包括的な患者固有の心臓のモデリング方法およびシステム
【課題】4D医用画像データからの、心臓全体の解剖構造、動力学、血行力学および流体構造相互作用の、患者固有のモデリングのための方法およびシステムを提供する。
【解決手段】4D医用画像データから患者固有の心臓の4D解剖学的モデルを生成するステップと、レベルセットフレームワークを用いて、1心周期中の複数の時間ステップそれぞれにおける患者固有の4D解剖学的モデルにより制約されるナビエ・ストークス方程式を解くことによって心臓の血流をシミュレートするステップと、を含む4D医用画像データに基づいて心臓の血流をシミュレートする方法。
【解決手段】4D医用画像データから患者固有の心臓の4D解剖学的モデルを生成するステップと、レベルセットフレームワークを用いて、1心周期中の複数の時間ステップそれぞれにおける患者固有の4D解剖学的モデルにより制約されるナビエ・ストークス方程式を解くことによって心臓の血流をシミュレートするステップと、を含む4D医用画像データに基づいて心臓の血流をシミュレートする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2010年7月21日に出願された米国仮特許出願第61/366,294号、2010年9月17日に出願された米国仮特許出願61/383,942、および、2010年11月3日に出願された米国仮特許出願第61/409,633号に基づく優先権を主張するものであり、それらの開示は参照により本明細書中に含まれる。
【背景技術】
【0002】
本発明は、医用画像を用いる心臓のモデリングに関し、より詳細には、4D医用画像データに基づく包括的な患者固有の心臓のモデリングに関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
心疾患は米国における男女の死因のトップであり、世界中では死因の30%以上に達する。近年の医療の進展は、弁膜症、胸部大動脈瘤やファロー四徴症などの複雑な心疾患の診断および治療において重要な進歩をもたらしてきたが、罹患率および死亡率はいまだに高い。コンピュータ断層撮影法(CT)、磁気共鳴画像法(MR)、回転X線、超音波などの医用画像化手法を、高空間時間分解能を有する大量の、形態および機能画像データの取得に用いることができる。しかし、データの理解能力における遅れにより、医師は範囲の限定された測定および方法に基づいて重要な決定をしなければならない。これらの限定は、少なくとも一部は、心臓−大動脈の解剖構造、生理学および血行力学を表す患者固有のパラメタの効率的かつ正確な推定ができず、かつ、疾患の進行モデルがないことによる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、4D医用画像データからの、包括的な患者固有の心臓のモデリングのための方法およびシステムを提供する。特に、本発明の実施形態によれば、4D医用画像データからの、心臓全体の解剖構造、動力学、血行力学および流体構造相互作用の、患者固有のモデリングが提供される。
【0005】
心臓の解剖学および動力学は、患者に関する4D医用画像データから心臓の生理学的モデルの患者固有のパラメタを推定することにより決定される。患者固有の解剖構造および動力学は、心周期全体にわたる、局所的な解剖構造によって制約される現実的な血行力学を導くナビエ・ストークスのソルバへの入力として用いられる。流体構造相互作用は、所定の時間ステップにおける血流をシミュレートし、シミュレートした血流に基づいて心臓構造の変形を計算することにより心周期全体にわたって反復的に決定され、この心臓構造の変形は次の時間ステップにおける血流のシミュレーションに用いられる。解剖構造、動力学、血行力学および流体構造相互作用を表す包括的な患者固有の心臓モデルは、心臓の非侵襲的な評価および診断だけでなく、仮想的な治療プランニングおよび心血管疾患の管理にも用いることができる。
【0006】
本発明の一実施形態では、患者固有の心臓の4D解剖学的モデルは4D医用画像データから生成される。次いで、レベルセットフレームワークを用いて、1心周期における複数の時間ステップそれぞれにおける患者固有の4D解剖学的モデルにより制約されるナビエ・ストークス方程式を解くことによって、心臓の血流がシミュレートされる。
【0007】
本発明の別の実施形態では、患者固有の心臓の4D解剖学的モデルは、4D医用画像データから生成される。レベルセットフレームワークを用いて、現在の時間ステップにおける少なくとも1つの心臓構成部分の位置によって制約されるナビエ・ストークス方程式を解くことによって、当該現在の時間ステップにおける患者固有の4D解剖学的モデルの当該少なくとも1つの心臓構成部分において、血流がシミュレートされる。当該少なくとも1つの心臓構成部分の変形は、現在の時間ステップにおける血流に基づいて現在の時間ステップにおいて計算される。シミュレートするステップおよび計算するステップは複数の時間ステップの間繰り返され、現在の時間ステップにおける少なくとも1つの心臓構成部分の現在の位置が、従前の時間ステップにおいて計算された当該少なくとも1つの心臓構成部分の変形に基づいて少なくとも部分的に決定される。
【0008】
本発明の別の実施形態では、包括的な患者固有の心臓の4Dモデルは4D医用画像データから生成される。包括的な患者固有の4Dモデルの一部は、疾患または治療などの状態をシミュレートするために調整される。次いで、包括的な患者固有の4Dモデルについての調整された部分の効果をシミュレートするため、包括的な患者固有の心臓の4Dモデルが再生成される。
【0009】
本発明の上記および他の利点は、以下の詳細な説明および添付図面を参照することにより、当業者に明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態にかかる包括的な患者固有の心臓のモデリング方法を示す。
【図2】本発明の一実施形態にかかる種々の心臓構成部分についての心臓モデルを示す。
【図3】本発明の一実施形態にかかる患者固有の心臓の4D解剖学的モデルを生成する方法を示す。
【図4】多相CTシーケンスから推定された患者固有の心臓の解剖学的モデルの例を示す。
【図5】長方形領域のレベルセットとして埋め込まれた患者固有の心臓の解剖学的モデルを示す。
【図6】本発明の一実施形態にかかる患者固有の心臓の解剖学的モデルに基づいて心臓における血流をシミュレートする方法を示す。
【図7】図6の方法を用いた血流シミュレーション例の結果の例を示す。
【図8】本発明の一実施形態にかかる大動脈の流体構造相互作用(FSI)を推定するための繰り返し方法を示す。
【図9】大動脈に関する流体構造相互作用を推定した結果の例を示す。
【図10】LVのマルチスケールの解剖学的モデルを示す。
【図11】大動脈領域および僧帽弁領域についての測定精度を示す。
【図12】肺動脈幹の形態の種々の種類を示す。
【図13】収縮期の事象および構造の血行力学的シミュレーションを示す。
【図14】血流シミュレーションを用いて得られた大動脈弁洞領域における渦の形成を示す。
【図15】拡張期の事象および構造の血行力学的シミュレーションを示す。
【図16】1心周期に弁領域を通過する血流の時間的な流量を示すグラフである。
【図17】血流の測定に用いたスライス位置を示す。
【図18】血流の測定に用いたスライス位置を示す。
【図19】二尖逆流性大動脈弁および病的僧帽弁を有する心臓についての血流のシミュレーションを示す。
【図20】健康な心臓と2つの疾患のある心臓についてのシミュレートされた血行力学の比較を示す。
【図21】右心房のある場合とない場合の血流のシミュレーション結果を示す。
【図22】本発明の一実施形態にかかる包括的な患者固有の4Dモデルを用いた、予測プランニングのための方法を示す。
【図23】仮想的な留置における交換モデルに作用する力を示す。
【図24】大動脈内の瘤部分にステントを留置するシミュレーションを示す。
【図25】仮想的な動脈瘤の切除を示す。
【図26】本発明を実現可能なコンピュータの高レベルブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、コンピュータ断層撮影法(CT)、磁気共鳴画像法(MRI)、心エコー法のデータなどのボリュームデータのシーケンスからの、包括的な患者固有の心臓のモデリングに関する。このようなボリュームデータ(本明細書中、4D画像データまたは4D画像ともいう)のシーケンスは、1つまたは複数の心周期を含む1期間にわたって得られた、その各フレームが3D画像(ボリューム)であるシーケンスである。本発明の実施形態は、本明細書中において心臓のモデリング方法の視覚的な理解を与えるために記載したものである。デジタル画像はしばしば1つまたは複数の物体(または形状)のデジタル表現から構成されている。物体のデジタル表現が、本明細書中でしばしば物体の識別および操作に関して記載されている。このような操作はコンピュータシステムのメモリまたは他の回路/ハードウェアにおいて実行される仮想的な操作である。したがって、本発明の実施形態は、コンピュータシステムに保存されたデータを用いてコンピュータシステムにおいて実行可能である。
【0012】
本発明の実施形態によれば、4D医用画像データから、心臓全体の解剖構造、動力学的、血行力学的および流体構造相互作用の患者固有のモデリングを行うための方法およびシステムが提供される。患者固有の心臓の解剖構造および動力学は、患者の4D医用画像データから患者固有の心臓の生理学的モデルのパラメタを推定することにより決定される。患者固有の解剖構造および動力学は、心周期全体にわたって、局所的な解剖構造により制約される現実的な血行力学を導く3Dナビエ・ストークスソルバへの入力として用いられる。所定の時間ステップにおける血流をシミュレートし、シミュレートした血流に基づいて心臓の構造の変形を計算することにより、心周期にわたって流体構造相互作用が繰り返し決定され、これにより心臓構造の変形が次のステップにおける血流のシミュレーションに用いられる。解剖構造、動力学、血行力学および流体構造相互作用を表す包括的な患者固有の心臓モデルは、心臓の非侵襲的な推定および診断だけでなく、治療のプランニングおよび心血管疾患の管理にも用いることができる。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態にかかる包括的な患者固有の心臓のモデリング方法を示す。図1の方法は、患者の冠動脈領域を表す画像データを患者固有の解剖学的モデルに変換し、心臓の血流および流体構造相互作用をシミュレートするために当該の心臓の解剖学的モデルを用いる。
【0014】
図1を参照して、ステップ102において、医用画像データが受信される。特に、ボリューム画像データの少なくとも1つのシーケンスが受信される。このボリューム画像データのシーケンスは、たとえば、特定の期間にわたって取得された3D画像(ボリューム)のシーケンスである。たとえば、このような4D画像データ(3D+時間)は、1心周期全体にわたって取得される。1つまたは複数のシーケンスが種々の医用画像化手法を介して受信される。本発明の種々の実施形態では、たとえば、4D CTデータ、4D 心エコーおよび/または磁気共鳴(MR)画像データ並びに他の種類の画像データが受信される。画像データは1つまたは複数の画像取得装置たとえばCTスキャナ、超音波装置またはMRスキャナから直接受信されてもよい。従前に保存された画像データを、たとえばコンピュータシステムのメモリまたはストレージあるいは何らかの他のコンピュータ読み取り可能な記録媒体から直接ロードしてもよい。
【0015】
ステップ104において、患者固有の心臓の4D解剖学的モデルが受信された4D画像データから生成される。特に、4D解剖学的モデルは、チャンバ(左心室、左心房、右心室、右心房)、心臓弁(大動脈弁、僧帽弁、三尖弁、肺動脈弁)および大動脈として含まれる複数の心臓構成部分から構成される複数要素モデルである。このような包括的な心臓モデルは、非常に様々な形態的、機能的および病理的バリエーションの捕捉に用いられる。モジュール的およびヒエラルキー的アプローチを用いて、解剖学的な複雑さを低減させ、個々の解剖構造の効率的かつ柔軟な推定を容易にすることができる。本発明の実施形態は、解剖学的に適合する心臓モデルを用い、生理学的に作用される制約およびサンプリングスキームを用いることにより、心周期にわたってかつ異なる患者について一致したパラメタ化が維持される。
【0016】
心臓のチャンバおよび弁のそれぞれの全体的な動力学的変化は、時間依存の相似変換としてパラメタ化され、この相似変換は並進と、回転の4元数表現と、相似変換のスケーリング因子と、心周期における時間位置と、を定義する。有利な実施形態では、心臓のチャンバについての152個の解剖学的ランドマークおよび心臓弁についての33個の解剖学的ランドマークの組を用いて、全ての心臓の解剖構造の複雑かつ同期した動きパターンがパラメタ化される。これにより、各ランドマークは3次元空間における軌跡によって表され、時間依存の相似変換により正規化される。最終的なモデルは、チャンバを表す9つの密な表面メッシュの組と、弁についての13個の構造の別の組とでもって完成される。各メッシュは、これらのランドマークにより定義される頂点の解剖学的なグリッドに沿ってサンプリングされる。
【0017】
図2は、本発明の一実施形態にかかる種々の心臓構成部分に関する心臓モデルを示す。特に、図2の(a)〜(f)の画像は、心臓の解剖学的モデルの種々の構成部分についての解剖学的定義を示す。これらの解剖学的モデルのパラメタは、特定の患者について4D画像データに基づいて1心周期にわたって推定される。
【0018】
図2の画像(a)は、左心室(LV;Left ventricle)200および左心房(left atrium)202についてのモデルを示す。左心室200は78個のランドマーク(16個の僧帽弁側方(mitral lateral)の制御点、15個の僧帽弁中隔(mitral septum)の制御点、16個の左心室流出路(LV output tract)の制御点、32個の大動脈弁(aortic valve)の制御点)と、4つの表面ジオメトリ(LV心外膜、LV心内膜、LV流出路)とから構成されている。左心房の表面202は、大動脈弁制御点を介して左心室200に接続されている。
【0019】
図2の画像(b)は、右心室(RV;right ventricle)204および右心房(right atrium)206を示す。右心室204は、74個のランドマーク(16個の三尖弁側方(tricuspid lateral)の制御点、15個の三尖弁中隔(tricuspid septum)の制御点、28個の三尖弁(tricuspid)の制御点、18個の肺動脈弁(pulmonary valve)の制御点)と、4つの表面ジオメトリ(RV心尖、RV流出路(RV output tract)、RV流入路)とから構成されている。右心房の表面206は28個の三尖弁制御点によって制約され、右心室204に接続されている。
【0020】
図2の画像(c)は大動脈弁208のモデルを示す。大動脈弁モデル208は、11個のランドマーク(3個の交連(commissure)、3個の蝶番(hinge)、3個の弁尖先端(leaflet tip)、2個の小孔(ostium))と、4つの表面構造(大動脈起始部(aortic root)、N弁尖、L弁尖、R弁尖)とから構成されている。大動脈起始部は、蝶番および交連の平面、並びに、2つの交連と1つの蝶番との間の各弁尖の距離により制約される。
【0021】
図2の画像(d)は、僧帽弁210のモデルを示す。僧帽弁のモデル210は、7個のランドマーク(3個のトライゴン(trigone)、2個の交連、2個の弁尖先端)から構成される。前尖(A;anterior leaflet)は2つのトライゴン、1つの弁尖および2つの交連により画定され、後尖(P;posterior leaflet)は3つのトライゴン、1つの弁尖および1つの交連により画定される。
【0022】
図2の画像(e)は、肺動脈弁212のモデルを示す。肺動脈弁モデル212は、9個のランドマーク(3個の交連、3個の蝶番、3個の弁尖先端)と、4つの表面構造(肺動脈起始部、N弁尖、L弁尖、R弁尖)とから構成される。
【0023】
図2の画像(f)は、三尖弁214のモデルを示す。三尖弁モデル214は、4つの表面ジオメトリ(弁輪、中隔弁尖(S;septal leaflet)、前尖(A)、後尖(P))と、6個の解剖学的ランドマーク(3つの交連、3個の弁尖先端)とから構成される。
【0024】
患者固有の4D解剖学的モデルは、患者の心臓の形態を与えるものであり、心臓の任意の構成部分についての形態的(サイズ的)および動力学的パラメタの決定に用いることができる。図3は、本発明の一実施形態にかかる患者固有の心臓の4D解剖学的モデルを生成する方法を示す。図3の方法は患者の冠動脈領域を表す画像データを変換して、患者についての、患者固有の心臓の自動的な解剖学的モデルを生成する。図3の方法は、図2の実行ステップ104に用いることができる。患者固有の心臓モデルを生成するための図3の方法は、米国特許出願公開第2010/0280352号および第2011/0060576号に、はるかに詳細に記載されており、これらは参照により本明細書中に含まれる。
【0025】
ステップ302において、複数の心臓構成部分のそれぞれについて、受信された画像データから1つの個別のモデルが生成される。本発明の一実施形態では複数のモデルが以下について生成される:[心臓のチャンバ]左心室(LV)(心内膜および心外膜)、右心室(RV)、左心房(LA)および右心房(RA);[弁]僧帽弁、大動脈弁、肺動脈弁および三尖弁;[主血管]大動脈幹および肺動脈幹。これらの心臓の部分は全て、本明細書中において「心臓構成部分」として集約的に称される。各心臓構成部分について、心臓構成部分の生理学的モデルが、識別的データベース−ガイド推定/検出技術を用いて、4D画像データの各フレーム中で推定される。
【0026】
特定の患者についての個人化された心臓モデルの生成の前に、各解剖構造(心臓構成部分)の生理学的モデルがオフラインで構築される。各生理学的モデルは、注釈付きのトレーニングデータの組を用いた対応する心臓構成部分の数学的表現に基づいて生成される。たとえば、各心臓構成部分についての生理学的モデルは、注釈付きのトレーニングデータの組を用いた心臓構成部分の平均形状を用いて生成可能である。たとえば、米国特許出願公開第2008/0101676号(本明細書中に参照により含まれる)には、4チャンバの生理学的心臓モデルを生成し、この心臓モデルを画像データに適合させることが記載されている。これに開示されているように、心臓モデルは3Dメッシュであり、各チャンバについての初期メッシュは注釈付きのトレーニングデータを用いたこれらのチャンバの平均形状を用いて生成される。さらに、米国特許出願公開第2009/0123050(本明細書中に参照により含まれる)には、大動脈弁の4D生理学的モデルが記載されている。同様に、注釈付きのトレーニングデータの組に基づいて、生理学的モデルを心臓構成部分のそれぞれについてオフラインで生成しても良い。
【0027】
3D画像(すなわち、4D画像のシーケンスのフレーム)における特定の心臓構成部分の生理学的モデルを推定するため、生理学的モデルのパラメタを推定して、注釈付きのトレーニングデータの大きなデータベースに基づいて識別的機械−学習技術を用いて画像を適合する。一実施形態では、境界空間学習(MSL)を用いて画像それぞれにおいて生理学的モデルを局所化させる。
【0028】
MSLの考えは、完全相似変換パラメタ空間において直接に分類器を学習させるのではなく、注釈付きのトレーニングデータに基づいてサイズを増大させて識別的分類器を漸次学習させるものである。サイズの増大につれ、有効な(正の)空間領域は従前の限界空間分類器によりより制限される。特定の心臓構成部分などの解剖構造の生理学的モデルを画像中で推定するため、当該の心臓構成部分に対応する相似変換(すなわち、位置、方向、スケール)の推定は、以下の3段階に分けることができる:位置の推定、位置−方向の推定、完全相似変換の推定。識別的分類器はトレーニングデータに基づいて各ステージについてトレーニングされる。全ての識別的分類器は、確率的ブースティングツリー(PBT)としてトレーニング可能である。検索空間のサイズを低減するほかに、MSLの利点は、各境界空間レベルにおける分類器をトレーニングするために、異なる特徴、たとえば3Dハール特徴または操作可能な特徴を用いることができることである。
【0029】
MSLを用いて3D画像データにおける種々の心臓構成部分の生理学的モデルを推定する例は、以下の文献に記載されており、これらの記載は本明細書中に参照により含まれる:3D CT画像データにおいて各チャンバについてのモデルを推定することが記載された米国特許出願公開第2008/0101676号;4D CTデータに大動脈弁の生理学的モデルを適合させることが記載された米国特許出願公開第2009/0123050号;3D超音波画像のシーケンスに左心室のモデルを適合させることが記載されたYang et al., "3D Ultrasound Tracking of the Left Ventricles Using One-Step Forward Prediction and Data Fusion of Collaborative Trackers", CVPR 2008。上記例と同様にして、識別的機械−学習技術を用いて画像データに心臓構成部分の生理学的モデルを適合させることにより、各心臓構成部分を推定することができる。
【0030】
各個別の心臓構成部分モデルのパラメタをたとえばMSLを用いて4D画像データの各フレームにおいて推定した後で、推定されたモデルパラメタを洗練するために、各画像中の個別の心臓構成部分モデルについて学習に基づく境界検出を実行してもよい。特に、各推定されたモデルの境界を学習に基づく境界検出を用いて精密化し、各心臓構成部分についての生理学的モデルの推定の精度を向上させることができる。
【0031】
ステップ304において、患者固有の心臓の個人化された4D解剖学的モデルが、各心臓構成部分について生成された個別のモデルを統合することにより生成される。ステップ302から得られる各個別の心臓構成部分は、特定数の点から構成されるメッシュである。有利な一実施形態によれば、LV(心内膜および心外膜)、RV、LA、RA、僧帽弁、大動脈弁、大動脈および肺動脈幹の個別のモデルを統合するために、接続されているモデルまたは重なっているモデルの間でメッシュ点の一致が確立される。メッシュ点の一致により、モデルは互いに正しく配列される。モデルの再サンプリングによりモデル間のメッシュ点の一致を確立することができる。たとえば、米国特許出願公開第2008/0262814号(本明細書中に参照により含まれる)には、心臓のチャンバモデルを正しく配列するための、4つの心臓チャンバのモデル間のメッシュ点の一致を確立するための種々の再サンプリング方法が開示されている。米国特許出願公開第2008/0262814号に記載されている技術は、本明細書中に記載されている個別の心臓構成部分のモデル間のメッシュ点の一致を確立するために拡張することができる。
【0032】
ステップ306において、患者固有の4D解剖学的心臓モデルが出力される。たとえば、患者固有の4D解剖学的心臓モデルは、メモリ、ストレージまたはコンピュータ読み取り可能な記録媒体に保存することにより出力される。また、患者固有の4D解剖学的心臓モデルは、該患者固有の4D解剖学的心臓モデルを表示することにより、または、該患者固有の4D解剖学的心臓モデルを印刷することにより出力されてもよい。出力された患者固有の4D解剖学的心臓モデルは、さらなる医用画像化処理に用いてもよい。たとえば、個人化された4D解剖学的心臓モデルは、心臓の種々の形態的および機能的測定を推定するために用いることができる。さらに、個人化された4D解剖学的心臓モデルは、図1の方法の後続のステップにおいて記載されているように、血流または血液−組織相互作用をシミュレートするために用いることができる。
【0033】
上述のように、図3の方法は、一実施形態にかかる患者固有の4D解剖学的モデルを生成する方法を示す。別の実施形態では、4D解剖学的モデルのパラメタは、たとえば、基礎的な解剖構造の詳細の自然レベルに基づく粗細(coarse-to-fine)ストラテジに従って、患者について推定される。第1のステップでは、ロバストな、時間に適合したオブジェクトの局所化を行うため、MSLをRANSAC(random sample consensus)法と組み合わせる方法を用いて、受信された4D画像データから各モデルの構成部分の姿勢および動きパラメタが復元される。この方法は、Ionasec et al., "Patient-Specific Modeling and Quantification of the Aortic and Mitral Valves from 4D Cardiac CT and TEE", IEEE Transactions on Medical Imaging, 2010(本明細書中に参照により含まれる)に詳細に記載されている。第2のステップでは、軌跡に基づく特徴および強力な軌跡スペクトル分類器を用いる軌跡スペクトル学習(TSL)アルゴリズムを用いて、解剖構造のランドマークの位置および動きが同時に推定される。TSLアルゴリズムはIonasec et al., "Robust Motion Estimation Using Trajectory Spectrum Learning: Application to Aortic and Mitral Valve Modeling from 4D TEE", Proceedings of 12th IEEE International Conference on Computer Vision, 2008, pages 1601-1608(本明細書中に参照により含まれる)にはるかに詳細に記載されている。最後のステップにおいて、完全な心臓表面の境界描写が心周期全体にわたって行われる。この方法は、協同的トラッカー(tracker)および運動マニフォルド(motion manifold)とともに、ロバストな境界ディテクタを利用する。
