説明

包装体

【課題】包装体において、小型の容器を包装する熱収縮性フィルムを除去するための摘み部を摘み易くすることである。
【解決手段】包装体10は、小型の容器20としての目薬容器に加熱収縮前の筒状の熱収縮性フィルム29を被せ、適当な加熱を施すことによって容器20に熱収縮性フィルム30を密着させて形成される。包装体10において、摘み部50は、容器20の外形から離間し、立ち上がるように形成される。このために、熱収縮性フィルム30の上端縁部48は、容器20の上部を全部覆うことはせず、キャップ胴部の上端より下方に予め定めた所定の間隔距離を離してキャップの外周表面に沿うように上端縁部48が設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は包装体に係り、特に、容器を包装する熱収縮性フィルムにフィルム除去用の摘みが設けられる包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
点眼薬等の液体を入れる小型の容器をフィルム体で包装する包装体については、容器が小型のためフィルム体を取り除くことに工夫がなされている。一般的には、このような小型の容器は、液体を収容する容器本体と、容器本体に形成された取出口部にキャップがネジによって着脱自在に取付けられている。そして、包装体としては、例えば、容器本体とキャップとを覆って熱収縮性フィルムが密着して取付けられており、この熱収縮性フィルムは横ミシン目によって開封時に切り離されて廃棄される切離部と、そのまま容器本体に残るラベル部とに仕切られる。そして、キャップの上部側から横ミシン目に向かって縦ミシン目が設けられ、切離部の端部には、縦ミシン目の近傍に摘み部が設けられる。熱収縮性フィルムを開封するには、この摘み部を持ち、縦ミシン目に沿って引き起こすことで縦方向に引き裂かれ、横ミシン目に達し、そこで横ミシン目に沿って周方向に引き裂かれ、これによって、ラベル部を容器本体に残したまま、切離部を除去することができる。
【0003】
たとえば、引用文献1においては、上記一般的構造について述べられ、摘み部を持って縦ミシン目に沿って引き裂いたのち、横ミシン目に沿って引き裂くには、縦ミシン目で分割された縁付近を保持しなおすことが必要で、これが面倒である、と述べられている。そこで、摘み部の横の一方側から第1縦ミシン目を横ミシン目に達するまで設け、摘み部の横の他方側から第2縦ミシン目を横ミシン目に向かって設けるが、その手前で止める構成が開示されている。これによれば、第2縦ミシン目の端部は切離部の途中で止まっているので、切離部に繋がって連続しており、切離部のところに舌片が形成され、そのまま引っ張ることで、横ミシン目に沿って破り切離部を除去できる、と述べられている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−142818号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、小型の容器を熱収縮性フィルムで包む包装体において、熱収縮性フィルムを除去するために、フィルムの端縁部に摘み部が設けられる。熱収縮性フィルムは、容器のキャップの天面部と呼ばれる上部のところまで端縁部が天面部に沿うように覆われるので、端縁部から延出される摘み部はその天面部に沿った形態で設けられる。この摘み部を持つには、特許文献1に述べられるように、天面部に沿っている状態から引き起こす必要がある。容器が小型であると、摘み部も小型で、この引き起こしに手間取る等、面倒である。
【0006】
本発明の目的は、小型の容器を包装する熱収縮性フィルムを除去するための摘み部が摘み易い包装体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る包装体は、胴部と、胴部上部に連接し、上方に向けて胴部よりも縮径して天面部または頂部となる縮径部とを有する容器と、容器の胴部を覆う熱収縮性フィルムと、
熱収縮性フィルムを除去するために熱収縮性フィルムの上端縁部に設けられる摘み部と、を有し、熱収縮性フィルムの上端縁部は、胴部の上端より下方に予め定めた所定の間隔距離を離して容器胴部の外周表面に沿うように設けられ、摘み部は、熱収縮フィルムの上端縁部から上方に向けて立ち上がり、縮径部から離間して設けられることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る包装体は、容器本体と、その取出口に取付けられるキャップとを有する容器と、容器本体からキャップにかけて容器本体とキャップとを覆う熱収縮性フィルムと、熱収縮性フィルムを除去するために熱収縮性フィルムの上端縁部に設けられる摘み部と、を備え、キャップは、キャップ胴部と、キャップ胴部上部に連接し、上方に向けてキャップ胴部よりも縮径して天面部または頂部となるキャップ縮径部とを有し、熱収縮性フィルムの上端縁部は、キャップ胴部の上端より下方に予め定めた所定の間隔距離を離してキャップ胴部の外周表面に沿うように設けられ、摘み部は、熱収縮性フィルムの上端縁部から上方に向けて立ち上がり、キャップ縮径部から離間して設けられることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る包装体は、容器本体と、その取出口に取付けられるキャップとを有する容器と、容器本体からキャップにかけて容器本体とキャップとを覆う熱収縮性フィルムと、熱収縮性フィルムを除去するために熱収縮性フィルムの上端縁部に設けられる摘み部と、を備え、キャップは、キャップ胴部とキャップ胴部に連接する天面部とを有し、熱収縮性フィルムの上端縁部は、キャップ胴部の上端より下方に予め定めた所定の間隔距離を離してキャップ胴部の外周表面に沿うように設けられ、摘み部は、熱収縮性フィルムの上端縁部から上方に向けて立ち上がり、天面部から離間して設けられることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る包装体において、摘み部は、裏面に剛性補強用印刷部を有することが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る包装体において、容器は、その最大外周径の位置から底部に向けて縮径する容器下方部を有し、熱収縮性フィルムは、縮径する容器下方部の外周表面に沿って縮径することが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る包装体において、容器は、その最大外周径の位置から天面部または頂部に向けて縮径する容器上方部を有し、熱収縮性フィルムは、縮径する容器上方部の外周表面に沿って縮径することが好ましい。
【0013】
また、本発明に係る包装体において、熱収縮性フィルムは、容器の外周面の周方向に沿って設けられる横ミシン目と、摘み部から横ミシン目に向かって設けられる縦ミシン目と、横ミシン目に沿って、横ミシン目の配置方向に対し傾斜して設けられる複数の傾斜切れ目と、を有することが好ましい。
【0014】
また、本発明に係る包装体において、熱収縮性フィルムは、容器の外周面の周方向に沿って設けられる横ミシン目と、摘み部から横ミシン目に向かって設けられる縦ミシン目と、横ミシン目よりも下端部側における裏面に設けられる接着層と、を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
上記構成により、胴部と、胴部上部に連接し、上方に向けて胴部よりも縮径して天面部または頂部となる縮径部とを有する容器についての包装体は、容器の胴部を熱収縮性フィルムで覆い、熱収縮性フィルムを除去するために熱収縮性フィルムの上端縁部に摘み部が設けられる。ここで、熱収縮性フィルムの上端縁部は、胴部の上端より下方に予め定めた所定の間隔距離を離して容器胴部の外周表面に沿うように設けられて、摘み部は、熱収縮フィルムの上端縁部から上方に向けて立ち上がり、縮径部から離間して設けられる。従来技術では、摘み部が容器に密接して延伸しているので摘みにくいことがあるが、これに比較し、小型の容器を包装する熱収縮性フィルムを除去するための摘み部が摘み易い。
【0016】
また、容器本体とキャップとを有する容器についての包装体は、容器本体からキャップにかけて容器本体とキャップとを熱収縮性フィルムが覆い、熱収縮性フィルムを除去するために熱収縮性フィルムの上端縁部に摘み部が設けられる。ここで、熱収縮性フィルムの上端縁部は、キャップ胴部の上端より下方に予め定めた所定の間隔距離を離してキャップ胴部の外周表面に沿うように設けられ、摘み部は、熱収縮性フィルムの上端縁部から上方に向けて立ち上がり、キャップ縮径部から離間して設けられる。これによって、小型の容器を包装する熱収縮性フィルムを除去するための摘み部が摘み易い。
【0017】
また、容器本体とキャップとを有する容器で、キャップが天面部を有するときの包装体は、容器本体からキャップにかけて容器本体とキャップとを熱収縮性フィルムが覆い、熱収縮性フィルムを除去するために熱収縮性フィルムの上端縁部に摘み部が設けられる。ここで、熱収縮性フィルムの上端縁部は、キャップ胴部の上端より下方に予め定めた所定の間隔距離を離してキャップ胴部の外周表面に沿うように設けられ、摘み部は、熱収縮性フィルムの上端縁部から上方に向けて立ち上がり、キャップの天面部から離間して設けられる。これによって、小型の容器を包装する熱収縮性フィルムを除去するための摘み部が摘み易い。
【0018】
また、包装体において、摘み部は、裏面に剛性補強用印刷部を有するので、裏面に何も設けられない場合に比べ、摘み部が容器の外周面から離間して立ち上がり易くなる。
【0019】
