1空間R1側から液体Wに侵入した時点で、払拭布65、66、67にふき取られたパラフィンPが加熱された液体Wによって融解され、払拭布65、66、67から分離する。すると、この融解したパラフィンPは、比重が軽いため液体W中に留まることなく浮上して液面に浮いた状態となる。従って、払拭布65、66、67から分離したパラフィンPは、各払拭布65、66、67に再付着することがない。
また、液面に浮いたパラフィンPは、第1空間R1側において徐々に溜まり始めるが、分離板132で間仕切られている第2空間R2側に侵入することがない。従って、第2空間R2側の液面は、パラフィンPが浮いていない綺麗な液面となっている。
そのため、各払拭布65、66、67が分離板132の下方を潜って第2空間R2側から液体W外に抜ける際に、パラフィンPが付着することもない。
【0182】
従って、各払拭布65、66、67からパラフィンPを綺麗に取り除いた状態で下流に流すことができ、各払拭布65、66、67の再利用を行うことができる。
【0183】
また、上記第2実施形態では、トレーを保管体36として採用したが、図31に示すように、複数の包埋カセット1を個別に収納可能なマガジンを保管体140としても構わない。
この場合、第2移送ハンド96で包埋カセット1を収納させても構わないし、別のロボット等を搬出部として設け、この搬出部により包埋カセット1を収納するように構成しても構わない。特に、マガジンを保管体140とした場合には、複数の包埋カセット1の取り扱いが容易になるので、その後に行われる薄切作業等をスムーズに行い易い。また、綺麗になった包埋カセット1に塵埃等が付着し難い。
【0184】
また、上記第2実施形態では、第1移送ハンド95及び第2移送ハンド96を利用して、加熱板2上にて加熱が終了した包埋カセット1を判別ポイント、第1払拭ポイント、第2払拭ポイント及び第3払拭ポイントにこの順番で移送すると共に、スライダー62の入口に投入するために払拭台33の他端側までの移送を行っている。しかもこの移送を複数の包埋カセット1について行っている。そのため、両移送ハンド95、96には、包埋カセット1を挟持した際に、僅かに残ったパラフィンPの残滓が付着し易く、それらが蓄積してしまうことも想定される。
この場合、包埋カセット1を挟持した際に、両移送ハンド95、96と包埋カセット1とがパラフィンPによって接着し易く、包埋カセット1を所定位置にて正しい姿勢で離脱させることができない等の不具合が生じる可能性が考えられる。
【0185】
そこで、このような不具合を解消する対策を施しておくことが好ましい。
例えば、図32及び図33に示すように、第1加熱ブロック3及び第2加熱ブロック4に包埋カセット1の上面1Uを加熱するフランジ部160をそれぞれ取り付けても構わない。
先に述べたように、包埋ブロックBの作製時、不要なパラフィンPが主に包埋カセット1の4つの側面1F、1B、1L、1R及び底面1Cに固着し易いが、それに加え包埋カセット1の棚部とも呼ばれる上面1UにもパラフィンPが固着する場合がある。従って、この上面1Uに固着したパラフィンPをそのままにしておくと、上記不具合が生じ易くなってしまう。
【0186】
第1加熱ブロック3及び第2加熱ブロック4にそれぞれフランジ部160を取り付けることで、両加熱ブロック3、4で包埋カセット1を挟みこんだ際に、フランジ部160が包埋カセット1の上面1Uを覆って、該上面1Uを効率良く加熱するので、この上面1UからもパラフィンPを溶かし取ることができる。従って、上記不具合を生じ難くさせることが可能である。
【0187】
また、別の対策としては、第1移送ハンド95及び第2移送ハンド96に、包埋カセット1を両移送ハンド95、96から離脱させる方向に弾性力で押圧する弾性部材を設けても構わない。
例えば、図34及び図35に第2移送ハンド96を例に挙げて説明する。
この場合の第2移送ハンド96は、互いに接近離間可能に向かい合わせに配設され、包埋カセット1を挟持する一対の爪部96a(チャック部)にスリット170が形成されている。このスリット170は爪部96aの先端部分における中央部分に形成されている。爪部96aの根元部分には、後述するゴムリング172を保持する突起部171が外方に向けて突設されている。
【0188】
よって弾性部材は、例えば無端状のゴムリング172であり、上記スリット170を介して一対の爪部96a間に架け渡されていると共に、その両端部が上記突起部171に引っ掛けられて係合している。この際ゴムリング172は、略水平状態で爪部96a間に架け渡されている。
