説明

包装体の検査装置

【課題】 食品などの内容物が透光性の包装シートで包まれた包装体の画像を取得し、シール部に異物が噛み込まれているか否かを判別できる包装体の検査装置を提供する。
【解決手段】 包装体30の通過領域を挟んで一方に照明部が他方にカメラが配置され、照明光が包装体30を透過した像がカメラに取得される。包装体30の像と背景の像を二値化し、横シール部38,39の長さSだけ縦方向(L方向)へ短縮させ、さらに背景を「1」とし短縮した包装体を「0」に反転させたマスク画像を生成する。このマスク画像と、包装体の全体画像(III)の論理積をとることで、横シール部38,39の画像を分離できる。分離された横シール部38,39の部分画像を二値化処理することで、横シール部38,39に異物31aが噛み込まれているか否かが判別される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透光性の包装シートに内容物が包まれた包装体を検査する検査装置に係り、特に、前縁部と後縁部の少なくとも一方の内側に形成されたシール部に異物が噛み込まれているか否かを検査できる包装体の検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食品などを内容物とする包装体の検査装置では、カメラで包装体の画像を取得し、画像処理により異物が混入しているか否かを判定するのが一般的である。
【0003】
特許文献1に記載された包装食品の検査装置は、海苔を内容物とする包装食品を搬送するコンベアを挟んで、一方に照明部が、他方に包装食品を透過した近赤外線の透過像を撮像するラインセンサが設けられている。近赤外線は内容物である海苔を透過できるため、非透過となる画素数が所定の数を超えるか否かを監視することで、海苔以外の異物が混入しているか否かを判定できるというものである。
【0004】
特許文献2に記載された異物検出装置は、2つのコンベアの隙間を挟んで一方に透過照明手段が配置され、他方にラインセンサが配置されている。ラインセンサで撮像された画像の濃淡ヒストグラムを算出することで、人の髪の毛などの混入異物を検出するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−162685号公報
【特許文献2】特開2004−245695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1と特許文献2に記載された検査装置は、いずれも食品などを包んだ包装体の全体画像を取得して、異物の存在を検出している。したがって、包装体のどこかに異物が存在していれば、異物が混入された不良の包装体と判断されてしまう。
【0007】
ところが、米菓子や和菓子などのように粉状物や微片が分離しやすい食品や、本来が分散しやすい食品などを包装した包装体において、前記特許文献に記載の検査装置のように、全体の画像を取得して異物の存在を検知しようとすると、包装体の内部に前記粉状物や微片や分散された食品などが通常のものとして存在している場合であっても、異物が混入した不良包装体であると判断されてしまう。そのため、外観に関して問題が無く、食品衛生上においても問題の無い包装体が排除されることになり、歩留まりがきわめて悪くなる。
【0008】
一方において、包装シートを接合したシール部に粉状物や微片または分散した食品などが噛み込まれていると、商品の外観がきわめて悪くなり、また包装体のシールが不完全となることがある。そのため、シール部のみに着目して異物が存在しているか否かを判定することはきわめて重要である。しかしながら、これまで、シール部に部分的に着目して異物の存在を判定する検査装置が存在していなかった。
【0009】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、包装体の限られた場所であるシール部に異物が存在しているか否かを検知することができる包装体の検知装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、透光性の包装シートで内容物を包んだ包装体を検査する検査装置において、
前記包装体は、前縁部と後縁部および2つの側縁部を含む外形を有し、前縁部と後縁部の少なくとも一方の内側に包装シートを封止するシール部が形成されており、