また、容器がその最大外周径の位置から底部に向けて縮径する容器下方部を有する場合、包装体において、熱収縮性フィルムは、縮径する容器下方部の外周表面に沿って縮径するので、ミシン目等によって熱収縮フィルムの除去が行われるまでは、熱収縮フィルムのラベル部が上方に抜けることを防止できる。
【0020】
また、容器がその最大外周径の位置から天面部または頂部に向けて縮径する容器上方部を有する場合、包装体において、熱収縮性フィルムは、縮径する容器上方部の外周表面に沿って縮径するので、ミシン目等によって熱収縮フィルムの除去が行われるまでは、熱収縮フィルムのラベル部が下方に抜けることを防止できる。
【0021】
また、包装体において、熱収縮性フィルムは、容器本体の外周面の周方向に沿って設けられる横ミシン目と、摘み部から横ミシン目に向かって設けられる縦ミシン目と、横ミシン目に沿って、横ミシン目の配置方向に対し傾斜して設けられる複数の傾斜切れ目と、を有する。摘み部を容器の外周面から離間して立ち上がるようにするため、熱収縮性フィルムの上端縁部をキャップ胴部の上端から下方に所定の間隔距離を離して設けると、キャップの上面に熱収縮性フィルムが密着していない。したがって、容器の形状によっては、熱収縮性フィルムがキャップの上方側に抜かれることが生じえる。これでは、包装体としてキャップをイタズラ等で故意に開けることを防止する等の保護機能が損なわれる。
【0022】
上記構成によれば、故意に熱収縮性フィルムを抜こうとすると、複数の傾斜切れ目によって不可逆的に熱収縮性フィルムが破れ、元通りに復元することが困難になる。したがって、縦ミシン目を破らずに、横ミシン目のみを破ってキャップ等を開け、その後元通りに復元するといったイタズラ等の発見が容易となるので、このようなイタズラを抑制することができる。
【0023】
また、包装体において、熱収縮性フィルムは、容器本体の外周面の周方向に沿って設けられる横ミシン目と、摘み部から横ミシン目に向かって設けられる縦ミシン目と、横ミシン目よりも下方端側における裏面に設けられる接着層とを有する。これによって、熱収縮性フィルムと容器との間の一体化を強化することができ、例えば、熱収縮性フィルムがキャップの上方側にも下方側にも抜かれることを抑制する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき詳細に説明する。以下では、包装される容器として、小型の目薬容器を説明するが、これ以外でも摘み部を有する熱収縮性フィルムで包装される容器であればよい。また、以下では、容器は、容器本体とキャップとを含んで構成されるものを説明するが、キャップがなく容器本体の上部が封止されている容器であってもよい。
【0025】
図1は、摘み部を有する熱収縮性フィルムで包装された包装体10の様子を説明する図である。ここでは、小型の容器20としての目薬容器に加熱収縮前の筒状の熱収縮性フィルム29を被せ、適当な加熱、例えば、約100℃から約200℃の熱風による加熱を施すことによって収縮させた熱収縮性フィルム30で包んで形成された包装体10が示されている。
【0026】
容器20は、目薬を中に収容する容器本体22と、容器本体22の上部の取出口部にネジによって着脱自在に取付けられるキャップ24を含んで構成される。容器20は、目薬の特性に適合した樹脂材料で形成され、その大きさは、高さが約30mmから約60mm程度、外径が約10mmから約25mm程度の大きさである。図1の例では、キャップ24の取り扱い易さを考えて、容器本体22の外径とキャップ24の外径とはほとんど同じとされている。
【0027】
キャップ24は、外周径が同じ部分であるキャップ胴部と、その上部の平らな頂部である天面部とを有する。もっとも、キャップ胴部から天面部に向かっては、外周径が次第に小さくなる縮径部となる。この縮径部は、キャップ胴部の上部に連接し、上方に向けてキャップ胴部よりも縮径して天面部または頂部となる部分である。なお、キャップを有しない容器の場合には、容器胴部があり、その容器胴部の上部に連接し、上方に向けて容器胴部よりも縮径して天面部または頂部となる部分が容器縮径部となる。
【0028】
加熱収縮前の熱収縮性フィルム29は、容器20の最大外形よりも大きな内径を有する筒状のフィルムであり、これを容器20に被せ、適当な条件で加熱することで収縮し、容器20の外周面に密着して取付けられる特性を有するフィルムである。なお、これとは別の方法として、加熱前の熱収縮性フィルムをシート状にしたものを容器20の外周に沿って巻き付けるものとしてもよい。図1では、加熱収縮前の筒状の熱収縮性フィルム29において、センターシール部32、横ミシン目34、縦ミシン目36、摘み部50、上端縁部48が示されている。これらの詳細な内容については後述する。
【0029】