【0189】
このように構成することで、図36及び図37に示すように一対の爪部96aを利用して包埋カセット1の前後面1F、1Bを挟持した際、包埋カセット1及び包埋ブロックBによってゴムリング172が伸長しながら押し上げられる。そのため、挟持されている包埋カセット1には、ゴムリング172の弾性復元力が作用している。即ち、下方に押し下げられるような力(図37に示す矢印)が作用している。
従って、第2移送ハンド96が包埋カセット1を所定位置まで移送し、上記挟持を解除すると、これと同時に包埋カセット1はゴムリング172によって下方に強制的に押し出される状態となる。そのため、仮に第2移送ハンド96と包埋カセット1との間にパラフィンPによる接着力が生じていたとしても、この影響を受けることなく包埋カセット1を離脱させることができ、その結果、上記不具合を生じ難くさせることが可能である。
【0190】
なお、第2移送ハンド96を例に挙げて説明したが、第1移送ハンド95についても同様の構成を採用して、同じ作用効果を奏効させることができる。
また、ゴムリング172としては、例えばシリコンゴムからなるOリングが好ましい。特にシリコンゴムは、離型性に優れているので、包埋カセット1及び包埋ブロックBにつき難く、押し下げ力だけを作用させ易い。
また、弾性部材はゴムリング172だけに限定されるものではなく、例えばコイルバネや板ばね等を両移送ハンド95、96に組み込み、これらの弾性復元力を利用して包埋カセット1を下方に押し下げるように構成しても構わない。
【0191】
また別の対策としては、第1移送ハンド95及び第2移送ハンド96で包埋カセット1を各ポイントに移送した際に、各ポイントで両移送ハンド95、96を加熱しても構わない。
例えば、図38に示すように、第1移送ハンド95を利用して包埋カセット1を一対のセンサ91が配設された判別ポイントに移送した際に、図示しない払拭台33の下側からヒータブロック180を上昇させ、このヒータブロック180で第1移送ハンド95を加熱する。
【0192】
このように構成することで、第1移送ハンド95自身を加熱できるので、第1移送ハンド95にパラフィンPを付き難くすることができ、上記不具合を生じ難くさせることが可能である。
なお、ヒータブロック180は、判別ポイント以外のポイント(第1払拭ポイント等)に設けても構わないし、第1移送ハンド95及び第2移送ハンド96の待機位置等に設けても構わない。
【0193】
更に別の対策としては、第1移送ハンド95及び第2移送ハンド96の内部に加熱機構を組み込み、第1移送ハンド95及び第2移送ハンド96を常時又は適時加熱しておく方法も考えられる。
【0194】
また、上記第2実施形態では、判別ポイントで包埋カセット1の前後の向きを判別し、正しい向きでない場合には第1移送ハンド95により包埋カセット1を反転させて、前後の向きを入れ替えたが、コンベア43によって運ばれてきた時点で包埋カセット1の前後の向きを判別しても構わない。
【0195】
例えば、図39に示すように、供給台42のガイド壁部42aには、コンベア43を挟んで搬出口42bに向かい合うように切欠部42cが形成されている。そして、供給台42にはこの切欠部42cに隣接した状態で支持片190が取り付けられており、この支持片190上にセンサ(収容時判別部)191が固定されている。このセンサ191は、例えば反射型ファイバセンサであり、コンベア43によって搬出口42bまで運ばれてきた包埋カセット1に向けて切欠部42cを通じて検出光L1を照射している。そして、包埋カセット1で反射された反射光L2を受光すると共に、その反射光L2の光量に基づいて包埋カセット1の前後方向の判別を行うことが可能とされている。
【0196】
この場合には、搬出口42bまで搬送されてきた時点で、包埋カセット1の前面1Fがセンサ191側に向いている場合には、前面1Fの一部が傾斜面となっているため上記反射光L2の光量が小さい。これに対して、包埋カセット1の後面1Bがセンサ191側に向いている場合には、上記反射光L2の光量が大きい。従って、センサ191は、反射光L2の光量に基づいて正確に包埋カセット1の前後方向を判別することができる。
【0197】