【0034】
図4は、多相CTシーケンスから推定された、患者固有の解剖学的心臓モデルの例を示す。図4に示されるように、画像402、404および406は、左心室、左心房、右心室、右心房、大動脈弁(AV)、僧帽弁(MV)、肺動脈弁(PV)および三尖弁(TV)ならびに上行大動脈および肺動脈を示す。図4は大動脈全体を示していないが、大動脈は患者固有の4D解剖学的モデルの一部として同様に推定可能である。たとえば、大動脈は、米国特許出願公開第2010/0239148号(本明細書中に参照により含まれる)に記載の方法を用いて推定することができる。
【0035】
図1に戻り、ステップ106において、心臓中の血流(血行力学)が、患者固有の4D解剖学的モデルに基づいてシミュレートされる。血流をシミュレートするため、患者固有のジオメトリは心周期全体にわたる局所的な解剖構造により制約される、現実的な血行力学を導く3Dナビエ・ストークスソルバへの入力として用いられる。
【0036】
本明細書中に記載される血行力学の計算には、血液に関する古典的な連続体モデルが用いられる。流体の流れに関する標準的な連続体の力学モデルである、粘性項(下記式(1))を有する非圧縮性ナビエ・ストークスソルバが、直接数値シミュレーションによって解かれる。
【0037】
【数1】
【0038】
ナビエ・ストークスは、流体の速度uおよび圧力p並びに流体の密度ρおよび動粘度μに依存する、流体の流れに関する運動量保存および質量保存を記述する偏微分方程式である。血液の密度および動粘度は、複数の健常者の一般的な平均値、すなわち、ρ=1.05g/cm3、μ=4mPa・sに設定可能である。これらの式は、有限差分法および有限体積法の両方を用いた、均一なグリッドについての数値的離散化を用いて解かれる。特に、本発明の実施形態では、圧力について近似投影と組み合わされた分数ステップが用いられる。
【0039】
有利な実施形態においては、血液はニュートン流体としてモデリングされる。これまでの数値的な研究によって、血液の非ニュートン的ふるまいはより大きい動脈においてほとんどの心周期の間では重要ではないことがわかっている。非ニュートン的重要度係数(血液の非ニュートン粘性とニュートン粘性との比として定義される)は、心周期の15〜20%の期間において重要であり、速度がゼロに近いとき減速中にピークに達する。心臓における血液の動力学は、高い速度、いやむしろずり速度によりほとんど支配される。これは、血液のレオロジーがビンガム塑性体流体(低応力では剛体としてふるまうが、高応力では粘性流体としてふるまう物質)のそれに近いという事実と組み合わされ、心周期において血液の動力学が主にニュートン的であるという性質上の結論を支持する。ありうる例外としては、時間的には心拍静止期、空間的には心尖領域および噴流よどみ領域がある。
【0040】
一般的ジオメトリの移動および/または多相流体の含有における流体動力学の計算は、特に、それがシンプルかつロバストでさらに正確な、考えられた計算方法となるときには、1つの挑戦である。レベルセット法は、このような複雑な計算を扱う場合にある程度成功しており、異なる物質(たとえば、水および大気、または物体と流体を変形する複合体)間の相互作用の入り組んだ動力学を捕捉することができる。ナビエ・ストークス方程式は、このような記述を考慮に入れた形式とされる。たとえば、密度と粘度の異なる2つの流体について、ナビエ・ストークス方程式のレベルセット式は以下のように表される。
【0041】
【数2】
【0042】
式(2)中、Hは、レベルセットφの正の値で特徴づけられる第1の流体と、レベルセットφの負の値で特徴づけられる第2の流体と、の間に数値的に明確な違いを形成するために用いられるヘビサイド関数である。特に仮想流体法などの高等な方法を用いて実施する場合、レベルセット定式化は古典的な定式化に対するいくつかの利点を有する。レベルセット定式化の利点としては、たとえば、自由な表面流体および流体と相互作用する変形物質の計算の容易さ、テンソル外挿法の実施の簡単さ、法線場
または平均曲率場(たとえば単位勾配のレベルセット関数についてk=Δφ)などの種々のジオメトリパラメタの式の簡単さが挙げられる。
【0043】
レベルセットフレームワークで心臓の動力学を記述することの別の重要な利点は、有限要素モデル(FEM)における場合のように、従前のグリッドが数値計算をロバストに処理するには歪みすぎている場合に、複数の時間ステップのそれぞれにおいて新たな計算グリッドを生成する必要なく、壁の動き/大きな変形を自動的に処理できることである。このことにより、患者固有の心臓のメッシュの血流シミュレーションエンジンへの自動的な統合が可能となり、患者固有の血液動力学を取得するための心臓モデルの臨床的使用のためのフレームワークが提供される。
【0044】
本発明の有利な実施形態によれば、心臓の壁/血液相互作用はレベルセットを用いてモデリングされる。より正確には、ステップ104で得られるような特定数のフレーム(たとえば10フレーム)を有する心臓メッシュのシーケンスは、所定のシミュレーション時間においてメッシュを得るために、スプラインによって内挿される。このメッシュは、レベルセット関数φ(φ(x)=dist(x,メッシュ)−dxで定義される。dxはグリッド間隔。)を用いて計算領域に埋め込まれる。コードにおいて用いられる心臓/血液相互作用は、レベルセット関数のゼロレベルとして定義され、元の三角メッシュを各辺においてdx分効果的に「厚くする」。図5は、長方形の領域504にレベルセットとして埋め込まれた患者固有の解剖学的心臓モデル502を示す。図5は、厚くされた心臓の壁に応じた透明なゼロレベルを示す。
【0045】
界面の位置は流体領域にずれ無し境界条件を適用するために用いられる。各時間ステップにおけるメッシュ速度は、近接する時間ステップにおけるメッシュ位置から時間内挿により容易に計算され、その後外挿核を用いて外挿される。このようにして境界条件を適用することにより、固体の心臓メッシュから流体へ運動量を一方向の移動が効果的に強められる。この方法は領域の壁を圧すポンプとして心臓を基本的にモデリングするものであり、これにより循環系の抵抗が近似される。
【0046】
図6は、本発明の一実施形態にかかる、患者固有の4D解剖学的心臓モデルに基づいて心臓における血流をシミュレートする方法を示す。図6の方法は図1の実行ステップ106に用いることができる。図6の方法はレベルセットフレームワークにおけるナビエ・ストークス方程式(2)の解を詳細に示す。図6の方法は、等容性期(IP)を含む心周期の全段階を解くために用いられる。IPは静止期ではなく、むしろ腔内の流れの動力学的変化を有する段階である。図6の方法は、心臓の解剖構造全体または1つまたは複数の心臓構成部分における血流のシミュレーションに用いることができる。
【0047】
ステップ602において、初期時間(n=0)において、当該初期時間における患者固有の心臓モデル(すなわちメッシュ)の位置に基づいて初期レベルセット条件が決定される。レベルセット関数φのゼロレベルおよび速度uの決定については上記されている。初期圧力pは、メッシュ位置に基づいて適用されるノイマン境界条件でポワソン方程式を解くことにより決定される。
【0048】
ステップ604において、レベルセットから時間ステップnがn=n+1のように進められる。ステップ606において、レベルセットφおよび速度uに関する対流の更新が計算される。このステップにおいて、レベルセット値は所定の時間ステップにおけるメッシュ位置を用いて更新される。中間的なジオメトリのステップにおいて、新たなレベルセットにより定義された接続される構成部分が計算される。陰的な粘性および圧力のポワソン線形系の、ロバストな接続された構成部分ごとの反転のためにこれが用いられる。次いで、対流力項が三次精度ENO(Essentially Non-Oscillaroty)法を用いて計算される。
【0049】
ステップ608において、速度が半陰的に更新され、粘性力の寄与が考慮される。特に、速度は2次半陰的分割を用い、効率的マルチグリッド前処理付共益勾配法ソルバを用いた系の反転により、u*に更新される。
【0050】
ステップ610において、圧力が、力のノイマン境界条件でポワソン方程式を解くことにより更新される。ポワソン方程式は、効率的マルチグリッド前処理付共益勾配法ソルバを用いた系の反転による離散化領域の接続された各構成部分においても解かれる。系の反転の前に、固体速度を用いて固体領域に速度が上書きされる。
【0051】
ステップ612において、現在の時間ステップにおける新たな速度の更新が計算される。特に、密度が新たなレベルセットを用いて更新され、速度の更新は液体においてはun=u*−∇pn/ρnとして計算され、または、固体においてはun=u固体として計算される。界面位置は流体領域にずれ無し境界条件を適用するために用いられる。すなわち、ナビエ・ストークス運動量方程式の対流成分(ステップ606)および粘性成分(ステップ608)についてu流体=u固体を用い、圧力のポワソン方程式(ステップ610)について
を用いる。ここで、
は法線ベクトル場であり、上述のようにして設定されたレベルセットから計算される。この方法の全体の精度は、領域の内側において2次であり、境界では1次に落ちる。
【0052】
ステップ614において、全心周期についてシミュレーションが完了したか否か判別する。このシミュレーションが全心周期について未だ完了していなければ、当該方法はステップ604に戻り、別の時間ステップを増分させる。ステップ606〜612が次の時間ステップについて再度行われる。シミュレーションが全心周期について完了していれば、当該方法はステップ616に進む。ステップ616において、シミュレーション結果が出力される。
【0053】
ヒトの心臓は心血管系の一部として機能し、したがって静脈系および動脈系からの負荷圧力により影響される。上述のシミュレーションフレームワークは、ナビエ・ストークス方程式を規定された(壁)境界の動きで解くので、圧力場を計算する必要がないが、一方で、圧力は絶対変数というより相対変数であるので、その勾配が計算可能となることが保証される。換言すれば、(2)の第1のナビエ・ストークス方程式(運動量保存)は、その勾配が変化しない限り、圧力範囲のずれに対して不変である。数学的には、ノイマン境界条件を有する圧力のポワソン方程式は1パラメタ族の解を有し、これは、導入されたディリクレ境界条件を一度は固定可能である。したがって、圧力のポワソン方程式を解く際、解は大動脈の外側の点におけるベース圧力(ゼロに等しい)を選択することにより固定可能であり、これは、動脈の流出表面においてp=0が適用されるのと同様に作用する。
【0054】
たとえば一般的な生理学的曲線からの値を用いて、任意の値をベース圧力に選択することができ、これは上述した所定の動きフレームワークにおける血液動力学に影響しない。しかしこれは、下記のFSI問題における動力学に影響し、この際、変形可能な組織が圧力の境界値の変化に応じるか、または、二重の逆流の場合、動脈弁および僧帽弁(またはそれらの右側の類似体)の両方が逆流している。このような場合については、モデルを1次元の血管モデルと結合する必要がある。
【0055】
図7は、図6の方法を用いた血流のシミュレーション結果の例を示す。図7の画像702〜716は、患者固有の解剖学的心臓モデルを用いる一連の血流シミュレーションを用いて生成された。この例では、完全な血管樹についてのジオメトリおよび物質データがないため、右側および左側は体循環を通じて接続されていない。結果として、シミュレーションは心臓の各側について個別に行われたが、これは計算上はより効率的であり、心臓モデルの右側と左側においてわずかに異なる一回拍出量によってシミュレーションは影響されなかった。図7の画像702〜716は、心周期の初期心収縮段階702、中期心収縮段階704、後期心収縮段階706、初期心拡張段階708(肺動脈弁の逆流を示す)、早期心拡張段階710、中期心拡張段階712、心拍静止段階714、後期僧帽弁閉鎖段階716における、左心および右心の血流に関する渦度を示す。
【0056】
図1に戻り、ステップ108において、シミュレートされた血流に基づいて流体構造相互作用が推定される。流体構造相互作用は、患者固有の4Dモデルにおける心臓構成部分の変形をシミュレートするために、血液動力学のシミュレーション(ステップ106)とともに用いられる。特に、血行力学のシミュレーションについてステップ106で上述されたフレームワークは、特定構造の生体力学についてのモデルと結合可能である。各心臓構成部分は、動きが構成則により支配される受動組織としてモデリング可能である。有限要素モデル(FEM)を該法則に関連する偏微分方程式を解くために用いることができる。特定構造(たとえば大動脈)の壁の動きは2つの力によって駆動される:
1.組織の受動特性をモデリングする内力。たとえば、大きな変形に対処するために、大動脈などの構造を、共回転修正を用いた線形等方性単層可塑性モデルによりモデリングすることができる。動脈の不均一な部分(非等方性、3つの主層(内膜、中膜、外膜)、非線形性など)をシミュレートするために、より詳細なモデルを用いてもよい。
2.構造の内側の血流により生成される負荷をモデリングする外力。この負荷は圧力に変換され、構造の内側の層に加えられる。
【0057】
図8は、本発明の一実施形態にかかる、大動脈の流体構造相互作用を推定するための反復的方法を示す。流体構造相互作用を推定するために、同様の方法を心臓モデルの他の構成部分に適用できる。ステップ802において、血流は所定時間における大動脈壁の現在の位置に基づいてシミュレートされる。血流は、上述の図6の方法を用いて、現在の時間ステップにおける患者固有の4D解剖学的モデルにおける大動脈壁の位置に基づいてシミュレート可能である。ステップ804において、壁境界における圧力が現在の時間ステップにおいて計算される。血液/構造の境界における圧力は、図6の方法における各時間ステップにおいて計算される。ステップ806において、壁境界における圧力に基づいて大動脈に関する変形が計算される。圧力は大動脈壁にかかる外力として作用し、大動脈に関してモデリングされた壁の移動力に基づいて大動脈を変形させる。ステップ808において、時間ステップは進められ(n=n+1)、方法はステップ802に戻る。したがって、計算された大動脈の変形は、次のステップにおける血流のシミュレーションに用いられる。この方法はシミュレーションの終わりまで繰り返される。たとえば、この方法は、心周期全体がシミュレートされるまで繰り返される。
【0058】
図9は、大動脈に関する流体構造相互作用の推定結果の例を示す。画像902は、特定の時間ステップにおける大動脈の血流シミュレーションを示す。画像904は、画像904の血流シミュレーションに基づく流体構造相互作用を示し、変形した動脈壁906が得られる。
【0059】
FSIシミュレーションは、上述のFSIフレームワークを逆問題ストラテジ(たとえばカルマンフィルタリングや信頼領域技術)と組み合わせることにより、組織の硬度などの構造の固有の特性を推定するために用いられる。このようにして、構造の動きに関するモデルパラメタが調整され、FSIシミュレーションにおけるパラメタのシミュレートされた動きは医用画像において観察される動きと一致される。1つの可能な実施形態では、シミュレートされた動きが観察とどれほど違うのかを推定する費用関数が最少化される。これにより、構造に関する推定された生体力学的パラメタ、たとえば、壁の硬度が得られる。流体構造相互作用を実施し、大動脈の生体力学的パラメタを推定する方法は、米国特許出願公開第2011/0060576号(本明細書中に参照により含まれる)に記載されている。
【0060】
上述したように、患者固有の、種々の心臓構成部分についての解剖学的モデルは、スムースメッシュであり、血行力学シミュレーションおよび流体構造相互作用は心臓構成部分のスムースメッシュに基づいて行われる。本発明の有利な一実施形態によれば、患者固有の解剖学的モデルはマルチスケールの解剖学的モデルとして実行されてもよく、このモデルでは、上述のスムース心臓モデルはより粗いスケールであり、より詳細な解剖学的モデルはより精細なスケールで存在する。たとえば、乳頭筋および肉柱を含むより精細な解像度におけるLV心内膜のモデルを抽出するために、LVの患者固有の4D解剖学的モデルが用いられる。図10はLVのマルチスケールの解剖学的モデルを示す。図10の画像1000および1010に示されるように、LVのマルチスケールの解剖学的モデルには、LV心外膜1002、粗いスケールのLV心内膜1004および、乳頭筋および肉柱を含む精細なスケールのLV心内膜1006が含まれる。このようなマルチスケールのLVモデルを抽出する方法は、米国特許出願公開第2009/0080745号(本明細書中に参照により含まれる)に詳細に開示されている。血行力学シミュレーション(ステップ106)は、たとえば、1つまたは複数の心臓構成部分についての精細なスケールの解剖学的モデルの位置に基づいて制約される。さらに、流体構造相互作用(ステップ108)は、1つまたは複数の心臓構成部分についての精細なスケールの解剖学的モデルに基づいて推定可能である。
【0061】
図1に戻り、ステップ110において、包括的なモデリング結果が出力される。たとえば、得られる患者固有の4D解剖学的モデル、血流シミュレーションおよび/または流体構造相互作用シミュレーションは、このような結果を表す画像を表示することにより出力される。さらに、ステップ104、106および108に記載される包括的なモデリングにより、患者の心臓機能の包括的な所見が得られる、解剖学的および形態的パラメタ(ステップ104)、血行力学的パラメタ(ステップ106)および生体力学的パラメタ(ステップ108)が得られる。これらのパラメタはたとえばコンピュータシステムのメモリまたはストレージあるいはコンピュータ読み取り可能な媒体に記録可能である。また、これらのパラメタ(またはモデル)は、たとえば後述されるステップ112および114において、患者のさらなる評価に用いられる。
【0062】
ステップ112において、患者の心臓の非侵襲的評価および診断が、包括的なモデリング結果を用いて行われる。ステップ104、106および108のモデリングステップにより、患者の心臓の現状についての包括的な所見が得られる。これは、従前に診断された心臓の疾患の評価のために患者の心臓の現在の構造または血行力学を評価するために、または、心臓の問題の非侵襲的診断のために用いることができる。
【0063】
本発明の一実施形態によれば、包括的な患者固有の解剖学的心臓モデルは、心臓の解剖構造および機能の精確な定量化に用いることができる。臨床的な理想的基準では、未だに2D画像データが処理され、得るのが単調かつ退屈で不正確な場合もあるマニュアルでの測定が行われる。本発明者らは、心臓の臨床的評価におけるパラダイムシフトを提案するものであり、ここでは2D画像に基づくマニュアルの分析は、4Dデータからの自動化されたモデルに基づく定量化に置き換えられる。自動的に抽出される臨床的測定の種々の例が以下に示される。
【0064】
表1は、患者固有の4D解剖学的モデルから測定された大動脈−僧帽弁の結合の種々のサイズに関する結果を示し、これには、心室−動脈接合部(VAJ)、バルサルバ洞(SV)、上行大動脈接合部(SJ)、僧帽弁輪部周辺(AC)、前後径(APD)、前外側−後内側径(AL−PM−D)が含まれる。図11は、大動脈弁領域(AV領域)および僧帽弁領域(MV領域)についての測定精度を示す。特に、図11は、AV領域1102およびMV領域1104に関するブランドアルトマンプロットを示す。大動脈弁の実験は36人の患者からのCTデータについて行い、僧帽弁の実験は10人の患者からのTEE(経食道心エコー法)データについて推定した。
【0065】
【表1】
【0066】
1心周期におけるチャンバの動きパターンから、その機能、たとえば同一チャンバ内または異なるチャンバ内における、心室駆出分画、心筋壁厚および同期不全についての多くの重要な臨床的測定が可能となる。モデルに基づく分析のいくつかの利点は、正確性、効率性、包括性などである。
【0067】
包括的な患者固有の4Dモデルの別の可能な用途は、診断および症例の収集の自動化である。臨床判断は、一般的な情報および臨床ガイドラインおよび刊行物からの規則の組、ならびに、臨床医の個人的な経験に大きく基づいている。上述の量的な品質に加え、包括的な心臓モデルは、学習に基づく識別的距離関数を用いた高レベルの臨床情報を自動的に得るために用いることができる。推論では、これは包括的な特徴空間に定式化され、これには複雑な形態的および機能的情報が含まれる。特定の実施形態においては、これは2つの一般的なタスクの実行に用いられる。その1つは、学習された距離関数を用いた類似症例の検索であり、これは2つの特定の心臓形状を測定する。もう1つは、ジオメトリモデルおよび得られた特徴に基づく2分類問題である。
【0068】
距離の学習に関して、2つの方法、すなわち、同値制約および固有のランダムフォレスト距離からの学習が本明細書中に記載されているが、本発明はこれらに限られない。同値制約は2つのモデル例の特徴ベクトルの3つの組と、2つの例が類似であるか非類似であるかを示すラベルとを用いて表される。これらの3つの組からの学習はしばしば積空間における学習と称され、多く関係する特徴、弱く関連する特徴および関連しない特徴を持つ高次元データについて効果的であることが示されている。ブースティングまたはランダムフォレストを用いて構築されたモデルの符号付きのマージンは、必要とされる距離関数として用いることができる。
【0069】
一般的な方法により、用途に応じた類似性のユーザ定義の任意の概念の学習が可能となる。これは2つの用途の例で示される:1)大動脈弁の診断および重症度評価;2)経皮的肺動脈弁置換(PPVI)についての患者の選択。PPVIについての患者の選択に関して、肺動脈幹の形態がPPVIに対する患者の適合性の主な決定要因である。不適合な患者へのインターベンションは、患者に不必要な侵襲的カテーテル処置を施すこととなる。図12は肺動脈幹の種々の形態を示す。図12に示されているように、タイプ1はピラミッド型、タイプ2は定径型、タイプ3は逆三角形型、タイプ4は中心が狭いが近位および遠位が広い型、タイプ5は中心が広いが近位および遠位が狭い型をそれぞれ示している。タイプ1の患者は動脈が狭くデバイスが移動する可能性が高いのでPPVIには不適合であると考えられる。したがって、患者固有の4D解剖学的モデルの一部として推定可能な、推定された肺動脈幹から抽出された形状特徴は、患者がPPVIに適合しているか否かを自動的に判別するように、他のクラスからタイプ1の解剖構造を識別するため、識別的距離関数を学習するのに用いることができる。
【0070】
患者固有の解剖学的心臓モデルに加えて、患者固有の心臓の血行力学も非侵襲的な評価および診断に用いることができる。特に、心周期の事象における血行力学が、図1のステップ106において上述されているようにシミュレート可能である。心周期の事象のシミュレーションの例が本明細書中に記載されている。シミュレーション領域は1283の規則的なグリッドを用いて離散化され、これは1mmの物理解像度に対応するものであり、この時間ステップは0.001秒であった。安定性を保証するため、最大速度がdx/0.001を超えるであろうとき、すなわち、クーラン−フリードリックス−レウィ(CFL)数max(u)*0.001/dxが1を超えるときにはサブサイクリングを用いた。心臓の境界ボックスは当該領域の95%を占めた。
【0071】
図13は心周期における事象および構造の血行力学シミュレーションを示す。図13に示すように、画像1302、1304および1306は、初期収縮期、中期収縮期、終期収縮期段階での心臓における、シミュレートされた血流速度をそれぞれ示す。画像1312、1314および1316は、初期収縮期、中期収縮期および終期収縮期それぞれにおいてシミュレートされた速度に基づいて生成された、渦度の等密度面を示す。シミュレーションが行われた特定の心臓は925msの心周期の間に290msの収縮期を有する。画像1302および1312に示されるように、拡張段階および等容性収縮(IVC)段階に由来する初期の流れ状態には、後期僧帽弁充満からの環状の渦の残余が含まれる。この特徴は初期収縮期(ES)における、より下方の心室のパターンを支配し、心尖の血液プールは渦によってほとんど再循環されている。興味深いことに、初期状態はまた、心尖から見て反時計回りの回転を特徴とし、これは収縮期の間で時計回りに逆転する。
【0072】
画像1304および1314に示されるように、中期収縮期は大動脈の軸に沿った渦状のストランドをしばしば持つ強い大動脈の流束を特徴とし、これは大動脈への血液の右回りのらせん状の動きを導く。この血液の反時計回りの回転はより下流の上行大動脈中で続くが、これは健康な大動脈の流れのよく知られた特徴である。これらの計算結果はCTデータから得られたメッシュに基づいており、すなわちねじれ運動を含まない。これらは大動脈の右回りのらせん状回転が、LVのねじれ運動というより、大動脈弁の基底平面と大動脈弁のジオメトリ自体とに関する大動脈の長手方向軸の幾何的配置により主として決定されるという結論を支持する。画像1306および1316に示されるように、終期収縮期において、渦状のストランドはより弱く、大動脈に入る流体粒子はより広いらせん状の経路を画定する。
