説明

包装ケース

【課題】簡易な構成で下緩衝材のずれを防止することができる包装ケースを提供する。
【解決手段】段ボールケース100は、前面板と、前面板に折り線を介して順次連なる右側面板、後面板、左側面板とで形成される角筒状のケース本体1と、前面板及び後面板の上下に折り線を介して連なる天板6a、6b、底板8a、8bとを有している。ケース本体1の底面内側には、底面内フラップ9a、9bの折り曲げ片を折り曲げることにより緩衝材保持部21が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電子機器等のような製品を梱包するための包装ケースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器等の梱包方法としては、図15に示すように、段ボールケース100内に輸送中の外部からの衝撃や振動を吸収する下緩衝材101を配置し、その上に製品(被梱包物)102及び上緩衝材(図示せず)を載置して、フレーム等で補強された製品102の角部(製品強度確保部)102aを下緩衝材101で受ける方法が一般的である。緩衝材としては、段ボールを折畳んだものや発泡スチロール、或いは材料として古紙を利用したリサイクル利用が可能なパルプモールド製緩衝材等が用いられる。
【0003】
このような従来の梱包方法においては、梱包物の落下等の衝撃による下緩衝材101の歪みや段ボールケース100の変形等により、製品102に対する下緩衝材101の位置がずれ、図16に示すように、下緩衝材101が製品強度の弱い部分102bに回り込み、その部分を変形させる等の不具合が発生する。上記不具合を防止するためには、緩衝材の強度を高めて歪み量を小さくするか、段ボールケースの底面全体に一体化された緩衝材を挿入して位置ずれを防止する方法が考えられる。しかし、緩衝材の強度を高める方法では緩衝材の衝撃吸収性が低下するため製品の強度を確保する必要が生じ、緩衝材を一体化する方法では緩衝材が大型化してコストアップに繋がる等の弊害が生じる。
【0004】
そこで、特許文献1には、箱体の一対の下フラップを折り曲げて立ち上げ、機器本体の下半分を覆うとともに先端部で本体の自重を受けるようにした梱包方法が開示されている。また、特許文献2には、梱包ケースの底面に配置される板状の下緩衝体の位置決め部として、底面の内フラップの一方を端面より略コ字状に切断した包装ケースが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−338666号公報
【特許文献2】特開2001−10691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の方法では、下フラップの倒れを防止するために下フラップと箱体との間の空間に付属部品を入れているものの、下フラップを折り曲げて起立させた機器の保持部が不安定であり、落下等の衝撃により下フラップの起立部分が折れ曲がったり、機器が下フラップの先端部から落下したりするおそれがあった。
【0007】
また、特許文献2の方法では、内フラップの厚み分の段差だけで下緩衝体を位置決めするため、位置決め性能が不十分であり、落下等の衝撃により下緩衝体の位置ずれが発生するおそれがあった。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑み、簡易な構成で下緩衝材のずれを防止することができる包装ケースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は、4つの側面で筒状に形成され、被梱包物を収納するケース本体と、該ケース本体の下側の開口部の対向する端縁に折り線を介して連結され前記ケース本体の底面を形成する一対の底板と、該底板に隣接して前記ケース本体の下側の開口部の対向する端縁に折り線を介して連結される一対の底面内フラップと、該底面内フラップの一部を筒状に折り曲げて形成され、前記ケース本体の底面に配置される緩衝材の移動を規制する緩衝材保持部と、を有する包装ケースである。
【0010】
また本発明は、上記構成の包装ケースにおいて、前記緩衝材保持部は、前記底面内フラップの一部を前記ケース本体の角部に沿って三角柱状に折り曲げて形成されることを特徴としている。
【0011】
また本発明は、上記構成の包装ケースにおいて、前記緩衝材保持部は被梱包物の下方に形成されており、前記緩衝材保持部の高さは、前記緩衝材に支持される被梱包物の底面までの高さと略等しいことを特徴としている。
【0012】