そして、センサ191側に前面1Fが向いていると判断した場合には、第1搬入部50のハンド部53が包埋カセット1を搬入板41に搬送させて以降の各処理を行う。これに対して、センサ191側に後面1Bが向いていると判断した場合には、第1搬入部50のハンド部53が包埋カセット1の搬送を行わず、コンベア43が駆動してこの包埋カセット1を下流側に流す処理を行う。
こうすることで、後に包埋カセット1の前後方向を反転させるという無駄な動作を無くすことができ、装置全体の作業効率を効果的に高めることができる。
【0198】
また、上記の場合とは異なり、センサ191側に後面1Bが向いていると判断した場合には、第1搬入部50のハンド部53が包埋カセット1の向きを反転させながら搬入板41に搬入させるようにしても構わない。この場合であっても、後に包埋カセット1の前後方向を反転させるという無駄な動作を無くすことができる。
【0199】
また、上記第2実施形態では、3つの払拭布65、66、67を利用して包埋カセット1に残ったパラフィンPの残滓を払拭したが、拭き取ったパラフィンPが払拭布65、66、67に浸透してしまい粘性を有することが想定される。そのため、これら払拭布65、66、67が駆動ギア115及び従動ギア116をスムーズに通過して巻取部86に巻き取られるのではなく、駆動ギア115又は従動ギア116に貼り付いてしまい、巻き込みが生じてしまうことが考えられる。
【0200】
そこで、図40に示すように、例えば駆動ギア115の接触幅W1を従動ギア116の接触幅W2よりも小さくすると良い。こうすることで、払拭布65、66、67との接触面積を小さくし、且つ両ギア115、116の接触比率を変化させることができるので、上記巻き込みを抑制し易い。
なお、従動ギア116の接触幅W2を駆動ギア115の接触幅W1よりも小さくしても構わない。
【0201】
また、図41に示すように、両ギア115、116の形状を楕円状に形成しても構わない。この場合であっても、同様の作用効果を奏効することができる。
【0202】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0203】
例えば、上記各実施形態では、平面視L字状に形成された第1加熱ブロック3及び第2加熱ブロック4の2つの加熱ブロックで包埋カセット1を囲繞しながら挟み込む構成としたが、加熱ブロックの形状や数はこの場合に限定されるものではない。
例えば、平面視コ字状の加熱ブロック、及び平面視長方形状の加熱ブロックの2つの加熱ブロックで包埋カセット1を囲繞しても構わない。
また、平面視長方形状の4つの加熱ブロックで包埋カセット1を囲繞しても構わない。この場合、4つの加熱ブロックを全て移動可能に構成し、それにより包埋カセット1を囲繞しても良い。
【0204】
また、上記各実施形態では、第1加熱ブロック3と第2加熱ブロック4とで包埋カセット1を囲繞するように挟み込み、4つの側面1F、1B、1L、1Rを加熱したが、この場合に限定されるものではなく、複数の加熱ブロックで包埋カセット1を挟み込み、少なくとも2つの側面を加熱する構成とされていても良い。
この場合であっても、包埋カセット1の底面1Cと、少なくとも2つの側面と、を同時に加熱して、固着したパラフィンPを溶かし取ることができるので、同様の作用効果を奏することができる。但し、上記各実施形態のように、包埋カセット1を囲繞するように挟み込んで4つの側面1F、1B、1L、1Rを加熱することが好ましい。
【0205】
いずれにしても、複数の加熱ブロックのうちの少なくとも1つが移動可能とされ、該移動によって残りの加熱ブロックと協働して包埋カセット1を挟み込むように構成されていれば良い。
【符号の説明】
【0206】
B…包埋ブロック
P…パラフィン(包埋剤)
1…包埋カセット
1C…包埋カセットの底面
1F、1B、1L、1R…包埋カセットの側面
2…加熱板
2a…加熱板の載置面
3…第1加熱ブロック(加熱ブロック)
4…第2加熱ブロック(加熱ブロック)
5…可動部
6…回収容器
10、30…包埋剤除去装置
11…温度制御部(容器加熱手段)
12…回収部
20…排出部
23…トラップパネル(カバー体)
31、120、125…収容体
32…搬入部
33…払拭台
34…移送部
35…払拭部
36、140…保管体
37…搬出部
65…第1払拭布(払拭布)
66…第2払拭布(払拭布)
67…第3払拭布(払拭布)
72…第1引出部(移動部)
73…第2引出部(移動部)
74…第3引出部(移動部)
91…センサ(判別部)
95…第1移送ハンド(移送ハンド)