包装体を搬送する上流側の搬送機構と下流側の搬送機構との隙間を通過する包装体を挟んで、一方に配置された照明部と他方に配置されたカメラと、前記カメラで取得された画像を処理する画像処理部とが設けられており、
前記画像処理部では、包装体の全体画像からシール部を含む帯状の部分画像が取得され、前記部分画像に異物が存在しているか否かが判別されることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の包装体の検査装置は、包装体の一部であるシール部に着目して、このシール部に異物が噛み込まれているか否かが判別される。したがって、包装体の内部に正常に存在している食品の粉状物や微片、または分散した食品などが誤って異物と判定されることがなく、シール部に異物が存在している不良包装体のみを判定することが可能となる。
【0012】
本発明は、前記画像処理部で、前記包装体の前記全体画像を二値化した二値化画像からマスク画像が生成され、前記包装体の前記全体画像と前記マスク画像との論理積から、前記部分画像が取り出されるものである。
【0013】
例えば、前記画像処理部では、前記二値化画像の前縁部と後縁部の少なくとも一方を、前記シール部の幅寸法に相当する距離だけ前記二値化画像の中心部に向けて後退させて前記マスク画像が生成される。
【0014】
また、前記画像処理部では、前記二値化画像の前縁部と後縁部の少なくとも一方を幅方向へ膨張させて、前縁部と後縁部の少なくとも一方の凹凸形状の影響を低減したマスク画像が生成される。
【0015】
さらに、前記画像処理部では、前記二値化画像の側縁部の画像の一部を縦方向に膨張させて、前記側縁部のくびれ形状の影響を低減したマスク画像が生成される。
【0016】
本発明は、上流側の搬送機構と下流側の搬送機構との隙間を挟んで配置された発光部と受光部を有する位置検知装置が設けられており、
前記カメラで取得される光と前記受光部で受光される検知光とが前記隙間内で交差し、前記カメラで取得される光と前記検知光の波長が相違しており、
前記位置検知装置が包装体を検知した信号に基づいて前記カメラによる撮像のタイミングが決められるものとして構成できる。
【0017】
上記構成では、上流側の搬送機構と下流側の搬送機構との隙間を利用して、搬送される包装体の検知と、包装体を透過した像の取得の双方ができ、スペースの利用効率を高めることができる。また、位置検知装置の検知場所と撮像の場所が同じ隙間内であるため、撮像のタイミングを高精度に設定できる。
【0018】
また、本発明は、前記カメラは、画素が前記搬送機構の搬送方向と直交する向きに列を成して配列したライン撮像カメラであり、前記搬送機構で搬送された包装体が前記ライン撮像カメラの撮像範囲を通過するときに、列を成す画素でライン画像が所得され、複数のライン画像が蓄積されて前記全体画像が得られる。
【0019】
ただし、本発明では、ライン撮像カメラの代わりに、包装体の全体の像を取得するエリア撮像カメラを使用してもよい。
【0020】
本発明における包装体の内容物は、粉状物や微片が分離しやすい米菓子などの食品や、包装体の内部で分散しやすい食品の場合に最適である。ただし、内容物は、食品に限られず、布製品や繊維製品、医薬品など、どのようなものであってもシール部の異物の噛み込みを検知することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、包装体に光を透過させて全体画像を取得した後に、シール部を含む帯状の部分画像のみを取り出して異物が混入しているかを判定している。そのため、包装体の内部に正常に分散している内容物の一部が誤って異物であると判断されるのを防止することができ、シール部に異物が存在している欠陥のある包装体のみを高い確率で検出して排除することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態の包装体の検査装置を示す部分側面図、
【図2】包装体の検査装置を示す部分斜視図、
【図3】包装体の検査装置の回路ブロック図、
【図4】画像処理装置における処理動作において取得した全体画像を示す説明図、
【図5】図4に示す全体画像を二値化した二値化画像を示す説明図、
【図6】二値化画像で傾き角度θを検知し、その傾き角度を修正した全体画像を示す説明図、