【0073】
流束は右心の初期および中期収縮期において同様に強く、上述と同様の特徴を有し、しかし、肺動脈弁の逆流のため、逆流性の流束が心周期の終わりに見られる。
【0074】
図14は、血流シミュレーションを用いて得られた、大動脈弁の洞領域における渦の形成を示す。図14に示されるように、画像1400は患者固有の心臓の解剖学的モデルにおける大動脈弁の洞領域1402の位置を示し、画像1410は洞領域1402において形成されている渦を示す。図14に示されるように、血流シミュレーションによって、大動脈弁から離れたところの既知の流れパターンの形成、すなわち、洞領域1402における各弁尖の背後に形成される渦が再現されている。
【0075】
図15は、拡張期の事象および構造の血行力学的シミュレーションを示す。図15に示されるように、画像1502、1504および1506は、心臓の初期拡張段階、中期拡張段階および後期僧帽弁閉鎖段階それぞれにおける、シミュレートされた血流速度を示す。画像1512、1514および1516は、初期拡張段階、中期拡張段階および終期拡張期段階それぞれにおけるシミュレートされた速度に基づいて生成された渦度の等密度面を示す。画像1502および1504に示されるように、初期拡張期(ED)の流束は、僧帽弁が開かれると、非対称な環状の渦の形成を伴って開始され、これはさらに弁尖と僧帽輪(AMR)の中心とを結ぶ軸に対して約30度の角度で弁尖に向かう。LVの前方壁に当たると、渦は幾分消失し、AMRに対して約75度に軸を変化させる。画像1504および1514に示されるように、これは心尖を水平方向の回転軸を有する大きな渦でもって流す渦のパターンに変わり、これは大動脈弁の直下に位置する反対方向に回転する小さな渦でもって終わる。この小さな渦の形成は(開いた)僧帽弁の前尖によって強められる。この渦のパターンは中期収縮期において次第に弱まり、その後ほとんど見えなくなる。画像1506および1516に示されるように、後期僧帽弁充満が成功裏に捕捉されている。これは下方に向かう別の環状の渦を形成し、肺動脈血管の小さな逆流と同時に発生するが、これは通常の事象である。
【0076】
流束は右心において質的に類似する。図15の画像1510に示されるように、シミュレーションにより、僧帽弁の流れの曲線と比較して、心拍静止期における低減された三尖弁の流れの曲線が捕捉された。
【0077】
上述の血流シミュレーションは、心拍静止期において先端の渦が僧帽弁から生じているという結論を支持する。これは、弁尖がこれら自身で流れに対して配列し、従って、渦は生じず、流れを配向しないという所見と部分的に合致しない。この違いは、正確な三尖弁の弁尖が含まれる、本発明の向上された心臓モデルによって生じうる。シミュレートされた流れは三尖弁が配向および渦の生成の両方を役割を持つことを示している。
【0078】
血行力学シミュレーションの精度を評価するため、弁を通過する血流量を推定した。典型的なPC−MRI流量定量化プロトコルにより、オペレータによって解剖構造とともに配列されたMR画像化平面を用いて経時的な血流を取得する。観察について報告している文献との比較を行うため、このプロトコルをシミュレートし、PC−MRIについて行われるように、弁とともに配列された平面を用いる同様のやり方で、経時的に計算した血流を定量化した。この平面を通る法線速度の積分を計算し、試験した例に関して得た曲線を図16に示す。図16は、1心周期にわたって弁領域を通過する血流の時間流量を示すグラフを示す。グラフ1600は、左心における大動脈弁1602領域および僧帽弁1604領域を通過する流量を示す。グラフ1610は、右心における肺動脈弁1612領域および三尖弁1614領域を通過する流量を示す。グラフ1600および1610に示される流量は通常の心臓に関する標準的な流量曲線と質的に類似するが、肺動脈血管の流量は除かれ、これは上述の逆流を示している。図17および18は、フローの測定に用いられたスライス位置を示す。図17の画像1702、1704および1706は、0.92秒の心周期中の時間0.18、0.3および0.42それぞれにおける、大動脈の断面スライス1608における速度ベクトルを示す。画像1802および1804は僧帽弁のわずか下の領域の断面スライス1806を示す。
【0079】
(たとえば超音波を用いるときの)平均速度またはピーク速度を測定するための臨床的実施においては、わずかに異なる測定位置(弁領域のわずかに前の大動脈についての位置、および僧帽弁のわずかに下の僧帽弁についての位置)が用いられる。しかし、血流量(所与の1表面を通る法線速度の積分)はここで測定され、したがって、位置は臨床における測定位置から有意に離れた(しかし未だに近接した)位置が選択される。これにより、測定位置は、(1)心臓モデルを流れの方向に沿って形態的に切断された2つの領域に分け、(2)弁領域を通ることはなく、弁領域を通る場合には流量の計算が汚損(または少なくともより複雑に)されうる。
【0080】
流量はLVのすぐ外側で測定されるので、流量は大動脈または心房の放射状の動きによる容積の変化成分を含みうる。小さいながらも、これらの成分は図15中に同時的な大動脈弁−僧帽弁(または肺動脈弁−三尖弁)の流れの領域として示されている。同じ理由で、等容積相はこのプロトコルでもって正確に定量化できず、したがって、図15中でははっきり見えない(特に、LVにおける等容積拡張)。
【0081】
測定を通じた速度パターンは、図17および18からわかるように非常に複雑であり、これは特に弁に関する正確な地理的情報を用いることの重要性を強調するので、流入および流出に関する不完全なモデルの使用は最少化される。弁のジオメトリモデルを含ませることによって複雑な流れパターンの計算が容易となる。
【0082】
図19は、狭窄および逆流の両方を患っている、二尖逆流性大動脈弁および病的僧帽弁を有する心臓についての血流シミュレーションを示す。画像1902〜1920は4D CTデータから得られた左心モデルを用いた血流シミュレーションから得られた1心周期の渦度を示す。画像1902および1904において、左心室は拡張し、僧帽弁は開き、血液は左心室に入って狭窄のために壁に当たる。画像1906には比較的穏やかな状態が示され、画像1908には心拍静止期が示される。画像1910および1912において、僧帽弁は2度目に開かれ、より多くの血液が左心室に入り、再び壁に当たる。画像1914、1916および1918において、左心室は収縮し、大動脈弁は開き、血液は大動脈に入り、同時に左心房の充満が始まる。強いらせんが、大動脈弁の二尖弁構造によって形成される。画像1920において、大動脈部は閉じ、逆噴流は逆流を示す。画像1916および1918に示されているように、血流パターンは上行大動脈の下流において通常の心臓のものとは非常に異なっている。心収縮期の噴流は、通常、大動脈の中心線に沿って方向付けられるが、大動脈に対してはね返されて局所的な壁の応力を増大させている。これにより、なぜ2尖大動脈弁を持つ患者において大動脈起始部拡張が進行するのかが説明される。さらに、画像1902、1904および1912に示されるように、狭窄と逆流の両方を患う病的僧帽弁は、流れをLVの前側の壁に方向付ける。画像1914および1918に示されるように、大動脈弁および僧帽弁の逆流が収縮期と拡張期においてそれぞれ観察される。
【0083】
図20は、健康な1つの心臓と、疾患のある2つの心臓とについてのシミュレートされた血行力学の比較を示す。図20に示されるように、第1行の画像は、初期収縮段階2002、後期収縮段階2004、早期拡張段階2006および後期拡張充満段階2008における健康な心臓についての、左心のシミュレートされた速度フィールドを示す。第2行の画像は、初期収縮段階2012、後期収縮段階2014、早期拡張段階2016および後期拡張充満段階2018における拡張した大動脈を持つ心臓についての、左心のシミュレートされた速度フィールドを示す。第3行の画像は、初期収縮段階2022、後期収縮段階2024、早期拡張段階2026および後期拡張充満段階2028における二尖大動脈弁を持つ心臓についての、左心のシミュレートされた速度フィールドを示す。
【0084】
疾患のある心臓は弁と肺動脈血管の双方の領域における逆流現象を特徴とする。健康な心臓における唯一の逆流は、後期僧帽弁充満段階における小さな肺動脈血管流の逆流であるが、これは通常の現象である。健康な心臓の心収縮期は、疾患のある心臓と比較してほぼ2倍の短さである。これはよく知られた事象であり、疾患のある心臓は、逆流および非効率な血液循環につながる解剖学的欠陥を打ち消すために、より長い心収縮サイクルを示す。
【0085】
健康な心臓(画像2002〜2008)は、923msの1心周期において非常に短い収縮期(190ms)を有する。収縮期では、左心房における流れと同様に、大動脈の流れは強かった。拡張期は僧帽弁を通じた強い流れとともに始まり、その間、大きな回転渦が左心室の中心に形成され、より小さな渦が大動脈弁の入口で形成される。後期僧帽弁充満は小さな肺動脈弁の逆流と共に生じるが、これは通常のことである。
【0086】
大動脈拡張を有する心臓(画像2012〜2018)は、重度に拡張した大動脈を特徴とする。結果的に、この心臓において大動脈弁は完全に閉塞されず、拡張期における大動脈の大きな逆流が生じる。肺動脈血管領域および僧帽弁領域においても小さいが異常な逆流が存在した。1つの興味深い事実は、流れが収縮期において大動脈の異常に拡張した領域にまっすぐに向かったことであり、これはいずれのものが他の形成に寄与するのか?についての疑問を生じる。すなわち、流れを傾けて方向付け、大動脈を拡張させるのは弱い弁なのか、それとも、大動脈が弱くなったことにより大動脈弁が引っ張られ、フローの向きを変えられたのか?
【0087】
二尖大動脈弁を持つ心臓(画像2022〜2028)に関して、大動脈壁に向かう出力噴流の偏向が観察され、これは二尖大動脈弁を持つ患者において大動脈起始部拡張が進行する事実を説明できる。さらに、二尖弁では不十分であり、これは拡張期の始めに観察される左心室への逆噴流を生じさせる(画像2024を参照)。また、シミュレーション結果は大動脈弁および僧帽弁が同期して開閉していなかったことを示し、これは心室からの心房への逆流に寄与した。
【0088】
図1および6において上述したフレームワークを用いて、心房のジオメトリを持つおよび持たない左心のモデルを用いてシミュレーションを行った(他の全てのパラメタは同じ)。図21は、左心房(LA)のある場合と無い場合の血流のシミュレーション結果を示す。図21に示されるように、画像2102、2104、2106および2108はLAのある場合の心臓の、中期収縮段階、初期拡張段階、中期拡張段階および僧帽弁充満段階についてのシミュレーション結果をそれぞれ示す。画像2112、2114、2116および2118はLAの無い場合の心臓の、中期収縮段階、初期拡張段階、中期拡張段階および僧帽弁充満段階についてのシミュレーション結果をそれぞれ示す。画像2102および2112に示されるように、収縮期の流れは、LAのある場合と無い場合とでほぼ同一である。肺動脈血管から主として生成され、LVまで下流に移動された渦は、シミュレートされた血流に大きな影響を持つことがシミュレーションにより示された。これは、画像2104および2114に明確に示されており、LAからLVへの渦の移動なしに、LV内のシミュレートされた流れはLAのある場合と無い場合のモデルの間であまり変わらない可能性があることも示された。これは非常に興味深いことであり、LA内の渦生成およびそのLVへの移動についての適切なモデルを含むことにより、LA無しで現実的な境界条件をモデリングするための可能なソリューションに示唆を与えるものである。
【0089】
上述した血行力学シミュレーションは、シミュレーションの精度を向上するために、流体構造相互作用と組み合わせて実行可能である。たとえば、モデルは、心臓構成部分の壁についてのより現実的なジオメトリの再現と、心臓構成部分の壁の軟組織モデルと、弁の可塑性とを考慮することができる。上述のように、流体構造相互作用は構造の生体力学的性質、たとえば組織の硬度を推定するために用いることができる。このように推定された生体力学的性質は診断目的に用いることができる。たとえば、大動脈などの構造の硬度を推定することにより、破裂、高血圧などの危険性を推定することができる。この情報は、瘤の形成のより洗練されたモデルへの道を開くものであり、生体力学的性質は病理学により修正される。
【0090】
図1に戻り、ステップ114において仮想的な治療プランニングおよび/または疾患進行予測が、包括的なモデリング結果を用いて行われる。包括的モデルは、患者の心臓機能の包括的な所見を与える。これは、特定の疾患がどのように患者の心臓に影響するかを予測する、または、患者がある種類の治療または処置にどのように反応するかを予測するために用いることができる。図22は、本発明の一実施形態にかかる、患者固有の包括的な4Dモデルを用いた予測プランニングの方法を示す。図22の方法は図1の実行ステップ114に用いることができる。図22に戻り、ステップ2202において、包括的な患者固有の4Dモデルが生成される。特に、図1のステップ104、106および108において上述されているように、包括的な患者固有のモデルが4D医用画像データに基づいて生成される。特定の患者のための包括的モデルには、たとえば、患者固有の解剖学的、形態的、血行力学的および生体力学的パラメタが含まれている。
【0091】
ステップ2204において、状態をシミュレートするために、包括的な患者固有の4Dモデルの少なくとも一部が調整される。状態とは、たとえば、疾患、治療または処置、あるいは、心臓モデルのパラメタに影響を与えうる任意の他の状態である。状態をシミュレートするため、たとえば1つまたは複数の解剖学的、形態的、血行力学的または生体力学的パラメタが調整される。たとえば、大動脈のサイズなどの解剖学的データが、疾患の進行を表すよう調整される。上述のように、種々の血流シミュレーションが種々の疾患を有する心臓について行われており、疾患のある心臓の血行力学的パラメタが得られている。特定の心臓の病態の存在または重度をシミュレートするために、特定の血行力学的パラメタを調整することも可能である。さらに、特定の心臓構成部分の、組織の硬度などの生体力学的パラメタを調整することもできる。たとえば、大動脈の組織の硬度が大動脈の硬化を表すよう調整される。治療に対する患者の反応を予測するために、モデルを用いて異なる治療または処置を仮想的に試すために、モデルを調整することもできる。これらの例は本発明を制限することを意図するものではない。
【0092】
ステップ2206において、患者の状態への影響を予測するため、包括的な患者固有の4Dモデルが調整部分に基づいて再生成される。複数の期間にわたる状態の影響を予測するために、または、患者への複数の異なる状態の影響を予測するために、図22の方法を繰り返しても良い。たとえば、図22の方法は、患者にとっての最適な処置を選択するために、患者固有のモデルを用いて異なる代替的処置を試すよう繰り返すことができる。包括的モデルを用いる治療プランニングの例を以下に示す。これらの例は、本発明を限定することを意図するものではない。
【0093】
一実施形態では、包括的な患者固有のモデルは、経皮的処置についてのコンピュータを用いた意志決定支援に用いられる。経皮的処置は処置が比較的複雑でなく追跡率が比較的低いため、しだいに一般的になってきている。このような処置では、経静脈的技術、経動脈的技術または経心尖的技術を用いるカテーテルを通した人工装具の留置が行われ、これにおいては臨床医は影響される解剖構造を直接見たり、アクセスすることはできない。したがって、インターベンションの成功は、術中の画像および術者の経験と技術に大きく依存しており、人工装具の次善的な交換位置は、重篤な弁周囲逆流および/または高勾配を伴う低い血行力学的性質と、次善的な効果的開口部とをもたらしうる。
【0094】
本発明の一実施形態によれば、包括的な患者固有のモデルを用いて経皮的処置前の術前プランニングを行うことができる。解剖学的モデルには、大動脈弁と上行大動脈とを含む大動脈と弁の複合体が含まれ、これは変形可能な単体メッシュおよびジオメトリ制約に基づいた交換弁のコンピュータによる(仮想的)導入を実行するために用いられる。デバイスは、人工装具のジオメトリを正確に模倣しているステントのメッシュ、および、デバイスの拡張をガイドするために用いられる重畳する2単体メッシュである計算メッシュとしてモデリングされる。デバイスの拡張は、実際の処置において働く外力と内力をバランスさせることにより逐次近似法を用いてモデリングされる。デバイスの変形は二階微分方程式の有限離散化により記述される。図23は仮想留置の間の交換モデルに作用する力を表す。図23に示されるように、画像(a)の矢印は支柱接合部における特徴的な角度2302にかかる力f角度を表す。画像(b)の矢印は支柱の長さを維持する力f長さを表す。画像(c)はステントメッシュの短軸方向断面を表す。画像(c)の矢印は周囲2304にかかる力f周囲を表す。力f外は支柱接合部からステントの重心までの距離2306と、血管壁2312からステントの重心2308間での距離2310との割合によって重み付けされる、ステントメッシュの法線に沿って作用する全ての力を弱めまたは無くす。
【0095】
図23に示される力に基づいて人工装具の留置が仮想的にシミュレートされる。この方法は、種々の治療仮説における最良の交換体の種類、サイズおよび、留置位置ならびに配向を予測するために用いることができる。人工装具の解剖学的な適合の予測に加え、包括的モデルを再生成し、仮想的に留置された人工装具を含む血行力学的シミュレーションおよび流体構造相互作用を行うこともできる。
【0096】
モデルに基づくコンピュータを用いた弁交換の予測力に関し、術前および術後の3D心臓スキャンを用いて20人の患者について評価した。各患者について、予測結果を、術前データに画像化されている実際のデバイスに人手で適合されたグラウンドトルースモデルと比較した。輪部レベルにおいて2mm未満の精度で、最良の交換体の種類、サイズおよび留置位置ならびに配向を種々の処置仮説のもとでコンピュータの実行によって予測される最適なパフォーマンスが観察されるまで探すことにより、術前プランニングを支援するという方法に関する可能性が実証された。
【0097】
包括的な患者固有の4Dモデルを用いる仮想的治療プランニングについての別のありうる用途は、大動脈内の瘤へのステント留置のシミュレーションである。図24において、ステントを表すメッシュ2402は大動脈2404の瘤のところに仮想的に留置される。ステントの留置により生成される力はステントの固定部分において大動脈壁を局所的に変形させる。流体構造相互作用がこの変形のモデリングに用いられる。この変形のモデリングは強度およびステント固定ならびにその血流への影響の評価において非常に重要である。このようなフレームワークを用いて、心臓病専門医は異なるステントデザインを試し、患者にとって最適なステントを選択することができる。
【0098】
包括的な患者固有の4Dモデルを用いる仮想的な治療プランニングの別のありうる用途は、大動脈瘤の仮想切除である。特に、この用途では瘤の切除が血流に与える影響がコンピュータによりシミュレートされる。患者固有の大動脈のモデル(個人化されたジオメトリおよび生体力学的パラメタを含む)を、リアルタイムの軟組織インターベンションのプラットフォームにロードすることができる。ユーザは、このプラットフォームを用いて切除、閉鎖および縫合を含む仮想的なインターベンションを行うことができる。図25には、仮想的な瘤切除が示される。図25に示されるように、画像2502は瘤を有する大動脈を示し、画像2504は瘤の切除を示し、画像2506は切除の縫合を示し、画像2508は切除の閉鎖を示す。その後、術後の血流をシミュレートするため、FSIモデルが術後のジオメトリについて行われる。提案の方法論は術前データからモデルを調整し、術後データを試すことにより検証される。この提案のフレームワークは、除くべき部分を画定することにより、外科処置の準備に役立つ。
【0099】
包括的心臓モデルを用いた、心臓の包括的モデリング、患者固有の4D解剖学的心臓モデルの生成、心臓における血流のシミュレーション、流体構造相互作用のシミュレーションおよび予測プランニングに関する上述の方法は、よく知られたコンピュータプロセッサ、メモリユニット、ストレージ装置、コンピュータソフトウェアおよび他の要素を用いてコンピュータ上で実行可能である。このようなコンピュータの高レベルのブロック図を図26に示す。コンピュータ2602はプロセッサ2604を備え、これは動作を定義するコンピュータプログラム命令を実行することによりコンピュータ2602の動作全体を制御する。このコンピュータプログラム命令は、たとえば、ストレージ装置2612(たとえば磁気ディスク)に保存され、当該コンピュータプログラム命令の実行が望まれるときにメモリ2610にロードされる。したがって、図1、3、6、8および22の方法のステップは、メモリ2610および/またはストレージ2612に保存されたコンピュータプログラム命令により定義され、当該コンピュータプログラム命令を実行するプロセッサ2604により制御される。CTスキャン装置、MRスキャン装置、超音波装置などの画像取得装置2620をコンピュータ2602に接続してコンピュータ2602に画像データを入力しても良い。画像取得装置2620およびコンピュータ2602を1つの装置として実施しても良い。画像取得装置2620とコンピュータ2602とがネットワークを介して無線通信するようにしてもよい。また、コンピュータ2602は、ネットワークを介して他の装置と通信するための1つまたは複数のネットワークインタフェース2606を備えても良い。また、コンピュータ2602はユーザのコンピュータ2602へのアクセスを可能とする他の入出力装置2608(たとえば、ディスプレイ、キーボード、マウス、スピーカ、ボタン等)を備えても良い。このような入出力装置2608は、たとえば、画像取得装置2620から受信したボリュームに注釈付けを行うための注釈付けツールとして、コンピュータプログラムセットとともに用いられる。当業者であれば、実際のコンピュータにおける実施には他の要素が含まれ、図26は例示を目的としたこのようなコンピュータのいくつかの要素を高レベルで表したものであることは理解するであろう。
【0100】
上述の詳細な説明は、あらゆる面において、限定的なものでなく、例示的なものとして理解されるべきであり、本明細書中に開示された発明の範囲は詳細な説明によって定められるものではなく、特許法により認められる範囲全体に従って解釈されるように特許請求の範囲から定められるべきである。本明細書中に示され、記載された実施形態は、本発明の原則の例示に過ぎず、種々の実施形態は本発明の精神を逸脱することなく当業者によって実施可能である。当業者は本発明の精神を逸脱することなく種々の他の特徴の組み合わせを実施することができる。
【符号の説明】
【0101】
2602 コンピュータ、 2604 プロセッサ、 2606 ネットワークインタフェース、 2608 入出力装置、 2010 メモリ、 2620 画像取得装置
【技術分野】
【0001】
本出願は、2010年7月21日に出願された米国仮特許出願第61/366,294号、2010年9月17日に出願された米国仮特許出願61/383,942、および、2010年11月3日に出願された米国仮特許出願第61/409,633号に基づく優先権を主張するものであり、それらの開示は参照により本明細書中に含まれる。
【背景技術】
【0002】
本発明は、医用画像を用いる心臓のモデリングに関し、より詳細には、4D医用画像データに基づく包括的な患者固有の心臓のモデリングに関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
心疾患は米国における男女の死因のトップであり、世界中では死因の30%以上に達する。近年の医療の進展は、弁膜症、胸部大動脈瘤やファロー四徴症などの複雑な心疾患の診断および治療において重要な進歩をもたらしてきたが、罹患率および死亡率はいまだに高い。コンピュータ断層撮影法(CT)、磁気共鳴画像法(MR)、回転X線、超音波などの医用画像化手法を、高空間時間分解能を有する大量の、形態および機能画像データの取得に用いることができる。しかし、データの理解能力における遅れにより、医師は範囲の限定された測定および方法に基づいて重要な決定をしなければならない。これらの限定は、少なくとも一部は、心臓−大動脈の解剖構造、生理学および血行力学を表す患者固有のパラメタの効率的かつ正確な推定ができず、かつ、疾患の進行モデルがないことによる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、4D医用画像データからの、包括的な患者固有の心臓のモデリングのための方法およびシステムを提供する。特に、本発明の実施形態によれば、4D医用画像データからの、心臓全体の解剖構造、動力学、血行力学および流体構造相互作用の、患者固有のモデリングが提供される。
【0005】