96…第2移送ハンド(移送ハンド、押圧部)
110、111…押圧ブロック(押圧部)
115…駆動ギア(回転体)
116…従動ギア(回転体)
150…ディスクトレイ(収容体)
160…フランジ部
172…ゴムリング(弾性部材)
191…センサ(収容時判別部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
包埋ブロックが固定された包埋カセットから、固着した包埋剤を除去する包埋剤除去装置であって、
前記包埋カセットが載置される載置面を有し、該載置面上に載置された包埋カセットの底面を加熱する加熱板と、
前記加熱板上に配設され、載置された前記包埋カセットを挟み込んで、該包埋カセットの少なくとも2つの側面を加熱する複数の加熱ブロックと、を備え、
前記複数の加熱ブロックのうちの少なくとも1つは、前記載置面の面内方向に移動可能とされ、該移動によって残りの加熱ブロックと協働して前記包埋カセットを挟み込むことを特徴とする包埋剤除去装置。
【請求項2】
請求項1に記載の包埋剤除去装置において、
前記加熱ブロックは、前記包埋カセットを囲繞しながら挟み込んで、該包埋カセットの4つの側面を加熱することを特徴とする包埋剤除去装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の包埋剤除去装置において、
前記加熱ブロックを移動させる可動部を備え、
該可動部は、予め決められた移動量に達するまで前記加熱ブロックを移動させ続けることを特徴とする包埋剤除去装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の包埋剤除去装置において、
前記加熱ブロックは、前記包埋カセットを挟みこんだ後、該包埋カセットの側面に接したまま該側面に沿って往復移動させられることを特徴とする包埋剤除去装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の包埋剤除去装置において、
前記加熱ブロックには、前記包埋カセットを挟みこんだ際に、該包埋カセットの上面を加熱するフランジ部が取り付けられていることを特徴とする包埋剤除去装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の包埋剤除去装置において、
前記加熱板の下方に配設され、融解された前記包埋剤を回収する回収容器を備え、
前記加熱板には、前記載置面に開口すると共に厚さ方向に貫通され、融解された前記包埋剤を前記回収容器に導く回収部が形成されていることを特徴とする包埋剤除去装置。
【請求項7】
請求項6に記載の包埋剤除去装置において、
前記回収容器を前記包埋剤の融点よりも高い温度に加熱する容器加熱手段を備えていることを特徴とする包埋剤除去装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の包埋剤除去装置において、
前記包埋カセットに接する前記加熱ブロックの接触面には、融解された前記包埋剤を前記加熱板側に流動させる排出部が形成されていることを特徴とする包埋剤除去装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の包埋剤除去装置において、
前記加熱板の上方に配設され、載置された前記包埋カセットの上方を覆う着脱自在のカバー体を備え、
該カバー体は、前記包埋剤の融点よりも低い温度に設定されていることを特徴とする包埋剤除去装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の包埋剤除去装置において、
載置された前記包埋カセットを払拭台上に移送させる移送部と、
前記払拭台上にて、前記包埋カセットの底面及び側面を同時又は各別に払拭布で払拭する払拭部と、を備え、
該払拭部は、前記払拭布を加熱した状態で払拭することを特徴とする包埋剤除去装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の包埋剤除去装置において、
前記払拭台上に移送された前記包埋カセットの前後の向きを判別する判別部を備え、
前記移送部は、前記判別部による判別結果に基づいて前記包埋カセットの前後の向きを変更し、その向きを一定方向に配列させることを特徴とする包埋剤除去装置。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の包埋剤除去装置において、
