説明

包装フィルムおよびその製造方法

【課題】 食品などの被包装体に対する離型性(剥離性)に著しく優れ、容易に開封でき、しかも、離型性とヒートシール性とを効率よく両立できる包装フィルムを提供する。
【解決手段】 包装フィルムを、ヒートシール可能な層で少なくとも構成された基材フィルムと、前記ヒートシール可能な層の表面に形成され、少なくともショ糖脂肪酸エステルを含む多価アルコール脂肪酸エステルで構成され、かつラウリル硫酸ナトリウムを含まない被覆層とで構成する。多価アルコール脂肪酸エステルが、少なくともショ糖脂肪酸エステルで構成してもよく、多価アルコール脂肪酸エステルの塗布量は、0.5〜200mg/m2程度であってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品(例えば、蒸し饅頭、中華饅頭、おにぎり、スライスチーズなどの粘稠物)などを包装するのに有用な包装フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
食品などの被包装体を包装フィルムで包装する場合、被包装体に対する高い離型性(又は剥離性)が要求される場合がある。例えば、蒸し饅頭や中華饅頭は、成形して蒸すと、饅頭の表層に薄くて柔らかい被膜(薄皮)が形成され、この被膜は未乾燥状態では粘着性を有している。そのため、前記饅頭を包装フィルムで包装すると、被膜が包装フィルムに付着し、開封すると、包装フィルムと同時に被膜が饅頭本体から剥がれ、商品価値を損なう。
【0003】
また、おにぎり(又はおむすび)は、成形して所定形状の包装フィルムに充填したり包装フィルムで包装すると、フィルムに対する滑り性が悪く作業性を損なう。また、包装したおにぎりを開封すると、おにぎりの米粒が包装フィルムに付着し、商品価値を損なう。
【0004】
さらに、スライスチーズは、高温のチーズをフィルム上でシート状に成形し、冷却することにより調製されるが、冷却後、包装フィルムを剥離すると、包装フィルムと同時にチーズの表層が剥離し、商品価値を損なう。
【0005】
特開平10−128924号公報(特許文献1)には、基材フィルムとしての二軸延伸ポリエステルフィルムまたは二軸延伸ポリプロピレンフィルムの少なくとも片面に、アクリル樹脂100重量部に対してイソシアネート化合物10〜50重量部、イソシアネート化合物と反応する化合物50〜300重量部の割合で含む接着剤層を積層し、さらにその上に塩化ビニリデン樹脂100重量部に対してHLBが7以下のショ糖脂肪酸エステル2〜100重量部を含む塩化ビニリデン層を積層したチーズ包装フィルムが開示されている。この文献には、チーズがフィルムに残存することなく剥がれることが記載されている。
【0006】
特開平3−38339号公報(特許文献2)には、ポリエステル樹脂フィルムの片面に滑剤が塗着された包装材において、前記滑剤の水滴接触角が95度以上である高含水率食品用包装材と、前記滑剤が、脂肪酸アミドワックス及び/又はポリエチレンワックスからなるワックス分量を7重量%以上含有するポリアミド樹脂と硝化綿との混合揮発性塗膜である高含水率食品用包装材が開示されている。この文献には、含水率が高く軟質なチーズなどの高含水率食品(被包装物質)との離型性が高いことも記載されている。
【0007】
しかし、これらのフィルムは構造及び構成成分が複雑であるだけでなく、饅頭などを包装すると、表層の被膜が饅頭から剥離し、商品価値を低下させる。特に、これらのフィルムでは、脂肪酸エステルなどの離型剤成分が樹脂層からブリードアウトすることを利用しているため、雰囲気温度や時間の経過により離型剤のブリードアウトの程度が変動し、均一なブリードアウトが困難である。そのため、高い剥離性を確実に付与できない。また、ブリードアウトさせるために種々の離型材料を用いる必要があり、コスト的にも不利である。
【0008】
特開2001−48229号公報(特許文献3)には、熱収縮性の基材層とポリオレフィン系樹脂のシーラント層とを有する積層フィルムにより、前記シーラント層が最内側となるように製袋し、内部に粘稠物を充填した後、積層フィルムを熱収縮した包装体において、粘稠物の接するシーラント層の表面に、非イオン系界面活性剤の膜を形成した包装体が開示されている。この文献には、練り餡またはショートニングからなる粘稠物の充填収縮包装用積層フィルムにおいて、積層フィルムの粘稠物が接するシーラント層の表面に、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル及びプロピレングリコール脂肪酸エステルから選択された界面活性剤の膜が形成された積層フィルムも開示されている。さらに、シーラント層にポリオレフィン系樹脂当たり0.03〜5重量%の非イオン系界面活性剤を含有させ、界面活性剤が包装体の内面に移行して膜を形成することも記載されている。なお、この文献には、包装体の内面に予め界面活性剤を塗工して膜を形成することもでき、界面活性剤の塗工量は0.4g/m2以下で、JIS−K−6768濡れ指数値で70dyne/cm以上の純水が均一に濡れる表面状態を有していることも記載されている。さらには、粘稠物が袋の内面に付着しにくく、袋の開封時に粘稠物を容易に袋から剥離でき取り出し作業性に優れることも記載されている。
【0009】
しかし、このフィルムで、表層が剥離しやすい被包装体(饅頭など)を包装しても、シーラント層との親和性が高いためか、開封に伴って表層が剥離しやすい。特に、このフィルムでも界面活性剤のブリードアウトを利用しているため、界面活性剤のブリードアウトに時間を要するとともに、前記のように均一なブリードアウトが困難であり、高い剥離性を確実に付与できない。さらに、フィルムを熱収縮させるため、被包装体との密着性が高くなり、被包装体の表層が剥離しやすくなる。
【0010】
また、特開2003−11264号公報(特許文献4)には、二軸延伸合成樹脂フィルムの片面に、ショ糖脂肪酸エステル(A)およびラウリル硫酸ナトリウム(B)とからなりその重量比(A/B)が1〜10である被覆層を形成してなるフィルムであり、120℃で5分間熱処理した際の熱収縮率がMD方向で3〜8%、TD方向で3〜8%である蒲鉾包装フィルムが開示されている。この文献には、ヒートシール層が形成された二軸延伸ポリプロピレンフィルムや、合成樹脂フィルムの厚みが9μm以上40μm以下であることが記載されている。また、この文献には、前記被覆層は乾燥後の塗布量が20〜150mg/m2になるように塗布することが記載されている。具体的には、実施例1において、MD方向の熱収縮率が4.0%、TD方向の熱収縮率が6.0%である厚み25μmの両面熱接着性を有するポリプロピレン系共押出しフィルムに、ショ糖脂肪酸エステル2重量%、ラウリル硫酸ソーダ0.8重量%、酢酸エチル97.2重量%よりなる被覆組成物を乾燥後の重量が80mg/m2になるようにグラビアロールで塗布し熱風乾燥することにより、被覆層を形成0している。しかし、この文献のフィルムでも、フィルムの熱収縮により、被包装体との密着性が高くなり、高い剥離性を付与できず、また、被包装体の種類によっては、表層が剥離しやすくなる。さらに、この文献のフィルムでは、前記被覆層によりフィルムのヒートシール性が低下する虞がある。
【特許文献1】特開平10−128924号公報(特許請求の範囲、段落番号[0001])
【特許文献2】特開平3−38339号公報(特許請求の範囲、発明の効果の欄)
【特許文献3】特開2001−48229号公報(特許請求の範囲、段落番号[0023][0024]、発明の効果の欄)
【特許文献4】特開2003−11264号公報(特許請求の範囲、段落番号[0016][0023]、発明の効果の欄)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、被包装体に対する離型性(剥離性)に著しく優れ、容易に開封できる包装フィルムおよびその製造方法を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、被包装体に対する離型性とヒートシール性とを効率よく両立できる包装フィルムおよびその製造方法を提供することにある。
【0013】
本発明のさらに他の目的は、フィルムの外観および内容物の視認性に優れるとともに、ヒートシール可能な層のヒートシール性を高いレベルで維持できる包装フィルムおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、ヒートシール可能な層で構成されたフィルムにおいて、前記ヒートシール可能な層の表面(特に、非表面処理面)に少なくともショ糖脂肪酸エステルを含む多価アルコール脂肪酸エステルで構成され、かつラウリル硫酸ナトリウムを含まない被覆層を形成すると、基材フィルムから多価アルコール脂肪酸エステル又は被覆層が剥離して被包装体に転移し、被包装体が付着することなく、包装体を効率よく開封できること、また、基材フィルムの表面に被覆層を形成しても、ヒートシール性を損なうことがなく、被包装体に対する離型性とヒートシール性とを両立できることを見いだし、本発明を完成した。
【0015】
すなわち、本発明の包装フィルムは、ヒートシール可能な層で少なくとも構成された基材フィルムと、前記ヒートシール可能な層の表面に形成された被覆層(被膜層)とで構成されたフィルムであって、前記被覆層が、少なくともショ糖脂肪酸エステルを含む多価アルコール脂肪酸エステルで構成され、かつラウリル硫酸ナトリウムを含まない。前記ヒートシール可能な層は、例えば、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂)で構成されていてもよい。前記基材フィルムは、ヒートシール可能な層単独で構成された基材フィルムであってもよく、コア層とこのコア層の少なくとも一方の面に形成されたヒートシール可能な層とで構成された積層フィルムであってもよい。前記包装フィルムは、用途に応じて、高いガスバリア性を有するフィルムであってもよい。このような包装フィルムでは、例えば、基材フィルムが、ポリオレフィン系樹脂で構成され、かつ30g/m2・24時間以下の水蒸気透過率を有していてもよい。