心臓の解剖学および動力学は、患者に関する4D医用画像データから心臓の生理学的モデルの患者固有のパラメタを推定することにより決定される。患者固有の解剖構造および動力学は、心周期全体にわたる、局所的な解剖構造によって制約される現実的な血行力学を導くナビエ・ストークスのソルバへの入力として用いられる。流体構造相互作用は、所定の時間ステップにおける血流をシミュレートし、シミュレートした血流に基づいて心臓構造の変形を計算することにより心周期全体にわたって反復的に決定され、この心臓構造の変形は次の時間ステップにおける血流のシミュレーションに用いられる。解剖構造、動力学、血行力学および流体構造相互作用を表す包括的な患者固有の心臓モデルは、心臓の非侵襲的な評価および診断だけでなく、仮想的な治療プランニングおよび心血管疾患の管理にも用いることができる。
【0006】
本発明の一実施形態では、患者固有の心臓の4D解剖学的モデルは4D医用画像データから生成される。次いで、レベルセットフレームワークを用いて、1心周期における複数の時間ステップそれぞれにおける患者固有の4D解剖学的モデルにより制約されるナビエ・ストークス方程式を解くことによって、心臓の血流がシミュレートされる。
【0007】
本発明の別の実施形態では、患者固有の心臓の4D解剖学的モデルは、4D医用画像データから生成される。レベルセットフレームワークを用いて、現在の時間ステップにおける少なくとも1つの心臓構成部分の位置によって制約されるナビエ・ストークス方程式を解くことによって、当該現在の時間ステップにおける患者固有の4D解剖学的モデルの当該少なくとも1つの心臓構成部分において、血流がシミュレートされる。当該少なくとも1つの心臓構成部分の変形は、現在の時間ステップにおける血流に基づいて現在の時間ステップにおいて計算される。シミュレートするステップおよび計算するステップは複数の時間ステップの間繰り返され、現在の時間ステップにおける少なくとも1つの心臓構成部分の現在の位置が、従前の時間ステップにおいて計算された当該少なくとも1つの心臓構成部分の変形に基づいて少なくとも部分的に決定される。
【0008】
本発明の別の実施形態では、包括的な患者固有の心臓の4Dモデルは4D医用画像データから生成される。包括的な患者固有の4Dモデルの一部は、疾患または治療などの状態をシミュレートするために調整される。次いで、包括的な患者固有の4Dモデルについての調整された部分の効果をシミュレートするため、包括的な患者固有の心臓の4Dモデルが再生成される。
【0009】
本発明の上記および他の利点は、以下の詳細な説明および添付図面を参照することにより、当業者に明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態にかかる包括的な患者固有の心臓のモデリング方法を示す。
【図2】本発明の一実施形態にかかる種々の心臓構成部分についての心臓モデルを示す。
【図3】本発明の一実施形態にかかる患者固有の心臓の4D解剖学的モデルを生成する方法を示す。
【図4】多相CTシーケンスから推定された患者固有の心臓の解剖学的モデルの例を示す。
【図5】長方形領域のレベルセットとして埋め込まれた患者固有の心臓の解剖学的モデルを示す。
【図6】本発明の一実施形態にかかる患者固有の心臓の解剖学的モデルに基づいて心臓における血流をシミュレートする方法を示す。
【図7】図6の方法を用いた血流シミュレーション例の結果の例を示す。
【図8】本発明の一実施形態にかかる大動脈の流体構造相互作用(FSI)を推定するための繰り返し方法を示す。
【図9】大動脈に関する流体構造相互作用を推定した結果の例を示す。
【図10】LVのマルチスケールの解剖学的モデルを示す。
【図11】大動脈領域および僧帽弁領域についての測定精度を示す。
【図12】肺動脈幹の形態の種々の種類を示す。
【図13】収縮期の事象および構造の血行力学的シミュレーションを示す。
【図14】血流シミュレーションを用いて得られた大動脈弁洞領域における渦の形成を示す。
【図15】拡張期の事象および構造の血行力学的シミュレーションを示す。
【図16】1心周期に弁領域を通過する血流の時間的な流量を示すグラフである。
【図17】血流の測定に用いたスライス位置を示す。
【図18】血流の測定に用いたスライス位置を示す。
【図19】二尖逆流性大動脈弁および病的僧帽弁を有する心臓についての血流のシミュレーションを示す。
【図20】健康な心臓と2つの疾患のある心臓についてのシミュレートされた血行力学の比較を示す。
【図21】右心房のある場合とない場合の血流のシミュレーション結果を示す。
【図22】本発明の一実施形態にかかる包括的な患者固有の4Dモデルを用いた、予測プランニングのための方法を示す。
【図23】仮想的な留置における交換モデルに作用する力を示す。
【図24】大動脈内の瘤部分にステントを留置するシミュレーションを示す。
【図25】仮想的な動脈瘤の切除を示す。
【図26】本発明を実現可能なコンピュータの高レベルブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、コンピュータ断層撮影法(CT)、磁気共鳴画像法(MRI)、心エコー法のデータなどのボリュームデータのシーケンスからの、包括的な患者固有の心臓のモデリングに関する。このようなボリュームデータ(本明細書中、4D画像データまたは4D画像ともいう)のシーケンスは、1つまたは複数の心周期を含む1期間にわたって得られた、その各フレームが3D画像(ボリューム)であるシーケンスである。本発明の実施形態は、本明細書中において心臓のモデリング方法の視覚的な理解を与えるために記載したものである。デジタル画像はしばしば1つまたは複数の物体(または形状)のデジタル表現から構成されている。物体のデジタル表現が、本明細書中でしばしば物体の識別および操作に関して記載されている。このような操作はコンピュータシステムのメモリまたは他の回路/ハードウェアにおいて実行される仮想的な操作である。したがって、本発明の実施形態は、コンピュータシステムに保存されたデータを用いてコンピュータシステムにおいて実行可能である。
【0012】
本発明の実施形態によれば、4D医用画像データから、心臓全体の解剖構造、動力学的、血行力学的および流体構造相互作用の患者固有のモデリングを行うための方法およびシステムが提供される。患者固有の心臓の解剖構造および動力学は、患者の4D医用画像データから患者固有の心臓の生理学的モデルのパラメタを推定することにより決定される。患者固有の解剖構造および動力学は、心周期全体にわたって、局所的な解剖構造により制約される現実的な血行力学を導く3Dナビエ・ストークスソルバへの入力として用いられる。所定の時間ステップにおける血流をシミュレートし、シミュレートした血流に基づいて心臓の構造の変形を計算することにより、心周期にわたって流体構造相互作用が繰り返し決定され、これにより心臓構造の変形が次のステップにおける血流のシミュレーションに用いられる。解剖構造、動力学、血行力学および流体構造相互作用を表す包括的な患者固有の心臓モデルは、心臓の非侵襲的な推定および診断だけでなく、治療のプランニングおよび心血管疾患の管理にも用いることができる。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態にかかる包括的な患者固有の心臓のモデリング方法を示す。図1の方法は、患者の冠動脈領域を表す画像データを患者固有の解剖学的モデルに変換し、心臓の血流および流体構造相互作用をシミュレートするために当該の心臓の解剖学的モデルを用いる。
【0014】
図1を参照して、ステップ102において、医用画像データが受信される。特に、ボリューム画像データの少なくとも1つのシーケンスが受信される。このボリューム画像データのシーケンスは、たとえば、特定の期間にわたって取得された3D画像(ボリューム)のシーケンスである。たとえば、このような4D画像データ(3D+時間)は、1心周期全体にわたって取得される。1つまたは複数のシーケンスが種々の医用画像化手法を介して受信される。本発明の種々の実施形態では、たとえば、4D CTデータ、4D 心エコーおよび/または磁気共鳴(MR)画像データ並びに他の種類の画像データが受信される。画像データは1つまたは複数の画像取得装置たとえばCTスキャナ、超音波装置またはMRスキャナから直接受信されてもよい。従前に保存された画像データを、たとえばコンピュータシステムのメモリまたはストレージあるいは何らかの他のコンピュータ読み取り可能な記録媒体から直接ロードしてもよい。
【0015】
ステップ104において、患者固有の心臓の4D解剖学的モデルが受信された4D画像データから生成される。特に、4D解剖学的モデルは、チャンバ(左心室、左心房、右心室、右心房)、心臓弁(大動脈弁、僧帽弁、三尖弁、肺動脈弁)および大動脈として含まれる複数の心臓構成部分から構成される複数要素モデルである。このような包括的な心臓モデルは、非常に様々な形態的、機能的および病理的バリエーションの捕捉に用いられる。モジュール的およびヒエラルキー的アプローチを用いて、解剖学的な複雑さを低減させ、個々の解剖構造の効率的かつ柔軟な推定を容易にすることができる。本発明の実施形態は、解剖学的に適合する心臓モデルを用い、生理学的に作用される制約およびサンプリングスキームを用いることにより、心周期にわたってかつ異なる患者について一致したパラメタ化が維持される。
【0016】
心臓のチャンバおよび弁のそれぞれの全体的な動力学的変化は、時間依存の相似変換としてパラメタ化され、この相似変換は並進と、回転の4元数表現と、相似変換のスケーリング因子と、心周期における時間位置と、を定義する。有利な実施形態では、心臓のチャンバについての152個の解剖学的ランドマークおよび心臓弁についての33個の解剖学的ランドマークの組を用いて、全ての心臓の解剖構造の複雑かつ同期した動きパターンがパラメタ化される。これにより、各ランドマークは3次元空間における軌跡によって表され、時間依存の相似変換により正規化される。最終的なモデルは、チャンバを表す9つの密な表面メッシュの組と、弁についての13個の構造の別の組とでもって完成される。各メッシュは、これらのランドマークにより定義される頂点の解剖学的なグリッドに沿ってサンプリングされる。
【0017】
図2は、本発明の一実施形態にかかる種々の心臓構成部分に関する心臓モデルを示す。特に、図2の(a)〜(f)の画像は、心臓の解剖学的モデルの種々の構成部分についての解剖学的定義を示す。これらの解剖学的モデルのパラメタは、特定の患者について4D画像データに基づいて1心周期にわたって推定される。
【0018】
図2の画像(a)は、左心室(LV;Left ventricle)200および左心房(left atrium)202についてのモデルを示す。左心室200は78個のランドマーク(16個の僧帽弁側方(mitral lateral)の制御点、15個の僧帽弁中隔(mitral septum)の制御点、16個の左心室流出路(LV output tract)の制御点、32個の大動脈弁(aortic valve)の制御点)と、4つの表面ジオメトリ(LV心外膜、LV心内膜、LV流出路)とから構成されている。左心房の表面202は、大動脈弁制御点を介して左心室200に接続されている。
【0019】
図2の画像(b)は、右心室(RV;right ventricle)204および右心房(right atrium)206を示す。右心室204は、74個のランドマーク(16個の三尖弁側方(tricuspid lateral)の制御点、15個の三尖弁中隔(tricuspid septum)の制御点、28個の三尖弁(tricuspid)の制御点、18個の肺動脈弁(pulmonary valve)の制御点)と、4つの表面ジオメトリ(RV心尖、RV流出路(RV output tract)、RV流入路)とから構成されている。右心房の表面206は28個の三尖弁制御点によって制約され、右心室204に接続されている。
【0020】
図2の画像(c)は大動脈弁208のモデルを示す。大動脈弁モデル208は、11個のランドマーク(3個の交連(commissure)、3個の蝶番(hinge)、3個の弁尖先端(leaflet tip)、2個の小孔(ostium))と、4つの表面構造(大動脈起始部(aortic root)、N弁尖、L弁尖、R弁尖)とから構成されている。大動脈起始部は、蝶番および交連の平面、並びに、2つの交連と1つの蝶番との間の各弁尖の距離により制約される。
【0021】
図2の画像(d)は、僧帽弁210のモデルを示す。僧帽弁のモデル210は、7個のランドマーク(3個のトライゴン(trigone)、2個の交連、2個の弁尖先端)から構成される。前尖(A;anterior leaflet)は2つのトライゴン、1つの弁尖および2つの交連により画定され、後尖(P;posterior leaflet)は3つのトライゴン、1つの弁尖および1つの交連により画定される。
【0022】
図2の画像(e)は、肺動脈弁212のモデルを示す。肺動脈弁モデル212は、9個のランドマーク(3個の交連、3個の蝶番、3個の弁尖先端)と、4つの表面構造(肺動脈起始部、N弁尖、L弁尖、R弁尖)とから構成される。
【0023】
図2の画像(f)は、三尖弁214のモデルを示す。三尖弁モデル214は、4つの表面ジオメトリ(弁輪、中隔弁尖(S;septal leaflet)、前尖(A)、後尖(P))と、6個の解剖学的ランドマーク(3つの交連、3個の弁尖先端)とから構成される。
【0024】
患者固有の4D解剖学的モデルは、患者の心臓の形態を与えるものであり、心臓の任意の構成部分についての形態的(サイズ的)および動力学的パラメタの決定に用いることができる。図3は、本発明の一実施形態にかかる患者固有の心臓の4D解剖学的モデルを生成する方法を示す。図3の方法は患者の冠動脈領域を表す画像データを変換して、患者についての、患者固有の心臓の自動的な解剖学的モデルを生成する。図3の方法は、図2の実行ステップ104に用いることができる。患者固有の心臓モデルを生成するための図3の方法は、米国特許出願公開第2010/0280352号および第2011/0060576号に、はるかに詳細に記載されており、これらは参照により本明細書中に含まれる。
【0025】
ステップ302において、複数の心臓構成部分のそれぞれについて、受信された画像データから1つの個別のモデルが生成される。本発明の一実施形態では複数のモデルが以下について生成される:[心臓のチャンバ]左心室(LV)(心内膜および心外膜)、右心室(RV)、左心房(LA)および右心房(RA);[弁]僧帽弁、大動脈弁、肺動脈弁および三尖弁;[主血管]大動脈幹および肺動脈幹。これらの心臓の部分は全て、本明細書中において「心臓構成部分」として集約的に称される。各心臓構成部分について、心臓構成部分の生理学的モデルが、識別的データベース−ガイド推定/検出技術を用いて、4D画像データの各フレーム中で推定される。
【0026】
特定の患者についての個人化された心臓モデルの生成の前に、各解剖構造(心臓構成部分)の生理学的モデルがオフラインで構築される。各生理学的モデルは、注釈付きのトレーニングデータの組を用いた対応する心臓構成部分の数学的表現に基づいて生成される。たとえば、各心臓構成部分についての生理学的モデルは、注釈付きのトレーニングデータの組を用いた心臓構成部分の平均形状を用いて生成可能である。たとえば、米国特許出願公開第2008/0101676号(本明細書中に参照により含まれる)には、4チャンバの生理学的心臓モデルを生成し、この心臓モデルを画像データに適合させることが記載されている。これに開示されているように、心臓モデルは3Dメッシュであり、各チャンバについての初期メッシュは注釈付きのトレーニングデータを用いたこれらのチャンバの平均形状を用いて生成される。さらに、米国特許出願公開第2009/0123050(本明細書中に参照により含まれる)には、大動脈弁の4D生理学的モデルが記載されている。同様に、注釈付きのトレーニングデータの組に基づいて、生理学的モデルを心臓構成部分のそれぞれについてオフラインで生成しても良い。
【0027】
3D画像(すなわち、4D画像のシーケンスのフレーム)における特定の心臓構成部分の生理学的モデルを推定するため、生理学的モデルのパラメタを推定して、注釈付きのトレーニングデータの大きなデータベースに基づいて識別的機械−学習技術を用いて画像を適合する。一実施形態では、境界空間学習(MSL)を用いて画像それぞれにおいて生理学的モデルを局所化させる。
【0028】
MSLの考えは、完全相似変換パラメタ空間において直接に分類器を学習させるのではなく、注釈付きのトレーニングデータに基づいてサイズを増大させて識別的分類器を漸次学習させるものである。サイズの増大につれ、有効な(正の)空間領域は従前の限界空間分類器によりより制限される。特定の心臓構成部分などの解剖構造の生理学的モデルを画像中で推定するため、当該の心臓構成部分に対応する相似変換(すなわち、位置、方向、スケール)の推定は、以下の3段階に分けることができる:位置の推定、位置−方向の推定、完全相似変換の推定。識別的分類器はトレーニングデータに基づいて各ステージについてトレーニングされる。全ての識別的分類器は、確率的ブースティングツリー(PBT)としてトレーニング可能である。検索空間のサイズを低減するほかに、MSLの利点は、各境界空間レベルにおける分類器をトレーニングするために、異なる特徴、たとえば3Dハール特徴または操作可能な特徴を用いることができることである。
【0029】
MSLを用いて3D画像データにおける種々の心臓構成部分の生理学的モデルを推定する例は、以下の文献に記載されており、これらの記載は本明細書中に参照により含まれる:3D CT画像データにおいて各チャンバについてのモデルを推定することが記載された米国特許出願公開第2008/0101676号;4D CTデータに大動脈弁の生理学的モデルを適合させることが記載された米国特許出願公開第2009/0123050号;3D超音波画像のシーケンスに左心室のモデルを適合させることが記載されたYang et al., "3D Ultrasound Tracking of the Left Ventricles Using One-Step Forward Prediction and Data Fusion of Collaborative Trackers", CVPR 2008。上記例と同様にして、識別的機械−学習技術を用いて画像データに心臓構成部分の生理学的モデルを適合させることにより、各心臓構成部分を推定することができる。
【0030】
各個別の心臓構成部分モデルのパラメタをたとえばMSLを用いて4D画像データの各フレームにおいて推定した後で、推定されたモデルパラメタを洗練するために、各画像中の個別の心臓構成部分モデルについて学習に基づく境界検出を実行してもよい。特に、各推定されたモデルの境界を学習に基づく境界検出を用いて精密化し、各心臓構成部分についての生理学的モデルの推定の精度を向上させることができる。
【0031】
ステップ304において、患者固有の心臓の個人化された4D解剖学的モデルが、各心臓構成部分について生成された個別のモデルを統合することにより生成される。ステップ302から得られる各個別の心臓構成部分は、特定数の点から構成されるメッシュである。有利な一実施形態によれば、LV(心内膜および心外膜)、RV、LA、RA、僧帽弁、大動脈弁、大動脈および肺動脈幹の個別のモデルを統合するために、接続されているモデルまたは重なっているモデルの間でメッシュ点の一致が確立される。メッシュ点の一致により、モデルは互いに正しく配列される。モデルの再サンプリングによりモデル間のメッシュ点の一致を確立することができる。たとえば、米国特許出願公開第2008/0262814号(本明細書中に参照により含まれる)には、心臓のチャンバモデルを正しく配列するための、4つの心臓チャンバのモデル間のメッシュ点の一致を確立するための種々の再サンプリング方法が開示されている。米国特許出願公開第2008/0262814号に記載されている技術は、本明細書中に記載されている個別の心臓構成部分のモデル間のメッシュ点の一致を確立するために拡張することができる。
【0032】
ステップ306において、患者固有の4D解剖学的心臓モデルが出力される。たとえば、患者固有の4D解剖学的心臓モデルは、メモリ、ストレージまたはコンピュータ読み取り可能な記録媒体に保存することにより出力される。また、患者固有の4D解剖学的心臓モデルは、該患者固有の4D解剖学的心臓モデルを表示することにより、または、該患者固有の4D解剖学的心臓モデルを印刷することにより出力されてもよい。出力された患者固有の4D解剖学的心臓モデルは、さらなる医用画像化処理に用いてもよい。たとえば、個人化された4D解剖学的心臓モデルは、心臓の種々の形態的および機能的測定を推定するために用いることができる。さらに、個人化された4D解剖学的心臓モデルは、図1の方法の後続のステップにおいて記載されているように、血流または血液−組織相互作用をシミュレートするために用いることができる。
【0033】
上述のように、図3の方法は、一実施形態にかかる患者固有の4D解剖学的モデルを生成する方法を示す。別の実施形態では、4D解剖学的モデルのパラメタは、たとえば、基礎的な解剖構造の詳細の自然レベルに基づく粗細(coarse-to-fine)ストラテジに従って、患者について推定される。第1のステップでは、ロバストな、時間に適合したオブジェクトの局所化を行うため、MSLをRANSAC(random sample consensus)法と組み合わせる方法を用いて、受信された4D画像データから各モデルの構成部分の姿勢および動きパラメタが復元される。この方法は、Ionasec et al., "Patient-Specific Modeling and Quantification of the Aortic and Mitral Valves from 4D Cardiac CT and TEE", IEEE Transactions on Medical Imaging, 2010(本明細書中に参照により含まれる)に詳細に記載されている。第2のステップでは、軌跡に基づく特徴および強力な軌跡スペクトル分類器を用いる軌跡スペクトル学習(TSL)アルゴリズムを用いて、解剖構造のランドマークの位置および動きが同時に推定される。TSLアルゴリズムはIonasec et al., "Robust Motion Estimation Using Trajectory Spectrum Learning: Application to Aortic and Mitral Valve Modeling from 4D TEE", Proceedings of 12th IEEE International Conference on Computer Vision, 2008, pages 1601-1608(本明細書中に参照により含まれる)にはるかに詳細に記載されている。最後のステップにおいて、完全な心臓表面の境界描写が心周期全体にわたって行われる。この方法は、協同的トラッカー(tracker)および運動マニフォルド(motion manifold)とともに、ロバストな境界ディテクタを利用する。
【0034】
図4は、多相CTシーケンスから推定された、患者固有の解剖学的心臓モデルの例を示す。図4に示されるように、画像402、404および406は、左心室、左心房、右心室、右心房、大動脈弁(AV)、僧帽弁(MV)、肺動脈弁(PV)および三尖弁(TV)ならびに上行大動脈および肺動脈を示す。図4は大動脈全体を示していないが、大動脈は患者固有の4D解剖学的モデルの一部として同様に推定可能である。たとえば、大動脈は、米国特許出願公開第2010/0239148号(本明細書中に参照により含まれる)に記載の方法を用いて推定することができる。
【0035】
図1に戻り、ステップ106において、心臓中の血流(血行力学)が、患者固有の4D解剖学的モデルに基づいてシミュレートされる。血流をシミュレートするため、患者固有のジオメトリは心周期全体にわたる局所的な解剖構造により制約される、現実的な血行力学を導く3Dナビエ・ストークスソルバへの入力として用いられる。
【0036】
本明細書中に記載される血行力学の計算には、血液に関する古典的な連続体モデルが用いられる。流体の流れに関する標準的な連続体の力学モデルである、粘性項(下記式(1))を有する非圧縮性ナビエ・ストークスソルバが、直接数値シミュレーションによって解かれる。
【0037】
【数1】
【0038】
ナビエ・ストークスは、流体の速度uおよび圧力p並びに流体の密度ρおよび動粘度μに依存する、流体の流れに関する運動量保存および質量保存を記述する偏微分方程式である。血液の密度および動粘度は、複数の健常者の一般的な平均値、すなわち、ρ=1.05g/cm3、μ=4mPa・sに設定可能である。これらの式は、有限差分法および有限体積法の両方を用いた、均一なグリッドについての数値的離散化を用いて解かれる。特に、本発明の実施形態では、圧力について近似投影と組み合わされた分数ステップが用いられる。
【0039】
有利な実施形態においては、血液はニュートン流体としてモデリングされる。これまでの数値的な研究によって、血液の非ニュートン的ふるまいはより大きい動脈においてほとんどの心周期の間では重要ではないことがわかっている。非ニュートン的重要度係数(血液の非ニュートン粘性とニュートン粘性との比として定義される)は、心周期の15〜20%の期間において重要であり、速度がゼロに近いとき減速中にピークに達する。心臓における血液の動力学は、高い速度、いやむしろずり速度によりほとんど支配される。これは、血液のレオロジーがビンガム塑性体流体(低応力では剛体としてふるまうが、高応力では粘性流体としてふるまう物質)のそれに近いという事実と組み合わされ、心周期において血液の動力学が主にニュートン的であるという性質上の結論を支持する。ありうる例外としては、時間的には心拍静止期、空間的には心尖領域および噴流よどみ領域がある。