また本発明は、上記構成の包装ケースにおいて、前記緩衝材保持部は、前記底面内フラップの一部を上面が平らな四角柱状に折り曲げて形成されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の第1の構成によれば、底面内フラップの一部を折り曲げて緩衝材保持部を設けることにより、落下による衝撃が加えられても緩衝材を所定の位置(被梱包物の強度が確保された位置)に保持される。そのため、緩衝材が被梱包物の底面の弱い部分に回り込むことがなく、落下による被梱包物の変形を効果的に抑制することができる。
【0014】
また、本発明の第2の構成によれば、上記第1の構成の包装ケースにおいて、ケース本体の角部に沿って三角柱状の緩衝材保持部を形成することにより、緩衝材保持部による緩衝材の位置決め効果及び移動抑制効果に加えて、緩衝材保持部を用いてケース本体の角部を補強することができる。
【0015】
また、本発明の第3の構成によれば、上記第1の構成の包装ケースにおいて、緩衝材保持部を被梱包物の下方に形成するとともに、緩衝材保持部の高さを緩衝材に支持される被梱包物の底面までの高さと略等しくすることにより、緩衝材保持部が被梱包物の底面に接触して緩衝材を補助する役割を果たすため、緩衝材と緩衝材保持部とを合わせた全体としての緩衝性能が向上する。
【0016】
また、本発明の第4の構成によれば、上記第3の構成の包装ケースにおいて、上面が平らな四角柱状の緩衝材保持部を形成することにより、被梱包物の底面に集中した応力が加わらないため、被梱包物の底面の変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係る段ボールケースの展開図
【図2】図1における底面内フラップ9a、9bの部分拡大図
【図3】図1の段ボールケースを組み立てた状態を示す斜視図
【図4】第1実施形態の段ボールケースを図3の上方から見た平面図
【図5】第1実施形態の段ボールケース下部の部分断面図
【図6】第1実施形態の段ボールケースを用いた開梱手順を示す斜視図
【図7】第1実施形態の段ボールケース100内に下緩衝材101を載置した状態を図6の矢印C方向から見た平面図
【図8】第1実施形態の段ボールケース100内に下緩衝材101及び製品102を載置した状態を図6の矢印B方向から見た側面図
【図9】第1実施形態の段ボールケース100内に下緩衝材101及び製品102を載置した状態を図6の矢印A方向から見た側面図
【図10】図9に示した梱包状態の段ボールケース100を、稜部(図9の右下角部)を下にして自由落下試験を行った後の状態を示す側面図
【図11】本発明の第2実施形態に係る段ボールケースを組み立てる前の底面内フラップ9a、9bの部分拡大図
【図12】第2実施形態の段ボールケース下部の部分断面図
【図13】第2実施形態の段ボールケース100内に下緩衝材101を載置した状態を図6の矢印C方向から見た平面図
【図14】第2実施形態の段ボールケース100内に下緩衝材101及び製品102を載置した状態を図6の矢印B方向から見た側面図
【図15】従来の段ボールケース100内に下緩衝材101及び製品102を載置した状態を示す側面図
【図16】図15に示した梱包状態の従来の段ボールケース100を、稜部(図15の右下角部)を下にして自由落下試験を行った後の状態を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る段ボールケースの展開図である。段ボールケース100は、所定の形状に打ち抜いた段ボールシートを折り曲げて形成されている。具体的には、前面板2と、前面板2に折り線を介して順次連なる右側面板3、後面板4、左側面板5と、前面板2及び後面板4の上下に折り線を介して連なる天板6a、6b、底板8a、8bとを有している。なお、図1では山折り線を一点鎖線で示している。
【0019】
前面板2の一端には、左側面板5の裏面に接着される接着片11が折り線を介して連設されている。また、右側面板3、左側面板5の上端には天面内フラップ7a、7bが連設されており、右側面板3、左側面板5の下端には底面内フラップ9a、9bが連設されている。また、右側面板3、左側面板5の高さ方向の中央よりもやや上方には把持穴10が各1箇所に形成されている。
【0020】
図2は、図1における底面内フラップ9a、9b(図1の円S内)の部分拡大図である。底面内フラップ9a、9bには、端縁に垂直な2本の切り込み15が形成されており、切り込み15で挟まれた部分が折り曲げ片17となっている。折り曲げ片17の基端部から先端部に向かって、3本の折り線L1〜L3が所定の間隔で形成されている。折り線L1とL2との間隔は、折り線L2とL3との間隔及び折り線L3と先端部との間隔よりも広くなっている。
【0021】
また、折り曲げ片17の折り線L3と先端部の間には、一辺が折り線L3に沿った矩形状の開口部19が形成されており、底面内フラップ9a、9bの折り線L1よりも内側(図2の左側)には、最大幅が開口部19よりも若干大きい台形状の切り起こし部20が形成されている。