【0016】
前記多価アルコール脂肪酸エステルは、ショ糖脂肪酸エステル単独で構成されていてもよい。また、前記被覆層において、多価アルコール脂肪酸エステル(特にショ糖脂肪酸エステル単独)の被覆量(塗布量)は、0.5〜200mg/m2(例えば、1〜80mg/m2)程度であってもよい。代表的な前記包装フィルムには、基材フィルムが、ポリプロピレン系樹脂又はポリエチレン系樹脂で構成されたヒートシール可能な層単独で構成された無延伸又は延伸フィルム(i)、コア層とこのコア層の少なくとも一方の面に形成され、ポリプロピレン系樹脂又はポリエチレン系樹脂で構成されたヒートシール可能な層とで構成された積層フィルム(ii)であり、かつ前記ヒートシール可能な層の表面に、被覆量1〜150mg/m2でショ糖脂肪酸エステル単独の被覆層が形成されているフィルムなどが含まれる。
【0017】
前記積層フィルム(ii)は、ポリプロピレン系樹脂で構成されたコア層と、このコア層の少なくとも一方の面に形成され、ポリプロピレン系樹脂又はポリエチレン系樹脂で構成されたヒートシール可能な層とで構成された二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルム(特に、共押出し二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルム)であってもよい。
【0018】
前記被覆層は、被覆層の被包装体に対する転移(又は転写)性を高めるため、ヒートシール可能な層の表面処理されていない表面に形成されていてもよい。
【0019】
本発明の包装フィルムにおいて、前記被覆層は、通常、表面処理されていなくてもよく、高い濡れ張力(例えば、38mN/m以上以上の濡れ張力)を有していてもよい。このような包装フィルムは、優れた滑り性を有しており、被包装体を包装(又は充填)する際の包装特性を効率よく向上できる。
【0020】
また、本発明の包装フィルムは、被覆層を形成してもヒートシール特性を高いレベルで維持でき、例えば、被覆層の形成前後において、所定のヒートシール強度に到達する温度の差は、20℃未満であってもよい。さらに、本発明の包装フィルムは、比較的少量の多価アルコール脂肪酸エステルで前記被覆層を形成できるため、高い透明性を有していてもよく、例えば、前記包装用フィルムの全光線透過率は、例えば、85%以上であってもよい。
【0021】
また、本発明の包装フィルムは、加熱処理しても高い離型性を保持でき、例えば、120℃で15分間熱処理したとき、縦方向の熱収縮率は、例えば、5%以下であってもよく、横方向の熱収縮率は3%未満であってもよく、縦方向の熱収縮率が横方向の熱収縮率以上であってもよい。
【0022】
本発明の包装フィルムは、種々の用途に適用でき、特に、食品の包装に用いるためのフィルム(食品包装用フィルム)であってもよい。このような本発明の包装フィルムでは、多価アルコール脂肪酸エステルの被覆層がヒートシール可能な層の表面に形成されているため、被包装体(例えば、粘稠物などの食品など)を被覆層と接触させて包装し、開封すると、樹脂と少量の多価アルコール脂肪酸エステルとを組み合わせた被覆層と異なり、被覆層の多価アルコール脂肪酸エステルが基材フィルムから剥離して被包装体に転移する。特に、ヒートシール可能な層の表面処理されていない面に前記被覆層を形成すると、被覆層が基材フィルムから効率よく剥離し、被包装体に転位する。そのため、本発明の包装フィルムは、被包装体に対する離型性に極めて優れており、例えば、剥がれやすい表層(又は薄皮)を有する被包装体であっても、被包装体から基材フィルムが円滑に剥離し、前記表層(又は薄皮)を剥離することがなく包装(および開封)できる。
【0023】
なお、前記包装フィルムは、通常、被覆層と被包装体とを接触させて包装することにより使用できる。すなわち、前記包装フィルムにおいて、通常、被包装体(例えば、食品)と接触する面に多価アルコール脂肪酸エステルで構成された被覆層が形成されていてもよい。前記食品の水分活性は、例えば、0.5以上であってもよい。本発明の包装フィルムでは、このような水分活性を有する食品を包装しても、高い離型性で開封できる。
【0024】
本発明には、前記包装フィルムを製造する方法、すなわち、ヒートシール可能な層で少なくとも構成された基材フィルムに被覆層を形成して包装フィルムを製造する方法であって、前記ヒートシール可能な層の表面に、少なくともショ糖脂肪酸エステルを含む多価アルコール脂肪酸エステルで構成され、かつラウリル硫酸ナトリウムを含まないコーティング剤を塗布し、被覆層を形成する方法も含む。この方法において、コーティング剤を塗布した後、エージング処理および表面処理することなく被覆層を形成してもよい。
【0025】
なお、本明細書において、「粘稠物」とは未乾燥状態(又は含水状態)で表面が粘性又は粘着性を有する被包装体を意味する。
【発明の効果】
【0026】
本発明では、ヒートシール可能な層で構成された基材フィルムにおいて、前記ヒートシール可能な層に多価アルコール脂肪酸エステルで構成され、かつラウリル硫酸ナトリウムを含まない被覆層が形成されているため、基材フィルムからの多価アルコール脂肪酸エステル又は被覆層の高い剥離を利用して、食品などの被包装体を円滑に開封できる。特に、本発明の包装フィルムでは、被包装体の表層(又は薄皮)を剥離することなく開封できる。さらに、本発明では、少量の多価アルコール脂肪酸エステルで被覆層を形成できるので、基材フィルムのヒートシール性を損なうことがなく、被包装体に対する離型性とヒートシール性とを高いレベルで両立できる。また、本発明のフィルムでは、ラウリル硫酸ナトリウムを含まず、しかも、比較的少量の多価アルコール脂肪酸エステルで被覆層を形成するので、フィルムの外観および内容物(被包装体)の視認性に優れるとともに、印刷適性などに悪影響を及ぼすことがなく、特に、ヒートシール層のヒートシール性を低下させることなく高いレベルで維持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の包装フィルム(以下、単にフィルムということがある)は、ヒートシール可能な層で少なくとも構成された基材フィルムと、前記ヒートシール可能な層の表面に形成された被覆層とで構成されたフィルムであって、前記被覆層が、少なくともショ糖脂肪酸エステルを含む多価アルコール脂肪酸エステルで構成されており、この被覆層は、ラウリル硫酸ナトリウムを含まない。なお、本発明のフィルムは、ヒートシール可能な層(ヒートシール性)を有しているが、必ずしも、ヒートシール用途に用いるフィルムでなくてもよい。
【0028】
[基材フィルム]
基材フィルムは、ヒートシール可能な層(以下、ヒートシール層ということがある)で少なくとも構成されている。基材フィルムは、(i)ヒートシール層単独(例えば、無延伸ポリプロピレンフィルムなど)で構成してもよく、(ii)コア層と、このコア層の少なくとも一方の面に形成されたヒートシール層とで構成された積層フィルムであってもよい。
【0029】
(コア層)
コア層を構成する樹脂としては、特に限定されず、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂などの縮合系熱可塑性樹脂;オレフィン系樹脂、ビニル系樹脂(ハロゲン含有樹脂、ビニルエステル系樹脂、ビニルアルコール系樹脂など)などのビニル重合系熱可塑性樹脂などの熱可塑性樹脂で構成できる。これらの樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの樹脂のうち、腰及び/又は引張り強度とを付与する観点から、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、オレフィン系樹脂、ビニルアルコール系樹脂(例えば、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体など)などが好ましく、特にオレフィン系樹脂(ポリプロピレン系樹脂など)が好ましい。
【0030】
ポリエステル系樹脂としては、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸とアルキレングリコールとを用いた芳香族ポリエステル系樹脂が挙げられる。芳香族ポリエステル系樹脂には、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリアルキレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートなどのポリアルキレンナフタレートなどのホモポリエステル、アルキレンアリレート単位を主成分(例えば、50モル%以上、例えば、75〜98モル%、さらに好ましくは80〜95モル%)として含むコポリエステルなどが含まれる。
【0031】
オレフィン系樹脂としては、例えば、C2-6オレフィンの単独又は共重合体(ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体などのポリエチレン系樹脂;ポリプロピレン系樹脂など)、C2-6オレフィンと共重合性単量体との共重合体[エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体など]などが挙げられる。これらのオレフィン系樹脂のうち、耐熱性の観点からポリプロピレン系樹脂が好ましい。
【0032】
ポリプロピレン系樹脂は、ポリプロピレンホモポリマー(ポリプロピレン);プロピレンと共重合性C2-6オレフィンとの共重合体、例えば、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体であってもよく、共重合性オレフィンの割合は、2〜25モル%程度であってもよい。さらに、ポリプロピレン系樹脂は、結晶性(又は結晶質)ポリプロピレン系樹脂であってもよく、非結晶性(又は非結晶質)ポリプロピレン系樹脂であってもよい。
【0033】
コア層において、好ましいポリプロピレン系樹脂としては、結晶性ポリプロピレン系樹脂(例えば、結晶性ポリプロピレン)が挙げられ、特に、ポリプロピレン又はポリプロピレンホモポリマー(結晶性ポリプロピレン)が好ましい。