加熱収縮前の熱収縮性フィルム29に対して加熱を行い、これによる熱収縮には、異方性を持たせることができ、図1の場合では、容器20の容器本体22からキャップ24に向かう方向を上下方向とし、これに直交する方向を幅方向とすると、筒状の熱収縮性フィルム29において、加熱による幅方向の熱収縮率を上下方向の熱収縮率より大きくなるように設定される。
【0030】
かかる熱収縮性フィルム29の素材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂;スチレン−ブタジエン共重合体などのポリスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂等を用いることができる。これらの素材は単独で又は2種以上混合して使用できる。なかでも、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂からなるフィルムが好ましい。これらの熱収縮性フィルム29は、単層フィルム及び多層フィルムの何れで構成されていてもよい。
【0031】
熱収縮性フィルム29は、少なくとも一方向(例えば、横方向)に延伸処理が施されており、延伸方向に熱収縮性を示す。上記の例では、延伸方向を幅方向とするシートをセンターシール部32で合わせて筒状の熱収縮性フィルム29とする。この延伸処理は、テンター方式、チューブ方式等の方式を用いて、例えば、70〜100℃程度の温度で、主延伸方向に2.0〜8.0倍、好ましくは3.5〜6.0倍程度延伸することにより行われる。なお、主延伸方向に直交する方向にも、1.1〜1.5倍程度の延伸を行うものとできる。
【0032】
このようにして一方向に延伸された熱収縮性フィルム29の主延伸方向の加熱による熱収縮率は、90℃(温水に10秒間浸漬)において、例えば10〜80%程度、好ましくは20〜75%程度である。このとき、主延伸方向に直交する方向においては−3〜+10%程度の熱収縮率である。ここで−3%とは、3%の熱膨張であることを示す。この熱収縮率は、熱収縮性フィルム29を構成する樹脂の種類、延伸倍率等の延伸条件を適宜選択することにより調整できる。熱収縮性フィルム29の厚みは、収縮応力とコストの点から、例えば10〜80μm、好ましくは20〜60μm程度の範囲から選択することができる。
【0033】
図1の包装体10において、摘み部50は、容器20の外周表面から離間し、立ち上がるように形成される。このために、加熱収縮後における熱収縮性フィルム30の上端縁部48は、容器20の上部を全部覆うことはせず、後述のように、キャップ24の最上面である天面部よりも下方に予め定めた所定の間隔距離を離して、キャップ胴部の外周表面に沿うように設定される。
【0034】
図1の包装体10を、従来技術の包装体11と比較した様子を図2に示す。この図は、図1で説明した容器本体22とキャップ24とを有する容器を同じ材質の熱収縮性フィルムであるが、その上端縁部の位置が異なるものを比較したもので、左側の図2(a)が図1で説明した包装体10、右側の図2(b)が従来技術の包装体11である。
【0035】
包装体10は、熱収縮性フィルムの上端縁部48の位置が、キャップ胴部の上端、つまり、キャップ胴部の上部に連接しているキャップ24の最上部である天面部からSだけ下った位置となる熱収縮性フィルム30によって包装されている。これに対し、従来技術による包装体11は、その上端縁部49がキャップ24の天面部の上の一部を覆う熱収縮性フィルム31によって包装されている。この構造の相違により、包装体10においては、摘み部50が天面部に沿うことなくキャップ24の外周表面から離間して立ち上がっているのに対し、従来技術の包装体11においては、摘み部51が熱収縮性フィルム31の上端縁部49がキャップ24の天面部を覆っているのに従って、キャップ24の天面部の上に沿って延び、キャップ24から離間せず、立ち上がっていない。
【0036】
ここで、熱収縮性フィルムの上端縁部とは、加熱収縮前の状態でいえば、図1に示されるように、摘み部50が設けられる上辺のうち、張り出している摘み部50を除いた直線的部分である。容器を包装した状態でいえば、容器の周囲を包んでいる上部の境界であって、摘み部を除く部分である。したがって、図2(a)に示される包装体10においては、上端縁部48は、キャップ24の外周を包む上部の境界であって、摘み部50を除くところであり、上記のように、キャップ24の天面部からSだけ下ったキャップ胴部の外周表面に沿うように設けられている。一方、図2(b)の包装体11にあっては、上端縁部49は、キャップ24の天面部を覆っているところと覆っていないところの境界であって、摘み部51を除くところであり、上記のように、キャップ24の天面部に沿うように設けられている。
【0037】