【0040】
一般的ジオメトリの移動および/または多相流体の含有における流体動力学の計算は、特に、それがシンプルかつロバストでさらに正確な、考えられた計算方法となるときには、1つの挑戦である。レベルセット法は、このような複雑な計算を扱う場合にある程度成功しており、異なる物質(たとえば、水および大気、または物体と流体を変形する複合体)間の相互作用の入り組んだ動力学を捕捉することができる。ナビエ・ストークス方程式は、このような記述を考慮に入れた形式とされる。たとえば、密度と粘度の異なる2つの流体について、ナビエ・ストークス方程式のレベルセット式は以下のように表される。
【0041】
【数2】
【0042】
式(2)中、Hは、レベルセットφの正の値で特徴づけられる第1の流体と、レベルセットφの負の値で特徴づけられる第2の流体と、の間に数値的に明確な違いを形成するために用いられるヘビサイド関数である。特に仮想流体法などの高等な方法を用いて実施する場合、レベルセット定式化は古典的な定式化に対するいくつかの利点を有する。レベルセット定式化の利点としては、たとえば、自由な表面流体および流体と相互作用する変形物質の計算の容易さ、テンソル外挿法の実施の簡単さ、法線場
または平均曲率場(たとえば単位勾配のレベルセット関数についてk=Δφ)などの種々のジオメトリパラメタの式の簡単さが挙げられる。
【0043】
レベルセットフレームワークで心臓の動力学を記述することの別の重要な利点は、有限要素モデル(FEM)における場合のように、従前のグリッドが数値計算をロバストに処理するには歪みすぎている場合に、複数の時間ステップのそれぞれにおいて新たな計算グリッドを生成する必要なく、壁の動き/大きな変形を自動的に処理できることである。このことにより、患者固有の心臓のメッシュの血流シミュレーションエンジンへの自動的な統合が可能となり、患者固有の血液動力学を取得するための心臓モデルの臨床的使用のためのフレームワークが提供される。
【0044】
本発明の有利な実施形態によれば、心臓の壁/血液相互作用はレベルセットを用いてモデリングされる。より正確には、ステップ104で得られるような特定数のフレーム(たとえば10フレーム)を有する心臓メッシュのシーケンスは、所定のシミュレーション時間においてメッシュを得るために、スプラインによって内挿される。このメッシュは、レベルセット関数φ(φ(x)=dist(x,メッシュ)−dxで定義される。dxはグリッド間隔。)を用いて計算領域に埋め込まれる。コードにおいて用いられる心臓/血液相互作用は、レベルセット関数のゼロレベルとして定義され、元の三角メッシュを各辺においてdx分効果的に「厚くする」。図5は、長方形の領域504にレベルセットとして埋め込まれた患者固有の解剖学的心臓モデル502を示す。図5は、厚くされた心臓の壁に応じた透明なゼロレベルを示す。
【0045】
界面の位置は流体領域にずれ無し境界条件を適用するために用いられる。各時間ステップにおけるメッシュ速度は、近接する時間ステップにおけるメッシュ位置から時間内挿により容易に計算され、その後外挿核を用いて外挿される。このようにして境界条件を適用することにより、固体の心臓メッシュから流体へ運動量を一方向の移動が効果的に強められる。この方法は領域の壁を圧すポンプとして心臓を基本的にモデリングするものであり、これにより循環系の抵抗が近似される。
【0046】
図6は、本発明の一実施形態にかかる、患者固有の4D解剖学的心臓モデルに基づいて心臓における血流をシミュレートする方法を示す。図6の方法は図1の実行ステップ106に用いることができる。図6の方法はレベルセットフレームワークにおけるナビエ・ストークス方程式(2)の解を詳細に示す。図6の方法は、等容性期(IP)を含む心周期の全段階を解くために用いられる。IPは静止期ではなく、むしろ腔内の流れの動力学的変化を有する段階である。図6の方法は、心臓の解剖構造全体または1つまたは複数の心臓構成部分における血流のシミュレーションに用いることができる。
【0047】
ステップ602において、初期時間(n=0)において、当該初期時間における患者固有の心臓モデル(すなわちメッシュ)の位置に基づいて初期レベルセット条件が決定される。レベルセット関数φのゼロレベルおよび速度uの決定については上記されている。初期圧力pは、メッシュ位置に基づいて適用されるノイマン境界条件でポワソン方程式を解くことにより決定される。
【0048】
ステップ604において、レベルセットから時間ステップnがn=n+1のように進められる。ステップ606において、レベルセットφおよび速度uに関する対流の更新が計算される。このステップにおいて、レベルセット値は所定の時間ステップにおけるメッシュ位置を用いて更新される。中間的なジオメトリのステップにおいて、新たなレベルセットにより定義された接続される構成部分が計算される。陰的な粘性および圧力のポワソン線形系の、ロバストな接続された構成部分ごとの反転のためにこれが用いられる。次いで、対流力項が三次精度ENO(Essentially Non-Oscillaroty)法を用いて計算される。
【0049】
ステップ608において、速度が半陰的に更新され、粘性力の寄与が考慮される。特に、速度は2次半陰的分割を用い、効率的マルチグリッド前処理付共益勾配法ソルバを用いた系の反転により、u*に更新される。
【0050】
ステップ610において、圧力が、力のノイマン境界条件でポワソン方程式を解くことにより更新される。ポワソン方程式は、効率的マルチグリッド前処理付共益勾配法ソルバを用いた系の反転による離散化領域の接続された各構成部分においても解かれる。系の反転の前に、固体速度を用いて固体領域に速度が上書きされる。
【0051】
ステップ612において、現在の時間ステップにおける新たな速度の更新が計算される。特に、密度が新たなレベルセットを用いて更新され、速度の更新は液体においてはun=u*−∇pn/ρnとして計算され、または、固体においてはun=u固体として計算される。界面位置は流体領域にずれ無し境界条件を適用するために用いられる。すなわち、ナビエ・ストークス運動量方程式の対流成分(ステップ606)および粘性成分(ステップ608)についてu流体=u固体を用い、圧力のポワソン方程式(ステップ610)について
を用いる。ここで、
は法線ベクトル場であり、上述のようにして設定されたレベルセットから計算される。この方法の全体の精度は、領域の内側において2次であり、境界では1次に落ちる。
【0052】
ステップ614において、全心周期についてシミュレーションが完了したか否か判別する。このシミュレーションが全心周期について未だ完了していなければ、当該方法はステップ604に戻り、別の時間ステップを増分させる。ステップ606〜612が次の時間ステップについて再度行われる。シミュレーションが全心周期について完了していれば、当該方法はステップ616に進む。ステップ616において、シミュレーション結果が出力される。
【0053】
ヒトの心臓は心血管系の一部として機能し、したがって静脈系および動脈系からの負荷圧力により影響される。上述のシミュレーションフレームワークは、ナビエ・ストークス方程式を規定された(壁)境界の動きで解くので、圧力場を計算する必要がないが、一方で、圧力は絶対変数というより相対変数であるので、その勾配が計算可能となることが保証される。換言すれば、(2)の第1のナビエ・ストークス方程式(運動量保存)は、その勾配が変化しない限り、圧力範囲のずれに対して不変である。数学的には、ノイマン境界条件を有する圧力のポワソン方程式は1パラメタ族の解を有し、これは、導入されたディリクレ境界条件を一度は固定可能である。したがって、圧力のポワソン方程式を解く際、解は大動脈の外側の点におけるベース圧力(ゼロに等しい)を選択することにより固定可能であり、これは、動脈の流出表面においてp=0が適用されるのと同様に作用する。
【0054】
たとえば一般的な生理学的曲線からの値を用いて、任意の値をベース圧力に選択することができ、これは上述した所定の動きフレームワークにおける血液動力学に影響しない。しかしこれは、下記のFSI問題における動力学に影響し、この際、変形可能な組織が圧力の境界値の変化に応じるか、または、二重の逆流の場合、動脈弁および僧帽弁(またはそれらの右側の類似体)の両方が逆流している。このような場合については、モデルを1次元の血管モデルと結合する必要がある。
【0055】
図7は、図6の方法を用いた血流のシミュレーション結果の例を示す。図7の画像702〜716は、患者固有の解剖学的心臓モデルを用いる一連の血流シミュレーションを用いて生成された。この例では、完全な血管樹についてのジオメトリおよび物質データがないため、右側および左側は体循環を通じて接続されていない。結果として、シミュレーションは心臓の各側について個別に行われたが、これは計算上はより効率的であり、心臓モデルの右側と左側においてわずかに異なる一回拍出量によってシミュレーションは影響されなかった。図7の画像702〜716は、心周期の初期心収縮段階702、中期心収縮段階704、後期心収縮段階706、初期心拡張段階708(肺動脈弁の逆流を示す)、早期心拡張段階710、中期心拡張段階712、心拍静止段階714、後期僧帽弁閉鎖段階716における、左心および右心の血流に関する渦度を示す。
【0056】
図1に戻り、ステップ108において、シミュレートされた血流に基づいて流体構造相互作用が推定される。流体構造相互作用は、患者固有の4Dモデルにおける心臓構成部分の変形をシミュレートするために、血液動力学のシミュレーション(ステップ106)とともに用いられる。特に、血行力学のシミュレーションについてステップ106で上述されたフレームワークは、特定構造の生体力学についてのモデルと結合可能である。各心臓構成部分は、動きが構成則により支配される受動組織としてモデリング可能である。有限要素モデル(FEM)を該法則に関連する偏微分方程式を解くために用いることができる。特定構造(たとえば大動脈)の壁の動きは2つの力によって駆動される:
1.組織の受動特性をモデリングする内力。たとえば、大きな変形に対処するために、大動脈などの構造を、共回転修正を用いた線形等方性単層可塑性モデルによりモデリングすることができる。動脈の不均一な部分(非等方性、3つの主層(内膜、中膜、外膜)、非線形性など)をシミュレートするために、より詳細なモデルを用いてもよい。
2.構造の内側の血流により生成される負荷をモデリングする外力。この負荷は圧力に変換され、構造の内側の層に加えられる。
【0057】
図8は、本発明の一実施形態にかかる、大動脈の流体構造相互作用を推定するための反復的方法を示す。流体構造相互作用を推定するために、同様の方法を心臓モデルの他の構成部分に適用できる。ステップ802において、血流は所定時間における大動脈壁の現在の位置に基づいてシミュレートされる。血流は、上述の図6の方法を用いて、現在の時間ステップにおける患者固有の4D解剖学的モデルにおける大動脈壁の位置に基づいてシミュレート可能である。ステップ804において、壁境界における圧力が現在の時間ステップにおいて計算される。血液/構造の境界における圧力は、図6の方法における各時間ステップにおいて計算される。ステップ806において、壁境界における圧力に基づいて大動脈に関する変形が計算される。圧力は大動脈壁にかかる外力として作用し、大動脈に関してモデリングされた壁の移動力に基づいて大動脈を変形させる。ステップ808において、時間ステップは進められ(n=n+1)、方法はステップ802に戻る。したがって、計算された大動脈の変形は、次のステップにおける血流のシミュレーションに用いられる。この方法はシミュレーションの終わりまで繰り返される。たとえば、この方法は、心周期全体がシミュレートされるまで繰り返される。
【0058】
図9は、大動脈に関する流体構造相互作用の推定結果の例を示す。画像902は、特定の時間ステップにおける大動脈の血流シミュレーションを示す。画像904は、画像904の血流シミュレーションに基づく流体構造相互作用を示し、変形した動脈壁906が得られる。
【0059】
FSIシミュレーションは、上述のFSIフレームワークを逆問題ストラテジ(たとえばカルマンフィルタリングや信頼領域技術)と組み合わせることにより、組織の硬度などの構造の固有の特性を推定するために用いられる。このようにして、構造の動きに関するモデルパラメタが調整され、FSIシミュレーションにおけるパラメタのシミュレートされた動きは医用画像において観察される動きと一致される。1つの可能な実施形態では、シミュレートされた動きが観察とどれほど違うのかを推定する費用関数が最少化される。これにより、構造に関する推定された生体力学的パラメタ、たとえば、壁の硬度が得られる。流体構造相互作用を実施し、大動脈の生体力学的パラメタを推定する方法は、米国特許出願公開第2011/0060576号(本明細書中に参照により含まれる)に記載されている。
【0060】
上述したように、患者固有の、種々の心臓構成部分についての解剖学的モデルは、スムースメッシュであり、血行力学シミュレーションおよび流体構造相互作用は心臓構成部分のスムースメッシュに基づいて行われる。本発明の有利な一実施形態によれば、患者固有の解剖学的モデルはマルチスケールの解剖学的モデルとして実行されてもよく、このモデルでは、上述のスムース心臓モデルはより粗いスケールであり、より詳細な解剖学的モデルはより精細なスケールで存在する。たとえば、乳頭筋および肉柱を含むより精細な解像度におけるLV心内膜のモデルを抽出するために、LVの患者固有の4D解剖学的モデルが用いられる。図10はLVのマルチスケールの解剖学的モデルを示す。図10の画像1000および1010に示されるように、LVのマルチスケールの解剖学的モデルには、LV心外膜1002、粗いスケールのLV心内膜1004および、乳頭筋および肉柱を含む精細なスケールのLV心内膜1006が含まれる。このようなマルチスケールのLVモデルを抽出する方法は、米国特許出願公開第2009/0080745号(本明細書中に参照により含まれる)に詳細に開示されている。血行力学シミュレーション(ステップ106)は、たとえば、1つまたは複数の心臓構成部分についての精細なスケールの解剖学的モデルの位置に基づいて制約される。さらに、流体構造相互作用(ステップ108)は、1つまたは複数の心臓構成部分についての精細なスケールの解剖学的モデルに基づいて推定可能である。
【0061】
図1に戻り、ステップ110において、包括的なモデリング結果が出力される。たとえば、得られる患者固有の4D解剖学的モデル、血流シミュレーションおよび/または流体構造相互作用シミュレーションは、このような結果を表す画像を表示することにより出力される。さらに、ステップ104、106および108に記載される包括的なモデリングにより、患者の心臓機能の包括的な所見が得られる、解剖学的および形態的パラメタ(ステップ104)、血行力学的パラメタ(ステップ106)および生体力学的パラメタ(ステップ108)が得られる。これらのパラメタはたとえばコンピュータシステムのメモリまたはストレージあるいはコンピュータ読み取り可能な媒体に記録可能である。また、これらのパラメタ(またはモデル)は、たとえば後述されるステップ112および114において、患者のさらなる評価に用いられる。
【0062】
ステップ112において、患者の心臓の非侵襲的評価および診断が、包括的なモデリング結果を用いて行われる。ステップ104、106および108のモデリングステップにより、患者の心臓の現状についての包括的な所見が得られる。これは、従前に診断された心臓の疾患の評価のために患者の心臓の現在の構造または血行力学を評価するために、または、心臓の問題の非侵襲的診断のために用いることができる。
【0063】
本発明の一実施形態によれば、包括的な患者固有の解剖学的心臓モデルは、心臓の解剖構造および機能の精確な定量化に用いることができる。臨床的な理想的基準では、未だに2D画像データが処理され、得るのが単調かつ退屈で不正確な場合もあるマニュアルでの測定が行われる。本発明者らは、心臓の臨床的評価におけるパラダイムシフトを提案するものであり、ここでは2D画像に基づくマニュアルの分析は、4Dデータからの自動化されたモデルに基づく定量化に置き換えられる。自動的に抽出される臨床的測定の種々の例が以下に示される。
【0064】
表1は、患者固有の4D解剖学的モデルから測定された大動脈−僧帽弁の結合の種々のサイズに関する結果を示し、これには、心室−動脈接合部(VAJ)、バルサルバ洞(SV)、上行大動脈接合部(SJ)、僧帽弁輪部周辺(AC)、前後径(APD)、前外側−後内側径(AL−PM−D)が含まれる。図11は、大動脈弁領域(AV領域)および僧帽弁領域(MV領域)についての測定精度を示す。特に、図11は、AV領域1102およびMV領域1104に関するブランドアルトマンプロットを示す。大動脈弁の実験は36人の患者からのCTデータについて行い、僧帽弁の実験は10人の患者からのTEE(経食道心エコー法)データについて推定した。
【0065】
【表1】
【0066】
1心周期におけるチャンバの動きパターンから、その機能、たとえば同一チャンバ内または異なるチャンバ内における、心室駆出分画、心筋壁厚および同期不全についての多くの重要な臨床的測定が可能となる。モデルに基づく分析のいくつかの利点は、正確性、効率性、包括性などである。
【0067】
包括的な患者固有の4Dモデルの別の可能な用途は、診断および症例の収集の自動化である。臨床判断は、一般的な情報および臨床ガイドラインおよび刊行物からの規則の組、ならびに、臨床医の個人的な経験に大きく基づいている。上述の量的な品質に加え、包括的な心臓モデルは、学習に基づく識別的距離関数を用いた高レベルの臨床情報を自動的に得るために用いることができる。推論では、これは包括的な特徴空間に定式化され、これには複雑な形態的および機能的情報が含まれる。特定の実施形態においては、これは2つの一般的なタスクの実行に用いられる。その1つは、学習された距離関数を用いた類似症例の検索であり、これは2つの特定の心臓形状を測定する。もう1つは、ジオメトリモデルおよび得られた特徴に基づく2分類問題である。
【0068】
距離の学習に関して、2つの方法、すなわち、同値制約および固有のランダムフォレスト距離からの学習が本明細書中に記載されているが、本発明はこれらに限られない。同値制約は2つのモデル例の特徴ベクトルの3つの組と、2つの例が類似であるか非類似であるかを示すラベルとを用いて表される。これらの3つの組からの学習はしばしば積空間における学習と称され、多く関係する特徴、弱く関連する特徴および関連しない特徴を持つ高次元データについて効果的であることが示されている。ブースティングまたはランダムフォレストを用いて構築されたモデルの符号付きのマージンは、必要とされる距離関数として用いることができる。
【0069】
一般的な方法により、用途に応じた類似性のユーザ定義の任意の概念の学習が可能となる。これは2つの用途の例で示される:1)大動脈弁の診断および重症度評価;2)経皮的肺動脈弁置換(PPVI)についての患者の選択。PPVIについての患者の選択に関して、肺動脈幹の形態がPPVIに対する患者の適合性の主な決定要因である。不適合な患者へのインターベンションは、患者に不必要な侵襲的カテーテル処置を施すこととなる。図12は肺動脈幹の種々の形態を示す。図12に示されているように、タイプ1はピラミッド型、タイプ2は定径型、タイプ3は逆三角形型、タイプ4は中心が狭いが近位および遠位が広い型、タイプ5は中心が広いが近位および遠位が狭い型をそれぞれ示している。タイプ1の患者は動脈が狭くデバイスが移動する可能性が高いのでPPVIには不適合であると考えられる。したがって、患者固有の4D解剖学的モデルの一部として推定可能な、推定された肺動脈幹から抽出された形状特徴は、患者がPPVIに適合しているか否かを自動的に判別するように、他のクラスからタイプ1の解剖構造を識別するため、識別的距離関数を学習するのに用いることができる。
【0070】
患者固有の解剖学的心臓モデルに加えて、患者固有の心臓の血行力学も非侵襲的な評価および診断に用いることができる。特に、心周期の事象における血行力学が、図1のステップ106において上述されているようにシミュレート可能である。心周期の事象のシミュレーションの例が本明細書中に記載されている。シミュレーション領域は1283の規則的なグリッドを用いて離散化され、これは1mmの物理解像度に対応するものであり、この時間ステップは0.001秒であった。安定性を保証するため、最大速度がdx/0.001を超えるであろうとき、すなわち、クーラン−フリードリックス−レウィ(CFL)数max(u)*0.001/dxが1を超えるときにはサブサイクリングを用いた。心臓の境界ボックスは当該領域の95%を占めた。
【0071】
図13は心周期における事象および構造の血行力学シミュレーションを示す。図13に示すように、画像1302、1304および1306は、初期収縮期、中期収縮期、終期収縮期段階での心臓における、シミュレートされた血流速度をそれぞれ示す。画像1312、1314および1316は、初期収縮期、中期収縮期および終期収縮期それぞれにおいてシミュレートされた速度に基づいて生成された、渦度の等密度面を示す。シミュレーションが行われた特定の心臓は925msの心周期の間に290msの収縮期を有する。画像1302および1312に示されるように、拡張段階および等容性収縮(IVC)段階に由来する初期の流れ状態には、後期僧帽弁充満からの環状の渦の残余が含まれる。この特徴は初期収縮期(ES)における、より下方の心室のパターンを支配し、心尖の血液プールは渦によってほとんど再循環されている。興味深いことに、初期状態はまた、心尖から見て反時計回りの回転を特徴とし、これは収縮期の間で時計回りに逆転する。
【0072】
画像1304および1314に示されるように、中期収縮期は大動脈の軸に沿った渦状のストランドをしばしば持つ強い大動脈の流束を特徴とし、これは大動脈への血液の右回りのらせん状の動きを導く。この血液の反時計回りの回転はより下流の上行大動脈中で続くが、これは健康な大動脈の流れのよく知られた特徴である。これらの計算結果はCTデータから得られたメッシュに基づいており、すなわちねじれ運動を含まない。これらは大動脈の右回りのらせん状回転が、LVのねじれ運動というより、大動脈弁の基底平面と大動脈弁のジオメトリ自体とに関する大動脈の長手方向軸の幾何的配置により主として決定されるという結論を支持する。画像1306および1316に示されるように、終期収縮期において、渦状のストランドはより弱く、大動脈に入る流体粒子はより広いらせん状の経路を画定する。
【0073】
流束は右心の初期および中期収縮期において同様に強く、上述と同様の特徴を有し、しかし、肺動脈弁の逆流のため、逆流性の流束が心周期の終わりに見られる。
【0074】
図14は、血流シミュレーションを用いて得られた、大動脈弁の洞領域における渦の形成を示す。図14に示されるように、画像1400は患者固有の心臓の解剖学的モデルにおける大動脈弁の洞領域1402の位置を示し、画像1410は洞領域1402において形成されている渦を示す。図14に示されるように、血流シミュレーションによって、大動脈弁から離れたところの既知の流れパターンの形成、すなわち、洞領域1402における各弁尖の背後に形成される渦が再現されている。
【0075】
図15は、拡張期の事象および構造の血行力学的シミュレーションを示す。図15に示されるように、画像1502、1504および1506は、心臓の初期拡張段階、中期拡張段階および後期僧帽弁閉鎖段階それぞれにおける、シミュレートされた血流速度を示す。画像1512、1514および1516は、初期拡張段階、中期拡張段階および終期拡張期段階それぞれにおけるシミュレートされた速度に基づいて生成された渦度の等密度面を示す。画像1502および1504に示されるように、初期拡張期(ED)の流束は、僧帽弁が開かれると、非対称な環状の渦の形成を伴って開始され、これはさらに弁尖と僧帽輪(AMR)の中心とを結ぶ軸に対して約30度の角度で弁尖に向かう。LVの前方壁に当たると、渦は幾分消失し、AMRに対して約75度に軸を変化させる。画像1504および1514に示されるように、これは心尖を水平方向の回転軸を有する大きな渦でもって流す渦のパターンに変わり、これは大動脈弁の直下に位置する反対方向に回転する小さな渦でもって終わる。この小さな渦の形成は(開いた)僧帽弁の前尖によって強められる。この渦のパターンは中期収縮期において次第に弱まり、その後ほとんど見えなくなる。画像1506および1516に示されるように、後期僧帽弁充満が成功裏に捕捉されている。これは下方に向かう別の環状の渦を形成し、肺動脈血管の小さな逆流と同時に発生するが、これは通常の事象である。
【0076】
流束は右心において質的に類似する。図15の画像1510に示されるように、シミュレーションにより、僧帽弁の流れの曲線と比較して、心拍静止期における低減された三尖弁の流れの曲線が捕捉された。
【0077】
上述の血流シミュレーションは、心拍静止期において先端の渦が僧帽弁から生じているという結論を支持する。これは、弁尖がこれら自身で流れに対して配列し、従って、渦は生じず、流れを配向しないという所見と部分的に合致しない。この違いは、正確な三尖弁の弁尖が含まれる、本発明の向上された心臓モデルによって生じうる。シミュレートされた流れは三尖弁が配向および渦の生成の両方を役割を持つことを示している。
【0078】