【0022】
図3は、段ボールケース100を組み立てた状態を示す斜視図であり、図4は、段ボールケースを図3の上方から見た平面図、図5は、段ボールケース下部の部分断面図(図4のAA矢視断面)である。なお、図4では天板6a、6b、天面内フラップ7a、7bの記載を省略しており、緩衝材保持部21にはハッチングを付している。
【0023】
段ボールケース100の組み立て手順について説明すると、先ず、前面板2、右側面板3、後面板4、及び左側面板5を連結する折り線を折り曲げ、接着片11を左側面板5の裏面に接着してケース本体1(図3参照)を形成する。次に、底板8a、8b及び底面内フラップ9a、9bをケース本体1の内側に折り返すとともに、底面内フラップ9a、9bの折り曲げ片17を折り線L1〜L3に沿って筒状に折り曲げる。そして、開口部19に切り起こし20を挿入して固定し、緩衝材保持部21(図3、図5参照)を形成する。最後に、底板8a、8bを閉鎖して粘着テープまたはステイプルで固定する。
【0024】
図3〜図5に示すようにケース本体1は角筒状であり、底面内側には底面内フラップ9a、9bの折り曲げ片17を折り曲げることにより三角柱状の緩衝材保持部21が形成されている。
【0025】
次に、本発明の段ボールケースを用いて被梱包物を梱包する方法について説明する。図6は、段ボールケースを用いた梱包手順を示す概略図である。図6に示すように、先ず段ボールケース100の底面に2つの下緩衝材101を載置する。下緩衝材101及び上緩衝材103(後述)の材質としては、中空状のパルプモールド、積層段ボール、或いは発泡スチロール等の軟質樹脂等、従来公知の種々の材質を用いることができる。
【0026】
図7は、段ボールケース100内に下緩衝材101を載置した状態を図6の矢印C方向から見た平面図である。下緩衝材101の長手方向の寸法は段ボールケース100の長手方向(図7の左右方向)の内寸と略同一であり、下緩衝材101の長手方向と直交する方向(図7の上下方向)には緩衝材保持部21が存在するため、2つの下緩衝材101は段ボールケース100の内壁面に沿って位置決めされる。
【0027】
次いで、下緩衝材101の上に製品102を載置する。図8は、段ボールケース100内に下緩衝材101及び製品102を載置した状態を図6の矢印B方向から見た側面図である。なお、図8では前面板2の記載を省略して内部が見える状態としている。
【0028】
最後に、製品102の上部に上緩衝材103を装着する。そして、上緩衝材103の上に電源コードや取扱説明書、CD−ROM等の付属品(図示せず)を載せ、天面内フラップ7a、7b、及び天板6a、6bを順に内側に折り曲げ、天板6a、6bを閉鎖して粘着テープまたはステイプルで固定して梱包作業を完了する。
【0029】
図9は、段ボールケース100内に下緩衝材101及び製品102を載置した状態を図6の矢印A方向から見た側面図であり、図10は、図9に示した梱包状態の段ボールケース100を、稜部(図9の右下角部)を下にして自由落下試験を行った後の状態を図6の矢印A方向から見た側面図である。なお、図9、図10では右側面板3の記載を省略して内部が見える状態としている。
【0030】
図10に示すように、本発明の段ボールケース100では底面内フラップ9a、9bの一部を折り曲げて緩衝材保持部21を設けることにより、落下による衝撃が加えられても下緩衝材101が所定の位置(製品強度確保部102aに当接する位置)に留まったままである。そのため、下緩衝材101が製品102の弱い部分102b(図16参照)に回り込むことがなく、落下による製品102の変形を効果的に抑制することができる。
【0031】
また、緩衝材保持部21が段ボールケース100の下角部に沿って三角柱状に形成されるため、段ボールケース100の下角部の変形も抑制することができる。
【0032】
図11は、本発明の第2実施形態に係る段ボールケースを組み立てる前の底面内フラップ9a、9bの部分拡大図であり、図12は、第2実施形態の段ボールケース下部の部分断面図、図13は、第2実施形態の段ボールケース100内に下緩衝材101を載置した状態を図6の矢印C方向から見た平面図、図14は、段ボールケース100内に下緩衝材101及び製品102を載置した状態を図6の矢印B方向から見た側面図である。なお、底面内フラップ9a、9b以外の構成、及び段ボールケース100の組み立て手順は第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0033】