【図7】傾き角度を修正した二値化画像を示す説明図、
【図8】図7に示す二値化画像を、横シール部を含む距離Sだけ上下に短縮させた画像を示す説明図、
【図9】前縁部と後縁部を幅方向へ膨張させて凹凸部の影響を低減させる画像処理を示す説明図、
【図10】右側縁部と左側縁部を縦方向へ膨張させてくびれ形状の影響を低減させる画像処理を示す説明図、
【図11】マスク画像を示す説明図、
【図12】全体画像とマスク画像の論理積で取り出された横シール部を含む部分画像の説明図、
【図13】横シール部を含む部分画像を二値化した画像を示す説明図、
【図14】本発明の変形例を示す説明図、
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1に示すように、ワークである包装体30は、上流側の搬送機構であるコンベア1から下流側の搬送機構であるコンベア2に受け渡されて搬送される。上流側のコンベア1は、金属検出機3の内部を通過している。包装体30に金属異物が混入していると、金属検出機3で検出されて、コンベア1上から排除される。
【0024】
コンベア1の下流側の終端のロール1aと、コンベア2の上流側の終端のロール2aが、搬送方向(T方向)に向けて間隔を空けて配置され、コンベア1とコンベア2のつなぎ部に隙間4が形成されている。この隙間4の空間寸法は、その上を包装体30が通過できる長さに設定されている。
【0025】
図1と図2に示すように、本発明の実施の形態の包装体の検査装置10は、コンベア1とコンベア2との隙間4を通過する包装体30を挟んで、一方に照明部11が、他方にカメラ12が、互いに対向して配置されている。照明部11の発光部11aには、複数のLEDが1列または複数列で配列しており、その列の延びる方向は搬送方向(T方向)と直交する横方向(C方向)である。照明部11は、コンベア1とコンベア2の隙間4に対して、横方向(C方向)に均一な輝度の照明光13を与えることができるものであれば、どのような光源を使用してもよいし、どのような構造であってもよい。
【0026】
カメラ12は、ライン撮像カメラであり、CCDで構成される撮像画素が1列または複数列で配列し、その列の延びる方向が横方向(C方向)に向けられている。包装体30が隙間4の上を通過するときに、列を成す撮像画素でライン画像が取得され、カメラの下を包装体30が通過する間に、複数のライン画像が蓄積されて、包装体30の全体画像が得られる。
【0027】
図2に示すように、包装体の検査装置10には、位置検知装置15が含まれている。位置検知装置15は、発光部16と受光部17を有している。発光部16から発せられる検知光18はレーザ光である。検知光18は、コンベア1,2の搬送面に対して垂直方向に所定の光束幅を有し、搬送面に対して上下に傾き角度を有して隙間4内を通過している。受光部17は、ホトトランジスタなどの受光素子を有しており、所定の光束幅のレーザ光がレンズで集光されて受光素子で受光される。または、受光部17に複数の受光素子が上下方向に列を成して配置されているものであってもよい。
【0028】
所定の光束幅を有する検知光18が、隙間4内を斜めに通過することで、隙間4上を移動する包装体30の前縁部33を検知できる確率を高めている。
【0029】
コンベア1とコンベア2の隙間4で、照明光13と検知光18が交差しているが、照明光13がLED光で検知光18がレーザ光で、互いに波長が相違しており、しかもカメラ12の撮像画素が感知する波長帯域と、位置検知装置15の受光部17の受光素子が感知する波長帯域とが相違している。そのため、2つの光が交差していても、カメラ12の撮像画像に影響を与えることがなく、位置検知装置15による包装体30の検知感度に影響を与えることがない。
【0030】
図1に示すように、下流側のコンベア2に排除装置19が対向している。包装体の検査装置10において、包装体30のシール部に異物が存在していると判定されると、その包装体30が排除装置19の内部においてエアー噴射などの排除力を受け、コンベア2上から排除される。
【0031】
図3の回路ブロック図に示すように、カメラ12は撮像画素が列を成すCCDアレイ12aと、CCDアレイ12aのそれぞれの画素で撮影されたライン画像を一時的に保持するバッファメモリ12bを有している。