血行力学シミュレーションの精度を評価するため、弁を通過する血流量を推定した。典型的なPC−MRI流量定量化プロトコルにより、オペレータによって解剖構造とともに配列されたMR画像化平面を用いて経時的な血流を取得する。観察について報告している文献との比較を行うため、このプロトコルをシミュレートし、PC−MRIについて行われるように、弁とともに配列された平面を用いる同様のやり方で、経時的に計算した血流を定量化した。この平面を通る法線速度の積分を計算し、試験した例に関して得た曲線を図16に示す。図16は、1心周期にわたって弁領域を通過する血流の時間流量を示すグラフを示す。グラフ1600は、左心における大動脈弁1602領域および僧帽弁1604領域を通過する流量を示す。グラフ1610は、右心における肺動脈弁1612領域および三尖弁1614領域を通過する流量を示す。グラフ1600および1610に示される流量は通常の心臓に関する標準的な流量曲線と質的に類似するが、肺動脈血管の流量は除かれ、これは上述の逆流を示している。図17および18は、フローの測定に用いられたスライス位置を示す。図17の画像1702、1704および1706は、0.92秒の心周期中の時間0.18、0.3および0.42それぞれにおける、大動脈の断面スライス1608における速度ベクトルを示す。画像1802および1804は僧帽弁のわずか下の領域の断面スライス1806を示す。
【0079】
(たとえば超音波を用いるときの)平均速度またはピーク速度を測定するための臨床的実施においては、わずかに異なる測定位置(弁領域のわずかに前の大動脈についての位置、および僧帽弁のわずかに下の僧帽弁についての位置)が用いられる。しかし、血流量(所与の1表面を通る法線速度の積分)はここで測定され、したがって、位置は臨床における測定位置から有意に離れた(しかし未だに近接した)位置が選択される。これにより、測定位置は、(1)心臓モデルを流れの方向に沿って形態的に切断された2つの領域に分け、(2)弁領域を通ることはなく、弁領域を通る場合には流量の計算が汚損(または少なくともより複雑に)されうる。
【0080】
流量はLVのすぐ外側で測定されるので、流量は大動脈または心房の放射状の動きによる容積の変化成分を含みうる。小さいながらも、これらの成分は図15中に同時的な大動脈弁−僧帽弁(または肺動脈弁−三尖弁)の流れの領域として示されている。同じ理由で、等容積相はこのプロトコルでもって正確に定量化できず、したがって、図15中でははっきり見えない(特に、LVにおける等容積拡張)。
【0081】
測定を通じた速度パターンは、図17および18からわかるように非常に複雑であり、これは特に弁に関する正確な地理的情報を用いることの重要性を強調するので、流入および流出に関する不完全なモデルの使用は最少化される。弁のジオメトリモデルを含ませることによって複雑な流れパターンの計算が容易となる。
【0082】
図19は、狭窄および逆流の両方を患っている、二尖逆流性大動脈弁および病的僧帽弁を有する心臓についての血流シミュレーションを示す。画像1902〜1920は4D CTデータから得られた左心モデルを用いた血流シミュレーションから得られた1心周期の渦度を示す。画像1902および1904において、左心室は拡張し、僧帽弁は開き、血液は左心室に入って狭窄のために壁に当たる。画像1906には比較的穏やかな状態が示され、画像1908には心拍静止期が示される。画像1910および1912において、僧帽弁は2度目に開かれ、より多くの血液が左心室に入り、再び壁に当たる。画像1914、1916および1918において、左心室は収縮し、大動脈弁は開き、血液は大動脈に入り、同時に左心房の充満が始まる。強いらせんが、大動脈弁の二尖弁構造によって形成される。画像1920において、大動脈部は閉じ、逆噴流は逆流を示す。画像1916および1918に示されているように、血流パターンは上行大動脈の下流において通常の心臓のものとは非常に異なっている。心収縮期の噴流は、通常、大動脈の中心線に沿って方向付けられるが、大動脈に対してはね返されて局所的な壁の応力を増大させている。これにより、なぜ2尖大動脈弁を持つ患者において大動脈起始部拡張が進行するのかが説明される。さらに、画像1902、1904および1912に示されるように、狭窄と逆流の両方を患う病的僧帽弁は、流れをLVの前側の壁に方向付ける。画像1914および1918に示されるように、大動脈弁および僧帽弁の逆流が収縮期と拡張期においてそれぞれ観察される。
【0083】
図20は、健康な1つの心臓と、疾患のある2つの心臓とについてのシミュレートされた血行力学の比較を示す。図20に示されるように、第1行の画像は、初期収縮段階2002、後期収縮段階2004、早期拡張段階2006および後期拡張充満段階2008における健康な心臓についての、左心のシミュレートされた速度フィールドを示す。第2行の画像は、初期収縮段階2012、後期収縮段階2014、早期拡張段階2016および後期拡張充満段階2018における拡張した大動脈を持つ心臓についての、左心のシミュレートされた速度フィールドを示す。第3行の画像は、初期収縮段階2022、後期収縮段階2024、早期拡張段階2026および後期拡張充満段階2028における二尖大動脈弁を持つ心臓についての、左心のシミュレートされた速度フィールドを示す。
【0084】
疾患のある心臓は弁と肺動脈血管の双方の領域における逆流現象を特徴とする。健康な心臓における唯一の逆流は、後期僧帽弁充満段階における小さな肺動脈血管流の逆流であるが、これは通常の現象である。健康な心臓の心収縮期は、疾患のある心臓と比較してほぼ2倍の短さである。これはよく知られた事象であり、疾患のある心臓は、逆流および非効率な血液循環につながる解剖学的欠陥を打ち消すために、より長い心収縮サイクルを示す。
【0085】
健康な心臓(画像2002〜2008)は、923msの1心周期において非常に短い収縮期(190ms)を有する。収縮期では、左心房における流れと同様に、大動脈の流れは強かった。拡張期は僧帽弁を通じた強い流れとともに始まり、その間、大きな回転渦が左心室の中心に形成され、より小さな渦が大動脈弁の入口で形成される。後期僧帽弁充満は小さな肺動脈弁の逆流と共に生じるが、これは通常のことである。
【0086】
大動脈拡張を有する心臓(画像2012〜2018)は、重度に拡張した大動脈を特徴とする。結果的に、この心臓において大動脈弁は完全に閉塞されず、拡張期における大動脈の大きな逆流が生じる。肺動脈血管領域および僧帽弁領域においても小さいが異常な逆流が存在した。1つの興味深い事実は、流れが収縮期において大動脈の異常に拡張した領域にまっすぐに向かったことであり、これはいずれのものが他の形成に寄与するのか?についての疑問を生じる。すなわち、流れを傾けて方向付け、大動脈を拡張させるのは弱い弁なのか、それとも、大動脈が弱くなったことにより大動脈弁が引っ張られ、フローの向きを変えられたのか?
【0087】
二尖大動脈弁を持つ心臓(画像2022〜2028)に関して、大動脈壁に向かう出力噴流の偏向が観察され、これは二尖大動脈弁を持つ患者において大動脈起始部拡張が進行する事実を説明できる。さらに、二尖弁では不十分であり、これは拡張期の始めに観察される左心室への逆噴流を生じさせる(画像2024を参照)。また、シミュレーション結果は大動脈弁および僧帽弁が同期して開閉していなかったことを示し、これは心室からの心房への逆流に寄与した。
【0088】
図1および6において上述したフレームワークを用いて、心房のジオメトリを持つおよび持たない左心のモデルを用いてシミュレーションを行った(他の全てのパラメタは同じ)。図21は、左心房(LA)のある場合と無い場合の血流のシミュレーション結果を示す。図21に示されるように、画像2102、2104、2106および2108はLAのある場合の心臓の、中期収縮段階、初期拡張段階、中期拡張段階および僧帽弁充満段階についてのシミュレーション結果をそれぞれ示す。画像2112、2114、2116および2118はLAの無い場合の心臓の、中期収縮段階、初期拡張段階、中期拡張段階および僧帽弁充満段階についてのシミュレーション結果をそれぞれ示す。画像2102および2112に示されるように、収縮期の流れは、LAのある場合と無い場合とでほぼ同一である。肺動脈血管から主として生成され、LVまで下流に移動された渦は、シミュレートされた血流に大きな影響を持つことがシミュレーションにより示された。これは、画像2104および2114に明確に示されており、LAからLVへの渦の移動なしに、LV内のシミュレートされた流れはLAのある場合と無い場合のモデルの間であまり変わらない可能性があることも示された。これは非常に興味深いことであり、LA内の渦生成およびそのLVへの移動についての適切なモデルを含むことにより、LA無しで現実的な境界条件をモデリングするための可能なソリューションに示唆を与えるものである。
【0089】
上述した血行力学シミュレーションは、シミュレーションの精度を向上するために、流体構造相互作用と組み合わせて実行可能である。たとえば、モデルは、心臓構成部分の壁についてのより現実的なジオメトリの再現と、心臓構成部分の壁の軟組織モデルと、弁の可塑性とを考慮することができる。上述のように、流体構造相互作用は構造の生体力学的性質、たとえば組織の硬度を推定するために用いることができる。このように推定された生体力学的性質は診断目的に用いることができる。たとえば、大動脈などの構造の硬度を推定することにより、破裂、高血圧などの危険性を推定することができる。この情報は、瘤の形成のより洗練されたモデルへの道を開くものであり、生体力学的性質は病理学により修正される。
【0090】
図1に戻り、ステップ114において仮想的な治療プランニングおよび/または疾患進行予測が、包括的なモデリング結果を用いて行われる。包括的モデルは、患者の心臓機能の包括的な所見を与える。これは、特定の疾患がどのように患者の心臓に影響するかを予測する、または、患者がある種類の治療または処置にどのように反応するかを予測するために用いることができる。図22は、本発明の一実施形態にかかる、患者固有の包括的な4Dモデルを用いた予測プランニングの方法を示す。図22の方法は図1の実行ステップ114に用いることができる。図22に戻り、ステップ2202において、包括的な患者固有の4Dモデルが生成される。特に、図1のステップ104、106および108において上述されているように、包括的な患者固有のモデルが4D医用画像データに基づいて生成される。特定の患者のための包括的モデルには、たとえば、患者固有の解剖学的、形態的、血行力学的および生体力学的パラメタが含まれている。
【0091】
ステップ2204において、状態をシミュレートするために、包括的な患者固有の4Dモデルの少なくとも一部が調整される。状態とは、たとえば、疾患、治療または処置、あるいは、心臓モデルのパラメタに影響を与えうる任意の他の状態である。状態をシミュレートするため、たとえば1つまたは複数の解剖学的、形態的、血行力学的または生体力学的パラメタが調整される。たとえば、大動脈のサイズなどの解剖学的データが、疾患の進行を表すよう調整される。上述のように、種々の血流シミュレーションが種々の疾患を有する心臓について行われており、疾患のある心臓の血行力学的パラメタが得られている。特定の心臓の病態の存在または重度をシミュレートするために、特定の血行力学的パラメタを調整することも可能である。さらに、特定の心臓構成部分の、組織の硬度などの生体力学的パラメタを調整することもできる。たとえば、大動脈の組織の硬度が大動脈の硬化を表すよう調整される。治療に対する患者の反応を予測するために、モデルを用いて異なる治療または処置を仮想的に試すために、モデルを調整することもできる。これらの例は本発明を制限することを意図するものではない。
【0092】
ステップ2206において、患者の状態への影響を予測するため、包括的な患者固有の4Dモデルが調整部分に基づいて再生成される。複数の期間にわたる状態の影響を予測するために、または、患者への複数の異なる状態の影響を予測するために、図22の方法を繰り返しても良い。たとえば、図22の方法は、患者にとっての最適な処置を選択するために、患者固有のモデルを用いて異なる代替的処置を試すよう繰り返すことができる。包括的モデルを用いる治療プランニングの例を以下に示す。これらの例は、本発明を限定することを意図するものではない。
【0093】
一実施形態では、包括的な患者固有のモデルは、経皮的処置についてのコンピュータを用いた意志決定支援に用いられる。経皮的処置は処置が比較的複雑でなく追跡率が比較的低いため、しだいに一般的になってきている。このような処置では、経静脈的技術、経動脈的技術または経心尖的技術を用いるカテーテルを通した人工装具の留置が行われ、これにおいては臨床医は影響される解剖構造を直接見たり、アクセスすることはできない。したがって、インターベンションの成功は、術中の画像および術者の経験と技術に大きく依存しており、人工装具の次善的な交換位置は、重篤な弁周囲逆流および/または高勾配を伴う低い血行力学的性質と、次善的な効果的開口部とをもたらしうる。
【0094】
本発明の一実施形態によれば、包括的な患者固有のモデルを用いて経皮的処置前の術前プランニングを行うことができる。解剖学的モデルには、大動脈弁と上行大動脈とを含む大動脈と弁の複合体が含まれ、これは変形可能な単体メッシュおよびジオメトリ制約に基づいた交換弁のコンピュータによる(仮想的)導入を実行するために用いられる。デバイスは、人工装具のジオメトリを正確に模倣しているステントのメッシュ、および、デバイスの拡張をガイドするために用いられる重畳する2単体メッシュである計算メッシュとしてモデリングされる。デバイスの拡張は、実際の処置において働く外力と内力をバランスさせることにより逐次近似法を用いてモデリングされる。デバイスの変形は二階微分方程式の有限離散化により記述される。図23は仮想留置の間の交換モデルに作用する力を表す。図23に示されるように、画像(a)の矢印は支柱接合部における特徴的な角度2302にかかる力f角度を表す。画像(b)の矢印は支柱の長さを維持する力f長さを表す。画像(c)はステントメッシュの短軸方向断面を表す。画像(c)の矢印は周囲2304にかかる力f周囲を表す。力f外は支柱接合部からステントの重心までの距離2306と、血管壁2312からステントの重心2308間での距離2310との割合によって重み付けされる、ステントメッシュの法線に沿って作用する全ての力を弱めまたは無くす。
【0095】
図23に示される力に基づいて人工装具の留置が仮想的にシミュレートされる。この方法は、種々の治療仮説における最良の交換体の種類、サイズおよび、留置位置ならびに配向を予測するために用いることができる。人工装具の解剖学的な適合の予測に加え、包括的モデルを再生成し、仮想的に留置された人工装具を含む血行力学的シミュレーションおよび流体構造相互作用を行うこともできる。
【0096】
モデルに基づくコンピュータを用いた弁交換の予測力に関し、術前および術後の3D心臓スキャンを用いて20人の患者について評価した。各患者について、予測結果を、術前データに画像化されている実際のデバイスに人手で適合されたグラウンドトルースモデルと比較した。輪部レベルにおいて2mm未満の精度で、最良の交換体の種類、サイズおよび留置位置ならびに配向を種々の処置仮説のもとでコンピュータの実行によって予測される最適なパフォーマンスが観察されるまで探すことにより、術前プランニングを支援するという方法に関する可能性が実証された。
【0097】
包括的な患者固有の4Dモデルを用いる仮想的治療プランニングについての別のありうる用途は、大動脈内の瘤へのステント留置のシミュレーションである。図24において、ステントを表すメッシュ2402は大動脈2404の瘤のところに仮想的に留置される。ステントの留置により生成される力はステントの固定部分において大動脈壁を局所的に変形させる。流体構造相互作用がこの変形のモデリングに用いられる。この変形のモデリングは強度およびステント固定ならびにその血流への影響の評価において非常に重要である。このようなフレームワークを用いて、心臓病専門医は異なるステントデザインを試し、患者にとって最適なステントを選択することができる。
【0098】
包括的な患者固有の4Dモデルを用いる仮想的な治療プランニングの別のありうる用途は、大動脈瘤の仮想切除である。特に、この用途では瘤の切除が血流に与える影響がコンピュータによりシミュレートされる。患者固有の大動脈のモデル(個人化されたジオメトリおよび生体力学的パラメタを含む)を、リアルタイムの軟組織インターベンションのプラットフォームにロードすることができる。ユーザは、このプラットフォームを用いて切除、閉鎖および縫合を含む仮想的なインターベンションを行うことができる。図25には、仮想的な瘤切除が示される。図25に示されるように、画像2502は瘤を有する大動脈を示し、画像2504は瘤の切除を示し、画像2506は切除の縫合を示し、画像2508は切除の閉鎖を示す。その後、術後の血流をシミュレートするため、FSIモデルが術後のジオメトリについて行われる。提案の方法論は術前データからモデルを調整し、術後データを試すことにより検証される。この提案のフレームワークは、除くべき部分を画定することにより、外科処置の準備に役立つ。
【0099】
包括的心臓モデルを用いた、心臓の包括的モデリング、患者固有の4D解剖学的心臓モデルの生成、心臓における血流のシミュレーション、流体構造相互作用のシミュレーションおよび予測プランニングに関する上述の方法は、よく知られたコンピュータプロセッサ、メモリユニット、ストレージ装置、コンピュータソフトウェアおよび他の要素を用いてコンピュータ上で実行可能である。このようなコンピュータの高レベルのブロック図を図26に示す。コンピュータ2602はプロセッサ2604を備え、これは動作を定義するコンピュータプログラム命令を実行することによりコンピュータ2602の動作全体を制御する。このコンピュータプログラム命令は、たとえば、ストレージ装置2612(たとえば磁気ディスク)に保存され、当該コンピュータプログラム命令の実行が望まれるときにメモリ2610にロードされる。したがって、図1、3、6、8および22の方法のステップは、メモリ2610および/またはストレージ2612に保存されたコンピュータプログラム命令により定義され、当該コンピュータプログラム命令を実行するプロセッサ2604により制御される。CTスキャン装置、MRスキャン装置、超音波装置などの画像取得装置2620をコンピュータ2602に接続してコンピュータ2602に画像データを入力しても良い。画像取得装置2620およびコンピュータ2602を1つの装置として実施しても良い。画像取得装置2620とコンピュータ2602とがネットワークを介して無線通信するようにしてもよい。また、コンピュータ2602は、ネットワークを介して他の装置と通信するための1つまたは複数のネットワークインタフェース2606を備えても良い。また、コンピュータ2602はユーザのコンピュータ2602へのアクセスを可能とする他の入出力装置2608(たとえば、ディスプレイ、キーボード、マウス、スピーカ、ボタン等)を備えても良い。このような入出力装置2608は、たとえば、画像取得装置2620から受信したボリュームに注釈付けを行うための注釈付けツールとして、コンピュータプログラムセットとともに用いられる。当業者であれば、実際のコンピュータにおける実施には他の要素が含まれ、図26は例示を目的としたこのようなコンピュータのいくつかの要素を高レベルで表したものであることは理解するであろう。
【0100】
上述の詳細な説明は、あらゆる面において、限定的なものでなく、例示的なものとして理解されるべきであり、本明細書中に開示された発明の範囲は詳細な説明によって定められるものではなく、特許法により認められる範囲全体に従って解釈されるように特許請求の範囲から定められるべきである。本明細書中に示され、記載された実施形態は、本発明の原則の例示に過ぎず、種々の実施形態は本発明の精神を逸脱することなく当業者によって実施可能である。当業者は本発明の精神を逸脱することなく種々の他の特徴の組み合わせを実施することができる。
【符号の説明】
【0101】
2602 コンピュータ、 2604 プロセッサ、 2606 ネットワークインタフェース、 2608 入出力装置、 2010 メモリ、 2620 画像取得装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
4D医用画像データに基づいて心臓の血流をシミュレートする方法であって、
4D医用画像データから患者固有の心臓の4D解剖学的モデルを生成するステップと、
レベルセットフレームワークを用いて、1心周期中の複数の時間ステップそれぞれにおける前記患者固有の4D解剖学的モデルにより制約されるナビエ・ストークス方程式を解くことによって心臓の血流をシミュレートするステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記患者固有の心臓の4D解剖学的モデルは複数の心臓構成部分から構成されており、
前記の、レベルセットフレームワークを用いて、1心周期中の複数の時間ステップそれぞれにおける前記患者固有の4D解剖学的モデルにより制約されるナビエ・ストークス方程式を解くことによって心臓の血流をシミュレートするステップは、
前記患者固有の4D解剖学的モデルの複数の心臓構成部分のうちの1つまたは複数において個別に血流をシミュレートするステップを含む、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記患者固有の心臓の4D解剖学的モデルは複数の心臓構成部分から構成されており、
前記の、レベルセットフレームワークを用いて、1心周期中の複数の時間ステップそれぞれにおける前記患者固有の4D解剖学的モデルにより制約されるナビエ・ストークス方程式を解くことによって心臓の血流をシミュレートするステップは、
前記患者固有の4D解剖学的モデルの複数の心臓構成部分のそれぞれにおいて同時に血流をシミュレートするステップを含む、
請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記の、レベルセットフレームワークを用いて、1心周期中の複数の時間ステップそれぞれにおける前記患者固有の4D解剖学的モデルにより制約されるナビエ・ストークス方程式を解くことによって心臓の血流をシミュレートするステップは、
前記患者固有の4D解剖学的モデルを計算領域に組み込むために用いられるレベルセット関数のゼロレベルの位置に基づいて、解剖学的モデルの流体領域に対してすべりなし境界条件を適用するステップを含む、
請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記患者固有の心臓の4D解剖学的モデルは複数の心臓構成部分から構成されており、
前記の、レベルセットフレームワークを用いて、1心周期中の複数の時間ステップそれぞれにおける前記患者固有の4D解剖学的モデルにより制約されるナビエ・ストークス方程式を解くことによって心臓の血流をシミュレートするステップは、
現在の時間ステップにおける前記患者固有の4D解剖学的モデルの位置に基づいて、レベルセット関数および速度に対する対流の更新を計算するステップと、
現在の時間ステップにおける粘性力寄与を表す速度についての半陰的な更新を計算するステップと、
ノイマン境界条件を用いてポアソン方程式を解くことにより現在の時間ステップにおける圧力の更新を計算するステップと、
前記の半陰的な速度の更新および圧力の更新に基づいて、現在の時間ステップについての新たな速度に関する更新を計算するステップと、
を含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記患者固有の心臓の4D解剖学的モデルは複数の心臓構成部分から構成されており、
前記の、レベルセットフレームワークを用いて、1心周期中の複数の時間ステップそれぞれにおける前記患者固有の4D解剖学的モデルにより制約されるナビエ・ストークス方程式を解くことによって心臓の血流をシミュレートするステップは、
複数の時間ステップの少なくとも1つにおける前記患者固有の4D解剖学的モデルの位置を導くために、複数の前記患者固有の4D解剖学的モデルからなるシーケンスを内挿するステップと、
を含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記の、4D医用画像データから患者固有の心臓の4D解剖学的モデルを生成するステップは、
少なくとも1つの心臓構成部分の、患者固有のマルチスケールの解剖学的モデルを生成するステップを含み、当該マルチスケールの解剖学的モデルは、前記少なくとも1つの心臓構成部分の粗い解剖学的モデルと、前記少なくとも1つの心臓構成部分の精細な解剖学的モデルと、を含む、
請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記の、レベルセットフレームワークを用いて、1心周期中の複数の時間ステップそれぞれにおける前記患者固有の4D解剖学的モデルにより制約されるナビエ・ストークス方程式を解くことによって心臓の血流をシミュレートするステップは、
前記少なくとも1つの心臓構成部分の精細な解剖学的モデルにより制約されるナビエ・ストークス方程式を解くことによって前記少なくとも1つの心臓構成部分における血流をシミュレートするステップを含む、
請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの心臓構成部分は左心室を含み、当該左心室の精細な解剖学的モデルは乳頭筋および肉柱を含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
4D医用画像データに基づく、包括的な患者固有の心臓のモデリング方法であって、
4D医用画像データから患者固有の心臓の4D解剖学的モデルを生成するステップと、