図11に示すように、本実施形態では底面内フラップ9a、9bの折り曲げ片17に4本の折り線L1〜L4が略等間隔で形成されている。この折り曲げ片17を折り線L1〜L4に沿って筒状に折り曲げ、開口部19に切り起こし20を挿入して固定することにより、図12に示すような四角柱状の緩衝材保持部21が形成される。
【0034】
そして、図13に示すように、段ボールケース100内に下緩衝材101を載置すると、下緩衝材101の長手方向の寸法は段ボールケース100の長手方向(図13の左右方向)の内寸と略同一であり、下緩衝材101の長手方向と直交する方向(図13の上下方向)には緩衝材保持部21が存在するため、第1実施形態と同様に、2つの下緩衝材101は段ボールケース100の内壁面に沿って位置決めされる。
【0035】
さらに、下緩衝材101の上に製品102を載置すると、図14に示すように、緩衝材保持部21は製品102の下方に位置しており、緩衝材保持部21の高さは下緩衝材101の製品支持面101aの高さと略等しくなっている。即ち、本実施形態では、緩衝材保持部21は下緩衝材101の移動を規制するとともに、製品102の底面に接触して下緩衝材101を補助する役割も果たしており、下緩衝材101と緩衝材保持部21とを合わせた全体としての緩衝性能が向上する。
【0036】
その他本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、緩衝材保持部21の形状、大きさ、及び配置は、下緩衝材101の大きさや形状に応じて任意に設定することができる。
【0037】
ただし、第1実施形態のように、緩衝材保持部21を下緩衝材101の位置決め用として段ボールケース100の下角部に形成する場合は、段ボールケース100の下角部の補強効果も考慮して緩衝材保持部21を三角柱状に形成することが好ましい。また、第2実施形態のように、緩衝材保持部21に下緩衝材101の位置決め機能と下緩衝材101を補助する機能との両方を持たせる場合は、緩衝材保持部21を上面が平らな四角柱状に形成して製品102の底面に集中した応力が加わらないようにすることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、電子機器等の重量物を梱包する包装ケースに利用可能であり、底面内フラップの一部を筒状に折り曲げることにより、ケース本体の底面に配置される緩衝材の移動を規制する緩衝材保持部を形成した包装ケースである。
【0039】
本発明の利用により、落下等による衝撃が加えられても緩衝材が被梱包物の底面の弱い部分に移動するおそれがなく、簡易な構成で落下による被梱包物の変形を効果的に抑制可能な包装ケースを提供することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 ケース本体
2 前面板
3 右側面板
4 後面板
5 左側面板
6a、6b 天板
7a、7b 天面内フラップ
8a、8b 底板
9a、9b 底面内フラップ
17 折り曲げ片
19 開口部
20 切り起こし
21 緩衝材保持部
100 段ボールケース(包装ケース)
101 下緩衝材
102 製品(被梱包物)
103 上緩衝材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
4つの側面で筒状に形成され、被梱包物を収納するケース本体と、
該ケース本体の下側の開口部の対向する端縁に折り線を介して連結され前記ケース本体の底面を形成する一対の底板と、
該底板に隣接して前記ケース本体の下側の開口部の対向する端縁に折り線を介して連結される一対の底面内フラップと、
該底面内フラップの一部を筒状に折り曲げて形成され、前記ケース本体の底面に配置される緩衝材の移動を規制する緩衝材保持部と、
を有することを特徴とする包装ケース。
【請求項2】
前記緩衝材保持部は、前記底面内フラップの一部を前記ケース本体の角部に沿って三角柱状に折り曲げて形成されることを特徴とする請求項1に記載の包装ケース。
【請求項3】
前記緩衝材保持部は被梱包物の下方に形成されており、前記緩衝材保持部の高さは、前記緩衝材に支持される被梱包物の底面までの高さと略等しいことを特徴とする請求項1に記載の包装ケース。
【請求項4】
前記緩衝材保持部は、前記底面内フラップの一部を上面が平らな四角柱状に折り曲げて形成されることを特徴とする請求項3に記載の包装ケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−91852(P2012−91852A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−242623(P2010−242623)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】