【0032】
制御装置20には、画像メモリ21が設けられている。カメラ12のバッファメモリ12bで保持されたライン画像が画像メモリ21に順次送られ、画像メモリ21でライン画像が蓄積されて、包装体30の全体画像が得られ、この全体画像が画像処理部22に与えられる。
【0033】
位置検知装置15の受光部17には、受光素子17aと、この受光素子17aの受光出力が所定のしきい値を超えたときに検知出力を発する光学検知部17bが設けられており、その検知出力が、A/D変換されて主制御部23に与えられる。
【0034】
制御装置20に主制御部23が設けられている。主制御装置23は、光学検知部17bから包装体30の前縁部33を検知した検知信号を受けたときに、カメラ12に指令を与え、バッファメモリ12bによるライン画像の取得を開始する。また、画像メモリ21と画像処理部22も、主制御部23で制御される。
【0035】
位置検知装置15の受光部17が隙間4内を通過する検知光18を検知し、同じ隙間4内を通過する照明光13によってカメラ12が撮影画像を取得する。そのため、受光部17が包装体30の前縁部33を検出したのとタイミングを合わせて、カメラ17のバッファメモリ12bによるライン画像の取得を開始することができ、包装体30が高速で搬送されても、その全体画像を確実に取得することができる。
【0036】
図4は、画像メモリ21で取得されて画像処理部22に転送される包装体30の全体画像(I)を示している。
【0037】
図4に示す画像領域のX方向は、図2に示す横方向(C方向)、すなわち、個々のライン画像の長さ方向に相当している。画像領域のY方向は、図2に示す搬送方向(T方向)、すなわちライン画像の蓄積方向に相当している。
【0038】
包装体30は、内容物31が包装シート32で包まれている。この実施の形態では、内容物31が食品であり「米菓子」である。包装シート32は透光性である。ここでの透光性とは、包装体30を透過した光がカメラ12で撮像されたときに、包装シート32を透過した光と、内容物31で遮られた光の輝度との差が現れて、包装シート32の画像と内容物31の画像とでコントラストが得られる程度の光透過性機能を意味している。
【0039】
包装シート32は、樹脂フィルム、紙材、紙材と樹脂フィルムとのラミネート材などである。
【0040】
図4に示す全体画像(I)に現れる包装体30は、幅方向(W方向)と縦方向(L方向)を有している。包装体30の外形は、前縁部33と後縁部34および右側縁部35と左側縁部36を有している。包装体30は、幅方向(W方向)の中央部で縦方向(L方向)に延びる縦シール部37を有している。前縁部33の内側に幅方向(W方向)に延びる横シール部38が形成され、後縁部34の内側に幅方向(W方向)に延びる横シール部39が形成されている。包装シート32は、縦シール部37およびそれぞれの横シール部38,39で熱シールや超音波シールによって溶接され、または接着剤で接着シールされている。
【0041】
包装体30の縦方向(L方向)は、縦シール部37と平行な方向であり、幅方向(W方向)は、横シール部38,39と平行な方向である。
【0042】
この包装体30は、前縁部33を基線として縦方向に距離Sの幅寸法を有する帯状の領域内に横シール部38が形成され、後縁部34を基線として縦方向に距離Sの幅寸法の帯状の領域内に横シール部39が形成されている。図4に示される全体画像(I)では、内容物31である菓子の一部が欠けた粉状または微片状の異物31aが、前縁部33側の横シール部38に噛み込まれている。
【0043】
包装体30の前縁部33に、鋸刃形状(ギザギザ形状)の細かな凹凸部33aが形成され、後縁部34にも同様の凹凸部34aが形成されている。
【0044】
包装シート32が縦シール部37でシールされた筒状体の内部に内容物31が挿入された後に、横シール部38,39で包装シート32がシールされるため、包装体30の右側縁部35と左側縁部36にくびれ部が形成される。すなわち、包装体30は、前縁部33と後縁部34で幅方向(W方向)の寸法が大きく、縦方向(L方向)の中央部で幅方向(W方向)の寸法が小さい。
【0045】