【0034】
コア層(例えば、ポリプロピレン系樹脂で構成されたコア層)は、石油樹脂、テルペン樹脂などの樹脂を含んでいてもよい。石油樹脂又はテルペン樹脂により、基材フィルム(積層フィルム)の水蒸気に対するバリア性を向上できる。石油樹脂又はテルペン樹脂は、極性基を含まない樹脂であるのが好ましい。石油樹脂としては、シクロペンタジエン系や高級オレフィン系炭化水素を主原料とする樹脂(例えば、ジシクロペンタジエン樹脂など)、又はこれらの水添樹脂(例えば、水添率80%以上の樹脂)が例示できる。このような石油樹脂としては、例えば、荒川化学(株)製の商品名「アルコンP−120」、トーネックス社製の商品名「エスコレッツE5320HC」が挙げられる。石油樹脂の軟化点は、125℃以上、ガラス転移温度は、60℃以上(65〜85℃程度)である。
【0035】
テルペン樹脂としては、ピネン、カレン、ミルセン、オシメン、リモネン、テルピノレン、テルピネン、サビネン、トリシクレン、ピサボレン、ジンギペレン、サンタレン、カンホレン、ミレン、トタレンなどのテルペン類を原料とした樹脂又はこの水添樹脂(水添率80%以上の樹脂など)が例示できる。
【0036】
また、コア層には、必要に応じて、種々の添加剤、例えば、可塑剤又は軟化剤、滑剤、安定剤(熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤など)、着色剤、分散剤、難燃剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤(ブロッキング防止剤)、結晶核成長剤、炭化水素系重合体(スチレン系樹脂、クマロンインデン樹脂などのクマロン樹脂、フェノール樹脂、ロジンとその誘導体やそれらの水添樹脂など)、充填剤などを含んでいてもよい。これらの添加剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0037】
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤などが挙げられ、フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)、テトラキス〔メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン(例えば、日本チバガイギー社、イルガノックス1010)などが例示できる。
【0038】
なお、コア層は、透明性やラミネート強度の点から、ブロッキング防止剤及び/又は帯電防止剤を含有しないのが好ましい。
【0039】
コア層は単層又は複数層で形成してもよい。
【0040】
コア層は、未延伸フィルムであってもよく、延伸(又は延伸処理、通常、一軸又は二軸延伸)された延伸フィルム(例えば、二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルム)であってもよい。延伸フィルムは、慣用のフィルム製造方法、例えば、混合又は混練された樹脂又はその組成物(コア層を構成する樹脂又はその組成物)を、1軸又は2軸押出機に供給し、溶融混練してダイ[フラット状、T状(Tダイ)、円筒状(サーキュラダイ)など]から押出して成形し、得られた未延伸フィルムを、慣用の方法で一軸又は二軸延伸することにより調製できる。二軸延伸は、同時二軸延伸であってもよく、逐次二軸延伸であってもよい。二軸延伸フィルム[特に、二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムなどの二軸延伸ポリオレフィン系樹脂フィルム]において、フィルム引取方向(MD方向)の延伸倍率は、例えば、2〜10倍、好ましくは3〜9倍、さらに好ましくは4〜8倍程度であってもよい。また、フィルム幅方向(TD方向)の延伸倍率は、例えば、5〜15倍、好ましくは6〜13倍、さらに好ましくは7〜10倍程度である。また、延伸後、必要に応じて、応力を緩和させるためにヒートセットを行ってもよい。ヒートセット温度は、樹脂の種類などに応じて適宜選択でき、例えば、80〜250℃、好ましくは90〜240℃、さらに好ましくは100〜230℃程度であってもよい。
【0041】
また、コア層の表面(片面又は両面)のうち、少なくとも一方の面(片面又は両面)が表面処理(例えば、コロナ放電処理など)されていてもよい。
【0042】
コア層(単層又は複数層のコア層)の厚みは、5〜500μm、好ましくは10〜250μm、さらに好ましくは15〜100μm程度であってもよい。
【0043】
(ヒートシール層)
前記基材フィルムは、少なくとも前記ヒートシール層で構成されている。ヒートシール層を構成する樹脂(シーラント、ヒートシール剤)としては、ヒートシール可能であれば限定されず、例えば、オレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂(塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体など)、塩化ビニリデン系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂(ポリ酢酸ビニルなど)、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、熱可塑性ウレタン系樹脂、ゴム状重合体(スチレン−ブタジエン共重合体など)などであってもよい。なお、ヒートシール層を構成する樹脂は、水性樹脂(水性ヒートシール剤)であってもよい。ヒートシール層を構成する樹脂(ヒートシール剤)は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0044】
オレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂などが挙げられる。ポリエチレン系樹脂としては、例えば、エチレン単独重合体(直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンなどのポリエチレン)、エチレンとオレフィンとの共重合体[例えば、エチレンとα−オレフィン(プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチルペンテン、4−メチルペンテンなどのα−C2-6オレフィンなど)との共重合体(例えば、エチレン−プロピレン共重合体など)];エチレンと(メタ)アクリル系単量体との共重合体[例えば、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸エチル共重合体などのエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体など];エチレン−酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。ポリエチレン系樹脂は、単独で又は2種以上組みあわせてもよい。
【0045】
ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体(ポリプロピレン)、プロピレン系ランダム樹脂が挙げられる。プロピレン系ランダム樹脂には、例えば、プロピレン系共重合体(プロピレン系ランダム共重合体)、プロピレン系共重合体とプロピレン単独重合体との混合物(ブレンド物)などが含まれる。プロピレン共重合体としては、例えば、プロピレンと、アルケン類(エチレン、1−ブテン、2−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチルペンテン、4−メチルペンテンなどのα−C2-6オレフィンなど)とのランダム共重合体、例えば、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−プロピレン−ブチレンランダム三元共重合体などが挙げられる。これらのランダム共重合体のうち、特にエチレンとプロピレンのランダムコポリマーが好ましい。なお、エチレン及び/又はブテンをプロピレン系ランダム樹脂全体の16重量%以下(特に16〜1重量%)含んでいてもよい。また、0.5重量%以下のエチレン含量を有するポリプロピレンは、プロピレン単独重合体ということができる。ポリプロピレン系樹脂は、単独で又は2種以上組みあわせてもよい。
【0046】
なお、ヒートシール層を構成するポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は、特に制限されないが、3g/10分以上、好ましくは3〜20g/10分、さらに好ましくは3〜16g/10分であってもよい。
【0047】
ヒートシール層は、ポリオレフィン系樹脂で構成するのが好ましく、特にポリエチレン系樹脂(例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンなどのポリエチレン樹脂)又はポリプロピレン系樹脂(例えば、非結晶性ポリプロピレンなどのポリプロピレン系樹脂など)で構成してもよい。
【0048】
ヒートシール層(又はヒートシール層を構成する樹脂)の融点(又はガラス転移点)は、例えば、50〜180℃、好ましくは60〜150℃、さらに好ましくは70〜140℃程度であってもよい。また、後述するように、コア層の両面にヒートシール層を形成する場合、一方のヒートシール層の融点を、他方のヒートシール層の融点より高くしてもよく、その融点差は、例えば、3〜50℃、好ましくは5〜30℃、さらに好ましくは8〜20℃程度であってもよい。
【0049】
また、ヒートシール層(又は基材フィルム又は包装フィルム)のヒートシール温度(又はヒートシール可能な温度又はヒートシールする温度)は、ヒートシール層を構成する樹脂の種類、あるいはヒートシール条件にもよるが、例えば、80〜250℃、好ましくは100〜220℃、さらに好ましくは120〜200℃程度であってもよい。
【0050】