レベルセットフレームワークを用いて、現在の時間ステップにおける少なくとも1つの心臓構成部分の位置により制約されるナビエ・ストークス方程式を解くことによって、現在の時間ステップにおける前記患者固有の4D解剖学的モデルの前記少なくとも1つの心臓構成部分における血流をシミュレートするステップと、
現在の時間ステップにおけるシミュレートされた血流に基づいて、現在の時間ステップにおける前記少なくとも1つの心臓構成部分の変形を計算するステップと、
前記シミュレーションステップおよび計算ステップを複数の時間ステップの間繰り返すステップであって、現在の時間ステップにおける前記少なくとも1つの心臓構成部分の現在の位置を、従前の時間ステップにおいて計算された前記少なくとも1つの心臓構成部分の変形に基づいて少なくとも一部決定するステップと、
を含む、方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの心臓構成部分の生体力学的パラメタを決定するために、4D医用画像データにおいて、前記少なくとも1つの心臓構成部分の計算された変形を、前記少なくとも1つの心臓構成部分の観察された変形と比較する、ステップを含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの心臓構成部分は大動脈である、請求項10記載の方法。
【請求項13】
前記の、レベルセットフレームワークを用いて、現在の時間ステップにおける少なくとも1つの心臓構成部分の位置により制約されるナビエ・ストークス方程式を解くことによって、現在の時間ステップにおける前記患者固有の4D解剖学的モデルの前記少なくとも1つの心臓構成部分における血流をシミュレートするステップは、
前記少なくとも1つの心臓構成部分におけるシミュレートされた血流により、現在の時間ステップにおける前記少なくとも1つの心臓構成部分の壁界面における圧力を計算するステップを含む、
請求項10記載の方法。
【請求項14】
前記の、現在の時間ステップにおけるシミュレートされた血流に基づいて、現在の時間ステップにおける少なくとも1つの心臓構成部分の変形を計算するステップは、
前記少なくとも1つの心臓構成部分の壁界面における圧力による、前記少なくとも1つの心臓構成部分の壁の変形を計算するステップを含む、
請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記の、現在の時間ステップにおけるシミュレートされた血流に基づいて、現在の時間ステップにおける少なくとも1つの心臓構成部分の変形を計算するステップは、
前記少なくとも1つの心臓構成部分の組織の受動特性をモデリングする内力と、前記少なくとも1つの心臓構成部分内の血流により生成される荷重をモデリングする外力と、に基づいて前記少なくとも1つの心臓構成部分の変形を計算するステップを含む、
請求項10記載の方法。
【請求項16】
包括的な患者固有の4D心臓モデルを用いた予測プランニング方法であって、
4D医用画像データから包括的な患者固有の心臓の4Dモデルを生成するステップと、
状態をシミュレートするため、前記包括的な患者固有の4Dモデルの一部を調整するステップと、
前記包括的な患者固有の4Dモデルにおける調整された部分の影響をシミュレートするため、前記包括的な患者固有の心臓の4Dモデルを再生成するステップと、
を含む、ことを特徴とする方法。
【請求項17】
前記の、状態をシミュレートするため、前記包括的な患者固有の4Dモデルの一部を調整するステップは、
前記包括的な患者固有の4Dモデルの解剖学的パラメタを調整するステップを含む、
請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記の、状態をシミュレートするため、前記包括的な患者固有の4Dモデルの一部を調整するステップは、
前記包括的な患者固有の4Dモデルの血行力学的パラメタを調整するステップを含む、
請求項16記載の方法。
【請求項19】
前記の、状態をシミュレートするため、前記包括的な患者固有の4Dモデルの一部を調整するステップは、
前記包括的な患者固有の4Dモデルの生体力学的パラメタを調整するステップを含む、
請求項16記載の方法。
【請求項20】
前記の、状態をシミュレートするため、前記包括的な患者固有の4Dモデルの一部を調整するステップは、
心臓における疾患の進行をシミュレートするため、前記包括的な患者固有の4Dモデルの解剖学的パラメタ、血行力学的パラメタおよび生体力学的パラメタの少なくとも1つを調整するステップを含む、
請求項16記載の方法。
【請求項21】
前記の、状態をシミュレートするため、前記包括的な患者固有の4Dモデルの一部を調整するステップは、
心臓の対応部分への治療の適用を仮想的にシミュレートするため、前記包括的な患者固有の4Dモデルの一部を調整するステップを含む、
請求項16記載の方法。
【請求項22】
前記の、心臓の対応部分への治療の適用を仮想的にシミュレートするため、前記包括的な患者固有の4Dモデルの一部を調整するステップは、
前記包括的な患者固有の4Dモデルにおける経皮的人工弁置換を仮想的にシミュレートするステップを含む、
請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記の、心臓の対応部分への治療の適用を仮想的にシミュレートするため、前記包括的な患者固有の4Dモデルの一部を調整するステップは、
前記包括的な患者固有の4Dモデルの一部における瘤のところへのステント留置を仮想的にシミュレートするステップを含む、
請求項21記載の方法。
【請求項24】
前記の、心臓の対応部分への治療の適用を仮想的にシミュレートするため、前記包括的な患者固有の4Dモデルの一部を調整するステップは、
前記包括的な患者固有の4Dモデルの一部における瘤の切除を仮想的にシミュレートするステップを含む、
請求項21記載の方法。
【請求項25】
前記の、前記包括的な患者固有の4Dモデルにおける調整された部分の影響をシミュレートするため、前記包括的な患者固有の心臓の4Dモデルを再生成するステップは、
シミュレートされた瘤の切除に基づいて、前記包括的な患者固有の4Dモデルの一部における血流および流体構造相互作用をシミュレートするステップを含む、
請求項16記載の方法。
【請求項26】
4D医用画像データに基づいて心臓の血流をシミュレートする装置であって、
4D医用画像データから患者固有の心臓の4D解剖学的モデルを生成する手段と、
レベルセットフレームワークを用いて、1心周期中の複数の時間ステップそれぞれにおける前記患者固有の4D解剖学的モデルにより制約されるナビエ・ストークス方程式を解くことによって心臓の血流をシミュレートする手段と、
を含むことを特徴とする装置。
【請求項27】
前記の、レベルセットフレームワークを用いて、1心周期中の複数の時間ステップそれぞれにおける前記患者固有の4D解剖学的モデルにより制約されるナビエ・ストークス方程式を解くことによって心臓の血流をシミュレートする手段は、
前記患者固有の4D解剖学的モデルを計算領域に組み込むために用いられるレベルセット関数のゼロレベルの位置に基づいて、解剖学的モデルの流体領域に対してすべりなし境界条件を適用する手段を含む、
請求項26記載の装置。
【請求項28】
前記患者固有の心臓の4D解剖学的モデルは複数の心臓構成部分から構成されており、
前記の、レベルセットフレームワークを用いて、1心周期中の複数の時間ステップそれぞれにおける前記患者固有の4D解剖学的モデルにより制約されるナビエ・ストークス方程式を解くことによって心臓の血流をシミュレートする手段は、
現在の時間ステップにおける患者固有の4D解剖学的モデルの位置に基づいて、レベルセット関数および速度に対する対流の更新を計算する手段と、
現在の時間ステップにおける粘性力寄与を表す速度についての半陰的な更新を計算する手段と、
ノイマン境界条件を用いてポアソン方程式を解くことにより現在の時間ステップにおける圧力の更新を計算する手段と、
前記の半陰的な速度の更新および圧力の更新に基づいて、現在の時間ステップに関する新たな速度についての更新を計算する手段と、
を含む、請求項26記載の装置。
【請求項29】
前記の、4D医用画像データから患者固有の心臓の4D解剖学的モデルを生成する手段は、
前記少なくとも1つの心臓構成部分の、患者固有のマルチスケールの解剖学的モデルを生成する手段を含み、当該マルチスケールの解剖学的モデルは、前記少なくとも1つの心臓構成部分の粗い解剖学的モデルと、前記少なくとも1つの心臓構成部分の精細な解剖学的モデルと、を含む、
請求項26記載の装置。
【請求項30】
前記の、レベルセットフレームワークを用いて、1心周期中の複数の時間ステップそれぞれにおける前記患者固有の4D解剖学的モデルにより制約されるナビエ・ストークス方程式を解くことによって心臓の血流をシミュレートする手段は、
前記少なくとも1つの心臓構成部分の精細な解剖学的モデルにより制約されるナビエ・ストークス方程式を解くことによって、前記少なくとも1つの心臓構成部分における血流をシミュレートする手段を含む、
請求項29記載の装置。
【請求項31】
4D医用画像データに基づく、包括的な患者固有の心臓のモデリングのための装置であって、
4D医用画像データから患者固有の心臓の4D解剖学的モデルを生成する手段と、
レベルセットフレームワークを用いて、現在の時間ステップにおける前記患者固有の4D解剖学的モデルの少なくとも1つの心臓構成部分の位置により制約されるナビエ・ストークス方程式を解くことによって、現在の時間ステップにおける前記少なくとも1つの心臓構成部分における血流をシミュレートする手段であって、現在の時間ステップにおける前記少なくとも1つの心臓構成部分の現在の位置が、従前の時間ステップにおいて計算された前記少なくとも1つの心臓構成部分の変形に基づいて少なくとも一部決定される手段と、
現在の時間ステップにおけるシミュレートされた血流に基づいて、現在の時間ステップにおける前記少なくとも1つの心臓構成部分の変形を計算する手段と、
を含む、装置。
【請求項32】
前記少なくとも1つの心臓構成部分の生体力学的パラメタを決定するため、4D医用画像データにおいて、前記少なくとも1つの心臓構成部分の計算された変形を、前記少なくとも1つの心臓構成部分の観察された変形と比較して、当該少なくとも1つの心臓構成部分の生体力学的パラメタを決定する手段を含む、請求項31記載の装置。
【請求項33】
前記の、レベルセットフレームワークを用いて、現在の時間ステップにおける前記患者固有の4D解剖学的モデルの少なくとも1つの心臓構成部分の位置により制約されるナビエ・ストークス方程式を解くことによって、現在の時間ステップにおける前記少なくとも1つの心臓構成部分における血流をシミュレートする手段は、
前記少なくとも1つの心臓構成部分におけるシミュレートされた血流により、現在の時間ステップにおける前記少なくとも1つの心臓構成部分の壁界面における圧力を計算する手段を含む、
請求項31記載の装置。
【請求項34】
前記の、現在の時間ステップにおけるシミュレートされた血流に基づいて、現在の時間ステップにおける少なくとも1つの心臓構成部分の変形を計算する手段は、
前記少なくとも1つの心臓構成部分の壁界面における圧力により、前記少なくとも1つの心臓構成部分の壁の変形を計算する手段を含む、
請求項33記載の装置。
【請求項35】
前記の、現在の時間ステップにおけるシミュレートされた血流に基づいて、現在の時間ステップにおける少なくとも1つの心臓構成部分の変形を計算する手段は、
前記少なくとも1つの心臓構成部分の組織の受動特性をモデリングする内力と、前記少なくとも1つの心臓構成部分内の血流により生成される荷重をモデリングする外力と、に基づいて前記少なくとも1つの心臓構成部分の変形を計算する手段を含む、
請求項31記載の装置。
【請求項36】
包括的な患者固有の4D心臓モデルを用いた予測プランニングのための装置であって、
4D医用画像データから包括的な患者固有の4D心臓モデルを生成する手段と、
状態をシミュレートするため、前記包括的な患者固有の4Dモデルの一部を調整する手段と、
前記包括的な患者固有の4Dモデルについての調整された部分の影響をシミュレートするため、前記包括的な患者固有の4Dモデルを再生成する手段と、
を含む、ことを特徴とする装置。
【請求項37】
前記の、状態をシミュレートするため、前記包括的な患者固有の4Dモデルの一部を調整する手段は、
前記包括的な患者固有の4Dモデルの解剖学的パラメタ、血行力学的パラメタおよび生体力学的パラメタの少なくとも1つを調整する手段を含む、
請求項36記載の装置。
【請求項38】
前記の、状態をシミュレートするため、前記包括的な患者固有の4Dモデルの一部を調整する手段は、
心臓における疾患の進行をシミュレートするため、前記包括的な患者固有の4Dモデルの解剖学的パラメタ、血行力学的パラメタおよび生化学的パラメタの少なくとも1つを調整する手段を含む、
請求項36記載の装置。
【請求項39】
前記の、状態をシミュレートするため、前記包括的な患者固有の4Dモデルの一部を調整する手段は、
心臓の対応部分への治療の適用を仮想的にシミュレートするため、前記包括的な患者固有の4Dモデルの一部を調整する手段を含む、
請求項36記載の装置。
【請求項40】
4D医用画像データに基づいて心臓の血流をシミュレートするためのコンピュータが実行可能な命令がコードされた不揮発性のコンピュータ読み取り可能な媒体であって、前記コンピュータが実行可能な命令は、
4D医用画像データから患者固有の心臓の4D解剖学的モデルを生成するステップと、
レベルセットフレームワークを用いて、1心周期中の複数の時間ステップそれぞれにおける前記患者固有の4D解剖学的モデルにより制約されるナビエ・ストークス方程式を解くことによって心臓の血流をシミュレートするステップと、
を含むステップを定義することを特徴とする媒体。
【請求項41】
前記の、レベルセットフレームワークを用いて、1心周期中の複数の時間ステップそれぞれにおける前記患者固有の4D解剖学的モデルにより制約されるナビエ・ストークス方程式を解くことによって心臓の血流をシミュレートするステップを定義するコンピュータが実行可能な命令は、
前記患者固有の4D解剖学的モデルを計算領域に組み込むために用いられるレベルセット関数のゼロレベルの位置に基づいて、解剖学的モデルの流体領域に対してすべりなし境界条件を適用するステップを定義するコンピュータが実行可能な命令を含む、
請求項40記載の媒体。
【請求項42】
前記患者固有の心臓の4D解剖学的モデルは複数の心臓構成部分から構成されており、
前記の、レベルセットフレームワークを用いて、1心周期中の複数の時間ステップそれぞれにおける前記患者固有の4D解剖学的モデルにより制約されるナビエ・ストークス方程式を解くことによって心臓の血流をシミュレートするステップを定義するコンピュータが実行可能な命令は、複数の時間ステップのそれぞれについて、
現在の時間ステップにおける患者固有の4D解剖学的モデルの位置に基づいて、レベルセット関数および速度に対する対流の更新を計算するステップと、
現在の時間ステップにおける粘性力寄与を表す速度についての半陰的な更新を計算するステップと、
ノイマン境界条件を用いてポアソン方程式を解くことにより現在の時間ステップにおける圧力の更新を計算するステップと、
前記の半陰的な速度の更新および圧力の更新に基づいて、現在の時間ステップに関する新たな速度についての更新を計算するステップと、
を含むステップを定義するコンピュータが実行可能な命令を含む、請求項40記載の媒体。
【請求項43】
前記の、4D医用画像データから患者固有の心臓の4D解剖学的モデルを生成するステップを定義するコンピュータが実行可能な命令は、
少なくとも1つの心臓構成部分の患者固有のマルチスケールの解剖学的モデルを生成するステップを定義するコンピュータが実行可能な命令を含み、当該マルチスケールの解剖学的モデルは、前記少なくとも1つの心臓構成部分の粗い解剖学的モデルと、前記少なくとも1つの心臓構成部分の精細な解剖学的モデルと、を含む、
請求項40記載の媒体。
【請求項44】
前記の、レベルセットフレームワークを用いて、1心周期中の複数の時間ステップそれぞれにおける前記患者固有の4D解剖学的モデルにより制約されるナビエ・ストークス方程式を解くことによって心臓の血流をシミュレートするステップを定義するコンピュータが実行可能な命令は、
前記少なくとも1つの心臓構成部分の精細な解剖学的モデルにより制約されるナビエ・ストークス方程式を解くことによって、前記少なくとも1つの心臓構成部分における血流をシミュレートするステップを定義するコンピュータが実行可能な命令を含む、
請求項43記載の媒体。
【請求項45】
4D医用画像データに基づく、包括的な患者固有の心臓モデリングのためのコンピュータが実行可能な命令がコードされた不揮発性のコンピュータ読み取り可能な媒体であって、
4D医用画像データから患者固有の心臓の4D解剖学的モデルを生成するステップと、
レベルセットフレームワークを用いて、現在の時間ステップにおける少なくとも1つの心臓構成部分の位置により制約されるナビエ・ストークス方程式を解くことによって、現在の時間ステップにおける前記患者固有の4D解剖学的モデルの前記少なくとも1つの心臓構成部分における血流をシミュレートするステップと、
現在の時間ステップにおけるシミュレートされた血流に基づいて、現在の時間ステップにおける前記少なくとも1つの心臓構成部分の変形を計算するステップと、
前記シミュレーションステップおよび計算ステップを複数の時間ステップの間繰り返すステップであって、現在の時間ステップにおける前記少なくとも1つの心臓構成部分の現在の位置を、従前の時間ステップにおいて計算された前記少なくとも1つの心臓構成部分の変形に基づいて少なくとも一部決定するステップと、
を定義するコンピュータが実行可能な命令を含む、媒体。
【請求項46】
前記少なくとも1つの心臓構成部分の生体力学的パラメタを決定するため、4D医用画像データにおいて、前記少なくとも1つの心臓構成部分の計算された変形を、前記少なくとも1つの心臓構成部分の観察された変形と比較して、当該少なくとも1つの心臓構成部分の生体力学的パラメタを決定するステップを定義するコンピュータが実行可能な命令を含む、請求項45記載の媒体。
【請求項47】
前記の、レベルセットフレームワークを用いて、現在の時間ステップにおける少なくとも1つの心臓構成部分の位置により制約されるナビエ・ストークス方程式を解くことによって、現在の時間ステップにおける前記患者固有の4D解剖学的モデルの前記少なくとも1つの心臓構成部分における血流をシミュレートするステップを定義するコンピュータが実行可能な命令は、
前記少なくとも1つの心臓構成部分におけるシミュレートされた血流により、現在の時間ステップにおける前記少なくとも1つの心臓構成部分の壁界面における圧力を計算するステップを定義するコンピュータが実行可能な命令を含む、
請求項45記載の媒体。
【請求項48】
前記の、現在の時間ステップにおけるシミュレートされた血流に基づいて、現在の時間ステップにおける少なくとも1つの心臓構成部分の変形を計算するステップを定義するコンピュータが実行可能な命令は、
前記少なくとも1つの心臓構成部分の壁界面における圧力による、前記少なくとも1つの心臓構成部分の壁の変形を計算するステップを定義するコンピュータが実行可能な命令を含む、
請求項47記載の媒体。
【請求項49】
前記の、現在の時間ステップにおけるシミュレートされた血流に基づいて、現在の時間ステップにおける少なくとも1つの心臓構成部分の変形を計算するステップを定義するコンピュータが実行可能な命令は、
前記少なくとも1つの心臓構成部分の組織の受動特性をモデリングする内力と、前記少なくとも1つの心臓構成部分の内部の血流により生成される荷重をモデリングする外力と、に基づいて前記少なくとも1つの心臓構成部分の変形を計算するステップを定義するコンピュータが実行可能な命令を含む、
請求項45記載の媒体。
【請求項50】
4D医用画像データに基づく、包括的な患者固有の心臓モデルを用いた予測プランニングのためのコンピュータが実行可能な命令をコードした不揮発性のコンピュータ読み取り可能な媒体であって、
4D医用画像データから包括的な患者固有の心臓の4Dモデルを生成するステップと、
状態をシミュレートするため、前記包括的な患者固有の4Dモデルの一部を調整するステップと、
前記包括的な患者固有の4Dモデルについての調整された部分の影響をシミュレートするため、前記包括的な患者固有の心臓の4Dモデルを再生成するステップと、
を定義するコンピュータが実行可能な命令を含む、ことを特徴とする媒体。
【請求項51】
前記の、状態をシミュレートするため、前記包括的な患者固有の4Dモデルの一部を調整するステップを定義するコンピュータが実行可能な命令は、
前記包括的な患者固有の4Dモデルの解剖学的パラメタ、血行力学的パラメタおよび生体力学的パラメタの少なくとも1つを調整するステップを定義するコンピュータが実行可能な命令を含む、
請求項50記載の媒体。
【請求項52】
前記の、状態をシミュレートするため、前記包括的な患者固有の4Dモデルの一部を調整するステップを定義するコンピュータが実行可能な命令は、
心臓における疾患の進行をシミュレートするため、前記包括的な患者固有の4Dモデルの解剖学的パラメタ、血行力学的パラメタおよび生体力学的パラメタの少なくとも1つを調整するステップを定義するコンピュータが実行可能な命令を含む、
請求項50記載の媒体。
【請求項53】
前記の、状態をシミュレートするため、前記包括的な患者固有の4Dモデルの一部を調整するステップを定義するコンピュータが実行可能な命令は、
心臓の対応部分への治療の適用を仮想的にシミュレートするため、前記包括的な患者固有の4Dモデルの一部を調整するステップを定義するコンピュータが実行可能な命令を含む、
請求項50記載の媒体。
【請求項1】
4D医用画像データに基づいて心臓の血流をシミュレートする方法であって、
4D医用画像データから患者固有の心臓の4D解剖学的モデルを生成するステップと、
レベルセットフレームワークを用いて、1心周期中の複数の時間ステップそれぞれにおける前記患者固有の4D解剖学的モデルにより制約されるナビエ・ストークス方程式を解くことによって心臓の血流をシミュレートするステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記患者固有の心臓の4D解剖学的モデルは複数の心臓構成部分から構成されており、
前記の、レベルセットフレームワークを用いて、1心周期中の複数の時間ステップそれぞれにおける前記患者固有の4D解剖学的モデルにより制約されるナビエ・ストークス方程式を解くことによって心臓の血流をシミュレートするステップは、
前記患者固有の4D解剖学的モデルの複数の心臓構成部分のうちの1つまたは複数において個別に血流をシミュレートするステップを含む、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記患者固有の心臓の4D解剖学的モデルは複数の心臓構成部分から構成されており、
前記の、レベルセットフレームワークを用いて、1心周期中の複数の時間ステップそれぞれにおける前記患者固有の4D解剖学的モデルにより制約されるナビエ・ストークス方程式を解くことによって心臓の血流をシミュレートするステップは、
前記患者固有の4D解剖学的モデルの複数の心臓構成部分のそれぞれにおいて同時に血流をシミュレートするステップを含む、
請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記の、レベルセットフレームワークを用いて、1心周期中の複数の時間ステップそれぞれにおける前記患者固有の4D解剖学的モデルにより制約されるナビエ・ストークス方程式を解くことによって心臓の血流をシミュレートするステップは、
前記患者固有の4D解剖学的モデルを計算領域に組み込むために用いられるレベルセット関数のゼロレベルの位置に基づいて、解剖学的モデルの流体領域に対してすべりなし境界条件を適用するステップを含む、
請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記患者固有の心臓の4D解剖学的モデルは複数の心臓構成部分から構成されており、
前記の、レベルセットフレームワークを用いて、1心周期中の複数の時間ステップそれぞれにおける前記患者固有の4D解剖学的モデルにより制約されるナビエ・ストークス方程式を解くことによって心臓の血流をシミュレートするステップは、
現在の時間ステップにおける前記患者固有の4D解剖学的モデルの位置に基づいて、レベルセット関数および速度に対する対流の更新を計算するステップと、
現在の時間ステップにおける粘性力寄与を表す速度についての半陰的な更新を計算するステップと、
ノイマン境界条件を用いてポアソン方程式を解くことにより現在の時間ステップにおける圧力の更新を計算するステップと、
前記の半陰的な速度の更新および圧力の更新に基づいて、現在の時間ステップについての新たな速度に関する更新を計算するステップと、
を含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記患者固有の心臓の4D解剖学的モデルは複数の心臓構成部分から構成されており、
前記の、レベルセットフレームワークを用いて、1心周期中の複数の時間ステップそれぞれにおける前記患者固有の4D解剖学的モデルにより制約されるナビエ・ストークス方程式を解くことによって心臓の血流をシミュレートするステップは、
複数の時間ステップの少なくとも1つにおける前記患者固有の4D解剖学的モデルの位置を導くために、複数の前記患者固有の4D解剖学的モデルからなるシーケンスを内挿するステップと、