包装体30は、前工程の金属検出機3を通過しており、検査装置10に至った包装体30に金属異物が混入していない。内容物31が米菓子などの場合、菓子から分離された粉状物や微片が筒状の包装体30の内部に存在することがあるが、それ自体は食品衛生上問題はないし、商品の外観をさほど低下させるものではない。むしろ包装体30の内部の粉状物や微片が異物であると判定されてしまうと、正常な包装体であるにもかかわらず排除されるという不都合が生じる。
【0046】
一方で、図4に示すように粉状物や微片が異物31aとなって横シール部38に噛み込まれていると、商品の外観を著しく低下させ、また横シール部38のシール不良の原因にもなる。
【0047】
そこで、画像処理部22では、包装体30の全体画像(I)から横シール部38,39の領域のみを部分的に取り出して、その領域に異物31aが存在しているか否かを判定する。
【0048】
以下、包装体30の判定動作を説明する。
画像処理部22で取得した図4に示す全体画像(I)は、背景の輝度が最も高く、包装体30の内部で内容物31が存在しない領域、すなわち包装シート32のみが存在している領域の輝度が背景の次に高く、内容物31と異物31aが存在する場所では照明光13が遮られて輝度が最も低くなっている。
【0049】
画像処理部22では、全体画像(I)の、背景の輝度と、包装体30の内容物が存在していない領域すなわち包装シート32のみが存在している領域の輝度との間にしきい値が設定されて、全体画像(I)を二値化する処理が行われる。図5に二値化処理後の二値化画像(II)が示されている。二値化画像(II)は、背景が「0」で、包装体30全体が「1」で二値化される。図5、図7、図8図9、図10ならびに図11では、画像処理の一例として背景の「0」が「黒」で表現され、包装体30の全体の「1」が「白」で表現されている。「0」と「1」がどのような色相や階調で表示されるかは、画像処理部22で実行されるソフトウエアに起因する。
【0050】
画像処理部22では、図5に示す二値化画像(II)から、「1」の領域である包装体30の外形を含む最小面積の矩形枠(B)が求められ、さらにX方向と矩形枠(B)との傾きθが求められる。
【0051】
図4に示す二値処理前の全体画像(I)を傾き角度θだけ回転させて補正することで、図6に示す傾き修正後の全体画像(III)が得られ、図5に示す二値化画像(II)を傾き角度θだけ回転させて補正することで、図7に示す傾き修正後の二値化画像(IV)が得られる。図6と図7に示す傾き修正後の画像では、包装体30の幅方向(W方向)がX方向とほぼ平行であり、縦方向(L方向)がY方向とほぼ平行である。
【0052】
次に、図7に示す傾き修正後の二値化画像(IV)において、包装体30の前縁部33を、距離Sだけ中心線Oに向けて移動させ、後縁部34を、距離Sだけ中心線Oに向けて移動させる処理が行われ、図8に示すように二値化された上下短縮画像(V)が生成される。図7に示す二値化画像(IV)では、包装体30の外形の縦方向の寸法がHなのに対し、図8に示す上下短縮画像(V)では、短縮された包装体30Cの外形の縦方向の寸法が(H−2・S)となる。
【0053】
距離Sに関しては、包装体30の前縁部33および後縁部34を基線とした幅寸法Sの帯状範囲を設定したときに、その内部に横シール線38,39の全域が含まれるように、そのSの値が予め人為的に決められる。距離Sは、実際の横シール部の縦方向(L方向)の幅寸法となるべく一致していることが好ましい。
【0054】
実際の画像処理では、図7に示す二値化画像(IV)の包装体30の輪郭を縦方向(L方向)に二分する中心線Oが設定され、包装体30の画像が中心線Oを挟んで2つの半画像30A,30Bに区分される。そして、半画像30Bを「0」に反転させ、「1」のまま残された半画像30Aを、図7において下方向へ距離Sだけ平行移動させた移動半画像を生成する。次に、半画像30Aを「0」に反転させ、「1」のまま残された半画像30Bを上方向へ距離Sだけ平行移動させた移動半画像を生成する。2つの移動半画像の論理和をとることで、図8に示すように、包装体30の輪郭を、前後の横シール部38,39に相当する距離Sだけ中心線Oに向けて収縮させた二値化された上下短縮画像(V)が得られる。
【0055】
図8に示す上下短縮画像(V)において、二値化の「0」と「1」を反転させると、包装体30の輪郭からほぼ横シール部38,39の範囲を除いたマスク画像が得られる。このマスク画像と、図6に示す傾き修正後の全体画像(III)の論理積をとることで、全体画像(III)から、横シール部38,39を含む距離Sの帯状領域のみを切り離した部分画像を取得できる。