なお、ヒートシール層は、単層構造であってもよく、積層構造を有していてもよい。また、ヒートシール層は、未延伸(無延伸)又は延伸処理されていてもよい。ヒートシール層(単層又は複数層のヒートシール層)単独で基材フィルムを構成する場合、通常、ヒートシール層(又は基材フィルム)は無延伸フィルムである場合が多い。
【0051】
ヒートシール層は、必要に応じて、接着剤又は接着性成分(例えば、アクリル系接着剤、ポリアミド系接着剤など)などを含んでいてもよい。
【0052】
また、ヒートシール層は、必要に応じて、添加剤(例えば、前記コア層の項で例示の添加剤など)を含んでいてもよい。これらの添加剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0053】
特に、ヒートシール層には、ブロッキング防止剤(アンチブロッキング剤)を添加してもよい。ブロッキング防止剤としては、フィルム成形時の温度より高い融点又は軟化点を有する成分、例えば、シリカ、アルミナ、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウムなどの無機系微粉末、エンジニアリングプラスチックなどの高耐熱性熱可塑性樹脂、架橋樹脂(架橋アクリル系樹脂、架橋メラミン系樹脂など)、熱硬化性樹脂などが例示できる。好ましいブロッキング防止剤には、無機微粉末(シリカなど)、架橋樹脂(架橋ポリメタクリル酸メチル(PMMA)など)などが挙げられる。なお、コア層の両面にヒートシール層を形成する場合、コア層の一方の面のヒートシール層(h1)には架橋樹脂(架橋PMMAなど)、他方のヒートシール層(h2)には無機微粉末(シリカなど)などを添加してもよい。
【0054】
ブロッキング防止剤は、不定形でもよいが、真球状であるのが好ましい。ブロッキング防止剤の平均粒子径は、ヒートシール層の厚みに応じて選択でき、0.1〜7.5μm、好ましくは0.5〜5μm、さらに好ましくは1〜4μm程度である。
【0055】
ブロッキング防止剤の含有量は、特に制限されるものではないが、透明性を維持する観点から、例えば、重量基準で、30000ppm以下(例えば、10〜20000ppm)、好ましくは15000ppm以下(例えば、10〜10000ppm)であり、20〜5000ppm(例えば、30〜2000ppm)程度であってもよい。
【0056】
前記のように基材フィルムは、通常、コア層とこのコア層の少なくとも一方の面に形成されたヒートシール層(スキン層)とで構成された少なくとも二層構造の積層フィルムであってもよい。
【0057】
好ましい基材フィルムには、ポリオレフィン系樹脂で構成された基材フィルム(ポリオレフィン系樹脂フィルム)、特に少なくともヒートシール層がポリオレフィン系樹脂(例えば、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂などの前記ポリエチレン系樹脂、前記ポリプロピレン系樹脂)で構成された基材フィルム(ポリオレフィン系樹脂フィルム)が挙げられる。
【0058】
少なくともヒートシール層がポリオレフィン系樹脂で構成された基材フィルムとしては、ヒートシール層が、ポリオレフィン系樹脂(特に、ポリエチレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂)で構成された無延伸又は延伸フィルム、例えば、(i)ポリオレフィン系樹脂で構成されたヒートシール層単独で構成された無延伸又は延伸フィルム[例えば、無延伸ポリエチレン系樹脂フィルム(無延伸ポリエチレンフィルムなど)、無延伸ポリプロピレン系樹脂フィルム(無延伸ポリプロピレンフィルムなど)などの無延伸オレフィン系樹脂フィルム)]、(ii)コア層(例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、オレフィン系樹脂などで構成されたコア層又はフィルムなど)と、このコア層の少なくとも一方の面に形成され、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂など)で構成されたヒートシール層とで構成された積層フィルム(ポリオレフィン系積層フィルム)などが含まれる。
【0059】
少なくともヒートシール層がポリオレフィン系樹脂で構成された代表的な基材フィルムには、ポリプロピレン系樹脂フィルムが含まれる。このようなポリプロピレン系樹脂フィルムとしては、無延伸又は延伸ポリプロピレン系樹脂フィルム(無延伸又は延伸ポリプロピレンフィルムなど)、ポリプロピレン系積層フィルムなどが挙げられる。
【0060】
ポリプロピレン系積層フィルムとしては、例えば、ポリプロピレン系樹脂[特に、結晶性ポリプロピレンなどの結晶性ポリプロピレン系樹脂(および必要に応じて石油樹脂及びテルペン樹脂から選択された少なくとも1種の樹脂)]で構成されたコア層と、コア層の少なくとも一方の面に形成され、かつポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレンなどの前記ポリエチレン系樹脂、前記プロピレン系共重合体などのポリプロピレン系樹脂など)で構成されたヒートシール層とで構成された少なくとも二層構造の積層フィルムなどが挙げられる。
【0061】
このようなポリプロピレン系積層フィルムにおいて、ポリオレフィン系樹脂で構成されたヒートシール層は、コア層の少なくとも一方の面に形成すればよい。例えば、コア層の一方の面(コロナ放電処理などの表面処理してもよい面)に、ポリオレフィン系樹脂(例えば、プロピレン系共重合体など)で構成されたヒートシール層(h1)を形成し、他方の面にポリオレフィン系樹脂(例えば、プロピレン単独重合体など)で形成されたヒートシール層(h2)を形成してもよい。ヒートシール層(h1)およびヒートシール層(h2)は、同一の樹脂で構成されていてもよく、異なる樹脂で構成されていてもよい。例えば、一方のヒートシール層[例えば、ヒートシール層(h1)]を構成する樹脂の融点(又はガラス転移点)を、他方のヒートシール層[例えば、ヒートシール層(h2)]を構成する樹脂の融点(又はガラス転移点)よりも高くしてもよい。
【0062】
基材フィルムの厚みは、例えば、6〜520μm(例えば、10〜500μm)、好ましくは10〜300μm、さらに好ましくは15〜150μm(例えば、15〜100μm)、特に15〜60μm(例えば、15〜30μm)程度であってもよい。
【0063】
コア層とヒートシール層とで構成された基材フィルムにおいて、ヒートシール層(単層又は積層構造のヒートシール層)の厚みは、例えば、0.1〜20μm、好ましくは0.2〜10μm、さらに好ましくは0.3〜5μm、特に0.5〜3μm程度であってもよい。また、基材フィルムにおいて、コア層とヒートシール層[又はヒートシール層全体(例えば、コア層の両面に形成されたヒートシール層の合計厚み)]との厚みの比は、例えば、前者/後者=2/1〜50/1、好ましくは4/1〜40/1、さらに好ましくは3/1〜20/1程度であってもよい。
【0064】
前記積層フィルムにおいて、コア層とヒートシール層との積層方法(ラミネート方法)としては、特に限定されず、接着剤層を介して又は介することなくラミネートする慣用の方法、例えば、ドライラミネート法、ウェットラミネート法、押出しラミネート法、ホットメルトラミネート法、共押出しラミネート法などが利用できる。
【0065】
好ましい積層フィルム(基材フィルム)には、押出しラミネート法又は共押出しラミネート法により成形されたフィルム、特に、コア層を構成する樹脂(又はその組成物)と、ヒートシール層を構成する樹脂(又はその組成物)とを共押出しすることにより得られる共押出しフィルム(共押出しラミネートフィルム)が挙げられる。
【0066】
基材フィルム(又は積層フィルム)は、未延伸フィルムであってもよく、延伸(又は延伸処理、通常、一軸又は二軸延伸)された延伸フィルム(例えば、二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルム)であってもよい。特に、本発明では、積層フィルムとして、少なくともコア層(例えば、ポリプロピレン系樹脂で構成されたコア層)が延伸処理された延伸フィルム(特に二軸延伸フィルム)を好適に利用できる。代表的な二軸延伸フィルムとしては、二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルム(ポリプロピレン系樹脂で構成されたコア層と、このコア層の少なくとも一方の面に形成されたヒートシール層とで構成された二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルム)、例えば、(1)ニ軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムの片面又は両面にヒートシール層(ポリオレフィン系樹脂で構成されたヒートシール層など)を積層(ラミネート)した積層フィルム、(2)コア層を構成するポリプロピレン系樹脂と、コア層の一方の面のヒートシール層を構成する成分(ポリオレフィン系樹脂など)と、コア層の他方を面のヒートシール層を構成する成分との共押出しラミネートフィルムをニ軸延伸して得られる共押出し二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムなどを好適に利用できる。積層フィルム(例えば、前記共押出しラミネートフィルム)を延伸する方法としては、前記コア層の項で例示の延伸方法と同様の方法を利用できる。
【0067】
なお、基材フィルムは、必要に応じて、さらにガスバリア層(酸素ガスバリア、水蒸気ガスバリア層など)、帯電防止層、滑性層、防曇層、印刷層、蒸着層(金属酸化物蒸着層など)などの他の層で構成してもよい。このような他の層は、基材フィルムにおいて、被覆層を形成するヒートシール層の内側に形成すればよく、例えば、コア層とヒートシール層(被覆層を形成するヒートシール層)との間、コア層のヒートシール層が形成されていない他方の面などに形成してもよい。このような他の層は、所望によりアンカー層を用いることなく又はアンカー層を介して形成してもよい。ガスバリア層は、ポリビニルアルコール系樹脂(ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体など)を含む塗布層、例えば、前記ポリビニルアルコール系樹脂と無機層状化合物(モンモリロナイトなど)とを含む塗布層で形成してもよい。他の層の厚みは、例えば、0.1〜5μm、好ましくは0.5〜3μm、さらに好ましくは1〜3μm程度であってもよい。また、基材フィルムは、熱収縮性であってもよく、非熱収縮性であってもよい。さらに、基材フィルムには、易カット処理が施されていてもよい。本発明では、このような表面特性や基材特性を有する基材フィルムを何ら支障なく使用できる。