熱収縮性フィルムは、容器に被せて適当な加熱を与えると収縮して、容器の外形に沿って密着する。したがって、収縮前の熱収縮性フィルムの上端縁部がキャップ24の天面部を越えてその上方に延びるように位置合わせして熱収縮させたときは、加熱により、その上端縁部はキャップ24の外形であるキャップ24の天面部に沿って密着しようとする。このとき、摘み部も、上端縁部の密着に従って、キャップ24の天面部の上に延びる形態で配置されることになる。この場合が、図2の右側の図に示す従来技術の包装体11である。
【0038】
収縮前の熱収縮性フィルムの上端縁部を、キャップ24の天面部を越えないように、いくらかその下方になるように位置合わせして熱収縮させると、加熱によって、その上端縁部はキャップ24の外形であるキャップ24の側面に沿って密着することになる。このとき、摘み部は、上端縁部のキャップ胴部への密着に従って、鉛直上方に延びるキャップ24の側面に沿って上方に延びる形態で配置され、その先端がキャップ胴部上端の上方に位置するキャップ24の天面部より上方に越えるようにすることで、キャップ24の外周面から離間し、上方に立ち上がることになる。この場合が、図2の左側の図に示す包装体10である。
【0039】
上記では、キャップ24が円筒形で、その頂部が平坦な天面部であり、円筒形から天面部への移り変わりはごく短い寸法で行われる場合を想定してある。実際のキャップの形態は様々であるが、いずれにしても、熱収縮性フィルムの加熱による収縮が容器の外形に沿って密着して行われるので上端縁部も外形に沿って密着する。このため、熱収縮の際に、摘み部がキャップ24の外周面から離間して立ち上がるためには、熱収縮性フィルムの上端縁部が、キャップ胴部の上端よりも下方に設けられることが必要である。なお、いくつかの容器の形態についての上端縁部の設定については、例をあげて後述する。
【0040】
そして、キャップ24の形状のばらつき、熱収縮性フィルムの形状のばらつき等を考慮すると、いくらかの余裕を見て上端縁部の配置を行うことが好ましい。図2の左側の図では、熱収縮性フィルム30の上端縁部48は、キャップ胴部の上端の位置よりも予め定めた所定の間隔距離Sを置くことが示されている。所定の間隔距離Sは、例えば、約1mmから約3mm程度とすることができる。
【0041】
次に、加熱収縮前の熱収縮性フィルム29の製造方法を説明する。図3は、その1つの例で、長尺シート状の素材を幅方向に筒状に丸め、その両端で重ね合わせて接着固定することで長尺筒状のものとする。この接着固定は、センターシールと呼ばれることがある。この長尺筒状のものを所定の長さに切断して、個々の加熱収縮前熱収縮性フィルム29とするものである。シート状の素材は、上記のように、少なくとも幅方向に一軸性の延伸加工が行われたものが用いられ、また、幅広のものをつくり、これを所定の筒状形状に合わせて、所定幅に切断するものとできる。長さ方向の切断には、上端縁部48となる直線的切断が行われるが、摘み部50を形成するために、一部分が張出形状とされる。したがって、この上端縁部48における張出部に対応して、個々に切断分離した後の形状は、下端部が一部切り欠いたものとなる。なお、図1の包装体10において、加熱収縮後の熱収縮性フィルム30の下端部が一部切り欠かれて容器が覗いている様子が示されている。
【0042】
図4は、加熱収縮前の熱収縮性フィルム29の詳細図である。ここでは、図3の方法で製造された形態のものが示されている。以下では、図1から図3と同様の要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。また、以下では、図1から図3の符号を用いて説明する。すでに図1で簡単に説明したように、この筒状の熱収縮性フィルム29には、センターシール部32、横ミシン目34、縦ミシン目36、摘み部50が設けられる。なお、図5には、上端縁部48が示されている。
【0043】
センターシール部32は、図3で説明したように、シート状の素材を丸めて筒状とするために、幅方向の両端部で接着固定される部分である。接着固定は、接着材や溶剤を用いる方法、感熱接着材を用いた熱シールによる方法、高周波加熱を用いる方法等を用いることができる。拡大図Aに示されるように、熱収縮性フィルム29の裏面、つまり容器20に密着する側の面に表示等のための印刷層40を設ける場合には、センターシール部32のところで印刷層を一部設けないようにすることが好ましい。図4の例では、表側に来るシートの裏面の印刷層40が一部省略されている。
【0044】
摘み部50は、上記のように、容器20を包む熱収縮性フィルム30を除去する際に、ユーザがこれを摘んで引っ張りやすいように設けられる張出部である。摘み部50は、加熱収縮前の熱収縮性フィルム29の上端縁部48から、指で摘める程度の大きさで張り出して設けられる。摘み部50の大きさは、幅を約2mmから約10mm、張り出しの長さを約5mmから約20mm程度とすることができる。
【0045】