【0056】
ただし、本実施の形態では、マスク画像の形状の精度を高めるために、さらに以下の画像処理が行われる。
【0057】
図9では、マスク画像に現れる前縁部33と後縁部34の凹凸部33a,34aの影響を低減させる膨張処理が行われる。図9(A)では、図8に示す上下短縮画像(V)の前縁部33の一部のみを取り出して、X方向に向けて左右に伸ばして膨張させ、図9(B)に示す膨張画像33Aを生成する。同じようにして後縁部34の一部をX方向へ膨張させて、膨張画像34Aを生成する。
【0058】
図10では、マスク画像に現れる右側縁部35と左側縁部36のくびれ形状の影響を低減させる膨張処理が行われる。図10(A)では、図8に示す上下短縮画像の包装体30Cの輪郭から側縁部35の一部のみを取り出して、Y方向に向けて上下に膨張させて、図10(B)に示す膨張画像35Aを生成する。同様にして、左側縁部36の一部をY方向に膨張させて、膨張画像36Aを生成する。
【0059】
膨張画像33A,34Aを図8に示す前縁部33ならびに後縁部34と同じ長さにし、前記前縁部34と後縁部34を膨張画像33A,34Aに置き換える。膨張画像35A,36Aを図8に示す右側縁部35ならびに左側縁部36と同じ長さにし、前記右側縁部35と左側縁部36を膨張画像35A,36Aに置き換える。
【0060】
そして、二値化の「0」と「1」を反転させることで、図11に示すマスク画像(VI)が生成される。マスク画像(VI)のマスク部Mの形状は、Y方向の長さが(H−2・S)であり、前後の縁部が膨張画像33A,34Aで置き換えられて凹凸部33a,34aが解消され、左右の側縁部が膨張画像35A,35Bで置き換えられて左右のくびれ形状が解消されている。
【0061】
図6に示す傾き修正後の全体画像(III)と、図11に示すマスク画像(VI)の論理積をとることで、図12に示すように、前後の幅寸法Sの領域のみを取り出した部分画像(VII)が得られる。
【0062】
次に、図13に示すように、前方の幅寸法Sの帯状部分の画像において、包装シート32の像の輝度と、内容物31の像の輝度との間にしきい値を設定して、帯状部分が二値化される。この二値化画像では、異物31aが存在していると「1」となり、異物の像が例えば「黒」で表現される。画像処理部22において、例えば「黒」で表現される「1」の領域が存在していたら、または「1」となる領域が所定のしきい値の面積(画素数)を超えていたら、横シール部38に異物が存在し、噛み込みが発生していると判定する。同様に、後方の帯状部分も二値化して、横シール部39に異物の噛み込みが発生しているかが判定される。
【0063】
横シール部38または横シール部39に噛み込みが存在していると判定されたら、主制御部23から排除装置19に指令が与えられて、その包装体30がコンベア2上から排除される。
【0064】
図14(A)に示す全体画像では、包装体30の前縁部33aが凹状の湾曲形状である。これは、包装工程において、包装体30の前縁部33aが切断された後に、包装シート32が変形し、または前縁部33a付近で包装シート32が折り畳まれることなどで発生する。
【0065】
この場合に、図14(B)に示すように、図11に示すのと同じマスク部Mを有するマスク画像(VI)と、図14(A)に示す全体画像との論理積をとると、Eで示す領域を部分画像として取り出すことができるが、中央のFで示す領域を取り出すことができず、Fの部分はシール部の検査ができない欠落領域となってしまう。
【0066】
しかし、これまで述べた本発明の実施の形態では、湾曲形状の前縁部33aを図7に示す中心線Oに向けて距離Sだけ移動させてマスク部Maが生成されるため、このマスク部Maと全体画像との論理積をとれば、凹形状の帯状の部分画像を取得でき、図14(B)に示すような欠落領域Fが発生することはない。
【0067】
なお、マスク部Maを有するマスク画像を生成するときに、湾曲形状を維持したまま、湾曲形状の稜線を左右に延ばして鋸形状の凹凸部33aを解消し、凹凸部を解消した後に、元の寸法に収縮することで、マスク部Maに湾曲形状で且つ細かな凹凸部33aの無い前縁部33Bを形成することができる。この前縁部33Bを有するマスク部Maを使用することで、湾曲形状の部分画像を得ることができる。