【0068】
特に、ガスバリア性が付与された基材フィルムは、内容物を酸素や湿気などによる腐敗・劣化などから保護するために有効であり、本発明での剥離性能と組み合わせることにより、機能性をさらに高めることができる。また、最近では、ユニバーサルデザインという観点から、易カットフィルムとの組合せにより、機能を向上できるという利点を有する。なお、基材フィルムは、二軸延伸ポリプロピレン系フィルム(OPPフィルム)を用いる場合が多いものの、OPPフィルムに限定されるものではない。なお、OPPフィルムでは、通常、帯電防止性や防曇性として機能が付与されている場合が多く、これらの機能を有するフィルムと組み合わせても、前記機能・特性を特に損なうことなく、さらに易剥離性などの機能を向上できる。
【0069】
基材フィルムの表面(片面又は両面、少なくとも片面はヒートシール層の表面)は、表面処理されていてもよく、表面処理されていなくてもよい。基材フィルム(ポリプロピレン系積層フィルムなど)は、表面処理された一方の面と、表面処理されていない他方の面とを有する場合が多い。例えば、前記ポリプロピレン系積層フィルムにおいて、一方の面に形成されたヒートシール層[例えば、前記ヒートシール層(h1)]には、通常、表面処理が施されてもよく、他方の面に形成されたヒートシール層[例えば、前記ヒートシール層(h2)]には、表面処理が施されていない場合が多い。特に、後述するように、少なくとも被覆層を形成するヒートシール層の表面(基材フィルムの表面)は、表面処理されていないのが好ましい。
【0070】
表面処理としては、慣用の表面処理、例えば、コロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理、オゾンや紫外線照射処理などが利用でき、コロナ放電処理が好ましい。
【0071】
表面処理により表面張力が36mN/m以上(例えば、37〜55mN/m)、好ましくは38〜50mN/m程度となるのが望ましい。表面処理は、フィルムの延伸処理に先立って行ってもよいが、延伸後に行う場合が多い。
【0072】
また、表面処理されていない基材フィルムの表面(例えば、被覆層を形成するヒートシール層の表面)の表面張力は、例えば、40mN/m以下(例えば、20〜38mN/m)、好ましくは20〜36mN/m、さらに好ましくは25〜33mN/m程度であってもよい。
【0073】
基材フィルム(又は包装フィルム)は、高いガスバリア性(水蒸気バリア性、酸素バリア性など)を有しているのが好ましい。例えば、前記基材フィルム(又は包装フィルム)の水蒸気透過度(又は透過率)は、コア層の種類などに応じて、例えば、温度40℃、湿度90%RH雰囲気下において(単位g/m2・24時間)、例えば、30以下(例えば、0.1〜25程度)、好ましくは20以下(例えば、0.5〜15程度)、さらに好ましくは10以下(例えば、1〜8程度)である。なお、ガスバリア性は、構成によってはフィルムの厚みが影響する場合があり、上記水蒸気透過度は、通常、厚み15〜30μm程度の基材フィルムにおける透過度であってもよい。
【0074】
[被覆層]
前記ヒートシール層の表面(ヒートシールされる面、ヒートシール面)には、多価アルコール脂肪酸エステルで構成された被覆層が形成されている。なお、コア層の両面にヒートシール層を形成する場合、いずれか一方のヒートシール層の表面に前記被覆層を形成してもよく、両方のヒートシール層の表面に前記被覆層を形成してもよいが、通常、いずれか一方のヒートシール層の表面に被覆層を形成する場合が多い。また、ヒートシール層単独で基材フィルムを構成する場合、ヒートシール層の少なくとも一方の面に被覆層を形成すればよく、通常、ヒートシール層の片面に被覆層を形成してもよい。
【0075】
ショ糖脂肪酸エステルにおいて、脂肪酸としては、例えば、飽和脂肪酸(例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸などのC4-30飽和脂肪酸、好ましくはC8-24飽和脂肪酸、さらに好ましくはC10-22飽和脂肪酸)、不飽和脂肪酸(例えば、パルミトオレイン酸、オレイン酸、エルカ酸などのC10-30不飽和脂肪酸、好ましくはC12-24不飽和脂肪酸、さらに好ましくはC10-22不飽和脂肪酸)などが挙げられる。多価アルコール脂肪酸エステルは、単独の脂肪酸のエステルであってもよく、混酸エステル(又は混合脂肪酸エステル、例えば、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸との混合脂肪酸エステル)であってもよい。これらのうち、好ましい脂肪酸には、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、およびエルカ酸から選択された少なくとも1種の脂肪酸などが含まれる。
【0076】
代表的なショ糖脂肪酸エステルとしては、例えば、ショ糖飽和脂肪酸エステル[例えば、ショ糖モノ乃至オクタカプリル酸エステル、ショ糖モノ乃至オクタラウリン酸エステル、ショ糖モノ乃至オクタパルミチン酸エステル、ショ糖モノ乃至オクタステアリン酸エステル、ショ糖モノ乃至オクタベヘン酸エステルなどのショ糖とC8-24飽和脂肪酸(特にC10-22飽和脂肪酸)とのモノ乃至オクタエステル類]、ショ糖不飽和脂肪酸エステル[例えば、ショ糖モノ乃至オクタオレイン酸エステルなどのショ糖とC12-24不飽和脂肪酸(特にC16-22不飽和脂肪酸)とのモノ乃至オクタエステル類)など]などが例示できる。
【0077】
特に、ショ糖脂肪酸エステルは、ショ糖モノステアリン酸エステル、ショ糖ジステアリン酸エステル、ショ糖トリステアリン酸エステル、ショ糖テトラステアリン酸エステル、ショ糖ヘキサステアリン酸エステルなどのショ糖モノ乃至ヘキサC10-22飽和脂肪酸エステルであってもよい。ショ糖脂肪酸エステルは、単独で又は2種以上組みあわせてもよい。
【0078】
多価アルコール脂肪酸エステルは、少なくともショ糖脂肪酸エステルを含んでいればよく、他の多価アルコール脂肪酸エステル(ショ糖脂肪酸エステル以外の多価アルコール脂肪酸エステル)を含んでいてもよい。他の多価アルコール脂肪酸エステルとしては、例えば、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどが含まれる。これらの多価アルコール脂肪酸エステルにおいて、脂肪酸エステルとしては、前記と同様の脂肪酸が挙げられる。これらの他の多価アルコール脂肪酸エステルは単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの脂肪酸エステルは、ショ糖脂肪酸エステルと同様に、食品添加物であり、被包装体に転移したとしても安全性が高い。
【0079】
プロピレングリコール脂肪酸エステルとしては、例えば、プロピレングリコールモノステアリン酸エステルなどのプロピレングリコールC8-24飽和脂肪酸エステルなどが含まれる。
【0080】
グリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、グリセリンモノラウリン酸エステル、グリセリンモノステアリン酸エステル、グリセリンジステアリン酸エステル、グリセリントリステアリン酸エステルなどのグリセリンC8-24飽和脂肪酸エステル、グリセリンモノオレイン酸エステルなどのグリセリンC12-24不飽和脂肪酸エステル、ジグリセリンモノ乃至テトララウリン酸エステル、ジグリセリンモノ乃至テトラステアリン酸エステル、トリグリセリンモノ乃至ヘキサステアリン酸エステルなどのポリグリセリンC8-24飽和脂肪酸エステル又はC12-24不飽和脂肪酸エステルなどが例示できる。
【0081】
ソルビタン脂肪酸エステルとしては、例えば、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンテトラステアレートなどのC8-24飽和脂肪酸エステル、ソルビタンモノオレート、ソルビタンセスキオレート、ソルビタントリオレート、ソルビタンテトラオレートなどのC12-24不飽和脂肪酸エステルなどが例示できる。
【0082】
なお、これらの多価アルコール脂肪酸エステル(ショ糖脂肪酸エステル、他の多価アルコール脂肪酸エステル)は、エチレンオキサイドが付加した(ポリ)オキシエチレン脂肪酸エステルであってもよい。エチレンオキサイドの付加モル数は、例えば、1〜5モル程度であってもよい。
【0083】
多価アルコール脂肪酸エステルは、特に、ショ糖脂肪酸エステル単独で構成するのが好ましい。なお、他の多価アルコール脂肪酸エステルを使用する場合、ショ糖脂肪酸エステルと他の多価アルコール脂肪酸エステルとの割合(重量比)は、前者/後者=99/1〜10/90、好ましくは95/5〜30/70、さらに好ましくは90/10〜50/50程度であってもよい。
【0084】
多価アルコール脂肪酸エステルは、通常、室温(15〜25℃)において、固体である場合が多い。なお、単一の脂肪酸エステルが室温で液体であっても、他の脂肪酸エステルと組み合わせることにより室温で固体の脂肪酸エステルとして使用できる。また、前記多価アルコール脂肪酸エステルのHLB値は、20以下(例えば、1〜18)程度の範囲から選択でき、例えば、15以下(例えば、1.5〜12)、好ましくは2〜10、さらに好ましくは3〜9(例えば、4〜8)程度であってもよい。特に、前記多価アルコール脂肪酸エステルのHLB値は、3以上(例えば、3〜18程度)、好ましくは3〜12、さらに好ましくは4〜10、特に5〜9程度であってもよい。
【0085】