容器への接着状態を示す断面図Bに示されるように、摘み部50の裏面、すなわち容器20の外周面に向かい合う面に、適当な印刷層40を設けることが好ましい。この印刷層40は、表示のためというよりは、むしろ摘み部50の剛性を補強するために機能する。つまり、印刷層40は適当な厚さを有するので、その厚さによって摘み部50の部分のフィルム全体の剛性を高め、これによって、熱収縮の際に、摘み部50が容器20の外周側に倒れることを抑制する。また、内面のみに印刷層40が設けられるので、外面側にカールしやすくなり、いっそう、容器の外周側に倒れにくい。
【0046】
横ミシン目34は、熱収縮性フィルム29の幅方向に沿って、筒状の一周に渡って設けられるミシン目である。ミシン目としては、孔が開けられる切り部と、孔と孔との間である継ぎ部とを繰り返すものが用いられる。孔を開ける手段としては、回転刃を用いることができ、またダイカットやレーザ加工機を用いてもよい。横ミシン目34は、その下部側を容器20の内容物についての表示を行うラベル部とし、上部側をキャップ24の開封のときに切り離す切離部として、両者を分離するための機能を有する開封部である。
【0047】
また、縦ミシン目36は、摘み部50から横ミシン目34に向かって設けられるミシン目で、ユーザが摘み部50を摘んでこれを容器20の底部に向かって引っ張ることで縦方向に破れ目を形成し、横ミシン目34に接続する機能を有する。縦ミシン目36としては、摘み部50の片側から一条のミシン目を設けるものとしてもよく、摘み部50の両側からそれぞれ一条ずつ合計二条のミシン目を設けるものとしてもよい。
【0048】
拡大図Cに示されるように、縦ミシン目36が交わるところの横ミシン目34は、切れ部の長さを他のところよりも長めの長孔35とすることが好ましい。これによって、縦ミシン目36の破れ目が横ミシン目34に容易に接続される。同様に、拡大図Dに示されるように、センターシール部32が交わるところの横ミシン目34も、長孔35とすることが好ましい。これによって、周方向に破り、熱収縮性フィルムの除去が容易となる。
【0049】
破線丸部で示される詳細図Eは、横ミシン目34に交差して設けられる傾斜切れ目33を示す図である。この傾斜切れ目33は、縦ミシン目36を用いて取り除くことなく例えば切離部を回転させて横ミシン目34のみを不正に開封したときに、元通りに復元することを困難にするために設けられるものである。すなわち、このような開封の際に、この傾斜切れ目33のところで、加熱収縮して容器20に密着している熱収縮性フィルム30はかなり複雑に破れ、これを目視では分からない程度に復元することが難しい。つまり、この傾斜切れ目33は、フィルム除去処理を不可逆的とする機能を有する。これによって、例えば、故意に切離部を取り除くことなくフィルムを開封してキャップ等を開け、その後元通りに復元するといったイタズラ等の発見が容易となるので、このようなイタズラ等を抑制することができる。
【0050】
また、横ミシン目34の下部側、つまりラベル部となる部分の裏面、すなわち容器20に向かい合う面に、適当な接着層を設けることができる。これにより、フィルム除去の際だけでなく、フィルム除去の前、フィルム除去の後において、ラベル部も一緒に容器20から外れてしまうこと等を防止できる。すなわち、フィルム除去前にはフィルム自身が容器20の上下方向のいずれにも抜けることが防止され、除去後には、ラベル部が容器20の上下方向のいずれにも抜けることが防止される。
【0051】
図5から図8は、いくつかの容器の形態について、熱収縮性フィルムの上端縁部の配置の設定の様子を説明する図である。以下では、図1から図4と同様の要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。また、これらの例示において、図4で説明した印刷層40、長孔35、傾斜切れ目33、接着層等をそれぞれ用途に応じて用いることができる。
【0052】
図5は、容器60が大きな外周径を有する容器本体62と小さな外周径を有するキャップ64を含んで構成され、キャップ64の上部が平坦な天面部66を有する形態の場合である。この形態は、図1、図2とほぼ同様であるので、熱収縮性フィルム30の上端縁部48の位置は、天面部66から下方に所定の間隔距離を離してキャップ64の側の胴部のところに設定される。横ミシン目34は、ラベル部の表示が十分にでき、かつ、接着しなくてもフィルムや切離部を除去後のラベル部が下方へ抜けないように、容器本体62の上側であって、容器本体の胴部が上方に行くにつれて縮径する肩部のところに設定することが好ましい。また、熱収縮性フィルム30は、容器本体62の底部の一部を覆うようにすることが好ましい。このようにすることで、摘み部50を引っ張ったときに、熱収縮性フィルム30が上方に抜けてしまうことを防止できる。
【0053】