を含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記の、4D医用画像データから患者固有の心臓の4D解剖学的モデルを生成するステップは、
少なくとも1つの心臓構成部分の、患者固有のマルチスケールの解剖学的モデルを生成するステップを含み、当該マルチスケールの解剖学的モデルは、前記少なくとも1つの心臓構成部分の粗い解剖学的モデルと、前記少なくとも1つの心臓構成部分の精細な解剖学的モデルと、を含む、
請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記の、レベルセットフレームワークを用いて、1心周期中の複数の時間ステップそれぞれにおける前記患者固有の4D解剖学的モデルにより制約されるナビエ・ストークス方程式を解くことによって心臓の血流をシミュレートするステップは、
前記少なくとも1つの心臓構成部分の精細な解剖学的モデルにより制約されるナビエ・ストークス方程式を解くことによって前記少なくとも1つの心臓構成部分における血流をシミュレートするステップを含む、
請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの心臓構成部分は左心室を含み、当該左心室の精細な解剖学的モデルは乳頭筋および肉柱を含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
4D医用画像データに基づく、包括的な患者固有の心臓のモデリング方法であって、
4D医用画像データから患者固有の心臓の4D解剖学的モデルを生成するステップと、
レベルセットフレームワークを用いて、現在の時間ステップにおける少なくとも1つの心臓構成部分の位置により制約されるナビエ・ストークス方程式を解くことによって、現在の時間ステップにおける前記患者固有の4D解剖学的モデルの前記少なくとも1つの心臓構成部分における血流をシミュレートするステップと、
現在の時間ステップにおけるシミュレートされた血流に基づいて、現在の時間ステップにおける前記少なくとも1つの心臓構成部分の変形を計算するステップと、
前記シミュレーションステップおよび計算ステップを複数の時間ステップの間繰り返すステップであって、現在の時間ステップにおける前記少なくとも1つの心臓構成部分の現在の位置を、従前の時間ステップにおいて計算された前記少なくとも1つの心臓構成部分の変形に基づいて少なくとも一部決定するステップと、
を含む、方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの心臓構成部分の生体力学的パラメタを決定するために、4D医用画像データにおいて、前記少なくとも1つの心臓構成部分の計算された変形を、前記少なくとも1つの心臓構成部分の観察された変形と比較する、ステップを含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの心臓構成部分は大動脈である、請求項10記載の方法。
【請求項13】
前記の、レベルセットフレームワークを用いて、現在の時間ステップにおける少なくとも1つの心臓構成部分の位置により制約されるナビエ・ストークス方程式を解くことによって、現在の時間ステップにおける前記患者固有の4D解剖学的モデルの前記少なくとも1つの心臓構成部分における血流をシミュレートするステップは、
前記少なくとも1つの心臓構成部分におけるシミュレートされた血流により、現在の時間ステップにおける前記少なくとも1つの心臓構成部分の壁界面における圧力を計算するステップを含む、
請求項10記載の方法。
【請求項14】
前記の、現在の時間ステップにおけるシミュレートされた血流に基づいて、現在の時間ステップにおける少なくとも1つの心臓構成部分の変形を計算するステップは、
前記少なくとも1つの心臓構成部分の壁界面における圧力による、前記少なくとも1つの心臓構成部分の壁の変形を計算するステップを含む、
請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記の、現在の時間ステップにおけるシミュレートされた血流に基づいて、現在の時間ステップにおける少なくとも1つの心臓構成部分の変形を計算するステップは、
前記少なくとも1つの心臓構成部分の組織の受動特性をモデリングする内力と、前記少なくとも1つの心臓構成部分内の血流により生成される荷重をモデリングする外力と、に基づいて前記少なくとも1つの心臓構成部分の変形を計算するステップを含む、
請求項10記載の方法。
【請求項16】
包括的な患者固有の4D心臓モデルを用いた予測プランニング方法であって、
4D医用画像データから包括的な患者固有の心臓の4Dモデルを生成するステップと、
状態をシミュレートするため、前記包括的な患者固有の4Dモデルの一部を調整するステップと、
前記包括的な患者固有の4Dモデルにおける調整された部分の影響をシミュレートするため、前記包括的な患者固有の心臓の4Dモデルを再生成するステップと、
を含む、ことを特徴とする方法。
【請求項17】
前記の、状態をシミュレートするため、前記包括的な患者固有の4Dモデルの一部を調整するステップは、
前記包括的な患者固有の4Dモデルの解剖学的パラメタを調整するステップを含む、
請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記の、状態をシミュレートするため、前記包括的な患者固有の4Dモデルの一部を調整するステップは、
前記包括的な患者固有の4Dモデルの血行力学的パラメタを調整するステップを含む、
請求項16記載の方法。
【請求項19】
前記の、状態をシミュレートするため、前記包括的な患者固有の4Dモデルの一部を調整するステップは、
前記包括的な患者固有の4Dモデルの生体力学的パラメタを調整するステップを含む、
請求項16記載の方法。
【請求項20】
前記の、状態をシミュレートするため、前記包括的な患者固有の4Dモデルの一部を調整するステップは、
心臓における疾患の進行をシミュレートするため、前記包括的な患者固有の4Dモデルの解剖学的パラメタ、血行力学的パラメタおよび生体力学的パラメタの少なくとも1つを調整するステップを含む、
請求項16記載の方法。
【請求項21】
前記の、状態をシミュレートするため、前記包括的な患者固有の4Dモデルの一部を調整するステップは、
心臓の対応部分への治療の適用を仮想的にシミュレートするため、前記包括的な患者固有の4Dモデルの一部を調整するステップを含む、
請求項16記載の方法。
【請求項22】
前記の、心臓の対応部分への治療の適用を仮想的にシミュレートするため、前記包括的な患者固有の4Dモデルの一部を調整するステップは、
前記包括的な患者固有の4Dモデルにおける経皮的人工弁置換を仮想的にシミュレートするステップを含む、
請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記の、心臓の対応部分への治療の適用を仮想的にシミュレートするため、前記包括的な患者固有の4Dモデルの一部を調整するステップは、
前記包括的な患者固有の4Dモデルの一部における瘤のところへのステント留置を仮想的にシミュレートするステップを含む、
請求項21記載の方法。
【請求項24】
前記の、心臓の対応部分への治療の適用を仮想的にシミュレートするため、前記包括的な患者固有の4Dモデルの一部を調整するステップは、
前記包括的な患者固有の4Dモデルの一部における瘤の切除を仮想的にシミュレートするステップを含む、
請求項21記載の方法。
【請求項25】
前記の、前記包括的な患者固有の4Dモデルにおける調整された部分の影響をシミュレートするため、前記包括的な患者固有の心臓の4Dモデルを再生成するステップは、
シミュレートされた瘤の切除に基づいて、前記包括的な患者固有の4Dモデルの一部における血流および流体構造相互作用をシミュレートするステップを含む、
請求項16記載の方法。
【請求項26】
4D医用画像データに基づいて心臓の血流をシミュレートする装置であって、
4D医用画像データから患者固有の心臓の4D解剖学的モデルを生成する手段と、
レベルセットフレームワークを用いて、1心周期中の複数の時間ステップそれぞれにおける前記患者固有の4D解剖学的モデルにより制約されるナビエ・ストークス方程式を解くことによって心臓の血流をシミュレートする手段と、
を含むことを特徴とする装置。
【請求項27】
前記の、レベルセットフレームワークを用いて、1心周期中の複数の時間ステップそれぞれにおける前記患者固有の4D解剖学的モデルにより制約されるナビエ・ストークス方程式を解くことによって心臓の血流をシミュレートする手段は、
前記患者固有の4D解剖学的モデルを計算領域に組み込むために用いられるレベルセット関数のゼロレベルの位置に基づいて、解剖学的モデルの流体領域に対してすべりなし境界条件を適用する手段を含む、
請求項26記載の装置。
【請求項28】
前記患者固有の心臓の4D解剖学的モデルは複数の心臓構成部分から構成されており、
前記の、レベルセットフレームワークを用いて、1心周期中の複数の時間ステップそれぞれにおける前記患者固有の4D解剖学的モデルにより制約されるナビエ・ストークス方程式を解くことによって心臓の血流をシミュレートする手段は、
現在の時間ステップにおける患者固有の4D解剖学的モデルの位置に基づいて、レベルセット関数および速度に対する対流の更新を計算する手段と、
現在の時間ステップにおける粘性力寄与を表す速度についての半陰的な更新を計算する手段と、
ノイマン境界条件を用いてポアソン方程式を解くことにより現在の時間ステップにおける圧力の更新を計算する手段と、
前記の半陰的な速度の更新および圧力の更新に基づいて、現在の時間ステップに関する新たな速度についての更新を計算する手段と、
を含む、請求項26記載の装置。
【請求項29】
前記の、4D医用画像データから患者固有の心臓の4D解剖学的モデルを生成する手段は、
前記少なくとも1つの心臓構成部分の、患者固有のマルチスケールの解剖学的モデルを生成する手段を含み、当該マルチスケールの解剖学的モデルは、前記少なくとも1つの心臓構成部分の粗い解剖学的モデルと、前記少なくとも1つの心臓構成部分の精細な解剖学的モデルと、を含む、
請求項26記載の装置。
【請求項30】
前記の、レベルセットフレームワークを用いて、1心周期中の複数の時間ステップそれぞれにおける前記患者固有の4D解剖学的モデルにより制約されるナビエ・ストークス方程式を解くことによって心臓の血流をシミュレートする手段は、
前記少なくとも1つの心臓構成部分の精細な解剖学的モデルにより制約されるナビエ・ストークス方程式を解くことによって、前記少なくとも1つの心臓構成部分における血流をシミュレートする手段を含む、
請求項29記載の装置。
【請求項31】
4D医用画像データに基づく、包括的な患者固有の心臓のモデリングのための装置であって、
4D医用画像データから患者固有の心臓の4D解剖学的モデルを生成する手段と、
レベルセットフレームワークを用いて、現在の時間ステップにおける前記患者固有の4D解剖学的モデルの少なくとも1つの心臓構成部分の位置により制約されるナビエ・ストークス方程式を解くことによって、現在の時間ステップにおける前記少なくとも1つの心臓構成部分における血流をシミュレートする手段であって、現在の時間ステップにおける前記少なくとも1つの心臓構成部分の現在の位置が、従前の時間ステップにおいて計算された前記少なくとも1つの心臓構成部分の変形に基づいて少なくとも一部決定される手段と、
現在の時間ステップにおけるシミュレートされた血流に基づいて、現在の時間ステップにおける前記少なくとも1つの心臓構成部分の変形を計算する手段と、
を含む、装置。
【請求項32】
前記少なくとも1つの心臓構成部分の生体力学的パラメタを決定するため、4D医用画像データにおいて、前記少なくとも1つの心臓構成部分の計算された変形を、前記少なくとも1つの心臓構成部分の観察された変形と比較して、当該少なくとも1つの心臓構成部分の生体力学的パラメタを決定する手段を含む、請求項31記載の装置。
【請求項33】
前記の、レベルセットフレームワークを用いて、現在の時間ステップにおける前記患者固有の4D解剖学的モデルの少なくとも1つの心臓構成部分の位置により制約されるナビエ・ストークス方程式を解くことによって、現在の時間ステップにおける前記少なくとも1つの心臓構成部分における血流をシミュレートする手段は、
前記少なくとも1つの心臓構成部分におけるシミュレートされた血流により、現在の時間ステップにおける前記少なくとも1つの心臓構成部分の壁界面における圧力を計算する手段を含む、
請求項31記載の装置。
【請求項34】
前記の、現在の時間ステップにおけるシミュレートされた血流に基づいて、現在の時間ステップにおける少なくとも1つの心臓構成部分の変形を計算する手段は、
前記少なくとも1つの心臓構成部分の壁界面における圧力により、前記少なくとも1つの心臓構成部分の壁の変形を計算する手段を含む、
請求項33記載の装置。
【請求項35】
前記の、現在の時間ステップにおけるシミュレートされた血流に基づいて、現在の時間ステップにおける少なくとも1つの心臓構成部分の変形を計算する手段は、
前記少なくとも1つの心臓構成部分の組織の受動特性をモデリングする内力と、前記少なくとも1つの心臓構成部分内の血流により生成される荷重をモデリングする外力と、に基づいて前記少なくとも1つの心臓構成部分の変形を計算する手段を含む、
請求項31記載の装置。
【請求項36】
包括的な患者固有の4D心臓モデルを用いた予測プランニングのための装置であって、
4D医用画像データから包括的な患者固有の4D心臓モデルを生成する手段と、
状態をシミュレートするため、前記包括的な患者固有の4Dモデルの一部を調整する手段と、
前記包括的な患者固有の4Dモデルについての調整された部分の影響をシミュレートするため、前記包括的な患者固有の4Dモデルを再生成する手段と、
を含む、ことを特徴とする装置。
【請求項37】
前記の、状態をシミュレートするため、前記包括的な患者固有の4Dモデルの一部を調整する手段は、
前記包括的な患者固有の4Dモデルの解剖学的パラメタ、血行力学的パラメタおよび生体力学的パラメタの少なくとも1つを調整する手段を含む、
請求項36記載の装置。
【請求項38】
前記の、状態をシミュレートするため、前記包括的な患者固有の4Dモデルの一部を調整する手段は、
心臓における疾患の進行をシミュレートするため、前記包括的な患者固有の4Dモデルの解剖学的パラメタ、血行力学的パラメタおよび生化学的パラメタの少なくとも1つを調整する手段を含む、
請求項36記載の装置。
【請求項39】
前記の、状態をシミュレートするため、前記包括的な患者固有の4Dモデルの一部を調整する手段は、
心臓の対応部分への治療の適用を仮想的にシミュレートするため、前記包括的な患者固有の4Dモデルの一部を調整する手段を含む、
請求項36記載の装置。
【請求項40】
4D医用画像データに基づいて心臓の血流をシミュレートするためのコンピュータが実行可能な命令がコードされた不揮発性のコンピュータ読み取り可能な媒体であって、前記コンピュータが実行可能な命令は、
4D医用画像データから患者固有の心臓の4D解剖学的モデルを生成するステップと、
レベルセットフレームワークを用いて、1心周期中の複数の時間ステップそれぞれにおける前記患者固有の4D解剖学的モデルにより制約されるナビエ・ストークス方程式を解くことによって心臓の血流をシミュレートするステップと、
を含むステップを定義することを特徴とする媒体。
【請求項41】
前記の、レベルセットフレームワークを用いて、1心周期中の複数の時間ステップそれぞれにおける前記患者固有の4D解剖学的モデルにより制約されるナビエ・ストークス方程式を解くことによって心臓の血流をシミュレートするステップを定義するコンピュータが実行可能な命令は、
前記患者固有の4D解剖学的モデルを計算領域に組み込むために用いられるレベルセット関数のゼロレベルの位置に基づいて、解剖学的モデルの流体領域に対してすべりなし境界条件を適用するステップを定義するコンピュータが実行可能な命令を含む、
請求項40記載の媒体。
【請求項42】
前記患者固有の心臓の4D解剖学的モデルは複数の心臓構成部分から構成されており、
前記の、レベルセットフレームワークを用いて、1心周期中の複数の時間ステップそれぞれにおける前記患者固有の4D解剖学的モデルにより制約されるナビエ・ストークス方程式を解くことによって心臓の血流をシミュレートするステップを定義するコンピュータが実行可能な命令は、複数の時間ステップのそれぞれについて、
現在の時間ステップにおける患者固有の4D解剖学的モデルの位置に基づいて、レベルセット関数および速度に対する対流の更新を計算するステップと、
現在の時間ステップにおける粘性力寄与を表す速度についての半陰的な更新を計算するステップと、
ノイマン境界条件を用いてポアソン方程式を解くことにより現在の時間ステップにおける圧力の更新を計算するステップと、
前記の半陰的な速度の更新および圧力の更新に基づいて、現在の時間ステップに関する新たな速度についての更新を計算するステップと、
を含むステップを定義するコンピュータが実行可能な命令を含む、請求項40記載の媒体。
【請求項43】
前記の、4D医用画像データから患者固有の心臓の4D解剖学的モデルを生成するステップを定義するコンピュータが実行可能な命令は、
少なくとも1つの心臓構成部分の患者固有のマルチスケールの解剖学的モデルを生成するステップを定義するコンピュータが実行可能な命令を含み、当該マルチスケールの解剖学的モデルは、前記少なくとも1つの心臓構成部分の粗い解剖学的モデルと、前記少なくとも1つの心臓構成部分の精細な解剖学的モデルと、を含む、
請求項40記載の媒体。
【請求項44】
前記の、レベルセットフレームワークを用いて、1心周期中の複数の時間ステップそれぞれにおける前記患者固有の4D解剖学的モデルにより制約されるナビエ・ストークス方程式を解くことによって心臓の血流をシミュレートするステップを定義するコンピュータが実行可能な命令は、
前記少なくとも1つの心臓構成部分の精細な解剖学的モデルにより制約されるナビエ・ストークス方程式を解くことによって、前記少なくとも1つの心臓構成部分における血流をシミュレートするステップを定義するコンピュータが実行可能な命令を含む、
請求項43記載の媒体。
【請求項45】
4D医用画像データに基づく、包括的な患者固有の心臓モデリングのためのコンピュータが実行可能な命令がコードされた不揮発性のコンピュータ読み取り可能な媒体であって、
4D医用画像データから患者固有の心臓の4D解剖学的モデルを生成するステップと、
レベルセットフレームワークを用いて、現在の時間ステップにおける少なくとも1つの心臓構成部分の位置により制約されるナビエ・ストークス方程式を解くことによって、現在の時間ステップにおける前記患者固有の4D解剖学的モデルの前記少なくとも1つの心臓構成部分における血流をシミュレートするステップと、
現在の時間ステップにおけるシミュレートされた血流に基づいて、現在の時間ステップにおける前記少なくとも1つの心臓構成部分の変形を計算するステップと、
前記シミュレーションステップおよび計算ステップを複数の時間ステップの間繰り返すステップであって、現在の時間ステップにおける前記少なくとも1つの心臓構成部分の現在の位置を、従前の時間ステップにおいて計算された前記少なくとも1つの心臓構成部分の変形に基づいて少なくとも一部決定するステップと、
を定義するコンピュータが実行可能な命令を含む、媒体。
【請求項46】
前記少なくとも1つの心臓構成部分の生体力学的パラメタを決定するため、4D医用画像データにおいて、前記少なくとも1つの心臓構成部分の計算された変形を、前記少なくとも1つの心臓構成部分の観察された変形と比較して、当該少なくとも1つの心臓構成部分の生体力学的パラメタを決定するステップを定義するコンピュータが実行可能な命令を含む、請求項45記載の媒体。
【請求項47】
前記の、レベルセットフレームワークを用いて、現在の時間ステップにおける少なくとも1つの心臓構成部分の位置により制約されるナビエ・ストークス方程式を解くことによって、現在の時間ステップにおける前記患者固有の4D解剖学的モデルの前記少なくとも1つの心臓構成部分における血流をシミュレートするステップを定義するコンピュータが実行可能な命令は、
前記少なくとも1つの心臓構成部分におけるシミュレートされた血流により、現在の時間ステップにおける前記少なくとも1つの心臓構成部分の壁界面における圧力を計算するステップを定義するコンピュータが実行可能な命令を含む、
請求項45記載の媒体。
【請求項48】
前記の、現在の時間ステップにおけるシミュレートされた血流に基づいて、現在の時間ステップにおける少なくとも1つの心臓構成部分の変形を計算するステップを定義するコンピュータが実行可能な命令は、
前記少なくとも1つの心臓構成部分の壁界面における圧力による、前記少なくとも1つの心臓構成部分の壁の変形を計算するステップを定義するコンピュータが実行可能な命令を含む、
請求項47記載の媒体。
【請求項49】
前記の、現在の時間ステップにおけるシミュレートされた血流に基づいて、現在の時間ステップにおける少なくとも1つの心臓構成部分の変形を計算するステップを定義するコンピュータが実行可能な命令は、
前記少なくとも1つの心臓構成部分の組織の受動特性をモデリングする内力と、前記少なくとも1つの心臓構成部分の内部の血流により生成される荷重をモデリングする外力と、に基づいて前記少なくとも1つの心臓構成部分の変形を計算するステップを定義するコンピュータが実行可能な命令を含む、
請求項45記載の媒体。
【請求項50】
4D医用画像データに基づく、包括的な患者固有の心臓モデルを用いた予測プランニングのためのコンピュータが実行可能な命令をコードした不揮発性のコンピュータ読み取り可能な媒体であって、
4D医用画像データから包括的な患者固有の心臓の4Dモデルを生成するステップと、
状態をシミュレートするため、前記包括的な患者固有の4Dモデルの一部を調整するステップと、
前記包括的な患者固有の4Dモデルについての調整された部分の影響をシミュレートするため、前記包括的な患者固有の心臓の4Dモデルを再生成するステップと、
を定義するコンピュータが実行可能な命令を含む、ことを特徴とする媒体。
【請求項51】
前記の、状態をシミュレートするため、前記包括的な患者固有の4Dモデルの一部を調整するステップを定義するコンピュータが実行可能な命令は、
前記包括的な患者固有の4Dモデルの解剖学的パラメタ、血行力学的パラメタおよび生体力学的パラメタの少なくとも1つを調整するステップを定義するコンピュータが実行可能な命令を含む、
請求項50記載の媒体。
【請求項52】
前記の、状態をシミュレートするため、前記包括的な患者固有の4Dモデルの一部を調整するステップを定義するコンピュータが実行可能な命令は、
心臓における疾患の進行をシミュレートするため、前記包括的な患者固有の4Dモデルの解剖学的パラメタ、血行力学的パラメタおよび生体力学的パラメタの少なくとも1つを調整するステップを定義するコンピュータが実行可能な命令を含む、
請求項50記載の媒体。
【請求項53】
前記の、状態をシミュレートするため、前記包括的な患者固有の4Dモデルの一部を調整するステップを定義するコンピュータが実行可能な命令は、
心臓の対応部分への治療の適用を仮想的にシミュレートするため、前記包括的な患者固有の4Dモデルの一部を調整するステップを定義するコンピュータが実行可能な命令を含む、
請求項50記載の媒体。
【図1】
【図3】
【図6】
【図8】
【図22】
【図26】
【図2】
【図4】
【図5】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図23】
【図24】
【図25】
【図3】
【図6】
【図8】
【図22】
【図26】
【図2】
【図4】
【図5】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2012−24582(P2012−24582A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−159979(P2011−159979)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(510299444)シーメンス コーポレーション (3)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Corporation
【住所又は居所原語表記】170 Wood Avenue South, Iselin, New Jersey 08830, United States of America
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159979(P2011−159979)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(510299444)シーメンス コーポレーション (3)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Corporation
【住所又は居所原語表記】170 Wood Avenue South, Iselin, New Jersey 08830, United States of America
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】
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