被覆層は、前記多価アルコール脂肪酸エステルを主成分としており、前記多価アルコール脂肪酸エステルと他の成膜成分と組み合わせて構成してもよい。成膜成分としては、安全性の高い成分(生理的に許容可能な成分)、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、ポリエチレングリコール、セルロース誘導体(例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのセルロースエーテル類)などが例示できる。多価アルコール脂肪酸エステルと成膜成分との割合(重量比)は、前者/後者=60/40〜100/0程度の範囲から選択でき、通常、70/30〜100/0(例えば、70/30〜99/1)、好ましくは80/20〜100/0(例えば、80/20〜98/2)、さらに好ましくは90/10〜100/0(例えば、90/10〜97/3)程度である。被覆層は、多価アルコール脂肪酸エステル単独で構成する場合が多い。被覆層の主成分が多価アルコール脂肪酸エステルであるため、離型剤成分のブリードアウトを利用する従来のフィルムと異なり、本発明では確実かつ安定した離型性を付与できる。特に、多価アルコール脂肪酸エステル単独や多価アルコール脂肪酸エステルの濃度が高濃度(例えば、70重量%以上)の場合には、被包装体(例えば、食品など)に対して高い離型性を確実に付与できる。なお、被覆層の離型性(又は剥離性)は、被包装体に対する被覆層の構成成分の転移(又は転写)及び/又は凝集破壊により発現するものと考えられる。本発明では、被覆層の主成分(特に全成分)が、多価アルコール脂肪酸エステルで構成されており、通常、少なくとも被包装体に対する前記構成成分の転移又は転写により高い剥離性が得られる。
【0086】
被覆層、特に多価アルコール脂肪酸エステル(特にショ糖脂肪酸エステル単独)の被覆量(塗布量)は、被包装体の種類などに応じて、固形分換算で、0.1〜800mg/m2(例えば、0.2〜700mg/m2程度)の範囲から選択でき、例えば、0.3〜500mg/m2(例えば、0.5〜400mg/m2)、好ましくは1〜200mg/m2(例えば、1.5〜150mg/m2)、さらに好ましくは2〜120mg/m2、特に2〜70mg/m2程度の範囲から選択できる。多価アルコール脂肪酸エステルの塗布量が少なすぎると、被包装体に対する離型性を高めることが困難であり、塗布量が多すぎると、ヒートシール層のヒートシール性が損われたり、フィルムが白化して内容物の視認性が損なわれる虞がある。
【0087】
特に、多価アルコール脂肪酸エステル(特にショ糖脂肪酸エステル単独)の被覆量は、固形分換算で、0.3〜300mg/m2(例えば、0.5〜200mg/m2)、好ましくは0.8〜180mg/m2(例えば、1〜150mg/m2)、さらに好ましくは1〜130mg/m2(例えば、1.5〜120mg/m2)、特に2〜80mg/m2(例えば、3〜60mg/m2)程度であってもよく、通常、2.5〜150mg/m2程度であってもよい。このような塗布量では、多価アルコール脂肪酸エステルの使用量を大きく低減できるとともに、内容物の視認性を損なうことがないだけでなく、ヒートシール性を維持しつつ、被包装体に対する高い剥離性をフィルムに付与できる。
【0088】
なお、ラウリル硫酸ナトリウムは、発泡剤などとして使用される材料であり、塗布液の調製において用いると、ゲルやブツなどの異物を生成し、フィルムの外観に悪影響を与えるため好ましくない。また、ラウリル硫酸ナトリウムの使用は、塗布液に気泡を生じさせ、作業性や塗布性を低下させる。さらに、ラウリル硫酸ナトリウムを使用しても、フィルムの離型性になんらよい影響を与えないだけでなく、成分が増えることにより作業を煩雑化し、しかも塗布液の調製に用いる溶媒(又は溶剤)の選定の幅が狭まる。そのため、本発明のフィルムでは、被覆層にラウリル硫酸ナトリウムを含まない。また、被覆層は、慣用の発泡剤(ラウリル硫酸ナトリウム以外の発泡剤)を通常含まない場合が多い。
【0089】
前記被覆層は、ヒートシール層の表面処理された表面(ヒートシールされる面、ヒートシール面)に形成してもよく、ヒートシール層の表面処理されていない表面に形成してもよい。好ましい態様では、被包装体への前記多価アルコール脂肪酸エステルの転移(転写)又は剥離(特に、被覆層の転移)性を高めるため、ヒートシール層の表面処理されていない表面(例えば、前記積層フィルムの他方の面に形成され、ヒートシール層(h2)の表面処理されていない表面)に被覆層が形成されていてもよい。
【0090】
なお、被覆層(又は被覆層の表面)は、表面処理(前記例示の表面処理など)されていてもよく、表面処理されていなくてもよい。特に、表面処理することなく被覆層を形成すると、被覆層表面の濡れ張力を効率よく高めることができ、包装フィルムの滑り性を向上できる。
【0091】
[包装フィルムおよびその製造方法]
本発明の包装フィルムは、被包装体に対する離型性(又は剥離性)に著しく優れ、容易に開封可能である。例えば、本発明の包装フィルムにおいて、前記被覆層(被覆層を形成した表面)の濡れ張力は、例えば、30〜50mN/m、好ましくは35〜48mN/m、さらに好ましくは36〜45mN/m(例えば、38〜43mN/m)程度であってもよい。特に、前記表面処理されていない被覆層を有する包装フィルムにおいて、前記被膜層(表面処理されていない被覆層)の濡れ張力は、例えば、35mN/m以上(例えば、37〜50mN/m)、好ましくは38mN/m以上(例えば、38〜48mN/m)、さらに好ましくは39mN/m以上(例えば、39〜46mN/m)程度であってもよい。このような濡れ張力を有する包装フィルムは、滑り性に優れ、被包装体を包装(充填)する際の包装効率(又は充填効率又は充填適性)を向上できる。
【0092】
また、本発明では、離型性が著しく高いにも拘わらず、ヒートシール性(ヒートシール特性)を損ねることがなく、被包装体に対する離型性とヒートシール性とを効率よく両立できる。例えば、本発明の包装フィルムにおいて、被覆層同士(又は被覆層を形成したヒートシール層同士)の150℃におけるヒートシール強度(すなわち、被覆層同士を150℃においてヒートシールしたときのヒートシール強度)は、基材フィルムの種類(例えば、二軸延伸ポリプロピレンフィルム)にもよるが、例えば、50g/15mm(又は15mm幅)以上(例えば、50〜800g/15mm)の範囲から選択でき、例えば、100〜700g/15mm、好ましくは150〜600g/15mm、さらに好ましくは200〜500g/15mm程度である。
【0093】
また、被覆層の形成前後において、所定のヒートシール強度に到達する温度(ヒートシール開始温度)の差[すなわち、前記包装フィルム(ヒートシール層で構成された基材フィルムと、前記ヒートシール層の表面に形成された被覆層とで構成されたフィルム)のヒートシール開始温度と、ヒートシール層で構成された基材フィルム(被覆層が形成されていないフィルム)のヒートシール開始温度との差]は、25℃未満(例えば、0〜22℃)程度の範囲から選択でき、例えば、20℃未満(例えば、0.1〜18℃)、好ましくは15℃未満(例えば、0.5〜12℃)、さらに好ましくは10℃未満(例えば、1〜8℃)、特に5℃以下(例えば、1〜4℃)程度である。
【0094】
さらに、本発明の包装フィルムは、透明性にも優れており、高い視認性を有している。例えば、本発明の包装フィルムの全光線透過率は、30%以上(例えば、40〜100%)、好ましくは50%以上(例えば、60〜95%)、さらに好ましくは70%以上(例えば、75〜90%)程度であってもよい。特に、本発明では、著しく小さい塗布量又は被覆量で前記被布層を形成できるので、前記フィルムの全光線透過率を80%以上(例えば、82〜99.9%)、好ましくは85%以上(例えば、88〜99%)、さらに好ましくは90%以上(例えば、92〜98%)程度とすることもできる。
【0095】
また、本発明の包装フィルムの熱収縮率は、比較的小さい値である場合が多い。例えば、本発明の包装フィルムを120℃で15分間熱処理したとき、フィルム引取方向(MD方向又は縦方向又は一方の方向)の熱収縮率(又はその絶対値)SMDは、例えば、0〜8%(例えば、0.1〜7%)、好ましくは0〜6.5%(例えば、0.1〜5.5%)、さらに好ましくは0〜5%(例えば、0.15〜4.5%)、特に0〜4.0%(例えば、0.2〜3.5%)程度である。また、本発明の包装フィルムを120℃で15分間熱処理したとき、フィルム幅方向(TD方向又は横方向又は他方の方向)の熱収縮率(又はその絶対値)STDは、0〜5%(例えば、0〜4%)の範囲から選択でき、通常、0〜3%[例えば、3%未満(例えば、0.1〜2.8%)]、好ましくは0〜2.5%(例えば、0.15〜2)、さらに好ましくは2%未満(例えば、0.2〜1.8%)、特に0〜1.5%(例えば、0.3〜1.2)程度である。
【0096】
このような熱収縮率が小さいフィルムでは、被包装体を包装したのち加熱処理しても、被包装体に対する優れた離型性を加熱前後において高いレベルで効率よく保持できる。特に、横方向の熱収縮率が大きいと、被覆層を形成してロールとして巻き取る際にフィルムに皺などが発生してフィルムの使用率が悪化しやすくなり、また、このようなロール状のフィルムを使用した被包装体の包装(充填)において皺などにより見栄えが悪くなって不良率が高くなる虞がある。そのため、前記横方向の熱収縮率は小さいのが好ましく、前記縦方向の熱収縮率は横方向の熱収縮率以上であってもよい。
【0097】
このような本発明の包装フィルムは、前記基材フィルム(ヒートシール可能な層で少なくとも構成された基材フィルム)に被覆層を形成することにより製造できる。すなわち、前記ヒートシール層の表面(特に、表面処理されていないヒートシール層の表面)に、少なくともショ糖脂肪酸エステルを含む多価アルコール脂肪酸エステルで構成され、かつラウリル硫酸ナトリウムを含まないコーティング剤を塗布し、被覆層を形成することにより製造することができる。
【0098】