図6は、容器70において、容器本体72とキャップ74とが同じ外周径を有し、キャップ74の上部が平坦な天面部76を有する形態の場合である。この場合も、図5と同様に、熱収縮性フィルム30の上端縁部48の位置は、天面部76から下方に所定の間隔距離を離してキャップ74の側の胴部のところに設定される。横ミシン目34も、容器本体72の胴部より小さな外周径となる首部に設定することが好ましい。また、同様に、熱収縮性フィルム30は、容器本体72の底部の一部を覆うようにすることが好ましい。
【0054】
図1、図5、図6で説明した構造においては、キャップの最上面となる部分よりも摘み部が上方に突き出しているので、摘み部がつまみやすく、特に好ましい構造である。
【0055】
図7は、容器80が大きな外周径を有する容器本体82と小さな外周径を有するキャップ84を含んで構成されるところは図5と同様であるが、キャップ84の上部が半球体86である場合である。この場合には、キャップ84において、円柱部分である胴部の外径から縮径する縮径部を経て半球体の頂部に至る。縮径は、円柱部分と半球体との境界から始まるので、熱収縮性フィルム30の上端縁部48の位置は、その円柱部分と半球体との境界の位置であるキャップ胴部の上端から所定の間隔距離を離してキャップ胴部に寄ったところに設定される。横ミシン目34は、容器本体82の胴部よりも小さな外周径である肩部のところに設定することが好ましい。また、熱収縮性フィルム30は、容器本体82の底部の一部を覆うようにすることが好ましい。
【0056】
図8は、容器90が大きな外周径を有する容器本体92と小さな外周径を有するキャップ94を含んで構成されるところは図6と同様であるが、キャップ94が2段に渡って上部に向かって外周径が小さくなり、1段目と2段目の移り変わりの部分が円弧状となっているところが相違する。この場合には、キャップ94において、1段目の円柱部分である胴部から2段目の円柱部分に円弧状で縮径する縮径部を経て天面部に至る。縮径は、1段目の円柱部分から2段目の円柱部分に円弧状で移り始める位置、つまり円弧状部分の最大径の位置から始まる。したがって、熱収縮性フィルム30の上端縁部48の位置は、キャップ胴部上端となる円弧形状の最大径の位置から下方に所定の間隔距離を離して1段目のキャップ胴部に設定される。横ミシン目34は、容器本体92の肩部に設定することが好ましい。また、熱収縮性フィルム30は、容器本体92の底部の一部を覆うようにすることが好ましい。
【0057】
なお、図5から図8に示されるように、容器本体の底部において、その縮径に沿って覆うようにすることが好ましい。これによって、フィルム自体や切離部が除去された後のラベル部分が上方に抜けることがなくなる。つまり、容器が、その最大外周径の位置から底部に向けて縮径する容器下方部を有する場合には、熱収縮性フィルムを、縮径する容器下方部の外周表面に沿って縮径するようにすることが好ましい。これによって、熱収縮フィルムの除去が行われても、熱収縮フィルムのラベル部が上方に抜けることを防止できる。また、容器本体が、容器本体の肩部のように、その最大外周径の位置から天面部または頂部に向けて縮径する容器上方部を有する場合には、熱収縮性フィルムを、縮径する容器上方部の外周表面に沿って縮径するようにすることが好ましい。これによって、ミシン目等によって熱収縮フィルムの除去が行われても、熱収縮フィルムのラベル部が下方に抜けることを防止できる。
【0058】
なお、容器胴部、キャップ胴部は、外周径が上下に渡って同じである円柱状、あるいは下方側の外周径に比べ上方側の外周径がいくらか大きめの上広がり円柱状の構造とすることが好ましい。このようにすることで、摘み部がより立上りやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明に係る実施の形態において、摘み部を有する熱収縮性フィルムで包装された包装体の様子を説明する図である。
【図2】本発明に係る実施の形態の包装体を、従来技術の包装体と比較した様子を示す図である。
【図3】本発明に係る実施の形態において、加熱収縮前の熱収縮性フィルムの製造方法の1つの例を説明する図である。
【図4】本発明に係る実施の形態において、加熱収縮前の熱収縮性フィルムの詳細図である。
【図5】本発明に係る実施の形態において、容器の形態の1つの例について熱収縮性フィルムの上端縁部の配置の設定の様子を説明する図である。
【図6】図5とは異なる他の容器の形態の1つの例について熱収縮性フィルムの上端縁部の配置の設定の様子を説明する図である。
【図7】図5,6とは異なる他の容器の形態の1つの例について熱収縮性フィルムの上端縁部の配置の設定の様子を説明する図である。
【図8】図5,6,7とは異なる他の容器の形態の1つの例について熱収縮性フィルムの上端縁部の配置の設定の様子を説明する図である。
【符号の説明】