【符号の説明】
【0068】
1 コンベア(上流側の搬送機構)
2 コンベア(下流側の搬送機構)
4 隙間
10 検査装置
11 照明部
12 カメラ
13 照明光
15 位置検知装置
16 発光部
17 受光部
18 検知光
20 制御装置
21 画像メモリ
22 画像処理部
23 主制御部
30 包装体
31 内容物
31a 異物
32 包装シート
33 前縁部
33a 凹凸部
33A 膨張画像
34 後縁部
34a 凹凸部
34A 膨張画像
35 右側縁部
35A 膨張画像
36 左側縁部
36A 膨張画像
37 縦シール部
38,39 横シール部
(I)(III) 全体画像
(II)(IV) 二値化画像
(V) 上下短縮画像
(VI) マスク画像
(VII) 部分画像
M マスク部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性の包装シートで内容物を包んだ包装体を検査する検査装置において、
前記包装体は、前縁部と後縁部および2つの側縁部を含む外形を有し、前縁部と後縁部の少なくとも一方の内側に包装シートを封止するシール部が形成されており、
包装体を搬送する上流側の搬送機構と下流側の搬送機構との隙間を通過する包装体を挟んで、一方に配置された照明部と他方に配置されたカメラと、前記カメラで取得された画像を処理する画像処理部とが設けられており、
前記画像処理部では、包装体の全体画像からシール部を含む帯状の部分画像が取得され、前記部分画像に異物が存在しているか否かが判別されることを特徴とする包装体の検査装置。
【請求項2】
前記画像処理部では、前記包装体の前記全体画像を二値化した二値化画像からマスク画像が生成され、前記包装体の前記全体画像と前記マスク画像との論理積から、前記部分画像が取り出される請求項1記載の包装体の検査装置。
【請求項3】
前記画像処理部では、前記二値化画像の前縁部と後縁部の少なくとも一方を、前記シール部の幅寸法に相当する距離だけ前記二値化画像の中心部に向けて後退させて前記マスク画像が生成される請求項2記載の包装体の検査装置。
【請求項4】
前記画像処理部では、前記二値化画像の前縁部と後縁部の少なくとも一方を幅方向へ膨張させて、前縁部と後縁部の少なくとも一方の凹凸形状の影響を低減したマスク画像が生成される請求項2または3記載の包装体の検査装置。
【請求項5】
前記画像処理部では、前記二値化画像の側縁部の画像の一部を縦方向に膨張させて、前記側縁部のくびれ形状の影響を低減したマスク画像が生成される請求項2ないし4のいずれかに記載の包装体の検査装置。
【請求項6】
上流側の搬送機構と下流側の搬送機構との隙間を挟んで配置された発光部と受光部を有する位置検知装置が設けられており、
前記カメラで取得される光と前記受光部で受光される検知光とが前記隙間内で交差し、前記カメラで取得される光と前記検知光の波長が相違しており、
前記位置検知装置が包装体を検知した信号に基づいて前記カメラによる撮像のタイミングが決められる請求項1ないし5のいずれかに記載の包装体の検査装置。
【請求項7】
前記カメラは、画素が前記搬送機構の搬送方向と直交する向きに列を成して配列したライン撮像カメラであり、前記搬送機構で搬送された包装体が前記ライン撮像カメラの撮像範囲を通過するときに、列を成す画素でライン画像が所得され、複数のライン画像が蓄積されて前記全体画像が得られる請求項1ないし6のいずれかに記載の包装体の検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−7597(P2013−7597A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139132(P2011−139132)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第3項適用申請有り 〔博覧会名〕FOOMA JAPAN 2011国際食品工業展 〔主催者名〕社団法人日本食品機械工業会 〔開催日〕 平成23年6月7日から同年6月10日まで
【出願人】(598105802)株式会社 システムスクエア (8)
【Fターム(参考)】