コーティング剤は、少なくともショ糖脂肪酸エステルを含む多価アルコール脂肪酸エステル単独で構成されたホットメルトコーティング剤又は液状コーティング剤であってもよいが、通常、多価アルコール脂肪酸エステルと適当な溶媒とを含んでいる。前記溶媒としては、非水溶媒、通常、有機溶媒を使用できる。有機溶媒としては、例えば、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの脂肪族アルコール類、シクロヘキサノールなどの脂環族アルコール類など)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトンなどのジアルキルケトン、シクロヘキサノンなど)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、エーテル類(ジエチルエーテルなどの鎖状エーテル類、ジオキサン、テトラヒドロフランなどの環状エーテル類など)、炭化水素類[例えば、脂肪族炭化水素類(ヘキサン、イソヘキサン、ヘプタン、オクタンなど)、脂環族炭化水素類(シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなど)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレンなど)、アミド類(ジメチルホルムアミドなど)などが挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で使用してもよく、2種以上組みあわせた混合溶媒として使用してもよい。
【0099】
なお、比較的高沸点の溶媒は、揮発しにくいため、塗布および乾燥後においてもフィルムに残存する虞がある。そのため、前記コーティング剤は、比較的低沸点、例えば、沸点120℃以下(例えば、30〜115℃程度)、好ましくは110℃以下(例えば、40〜105℃程度)、さらに好ましくは100℃以下(例えば、50〜95℃程度)の溶媒で構成してもよい。このような低沸点の溶媒には、上記溶媒のうち、例えば、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのC1-4アルコールなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなどのジC3-6アルキルケトン類など)、エステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチルなどの酢酸C1-3アルキルエステルなど)、炭化水素類(例えば、ヘキサン、イソヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類)などが挙げられる。
【0100】
前記コーティング剤の塗布には、慣用の塗布手段、例えば、スプレー、ロールコーター、グラビアロールコーター、ナイフコーター、ディップコーターなどが利用できる。また、必要であれば、ホットメルトコーターを用いてもよい。好ましい態様では、前記コーティング剤(前記多価アルコール脂肪酸エステルおよび有機溶媒を含むコーティング剤)を、グラビアコーティング又はロールコーティングにより基材フィルム(基材フィルムのヒートシール層)に塗布することにより被覆層を形成してもよい。なお、必要であれば、前記コーティング剤は複数回に亘り塗布してもよい。前記コーティング剤を基材フィルムに塗布した後、通常、塗布層を乾燥することにより被覆層を形成できる。
【0101】
また、必要であれば、前記コーティング剤を塗布(および乾燥)した後の基材フィルムには、所定の温度および時間で、エージング処理および/または表面処理(コロナ放電処理など)を施してもよい。本発明の包装フィルムでは、ヒートシール層の表面に直接被覆層を形成し、エージング処理および表面処理(コロナ放電処理など)することなく被覆層を形成しても、高い剥離性を被覆層に付与できる。
【0102】
すなわち、前記特許文献3に記載のフィルムなどのように、ヒートシール層などに前記多価アルコール脂肪酸エステルを混合した(又は練り混んだ)フィルム(例えば、多層延伸フィルムなど)では、多価アルコール脂肪酸エステルのブリードアウトを利用してフィルムに離型性を付与するため、基材フィルム(又はヒートシール層)に対する表面処理(コロナ放電処理など)やエージング処理なしでは、フィルムに離型性を発現することが難しく、フィルム調製直後から離型性を付与できない。また、このような処理を施しても充分に離型性を付与できず、しかもフィルムの巻き品質や得率にも悪影響を与える。
【0103】
これに対して、本発明のフィルムでは、多価アルコール脂肪酸エステルのブリードアウトを要することがないため、表面処理およびエージング処理しなくても、フィルムの調製直後から被包装体に対して高い離型性を発現できる。また、本発明では、コーティングにより被覆層を形成するので、被包装体の種類に応じて、多価アルコール脂肪酸エステルの塗布量を自在に変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明のフィルム(包装フィルム)は、被包装体に対する離型性(又は剥離性)に優れており、種々の被包装体を包装するのに有用である。すなわち、本発明のフィルムは、前記被覆層と被包装体とを接触させて包装(および開封)するための包装フィルムとして使用できる。被包装体としては、特に限定されず、基材フィルムの種類や機能(例えば、ガスバリア性など)などに応じて、例えば、食品[例えば、饅頭類(蒸し饅頭、中華饅頭など)、糖菓などの菓子パン類、おにぎり、カステラ、スライスチーズ、餡類などの表面に粘着性又は粘性を有する粘稠物など]、医薬品又は化学品(例えば、薬品又は薬剤など)などが例示できる。被包装体は、室温で固形、半固形又は流動物であってもよい。これら種々の被包装体のうち、本発明のフィルムは、食品の包装に用いるためのフィルム(食品用包装フィルム)として好適に利用でき、特に表層に薄くて柔らかい被覆(薄皮)が形成される粘稠物、例えば、饅頭類などの包装に好適である。このような本発明のフィルムの被覆層と接触させる食品(特に粘稠物)の水分活性は、例えば、0.5以上(例えば、0.6〜0.99程度)、好ましくは0.7以上(例えば、0.75〜0.98程度)、さらに好ましくは0.8以上(例えば、0.85〜0.97程度)であってもよい。本発明のフィルムは、このような水分活性を有する食品であっても、高い離型性で開封できる。
【0105】
なお、包装の形態は、饅頭類やカステラ、スライスチーズなどのように個装であってもよい。また、包装には、本発明のフィルムと被包装体とが少なくとも接触する種々の態様が含まれる。例えば、包装には、被包装体(前記粘稠物など)の下敷きとして前記フィルムを用いる態様、被包装体(前記粘稠物など)の側面又は上面のみを前記フィルムで包装(又は被覆)する態様などが含まれる。
【実施例】
【0106】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0107】
実施例1
両面にヒートシール性を有するポリプロピレン系共押し出しフィルム(東洋紡績(株)製「パイレンST6181」25μm)の非コロナ放電処理面に、ショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ(株)製「リョートーシュガーエステルS−570」)0.2重量%、トルエン99.8重量%のコーティング剤を乾燥重量4mg/m2でグラビアロールにより塗布し、熱風で乾燥し、包装用フィルムを得た。
【0108】
実施例2
両面にヒートシール性を有するポリプロピレン系共押しフィルム(東洋紡績(株)製「パイレンST6181」25μm)の非コロナ放電処理面に、ショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ(株)製「リョートーシュガーエステルS−570」)5重量%、トルエン95重量%のコーティング剤を乾燥重量100mg/m2でグラビアロールにより塗布し、熱風で乾燥し、包装用フィルムを得た。
【0109】
実施例3
無延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡績(株)製、「パイレンP1111」25μm)の非コロナ放電処理面に、ショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ(株)製「リョートーシュガーエステルS−570」)2.5重量%、トルエン97.5重量%のコーティング剤を乾燥重量50mg/m2でグラビアロールにより塗布し、熱風で乾燥し、包装用フィルムを得た。
【0110】
実施例4
両面にヒートシール性を有するポリプロピレン系共押しフィルム(東洋紡績(株)製「パイレンST6181」25μm)の非コロナ放電処理面に、ショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ(株)製「リョートーシュガーエステルS−570」)30重量%、トルエン70重量%のコーティング剤を乾燥重量600mg/m2でグラビアロールにより塗布し、熱風で乾燥し、包装用フィルムを得た。
【0111】
実施例5
両面にポリビニルアルコール系のガスバリア層を有する二軸延伸ポリプロピレンフィルム(ダイセルバリューコーティング(株)製、「セネシXOP 5000」20μm)のコロナ放電処理面に、エーテル系接着剤(三井武田ケミカル(株)製、「A−969V/A−5=1/1」)を乾燥後の塗布量2.5g/m2となるように塗布したのち、無延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡績(株)製、「パイレンP1128」25μm)を貼り合わせて基材フィルムを得た。そして、得られた基材フィルムの無延伸ポリプロピレンフィルムの面に、ショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ(株)製「リョートーシュガーエステルS−570」)1重量%、トルエン99重量%のコーティング剤を乾燥重量20mg/m2でグラビアロールにより塗布し、熱風で乾燥し、包装用フィルムを得た。
【0112】