【0060】
10,11 包装体、20,60,70,80,90 容器、22,62,72,82,92 容器本体、24,64,74,84,94 キャップ、29 加熱収縮前の熱収縮性フィルム、30,31 (加熱収縮後の)熱収縮性フィルム、32 センターシール部、33 傾斜切れ目、34 横ミシン目、35 長孔、36 縦ミシン目、40 印刷層、48,49 上端縁部、50,51 摘み部、66,76 天面部、86 半球体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴部と、胴部上部に連接し、上方に向けて胴部よりも縮径して天面部または頂部となる縮径部とを有する容器と、
容器の胴部を覆う熱収縮性フィルムと、
熱収縮性フィルムを除去するために熱収縮性フィルムの上端縁部に設けられる摘み部と、
を有し、
熱収縮性フィルムの上端縁部は、胴部の上端より下方に予め定めた所定の間隔距離を離して容器胴部の外周表面に沿うように設けられ、
摘み部は、熱収縮フィルムの上端縁部から上方に向けて立ち上がり、縮径部から離間して設けられることを特徴とする包装体。
【請求項2】
容器本体と、その取出口に取付けられるキャップとを有する容器と、
容器本体からキャップにかけて容器本体とキャップとを覆う熱収縮性フィルムと、
熱収縮性フィルムを除去するために熱収縮性フィルムの上端縁部に設けられる摘み部と、
を備え、
キャップは、キャップ胴部と、キャップ胴部上部に連接し、上方に向けてキャップ胴部よりも縮径して天面部または頂部となるキャップ縮径部とを有し、
熱収縮性フィルムの上端縁部は、キャップ胴部の上端より下方に予め定めた所定の間隔距離を離してキャップ胴部の外周表面に沿うように設けられ、
摘み部は、熱収縮性フィルムの上端縁部から上方に向けて立ち上がり、キャップ縮径部から離間して設けられることを特徴とする包装体。
【請求項3】
容器本体と、その取出口に取付けられるキャップとを有する容器と、
容器本体からキャップにかけて容器本体とキャップとを覆う熱収縮性フィルムと、
熱収縮性フィルムを除去するために熱収縮性フィルムの上端縁部に設けられる摘み部と、
を備え、
キャップは、キャップ胴部とキャップ胴部に連接する天面部とを有し、
熱収縮性フィルムの上端縁部は、キャップ胴部の上端より下方に予め定めた所定の間隔距離を離してキャップ胴部の外周表面に沿うように設けられ、
摘み部は、熱収縮性フィルムの上端縁部から上方に向けて立ち上がり、天面部から離間して設けられることを特徴とする包装体。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1に記載の包装体において、
摘み部は、裏面に剛性補強用印刷部を有することを特徴とする包装体。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1に記載の包装体において、
容器は、その最大外周径の位置から底部に向けて縮径する容器下方部を有し、
熱収縮性フィルムは、縮径する容器下方部の外周表面に沿って縮径することを特徴とする包装体。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1に記載の包装体において、
容器は、その最大外周径の位置から天面部または頂部に向けて縮径する容器上方部を有し、
熱収縮性フィルムは、縮径する容器上方部の外周表面に沿って縮径することを特徴とする包装体。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1に記載の包装体において、
熱収縮性フィルムは、
容器の外周面の周方向に沿って設けられる横ミシン目と、
摘み部から横ミシン目に向かって設けられる縦ミシン目と、
横ミシン目に沿って、横ミシン目の配置方向に対し傾斜して設けられる複数の傾斜切れ目と、
を有することを特徴とする包装体。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか1に記載の包装体において、
熱収縮性フィルムは、
容器の外周面の周方向に沿って設けられる横ミシン目と、
摘み部から横ミシン目に向かって設けられる縦ミシン目と、
横ミシン目よりも下端部側における裏面に設けられる接着層と、
を有することを特徴とする包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−184715(P2009−184715A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−28668(P2008−28668)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【出願人】(000238005)株式会社フジシールインターナショナル (641)
【Fターム(参考)】