前記移送部は、
前記包埋カセットを挟持する移送ハンドと、
挟持した前記包埋カセットを前記移送ハンドから離脱させる方向に弾性力で押圧する弾性部材と、を備えていることを特徴とする包埋剤除去装置。
【請求項13】
請求項12に記載の包埋剤除去装置において、
前記払拭布は、一方向に延在した帯状に形成され、
前記払拭部は、
前記払拭布の一部分を前記包埋カセットの底面及び側面に押し当てる押圧部と、
押し当てられた前記払拭布を前記一方向に沿って移動させる移動部と、を備えていることを特徴とする包埋剤除去装置。
【請求項14】
請求項13に記載の包埋剤除去装置において、
前記移動部は、前記払拭布を互いの外周面で挟み込む2つの回転体を備え、
一方の前記回転体と前記払拭布との接触幅が、他方の前記回転体と前記払拭布との接触幅よりも小さいことを特徴とする包埋剤除去装置。
【請求項15】
請求項13に記載の包埋剤除去装置において、
前記移動部は、前記払拭布を互いの外周面で挟み込む2つの回転体を備え、
少なくとも一方の前記回転体の外周面は、凹凸形状とされていることを特徴とする包埋剤除去装置。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか1項に記載の包埋剤除去装置において、
前記包埋カセットを複数収容する収容体と、
該収容体に収容されている複数の前記包埋カセットの中から、任意に選択した1つを前記載置面上に載置する搬入部と、
前記包埋カセットを搬出すると共に保管体に収納する搬出部と、を備えていることを特徴とする包埋剤除去装置。
【請求項17】
請求項16に記載の包埋剤除去装置において、
前記収容体に収容されている前記包埋カセットの前後の向きを判別する収容時判別部を備え、
前記搬入部は、前記収容時判別部による判別結果に基づいて前記包埋カセットの前後の向きを変更し、その向きを一定方向に配列させた状態で前記載置面上に載置することを特徴とする包埋剤除去装置。
【請求項18】
包埋ブロックが固定された包埋カセットから、固着した包埋剤を除去する包埋剤除去方法であって、
加熱板の載置面上に前記包埋カセットが載置された後、複数の加熱ブロックのうちの少なくとも1つを載置面の面内方向に移動させ、該移動によって残りの加熱ブロックと協働して包埋カセットを挟み込む挟圧工程と、
前記加熱板により前記包埋カセットの底面を加熱すると共に、前記複数の包埋ブロックにより前記包埋カセットの少なくとも2つの側面を加熱する加熱工程と、を備えていることを特徴とする包埋剤除去方法。
【請求項19】
請求項18に記載の包埋剤除去方法において、
前記狭圧工程の際、複数の前記加熱ブロックで前記包埋カセットを囲繞しながら挟み込み、
前記加熱工程の際、前記包埋カセットの4つの側面を加熱することを特徴とする包埋剤除去方法。
【請求項20】
請求項18又は19に記載の包埋剤除去方法において、
前記挟圧工程の際、予め決められた移動量に達するまで前記加熱ブロックを移動させ続けることを特徴とする包埋剤除去方法。
【請求項21】
請求項18から20のいずれか1項に記載の包埋剤除去方法において、
前記加熱工程の際、前記加熱ブロックを前記包埋カセットの側面に接したまま該側面に沿って往復移動させることを特徴とする包埋剤除去方法。
【請求項22】
請求項18から21のいずれか1項に記載の包埋剤除去方法において、
前記加熱工程後、前記包埋カセットを払拭台上に移送させ、該払拭台上にて包埋カセットの底面及び側面を同時又は各別に払拭布で払拭する払拭工程を備え、
該払拭工程時、前記払拭布を加熱した状態で払拭することを特徴とする包埋剤除去方法。
【請求項23】
請求項18から22のいずれか1項に記載の包埋剤除去方法において、
収容体に収容されている複数の前記包埋カセットの中から、任意に選択した1つを前記載置面上に載置する搬入工程と、
前記包埋カセットを搬出すると共に保管体に収納する搬出工程と、を備えていることを特徴とする包埋剤除去方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【公開番号】特開2012−32373(P2012−32373A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65830(P2011−65830)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】