比較例1
実施例1で用いたポリプロピレン系共押しフィルムにショ糖脂肪酸エステルを塗布しないこと以外は、実施例1と同様にして包装用フィルムを得た。
【0113】
比較例2
無延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡績(株)製、「パイレンP1111」25μm)の非コロナ放電処理面に、ショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ(株)製「リョートーシュガーエステルS−570」)2重量%、ラウリル硫酸ナトリウム0.8重量%およびトルエン97.2重量%のコーティング剤を乾燥重量50mg/m2でグラビアロールにより塗布し、熱風で乾燥し、包装用フィルムを得た。なお、コーティング剤には、溶け残りがあった。
【0114】
比較例3
直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(宇部興産(株)製、「ユメリット2040F」)99.995重量部およびショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ(株)製「リョートーシュガーエステルS−570」)0.005重量部を混合し、押出し成形機にて、厚み30μmのポリエチレンフィルムを得、片面にコロナ放電処理を施した。なお、ポリエチレンフィルム表面に全てのショ糖脂肪酸エステルがブリードアウトしたと仮定すると、ブリードアウト量はフィルム表面1m2あたり138mgに相当する。
【0115】
そして、両面にポリビニルアルコール系のガスバリア層を有する二軸延伸ポリプロピレンフィルム(ダイセルバリューコーティング(株)製、「セネシXOP 5000」20μm)のコロナ放電処理面に、ポリエーテル系二液型接着剤(三井武田ケミカル(株)製、「A−969V/A−5=1:1」)を乾燥後の塗布量2.5g/m2となるように塗布したのち、この塗布面と、前記ポリエチレンフィルムのコロナ放電処理面とを貼り合わせて包装用フィルムを得た。
【0116】
これらの実施例で得られた包装フィルムの特性とともに、これらの方向フィルムで(i)蒸し饅頭、(ii)おにぎり及び(iii)チーズを包装し、フィルムに対する粘稠物の付着の程度を評価した。なお、ショ糖脂肪酸エステルの被覆層を粘稠物と接触させて包装フィルムで包装した。
【0117】
試験方法
(1)熱収縮性
各フィルムを、JIS C2318に従い、空気中において120℃で15分間熱処理し、熱収縮率を、MD方向及びTD方向について測定した。
【0118】
(2)各フィルムの接触角
自動接触計(協和界面科学(株)製)を用い、温度20℃において、フィルム上に蒸留水を滴下し、接液部分の角度θを接触角として測定した。
【0119】
(3)ぬれ張力
各フィルムのぬれ張力を、JIS K6768に従い、和光純薬工業(株)製のぬれ張力試験用混合液を用いて測定した。
【0120】
(4)すべり性
各フィルムのすべり性を、JIS K7125に従い、すべり試験機(テスター産業(株)製)を用いて評価した。
【0121】
(5)透明性
各フィルムの全光線透過率(%)を、JIS K7105に従い、ヘーズメータ(日本電色工業(株)製、「300A」)を用いて測定した。また、各フィルムをそれぞれ4枚ずつ積層し、同様にして、全光線透過率(%)測定した。
【0122】
(6)粘稠物に対する剥離性
(i)饅頭に対する剥離性を次のようにして評価した。すなわち、成形した饅頭を各フィルムで包装し、蒸し上がり後、包装フィルムを剥がし、饅頭の表層の薄くて柔らかい被膜(薄皮)の付着の程度を目視で観察し、以下の基準で評価した。
【0123】
[評価基準]
○:饅頭の表層の被膜(薄皮)がフィルムに付着することなく、フィルムが円滑に剥離した
△:饅頭と表層の被膜(薄皮)がフィルムに僅かに付着した
×:饅頭と表層の被膜(薄皮)がフィルムに付着した
(ii)おにぎりに対する剥離性を次のようにして評価した。すなわち、包装フィルムを100mm×100mmにカットし、フィルム上におにぎりを乗せ、更に100mm×100mmにカットしたフィルムを重ね一定の重量(27.5g/cm2)を掛けた状態で1時間放置し、フィルムに付着した米粒の量で評価した。
【0124】
[評価基準]
○:米粒が付着しない
△:米粒が1粒〜5粒未満付着する
×:米粒が5粒以上付着する
(iii)チーズに対する剥離性の評価は、包装フィルムを100mm×100mmにカットし、フィルム上にスライスしたチーズを乗せ、更に100mm×100mmにカットしたフィルムを重ね一定の重量(13.5g/cm2)を掛けた状態で1時間及び24時間放置し、それぞれ剥離性を目視で評価をした。
【0125】
[評価基準]
○:粘稠物とフィルムとが円滑に剥離する
△:粘稠物がフィルムに僅かに付着する
×:粘稠物がフィルムに付着する。
【0126】
(7)フィルム外観
フィルム表面を目視で観察し、以下の基準で評価した。
【0127】
[評価基準]
○:ブツが観察されず良好なフィルム表面を有している
×:フィルム表面にブツが観察される。
【0128】
(8)ヒートシール性
実施例および比較例で使用した基材フィルム(被覆層が形成されていない基材フィルム)のヒートシール開始温度と、実施例および比較例で得られた各フィルムのヒートシール開始温度とを測定することにより、被覆層の形成前後におけるシール特性を測定した。具体的には、温度設定を5〜10℃刻みで設定変更し、横軸に温度、縦軸にヒートシール強度をとり、ヒートシール強度が、所定のヒートシール強度(到達強度)に達する温度(グラフが飽和に達してくる点に対応する温度)を被覆層の形成前後(塗布前後)においてそれぞれ測定し、これらの温度差を算出した。なお、ヒートシールは、圧力1kg/cm2および1秒間の条件で行い、ヒートシール強度(到達強度)は、実施例1〜4、比較例1および比較例2では2N/15mm、実施例5では15N/15mm、比較例3では30N/15mmとした。
【0129】
結果を表1に示す。
【0130】
【表1】

【0131】
表1から明らかなように、比較例に比べ、実施例では、フィルムの外観および透明性を損なうことなく、被包装体に対して高い剥離性を示した。特に、実施例1〜3および5では、比較的少量の塗布量で被覆層を形成したので、ヒートシール性を高いレベルで保持したまま、包装できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートシール可能な層で少なくとも構成された基材フィルムと、前記ヒートシール可能な層の表面に形成された被覆層とで構成されたフィルムであって、前記被覆層が、少なくともショ糖脂肪酸エステルを含む多価アルコール脂肪酸エステルで構成され、かつラウリル硫酸ナトリウムを含まない包装フィルム。
【請求項2】
ヒートシール可能な層がポリオレフィン系樹脂で構成されている請求項1記載のフィルム。
【請求項3】
基材フィルムが、ポリオレフィン系樹脂で構成され、かつ30g/m2・24時間以下の水蒸気透過率を有する請求項1記載のフィルム。
【請求項4】
多価アルコール脂肪酸エステルが、ショ糖脂肪酸エステル単独で構成されている請求項1記載のフィルム。
【請求項5】
多価アルコール脂肪酸エステルの被覆量が、0.5〜200mg/m2である請求項1記載のフィルム。
【請求項6】
基材フィルムが、ポリプロピレン系樹脂又はポリエチレン系樹脂で構成されたヒートシール可能な層単独で構成された無延伸又は延伸フィルム(i)、コア層とこのコア層の少なくとも一方の面に形成され、ポリプロピレン系樹脂又はポリエチレン系樹脂で構成されたヒートシール可能な層とで構成された積層フィルム(ii)であり、かつ前記ヒートシール可能な層の表面に、被覆量1〜150mg/m2でショ糖脂肪酸エステル単独の被覆層が形成されている請求項1記載のフィルム。
【請求項7】
積層フィルム(ii)が、ポリプロピレン系樹脂で構成されたコア層と、このコア層の少なくとも一方の面に形成され、ポリプロピレン系樹脂又はポリエチレン系樹脂で構成されたヒートシール可能な層とで構成された共押出し二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムである請求項6記載のフィルム。
【請求項8】
ヒートシール可能な層の表面処理されていない表面に被覆層が形成されている請求項1記載のフィルム。
【請求項9】
被覆層が、表面処理されておらず、かつ38mN/m以上の濡れ張力を有する請求項1記載のフィルム。
【請求項10】
被覆層の形成前後において、所定のヒートシール強度に到達する温度の差が、20℃未満である請求項1記載のフィルム。
【請求項11】
全光線透過率が、85%以上である請求項1記載のフィルム。
【請求項12】
120℃で15分間熱処理したとき、縦方向の熱収縮率が5%以下および横方向の熱収縮率が3%未満であり、かつ縦方向の熱収縮率が横方向の熱収縮率以上である請求項1記載のフィルム。
【請求項13】
食品の包装に用いるためのフィルムであって、食品と接触する面に多価アルコール脂肪酸エステルで構成された被覆層が形成されている請求項1記載のフィルム。
【請求項14】
食品の水分活性が、0.5以上である請求項13記載のフィルム。
【請求項15】
ヒートシール可能な層で少なくとも構成された基材フィルムに被覆層を形成して包装フィルムを製造する方法であって、前記ヒートシール可能な層の表面に、少なくともショ糖脂肪酸エステルを含む多価アルコール脂肪酸エステルで構成され、かつラウリル硫酸ナトリウムを含まないコーティング剤を塗布し、被覆層を形成する請求項1記載のフィルムの製造方法。
【請求項16】
コーティング剤を塗布した後、エージング処理および表面処理することなく被覆層を形成する請求項15記載の製造方法。

【公開番号】特開2006−232345(P2006−232345A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−50803(P2005−50803)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】